以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。図1は、端子挿入装置2の主要部の構成を表す斜視図である。端子挿入装置2は、ワイヤハーネスを製造する電線処理装置に組み込まれている。端子挿入装置2は、電線11の先端に端子12が圧着されてなる端子付き電線10の端子12を、コネクタ20の端子孔21に挿入する装置である。複数本の端子付き電線10の端子12がコネクタ20に挿入されることにより、ワイヤハーネスが製造される。
以下の説明では特に断らない限り、図1の端子付き電線10の先端側、根元側を、それぞれ前側、後側とする。左側、右側、上側、下側とは、後側から前側を見たときの左側、右側、上側、下側をそれぞれ意味するものとする。後側から前側に向かう方向を第1方向、左側から右側に向かう方向を第2方向、下側から上側に向かう方向を第3方向と呼ぶ。図中のF1、F2、F3は、それぞれ第1方向、第2方向、第3方向を表す。
端子挿入装置2は、端子姿勢矯正具30と、位置決めクランプ41と、移動クランプ42と、移動クランプ42を駆動する駆動装置45と、第1通過センサ51と、第2通過センサ52と、コネクタ20を保持するコネクタホルダ60と、を備えている。
端子姿勢矯正具30は、端子付き電線10が押し当てられることによって端子12の姿勢を矯正する器具である。図2は、端子姿勢矯正具30の斜視図である。端子姿勢矯正具30は、台33と、台33の上に配置された第1電極31および第2電極32とを備えている。台33は絶縁体からなり、第1電極31および第2電極32は、金属などの導電体からなっている。
第1電極31と第2電極32とは互いに分離している。ここでは、第2電極32は第1電極31の右側に配置されている。第1電極31には第1矯正壁31Aが形成され、第2電極32には第2矯正壁32Aが形成されている。第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aは、端子12が押し当てられる押し当て部を構成している。本実施形態では、第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aは、それぞれ下側から上側に向かって真っ直ぐな鉛直面からなっている。言い換えると、第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aは、第3方向F3に向かって真っ直ぐに延びる平面からなっている。
図3は端子姿勢矯正具30の平面図である。図3に示すように、第1矯正壁31Aは、第1方向F1に行くほど第2方向F2に向かうように、第1方向F1から傾斜している。第2矯正壁32Aは、第1方向F1に行くほど第1矯正壁31Aに近づくように、第1方向F1から傾斜している。第1矯正壁31Aと第2矯正壁32Aとの間の間隔は、後側に行くほど広くなっている。図2に示すように、台33における第1矯正壁31Aと第2矯正壁32Aとの間の面33Aは、水平面となっている。言い換えると、台33の面33Aは、第3方向F3に対して垂直な面となっている。
第1矯正壁31Aの前側(第1方向側)には、第1絶縁部材35が配置されている。第2矯正壁32Aの前側には、第2絶縁部材36が配置されている。第2絶縁部材36は第1絶縁部材35の右側に配置され、第1絶縁部材35と第2絶縁部材36とは互いに分離している。図4は図3のIV−IV線断面図である。図4に示すように、第1絶縁部材35の右側には第1延長面35Aが形成され、第2絶縁部材36の左側には第2延長面36Aが形成されている。本実施形態では、第1延長面35Aおよび第2延長面36Aは、鉛直に延びる平面からなっている。言い換えると、第1延長面35Aおよび第2延長面36Aは、第1方向F1および第3方向F3に延びる平面からなっている。第1延長面35Aと第2延長面36Aとは対向しており、第1延長面35Aと第2延長面36Aとの間には隙間が形成されている。
第1延長面35Aの上側には第1傾斜面35Bが形成されている。第2延長面36Aの上側には第2傾斜面36Bが形成されている。第1傾斜面35Bは、上側に行くほど左側に向かうように鉛直線から傾斜している。第2傾斜面36Bは、上側に行くほど右側に向かうように鉛直線から傾斜している。第1傾斜面35Bと第2傾斜面36Bとの間の隙間は、上側に行くほど幅が広くなっている。言い換えると、第1傾斜面35Bは、第1延長面35Aから第3方向F3に行くほど第2方向F2と反対の方向に向かう面であり、第2傾斜面36Bは、第2延長面36Aから第3方向F3に行くほど第2方向F2に向かう面である。そして、第1傾斜面35Bと第2傾斜面36Bとの間の隙間は、第3方向F3に向かうほど幅が広くなっている。本実施形態では、第1傾斜面35Bおよび第2傾斜面36Bは、平面からなっている。
端子12は金属などの導電体により構成されている。図3に模式的に示すように、第1電極31および第2電極32には、電源37および通電を検出する通電センサ38を有する通電検出回路39が接続されている。詳細については後述するが、端子付き電線10の端子12が第1電極31および第2電極32に押し当てられると、第1電極31と第2電極32とは端子12を介して接続されるので、通電検出回路39に電流が流れる。
図1に示すように、位置決めクランプ41は、左右にスライド可能な左右一対のクランプ爪41L,41Rと、それらクランプ爪41L,41Rを互いに接近または離反させるアクチュエータ71(図5参照)とを備えている。位置決めクランプ41は、移動クランプ42が電線11を把持する前に電線11の位置を整えるものである。位置決めクランプ41が電線11を把持することにより、電線11は所定の中心線上に位置付けられる。位置決めクランプ41は、クランプ爪41L,41Rを互いに接近させることにより、これらクランプ爪41L,41Rによって電線11を把持し、クランプ爪41L,41Rを互いに離反させることにより、電線11の把持を解除するように構成されている。なお、アクチュエータ71の種類は何ら限定されず、例えば、エアシリンダ、電動モータなどを利用することができる。
移動クランプ42は、互いに回動可能な左右一対のクランプ爪42L,42Rと、それらクランプ爪42L,42Rを互いに回動させるアクチュエータ72(図5参照)とを備えている。アクチュエータ72は、クランプ爪42L,42Rを回動させることにより、移動クランプ42を開閉させるように構成されている。移動クランプ42は、開閉することにより、電線11の把持および把持の解除が可能に構成されている。なお、アクチュエータ72の種類も何ら限定されず、例えば、エアシリンダ、電動モータなどを利用することができる。
図5は、端子挿入装置2の制御系のブロック図である。移動クランプ42を駆動する駆動装置45は、移動クランプ42を上下に移動させる第1駆動機構45Aと、移動クランプ42を左右に移動させる第2駆動機構45Bと、移動クランプ42を前後に移動させる第3駆動機構45Cとを含んでいる。第1〜第3駆動機構45A〜45Cの構成は何ら限定されず、従来から公知の任意の駆動機構を用いることができる。例えば、第1駆動機構45Aは、上下に延びるレールと、移動クランプ42を直接的または間接的に支持しかつ上記レールにスライド可能に係合した支持部材と、支持部材を駆動するモータとを有していてもよい。同様に、第2駆動機構45Bは、左右に延びるレールと、移動クランプ42を直接的または間接的に支持しかつ上記レールにスライド可能に係合した支持部材と、支持部材を駆動するモータとを有していてもよい。第3駆動機構45Cは、前後に延びるレールと、移動クランプ42を直接的または間接的に支持しかつ上記レールにスライド可能に係合した支持部材と、支持部材を駆動するモータとを有していてもよい。
端子挿入装置2は、移動クランプ42の位置を検出するクランプ位置センサ50を備えている。クランプ位置センサ50の構成は何ら限定されず、従来から公知の任意の装置を用いることができる。例えば、第1〜第3駆動機構45A〜45Cの前記各モータがサーボモータにより構成され、クランプ位置センサ50がそれらサーボモータに内蔵されたエンコーダにより構成されていてもよい。また、クランプ位置センサ50は、移動クランプ42または第1〜第3駆動機構45A〜45Cの前記レールに取り付けられた光学式または接触式のセンサにより構成されていてもよい。
第1通過センサ51および第2通過センサ52は、端子付き電線10の端子12の通過を検出するセンサである。図1に示すように本実施形態では、第1通過センサ51は、端子12が上向きに通過することを検出するように配置されている。第2通過センサ52は、端子12が左向きに通過することを検出するように配置されている。
第1通過センサ51および第2通過センサ52は、端子12の通過を検出できれば足り、それらの構成は何ら限定されない。従来から公知の任意の通過センサを利用することができる。例えば、光学式または接触式のセンサを利用することができる。ここでは、第1通過センサ51および第2通過センサ52は、コの字状のホルダ55と、ホルダ55に支持された発光素子53および受光素子54を有する透過型の光学式センサにより構成されている。ただし、第1通過センサ51および第2通過センサ52は、反射型の光学式センサにより構成されていてもよい。
第1通過センサ51および第2通過センサ52は、1組の発光素子53および受光素子54を備えていてもよいが、2組以上の発光素子53および受光素子54を備えていてもよい。例えば、第1通過センサ51および第2通過センサ52は、前後に並ぶ2組の発光素子53および受光素子54を備えていてもよい。言い換えると、第1通過センサ51および第2通過センサ52は、第1方向F1に沿って並ぶ2組の発光素子53および受光素子54を備えていてもよい。また、図6に示すように、第1通過センサ51および第2通過センサ52は、前後に並ぶ3組の発光素子53および受光素子54を備えていてもよく、前後に並ぶ4組以上の発光素子53および受光素子54を備えていてもよい。
端子12が第1通過センサ51を通過すると、少なくとも一つの発光素子53から照射された光が端子12によって遮られ、少なくとも一つの受光素子54は、受光状態から非受光状態に変化する。これにより、端子12が第1通過センサ51を通過したことが検出される。第2通過センサ52についても同様である。
図1に示すように、コネクタ20はコネクタホルダ60に保持されている。コネクタホルダ60には孔61が形成されており、コネクタ20は孔61に着脱可能に装着されている。コネクタ20には、端子付き電線10の端子12が挿入される複数の端子孔21が形成されている。
図5に示すように、端子挿入装置2はコンピュータからなる制御装置100を備えている。制御装置100は、図示しないCPU、ROM、RAMなどを有している。制御装置100は、有線または無線により、通電センサ38からの信号P1を受信可能に構成されている。また、制御装置100は、有線または無線により、クランプ位置センサ50からの信号P2、第1通過センサ51からの信号P3、および、第2通過センサ52からの信号P4を受信可能に構成されている。制御装置100は、アクチュエータ71およびアクチュエータ72と通信可能であり、アクチュエータ71およびアクチュエータ72の制御を行う。また、制御装置100は、第1〜第3駆動機構45A〜45Cと通信可能であり、第1〜第3駆動機構45A〜45Cの制御を行う。
図7に示すように、制御装置100は、端子付き電線10の端子12をコネクタ20の端子孔21に挿入する処理を行うために、導通判定部105と、第1移動制御部101と、第2移動制御部102と、第1位置ずれ検出部111と、第2位置ずれ検出部112と、補正部108と、挿入制御部120とを備えている。なお、各部が実行する処理については後述する。
以上が端子挿入装置2の構成である。次に、端子姿勢矯正具30を用いて端子12の姿勢を矯正する方法を含め、端子挿入装置2により端子12をコネクタ20の端子孔21に挿入する方法について説明する。
図8は、端子付き電線10の端子12をコネクタ20の端子孔21に挿入する方法を示す全体フローチャートである。図8に示すように、先ず、移動クランプ42により端子付き電線10を把持し(ステップS1)、次に、移動クランプ42により端子付き電線10をコネクタ20の手前の位置まで移動させ(ステップS2)、次に、移動クランプ42により端子付き電線10をコネクタ20に挿入する(ステップS3)。以下、各ステップの詳細について説明する。
図9は、端子付き電線10を把持するステップ(ステップS1)の詳細を示すフローチャートである。先ずステップS11において、端子付き電線10の端子12の姿勢矯正を行う。詳しくは、図1に示すように、作業者が電線11を摘まみながら前方に移動させ、電線11の先端に設けられた端子12を、端子姿勢矯正具30の第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aに押し当てる。
図10に示すように、ここでは、端子12は断面が四角形状に形成されている。第1矯正壁31Aと第2矯正壁32Aとの間の隙間は、前方に行くほど狭くなっている。そのため、端子12が電線11から左側または右側に傾いていたとしても、端子12は第1矯正壁31Aと第2矯正壁32Aとの間に挟まれることにより、前後方向に関して真っ直ぐな姿勢に矯正される。また、端子12は第1矯正壁31Aと第2矯正壁32Aとに挟まれることにより、第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aに沿った姿勢に矯正される。ここで、第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aは、鉛直に延びる平面からなっている。したがって、端子12が電線11の中心線周りに傾いていたとしても、端子12は上下方向に関して真っ直ぐな姿勢に矯正される。なお、台33の面33Aは水平である。そのため、端子12を台33の面33Aの上に載せることによっても、端子12の姿勢を矯正することができる。
前述の通り、第1矯正壁31Aを有する第1電極31と第2矯正壁32Aを有する第2電極32とには、通電検出回路39が接続されている(図3参照)。そのため、作業者が端子付き電線10の端子12を第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aに押し当てると、上述のように端子12の姿勢が矯正されると同時に、通電検出回路39に電流が流れる。その結果、通電を検出した通電センサ38から制御装置100に信号P1が送られる(図5参照)。制御装置100は、第1電極31と第2電極32とが導通したか否かを判定する導通判定部105を有している(図7参照)。導通判定部105は、通電センサ38からの信号P1に基づいて、第1電極31と第2電極32との導通を判定する(ステップS12)。その結果、導通したと判定されると、制御装置100はアクチュエータ71を駆動し、位置決めクランプ41を閉じる(ステップS13)。それにより、電線11は位置決めクランプ41に把持される。
次に、制御装置100は、第3駆動機構45Cを駆動することにより移動クランプ42を下降させ、アクチュエータ72を駆動することにより移動クランプ42を閉じる(ステップS14)。これにより、電線11は移動クランプ42によって把持される。
移動クランプ42が電線11を把持した後、制御装置100はアクチュエータ71を駆動し、位置決めクランプ41を開く(ステップS15)。これにより、移動クランプ42が電線11を把持したまま、位置決めクランプ41による電線11の把持が解除される。以上が、端子付き電線10を把持するステップS1の詳細である。
次に、図11を参照しながら、端子付き電線10をコネクタ20の手前の位置まで移動させるステップ(ステップS2)の詳細について説明する。前述したように、移動クランプ42の位置はクランプ位置センサ50(図5参照)によって検出される。制御装置100は、クランプ位置センサ50によって検出される位置に基づいて、移動クランプ42の移動を制御する。制御装置100は、クランプ位置センサ50から信号P2を受け、駆動装置45を制御する。ここでは、移動クランプ42の移動前の位置を第1位置と称する。第1位置は、移動クランプ42が電線11を把持し始めた位置である。先ず、制御装置100の第1移動制御部101が第1駆動機構45Aを駆動し、移動クランプ42を第1位置から上向き(第1移動方向)に移動させる(ステップS21)。すると、電線11の先端に圧着された端子12は第1通過センサ51を通過し、その通過が検出される(ステップS22)。
ところで、移動クランプ42は端子12を把持するのではなく、端子12が圧着された電線11を把持する。そのため、例えば図12に誇張して示すように、電線11が上下方向に曲がっている場合、端子12と移動クランプ42とには、上下方向の位置ずれが生じる。本実施形態では、第1通過センサ51は予め定められた位置に設置されているので、端子12が第1通過センサ51を通過するときの位置は予め特定されている。第1通過センサ51が端子12の通過を検出したときの端子12、移動クランプ42の上下方向の位置をそれぞれV12、V42とすると、端子12に対する移動クランプ42の上下方向の位置ずれ量ΔVは、ΔV=V42−V12によって算出することができる。第1通過センサ51が端子12の通過を検出すると、制御装置100の第1位置ずれ検出部111は、上述のようにして、端子12に対する移動クランプ42の上下方向の位置ずれ量ΔVを演算する(ステップS23)。
移動クランプ42は、予め定められた第2位置まで上向きに移動するように設定されている。制御装置100の第1移動制御部101は、クランプ位置センサ50によって検出される位置に基づいて、移動クランプ42が第2位置まで上昇したか否かを判定する(ステップS24)。制御装置100の第1移動制御部101は、移動クランプ42が第2位置まで上昇したと判定した場合、第1駆動機構45Aを停止する。そして、制御装置100の第2移動制御部102が第2駆動機構45Bを駆動する。これにより、移動クランプ42は上向きの移動を停止し、移動方向を転換させて、左向き(第2移動方向)に移動する(ステップS25)。
移動クランプ42が左向きに移動すると、端子12が第2通過センサ52を通過し、その通過が検出される(ステップS26)。例えば図13に誇張して示すように、電線11が左右方向に曲がっている場合、移動クランプ42と端子12とには、左右方向の位置ずれが生じる。本実施形態では、第2通過センサ52は予め定められた位置に設置されているので、端子12が第2通過センサ52を通過するときの位置は予め特定されている。第2通過センサ52が端子12の通過を検出したときの端子12、移動クランプ42の左右方向の位置をそれぞれH12、H42とすると、端子12に対する移動クランプ42の左右方向の位置ずれ量ΔHは、ΔH=H42−H12によって算出することができる。第2通過センサ52が端子12の通過を検出すると、制御装置100の第2位置ずれ検出部112は、上述のようにして、端子12に対する移動クランプ42の左右方向の位置ずれ量ΔHを演算する(ステップS27)。
移動クランプ42は、予め定められた第3位置まで左向きに移動するように設定されている。なお、第3位置は、コネクタ20の手前の位置である。制御装置100の第2移動制御部102は、クランプ位置センサ50によって検出される位置に基づいて、移動クランプ42が第3位置に到達したか否かを判定する(ステップS28)。制御装置100の第2移動制御部102は、移動クランプ42が第3位置に到達したと判定した場合、第2駆動機構45Bを停止する。これにより、移動クランプ42の左向きの移動は停止する(ステップS29)。以上が、端子付き電線10をコネクタ20の手前の位置まで移動させるステップS2の詳細である。
次に、図14を参照しながら、端子付き電線10をコネクタ20に挿入するステップ(ステップS3)の詳細について説明する。前述の第3位置は、移動クランプ42がコネクタ20の端子孔21(詳しくは、複数の端子孔21のうち、移動クランプ42が把持している端子付き電線10の端子12が挿入されるべき端子孔21)と真正面に向かい合う位置である。言い換えると、第3位置は、電線11に曲がりがないと仮定した場合に、移動クランプ42がそのまま前向きに移動すると端子12が端子孔21に挿入されるような位置である。制御装置100の補正部108は、ステップS31において、移動クランプ42の位置の補正を行う。詳しくは、制御装置100の補正部108は、第3位置から下側にΔV、右側にΔHだけずれた位置を補正後の位置(以下、第4位置という)とする。なお、ΔVが正の値であれば下側にずれた位置となり、ΔVが負の値であれば上側にずれた位置となる。また、ΔHが正の値であれば右側にずれた位置となり、ΔHが負の値であれば左側にずれた位置となる。そして、制御装置100の補正部108は、第1駆動機構45Aおよび第2駆動機構45Bを制御し、移動クランプ42を補正後の第4位置に移動させる。
なお、第3位置への移動と第4位置への移動とは、時間的に連続していてもよい。すなわち、移動クランプ42は、第3位置で停止することなく、第4位置に移動してもよい。また、ここでは制御装置100は、移動クランプ42をいったん第3位置に移動させてから第4位置に移動させることとしたが、第3位置に移動させずに第4位置に移動させてもよい。すなわち、制御装置100は、移動クランプ42が第2位置から第3位置に向けて移動している間に位置の補正を行い、移動クランプ42を第2位置から第4位置に直接移動させるようにしてもよい。
ステップS31の位置の補正により、端子12は端子孔21に適合した位置に位置付けられる。その後、制御装置100の挿入制御部120が第1駆動機構45Aを制御し、移動クランプ42を前向きに移動させる。これにより、端子12は端子孔21に挿入される。以上が、端子付き電線10をコネクタ20に挿入するステップの詳細である。
その後、制御装置100はアクチュエータ72を駆動し、移動クランプ42を開く。これにより、移動クランプ42による電線の把持が解除される。そして、制御装置100は、第1〜第3駆動機構45A〜45Cを駆動し、移動クランプ42を初期位置(図1に示す位置)に移動させる。
以上のステップS1〜S3は、コネクタ20に装着される端子付き電線10の数だけ繰り返される。上記ステップS1〜S3を繰り返すことにより、コネクタ20に複数本の端子付き電線10を装着することができ、複数本の端子付き電線10が組み合わせられたワイヤハーネスを製造することができる。
本実施形態に係るワイヤハーネスの製造方法によれば、端子12をコネクタ20の端子孔21に挿入する前に、端子姿勢矯正具30を用いて端子12の姿勢を矯正するので、従来よりも安価かつ簡単に、端子12をコネクタ20の端子孔21に良好に挿入することができる。よって、従来よりも安価かつ簡単に、良好なワイヤハーネスを製造することができる。
上記の説明では、端子付き電線10の電線11に、いわゆるメス型の端子12が圧着されている場合について説明した。しかし、端子12の形態は様々である。例えば、図15に示すように、電線11にいわゆるオス型の端子12が圧着されている場合がある。オス型の端子12は、根元部12aと、根元部12aよりも左右の幅および上下の幅が小さい先端部12bとを有している。先端部12bはピン状に形成されている。
端子姿勢矯正具30は、第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aを有しているが、図16に示すように、第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aの前側は開いている。第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aの前側には第1絶縁部材35および第2絶縁部材36が配置されているが、第1絶縁部材35の第1延長面35Aと第2絶縁部材36の第2延長面36Aとの間には隙間が形成されている。そのため、第1電極31と第2電極32との間にオス型の端子12を押し込むと、端子12の先端部12bは、第1延長面35Aと第2延長面36Aとの間の隙間に入り込む。先端部12bが邪魔になることはなく、根元部12aを第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aに押し当てることができる。よって、オス型の端子12であっても、姿勢を矯正することができる。
ところで、第1電極31と第2電極32との間に端子12を挿入する際に、端子12が左側または右側に若干傾いて挿入される場合がある。例えば、端子12が右側に若干傾いて挿入される場合、端子12の根元部12aが第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aに押し当てられる前に、根元部12aが第1矯正壁31Aに接触すると共に、先端部12bが第2絶縁部材36の第2延長面36Aに接触することがある。仮に、第2絶縁部材36の代わりに第2電極32の一部が延長されているとすると、根元部12aが第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aに押し当てられることによって端子12の姿勢が矯正されるよりも前に、第1電極31と第2電極32とが導通してしまうことになる。この場合、端子12の姿勢が矯正される前に位置決めクランプ41が閉じられてしまい(ステップS13参照)、端子12の姿勢を矯正することができなくなる。しかし、本実施形態に係る端子姿勢矯正具30では、第1延長面35Aおよび第2延長面36Aは絶縁部材によって形成されているので、端子12の先端部12bが接触しても、根元部12aが第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aに押し当てられるまで、第1電極31と第2電極32とが導通してしまうことはない。よって、端子12が左側または右側に若干傾いて挿入された場合であっても、端子12の姿勢を矯正することができる。
次に、本実施形態によってもたされる様々な効果について説明する。
本実施形態に係る端子姿勢矯正具30によれば、図3に示すように、第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aは、第1方向F1に向かうほど互いに近づくように傾斜している。第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aは、いわゆるテーパー状に形成されている。そのため、図10に示すように、端子付き電線10を第1方向F1に移動させて端子12を第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aに押し当てると、端子12は第1矯正壁31Aと第2矯正壁32Aとの間に挟まれることになる。ここで、第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aは、第3方向F3に向かって真っ直ぐに延びている。そのため、端子12の姿勢が傾いていたとしても、端子12は第1矯正壁31Aと第2矯正壁32Aとの間に挟まれるときに、それらの矯正壁31A,32Aに沿った姿勢に矯正される。すなわち、端子12の姿勢は第3方向F3に沿った姿勢に矯正される。したがって、端子姿勢矯正具30によれば、簡易かつ安価に端子12の姿勢を矯正することができる。
なお、本実施形態では、第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aは、第3方向F3に向かって真っ直ぐに延びる面であれば足り、必ずしも平面視において(言い換えると、第3方向F3に沿って見たときに)真っ直ぐに延びる面でなくてもよい。例えば、図17に示すように、第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aは、平面視において湾曲した曲面からなっていてもよい。
ただし、ここでは、第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aは平面からなっている(図3参照)。そのため、端子12を第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aに押し当てるときに、端子12を第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aに沿って第1方向F1に円滑に移動させることができる。よって、端子12の姿勢矯正の処理を円滑に行うことができる。
本実施形態では、第1電極31および第2電極32は台33の上に載置されている。台33は、第1矯正壁31Aと第2矯正壁32Aとの間に位置する水平な面33Aを有している。しかし、台33は必ずしも必要ではなく、水平な面33Aはなくてもよい。ただし、本実施形態によれば、第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aの下側に水平な面33Aが設けられているので、端子12を面33Aの上に載せることにより、端子12の上下の位置決めを行うことができる。また、端子12を面33Aの上に載せて前方にスライドさせることにより、端子12を第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aに容易に押し当てることができる。
本実施形態によれば、第1矯正壁31Aから前方に延びる第1延長面35Aと、第2矯正壁32Aから前方に延びる第2延長面36Aとを備え、第1延長面35Aと第2延長面36Aとの間に隙間が形成されている。そのため、メス型の端子12(図10参照)およびオス型の端子12(図16参照)の両方に対して、姿勢の矯正を行うことができる。
本実施形態によれば、第1矯正壁31Aは第1電極31に形成され、第2矯正壁32Aは第2電極32に形成されている。そのため、端子12を第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aに押し当てると、第1電極31と第2電極32とは端子12を介して導通する。すなわち、端子12の姿勢が矯正されると、第1電極31および第2電極32は導通する。よって、第1電極31および第2電極32の導通の有無に基づいて、端子12の姿勢矯正の完了を検出することができる。
前述したように、オス型の端子12の場合(図16参照)、例えば若干右側に傾いて挿入されると、根元部12aが第1矯正壁31Aに接触すると同時に、先端部12bが第2延長面36Aに接触する場合がある。しかし、第2延長面36Aは第2絶縁部材36に形成されているので、根元部12aが第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aに押し当てられる前に第1電極31と第2電極32とが導通してしまうことはない。そのため、メス型の端子12およびオス型の端子12の両方に対して、第1電極31および第2電極32の導通の有無に基づいて、姿勢矯正の完了を検出することができる。
本実施形態によれば、図4に示すように、第1延長面35Aの上側には第1傾斜面35Bが設けられ、第2延長面36Aの上側には第2傾斜面36Bが設けられている。第1傾斜面35Bと第2傾斜面36Bとの間には、上方に向かうほど間隔が広くなる隙間が形成されている。そのため、オス型の端子12の姿勢を矯正した後、端子12の先端部12bを上方に円滑に移動させることができる。
本実施形態に係る端子挿入装置2によれば、第1電極31および第2電極32が導通したことが通電センサ38により検出されると、移動クランプ42に電線11を把持させ、かつ、駆動装置45により移動クランプ42を移動させる。このように、端子12の姿勢矯正が完了した後、端子姿勢矯正具30からの端子付き電線10の移動を自動的に開始することができる。
駆動装置45は、移動クランプ42に把持された端子付き電線10の端子12がコネクタ20の端子孔21に挿入されるように移動クランプ42を移動させる。よって、端子12の姿勢を矯正してからコネクタ20の端子孔21に挿入するまでの処理を自動的に行うことができる。端子孔21に端子12を挿入する動作は駆動装置45により自動的に行われるが、端子姿勢矯正具30により端子12の姿勢が矯正されているので、端子孔21に端子12を良好に挿入することができる。
また、本実施形態によれば、第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aがテーパー状に形成されているので、端子付き電線10を第1方向F1に移動させて端子12を第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aに押し当てると、端子12の第1方向F1の位置が一義的に定められる。すなわち、第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aの形状および寸法(テーパー角度等)は既知であり、端子12の形状および寸法も既知であるため、端子12が第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aに挟まれるときの端子12の第1方向F1の位置は、予め一義的に算出することができる。したがって、本実施形態によれば、端子12の姿勢を矯正できるとともに、端子12の第1方向F1の位置決めを行うことができる。なお、端子12の第1方向F1の位置が決まるので、端子12をコネクタ20の端子孔21に挿入するときの移動クランプ42の第1方向F1の移動量を予め決めておくことができる。また、本実施形態によれば、端子12は第1矯正壁31Aと第2矯正壁32Aとの中間の位置で両矯正壁31A,32Aに挟まれるので、端子12の第2方向F2の位置決めも行うことができる。
なお、前記実施形態の説明では、端子12の断面形状は四角形としたが、端子12の断面形状は四角形に限られない。端子12の断面形状は多角形が好ましいが、断面形状が多角形以外の形状の端子12であっても、利用することが可能である。例えば、前記実施形態に係る端子姿勢矯正具30および端子挿入装置2は、断面形状が円形の端子12にも利用することができる。
前記実施形態は一例に過ぎず、本発明は前記実施形態に限定されない。他にも様々な実施形態が可能である。
図18(a)に模式的に示すように、前記実施形態では、第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aが有する面は、第3方向F3に向かって真っ直ぐに延びる面である。しかし、第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aの形状は、端子12の形状に応じて任意に変更可能である。
例えば、図18(b)に示すように、第1矯正壁31Aは、第3方向F3に行くほど第2方向F2と反対の方向に向かう面31A1と、第3方向F3に行くほど第2方向F2に向かう面31A2とから構成されていてもよい。第2矯正壁32Aは、第3方向F3に行くほど第2方向F2に向かう面32A1と、第3方向F3に行くほど第2方向F2と反対の方向に向かう面32A2とから構成されていてもよい。これにより、第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aは、断面が六角形状の端子12に適合した形状を有することとなり、断面が六角形状の端子12に対して、良好な姿勢矯正を行うことができる。また、第1矯正壁31Aは前記面31A1,31A2に加えて他の面を有し、第2矯正壁32Aは前記面32A1,32A2に加えて他の面を有していてもよい。これにより、第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aは、六角形以外の多角形状断面を有する端子に適合した形状を有することとなり、そのような端子に対して良好な姿勢矯正を行うことができる。
また、図18(c)に示すように、第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aは、曲面からなっていてもよい。これにより、第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aは、断面が円形、楕円形等の端子12に適合した形状を有することとなり、そのような端子に対して良好な姿勢矯正を行うことができる。
なお、図18(b)および(c)に示すような実施形態では、端子12を第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aに押し当てた後、そのままでは端子12を上方に移動させることができない。そこで、端子12を第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aに押し当てて姿勢を矯正した後、いったん電線11を後方に引っ張ることにより端子12を若干後方に移動させ、その後に電線11および端子12を上方に移動させるとよい。
図4に示すように、前記実施形態では、第1延長面35Aおよび第2延長面36Aは平面であり、第1傾斜面35Bおよび第2傾斜面36Bは平面である。しかし、それらの面の形状は特に限定されない。例えば、図19(a)および(b)に示すように、第1延長面35Aおよび第2延長面36Aが平面からなり、第1傾斜面35Bおよび第2傾斜面36Bが曲面からなっていてもよい。図19(a)に示す実施形態では、第1傾斜面35Bおよび第2傾斜面36Bは凹んだ曲面からなっている。図19(b)に示す実施形態では、第1傾斜面35Bおよび第2傾斜面36Bは出っ張った曲面からなっている。
前記実施形態では、第1延長面35Aの上方に第1傾斜面35Bが設けられ、第2延長面36Aの上方に第2傾斜面36Bが設けられているが、第1傾斜面35Bおよび第2傾斜面36Bはなくてもよい。また、図20(a)および(b)に示すように、第1延長面35Aおよび第2延長面36Aが第3方向F3から傾斜し、第1傾斜面35Bおよび第2傾斜面36Bが省略されていてもよい。図20(a)に示す実施形態では、第1延長面35Aおよび第2延長面36Aは、第3方向F3から傾いた平面からなっている。図20(b)に示す実施形態では、第1延長面35Aおよび第2延長面36Aは、第3方向F3から傾いた曲面からなっている。
第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aは端子12の両側に配置されていればよく、必ずしも左右に配置されていなくてもよい。第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aは、例えば、上下に配置されていてもよい。
オス型の端子12が用いられない場合、第1延長面35Aおよび第2延長面36Aはなくてもよい。
端子12の姿勢矯正の完了を検出する必要がない場合、第1電極31および第2電極32の代わりに、第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aを有する絶縁部材を備えていてもよい。
前記実施形態では、作業者が電線11を摘まんで端子12を第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aに押し当てることとしたが、第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aへの押し当ては機械によって自動的に行ってもよい。例えば、端子挿入装置2は、電線11を電線11の中心線周りに回動可能に保持するグリッパと、当該グリッパを電線11の長手方向に移動させる駆動機構とを備え、グリッパを端子姿勢矯正具30に近づく方に移動させることによって、端子12を第1矯正壁31Aおよび第2矯正壁32Aに押し当てるように構成されていてもよい。