以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る浴槽用手摺りについて説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の実施形態に過ぎず、当然ながら本発明を限定することを意図したものではない。
図1は、浴槽用手摺り100の斜視図である。図2は、浴槽用手摺り100の分解斜視図である。図3は、浴槽用手摺り100の側面断面図である。以下の説明では、前、後、左、右、上、下とは、浴槽用手摺り100を浴槽2(図3参照)に取り付けた状態において、浴槽2の内側から見たときの前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。すなわち、前、後、左、右、上、下とは、後述する側部グリップ12を正面から見たときの前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。各図面中における符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。ただし、これらの方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、浴槽用手摺り100の態様を何ら限定するものではない。
浴槽用手摺り100は、高齢者などの利用者が浴室に配置された浴槽2(図3参照)に出入りする際、または、浴槽2内で座っている状態から立ち上がる際に、利用者によって把持され、利用者を支えるものである。図3に示すように、浴槽用手摺り100は、例えば、浴槽2の側壁2aを挟むようにして浴槽2に取り付けられる。図1に示すように、浴槽用手摺り100は、本体10と、上部グリップ11と、側部グリップ12と、第1押圧板15と、第2押圧板16と、トルク伝達ハンドル17とを備えている。
本体10は、下方に開口した略コ字状の部材である。図3に示すように、本体10は、略L字状の固定フレーム20と、略L字状の可動フレーム30とを有している。固定フレーム20は、第1縦フレーム21と、第1横フレーム22とを有している。第1縦フレーム21は、浴槽2の側壁2aの一方側(図3では、側壁2aの右側)に配置されている。本実施形態では、第1縦フレーム21は、浴槽2の外側、すなわち、利用者が身体を洗う洗い場側に配置されている。第1縦フレーム21は、上下方向に延びており、浴槽2の側壁2aと平行になるように配置されている。なお、本明細書において「平行」には、厳密に平行の状態の他に、若干傾いた状態も含まれる。第1横フレーム22は、第1縦フレーム21の上端から前方(言い換えると、可動フレーム30に向かう方向)に延びている。
なお、本実施形態では、固定フレーム20には、保護カバー23a、23b、23cが取り付けられていてもよい。例えば、保護カバー23aは、第1横フレーム22の上面を覆うカバーであり、保護カバー23bは、第1縦フレーム21の後面を覆うカバーである。保護カバー23cは、第1縦フレーム21の前面の下部を覆うカバーである。また、第1横フレーム22の下面には、浴槽2の側壁2aの上面と接触可能な樹脂板24が設けられていてもよい。
本実施形態では、図1に示すように、固定フレーム20の下部には、下方に延びた支持棒25が設けられている。支持棒25の下端は、例えば浴室の床(図示せず)に接触しており、支持棒25は本体10を支持している。例えば、支持棒25は、図3に示すように、第1縦フレーム21と保護カバー23bとの間に配置され、ネジ25a(図2参照)によって第1縦フレーム21に取り付けられている。なお、支持棒25は、長さ調整が可能な機構を有していてもよい。
可動フレーム30は、固定フレーム20に対して前後方向に可動するものである。可動フレーム30は、第2縦フレーム31と、第2横フレーム32とを有している。第2縦フレーム31は、第1縦フレーム21と対向しており、浴槽2の側壁2aの他方側(図3では、側壁2aの左側)に配置されている。本実施形態では、第2縦フレーム31は、浴槽2の内側に配置されている。第2縦フレーム31は、上下方向に延びており、浴槽2の側壁2aと平行になるように配置されている。第2横フレーム32は、第2縦フレーム31の上端から後方(言い換えると、固定フレーム20に向かう方向)に延びている。第2横フレーム32は、第1横フレーム22に対してスライド自在に設けられている。
本実施形態では、図2に示すように、第1横フレーム22には、左右の中央部分において前後に並んだ複数(ここでは、2つ)の固定用ネジ孔22a、および、固定用ネジ孔22aの左右両側に配置された一対のガイド用ネジ孔22bが形成されている。第2横フレーム32には、固定用ネジ孔22aに対応する位置に配置され、前後に並んだ複数(ここでは、5つ)の貫通孔32a、および、一対のガイド用ネジ孔22bに対応する位置に配置され、かつ、貫通孔32aの左右両側に配置され、前後に延びた一対のスリット32bが形成されている。図3に示すように、第1横フレーム22の一部と第2横フレーム32の一部とを重ね、固定用ネジ孔22aおよび複数の貫通孔32aのうち2つの貫通孔32aに固定用ネジ22aaを挿入する。また、図2に示すように、ガイド用ネジ孔22bおよびスリット32bにガイド用ネジ22baを挿入する。このようにすることで、固定フレーム20に対して可動フレーム30を固定することができる。なお、図3に示すように、可動フレーム30を固定フレーム20に固定している状態において、可動フレーム30の第2横フレーム32の後部は保護カバー23aに覆われている。本実施形態では、固定用ネジ22aaが挿入される貫通孔32aを変更することで、第1縦フレーム21と第2縦フレーム31との距離を調整することができる。なお、本実施形態では、第1横フレーム22および第2横フレーム32によって、横フレーム33が構成されている。横フレーム33は、第1縦フレーム21と第2縦フレーム31とに架け渡されている。
上部グリップ11(図1参照)は、例えば利用者が浴槽2を出入りする際に使用されるものである。上部グリップ11は、本体10の横フレーム33の上方に配置されるように本体10に設けられている。本実施形態では、図2に示すように、上部グリップ11には、下方に延びた左右一対の支柱11aが設けられている。固定フレーム20の第1縦フレーム21の後部には、左右一対の円筒状の挿入部26が設けられている。図1に示すように、挿入部26には、支柱11aがスライド自在に挿入されている。左右一対の支柱11aが挿入部26に対してスライド移動することで、上部グリップ11の高さを調整することが可能である。なお、上部グリップ11の形状は特に限定されない。例えば、上部グリップ11は、平面視において環状の部材である。なお、図3では、上部グリップ11および一対の支柱11aは省略されている。
側部グリップ12は、本発明のグリップの一例である。図3では、側部グリップ12は省略されている。側部グリップ12は、浴槽2の内側に配置されるものであり、例えば浴槽2内で座っている利用者が立ち上がる際に使用されるものである。図2に示すように、側部グリップ12は、可動フレーム30の第2縦フレーム31の前面、言い換えると、第1縦フレーム21とは反対側の面に設けられている。なお、側部グリップ12の形状は特に限定されない。図4は、側部グリップ12、第2押圧板16およびトルク伝達ハンドル17の分解斜視図である。本実施形態では、図4に示すように、側部グリップ12は、取付部41と、グリップ部42とを有している。
取付部41は、第2縦フレーム31に取り付けられる部位である。ここでは、取付部41は、第2縦フレーム31の前面に設けられている。取付部41は、上下方向に延びている。例えば、取付部41は複数(ここでは、4つ)のネジ43によって第2縦フレーム31に取り付けられる。なお、取付部41は、カバー49によって覆われていてもよい。例えば、カバー49は、少なくとも一部が後述するノブ63より上方に配置される上カバー49aと、少なくとも一部がノブ63より下方に配置される下カバー49bとを有している。ここでは、上カバー49aと下カバー49bとの間に、ノブ63が配置されている。取付部41以外にもネジ43がカバー49に覆われるため、ネジ43が外部に露出しない。ここでは、取付部41には、上端から中央部分に向かって凹んだ凹部41aが設けられている。この凹部41aは、第2縦フレーム31に形成された貫通孔31aと連通している。
グリップ部42は、左グリップ部42Lと、右グリップ部42Rとを有している。左グリップ部42Lは、取付部41の左側に設けられており、右グリップ部42Rは、取付部41の右側に設けられている。左グリップ部42Lと右グリップ部42Rとは、左右対称の形状を有している。左グリップ部42Lは、取付部41の左上部と左下部とに接続された略U字状に形成されており、少なくとも一部が湾曲している。右グリップ部42Rは、取付部41の右上部と右下部とに接続された略U字状に形成されており、少なくとも一部が湾曲している。本実施形態では、左グリップ部42Lおよび右グリップ部42Rは、取付部41から離れるに従って、前方(言い換えると、第2縦フレーム31から離れる方向)に突出している。ここでは、グリップ部42の左右両端部(すなわち、左グリップ部42Lの左部および右グリップ部42Rの右部)は、取付部41よりも前方に位置している。
図3に示すように、第1押圧板15は、第1縦フレーム21と第2縦フレーム31との間であって、浴槽2の側壁2aの一方側(図3では、側壁2aの右側であり、浴槽2の外側)に配置される。第1押圧板15は、第1縦フレーム21の第2縦フレーム31側の面(本実施形態では、前面)に設けられている。本実施形態では、第1縦フレーム21の上部であって、第1縦フレーム21の第2縦フレーム31側の面には、支持部材27が設けられている。支持部材27の前部に第1押圧板15が設けられている。なお、第1押圧板15の形状および材料は特に限定されない。ここでは、第1押圧板15は、左右に延びた矩形状の部材であり、樹脂製の部材である。
第2押圧板16は、本発明の押圧板の一例である。第2押圧板16は、第1縦フレーム21と第2縦フレーム31との間であって、浴槽2の側壁2aの他方側(図3では、側壁2aの左側であり、浴槽2の内側)に配置される。第2押圧板16は、第1押圧板15と対向しており、第2縦フレーム31の第1縦フレーム21側の面(本実施形態では、後面)に設けられている。第2押圧板16の構成は特に限定されない。本実施形態では、第2押圧板16は、図4に示すように、矩形状の本体板51と、本体板51の後面に設けられた矩形状の樹脂ラバー52とを有している。詳しくは後述するが、図3に示すように、本体板51は、後述のボルト軸61の後端に設けられている。樹脂ラバー52は、浴槽2の側壁2aに接触する。図4に示すように、本体板51の後面には円形の複数の凹部51aが形成され、樹脂ラバー52の前面には円形の複数の凸部52aが形成されている。この凹部51aに凸部52aを嵌め込むことで、本体板51に樹脂ラバー52が装着される。ここでは、図3に示すように、第1押圧板15と第2押圧板16が浴槽2の側壁2aを挟むことで、浴槽用手摺り100を浴槽2に取り付けることができる。
次に、トルク伝達ハンドル17について説明する。トルク伝達ハンドル17は、第2押圧板16を第1縦フレーム21に近づく方向と第1縦フレーム21から離れる方向とに移動させるものである。トルク伝達ハンドル17は、トルクを伝達することで第2押圧板16を前後方向に移動させるものである。トルク伝達ハンドル17は、第2縦フレーム31に設けられている。図5および図6は、側部グリップ12、第2押圧板16およびトルク伝達ハンドル17の側面断面図である。図5は、第2押圧板16が第1押圧板15に最も接近している状態を示す図である。図6は、第2押圧板16が第1押圧板15から最も離れた状態を示す図である。図5に示すように、トルク伝達ハンドル17は、ボルト軸61と、ナット62と、ノブ63と、トルク伝達機構64とを備えている。
ボルト軸61は、前後方向に延びた部材である。ボルト軸61は、一端部61aと、螺合部61bとを有している。一端部61b(ここでは、後端部)は、第2押圧板16に接続され、第2押圧板16を支持している。本実施形態では、図4に示すように、第2押圧板16の本体板51の中央部分には、ボルト軸61の一端部61aと嵌合する固定孔51bが形成されている。ボルト軸61の一端部61aを固定孔51bに挿通し、一端部61aが露出した側からネジ53によってネジ止めすることで、第2押圧板16がボルト軸61の一端部61aに取り付けられる。なお、第2押圧板16とネジ53との間には、プレート54が設けられていてもよい。図5に示すように、螺合部61bは、一端部61bよりも前側に設けられている。螺合部61bには、螺旋溝(言い換えると、雄ねじ)が形成されている。螺合部61bの前側には、ナット62の後述する螺合部71の前端に接触するフランジ61aが設けられている。本実施形態では、図4に示すように、第2縦フレーム31の第2押圧板16側の面には、ワッシャー68およびフランジ板69が設けられており、ネジ69bによって第2縦フレーム31に取り付けられている。フランジ板69は、第1カバー69aに覆われている。第1カバー69aを覆うように第2カバー69cが設けられ、第2カバー69cは、ネジ69dによって第2縦フレーム31に取り付けられている。ボルト軸61の螺合部61bは、側部グリップ12の取付部41に設けられた凹部41a、第2縦フレーム31の貫通孔31a、ワッシャー68、フランジ板69、第1カバー69a、第2カバー69cに挿入されている。
ナット62は、第2縦フレーム31に回転自在に設けられている。ここでは、ナット62は、側部グリップ12の取付部41の凹部41a(図4参照)、および、第2縦フレーム31の貫通孔31a(図4参照)に挿入され、ナット62には、ボルト軸61が挿入されている。本実施形態では、ナット62は、螺合部71と、筒部72とを有する。螺合部71は、ナット62の後部の内部に形成されており、ボルト軸61の螺合部61bと螺合する螺旋溝(言い換えると、雌ねじ)が形成されている。ここでは、螺合部71の一部は、第2縦フレーム31の後面から後方に向かって突出している。しかしながら、螺合部71の全てが第2縦フレーム31の後面よりも前方に配置されていてもよいし、第2縦フレーム31の後面よりも後方に配置されていてもよい。筒部72は、螺合部71から第1縦フレーム21と反対側に延びる筒状の部位である。筒部72の内周面には、螺旋溝は形成されていない。なお、筒部72には、スリットが形成されていてもよい。筒部72の内部にはナット側空間73が形成されている。ナット側空間73と、螺合部71に囲まれた空間とは連通している。本実施形態では、ナット側空間73には、螺合部71と螺合するボルト軸61の螺合部61bの一部が配置される。なお、ナット側空間73の形状は特に限定されない。例えば、ナット側空間73は、円柱形状である。ここでは、ナット側空間73の径は、螺合部71によって囲まれた空間の径よりも大きい。本実施形態では、ナット62の前部の外周面には、フランジ74が形成されている。また、ナット62の後部の外周面には、溝状の凹部75が形成されている。
ノブ63は、ナット62にトルク(言い換えると、回転力)を伝達するためのものである。ノブ63は、ナット62を覆うように第2縦フレーム31に設けられている。ノブ63は、第2縦フレーム31の第1縦フレーム21とは反対側の面に配置されており、前方に向かって突出している。ノブ63は、側部グリップ12の取付部41の凹部41aおよび第2縦フレーム31に形成された貫通孔31aに挿入されている。ノブ63は、第2縦フレーム31に対して回転可能である。ここでは、ノブ63の内部には、空間76が形成されている。ノブ63の前部は開口しており、その開口部分にはキャップ63aが装着されている。空間76には、ナット62およびボルト軸61の少なくとも一部が配置されている。空間76は、筒部72に形成されたナット側空間73と連通している。
トルク伝達機構64は、伝達されるトルクが所定の値未満の場合、ノブ63からナット62へトルクを伝達する機構である。また、トルク伝達機構64は、伝達されるトルクが所定の値以上の場合、ノブ63からナット62へのトルクの伝達を遮断する機構である。トルク伝達機構64は、ノブ63の空間76に設けられている。図4に示すように、トルク伝達機構64は、第1環状部材81と、第2環状部材82と、コイルバネ83とを有している。
図5に示すように、第1環状部材81は、ナット62を囲むように配置されている。図7は、第1環状部材81を示す斜視図である。図7に示すように、第1環状部材81は板状の部材であるが、第1環状部材81の形状は特に限定されない。第1環状部材81は、ノブ63と係合しており、ノブ63が回転することで回転する。本実施形態では、第1環状部材81には、外縁から放射方向に突出した複数の凸部86が形成されている。図示は省略するが、ノブ63の内周面には、凸部86と嵌合する凹部が形成されている。この凸部86と上記凹部とが嵌合することで、ノブ63が回転すると共に第1環状部材81が回転する。本実施形態では、第1環状部材81は、ナット62の軸方向に対して直交するトルク伝達面87を有している。図8は、第1環状部材81と第2環状部材82とが噛み合っている状態を示す図である。ここでは、図8に示すように、トルク伝達面87とは、第1環状部材81の第2環状部材82側の面(ここでは、後面)のことである。トルク伝達面87は、第2環状部材82に当接可能である。
図5に示すように、第2環状部材82は、ナット62を囲むように配置されている。第2環状部材82は、第1環状部材81の第1縦フレーム21側(ここでは、後側)に配置されている。第1環状部材81と第2環状部材82とは、前後方向に並んでいる。第2環状部材82の形状は特に限定されない。図9は、第2環状部材82を示す斜視図である。図9に示すように、第2環状部材82は、円盤状の円盤部82aと、円盤部82aから後方に突出した複数の凸部82bとを有している。図5に示すように、第2環状部材82は、ナット62と係合しており、ナット62と共に回転する。本実施形態では、第2環状部材82の凸部82b(図9参照)の後端には、ネジ69bによってネジ止めされたフランジ板69が設けられている。このフランジ板69は、ナット62を囲むように配置されており、ナット62に形成された溝状の凹部75に嵌合している。本実施形態では、図8に示すように、第2環状部材82は、ナット62の軸方向に対して直交するトルク伝受面88を有している。ここでは、トルク伝受面88は、円盤部82aの第1環状部材81側の面(ここでは、前面)である。トルク伝受面88は、トルク伝達面87と対向している。トルク伝受面88は、第1環状部材81のトルク伝達面87に当接可能である。なお、図4に示すように、円盤部82aの後面には、ワッシャー85が設けられていてもよい。
本実施形態では、図8に示すように、トルク伝達面87およびトルク伝受面88は、それぞれ伝達されるトルクが所定の値未満の場合には互いに滑らず、トルク伝達面87とトルク伝受面88とを相互に係止するように構成されている。伝達されるトルクが所定の値未満の場合、トルク伝達面87とトルク伝受面88とは噛み合っている。また、トルク伝達面87およびトルク伝受面88は、それぞれ伝達されるトルクが所定の値以上の場合には互いに滑るように構成されている。
なお、トルク伝達面87およびトルク伝受面88が相互に係止したり、滑りが生じたりするための具体的な構成は特に限定されない。本実施形態では、トルク伝達面87およびトルク伝受面88の何れか一方には、凸部91が形成されている。そして、トルク伝達面87およびトルク伝受面88の何れか他方には、凸部91と嵌合する凹部92が形成されている。ここでは、第1環状部材81のトルク伝達面87に凸部91が形成されている。第2環状部材82のトルク伝受面88に凹部92が形成されている。なお、凸部91の数および凹部92の数は特に限定されず、それぞれ1つであってもよいし、複数であってもよい。ここでは、図7および図9に示すように、凸部91の数および凹部92の数は、共に8つである。なお、トルク伝達面87およびトルク伝受面88において、凸部91の一部および凹部92の一部には、互いに当接する傾斜面が形成されていてもよい。この傾斜面は、第2押圧板16が第1縦フレーム21に向かう方向(ここでは、後方)に移動するようにノブ63を回転させるとき、互いの傾斜面を昇るように勾配が付けられている。
コイルバネ83は、本発明の弾性体の一例である。図5に示すように、コイルバネ83は、ナット62を囲むように配置されている。詳しくは、コイルバネ83は、ノブ63の空間76に配置されており、圧縮された状態で、ナット62のフランジ74と、第1環状部材81との間に介在している。コイルバネ83は、ナット62に支持されており、特に、コイルバネ83の少なくとも一部は、ナット62の筒部72に支持されている。コイルバネ83の前端は、ナット62のフランジ74に当接し、コイルバネ83の後端は、第1環状部材81に当接している。コイルバネ83は、トルク伝達面87とトルク伝受面88とが当接するように第1環状部材81を第2環状部材82に向けて付勢する。言い換えると、コイルバネ83は、トルク伝達面87がトルク伝受面88に押し付けられるように、トルク伝達面87に弾性力を付与する。
本実施形態では、上述のように、コイルバネ83は、第1環状部材81が第2環状部材82を押し付けるように、第1環状部材81に弾性力を付与している。そのため、トルク伝達面87とトルク伝受面88の間には常に一定の摩擦力が生じている。このとき、ノブ63からナット62へ伝達されるトルクが所定の値未満の場合、図8に示すように、凸部91と凹部92とが嵌合している状態となる。そのため、ノブ63と共にナット62が回転するため、ノブ63からナット62にトルクが伝達される。一方、ノブ63からナット62へ伝達されるトルクが所定の値以上の場合、凸部91と凹部92との嵌合状態が解除され、トルク伝達面87とトルク伝受面88との間で滑りが生じ、トルク伝達面87がトルク伝受面88に対してスライドする。そのため、ノブ63の回転と共にナット62が回転しないため、ノブ63からナット62へトルクが伝達されない。
ところで、本実施形態では、図3に示すように、トルク伝達ハンドル17のノブ63は、本体10の第2縦フレーム31から前方に向かって突出しており、浴槽2の内側に配置されている。浴槽用手摺り100を浴槽2に取り付けた後から、浴槽用手摺り100を浴槽2から取り外す前までの間、ノブ63は使用されないものである。そのため、浴槽2内に居る利用者の邪魔にならないように、ノブ63の第2縦フレーム31からの突出の長さ(以下、突出長さという。)は、短い方が好ましい。ここで、ノブ63内の空間76には、ナット62およびボルト軸61の一部が位置している。詳しくは、ボルト軸61の螺合部61bは、ナット62の螺合部71に螺合し、螺合部71よりも前方に突出したボルト軸61の部位がナット62のナット側空間73またはノブ63内の空間76に位置する。空間76が前後方向に大きいほど、ノブ63の突出長さが長くなる。空間76の大きさは、ボルト軸61の軸方向(以下、前後方向ともいう。)の長さ、および、螺合部71のナット62の軸方向(以下、前後方向ともいう。)の長さに依存する。しかしながら、あらゆる厚みを有する側壁2aに対して浴槽用手摺り100を取り付けることができるためには、第2押圧板16の前後方向の移動距離をある程度確保することが好ましい。そのためには、ボルト軸61の前後方向の長さはある程度確保することが好ましい。そこで、ボルト軸61の前後方向の長さを短くすること以外で、ノブ63の突出長さを相対的に短くすることを検討した。種々の検討の結果、ボルト軸61の螺合部61bに螺合するナット62の螺合部71の前後方向の長さを相対的に短くすることで、ノブ63の突出長さを相対的に短くすることができることを見出した。
次に、本実施形態に係る浴槽用手摺り100を構成する部品の長さの関係について説明する。図5に示すように、ノブ63の一部(ここでは、ノブ63の前部)は、側部グリップ12のうち最も前方に位置する部位12aよりも前方に突出している。ナット62の前後方向の長さL1は、ボルト軸61の螺合部61bの前後方向の長さL2よりも短く、例えば、長さL2の3/4以下である。
ナット62の螺合部71の前後方向の長さL11は、ボルト軸61の螺合部61bの前後方向の長さL2よりも短く、例えば、長さL2の1/2以下である。ここでは、図5に示すように、第2押圧板16が第1縦フレーム21(図3参照)に最も接近している位置を接近位置P1とする。また、図6に示すように、第2押圧板16が第1縦フレーム21から最も離れている位置を最遠位置P2とする。図5に示すように、接近位置P1とは、ボルト軸61がナット62から第1縦フレーム21に向かって最も突出している位置であり、ボルト軸61のフランジ61aが螺合部71の前端に当接している位置である。図6に示すように、最遠位置P2とは、ノブ63の空間76において、ボルト軸61がナット62から第1縦フレーム21と反対側に向かって最も突出している位置であり、第2押圧板16が第2縦フレーム31に最も接近している位置である。ここで、図5に示すように、第2押圧板16が接近位置P1に位置しているときのナット62の後端から螺合部61bの後端までの長さを長さL31とする。長さL31は、第2押圧板16と第1縦フレーム21との距離が最も短いときに、ナット62の螺合部71からボルト軸61bの一端部61aの方に突出した螺合部61bの長さである。以下、長さL31のことを螺合部61bの突出長さともいう。螺合部71の長さL11は、長さL31よりも短い。また、図6に示すように、第2押圧板16が最遠位置P2に位置しているときの螺合部71の前端からボルト軸61の前端までの長さを長さL32とする。長さL32は、第2押圧板16と第1縦フレーム21との距離が最も離れているときにおいて、螺合部71から前方に突出した螺合部61bの長さである。螺合部71の長さL11は、長さL32よりも短い。
また、図5に示すように、螺合部71の長さL11は、第2縦フレーム31の前後方向の最大の長さL41よりも長く、第2縦フレーム31の前後方向の最小の長さL42よりも長い。ここでは、第2縦フレーム31の厚みは同じであるため、長さL41と長さL42は同じ長さである。螺合部71の長さL11は、側部グリップ12の前後方向の最大の長さL5よりも短い。また、螺合部71の長さL11は、第2縦フレーム31の後面と側部グリップ12の取付部41の前面との間の最大の距離L6以下である。
ここでは、螺合部71の長さL11は、筒部72の前後方向の長さL12よりも短い。しかしながら、螺合部71の長さL11は、筒部72の長さL12と同じであってもよいし、長さL12よりも長くてもよい。筒部72の長さL12は、ボルト軸61の螺合部61bの長さL2よりも短く、例えば、長さL2の1/2以下である。筒部72の長さL12は、螺合部61bの突出長さL31よりも短い。また、筒部72の長さL12は、第2押圧板16が最遠位置P2に位置しているときのナット62の螺合部71から前方に突出した螺合部61bの長さL32(図6参照)よりも短い。筒部72の長さL12は、第2縦フレーム31の前後方向の最大の長さL41よりも長く、前後方向の最小の長さL42よりも長い。筒部72の長さL12は、側部グリップ12の前後方向の最大の長さL5よりも短く、第2縦フレーム31の後面と側部グリップ12の取付部41の前面との間の最大の距離L6以下である。
本実施形態では、図5に示すように、螺合部71の後端は、第2縦フレーム31の後面よりも後方に配置され、ノブ63の後端よりも後方に配置されている。また、螺合部71の後端は、側部グリップ12の後端よりも後方に配置されている。螺合部71の側部グリップ12側の端(ここでは、前端)は、側部グリップ12の前面のうち最も第1縦フレーム21側に位置する部位12bよりも後側に配置されている。螺合部71の前端は、第2縦フレーム31の前面よりも前方に配置されている。螺合部71の前端は、ノブ63の後端よりも前方に配置されている。ナット62の筒部72の後端は、第2縦フレーム31の前面よりも前方に配置され、ノブ63の後端よりも前方に配置されている。また、筒部72の後端は、側部グリップ12の後端よりも前方に配置されている。筒部72の前端は、側部グリップ12の前面のうち最も前方に位置する部位12aよりも後方に配置され、側部グリップ12の前面のうち、最も後方に位置する部位12bよりも前方に配置されている。
以上、本実施形態に係る浴槽用手摺り100の構成について説明した。次に、浴槽用手摺り100を浴槽2の側壁2aに取り付ける手順について説明する。まず、図3に示すように、第1縦フレーム21と第2縦フレーム31との間に浴槽2の側壁2aが配置されるように、浴槽用手摺り100を浴槽2に配置する。このとき、第1押圧板15と第2押圧板16との間に浴槽2の側壁2aが配置されている。なお、仮に側壁2aの厚みが薄い場合や厚い場合には、固定用ネジ22aaが挿入される第2横フレーム32の貫通孔32aを変更することで、第1押圧板15と第2押圧板16との間の距離を調整するとよい。次に、第2押圧板16が第1縦フレーム21側、すなわち、後方に移動するように、ノブ63を回転させる。
本実施形態では、第2押圧板16が前後方向に移動する際、本体10、ナット62、ノブ63、第1環状部材81および第2環状部材82の前後方向における相対的な位置は変更されない。ここでは、ナット62に対して、ボルト軸61が前後方向に移動することで、第2押圧板16が前後方向に移動する。第2押圧板16が後方に移動するように、ノブ63を回転させるとき、ナット62へ伝達される予定のトルクが所定の値未満の場合、ノブ63からナット62へトルクが伝達される。具体的には、ノブ63が回転することで、第1環状部材81が共に回転する。このとき、第1環状部材81は、コイルバネ83によって第2環状部材82に押し付けられた状態であり、トルクが所定の値未満のとき、図8に示すように、トルク伝達面87の凸部91とトルク伝受面88の凹部92とが嵌合している。そのため、第1環状部材81の回転と共に、第2環状部材82が回転する。本実施形態では、第2環状部材82はナット62と係合しているため、第2環状部材82が回転することで、ナット62が回転する。このようにして、ノブ63からナット62へトルクが伝達される。
図5に示すように、ノブ63からナット62へトルクが伝達されたとき、ナット62は、第2縦フレーム31に対して回転する。このとき、ナット62の螺合部71に螺合しているボルト軸61は、ナット62の回転によって、後方に移動する。ボルト軸61が後方に移動することで、螺合部71から前方に突出したボルト軸61の部位の突出長さが短くなる。ボルト軸61の後方への移動に伴い、第2押圧板16が後方へ移動する。そして、第1押圧板15と第2押圧板16との間の距離が短くなり、第2押圧板16は、浴槽2の側壁2aを第1押圧板15に押し付ける。このことによって、浴槽用手摺り100を浴槽2の側壁2aに強固に取り付けることができる。
なお、本実施形態では、ノブ63を回転させるとき、ナット62へ伝達される予定のトルクが所定の値以上の場合、ノブ63からナット62へトルクが伝達されず、第2押圧板16は前後方向に移動しない。ここでは、ノブ63が回転することで、第1環状部材81が共に回転する。このとき、第1環状部材81は、コイルバネ83によって第2環状部材82に押し付けられた状態であり、トルクが所定の値以上のとき、トルク伝達面87の凸部91とトルク伝受面88の凹部92との嵌合状態が解除される。そのため、トルク伝達面87がトルク伝受面88に対してスライドするため、第1環状部材81の回転と共に、第2環状部材82が回転しない。そのため、トルクが所定の値以上の場合には、第2環状部材82が回転しないため、ナット62が回転しない。よって、ボルト軸61が前後方向に移動しないため、第2押圧板16は前後方向に移動しない。
以上、本実施形態では、図5に示すように、ナット62の螺合部71の長さL11は、ボルト軸61の螺合部61bの突出長さL31よりも短いため、比較的に短い。よって、ナット62の前後方向の長さを短くすることができ、ナット62を覆うノブ63の前後方向の長さを比較的に短くすることができる。したがって、ノブ63が浴槽2の内側に突出する長さを短くすることができ、浴槽2内に居る利用者がノブ63に接触し難くすることができる。本実施形態に係る浴槽用手摺り100は、浴槽2内に居る利用者にとって邪魔になり難い。
本実施形態では、ナット62の螺合部71の前端は、側部グリップ12の前面のうち最も後方に位置する部位12bよりも後側に配置されている。このことによって、ナット62の螺合部71は、側部グリップ12の最も後方に位置する前面よりも後方に位置する。よって、ナット62の前方への突出長さが短い。したがって、ナット62を覆うノブ63を更に短くすることができる。
例えば、利用者がノブ63を握って操作するときに、ノブ63がナット62の前後方向に対して傾くことがあり得る。本実施形態では、ナット62は、螺合部71からノブ63の前端側に延びる筒部72を有している。そのため、ノブ63が傾きそうになった場合に、ノブ63はナット62の筒部72に支持され、傾くことが防止される。よって、ノブ63が傾き難いので、ノブ63を利用者が良好に操作することができる。
本実施形態では、螺合部71の前後方向の長さL11を、筒部72の前後方向の長さL12以下にする。このことによって、ナット62の筒部72が比較的に長いので、ノブ63を更に傾き難くすることができる。また、ナット62の螺合部71が比較的に短いので、ノブ63の突出長さを抑えることができる。
本実施形態では、ナット62が筒部72を有していることによって、筒部72によってコイルバネ83の少なくとも一部が支持される。よって、ナット62の筒部72をコイルバネ83の支持部材として利用することができる。したがって、ノブ63の内部に、コイルバネ83の専用の支持部材を設けなくてもよいため、ノブ63を短く抑えることができる。また、部品点数を削減することができる。
以上、本実施形態に係る浴槽用手摺り100について説明した。上記実施形態では、コイルバネ83は、本発明の弾性体の一例であった。しかしながら、本発明の弾性体は、コイルバネ83に限定されない。例えば、本発明の弾性体は、板バネであってもよい。この場合、ナット62の筒部72の前後方向の長さは、第1実施形態と比較して、短くてもよいし、筒部72は省略されていてもよい。
上記実施形態では、図8に示すように、第1環状部材81のトルク伝達面87に凸部91が形成され、第2環状部材82のトルク伝受面88に凹部92が形成されていた。しかしながら、トルク伝達面87に凹部92が形成され、トルク伝受面88に凸部91が形成されてもよい。
また、凸部91および凹部92は、省略されてもよい。例えば、トルク伝達面87およびトルク伝受面88は、平らな面であってもよい。この場合、トルクが所定の値未満の場合、トルク伝達面87とトルク伝受面88が相互に係止し、トルクが所定の値以上の場合、トルク伝達面87とトルク伝受面88との間に滑りが生じるように、トルク伝達面87がトルク伝受面88を押し付けるような強さの弾性力が、コイルバネ83から第1環状部材81に付与されてもよい。