以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は、本実施形態におけるエンジン暖機システム100を説明する概略図である。なお、図1中、信号の流れを破線の矢印で示す。
図1に示すように、エンジン暖機システム100には、エンジン1が設けられる。エンジン1は、クランクシャフト2を挟んで2つのシリンダブロック3にそれぞれ形成されたシリンダボア3aが対向して配された水平対向4気筒エンジンである。
シリンダブロック3には、クランクケース4が一体形成されるとともに、クランクケース4とは反対側にシリンダヘッド5が固定されている。クランクシャフト2は、2つのクランクケース4によって形成されたクランク室6内に回転自在に支持される。
シリンダボア3aには、コネクティングロッド7を介してクランクシャフト2に連結されたピストン8が摺動可能に収容されている。そして、エンジン1では、シリンダボア3aと、シリンダヘッド5と、ピストン8の冠面とによって囲まれた空間が燃焼室9として形成される。
シリンダヘッド5には、吸気ポート10および排気ポート11が燃焼室9に連通するように形成される。吸気ポート10と燃焼室9との間には、吸気バルブ12の先端が位置し、排気ポート11と燃焼室9との間には、排気バルブ13の先端が位置している。
また、エンジン1では、シリンダヘッド5およびヘッドカバー14に囲まれたカム室内に、吸気バルブ用カム15および排気バルブ用カム16が設けられる。吸気バルブ用カム15は、吸気バルブ12の他端に当接されており、回転することで吸気バルブ12を軸方向に移動させる。これにより、吸気バルブ12は、吸気ポート10と燃焼室9との間を開閉する。排気バルブ用カム16は、排気バルブ13の他端に当接されており、回転することで排気バルブ13を軸方向に移動させる。これにより、排気バルブ13は、排気ポート11と燃焼室9との間を開閉する。
吸気ポート10の上流側には、インテークマニホールド17を含む吸気流路18が連通される。また、排気ポート11の下流側には、エキゾーストマニホールド19を含む排気流路20が連通される。燃焼室9から排出された排気ガスは、排気ポート11を介してエキゾーストマニホールド19で集約され、排気流路20に導かれる。
吸気流路18には、エアクリーナ21、吸気制御バルブ25、後述する電動過給機22のコンプレッサインペラ22c、インタークーラ23、スロットルバルブ24、およびインテークマニホールド17が上流側から順に設けられる。ここで、吸気流路18のうち、コンプレッサインペラ22cよりも上流側を上流側吸気流路18aと呼び、コンプレッサインペラ22cよりも下流側を下流側吸気流路18bと呼ぶ。
電動過給機22は、モータ22aと、シャフト22bと、コンプレッサインペラ22cとを含んで構成される。モータ22aは、電力が供給されることで駆動する。シャフト22bは、モータ22aと接続され、モータ22aの駆動によって回転する。コンプレッサインペラ22cは、シャフト22bと接続され、シャフト22bと一体回転する。
また、コンプレッサインペラ22cは、モータ22aの駆動によって回転することで、エアクリーナ21で塵や埃などの不純物が除去された空気(吸気)を圧縮して下流側吸気流路18bに供給する。
インタークーラ23は、コンプレッサインペラ22cで圧縮されて昇温された吸気を冷却する。冷却された空気は、スロットルバルブ24、インテークマニホールド17および吸気ポート10を介して燃焼室9に導かれる。
スロットルバルブ24は、不図示のアクチュエータによって開度が調整されることで、燃焼室9に供給される吸気の流量を可変する。
吸気制御バルブ25は、エンジン1の駆動中は開放状態になっており、エアクリーナ21を介して外部から吸い込まれる空気の流量を調節することなく下流側に通過させる。また、吸気制御バルブ25は、詳しくは後述するエンジン暖気中に開度が調整されることで、外部から吸い込まれる空気(吸気)の流量を調整する。
また、吸気流路18には、コンプレッサインペラ22cを迂回するエアバイパス流路26が設けられる。エアバイパス流路26は、上流側吸気流路18aにおける吸気制御バルブ25とコンプレッサインペラ22cとの間に接続される。また、エアバイパス流路26は、下流側吸気流路18bにおけるインタークーラ23とスロットルバルブ24との間に接続される。エアバイパス流路26には、エアバイパスバルブ27が介装される。エアバイパスバルブ27は、運転者がアクセルを放してスロットルバルブ24が閉鎖されるときに開放され、下流側吸気流路18bの圧力が過剰となることを防止する。
また、下流側吸気流路18bには、インタークーラ23を迂回する第1バイパス流路28が設けられる。第1バイパス流路28の上流側と下流側吸気流路18bとを接続する箇所には、第1流路切り替えバルブ29が設けられる。第1流路切り替えバルブ29は、インタークーラ23または第1バイパス流路28のどちらかに吸気を流通させるように、流路を切り替える。
エンジン1では、燃焼室9に導かれた吸気と、不図示のインジェクタから噴射された燃料との混合気が、シリンダヘッド5に設けられた不図示の点火プラグによって所定のタイミングで点火されて燃焼される。かかる燃焼により、ピストン8がシリンダボア3a内で往復運動を行い、その往復運動が、コネクティングロッド7を通じてクランクシャフト2の回転運動に変換される。
また、燃焼により発生した排気ガスは、排気ポート11、排気流路20を介して車外へ排出される。排気流路20には、上流側の触媒(触媒)30と下流側の触媒31とが設けられる。上流側の触媒30および下流側の触媒31は、排気流路20を流通する排気ガスを浄化する。なお、上流側の触媒30および下流側の触媒31は、触媒機能付きのフィルタ装置であってもよい。
また、排気流路20には、排気制御バルブ32が設けられる。排気制御バルブ32は、排気流路20におけるEGR(Exhaust Gas Recirculation)流路33が接続される箇所よりも下流側で、かつ、下流側の触媒31よりも上流側に設けられる。排気制御バルブ32は、エンジン1の駆動中は開放状態になっており、排気流路20における排気制御バルブ32よりも上流側から流通する空気の流量を調節することなく排気制御バルブ32よりも下流側に通過させる。また、排気制御バルブ32は、詳しくは後述するエンジン暖気中に開度が調整されることで、排気流路20を介して外部へと排出される空気の流量を調整する。
また、排気流路20には、吸気流路18に排気ガスの一部を還流させるEGR流路33が接続される。EGR流路33は、排気流路20における上流側の触媒30と排気制御バルブ32の間と、上流側吸気流路18aにおける吸気制御バルブ25およびコンプレッサインペラ22cの間とに接続される。なお、以下では、EGR流路33で還流させた排気ガス(空気)を「EGRガス」と称する。
EGR流路33には、EGRクーラ34およびEGRバルブ35が上流側から順に設けられる。EGRクーラ34は、EGRガスを冷却する。EGRバルブ35は、開度が調整されることで、EGR流路33を流通するEGRガスの流量を調整する。なお、EGRバルブ35の詳細な制御については、後述する。
また、EGR流路33には、EGRクーラ34を迂回する第2バイパス流路36が設けられる。第2バイパス流路36の上流側と、EGR流路33とを接続する箇所には、第2流路切り替えバルブ37が設けられる。第2流路切り替えバルブ37は、EGRクーラ34または第2バイパス流路36のどちらかにEGRガス(空気)を流通させるように、流路を切り替える。
また、エンジン暖機システム100には、制御装置110が設けられる。制御装置110には、第1圧力センサ(圧力センサ)50、第2圧力センサ52、第1温度センサ54、第2温度センサ56、第3温度センサ58およびエンジン起動スイッチセンサ60が接続される。
第1圧力センサ50は、下流側吸気流路18bにおけるインタークーラ23とスロットルバルブ24との間に設けられ、下流側吸気流路18b内の圧力を測定する。また、第1圧力センサ50は、下流側吸気流路18b内の圧力(圧力P1)に応じた検出信号を制御装置110に送信する。
第2圧力センサ52は、上流側吸気流路18aにおけるEGR流路33の接続箇所よりも下流側に設けられ、上流側吸気流路18a内の圧力を測定する。また、第2圧力センサ52は、上流側吸気流路18a内の圧力(圧力P2)に応じた検出信号を制御装置110に送信する。
第1温度センサ54は、シリンダブロック3内に設けられ、エンジン1内を流通する冷却水の温度を測定する。また、第1温度センサ54は、エンジン1内の温度(温度T1)に応じた検出信号を制御装置110に送信する。
第2温度センサ56は、上流側吸気流路18aにおける吸気制御バルブ25よりも上流側に設けられ、吸気される空気(吸気)の温度を測定する。また、第2温度センサ56は、吸気(外気)の温度(温度T2)に応じた検出信号を制御装置110に送信する。
第3温度センサ58は、インテークマニホールド17内に設けられ、インテークマニホールド17内を流通する空気の温度を測定する。また、第3温度センサ58は、インテークマニホールド17内の温度(温度T3)に応じた検出信号を制御装置110に送信する。
エンジン起動スイッチセンサ60は、不図示のエンジン起動スイッチがオンされると、エンジン起動スイッチがオンされたことを示すエンジン起動スイッチオン信号を制御装置110に送信する。また、エンジン起動スイッチセンサ60は、エンジン起動スイッチがオフされると、エンジン起動スイッチがオフされたことを示すエンジン起動スイッチオフ信号を制御装置110に送信する。
制御装置110は、例えば、ECU(Engine Control Unit)であり、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路で構成され、エンジン1全体を制御する。また、制御装置110は、エンジン1を含む車両全体の動作を制御するほか、駆動制御部112、吸排気バルブ制御部114、スロットルバルブ制御部116、吸気制御バルブ制御部(バルブ制御部)118、排気制御バルブ制御部(バルブ制御部)120、EGRバルブ制御部(バルブ制御部)122、第1流路切り替えバルブ制御部124、第2流路切り替えバルブ制御部126および電動過給機制御部128としても機能する。以下では、エンジン暖機システム100の具体的な動作について説明する。
図2および図3は、暖機中の空気の流れを示す説明図である。図2は、新気を吸気する際の、暖気中の空気の流れを示す。図3は、空気が循環する際の、暖気中の空気の流れを示す。また、図2および図3中、黒塗り矢印は、空気の流れを示す。
ここで、エンジン起動スイッチがオンされる(エンジン起動スイッチオン信号を受信する)と、駆動制御部112は、エンジン1を始動させることになるが、エンジン1が低温である場合、エンジンオイルの粘性が高く、エンジン1の始動性が低下してしまう。そこで、エンジン暖機システム100では、エンジン起動スイッチがオンされた際に、エンジン暖機実行条件が成立している場合、エンジン暖機を実行する。なお、エンジン暖機実行条件は、エンジン1内の温度(温度T1)が予め設定された低温とされる所定の温度よりも低いことである。なお、エンジン暖機システム100による暖機は、エンジン1の燃焼室9を暖機することで、外気温が低いときでも始動時の燃焼を安定させることを第1の目的として行われる。
駆動制御部112は、エンジン起動スイッチセンサ60より送られてきたエンジン起動スイッチオフ信号を受信すると、エンジン1を停止させる。このとき、エンジン暖機を実行する前段階として、吸排気バルブ制御部114は、エンジン1の始動時にエンジン暖機を実行するか否かに拘わらず、吸気バルブ12および排気バルブ13を共に開放状態(オーバーラップ状態)になるようにエンジン1を停止制御する。これにより、エンジン1では、吸気ポート10と燃焼室9とが連通された状態が維持される。また、エンジン1では、排気ポート11と燃焼室9とが連通された状態が維持される。
その後、エンジン起動スイッチがオンされた(エンジン起動スイッチオン信号を受信した)際に、駆動制御部112は、エンジン暖機実行条件が成立しているかを判定する。そして、エンジン暖機実行条件が成立したと判定した場合、駆動制御部112は、エンジン1を始動させずに、制御装置110の各部にエンジン暖機を実行させる。
エンジン暖機が開始されると、スロットルバルブ制御部116は、スロットルバルブ24を開放させる。また、吸気制御バルブ制御部118は、吸気制御バルブ25を開放させ、排気制御バルブ制御部120は、排気制御バルブ32を閉鎖させ、EGRバルブ制御部122は、EGRバルブ35を閉鎖させる。
また、第1流路切り替えバルブ制御部124は、空気が第1バイパス流路28を流通するように、第1流路切り替えバルブ29を制御する。さらに、第2流路切り替えバルブ制御部126は、空気が第2バイパス流路36を流通するように、第2流路切り替えバルブ37を制御する。
そして、電動過給機制御部128は、予め設定された一定の電力で電動過給機22を駆動させる。このとき、図2に示すように、吸気制御バルブ25が開放されていることにより、電動過給機22を駆動させた際、コンプレッサインペラ22cは、外部から空気(新気)を吸気する。
ここで、吸気制御バルブ25が開放されており、かつ、排気制御バルブ32およびEGRバルブ35が閉鎖されているので、電動過給機22が駆動されて外部から空気が吸入されることで、吸気流路18、エンジン1、排気流路20およびEGR流路33内の空気量が増加される。これにより、吸気流路18、エンジン1、排気流路20およびEGR流路33内の圧力も上昇することになり、その結果、吸気流路18、エンジン1、排気流路20およびEGR流路33内の温度も上昇することで、早期にエンジン1を暖気することが可能となる。
その後、吸気制御バルブ制御部118は、エンジン暖機循環条件が成立したと判定した場合、吸気制御バルブ25を閉鎖させる。また、EGRバルブ制御部122は、電動過給機22が予め決められた領域で駆動するように、EGRバルブ35を制御する。なお、エンジン暖機循環条件は、下流側吸気流路18b内の圧力(圧力P1)が予め設定された大気圧よりも高い所定の圧力まで達したことである。また、吸気制御バルブ25およびEGRバルブ35の詳細な制御は後述する。
これにより、図3の黒塗り矢印で示すように、電動過給機22(コンプレッサインペラ22c)により圧縮された空気は、下流側吸気流路18bを流通する際に、インタークーラ23を迂回して第1バイパス流路28を流通する。その後、下流側吸気流路18bを流通した空気は、エンジン1の燃焼室9内を流通した後、排気流路20を流通する。そして、排気流路20を流通した空気は、排気制御バルブ32が閉鎖されていることにより、EGR流路33に導かれる。EGR流路33に導かれた空気は、EGR流路33を流通する際、EGRクーラ34を迂回して上流側吸気流路18aに導かれる。
このように、エンジン暖機システム100では、吸気流路18、エンジン1、排気流路20およびEGR流路33を、空気が循環する循環流路が形成される。そして、電動過給機22によって圧縮された空気の熱によりエンジン1および上流側の触媒30を暖機する。このとき、吸気制御バルブ25および排気制御バルブ32が閉鎖されており、循環流路は密閉されているため、一度暖めた空気が外気により冷却されることなく再び暖機に用いることができる。これにより、エンジン暖機システム100では、より早期にエンジン1を暖機することが可能となる。
そして、電動過給機制御部128は、インテークマニホールド17内の温度(温度T3)が、外気の温度(温度T2)を基準とした閾値T以上になるまでエンジン1を暖機する。なお、閾値Tは、外気の温度(温度T2)よりも高い値であり、かつ、外気の温度(温度T2)によって異なる値となっており、外気の温度(温度T2)が低い場合の閾値Tは、外気の温度(温度T2)が高い場合のそれよりも相対的に低くなる。
このとき、循環流路内の空気の温度が電動過給機22によって圧縮され続けるために徐々に上昇し、それに伴って、循環流路内の圧力も徐々に上昇されていく。循環流路の中には、例えば、吸気流路18など、高圧(例えば、1.5気圧以上)に耐えられない部品が多数設けられる。循環流路内の圧力が高圧になると、吸気流路18などの部品が、高圧によって破壊されるおそれがある。そこで、エンジン暖機システム100では、エンジン暖機高圧条件が成立している場合、循環流路内の空気の排出を実行する。なお、エンジン暖機高圧条件は、下流側吸気流路18b内の圧力(圧力P1)が予め設定された高圧とされる所定の圧力よりも高いことである。
排気制御バルブ制御部120は、エンジン暖機高圧条件が成立したと判定した場合、排気制御バルブ32を一時的に開放する。これにより、循環流路内の圧力が低下するため、エンジン暖機システム100に設けられる吸気流路18などの高圧(例えば、1.5気圧)に耐えられない部品が、高圧によって破壊されることを防ぐことができる。なお、排気制御バルブ32の詳細な制御は後述する。
そして、駆動制御部112は、インテークマニホールド17内の温度(温度T3)と閾値Tとに基づいて、エンジン暖機の終了を判定し、エンジン1を駆動(始動)させる。このとき、燃焼室9の熱容量を勘案し、インテークマニホールド17内の温度(温度T3)が閾値Tに達してから予め設定された駆動開始時間とされる所定の時間が経過した後、エンジン1を駆動(始動)させる。
ところで、電動過給機22は、コンプレッサインペラ22cを回転させる際、無駄なエネルギー(発熱)が生じる。したがって、通常のエンジン駆動時においては、電動過給機22は、吸気を圧縮する際、発熱を最小限に抑えるように(効率が良くなるように)制御される(断熱圧縮を行う)。
一方、電動過給機22を用いて暖機を行う場合、電動過給機22を通常のエンジン駆動時と同様に駆動すると、電動過給機22の発熱が最小限となり、暖機効率が低下する。そこで、本実施形態におけるエンジン暖機システム100では、電動過給機22は、通常とは異なる駆動で制御され、エンジン1を暖機する。
図4は、電動過給機22が駆動する際の効率のマップを示す図である。図4中では、縦軸に圧力比を示し、横軸に流量を示す。圧力比とは、電動過給機22に流通される空気の圧力と、電動過給機22によって圧縮された空気の圧力との比である。流量とは、電動過給機22によって圧縮された空気の質量流量である。図4を用いて、EGRバルブ35の制御を説明する。また、図4中、破線は、電動過給機22の効率(動力効率)を示している。なお、それぞれの動力効率線a〜dは、等しい動力効率を示す。また、図4中、一点鎖線は、電動過給機22に入力される電力を示している。なお、それぞれの一点鎖線で示される電力線は、等しい電力を示す。
図4に示すように、電動過給機22の動力効率は、図中中央に向かうに連れて効率が高くなる。例えば、動力効率線aで囲まれる内側の領域では、電動過給機22は、85%以上の効率で駆動する。また、電動過給機22は、動力効率線bで囲まれる内側の領域では80%〜85%の効率で、動力効率線cで囲まれる内側の領域では75%〜80%の効率で、動力効率線dで囲まれる内側の領域では70%〜75%の効率で駆動する。
動力効率線aで囲まれる内側の領域Aは、電動過給機22が通常で駆動される場合の動力効率を示す。上述したように、動力効率線aで囲まれる内側の領域では、電動過給機22は、85%以上の効率で駆動する。このとき、電動過給機22が駆動することによって生じる発熱は10%程度となる。よって、電動過給機22は、領域A内で駆動することにより、効率よく空気を圧縮することができる。
一方で、動力効率線b、動力効率線c、動力効率線dの順に、動力効率線aから遠くなるにつれて、電動過給機22が駆動することにより生じる発熱量は多くなる。発熱量の上昇に伴って、電動過給機22の動力効率は悪化するものの、発熱によるエネルギーが吸気流路18を流通する空気に伝達され、空気の温度は上昇する。
ここで、図4中、低で示す実線で囲まれた領域は、高で示す実線で囲まれた領域(電動過給機22が通常で駆動される場合)に対して、効率の悪い(低効率の)領域である。なお、図4中、左側の領域を領域Bとし、右側の領域を領域Cとする。ただし、領域Bおよび領域Cでは、電動過給機22の効率はほぼ等しい。
領域Bおよび領域Cでは、電動過給機22から生じる発熱量はほぼ同じである。しかし、電動過給機22に供給される電力が同一である場合、領域Bでは、領域Aに比べ、より空気は圧縮され、流量は減少する。一方で、領域Cでは、領域Aに比べ、空気が圧縮されず、流量は増加する。したがって、領域Bで電動過給機22を駆動させる方が、領域Cで電動過給機22を駆動させる場合よりも、圧縮による温度上昇分だけ、空気を高温にすることができる。
そこで、本実施形態のエンジン暖機システム100では、電動過給機22が、領域Bで駆動するように、EGRバルブ35の開度を調整し、エンジン1を暖機する。
具体的には、エンジン暖機実行条件が成立すると、まず、吸気制御バルブ25を開放させ、排気制御バルブ32とEGRバルブ35とを閉鎖させて電動過給機22を駆動させることで、図4中黒塗り矢印(1)で示すように、電動過給機22を流通する質量流量(空気量)が増加する。このとき、循環流路内は密閉されているので、このまま電動過給機22を駆動させ続けると、図4中黒塗り矢印(2)で示すように、新気を取り込み続けることで、循環流路内の空気が圧縮され、電動過給機22の圧縮比が上昇するとともに、質量流量(空気量)が低下していく。
そして、電動過給機22の駆動効率が領域Bの領域に(下流側吸気流路18b内の圧力(圧力P1)が予め設定された所定の値まで)達したら、つまり、エンジン暖機循環条件が成立したら、吸気制御バルブ制御部118は、吸気制御バルブ25を閉鎖し、外部からの空気(新気)の吸入を停止する。そして、EGRバルブ制御部122は、第1圧力センサ50および第2圧力センサ52によって測定される圧力P1および圧力P2に基づいて、圧力比を導出する。そして、EGRバルブ制御部122は、図4のマップを用いて、領域B内で電動過給機22が駆動するように、EGRバルブ35の開度を制御する。ここでは、例えば、圧力比が低下してくると、圧力比が高くなるようにEGRバルブ35の開度を小さくし、圧力比が高くなってくると、圧力比が低くなるようにEGRバルブ35の開度を大きくすることで、電動過給機22を領域Bで駆動させる。つまり、エンジン暖機システム100では、EGRバルブ35の開度を制御することで、電動過給機22の圧縮比を調整するようにしている。
これにより、エンジン暖機システム100は、エンジン1内に外気(冷たい空気)を進入させずに、空気の温度が最も高くなる領域Bで電動過給機22を駆動させることができ、エンジン1を早期に暖機することができる。
また、上述したように、循環流路が密閉された状態で(外部と空気の出入りが無い状態で)電動過給機22を駆動し続けると、循環流路内の圧力が上昇する。そこで、排気制御バルブ制御部120は、第1圧力センサ50によって測定される圧力P1が、予め設定された高圧とされる所定の圧力よりも高い場合、つまり、エンジン暖機高圧条件が成立した場合、排気制御バルブ制御部120は、排気制御バルブ32を開放する。そして、排気制御バルブ制御部120は、第1圧力センサ50によって測定される圧力P1が予め設定された高圧とされる所定の圧力よりも低くなった後、排気制御バルブ32を再び閉鎖する。
これにより、エンジン暖機システム100は、高圧により、循環流路を形成する吸気流路18、エンジン1、排気流路20およびEGR流路33が破壊されることを防ぐことができる。
(エンジン暖機処理)
次に、エンジン暖機システム100による、エンジン暖機処理の流れについて説明を行う。図5は、エンジンの停止時におけるエンジン暖機処理を説明するフローチャートである。
まず、駆動制御部112は、エンジン起動スイッチセンサ60から送信される信号に基づいて、エンジン起動スイッチがオフされたか否かを判定する(S10)。そして、エンジン起動スイッチがオフされたと判定されれば(ステップS10におけるYES)、吸排気バルブ制御部114は、吸気バルブ12および排気バルブ13を開放状態(オーバーラップ状態)に制御する(S12)。その後、駆動制御部112は、エンジン1を停止させ(S14)、当該エンジンの停止時におけるエンジン暖機処理を終了する。
一方で、駆動制御部112は、エンジン起動スイッチがオフされていないと判定した場合(ステップS10におけるNO)は、エンジン起動スイッチがオフされたと判定されるまで、ステップS10の処理を繰り返す。
図6は、エンジンの始動時におけるエンジン暖機処理を説明するフローチャートである。このエンジンの始動時におけるエンジン暖気処理は、エンジン起動スイッチがオンされた場合に実行される処理である。
エンジン起動スイッチがオンされた場合、駆動制御部112は、エンジン暖機実行条件が成立しているか否か、具体的には、温度T1が所定の温度よりも低いか否かを判定する(S20)。なお、エンジン暖機実行条件が成立しているか否かの判断に、温度T2を加えてもよい。この場合、温度T1および温度T2がそれぞれに対して設定された温度(閾値)以下であるときにエンジン暖機実行条件が成立していると判定する。
そして、エンジン暖機実行条件が成立していると判定されれば(ステップS20におけるYES)、スロットルバルブ制御部116は、スロットルバルブ24を開放し、吸気制御バルブ制御部118は、吸気制御バルブ25を開放し、排気制御バルブ制御部120は、排気制御バルブ32を閉鎖し、EGRバルブ制御部122は、EGRバルブ35を閉鎖する(S22)。また、第1流路切り替えバルブ制御部124は、空気が第1バイパス流路28を流通するように、第1流路切り替えバルブ29を制御する。また、第2流路切り替えバルブ制御部126は、空気が第2バイパス流路36を流通するように、第2流路切り替えバルブ37を制御する。
そして、電動過給機制御部128は、電動過給機22を所定の電力で駆動させる(S24)。吸気制御バルブ制御部118は、エンジン暖機循環条件が成立したか否かを判定する(S26)。
そして、エンジン暖機循環条件が成立したと判定されれば(ステップS26におけるYES)、吸気制御バルブ制御部118は、吸気制御バルブ25を閉鎖する。また、EGRバルブ制御部122は、電動過給機22が予め決められた領域Bで駆動するように、EGRバルブ35を制御する(S28)。
一方で、エンジン暖機循環条件が成立したと判定されなければ、つまり、エンジン暖機循環条件が成立していないと判定されれば、(ステップS26におけるNO)、充分な空気量が吸気されていない(あるいは、充分な圧力まで上昇していない)ということになる。そのため、ステップS26の処理を繰り返す。
その後、排気制御バルブ制御部120は、エンジン暖機高圧条件が成立しているか否かを判定する(S30)。具体的には、排気制御バルブ制御部120は、第1圧力センサ50によって測定される下流側吸気流路18b内の圧力P1が、予め設定された高圧とされる圧力以上であるか否かを判定する。そして、排気制御バルブ制御部120は、エンジン暖機高圧条件が成立したと判定すれば(ステップS30におけるYES)、排気制御バルブ32を開放する(S32)。そして、排気制御バルブ制御部120は、エンジン暖機高圧条件が解除されたか否かを判定する(S34)。
そして、エンジン暖機高圧条件が解除されたと判定されれば(ステップS34におけるYES)、排気制御バルブ制御部120は、排気制御バルブ32を閉鎖し(S36)、ステップS28へと処理を戻す。一方で、エンジン暖機高圧条件が解除されていないと判定されれば(ステップS34におけるNO)、エンジン暖機高圧条件が解除されたと判定されるまで排気制御バルブ32の開放状態を維持する。
一方で、エンジン暖機高圧条件が成立したと判定されない場合、つまり、下流側吸気流路18b内の圧力P1が予め設定された高圧未満である場合(ステップS30におけるNO)、電動過給機制御部128は、温度T3に基づいてエンジン暖機終了条件が成立したか否かを判定する(S38)。
そして、駆動制御部112は、エンジン暖機終了条件が成立したと判定されれば(ステップS38におけるYES)、エンジン暖機を終了する。そして、吸気制御バルブ制御部118は、吸気制御バルブ25を開放し、排気制御バルブ制御部120は、排気制御バルブ32を開放し、EGRバルブ制御部122は、EGRバルブ35を閉鎖する。また、第1流路切り替えバルブ制御部124は、空気がインタークーラ23を流通するように、第1流路切り替えバルブ29を制御し、第2流路切り替えバルブ制御部126は、空気がEGRクーラ34を流通するように、第2流路切り替えバルブ37を制御する(S40)。
そして、駆動制御部112は、エンジン1を駆動(始動)させ(S42)、当該エンジンの始動時におけるエンジン暖機処理を終了する。
また、エンジン暖機終了条件が成立していないと判定された場合(ステップS38におけるNO)、電動過給機制御部128は、ステップS28に処理を戻す。なお、エンジン始動前におけるエンジン暖機システム100による暖気時にあっては、エンジン1内の温度(冷却水温度)を示す温度T1に基づいて燃焼室9の温度を精度良く把握するのは困難である。そこで、本実施形態にあっては、エンジン暖機の終了の判定に、インテークマニホールド17内の温度T3、換言すれば、燃焼室9に供給される空気の温度を用いるようにした。また、燃焼室9の熱容量を勘案し、温度T3が閾値Tに達してからの経過時間を確認するようにした。なお、温度T3と流量履歴(エンジン暖機が開始してからの空気流量の積算値)に基づいてエンジン暖機の終了を判定するようにしてもよい。
また、駆動制御部112は、エンジン暖機実行条件が成立していないと判定されれば(ステップS20におけるNO)、エンジン暖機を行わずに、エンジン1を始動させ(S42)、当該エンジン暖機処理を終了する。エンジン暖機実行条件が成立していないということは、エンジン1は冷態状態ではないということである。したがって、エンジン1内を暖める必要がないため、駆動制御部112は、エンジン暖機を行わずに、当該エンジンの始動時におけるエンジン暖機処理を終了する。
かかる構成により、エンジン暖機システム100は、エンジン1が冷態状態で駆動する際、まずは電動過給機22を駆動させ、電動過給機22の断熱効率が通常制御(図4で示す領域A)時とは異なる領域(図4で示す領域B)になるようにEGRバルブ35の開度を制御する。これにより、電動過給機22によって圧縮(過給)され暖められた空気をエンジン1内に循環させることが可能となる。これにより、EGRバルブ35の開度の制御により、エンジン1を効率よく早期に暖機することができる。
図7は、本実施形態における変形例を示す図である。なお、上述したエンジン暖機システム100と実質的に等しい構成については、説明を省略する。図7に示すように、エンジン1には、エンジン暖機システム200が設けられる。具体的には、エンジン暖機システム200は、加熱ヒータ202および制御装置210を新たに含んで構成される。
加熱ヒータ202は、排気流路20における上流側の触媒30よりも上流側に設けられる。加熱ヒータ202は、排気流路20を流通する空気(排気ガス)を暖める。
制御装置210は、上述した制御装置110の機能に加え、新たに加熱ヒータ制御部212としても機能する。
加熱ヒータ制御部212は、加熱ヒータ202を加熱させる。加熱ヒータ制御部212は、エンジン暖機実行条件が成立したと判定された後、加熱ヒータ202を加熱させる。電動過給機22によって圧縮され、暖められた空気は、エンジン1内を通過することにより温度が低下する。よって、排気流路20を流通する空気は下流側吸気流路18bを通過する空気に比べて、温度が低い。そのため、排気流路20に加熱ヒータ202を設け、流通する空気を暖めることで、還流する空気の温度を上昇させる。還流する空気の温度を上昇させることで、空気が再び電動過給機22によって圧縮される際、より高い温度に圧縮される。このように、還流される空気を暖め循環させることで、より効果的(より積極的)、かつ、早期にエンジン1を暖機することができる。
また、加熱ヒータ202を排気流路20における上流側の触媒30よりも上流側に設けることで、上流側の触媒30を暖めることができる。上流側の触媒30を暖めることで、上流側の触媒30を早期に活性化することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施形態では、エンジン1が冷態状態の場合にエンジン暖機処理を実行する場合について説明したが、エンジン1が冷態状態でない場合においてもエンジン暖機処理を実行してもよい。
また、上記実施形態では、下流側吸気流路18bにインタークーラ23を迂回する第1バイパス流路28が設けられる場合について説明した。しかし、第1バイパス流路28は必須の構成ではない。
また、上記実施形態では、EGR流路33にEGRクーラ34を迂回する第2バイパス流路36が設けられる場合について説明した。しかし、第2バイパス流路36は必須の構成ではない。
また、上記実施形態では、エンジン暖機システム100、200には、第1バイパス流路28および第2バイパス流路36が設けられる場合について説明した。しかし、第1バイパス流路28および第2バイパス流路36を両方備えずともよい。少なくとも、第1バイパス流路28および第2バイパス流路36のいずれか一方が設けられていればよい。
また、上記実施形態では、エンジン暖機システム100、200には、第1圧力センサ50および第2圧力センサ52が設けられ、圧力比に基づいてEGRバルブ35の開度を制御する場合について説明した。しかし、第1圧力センサ50および第2圧力センサ52の代わりに、専用の圧力センサを用いて圧力を導出しEGRバルブ35の開度を制御してもよい。あるいは、圧力センサの代わりに、流量センサを用いて流量を導出しEGRバルブ35の開度を制御してもよい。
また、上記実施形態では、吸気制御バルブ制御部118は、エンジン暖機中、吸気制御バルブ25を一度閉鎖したら、エンジン暖機処理が終了するまで閉鎖する場合について説明した。しかし、エンジン暖機処理中、吸気制御バルブ制御部118は、吸気制御バルブ25を閉鎖した後、再び開放させてもよい。この処理を行う場合は、例えば、急激に外気の状態が変化し、エンジン1内がその影響を受けて冷却されてしまった場合などがある。そのような場合、吸気制御バルブ制御部118は、吸気制御バルブ25を再び開放させ、エンジン暖機処理を再びステップS22(図6参照)から行ってもよい。
また、上記実施形態では、吸気バルブ12および排気バルブ13をオーバーラップ状態に制御する際、吸気バルブ12および排気バルブ13がオーバーラップするクランク角でエンジン1を停止させる場合について説明した。しかし、例えば、VVT(Variable Valve Timing system:可変バルブタイミング機構)を用いて、エンジン1が停止する際または停止した後に、吸気バルブ12および排気バルブ13を動かしてオーバーラップ状態にしてもよい。その場合、エンジン暖機終了条件が成立し(ステップS38)、各バルブの制御を行う際(ステップS40)、吸排気バルブ制御部114は、吸気バルブ12および排気バルブ13をエンジン起動スイッチがオフされた時のクランク角に応じたバルブ開度に戻す制御を行う。
また、上記実施形態では、エンジン暖機実行中、エンジン暖機高圧条件が成立する(ステップS30)と、エンジン暖機高圧条件が解除されるまで排気制御バルブ32を開放するようにした。しかし、エンジン暖機高圧条件が成立した後、エンジン暖機高圧条件が解除されるまでの間にも、エンジン暖機終了条件の判定を行ってもよい。この場合、エンジン暖機終了条件が成立したと判定された際には、エンジン暖機を終了する。