JP6958800B2 - インクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
また、オフセットコート紙のような低吸水性のコート紙、又はポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂等の非吸水性樹脂のフィルム等の低吸水性記録媒体を用いた商業印刷向けの記録媒体への印刷が求められている。
例えば、特許文献2には、フルカラー印刷に好適な、貯蔵安定性に優れた、オレンジ色のインクジェット記録用水性インクとして、(メタ)アクリル酸エステル樹脂及びポリウレタン樹脂と、特定の有機顔料と有機顔料誘導体と水とを含有する、インクジェット記録用水性インクが開示されている。
また、基本3原色以外の色を再現する他の方法として、基本3原色の内の2色以上のインクを併用する場合、例えば特許文献1の色材で低吸水性記録媒体に記録を行った際、C.I.ピグメントイエロー74のイエローインクとC.I.ピグメントレッド122のマゼンタインクの組み合わせで低吸水性記録媒体にレッド色を再現すると、得られた記録物の耐水性が劣ることが判明した。そのため、屋外用途のような過酷な環境下、基本3原色以外の色を再現する場合において、光沢度及び耐水性が十分でなく、光沢度及び耐水性の改善が求められている。
本発明は、低吸水性記録媒体を用いて基本3原色以外の色を再現する際に、光沢度及び耐水性に優れる記録物を得ることができるインクジェット記録方法を提供することを課題とする。
すなわち、本発明は、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子、及び水を含む水系インクを記録媒体上に吐出して記録するインクジェット記録方法であって、
該顔料が、C.I.ピグメント・レッド177、C.I.ピグメント・レッド254、C.I.ピグメント・グリーン7、C.I.ピグメント・グリーン36及びC.I.ピグメント・ブルー15:6から選ばれる1種以上であり、
該粒子を構成する水不溶性ポリマーが、(b−1)イオン性モノマー由来の構成単位と、(b−2)疎水性モノマー由来の構成単位と、(b−3)グラフト鎖を形成し得るモノマー由来の構成単位とを含み、
該記録媒体と純水との接触時間100m秒における該記録媒体の吸水量が0g/m2以上10g/m2以下である、インクジェット記録方法に関する。
本発明のインクジェット記録方法は、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子(以下、「顔料含有ポリマー粒子」ともいう)、及び水を含む水系インクを記録媒体上に吐出して記録するインクジェット記録方法であって、該顔料が、C.I.ピグメント・レッド(以下、「PR」ともいう)177、PR254、C.I.ピグメント・グリーン(以下、「PG」ともいう)7、PG36及びC.I.ピグメント・ブルー(以下、「PB」ともいう)15:6から選ばれる1種以上であり、該粒子を構成する水不溶性ポリマー(以下、単に「水不溶性ポリマー」ともいう)が、(b−1)イオン性モノマー由来の構成単位と、(b−2)疎水性モノマー由来の構成単位と、(b−3)グラフト鎖を形成し得るモノマー由来の構成単位とを含み、該記録媒体と純水との接触時間100m秒における該記録媒体の吸水量が0g/m2以上10g/m2以下である。
なお、本明細書において、「記録」とは、文字や画像を記録する印刷、印字を含む概念であり、「記録物」とは、文字や画像が記録された印刷物、印字物を含む概念である。また、「水系」とは、インクに含有される媒体中で、水が最大割合を占めていることを意味する。また、「低吸水性」とは、低吸液性、非吸液性を含む概念であり、記録媒体と純水との接触時間100m秒における該記録媒体の吸水量が0g/m2以上10g/m2以下であることを意味する。
顔料を、イオン性モノマー由来の構成単位と、疎水性モノマー由来の構成単位と、グラフト鎖を形成し得るモノマー由来の構成単位とを含み、グラフト鎖を有する水不溶性ポリマーで被覆するため、該イオン性モノマー由来の構成単位に起因する静電的な斥力と、該グラフト鎖の立体斥力により顔料含有ポリマー粒子の凝集が抑制され、水系インク中の該粒子の分散安定性を向上することができる。一方、低吸水性記録媒体上に吐出された該粒子を含む水系インクは、記録媒体中に吸収されることなく記録媒体上で、静電的な斥力と立体斥力により顔料含有ポリマー粒子の凝集を抑制しつつ水を含む溶媒が乾燥される。
基本3原色の顔料で、例えばレッド、グリーン又はブルーの色を再現するには2種以上の顔料を用いる必要があり、記録媒体上で、静電的な斥力と立体斥力を有する複数種の顔料粒子が重ねて吐出及び乾燥されることになる。複数種の顔料粒子の内、先に記録媒体上に吐出された顔料粒子は溶媒が乾燥しつつある状態であり、新たに吐出された顔料粒子は溶媒がまだ乾燥していない状態にある。記録媒体上の該粒子を含む被膜は、溶媒の乾燥状態の異なる複数種の顔料粒子が重ねられた結果、溶媒の乾燥過程において、静電的な斥力と立体斥力が十分に働かないため、該粒子の一部の凝集が進行してしまい、膜の均一性や表面の平滑性が低下する傾向になると考えられる。
本発明では、顔料としてPR177、PR254、PG7、PG36及びPB15:6から選ばれる1種以上を用いることで、基本3原色以外の色の再現においても複数種の顔料粒子が重ねられる頻度が低くなり、静電的な斥力と立体斥力が十分に働き、低吸水性記録媒体上で強固で滑らかな被膜を形成され、記録物表面上での顔料粒子による乱反射が抑制される。その結果、光沢度及び耐水性が向上すると考えられる。
また、イオン性モノマー由来の構成単位、疎水性モノマー由来の構成単位及びグラフト鎖を形成し得るモノマー由来の構成単位のいずれかを含まないポリマーで顔料を分散した場合や、イオン性モノマー由来の構成単位と、疎水性モノマー由来の構成単位と、グラフト鎖を形成し得るモノマー由来の構成単位とを含んでいても、水不溶性ポリマーではないポリマーで顔料を分散した場合は、低吸水性記録媒体上に吐出された顔料粒子の分散安定性が劣るため、該粒子の一部の凝集が起こり、低吸水性記録媒体上で強固で滑らかな被膜を形成することができず、光沢度及び耐水性が劣ると考えられる。
〔顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子(顔料含有ポリマー粒子)〕
(顔料)
顔料は、光沢度及び耐水性を向上させる観点から、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子として水系インク(以下、単に「インク」ともいう)に含有される。
本発明に用いる顔料は、有機顔料であり、光沢度及び耐水性を向上させる観点から、PR177、PR254、PG7、PG36及びPB15:6から選ばれる1種以上である。
これにより、基本3原色以外のレッド、グリーン又はブルーの色を再現する特色インクが得られる。
グリーンインクの顔料としては、好ましくは塩素化銅フタロシアニン顔料であるPG7及び臭素化銅フタロシアニン顔料であるPG36から選ばれる1種以上である。
ブルーインクの顔料としては、好ましくはε型銅フタロシアニン顔料であるPB15:6である。
顔料含有ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーは、後述する特定のモノマー由来の構成単位とを含み、グラフト鎖を有する水不溶性ポリマーであり、顔料分散作用を発現する顔料分散剤としての機能と、低吸水性記録媒体への定着剤としての機能を有する。
ここで、「水不溶性」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下であることを意味し、その溶解量は好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。水不溶性ポリマーがアニオン性ポリマーの場合、その溶解量は、ポリマーのアニオン性基を水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。水不溶性ポリマーがカチオン性ポリマーの場合、その溶解量は、ポリマーのカチオン性基を塩酸で100%中和した時の溶解量である。
水不溶性ポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル系ポリマー等が挙げられるが、光沢度及び耐水性を向上させる観点から、ビニルモノマー(ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物)の付加重合により得られるビニル系ポリマーが好ましい。該ビニル系ポリマーは、(b−1)イオン性モノマーと、(b−2)疎水性モノマーと、(b−3)グラフト鎖を形成し得るモノマーとを含むモノマー混合物(以下、単に「モノマー混合物」ともいう)を共重合させてなる。
(b−1)成分は、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、水不溶性ポリマーのモノマー成分として用いられる。
(b−1)成分としては、アニオン性モノマー及びカチオン性モノマーが挙げられ、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、アニオン性モノマーが好ましい。アニオン性モノマーは、好ましくはカルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー及びリン酸モノマーから選ばれる1種以上である。
カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記アニオン性モノマーの中でも、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、好ましくはカルボン酸モノマーであり、より好ましくは(メタ)アクリル酸であり、更に好ましくはメタクリル酸である。
なお、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上を意味する。以下においても同義である。
(b−2)成分は、顔料への水不溶性ポリマーの吸着性を向上させる観点、及び顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、水不溶性ポリマーのモノマー成分として用いられる。(b−2)成分は、好ましくは脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び芳香族基含有モノマーから選ばれる1種以上である。
脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、好ましくは炭素数1以上22以下の脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有するものであり、より好ましくは炭素数1以上22以下のアルキル基を有するものであり、更に好ましくは炭素数6以上18以下のアルキル基を有するものである。
脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート;イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれる1種以上を意味する。したがって「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートから選ばれる1種以上を意味する。以下においても同義である。
スチレン系モノマーは、好ましくはスチレン及び2−メチルスチレンから選ばれる1種以上であり、より好ましくはスチレンである。
芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステルは、好ましくはベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上であり、より好ましくはベンジル(メタ)アクリレートである。
(b−3)成分は、水不溶性ポリマーのモノマー成分として用いる。(b−3)成分を用いることにより水不溶性ポリマーへグラフト鎖を導入することができる。
(b−3)成分は、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点、光沢度及び耐水性を向上させる観点から、好ましくは芳香族基含有マクロモノマー、シリコーン系マクロモノマー等のマクロモノマー及びポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールマクロモノマーから選ばれる1種以上であり、より好ましくは芳香族基含有マクロモノマー及びポリアルキレングリコールマクロモノマーから選ばれる1種以上であり、光沢度及び耐水性を両立させる観点からは、芳香族基含有マクロモノマーとポリアルキレングリコールマクロモノマーとを併用することが好ましい。
マクロモノマーは、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、好ましくは片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500以上100,000以下の化合物である。該重合性官能基は、好ましくはアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基であり、より好ましくはメタクリロイルオキシ基である。
マクロモノマーの数平均分子量は、好ましくは1,000以上10,000以下である。
なお、数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー法により、標準物質として分子量既知の単分散ポリスチレンを用いて測定される。
芳香族基含有マクロモノマーを構成する芳香族基含有モノマーとしては、前記(b−2)成分で記載した芳香族基含有モノマーが挙げられ、好ましくはスチレン及びベンジル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上であり、より好ましくはスチレンである。
商業的に入手しうるスチレン系マクロモノマーの具体例としては、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)(以上、東亞合成株式会社の商品名)等が挙げられる。
シリコーン系マクロモノマーとしては、片末端に重合性官能基を有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
芳香族基含有マクロモノマーは、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、好ましくは片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500以上100,000以下の化合物である。該重合性官能基は、好ましくはアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基であり、より好ましくはメタクリロイルオキシ基である。
芳香族基含有マクロモノマーの数平均分子量は、好ましくは1,000以上10,000以下である。
CH2=C(R1)−CO−(OA)n−OR2 (1)
(式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は水素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基又はフェニル基を示し、OAは炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基を示し、nはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、1以上50以下の数である。)
式(1)において、オキシアルキレン基であるOAの炭素数は、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、2以上4以下であり、好ましくは2以上3以下である。
炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基が挙げられ、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、好ましくはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基でありである。
式(1)において、R1は、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、水素原子又はメチル基であり、好ましくはメチル基である。
式(1)において、R2は、後述の顔料含有ポリマー粒子の製造における顔料を有機溶媒中で分散させる際に顔料の分散性、及びインク中での顔料含有ポリマー粒子の分散安定性を向上させる観点から、水素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基又はフェニル基であり、好ましくは炭素数1以上8以下のアルキル基又はフェニル基であり、より好ましくはフェニル基である。
式(1)において、平均付加モル数であるnは、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、1以上であり、好ましくは4以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、そして、50以下であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは14以下である。
但し、n個のオキシアルキレン基は、互いに同一でも異なっていてもよいが、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、オキシエチレン基とオキシプロピレン基からなること、すなわちポリアルキレングリコール鎖がオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位を含むことが好ましい。親水的なオキシエチレン単位と、疎水的なオキシプロピレン単位とを一つの分子中に含むことにより、後述の顔料含有ポリマー粒子の製造における顔料を有機溶媒中で分散させる際に顔料の分散性、及びインク中での顔料含有ポリマー粒子の分散安定性の向上に寄与し、光沢度及び耐水性を向上させると考えられる。また、オキシアルキレン基が互いに異なる場合は、ブロック付加、ランダム付加、及び交互付加のいずれでもよいが、ブロック付加が好ましい。
商業的に入手しうる具体例としては、NKエステルM−20G、同40G、同90G、同230G、同450G、同900G(以上、新中村化学工業株式会社の商品名)、ブレンマーPE−90、同200、同350、ブレンマーPME−100、同200、同400等、ブレンマーPP−500、同800、同1000、同4000等、ブレンマーAP−150、同400、同550、ブレンマー50PEP−300、ブレンマー50POEP−800B、ブレンマーPAE−100、ブレンマー43PAPE−600B(以上、日油株式会社の商品名)、ライトエステル041MA(共栄社化学株式会社製の商品名)等が挙げられる。
ポリアルキレングリコールマクロモノマーは、顔料含有ポリマー粒子のインク中における分散安定性を向上させる観点から、好ましくは片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500以上100,000以下の化合物である。該重合性官能基は、好ましくはアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基であり、より好ましくはメタクリロイルオキシ基である。
ポリアルキレングリコールマクロモノマーの数平均分子量は、好ましくは1,000以上10,000以下である。
上記(b−1)成分〜(b−3)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
(b−1)成分の含有量は、顔料含有ポリマー粒子の分散安定性を向上させ、光沢度を向上させる観点から、好ましくは3.0質量%以上、より好ましくは5.0質量%以上、更に好ましくは8.0質量%以上であり、そして、耐水性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下である。
(b−2)成分の含有量は、顔料への水不溶性ポリマーの吸着性を向上させる観点、及び顔料含有ポリマー粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、より更に好ましくは45質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは65質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下である。
(b−3)成分の含有量は、顔料含有ポリマー粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは7.0質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上であり、そして、光沢度を向上させる観点から、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。
(b−3)成分としてポリアルキレングリコールマクロモノマーを用いた場合、ポリアルキレングリコールマクロモノマーの含有量は、光沢度及び耐水性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは55質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは35質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下である。
前記水不溶性ポリマーは、モノマー混合物を塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒に制限はないが、炭素数1以上3以下の脂肪族アルコール、ケトン類、エーテル類、エステル類等の極性有機溶媒が好ましく、具体的にはメタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンが挙げられ、メチルエチルケトンが好ましい。
重合の際には、重合開始剤や重合連鎖移動剤を用いることができるが、重合開始剤としては、アゾ化合物が好ましく、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)がより好ましい。重合連鎖移動剤としては、メルカプタン類が好ましく、2−メルカプトエタノールがより好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成した水不溶性ポリマーを単離することができる。また、得られた水不溶性ポリマーは、再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することができる。
水不溶性ポリマーは、後述する顔料含有ポリマー粒子の水分散体の生産性を向上させる観点から、重合反応に用いた溶媒を除去せずに、含有する有機溶媒を後述する工程Iに用いる有機溶媒として用いるために、そのまま水不溶性ポリマー溶液として用いることが好ましい。
水不溶性ポリマー溶液の固形分濃度は、顔料含有ポリマー粒子の水分散体の生産性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
水不溶性ポリマーの重量平均分子量は、インクの分散安定性及び耐水性を向上させる観点から、好ましくは1万以上、より好ましくは3万以上、更に好ましくは5万以上、より更に好ましくは8万以上、より更に好ましくは10万以上であり、そして、光沢度を向上させる観点から、好ましくは50万以下、より好ましくは40万以下、更に好ましくは30万以下、より更に好ましくは20万以下である。水不溶性ポリマーの重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定される。
顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子(顔料含有ポリマー粒子)は、水分散体として下記の工程I及び工程IIを有する方法により、効率的に製造することができる。
工程I:水不溶性ポリマー、有機溶媒、顔料、及び水を含有する混合物(以下、「顔料混合物」ともいう)を分散処理して、分散処理物を得る工程
工程II:工程Iで得られた分散処理物から前記有機溶媒を除去して、顔料含有ポリマー粒子の水分散体(以下、「顔料水分散体」ともいう)を得る工程
工程Iでは、まず、水不溶性ポリマーを有機溶媒に溶解させ、次に顔料、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を、得られた水不溶性ポリマーの有機溶媒溶液に加えて混合し、水中油型の分散体を得る方法が好ましい。水不溶性ポリマーの有機溶媒溶液に加える順序に制限はないが、水、中和剤、顔料の順に加えることが好ましい。
水不溶性ポリマーを溶解させる有機溶媒に制限はないが、炭素数1以上3以下の脂肪族アルコール、ケトン類、エーテル類、エステル類等が好ましく、顔料への濡れ性、水不溶性ポリマーの溶解性、及び水不溶性ポリマーの顔料への吸着性を向上させる観点から、炭素数4以上8以下のケトンがより好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが更に好ましく、メチルエチルケトンがより更に好ましい。
水不溶性ポリマーを溶液重合法で合成した場合には、重合で用いた溶媒をそのまま用いてもよい。
水不溶性ポリマーがアニオン性ポリマーの場合、中和剤を用いて水不溶性ポリマー中のアニオン性基を中和してもよい。中和剤を用いる場合、pHが7以上11以下になるように中和することが好ましい。
中和剤としては、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムが挙げられるが、水酸化ナトリウムが好ましい。有機アミンとしては、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
中和剤は、顔料水分散体及びインクの分散安定性を向上させる観点から、アルカリ金属の水酸化物、アンモニアが好ましく、水酸化ナトリウムとアンモニアを併用することがより好ましい。また、水不溶性ポリマーを予め中和しておいてもよい。
中和剤は、十分かつ均一に中和を促進させる観点から、中和剤水溶液として用いることが好ましい。中和剤水溶液の濃度は、前記と同様の観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
水不溶性ポリマーのアニオン性基の中和度は、顔料水分散体及びインクの分散安定性を向上させる観点から、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上であり、そして、好ましくは300モル%以下、より好ましくは200モル%以下である。
ここで中和度とは、中和剤のモル当量を水不溶性ポリマーのアニオン性基のモル量で除したものである。本来、中和度は100モル%を超えることはないが、本発明では中和剤の使用量から計算するため、中和剤を過剰に用いた場合は100モル%を超える。前記アニオン性基はイオン性モノマーのカルボキシ基等が含まれる。
顔料の含有量は、顔料水分散体及びインクの分散安定性、並びに光沢度を向上させる観点から、顔料混合物中、好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
水不溶性ポリマーの含有量は、顔料水分散体及びインクの分散安定性、並びに耐水性を向上させる観点から、顔料混合物中、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは4.0質量%以上、更に好ましくは6.0質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
有機溶媒の含有量は、顔料への濡れ性及び水不溶性ポリマーの顔料への吸着性を向上させる観点から、顔料混合物中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
水の含有量は、顔料水分散体及びインクの分散安定性を向上させる観点から、顔料混合物中、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
顔料混合物における水不溶性ポリマーに対する顔料の質量比〔顔料/水不溶性ポリマー〕は、光沢度及び耐水性を両立させる観点からは、好ましくは30/70以上、より好ましくは35/65以上、更に好ましくは40/60以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは70/30以下、より更に好ましくは60/40以下である。
工程Iにおいては、前記顔料混合物を分散処理して、分散処理物を得る。分散処理物を得る分散方法に特に制限はない。剪断応力を与える本分散だけで顔料粒子の平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは顔料混合物を予備分散させた後、さらに剪断応力を加えて本分散を行い、顔料粒子の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。
工程Iの予備分散における温度は、好ましくは0℃以上であり、そして、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは25℃以下である。分散時間は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは0.8時間以上であり、そして、好ましくは30時間以下、より好ましくは10時間以下、更に好ましくは5時間以下である。
顔料混合物を予備分散させる際には、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができるが、これらの中でも高速撹拌混合装置が好ましい。
高圧ホモジナイザーを用いて本分散を行う場合、処理圧力やパス回数の制御により、顔料を所望の粒径になるように制御することができる。
処理圧力は、生産性及び経済性の観点から、好ましくは60MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは130MPa以上であり、そして、好ましくは200MPa以下、より好ましくは180MPa以下である。
また、パス回数は、好ましくは3以上、より好ましくは10以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。
工程IIでは、工程Iで得られた分散処理物から、公知の方法で有機溶媒を除去することで、顔料含有ポリマー粒子の水分散体(顔料水分散体)を得ることができる。得られた顔料水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残存していてもよい。残留有機溶媒の量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。また、必要に応じて、有機溶媒を留去する前に分散処理物を加熱撹拌処理することもできる。
得られた顔料水分散体は、顔料含有ポリマー粒子の固形分が水を主媒体とする水系媒体中に分散しているものである。顔料含有ポリマー粒子の形態は特に制限はなく、少なくとも顔料粒子の表面が水不溶性ポリマーにより被覆され粒子が形成されていればよい。例えば、水不溶性ポリマーに顔料が内包された粒子形態、水不溶性ポリマー中に顔料が均一に分散された粒子形態、水不溶性ポリマーの粒子表面に顔料が露出された粒子形態等が含まれ、これらの混合物も含まれる。
顔料の含有量は、顔料水分散体及びインクの分散安定性、並びに光沢度を向上させる観点から、顔料水分散体中、好ましくは5.0質量%以上であり、より好ましくは7.0質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは18質量%以下である。
水不溶性ポリマーの含有量は、顔料水分散体及びインクの分散安定性、並びに耐水性を向上させる観点から、顔料水分散体中、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上、更に好ましくは4.0質量%以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは7.0質量%以下である。
水の含有量は、顔料水分散体及びインクの分散安定性を向上させる観点から、顔料水分散体中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。
顔料水分散体における水不溶性ポリマーに対する顔料の質量比〔顔料/水不溶性ポリマー〕は、光沢度及び耐水性を両立させる観点からは、好ましくは30/70以上、より好ましくは35/65以上、更に好ましくは40/60以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは70/30以下、より更に好ましくは60/40以下である。
本発明で用いる水系インクは、分散安定性、光沢度及び耐水性を向上させる観点から、前記顔料水分散体に、必要に応じて水、水溶性有機溶媒、界面活性剤、及び各種添加剤を配合して得られる。
各種添加剤としては、通常用いる湿潤剤、浸透剤、分散剤、粘度調整剤、消泡剤、防黴剤、防錆剤、防腐剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
本発明に係るインク中における各成分、インクの組成及び物性は、以下のとおりである。
水溶性有機溶媒としては、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテルとしては、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン等が挙げられる。
これらの中でも、好ましくは多価アルコールであり、より好ましくはジエチレングリコール、プロピレングリコール及びグリセリンから選ばれる1種以上であり、更に好ましくはプロピレングリコール及びグリセリンから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはプロピレングリコールである。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤としては、分散安定性を向上させる観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましく、例えば、(1)炭素数8以上22以下の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖の高級アルコール、多価アルコール、又は芳香族アルコールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシドを付加したポリオキシアルキレンのアルキルエーテル、アルケニルエーテル、アルキニルエーテル又はアリールエーテル、(2)炭素数8以上22以下の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を有する高級アルコールと多価脂肪酸とのエステル、(3)炭素数8以上20以下の直鎖又は分岐鎖の、アルキル基又はアルケニル基を有する、ポリオキシアルキレン脂肪族アミン、(4)炭素数8以上22以下の高級脂肪酸と、多価アルコールのエステル化合物又はそれにエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシドを付加した化合物等が挙げられる。
本発明で用いる水系インクは、顔料含有ポリマー粒子、及び水、必要に応じて水溶性有機溶媒、界面活性剤、及び各種添加剤を含有する。
顔料の含有量は、光沢度を向上させる観点から、水系インク中、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上であり、そして、分散安定性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは8.0質量%以下である。
水不溶性ポリマーの含有量は、分散安定性及び耐水性を向上させる観点から、水系インク中、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下である。
である。
水系インクにおける水不溶性ポリマーに対する顔料の質量比〔顔料/水不溶性ポリマー〕は、分散安定性、光沢度及び耐水性を向上させる観点からは、好ましくは30/70以上、より好ましくは40/60以上、更に好ましくは50/50以上、より更に好ましくは60/40以上、より更に好ましくは70/30以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは85/15以下、更に好ましくは80/20以下である。
水系インクにおける水不溶性ポリマーに対する顔料の質量比〔顔料/水不溶性ポリマー〕は、光沢度及び耐水性を両立させる観点からは、好ましくは30/70以上、より好ましくは35/65以上、更に好ましくは40/60以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは70/30以下、より更に好ましくは60/40以下である。
界面活性剤の含有量は、分散安定性を向上させる観点から、水系インク中、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下である。
水の含有量は、分散安定性を向上させる観点から、水系インク中、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
水系インク中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、光沢度を向上させる観点から、好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは75nm以上であり、そして、好ましくは200nm以下、より好ましくは180nm以下、更に好ましくは160nm以下、より更に好ましくは140nm以下である。水系インク中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
水系インク中の顔料含有ポリマー粒子は、該粒子の膨潤や収縮、該粒子間の凝集が生じないことが好ましく、水系インク中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は前記顔料水分散体中の平均粒径と同じであることがより好ましい。そのため、顔料水分散体中の顔料含有ポリマー粒子の好ましい平均粒径の態様は、上記水系インク中の平均粒径の好ましい態様と同じである。顔料水分散体中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、実施例に記載した水系インク中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径と同様の方法にて測定することができる。
20℃における水系インクのpHは、分散安定性、光沢度及び耐水性を向上させる観点から、好ましくは5.5以上、より好ましくは6.0以上、更に好ましくは6.5以上、より更に好ましくは7.0以上であり、そして、部材耐性、皮膚刺激性の観点から、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.0以下、更に好ましくは9.5以下、より更に好ましくは9.0以下である。20℃におけるpHは、実施例に記載の方法により測定される。
本発明のインクジェット記録方法は、前記水系インクを記録媒体上に吐出して記録する方法である。
記録媒体と純水との接触時間100m秒における該記録媒体の吸水量は、0g/m2以上であり、そして、10g/m2以下であり、好ましくは5.0g/m2以下、より好ましくは3.0g/m2以下である。該吸水量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
コート紙としては、汎用光沢紙「OKトップコートプラス」(王子製紙株式会社製、坪量104.7g/m2、接触時間100m秒における吸水量(以下の吸水量は同じ)4.9g/m2)、多色フォームグロス紙(王子製紙株式会社製、坪量104.7g/m2、吸水量5.2g/m2)、UPM Finesse Gloss(UPM社製、坪量115g/m2、吸水量3.1g/m2)、UPM Finesse Matt(UPM社製、坪量115g/m2、吸水量4.4g/m2)、TerraPress Silk(Stora Enso社製、坪量80g/m2、吸水量4.1g/m2)等が挙げられる。
フィルムとしては、ポリエステルフィルム、塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルム等の合成樹脂フィルムが挙げられる。これらのフィルムは、必要に応じてコロナ処理等の表面処理を行っていてもよい。
入手しうるフィルムとしては、ルミラーT60(東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレート、吸水量2.3g/m2)、PVC80B P(リンテック株式会社製、塩化ビニル、吸水量1.4g/m2)等が挙げられる。
これらの中でも、好ましくはフィルムであり、より好ましくは塩化ビニルフィルムである。
記録時のヘッド内の温度は、インクの粘度を下げる観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、更に好ましくは30℃以上であり、そして、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは38℃以下である。
ヘッドがインクを吐出する領域と対面する記録媒体面は、好ましくは20℃以上、より好ましくは23℃以上、更に好ましくは28℃以上、より更に好ましくは30℃以上、より更に好ましくは31℃以上であり、そして、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは38℃以下にすることが好ましい。
インクの記録媒体上の付着量は、光沢度及び耐水性を向上させる観点から、固形分として、好ましくは0.1g/m2以上であり、そして、好ましくは25g/m2以下、より好ましくは20g/m2以下である。
本発明のインクジェット記録方法においては、前記水系インクをインク液滴として記録媒体上に吐出して記録した後、記録媒体上に着弾したインク液滴を乾燥する工程を有することが好ましい。また、本発明のインクジェット記録方法は、本発明の効果を阻害しない範囲内において2種以上の水系インクを用いてもよく、2種以上の水系インクを用いた場合には、光沢度及び耐水性の効果を有効に発現させる観点から、乾燥工程は、1種の水系インクごとに乾燥させる方式ではなく、2種以上の水系インクを乾燥させる乾燥方式であることが好ましい。
乾燥工程において、光沢度及び耐水性を向上させる観点から、記録媒体面の温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上であり、そして、熱による記録媒体の変形抑制とエネルギー低減の観点から、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下に維持することが好ましい。
乾燥時間は、光沢度及び耐水性を向上させる観点から、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上であり、そして、好ましくは30分以下、より好ましくは15分以下である。
<1> 顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子、及び水を含む水系インクを記録媒体上に吐出して記録するインクジェット記録方法であって、
該顔料が、C.I.ピグメント・レッド177、C.I.ピグメント・レッド254、C.I.ピグメント・グリーン7、C.I.ピグメント・グリーン36及びC.I.ピグメント・ブルー15:6から選ばれる1種以上であり、
該粒子を構成する水不溶性ポリマーが、(b−1)イオン性モノマー由来の構成単位と、(b−2)疎水性モノマー由来の構成単位と、(b−3)グラフト鎖を形成し得るモノマー由来の構成単位とを含み、
該記録媒体と純水との接触時間100m秒における該記録媒体の吸水量が0g/m2以上10g/m2以下である、インクジェット記録方法。
<3> 前記(b−1)モノマーが、好ましくはカルボン酸モノマーであり、より好ましくは(メタ)アクリル酸であり、更に好ましくはメタクリル酸である、前記<1>又は<2>に記載のインクジェット記録方法。
<4> 前記(b−2)モノマーが、好ましくは脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び芳香族基含有モノマーから選ばれる1種以上であり、より好ましくは芳香族基含有モノマーであり、更に好ましくはヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい炭素数6以上22以下の芳香族基を有するビニルモノマーであり、より更に好ましくはスチレン系モノマー及び芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはスチレン及びベンジル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはベンジル(メタ)アクリレートである、前記<1>〜<3>のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
<6> 前記(b−3)モノマーが、芳香族基含有モノマー由来のグラフト鎖を有する芳香族基含有マクロモノマーであり、該芳香族基含有モノマーが好ましくはスチレン及びベンジル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上であり、より好ましくはスチレンである、前記<1>〜<5>のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
CH2=C(R1)−CO−(OA)n−OR2 (1)
(式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は水素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基又はフェニル基を示し、OAは炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基を示し、nはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、1以上50以下の数である。)
<8> 前記式(1)において、前記オキシアルキレン基が、好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基から選ばれる1種以上であり、より好ましくはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基である、前記<7>に記載のインクジェット記録方法。
<9> 前記式(1)において、R2が、好ましくは炭素数1以上8以下のアルキル基又はフェニル基であり、より好ましくはフェニル基である、前記<7>又は<8>に記載のインクジェット記録方法。
<10> 前記式(1)において、平均付加モル数であるnが、好ましくは4以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは14以下である、前記<7>〜<9>のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
<11> 前記式(1)において、n個のオキシアルキレン基が、好ましくはオキシエチレン基とオキシプロピレン基からなる、前記<7>〜<10>のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
<15> 前記(b−2)モノマー由来の構成単位の含有量が、前記水不溶性ポリマー中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、より更に好ましくは45質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは65質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下である、前記<1>〜<14>のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
<16> 前記(b−3)モノマー由来の構成単位の含有量が、前記水不溶性ポリマー中、好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは7.0質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である、前記<1>〜<15>のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
<18> 前記(b−3)モノマーがポリアルキレングリコールマクロモノマーであり、該ポリアルキレングリコールマクロモノマー由来の構成単位の含有量が、前記水不溶性ポリマー中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは55質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは35質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下である、前記<1>〜<17>のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
<21> 前記水不溶性ポリマーの重量平均分子量が、好ましくは1万以上、より好ましくは3万以上、更に好ましくは5万以上、より更に好ましくは8万以上、より更に好ましくは10万以上であり、そして、好ましくは50万以下、より好ましくは40万以下、更に好ましくは30万以下、より更に好ましくは20万以下である、前記<1>〜<20>のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
<23> 前記水不溶性ポリマーの含有量は、水系インク中、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、そして、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下である、前記<1>〜<22>のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
<24> 水の含有量が、水系インク中、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である、前記<1>〜<23>のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
<25> 前記水系インクにおける水不溶性ポリマーに対する顔料の質量比〔顔料/水不溶性ポリマー〕が、好ましくは30/70以上、より好ましくは40/60以上、更に好ましくは50/50以上、より更に好ましくは60/40以上、より更に好ましくは70/30以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは85/15以下、更に好ましくは80/20以下である、前記<1>〜<24>のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
<26> 前記水系インクにおける水不溶性ポリマーに対する顔料の質量比〔顔料/水不溶性ポリマー〕が、好ましくは30/70以上、より好ましくは35/65以上、更に好ましくは40/60以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは70/30以下、より更に好ましくは60/40以下である、前記<1>〜<25>のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
<28> 前記水系インク中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径が、好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは75nm以上であり、そして、好ましくは200nm以下、より好ましくは180nm以下、更に好ましくは160nm以下、より更に好ましくは140nm以下である、前記<1>〜<27>のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
<29> 前記記録媒体が、好ましくはフィルム、より好ましくは塩化ビニルフィルムである、前記<1>〜<28>のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
<30> 更に記録媒体上に着弾したインク液滴を乾燥する工程を有する、前記<1>〜<29>のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
<31> 前記<1>〜<30>のいずれかに記載のインクジェット記録方法のピエゾ方式インクジェット記録方法への使用。
N,N−ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、水不溶性ポリマーの分子量をゲル浸透クロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPA装置(HLA−8120GPA)、東ソー株式会社製カラム(TSK−GEL、α−M×2本)、流速:1mL/min〕により測定した。なお、標準物質として分子量既知の単分散ポリスチレンを用いた。
電位差自動滴定装置(京都電子工業株式会社製、電動ビューレット、型番:APB−610)に樹脂(水不溶性ポリマー)をトルエンとアセトン(容積比=2:1)を混合した滴定溶剤に溶かし、電位差滴定法により0.1N水酸化カリウム/エタノール溶液で滴定し、滴定曲線上の変曲点を終点とする。水酸化カリウム溶液の終点までの滴定量から酸価を算出した。
30mlのポリプロピレン製容器(φ=40mm、高さ=30mm)にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへサンプル約1.0gを添加して、混合させた後、正確に秤量し、105℃で2時間維持して、揮発分を除去し、さらにデシケーター内で15分間放置し、質量を測定した。揮発分除去後のサンプルの質量を固形分として、添加したサンプルの質量で除して固形分濃度とした。
レーザー粒子解析システム(大塚電子株式会社製、型番:ELS−8000、キュムラント解析)を用いて測定し、得られるキュムラント平均粒径を着色剤含有ポリマー粒子の平均粒径とした。測定する粒子の濃度が、5×10-3質量%になるよう水で希釈した分散液を用いた。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。本測定でのデータは後述する分散安定性評価用のデータとして用いた。
E型粘度計(東機産業株式会社製、型番:TV−25、標準コーンロータ1°34’×R24使用、回転数50rpm)にて20℃で粘度を測定した。本測定でのデータは後述する分散安定性評価用のデータとして用いた。
pH電極「6337−10D」(株式会社堀場製作所製)を使用した卓上型pH計「F−71」(株式会社堀場製作所製)を用いて、20℃におけるインクのpHを測定した。
記録媒体と純水との接触時間100m秒における該記録媒体の吸水量は、自動走査吸液計(熊谷理機工業株式会社製、KM500win)を用いて、23℃、相対湿度50%の条件下で、純水の接触時間100msにおける転移量を該吸水量として測定した。測定条件を以下に示す。
「Spiral Method」
Contact Time : 0.010〜1.0(sec)
Pitch (mm) : 7
Length Per Sampling (degree) : 86.29
Start Radius (mm) : 20
End Radius (mm) : 60
Min Contact Time (ms) : 10
Max Contact Time (ms) : 1000
Sampling Pattern (1 - 50) : 50
Number of Sampling Points (> 0) : 19
「Square Head」
Slit Span (mm) : 1
Slit Width (mm) : 5
製造例1−1〜1−3
2つの滴下ロート1及び2を備えた反応容器内に、表1の「初期仕込みモノマー溶液」に示す種類のモノマー、溶媒、重合連鎖移動剤を入れて混合し、窒素ガス置換を行い、初期仕込みモノマー溶液を得た。
次に、表1の「滴下モノマー溶液1」に示すモノマー、溶媒、重合開始剤(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、商品名:V−65))、重合連鎖移動剤を混合して、滴下モノマー溶液1を得、滴下ロート1内に入れて、窒素ガス置換を行った。また、表1の「滴下モノマー溶液2」に示すモノマー、溶媒、重合開始剤、重合連鎖移動剤を混合して、滴下モノマー溶液2を得、滴下ロート2内に入れて、窒素ガス置換を行った。
窒素雰囲気下、反応容器内の初期仕込みモノマー溶液を撹拌しながら77℃に維持し、滴下ロート1中の滴下モノマー溶液1を3時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。次いで滴下ロート2中の滴下モノマー溶液2を2時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。滴下終了後、反応容器内の混合溶液を77℃で0.5時間撹拌した。
次いで前記重合開始剤(V−65)1部をメチルエチルケトン(以下、「MEK」ともいう)50部(和光純薬工業株式会社製)に溶解した重合開始剤溶液を調製し、前記混合溶液に加え、77℃で0.5時間撹拌することで熟成を行った。前記重合開始剤溶液の調製、添加及び熟成をさらに5回行った。次いで反応容器内の反応溶液を80℃に1時間維持し、固形分濃度は40%になるようにMEKを加えて水不溶性ポリマー溶液を得た。
MAA:メタクリル酸、和光純薬工業株式会社製、試薬
BzMA:ベンジルメタクリレート、和光純薬工業株式会社製、試薬
St:スチレン、和光純薬工業株式会社製、試薬
St−M:スチレンマクロマー(数平均分子量:6,000、末端基:メタクリロイル基、セグメント:スチレン、トルエン溶液、固形分50%)(東亜合成株式会社製、商品名:AS−6S)
EOPOMA:フェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリールモノメタクリレート〔エチレンオキシド平均付加モル数=6、プロピレンオキシド平均付加モル数=6、ブロック付加(日油株式会社製、商品名:ブレンマー43PAPE−600B)〕
MEK:メチルエチルケトン
2−メルカプトエタノール:キシダ化学株式会社製
V−65:2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、商品名:V−65)
なお、表1中のスチレンマクロマー以外の他の成分は有効分100%の値である。
製造例2−1
(工程I)
製造例1−1で得られた水不溶性ポリマー1溶液(固形分濃度40%)100部を、MEK33.5部と混合し、水不溶性ポリマー1溶液の固形分濃度を30%に調整した。
容積が2Lのディスパーに該水不溶性ポリマーMEK溶液を投入し、翼径40mmφの撹拌翼で1,400rpmの条件で撹拌しながら、イオン交換水303.1部、5N水酸化ナトリウム水溶液7.9部、及び25%アンモニア水溶液3.5部を添加して、水酸化ナトリウムによる中和度が65%、アンモニアによる中和度が100%となるように調整し、0℃の水浴で冷却しながら、1,400rpmで15分間撹拌した。
次いで、顔料としてC.I.ピグメント・レッド177(DIC株式会社製、アントラキノン顔料、商品名:Fastgen Super Red ATY−01)を120部加え、6,400rpmで1時間撹拌して顔料混合物を得た。
得られた顔料混合物をマイクロフルイダイザー「M−110EH−30XP」(Microfluidics社製)を用いて150MPaの圧力で15パス分散処理し、分散処理物を得た。固形分濃度は15.0%であった。
(工程II)
前記工程Iで得られた分散処理物667部を2Lナスフラスコに入れ、減圧蒸留装置「ロータリーエバポレーター N−1000S」(東京理化器械株式会社製)を用いて、回転数50rpmで、60℃に調整した温浴中、0.09MPaの圧力で1時間保持して、有機溶媒を除去した。さらに圧力を0.07MPaに下げて固形分濃度25%になるまで濃縮した。
得られた濃縮物を500mlアングルローターに投入し、高速冷却遠心機「himac CR22G」(日立工機株式会社製、設定温度20℃)を用いて6,000rpmで20分間遠心分離した後、液層部分を5μmのメンブランフィルター「Minisart」(Sartorius社製)で濾過した。
濾液400部(顔料72部、水不溶性ポリマー1 24部)にイオン交換水55.4部を添加し、さらにプロキセルLV(S) 0.6部を添加し、70℃で1時間撹拌した。25℃に冷却後、前記5μmフィルターで濾過し、さらに固形分濃度は20.0%になるようにイオン交換水を加えて、顔料水分散体1を得た。
製造例2−1において、顔料又は水不溶性ポリマーを表2に示すものに代えた以外は製造例2−1と同様にして、顔料水分散体2〜15及び17〜23を得た。
製造例2−1において、工程Iにおける水不溶性ポリマー1溶液100部を200部、顔料としてPR177 120部をC.I.ピグメント・ブルー(PB)15:6(大日精化工業株式会社製、ε型銅フタロシアニン顔料、商品名:CHROMOFINE Blue No.80)80部に代えた以外は製造例2−1と同様にして、顔料水分散体16を得た。得られた顔料水分散体16中の水不溶性ポリマーに対する顔料の質量比〔顔料/水不溶性ポリマー〕は50/50であった。
(レッド顔料)
PR177:C.I.ピグメント・レッド177(DIC株式会社製、アントラキノン顔料、商品名:Fastgen Super Red ATY−01)
PR254:C.I.ピグメント・レッド254(ホイバッハジャパン株式会社製、ジケトピロロピロール顔料、商品名:Heuco Red 325405)
(グリーン顔料)
PG7:C.I.ピグメント・グリーン7(クラリアントジャパン株式会社製、塩素化銅フタロシアニン顔料、商品名:PV Fast Green GNX)
PG36:C.I.ピグメント・グリーン36(ホイバッハジャパン株式会社製、臭素化銅フタロシアニン顔料、商品名:Monastral Green 6Y−CL)
(ブルー顔料)
PB15:6 :C.I.ピグメント・ブルー15:6(大日精化工業株式会社製、ε型銅フタロシアニン顔料、商品名:CHROMOFINE Blue No.80)
PY74:C.I.ピグメント・イエロー74(山陽色素株式会社製、モノアゾ顔料、商品名:Fast Yellow 7414)
(マゼンタ顔料)
PR122:C.I.ピグメント・レッド122(DIC株式会社製、ジメチルキナクリドン顔料、商品名:Fastogen Super Magenta RTS)
製造例3−1(インク1)
顔料水分散体1を用いて、インク1を製造した。インク中に顔料5%となるように以下の組成(合計100部)にて配合した後、30分間混合撹拌を行って得られた混合液を前記5μmフィルターで濾過し、インク1を得た。得られたインク1中の水不溶性ポリマーに対する顔料の質量比〔顔料/水不溶性ポリマー〕は75/25であり、顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は124nmであり、インク1の粘度は3.5mPa・s、pHは8.7であった。
(インク組成)
顔料水分散体1 33.3部
プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製) 30部
サーフィノール104PG−50(日信化学工業株式会社製、プロピレングリコール、有効分50%) 0.5部
エマルゲン120(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル) 0.5部
トリエタノールアミン(和光純薬工業株式会社製) 0.5部
イオン交換水 35.2部
製造例3−1において、顔料水分散体1を顔料水分散体2〜23に代えた以外は製造例3−1と同様の方法で製造し、インク2〜23を得た。得られたインク中に含まれる顔料含有ポリマー粒子の平均粒径及びインクの粘度及びpHを表3及び表4に示す。
得られたインクを密閉容器内で、70℃恒温室下で保存試験を行った。7日後に取り出し、前述の平均粒径及び粘度を測定することにより、初期からの粒径変化及び粘度変化を観察し、下記式により平均粒径変化率及び粘度変化率を絶対値として算出(小数点第2位以下は切り捨て)してインクの分散安定性を評価した。結果を表3及び表4に示す。数値が小さいほど分散安定性は良好である。
平均粒径変化率(%)=|〔100−[(保存後の平均粒径)/(保存前の平均粒径)]×100〕|
粘度変化率(%)=|〔100−[(保存後の粘度)/(保存前の粘度)]×100〕|
表3及び表4に示すインクを、ピエゾ方式インクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、型番:EM−930C)のカラーヘッドに充填し、屋外展示用の塩化ビニルフィルム(リンテックサインシステム株式会社製、品番:PVC80B P11Kシロ、膜厚80μm、純水との接触時間100m秒における吸水量1.4g/m2、60°光沢度:94)を記録媒体として写真モード(解像度1440ドット/インチ)で印字(Duty10%〜100%までを10%刻み)し、60℃に設定したホットプレート(アズワン株式会社製、Hot Plate 型式:NA−2)上で10分間乾燥し、レッド、グリーン又はブルーの特色インクの記録物を得た。ヘッドがインクを吐出する領域と対面する記録媒体面の温度が23℃の条件で行った。
イエローインクとマゼンタインクの2種類のインクを用いて重ね印刷を行い、二次色のレッドの記録物を得た。重ね印刷は、前記水系インクの製造で得られたインク22を第1インク、インク23を第2インクとして、第1インクと第2インクの組み合わせのインクセットとし、インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、型番:EM−930C)に装着し、塩化ビニルフィルムを記録媒体(リンテックサインシステム株式会社製、品番:PVC80B P11Kシロ、膜厚80μm、純水との接触時間100m秒における吸水量1.4g/m2、60°光沢度:94)として、第1インクを記録媒体上に吐出し、次いで、該記録媒体上に吐出された第1インクの上に、第2インクを重ねて吐出した。印刷条件は以下のとおりである。
(印刷条件)
第1インク及び第2インクのDutyは、それぞれ100%である。第1インク及び第2インクでの印刷中は特別に乾燥操作をすることなく、第2インクで印刷後に60℃のホットプレート上で10分間乾燥した。
記録物Duty100%の印字部の光沢度(入射角60°)を光沢計「HANDY GLOSSMETER」(日本電色工業株式会社製、品番:PG−1M)を用いて測定を行った。結果を表3及び表4に示す。数値が大きいほど、光沢度に優れる。
記録物Duty100%の印字面にイオン交換水をスポイトで1滴落とし、綿棒(ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社製、品名:ジョンソン綿棒)で10往復擦り、以下の評価基準で評価した。結果を表3及び表4に示す。下記評価基準の4及び3は、実用性に問題のない評価結果である。
〔評価基準〕
4:記録物からのインク剥がれなく、綿棒への付着がない。
3:記録物からのインク剥がれ面積が50%未満で綿棒への付着がある。
2:記録物からのインク剥がれ面積が50%以上で綿棒へ付着がある。
1:記録物からインクが剥がれ、記録媒体の下地が見える。
表3及び表4に示すとおり、実施例1〜2,4〜5,7〜8,10〜11,13〜14,16は、比較例1〜5と比べて基本3原色以外の色相を有する顔料を用いても、光沢度及び耐水性のバランスに優れている。
一方、参考例1では、PY74のイエローインクとPR122のマゼンタインクを用いて二次色であるレッド色を再現しているが、実施例1〜2,4〜5と比べて光沢度が低く、耐水性も劣っている。
また、水溶性ポリマーを含んだインクを用いた比較例1〜5では、良好な光沢度及び耐水性を両立した記録物を得ることができなかった。
Claims (8)
- 顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子、及び水を含む水系インクを記録媒体上に吐出して記録するインクジェット記録方法であって、
該顔料が、C.I.ピグメント・レッド177、C.I.ピグメント・レッド254、C.I.ピグメント・グリーン7、C.I.ピグメント・グリーン36及びC.I.ピグメント・ブルー15:6から選ばれる1種以上であり、
該粒子を構成する水不溶性ポリマーが、(b−1)イオン性モノマー由来の構成単位と、(b−2)疎水性モノマー由来の構成単位と、(b−3)グラフト鎖を形成し得るモノマー由来の構成単位とを含み、
該(b−3)モノマーが、ポリアルキレングリコールマクロモノマーを含み、
該ポリアルキレングリコールマクロモノマーが、下記式(1)で表されるポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートであり、
CH 2 =C(R 1 )−CO−(OA) n −OR 2 (1)
(式(1)中、R 1 は水素原子又はメチル基を示し、R 2 はフェニル基を示し、OAは炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基を示し、nはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、4以上50以下の数であり、n個のオキシアルキレン基が、オキシエチレン基とオキシプロピレン基からなる。)
該水系インクにおける水不溶性ポリマーに対する顔料の質量比〔顔料/水不溶性ポリマー〕が、30/70以上90/10以下であり、
該記録媒体と純水との接触時間100m秒における該記録媒体の吸水量が0g/m2以上10g/m2以下である、インクジェット記録方法。 - 前記水不溶性ポリマー中の前記ポリアルキレングリコールマクロモノマー由来の構成単位の含有量が、15質量%以上35質量%以下である、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
- 前記(b−3)モノマーが、芳香族基含有マクロモノマーとポリアルキレングリコールマクロモノマーとの併用である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
- 前記(b−1)モノマーが、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上であり、前記(b−2)モノマーが、脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び芳香族基含有モノマーから選ばれる1種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
- 前記水不溶性ポリマーの酸価が30mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
- 前記水不溶性ポリマーの酸価が30mgKOH/g以上80mgKOH/g以下である、請求項5に記載のインクジェット記録方法。
- 前記水不溶性ポリマーの重量平均分子量が5万以上50万以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
- 前記記録媒体がフィルムである、請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
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