JP6960038B2 - 防音構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、防音構造体に関する。
複写機等の各種電子機器、および、自動車に搭載される電子装置、住宅設備の電子機器、家電製品、ロボット等の各種移動体等は、多機能化および高性能化に伴って、これらを高い電圧および電流で駆動することが求められており、電気系の出力が大きくなっている。また、出力の増加とコンパクト化に伴い、冷却のために熱や風を制御する必要も大きくなりファン等も重要となっている。
電子機器等は、騒音の発生源となる電子回路、パワーエレクトロニクスおよび電気モーター等を有しており、電子回路、パワーエレクトロニクスおよび電気モーター等(以下、音源ともいう)は、それぞれ固有の周波数で大きな音量の音を発生する。電気系の出力を大きくすると、この周波数の音量がさらに大きくなるため騒音として問題となる。
例えば、電気モーターの場合には、回転数に応じた周波数の騒音(電磁騒音)が生じる。インバーターの場合には、キャリア周波数に応じた騒音(スイッチングノイズ)が生じる。ファンの場合には、回転数に応じた周波数の騒音が生じる。これらの騒音は近い周波数の音と比べて音量が大きくなる。
一般に、消音手段として発泡ウレタンやフェルトなどの多孔質吸音体が多く用いられている。多孔質吸音体を用いた場合には、広い周波数で消音効果が得られる。そのため、ホワイトノイズのような周波数依存性のない騒音であれば好適な消音効果が得られる。
しかしながら、各種電子機器の音源は、それぞれ固有の周波数で大きな音量の音を発生する。特に、各種電子機器の高速化や大出力化で、固有の周波数の音が非常に高くなり大きくなる。
発泡ウレタンやフェルトなどの通常の多孔質吸音体では広い周波数で消音するため、音源に固有の周波数の騒音を十分に消音できず、また固有の周波数の騒音のみを消音するわけではなく他の周波数も同様に低減させるために、他の周波数より卓越して固有の周波数が聴こえるという状況は変化しない。そのため、ホワイトノイズやピンクノイズのような周波数に対してブロードな騒音に対して、特定の周波数幅のみを大きな音として有し、単周波音のようになる狭周波数帯の騒音は人間が検知しやすく問題となる。よって、上述のような電子機器等が発する騒音の場合には、多孔質吸音体で騒音対策した後も、特定の周波数が他の周波数よりも相対的に聞こえやすくなってしまうという問題があった。
また、多孔質吸音体を用いて、より大きな音を小さくするためには、多量の多孔質吸音体を用いる必要がある。電子機器等は小型軽量化が求められる場合が多く、電子機器等の電子回路および電気モーター等の周辺に、多量の多孔質吸音体を配置するスペースを確保することは難しい。
特定の周波数の音をより大きく消音する手段として、ヘルムホルツ共鳴を利用した消音手段、および、膜振動を利用した消音手段等が知られている。
例えば、特許文献1には、貫通孔が形成された枠体と、貫通孔の一方の開口を覆う吸音材を有し、吸音材の第1の貯蔵弾性率E1が9.7×10以上であり、第2の貯蔵弾性率E2が346以下である吸音体が記載されている。この吸音材は板状または膜状で音波が吸音体に入射すると、共振(膜振動)が生じて吸音することが記載されている(特許文献1の段落[0009]、図1等)。
また、電気機器等では、互いに周波数が異なる複数の音が発生する場合があるため、それぞれの周波数の音を同時に消音したいというニーズがある。複数の周波数帯域の音を同時に消音する手段としては、異なる消音手段を組み合わせることが知られている。
例えば、特許文献2には、複数の貫通孔が形成された前面壁と、前面壁と間隔を隔てて対向配置された後面壁と、前面壁と後面壁との間に形成される空間の一部であって前面壁側の部分を複数の前面壁側空間に区画するための仕切部を有し、前面壁と後面壁とを結合する中間壁とを備え、複数の貫通孔は複数の前面壁側空間に対応して形成されている共鳴器型吸音構造において、前面壁と後面壁との間の中間壁の位置には、複数の前面壁側空間を後面壁側の空間から隔てる平板状の弾性体が配設され、複数の前面壁側空間は、前面壁と中間壁と弾性体とにより画成される複数の前面壁側室をなし、後面壁側の空間は、後面壁の周縁部に沿って設けられ前面壁へ向かって延出する外周枠と後面壁と弾性体とにより、又は仕切部と後面壁と弾性体とにより画成される後面壁側室をなし、弾性体は、貫通孔から前面壁側室内に進入した音波により振動し、弾性体を音波により振動しない剛壁と仮定した場合の共鳴器の共鳴周波数と、弾性体と後面壁側室の振動系の固有振動数とが略一致し、弾性体の面密度は126.6694kg/m2以下である共鳴器型吸音構造が記載されている。この特許文献2に記載の吸音構造は、膜振動による消音とヘルムホルツ共鳴による消音とを組み合わせた吸音構造である。
特許第4832245号公報 特開2005−266399号公報
各種電子機器のさらなる高速化や大出力化に伴い、上述した電子回路および電気モーター等が発生する騒音の周波数はより高い周波数となっている。
ヘルムホルツ共鳴を利用した消音手段は、基本共鳴モードによる吸音であるため、より高い周波数の音を消音するのが難しい。
一方、膜振動を利用する消音手段で高い周波数の音を消音する場合には、膜の硬さ、および、膜の大きさ等を調整して膜振動の固有振動数を高くすることが考えられる。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、膜振動を利用した消音手段において、膜の硬さや大きさ等を調整して膜振動の固有振動数を高くすると、高い周波数では吸音率が低くなることが分かった。
より詳しく説明すると、膜の硬さや大きさ等を変えたときの膜振動を利用して吸音する場合、基本振動モードの膜振動が主として吸音に寄与することになるが、基本振動モードの周波数が高くなるほど、音が膜によって反射されるために膜振動による吸音率が小さくなることが判明した。
また、前述したように、電気モーターやインバーターをはじめとする電気機器等では、互いに周波数が異なる複数の音が発生することがある。このような場合には、吸音する周波数の異なる消音手段を複数用いることが考えられる。
しかしながら、電子機器等では消音手段の設置スペースが限られていることが多い。このため、複数の周波数の音を吸音する構造としては、各周波数別に消音手段を配置するのではなく、同じ設置スペースのままで各周波数の音を吸音可能な構造が求められている。
前述のとおり、特許文献2には、膜振動による消音とヘルムホルツ共鳴による消音とを組み合わせた吸音構造が記載されている。この特許文献2には、膜振動の固有振動数とヘルムホルツ共鳴器の共鳴周波数とを略一致させることで2つの異なる周波数において吸音のピークが現れることが記載されている。これによって、多数の異なる周波数の音を吸音することができることが記載されている。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、膜振動の固有振動数とヘルムホルツ共鳴器の共鳴周波数とを略一致させた場合には、元の周波数の前後にピークが分裂して複数の周波数で吸音するが、元の周波数と大きく異ならない周波数で吸音する。そのため、より高い周波数の音を消音するのが難しいことがわかった。
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解消し、小型軽量で、音源に固有の高い周波数の騒音を複数の周波数で同時に消音できる防音構造体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、少なくとも1つの貫通孔が形成された板状部材と、板状部材の一方の面に対面して配置される膜状部材と、剛体により構成され、板状部材および膜状部材を支持する支持体とを有し、膜状部材は支持体によって膜振動可能に支持されており、板状部材と膜状部材との間の第一空間と、膜状部材を挟んで第一空間とは反対側に設けられた背面空間と、を有し、膜状部材、支持体、および、背面空間は、膜振動によって吸音する第一吸音部を構成し、貫通孔を有する板状部材、支持体、膜状部材、および、第一空間は、ヘルムホルツ共鳴によって吸音する第二吸音部を構成し、第二吸音部において、膜状部材を剛体と見なした場合のヘルムホルツ共鳴の基本周波数をfh1とし、第二吸音部の膜振動の基本周波数をfm1とすると、fh1≧2×fm1を満たすことにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
[1] 少なくとも1つの貫通孔が形成された板状部材と、
板状部材の一方の面に対面して配置される膜状部材と、
剛体により構成され、板状部材および膜状部材を支持する支持体とを有し、
膜状部材は支持体によって膜振動可能に支持されており、
板状部材と膜状部材との間の第一空間と、
膜状部材を挟んで第一空間とは反対側に設けられた背面空間と、を有し、
膜状部材、支持体、および、背面空間は、膜振動によって吸音する第一吸音部を構成し、
貫通孔を有する板状部材、支持体、膜状部材、および、第一空間は、ヘルムホルツ共鳴によって吸音する第二吸音部を構成し、
第二吸音部において、膜状部材を剛体と見なした場合のヘルムホルツ共鳴の基本周波数をfh1とし、第一吸音部の膜振動の基本周波数をfm1とすると、fh1≧2×fm1を満たす防音構造体。
[2] 膜状部材の振動の、1kHz以上に存在する少なくとも1つの高次振動モードの周波数における吸音率が、基本振動モードの周波数における吸音率よりも高い[1]に記載の防音構造体。
[3] 膜状部材のヤング率をE(Pa)とし、厚みをt(m)とし、背面空間の厚みをd(m)とし、膜状部材が振動する領域の円相当直径をΦ(m)とすると、
膜状部材の硬さE×t3(Pa・m3)が、21.6×d-1.25×Φ4.15以下である[1]または[2]に記載の防音構造体。
[4] 膜状部材の硬さE×t3(Pa・m3)が、2.49×10-7以上である[3]に記載の防音構造体。
[5] 支持体は、筒状の外側枠体と、
開口部を有する内側枠体と、を備え、
板状部材、外側枠体、膜状部材、および、内側枠体の順に積層され、
板状部材は、外側枠体の一方の開口面に固定され、
膜状部材は、内側枠体の開口部が形成された開口面に固定され、
第一空間は、板状部材、外側枠体、および、膜状部材に囲まれた空間であり、
背面空間は、膜状部材と内側枠体とに囲まれた空間である[1]〜[4]のいずれか一項に記載の防音構造体。
[6] 内側枠体の開口部は、開口面とは反対側に位置する底面を有する[5]に記載の防音構造体。
[7] 第二吸音部のヘルムホルツ共鳴の基本周波数fh1と第一吸音部の膜振動の基本周波数fm1とが2×fm1≦fh1≦7×fm1を満たす[1]〜[6]のいずれかに記載の防音構造体。
[8] 第一空間及び背面空間のそれぞれの厚みが10mm以下である[1]〜[7]のいずれかに記載の防音構造体。
[9] 防音構造体の合計厚みが10mm以下である[1]〜[8]のいずれかに記載の防音構造体。
[10] 膜状部材の厚みが100μm以下である[1]〜[9]のいずれかに記載の防音構造体。
[11] 背面空間が閉じられた閉空間である[1]〜[10]のいずれかに記載の防音構造体。
[12] 支持体もしくは底面の少なくとも一方に貫通孔を有する[1]〜[10]のいずれかに記載の防音構造体。
[13] 膜状部材には、貫通孔が形成されている[1]〜[10]のいずれかに記載の防音構造体。
[14] さらに、膜状部材の板状部材側とは反対側の面側に、1以上の第二の膜状部材を有する[1]〜[13]のいずれかに記載の防音構造体。
[15] 第二の膜状部材のすべてに貫通孔が形成されている[14]に記載の防音構造体。
[16] さらに、板状部材の膜状部材側とは反対側の面側に、1以上の第二の板状部材を有する[1]〜[15]のいずれかに記載の防音構造体。
[17] さらに、板状部材の膜状部材側とは反対側の面側に、少なくとも1つの貫通孔を有する第二の板状部材を1枚以上有する[1]〜[15]のいずれかに記載の防音構造体。
[18] 板状部材の貫通孔を覆うメッシュ部材を有する[1]〜[17]のいずれかに記載の防音構造体。
[19] 吸音対象とする音源に対して、貫通孔を有する板状部材、膜状部材の順になる向きに配置される[1]〜[18]のいずれかに記載の防音構造体。
本発明によれば、小型軽量で、音源に固有の高い周波数の騒音を複数の周波数で同時に消音できる防音構造体を提供することができる。
本発明の防音構造体の一例を模式的に示す斜視図である。 本発明の防音構造体の一例の分解図である。 図1のI−I線断面図である。 基本振動モードの周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 ピーク周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 背面空間の厚みとピーク周波数との関係を表すグラフである。 周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 防音構造体内の音圧の分布を示す図である。 防音構造体内の音圧の分布を示す図である。 周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 貫通孔径と吸音率との関係を表すグラフである。 貫通孔径と吸音周波数との関係を表すグラフである。 貫通孔径とfh1/fm1およびヘルムホルツ共鳴周波数との関係を表すグラフである。 貫通孔径と吸音率との関係を表すグラフである。 貫通孔径と吸音周波数との関係を表すグラフである。 本発明の防音構造体の他の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の防音構造体の他の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の防音構造体の他の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の防音構造体の他の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の防音構造体の他の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の防音構造体の他の一例を模式的に示す断面図である。 周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 膜のヤング率と周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 膜のヤング率と周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 膜のヤング率と周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 背面距離とヤング率とをパラメータとして、高次振動モードにおける吸音率が基本振動モードにおける吸音率よりも高くなる条件を表すグラフである。 背面距離と膜の硬さとをパラメータとして、高次振動モードにおける吸音率が基本振動モードにおける吸音率よりも高くなる条件を表すグラフである。 枠直径と膜の硬さとをパラメータとして、高次振動モードにおける吸音率が基本振動モードにおける吸音率よりも高くなる条件を表すグラフである。 枠直径と膜の硬さとをパラメータとして、高次振動モードにおける吸音率が基本振動モードにおける吸音率よりも高くなる条件を表すグラフである。 膜のヤング率と周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 膜のヤング率と周波数と吸音率との関係を表すグラフである。 背面距離と吸音ピーク周波数との関係を表すグラフである。 背面距離と吸音ピーク周波数との関係を表すグラフである。 ヤング率と最大吸音率との関係を表すグラフである。 ヤング率と吸音率との関係を表すグラフである。 ヤング率と吸音率との関係を表すグラフである。 係数aと吸音倍率との関係を表すグラフである。
以下、本発明の防音構造体について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明は、そのような実施態様に限定されるものではない。すなわち、以下では、本発明の防音構造体についての種々の実施形態を挙げて説明するが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、また、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良又は変更をしてもよいのは勿論である。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、例えば、「45°」、「平行」、「垂直」あるいは「直交」等の角度は、特に断る場合を除き、厳密な角度との差異が5度未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との差異は、4度未満であることが好ましく、3度未満であることがより好ましい。
また、本明細書において、「同じ」、「同一」は、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。
また、本明細書において、「全部」、「いずれも」または「全面」などというとき、100%である場合のほか、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含み、例えば99%以上、95%以上、または90%以上である場合を含むものとする。
なお、以下の説明中、「厚み」とは、後述する板状部材および膜状部材が並ぶ方向(以下、厚み方向)における長さを意味する。また、以下の説明中の「外側」及び「内側」は、厚み方向において互いに反対側に位置し、「外側」は、より音源に近い側、すなわち、音源から発せられた音が防音構造体内に進入する際に通過する側を意味する。反対に、「内側」は、より音源から離れている側、すなわち、防音構造体内に進入した音が向かっていく側を意味する。
<<防音構造体>>
本発明の防音構造体は、
少なくとも1つの貫通孔が形成された板状部材と、
板状部材の一方の面に対面して配置される膜状部材と、
剛体により構成され、板状部材および膜状部材を支持する支持体とを有し、
膜状部材は支持体によって膜振動可能に支持されており、
板状部材と膜状部材との間の第一空間と、
膜状部材を挟んで第一空間とは反対側に設けられた背面空間と、を有し、
膜状部材、支持体、および、背面空間は、膜振動によって吸音する第一吸音部を構成し、
貫通孔を有する板状部材、支持体、膜状部材、および、第一空間は、ヘルムホルツ共鳴によって吸音する第二吸音部を構成し、
第二吸音部において、膜状部材を剛体と見なした場合のヘルムホルツ共鳴の基本周波数をfh1とし、第一吸音部の膜振動の基本周波数をfm1とすると、fh1≧2×fm1を満たす防音構造体である。
ここで、板状部材および膜状部材は、互いに離間した状態で、膜状部材(板状部材)の表面の法線方向が揃うように重ねられている。支持体は、剛体により構成され、板状部材および膜状部材を所定の位置関係で支持すると共に、膜状部材を膜振動可能に支持している。
本発明の防音構造体は、各種の電子機器、および、輸送機器等が発生する音を消音する消音手段として好適に用いることができる。
電子機器としては、空調機(エアコン)、エアコン室外機、給湯器、換気扇、冷蔵庫、掃除機、空気清浄機、扇風機、食洗機、電子レンジ、洗濯機、テレビ、携帯電話、スマートフォン、プリンター等の家庭用電気機器;複写機、プロジェクター、デスクトップPC(パーソナルコンピューター)、ノートPC、モニター、シュレッダー等のオフィス機器、サーバー、スーパーコンピューター等の大電力を使用するコンピューター機器、恒温槽、環境試験機、乾燥機、超音波洗浄機、遠心分離機、洗浄機、スピンコーター、バーコーター、搬送機などの科学実験機器が挙げられる。
輸送機器としては、自動車、バイク、電車、飛行機、船舶、自転車(特に電気自転車)、パーソナルモビリティー等が挙げられる。
移動体としては、民生用ロボット(掃除用途、愛玩用途や案内用途などのコミュニケーション用途、自動車椅子等の移動補助用途など)や工業用ロボット等が挙げられる。
また、使用者への通知や警告を発する意味で、特定の少なくとも一つ以上の単周波音を通知音、警告音として発するように設定された機器にも用いることができる。また、金属体や機械がそのサイズに応じた周波数にて共振振動したとき、それに起因して比較的大きな音量で発せられる少なくとも一つ以上の単周波音が騒音として問題となるが、このような騒音に対しても本発明の防音構造体は適用可能である。
また、上述した機器が入っている部屋、工場、および、車庫等にも本発明の防音構造体が適用可能である。
本願発明の防音構造体が消音対象とする音の音源の一例としては、上記の各種機器が有する、インバーター、パワーサプライ、昇圧器、大容量コンデンサー、セラミックコンデンサー、インダクタ、コイル、スイッチング電源、トランス等の電気制御装置を含む電子部品またはパワーエレクトロニクス部品や電気モーター、ファン等の回転部品やギア、アクチュエータによる移動機構等の機械部品、金属棒等の金属体が挙げられる。
音源が、インバーター等の電子部品の場合には、キャリア周波数に応じた音(スイッチングノイズ)を発生する。
音源が、電気モーターの場合には、回転数に応じた周波数の音(電磁騒音)を発生する。
音源が、金属体の場合には、共振振動モード(1次共鳴モード)に応じた周波数の音(単周波数騒音)を発生する。
すなわち、音源はそれぞれ、音源に固有の周波数の音を発生する。
固有の周波数を有する音源は、特定周波数を発振するような物理的もしくは電気的メカニズムを有する場合が多い。例えば、回転系(ファン、モーター等)はその回転数およびその倍数がそのまま音として発せられる。具体的には、例えば軸流ファンの場合は羽枚数とその回転速度に応じて決定される基本周波数と、その整数倍の周波数において強いピーク音を発生する。モーターはその回転速度に応じたモードとその高次モードにおいて強いピーク音が発生する。
また、インバーター等の交流電気信号を受ける部分は、その交流の周波数に対応する音を発振する場合が多い。また、金属棒等の金属体では、そのサイズに応じた共振振動が生じ、その結果として単一周波数の音が強く発せられる。よって、回転系、交流回路系及び金属体は、音源に固有の周波数を有する音源といえる。
より一般的に、音源が固有の周波数を有するかは下記のような実験を行うことができる。
音源を無響室もしくは半無響室内、もしくはウレタン等の吸音体で囲んだ状況に配置する。周辺を吸音体とすることで、部屋や測定系の反射干渉による影響を排除する。その上で、音源を鳴らし、離れた位置からマイクで測定を行い周波数情報を取得する。音源と測定系のサイズによりマイクとの距離は適宜選択できるが、30cm程度以上離れて測定することが望ましい。
音源の周波数情報において、極大値をピークと呼び、その周波数をピーク周波数と呼ぶ。その極大値が周辺の周波数での音と比較して3dB以上大きい場合には、そのピーク周波数音が十分に人間に認識できるため、固有の周波数を有する音源といえる。5dB以上であればより認識でき、10dB以上であればさらに認識できる。周辺の周波数との比較は、信号のノイズや揺らぎを除いて極小となるなかで最も近い周波数における極小値と、極大値の差分で評価する。
また、自然界に環境音としてよく存在するホワイトノイズやピンクノイズに対して、特定の周波数成分のみが強く鳴る音は目立ちやすく、不快な印象を与えるとされるため、それらの音を除去することは重要となる。
また、音源から発せられた音が、各種機器の筐体内で共鳴することで、この共鳴周波数、あるいは、その倍音の周波数の音量が大きくなる場合もある。あるいは、上記の各種機器が入っている部屋、工場、および、車庫等の中で音源から発せされた音が共鳴して、その共鳴周波数、あるいは、その倍音の周波数の音量が大きくなる場合もある。
他にもタイヤ内部の空間、および、スポーツ用途ボールの内部の空洞などによって共鳴が生じることで、振動が加えられたときに空洞共鳴やその高次振動モードに対応する音が大きく発振して生じる場合もある。
また、音源から発せられた音が、各種機器の筐体、あるいは筐体内に配置された部材等の機械的構造の共鳴周波数で発振されて、この共鳴周波数、あるいは、その倍音の周波数の音量が大きくなる場合もある。例えば、音源がファンの場合でも、機械的構造の共鳴によって、ファンの回転数よりも遥かに高い回転数で共振音が発生する場合がある。
本発明の構造は、騒音を発する電子部品あるいはモーターに直接取り付けることで用いることができる。また、ダクト部およびスリーブなどの通風部に配置して透過音の消音に用いることもできる。また、開口のある箱体(各種電子機器を入れる箱や、部屋など)の壁部に取り付けて、箱体から放射して出てくる騒音に対する消音構造として用いることもできる。また、部屋の壁に取り付けて部屋内部の騒音を抑制するなどに用いることもできる。これに限定されずに用いることももちろん可能である。
<<防音構造体の構成例>>
本発明の防音構造体の一例について、図1、図2及び図3を参照しながら説明する。
図1は、本発明の防音構造体の一例(以下、防音構造体10)を示す模式的な斜視図である。図2は、防音構造体10の分解図である。図3は、図1に図示した防音構造体10のI−I線断面図である。
防音構造体10は、膜振動を利用して、吸音の機能を発現し、特定の周波数(周波数帯域)の音を選択的に消音するものである。
防音構造体10は、図1〜図3に示すように、貫通孔14aを有する板状部材14と、板状部材14の一方の面に対面して配置される膜状部材12と、板状部材14と膜状部材12とを支持する支持体16と、を有する。また、板状部材14と膜状部材12との間には第一空間26が形成されており、膜状部材12を挟んで第一空間26の反対側には背面空間24が形成されている。
支持体16は、複数の枠体によって構成されており、図1〜図3に図示の防音構造体10では、支持体16は、二つの枠体である内側枠体18及び外側枠体19からなる。
外側枠体19は、厚み方向に貫通する開口部40を有する筒状の枠体である。外側枠体19の一方の開口面41には板状部材14が配置されており、他方の開口面42には膜状部材12が配置されている。
内側枠体18は、底壁22を有する有底筒状の枠体である。内側枠体18の開口面21には膜状部材12が配置されている。すなわち、膜状部材12は、外側枠体19および内側枠体18に挟まれて支持されている。
内側枠体18及び外側枠体19は、剛体からなり、板状部材14の縁部を固定して支持しており、また、膜状部材12の縁部を固定して膜状部材12を振動可能に支持している。
ここで、本発明において「剛体」とは、実質的に剛体とみなすことができるものである。具体的には、膜状部材12の剛性よりも十分に大きい剛性であって、膜状部材12が膜振動している間に振動せずに静止している物であり、膜状部材12に対して圧倒的に厚みがあり、曲げ剛性が格段に高い物である。硬さが膜状部材12に対して十分に大きければ、実質的に、音が入射した際の膜状部材12の揺れに対して、剛体の揺れが無視できる。
なお、膜状部材12の縁部は、固定端部であり、剛体である内側枠体18に固定されているために振動しないことになる。膜状部材12の縁部(すなわち、内側枠体18)が振動しない(静止している)かどうかは、レーザー干渉を用いた測定によって確認することができる。具体的には、膜状部材12の縁部の変位量が、膜状部材12の振動する部分(膜部分12a)の振幅の1/100程度以下であれば剛体とみなす。変位量はヤング率(縦弾性係数)と断面二次モーメントの積に反比例する。断面二次モーメントは厚みの3乗と幅の1乗に比例する。そのため、ヤング率E、厚みh、幅wとしたときに、変位量は1/(E×w×h3)に比例する。従って、変位量を1/100以下とするには、内側枠体18の(E×w×h3)が膜状部材12の100倍以上であればよい。
あるいは、膜状部材12に塩や白色の微粒子を撒いて膜状部材12を振動させた際に膜状部材12の縁部では上記の微粒子が静置していることを観測することで視覚的に確認することができる。
内側枠体18は、図2に示すように有底の円筒型枠体であり、その径方向中央部分には円形の空洞からなる開口部20が設けられている。また、厚み方向における内側枠体18の一端面(外側の端部)は、開口面21となっている。内側枠体18の開口面21には、膜状部材12の縁部(外縁部)が固定される。これにより、膜状部材12は、その膜部分12aが膜振動可能な状態で内側枠体18に支持されることとなる。ここで、膜部分12aとは、膜状部材12のうち、固定された外縁部よりも内側で開口部20に面しており、膜振動する膜本体部分のことである。
また、内側枠体18には、開口部20の、膜状部材12が配置される開口面21とは反対側の面塞ぐ底壁22が設けられている。つまり、内側枠体18の開口部20は、開口面21とは反対側の位置に底面を有している。なお、図3に示す例では、底壁22は内側枠体18と一体に形成された例を示したが、これに限定はされず、内側枠体18及び底壁22は、それぞれ別体であり、一体化のために接合されたものであってもよい。また、底壁22は、板状部材によって構成されてもよく、あるいはフィルムのような薄厚の部材によって構成されてもよい。
外側枠体19は、筒状枠体に相当し、図2に示すように円筒形状の枠体である。また、外側枠体19には、厚み方向における外側枠体19の一端から他端まで貫通する円形の空洞からなる開口部40が形成されている。なお、外側枠体19の開口部40は、内側枠体18の開口部20と同径である。
外側枠体19の、内側枠体18側の開口面42には、膜状部材12の縁部が固定される。また、外側枠体19の、内側枠体18とは反対側に位置する開口面41には、板状部材14の縁部(外縁部)が固定されている。
膜状部材12は、外形が、内側枠体18の開口面21と略同じ大きさの円形の薄膜体である。膜状部材12は、その縁部(外縁部)が内側枠体18の開口面21、および、外側枠体19の開口面42に挾持されて固定されている。これにより、膜状部材12は、その膜部分12aが膜振動可能な状態で内側枠体18および外側枠体19に支持されている。
板状部材14は、外径が、外側枠体19の開口面41と略同じ大きさの円形の板状の部材である。板状部材14は、その縁部(外縁部)が外側枠体19の開口面41に固定されている。また、板状部材14の略中央部には、貫通孔14aが形成されている。
板状部材14は、図1に示すように、防音構造体10の厚み方向外側の端に配置されており、音源に対して露出している。
そして、図2及び図3に示すように、厚み方向において内側から順に、内側枠体18、膜状部材12、外側枠体19及び板状部材14が積み重ねられることで防音構造体10が構成されている。なお、図3に示すように、膜状部材12及び板状部材14は、厚み方向において外側枠体19を介して互いに対向している。
また、図3に示すように、防音構造体10の内部において板状部材14と膜状部材12との間には、第一空間26が形成されている。第一空間26は、厚み方向において板状部材14と膜状部材12とに挟まれており、その周囲が外側枠体19によって取り囲まれている。なお、前述したように、第一空間26を挟む板状部材14及び膜状部材12は、外側枠体19を介して互いに対向している。
さらに、図3に示すように、防音構造体10の内部において膜状部材12を挟んで第一空間26とは反対側(すなわち、内側)には、背面空間24が形成されている。背面空間24は、内側枠体18の開口面21に固定された膜状部材12と、内側枠体18とによって囲まれた空間であり、図3に図示の例では、閉じられた閉空間となっている。
また、図1に示すように、厚み方向における防音構造体10の両端のうち、外側の端(すなわち、背面空間24からより離れている端)には板状部材14が配置されており、板状部材14が外側枠体19の開口部40の一端面(開口面41)を塞いでいる。また、外側枠体19と内側枠体18との間には膜状部材12が配置されており、この膜状部材12が外側枠体19の開口部20の他端面(開口面42)を塞いでいる。つまり、第一空間26は、背面空間24と同様に閉空間となっている。
以上のように構成された本発明の防音構造体10では、複数の吸音部が存在し、それぞれの吸音部が固有の周波数の音を吸音する。すなわち、本発明の防音構造体10が吸音可能な周波数帯域は、複数存在しており、その中には、第一吸音部が主に貢献する吸音の周波数帯域と、第二吸音部による吸音の周波数帯域と、が含まれている。
ここで、第一吸音部とは、膜状部材12、内側枠体18及び背面空間24によって構成される吸音部である。第一吸音部は、膜状部材12の膜振動によって比較的高い周波数(例えば、3kHz〜5kHz)で吸音する。つまり、第一吸音部が主に寄与する吸音の周波数帯域は、背面空間24と隣接した膜状部材12の膜振動を主因とする吸音の周波数帯域に相当する。
第二吸音部とは、板状部材14、膜状部材12、外側枠体19及び第一空間26によって構成される吸音部である。第二吸音部は、板状部材14に形成された貫通孔14aと、第一空間26とによってヘルムホルツ共鳴が発生して吸音する。
ここで、第二吸音部において、第一空間26を囲む隔壁の一部が膜状部材12で構成されているため、膜状部材12の振動と第一空間26内の気体(空気)の振動との相互作用が得られ、結果として、第一吸音部の膜状部材12の膜振動単体による吸音、および、第二吸音部のヘルムホルツ共鳴単体による吸音よりも高い周波数帯域(例えば、8kHz〜9kHz)で吸音する。
以下、各吸音部について詳しく説明する。
(第一吸音部について)
第一吸音部は、膜状部材12の膜振動によって、所定の周波数帯域の音を選択的に吸音する。
膜振動の周波数は、膜状部材12の厚み、硬さ、大きさ、固定方法等によって決定される。
また、膜振動には、基本振動モードと高次振動モードがある。
ここで、第一吸音部では、より高い周波数帯域の音を吸音するために、背面空間24と隣接した膜状部材12の膜振動の、1kHz以上に存在する少なくとも1つの高次振動モードの周波数における吸音率が、基本振動モードの周波数における吸音率よりも高くなっていることが好ましい。このような構成に至った経緯を以下に詳述する。
複写機等の各種電子機器等は、騒音の発生源となる電子回路および電気モーター等の音源を有しており、これらの音源は、それぞれ固有の周波数で大きな音量の音を発生する。
消音手段として一般的に用いられる多孔質吸音体では、広い周波数で消音するため、音源に固有の周波数の騒音を十分に消音できずに他の周波数よりも相対的に聞こえ易くなってしまうという問題があった。また、多孔質吸音体を用いてより大きな音を小さくするためには、多量の多孔質吸音体を用いる必要があり、小型軽量化するのが難しくなるという問題があった。
また、特定の周波数の音をより大きく消音する手段として、膜振動を利用した消音手段が知られている。
ここで、各種電子機器のさらなる高速化や大出力化に伴い、上述した電子回路および電気モーター等が発生する騒音の周波数は、より高い周波数となっている。膜振動を利用する消音手段で高い周波数の音を消音する場合には、膜状部材の硬さや大きさ等を調整して膜振動の固有振動数を高くすることが考えられる。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、膜振動を利用する消音手段において、膜の硬さや大きさ等を調整して膜振動の固有振動数を高くした場合には、高い周波数では吸音率が低くなることが分かった。
具体的には、高い周波数の音を吸音するためには、膜振動の固有振動数を高くする必要がある。ここで、従来の膜振動を利用する消音手段においては、主に基本振動モードの膜振動を利用して吸音するものであった。基本振動モードの膜振動を利用する場合には、膜状部材をより硬く(または厚く)して基本振動モードにおける周波数(第1次固有振動数)を高くする必要がある。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、膜状部材を硬く(または厚く)し過ぎると膜によって音が反射され易くなってしまう。そのため、図4に示すように、基本振動モードの周波数が高くなるほど、膜振動による音の吸収(吸音率)が小さくなってしまう。
音が高周波になるほど膜振動と相互作用する力が小さくなり、一方で、膜状部材については高周波化のために硬くする必要がある。膜状部材を硬くすることは、膜表面での反射を大きくすることにつながる。高周波音ほど共鳴のためには硬い膜状部材が必要となるために、共鳴振動によって吸収される代わりに、大半の音が膜表面で反射されたために吸収が小さくなったと考えられる。
よって、従来の設計理論に基づいた基本振動モードを用いた膜振動を利用した消音手段では、高周波で大きな吸音は難しいことが明らかになった。この特性は、高周波特定音の消音に用いるには不向きな特性である。
なお、図4に示すグラフは、有限要素法計算ソフトCOMSOL ver.5.3(COMSOL Inc.)を用いてシミュレーションを行なった結果である。計算モデルは二次元軸対称構造計算モデルとし、枠体は円筒形状で開口部の直径が10mmとし、背面空間の厚みは20mmとした。膜状部材は厚み250μmとし、膜状部材の硬さを表すパラメータであるヤング率を0.2GPa〜10GPaの範囲で種々変更した。評価は、垂直入射吸音率配置で行い、吸音率の最大値とその時の周波数を計算した。
これに対して、本発明の防音構造体10における第一吸音部では、好ましい態様として、膜状部材12の膜振動の、1kHz以上に存在する少なくとも1つの高次振動モードの周波数における吸音率が、基本振動モードの周波数における吸音率よりも高い構成を有する。
つまり、第一吸音部を、高次振動モードの周波数、すなわち、第2次、第3次固有振動数等の高次の固有振動数における吸音率を高くして、高次振動モードの膜振動によって音を吸収する構成とすることで、膜状部材を硬く(または厚く)する必要がないため、音が膜面にて反射されるのを抑制でき、高い周波数においても高い吸音効果を得ることができる。
また、単層膜構造である第一吸音部は、膜振動を利用して吸音するものであるため、小型軽量で特定の周波数の音を好適に消音できる。
高次振動モードが励起されるメカニズムについて、本発明者らは以下のように推定した。
膜状部材の条件(厚み、硬さ、大きさ、固定方法等)によって決定される基本振動モードと高次振動モードの周波数帯域があり、どのモードによる周波数が強く励起されて吸音に寄与するかが背面空間の距離等によって決定される。これを以下に説明する。
膜状部材を用いた吸音構造の共鳴を切り分けて考えると、膜状部材が関与する部分と背面空間が関与する部分が存在する。よって、これらの相互作用によって吸音が起こる。
数式で表現すると、膜状部材の音響インピーダンスをZmとし、背面空間の音響インピーダンスをZbとすると、合計の音響インピーダンスZt=Zm+Zbとして記述される。この合計の音響インピーダンスが媒質の流体(空気など)の音響インピーダンスに一致するときに共鳴現象が生じる。ここで、膜状部材の音響インピーダンスZmについては、膜状部材の仕様によって決定され、例えば基本振動モードについては膜状部材の質量による運動方程式に従う成分(質量則)と、膜状部材が固定されていることによってばねのような引っ張りに支配される成分(剛性則)が一致した時に共鳴が生じる。高次振動モードも同様に、基本振動より複雑な膜振動の形状による共鳴である。
膜状部材の厚みが大きいなど、膜状部材に高次振動モードが発生し難い場合は、基本振動モードとなる帯域は広くなる。しかし、膜状部材が硬く反射され易いために吸音が小さくなることは、上述のとおりである。膜状部材の厚みを薄くするなど、膜状部材にとって高次振動モードが発生し易い条件とすると、基本振動モードが発生する周波数帯域幅が小さくなり、高次振動モードが高周波域に存在する状態となる。
一方、背面空間の音響インピーダンスZbは、空気伝搬音の流れが閉空間あるいは貫通孔部等によって制限されていることによって開放空間のインピーダンスと異なり、例えば背面空間の厚みが小さくなるほど背面空間が固くなる効果などが入っている。定性的には、背面距離が小さくなるにつれて波長の短い音、すなわち高周波音に適した距離となり、その場合に、より低周波音は波長に対して背面空間が小さ過ぎるために共鳴が小さくなる。すなわち、背面距離の変化によって、どの周波数の音について共鳴できるかが決まる。
これらをまとめると、膜状部材の仕様によってどの周波数領域で基本振動となり、別の帯域では高次振動となるかが決まる。そして、背面空間によってどの周波数帯の音を励起し易いかが決まるためにそれを高次振動に対応する周波数とすることで、高次振動モードに起因する吸音率を大きくすることができるというのが、第一の吸音部による吸音のメカニズムである。
よって、高次振動モードを励起するように膜状部材及び背面空間をともに決定する必要がある。
この点について、有限要素法計算ソフトCOMSOL ver.5.3(COMSOL Inc.)の音響モジュールを用いてシミュレーションを行なった。
防音構造体10の計算モデルに関して説明すると、枠体を円筒形状とし、開口部の直径を20mmとし、膜状部材を厚み50μmとし、膜状部材のヤング率をPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムのヤング率である4.5GPaとした。なお、計算モデルは二次元軸対称構造計算モデルとした。
以上の計算モデルにおいて背面空間の厚みを10mmから0.5mmまで0.5mm刻みで変更して、音響と構造の連成計算を行い、構造計算は膜状部材に関して行い、背面空間は音の空気伝搬を計算することで数値計算を行った。評価は垂直入射吸音率配置で行い、吸音率の最大値とその時の周波数を計算した。
結果を図5に示す。図5は、各計算モデルにおいて吸音率が最大となる周波数(以下、ピーク周波数という)と、このピーク周波数における吸音率とをプロットしたグラフである。図5中、最も左にプロットされた点が背面空間の厚み10mmの場合であり、最も右側にプロットされた点が背面空間の厚み0.5mmの場合である。
図5に示すように、高い周波数でも高い吸収率が得られることが分かった。
また、各計算モデルにおけるピーク周波数が何次の振動モードであるかを解析した。
図6に、各計算モデルのピーク周波数と背面空間の厚みとの関係を両対数でプロットし、振動モードの次数ごとにラインを引いたグラフを示す。また、図7及び図8には、背面空間の厚みが7mm、5mm、3mm、2mm、1mm、0.5mmの場合の各計算モデルにおける周波数と吸音率との関係を表すグラフを示す。
図6からわかるように、背面空間の厚みを小さくすることで吸音率のピーク周波数は高周波化する。ここで、背面空間の厚みを小さくしていくと、両対数軸上でピーク周波数が連続的に大きくなるのではなく、両対数軸上においても複数の不連続な変化が生じていることが分かる。この特性は、吸音率が最大となる振動モードが、基本振動モードから高次振動モード、もしくは高次振動モードの次数の高い振動モードに移行していることを示している。すなわち、薄い膜状部材によって高次振動モードが励起され易い状態であって、背面空間の厚みを小さくすることで基本振動モードではなく高次振動モードによる吸音の効果が大きく現れることが分かった。よって、高周波域での大きな吸音率は、基本振動モードに起因するものではなく、高次振動モードによる共鳴に起因する。図6に示した振動モードの次数ごとに引いたラインから、背面空間の厚みが薄いほど、より高次の振動モードにおける周波数がピーク周波数、すわなち、吸音率が最も高くなる周波数となることが分かる。
ここで、高次振動モードが現れた理由として、特に重要な点は、膜状部材の膜厚を50μmと薄くしたことである。高次振動モードは基本振動モードと比較して、膜上に複雑な振動パターンを有している。すなわち、膜上に複数の振幅の腹を有する。よって、基本振動モードと比較して、より小さな平面サイズでの屈曲が必要であり、膜固定部(膜状部材の縁部)付近で屈曲が必要な振動モードも多い。膜の厚みが小さい方が遥かに屈曲し易いために、高次振動モードを利用するためには膜厚を薄くすることが重要となっている。さらに背面空間の長さを数mmまで小さくしたことで、基本振動モードよりも高次振動モードによる吸音を効率的に励起できる系としたことが重要な点である。
また、膜厚が薄い構成は、膜状部材の硬さが小さい系となる。こうした系では、高周波の音に対する反射が小さくなるため、高周波側でも大きな吸音率が得られるようになると考えられる。
また、図7及び図8から、各計算モデルにおいて、複数の周波数で吸音率が極大値(ピーク)となっていることが分かる。この吸音率が極大値となる周波数が、ある振動モードの周波数である。このうち最も低い周波数の約1500Hzが基本振動モードの周波数である。すなわち、いずれの計算モデルも基本振動モードの周波数は約1500Hzである。また、基本振動モードである1500Hzよりも高い周波数に存在する極大値となる周波数が高次振動モードの周波数である。いずれの計算モデルにおいても、高次振動モードの周波数での吸音率が、基本振動モードの周波数での吸音率よりも高くなっている。
また、図7及び図8から、背面空間の厚みが小さいほど基本振動モードにおける周波数での吸音率が低くなり、高次の振動モードにおける周波数での吸音率が高くなっていることが分かる。
また、図8の背面空間の厚みが0.5mmの場合では、9kHz以上の非常に高い周波数領域でほぼ100%という大きな吸音率が得られることが分かる。
また、図7及び図8から、高次振動モードは複数存在し、それぞれの周波数において高い吸音ピーク(吸音率の極大値)を示すことが分かる。よって、高い吸音ピークが重なって、比較的広帯域に渡って吸音効果を示すことも分かる。
以上から、高次振動モードの周波数における吸音率が、基本振動モードの周波数における吸音率よりも高い構成とすることで、高い周波数においても高い吸音効果を得ることができることが分かる。
なお、周知のとおり、基本振動モードは、最も低周波側に現れる振動モードであり、高次振動モードは基本振動モード以外の振動モードである。
振動モードが基本振動モードであるか高次振動モードであるかは、膜状部材12の状態から判別することができる。基本振動モードにおける膜振動では、膜状部材12の重心部が最も大きな振幅を持ち、周辺の固定端部(縁部)付近の振幅が小さい。また、膜状部材12は全ての領域において同じ方向に速度を持つ。一方、高次振動モードにおける膜振動では、膜状部材12は、位置によって逆方向に速度を持つ部分が存在する。
または、基本振動モードは、固定されている膜状部材12の縁部が振動の節となり、膜部分12a上には節が存在しない。一方、高次振動モードでは上記の定義により縁部(固定端部)のほかに膜部分12a上にも振動の節となる部分が存在するため、下記に示した手法で実際に計測することができる。
振動モードの解析は、レーザー干渉を用いて膜振動を測定することで、振動モードの直接観測が可能である。もしくは、膜面状に塩や白色の微粒子をまいて振動させることで節の位置が可視化されるので、この手法を用いても直接観測が可能である。この振動モードの可視化はクラドニ図形として知られている。
また、円形膜あるいは矩形膜については、各振動モードにおける周波数を解析的に周波数を求めることもできる。さらに、有限要素法計算などの数値計算法を用いれば、任意の膜の形状について各振動モードにおける周波数を求めることができる。
吸音率は、音響管を用いた吸音率評価により求めることができる。JIS A 1405-2に従った垂直入射吸音率の測定系を作製して評価を行う。これと同様の測定は日本音響エンジニアリング製WinZacMTXを用いることができる。音響管の内部直径は20mmとし、その音響管端部に、測定対象の防音構造体を外側の端面が表側(音響入射側)を向いた状態で配置して反射率を測定し、(1−反射率)を求めて吸音率の評価を行う。
音響管の直径を細くするほど高周波まで測定することが可能である。今回は高周波まで吸音率特性を測定する必要があるために、直径20mmの音響管を選択する。
ところで、膜状部材12の振動の、少なくとも1つの高次振動モードの周波数における吸音率が、基本振動モードの周波数における吸音率よりも高い構成とするためには、背面空間24の厚み、膜状部材12の大きさ、厚み、硬さ、密度等を調整すればよい。
具体的には、背面空間24の厚み(図3中のLa)は、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、2mm以下がさらに好ましく、1mm以下が特に好ましい。
なお、背面空間24の厚みが一様でない場合には、平均値が上記範囲であればよい。
膜状部材12の厚みは、100μm未満が好ましく、70μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。なお、膜状部材12の厚みが一様でない場合には、平均値が上記範囲であればよい。
膜状部材12のヤング率は、1MPa〜100GPaであることが好ましく、10MPa〜50GPaであることがより好ましく、100MPa〜30GPaであることが最も好ましい。
膜状部材12の密度は、10kg/m3〜30000kg/m3であることが好ましく、100kg/m3〜20000kg/m3であることがより好ましく、500kg/m3〜10000kg/m3であることが最も好ましい。
膜状部材12の膜部分12aの形状(膜振動する領域の形状)、換言すると、枠体(内側枠体18および外側枠体19)の開口断面の形状は、特に制限的ではなく、例えば、正方形、長方形、ひし形、又は平行四辺形等の他の四角形、正三角形、二等辺三角形、又は直角三角形等の三角形、正五角形、又は正六角形等の正多角形を含む多角形、若しくは円形、楕円形等であってもよいし、不定形であってもよい。
膜状部材12の膜部分12aの大きさ(膜振動する領域の大きさ)、換言すると、枠体の開口断面の大きさは、円相当直径(図3中のLc)で1mm〜100mmが好ましく、3mm〜70mmがより好ましく、5mm〜50mmがさらに好ましい。
また、基本振動モードの周波数における吸音率よりも吸音率が高い、少なくとも1つの高次振動モードの周波数における吸音率は、20%以上であるのが好ましく、30%以上であるのがより好ましく、50%以上であるのがさらに好ましく、70%以上であるのが特に好ましく、90%以上であるのが最も好ましい。
なお、以下の説明において、基本振動モードの周波数における吸音率よりも吸音率が高い高次振動モードを単に「高次振動モード」とも言い、その周波数を単に「高次振動モードの周波数」とも言う。
また、2つ以上の高次振動モードの周波数における吸音率がそれぞれ20%以上であるのが好ましい。
複数の高次振動モードの周波数で吸音率が20%以上とすることで、複数の周波数で吸音することができる。
さらに、吸音率が20%以上となる高次振動モードが連続して存在する振動モードであるのが好ましい。すなわち、例えば、2次振動モードの周波数における吸音率と3次振動モードの周波数における吸音率がそれぞれ20%以上であるのが好ましい。
さらに、吸音率が20%以上となる高次振動モードが連続して存在する場合に、これら高次振動モードの周波数の間の帯域全域で吸音率が20%以上となるのが好ましい。
これによって、広帯域に吸音効果を得ることができる。
(第二吸音部について)
前述のとおり、第二吸音部は、単体(膜状部材を剛体と見なした場合)ではヘルムホルツ共鳴によって吸音する部位である。すなわち、第二吸音部は、板状部材14に形成された貫通孔14aと、第一空間26とによってヘルムホルツ共鳴が発生して吸音する。
ここで本発明の防音構造体においては、第一空間26を囲む隔壁の一部が膜状部材12で構成されているため、膜状部材12の振動と第一空間26内の気体(空気)の振動との相互作用が得られ、結果として、第一吸音部の膜状部材12の膜振動単体による吸音、および、第二吸音部のヘルムホルツ共鳴単体による吸音よりも高い周波数帯域(例えば、8kHz〜9kHz)で吸音する。
この点を図9および図10を用いてより詳しく説明する。
図9および図10は、第一吸音部単体での膜振動の基本周波数が1.5kHzで、第二吸音部単体でのヘルムホルツ共鳴の基本周波数が6.0kHzの構成を有する防音構造体に、それぞれ周波数3.3kHz、8.6kHzで、音圧1Paの音が図中上側から入射した際の、防音構造体内の音圧の分布を示した図である。周知のとおり、音圧とは音による圧力の大気圧からの変動分である。
第一吸音部は、膜振動の基本周波数以外の高次の振動モードにおける周波数でも吸音可能である。そのため、例えば、ヘルムホルツ共鳴の基本周波数以下の周波数であって、第一吸音部が吸音できる周波数の音(高次振動に対応し、一例としては3.3kHz付近の音)が防音構造体に対して入射されたときは、主に第一吸音部の膜振動によって吸音する。その際、膜状部材12よりも内側の空間(底壁側の空間)、すなわち、背面空間24の音圧は、膜振動が生じていることによって高くなる。一方、膜状部材12よりも外側の空間(音入射側の空間)、すなわち、第一空間内の空気は、膜状部材12の膜振動と同位相の音圧位相を有し、膜振動の方向に同調して振動する。そのため、図9に示すように、特に音圧が高まることがない。
よって、この場合のメカニズムは、第一吸音部、すなわち膜型共鳴体の基本振動もしくは高次振動による吸音が主要となる。
ヘルムホルツ共鳴の基本周波数6.0kHzよりも高い周波数8.6kHzの音が防音構造体に対して入射されたときは、図10に示すように板状部材14と膜状部材12の間の第一空間26の音圧が高くなる。
これは、第一吸音部の膜状部材12の膜振動の位相と、第二吸音部のヘルムホルツ共鳴による第一空間26内の空気の音振動の位相(特にヘルムホルツ共鳴のネック部の位相)とが互いに逆位相となるように振動するためである。この結果、膜状部材12および板状部材14を貫く方向(垂直方向)の音の局所速度成分が、両共鳴体の位相関係によって打ち消しあいの関係となるため、小さくなる。第一空間内の平面方向の局所速度成分が残ることで音が平面方向に流れやすくなり、第一空間26内の音圧が高くなる。よって、図10のような分布となる。
このように、ヘルムホルツ共鳴を主要因とする一方で、下部の膜型共鳴構造による垂直方向局所速度ベクトルの打ち消しあいによって、第一空間26の体積が実効的に狭くなったような効果(ヘルムホルツ共鳴のネック部からの音位相と、第一空間26底面の膜部分が逆方向の音位相を有するため)が現れて、ヘルムホルツ共鳴単体の周波数より高い周波数で吸音効果が現れる。
図9および図10は、いずれも、有限要素法計算ソフトCOMSOL ver.5.3(COMSOL Inc.)の音響モジュールを用いてシミュレーションを行った結果を示している。具体的には、円形状の板状部材14、外側枠体19、膜状部材12および内側枠体18がこの順に積層されて、且つ、背面空間24が閉空間となった防音構造体をモデル化して音響と構造の連成解析計算を行った。このとき、膜状部材12に関しては構造力学計算を行い、背面空間24及び第一空間26に関しては音の空気伝播を計算し、これらの音響計算と構造計算を強連成で結び付ける形でシミュレーションを行った。なお、計算モデルは二次元軸対称構造計算モデルとした。また、ヘルムホルツ共鳴を生じる貫通孔内は熱粘性音響計算を行うことで、粘性摩擦による摩擦熱吸音も含めて正確に計算を行った。これらの物理モードを連成させて計算を行った。
また、防音構造体10の計算モデルに関して説明すると、内側枠体18及び外側枠体19を円筒形状とし、開口部20および開口部40の直径を20mmとした。また、膜状部材12は、厚み50μmとし、ヤング率をPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムのヤング率である4.5GPaとした。また、板状部材14は、厚み2mmとし、中央部に直径8mmの貫通孔14aが形成されたものとした。
また、背面空間24及び第一空間26の各々の厚みは、2mmとした。
評価は、垂直入射吸音率配置で行い、吸音率の最大値とその時の周波数を計算した。
上述したように、本発明の防音構造体10は、第一吸音部に重ねられた第二吸音部において膜状部材12と、第一空間26内の空気が互いに逆位相にて振動して第一空間26内の音圧が高くなる結果、より高周波の音を吸音することができる。これにより、本発明の防音構造体10は、第一の吸音部が主に寄与する吸音周波数帯域、及び、第二の吸音部による吸音周波数帯域の双方において同時に吸音することができるため、より広帯域に亘って吸音することが可能である。かかる本発明の防音構造体10の有効性について、図11〜図16を参照しながら詳しく説明する。
図11は、参考例1であり、第一吸音部のみを備える防音構造体(すなわち、板状部材14、外側枠体19および第一空間26を備えず単層膜構造のみからなる防音構造体であり、以下、「膜振動単体の防音構造体」ともいう)における周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
図12および図13は、参考例2および3であり、第2吸音部のみを備え、膜状部材12を剛体とみなした防音構造体(すなわち、内側枠体18および背面空間24を備えず膜状部材12を剛体に置き換えたヘルムホルツ共鳴器であり、以下、「ヘルムホルツ共鳴単体の防音構造体」ともいう)における周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
図14〜図16は、それぞれ本発明の一例に係る防音構造体10の実施例1〜3における周波数と吸音率との関係を示すグラフである。
図11〜図16の各図に示すグラフは、前述の音響管測定法に則り、音響管端部に防音構造体を板状部材(膜振動単体の防音構造体に関しては膜状部材)が表側(音響入射側)に向いた状態で配置して、垂直入射吸音率及びその周波数を測定することで得られる。
[参考例1]
参考例1の膜振動単体の防音構造体は、内側枠体18を円筒形状のアクリル板とし、内側枠体18の外径を40mm、開口部20の直径を20mmとし、膜状部材12を厚み50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムとしている。また、膜振動単体の防音構造体は、背面空間24の底面に剛体(厚み100mmのアルミニウム板)からなる背面板を押し付けた構造となっている。つまり、膜振動単体の防音構造体では、背面空間24が閉空間となっている。また、背面空間24の厚みは、2mmとなっている。
内側枠体18は、厚み2mmのアクリル板(株式会社光製)を、レーザーカッターを用いて加工して作製した。
また、内側枠体18と膜状部材12とは、ドーナツ状のアクリル板の外縁とPETフィルムの外縁とを一致させた状態で、PETフィルムを両面テープ(アスクル製現場のチカラ)で貼り合せわせた。
よって、膜状部材が振動可能な範囲は直径20mmであり、その端部を固定された振動となる。
なお、防音構造体の背面に厚み100mmのアルミニウム板からなる剛体を押し付ける構造に代えて、下記の構成で同様に垂直入射吸音率測定を行った。
レーザーカッターを用いて、外径40mmの円形状の板を1枚作製し、前述したドーナツ状の板の外縁と円形状の板の外縁とを外径を一致させた状態で、両面テープ(アスクル製現場のチカラ)を用いて、ドーナツ状の板の、膜状部材とは反対側の面に円形状の板を貼り合わせて枠体を作製した。
上記の構成においても、防音構造体の背面に厚み100mmのアルミニウム板からなる剛体を押し付けた構造と同じ測定結果が得られた。
[参考例2および3]
ヘルムホルツ共鳴単体の防音構造体は、外側枠体19を円筒形状のアクリル板とし、外側枠体19の外径を40mm、開口部40の直径を20mmとし、板状部材14を厚み2mmのアクリル板としている。また、板状部材14の中央位置には貫通孔14aを設けた。また、膜振動単体の防音構造体は、背面空間24の底面に剛体(厚み100mmのアルミ板)からなる背面板を押し付けた構造となっている。また、第一空間26の厚みは、2mmとなっている。図12は、板状部材14に形成される貫通孔14aの直径が6mmの場合(参考例2)であり、図13は、板状部材14に形成される貫通孔14aの直径が8mmの場合である(参考例3)。また、図示は省略するが板状部材14に形成される貫通孔14aの直径が10mmの場合を参考例4とする。
[実施例1〜3]
本発明の一例に係る防音構造体10は、内側から順に内側枠体18、膜状部材12、外側枠体19及び板状部材14が配設されている。内側枠体18及び外側枠体19は、円筒形状のアクリル板からなり、各々の外径は40mm、開口部の直径は20mmであり、膜状部材12は、厚み50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムである。板状部材14は厚み2mmのアクリル板であり、板状部材14の中央位置には貫通孔14aが設けられている。また、本発明の一例に係る防音構造体10は、内側枠体18の開口部20の底部に底壁22が設けられている。つまり、本発明の一例に係る防音構造体10では、背面空間24が閉空間となっている。また、本発明の一例に係る防音構造体10では、背面空間24及び第一空間26の各々の厚みが2mmとなっている。
図14は、板状部材14に形成される貫通孔14aの直径が6mmの場合、すなわち、参考例1と参考例2とを組み合わせた構成の場合(実施例1とする)の周波数と吸音率との関係を測定したグラフである。図15は、板状部材14に形成される貫通孔14aの直径が8mmの場合、すなわち、参考例1と参考例3とを組み合わせた構成の場合(実施例2とする)の周波数と吸音率との関係を測定したグラフであり、図16は、板状部材14に形成される貫通孔14aの直径が10mmの場合、すなわち、参考例1と参考例4とを組み合わせた構成の場合(実施例3とする)の周波数と吸音率との関係を測定したグラフである。
図11から、膜振動単体の防音構造体は、背面空間24と隣接した膜状部材12の基本振動モードおよび高次振動モードの振動によって複数の周波数で吸音する構造となっていることがわかる。図11から基本振動モードの周波数は1.7kHzであることがわかる。特に、図11に示すように3kHz〜5kHzの帯域で複数の高い吸音ピークが現れており、各ピークでは高い吸音率を示している。その一方で、より高周波である8kHz付近に現れた吸音ピークでは、吸音率が50%未満となっている。つまり、膜振動単体の構成である参考例に係る防音構造体の場合、ある特定の周波数帯域では膜の基本振動モード若しくは高次振動モードの膜振動によって高い吸音率が得られるものの、それ以外の振動モードでは吸音率が低くなってしまう傾向にある。
図12および図13から、ヘルムホルツ共鳴単体の防音構造は、ヘルムホルツ共鳴の基本共鳴モードの周波数によって1つの周波数を中心とした帯域で吸音する構造となっていることがわかる。図12は基本共鳴モードの周波数が4.5kHzである。図13は基本共鳴モードの周波数が6.0kHzである。また、図12および図13から、膜振動単体の場合に比べて吸音率のピークがなだらかであることがわかる。また、基本共鳴モード以外のピークが現れていないことがわかる。
つまり、ヘルムホルツ共鳴単体の構成である参考例に係る防音構造体の場合、ヘルムホルツ共鳴の基本共鳴モードの周波数を中心とした帯域ではヘルムホルツ共鳴の基本共鳴モードによって高い吸音率が得られるものの、ヘルムホルツ共鳴の吸音に高次共鳴モードはないため、それ以外の周波数帯域では共鳴モードが現れない。よって、吸音率が低くなることがわかる。
これに対して、本発明の一例に係る防音構造体10では、図14〜図16に示すように、3.0kHz〜5.0kHzの帯域に現れる複数の吸音ピークの各々で高い吸音率を示すとともに、6.0kHz〜9.0kHz付近に現れる吸音ピークでも70%以上の吸音率を示している。このように本発明の一例に係る防音構造体10は、複数の高い周波数帯域にて同時に吸音することが可能であることがわかる。
以上の結果を表1および表2にまとめて示す。なお、表2には、膜振動の基本周波数fm1とヘルムホルツ共鳴の基本周波数fh1の比fh1/fm1の値も示した。上記実施例1〜3では、膜振動の基本周波数fm1とヘルムホルツ共鳴の基本周波数fh1は2倍より大きく離れている(fh1≧2×fm1を満たしている)。また、ヘルムホルツ共鳴器と膜振動の共鳴器を積層した構成の実施例1〜3の吸音特性は、ヘルムホルツ共鳴器単体、および、膜振動単体のいずれの基本周波数よりも大きい側に高周波側ピーク周波数が現れて大きな吸音率を有する。
Figure 0006960038
Figure 0006960038
ここで、本発明の一例に係る防音構造体10が吸音可能な周波数帯域のうち、第一吸音部が主に貢献する吸音の周波数帯域は、例えば3kHz〜5kHzにあり、第二吸音部による吸音の周波数帯域は、例えば6.0kHz〜9kHzにある。したがって、本発明の一例に係る防音構造体10は、例えばモーター音やインバーター音のような比較的高い周波数の音を同時に複数吸音することが可能である。
なお、以下では、第一吸音部が主に寄与する吸音の周波数帯域を、「低周波側の吸音周波数帯域」と呼ぶこととし、第二吸音部による吸音の周波数帯域を、「高周波側の吸音周波数帯域」と呼ぶこととする。また、低周波側の吸音周波数帯域に現れる吸音ピークを、「低周波側の吸音ピーク」と呼ぶこととし、高周波側の吸音周波数帯域に現れる吸音ピークを、「高周波側の吸音ピーク」と呼ぶこととする。
また、本発明の防音構造体10において、低周波側の吸音ピークの周波数は、背面空間24の厚みや背面空間24と隣接する膜状部材12の厚み等を調整することで変えられる。他方、高周波側の吸音ピークの周波数は、第一空間26の厚み、板状部材14の厚み、板状部材14に形成される貫通孔14aの大きさ、膜状部材12の厚み等を調整することで変えられる。このように本発明の防音構造体10では、低周波側及び高周波側の吸音ピークの周波数を、それぞれ独立して制御することが可能である。これにより、それぞれの吸音ピークの周波数を吸音すべき騒音の周波数に応じて適宜制御することが可能となり、結果として吸音が効率よく行われるようになる。
また、第一の吸音ピーク及び第二の吸音ピークのそれぞれの周波数を独立して変更できることは、金属棒等の振動によって生じる単純な騒音に対しても有効である。すなわち、膜振動を利用した従来の吸音装置では、膜の振動モード(2次元振動に基づく共鳴)と金属棒等の振動モード(1次元振動に基づく共鳴)は、それぞれの次数ごとの周波数間隔が相違するため、金属棒由来の単純騒音に対して膜振動の共鳴ピークを複数周波数で合わせることが困難であり、そのような単純騒音を好適に吸音することが困難であった。同様のことは、同じくピーク騒音が整数倍ごとに現れる、モーター、インバーター、ファン騒音に対しても同様の問題点があった。
これに対して、本発明の防音構造体10であれば、上述のように各吸音周波数帯域で吸音ピークの周波数を適宜変更することができるため、金属棒由来の単純騒音を吸音するのに好適なピーク周波数を設定することで、膜型共鳴体であっても適切に整数倍で現れるピーク騒音を吸音することが可能となる。
また、本発明の防音構造体は、音が入射する側の面にヘルムホルツ共鳴のための板状部材14が配置されるので、薄い膜を用いるために、膜面への衝撃に弱いことの多い膜状部材12に物が直接接触することを防ぐことができる。すなわち、板状部材14は、膜状部材12を保護する保護部材としての役割も果たす。
また、本発明の防音構造体は、貫通孔を有する板状部材と膜状部材とを所定距離離間して配置した構成であるため、小型軽量で薄型にすることができ消音手段の設置スペースが限られている電子機器等にも好適に用いることができる。
ここで、本発明の防音構造体は、第一吸音部の膜振動の基本周波数をfm1とし、第二吸音部において、膜状部材を剛体と見なした場合のヘルムホルツ共鳴の基本周波数をfh1とすると、fh1≧2×fm1を満たす構成を有する。fh1≧2×fm1を満たす構成とすることで、上述のように、膜状部材12の膜振動とヘルムホルツ共鳴との相互作用によってより高い周波数で吸音効果を得ることができる。
この点について、以下シミュレーションの結果を用いて説明する。
[シミュレーション1]
まず、図15で吸音率の測定結果を示した構成について、上述した有限要素法計算ソフトCOMSOL ver.5.3(COMSOL Inc.)を用いたシミュレーションを行なった。計算モデルは二次元軸対称構造計算モデルとし、内側枠体は円筒形状で開口部の直径が20mmとし、背面空間の厚みは2mmとした。膜状部材は厚み50μmとし、膜状部材の硬さを表すパラメータであるヤング率をPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムのヤング率である4.5GPaとした。外側枠体は円筒形状で開口部の直径が20mmとし、第一空間の厚みは2mmとした。板状部材14は厚み2mmとし、中央位置には直径8mmの貫通孔14aが設けられている構成とした。
以上の計算モデルにおいて、音響と構造の連成計算を行い、構造計算は膜状部材に関して行い、背面空間は音の空気伝搬を計算することで数値計算を行った。評価は垂直入射吸音率配置で行い、周波数と吸音率との関係を計算した。また、ヘルムホルツ共鳴を生じる開口孔内は熱粘性音響計算を行うことで、粘性摩擦による摩擦熱吸音も含めて正確に計算を行った。
シミュレーションの結果(計算した周波数と吸音率との関係)を図17に示す。なお、図17では、シミュレーション結果を実線にて示すとともに、対比情報として、実測結果(図15の測定結果)を点線にて示している。
図17に示すように、実測結果ではシミュレーション結果に比べて、吸音ピークの数が多く、各ピークにおける吸音率の変化度合いが大きくなっているものの、全体としての傾向は実測結果とシミュレーション結果との間で略一致している。すなわち、実測結果及びシミュレーション結果のいずれにおいても、3kHz付近に吸音ピークが存在し、さらに8kHz付近にも吸音ピークが存在している。つまり、シミュレーションにより、実測結果と同様に、本発明の防音構造体では大きく分けて2つの吸音周波数帯域にて吸音が生じることが明らかとなった。
[シミュレーション2]
板状部材14に形成される貫通孔14aの直径(貫通孔径)を1mmから19mmまで1mm刻みで変更した以外はシミュレーション1と同様にしてシミュレーションを行なった。
図18に、貫通孔径2mmの場合の周波数と吸音率との関係を表すグラフを示す(シミュレーション2−1)。図19に貫通孔径5mmの場合の周波数と吸音率との関係を表すグラフを示す(シミュレーション2−2)。図20に貫通孔径10mmの場合の周波数と吸音率との関係を表すグラフを示す(シミュレーション2−3)。図21に貫通孔径15mmの場合の周波数と吸音率との関係を表すグラフを示す(シミュレーション2−4)。
図18にグラフを示すシミュレーション2−1は、ヘルムホルツ共鳴の基本周波数fh1が1.4kHzであり、fh1≧2×fm1を満たさないため比較例に相当する。図18に示すように、1.4kHzにヘルムホルツ共鳴由来の強い吸音が現れた。これより高周波側ではヘルムホルツ共鳴周波数以上となり、この場合はヘルムホルツ共鳴器による反射率が大きくなる。よって、表面で音が反射されてしまい、音が膜状部材まで到達しにくくなるため、膜振動による吸音効果もあまり表れない。
図19にグラフを示すシミュレーション2−2、図20にグラフを示すシミュレーション2−3、および、図21にグラフを示すシミュレーション2−4は、ヘルムホルツ共鳴の基本周波数fh1がそれぞれ4.1kHz、7.7kHz、14.1kHzであり、いずれもfh1≧2×fm1を満たし本発明の実施例に相当する。いずれの場合も膜振動に由来する低周波側の吸音領域を有し、さらに高周波側にも吸音領域を有する。このようにして、二つの吸音領域において吸音することができる。
また、図21にグラフを示すシミュレーション2−4では、膜振動に由来する吸音は現れるが、ヘルムホルツ共鳴に由来する吸音が小さくなっている。これは、貫通孔径が大きすぎることによって、ヘルムホルツ共鳴の効果が小さくなっていると考えられる。
このように1mmから19mmまでの各貫通孔径で周波数と吸音率とのシミュレーションによって計算し、シミュレーション結果から、低周波側吸音領域で最大となる吸音率および吸音率が最大となる周波数(吸音周波数)と、高周波側吸音領域で最大となる吸音率および吸音率が最大となる周波数(吸音周波数)とを読み取った。
結果を図22および図23に示す。なお、低周波側吸音領域は4kHz以下の周波数領域とし、高周波側吸音領域は4.8kHz以上の周波数領域とした。
図22から、低周波側吸音領域では貫通孔径を変えても0.7以上の吸音率を有することがわかる。また、図23から、吸音周波数は貫通孔径5mm程度までは貫通孔径の大きさに応じて高周波側にシフトしているが、5mmより大きくしても吸音周波数が変化しないことがわかる。
一方、図22から、高周波側吸音領域では貫通孔径が小さすぎる場合と大きすぎる場合に吸音率が低くなることがわかる。具体的には吸音率が40%(0.4)以上となるのは、貫通孔径が4mm〜12mmの範囲であり、吸音率が50%(0.5)以上となるのは貫通孔径が4mm〜11mmの範囲であり、吸音率が80%(0.8)以上となるのは5mm〜10mmの範囲となることがわかる。
また、図23から、吸音周波数は貫通孔径10mm程度までは貫通孔径の大きさに応じて高周波側にシフトしているが、10mmより大きくしても吸音周波数が変化しないことがわかる。
すなわち、図22および図23の例では、貫通孔径を10mmより大きくすると、高周波側吸音領域での周波数が変化せずに吸音率が小さくなることがわかった。
ここで、シミュレーション2のモデルにおいて、膜状部材を剛体に置き換えた場合のヘルムホルツ共鳴単体の基本周波数をシミュレーションによって求めた。また、膜振動単体の基本周波数は1500Hzである。
図24に、貫通孔径と、元の膜振動の基本周波数fm1に対するヘルムホルツ共鳴の基本周波数をfh1の比fh1/fm1との関係を表すグラフを示す。また、右軸にはヘルムホルツ共鳴の基本周波数fh1を示す。
図24から、図22において吸音率が50%を超える条件であった貫通孔径4mm以上では、ヘルムホルツ共鳴の基本周波数が膜振動の基本周波数の2倍以上であることがわかる。よって、高周波側吸音領域で高い吸音率を得るためには「ヘルムホルツ共鳴の基本周波数fh1が膜振動の基本周波数fm1の2倍以上」である必要があることがわかる。
また、図24から、貫通孔径10mmのときヘルムホルツ共鳴の基本周波数は7700Hzであることがわかる。このとき、図23から、積層した吸音構造の高周波側の吸音ピーク周波数が8000Hzとなり、膜状部材を剛体とみなしたヘルムホルツ共鳴の基本周波数とほぼ一致している。そして、これより大きな貫通孔径において、高周波側吸音率が小さくなり、周波数が変わらなくなる。
従って、膜状部材を剛体とみなしたヘルムホルツ共鳴の基本周波数fh1が、防音構造体の高周波側最大吸音周波数より小さいことが好ましい。
[シミュレーション3]
板状部材14の厚みを3mmとした以外はシミュレーション2と同様に、板状部材14に形成される貫通孔14aの直径(貫通孔径)を1mmから19mmまで1mm刻みで変更してシミュレーションを行なった。
シミュレーション結果から、低周波側吸音領域で最大となる吸音率および吸音率が最大となる周波数(吸音周波数)と、高周波側吸音領域で最大となる吸音率および吸音率が最大となる周波数(吸音周波数)とを読み取った結果を図25および図26に示す。
図25から、低周波側吸音領域では貫通孔径を変えても0.6以上の吸音率を有することがわかる。また、図26から、吸音周波数は貫通孔径5mm程度までは貫通孔径の大きさに応じて高周波側にシフトしているが、5mmより大きくしても吸音周波数が変化しないことがわかる。
一方、図25から、高周波側吸音領域では貫通孔径が小さすぎる場合と大きすぎる場合に吸音率が低くなることがわかる。具体的には吸音率が40%(0.4)以上となるのは、貫通孔径が4mm〜13mmの範囲であり、吸音率が50%(0.5)以上となるのは貫通孔径が4mm〜12mmの範囲であり、吸音率が80%(0.8)以上となるのは5mm〜11mmの範囲となることがわかる。
また、図26から、吸音周波数は貫通孔径10mm程度までは貫通孔径の大きさに応じて高周波側にシフトしているが、10mmより大きくしても吸音周波数が変化しないことがわかる。すなわち、図25および図26の例では、貫通孔径を10mmより大きくすると、高周波側吸音領域での周波数が変化せずに吸音率が小さくなることがわかった。
シミュレーション2との対比から、貫通孔が形成される板状部材の厚みを大きくすることで、ヘルムホルツ共鳴の基本周波数fh1が低くなるため、貫通孔径をより大きく(ヘルムホルツ共鳴の基本周波数を高く)する必要があることがわかる。また、大きな貫通孔径でもその板状部材の厚みが大きいために、貫通孔の効果が残りやすい。したがって、ヘルムホルツ共鳴の効果が残りやすいため、周波数が高い側に効果のある範囲が広がる。ただし、効果のある領域の大きさは板状部材14の厚み2mmの場合とほとんど変化しない。
以上のとおり、本発明の防音構造体は、第二吸音部において、膜状部材を剛体と見なした場合のヘルムホルツ共鳴の基本周波数をfh1とし、第一吸音部の膜振動の基本周波数をfm1とすると、fh1≧2×fm1を満たすことで、膜状部材12の膜振動とヘルムホルツ共鳴との相互作用によってより高い周波数で吸音効果を得ることができ、また、複数の周波数帯域で吸音効果を得ることができる。
吸音率、高周波数帯域の吸音等の観点から、ヘルムホルツ共鳴の基本周波数fh1は、2.00×fm1≦fh1≦7.00×fm1を満たすことが好ましく、2.25×fm1≦fh1≦6.50×fm1を満たすことがより好ましく、2.50×fm1≦fh1≦6.00×fm1を満たすことがさらに好ましい。
第二吸音部のヘルムホルツ共鳴の基本周波数は、第一空間26の厚み、貫通孔14aの大きさ、板状部材14の厚み等を調整すればよい。
周知のとおり、ヘルムホルツ共鳴の基本周波数は貫通孔の開口面積と貫通孔の長さと背面空間の体積で決まる。具体的には、ヘルムホルツ共鳴の基本周波数fh1は、fh1=c/(2π)×√(S/(V×L))で与えられる。ここで、cは音速、Vは第一空間の体積、Sは貫通孔の断面積、Lは貫通孔の長さ(より正確には開口端補正距離が考慮された長さ)である。このなかで貫通孔の長さに関しては必ずしも板状部材の厚みと同一である必要はない。例えば、貫通孔部から延長するように筒状部材を取り付ければ板状部材は薄いままで貫通孔の長さを長くすることができる。この構成は、吸音構造全体の軽量化を行う必要がある場合に有利な構成である。また、たとえば貫通孔を形成する際にパンチング等を用いて、打ち抜いた際に生じるバリ状の構造を上述した筒状部材として機能させることもできる。
また、第一空間26の厚み(図3中のLb)は、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、2mm以下がさらに好ましく、1mm以下が特に好ましい。なお、第一空間26の厚みが一様でない場合には、平均値が上記範囲であればよい。
貫通孔14aの大きさは、円相当直径で1mm〜12mmが好ましく、3mm〜11mmがより好ましく、5mm〜10mmがさらに好ましい。
貫通孔の径が小さすぎると、貫通孔内に生じる熱粘性摩擦が大きくなり板状部材を音が通りにくくなるため、背面側に存在する膜状部材などに十分に音が行き届かなくなる。一方で、貫通孔の径が大きすぎると熱粘性摩擦が小さくなりすぎるため、ヘルムホルツ共鳴による吸音効果が十分に得られにくい。
板状部材14の厚みは、0.1mm〜10mmが好ましく、0.5mm〜7mmがより好ましく、1.0mm〜5mmがさらに好ましい。なお、板状部材14の厚みは、貫通孔部分における厚みである。
また、可聴域で吸音効果を得られる観点から、防音構造体10が吸音可能な周波数帯域として、吸音率が20%以上となる周波数帯域が1kHz〜20kHzの範囲に存在することが好ましく、1kHz〜15kHzの範囲に存在するのがより好ましく、1kHz〜12kHzの範囲に存在するのがさらに好ましく、1kHz〜10kHzの範囲に存在するのが特に好ましい。
なお、本発明において可聴域とは、20Hz〜20000Hzである。
また、可聴域内において、吸音率が最大となる周波数が2kHz以上に存在するのが好ましく、4kHz以上に存在するのがより好ましい。
また、装置小型化の観点から、防音構造体10の合計厚み(厚み方向における防音構造体10の一端から他端までの長さであり、厳密には、防音構造体10において最も厚い部分の厚みであり、図3中のLt)は、10mm以下であるのが好ましく、7mm以下であるのがより好ましく、5mm以下であるのがさらに好ましい。
なお、防音構造体10の厚みの下限値については、膜状部材12および板状部材14を適切に支持し得る以上、特に限定されるものではないが、0.1mm以上であるのが好ましく、0.3mm以上であるのがさらに好ましい。
また、本発明者らは、防音構造体10の膜状部材の膜振動において高次振動モードが励起されるメカニズムについてより詳細に検討した。
その結果、膜状部材12のヤング率をE(Pa)とし、膜状部材の厚みをt(m)とし、背面空間の厚み(背面距離)をd(m)とし、膜状部材が振動する領域の円相当直径、すなわち、膜状部材が枠体(例えば、内側枠体18)に固定されている場合には枠体の開口部の円相当直径をΦ(m)とすると、1つの膜状部材の硬さE×t3(Pa・m3)を、21.6×d-1.25×Φ4.15以下とすることが好ましいことが分かった。さらに、係数aを用いて、a×d-1.25×Φ4.15と表すと、係数aが、11.1以下、8.4以下、7.4以下、6.3以下、5.0以下、4.2以下、3.2以下と係数aが小さくなるほど好ましいことが分かった。
また、膜状部材の硬さE×t3(Pa・m3)は、2.49×10-7以上であることが好ましく、7.03×10-7以上であることがより好ましく、4.98×10-6以上であることがさらに好ましく、1.11×10-5以上であることがよりさらに好ましく、3.52×10-5以上であることが特に好ましく、1.40×10-4以上であることが最も好ましいことがわかった。
膜状部材の硬さを上記範囲とすることで、防音構造体10の膜状部材の膜振動において高次振動モードを好適に励起することができる。この点について、以下詳細に説明する。
先ず、膜状部材の物性として、膜状部材の硬さと膜状部材の重さが一致していれば、材質、ヤング率、厚み及び密度が異なるものであっても、膜振動の特性は同じとなることを見出した。
膜状部材の硬さは、(膜状部材のヤング率)×(膜状部材の厚み)3で表される物性である。また、膜状部材の重さは、(膜状部材の密度)×(膜状部材の厚み)に比例する物性である。
ここで、膜状部材の硬さは、ゼロテンションとした場合、すなわち、伸ばされることなく、例えば、膜状部材を台にただ乗せた状態で枠体に取り付けた場合に当てはまる。張力をかけながら膜状部材を枠体に取り付けた場合は、上記の膜状部材のヤング率に対して張力込の補正をすれば同様に扱うことができる。
図36及び図37は、膜状部材の硬さ=(膜状部材のヤング率)×(膜状部材の厚み)3と、膜状部材の重さ≒(膜状部材の密度)×(膜状部材の厚み)を一定に保ちながら、膜状部材の厚みを10μmから90μmまで5μm刻みで変化させた場合の、防音構造体による吸音率をシミュレーションによって求めた結果を示すグラフである。なお、シミュレーションは、有限要素法計算ソフトCOMSOL ver.5.3(COMSOL Inc.)の音響モジュールを用いて行った。
膜状部材の厚みヤング率及び密度は、厚み50μm、ヤング率4.5GPa、密度1.4g/cm3(PET膜に相当)を基準として膜状部材の厚みに合わせて変更した。枠体の開口部の直径は20mmとした。
図36には、背面距離が2mmの場合の結果を示し、図37には、背面距離が5mmの場合の結果を示す。
図36及び図37に示すとおり、膜状部材の厚みを10μmから90μmまで変えているにもかかわらず、同一の吸音性能が得られていることが分かる。すなわち、膜状部材の硬さ、及び膜状部材の重さが一致していれば、厚み、ヤング率、及び密度が異なっていても同じ特性を示すことが分かる。
次に、膜状部材の厚み50μm、密度1.4g/cm3で、枠体の開口部の直径を20mmとし、背面距離を2mmとして、膜状部材のヤング率を100MPaから1000GPaまで変更してそれぞれシミュレーションを行い、吸音率を求めた。108Paから1012Paまで、指数を0.05ステップで大きくして計算を行った。結果を図38に示す。図38は、膜状部材のヤング率と周波数と吸音率との関係を示すグラフである。この条件は、上記シミュレーションの結果により、異なる厚みに対しても同じ硬さになるように換算することができる。
図38に示すグラフおいて、グラフ中、最も右側、すなわちヤング率が高い側で吸音率が高くなっている帯状の領域は、基本振動モードに起因する吸音が生じたものである。基本振動モードであることは、これ以上低次のモードが現れないことを意味し、また、基本振動モードは、シミュレーションの膜振動の可視化によって確認することができる。なお、基本振動モードは、実験的にも膜振動の測定を行うことで確認可能である。
また、その左側、すなわち膜状部材のヤング率が小さい側で吸音率が高くなっている帯状の領域は、二次振動モードに起因する吸音が生じたものである。さらに、その左側で吸音率が高くなっている帯状の領域は、三次振動モードに起因する吸音が生じたものである。さらに、左側に行くにしたがって、すなわち膜状部材が柔らかくなるにしたがって、高次の振動モードに起因する吸音が生じている。
図38から、膜状部材のヤング率が高い、すなわち膜状部材が硬いと、基本振動モードによる吸音が支配的になり、膜状部材が柔らかくなるほど高次振動モードによる吸音が支配的になることが分かる。
背面距離を3mm、10mmとした以外は上記と同様にして、膜状部材のヤング率を種々変更してシミュレーションを行い、吸音率を求めた結果を図39及び図40に示す。
図39及び図40からも、膜状部材が硬いと、基本振動モードによる吸音が支配的になり、膜状部材が柔らかくなるほど高次振動モードによる吸音が支配的になることが分かる。
図38〜図40から、基本振動モードによる吸音の場合には、膜状部材のヤング率の変化に対して吸音率が最も高くなる周波数(ピーク周波数)が変化しやすいことがわかる。また、高次になるにしたがって、膜状部材のヤング率が変化してもピーク周波数の変化が小さくなることが分かる。
また、膜状部材の硬さが柔らかい側(100MPa〜5GPaの範囲)では膜状部材の硬さが変わっても吸音周波数がほとんど変化せず、異なる次数の振動モードに切り替わることが分かる。よって、環境の変化等で膜の柔らかさが大きく変化しても吸音周波数をほぼ変化せずに用いることができる。
また、膜状部材が柔らかい領域ではピークの吸音率が小さくなることが分かる。これは、膜状部材の屈曲による吸音が小さくなり膜状部材のマス(重さ)のみが重要になってしまうためである。
さらに、図38〜図40の対比から、背面距離が大きくなるほど、ピーク周波数が低くなることが分かる。すなわち、背面距離によってピーク周波数を調整できることが分かる。
ここで、図38から、高次(二次)振動モードによる吸音率が基本振動モードによる吸音率よりも高くなるヤング率(以下「高次振動ヤング率」ともいう)を読み取ると、31.6GPaであった。同様に、図39及び図40から高次(二次)振動モードによる吸音率が基本振動モードによる吸音率よりも高くなるヤング率を読み取ると、それぞれ、22.4GPa、4.5GPaであった。
さらに、背面距離4mm、5mm、6mm、8mm、12mmの場合についても、上記と同様にして膜状部材のヤング率を種々変更してシミュレーションを行い、吸音率を求めて、高次(二次)振動モードによる吸音率が基本振動モードによる吸音率よりも高くなるヤング率を読み取った。結果を図41及び表3に示す。
図41は、高次振動モードにおける吸音率が基本振動モードにおける吸音率よりも高くなる背面距離とヤング率の値をプロットしたグラフである。なお、背面距離が8mm、10mm、12mmの場合には、基本振動モードの吸音率は膜状部材のヤング率が低くなるにつれて下がるが、さらに低くなると吸音率が一旦高くなる領域が存在する。そのため、膜状部材のヤング率が低い領域で、高次振動モードにおける吸音率と基本振動モードにおける吸音率とが再逆転する領域が存在する。
Figure 0006960038
図41において、プロットされた点を結ぶ線よりも左下側の領域が、高次振動モードによる吸音が高くなる領域(高次振動吸音優位領域)であり、右上側の領域が基本振動モードによる吸音が高くなる領域(基本振動吸音優位領域)である。
高次振動吸音優位領域と基本振動吸音優位領域との境界線を近似式で表すと、y=86.733×x-1.25であった。
さらに、図41に示すグラフを、膜状部材の硬さ((ヤング率)×(厚み)3(Pa・m3))と背面距離(m)との関係に変換した結果を図42に示す。図42から高次振動吸音優位領域と基本振動吸音優位領域との境界線を近似式で表すと、y=1.926×10-6×x-1.25であった。すなわち、高次振動モードの周波数における吸音率が、基本振動モードの周波数における吸音率よりも高い構成とするためには、y≦1.926×10-6×x-1.25を満たす必要がある。
膜状部材のヤング率をE(Pa)とし、膜状部材の厚みをt(m)とし、背面空間の厚み(背面距離)をd(m)とすると、上記式は、E×t3(Pa・m3)≦1.926×10-6×d-1.25となる。
次に、枠体の開口部の直径(以下、枠直径ともいう)の影響について検討した。
背面距離を3mmとし、枠体の開口部の直径を15mm、20mm、25mm、30mmとした場合それぞれで、上記と同様に膜状部材のヤング率を種々変更してシミュレーションを行い、吸音率を算出し、図38に示すようなグラフを求めた。求めたグラフから高次振動モードによる吸音率が基本振動モードによる吸音率よりも高くなるヤング率を読み取った。
ヤング率を膜状部材の硬さ(Pa・m3)に変換して、枠直径(m)と膜状部材の硬さのグラフに、高次振動モードにおける吸音率が基本振動モードにおける吸音率よりも高くなる点をプロットした。結果を図43に示す。図43において、プロットされた点を結ぶ線を近似式で表すと、y=31917×x4.15であった。
背面距離が4mmの場合についても同様にシミュレーションを行って、高次振動モードにおける吸音率が基本振動モードにおける吸音率よりも高くなる点をプロットしたグラフを求めた。結果を図44に示す。図44において、プロットされた点を結ぶ線を近似式で表すと、y=22026×x4.15であった。
他の背面距離についても同様のシミュレーションを行って高次振動吸音優位領域と基本振動吸音優位領域との境界線を表す近似式を求めたところ、係数は異なるものの、変数xにかかる指数は、4.15で一定であった。
先に求めた、膜状部材の硬さ(Pa・m3)と背面距離(m)との関係式E×t3(Pa・m3)≦1.926×10-6×d-1.25は、枠直径が20mmの場合であるので、枠直径20mmを基準として、この式に枠直径Φ(m)を変数として組み込むと、E×t3(Pa・m3)≦1.926×10-6×d-1.25×(Φ/0.02)4.15となる。これを整理すると、E×t3(Pa・m3)≦21.6×d-1.25×Φ4.15となる。
すなわち、膜状部材の硬さE×t3(Pa・m3)を21.6×d-1.25×Φ4.15以下とすることで、高次振動モードにおける吸音率が基本振動モードにおける吸音率よりも高くすることができる。
なお、枠直径Φは枠体の開口部の直径であり、すなわち、膜状部材が振動する領域の直径である。なお、開口部の形状が円形以外の場合には、円相当直径をΦとして用いればよい。
ここで、円相当直径とは、膜振動部領域の面積を求めて、それと等しい面積となる円の直径を算出することで求めることができる。
以上の結果から、膜状部材の高次振動モードを利用する場合、その共鳴周波数(吸音ピーク周波数)は、膜状部材のサイズと背面距離でほぼ決定され、周囲の環境の変化により膜の硬さ(ヤング率)が変化しても共鳴周波数の変化幅が小さく、環境変化に対してロバスト性が高いことが分かる。
次に、膜状部材の密度について検討を行った。
膜状部材の密度を2.8g/cm3とし、膜状部材の厚みを50μmとし、枠体の開口部の直径を20mmとし、背面距離を2mmとして、膜状部材のヤング率を100MPaから1000GPaまで変更してシミュレーションを行い、吸音率を求めた。結果を図45に示す。
図45から、膜状部材のヤング率が大きい領域では基本振動モードによる吸音が支配的で、その吸音周波数は膜の硬さに対して依存性が大きいことが分かる。また、一方の膜状部材のヤング率が小さい領域では、膜の硬さが変化しても吸音周波数はほとんど変化しないことが分かる。
図45と、膜状部材の密度のみが異なる図38との対比から、膜状部材の密度が大きくなることで、すなわち膜状部材の質量が大きくなることで、膜が柔らかい領域での周波数が低周波側にシフトしていることが分かる。なお、図38に示したシミュレーションの場合が3.4kHzであり、図45に示したシミュレーションの場合が4.9kHzである。
また、図45から高次振動モードにおける吸音率が基本振動モードにおける吸音率よりも高くなるヤング率を求めたところ、31.6GPaであった。この値は、膜状部材の密度のみが異なる図38の結果と同じである。したがって、膜状部材の質量に応じて周波数は変化しているが、高次振動モードによる吸音が基本振動モードによる吸音を上回る膜の硬さは、膜の質量に因らないことが分かった。
背面距離を3mm、4mm、5mmに変更した以外は図45に示すシミュレーションと同様にシミュレーションを行い、高次振動モードにおける吸音率が基本振動モードにおける吸音率よりも高くなるヤング率を求めた。結果を表4に示す。
Figure 0006960038
表4と表3との対比から、膜状部材の質量が異なる場合でも、背面距離が2mmから5mmと小さい場合には、高次振動ヤング率は膜状部材の質量に依存せずに変わらないことが分かる。
さらに、膜状部材の密度を4.2g/cm3とし、膜状部材の厚み50μmで、枠体の開口部の直径を20mmとし、背面距離を2mmとして、膜状部材のヤング率を100MPaから1000GPaまで変更してシミュレーションを行い、吸音率を求めた。結果を図46に示す。
図46から、膜状部材の密度がより大きい場合においても、高次振動モードにおける吸音率が基本振動モードにおける吸音率よりも高くなる領域があり、そのときのヤング率は、31.6GPaであった。
したがって、膜状部材の密度に対して吸音ピーク周波数は依存するが、基本振動モードにおける吸音率より高次振動モードにおける吸音率が大きくなるヤング率と背面距離との関係は、変わらないことが分かった。
以上から、上記で求めた関係式E×t3(Pa・m3)≦21.6×d-1.25×Φ4.15は、膜状部材の密度が変化しても適用できることが分かる。
ここで、図38に対応する、背面距離2mm、枠体の開口部の直径20mmの場合について、基本振動モードによる吸音、二次振動モードによる吸音、及び三次振動モードによる吸音それぞれの吸音率ピーク(それぞれのモードにおける吸音極大値)を求めた。図50にそれぞれのヤング率と吸音率との関係を示す。
図50から、膜の硬さ(ヤング率)を変えることで、振動モード毎に吸音率が変化していることが分かる。また、膜の硬さが柔らかくなると高次振動モードの吸音率が高くなることが分かる。すなわち、膜が柔らかくなると、高次振動モードの吸音に移り変わることが分かる。
同様に、図40に対応する、背面距離3mmの場合について、基本振動モードによる吸音、二次振動モードによる吸音、三次振動モードによる吸音それぞれの吸音率ピークを求めた。図51にそれぞれのヤング率と吸音率との関係を示す。
図50及び図51において、基本振動モードの吸音率と2次振動モードの吸音率が逆転する膜の硬さが21.6×d-1.25×Φ4.15に対応する。
ここでは、基本振動モード吸音と2次振動モード吸音の吸音率に関して、関係式E×t3≦21.6×d-1.25×Φ4.15という関係式を求めた。同様にして、右辺の係数を膜の硬さ(ヤング率×厚みの3乗)に対して求めることができる。すなわち、右辺の係数をaとして、E×t3=a×d-1.25×Φ4.15から、ある条件を満たすヤング率Eおよび膜の厚みtに対応する係数aは、a=(E×t3)/(d-1.25×Φ4.15)から求めることができる。
この係数aとヤング率との関係を背面距離2mm、背面距離3mmのそれぞれについて求めた。
また、図50及び図51から、ヤング率に対して、二次振動モードにおけるピーク吸音率と基本振動モードにおけるピーク吸音率との比(二次振動モードの吸音率/基本振動モードの吸音率、以下、吸音倍率ともいう)を求めた。
吸音倍率とヤング率との関係を背面距離2mm、背面距離3mmのそれぞれについて求めた。
上記で求めた係数aとヤング率との関係と、ヤング率と吸音倍率との関係から、係数aと吸音倍率との関係を、背面距離2mm、背面距離3mmのそれぞれについて求めた。結果を図52に示す。
背面距離2mmの場合と、背面距離3mmの場合とでは、膜状部材の背面に存在する空気による空気ばねの硬さが異なるため、ヤング率に対する吸音率の振る舞いは互いに異なる(図50及び図51)。しかしながら、図52に示したように、係数aに従って吸音倍率を示すと、背面距離に依らずに吸音倍率が決定されることが分かる。この吸音倍率と係数aとの関係を表5に示す。
Figure 0006960038
図52及び表5から、係数aが小さいほど吸音倍率が大きくなることが分かる。吸音倍率が高い場合には、より高次振動モードの吸音が大きく現れ、また本発明の特徴であるコンパクトで高次振動モードによる吸音の効果を大きく出すことができる。
ここで、表5から分かるように、係数aは、11.1以下、8.4以下、7.4以下、6.3以下、5.0以下、4.2以下、3.2以下となることが好ましい。
また、別の観点で係数aが9.3以下の場合に、3次振動吸音が基本振動吸音率を上回る。よって、係数aが9.3以下であることも好ましい。
次に、ヤング率が非常に低い領域、すなわち、膜が柔らかい領域での吸音ピーク周波数について検討を行った。
まず、上述した膜状部材の密度が1.4g/cm3の場合のシミュレーション結果において、図38等からヤング率が100MPaの場合の吸音ピーク周波数を読み取った。結果を図47に示す。図47は背面距離とヤング率100MPaでの吸音ピーク周波数との関係を表すグラフである。
図47から、背面距離が大きくなることで吸音ピーク周波数が低周波側になることが分かる。
ここで、膜のない単純な気柱共鳴管との比較を行う。例えば、背面距離2mmの防汚構造体を、気柱共鳴管の長さ2mmの場合の気柱共鳴と比較する。背面距離2mmの場合、気柱共鳴管での共鳴周波数は開口端補正を加えても10600Hz付近となる。なお、気柱共鳴の共鳴周波数も図47にプロットした。
図47から、膜が柔らかい領域では、吸音ピーク周波数はロバスト性を持って一定の周波数に収束するが、その周波数は、気柱共鳴周波数ではなく、より低周波側の吸音ピークであることが分かる。つまり、膜を取り付けて高次振動モードによる吸音を実施することによって、膜状部材の変化に対してロバスト性を持ち、かつ気柱共鳴管と比較して背面距離が小さいコンパクトな吸音構造を実現することができる。
一方で、膜を極端に柔らかくすると吸音率が低下する。これは、膜振動が高次に移り変わる中で膜振動の腹と節のピッチが細かくなっていき、振動による曲がりが小さくなることで吸音効果が小さくなっていることが原因である。
同様に、上述した膜状部材の密度が2.8g/cm3の場合のシミュレーション結果において、図45等からヤング率が100MPaの場合の吸音ピーク周波数を読み取った。結果を図48に示す。
図48から、気柱共鳴管と比較して吸音ピーク周波数が小さくなるため、背面距離が小さいコンパクトな吸音構造を実現することができる。
また、図48に示すグラフから近似式を求めると、膜が柔らかい領域では、吸音ピーク周波数は背面距離の0.5乗によく比例することが分かる。
さらに、柔らかい膜まで検討するために、1MPaから1000GPaまでヤング率を変化させた場合の最大の吸音率を検討した。枠直径20mm、膜状部材の厚み50μm、背面距離3mmとして計算を行った。図49に最大吸音率をヤング率に対して示した。図49に示すグラフにおいて、吸音する振動モードが入れ替わる硬さ付近で最大吸音率の波形が振動している。また、膜状部材の厚み50μmで100MPa以下程度の柔らかい膜となると、吸音率が小さくなっていくことが分かる。
表6に、最大吸音率が40%、50%、70%、80%、90%を超えるヤング率と対応する膜の硬さ、さらに膜の最大吸音の振動モード次数が移り変わっても吸音率が90%を超えたままとなる硬さも示した。
表6から、膜状部材の硬さE×t3(Pa・m3)は、2.49×10-7以上であることが好ましく、7.03×10-7以上であることがより好ましく、4.98×10-6以上であることがさらに好ましく、1.11×10-5以上であることがよりさらに好ましく、3.52×10-5以上であることが特に好ましく、1.40×10-4以上であることが最も好ましいことが分かる。
Figure 0006960038
以下、防音構造体10各部(すなわち、板状部材14、膜状部材12、内側枠体18、および、外側枠体19)を構成する材料について説明する。
<枠体材料>
内側枠体18及び外側枠体19の材料(以下、枠体材料)は、膜状部材12とともに振動(共振)しないもの、すなわち剛体であり、具体的には金属材料、樹脂材料、強化プラスチック材料、および、カーボンファイバ等を挙げることができる。金属材料としては、例えば、アルミニウム、チタン、マグネシウム、タングステン、鉄、スチール、クロム、クロムモリブデン、ニクロムモリブデン、銅および、これらの合金等の金属材料を挙げることができる。また、樹脂材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルフォン、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリイミド、ABS樹脂(アクリロニトリル (Acrylonitrile)、ブタジエン(Butadiene)、スチレン (Styrene)共重合合成樹脂)、ポリプロピレン、および、トリアセチルセルロース等の樹脂材料を挙げることができる。また、強化プラスチック材料としては、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)、および、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastics)を挙げることができる。また、天然ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)、シリコーンゴム等ならびにこれらの架橋構造体を含むゴム類を挙げることができる。
また、枠体材料として各種ハニカムコア材料を用いることもできる。ハニカムコア材料は軽量で高剛性材料として用いられているため、既製品の入手が容易である。アルミハニカムコア、FRPハニカムコア、ペーパーハニカムコア(新日本フエザーコア株式会社製、昭和飛行機工業株式会社製など)、熱可塑性樹脂(具体的には、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)など)ハニカムコア(岐阜プラスチック工業株式会社製TECCELLなど)など様々な素材で形成されたハニカムコア材料を枠体材料として使用することが可能である。
また、枠材料として、空気を含む構造体、すなわち、発泡材料、中空材料、多孔質材料等を用いることもできる。多数の膜型の防音構造体を用いる場合に各セル間で通気しないためにはたとえば独立気泡の発泡材料などを用いて枠を形成することができる。例えば、独立気泡ポリウレタン、独立気泡ポリスチレン、独立気泡ポリプロピレン、独立気泡ポリエチレン、独立気泡ゴムスポンジなど様々な素材を選ぶことができる。独立気泡体を用いることで、連続気泡体と比較すると音、水、気体等を通さず、また構造強度が大きいため、枠材料として用いるには適している。また、上述した多孔質吸音体が十分な支持性を有する場合は、枠体を多孔質吸音体のみで形成しても良く、多孔質吸音体と枠体の材料として挙げたものを、例えば混合、混錬等により組み合わせて用いても良い。このように、内部に空気を含む材料系を用いることでデバイスを軽量化することができる。また、断熱性を付与することができる。
防音構造体10が高温となる場所に配置され得るため、枠体材料は、難燃材料より耐熱性の高い材料であることが好ましい。耐熱性は、例えば、建築基準法施行令の第百八条の二各号を満たす時間で定義することができる。建築基準法施行令の第百八条の二各号を満たす時間が5分間以上10分間未満の場合が難燃材料であり、10分間以上20分間未満の場合が準不燃材料であり、20分間以上の場合が不燃材料である。ただし、耐熱性については、適用分野別に定義されることが多い。そのため、防音構造体を利用する分野に合わせて、枠体材料を、その分野で定義される難燃性相当以上の耐熱性を有する材料からなるものとすればよい。
枠体の形状について付言しておくと、枠体の肉厚(円筒状の枠体であれば、外径と内径との差)や厚みについては、当該枠体にて膜状部材12を確実に固定、支持することができるものである以上、特に制限されるものではなく、例えば、枠体に形成された開口部20の大きさ(内径)等に応じて適宜設定することができる。
<膜材料>
膜状部材12の材料(以下、膜材料)としては、アルミニウム、チタン、ニッケル、パーマロイ、42アロイ、コバール、ニクロム、銅、ベリリウム、リン青銅、黄銅、洋白、錫、亜鉛、鉄、タンタル、ニオブ、モリブデン、ジルコニウム、金、銀、白金、パラジウム、鋼鉄、タングステン、鉛、および、イリジウム等の各種金属、あるいはPET(ポリエチレンテレフタレート)、TAC(トリアセチルセルロース)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PMP(ポリメチルペンテン)、COP(シクロオレフィンポリマー)、ゼオノア、ポリカーボネート、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、PAR(ポリアリレート)、アラミド、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PES(ポリエーテルサルフォン)、ナイロン、PEs(ポリエステル)、COC(環状オレフィン・コポリマー)、ジアセチルセルロース、ニトロセルロース、セルロース誘導体、ポリアミド、ポリアミドイミド、POM(ポリオキシメチレン)、PEI(ポリエーテルイミド)、ポリロタキサン(スライドリングマテリアルなど)およびポリイミド等の樹脂材料等が利用可能である。さらに、薄膜ガラスなどのガラス材料、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)およびGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)のような繊維強化プラスチック材料を用いることもできる。また、天然ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、EPDM、シリコーンゴム等ならびにこれらの架橋構造体を含むゴム類を用いることができる。あるいは、これらを組合せた材料を膜材料として用いてもよい。
なお、熱、紫外線、外部振動等に対する耐久性が優れている観点から、耐久性を要求される用途においては金属材料を膜材料として用いるのが好ましい。また、金属材料を用いる場合には、錆びの抑制等の観点から、表面に金属めっきを施してもよい。
また、枠体への膜状部材12の固定方法については、特に制限されるものではなく、両面テープまたは接着剤を用いる方法、ネジ止め等の機械的固定方法、圧着等が適宜利用可能である。ここで、枠体材料や膜材料と同様、耐熱、耐久性、耐水性の観点から固定手段を選定するのが好ましい。例えば、接着剤を用いて固定する場合には、セメダイン社「スーパーX」シリーズ、スリーボンド社「3700シリーズ(耐熱)」、太陽金網株式会社製耐熱エポキシ系接着剤「Duralcoシリーズ」などを固定手段として選定するとよい。また、両面テープを用いて固定する場合には、スリーエム製高耐熱両面粘着テープ9077などを固定手段として選定するとよい。このように、要求する特性に対して様々な固定手段を選択することができる。
<板状部材の材料>
板状部材の材料としては、膜材料と同じく、アルミニウム、チタン、ニッケル、パーマロイ、42アロイ、コバール、ニクロム、銅、ベリリウム、リン青銅、黄銅、洋白、錫、亜鉛、鉄、タンタル、ニオブ、モリブデン、ジルコニウム、金、銀、白金、パラジウム、鋼鉄、タングステン、鉛、および、イリジウム等の各種金属、あるいはPET(ポリエチレンテレフタレート)、TAC(トリアセチルセルロース)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PMP(ポリメチルペンテン)、COP(シクロオレフィンポリマー)、ゼオノア、ポリカーボネート、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、PAR(ポリアリレート)、アラミド、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PES(ポリエーテルサルフォン)、ナイロン、PEs(ポリエステル)、COC(環状オレフィン・コポリマー)、ジアセチルセルロース、ニトロセルロース、セルロース誘導体、ポリアミド、ポリアミドイミド、POM(ポリオキシメチレン)、PEI(ポリエーテルイミド)、ポリロタキサン(スライドリングマテリアルなど)およびポリイミド等の樹脂材料等が利用可能である。さらに、ガラス材料、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)およびGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)のような繊維強化プラスチック材料を用いることもできる。また、天然ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、EPDM、シリコーンゴム等ならびにこれらの架橋構造体を含むゴム類を用いることができる。あるいは、これらを組合せた材料を膜材料として用いてもよい。
防音構造体10が高温となる場所に配置され得るため、板状部材は、難燃材料、もしくは不燃材料、あるいは、耐熱性の高い材料であることが好ましい。
また、内側枠体18及び外側枠体19と膜状部材12及び板状部材14をともに樹脂材料やガラスなどの透明性のある部材を選ぶことで、防音構造体10自体を透明にすることができる。例えば、PET、アクリル、ポリカーボネートなど透明性樹脂を選べばよい。一般に用いられる多孔質吸音材料では、その多孔質が可視光を散乱するため、散乱光の発生を防ぐことができないため、透明な防音構造体を実現できることに特異性がある。
さらに、内側枠体18及び外側枠体19および/または膜状部材12及び板状部材14に反射防止コートあるいは反射防止構造をつけても良い。例えば、誘電体多層膜による光学干渉を用いた反射防止コートをすることができる。可視光を反射防止することで、内側枠体18及び外側枠体19および/または膜状部材12及び板状部材14の視認性がさらに下げて目立たなくすることができる。
このようにして透明な防音構造体を例えば窓部材に取り付けたり、代替として用いることができる。
また、内側枠体18及び外側枠体19もしくは膜状部材12及び板状部材14に遮熱機能を持たせることもできる。金属材料であれば一般的に近赤外線も遠赤外線も反射するため輻射熱伝導を抑制することができる。また、透明樹脂材料などであっても遮熱構造を表面に持たせることで透明なまま近赤外線のみを反射させることができる。例えば、誘電体多層構造によって可視光を透過させたまま近赤外線を選択的に反射させることができる。具体的には、3M社Nano90sなどのマルチレイヤーNanoシリーズは200層超の層構成で可視光は透過させつつ近赤外線を光学干渉によって選択的に反射するため、このような構造を透明樹脂材料に対して貼り合わせて枠体や膜状部材として用いることもできるし、この部材自体を膜状部材12として利用してもよい。例えば、窓部材の代替として吸音性と遮熱性を有する構造とすることができる。
環境温度が変化する系では、内側枠体18及び外側枠体19の材料と膜状部材12及び板状部材14とも環境温度に対して物性変化が小さいことが望ましい。
例えば樹脂材料を用いる場合には、大きな物性の変化をもたらす点(ガラス転移温度、融点等)が環境温度域外にあるものを用いることが望ましい。
さらに、枠体と膜状部材とで異質の部材を用いる場合には、環境温度に於ける熱膨張係数(線熱膨張係数)が同程度であることが望ましい。
枠体及び膜状部材との間で熱膨張係数が大きく異なると、環境温度が変化した場合に枠体と膜状部材の変位量が異なるため、膜に歪みが生じ易くなる。歪み及び張力変化は、膜の共鳴周波数に影響を与えるため、温度変化に伴って消音周波数が変化し易くなり、また温度が元の温度に戻っても歪みが緩和せずに消音周波数が変化したままになる場合がある。
これに対して、熱膨張係数が同程度である場合には、温度変化に対して枠体と膜状材料が同様に伸び縮みするために歪みが生じ難くなる結果、環境温度の変化に対して安定した消音特性を発現できる。
熱膨張係数の指標として線膨張率が知られており、例えばJIS K 7197等公知の方法で測定することができる。枠体と膜状材料との線膨張係数の差は、使用する環境温度域に於いて9ppm/K以下であることが好ましく、5ppm/K以下であることがより好ましく、3ppm/K以下であることが特に好ましい。このような範囲から部材を選定することで、使用する環境温度で安定した消音特性を発現できる。
<<本発明の防音構造体の変形例について>>
以上までに本発明の一例に係る防音構造体(すなわち、防音構造体10)の構成について説明してきたが、その内容は、あくまでも本発明の防音構造体の構成例の一つに過ぎず、他の構成も考えられる。以下では、本発明の防音構造体の変形例について説明する。
上述した防音構造体10の構成では、膜状部材12を支持する支持体16が、複数の円筒状枠体によって構成されていることとした。ただし、支持体16については、膜状部材12を膜振動可能に支持するものであればよく、例えば、各種電子機器の筐体の一部であってもよい。かかる構成を採用する場合、支持体16としての枠体を筺体側にあらかじめ一体成型するとよい。そのようにすれば、膜状部材12を後から取り付けることが可能となる。
また、支持体16は、枠体に限定されず、平板(ベース板)からなるものであってもよい。かかる構成を採用する場合、膜状部材12を湾曲させて、その端部を支持体16に固定し、また、板状部材14として湾曲した板を用いて積層することで、背面空間24および第一空間26を確保しつつ、膜状部材12を膜振動可能に支持することが可能となる。
また、膜状部材12の縁部を接着剤等で部材に固定した後に、その背面側(厚み方向における内側)より圧力を掛けて膜状部材12の膜部分12aを膨らませ、その後に背面側を板等で塞ぐ構成としてもよい。あるいは、湾曲した板状部材14を用いて、内側枠体18に膜状部材12を固定したあと、縁部に湾曲した板状部材14を固定する構成としてもよい。
また、支持体16を構成する枠体については、円筒形状に限定されるものではなく、膜状部材12を振動可能に支持できれば、種々の形状とすることが可能である。例えば、角筒形状(直方体の外形形状で開口部20が形成された形状)の枠体を用いてもよい。
また、上述した防音構造体10の構成では、背面空間24が閉空間となっており、厳密には、この空間が周囲の空間から完全に遮断されていることとした。ただし、これに限定されるものではなく、背面空間24は、その内部への空気の流れが阻害されるように仕切られていればよく、必ずしも完全な閉空間である必要はない。すなわち、上記の空間を囲む膜状部材12や内側枠体18の一部に孔やスリットが穿設されていてもよい。そして、膜状部材12や内側枠体18の一部に孔やスリットが設けられることにより、防音構造体10における吸音ピークの周波数を変えることが可能となる。
具体的に説明すると、図27に図示した防音構造体10の構成のように膜状部材12に貫通孔28を穿設すると、ピーク周波数を調整することができる。より詳しく説明すると、膜状部材12の膜部分12aに貫通孔28を形成すると、膜状部材12の音響インピーダンスが変化する。また、貫通孔28によって膜状部材12の質量が減少する。これらの事象に起因して膜状部材12の共鳴周波数が変化するものと考えられ、結果としてピーク周波数が変化することになる。
なお、図27は、本発明の防音構造体10の変形例を示す図であり、図3に図示の断面と同位置の断面を示す模式図である。図27に示す防音構造体は、膜状部材12に貫通孔28が形成されている以外は、図3に示す防音構造体と同じ構成を有するので、同じ部位には同じ符号を付し、異なる部位の説明を主に行なう。この点については、図28〜図32に示す変形例についても同様である。
また、貫通孔28が形成された後のピーク周波数については、貫通孔28の大きさ(図27中のLh)を調整することで制御可能である。また、貫通孔28の大きさについては、空気の流れが阻害される大きさであれば、特に限定されないが、膜状部材12の膜部分12aの大きさ(振動する領域の大きさ)よりも小さいサイズとし、具体的には円相当直径で0.1mm〜10mmが好ましく、0.5mm〜7mmがより好ましく、1mm〜5mmがさらに好ましい。
また、膜部分12aの面積に対する貫通孔28の面積の割合は、50%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
また、上述した防音構造体10の構成では、閉空間である背面空間24の内部に空気のみが存在していることとしたが、図28に示すように、背面空間24内に多孔質吸音体30が配置されている構成であってもよい。また、第一空間26内に多孔質吸音体が配置される構成であってもよい。
背面空間24あるいは第一空間26内に多孔質吸音体30を配置することで、吸音ピークでの吸音率が小さくなる代わりに低周波側に広帯域化することが可能となる。
多孔質吸音体30としては、特に限定はなく、公知の多孔質吸音体を適宜利用することが可能である。例えば、発泡ウレタン、軟質ウレタンフォーム、木材、セラミックス粒子焼結材、フェノールフォーム等の発泡材料及び微小な空気を含む材料;グラスウール、ロックウール、マイクロファイバー(3M社製シンサレートなど)、フロアマット、絨毯、メルトブローン不織布、金属不織布、ポリエステル不織布、金属ウール、フェルト、インシュレーションボード並びにガラス不織布等のファイバー及び不織布類材料、木毛セメント板、シリカナノファイバーなどのナノファイバー系材料、石膏ボードなど、種々の公知の多孔質吸音体が利用可能である。
また、多孔質吸音体の流れ抵抗σ1には特に限定はないが、1000〜100000(Pa・s/m2)が好ましく、5000〜80000(Pa・s/m2)がより好ましく、10000〜50000(Pa・s/m2)がさらに好ましい。
多孔質吸音体の流れ抵抗は、1cm厚の多孔質吸音体の垂直入射吸音率を測定し、Mikiモデル(J. Acoust. Soc. Jpn., 11(1) pp.19−24 (1990))でフィッティングすることで評価することができる。または「ISO 9053」に従って評価してもよい。
本発明の防音構造体は、さらに、膜状部材の板状部材側とは反対側の面側に、第二の膜状部材を有していてもよい。
具体的には、例えば、内側枠体18に形成された開口部20の両端が開口端となっており、内側枠体18におけるもう一方の開口面(内側の開口面)にも膜状部材(第二の膜状部材)が取り付けられている構成であってもよい。
あるいは、図29に示す防音構造体10のように、板状部材14、外側枠体19、膜状部材12、内側枠体18、第二の膜状部材13、および、第三の枠体32の順に積層される構成としてもよい。
図29の防音構造体10は、内側枠体18が開口部20の両端が開口端となっており、内側枠体18におけるもう一方の開口面(内側の開口面)に第二の膜状部材13の縁部が取り付けられており、第二の膜状部材13の内側枠体18とは反対側の面に第三の枠体32が取り付けられている。第三の枠体32は、剛体からなる有底の円筒型の枠体である。その径方向中央部分には円形の空洞からなる開口部が設けられている。また、厚み方向における第三の枠体32の一端面(外側の端部)は、開口面となっている。第三の枠体32の開口面には、第二の膜状部材13の縁部(外縁部)が固定される。すなわち、第二の膜状部材13は、縁部を内側枠体18と第三の枠体32に挟持されて、膜振動可能に支持される。第二の膜状部材13の背面空間24とは反対側の面側には、第三の枠体32と第二の膜状部材13とに囲まれた背面空間34が形成されている。
なお、図29に示す例では、第二の膜状部材13を1枚有する構成としたが、これに限定はされず、第二の膜状部材13を2枚以上有する構成としてもよい。
また、本発明の防音構造体は、さらに、板状部材の膜状部材側とは反対側の面側に、少なくとも1つの貫通孔を有する第二の板状部材を1枚以上有していてもよい。
例えば、図30に示す防音構造体10のように、第二の板状部材15、第四の枠体44、板状部材14、外側枠体19、膜状部材12、および、内側枠体18の順に積層される構成としてもよい。
第四の枠体44は、剛体からなる厚み方向に貫通する開口部を有する円筒型の枠体である。板状部材14の、外側枠体19とは反対側の面に、第四の枠体44の一方の開口面が取り付けられており、第四の枠体44の他方の開口面には第二の板状部材15が取り付けられている。第二の板状部材15は、外径が、第四の枠体44の開口面と略同じ大きさの円形の板状の部材である。第二の板状部材15は、その縁部(外縁部)が第四の枠体44の開口面に固定されている。また、第二の板状部材15の略中央部には、貫通孔15aが形成されている。第二の板状部材15と板状部材14との間には、第二の板状部材15と第四の枠体44と板状部材14とに囲まれた第二空間46が形成されている。第二の板状部材15に形成された貫通孔15aと、第二空間46とによってヘルムホルツ共鳴が発生する。
あるいは、第二の膜状部材と第二の板状部材とをそれぞれ1枚以上有していてもよい。
例えば、図31に示す防音構造体10のように、第二の板状部材15、第四の枠体44、板状部材14、外側枠体19、膜状部材12、内側枠体18、第二の膜状部材13、および、第三の枠体32の順に積層される構成としてもよい。
図27〜図31に示した各防音構造体のように、第二の膜状部材および/または第二の板状部材を有することによって、さらに異なる周波数での吸音率を高めることができる。
第二の膜状部材の材料としては、上述した膜状部材12の材料と同様のものが利用可能である。また、第二の膜状部材の厚み、硬さ、密度等は、上述した膜状部材12の材料、厚み、硬さ、密度等と同様の範囲とするのが好ましい。
第二の板状部材の材料としては、上述した板状部材14の材料と同様のものが利用可能である。また、第二の板状部材の厚み、貫通孔の大きさ等は、上述した板状部材14の厚み、貫通孔の大きさ等と同様の範囲とするのが好ましい。
第二の膜状部材13を有する場合には、第二の膜状部材13の膜部分13aに貫通孔36が形成された構成としてもよい。
第二の膜状部材13を複数有する場合には、少なくとも1つの第二の膜状部材13に貫通孔36が形成されていればよいが、全ての第二の膜状部材13に貫通孔が形成されていてもよい。
また、図32に示すように、膜状部材12および第二の膜状部材13それぞれに貫通孔(28、36)が形成された構成としてもよい。
さらに、膜状部材12および全ての第二の膜状部材13それぞれに貫通孔が形成された構成としてもよい。膜状部材12および全ての第二の膜状部材13に貫通孔が形成された構成とすることで、構造全体に完全な閉空間がない構造となる。たとえば外部温度や湿度変化などが生じた場合においても、構造全体に空気が循環しているために圧力が変わる等の影響を受けにくい構造となる。
膜状部材12および第二の膜状部材13を有する場合には、外側に配置される膜状部材(第二の膜状部材)に貫通孔が形成されるのが好ましい。貫通孔が形成された膜状部材は、平均面密度(膜状部材の質量を膜状部材の外形面積にて除した値)が小さくなる。平均面密度がより小さい膜状部材が、防音構造体10において外側の端に近い位置に配置されることによって、膜状部材を空気伝播音が通過し易くなり、また、貫通孔が形成されていることでより一層音が通過し易くなる。その結果、音波が防音構造体の内側に到達し易くなり、内側に配置された膜状部材による吸音の効果を高くすることができる。
なお、貫通孔28および36は、複数穿設されていてもよく、その場合には、それぞれの貫通孔のサイズを上記と同様に調整をすることが可能である。
また、板状部材14の貫通孔14aの部分には、ゴミを通さない大きさの網目を有するメッシュ部材を配置してもよい。メッシュ部材は、金属製あるいはプラスチック製のメッシュ、不織布、ウレタン、エアロゲル、ポーラス状のフィルム等を用いることができる。
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
なお、以下の実施例で挙げる材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等については、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
上述したとおり、本発明の防音構造体である実施例1〜3(図14〜図16)は、3.0kHz〜5.0kHz付近に大きな吸音率を有する領域(低周波側吸音領域)と、6.0〜9.0kHz付近に大きな吸音率を有する領域(高周波側吸音領域)を有する。どちらの領域でも最大吸音率は75%を超える。また、ヘルムホルツ共鳴器単体、および、膜振動単体のいずれの基本周波数よりも大きい側に高周波側ピーク周波数が現れて大きな吸音率を有する。このように、本発明の防音構造体は、貫通孔を有する板状部材と膜状部材とを積層することで、複数の高い周波数領域に渡って非常に大きな吸音を行うことができることがわかる。特に、高周波側吸音領域の吸音は、参考例1〜3(図11〜図13)にはなかったものであり、本構造が単純な吸音構造の足し算ではなく、二つの相互作用で高い周波数領域を吸音していることを示している。すなわち、高周波側吸音領域では、板状部材14と膜状部材12との間の第一空間26で、上部の板状部材14の貫通孔14aを透過した音と、下部の膜状部材12の膜振動による音が互いに近接場干渉をすることによって新たな吸音ピークが現れる、二つの要素が結びついて初めて現れる吸音モードである。
[シミュレーション4]
膜状部材12の厚みを25μm、75μmとした以外は、シミュレーション1と同様にしてシミュレーションを行なった。
図33に膜状部材12の厚みが25μmの場合の周波数と吸音率との関係を表すグラフを示す。図34に膜状部材12の厚みが75μmの場合の周波数と吸音率との関係を表すグラフを示す。
図33および図34から、いずれの場合も、低周波側と高周波側の両方に吸音ピークを有することがわかる。よって、膜状部材の厚みを変化させても同様の効果が得られる。
また、図17、図33および図34から、膜状部材の厚みによって、低周波側の共鳴周波数が変化することがわかる。
[実施例4]
膜状部材12に直径4mmの貫通孔28が形成された構成とした以外は、実施例3と同様の構成とした防音構造体を作製し、吸音率を測定した。
貫通孔28は、膜状部材12の中央部にポンチを用いて形成した。
結果を図35に示す。
図35に示すとおり、実施例4においても、低周波側と高周波側の両領域において吸音ピークが現れることがわかる。
外側のヘルムホルツ構造(板状部材14)、および、内側の振動膜構造(膜状部材12)の双方に貫通孔が形成されていることで、構造全体に完全な閉空間がない構造となる。たとえば外部温度や湿度変化などが生じた場合においても、構造全体に空気が循環しているために圧力が変わる等の影響を受けにくい構造となる。
以上の結果から、本発明の効果は明らかである。
10 防音構造体
12 膜状部材
12a 膜部分
13 第二の膜状部材
13a 膜部分
14 板状部材
14a 貫通孔
15 第二の板状部材
15a 貫通孔
16 支持体
18 内側枠体
19 外側枠体
20 開口部
21 開口面
22 底壁
24 背面空間
26 第一空間
28 貫通孔
30 多孔質吸音体
32 第三の枠体
34 背面空間
36 貫通孔
40 開口部
41 開口面
42 開口面
44 第四の枠体
46 第二空間

Claims (19)

  1. 少なくとも1つの貫通孔が形成された板状部材と、
    前記板状部材の一方の面に対面して配置される膜状部材と、
    剛体により構成され、前記板状部材および前記膜状部材を支持する支持体とを有し、
    前記膜状部材は前記支持体によって膜振動可能に支持されており、
    前記板状部材と前記膜状部材との間の第一空間と、
    前記膜状部材を挟んで前記第一空間とは反対側に設けられた背面空間と、を有し、
    前記膜状部材、前記支持体、および、前記背面空間は、膜振動によって吸音する第一吸音部を構成し、
    前記貫通孔を有する前記板状部材、前記支持体、前記膜状部材、および、前記第一空間は、ヘルムホルツ共鳴によって吸音する第二吸音部を構成し、
    前記第二吸音部において、前記膜状部材を剛体と見なした場合のヘルムホルツ共鳴の基本周波数をfh1とし、前記第一吸音部の膜振動の基本周波数をfm1とすると、fh1≧2×fm1を満たす防音構造体。
  2. 前記膜状部材の振動の、1kHz以上に存在する少なくとも1つの高次振動モードの周波数における吸音率が、基本振動モードの周波数における吸音率よりも高い請求項1に記載の防音構造体。
  3. 前記膜状部材のヤング率をE(Pa)とし、厚みをt(m)とし、前記背面空間の厚みをd(m)とし、前記膜状部材が振動する領域の円相当直径をΦ(m)とすると、
    前記膜状部材の硬さE×t3(Pa・m3)が、21.6×d-1.25×Φ4.15以下である請求項1または2に記載の防音構造体。
  4. 前記膜状部材の硬さE×t3(Pa・m3)が、2.49×10-7以上である請求項3に記載の防音構造体。
  5. 前記支持体は、筒状の外側枠体と、
    開口部を有する内側枠体と、を備え、
    前記板状部材、前記外側枠体、前記膜状部材、および、前記内側枠体の順に積層され、
    前記板状部材は、前記外側枠体の一方の開口面に固定され、
    前記膜状部材は、前記内側枠体の前記開口部が形成された開口面に固定され、
    前記第一空間は、前記板状部材、前記外側枠体、および、前記膜状部材に囲まれた空間であり、
    前記背面空間は、前記膜状部材と前記内側枠体とに囲まれた空間である請求項1〜4のいずれか一項に記載の防音構造体。
  6. 前記内側枠体の前記開口部は、前記開口面とは反対側に位置する底面を有する請求項5に記載の防音構造体。
  7. 前記第二吸音部のヘルムホルツ共鳴の基本周波数fh1と前記第一吸音部の膜振動の基本周波数fm1とが2×fm1≦fh1≦7×fm1を満たす請求項1〜6のいずれか一項に記載の防音構造体。
  8. 前記第一空間及び前記背面空間のそれぞれの厚みが10mm以下である請求項1〜7のいずれか一項に記載の防音構造体。
  9. 前記防音構造体の合計厚みが10mm以下である請求項1〜8のいずれか一項に記載の防音構造体。
  10. 前記膜状部材の厚みが100μm以下である請求項1〜9のいずれか一項に記載の防音構造体。
  11. 前記背面空間が閉じられた閉空間である請求項1〜10のいずれか一項に記載の防音構造体。
  12. 前記支持体もしくは底面の少なくとも一方に貫通孔を有する請求項1〜10のいずれか一項に記載の防音構造体。
  13. 前記膜状部材には、貫通孔が形成されている請求項1〜10のいずれか一項に記載の防音構造体。
  14. さらに、前記膜状部材の前記板状部材側とは反対側の面側に、1以上の第二の膜状部材を有する請求項1〜13のいずれか一項に記載の防音構造体。
  15. 前記第二の膜状部材のすべてに貫通孔が形成されている請求項14に記載の防音構造体。
  16. さらに、前記板状部材の前記膜状部材側とは反対側の面側に、少なくとも1つの貫通孔を有する第二の板状部材を1枚以上有する請求項1〜15のいずれか一項に記載の防音構造体。
  17. さらに、前記背面空間の少なくとも一部に配置された多孔質吸音体を有する請求項1〜16のいずれか一項に記載の防音構造体。
  18. 前記板状部材の前記貫通孔を覆うメッシュ部材を有する請求項1〜17のいずれか一項に記載の防音構造体。
  19. 吸音対象とする音源に対して、前記貫通孔を有する前記板状部材、前記膜状部材の順になる向きに配置される請求項1〜18のいずれか一項に記載の防音構造体。
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