JP6958706B1 - プリント化粧金属板、及びドア - Google Patents
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一般に、玄関ドアは、防火性能の観点から金属板が使用されており、一般に、プリント化粧金属板が使用されることが多い。また、玄関ドアの取手部に形成されている鍵穴の耐食性を考慮すると、玄関ドアとして、ステンレス製のものが用いられることが多い。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、防火機能等の機能を有しつつ、更なる機能を付加したプリント化粧金属板を提供することを目的としている。
すなわち、病院や、老健施設などにおいて、空間を画成する建材に、抗ウイルス性能が求められている。また、その他、公共施設や一般住宅などにおいても、感染症対策として、抗ウイルス性能の需要が高まってきている。
また、防災認定に関しては、基材として鋼板その他の金属板を使用することが有効であるが、意匠性を向上させるためには、金属板に印刷したシートを接着剤を使用してラミネートする方法や、金属板に直接印刷方法がある。特に、防火面では、より有機質量の少ない金属板に直接印刷する方法が有効である。
本発明は、上記のような知見からなしたものである。
すなわち、課題解決のために、本発明の一態様は、金属板の表面に1又は2以上の層を積層したプリント化粧金属板であって、上記1又は2以上の層のうち、少なくとも最表層に抗ウイルス剤が添加されている。
例えば、最表層にのみ抗ウイルス剤が添加されている。
また例えば、全層が印刷で形成されている。
また、本発明の態様は、上記記載のプリント化粧金属板を用いたドアである。
本発明の態様のプリント化粧金属板は、公共施設その他の、人の出入りがある建物における閉空間を画する部品であって、人が接触する可能性が高いドアや、物を収納するロッカーなどの閉空間を画する部品であって、人が接触する可能性が高いドアなどへの適用に好適である。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
図1に示すように、プリント化粧金属板1は、金属板2と、化成処理層3と、プライマーコート層4と、ベースコート層5と、絵柄層6と、最表層を構成するトップコート層7と、を備えると共に、更に、裏面化成処理層8と、裏面コート層9と、を備える。そして、金属板2の一方の面(表面側)に、化成処理層3と、プライマーコート層4と、ベースコート層5と、絵柄層6と、トップコート層7とがこの順に積層される。また、金属板2の他方の面(裏面側)に、裏面化成処理層8と、裏面コート層9と、がこの順に積層されている。
なお、本実施形態のプリント化粧金属板1の層構成は、他の層構成であっても良い。例えば、意匠向上のために、絵柄層6とトップコート層7との間にマット導管印刷層を有していても良い。
その抗ウイルス剤は、添加される層の固形分に対し0.2質量部以上5質量部以上添加されていることが好ましい。添加量の上限は、例えば10質量部である。
また、防火面の向上の観点からは、各層は、全て印刷によって形成された印刷層であることが好ましい。
[金属板]
金属板2は、プリント化粧金属板1のベースとなる板である。本実施形態では、金属板2の材料の例として、非合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用いる。非合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼板表面に亜鉛めっき(金属被膜)が形成されているが、塗料との密着性及び耐食性の向上のための合金化処理は施されていない鋼板である。
金属板2は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)、ステンレス鋼板、アルミ板などであってもよい。
金属板2の厚さは、例えば0.4mm以上である。
化成処理層3は、耐食性の向上のために、金属板2の一方の表面に設けられた化成被膜である。化成処理層3としては、例えば、クロメート被膜、クロメートフリー被膜を採用することができる。特に、環境負荷の面から、クロメートフリー被膜が望ましい。クロメートフリー被膜は、クロメートフリー処理(ノンクロメート処理)により形成することができる。クロメートフリー処理に使用する処理液としては、例えば、六価クロムを含有しない処理液、例えば、ジルコニウムZr、又はチタンTi、又はこれらの両方の塩を含む処理液、又はシランカップリング剤を含む処理液等を採用することができる。このような処理液を用いたクロメートフリー処理により、溶融亜鉛めっきの層上に、チタンTi、ジルコニウムZr、リンP、セリウムCe、シリコンSi、アルミニウムAl、リチウムLi、等を主成分として含有し、クロムを含有しないクロメートフリー被膜を形成することができる。つまり、クロメートフリー被膜は、例えば、チタンTi、ジルコニウムZr、リンP、セリウムCe、シリコンSi、アルミニウムAl、若しくはリチウムLi、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
プライマーコート層4は、ベースコート層5と化成処理層3との密着性・耐食性を向上させるための層である。プライマーコート層4の材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂(約57%)、有機添加剤(約1%)及び顔料(約42%)を含むプライマーを用いる。
ベースコート層5は、プリント化粧金属板1に絵柄層6の下地色を付与するための層である。ベースコート層5の材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂(約45%)、メラミン系樹脂(約15%)及び顔料(約40%)を含む顔料含有樹脂を用いる。顔料には、下地色の顔料が添加されている。また、ベースコート層5には、耐食性の向上のために、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂を添加してもよい。更に、ベースコート層5には、耐食性を向上させるため、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、又は防錆剤を添加してもよい。更に、ベースコート層5には、求められる性能に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤を添加してもよい。
絵柄層6は、プリント化粧金属板1に絵柄による意匠性を付与するための層である。絵柄層6は、染料又は顔料等の着色剤を適当なバインダ樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散してなる印刷インキ又は塗料等を用いて形成される。例えば絵柄層6の材料としては、ポリエステル系樹脂(約49%)、有機添加剤(約1%)及び顔料(約50%)等を含む印刷インキ又は塗料等を用いる。顔料としては、公知の顔料を用いることができ、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、鉄・複合酸化物、酸化鉄、有機顔料、メタリック顔料、パール顔料等を採用できる。これらのうち、鉄・複合酸化物は遮熱顔料として使用される。絵柄層6には、更に求められる性能に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤を添加してもよい。
絵柄層6の絵柄は、特に制限されるものではないが、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等或いはこれらの2種類以上の組み合わせ等を用いることできる。
トップコート層7は、プリント化粧金属板1に耐候性や曲げ加工性、耐傷付性、清掃性を付与するための透明な層である。トップコート層7の材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂(約84%)、有機添加剤(約7%)及び無機添加剤(約9%)を含むトップコート剤を用いることができる。また、トップコート層7には、意匠性の向上のために、樹脂ビーズやシリカ等の骨材を添加してもよい。また、トップコート層7には、耐候性の向上のために、紫外線吸収剤等の耐候剤を添加してもよく、更に、艶を調節するため、マット剤を添加してもよい。更に、トップコート層7には、消臭性や芳香性などを付与するための添加剤や抗菌性を付与するための添加剤を添加してもよい。
本実施形態のトップコート層7には、抗ウイルス剤が添加されている。なお、トップコート層7が2層以上から構成されている場合には、抗ウイルス剤は、最表面の層にのみ添加されていることが好ましい。
抗ウイルス剤は、例えば無機銀亜鉛系化合物などの銀系材料であることが好ましい。
抗ウイルス剤としては、無機化合物のゼオライト、アパタイト、ジルコニアなどの物質に銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンのいずれかの金属イオンを取り込んで形成した抗菌性ゼオライト、抗菌性アパタイト、抗菌性ジルコニア等の無機系抗菌剤が使用できる。また、抗ウイルス剤としてジンクピリジオン、2−(4−チアゾリル)−ベンゾイミダゾール、10、10−オキシビスフェノキサノジン、有機チツソイオウハロゲン系、ピリジン−2−チオール−オキシド等が使用できるが、抗ウイルス効果の点で銀系抗ウイルス剤が優れている。また、抗ウイルス剤は有機系の抗ウイルス剤であってもよい。
ここで、抗ウイルス剤の添加量は、例えば、トップコート層の固形分を100とした場合における5質量部以上10質量部以下の範囲とする。より好ましくは、5質量部以上7質量部以下の範囲である。抗ウイルス剤の添加量が5質量部以上である場合、実験によって、抗ウイルス剤が効果的に作用し、抗ウイルス性が向上することを確認したためである。また、抗ウイルス剤の添加量が10質量部以下である場合、添加した層の耐傷性が向上する。
また、抗ウイルス剤の平均粒径は、1μm以上10μm以下であることが望ましい。抗ウイルス剤の平均粒径が1μm以上である場合、表面保護層14と抗ウイルス剤との接触面積が向上し、抗ウイルス性が良好になる。抗ウイルス剤の平均粒径が10μm以下である場合、耐傷性が向上する。
裏面化成処理層8は、耐食性の向上のために、金属板2の他方の表面に設けられた化成被膜であり、化成処理層3と同様に形成される。
[裏面コート層]
裏面コート層9は、金属板2の他方の面、つまり、プリント化粧金属板1の裏面を被覆するための層である。裏面コート層9の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂(約49%)及び無機添加剤(約51%)を用いることができる。なお、エポキシ系樹脂に代えて、ポリエステル系樹脂を使用してもよい。また、裏面コート層9には、耐食性の向上のために、防錆剤を添加するようにしてもよい。
本実施形態によれば、防火性能に加え、抗ウイルス性能を付加した意匠性を有するプリント化粧金属板を提供することができる。
ここで、防災認定に関しては、基材として鋼板その他の金属板を使用することが有効であるが、意匠性を向上させるためには、金属板に印刷したシートを接着剤を使用してラミネートする方法や、金属板に直接印刷方法がある。本実施形態では、全ての層を印刷によって形成した印刷層として構成することで、特に、有機質量の少ない構成となって、防火面で有利な構成となっている。
本実施形態のプリント化粧金属板1は、公共施設その他の、人の出入りがある建物における閉空間を画する部品であって、人が接触する可能性が高いドアや、物を収納するロッカーなどの閉空間を画する部品であって、人が接触する可能性が高い面構成部材(ドアなど)への適用に好適である。
ステンレスのイオン化傾向は銅(Cu)と同等程度である。仮に、金属板2として、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用いた場合、例えばこの合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用いたプリント化粧金属板から玄関ドアを形成し、この玄関ドアにステンレス製の鍵穴を設けた場合、玄関ドアと鍵穴とが雨等により濡れ、雨等の電解質中で異なる金属同士が接触した状態となった場合には、ステンレス製の鍵穴に対してイオン化傾向がより低い合金化溶融亜鉛めっき鋼板からなる金属板の方が電子を放出しやすい。
その結果、玄関ドアの鍵穴の周囲に赤錆が生じることを抑制することができ、結果的に、玄関ドアの耐食性を安価で向上させることができる。
なお、上述した実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
実施例では、JIS G 3302に準拠した厚さ0.4mmの非合金化溶融亜鉛めっき鋼板(SGC440鋼板)を金属板2として用意し、ジルコンフッ化水素酸系化成処理剤を用いて金属板2の両面に化成処理を施して化成処理層(クロメートフリー被膜)3及び8を形成した。続いて、金属板2の裏面側に裏面コート層9を設けると共に、表面側にプライマーを塗布してプライマーコート層4を設けた。プライマーの乾燥は、200℃以上で焼付乾燥を行った。プライマーとしてポリエステル系樹脂(約57%)、有機添加剤(約1%)及び顔料(約42%)を含むプライマーを用い、プライマーの乾燥塗布量は、9.5g/m2とした。
ここで、トップコート層7を構成する塗工液には、乾燥後の固形分100に対し5質量部だけ、抗ウイルス剤として無機銀亜鉛系化合物(タイショーテクノス社製:ビオサイトTB−B100)を添加した。
抗ウイルス剤として無機銀亜鉛系化合物(ビオサイトTB−B100)の添加量を7質量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2のプリント化粧金属板を作製した。
<比較例1>
抗ウイルス剤を無添加とする以外は、実施例1と同様にして、比較例1のプリント化粧金属板を作製した。
上述した実施例1、2、比較例1で得られたプリント化粧金属板について、以下の方法で抗ウイルス性能の評価を行った。
〔抗ウイルス性能〕
実施例1、2及び比較例1のプリント化粧金属板を、ISO 21702に準じて抗ウイルス試験を実施した。抗ウイルス性能試験には、エンベロープウイルスを使用した。
50mm四方の供試試料を滅菌シャーレ内に置き、0.4mLのウイルス液を試料上に接種した。その後、試料上に40mm四方のポリエチレンフィルムを被せた。シャーレに蓋をした後、温度25℃・湿度90%以上の条件で、試料とウイルスを接種させた。所定時間(24時間)後、10mLのSCDLP培地をシャーレに注ぎ、ウイルスを洗い出した。洗い出し液は、プラーク法にてウイルス感染価を測定した。
宿主細胞を6ウェルプレート上に単層培養し、階段希釈した洗い出し液をウェルに0.1mLずつ接種した。5%CO2・温度37℃の条件で1時間培養し、細胞にウイルスを吸着させた後、6ウェルプレートに寒天培地を注いで更に2〜3日培養した。培養後、細胞を固定・染色し、形成したプラークの数を計測した。
以下の式に伴い、試料1cm2当たりのウイルス感染価を算出した。
V=(10×C×D×N)/A
V:試料1cm2当たりのウイルス感染価(PFU/cm2)
C:計測したプラーク数
D:プラークを計測したウェルの希釈倍率
N:SCDLP量
A:試料とウイルスの接触面積(ポリエチレンフィルムの面積)
以下の式に伴い、抗ウイルス活性値を算出した。ここで、抗ウイルス活性値が2log10以上の場合、抗ウイルス効果ありと判定した。
抗ウイルス活性値=log(Vb)−log(Vc)
Log(Vb):24時間後の無加工試料1cm2当たりにおける、ウイルス感染価の常用対数値
Log(Vc):24時間後の抗ウイルス加工試料1cm2当たりにおける、ウイルス感染価の常用対数値
抗ウイルス活性値が2以上を合格とした。
実施例1、2では、抗ウイルス活性値が2log10を超えた値となっていた。ここで、実施例1及び2の抗ウイルス活性値は、同程度であった。このためコストを考慮すると5質量部の添加が好ましい。
また、比較例では、抗ウイルス剤を添加しなかったため、抗ウイルス活性値が2log10未満の値となっていた。
2 金属板
3 化成処理層
4 プライマーコート層
5 ベースコート層
6 絵柄層
7 トップコート層
8 裏面化成処理層
9 裏面コート層
Claims (8)
- 金属板の表面に1又は2以上の層を積層したプリント化粧金属板であって、
上記1又は2以上の層のうち、少なくとも最表層に抗ウイルス剤が添加されており、
上記抗ウイルス剤は、粒径が1μm以上5μm以下の範囲に第1ピークを有する複数の抗ウイルス剤と、粒径が5μm以上10μm以下の範囲に第2ピークを有する複数の抗ウイルス剤とを含み、上記第2ピークは、上記第1ピークより大きい値とし、
上記各層は、印刷によって形成された印刷層であるプリント化粧金属板。 - 金属板の表面に1又は2以上の層を積層したプリント化粧金属板であって、
上記1又は2以上の層のうち、少なくとも最表層に抗ウイルス剤が添加されており、
上記抗ウイルス剤は、粒径が1μm以上5μm以下の範囲に第1ピークを有する複数の抗ウイルス剤と、粒径が5μm以上10μm以下の範囲に第2ピークを有する複数の抗ウイルス剤とを含み、上記第2ピークは、上記第1ピークより大きい値とし、
上記金属板の一方の面上に順に積層された、化成処理層、プライマーコート層、ベースコート層、絵柄層、及び上記最表層であるトップコート層と、を有し、
上記金属板は、溶融亜鉛めっき鋼板であるプリント化粧金属板。 - 上記抗ウイルス剤は、上記最表層のみに添加されている請求項1又は請求項2に記載したプリント化粧金属板。
- 上記抗ウイルス剤は、添加される層の固形分を100とした場合における5質量部以上10質量部以下添加されている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載したプリント化粧金属板。
- 上記化成処理層は、クロメートフリー処理により形成される請求項2に記載したプリント化粧金属板。
- 上記プライマーコート層は、焼付乾燥又は風乾されている請求項2に記載したプリント化粧金属板。
- 上記トップコート層は、ポリエステル系樹脂、有機添加剤及び無機添加剤を含み、
上記トップコート層の塗布厚は、3μm以上である請求項2に記載したプリント化粧金属板。 - 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のプリント化粧金属板を用いたドア。
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