以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
(1)第1の実施形態
<管状体内表面検査装置の全体構成について>
図1に示すように、本実施形態に係る管状体内表面検査装置2は、管状体撮像装置3、演算処理装置4、駆動制御装置5、撮像範囲調整装置6、表示部9、及び、図示しない移動装置を有する。
管状体撮像装置3は、撮像部及びレーザ光照射部(図2において後述する)等を有し、それらを用いて、管状体1の内表面に環状レーザ光を照射しつつ、当該環状レーザ光を照射した内表面の部位を撮像し、管内表面画像を取得する。演算処理装置4は、管状体撮像装置3で得られた管内表面画像に対して、画像処理を行い、管状体1の内表面に欠陥が存在するか否かを判断する。
駆動制御装置5は、管状体撮像装置3を支持する支持バーによって構成された図示しない移動装置の動作を制御することで、管状体撮像装置3を管軸方向に沿って移動することができる。なお、以下では説明を簡単にするために、移動装置が、管状体撮像装置3を支持して移動させる態様を用いて説明しているが、本発明はこうした態様に限定されるものではなく、管状体撮像装置3を固定し、管状体1等、管状体撮像装置3以外を移動させるようにすることで、管状体撮像装置3と管状体1とを相対的に移動させるようにすることも可能である。
撮像範囲調整装置6は、管状体撮像装置3に設置された撮像部とレーザ光照射部との間の距離が最適な距離に設定されているか否かを判断することができる。
表示部9は、管状体撮像装置3の撮像部とレーザ光照射部との間の距離が所望の距離にあるか否かについて撮像範囲調整装置6により生成された情報を表示する。検査員は、表示部9に表示された、撮像範囲調整装置6からの情報を基に、管状体撮像装置3の撮像部とレーザ光照射部との間の距離を最適な距離に調整することができる。
管状体内表面検査装置2は、管状体撮像装置3の撮像部とレーザ光照射部との間の距離を最適な距離に設定する。これにより、管状体内表面検査装置2は、演算処理装置4で管状体1の内表面に欠陥(凹凸疵及び模様系の疵)が存在するか否かを検査するために最適な管内表面画像を、管状体撮像装置3を用いて取得することができる。
本実施形態に係る管状体1は、中空部を有する管状のものであれば特に限定されないが、かかる管状体1の例として、スパイラル鋼管、電縫鋼管、UO鋼管、継目無鋼管(シームレス鋼管)、鍛接鋼管、TIG溶接鋼管等の各種鋼管に代表される金属管やパイプのみならず、熱間押出法で使用されるコンテナと称するシリンダー等の管状物を挙げることができる。
管状体撮像装置3は、管状体1の中空部に送入可能に設置される。管状体撮像装置3は、撮像部とレーザ光照射部との間の距離が設定されると、撮像部とレーザ光照射部との間の距離を変えずに、そのまま管状体1の管軸方向に沿って位置を随時変更しながら、当該管状体1の内表面を管軸方向に沿って順次撮像してゆく。管状体撮像装置3は、管状体1の内表面を撮像した結果得られる管内表面画像を、演算処理装置4に出力する。
この際、管状体撮像装置3は、駆動制御装置5により、管状体撮像装置3全体の管軸方向に沿った位置が制御されており、管状体撮像装置3への移動に伴いPLG(Pulse Logic Generator:パルス型速度検出器)等からPLG信号が演算処理装置4に出力される。また、管状体撮像装置3は、演算処理装置4によって、管状体1の撮像タイミング等が制御されている。
駆動制御装置5は、管状体撮像装置3を支持する支持バーによって構成された図示しない移動装置の動作を制御することで、管状体撮像装置3全体の管軸方向の移動や、管軸方向を回転軸とする管状体周方向の回転を制御する、アクチュエータ等の装置である。駆動制御装置5は、演算処理装置4による制御のもとで、管状体撮像装置3全体の管軸方向への移動や、管状体1の周方向(以下、単に管周方向とも称する)の回転といった動作を制御する。
より詳細には、駆動制御装置5は、管状体撮像装置3を管状体内部に送入したり、送出させたりする。演算処理装置4は、管状体撮像装置3によって生成された、送入/送出時の管内表面画像を利用して縞画像フレームを生成し、この縞画像フレームに対して画像処理を行い、管状体1の内表面に存在している可能性のある欠陥を検出する。表示部9には、演算処理装置4により得られた結果が表示され、これにより、検査員は、管状体1の内表面に欠陥が存在するか否かについて認識することができる。なお、演算処理装置4及び撮像範囲調整装置6の詳細構成については後述する。
<管状体撮像装置の構成について>
先ず始めに、管状体撮像装置3の構成について説明する。図2に示すように、管状体撮像装置3は、カメラ等の撮像部21と、レーザ光照射部22と、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を調整する距離調整装置25とを有している。光照射部としてのレーザ光照射部22は、管状体1の内表面1aの全周方向(全管周方向)に対して環状レーザ光L1を照射し、管状体1の内表面1aを照明する。
より具体的には、レーザ光照射部22は、レーザ光源22aと、円錐状の光学素子22bと、を有している。レーザ光源22aは、所定の波長を有するレーザ光を発振する光源である。このようなレーザ光源22aとして、例えば、連続的にレーザ発振を行うCWレーザ光源を用いることが可能である。レーザ光源22aが発振する光の波長は、特に限定されるものではないが、例えば、400nm〜800nm程度の可視光帯域に属する波長であることが好ましい。レーザ光源22aは、後述する演算処理装置4から送出される照射タイミング制御信号に基づいて、レーザ光の発振を行う。
光学素子22bは、円錐形状のミラー又はプリズムを備える光学素子であり、円錐部の頂点がレーザ光源22aと対向するように設置されている。レーザ光源22aから射出されたスポット状のレーザ光は、光学素子22bの円錐部の頂点によって反射され、管軸方向Yと直交する平面(管軸方向Yと直交する管状体1の縦方向及び横方向を含む面)において、光学素子22bを中心に放射状に発散し、内表面1aに対し環状に照射する環状レーザ光L1となる。ここで、円錐部の円錐角が90°である場合には、レーザ光源22aからのレーザ入射方向に対して直角方向に、環状レーザ光L1が照射される。
撮像部21は、後述する距離調整装置25によって位置調整可能に保持され、管軸方向Yでレーザ光照射部22と対向するように配置されている。撮像部21は、例えばCCD(Charge Coupled Device)や、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子が搭載されたカメラであり、モノクロカメラ又はカラーカメラである。撮像部21は、管状体1の内表面1aに対し垂直に照射された環状レーザ光L1を、当該環状レーザ光L1に対して角度φ1の方向から常に撮像するように、距離調整装置25によりレーザ光照射部22との距離が調整される。
距離調整装置25は、撮像部21が固定される保持基板27aと、レーザ光照射部22が固定される保持基板27bと、これら一対の保持基板27a、27bを対向配置させる支柱状の連結部材26とを備える。距離調整装置25は、撮像部21の撮像中心軸(光軸)Z2と、レーザ光照射部22から照射される環状レーザ光L1の中心軸Z3とが一致するように、連結部材26に沿って撮像部21及びレーザ光照射部22を配設する。
保持基板27a、27bは同一構成でなり、例えば、図3に示すように、円盤状に形成されている。保持基板27a、27bには、撮像部21又はレーザ光照射部22が中心領域に固定されており、これら撮像部21又はレーザ光照射部22を避けるようにして縁周辺に、厚みを貫通する貫通孔27が等間隔で形成されている。保持基板27a、27bには、貫通孔27の孔形状に対応した形状でなる支柱状の連結部材26が、各貫通孔27にそれぞれ挿通されている。連結部材26は、図2に示したように、長手方向が管軸方向Yに沿って延設されており、長手方向に沿って保持基板27a、27bを移動させることができる。
保持基板27a、27bの材料は、管状体撮像装置3に求められる強度等に応じて適宜選択することが好ましい。連結部材26は、例えばガラス製等のような、環状レーザ光L1の波長に対して透明とみなすことができる材料を用いることが好ましい。ここでは連結部材26の本数を4本としたが、本発明はこれに限らず、管状体撮像装置3に求められる強度に応じて連結部材26の本数を適宜設定すればよい。撮像部21及びレーザ光照射部22が重量化し、連結部材26に対して十分な強度が求められる場合には、連結部材26は、例えば金属等のような、環状レーザ光L1の波長に対して透明とみなすことができない素材を利用して形成されることとなる。
距離調整装置25は、保持基板27a、27bを連結部材26の長手方向に沿って移動させることで、撮像部21の撮像中心軸Z2とレーザ光照射部22の中心軸Z3とを一致させた状態のまま、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を変えることができる。撮像部21は、距離調整装置25によって、管軸方向Yでレーザ光照射部22から遠ざかる方向(図2は、y1方向)、又は、近づく方向(図2では、y2方向)に移動し、レーザ光照射部22との距離が調整される。これにより、撮像部21は、内表面1aのうち環状レーザ光L1が照射される部位を撮像することができ、図4に示すように、環状レーザ光L1全体が撮像された管内表面画像I1を取得することができる。なお、管内表面画像I1には、内表面1aに照射された環状レーザ光L1が白く環状に写っており、撮像部21とレーザ光照射部22との間に延設した連結部材26も写っている。
図2に示した距離調整装置25は、図示しない移動装置の支持バーによって支持されている。管状体撮像装置3は、図5Aに示すように、検査対象となる管状体1が所定位置に設置されると、先ず始めに、駆動制御装置5によって、支持バーが縦方向に移動される。これにより、管状体撮像装置3は、図5Bに示すように、駆動制御装置5によって、撮像部21の撮像中心軸Z2及びレーザ光照射部22の中心軸Z3を、管状体1の管中心軸Z1に略一致させる。
その後、管状体撮像装置3は、距離調整装置25によって、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離が設定された後、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離が固定された状態のまま、駆動制御装置5により移動装置が制御され、管軸方向Yに移動してゆく。すなわち、撮像部21及びレーザ光照射部22は、管中心軸Z1に略一致した状態のまま管軸方向Yに沿って移動してゆき、管状体1の内表面1aを走査する。
後述する演算処理装置4は、管状体撮像装置3が管軸方向Yに所定距離移動する毎に、撮像部21に対して撮像のためのトリガ信号を出力する。撮像部21及びレーザ光照射部22の距離設定後の一体的な管軸方向Yへの移動間隔は、適宜設定することが可能であるが、例えば、撮像部21に設けられた撮像素子の画素サイズと同一にすることが好ましい。管軸方向Yの移動間隔と撮像素子の画素サイズとを一致させることで、撮像された画像において縦方向の分解能と横方向の分解能とを一致させることができる。
図2に示した角度φ1は、任意の値に設定することが可能であるが、例えば30〜60度程度とすることが好ましい。かかる角度をあまり大きくすると、環状レーザ光L1の内表面1aからの散乱光(反射光)が弱くなる。一方、角度φ1を小さくすると、検査対象物である管状体1の深さ変化量に対して、後述する縞画像における縞の移動量が小さくなり、管状体1の内表面1aに存在する凹部の深さ(又は、凸部の高さ)に関する情報が劣化するためである。
管状体撮像装置3では、距離調整装置25によって、撮像部21を管軸方向Yに沿って移動させ、内表面1aに照射された環状レーザ光L1を撮像部21で撮像する際に、所望の角度φ1となるように、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離が設定される。なお、本実施形態においては、距離調整装置25によって、撮像部21を管軸方向Yに沿って移動する場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、距離調整装置25によって、レーザ光照射部22を管軸方向Yに沿って移動させたり、又は、撮像部21及びレーザ光照射部22の両方を管軸方向Yに沿って移動させるようにしてもよい。
ここで、図6Aは、所定の管内径D1を有する管状体1に対し、管状体撮像装置3における撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離が最適な距離に設定された状態を示す。すなわち、撮像部21の撮像中心軸Z2及びレーザ光照射部22の中心軸Z3が、管状体1の管中心軸Z1に略一致した状態で、撮像部21の撮像範囲内に環状レーザ光L1全体が収まるように、距離調整装置25によって、撮像部21及びレーザ光照射部22の位置が移動され、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離が設定された状態を示す。
この場合、撮像部21では、図7Aに示すように、環状レーザ光L1全体が収まった管内表面画像I2を取得できる。これにより、演算処理装置4は、環状レーザ光L1全体が写った管内表面画像I2に対し所定の画像処理を行い、管状体1の内表面1aに欠陥が存在するか否かを判断する。
しかしながら、図6Bに示すように、図6Aに示した管内径D1よりも大きい管内径Dの管状体1に対しては、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を、図6Aの管状体1に対して設定した距離とすると、撮像部21の撮像範囲内に環状レーザ光L1を収めることができない。すなわち、撮像部21では、図7Bに示すように、環状レーザ光L1が写っていない管内表面画像I3を得ることになる。この場合、演算処理装置4は、環状レーザ光L1が管内表面画像I3内に写っていないことから、当該管内表面画像I3に所定の画像処理を行うことができず、管状体1の内表面1aに欠陥が存在するか否かを判断し得ない。
この際、例えば、距離調整装置25を備えておらず、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離が可変ではない構成の場合は、撮像部21においてカメラの焦点距離を変えることで対応することになる。すなわち、撮像部21の焦点距離を変える場合には、環状レーザ光L1の照射点を撮像部21により撮像するために、撮像部21の視線角度を広げることとなる。例えば、管状体1の管内径Dが大径の場合は、撮像部21の焦点距離を短くすることで画角を拡大することができる。一方、管状体1の管内径Dが小径の場合は、撮像部21の焦点距離を長くすることで画角を縮小することができる。
しかしながら、このように撮像部21の視野角度を変えた場合には、(i)管状体1の管内径Dまでの距離変化による撮影分解能の変化と、(ii)撮像部21で視野角が変化するため、凹凸感度の低下や変化とが、同時に生じることになる。このように2つの指標が同時に変化することで、検出処理が煩雑になることや、管状体1の内表面1aにある同一サイズの有害疵に対する検出感度が変化するという欠点がある。
そこで、本実施形態に係る管状体撮像装置3は、管状体1の管内径D、D1の変化に追従して、例えば撮像部21が固定された保持基板27aを、連結部材26の長手方向に沿って、レーザ光照射部22から遠ざかる方向(図6B、y1方向)に移動させることで、上記のような欠点を有さずに、環状レーザ光L1が収まった最適な管内表面画像I1を取得することができる。この際、距離調整装置25における、連結部材26に沿った保持基板27aの移動は、手動による移動でもよく、またモータ等の駆動部を利用した移動であってもよい。
ここで、図1に示したように、管状体内表面検査装置2は、撮像範囲調整装置6を備えており、当該撮像範囲調整装置6によって、撮像部21とレーザ光照射部22との間の最適な距離を特定することができる。撮像範囲調整装置6は、環状光認識部としての環状レーザ光認識部7と、一致度判定部としてのレーザ光一致度判定部8とを備えている。環状レーザ光認識部7は、管状体撮像装置3で得られた管内表面画像を受け取ると、図8Aに示すように、管内表面画像I4内の輝度の違いに基づいて、当該管内表面画像I4内に表示された環状レーザ光L1を認識する。
管内表面画像I4は、例えば、環状レーザ光L1が照射された部分が白く表示され、その他の部分は黒く表示されている濃淡画像になっている。管内表面画像I4内における環状レーザ光L1は、過去の操業データ等に基づいて、管内表面画像I4内の環状レーザ光L1の輝度を予め特定しておくことで認識できる。環状レーザ光認識部7は、管内表面画像I4内における輝度の違いから、例えば輝度が所定以上の環状領域を、環状レーザ光L1が表示された領域として認識し、この環状レーザ光L1が表示された領域の画素面積(以下、レーザ光画素面積と称する)を算出する。環状レーザ光認識部7は、レーザ光画素面積を求めると、これをレーザ光一致度判定部8に送出する。
レーザ光一致度判定部8は、図8Aに示すように、管内表面画像I4内に環状レーザ光L1が収まり、かつ、管内表面画像I4内に対して演算処理装置4により最適な画像処理を行える環状レーザ光L1の目標位置G1を予め記憶している。レーザ光一致度判定部8は、管内表面画像I4内に目標位置G1を重ね合わせ、これを表示部9に送出する。これにより表示部9には、撮像部21により撮像した管内表面画像内に目標位置G1を重ね合わせた管内表面画像I4が表示される。
これ加えて、レーザ光一致度判定部8は、管内表面画像I4内において、目標位置G1の領域の画素面積(以下、レーザ光目標画素面積と称する)を予め記憶している。レーザ光一致度判定部8は、管内表面画像I4を基に算出した環状レーザ光L1が占める領域の画素面積と、予め記憶しているレーザ光目標画素面積とを比較する。
この場合、レーザ光一致度判定部8は、レーザ光目標画素面積に対してレーザ光画素面積が一致する割合(一致度合いとも呼ぶ)を算出し、この算出結果を表示部9に表示させる。管状体撮像装置3では、例えば、撮像範囲調整装置6で算出された一致度合いが、所定の値以上(例えば90%以上)になると、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離が、撮像部21の撮像範囲内に環状レーザ光L1全体が収まるような最適な距離であると規定する。
検査員は、図8Bに示すように、表示部9に表示された管内表面画像I5内において、環状レーザ光L1が目標位置G1に重なるように、距離調整装置25を操作して撮像部21を移動させつつ、撮像範囲調整装置6で算出された一致度合い(%)を目安にして、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を調整することができる。管状体内表面検査装置2では、管状体1の管内径Dに変化が生じた場合でも、管内表面画像I4内の目標位置G1と、一致度合い(%)とを基に、管状体1の管内径Dの変化に追従して、その都度、撮像部21とレーザ光照射部22との間を確実かつ正確に、最適な距離に設定させることができる。
即ち、撮像範囲調整装置6は、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を調整するための情報として、例えば、「一致度合い」を生成することができ、そうした情報に基づいて、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を、最適な距離に設定することができる。
なお、モータ等の駆動部を利用して撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を設定する場合には、レーザ光一致度判定部8は、所定の閾値以上の一致度合い(例えば90%以上)となる撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を算出する。レーザ光一致度判定部8は、算出した距離から、少なくとも撮像部21及びレーザ光照射部22のいずれか一方の移動量を算出し、これを距離調整装置25に送出する。これにより、距離調整装置25の保持基板27a(27b)を、算出した移動量に基づいて移動させ、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を最適な距離に自動的に設定することができる。
<管状体撮像装置の具体的な構成や設定値について>
ここで、本実施形態に係る管状体撮像装置3について、その具体的な構成や設定値等を一例として列挙するが、このような具体例に限定されるものではない。管状体1は、管内径50mm〜500mm、長さ10m〜20mの管状体1を適用できる。レーザ光照射部22は、100mWの出力でレーザ光源22aから赤色レーザ光を照射する。円錐状の光学素子22b(円錐角90度)により、50mWの環状レーザ光L1となって管状体1の内表面1aに照射される。管状体1の内表面1aに照射されるラインビーム幅は、0.25mmである。ただし、この場合のラインビーム幅とは、ピーク強度値から13.5%で定義されるものである。
撮像部21は、1024画素×1024画素のCCD(画素サイズ:5.5μm×5.5μm)を撮像素子として搭載したカメラを適用し、フレームレートは、90fpsである。レンズの焦点距離は1.81mmであり、画角は180度である。撮影される画像の画素サイズは0.5mm×0.5mm、ラインビーム幅は、撮像画像(管内表面画像)上では、1〜3画素の輝線の幅で撮影される。撮像部21は、管状体1の内表面1aを、管軸方向Yに0.5mm進む毎に撮像する。撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離としては、77mm〜145mmで調整する。
<演算処理装置の全体構成について>
次に、第1の実施形態に係る演算処理装置4の全体構成について説明する。ここで、演算処理装置4の構成と、演算処理装置4で行われる画像処理は、特開2012−159491号公報及び特開2017−53790号公報に開示された公知の内容であるが、参考のため、以下簡単に説明する。連結部材26によって環状レーザ光L1や撮像視野が遮蔽される領域(以下、遮蔽領域とも称する)がある場合には、特開2012−159491号公報及び特開2017−53790号公報に示すような、遮蔽領域を補完する補完処理を実行することになる。
連結部材26に起因する不感帯(遮蔽領域と同じ。連結部材26に遮られることで、管状体1の内表面1aに照射された環状レーザ光を直接撮像することができない領域)を補完処理により無くす場合には、管状体撮像装置3が、管状体1内への送入から送出へと切り替わる時に、管状体撮像装置3を回転させ、管状体撮像装置3の管状体1内への送入時とは、遮蔽領域の位置が異なる管内表面画像を得るようにすることができる。管状体撮像装置3の管状体1内への送出時に撮像した管内表面画像を利用して、管状体撮像装置3の管状体1内への送入時に撮像した管内表面画像を補完する。
これにより、送入時及び送出時に撮像した管内表面画像に不感帯が存在する場合であっても、管状体1の内表面1aを、全周囲にわたって検査することが可能となる。このような補完処理の詳細については、特開2012−159491号公報及び特開2017−53790号公報に開示されているため、ここでは、管内表面画像内に遮蔽領域が存在せず、補完処理が不要な場合について簡単に説明する。
演算処理装置4は、例えば、図1に示したように、撮像制御部11と、画像処理部12と、表示制御部13と、記憶部14と、を有する。なお、演算処理装置4は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等からなるマイクロコンピュータ構成の制御部(図示せず)を有しており、撮像制御部11や、画像処理部12、表示制御部13、記憶部14に制御部が接続されている。演算処理装置4は、制御部のROM等に予め格納されている基本プログラムや、画像処理プログラム等の各種プログラムをRAMにロードして立ち上げることにより、演算処理装置4における各種機能を統括的に制御する。
撮像制御部11は、管状体1の撮像を開始する際に、レーザ光照射部22に対してレーザ光の発振を開始させるための制御信号を送出する。管状体撮像装置3が管状体1の撮像を開始すると、管状体撮像装置3からPLG信号が定期的に送出(例えば、管状体撮像装置3が0.5mm移動する毎に1パルスのPLG信号が送出)される。撮像制御部11は、PLG信号を取得する毎に撮像部21に対して撮像を開始するためのトリガ信号を送出する。
画像処理部12は、管状体撮像装置3の撮像部21から取得した管内表面画像を利用して、後述する縞画像フレームを生成する。その後、生成した縞画像フレームに対して、以下で説明するような画像処理を行い、管状体1の内表面1aに存在する可能性のある欠陥を検出する。画像処理部12は、管状体1の内表面1aの欠陥検出処理を終了すると、得られた検出結果に関する情報を、表示制御部13に送出する。なお、この画像処理部12については、以下で改めて詳細に説明する。
表示制御部13は、画像処理部12から受け取った、検査対象物である管状体1の欠陥検出結果を表示部9に表示させる。これにより、管状体内表面検査装置2を利用する検査員は、検査対象物(管状体1)の内表面1aに存在する各種の欠陥に関する検出結果を、その場で把握することが可能となる。
記憶部14には、本実施形態に係る演算処理装置4が、何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過等、又は、各種のデータベースやプログラム等が、適宜記録される。例えば、記憶部14は、A/D変換された管内表面画像を画像処理部12から受け取ると、これを記憶する。この記憶部14は、撮像制御部11、画像処理部12、表示制御部13等が、リード/ライト処理を実行することが可能である。
<画像処理部について>
続いて、図9を参照しながら、演算処理装置4に設けられた画像処理部12について説明する。図9に示すように、画像処理部12は、環状光センター算出部31と、座標変換部32と、縞画像フレーム生成部33と、光切断線処理部34と、深さ画像算出部35と、輝度画像算出部36と、検出処理部37と、を有する。
環状光センター算出部31は、A/D変換された管内表面画像を記憶部14から読み出し、管内表面画像内における環状レーザ光L1の環の重心位置と環の半径とをそれぞれ算出する。ここで、図10に示すように、時系列に得られる管内表面画像I11、I12、I13、I14、I15、…は、それぞれ管状体1の内表面1aの管軸方向Yに沿った、ある位置において、管状体1の内表面1aに照射された環状レーザ光L1を撮像したものである。
管内表面画像I11、I12、I13、I14、I15、…は、管状体撮像装置3の距離調整装置25(図2)により、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離が調整されていることで、環状レーザ光L1全体が表示されている。環状レーザ光L1の円周上に重畳している凹凸が、管状体1の内表面1aの断面形状と、内表面1aに存在する欠陥に関する情報を含んでいる。
環状光センター算出部31における環の重心位置と、環の半径とを算出する方法は、特に限定されるわけではなく、公知のあらゆる方法を利用することが可能である。環の重心位置及び半径を算出する方法の具体例としては、例えば、管内表面画像I11内に写る環状レーザ光L1が真円に近い場合は、以下のような2つの方法を挙げることができる。
・2値化した管内表面画像I11内において環状レーザ光L1の表示領域内の任意の3点を抽出し、この3点の位置座標の重心を算出する。得られた重心位置と3点のうち任意の1点との間の距離が環の半径となる。
・ハフ(Hough)変換による円抽出を行い、円(すなわち、環状レーザ光L1)の重心と半径とを算出する。
環状光センター算出部31は、各管内表面画像I11について、環の重心位置及び半径を算出すると、環の重心位置及び半径に関する情報をそれぞれ生成して、後述する座標変換部32に出力する。
なお、本実施形態においては、管状体1の内表面1aの断面形状が真円に近い場合について説明しているが、任意の断面形状に対して適用可能であり、例えば、管状体1の断面形状が楕円や角丸長方形等であってもよい。このような場合の重心は、管内表面画像に写った環状レーザ光の形状から求めることが可能であり、求めた重心との距離の最大値と最小値の平均値を半径として用いることで、後述する座標変換を同じ手順で実施できる。
座標変換部32は、管内表面画像I11内の環状レーザ光L1の重心位置、及び、当該重心位置と環状レーザ光L1の照射部分との離隔距離、に基づいて、管内表面画像I11の座標系を変換する。環状レーザ光L1の重心位置が算出されることで、環状レーザ光L1の照射位置に対応する画素の存在位置を、重心位置を原点とした極座標(r,θ)で表すことができる。
座標変換部32は、図11に示したように、環状光センター算出部31で算出された半径rに動径方向に±Δrの余裕を設けたうえで(すなわち、r−Δr〜r+Δrの範囲で)、0度≦θ≦360度として座標変換を実施する。なお、本実施形態では、動径方向のr−Δr〜r+Δrの範囲で座標変換を実施する場合について説明しているが、余裕値Δrの値は、環状レーザ光L1の照射部分を含む範囲で、プラス方向とマイナス方向とで異なった値であってもよい。かかる場合、例えば、座標変換を行う範囲は、r−Δr1〜r+Δr2等と表現することができる。ただし、本実施形態においては、プラス方向とマイナス方向とで同じ値Δrを用いる場合について、以降の説明を行う。
このような座標変換を行うことで、図11の右側に示したように、動径方向には半径rを中心として2Δrの高さを有し、角度方向には360度分の長さを有する帯状の画像が抽出されることとなる。以上の説明からも明らかなように、抽出された帯状の画像は、環状レーザ光L1の照射部分を管状体1の管周方向に展開した線分(以下、「光切断線」とも称する。)を含むこととなる。また、動径方向に関して、半径rを中心として2Δrの範囲を抽出することで、環状レーザ光L1の周に凹凸が存在していたとしても、かかる凹凸を含む環状レーザ光L1の周をもれなく抽出することが可能となる。このようにして得られた帯状の画像を、以下では光切断画像と称する。
なお、Δrの大きさは、管状体1に存在すると考えられる凹凸の高さの範囲を過去の操業データ等に基づいて予め大まかに算出しておくことで、決定することが可能である。上述のような管状体撮像装置3により撮像された管内表面画像I11は、環状レーザ光L1として、約300画素に相当する半径を有する環を含むこととなる。そこで、r=300画素、Δr=25画素として、0度≦θ≦360度の範囲で光切断画像の抽出を行うと、横1885画素×高さ50画素の光切断画像が生成されることとなる。
座標変換部32は、抽出された光切断画像における各画素の座標(x,y)=(rcosθ,rsinθ)を利用することで、光切断画像に含まれる画素の座標を極座標(r,θ)に変換する。ここで、座標変換部32が実施する座標値の変換は、直交座標系から極座標系への変換であるため、直交座標系における格子点(すなわち、画素の中心位置)が、極座標系において必ず格子点に対応するとは限らず、非格子点に対応するものも存在することとなる。そこで、座標変換部32は、極座標系における非格子点の濃度(画素値)を補間するために、着目している点の近傍に位置する他の格子点の濃度に基づいて補間する、いわゆる画像補間法を併せて実施することが好ましい。
かかる画像補間法は、特に限定されるものではなく、例えば、「昭晃堂 画像処理ハンドブック」等に記載されている公知の画像補間法を利用することが可能である。このような画像補間法の例として、最近傍(nearest neighbor)法、双線形補間(bi−linear interpolation)法、3次補間(bi−cubic convolution)法等を挙げることができる。これらの方法のうち、前者ほど処理速度が速く、後者ほど高品質の結果を得ることができる。そこで、座標変換部32は、利用する画像補間法の種別を、処理に用いることのできるリソース量や処理時間等に応じて適宜決定すればよい。本実施形態において示す光切断画像の具体例では、画像補間法として3次補間法を適用している。
座標変換部32は、上述のような座標変換処理や画像補間処理を終了すると、得られた光切断画像に対応する画像データを、管状体1の管軸方向Yに沿って記憶部14に順次格納していく。縞画像フレーム生成部33は、記憶部14から、管状体1の管軸方向Yに沿って格納された光切断画像を順に取得する。その後、縞画像フレーム生成部33は、取得した各光切断画像を管状体1の管軸方向Yに沿って順に配列して、図12に示すような縞画像フレームを生成する。
1つの縞画像フレームを構成する光切断画像の個数は、適宜設定すればよいが、例えば、256個の光切断画像で1つの縞画像フレームを構成するようにしてもよい。各光切断画像は、上述のように管内表面画像の撮像間隔毎(例えば、0.5mm間隔)に存在している。そのため、0.5mm間隔で撮像された管内表面画像に基づく、256個の光切断画像からなる1つの縞画像フレームは、管状体の内表面の全周を、管軸方向Yに沿って128mm(=256×0.5mm)の範囲で撮像した結果に相当する。
縞画像フレーム生成部33は、図12に示したような縞画像フレームを生成すると、生成した縞画像フレームを、後述する光切断線処理部34に出力する。光切断線処理部34は、縞画像フレームに含まれる各光切断線について、光切断線の変位量(輝線の曲がり具合)を含む光切断線特徴量を算出する。以下では、図12及び図13を参照しながら、光切断線処理部34が実施する処理及び算出する光切断線特徴量について説明する。図12は、縞画像フレームを模式的に示した説明図である。図13は、光切断線処理部が実施する光切断線処理について説明するための説明図である。
図12では、1つの縞画像フレームの中にN本の光切断線が存在しており、縞画像フレームの横方向の長さは、M画素であるものとする。また、1本の光切断線を含む1つの光切断画像は、縦2Δr画素×横M画素から構成されている。
ここで、説明の便宜上、縞画像フレームの管周方向(図12における横方向)にX軸をとり、縞画像フレームの管軸方向(図12における縦方向)にY軸をとって、縞画像フレーム中の画素の位置をXY座標で表すものとする。以下の説明では、縞画像フレーム中に存在するj(1≦j≦N)番目の光切断線の左側からm画素目(1≦m≦M)の位置(すなわち、Xj,mで表される位置)に着目する。
光切断線処理部34は、まず、着目すべき光切断線(以下、単に「ライン」とも称する。)の着目すべきX座標位置(本説明では、Xj,mで表される位置)を選択すると、図13に示したように、着目したラインの着目したX座標位置における画素に対応付けられている画素値(すなわち、環状レーザ光L1の輝度値)の分布を参照する。この際、光切断線処理部34は、光切断画像中の当該X座標位置における全ての画素について、以下で説明する処理を実施するのではなく、光切断画像中におけるY座標の基準位置Ysの前後Wの範囲に属する画素(すなわち、Ys−W〜Ys+Wの範囲に属する画素)について、以下で説明する処理を実施する。
ここで、Y座標の基準位置Ysは、縞画像フレームのjライン目の光切断画像に対して予め指定される管軸方向Yの位置であり、例えば光切断画像の管軸方向Yの中心を指定すれば、先述のようにプラス方向とマイナス方向とで同じ余裕値Δrを用いる場合には、環状光センター算出部31が算出した半径r(すなわち光切断線の位置)に等しくなる。また、処理範囲を規定するパラメータWは、管状体1に存在すると考えられる凹凸の高さの範囲を過去の操業データ等に基づいて、光切断画像中におけるY座標の基準位置Ysの前後Wの範囲が光切断画像に収まるように、予め大まかに算出しておき、適宜決定すればよい。パラメータWの値を小さくすることができれば、後述する光切断線処理部34の処理負荷の低減を図ることができる。
光切断線処理部34は、まず、Ys−W〜Ys+Wの範囲に含まれる画素の中から、光切断線に対応する画素を特定するための第1の閾値の一例である所定の閾値Th以上の画素値を有する画素を特定する。図13に示した例では、Yj,k、Yj,k+1、Yj,k+2で表される3つの画素が、それぞれ閾値Th以上の画素値Ij,k、Ij,k+1、Ij,k+2を有している。従って、光切断線処理部34は、所定の閾値Th以上の画素値を有する画素の数を、線幅方向に加算した数pj,m=3と設定する。この所定の閾値Th以上の画素値を有する画素の数を線幅方向に加算した数pj,mは、いわば位置(j,m)における輝線の画素数に対応する値であり、光切断線特徴量の一つである。また、光切断線処理部34は、以下の処理において、抽出された画素に関する情報(Yj,k、Ij,k)、(Yj,k+1、Ij,k+1)、(Yj,k+2、Ij,k+2)(以下、単に(Y,I)と略記することもある。)の情報を利用して、更なる光切断線特徴量を算出していく。
また、光切断線処理部34は、パラメータpj,m、及び、抽出した画素に関する情報(Y,I)を利用して、抽出された画素の輝度の総和Kj,mを算出する。図13に示した例の場合、光切断線処理部34が算出する輝度の総和は、Kj,m=Ij,k+Ij,k+1+Ij,k+2となる。この輝度の総和Kj,mも、光切断線特徴量の一つである。
更に、光切断線処理部34は、抽出された画素に関する情報(Y,I)と、Y座標の基準位置Ysとを利用して、抽出された画素のY方向の重心位置YC(j,m)を算出するとともに、重心位置YC(j,m)の基準位置Ysからの変位量Δdj,m=Ys−YC(j,m)を算出する。
ここで、重心位置YC(j,m)は、抽出された画素の集合をAと表すこととすると、以下の数1で表される値となる。従って、図13に示した例の場合、重心位置YC(j,m)は、以下の数2で表される値となる。
ここで、画素に対応する管軸方向Yの位置は、いわば管状体撮像装置3の移動幅(例えば、0.5mm)で量子化された値である。他方、上記数1で示したような演算により算出される重心位置YC(j,m)は、割り算という数値演算を利用することで算出される値であるため、管状体撮像装置3の移動幅(いわば量子化単位)よりも小さな値となる。従って、かかる重心位置YC(j,m)を利用して算出される変位量Δdj,mについても、移動幅よりも小さな値を有し得る値となる。このようにして算出される変位量Δdj,mも、光切断線特徴量の一つである。
光切断線処理部34は、以上のような3種類の特徴量を、各切断線に含まれるM個の要素に関して算出する。その結果、図14〜図16に示すように、光切断線の変位量Δd、輝度の総和K、及び、輝線の画素数pに関して、M列×N行の二次元配列が生成される。本実施形態に係る縞画像フレームの具体例の場合、M=1885、N=256であるため、各光切断線特徴量を構成するデータの個数は、1885×256個となる。
光切断線処理部34は、算出した光切断線特徴量のうち、光切断線の変位量Δdに関する特徴量を、後述する深さ画像算出部35に出力する。また、光切断線処理部34は、算出した光切断線特徴量のうち、輝度の総和K、及び、輝線の画素数pに関する特徴量を、後述する輝度画像算出部36に出力する。
深さ画像算出部35は、光切断線処理部34が生成した光切断線特徴量(特に、変位量Δdに関する特徴量)に基づいて、管状体1の内表面1aの凹凸状態を表す深さ画像を算出する。具体的には、深さ画像算出部35は、図14に示したような変位量Δdに関する特徴量(二次元配列)と、環状レーザ光L1の垂直成分入射角(図2における角度φ1)と、を利用して、深さ画像を算出する。かかる深さ画像は、管軸方向Yのそれぞれの位置での凹凸状態の一次元分布が管軸方向Yに沿って順に配列された、二次元の凹凸状態の分布を表す画像である。
まず、図17を参照しながら、管状体1の内表面1aに存在する凹凸の高さと、光切断線の変位量Δdとの関係について説明する。図17は、光切断線の変位と欠陥の高さとの関係を示した説明図である。
図17では、管状体1の内表面1aに凹みが存在した場合を模式的に示している。ここで、内表面1aに凹みが存在しない場合の表面位置の高さと、凹みの底部の高さと、の差分をΔhと表す。垂直入射した環状レーザ光が表面反射をする場合に着目すると、内表面1aに凹みが存在しない場合には、図17の光線Aのように反射光は伝播することとなるが、内表面1aに凹みが存在する場合には、図17の光線Bのように反射光が伝播することとなる。光線Aと光線Bとのズレが、本実施形態において光切断線の変位量Δdとして観測されることとなる。ここで、幾何学的な位置関係から明らかなように、光切断線の変位量Δdと凹みの深さΔhとは、Δd=Δh・sinφ1の関係が成立する。
なお、図17では、管状体の内表面に凹みが存在する場合について説明したが、管状体1の内表面1aに凸部が存在する場合であっても、同様の関係が成立する。
深さ画像算出部35は、以上説明したような関係を利用して、光切断線処理部34が算出した光切断線の変位量Δdに関する特徴量に基づき、管状体の内表面の凹凸に関する量Δhを算出する。ここで、深さ画像の算出に用いられる光切断線の変位量Δdは、先に説明したように光切断線の重心位置に基づいて算出されたものであり、移動幅よりも小さな値を有することができる。従って、深さ画像算出部35により算出される深さ画像は、撮像される画素分解能よりも細かい分解能で凹凸が再現されている画像となる。
本実施形態で示した縞画像フレームの具体例は、撮影ピッチ0.5mmで撮像された光切断線の変位を積み上げたものであるため、それぞれの変位量ΔdをΔhに変換すると、幅0.5mm×高さ0.5mmの深さ画像が算出されることとなる。また、かかる具体例では、角度φ1=45°であるため、Δd=(1/20.5)・Δhの関係が成立している。
なお、被検査体である管状体1の内表面1aの形状の変化や、カメラ走査方向軸が管状体1の中心からずれることにより、図18に示したように、光切断線に湾曲等の歪みが生じる場合がある。他方、本実施形態に係る管状体内表面検査方法では、光切断線に重畳している凹凸が、管状体1の内表面1aの断面形状と内表面1aに存在する表面欠陥に関する情報となっている。そのため、深さ画像算出部35は、光切断線の変位量Δdに基づいて深さ画像を算出する際に、光切断線毎に歪み補正処理を行って、光切断線に重畳している凹凸に関する情報のみを抽出してもよい。このような歪み補正処理を実施することにより、カメラ走査方向軸が管状体1の管中心軸に正確に一致していない場合や、内表面1aの形状が円でない場合であっても、内表面1aに存在する凹凸疵の情報のみを得ることが可能となる。
かかる歪み補正処理の具体例として、(i)多次元関数や各種の非線形関数を利用したフィッティング処理を行い、得られたフィッティング曲線と観測された光切断線との差分演算を行う処理や、(ii)凹凸に関する情報が高周波成分であることを利用して、浮動フィルタやメディアンフィルタ等のローパスフィルタを適用する処理等を挙げることができる。このような歪み補正処理を実施することにより、内表面1aに存在する凹凸疵の情報を保持したまま、光切断線の平坦化を図ることが可能となる。
深さ画像算出部35は、以上説明したようにして算出した深さ画像に関する情報を、検出処理部37に出力する。一方、輝度画像算出部36は、光切断線処理部34が生成した光切断線特徴量(特に、輝度の総和K及び輝線の画素数pに関する特徴量)に基づいて、管状体1の内表面1aにおける環状レーザ光L1の輝度の分布を表す輝度画像を算出する。
具体的には、輝度画像算出部36は、図15に示したような輝度の総和Kに関する特徴量(二次元配列)、及び、図16に示したような輝線の画素数pに関する特徴量(二次元配列)を利用して、総和輝度の線幅方向の平均値である平均輝度KAVE(j,m)=Kj,m/pj,m(1≦j≦N、1≦m≦M)を算出する。その後、輝度画像算出部36は、算出した平均輝度KAVE(j,m)からなるデータ配列を、着目している管状体1の輝度画像とする。かかる輝度画像は、管軸方向Yのそれぞれの位置での環状レーザ光L1の輝度の一次元分布が管軸方向Yに沿って順に配列された、二次元の輝度分布を表す画像である。輝度画像算出部36は、以上説明したようにして算出した輝度画像に関する情報を、後述する検出処理部37に出力する。
検出処理部37は、深さ画像算出部35により算出された深さ画像と、輝度画像算出部36により算出された輝度画像とに基づいて、管状体1の内表面1aに存在する欠陥を検出する。
かかる検出処理部37は、深さ画像及び輝度画像に基づいて欠陥部位を特定する欠陥部位特定機能と、特定した欠陥部位の形態及び画素値に関する特徴量を抽出する特徴量抽出機能と、抽出した特徴量に基づいて欠陥の種別や有害度等を判別する欠陥判別機能と、を有している。以下、これらの機能について説明する。
<欠陥部位特定機能>
検出処理部37は、取得した深さ画像及び輝度画像の各画素に対して、周辺画素との画素値(深さを表す値、又は、輝度値)の線形和を得るフィルタ処理によって縦線状疵、横線状疵、微小疵等の領域を強調し、得られた値が、欠陥部位特定のための第2の閾値以上となるか否かの判定を行う。このようなフィルタ処理及び当該フィルタ処理結果に基づく判定処理を実施することで、検出処理部37は、欠陥部位を特定するための2値化画像を生成することができる。かかる2値化画像において、算出した値が第2の閾値未満であった画素が正常箇所(すなわち、2値化画像の画素値=0)に該当し、算出した値が第2の閾値以上であった画素が欠陥箇所(すなわち、2値化画像の画素値=1)に該当する。更に、検出処理部37は、連続して発生している欠陥箇所を結合していくことで、一つ一つの欠陥部位を特定する。
<特徴量抽出機能>
検出処理部37は、欠陥部位特定機能により深さ画像及び輝度画像の欠陥部位を特定すると、特定した欠陥部位ごとに、欠陥部位の形態及び画素値に関する特徴量を抽出する。欠陥部位の形態に関する特徴量として、例えば、欠陥部位の幅、欠陥部位の長さ、欠陥部位の周囲長、欠陥部位の面積、欠陥部位の外接長方形の面積等を挙げることができる。また、欠陥部位の画素値に関する特徴量として、深さ画像に関しては、欠陥部位の深さの最大値、最小値、平均値等を挙げることができ、輝度画像に関しては、欠陥部位の輝度の最大値、最小値、平均値等を挙げることができる。
<欠陥判別機能>
検出処理部37は、特徴量抽出機能により各欠陥部位の特徴量を抽出すると、抽出した特徴量に基づいて、欠陥部位毎に欠陥の種別や有害度等を判別する。特徴量に基づく欠陥の種別や有害度等の判別処理は、例えば図19に示したようなロジックテーブルを利用して行われる。すなわち、検出処理部37は、図19に例示したようなロジックテーブルによって表される判別条件に基づき、欠陥の種別や有害度を判別する。
図19に例示したように、ロジックテーブルの縦方向の項目として、欠陥の種別(欠陥A1〜欠陥An)が記載されており、ロジックテーブルの横方向の項目として、特徴量の種類(特徴量B1〜特徴量Bm)が記載されている。また、欠陥の種別及び特徴量により規定されるテーブルの各セルには、対応する特徴量の大小による判別条件式(条件式C11〜条件式Cnm)が記述されている。このようなロジックテーブルの各行が一組となって、一つ一つの欠陥の種別の判別条件となる。判別処理は、最上位の行に記載された種別から順に行われ、何れか一つの行に記載された判別条件を全て満たした時点で終了する。
このようなロジックテーブルは、過去の操業データ及び当該操業データに基づく検査員による欠陥の種別及び有害度の特定結果を教師データとした学習処理により構築されたデータベースを利用して、公知の方法により生成することが可能である。
検出処理部37は、このようにして検出した欠陥部位ごとに欠陥の種別及び有害度を特定し、得られた検出結果を表示制御部13に出力する。表示制御部13は、検出対象物である管状体1の内表面1aに存在する欠陥に関する情報を表示部9に送出し、当該情報を表示部9に表示させる。
なお、以上の説明では、ロジックテーブルを利用して欠陥の種別や有害度を判別する場合について説明したが、欠陥の種別や有害度を判別する方法は上記例に限定されるわけではない。例えば、過去の操業データ及び当該操業データに基づく検査員による欠陥の種別及び有害度の特定結果を教師データとした学習処理により、ニューラルネットやサポートベクターマシン(SVM)等の判別器を生成し、かかる判別器を欠陥の種別や有害度の判別に利用してもよい。
本実施形態に係る管状体内表面検査装置2は、管状体1の内表面1aを管周方向X全周、管軸方向Y全長にわたって検査し得、微小な凹凸形状の欠陥や模様状の欠陥を検出できる。本実施形態に係る管状体内表面検査装置2では、欠陥の発生位置を正確に特定することが可能となるため、鋼管等の管状体の生産性や歩留まりの向上や、品質保証に大きく寄与することができる。
<作用及び効果>
以上の構成において、管状体内表面検査装置2では、レーザ光照射部22が管状体1の管軸方向Yに沿って移動しながら、管状体1の内表面1aの全周方向に対して環状レーザ光L1を照射する(光照射ステップ)。管状体内表面検査装置2では、レーザ光照射部22とともに撮像部21が管軸方向Yに沿って移動しながら、レーザ光照射部22によって内表面1aに生じた環状レーザ光L1を撮像し、環状レーザ光L1が撮像された管内表面画像を生成する(撮像ステップ)。これにより、管状体内表面検査装置2では、演算処理装置4によって、管内表面画像に対して画像処理を行い、管状体1の内表面1aに欠陥が存在するか否かを判断できる(演算処理ステップ)。
これに加えて、本発明の管状体内表面検査装置2では、撮像部21により内表面1aを撮像するに先立って、撮像部21の撮像範囲内に環状レーザ光L1全体が収まるように、距離調整装置25によって、撮像部21を管軸方向Yに沿って移動させ、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を設定可能とした(設定ステップ)。これにより、管状体内表面検査装置2では、管状体1の管内径Dに変化が生じた場合でも、管状体1の管内径Dの変化に追従して、その都度、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を調整できる。よって、管状体内表面検査装置2では、管状体1の管内径Dに変化が生じた場合でも、環状レーザ光L1を確実に撮像することができ、従来と同様に、管状体1の内表面1aにおける欠陥の有無を検査することができる。
本発明の管状体内表面検査装置2では、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を、管状体1の管内径サイズ毎に最適な距離に調整することで、環状レーザ光L1の照射点を常に同一の角度で撮像部21により観察できることから、管状体1の内表面の凹凸に対して感度低下や、感度変化を防止できる。
なお、本発明の管状体内表面検査装置2では、撮像部21の必要分解能を、想定した最大管内径サイズにて確保することで、想定した最小管内径サイズで撮影分解能をより向上させることができ、管状体1の全サイズへの適用が可能となる。
(2)第2の実施形態
上述した第1の実施形態においては、図8Aに示したように、管内表面画像I4内に表示させた目標位置G1と、レーザ光一致度判定部8により算出した一致度合い(%)とを基に、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を設定するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、管内表面画像I4内に表示させた目標位置G1と、レーザ光一致度判定部8により算出した一致度合い(%)と、のうちいずれか一方だけを利用して、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を設定するようにしてもよい。
例えば、図1との対応部分に同一符号を付した図20は、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を調整するための情報として、管内表面画像内に環状レーザ光L1を合わせる目標位置のみを表示させ、検査員に対して目標位置のみを目安に撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を設定させる管状体内表面検査装置42を示す。この場合、撮像範囲調整装置43には、目標位置表示制御部44が設けられる。
目標位置表示制御部44は、図21Aに示すように、管内表面画像I21内に環状レーザ光が収まり、かつ、演算処理装置4により最適な画像処理を行える環状レーザ光の位置を示した環状目標位置G2を予め記憶している。この場合、目標位置表示制御部44は、管状体撮像装置3から管内表面画像I21を受け取ると、所定幅を有した環状目標位置G2を、管内表面画像I21に重ね合わせ、これを表示部9に送出する。
これにより表示部9には、管状体撮像装置3により撮像した管内表面画像I21内に環状目標位置G1を重ね合わせた管内表面画像I21が表示される。検査員は、図21Bに示すように、表示部9に表示された管内表面画像I22内において、環状レーザ光L1が環状目標位置G2の領域内に収まるように、距離調整装置25を操作して撮像部21を移動させ、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を調整することができる。
以上より、管状体内表面検査装置42では、管状体1の管内径Dに変化が生じた場合でも、管内表面画像I21内の環状目標位置G2を基に、管状体1の管内径Dの変化に追従して、撮像部21を最適な位置まで移動できる。よって、管状体内表面検査装置42では、管状体1の管内径Dに変化が生じた場合でも、撮像部21とレーザ光照射部22との間を確実、かつ正確に最適な距離に設定させることができる。
なお、この際、距離調整装置25における、連結部材26に沿った保持基板27aの移動は、モータ等の駆動部を利用した移動であってもよい。この場合、目標位置表示制御部44は、管内表面画像I21内の環状目標位置G2と、管内表面画像I21内の環状レーザ光L1の位置とから、環状レーザ光L1が環状目標位置G2に重なる撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を算出する。目標位置表示制御部44は、算出した距離から撮像部21又はレーザ光照射部22の移動量を算出し、これを管状体撮像装置3の駆動部に送出する。これにより管状体撮像装置3は、駆動部によって距離調整装置25の保持基板27a(27b)を、移動量に基づいて移動させ、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を最適な距離に自動的に設定することができる。
(3)第3の実施形態
図1との対応部分に同一符号を付して示す図22は、第3の実施形態による管状体内表面検査装置52の構成を示す。第3の実施形態による管状体内表面検査装置52は、第1の実施形態による管状体内表面検査装置2及び第2の実施形態による管状体内表面検査装置42とは、撮像範囲調整装置54の構成と、管状体撮像装置53に管内径測定部が設けられている点とで相違している。
この場合、本実施形態による撮像範囲調整装置54は、管状体撮像装置53より、管状体1の管内径Dを測定した測定結果を受け取る。ここで、管状体撮像装置53は、図23に示すように、例えば、タイム オブ フライト方式のレーザ測定機等からなる管内径測定部57が保持基板27bに設けられている。管内径測定部57は、例えば、管状体1の内表面1aに向けて測定用レーザ光L3を照射してから、測定用レーザ光L3が内表面1aで反射して受光するまでの時間を計測する。これにより管内径測定部57は、管状体1の管内径Dを測定し、その測定結果を撮像範囲調整装置54に送出する。
図22に示すように、本実施形態に係る撮像範囲調整装置54は、設定距離情報記憶部55と設定距離特定部56とを備えている。設定距離情報記憶部55は、管状体1の管内径毎に、それぞれ撮像部21とレーザ光照射部22との間の最適な距離が予め対応付けられた、設定距離情報が記憶されている。例えば、設定距離情報としては、管状体撮像装置53によって、管内径Dの管状体1の管内表面画像を撮像したときに、管内表面画像内で環状レーザ光L1が所望する位置に表示されるような、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離が、当該管内径Dに対応付けられている。このような設定距離情報は過去の操業データ等に基づいて作製できる。
設定距離特定部56は、管内径Dの測定結果を管状体撮像装置53から受け取ると、この管内径Dの値に対応付けられた、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を、設定距離情報記憶部55から読み出す。設定距離特定部56は、設定距離情報記憶部55から読み出した、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を、表示部9に送出し、これを、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を調整するための情報(距離調整装置25により設定する設定距離情報)として表示部9に表示させる。検査員は、設定距離情報を基に、距離調整装置25によって、少なくとも撮像部21及びレーザ光照射部22のいずれか一方を管軸方向Yに移動させることで、図24Aに示すように、所望する位置に環状レーザ光L1が写っていない管内表面画像I24から、図24Bに示すように、演算処理装置4による画像処理に最適な位置に環状レーザ光L1が写った管内表面画像I25を、管状体撮像装置53により取得できる。
以上より、管状体内表面検査装置52では、管状体1の管内径Dに変化が生じた場合でも、管状体撮像装置53による管内径Dの測定結果を基に、管内径Dに合った撮像部21とレーザ光照射部22との間の最適な距離を特定する。これにより、管状体内表面検査装置52では、管状体1の管内径Dの変化に追従して、撮像部21を最適な位置まで移動できるので、撮像部21とレーザ光照射部22との間を確実、かつ正確に最適な距離に設定させることができる。
なお、この際、距離調整装置25における、連結部材26に沿った保持基板27aの移動は、モータ等の駆動部を利用した移動であってもよい。この場合、設定距離特定部58は、管状体撮像装置53による管内径Dの測定結果を基に特定した、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離から、撮像部21又はレーザ光照射部22の移動量を算出する。設定距離特定部58は、この移動量を管状体撮像装置3の駆動部に送出する。これにより管状体撮像装置53は、駆動部によって距離調整装置25の保持基板27a(27b)を、移動量に基づいて移動させ、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を、最適な距離に自動的に設定することができる。
(4)第4の実施形態
上述した実施形態においては、環状光を照射する光照射部として、環状レーザ光L1を照射するレーザ光照射部22を適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らない。環状光を照射する光照射部としては、例えば、図25に示すように、管状体1の内表面1aを環状に照らす照明光(以下、環状照明光とも称する)を照射する照明光照射部64を用いるようにしてもよい。
本実施形態に係る管状体内表面検査装置の構成は、図1に示した第1の実施形態に係る管状体内表面検査装置2の構成とは、主に管状体撮像装置63及び画像処理部(後述する)の構成が異なっている。ここでは、第1の実施形態と異なる点について着目して説明し、その他の構成の説明については省略する。
図25に示すように、管状体撮像装置63は、環状照明光L2を照射する照明光照射部64を有している以外は、第1の実施形態に係る管状体撮像装置3とほぼ同様の構成を有し、ほぼ同様の効果を奏するものである。そのため、以下では、第1の実施形態との相違点である照明光照射部64を中心に説明する。
照明光照射部64は、例えば400nm〜800nm程度の可視光帯域に属する波長を有する環状照明光L2を、管状体1の内表面1aの全周にわたって、広がり(内表面での広がり幅:d)を持ちながら照射する。本実施形態に係る管状体撮像装置63では、例えば、管状体撮像装置63が管軸方向Yに、環状照明光L2の反射光の広がりdラインだけ進む毎に、撮像部21により環状照明光L2の反射光を1回撮像する。
照明光照射部64は、保持基板27bに固定された基台部65と、基台部65に設けられた複数の発光素子66とを有する。図26に示すように、照明光照射部64は、例えば、基台部65が円環状に形成されており、基台部65の外周側領域において円周に沿って、複数の発光素子66が等間隔に配置されている。発光素子66は、照明光の照射方向を制御するためのレンズが設けられている。また、レンズに加え、適宜、照度を均一にするための拡散板が設けられても良い。照明光照射部64は、円環状の基台部65の中心に対して放射状に広がり(すなわち、円環の径方向に外側に向かって)、内表面1aに対して環状照明光L2を射出する。照明光照射部64から照射される環状照明光L2の波長は特に限定されるものではない。
基台部65に設けられる発光素子66の個数や設置間隔は特に限定されるものではなく、着目する内表面1aの視野が所望の均一な明るさを有するように決定すればよい。また、複数の発光素子66の替わりに、照明光の照射方向を制御するためのレンズを有した1つのリング状の発光素子を用いてもよい。
基台部65には、これら発光素子66を避けるように内周側領域に、厚みを貫通する貫通孔65aが等間隔で形成されている。基台部65には、保持基板27a、27bと同様に支柱状の連結部材26が、各貫通孔65aにそれぞれ挿通されている。距離調整装置25は、長手方向が管軸方向Yに延設された連結部材26に沿って、撮像部21を照明光照射部64から遠ざかる方向(図25では、y1方向)、又は、照明光照射部64に近づく方向(図25では、y2方向)に移動させる。但し、距離調整装置25は、長手方向が管軸方向Yに延設された連結部材26に沿って、照明光照射部64を撮像部21に近づく方向(図25では、y1方向)、又は、撮像部21から遠ざかる方向(図25では、y2方向)に移動させるようにしてもよい。
本実施形態でも距離調整装置25は、保持基板27a、27bが連結部材26の長手方向に沿って移動することで、撮像部21の撮像中心軸Z2と照明光照射部64の中心軸Z3とを一致させた状態のまま、撮像部21と照明光照射部64との間の距離を可変することができ、撮像部21と照明光照射部64との間の距離を調整することができる。これにより、撮像部21は、内表面1aのうち環状照明光L2が照射される部位を撮像することができ、図27に示すように、環状照明光L2全体が撮像された管内表面画像I30を取得することができる。なお、管内表面画像I30では、内表面1aに照射された環状照明光L2が白く環状に写っており、撮像部21と照明光照射部64との間に延設した連結部材26も写っている。
ここで、図28Aは、所定の管内径D1を有する管状体1に対し、管状体撮像装置63における撮像部21と照明光照射部64との間の距離が最適な距離に設定された状態を示す。すなわち、撮像部21の撮像中心軸Z2及び照明光照射部64の中心軸Z3が、管状体1の管中心軸Z1に略一致した状態で、撮像部21及び照明光照射部64の位置が移動され、撮像部21の撮像範囲内に環状照明光L2全体が収まるように、距離調整装置25によって、撮像部21と照明光照射部64との間の距離が設定された状態を示す。
ここで、照明光照射部64は、環状照明光L2が内表面1aに対して入射角φ2(φ2<90°)で入射するように配設されている(図25)。撮像部21と照明光照射部64との間の距離は、撮像部21にて、環状照明光L2の正反射光が結像するように調整される。すなわち、撮像部21は、内表面1aの法線方向と撮像部21の光軸とのなす角がφ2と略等しくなる位置に設定される。この際、環状照明光L2が照射されている内表面の管軸方向の長さをdと表わすこととする。
これにより、撮像部21では、図29Aに示すように、環状照明光L2全体が収まった管内表面画像I31を取得できる。演算処理装置4(図1)は、環状照明光L2全体が写った管内表面画像I31に対し所定の画像処理を行い、管状体1の内表面1aに欠陥が存在するか否かを判断する。
しかしながら、図28Bに示すように、図28Aに示した管内径D1よりも大きい管内径Dの管状体1に対しては、撮像部21と照明光照射部64との間の距離を、図29Aの管状体1に対して設定した距離のままとすると、撮像部21の撮像範囲内に環状照明光L2を収めることができない。すなわち、撮像部21では、図29Bに示すように、環状照明光L2が写っていない管内表面画像I32を得ることになる。この場合、演算処理装置4は、環状照明光L2が管内表面画像I32内に写っていないことから、当該管内表面画像I32に所定の画像処理を行うことができず、管状体1の内表面1aに欠陥が存在するか否かを判断し得ない。
管状体撮像装置63は、管状体1の管内径D、D1の変化に追従して、例えば撮像部21が固定された保持基板27aを、連結部材26の長手方向に沿って、照明光照射部64から遠ざかる方向(図25では、y1方向)に移動させることで、図27に示したように、環状照明光L2が収まった管内表面画像I30を取得できる。この際、距離調整装置25における、連結部材26に沿った保持基板27aの移動は、手動による移動でもよく、またモータ等の駆動部を利用した移動であってもよい。
<撮像範囲調整装置の構成>
本実施形態に係る管内表面検査装置でも、上述した第1〜第3の実施形態に示した、いずれかの撮像範囲調整装置6、43、54を備えており、これら撮像範囲調整装置6、43、54のいずれかによって、撮像部21と照明光照射部64との間の最適な距離を特定する。
本実施形態に係る管内表面検査装置は、環状レーザ光L1を用いた上述した第1〜第3の実施形態とは、幅のある環状照明光L2を用いる点で相違しているものの、撮像範囲調整装置6、43、54において、撮像部21と照明光照射部64との間の最適な距離を特定するための構成や、その方法は同じである。ここでは、上述した第1の実施形態の撮像範囲調整装置6を利用した構成のみを代表で説明し、第2及び第3の実施形態における撮像範囲調整装置43、54を利用した構成の説明についは、説明が重複するため省略する。
例えば、図30は、上述した第1の実施形態における撮像範囲調整装置6と同じ原理で、撮像部21と照明光照射部64との間の最適な距離を特定する撮像範囲調整装置60の構成を示す。撮像範囲調整装置60は、環状照明光認識部7aと、照明光一致度判定部8aと、を備えている。環状照明光認識部7aは、管状体撮像装置75で得られた管内表面画像I30を受け取ると、管内表面画像I30内の輝度の違いに基づいて、当該管内表面画像I30内に表示された環状照明光L2を認識する。管内表面画像I30内における環状照明光L2は、過去の操業データ等に基づいて、管内表面画像I30内における環状照明光L2の輝度を予め特定しておくことで認識できる。
環状照明光認識部7aは、例えば輝度が所定以上の環状領域を環状照明光L2が表示された領域として認識し、この環状照明光L2が表示された領域の画素面積(以下、照明光画素面積と称する)を算出する。環状照明光認識部7aは、照明光画素面積を求めると、これを照明光一致度判定部8aに送出する。
照明光一致度判定部8aは、管内表面画像I30内に環状照明光L2が収まり、かつ、管内表面画像I30内に対して演算処理装置4により画像処理を行った際に最適な処理を行える環状照明光L2の目標位置(図27において図示せず)を予め記憶している。照明光一致度判定部8aは、管内表面画像I30内に目標位置を重ね合わせ、これを表示部9に送出する。これにより表示部9には、撮像部21により撮像した管内表面画像I30内に目標位置を重ね合わせた管内表面画像が表示される。
これ加えて、照明光一致度判定部8aは、管内表面画像内において、目標位置に環状照明光L2が表示されたときの環状照明光L2の領域の画素面積(以下、照明光目標画素面積と称する)を予め記憶している。照明光一致度判定部8aは、管内表面画像を基に算出した照明光画素面積と、照明光目標画素面積とを比較し、照明光目標画素面積に対して照明光画素面積が一致する割合(一致度合いとも呼ぶ)を算出し、この算出結果を表示部9に表示させる。管状体撮像装置63では、例えば、撮像範囲調整装置60で算出された一致度合いが、例えば90%以上のときに、撮像部21と照明光照射部64との間の距離が、撮像部21の撮像範囲内に環状照明光L2全体が収まる最適な距離として規定されている。
検査員は、表示部9に表示された管内表面画像内において、環状照明光L2が目標位置に重なるように、距離調整装置25を操作して撮像部21を移動させつつ、撮像範囲調整装置60で算出された一致度合い(%)を目安に、撮像部21と照明光照射部64との間の距離を調整することができる。本実施形態に係る管状体内表面検査装置では、管状体1の管内径Dに変化が生じた場合でも、管内表面画像内の目標位置と、一致度合い(%)とを基に、管状体1の管内径Dの変化に追従して、撮像部21と照明光照射部64との間を確実、かつ正確に最適な距離に設定させることができる。
なお、モータ等の駆動部を利用して撮像部21と照明光照射部64との間の距離を設定する場合、上述した第1の実施形態と同様に、照明光一致度判定部8aは、所定の一致度合い(例えば90%以上)となる、撮像部21と照明光照射部64との間の距離を算出する。照明光一致度判定部8aは、少なくとも算出した距離から撮像部21及び照明光照射部64のいずれか一方の移動量を算出し、これを管状体撮像装置63の駆動部に送出する。これにより管状体撮像装置63は、駆動部によって距離調整装置25の保持基板27a(27b)を、移動量に基づいて移動させ、撮像部21と照明光照射部64との間の距離を、最適な距離に自動的に設定することができる。
<演算処理装置における画像処理部の構成について>
本実施形態に係る演算処理装置は、図1に示した第1の実施形態に係る演算処理装置4とは主に画像処理部の構成が異なっており、その他の撮像制御部11や、表示制御部13、記憶部14については、第1の実施形態に係る演算処理装置4と同様の構成を有する。そこで、ここでは、画像処理部に着目して以下説明し、その他の撮像制御部11、表示制御部13及び記憶部14についての説明は省略する。
図31に示すように、画像処理部68は、環状光センター算出部69、座標変換部70、正反射画像算出部71及び検出処理部72を有している。ここで、画像処理部68の構成と、画像処理部68で行われる画像処理は、特開2017−53790号公報に開示された公知の内容であるが、参考のため、以下簡単に説明する。本実施形態でも、連結部材26によって環状照明光L2や撮像視野が遮蔽される領域(遮蔽領域)がある場合には、特開2017−53790号公報に示すような、遮蔽領域を補完する補完処理を実行することになるが、ここでは、管内表面画像内に遮蔽領域が存在せず、補完処理が不要な場合について簡単に説明する。
環状光センター算出部69は、A/D変換された管内表面画像を記憶部14から読み出し、管内表面画像内における環状照明光L2の環の重心位置と環の半径とをそれぞれ算出する。ここで、時系列に得られる複数の管内表面画像は、それぞれ管状体1の内表面1aの管軸方向Yに沿った、ある位置において、管状体1の内表面1aに照射された環状照明光L2を撮像したものである。
環状光センター算出部69は、各管内表面画像に算出した重心位置及び半径の算出結果を、座標変換部70に出力する。座標変換部70は、算出された重心位置や半径等を利用して、管内表面画像を座標変換し、正反射展開画像を生成する。座標変換部70は、管内表面画像内の環状照明光L2の部分を管状体1の管周方向Xに展開した正反射展開画像を生成し、これを正反射画像算出部71に送出する。
具体的には座標変換部70は、環状光センター算出部69で算出された半径rに対して、径方向に±d/2の余裕を設けた上で、径方向のr−d/2〜r+d/2の範囲で、0度≦Ψ≦360度として座標変換を実施する。このような座標変換を行うことで、径方向には半径rを中心として高さdを有し、角度方向には360度分の長さを有する帯状の正反射展開画像が抽出される。
正反射展開画像は、正反射条件を満たすように撮像部21に結像した、内表面1aにおける環状照明光L2の反射光に関する画像であり、環状照明光L2の正反射光の輝度分布を管状体1の管周方向Xに展開した画像である。
正反射画像算出部71は、生成された正反射展開画像を管状体1の管軸方向Yに沿って順に配列して、正反射画像を生成する。正反射画像算出部71は、生成した正反射画像を検出処理部72に出力する。検出処理部72は、正反射画像を利用して、管状体1の内表面1aに存在する欠陥部位を検出し、検出した欠陥部位の欠陥の種別及び有害度を特定する。以上のような流れにより、管状体1の内表面1aに存在する欠陥が検出されることとなる。
<作用及び効果>
以上の構成において、本実施形態に係る管状体内表面検査装置でも、照明光照射部64が管状体1の管軸方向Yに沿って移動しながら、管状体1の内表面1aの全周方向に対して環状照明光L2を照射する(光照射ステップ)。管状体内表面検査装置では、照明光照射部64とともに撮像部21が管軸方向Yに沿って移動しながら、照明光照射部64によって内表面1aに生じた環状照明光L2を撮像し、環状照明光L2が撮像された管内表面画像を生成する(撮像ステップ)。これにより、管状体内表面検査装置では、演算処理装置4によって、管内表面画像に対して画像処理を行い、管状体1の内表面1aに欠陥が存在するか否かを判断できる(演算処理ステップ)。
これに加えて、本発明の管状体内表面検査装置では、撮像部21により内表面1aを撮像するに先立って、撮像部21の撮像範囲内に環状照明光L2全体が収まるように、距離調整装置25によって、撮像部21が管軸方向Yに沿って移動し、撮像部21と照明光照射部64との間の距離が設定されるようにした(設定ステップ)。これにより、管状体内表面検査装置では、管状体1の管内径Dに変化が生じた場合でも、管状体1の管内径Dの変化に追従して、環状照明光L2を確実に撮像することができ、従来と同様に、管状体1の内表面1aにおける欠陥の有無を検査することができる。
(5)第5の実施形態
上述した実施形態においては、環状光を照射する光照射部として、環状レーザ光L1を照射するレーザ光照射部22、又は、環状照明光L2を照射する照明光照射部64を設けた場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、図32に示すように、環状光を照射する光照射部として、環状レーザ光L1を照射するレーザ光照射部22と、環状照明光L2を照射する照明光照射部64との両方を設けた管状体撮像装置75を適用するようにしてもよい。
本実施形態に係る管状体撮像装置75は、第1の実施形態に係る管状体撮像装置3に対して、第4の実施形態に係る管状体撮像装置63の照明光照射部64を設けた構成を有する以外は、第1の実施形態及び第2の実施形態に係る構成とほぼ同様の構成を有し、ほぼ同様の効果を奏するものである。そのため、以下では、第1又は第2の実施形態との相違点を中心に説明する。
本実施形態に係る距離調整装置25は、撮像部21が固定された保持基板27aと、照明光照射部64が固定された保持基板27bとの間に、撮像部21、照明光照射部64及びレーザ光照射部22が同心となるように、当該レーザ光照射部22が固定された保持基板22cを備えている。レーザ光照射部22が固定される保持基板22cは、照明光照射部64が固定される保持基板27bと同一構成を有しており、支柱状の連結部材26が貫通孔に挿通されている。レーザ光照射部22は、保持基板22cが連結部材26の長手方向に沿って移動することで、撮像部21の撮像中心軸Z2と、レーザ光照射部22及び照明光照射部64の中心軸Z3とを略一致させた状態のまま、保持基板22cとともに管軸方向Yに移動することができる。
本実施形態に係る距離調整装置25は、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離と、撮像部21と照明光照射部64との間の距離とが調整されることにより、管状体1の内表面1aに照射された環状レーザ光L1の内表面1aでの反射光と、環状照明光L2の内表面1aでの反射光とが、撮像部21の撮像範囲内に同時に収まるように設定される。
本実施形態に係る撮像部21は、同一撮像範囲内に結像している環状レーザ光L1の内表面1aでの反射光、及び、環状照明光L2の内表面1aでの反射光を、それぞれ撮像する。これにより、撮像部21は、環状レーザ光L1及び環状照明光L2の内表面1aでの反射光の強度を示すデータを特定することができる。管状体撮像装置75が管状体1の管内部を一定距離進む毎に撮像部21で内表面1aの撮像を行う結果、撮像部21は、環状レーザ光L1の内表面1aでの反射光の管周方向Xの分布や、環状照明光L2の内表面1aでの反射光の管周方向Xの分布を特定する。
環状照明光L2の照射領域は、広がりdを有している。そのため、あるタイミングで、環状レーザ光L1及び環状照明光L2の反射光を同時に撮像したとすると、その後、環状レーザ光L1が距離dだけ管軸方向Yに進む間は、環状照明光L2の反射光を撮像しても撮像しなくてもよい。なぜなら、環状レーザ光L1が距離dだけ管軸方向Yに進む間の環状照明光L2の反射光は、環状レーザ光L1と同時に撮像した環状照明光L2の反射光を利用可能だからである。
そこで、本実施形態に係る管状体撮像装置75では、環状レーザ光L1の反射光を撮像する毎に、環状照明光L2の反射光を毎回撮像するようにしてもよいし、環状レーザ光L1の反射光をdライン分撮像する間(環状レーザ光L1の照射部分が管軸方向Yにdだけ進む間)に、環状照明光L2の反射光を1回撮像するようにしてもよい。後者のような構成とすることによって、リソースをより効果的に使用することが可能となるため、処理のより一層の高速化を図ることが可能となる。
本実施形態に係る管状体撮像装置75では、図33に示すように、管状体1の内表面1aでの環状照明光L2の照射領域内に、環状レーザ光L1の照射位置が含まれる、管内表面画像I35が取得できるように、レーザ光照射部22及び照明光照射部64の位置が調整されている。本実施形態でも、上述した第4の実施形態と同様に、照明光照射部64は、図32に示すように、環状照明光L2が内表面1aに対して入射角φ2(φ2<90度)で入射するように配設されており、撮像部21は、環状照明光L2の正反射光が結像するように配設されている。この際、環状照明光L2の照射領域はdとなり、この照射領域d内に環状レーザ光L1も照射される。
ここで、レーザ光照射部22及び照明光照射部64は、管状体1の内表面1aでの環状照明光L2の照射領域dの内部に環状レーザ光L1の照射位置が含まれることから、環状レーザ光L1と環状照明光L2とを、撮像部21によって区別して撮像する必要がある。そのため、環状レーザ光L1及び環状照明光L2は、撮像部21において、それぞれの反射光強度を別々に特定可能なように、例えば、波長、照射タイミング、又は、偏光が互いに異なるものとすることが必要である。
環状レーザ光L1と環状照明光L2との波長が異なる場合には、透過帯域の異なるカラーフィルタにより、環状レーザ光L1の強度と環状照明光L2の強度とを、別々に測定可能である。また、環状レーザ光L1と環状照明光L2との照射タイミングが異なる場合には、環状レーザ光L1と環状照明光L2とが管状体1の内表面1aを照射するタイミングが時分割される。すなわち、環状レーザ光L1が内表面1aに照射されている際には、他の環状照明光L2は内表面1aに照射されないこととなる。そこで、環状レーザ光L1の照射されるタイミングに撮影した画像と環状照明光L2の照射されるタイミングに撮影した画像とを別々に扱うことで、環状レーザ光L1の強度と環状照明光L2の強度とを別々に測定できる。
また、環状レーザ光L1及び環状照明光L2の偏光が互いに異なるようにするためには、各光源の光軸上に、偏光方向の互いに直交する偏光子を配設すればよい。撮像部21にも互いに直交する検光子を配置することで、環状レーザ光L1の強度と環状照明光L2の強度とを別々に測定できる。
ここで、図34Aは、所定の管内径D1を有する管状体1に対し、管状体撮像装置75における撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離と、撮像部21と照明光照射部64との間の距離と、レーザ光照射部22と照明光照射部64との間の距離と、がそれぞれ最適な距離に設定された状態を示す。すなわち、撮像部21の撮像中心軸Z2と、レーザ光照射部22及び照明光照射部64の中心軸Z3とが、管状体1の管中心軸Z1に略一致した状態となっている。さらに、距離調整装置25は、撮像部21、レーザ光照射部22、及び照明光照射部64を、管軸方向Yに沿って個別に移動させ、撮像部21、レーザ光照射部22、及び照明光照射部64間の各距離をそれぞれ最適な距離に設定している。これにより、撮像部21の撮像範囲内には、環状レーザ光L1全体及び環状照明光L2全体が収まる。
撮像部21では、図33に示すように、環状レーザ光L1全体及び環状照明光L2全体が収まり、かつ環状照明光L2の表示領域内に、環状照明光L2と区別可能な環状レーザ光L1が表示された管内表面画像I35を取得できる。これにより、演算処理装置4(図1)は、管内表面画像I35に対し所定の画像処理を行い、管状体1の内表面1aに欠陥が存在するか否かを判断する。
しかしながら、図34Bに示すように、図34Aに示した管内径D1よりも大きい管内径Dの管状体1に対しては、撮像部21、レーザ光照射部22、及び照明光照射部64間の互いの距離を、図34Aの管状体1に対して設定した距離のままとすると、撮像部21の撮像範囲内に環状レーザ光L1及び環状照明光L2を収めることができない。すなわち、撮像部21では、環状レーザ光L1及び環状照明光L2が写っていない管内表面画像を得ることになる。この場合、演算処理装置4は、環状レーザ光L1及び環状照明光L2が管内表面画像内に写っていないことから、当該管内表面画像に所定の画像処理を行うことができず、管状体1の内表面1aに欠陥が存在するか否かを判断し得ない。
管状体撮像装置75は、管状体1の管内径D、D1の変化に追従して、例えば撮像部21が固定された保持基板27aや、レーザ光照射部22が固定された保持基板22c、照明光照射部64が固定された保持基板27bを、連結部材26の長手方向に沿って管軸方向Yに移動させることで、環状レーザ光L1及び環状照明光L2が最適な位置に収まった管内表面画像I35を取得できる。この際、距離調整装置25における、連結部材26に沿った保持基板27a、27b、22cの移動は、手動による移動でもよく、またモータ等の駆動部を利用した移動であってもよい。
<撮像範囲調整装置の構成>
本実施形態に係る管内表面検査装置でも、上述した第1〜第3の実施形態に示した、いずれかの撮像範囲調整装置6、43、54を備えており、これら撮像範囲調整装置6、43、54のいずれかによって、撮像部21、レーザ光照射部22、及び照明光照射部64間の各距離についてそれぞれ最適な距離を特定する。本実施形態に係る管内表面検査装置は、上述した第1〜第3の実施形態とは、環状レーザ光L1だけでなく、環状照明光L2についても調整可能な点で相違しているものの、撮像範囲調整装置6、43、54の基本的な構成は同じであり、また、撮像部21、レーザ光照射部22、及び照明光照射部64間の距離について最適な距離を特定するための方法は同じであるため、ここではその説明は省略する。
一例としては、本実施形態に係る管内表面検査装置では、例えば第1の実施形態における撮像範囲調整装置6と、第4の実施形態における撮像範囲調整装置60とを設けるようにすればよい。これにより、本実施形態に係る管内表面検査装置では、管内表面画像内の目標位置と、一致度合い(%)とを基に、管状体1の管内径Dの変化に追従して、撮像部21とレーザ光照射部22との間や、撮像部21と照明光照射部64との間を最適な距離に設定させることができる。
<演算処理装置における画像処理部の構成について>
本実施形態に係る演算処理装置は、図1に示した第1の実施形態に係る演算処理装置4とは主に画像処理部の構成が異なっており、その他の撮像制御部11や、表示制御部13、記憶部14については、第1の実施形態に係る演算処理装置4と同様の構成を有する。そこで、ここでは、画像処理部に着目して以下説明し、その他の撮像制御部11、表示制御部13及び記憶部14についての説明は省略する。
図35に示すように、画像処理部85は、環状光センター算出部86、座標変換部87、縞画像フレーム生成部88、光切断線処理部89、深さ画像算出部90、輝度画像算出部91、正反射画像算出部92及び検出処理部93を有している。ここで、画像処理部85の構成と、画像処理部85で行われる画像処理は、特開2017−53790号公報に開示された公知の内容である。また、画像処理部85は、上述した第1の実施形態の画像処理部12と、上述した第4の実施形態の画像処理部68とを組み合わせたものである。よって、ここでは、参考のため、概略のみ以下簡単に説明する。
なお、本実施形態でも、連結部材26によって環状レーザ光L1、環状照明光L2、及び撮像視野が遮蔽される領域(遮蔽領域)がある場合には、特開2017−53790号公報に示すような、遮蔽領域を補完する補完処理を実行することになるが、ここでは、管内表面画像内に遮蔽領域が存在せず、補完処理が不要な場合について簡単に説明する。
環状光センター算出部86は、A/D変換された管内表面画像を記憶部14(図1)から読み出し、例えば管内表面画像内における環状レーザ光L1の環の重心位置と環の半径とをそれぞれ算出し、その算出結果を座標変換部87に出力する。座標変換部87は、算出された重心位置や半径等を利用して、管内表面画像を座標変換する。座標変換部87は、環状レーザ光L1の照射部分を管状体1の管周方向Xに展開した線分として表した光切断画像を生成するとともに、環状照明光L2の照射領域を管状体1の管周方向Xに展開した正反射展開画像を生成する。
縞画像フレーム生成部88は、管状体1の管軸方向Yに沿って格納された光切断画像を順に取得してゆき、各光切断画像を管状体1の管軸方向Yに沿って順に配列して縞画像フレームを生成する。光切断線処理部89は、縞画像フレームに含まれる各光切断線について、光切断線の変位量(輝線の曲がり具合)を含む光切断線特徴量を算出する。
深さ画像算出部90は、光切断線処理部89が生成した光切断線特徴量(特に、変位量Δdに関する特徴量)に基づいて、管状体1の内表面1aの凹凸状態を表す深さ画像を算出する。輝度画像算出部91は、光切断線処理部89が生成した光切断線特徴量(特に、輝度の総和K及び輝線の画素数pに関する特徴量)に基づいて、管状体1の内表面1aにおける環状レーザ光L1の輝度の分布を表す輝度画像を算出する。一方、正反射画像算出部92は、座標変換部87で生成された正反射展開画像を管状体1の管軸方向Yに沿って順に配列して、正反射画像を生成する。
検出処理部93は、深さ画像算出部90により算出された深さ画像と、輝度画像算出部91により算出された輝度画像とに基づいて、管状体1の内表面1aに存在する欠陥を検出する。また、検出処理部93は、正反射画像を利用して、管状体1の内表面1aに存在する欠陥部位を検出し、検出した欠陥部位の欠陥の種別及び有害度を特定する。以上のような流れにより、管状体1の内表面1aに存在する欠陥が検出されることとなる。
<作用及び効果>
以上の構成において、本実施形態に係る管状体内表面検査装置でも、レーザ光照射部22及び照明光照射部64が管状体1の管軸方向Yに沿って移動しながら、管状体1の内表面1aの全周方向に対して環状レーザ光L1及び環状照明光L2を照射する(光照射ステップ)。管状体内表面検査装置では、レーザ光照射部22及び照明光照射部64とともに撮像部21が管軸方向Yに沿って移動しながら、レーザ光照射部22及び照明光照射部64によって内表面1aに生じた環状レーザ光L1及び環状照明光L2を撮像し、環状レーザ光L1及び環状照明光L2が撮像された管内表面画像を生成する(撮像ステップ)。これにより、管状体内表面検査装置では、演算処理装置4によって、管内表面画像に対して画像処理を行い、管状体1の内表面1aに欠陥が存在するか否かを判断できる(演算処理ステップ)。
これに加えて、本発明の管状体内表面検査装置では、撮像部21により内表面1aを撮像するに先立って、撮像部21の撮像範囲内に環状レーザ光L1全体及び環状照明光L2全体が収まるように、距離調整装置25によって、少なくとも撮像部21、レーザ光照射部22及び照明光照射部64のいずれか一方を管軸方向Yに沿って移動する。このようにして本発明の管状体内表面検査装置では、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離、撮像部21と照明光照射部64との間の距離、をそれぞれ設定する(設定ステップ)。これにより、管状体内表面検査装置では、管状体1の管内径Dに変化が生じた場合でも、管状体1の管内径Dの変化に追従して、環状レーザ光L1及び環状照明光L2の両方を確実に撮像することができ、従来と同様に、管状体1の内表面1aにおける欠陥の有無を検査することができる。
なお、上述した第5の実施形態では、管状体1の内表面1aにおいて環状照明光L2の照射領域d内に環状レーザ光L1の照射位置が含まれるように、レーザ光照射部22と照明光照射部64の位置を距離調整装置25により調整するようにしたが、本発明はこれに限らない。例えば、図36に示すように、管状体1の内表面1aでの環状レーザ光L1の照射位置と、管状体1の内表面1aでの環状照明光L2の照射領域と、が管状体1の管軸方向Yにおいて異なる位置としてもよい。この場合、管状体撮像装置75は、距離調整装置25によって、図36に示すように、レーザ光照射部22及び照明光照射部64の位置が調整される。
照明光照射部64は、環状照明光L2の内表面1aに対する入射角φ2が、環状レーザ光L1の反射角φ1よりも大きくなる(すなわち、φ2>φ1が成立する)ように配設される。環状レーザ光L1の照射部分と、環状照明光L2の照射領域とは、これらの照射領域が撮像部21の撮像範囲内(同一視野内)に位置する範囲で、なるべく離隔していることが好ましい。環状レーザ光L1の照射部分を、環状照明光L2の照射領域から離隔させることで、環状照明光L2が背景光になり生じる環状レーザ光L1のS/Nの低下を、抑制することが可能となる。
撮像部21は、図37に示すように、環状レーザ光L1の照射部分と、環状照明光L2の照射領域と、が分離した管内表面画像I36を取得する。この場合、環状レーザ光L1の照射位置と、環状照明光L2の照射領域と、が撮像部21の撮像範囲内で異なるように設定されているために、両者の反射光の撮像結果を容易に区別することができる。従って、環状レーザ光L1及び環状照明光L2の各波長は特に限定されるものではなく、環状レーザ光L1の波長と環状照明光L2の波長とが等しくてもよい。
図37に示す管内表面画像I36であっても、特開2017−53790号公報に開示された画像処理に従って、演算処理装置4により、深さ画像、輝度画像、及び正反射画像を生成でき、これらを利用して、管状体1の内表面1aに存在する欠陥部位を検出し、欠陥部位の欠陥の種別及び有害度を特定できる。なお、図37に示す管内表面画像I36を用いた画像処理については、特開2017−53790号公報で開示されているため、ここではその説明は省略する。