JP6965631B2 - 加飾フィルム - Google Patents
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Description
さらに、驚くべきことにこのような加飾フィルムは傷を目立たなくする効果が高く、前記課題を解決しうることを見出し本発明を完成するに至った。
(i)樹脂成形体上に熱成形によって貼着するための加飾フィルムであって、該加飾フィルムは、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)からなるシール層(I)およびポリプロピレン系樹脂(B)からなる層(II)を含み、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、下記要件(a1)〜(a3)を満たし、ポリプロピレン系樹脂(B)は、下記要件(b)を満たすことを特徴とする加飾フィルム。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の要件
(a1)プロピレン単独重合体またはプロピレン−エチレンランダム共重合体からなる成分(A1)を5〜97重量%、成分(A1)よりもエチレン含量が多いプロピレン−エチレンランダム共重合体からなる成分(A2)を3〜95重量%含有する。
(a2)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(A))が、0.5g/10分を超える。
(a3)融解ピーク温度(Tm(A))が、110〜170℃である。
ポリプロピレン系樹脂(B)の要件
(b)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(B))が、前記MFR(A)に対する比(MFR(B)/MFR(A))が0.7以下である。
(ii)前記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、下記要件(a4)を満たすことを特徴とする前記(i)に記載の加飾フィルム。
(a4)プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)中のエチレン含量が0.15〜85重量%である。
(iii)前記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、下記要件(a5)を満たすことを特徴とする前記(i)または(ii)に記載の加飾フィルム。
(a5)前記成分(A1)のエチレン含量が0〜6重量%の範囲にある。
(iv)前記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、下記要件(a6)を満たすことを特徴とする前記(i)〜(iii)のいずれかに記載の加飾フィルム。
(a6)前記成分(A2)のエチレン含量が、5〜90重量%の範囲にある。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の要件
(a1)プロピレン単独重合体またはプロピレン−エチレンランダム共重合体成分からなる成分(A1)を5〜97重量%、前記成分(A1)よりもエチレン含量が多いプロピレン−エチレンランダム共重合体からなる成分(A2)を3〜95重量%含有する。
(a2)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(A))が、0.5g/10分を超える
(a3)融解ピーク温度(Tm(A))が、110〜170℃である。
ポリプロピレン系樹脂(B)の要件
(b1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(B))が、前記MFR(A)に対し以下の関係式(b−1)を満たす。
MFR(B)<MFR(A) ・・・式(b−1)
本発明の加飾フィルムは、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)からなるシール層(I)を含むものである。シール層(I)は、三次元加飾熱成形の際に、樹脂成形体(基体)と接する層である。シール層(I)を設けることにより、三次元熱成形時のフィルム加熱時間が短くても十分な接着強度が発現し、さらに基体表面についた傷を目立ちにくくすることができる。
本発明のプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、プロピレン単独重合体またはプロピレン−エチレンランダム共重合体からなる成分(A1)と、成分(A1)よりも多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体からなる成分(A2)を含有する。プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)中のゴム成分である成分(A2)により樹脂成形体(基体)との接着力が向上する。また、成分(A2)はプロピレンに対する分散形態の均一性が高く、それに伴い傷を目立ちにくくする効果が高い。プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、第1重合工程でプロピレン単独またはプロピレン−エチレンランダム共重合体からなる成分(A1)を(共)重合し、第2重合工程で成分(A1)よりも多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体からなる成分(A2)を逐次共重合して得られる。
本発明のプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)を構成する成分(A1)の割合および成分(A2)の割合の含有量比は、成分(A1)の割合が5〜97重量%、成分(A2)の割合が3〜95重量%であることが必要である。好ましくは成分(A1)の割合が30〜95重量%かつ成分(A2)の割合が5〜70重量%であり、さらに好ましくは成分(A1)の割合が52〜92重量%かつ成分(A2)の割合が8〜48重量%である。成分(A1)の割合および成分(A2)の割合が前記の範囲であると、十分な接着強度を発揮することができ、傷を目立ちにくくする効果が高い。また、前記の範囲であるとフィルムがべたつかず、フィルム成形性が良好である。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(以下、「MFR(A)」という。)は、0.5g/10分を超えることが必要であり、好ましくは1g/10分以上、より好ましくは2g/10分以上である。MFR(A)が前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時にプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の緩和が十分に進行し十分な接着強度を発揮することができると共に基体についた傷が目立ちにくくなる。MFR(A)の上限には制限はないが、100g/10分以下であることが好ましい。前記の範囲であると、物性低下による接着強度の悪化が生じることがない。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の融点(融解ピーク温度)(以下、「Tm(A)」という。)は、110〜170℃であることが必要である。好ましくは113〜169℃、より好ましくは115〜168℃である。Tm(A)が前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時の成形性が良好である。融解ピーク温度は主にエチレン含量の少ない成分(A1)、すなわち結晶性の高い成分(A1)に由来しており、共重合するエチレンの含量によって融解ピーク温度を変えることができる。
本発明のプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)中のエチレン含量(以下、「E(A)」という。)は0.15〜85重量%であることが好ましい。より好ましくは0.5〜75重量%、さらに好ましくは2〜50重量%である。E(A)が前記の範囲であると十分な接着強度を発揮することができ、また加飾フィルムの層(II)との接着性が良好でフィルム成形性にも優れる。
成分(A1)は融点が比較的高く、エチレン含量(以下、「E(A1)」という。)が0〜6重量%の範囲にあるプロピレン単独重合体またはプロピレン−エチレンランダム共重合体であることが好ましい。より好ましくは0〜5重量%である。E(A1)が前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時の成形性が良好であるとともに、フィルムのベタツキが少なくフィルム成形性にも優れる。
成分(A2)は、そのエチレン含量(以下、「E(A2)」という。)が成分(A1)のエチレン含量E(A1)よりも多い。また、E(A2)が5〜90重量%の範囲にあるプロピレン−エチレンランダム共重合体であることが好ましい。E(A2)は、より好ましくは7〜80重量%、さらに好ましくは9〜50重量%である。E(A2)が前記の範囲であると、十分な接着強度を発揮することができ、傷を目立ちにくくする効果が高い。
本発明に用いるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)とそれを構成するプロピレン単独重合体またはプロピレン−エチレンランダム共重合体からなる成分(A1)及びプロピレン−エチレンランダム共重合体からなる成分(A2)は、以下の原料、重合方法によって好ましく製造することが出来る。本発明に用いるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の製造方法について、以下に説明する。
本発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)を製造するに際し使用される触媒としては、マグネシウム、ハロゲン、チタン、電子供与体を触媒成分とするマグネシウム担持型触媒、三塩化チタンを触媒とする固体触媒成分と有機アルミニウムからなる触媒、又はメタロセン触媒が使用できる。具体的な触媒の製造法は特に限定されるものではないが、例として特開2007−254671号公報に開示されたチーグラー触媒や特開2010−105197号公報に開示されたメタロセン触媒を例示することが出来る。
前記触媒の存在下に行う重合工程は、成分(A1)を製造する第1重合工程、成分(A2)を製造する第2重合工程の多段階からなる。
第1重合工程は、プロピレン単独かプロピレン/エチレンの混合物を、前記触媒を加えた重合系に供給してプロピレン単独重合体またはプロピレン−エチレンランダム共重合体を製造して、全重合体量の5〜97重量%に相当する量となるように成分(A1)を形成させる工程である。
第2重合工程は、第1重合工程に引き続いてプロピレン/エチレン混合物をさらに導入して、プロピレン−エチレンランダム共重合体を製造して、全重合体量の3〜95重量%に相当する量となるように成分(A2)を形成させる工程である。
まず、成分(A1)と成分(A2)の重量比の制御方法について説明する。成分(A1)と成分(A2)の重量比は成分(A1)を製造する第1重合工程における製造量と成分(A2)を製造する第2重合工程における製造量によって制御する。例えば、成分(A1)の量を増やして成分(A2)の量を減らすためには、第1重合工程の製造量を維持したまま第2重合工程の製造量を減らせばよく、それは、第2重合工程の滞留時間を短くしたり、重合温度を下げたりすればよい。また、エタノールや酸素などの重合抑制剤を添加したり、元々添加している場合にはその添加量を増やしたりする事でも制御することができる。その逆も又同様である。
成分(A1)の重量:成分(A2)の重量=W(A1):W(A2)
W(A1)=第1重合工程の製造量÷(第1重合工程の製造量+第2重合工程の製造量)
W(A2)=第2重合工程の製造量÷(第1重合工程の製造量+第2重合工程の製造量)
W(A1)+W(A2)=1
(ここで、W(A1)、W(A2)はそれぞれプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)における成分(A1)と成分(A2)の重量比率である。)
E(A)=E(A1)×W(A1)+E(A2)×W(A2)
(ここで、E(A)、E(A1)、E(A2)はそれぞれ、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)、プロピレン単独重合体またはプロピレン−エチレンランダム共重合体からなる成分(A1)、プロピレン−エチレンランダム共重合体からなる成分(A2)のエチレン含有量である。)
従って、成分(A1)と成分(A2)の重量比が決まれば、すなわち、W(A1)とW(A2)が決まれば、E(A)はE(A1)とE(A2)によって一意的に定まる。つまり、成分(A1)と成分(A2)の重量比、E(A1)、E(A2)の3つの因子を制御する事によりE(A)を制御する事が出来る。例えば、E(A)を高くする為にはE(A1)を高くしてもよいし、E(A2)を高くしてもよい。また、E(A2)がE(A1)よりも高い事に留意すれば、W(A1)を小さくしてW(A2)を大きくしてもよい事も容易に理解できよう。逆方向の制御方法も同様である。
MFR(A2)=exp{(loge[MFR(A)]−W(A1)×loge[MFR(A1)])÷W(A2)}
(ここで、logeはeを底とする対数である。MFR(A)、MFR(A1)、MFR(A2)はそれぞれ、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)、プロピレン単独重合体またはプロピレン−エチレンランダム共重合体からなる成分(A1)、プロピレン−エチレンランダム共重合体からなる成分(A2)のMFRである。)
loge[MFR(A)]=W(A1)×loge[MFR(A1)]+W(A2)×loge[MFR(A2)]
を変形したものであり、当業界で日常的に使われるものである。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)を用い、この共重合体中の各エチレン含有量を測定した。すなわち、第1重合工程終了時に得られたプロピレン単独重合体またはプロピレン−エチレンランダム共重合体からなる成分(A1)および、第2重合工程を経て得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)における各々のエチレン含有量は、プロトン完全デカップリング法により以下の条件に従って測定した13C−NMRスペクトルを解析することにより求めた。
機種:日本電子(株)製 GSX−400又は同等の装置(炭素核共鳴周波数100MHz以上)
溶媒:o−ジクロロベンゼン+重ベンゼン(4:1(体積比))
濃度:100mg/mL
温度:130℃
パルス角:90°
パルス間隔:15秒
積算回数:5,000回以上
スペクトルの帰属は、例えば、Macromolecules, 17,1950 (1984)などを参考に行えばよい。上記条件により測定されたスペクトルの帰属は下表の通りである。表1中Sαα等の記号はCarmanら(Macromolecules, 10, 536 (1977))の表記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
[PPP]=k×I(Tββ) (1)
[PPE]=k×I(Tβδ) (2)
[EPE]=k×I(Tδδ) (3)
[PEP]=k×I(Sββ) (4)
[PEE]=k×I(Sβδ) (5)
[EEE]=k×{I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} (6)
ここで括弧[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。したがって、
[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1 (7)
である。また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えば、I(Tββ)はTββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。上記(1)〜(7)の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含有量が求まる。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
なお、エチレン含有量のモル%から重量%への換算は以下の式を用いて行う。
エチレン含有量(重量%)=(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100
ここで、Xはモル%表示でのエチレン含有量である。
本発明の加飾フィルムは、ポリプロピレン系樹脂(B)からなる層(II)を含むものである。ポリプロピレン系樹脂(B)は、前記のポリプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)よりも、溶融・緩和しにくい樹脂であることが好ましい。層(II)を設けることにより、熱成形時にフィルムが破断したり暴れたりすることによる外観不良の発生を抑制することが出来る。これにより、加飾フィルムが、熱成形性を改良するため、熱成形性に優れる熱硬化性樹脂層を含まなくてもよい。
本発明における加飾フィルムは、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)からなるシール層(I)およびポリプロピレン系樹脂(B)からなる層(II)を含む。加飾フィルムは、シール層(I)、層(II)の他に様々な構成を取ることが可能である。すなわち、加飾フィルムは、シール層(I)および層(II)からなる二層フィルムであっても、シール層(I)および層(II)と他の層からなる三層以上の多層フィルムであってもよい。なお、シール層(I)は、樹脂成形体(基体)に沿って貼着する。また、加飾フィルムは、その表面にシボ、エンボス、印刷、サンドプラスト、スクラッチ等が施されていてもよい。
本発明の加飾フィルムは、公知の様々な成形方法により製造することが出来る。
例えば、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)からなるシール層(I)とポリプロピレン系樹脂(B)からなる層(II)を共押出成形する方法、シール層(I)および層(II)とさらに他の層とを共押出成形する方法、あらかじめ押出成形した一方の層の片方の面の上に、他の層を熱及び圧力をかけて貼り合せる熱ラミネーション法、接着剤を介して貼り合せるドライラミネーション法及びウェットラミネーション法、あらかじめ押出成形した一方の層の片方の面の上に、ポリプロピレン系樹脂を溶融押出しする押出ラミネーション法やサンドラミネーション法などが挙げられる。加飾フィルムを形成するための装置としては、公知の共押出Tダイ成形機や、公知のラミネート成形機を用いることができる。この中で、生産性の観点から、共押出Tダイ成形機が好適に用いられる。
本発明において加飾される成形体(加飾対象)として、好ましくはポリプロピレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂組成物からなる各種成形体(以下、「基体」と言うことがある。)を用いることが出来る。成形体の成形方法は、特に制限されるものでなく、例えば射出成形、ブロー成形、プレス成形、押出成形等を挙げることができる。
より具体的に代表的な成形方法を以下に例示する。
チャンバーボックス11,12内の減圧は、空気だまりが発生しない程度であれば良く、チャンバーボックス内の圧力が10KPa以下、好ましくは3KPa、より好ましくは1KPa以下である。
(i)MFR
ISO 1133:1997 Conditions Mに準拠して、230℃、2.16kg荷重で測定した。単位はg/10分である。
示差走査熱量計(DSC)を用い、一旦200℃まで温度を上げて10分間保持した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度を融点とした。単位は℃である。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)、成分(A1)および成分(A2)ののエチレン含量は、前述した13C−NMRによるエチレン含量の測定法を用いて行った。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の製造
加飾フィルムのシール層(I)に用いるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)として、後述の製造例で得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)〜(A−4)を用いた。重合条件及び重合結果を表2に、ポリマー分析の結果を表3に示す。
触媒組成の分析
Ti含有量:試料を精確に秤量し、加水分解した上で比色法を用いて測定した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含有量を計算した。
ケイ素化合物含有量:試料を精確に秤量し、メタノールで分解した。ガスクロマトグラフィーを用いて標準サンプルと比較する事により、得られたメタノール溶液中のケイ素化合物濃度を求めた。メタノール中のケイ素化合物濃度と試料の重量から、試料に含まれるケイ素化合物の含有量を計算した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含有量を計算した。
(1)固体触媒の調製
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したトルエン2Lを導入した。ここに、室温で、マグネシウムジエトキシド[Mg(OEt)2]を200g投入し、四塩化チタン(TiCl4)を1Lゆっくりと添加した。温度を90℃に上げて、フタル酸ジ−n−ブチルを50ml導入した。その後、温度を110℃に上げて3時間反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiCl4を1L添加し、温度を110℃に上げて2時間反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiCl4を1L添加し、温度を110℃に上げて2時間反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。更に、精製したn−ヘプタンを用いて、トルエンをn−ヘプタンで置換し、固体成分のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分のTi含有量は2.7重量%であった。
上記で得られた固体触媒を用いて、以下の手順により予備重合を行った。上記のスラリーに精製したn−ヘプタンを導入して、固体触媒の濃度が20g/Lとなる様に調整した。スラリーを10℃に冷却した後、Et3Alのn−ヘプタン希釈液をEt3Alとして10g添加し、280gのプロピレンを4時間かけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に30min反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行って予備重合触媒を得た。この予備重合触媒は、固体触媒1gあたり2.5gのポリプロピレンを含んでいた。分析したところ、この予備重合触媒のポリプロピレンを除いた部分には、Tiが1.0重量%、i−Pr2Si(OMe)2が8.3重量%含まれていた。
この予備重合触媒を用いて、以下の手順に従ってプロピレン−エチレンブロック共重合
体(A)の製造を行った。
内容積2m3の流動床型重合槽が2個直列に繋がった2槽連続重合設備を用いてプロピレン−エチレンブロック共重合体の製造を行った。使用するプロピレン、エチレン、水素、窒素は一般的な精製触媒を用いて精製したものを使用した。第1重合槽における成分(A1)の製造量、及び、第2重合槽における成分(A2)の製造量は重合槽の温度制御に使用する熱交換器の冷却水温度の値から求めた。
第1重合槽を用いてプロピレンの単独重合を行った。重合温度は65℃、全圧は3.0MPaG(ゲージ圧、以下同様)、パウダーホールド量は40kgとした。重合槽に連続的にプロピレン、水素、及び、窒素を供給し、プロピレン及び水素の濃度がそれぞれ70.83mol%、0.92mol%となる様に調整した。助触媒として、Et3Alを5.0g/時間の速度で連続的に供給した。第1重合槽における成分(A1)の製造量が20.0kg/時間となる様に、上記で得られた予備重合触媒を重合槽に連続的に供給した。生成した成分(A1)は連続的に抜き出しを行い、パウダーホールド量が40kgで一定となる様に調整した。第1重合槽から抜き出した成分(A1)は第2重合槽に連続的に供給し、プロピレン−エチレンランダム共重合体からなる成分(A2)の製造を引き続いて行った。
第2重合槽を用いてプロピレンとエチレンのランダム共重合を行った。重合温度は65℃、全圧は2.0MPaG、パウダーホールド量は40kgとした。重合槽に連続的にプロピレン、エチレン、水素、及び、窒素を供給し、プロピレン、エチレン、及び、水素の濃度がそれぞれ54.29mol%、17.14mol%、0.41mol%となる様に調整した。重合抑制剤であるエタノールを連続的に供給する事によって、第2重合槽におけるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の製造量が6.7kg/hとなる様に調整した。こうして生成したプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は連続的に抜き出しを行い、パウダーホールド量が40kgで一定となる様に調整を行った。第2重合槽から抜き出したプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、更に乾燥機に移送し、充分に乾燥を行った。
計算には以下の式を使用した。
E(A2)={E(A)−E(A1)×W(A1)}÷W(A2)
(ここで、成分(A1)はプロピレン単独重合体なのでE(A1)は0重量%である。また上記の式は前述のE(A)について記載したものをE(A2)についてそれぞれ整理しなおしたものである。)
エチレン含有量E(A2)は38.0重量%であった。
表2に記載の条件を用いた他はプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)の製造例と同様にして、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)および(A−3)の製造を行った。
予備重合触媒の調製
(1)珪酸塩の化学処理
10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒径=25μm、粒度分布=10〜60μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を越えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は707gであった。
先に化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機により乾燥を実施した。仕様、乾燥条件は以下の通りである。
回転筒:円筒状 内径50mm 加温帯550mm(電気炉)
かき上げ翼付き回転数:2rpm
傾斜角:20/520
珪酸塩の供給速度:2.5g/分
ガス流速:窒素 96リットル/時間
向流乾燥温度:200℃(粉体温度)
撹拌及び温度制御装置を有する内容積16リットルのオートクレーブを窒素で充分置換した。ここに、乾燥珪酸塩200gを導入し、混合ヘプタン1,160ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で攪拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2,000mlに調製した。次に、先に調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。平行して、(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム2,180mg(0.3mM)と混合ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)33.1mlを加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間攪拌後、混合ヘプタンを追加して5,000mlに調製した。
続いて、槽内温度を40℃昇温し、温度が安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。
予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄みを2,400mlデカントした。続いてトリイソブチルアルミニウム(0.71M)のヘプタン溶液9.5ml、さらに混合ヘプタンを5600ml添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5600ml除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23mモル/リットル、ジルコニウム(Zr)濃度は8.6×10−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の存在量は0.016%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M)のヘプタン溶液を170ml添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。触媒1g当たりポリプロピレンを2.0g含む予備重合触媒が得られた。
第1重合工程:プロピレン−エチレンランダム共重合体からなる成分(A1)の製造
攪拌羽根を有する横型反応器(L/D=6、内容積100リットル)を十分に乾燥し、内部を窒素ガスで十分に置換した。ポリプロピレン粉体床の存在下、回転数30rpmで攪拌しながら、反応器の上流部に調整した予備重合触媒を(予備重合パウダーを除いた固体触媒量として)0.444g/時間、トリイソブチルアルミニウムを15.0mmol/時間で連続的に供給した。反応器の温度を65℃、圧力を2.00MPaGに保ち、且つ反応器内気相部のエチレン/プロピレンモル比が0.058、水素濃度が150ppmになるように、モノマー混合ガスを連続的に反応器内に流通させ、気相重合を行った。反応によって生じた重合体パウダーは、反応器内の粉体床量が一定になるように、反応器下流部より連続的に抜き出した。この時、定常状態になった際の重合体抜き出し量は10.0kg/時間であった。
第一工程で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合を分析したところ、エチレン含有量は1.7重量%であった。
攪拌羽根を有する横型反応器(L/D=6、内容積100リットル)に、第一工程より抜き出したプロピレン−エチレン共重合体を連続的に供給した。回転数25rpmで攪拌しながら、反応器の温度を70℃、圧力を1.88MPaGに保ち、且つ反応器内気相部のエチレン/プロピレンモル比が0.450、水素濃度が300ppmになるように、モノマー混合ガスを連続的に反応器内に流通させ、気相重合を行った。反応によって生じた重合体パウダーは、反応器内の粉体床量が一定になるように、反応器下流部より連続的に抜き出した。この時、重合体抜き出し量が18.0kg/時間になるように活性抑制剤として酸素を供給し、第二工程での重合反応量を制御した。
こうして得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−4)を分析したところ、MFRは7.0g/10分、エチレン含有量は6.3重量%であった。
製造例A−1〜A−4で得られた各々のプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)100重量部に対し、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.05重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト0.10重量部、ステアリン酸カルシウム0.05重量部をタンブラーにてそれぞれ混合し均一化し、得られた混合物を35mm径の二軸押出機により230℃で溶融混練し、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)〜(A−4)の各ペレットを得た。
加飾フィルムのシール層(I)用の樹脂として、上記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)〜(A−4)以外に、以下のポリプロピレン系樹脂を用いた。
(A−5):プロピレン単独重合体(MFR=10g/10分、Tm=161℃、エチレン含量E(A)0重量%、第1重合工程のみの重合なので成分(A2)を含まない)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)FA3KM」
(A−6):プロピレン−α−オレフィン共重合体(MFR=7g/10分、Tm=146℃、エチレン含量E(A)2.5重量%、第1重合工程のみの重合なので成分(A2)を含まない)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)FW3GT」
(B−1):プロピレン単独重合体(MFR=2.4g/10分、Tm=161℃)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)FY6」
(B−2):プロピレン単独重合体(MFR=0.4g/10分、Tm=161℃)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)EA9」
(B−3):ポリプロピレン系樹脂(B−1)96重量%に黒色顔料MB(ポリコール興業(株)製 EPP−K−120601)を4重量%ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物(MFR=2.4g/10分、Tm=161℃)
(C−1):ポリプロピレン系樹脂(A−5)100重量部に、造核剤(ミリケン・ジャパン(株)製、商標名「Millad NX8000J」)0.4重量部ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物(MFR=10g/10分、Tm=164℃)
(C−2):メタロセン系触媒によるプロピレン−α−オレフィン共重合体(MFR=7g/10分、Tm=125℃、Mw/Mn=2.5)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ウィンテック(登録商標)WFX4M」
(C−3):ポリプロピレン系樹脂(C−2)100重量部に、造核剤(ミリケン・ジャパン(株)製、商標名「Millad NX8000J」)0.4重量部ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物(MFR=7g/10分、Tm=127℃)
(C−4):ポリプロピレン系樹脂(A−5)96重量%にMFR=11g/10分の白色顔料MB(ポリコール興業(株)製 EPP−W−59578、酸化チタン含有量80重量%)を4重量%ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物(MFR=10g/10分、Tm=161℃)
(C−5):ポリプロピレン系樹脂(A−5)96重量%に銀色顔料MB(トーヨーカラー(株)製 PPCM913Y−42 SILVER21X)を4重量%ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物(MFR=10g/10分、Tm=161℃)
(X−1):プロピレン単独重合体(MFR=40g/10分、Tm=165℃)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)MA04H」
(X−2):プロピレン−エチレンブロック共重合体(MFR=30g/10分、Tm=164℃)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)NBC03HR」
(X−3):ポリプロピレン系樹脂(X−2)60重量%に、MFR=1.0のEBR(三井化学(株)製 タフマー(登録商標)A0550S)を20重量%、無機フィラー(日本タルク(株)製 タルクP−6、平均粒径4.0μm)20重量%ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物
ポリプロピレン系樹脂(X−1)〜(X−3)を用い、以下の方法で射出成形体を得た。また得られた射出成形体に以下の方法により、引掻き傷を付け樹脂成形体(基体)とした。
射出成形機:東芝機械株式会社製「IS100GN」、型締め圧100トン
シリンダー温度:200℃
金型温度:40℃
射出金型:幅×高さ×厚さ=120mm×120mm×3mmの平板
状態調整:温度23℃、湿度50%RHの恒温恒湿室にて5日間保持
傷評価用加工:温度23℃、湿度50%RHの恒温恒湿室で引掻試験器(ROCKWOOD SYSTEMS AND EQUIPMENT社製「SCRATCH&MAR TESTER」)を用い、25Nの荷重にて、形状(曲率半径0.5mm、ボール状)加工を施した引掻先端にて、引掻速度=100mm/分にて引掻き、上記射出成形体に引掻き傷を付けた。
・加飾フィルムの製造
口径30mm(直径)のシール層用押出機−1及び口径40mm(直径)の押出機−2が接続された、リップ開度0.8mm、ダイス幅400mmの2種2層Tダイを用いた。シール層用押出機−1にプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)を、押出機−2にポリプロピレン系樹脂(B−1)をそれぞれ投入し、樹脂温度240℃、シール層用押出機−1の吐出量を4kg/h、押出機−2の吐出量を12kg/hの条件で溶融押出を行った。溶融押出されたフィルムを、シール層が外側になるように80℃の3m/minで回転する第1ロールにエアナイフで押付けながら冷却固化させ、厚さ50μmのシール層と、厚さ150μmの層が積層された2層の未延伸フィルムを得た。
樹脂成形体(基体)5として、上記により得られたポリプロピレン系樹脂(X−1)からなる射出成形体を用いた。
三次元加飾熱成形装置として、布施真空株式会社製「NGF−0406−SW」を用いた。図2〜7に示すように、加飾フィルム1を、シール層が基体に対向するとともに長手方向がフィルムのMD方向となるように、幅250mm×長さ350mmで切り出し、開口部のサイズが210mm×300mmのフィルム固定用治具13にセットした。樹脂成形体(基体)5は、フィルム固定用治具13よりも下方に位置するテーブル14上に設置された、高さ20mmのサンプル設置台の上に、ニチバン株式会社製「ナイスタック NW−K15」を介して貼り付けた。フィルム固定治具13とテーブル14をチャンバーボックス11,12内に設置し、チャンバーボックスを閉じてチャンバーボックス11,12内を密閉状態とした。チャンバーボックスは、加飾フィルム1を介して上下に分割されている。上下ボックスを真空吸引し、大気圧(101.3kPa)から1.0kPaまで減圧した状態で、上チャンバーボックス11上に設置された遠赤外線ヒータ15を出力80%で始動させて加飾フィルム1を加熱した。加熱中も真空吸引を継続し、最終的に0.1kPaまで減圧した。加飾フィルム1、が加熱され一時的にたるみ、その後、張り戻るスプリングバック現象が終了した直後(すなわちスプリングバック現象後の加熱時間が0秒)で、下チャンバーボックス12内に設置されたテーブル14を上方に移動させて、樹脂成形体(基体)5を加飾フィルム1に押し付け、直後に上チャンバーボックス11内の圧力が270kPaとなるように圧縮空気を送り込んで樹脂成形体(基体)5と加飾フィルム1を密着させた。このようにして、樹脂成形体(基体)5の上面及び側面に加飾フィルム1が貼着された三次元加飾熱成形品6を得た。
(1)熱成形性の評価
三次元加飾熱成形時の加飾フィルムのドローダウン状態、ならびに基体に加飾フィルムを貼着した加飾成形体の加飾フィルムの貼着状態を目視にて観察し、以下に示した基準で評価した。
○:三次元加飾熱成形時に、加飾フィルムがドローダウンせずに基体と加飾フィルムとの接触が接触面全面にて同時に行われたため、接触ムラが発生せず、均一に貼着されている。
×:三次元加飾熱成形時に、加飾フィルムが大きくドローダウンしたため、基体全面に接触ムラが発生。
株式会社ニトムズ社製「クラフト粘着テープ No.712N」を幅75mm、長さ120mmに切り出し、樹脂成形体(基体)の端部より75mm×120mmの範囲で樹脂成形体(基体)に貼り付けてマスキング処理を施した(基体表面露出部は幅45mm、長さ120mm)。樹脂成形体(基体)のマスキング面が加飾フィルムと接触するように三次元加飾熱成形装置NGF−0406−SWに設置し、三次元加飾熱成形を行った。
25Nの荷重で傷をつけた成形体(基体)の三次元加飾熱成形品の引掻き傷があった部位の傷の深さを形状測定レーザマイクロスコープ(KEYENCE社製 「VX−X200」)で測定した。測定の回数はn=5とし、その平均値を傷深さ(μm)とした。
また、白化外観として、25Nの荷重で傷をつけた成形体(基体)の白化傷が、加飾フィルムによって目立たなくなっているかを以下の基準で目視にて判定し、評価した。
○:白化傷の痕跡が目立たず、外観に優れている。
×:白化傷が全体的に残り、外観が悪い。
加飾フィルムが貼着された加飾成形体の中央付近の光沢(グロス)を日本電色工業(株)製GLOSS計Gloss Meter VG2000を用いて、入射角60°で測定した。測定方法はJIS K7105−1981に準拠した。
得られた加飾成形体を粉砕し、樹脂成形体(基体)の製造と同様に射出成形によりリサイクル成形体を得、外観を目視で評価した。外観に優れるものを「○」とした。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)およびポリプロピレン樹脂(B)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるものであった。
実施例1の加飾フィルムの製造において、シール層に用いたプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)をプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表4に示す。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)およびポリプロピレン樹脂(B)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるものであった。
実施例1の加飾フィルムの製造において、シール層に用いたプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)をプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表4に示す。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)およびポリプロピレン樹脂(B)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるものであった。
実施例1の加飾フィルムの製造において、シール層に用いたプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)をプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−4)に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表4に示す。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)およびポリプロピレン樹脂(B)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるものであった。
実施例1の加飾フィルムの製造において、層(II)に用いたポリプロピレン系樹脂(B−1)をポリプロピレン系樹脂(B−2)に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表4に示す。
ポリプロピレン樹脂(A)およびポリプロピレン樹脂(B)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるものであった。
実施例1の加飾フィルムの製造において、シール層に用いたプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)をプロピレン単独重合体(A−5)に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表4に示す。
シール層に用いたプロピレン単独重合体(A−5)は成分(A2)が含まれていないため、接着力が小さく、また傷の浮き出しを十分に抑制することが出来ず、外観に劣るものであった。
実施例1の加飾フィルムの製造において、シール層に用いたプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)をプロピレン−エチレンランダム共重合体(A−6)に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表4に示す。
シール層に用いたプロピレン−エチレンランダム共重合体(A−6)は成分(A2)が含まれていないため、接着力が小さく、また傷の浮き出しを十分に抑制することが出来ず、外観に劣るものであった。
実施例1の加飾フィルムの製造において、シール層に用いたプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)をプロピレン−エチレンランダム共重合体(A−5)に変更し、さらに三次元加飾熱成形において、スプリングバック現象が終了してから20秒間加熱を続け、その後に加飾熱成形を行ったこと以外は、実施例4と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
フィルム加熱時間を長くすることで接着力は向上するが、フィルムのドローダウンが激しく、加飾成形体の外観が劣るものであり、傷の評価は行わなかった。
実施例1の三次元加飾熱成形において、基体を樹脂(X−2)を用いた射出成形体に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表5に示す。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)およびポリプロピレン樹脂(B)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるものであった。
実施例1の三次元加飾熱成形において、基体を樹脂(X−3)を用いた射出成形体に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。得られた結果を表5に示す。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)およびポリプロピレン樹脂(B)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるものであった。
実施例1の加飾フィルムの製造において、口径30mm(直径)のシール層用押出機−1、及び口径40mm(直径)の押出機−2、及び口径30mm(直径)の表面層用押出機−3が接続された、リップ開度0.8mm、ダイス幅400mmの3種3層Tダイを用いた。シール層用押出機−1にポリプロピレン系樹脂(A−1)を、押出機−2にポリプロピレン系樹脂(B−1)を、表面層用押出機−3にポリプロピレン系樹脂(A−5)をそれぞれ投入し、樹脂温度240℃、シール層用押出機−1の吐出量を4kg/h、押出機−2の吐出量を8kg/h、表面層用押出機−3の吐出量を4kg/hの条件で溶融押出を行った。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)およびポリプロピレン樹脂(B)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、ポリプロピレン系樹脂(A−5)が表面加飾層(III)として、最表面側に積層されたことで、光沢に優れる結果であった。また、リサイクル成形体は外観に優れるものであった。
実施例8の加飾フィルムの製造において、表面加飾層に用いたポリプロピレン系樹脂(A−5)をポリプロピレン系樹脂(C−1)に変更した以外は、実施例8と同様に評価を行った。得られた結果を表5に示す。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)およびポリプロピレン樹脂(B)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、造核剤が添加されたポリプロピレン系樹脂(C−1)が表面加飾層(III)として最表面側に積層されたことで、光沢に優れる結果であった。また、リサイクル成形体は外観に優れるものであった。
実施例8の加飾フィルムの製造において、表面加飾層に用いたポリプロピレン系樹脂(A−5)をポリプロピレン系樹脂(C−2)に変更した以外は、実施例8と同様に評価を行った。得られた結果を表5に示す。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)およびポリプロピレン樹脂(B)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、ポリプロピレン系樹脂(C−2)が表面加飾層(III)として最表面側に積層されたことで、光沢に優れる結果であった。また、リサイクル成形体は外観に優れるものであった。
実施例8の加飾フィルムの製造において、表面加飾層に用いたポリプロピレン系樹脂(A−5)をポリプロピレン系樹脂(C−3)に変更した以外は、実施例8と同様に評価を行った。得られた結果を表5に示す。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)およびポリプロピレン樹脂(B)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、造核剤が添加されたポリプロピレン系樹脂(C−3)が表面加飾層(III)として最表面側に積層されたことで、光沢に優れる結果であった。また、リサイクル成形体は外観に優れるものであった。
実施例8の加飾フィルムの製造において、表面加飾層に用いたポリプロピレン系樹脂(A−5)をポリプロピレン系樹脂(C−4)に変更した以外は、実施例8と同様に評価を行った。得られた結果を表5に示す。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)およびポリプロピレン樹脂(B)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、白色に着色された加飾フィルムが貼着されことも相俟って、傷つけた箇所を特定できないほど十分に傷が隠蔽された。そのため、傷深さを測定しなかった。また、光沢に優れる表面加飾層(III)が白色に着色されているため、外観に優れるものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるものであった。
実施例8の加飾フィルムの製造において、層(II)に用いたポリプロピレン系樹脂(B−1)をポリプロピレン系樹脂(B−3)に変更した以外は、実施例8と同様に評価を行った。得られた結果を表5に示す。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)およびポリプロピレン樹脂(B)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、黒色に着色された加飾フィルムが貼着されことも相俟って、傷つけた箇所を特定できないほど十分に傷が隠蔽された。そのため、傷深さを測定しなかった。また、層(II)が黒色に着色されているため、外観に優れるものであった。さらに、ポリプロピレン系樹脂(A−5)が表面加飾層(III)として最表面側に積層されているため、光沢に優れる結果であった。また、リサイクル成形体は外観に優れるものであった。
実施例13の加飾フィルムの製造において、表面加飾層に用いたポリプロピレン系樹脂(A−5)をポリプロピレン系樹脂(C−5)に変更した以外は、実施例13と同様に評価を行った。得られた結果を表5に示す。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)およびポリプロピレン樹脂(B)が本発明の要件を全て満足しているため、得られた加飾成形体は外観および接着力に優れ、傷が目立たなくなっているものであった。また、着色された加飾フィルムが貼着されことも相俟って、傷つけた箇所を特定できないほど十分に傷が隠蔽された。そのため、傷深さを測定しなかった。また、ポリプロピレン系樹脂(C−5)が表面加飾層(III)として最表面側に積層されているため、光沢に優れる結果であった。さらに、層(II)が黒色に、表面層加飾層(III)が銀色に着色されているため、金属調のフィルムとなり、外観に優れるものであった。また、リサイクル成形体は外観に優れるものであった。
・加飾フィルムの製造
実施例14の加飾フィルムの製造において、シール層用押出機−1の吐出量を4kg/h、押出機−2の吐出量を12kg/h、表面層用押出機−3の吐出量を4kg/hの条件で溶融押出を行い、得られた3層の未延伸フィルムを幅200mmにスリットすることで、厚さ50μmの表面加飾層と、厚さ150μmの層と、厚さ50μmのシール層が積層された3層の未延伸フィルムを得た。
エンボス成形装置として、由利ロール(株)製、電気加熱式テストエンボス機を用いた。電気加熱式テストエンボス機は、上段に設置された加熱可能な凹凸形状を施したロール(エンボスロール)と、下段に設置された平滑なロールとでフィルムを加熱圧接することで、上段の凹凸形状をフィルム表面に転写する機構を有する。エンボスロールは、深さ0.030mmのヘアライン柄を用いた。
加飾フィルムの製造により得られた3層の未延伸フィルムを、表面加飾層がエンボスロールと接するように、エンボス機の2本ロールに繰り出した。エンボスロール温度145℃、接圧力3MPa、ロール速度3m/minの条件でエンボス転写を行うことで、表面加飾層表面にヘアライン柄が転写された加飾フィルムを得た。
実施例1と同様の方法で三次元加飾熱成形品を得た。
(1)エンボス転写の評価
得られた加飾フィルムの表面加飾層に施されたヘアライン柄部位の深さを形状測定レーザマイクロスコープ(KEYENCE社製 「VX−X200」)で測定した。測定の回数はn=5とし、その平均値をエンボス深さ(μm)とした。
三次元加飾熱成形後のエンボス模様の残りかたを目視にて観察し、以下に示した基準で評価した。
○:三次元加飾熱成形後の三次元加飾熱成形品表面にエンボス模様が残っており、意匠性に優れている。
×:三次元加飾熱成形後の三次元加飾熱成形品表面の大部分でエンボス模様が消失しており、意匠性に劣る。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)およびポリプロピレン樹脂(B)が本発明の要件を全て満足しているため、エンボスフィルムの製造により得られたフィルムのエンボス深さは24μmと優れていた。また三次元加飾熱成形後の三次元加飾熱成形品表面においても、ヘアライン柄が強く残っており、意匠性に優れるものであった。
2 層(II)
3 シール層(I)
5 樹脂成形体(加飾対象、基体)
6 加飾成形体
11 上チャンバーボックス
12 下チャンバーボックス
13 治具
14 テーブル
15 ヒータ
Claims (4)
- 樹脂成形体上に熱成形によって貼着するための加飾フィルムであって、該加飾フィルムは、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)からなるシール層(I)およびポリプロピレン系樹脂(B)からなる層(II)を含み、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、下記要件(a1)〜(a3)を満たし、ポリプロピレン系樹脂(B)は、下記要件(b)を満たすことを特徴とする加飾フィルム。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の要件
(a1)プロピレン単独重合体またはプロピレン−エチレンランダム共重合体からなる成分(A1)を5〜97重量%、前記成分(A1)よりもエチレン含量が多いプロピレン−エチレンランダム共重合体からなる成分(A2)を3〜95重量%含有する。
(a2)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(A))が、0.5g/10分を超える。
(a3)融解ピーク温度(Tm(A))が、110〜170℃である。
ポリプロピレン系樹脂(B)の要件
(b)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(B))が、前記MFR(A)に対する比(MFR(B)/MFR(A))が0.7以下である。 - 前記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、下記要件(a4)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の加飾フィルム。
(a4)プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)中のエチレン含量が0.15〜85重量%である。 - 前記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、下記要件(a5)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の加飾フィルム。
(a5)前記成分(A1)のエチレン含量が0〜6重量%の範囲にある。 - 前記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、下記要件(a6)を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の加飾フィルム。
(a6)前記成分(A2)のエチレン含量が、5〜90重量%の範囲にある。
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