JP6964919B2 - 耐火シェルター - Google Patents

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Description

本発明は、水を利用することで地下避難空間の内部温度の上昇を抑制する耐火シェルターに関する。
関東大震災や阪神・淡路大震災では、地震に起因する火災、いわゆる地震火災が同時多発的に発生し甚大な被害をもたらした。地震火災は、本震直後から出火し、その件数は建物倒壊数に比例して増大するとされる。また、消防力の分散、建築倒壊や道路損壊による交通障害の発生、消火栓や水道管の破損による水利不足、交通渋滞などの要因が複合して消火活動が阻害されることから、延焼範囲は拡大し、鎮火するまでの時間は長引くことになる。東日本大震災では、過去最大級の津波・津波火災が発生したことによって、多くの尊い人命が失われた。
今後発生が予想される大都市直下地震では、すでに都市の近代化が進み十分な対策が取られていることから、関東大震災や阪神・淡路大震災のように甚大な被害をもたらさないとも考えられる。しかし、大都市においても、現時点で木造住宅密集地は多数存在し、しかも関東大震災当時と比べ過密な状態となっている。
木造住宅密集地域で発生する地震火災は延焼速度が早く、かつ同時多発的に巨大な火炎が迫ってくる危険があるため、逃げ遅れないために早期に避難することが重要である。しかし、安全な場所に避難しようとしても、道路は避難する人々で前に進めない事態が想定される。仮に、前に進めたとしても倒壊した家屋によって道路が塞がれ、さらに橋梁の倒壊等により避難路が確保できない事態も予想される。
このような状況に鑑みると、耐火シェルターは、火災が発生したとき、短時間で、かつ容易に避難できるとともに、長時間続く火災に対して、シェルターの内部温度の上昇が抑制される手立てが必要となる。
特許文献1では、災害等において一時的に避難するために、建造物の防災目的で設置される断熱層を有する構造体を、長時間の火災に耐えられるように、安価なコストでその内部温度の上昇を抑制するための耐火構造が開示されている。具体的には、建造物に設置され、天井壁と側壁と床壁よりなる防災シェルターであって、内部温度の上昇を抑制するために、天井壁の上に水槽を設け、火災発生等の周囲温度が上昇したときに水槽内の水を利用してシェルターに流して内部の温度上昇を未然に防止するものである。
しかし、特許文献1で開示されるシェルターは、建造物内に設置されているので、火災で建造物が倒壊した場合、倒壊した建造物が火炎源となりシェルターは、長時間にわたり火炎熱にさらされる。また、水をシェルターに流した直後は、シェルターの内部の温度を抑制できるが、その後、継続して長時間にわたって抑制することはできない。
特開2011−84883号公報
本発明の課題は、長時間続く火災に対して、シェルターの内部温度の上昇を抑制できる耐火シェルターを提供することである。
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、耐火シェルターであって、底板と、地下扉が取り付けられた側壁と、天井とを有して、地下避難空間が画定されたシェルター本体と、昇降手段を有して、地下扉に接続する貯水可能な断熱空間が画定された断熱筐体と、断熱空間に給水するための給水装置を備え、給水装置は、貯水するための水タンクと、水タンクに貯水された水を、断熱空間に給水するための給水管を有し、水タンクの貯水容量は、地下避難空間の上面の高さより高い位置まで給水できる水量であることを特徴とする。
この構成によれば、火災が発生した場合、給水装置により断熱空間に給水することで、断熱空間の一部または全部を、熱容量の大きな水で満たすことができる。これにより、断熱筐体の温度上昇を抑制し、地下避難空間の温度上昇を抑制できる。給水装置は、貯水するための水タンクと、水タンクに貯水された水を、断熱空間に給水するための給水管を有するので、水道の断水による影響を受けることなく安定して給水できる。水タンクの貯水容量は、地下避難空間の上面の高さより高い位置まで熱容量の高い水を給水できるので、火災が発生したとき、水タンクからの給水により地下避難空間の上面の位置まで、断熱筐体を水面下とすることができる。これにより、地下避難空間の温度上昇をさらに抑制できる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の耐火シェルターにおいて、水タンクは、天井に接続する天井水タンクを有することを特徴とする。
この構成によれば、水タンクは、天井に接続する天井水タンクを有するので、火災が発生した場合、熱容量の大きい水によって、天井の温度上昇を抑制できる。
上記課題を解決するために、請求項3に係る発明は、底板と、地下扉が取り付けられた側壁と、天井とを有して、地下避難空間が画定されたシェルター本体と、昇降手段を有して、地下扉に接続する貯水可能な断熱空間が画定された断熱筐体と、断熱空間に給水するための給水装置を備え、給水装置は、貯水するための水タンクと、水タンクに貯水された水を、断熱空間に給水するための給水管を有し、水タンクは、天井に接続する天井水タンクを有することを特徴とする。
この構成によれば、火災が発生した場合、給水装置により断熱空間に給水することで、断熱空間の一部または全部を、熱容量の大きな水で満たすことができる。これにより、断熱筐体の温度上昇を抑制し、地下避難空間の温度上昇を抑制できる。給水装置は、貯水するための水タンクと、水タンクに貯水された水を、断熱空間に給水するための給水管を有するので、水道の断水による影響を受けることなく安定して給水できる。水タンクは、天井に接続する天井水タンクを有するので、火災が発生した場合、熱容量の大きい水によって、天井の温度上昇を抑制できる。
請求項に係る発明は、請求項2または3に記載の耐火シェルターにおいて、地下避難空間の上面の高さより高い位置まで給水したとき、天井水タンクは、所定の水位を確保していることを特徴とする。
この構成によれば、地下避難空間の上面の高さより高い位置まで給水したとしても、天井水タンクは、所定の水位を確保しているので、火炎熱に起因する天井の温度上昇を抑制できる。
請求項に係る発明は、請求項1からのいずれか1項に記載の耐火シェルターにおいて、断熱空間に貯水された水を、外部に排出するための排水装置を備えることを特徴とする。
断熱空間に水が貯水された状態では、水圧の影響を受けて地下扉の開放が困難となり、仮に開放できたとしても避難空間内に水が浸入する。しかし、この構成によれば、断熱空間に貯水された水を、外部に排出するための排水装置を備えるので、排水装置で断熱空間に貯水された水を排水できる。これにより、地下扉の開放が容易となるとともに、避難空間内への浸水を防止できる。
請求項に係る発明は、請求項1からのいずれか1項に記載の耐火シェルターにおいて、厚さ0.8〜1.2mの天井断熱部材が、天井と、避難空間との間に設けられることを特徴とする。
この構成によれば、火炎熱の影響で温度上昇が生じやすい天井に、通常の断熱材と比較して厚さの厚い0.8〜1.2mの天井断熱部材がシェルター本体の内部に設けられているので、地下避難空間内の温度上昇を抑制できる。
請求項に係る発明は、請求項1からのいずれか1項に記載の耐火シェルターにおいて、厚さ0.8〜1.2mの側面断熱部材が、前記断熱空間に接する前記側壁と、前記避難空間との間に設けられることを特徴とする。
この構成によれば、火炎熱の影響で温度上昇が生じやすい断熱空間に接するシェルター本体の内部に、厚さ0.8〜1.2mの側面断熱部材が設けられるので、地下避難空間内の温度上昇を抑制できる。
請求項に係る発明は、請求項1からのいずれか1項に記載の耐火シェルターにおいて、底板、側壁、天井、および地下扉は、厚さが0.3〜0.5mのコンクリート製であることを特徴とする。
この構成によれば、地下避難空間は、所定の放射線遮蔽性能を具備する厚さ0.3〜0.5mのコンクリート製のシェルター本体内に設けられているので、耐火シェルターは核シェルターとして利用できる。
本実施形態の耐火シェルターの断面斜視図である。 (a)は、平時において、水タンクに貯水される水の貯水状態を示す側面断面図であり、(b)は、火災時において、水タンクに貯水された水が断熱空間に供給された状態を示す側面断面図である。 (a)は、同平面図であり、(b)は、同平面断面図である。 本実施形態の地下扉の閉鎖手順を説明する図である。
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示す通り、耐火シェルター1は、シェルター本体10(以下、本体10という。)、給水装置20、断熱筐体30、および排水装置50を備えている。
図2(a)、(b)に示す通り、本体10は、厚さが30cmのコンクリート製の底板12、側壁13、天井14、および地下扉11を有する筐体である。また、本体10の内部に、床17、側面断熱部材15、および天井断熱部材16が設けられており、側壁13、床17、側面断熱部材15、および天井断熱部材16が協働して地下避難空間110(以下避難空間110という。)を画定する。
コンクリート製とは、コンクリートを主材料とする構造体のことであり、具体的には無筋コンクリート構造、鉄筋コンクリート構造、鋼板とコンクリートの複合構造等をいう。コンクリートは、放射線遮蔽性能が高い材料であり、本実施形態では、想定される荷重に耐えられる厚さ以上の厚さ(例えば、30cm)としている。これにより、所定の放射線遮蔽性能を具備する。本体10の厚さは、0.3〜0.5mであることが好ましい。また、コンクリート材料として、普通コンクリート、または重量コンクリートとすることが好ましい。重量コンクリートを用いる場合は、普通コンクリートを用いる場合に比べ、高い放射線遮蔽性能を具備できる。
避難空間110とは、一部または全部が地下200に位置している、本体10の内部に設けられた空間をいう。好ましくは、避難空間110の全部が地下200に位置することである。より好ましくは、本体10の全部が地下200に位置することである。これにより、火炎熱の影響を低減し、避難空間110の温度上昇を抑制できる。
側壁13は、図3(b)に示す通り、一部または全部が地下200に当接する平面視コ字型の地中側壁13b、および地中側壁13bのそれぞれの端部に接続して、断熱空間120に接する断熱側壁13aを有する。断熱側壁13aには地下扉11が取り付けられて、断熱空間120と避難空間110を往来するための開口部13cが設けられている。
地下扉11は、図3(b)に示す通り、断熱側壁13aに設けられる外開きの扉であり、平時は解放し、避難空間110に避難するときに閉鎖する。これにより重い扉を解放することなく、避難空間110内に避難できる。図2(a)に示す通り、地下扉11には、開口部13cの外周部に対向する面に、パッキン11bが環状に設けられている。これにより、水密性が確保できるので、断熱空間120に水W2が貯水されたときでも、避難空間110への水W2の侵入を防止できる。また、地下扉11の避難空間110側の中央部に、地下扉11を閉鎖するために用いるウインチ11aが配設されている。ウインチ11aの端部にはフック11cが取りつけられている。
図4(a)、(b)に示す通り、断熱開口部15c近傍に、フック11cが着装可能なアンカー装置60が設けられている。アンカー装置60は、避難空間110側に突設する突設部材60a、60b、および着装棒61を有している。突設部材60a、60bは、断熱開口部15cを跨ぐ状態で対向して配置されている。着装棒61の一方の端部は、突設部材60aに回動可能に固定されて、他方の端部は突設部材60bに着脱可能である。
地下扉11の閉鎖手順について説明する。
平時においては、図4(a)に示す通り、地下扉11は解放状態となっており、着装棒61は下方に垂れ下がった状態で、突設部材60aに支持されている。火災が発生したとき、図4(b)に示す通り、フック11cを手に持って避難空間110に避難し、着装棒61を回動して、突設部材60bに固定する。これにより、着装棒61は、断熱開口部15cを水平に横断する状態で、突設部材60a、60bを介して断熱側壁13aに固定される。フック11cを着装棒61に着装し、ウインチ11aを巻き上げることで地下扉11を閉鎖できる。
地下扉11は、一部または全部が地下200に位置している。好ましくは、地下扉11の全部が地下200に位置することである。これにより、火炎熱の影響を低減し、避難空間110の温度上昇を抑制できる。
開口部13cの下端とほぼ同一の高さに、床17が設けられている。これにより、底板12と床17の間に収納スペース100aが確保される。収納スペース100aに避難時に必要となる用具、例えば救急用品、簡易ベッド等をあらかじめ備えておくことで、安心して、また快適に避難できる。また、開口部13cおよび断熱開口部15cと床17の段差がなくなることで、足の不自由な方でも車椅子を利用して容易に避難空間110に避難できるようになる。
上端が天井14に当接し、外周は、断熱側壁13aおよび地中側壁13bに当接した状態で、厚さ1.0mの天井断熱部材16が、本体10の内部に配設されている。天井断熱部材16の厚さは、0.8m〜1.2mであることが好ましい。通常の厚さよりも厚い断熱材を設けることで、火炎熱の影響による避難空間110の温度上昇を抑制できる。
天井断熱部材16の素材として、グラスウール、セルローズファイバー、羊毛断熱材、もしくはロックウール等の繊維系の断熱素材、または硬質ウレタンフォーム、ビーズ法ポリスチレンフォーム、もしくはフェノールフォーム等の発泡プラスチック系の断熱素材であることが好ましい。より好ましくは軽量で透湿への抵抗力に優れる発泡プラスチック系の断熱素材である。これにより、軽量化できるとともに、湿度の高い本体10の内部に長時間置いた状態であっても、吸湿による重量の増加・形状の変化が生じない。また、天井14に当接する軽量気泡コンクリート製の断熱部材を第1層として、2層構造としてもよい。これにより、火炎熱により天井14が高温となった場合でも、第2層の断熱部材の熱による変形を回避できる。
断熱側壁13aに当接した状態で、厚さ1.0mの側面断熱部材15が、本体10の内部に配設されている。側面断熱部材15は、壁断熱部材15a、および開口断熱部材15bを有している。壁断熱部材15a、および開口断熱部材15bは、それぞれ、外側から内側に向かって拡径する傾斜した当接面を、上面部と側面部に有する。側面断熱部材15の厚さは、0.8m〜1.2mであることが好ましい。通常の厚さよりも厚い断熱材を設けることで、火炎熱の影響による避難空間110の温度上昇を抑制できる。
壁断熱部材15aは、開口部13cに対応する領域に断熱開口部15cが画定されており、断熱側壁13a、地中側壁13b、および底板12に当接した状態で、本体10の内部に配設されている。これにより火炎熱の影響で断熱空間120の内部温度が上昇した場合でも、避難空間110の温度上昇を抑制できる。
開口断熱部材15bは、断熱開口部15cに挿入するために設けられているものである。開口断熱部材15b、断熱開口部15cは互いに形状が適合し、ともに、避難空間110に向かって外側から内側に向かう末広がりの形状となっている。これにより、開口断熱部材15bの断熱開口部15cへの挿入が容易となる。また、開口断熱部材15bは、手で挟持するための取手15dが取り付けられている。
側面断熱部材15の素材として、グラスウール、セルローズファイバー、羊毛断熱材、もしくはロックウール等の繊維系の断熱素材、または硬質ウレタンフォーム、ビーズ法ポリスチレンフォーム、もしくはフェノールフォーム等の発泡プラスチック系の断熱素材であることが好ましい。より好ましくは軽量で透湿への抵抗力に優れる発泡プラスチック系の断熱素材である。これにより、軽量化できるとともに、湿度の高い本体10の内部に長時間置いた状態であっても、吸湿による重量の増加・形状の変化が生じない。
給水装置20は、図1に示す通り、天井水タンク21、および立設される給水管41を有している。天井水タンク21は、上方に開放した凹部に水W1が貯水されている。水W1は、断熱空間120に供給するためのものである。図3(a)に示す通り、天井水タンク21は、タンク壁23を有している。
タンク壁23は、天井14、および水平屋根34bで構成される平面視L字型のタンク底面22の端部から、垂直に延びており、端部は斜屋根34aに接続している。タンク壁23は、コンクリート製であり、地震力、水圧等想定される外力に耐えられる構造厚さとすることが好ましい。すなわち、所定の放射線遮蔽性能を具備する厚さであることを要さない。
図2(b)に示す通り、天井水タンク21の貯水容量は、断熱空間120に水W2を避難空間110の上端の高さまで供給できる水量に、火炎熱の影響で蒸発する水量を加算した水量であることが好ましい。すなわち、断熱空間120に水W2を供給した後の天井水タンク21の水位は、火炎熱の影響で蒸発してもなお天井水タンク21に水W1が残存する水位とすることが好ましい。以下、その理由を説明する。
火炎熱の影響で、外部空間150が100℃を大幅に超える温度となったとき、天井水タンク21に貯水された水W1は沸騰し、蒸発する。この時の水W1の潜熱効果で、天井14の温度は100℃を超えることはない。その結果、避難空間110の温度は抑制される。
図1に示す通り、給水管41は、避難空間110からの遠隔操作で解放・閉鎖できる弁(図示略)を有しており、一方の端部は天井水タンク21に接続し、断熱側壁13aの断熱空間120側の面に沿って下方に延びて、他方の端部は、筐体デッキ31cの上方に位置している。これにより、避難空間110からの遠隔操作で、天井水タンク21に貯水されている水W1を断熱空間120に給水できる。
また、給水管41は、避難空間110内を経由して配設し、手動または自動式の弁を避難空間110内に設けてもよい。
断熱筐体30は、階段31(昇降手段)、筐体側壁33、および屋根34を有し、これらが協働して貯水可能な断熱空間120を画定する。断熱空間120は、地下扉11に接続する構造である。断熱側壁13a、および地下扉11は、断熱空間120を介して外部空間150に接続しているので、地中側壁13bに比較して、火炎熱の影響を受けやすくなっている。断熱筐体30は、断熱側壁13a、および地下扉11の火炎熱の影響による温度上昇を抑制するためのものである。
階段31の上端部は、平面視矩形の踊り場31aが、また下端部は、本体10の底板12から水平に延びた平面視矩形の階段底板31bが設けられ、階段底板31bの上方に筐体デッキ31cが配設されている。踊り場31aと階段底板31bは、ステップ31dを有する斜路35を介して接続されている。筐体デッキ31cは、床17との段差を可能な限り小さくするために設けられたものである。これにより、足の不自由な方々の出入りが容易になる。階段底板31bと筐体デッキ31cとの間に、給水スペース130が設けられている。
筐体側壁33は、階段31の外端部から上方に向かって垂直に延びており、一部が外部空間150に突設している。外部空間150に突設した筐体側壁33に鋼製の外扉36が設けられている。
屋根34は、筐体側壁33の上端に接続しており、断熱側壁13aに接続する天井14の端部から水平に延びる水平屋根34b、および斜屋根34aを有する。水平屋根34bは、天井14と協働して天井水タンク21のタンク底面22を構成する。斜屋根34aは、水平屋根34bの一端部から斜め上方に延び、水平に屈曲して延びて外扉36が設けられた筐体側壁33に接続している。斜屋根34aと階段31の垂直距離は、避難する方々が不自由なく往来できる高さとすることが好ましい。
断熱筐体30はコンクリート製であり、地震力、水圧等想定される外力に耐えられる構造厚さとすることが好ましい。すなわち、所定の放射線遮蔽性能を具備する厚さであることを要さない。
排水装置50は、排水ポンプ51と排水管52を有している。排水ポンプ51は、断熱空間120に貯水された水W2を排水するためのものであり、給水スペース130に配設されている。給水スペース130と断熱空間120は連通している。これにより、水W2は、筐体デッキ31cの上面に残ることなく排水できる。排水ポンプ51には、排水管52が接続されており、排水管52は、地下200と外部空間150を経由して端部は天井水タンク21の直上に位置するように配設される。これにより、水W2を天井水タンク21に還流できる。
耐火シェルター1への避難手順について説明する。
火災が発生したとき、閉鎖されている外扉36を解放し外部空間150から断熱筐体30内の断熱空間120に入り、階段31を経由して避難空間110に避難する。上述した手順で、解放されている地下扉11を閉鎖する。
地下扉11の閉鎖を確認後、給水管41の弁を、避難空間110内からの遠隔操作により解放する。これにより、天井水タンク21に貯水されている水W1が、断熱空間120に供給される。水W2が避難空間110の上端の位置まで貯水されたことを確認して、給水管41の弁を閉鎖し、水W1の供給を停止する。
このとき、水W1は天井水タンク21に所定の高さ貯水されている。これにより天井14の上面は水W1で覆われた状態となり、火炎に直接接することはない。また貯水された水W1が蒸発するときの潜熱効果等により、天井14の温度上昇は抑制される。
断熱側壁13aについては、断熱空間120に貯水された水W2が蒸発するときの潜熱効果等により、また、地中側壁13bについては、火炎熱の影響が比較的小さい地下200に埋設されていることから、火炎熱による温度上昇は抑制される。
火災の鎮火を確認後、避難空間内から排水ポンプ51を作動させて、水W2を外部空間150に放出するとともに天井水タンク21に還流する。
水W2の水位低下を確認した後、地下扉11を手動で解放し、外部空間150に脱出する。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、様々な改変、置換等を行うことができる。例えば、本実施形態では、水W1を貯水するための水タンクは、天井水タンク21の1つのみとしているが、複数の水タンクを有するものとしてもよい。
昇降手段を階段31としているが、階段31の傾斜に沿って移動するリフトを併用してもよい。これにより足の不自由な方々の昇降が容易となる。また、階段31に変えて、エレベーターとしてもよいし、階段31とエレベーターを併用してもよい。
階段31は平面視で断熱側壁13aの辺方向に平行に延びているが、この方向に限定されることはない。すなわち、方向に限定されることなく設置できる。また、らせん階段としてもよい。これにより、耐火シェルター1を敷地内に効率よく配置できる。
天井水タンク21については、様々な活用が考えられる。例えば、天井水タンク21の上方に鋼製のデッキを設け、デッキ上を駐車場として利用してもよい。また、プールとして使用し、夜間の景観を楽しむためにLED照明施設を施しライトアップしてもよい。さらに、日本庭園風の施設とし錦鯉等の鑑賞魚を育ててもよい。
本発明に係る耐火シェルターは、敷地内に設置することで、短時間で避難できるとともに、火災が長時間継続した場合であっても、避難空間内の温度は抑制できることから長時間の避難が可能であり、さらに核シェルターとしても利用できるので産業上の利用可能性は大である。
1 :耐火シェルター
10 :シェルター本体
11 :地下扉
12 :底板
13 :側壁
14 :天井
15 :側面断熱部材
16 :天井断熱部材
20 :給水装置
21 :天井水タンク
30 :断熱筐体
31 :階段(昇降手段)
41 :給水管
50 :排水装置
110 :地下避難空間
120 :断熱空間
150 :外部空間
W1、W2:水

Claims (8)

  1. 底板と、地下扉が取り付けられた側壁と、天井とを有して、地下避難空間が画定されたシェルター本体と、
    昇降手段を有して、前記地下扉に接続する貯水可能な断熱空間が画定された断熱筐体と、
    前記断熱空間に給水するための給水装置と、を備え
    前記給水装置は、貯水するための水タンクと、前記水タンクに貯水された水を、前記断熱空間に給水するための給水管を有し、
    前記水タンクの貯水容量は、前記地下避難空間の上面の高さより高い位置まで給水できる水量であることを特徴とする耐火シェルター。
  2. 前記水タンクは、前記天井に接続する天井水タンクを有することを特徴とする請求項に記載の耐火シェルター。
  3. 底板と、地下扉が取り付けられた側壁と、天井とを有して、地下避難空間が画定されたシェルター本体と、
    昇降手段を有して、前記地下扉に接続する貯水可能な断熱空間が画定された断熱筐体と、
    前記断熱空間に給水するための給水装置と、を備え、
    前記給水装置は、貯水するための水タンクと、前記水タンクに貯水された水を、前記断熱空間に給水するための給水管を有し、
    前記水タンクは、前記天井に接続する天井水タンクを有することを特徴とする耐火シェルター。
  4. 前記地下避難空間の上面の高さより高い位置まで給水したとき、前記天井水タンクは、所定の水位を確保できることを特徴とする請求項2または3に記載の耐火シェルター。
  5. 前記断熱空間に貯水された水を、外部に排出するための排水装置を備えることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の耐火シェルター。
  6. 厚さ0.8〜1.2mの天井断熱部材が、前記天井と、前記避難空間との間に設けられることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の耐火シェルター。
  7. 厚さ0.8〜1.2mの側面断熱部材が、前記断熱空間に接する前記側壁と、前記避難空間との間に設けられることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の耐火シェルター。
  8. 前記底板、前記側壁、前記天井、および前記地下扉は、厚さが0.3〜0.5mのコンクリート製であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の耐火シェルター。
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