以下、本発明の実施の形態による斜軸式液圧回転機として、可変容量型の斜軸式液圧回転機、より具体的には、可変容量型斜軸式油圧ポンプを例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1ないし図6は、第1の実施の形態を示している。図1において、斜軸式液圧回転機としての可変容量型斜軸式油圧ポンプ1(以下、油圧ポンプ1という)は、例えば油圧ショベルの原動機(駆動源となるエンジンや電動モータ)によって回転駆動され、作動油タンクからの油液を吸込んで、油圧管路の下流側に接続される各種油圧機器(いずれも図示せず)に圧油を供給する。油圧ポンプ1は、ケーシング本体2と、ヘッドケーシング3と、回転軸4と、シリンダブロック6と、センタシャフト7と、ピストン8と、弁板9と、傾転機構10とを備えている。
ケーシング本体2は、油圧ポンプ1の外殻となる中空の筒状体として形成されている。ケーシング本体2は、軸方向の一側に位置して略円筒状に形成された軸受部2Aと、軸受部2Aの他端から傾斜して延びたシリンダブロック収容部2Bとにより構成されている。即ち、ケーシング本体2は、軸方向の一側が軸受部2Aとなっている。シリンダブロック収容部2Bの他端には、ヘッドケーシング3が組付けられている。ケーシング本体2とヘッドケーシング3は、油圧ポンプ1全体のケーシングを構成している。
ヘッドケーシング3は、ケーシング本体2の軸方向の他側の開口、即ち、シリンダブロック収容部2Bの他端を閉塞して設けられている。即ち、ヘッドケーシング3は、ケーシング本体2のシリンダブロック収容部2B側に位置するヘッド側端面に取付けられている。ヘッドケーシング3は、ケーシング本体2側に位置する一端面3Aに、矩形の長溝となる凹円弧状摺接部3Bを有している。一方、ヘッドケーシング3には、凹円弧状摺接部3Bの奥部に位置して後述する傾転機構10のシリンダ孔11が設けられている。さらに、図3に示すように、ヘッドケーシング3には、凹円弧状摺接部3B(の凹円弧面3C)に開口する吸入流路3Eと排出流路3Fとが設けられている。
ここで、凹円弧状摺接部3Bは、円弧状に凹陥している。即ち、凹円弧状摺接部3Bは、センタシャフト7を支点(回転中心)として弁板9が傾転(揺動)したときの傾転半径(揺動半径)に沿って形成された凹円弧面3Cと、凹円弧面3Cの両端に位置して凹円弧面3Cから円柱状のシリンダブロック6側に向けて延びる一対の側面3Dとを備えている。そして、凹円弧状摺接部3Bには、弁板9の凸円弧状摺接部9Cが傾転可能に嵌合している。即ち、凹円弧状摺接部3Bの凹円弧面3Cは、弁板9の凸円弧状摺接部9Cの凸円弧面9Dと摺接し、凹円弧状摺接部3Bの側面3Dは、弁板9(凸円弧状摺接部9C)の側面9Eと摺接する。
図3および図4に示すように、凹円弧状摺接部3Bの凹円弧面3Cには、一対の給排流路、即ち、低圧側の給排流路となる吸入流路3Eと高圧側の給排流路となる排出流路3Fとが開口している。吸入流路3Eは、作動油タンク(図示せず)からの作動油を弁板9の低圧ポートとなる吸入ポート9Gを介して各シリンダ6B内に供給する。排出流路3Fは、弁板9の高圧ポートとなる排出ポート9H側から下流の油圧機器(例えば、油圧シリンダ等の油圧アクチュエータ)に向けて圧油(吐出油)を排出(吐出)する。また、凹円弧状摺接部3Bの凹円弧面3Cには、凹円弧面3Cの幅方向の中央側に位置して長さ方向(傾転方向)に延びるピン用開口3Gが設けられている。ピン用開口3Gには、傾転機構10のサーボピン13が挿通される。サーボピン13の先端側は、ピン用開口3Gから凹円弧面3Cよりも弁板9側に突出している。図3に示すように、実施の形態では、吸入流路3Eの開口内に、ピン用開口3Gが配置されている。
入力軸となる回転軸4は、ケーシング本体2の軸受部2A内に位置して、軸受部2A内を軸方向に延びて設けられている。回転軸4は、複数(例えば、3個)の転がり軸受5を介して、ケーシング本体2(の軸受部2A)に回転可能に支持されている。回転軸4の一端側は、ケーシング本体2から軸方向に突出する突出端4Aとなり、この突出端4Aには、エンジン等の原動機が動力伝達機構等(いずれも図示せず)を介して連結される。一方、回転軸4には、ケーシング本体2内への挿入側先端部、即ち、軸方向の他端部に位置して円板状のドライブディスク4Bが形成されている。即ち、回転軸4は、突出端4Aとは軸方向の反対側となる先端部がドライブディスク4Bとなっている。
ドライブディスク4Bには、シリンダブロック6と対向する他側端面の中心側に位置して中心側凹球面部4B1が設けられている。中心側凹球面部4B1には、センタシャフト7の球形部7Aが摺動可能に連結される。ドライブディスク4Bの他側端面には、中心側凹球面部4B1の径方向外側に位置して回転伝達用の複数の外径側凹球面部4B2が互いに周方向に離間して設けられている。各外径側凹球面部4B2には、各ピストン8の球形部8Aがそれぞれ揺動可能に連結される。
シリンダブロック6は、ケーシング本体2のシリンダブロック収容部2B内に設けられている。シリンダブロック6は、センタシャフト7、各ピストン8等を介してドライブディスク4Bに連結され、回転軸4と一体に回転する。シリンダブロック6は、円柱体(円筒体)として形成され、その中心軸線に沿って中心シリンダとしてのセンタシャフト挿入孔6Aが設けられている。センタシャフト挿入孔6Aには、センタシャフト7が挿入される。また、シリンダブロック6には、センタシャフト挿入孔6Aの周囲に位置して軸方向に延びるシリンダ6Bが周方向に間隔をもって複数配置されている。
さらに、シリンダブロック6は、後述の弁板9側となる軸方向の他端面が摺接端面6Cとなっている。摺接端面6Cは、弁板9の摺動球面部9Bと摺接するもので、凹球面状に形成されている。即ち、シリンダブロック6は、軸方向の他端面に凹球面状の摺接端面6Cが形成されている。シリンダブロック6の摺接端面6Cと各シリンダ6Bとの間には、摺接端面6C側で弁板9の吸入ポート9G、排出ポート9Hと連通、遮断される複数のシリンダポート6D(1本のみ図示)が形成されている。
センタシャフト7は、シリンダブロック6のセンタリングを行うために、シリンダブロック6のセンタシャフト挿入孔6Aに挿通されている。センタシャフト7は、一端側が回転軸4のドライブディスク4Bの回転中心位置に摺動可能に連結されている。即ち、センタシャフト7の一端側は、球形部7Aとなっている。球形部7Aは、ドライブディスク4Bの中心側凹球面部4B1内に揺動(摺動)可能に連結されている。センタシャフト7の他端側は、センタシャフト挿入孔6Aに挿通されている。
この場合、センタシャフト7の他端側には、有底状のばね収容穴7Bが形成されている。ばね収容穴7B内には、ばね7Cが配設されている。ばね7Cは、シリンダブロック6を弁板9の摺動球面部9Bに向けて常時付勢している。これにより、シリンダブロック6は、その摺接端面6Cを弁板9の摺動球面部9Bに密着させた状態で弁板9に対して正方向または逆方向に相対回転する。
複数のピストン8は、それぞれシリンダブロック6の各シリンダ6B内に往復動可能に挿嵌されている。複数本のピストン8は、シリンダ6Bから突出した一端側が回転軸4のドライブディスク4Bに揺動可能に連結されている。即ち、各ピストン8は、一端側が球形部8Aとなっている。球形部8Aは、ドライブディスク4Bの外径側凹球面部4B2内に揺動(摺動)可能に連結されている。各ピストン8は、回転軸4に対して傾転したシリンダブロック6が回転することにより、シリンダ6B内で往復動し、油液の吸込(吸入)、吐出(排出)を行う。
弁板9は、ヘッドケーシング3とシリンダブロック6との間に設けられている。弁板9は、ヘッドケーシング3の凹円弧状摺接部3B内で凹円弧面3Cに沿って傾転する。弁板9は、凹円弧状摺接部3Bの幅寸法(傾転方向に対する横方向の寸法、側面3Dの離間寸法)内に収まる四角形状の外形を有している。弁板9の一端面9A、即ち、シリンダブロック6と対面する側の端面(側面)となる一端面9Aには、シリンダブロック6の摺接端面6Cと摺接する凸球面状の摺動球面部9Bが形成されている。弁板9の摺動球面部9Bは、シリンダブロック6の摺接端面6Cと凹凸嵌合(球面嵌合)する。弁板9の摺動球面部9Bは、シリンダブロック6の摺接端面6Cが回転しつつ摺動する切換面となっている。
一方、摺動球面部9Bとは反対側となる弁板9の他端面は、ヘッドケーシング3の凹円弧状摺接部3Bに対応した円弧をもって突出した凸円弧状摺接部9Cとなっている。弁板9の凸円弧状摺接部9Cは、傾転機構10の作動時に、ヘッドケーシング3の凹円弧状摺接部3Bに傾転可能に摺接する。凸円弧状摺接部9Cは、凹円弧状摺接部3Bの凹円弧面3Cに対応して突出した凸円弧面9Dと、凸円弧面9Dの両端(弁板9の両端)に位置する一対の側面9Eとを備えている。そして、凸円弧状摺接部9Cは、凹円弧状摺接部3Bに傾転可能に嵌合している。
また、弁板9には、摺動球面部9Bの中央に位置して軸方向に貫通した嵌合孔9Fが設けられている。嵌合孔9Fは、サーボピン13の先端側が挿入される。また、図4および図5に示すように、弁板9には、眉形状をなす一対の給排ポート、即ち、低圧ポートとなる吸入ポート9Gと高圧ポートとなる排出ポート9Hとが周方向に延びて形成されている。吸入ポート9Gは、ヘッドケーシング3に形成された吸入流路3Eに連通している。排出ポート9Hは、ヘッドケーシング3に形成された排出流路3Fに連通している。
吸入ポート9Gおよび排出ポート9Hは、シリンダブロック6の回転に伴って各シリンダ6Bのシリンダポート6Dと間欠的に連通する。即ち、シリンダブロック6は、その摺接端面6Cが弁板9の摺動球面部9Bに対して摺接しつつ回転することにより、各シリンダ6Bと吸入ポート9Gまたは排出ポート9Hとの間で圧油の供給または排出が行われる。この場合、吸入ポート9Gは、吸入流路3Eと接続されており、作動油タンクからの作動油を各シリンダ6B内に供給する。排出ポート9Hは、排出流路3Fと接続されており、各シリンダ6B内の高圧の作動油(圧油)を下流の油圧機器側に向けて排出する。
傾転機構10は、ヘッドケーシング3に設けられている。傾転機構10は、シリンダブロック6と共に弁板9を傾転させる。傾転機構10は、凹円弧状摺接部3Bの最深部よりも奥部に位置して弁板9の傾転方向に直線状に延びて設けられたシリンダ孔11と、シリンダ孔11に摺動可能に挿嵌された動作部としてのサーボピストン12と、サーボピストン12の長さ方向の中間部位に設けられ、サーボピストン12から径方向に突出して弁板9側に向けて延びたサーボピン13とを備えている。
サーボピン13は、基端側がサーボピストン12に形成されたピン孔12A内に挿入され、先端側が凹円弧状摺接部3Bのピン用開口3Gが通じて弁板9の嵌合孔9Fに挿入(接続)されている。傾転機構10は、油通孔(図示せず)からシリンダ孔11(11A,11B)内に油液を供給することにより、シリンダ孔11(11A,11B)に沿ってサーボピストン12を移動することができる。このように、サーボピストン12を移動させることにより、サーボピン13を介して弁板9をシリンダブロック6と共に傾転させることができる。これにより、傾転機構10は、回転軸4に対するシリンダブロック6と弁板9の傾転角度を、最小傾転位置と最大傾転位置との間で調整することができる。
ところで、油圧ポンプ1は、次の手順で組み立てられる。即ち、回転軸4と転がり軸受5とをケーシング本体2に挿入し、回転軸4のドライブディスク4B(の凹球面部4B1,4B2)にセンタシャフト7の端部(球形部7A)およびピストン8の端部(球形部8A)を連結(挿入)する。その後、センタシャフト7およびピストン8をシリンダブロック6のセンタシャフト挿入孔6Aおよびシリンダ6Bに挿入する。このとき、組立作業の都合により、通常は、図2に示すように、回転軸4が上,下方向に垂直となり、かつ、この回転軸4に対してシリンダブロック6が上側となるように、ケーシング本体2を設置する。その後、シリンダブロック6の他端面側に形成された凹球面状の摺接端面6Cに、弁板9の一端面に形成された凸球面状の摺動球面部9Bを合わせて設置する。即ち、図2に示すように、シリンダブロック6の上側に弁板9を載置する。
この状態で、予め組み立てられたヘッドケーシング3および傾転機構10の組立体を、ケーシング本体2の上方からケーシング本体2に向けて降ろす。このとき、ヘッドケーシング3および傾転機構10の組立体は、サーボピン13の先端側を弁板9の中心穴である嵌合孔9Fに挿入でき、かつ、ヘッドケーシング3の凹円弧状摺接部3Bに弁板9の凸円弧状摺接部9Cを嵌合できる位置に保持しながら、ケーシング本体2に向けて降ろす。そして、サーボピン13の先端側が弁板9の嵌合孔9Fに挿入され、かつ、ヘッドケーシング3の凹円弧状摺接部3Bに弁板9の凸円弧状摺接部9Cが嵌合された状態で、ヘッドケーシング3をケーシング本体2に固定する。
ここで、実施の形態では、センタシャフト7は、シリンダブロック6の凹球面状の摺接端面6Cから弁板9に向けて突出していない。この構成の場合、センタシャフトを摺接端面から突出させる構成(例えば、特許文献1)と比較して、部品を小型化、部品構成の簡素化を図ることができ、コストを低減できる。しかし、この構成(突出していない構成)の場合、図2に示す組立工程で、弁板9をシリンダブロック6の上側に載置したときに、弁板9は、シリンダブロック6の凹球面状の摺接端面6Cと弁板9の凸球面状の摺動球面部9Bとの凹凸嵌合(球面状の凹凸嵌合、球面嵌合)のみでシリンダブロック6に支持されることになる。
このため、そのままでは、ヘッドケーシング3および傾転機構10の組立体をケーシング本体2に向けて降ろしつつ、この組立体のサーボピン13および凹円弧状摺接部3Bと弁板9との組み付け(挿入、嵌合)を行うときに、弁板9がシリンダブロック6に対して適正位置からずれる可能性がある。そして、仮に、これらがずれた状態で、ヘッドケーシング3とケーシング本体2とが固定された場合には、例えば、油圧ポンプ1の起動時に圧油が漏れたり、シリンダブロック6と弁板9との摺動面が片当たりとなり、耐久性の低下、性能の低下に繋がる可能性がある。
そこで、第1の実施の形態では、図5および図6に示すように、弁板9の一端面9A、即ち、シリンダブロック6と対面する側(傾転機構10とは反対側)の一端面9A(摺動球面部9Bが形成された側の端面9A)には、突起部としての突出面部21が設けられている。即ち、弁板9の一端面9Aのうち摺動球面部9Bから(径方向に)外れた位置には、一端面9Aからシリンダブロック6の外周面側に向けて突出し、かつ、シリンダブロック6の摺接端面6C側の外周縁部6Eと径方向の隙間(一定の隙間)を介して対面する複数(4個)の突出面部21が設けられている。図6に示すように、実施の形態では、シリンダブロック6は、横断面形状が円形の外周面6Fと、外周面6Fから摺接端面6C側の外周縁6Gに進むに従って外径寸法が小さくなる方向に傾斜した円錐面6Hとを有している。シリンダブロック6の外周縁部6Eは、外周縁6Gまたはその近傍となる円錐面6Hに相当する。
突出面部21は、シリンダブロック6の外周縁部6Eの周方向に離間した少なくとも2個所位置(第1の実施の形態では4個所位置)に設けられている。この場合、弁板9は、弁板9の傾転方向に互いに平行に延びる一対の案内面である一対の側面9Eを少なくとも有する形状(より具体的には、四角形状)である。即ち、弁板9は、それぞれが案内面となる一対の側面9Eと、この一対の側面9Eと直交して配置され、側面9Eの端部の間を接続する一対の接続面9Jとを有する四角形状となっている。また、弁板9の角隅部、即ち、弁板9の四隅となる4つの隅部(角隅部、角部)には、面取り部9Kが形成されている。そして、突出面部21は、弁板9の四隅のうちの少なくとも2つの隅部(第1の実施の形態では4つの隅部)に設けられている。
突出面部21は、弁板9と一体に形成され弁板9の一端面9Aから突出する突起部(突起面部)として構成されている。即ち、突出面部21は、摺動球面部9Bの外周縁9B1から径方向に離間した位置でシリンダブロック6の軸方向に立ち上がった立ち上がり面21Aと、立ち上がり面21Aの端縁からシリンダブロック6の径方向外側に向けて延びる平坦な上面21Bとを有している。換言すれば、突出面部21の上面21Bと摺動球面部9Bとの間は、上面21Bからヘッドケーシング3側に向けて凹む凹溝となっている。このため、油圧ポンプ1の組立時に、図6に示すように、シリンダブロック6の上側に弁板9を載置した状態で、弁板9とシリンダブロック6との位置関係がずれる傾向となると、突出面部21の上面21Bと立ち上がり面21Aとの接続部(接続縁)とシリンダブロック6の外周縁部6E(円錐面6H)とが当接する。これにより、組立時に弁板9とシリンダブロック6との位置関係を適正位置に維持できる。
このように、第1の実施の形態では、弁板9の一側面、具体的には、シリンダブロック6に対面する側の一端面9Aに、四角形状の弁板9の四隅に位置してシリンダブロック6側に延出(突出する)4つの突出面部21が設けられている。具体的には、四角形状の弁板9の一端面9Aには、中央側に位置して凸球面状の摺動球面部9Bが形成されている。そして、弁板9の一端面9Aの四隅、即ち、弁板9の4つの角部と摺動球面部9Bの外周縁9B1との間には、角部寄りに位置してシリンダブロック6の外周縁部6Eに向けてそれぞれ突出する4個の突出面部21が設けられている。
突出面部21は、円筒状(円柱状)のシリンダブロック6、即ち、外周面6Fの横断面形状が円形となったシリンダブロック6の外周縁部6E(円錐面6H)に対して、隙間を持って対向している。突出面部21は、ケーシング本体2内で弁板9とシリンダブロック6とを内装する組立時に、弁板9とシリンダブロック6との相対位置がずれないように、これらの相対位置関係(動き量)を規制する位置規制部(動き量規制部)である。即ち、図2に示すようにシリンダブロック6の上側に弁板9を載置したときに、弁板9は、シリンダブロック6に対して突出面部21で制限された範囲で位置関係(動き量)が調節される。
組立後は、弁板9の凸球面状の摺動球面部9Bとシリンダブロック6の凹球面状の摺接端面6Cとが球面嵌合(凹凸嵌合)し、かつ、シリンダブロック6と弁板9に作用する油圧力によって、これら弁板9とシリンダブロック6は調心される。即ち、油圧ポンプ1の組立後の稼働時には、球面嵌合と油圧力とに基づいて、弁板9の突出面部21とシリンダブロック6の外周縁部6Eとの間に一定の隙間が形成される。このため、ポンプ稼働時に、突出面部21がシリンダブロック6と接触(摺接)してポンプ性能に影響を与えることは阻止される。即ち、一定の隙間は、油圧ポンプ1の稼働時(シリンダブロック6の回転時)に弁板9の突出面部21と円柱状のシリンダブロック6の外周縁部6Eとが接触しない寸法として設定されている。これに加えて、一定の隙間は、組立時に弁板9とシリンダブロック6との位置関係がずれる傾向となっても、弁板9の突出面部21とシリンダブロック6の外周縁部6Eとが当接することでそれ以上適正位置からずれることを阻止できる寸法として設定されている。
実施の形態による油圧ポンプ1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
例えば、傾転機構10によってシリンダブロック6と共に弁板9を、図1に示す最大傾転位置に移動させる。この場合には、図示しないパイロットポンプからの圧油をシリンダ孔11(の小径孔11B)内に供給し、サーボピストン12を変位させる。これにより、サーボピン13が接続された弁板9がシリンダブロック6と共に傾転し、弁板9およびシリンダブロック6は、最大傾転位置まで移動する。一方、圧油を油通孔からシリンダ孔11(の大径孔11A)内に供給した場合には、弁板9をシリンダブロック6と共に、最小傾転位置や最大傾転位置と最小傾転位置との間の中間位置に移動することができる。
エンジン、モータ等の原動機(図示せず)によって回転軸4を回転駆動すると、回転軸4のドライブディスク4Bと共にシリンダブロック6が回転する。シリンダブロック6の回転中心軸は、回転軸4に対して傾斜しているので、シリンダブロック6の回転に伴って、ピストン8が各シリンダ6B内で往復動する。シリンダブロック6は、弁板9の切換面となる摺動球面部9B上を回転摺動し、シリンダブロック6に設けられた各シリンダ6Bのシリンダポート6Dは、弁板9に設けられた一対の給排ポート、即ち、低圧ポートとなる吸入ポート9Gと高圧ポートとなる排出ポート9Hに間欠的に連通する。
シリンダポート6Dが各給排ポートのうち低圧側(吸込側)のポートである吸入ポート9Gに連通する半回転の間は、ピストン8がシリンダ6Bから突出する吸込行程となり、シリンダ6B内に作動油が吸込まれる。即ち、ピストン8の吸込行程では、作動油タンクからヘッドケーシング3の吸入流路3E、弁板9の吸入ポート9Gを通じてシリンダ6B内に油液を吸込む。一方、シリンダポート6Dが各給排ポートのうち高圧側(吐出側)のポートである排出ポート9Hに連通する半回転の間は、ピストン8がシリンダ6B内に進入する吐出行程となり、吸込行程でシリンダ6B内に吸込まれた作動油を加圧して弁板9の排出ポート9Hに排出(吐出)する。即ち、ピストン8の吐出行程では、シリンダ6B内から圧油を吐出し、この圧油を弁板9の排出ポート9H、ヘッドケーシング3の排出流路3Fを通じて油圧管路の下流側に接続される各種油圧機器(図示せず)に圧油を供給する。
ここで、第1の実施の形態によれば、弁板9の一端面9Aのうち摺動球面部9Bから外れた位置には、この一端面9Aからシリンダブロック6側に向けて突出する突出面部21が設けられている。突出面部21は、シリンダブロック6と弁板9との位置ずれを規制する位置規制部となるものである。即ち、図2に示すように、油圧ポンプ1の組立工程で、シリンダブロック6の上側に弁板9を載置したときに、この弁板9がシリンダブロック6に対して適正位置からずれる傾向となる可能性がある。このとき、即ち、適正位置からずれる傾向となっても、シリンダブロック6の外周縁部6Eと突出面部21とが当接することにより、弁板9がそれ以上適正位置からずれることを抑制できる。換言すれば、組立時に、シリンダブロック6の外周縁部6Eと弁板9の突出面部21との当接に基づいて弁板9の動き量を規制できる。これにより、弁板9とシリンダブロック6とが適正位置の状態で、油圧ポンプ1の組み立てを完了させることができる。
一方、突出面部21は、シリンダブロック6の外周縁部6Eと径方向の隙間を介して対面する。即ち、油圧ポンプ1の作動時に、シリンダブロック6と弁板9は、シリンダブロック6の凹球面状の摺接端面6Cと弁板9の凸球面状の摺動球面部9Bとの球面嵌合(凹凸嵌合)と油圧の作用とに基づいて調心される。これにより、突出面部21は、一定の隙間が保たれた状態で、シリンダブロック6の外周縁部6Eと対面する。このため、油圧ポンプ1の作動時に、突出面部21とシリンダブロック6の外周縁部6Eとの相互の位置は、適正な位置に維持される。
実施の形態によれば、突出面部21は、シリンダブロック6の外周縁部6Eの周方向に離間した4個所位置に設けられている。このため、4個所位置に設けられた突出面部21により、シリンダブロック6と弁板9とのずれ(適正位置からのずれ)を抑制できる。
実施の形態によれば、弁板9は、互いに平行に延びる一対の側面9Eを有する四形状であり、突出面部21は、弁板9の四隅に設けられている。このため、4隅に設けられた突出面部21により、シリンダブロック6と弁板9とのずれ(適正位置からのずれ)を抑制できる。
実施の形態によれば、突出面部21は、弁板9と一体に形成されている。このため、弁板9と一体に形成された突出面部21により、シリンダブロック6と弁板9とのずれ(適正位置からのずれ)を安定して抑制できる。
次に、図7および図8は、第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、弁板のピン孔に挿入されたピンにより突起部を構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
第2の実施の形態の弁板9も、第1の実施の形態の弁板9と同様に、弁板9の傾転方向に互いに平行に延びる一対の案内面(一対の側面9E)を有する形状(より具体的には、四角形状)に形成されている。即ち、弁板9は、それぞれが案内面となる一対の側面9Eと、この一対の側面9Eの端部の間を接続する一対の接続面9Jとを有する四角形状となっている。
四角形状の弁板9の一端面9Aには、中央側に位置して凸球面状の摺動球面部9Bが形成されている。第2の実施の形態では、弁板9の一端面9Aのうち摺動球面部9Bから(径方向に)外れた部分は、摺動球面部9Bの外周縁9B1よりもヘッドケーシング3側に向けて一段凹んだ平坦面31となっている。そして、平坦面31には、平坦面31からヘッドケーシング3側に向けて延びる一対のピン孔32が穿設されている。即ち、平坦面31の四隅(弁板9の四隅)のうちの2つの隅部(角部)には、それぞれピン孔32が設けられている。換言すれば、平坦面31のうち摺動球面部9Bの外周縁9B1よりも径方向外側で周方向に180°離間した位置(弁板9の四隅のうち摺動球面部9Bの中心を挟んで対面する2つの隅部)には、それぞれピン孔32が設けられている。そして、ピン孔32には、それぞれ円柱状のピン33が固定されている。
第2の実施の形態では、ピン33が突起部に対応する。即ち、弁板9の一端面9Aのうち摺動球面部9Bから(径方向に)外れた位置となる平坦面31には、平坦面31から円柱状のシリンダブロック6の外周面側に向けて突出し、かつ、シリンダブロック6の摺接端面6C側の外周縁部6Eと径方向の隙間を介して対面するピン33が設けられている。この場合、弁板9の一端面9Aには、ピン孔32が穿設されている。そして、弁板9のピン孔32に挿入された弁板9とは別体のピン33により、弁板9の突起部を構成している。この場合、突起部としてのピン33は、シリンダブロック6の外周縁部6Eの周方向に離間した2個所位置に設けられている。このため、油圧ポンプ1の組立時に、図8に示すように、シリンダブロック6の上側に弁板9を載置した状態で、弁板9とシリンダブロック6との位置関係がずれる傾向となると、ピン33の頂部とシリンダブロック6の外周縁部6E(円錐面6H)とが当接する。これにより、組立時に弁板9とシリンダブロック6との位置関係を適正位置に維持できる。
第2の実施の形態は、上述のような一対のピン33により弁板9とシリンダブロック6とのずれ(適正位置からのずれ)を抑制するもので、その基本的作用については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
特に、第2の実施の形態によれば、弁板9の一端面9Aから突出する突起部を、弁板9のピン孔32に挿入されたピン33により構成している。このため、弁板9のピン孔32に挿入されたピン33により、シリンダブロック6と弁板9とのずれ(適正位置からのずれ)を安定して抑制できる。しかも、突起部を弁板9と別体のピン33により構成しているため、弁板9の製造工程に影響を与えずに突起部(ピン33)を設けることができる。例えば、弁板9の製造するときの最終工程でピン33をピン孔32に挿通することにより、これよりも前の弁板9の摺動球面部9Bの研削仕上げ等の工程でピン33(突起部)が邪魔になる等の影響を与えることを抑制できる。
第2の実施の形態によれば、突起部としてのピン33は、シリンダブロック6の外周縁部6Eの周方向に離間した2個所位置に設けられている。即ち、ピン33は、弁板の四隅のうちの2つの隅部に設けられている。このため、2個所位置(2つの隅部)に設けられたピン33により、シリンダブロック6と弁板9とのずれ(適正位置からのずれ)を抑制できる。
なお、第1の実施の形態では、突起部としての突出面部21を、シリンダブロック6の外周縁部6Eの周方向に離間した4個所位置に設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、突出面部は、例えば、シリンダブロックの外周縁部の周方向に180°離間した2個所位置に設けてもよい。また、突出面部は、周方向に隣り合う2個所位置に(偏らせて)設けてもよいし、3個所位置に設けてもよい。さらには、突出面部を、シリンダブロックの外周縁部の全周に亙って設けてもよい。また、突出面部を外周縁部の周方向の1個所位置に設けてもよい。
一方、第2の実施の形態では、突起部としてのピン33を、シリンダブロック6の外周縁部6Eの周方向に離間した2個所位置に設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、周方向にそれぞれ120°離間した3個所位置に突起部を設けてもよい。また、3個所以上の複数個所に設けてもよい。この場合、突起部は、周方向に等間隔に離間して配置してもよいし、異ならせて配置してもよい。また、突起部を周方向の1個所位置に設けてもよい。しかし、突起部は、シリンダブロックの外周縁部の周方向に離間した少なくとも2個所位置、または、全周に亙って設けることがより好ましい。
第1の実施の形態では、四角形状の弁板の四隅に突起部としての突出面部21を設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。また、第2の実施の形態によれば、四角形状の弁板の四隅のうち2つの隅部に突起部となるピン33を設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、四角形状の弁板の四隅のうち3つの隅部に突起部を設ける構成としてもよい。また、四角形状の弁板の四隅のうち1つの隅部に突起部を設ける構成としてもよい。しかし、突起部は、弁板の四隅のうちの少なくとも2つの隅部に設けることがより好ましい。
第1の実施の形態では、四角形状の弁板9を例に挙げて説明した。より具体的には、弁板9は、それぞれが案内面となる一対の側面9Eと、この一対の側面9Eの間を接続する一対の接続面9Jとを有する四角形状に形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、弁板は、傾転方向に互いに平行に延びる一対の案内面(側面)を少なくとも有する形状であればよい。例えば、四角形状の弁板の角部に面取り部を設けてもよいし、弁板を小判状に形成してもよい。また、案内面の間を接続する接続面を複数の面(平面、曲面)により構成してもよい。即ち、四角形状の弁板は、例えば、面取り部を設けた弁板、小判状の弁板、接続面を複数の面(平面、曲面)により構成した弁板も含むものとする。このことは、第2の実施の形態についても同様である。
第1の実施の形態では、突起部として平坦な上面21Bを有する突出面部21を例に挙げて説明した。また、第2の実施の形態では、突起部として円柱状のピン33を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、突起部は、弁板の一端面からシリンダブロック側に向けて突出し、かつ、シリンダブロックの外周縁部と所定の隙間を介して対面する突起部であれば、各種形状の突起部を採用することができる。この場合、所定の隙間(一定の隙間)は、組立時に弁板とシリンダブロックとの位置がずれる傾向となったときに、突起部とシリンダブロックの外周縁部(外周縁またはその近傍)とが当接することでそれ以上の位置ずれを阻止できる(適正位置に保持できる)隙間寸法として設定することができる。そして、適正位置は、組立後に斜軸式液圧回転機を稼働(回転軸を回転)させたときに、シリンダブロックと弁板との調心機能(調心作用)に基づいて突起部とシリンダブロックとが離間する(所定の隙間が形成される)位置に対応する。
第1の実施の形態では、シリンダブロック6に外周面6Fから縮径する円錐面6Hを設けた構成、即ち、この円錐面6Hをシリンダブロック6の外周縁部6Eとした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、円錐面を設けずに、シリンダブロックの外周面を外周縁部としてもよい。即ち、シリンダブロックの外周縁部は、シリンダブロックの摺接面側の外周縁またはその近傍で突起部と対面する部分に対応する。
第1の実施の形態では、斜軸式液圧回転機として可変容量型の油圧ポンプ1を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、固定容量型の油圧ポンプを用いてもよい。このことは、第2の実施の形態についても同様である。
第1の実施の形態では、斜軸式液圧回転機として油圧ポンプ1を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、油圧モータ等、他の斜軸式液圧回転機として用いてもよい。このことは、第2の実施の形態についても同様である。
各実施の形態では、油圧ポンプ1を油圧ショベルに適用する場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、油圧クレーン、ホイールローダ等の油圧ショベル以外の建設機械に適用してもよい。また、上述した各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。