以下、本発明の詳細を説明する。
(基材粒子)
本発明に係る基材粒子は、表面上に導電層が形成され、該導電層を有する導電性粒子を得るために用いられる。すなわち、本発明に係る基材粒子は、導電性粒子用基材粒子である。
本発明に係る基材粒子の圧縮回復率は50%以上である。本発明に係る基材粒子を10%圧縮したときの圧縮弾性率(10%K値)は6000N/mm2以上、かつ10000N/mm2未満である。本発明に係る基材粒子を30%圧縮したときの荷重値(30%荷重値)の10%圧縮したときの荷重値(10%荷重値)に対する比(30%荷重値/10%荷重値)は3以下である。
本発明に係る基材粒子の圧縮回復率は高く、かつ上記基材粒子は、圧縮初期に適度な硬さを有する。さらに、本発明に係る基材粒子では、ある程度圧縮された段階で硬さが変化し、より柔軟な性質が発現する。このため、初期の変形時点(10%圧縮変形時点)での荷重値とあまり差がない荷重値で、中期(30%圧縮変形時点)の変形が発生する。この結果、基材粒子の表面上に導電層を形成した導電性粒子を用いて電極間を電気的に接続した場合に、初期に発現する硬さによりバインダー樹脂を十分に排除し、かつ導電層又は電極の表面の酸化膜を十分に貫通することが可能であり、中期の柔軟性によって電極と導電性粒子との接触面積を十分に大きくすることが可能である。このため、電極間の接続抵抗を低くすることができ、かつ電極間の接続信頼性を高めることができる。例えば、導電性粒子により電極間が電気的に接続された接続構造体を高温条件及び高湿条件下で長時間放置しても、接続抵抗が高くなり難く、接続不良が生じ難くなる。
上記基材粒子の圧縮回復率は50%以上である。上記圧縮回復率は好ましくは52%以上である。上記圧縮回復率が上記下限以上であると、電極間の間隔の変動に対応して、導電性粒子が十分に追従して変形しやすい。このため、電極間の接続不良が生じ難くなる。
上記圧縮回復率は、以下のようにして測定できる。
試料台上に基材粒子を散布する。散布された基材粒子1個について、微小圧縮試験機を用いて、基材粒子の中心方向に、基材粒子が30%圧縮変形するまで負荷(反転荷重値)を与える。その後、原点用荷重値(0.40mN)まで除荷を行う。この間の荷重−圧縮変位を測定し、下記式から圧縮回復率を求めることができる。なお、負荷速度は0.33mN/秒とする。上記微小圧縮試験機として、例えば、フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」等が用いられる。
圧縮回復率(%)=[L2/L1]×100
L1:負荷を与えるときの原点用荷重値から反転荷重値に至るまでの圧縮変位
L2:負荷を解放するときの反転荷重値から原点用荷重値に至るまでの除荷変位
上記10%K値は6000N/mm2以上、かつ10000N/mm2未満である。上記10%K値は好ましくは6400N/mm2以上、好ましくは9000N/mm2以下である。上記10%K値が上記下限以上であると、バインダー樹脂が効果的に排除され、かつ導電層又は電極の表面の酸化膜を効果的に貫通するため、電極間の接続抵抗が効果的に低くなる。上記10%K値が上記上限以下であると、電極にクラックがより一層生じ難くなる。
上記30%荷重値の上記10%荷重値に対する比(30%荷重値/10%荷重値)は3.0以下である。上記比(30%荷重値/10%荷重値)はより好ましくは2.8以下である。上記比(30%荷重値/10%荷重値)が上記上限以下であると、電極と導電性粒子との接触面積が十分に大きくなり、電極間の接続抵抗が効果的に低くなり、かつ電極間の接続信頼性がより一層高くなる。上記比(30%荷重値/10%荷重値)は好ましくは1.5以上である。
上記基材粒子を30%圧縮変形したときの圧縮弾性率(30%K値)は好ましくは5000N/mm2以下、より好ましくは4500N/mm2以下である。上記30%K値が上記上限以下であると、導電性粒子と電極との接触面積がより一層大きくなり、更に電極にクラックがより一層生じ難くなる。上記30%K値は好ましくは500N/mm2以上である。上記30%K値が5000N/mm2以下であると、高温条件及び高湿条件下で長時間放置しても、接続抵抗がより一層高くなり難く、接続不良がより一層生じ難くなる。
上記基材粒子を40%圧縮したときの荷重値(40%荷重値)の10%圧縮したときの荷重値(10%荷重値)に対する比(40%荷重値/10%荷重値)は好ましくは6以下、より好ましくは5以下である。上記比(40%荷重値/10%荷重値)が上記上限以下であると、接続信頼性を高める設計幅がより一層広くなる。上記比(40%荷重値/10%荷重値)が上記上限以下であると、接続抵抗が効果的に低くなる。上記比(40%荷重値/10%荷重値)は好ましくは2以上である。
上記基材粒子における上記荷重値及び上記圧縮弾性率(10%K値及び30%K値)は、以下のようにして測定できる。
微小圧縮試験機を用いて、円柱(直径100μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で、25℃、圧縮速度0.3mN/秒、及び最大試験荷重20mNの条件下で基材粒子を圧縮する。このときの荷重値(N)及び圧縮変位(mm)を測定する。得られた測定値から、上記圧縮弾性率を下記式により求めることができる。上記微小圧縮試験機として、例えば、フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」等が用いられる。
10%K値又は30%K値(N/mm2)=(3/21/2)・F・S−3/2・R−1/2
F:基材粒子が10%又は30%圧縮変形したときの荷重値(N)
S:基材粒子が10%又は30%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)
R:基材粒子の半径(mm)
上記圧縮弾性率は、基材粒子の硬さを普遍的かつ定量的に表す。上記圧縮弾性率の使用により、基材粒子の硬さを定量的かつ一義的に表すことができる。
上記基材粒子の破壊歪は、10%以上、30%以下である。粒子の圧縮挙動を評価した際に、ある一定の荷重値で変位量が大きく変化する点が観測される。この変化する点での荷重値が破壊荷重値であり、変位量が破壊変位である。この破壊変位と圧縮前の粒径との比(破壊変位/圧縮前粒子径)×100を破壊歪(%)と定義する。例えば、圧縮前の粒子径が5μmの粒子が、変位量1μmの時点で破壊挙動が観察された場合は、破壊歪20%と算出される。コアシェル粒子の場合、一般的には変位の初期でシェルの破壊挙動が観察される。上記破壊歪が上記下限以上であると、バインダー樹脂の排除性、導電層及び電極の酸化膜の貫通性がより一層高くなり、接続抵抗がより一層低くなる。上記破壊歪が上記上限以下であると、中期の柔軟性が発現し、導電性粒子と電極との接触面積がより一層大きくなり、接続抵抗がより一層低くなる。
上記破壊歪は、上述した圧縮弾性率の測定から評価することができ、圧縮変位カーブの不連続点の変位量を読み取ることで測定可能である。
上記コアの粒径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは50μm以下、特に好ましくは20μm以下、最も好ましくは10μm以下である。上記コアの粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、10%K値、30%K値、上記比(30%荷重値/10%荷重値)及び上記比(40%荷重値/10%荷重値)が好適な値を示すことが容易であり、基材粒子を導電性粒子の用途に好適に使用可能になる。例えば、上記コアの粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記導電性粒子を用いて電極間を接続した場合に、導電性粒子と電極との接触面積が充分に大きくなり、かつ導電層を形成する際に凝集した導電性粒子が形成されにくくなる。また、導電性粒子を介して接続された電極間の間隔が大きくなりすぎず、かつ導電層が基材粒子の表面から剥離し難くなる。
上記コアの粒径は、上記コアが真球状である場合には直径を意味し、上記コアが真球状以外の形状である場合には、その体積相当の真球と仮定した際の直径を意味する。また、コアの粒径は、コアを任意の粒径測定装置により測定した平均粒径を意味する。例えば、レーザー光散乱、電気抵抗値変化、撮像後の画像解析などの原理を用いた粒度分布測定機が利用できる。
上記基材粒子は、コアと、該コアの表面上に配置されたシェルとを備え、コアシェル粒子であることが好ましい。コアシェル粒子の圧縮回復率、10%K値、30%K値、上記比(30%荷重値/10%荷重値)及び上記比(40%荷重値/10%荷重値)が上述した値を満足することで、電極間の接続抵抗を低くすることができ、かつ電極間の接続信頼性を高めることができる。
上記コアは有機コアであることが好ましい。上記シェルは無機シェルであることが好ましい。上記コアが有機コアであり、かつ上記シェルが無機シェルであることが好ましい。上記基材粒子は、有機コアと、該有機コアの表面上に配置された無機シェルとを備え、コアシェル粒子であることが好ましく、コアシェル型の有機無機ハイブリッド粒子であることが好ましい。上記コアが有機コアであったり、上記シェルが無機シェルであったりすると、圧縮回復率、10%K値、30%K値、上記比(30%荷重値/10%荷重値)及び上記比(40%荷重値/10%荷重値)が上述した値を満足することが容易である。
上記コアは、有機コアであることが好ましく、有機粒子であることが好ましい。上記有機コア及び上記有機粒子は、無機コア及び無機粒子に比べて比較的柔軟であるので、比較的柔軟な有機コアの表面上にシェルが形成される結果、圧縮回復率、上記比(30%荷重値/10%荷重値)及び上記比(40%荷重値/10%荷重値)を満足することが容易である。
上記有機コアを形成するための材料として、種々の有機物が好適に用いられる。上記有機コアを形成するための材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂;ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリアルキレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、及び、エチレン性不飽和基を有する種々の重合性単量体を1種もしくは2種以上重合させて得られる重合体等が用いられる。エチレン性不飽和基を有する種々の重合性単量体を1種もしくは2種以上重合させることにより、導電材料に適した任意の圧縮時の物性を有する基材粒子を設計及び合成することが容易である。
上記有機コアを、エチレン性不飽和基を有する単量体を重合させて得る場合には、上記エチレン性不飽和基を有する単量体としては、非架橋性の単量体と架橋性の単量体とが挙げられる。
上記非架橋性の単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル含有単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン等の不飽和炭化水素;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、フッ化ビニル、クロルスチレン等のハロゲン含有単量体等が挙げられる。
上記架橋性の単量体としては、例えば、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、ビニルトリメトキシシラン等のシラン含有単量体等が挙げられる。
上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を、公知の方法により重合させることで、上記有機コアを得ることができる。この方法としては、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法、並びに非架橋の種粒子を用いてラジカル重合開始剤とともに単量体を膨潤させて重合する方法等が挙げられる。
特に、本発明に最適なコアに関しては、上記コアを10%圧縮したときの圧縮弾性率(10%K値)は、好ましくは4000N/mm2以上かつ8000N/mm2以下、より好ましくは4500N/mm2以上かつ7500N/mm2以下である。上記コアの圧縮回復率は好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上である。上記コアが上記10%K値を満足していたり、上記圧縮弾性率を満足していたりすると、上記コアを無機シェルで被覆した基材粒子の10%K値、上記比(10%荷重値/30%荷重値)、及び圧縮回復率を好適な範囲に容易に制御できる。
上記コアの物性を上述した範囲に設計する方法は限定されないが、例えばエチレン性不飽和基を有する単量体を重合させて得る場合に、コアを形成するための化合物として、ジビニルベンゼンのような剛直な構造を有する架橋性単量体又はテトラメチレングリコールテトラアクリレートのような架橋点間分子量の短い架橋性単量体を70重量%以上用いる方法が挙げられる。このような架橋性単量体としては例えば、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート及びグリセロールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ポリエチレングリコール骨格のような柔軟な骨格を有する架橋性単量体を50重量%以上用いて得られるコアでは、本発明における10%K値、30%K値、上記比(30%荷重値/10%荷重値)及び圧縮回復率を発現することが難しい。また、ビニルトリメトキシシラン又は(メタ)アクリロキシトリメトキシシランのようなシランカップリング剤をゾルゲル手法により重縮合させて粒子化した粒子化物に、エチレン性不飽和基を有する単量体を吸収させた後、重合させて得られる粒子でもコアの物性を最適な値に設計することが可能である。上記コアを構成する材料は、有機化合物だけではなく、ケイ素原子を有する化合物を含んでいてもよい。上記コアにおける炭素原子の含有量のケイ素原子の含有量に対する比(炭素原子の含有量/ケイ素原子の含有量)は好ましくは1.2以上である。上記比(炭素原子の含有量/ケイ素原子の含有量)が1.2以上であるコアは、有機コアに相当する。
シェルの形成時及び基材粒子の使用時にコアの変形を抑制する観点からは、上記コアの分解温度は、好ましくは200℃を超え、より好ましくは250℃を超え、より一層好ましくは300℃を超える。上記コアの分解温度は、400℃を超えていてもよく、500℃を超えていてもよく、600℃を超えていてもよく、800℃を超えていてもよい。
上記基材粒子は、コアシェル粒子である。上記シェルは、上記コアの表面上に配置されている。上記シェルは、上記コアの表面を被覆していることが好ましい。上記シェルは無機シェルであることが好ましい。
上記無機シェルは、ケイ素原子を50重量%以上含むことが好ましく、この場合には、上記無機シェルは、ケイ素原子を主成分として含む無機シェルである。上記無機シェルは、炭素原子を含んでいてもよいが、炭素原子を含む場合でもケイ素原子が主成分であれば無機シェルと呼ぶ。
上記無機シェルは、上記コアの表面上で、金属アルコキシドをゾルゲル法によりシェル状物とした後、該シェル状物を焼成させることにより形成されていることが好ましい。ゾルゲル法では、上記コアの表面上にシェル状物を配置することが容易である。上記焼成を行う場合に、上記基材粒子では、焼成後に、上記コアは、揮発等により除去されずに、残存している。上記基材粒子は、焼成後に、上記コアを備える。なお、仮に焼成後に上記コアが揮発等により除去されると、上記10%K値がかなり低くなる。
上記ゾルゲル法の具体的な方法としては、コア、水やアルコール等の溶媒、界面活性剤、及びアンモニア水溶液等の触媒を含む分散液に、テトラエトキシシラン等の無機モノマーを共存させて界面ゾル反応を行う方法、並びに水やアルコール等の溶媒、及びアンモニア水溶液と共存させたテトラエトキシシラン等の無機モノマーによりゾルゲル反応を行った後、コアにゾルゲル反応物をヘテロ凝集させる方法等が挙げられる。上記ゾルゲル法において、上記金属アルコキシドは、加水分解及び重縮合することが好ましい。
上記ゾルゲル法では、界面活性剤を用いることが好ましい。界面活性剤の存在下で、上記金属アルコキシドをゾルゲル法によりシェル状物にすることが好ましい。上記界面活性剤は特に限定されない。上記界面活性剤は、良好なシェル状物を形成するように適宜選択して用いられる。上記界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤等が挙げられる。なかでも、良好な無機シェルを形成できることから、カチオン性界面活性剤が好ましい。
上記カチオン性界面活性剤としては、4級アンモニウム塩及び4級ホスホニウム塩等が挙げられる。上記カチオン性界面活性剤の具体例としては、ヘキサデシルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
上記コアの表面上で、上記無機シェルを形成するために、上記シェル状物は焼成されることが好ましい。焼成条件により、無機シェルにおける架橋度を調整可能である。また、焼成を行うことで、焼成を行わない場合と比べて、上記基材粒子の10%K値及び30%K値がより一層好適な値を示すようになる。特に架橋度を高めることで、10%K値が十分に高くなる。
上記無機シェルは、上記コアの表面上で、金属アルコキシドをゾルゲル法によりシェル状物とした後、該シェル状物を100℃以上(焼成温度)で焼成させることにより形成されていることが好ましい。上記焼成温度はより好ましくは150℃以上、更に好ましくは200℃以上である。上記焼成温度が上記下限以上であると、無機シェルにおける架橋度がより一層適度になり、10%K値、30%K値、上記比(30%荷重値/10%荷重値)及び上記比(40%荷重値/10%荷重値)がより一層好適な値を示し、基材粒子を導電性粒子の用途により一層好適に使用可能になる。
上記無機シェルは、上記コアの表面上で、金属アルコキシドをゾルゲル法によりシェル状物とした後、該シェル状物を上記有機コアの分解温度以下(焼成温度)で焼成させることにより形成されていることが好ましい。上記焼成温度は、上記コアの分解温度よりも10℃以上低い温度であることが好ましく、上記コアの分解温度よりも50℃以上低い温度であることがより好ましい。また、上記焼成温度は、好ましくは500℃以下、より好ましくは300℃以下、更に好ましくは200℃以下である。上記焼成温度が上記上限以下であると、上記コアの熱劣化及び変形を抑制でき、10%K値、30%K値、上記比(30%荷重値/10%荷重値)及び上記比(40%荷重値/10%荷重値)が良好な値を示す基材粒子が得られる。
上記金属アルコキシドとしては、シランアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド及びアルミニウムアルコキシド等が挙げられる。良好な無機シェルを形成する観点からは、上記金属アルコキシドは、シランアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド又はアルミニウムアルコキシドであることが好ましく、シランアルコキシド、チタンアルコキシド又はジルコニウムアルコキシドであることがより好ましく、シランアルコキシドであることが更に好ましい。良好な無機シェルを形成する観点からは、上記金属アルコキシドにおける金属原子は、ケイ素原子、チタン原子、ジルコニウム原子又はアルミニウム原子であることが好ましく、ケイ素原子、チタン原子又はジルコニウム原子であることがより好ましく、ケイ素原子であることが更に好ましい。上記金属アルコキシドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
良好な無機シェルを形成する観点からは、上記金属アルコキシドは、下記式(1)で表される金属アルコキシドであることが好ましい。
M(R1)n(OR2)4−n ・・・(1)
上記式(1)中、Mはケイ素原子、チタン原子又はジルコニウム原子であり、R1はフェニル基、炭素数1〜30のアルキル基、重合性二重結合を有する炭素数1〜30の有機基又はエポキシ基を有する炭素数1〜30の有機基を表し、R2は炭素数1〜6のアルキル基を表し、nは0〜2の整数を表す。nが2であるとき、複数のR1は同一であってもよく、異なっていてもよい。複数のR2は同一であってもよく、異なっていてもよい。
良好な無機シェルを形成する観点からは、上記金属アルコキシドは、下記式(1A)で表されるシランアルコキシドであることが好ましい。
Si(R1)n(OR2)4−n ・・・(1A)
上記式(1A)中、R1はフェニル基、炭素数1〜30のアルキル基、重合性二重結合を有する炭素数1〜30の有機基又はエポキシ基を有する炭素数1〜30の有機基を表し、R2は炭素数1〜6のアルキル基を表し、nは0〜2の整数を表す。nが2であるとき、複数のR1は同一であってもよく、異なっていてもよい。複数のR2は同一であってもよく、異なっていてもよい。無機シェルに含まれるケイ素原子の含有量を効果的に高めるために、上記式(1A)中のnは0又は1を表すことが好ましく、0を表すことがより好ましい。無機シェルに含まれるケイ素原子の含有量が高いと、本発明の効果により一層優れる。
上記R1が炭素数1〜30のアルキル基である場合、R1の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、及びn−デシル基等が挙げられる。このアルキル基の炭素数は好ましくは10以下、より好ましくは6以下である。なお、アルキル基には、シクロアルキル基が含まれる。
上記重合性二重結合としては、炭素−炭素二重結合が挙げられる。上記R1が重合性二重結合を有する炭素数1〜30の有機基である場合に、R1の具体例としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、及び3−(メタ)アクリロキシアルキル基等が挙げられる。上記(メタ)アクリロキシアルキル基としては、(メタ)アクリロキシメチル基、(メタ)アクリロキシエチル基及び(メタ)アクリロキシプロピル基等が挙げられる。上記重合性二重結合を有する炭素数1〜30の有機基の炭素数は好ましくは2以上、好ましくは30以下、より好ましくは10以下である。上記「(メタ)アクリロキシ」は、メタクリロキシ又はアクリロキシを意味する。
上記R1がエポキシ基を有する炭素数1〜30の有機基である場合、R1の具体例としては、1,2−エポキシエチル基、1,2−エポキシプロピル基、2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、3−グリシドキシプロピル基、及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基等が挙げられる。上記エポキシ基を有する炭素数1〜30の有機基の炭素数は好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。なお、上記エポキシ基を有する炭素数1〜30の有機基は、炭素原子及び水素原子に加えて、エポキシ基に由来する酸素原子を含む基である。
上記R2の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、及びイソブチル基等が挙げられる。無機シェルに含まれるケイ素原子の含有量を効果的に高めるために、上記R2は、メチル基又はエチル基を表すことが好ましい。
上記シランアルコキシドの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、及びジイソプロピルジメトキシシラン等が挙げられる。これら以外のシランアルコキシドを用いてもよい。
無機シェルに含まれるケイ素原子の含有量を効果的に高めるために、上記無機シェルの材料として、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランを用いることが好ましい。上記無機シェルの材料の100重量%中、テトラメトキシシランとテトラエトキシシランとの合計の含有量は好ましくは50重量%以上である(全量でもよい)。上記無機シェル100重量%中、テトラメトキシシランに由来する骨格とテトラエトキシシランに由来する骨格との合計の含有量は好ましくは50重量%以上である(全量でもよい)。
上記チタンアルコキシドの具体例としては、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、及びチタンテトラブトキシド等が挙げられる。これら以外のチタンアルコキシドを用いてもよい。
上記ジルコニウムアルコキシドの具体例としては、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、及びジルコニウムテトラブトキシド等が挙げられる。これら以外のジルコニウムアルコキシドを用いてもよい。
上記金属アルコキシドは、金属原子に4つの酸素原子が直接結合している構造を有する金属アルコキシドを含むことが好ましい。上記金属アルコキシドは、下記式(1a)で表される金属アルコキシドを含むことが好ましい。
M(OR2)4 ・・・(1a)
上記式(1a)中、Mはケイ素原子、チタン原子又はジルコニウム原子であり、R2は炭素数1〜6のアルキル基を表す。複数のR2は同一であってもよく、異なっていてもよい。
上記金属アルコキシドは、ケイ素原子に4つの酸素原子が直接結合している構造を有するシランアルコキシドを含むことが好ましい。このシランアルコキシドでは、一般にケイ素原子に4つの酸素原子が単結合により結合している。上記金属アルコキシドは、下記式(1Aa)で表されるシランアルコキシドを含むことが好ましい。
Si(OR2)4 ・・・(1Aa)
上記式(1Aa)中、R2は炭素数1〜6のアルキル基を表す。複数のR2は同一であってもよく、異なっていてもよい。
10%K値を効果的に高くし、かつ30%K値を効果的に低くする観点からは、上記無機シェルを形成するために用いる金属アルコキシド100モル%中、上記金属原子に4つの酸素原子が直接結合している構造を有する金属アルコキシド、上記式(1a)で表される金属アルコキシド、上記ケイ素原子に4つの酸素原子が直接結合している構造を有するシランアルコキシド、又は上記式(1Aa)で表されるシランアルコキシドの各含有量は、好ましくは20モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上、更に一層好ましくは55%以上、特に好ましくは60モル%以上、100モル%以下である。上記無機シェルを形成するために用いる金属アルコキシドの全量が、上記金属原子に4つの酸素原子が直接結合している構造を有する金属アルコキシド、上記式(1a)で表される金属アルコキシド、上記ケイ素原子に4つの酸素原子が直接結合している構造を有するシランアルコキシド、又は上記式(1Aa)で表されるシランアルコキシドであってもよい。
10%K値を効果的に高くし、かつ30%K値を効果的に低くする観点からは、上記無機シェルに含まれる上記金属アルコキシドに由来する金属原子の全個数100%中、4つの酸素原子が直接結合している金属原子の個数の割合、4つの−O−Si基が直接結合しておりかつ4つの上記−O−Si基における4つの酸素原子が直接結合しているケイ素原子の個数の割合はそれぞれ、好ましくは20%以上、より好ましくは40%以上、更に好ましくは50%以上、更に一層好ましくは55%以上、特に好ましくは60%以上である。
また、10%K値を適度に高くし、かつ上記比(30%荷重値/10%荷重値)及び上記比(40%荷重値/10%荷重値)を適度な範囲に制御する観点からは、上記無機シェルに含まれている金属原子の全個数100%中、4つの酸素原子が直接結合している金属原子の個数の割合は、好ましくは20%以上、より好ましくは40%以上、更に好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上である。10%K値を適度に高くし、かつ上記比(30%K値/10%K値)を適度な範囲に制御する観点からは、上記金属アルコキシドがシランアルコキシドであり、かつ上記無機シェルに含まれているケイ素原子の全個数100%中、4つの−O−Si基が直接結合しておりかつ4つの上記−O−Si基における4つの酸素原子が直接結合しているケイ素原子の個数の割合は、好ましくは20%以上、より好ましくは40%以上、更に好ましくは50%以上、更に一層好ましくは55%以上、特に好ましくは60%以上である。
なお、4つの−O−Si基が直接結合しておりかつ4つの上記−O−Si基における4つの酸素原子が直接結合しているケイ素原子は、例えば、下記式(11)で表される構造におけるケイ素原子である。具体的には、下記式(11X)で表される構造における矢印Aを付して示すケイ素原子である。
なお、上記式(11)における酸素原子は、一般に隣接するケイ素原子とシロキサン結合を形成している。
4つの−O−Si基が直接結合しておりかつ4つの上記−O−Si基における4つの酸素原子が直接結合しているケイ素原子の個数の割合(Q4の個数の割合(%))を測定する方法としては、例えば、NMRスペクトル解析装置を用いて、Q4(4つの−O−Si基が直接結合しておりかつ4つの上記−O−Si基における4つの酸素原子が直接結合しているケイ素原子)のピーク面積と、Q1〜Q3(1〜3つの−O−Si基が直接結合しておりかつ1〜3つの上記−O−Si基における1〜3つの酸素原子が直接結合しているケイ素原子)のピーク面積とを比較する方法が挙げられる。この方法により、上記無機シェルに含まれているケイ素原子の全個数100%中、4つの−O−Si基が直接結合しておりかつ4つの上記−O−Si基における4つの酸素原子が直接結合しているケイ素原子の個数の割合(Q4の個数の割合)を求めることができる。
上記シェルの厚みは、好ましくは100nm以上、より好ましくは200nm以上、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下である。上記シェルの厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、10%K値及び30%K値がより一層好適な値を示し、基材粒子を導電性粒子の用途に好適に使用可能になる。上記シェルの厚みは、基材粒子1個あたりの平均厚みである。ゾルゲル法の制御によって、上記シェルの厚みを制御可能である。
本発明においてシェルの厚みは、基材粒子の粒子径とコア粒子径との平均値の差から求めることができる。上記基材粒子の粒径は、上記基材粒子が真球状である場合には直径を意味し、上記基材粒子が真球状以外の形状である場合には、その体積相当の真球と仮定した際の直径を意味する。粒子径の測定には例えば、レーザー光散乱、電気抵抗値変化、撮像後の画像解析などの原理を用いた粒度分布測定機が利用できる。
上記基材粒子のアスペクト比は、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.2以下である。上記アスペクト比は、長径/短径を示す。
(導電性粒子)
上記導電性粒子は、上述した基材粒子と、該基材粒子の表面上に配置された導電層とを備える。
図1に、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を断面図で示す。
図1に示す導電性粒子1は、基材粒子11と、基材粒子11の表面上に配置された導電層2とを有する。導電層2は、基材粒子11の表面を被覆している。導電性粒子1は、基材粒子11の表面が導電層2により被覆された被覆粒子である。
基材粒子11は、コア12と、コア12の表面上に配置されたシェル13とを備える。シェル13は、コア12の表面を被覆している。導電層2は、シェル13の表面上に配置されている。導電層2は、シェル13の表面を被覆している。
図2に、本発明の第2の実施形態に係る導電性粒子を断面図で示す。
図2に示す導電性粒子21は、基材粒子11と、基材粒子11の表面上に配置された導電層22とを有する。導電層22は、内層である第1の導電層22Aと外層である第2の導電層22Bとを有する。基材粒子11の表面上に、第1の導電層22Aが配置されている。シェル13の表面上に、第1の導電層22Aが配置されている。第1の導電層22Aの表面上に、第2の導電層22Bが配置されている。
図3に、本発明の第3の実施形態に係る導電性粒子を断面図で示す。
図3に示す導電性粒子31は、基材粒子11と、導電層32と、複数の芯物質33と、複数の絶縁性物質34とを有する。
導電層32は、基材粒子11の表面上に配置されている。シェル13の表面上に導電層32が配置されている。
導電性粒子31は導電性の表面に、複数の突起31aを有する。導電層32は外表面に、複数の突起32aを有する。このように、上記導電性粒子は、導電性の表面に突起を有していてもよく、導電層の外表面に突起を有していてもよい。複数の芯物質33が、基材粒子11の表面上に配置されている。シェル13の表面上に、複数の芯物質33が配置されている。複数の芯物質33は導電層32内に埋め込まれている。芯物質33は、突起31a,32aの内側に配置されている。導電層32は、複数の芯物質33を被覆している。複数の芯物質33により導電層32の外表面が隆起されており、突起31a,32aが形成されている。
導電性粒子31は、導電層32の外表面上に配置された絶縁性物質34を有する。導電層32の外表面の少なくとも一部の領域が、絶縁性物質34により被覆されている。絶縁性物質34は絶縁性を有する材料により形成されており、絶縁性粒子である。このように、上記導電性粒子は、導電層の外表面上に配置された絶縁性物質を有していてもよい。
上記導電層を形成するための金属は特に限定されない。該金属としては、例えば、金、銀、パラジウム、銅、白金、亜鉛、鉄、錫、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、タリウム、ゲルマニウム、カドミウム、ケイ素及びこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)及びはんだ等が挙げられる。なかでも、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができるので、錫を含む合金、ニッケル、パラジウム、銅又は金が好ましく、ニッケル又はパラジウムが好ましい。
導電性粒子1,31のように、上記導電層は、1つの層により形成されていてもよい。導電性粒子21のように、導電層は、複数の層により形成されていてもよい。すなわち、導電層は、2層以上の積層構造を有していてもよい。導電層が複数の層により形成されている場合には、最外層は、金層、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は錫と銀とを含む合金層であることが好ましく、金層であることがより好ましい。最外層がこれらの好ましい導電層である場合には、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。また、最外層が金層である場合には、耐腐食性がより一層高くなる。
上記基材粒子の表面に導電層を形成する方法は特に限定されない。導電層を形成する方法としては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的蒸着による方法、並びに金属粉末もしくは金属粉末とバインダーとを含むペーストを基材粒子の表面にコーティングする方法等が挙げられる。なかでも、導電層の形成が簡便であるので、無電解めっきによる方法が好ましい。上記物理的蒸着による方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング及びイオンスパッタリング等の方法が挙げられる。
上記導電性粒子の粒径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは520μm以下、より好ましくは500μm以下、より一層好ましくは100μm以下、更に好ましくは50μm以下、特に好ましくは20μm以下である。導電性粒子の粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、導電性粒子を用いて電極間を接続した場合に、導電性粒子と電極との接触面積が十分に大きくなり、かつ導電層を形成する際に凝集した導電性粒子が形成されにくくなる。また、導電性粒子を介して接続された電極間の間隔が大きくなりすぎず、かつ導電層が基材粒子の表面から剥離し難くなる。また、導電性粒子の粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、導電性粒子を導電材料の用途に好適に使用可能である。
上記導電性粒子の粒径は、導電性粒子が真球状である場合には直径を意味し、導電性粒子が真球状以外の形状である場合には、その体積相当の真球と仮定した際の直径を意味する。
上記導電層の厚みは、好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上、好ましくは10μm以下、より好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.3μm以下である。上記導電層の厚みは、導電層が多層である場合には導電層全体の厚みである。導電層の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、十分な導電性が得られ、かつ導電性粒子が硬くなりすぎずに、電極間の接続の際に導電性粒子が十分に変形する。
上記導電層が複数の層により形成されている場合に、最外層の導電層の厚みは、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.01μm以上、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。上記最外層の導電層の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、最外層の導電層による被覆が均一になり、耐腐食性が十分に高くなり、かつ電極間の接続抵抗がより一層低くなる。また、上記最外層が金層である場合に、金層の厚みが薄いほど、コストが低くなる。
上記導電層の厚みは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、導電性粒子の断面を観察することにより測定できる。
上記導電性粒子は、導電性の表面に突起を有していてもよい。上記導電性粒子は、上記導電層の外表面に突起を有していてもよい。該突起は複数であることが好ましい。導電層の表面並びに導電性粒子により接続される電極の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。突起を有する導電性粒子を用いた場合には、電極間に導電性粒子を配置して圧着させることにより、突起により上記酸化被膜が効果的に排除される。このため、電極と導電性粒子の導電層とをより一層確実に接触させることができ、電極間の接続抵抗を低くすることができる。さらに、導電性粒子が表面に絶縁性物質を備える場合に、又は導電性粒子がバインダー樹脂中に分散されて導電材料として用いられる場合に、導電性粒子の突起によって、導電性粒子と電極との間の絶縁性物質又はバインダー樹脂を効果的に排除できる。このため、電極間の導通信頼性を高めることができる。
上記基材粒子の表面上に突起を形成する方法としては、基材粒子の表面に芯物質を付着させた後、無電解めっきにより導電層を形成する方法、並びに基材粒子の表面に無電解めっきにより導電層を形成した後、芯物質を付着させ、更に無電解めっきにより導電層を形成する方法等が挙げられる。また、突起を形成するために、上記芯物質を用いなくてもよい。
上記導電性粒子は、上記導電層の外表面上に配置された絶縁性物質を備えていてもよい。この場合には、導電性粒子を電極間の接続に用いると、隣接する電極間の短絡を防止できる。具体的には、複数の導電性粒子が接触したときに、複数の電極間に絶縁性物質が存在するので、上下の電極間ではなく横方向に隣り合う電極間の短絡を防止できる。なお、電極間の接続の際に、2つの電極で導電性粒子を加圧することにより、導電性粒子の導電層と電極との間の絶縁性物質を容易に排除できる。導電性粒子が上記導電層の表面に突起を有する場合には、導電性粒子の導電層と電極との間の絶縁性物質をより一層容易に排除できる。上記絶縁性物質は、絶縁性樹脂層又は絶縁性粒子であることが好ましく、絶縁性粒子であることがより好ましい。上記絶縁性粒子は、絶縁性樹脂粒子であることが好ましい。
(導電材料)
上記導電材料は、上述した導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。上記導電性粒子は、バインダー樹脂中に分散され、導電材料として用いられることが好ましい。上記導電材料は、異方性導電材料であることが好ましい。上記導電材料は、電極の電気的な接続に好適に用いられる。上記導電材料は、回路接続材料であることが好ましい。
上記バインダー樹脂は特に限定されない。上記バインダー樹脂として、公知の絶縁性の樹脂が用いられる。上記バインダー樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体及びエラストマー等が挙げられる。上記バインダー樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ビニル樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂であってもよい。上記硬化性樹脂は、硬化剤と併用されてもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、及びアクリロニトリル−スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
上記導電材料は、上記導電性粒子及び上記バインダー樹脂の他に、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
上記バインダー樹脂中に上記導電性粒子を分散させる方法は、従来公知の分散方法を用いることができ特に限定されない。上記バインダー樹脂中に上記導電性粒子を分散させる方法としては、例えば、上記バインダー樹脂中に上記導電性粒子を添加した後、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、上記導電性粒子を水又は有機溶剤中にホモジナイザー等を用いて均一に分散させた後、上記バインダー樹脂中に添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、並びに上記バインダー樹脂を水又は有機溶剤等で希釈した後、上記導電性粒子を添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法等が挙げられる。
上記導電材料は、導電ペースト及び導電フィルム等として使用され得る。本発明に係る導電材料が、導電フィルムである場合には、導電性粒子を含む導電フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されていてもよい。上記導電ペーストは異方性導電ペーストであることが好ましい。上記導電フィルムは異方性導電フィルムであることが好ましい。
上記導電材料100重量%中、上記バインダー樹脂の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、好ましくは99.99重量%以下、より好ましくは99.9重量%以下である。上記バインダー樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間に導電性粒子が効率的に配置され、導電材料により接続された接続対象部材の接続信頼性がより一層高くなる。
上記導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
(接続構造体)
上述した導電性粒子を用いて、又は上述した導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料を用いて、接続対象部材を接続することにより、接続構造体を得ることができる。
上記接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、該接続部が上述した導電性粒子により形成されているか、又は上述した導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料により形成されている接続構造体であることが好ましい。導電性粒子が単独で用いられた場合には、接続部自体が導電性粒子である。すなわち、第1,第2の接続対象部材が導電性粒子により接続される。上記接続構造体を得るために用いられる上記導電材料は、異方性導電材料であることが好ましい。
上記第1の接続対象部材は、第1の電極を表面に有することが好ましい。上記第2の接続対象部材は、第2の電極を表面に有することが好ましい。上記第1の電極と上記第2の電極とが、上記導電性粒子により電気的に接続されていることが好ましい。
図4は、図1に示す導電性粒子1を用いた接続構造体を模式的に示す正面断面図である。
図4に示す接続構造体51は、第1の接続対象部材52と、第2の接続対象部材53と、第1の接続対象部材52と第2の接続対象部材53とを接続している接続部54とを備える。接続部54は、導電性粒子1とバインダー樹脂とを含む導電材料により形成されている。図4では、図示の便宜上、導電性粒子1は略図的に示されている。導電性粒子1にかえて、導電性粒子21,31などの他の導電性粒子を用いてもよい。
第1の接続対象部材52は表面(上面)に、複数の第1の電極52aを有する。第2の接続対象部材53は表面(下面)に、複数の第2の電極53aを有する。第1の電極52aと第2の電極53aとが、1つ又は複数の導電性粒子1により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材52,53が導電性粒子1により電気的に接続されている。
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。接続構造体の製造方法の一例として、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材との間に上記導電材料を配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。上記加圧の圧力は9.8×104〜4.9×106Pa程度である。上記加熱の温度は、120〜220℃程度である。フレキシブルプリント基板の電極、樹脂フィルム上に配置された電極及びタッチパネルの電極を接続するための上記加圧の圧力は9.8×104〜1.0×106Pa程度である。
上記接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板などの電子部品等が挙げられる。上記導電材料は、電子部品を接続するための導電材料であることが好ましい。上記導電ペーストはペースト状の導電材料であり、ペースト状の状態で接続対象部材上に塗工されることが好ましい。
特に、本発明では、樹脂の排除性と、導電層及び電極の酸化膜の貫通性とを良好にするために、基材粒子の初期の硬度を比較的高い硬さに設計している。このため、本発明では、電極の表面がチタンやモリブデン等の酸化しやすい金属である場合や、厚みが比較的厚いガラス基板(厚み0.5mm以上)と、半導体チップとを接続した場合に、大きな効果を発揮する。
上記第1,第2の接続対象部材の組合せは、ガラス基板と半導体チップとの組合せであることが好ましい。この場合に、上記第1の接続対象部材がガラス基板であってもよく、上記第2の接続対象部材がガラス基板であってもよい。上記ガラス基板の厚みは、0.5mm以上であることが好ましい。
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極及びタングステン電極、チタン電極等の金属電極が挙げられる。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
上記第1,第2の電極の内の少なくとも一方はチタン電極又はモリブデン電極であることが好ましく、上記第1,第2の電極の内の双方がチタン電極又はモリブデン電極であることが好ましい。上記第1,第2の電極の表面を構成する材料の内の少なくとも一方は、チタン又はモリブデンを含むことが好ましく、上記第1,第2の電極の表面を構成する材料の双方が、チタン又はモリブデンを含むことがより好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
(実施例1)
(1)基材粒子の作製
コアの作製)
ジビニルベンゼン(純度96重量%)1000重量部に過酸化ベンゾイル40重量部を加えて、均一に溶解するまで攪拌し、モノマー混合液を得た。分子量約1700のポリビニルアルコールを純水に溶解させた2重量%水溶液4000重量部を、反応釜に入れた。この中に、得られたモノマー混合液を入れ、4時間攪拌することで、モノマーの液滴が所定の粒径になるように、粒径を調整した。この後、85℃の窒素雰囲気下で9時間反応を行い、モノマー液滴の重合反応を行って、粒子を得た。得られた粒子を熱水にて数回洗浄した後、分級操作を行って、数種類の粒径の異なる重合体粒子(有機コア)を回収した。
実施例1では、分級操作で回収した重合体粒子のうち、粒径が2.50μmである重合体粒子(有機コア)を用意した。
コアシェル粒子の作製)
得られた重合体粒子(有機コア)30重量部と、界面活性剤であるヘキサデシルアンモニウムブロミド12重量部と、25重量%のアンモニア水溶液24重量部とを、イソプロピルアルコール540重量部及び純水60重量部中に入れ、混合し、重合体粒子の分散液を得た。この分散液にテトラエトキシシラン140重量部を添加して、ゾルゲル反応による縮合反応を行った。テトラエトキシシランの縮合物を重合体粒子の表面に析出させて、シェルを形成し、粒子を得た。得られた粒子をエタノールで数回洗浄し、乾燥することでコアシェル粒子(基材粒子)を得た。得られたコアシェル粒子の粒径は3.01μmであった。コアの粒径とコアシェル粒子の粒径とから、シェルの厚みは0.26μmと算出された。
(2)導電性粒子の作製
得られた基材粒子を洗浄し、乾燥した。その後、無電解めっき法により、得られた基材粒子の表面に、ニッケル層を形成し、導電性粒子を作製した。なお、ニッケル層の厚さは0.1μmであった。
(実施例2)
実施例1にて分級操作で回収した重合体粒子のうち、粒径が2.25μmである重合体粒子(有機コア)を用意した。得られた重合体粒子を用いたこと、並びにコアシェル粒子を作製する際に、テトラエトキシシランの添加量を310重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、コアシェル粒子及び導電性粒子を得た。
(実施例3)
コアを作製する際に、ジビニルベンゼン(純度96重量%)1000重量部を、ジビニルベンゼン(純度96重量%)800重量部及びアクリロニトリル200重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、粒子を得た。得られた粒子を熱水にて数回洗浄した後、分級操作を行って、数種類の粒径の異なる重合体粒子(有機コア)を回収した。
実施例3では、分級操作で回収した重合体粒子のうち、粒径が2.50μmである重合体粒子(有機コア)を用意した。この重合体粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、コアシェル粒子及び導電性粒子を得た。
(実施例4)
実施例1にて得られた基材粒子を、電気炉にて窒素を充填した状態で、200℃で30分加熱処理を行った。その後実施例1と同様の処理にて、導電性粒子を作製した。
(実施例5)
(1)パラジウム付着工程
実施例1で得られた基材粒子を用意した。得られた基材粒子をエッチングし、水洗した。次に、パラジウム触媒を8重量%含むパラジウム触媒化液100mL中に基材粒子を添加し、攪拌した。その後、ろ過し、洗浄した。pH6の0.5重量%ジメチルアミンボラン液に基材粒子を添加し、パラジウムが付着された基材粒子を得た。
(2)芯物質付着工程
パラジウムが付着された基材粒子をイオン交換水300mL中で3分間攪拌し、分散させ、分散液を得た。次に、金属ニッケル粒子スラリー(平均粒径100nm)1gを3分間かけて上記分散液に添加し、芯物質が付着された基材粒子を得た。
(3)無電解ニッケルめっき工程
実施例1と同様にして、基材粒子の表面上に、ニッケル層を形成し、導電性粒子を作製した。なお、ニッケル層の厚さは0.1μmであった。
(実施例6)
(1)絶縁性粒子の作製
4ツ口セパラブルカバー、攪拌翼、三方コック、冷却管及び温度プローブが取り付けられた1000mLのセパラブルフラスコに、メタクリル酸メチル100mmolと、N,N,N−トリメチル−N−2−メタクリロイルオキシエチルアンモニウムクロライド1mmolと、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩1mmolとを含むモノマー組成物を固形分率が5重量%となるようにイオン交換水に秤取した後、200rpmで攪拌し、窒素雰囲気下70℃で24時間重合を行った。反応終了後、凍結乾燥して、表面にアンモニウム基を有し、平均粒径220nm及びCV値10%の絶縁性粒子を得た。
絶縁性粒子を超音波照射下でイオン交換水に分散させ、絶縁性粒子の10重量%水分散液を得た。
実施例1で得られた導電性粒子10gをイオン交換水500mLに分散させ、絶縁性粒子の水分散液4gを添加し、室温で6時間攪拌した。3μmのメッシュフィルターでろ過した後、更にメタノールで洗浄し、乾燥し、絶縁性粒子が付着した導電性粒子を得た。
走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、導電性粒子の表面に絶縁性粒子による被覆層が1層のみ形成されていた。画像解析により導電性粒子の中心より2.5μmの面積に対する絶縁性粒子の被覆面積(即ち絶縁性粒子の粒径の投影面積)を算出したところ、被覆率は30%であった。
(実施例7)
実施例2で得られた基材粒子を、電気炉にて窒素を充填した状態で、200℃で30分過熱処理を行った。その後実施例1と同様の処理にて、導電性粒子を得た。
(実施例8)
実施例1にて分級回収した重合体粒子のうち、粒子径が2.75μmである重合体粒子(有機コア)を用意した。得られた重合体粒子を用いたこと、並びにコアシェル粒子を作製する際に、テトラエトキシシランの添加量を60重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、コアシェル粒子を得た。さらにこの基材粒子を、電気炉にて窒素を充填した状態で、200℃で30分加熱処理を行った。その後実施例1と同様の処理をして導電粒子を得た。
(比較例1)
実施例1にて分級操作で回収した重合体粒子のうち、粒径が3.01μmである重合体粒子を用意した。得られた重合体粒子を基材粒子として用いて、実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
(比較例2)
実施例3にて分級操作で回収した重合体粒子のうち、粒径が3.00μmである重合体粒子を用意した。得られた重合体粒子を基材粒子として用いて、実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
(比較例3)
コアを作製する際に、ジビニルベンゼン(純度96重量%)1000重量部を、ジビニルベンゼン(純度重量96%)600重量部及びイソボロニルアクリレート400重量部に変更したこと、並びに過酸化ベンゾイルの添加量を20重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、粒子を得た。得られた粒子を熱水にて数回洗浄した後、分級操作を行って、数種類の粒径の異なる重合体粒子を回収した。
比較例3では、分級操作で回収した重合体粒子のうち、粒径が3.00μmである重合体粒子を用意した。得られた重合体粒子を基材粒子として用いて、実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
(比較例4)
コアを作製する際に、ジビニルベンゼン(純度96重量%)1000重量部を、1,4−ブタンジオールジアクリレート950重量部及びエチレングリコールジメタクリレート50重量部に変更したこと、並びに過酸化ベンゾイルの添加量を20重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、粒子を得た。得られた粒子を熱水にて数回洗浄した後、分級操作を行って、数種類の粒径の異なる重合体粒子を回収した。
比較例4では、分級操作で回収した重合体粒子のうち、粒径が3.02μmである重合体粒子を用意した。得られた重合体粒子を基材粒子として用いて、実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
(比較例5)
コアを作製する際に、ジビニルベンゼン(純度96重量%)1000重量部を、スチレン700重量部及びジビニルベンゼン(純度57重量%)300重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、粒子を得た。得られた粒子を熱水にて数回洗浄した後、分級操作を行って、数種類の粒径の異なる重合体粒子を回収した。
比較例5では、分級操作で回収した重合体粒子のうち、粒径が2.98μmである重合体粒子を用意した。得られた重合体粒子を基材粒子として用いて、実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
(比較例6)
実施例1にて分級操作で回収した重合体粒子のうち、粒径が3.01μmである重合体粒子(有機コア)を用意した。得られた重合体粒子を用いて、コアシェル粒子を作製する際に、テトラエトキシシランの添加量を10重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、コアシェル粒子及び導電性粒子を得た。
(評価)
(1)基材粒子の粒径、コアの粒径及びシェルの厚み
得られた基材粒子について、粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製「Multisizer3」)を用いて、約10000個の粒径を測定し、平均粒径及び標準偏差等を測定した。基材粒子を作製する際に用いたコアについても、同様の方法により粒径を測定した。基材粒子の粒径とコアの粒径との差から、シェルの厚みを求めた。
(2)基材粒子の圧縮弾性率(10%K値及び30%K値)、並びに10%荷重値及び30%荷重値及び40%荷重値
得られた基材粒子の上記圧縮弾性率(10%K値及び30%K値)、並びに10%荷重値及び30%荷重値及び40%荷重値を、23℃の条件で、上述した方法により、微小圧縮試験機(フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」)を用いて測定した。
(3)基材粒子の圧縮回復率
得られた基材粒子の上記圧縮回復率を、上述した方法により、微小圧縮試験機(フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」)を用いて測定した。
(4)基材粒子の破壊歪
微小圧縮試験機(フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」)を用いて、23℃の条件で、上述した方法により、破壊歪を測定した。
(5)接続抵抗
接続構造体の作製:
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「エピコート1009」)10重量部と、アクリルゴム(重量平均分子量約80万)40重量部と、メチルエチルケトン200重量部と、マイクロカプセル型硬化剤(旭化成イーマテリアルズ社製「HX3941HP」)50重量部と、シランカップリング剤(東レダウコーニングシリコーン社製「SH6040」)2重量部とを混合し、導電性粒子を含有量が3重量%となるように添加し、分散させ、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を、片面が離型処理された厚さ50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに塗布し、70℃の熱風で5分間乾燥し、異方性導電フィルムを作製した。得られた異方性導電フィルムの厚さは12μmであった。
得られた異方性導電フィルムを5mm×5mmの大きさに切断した。切断された異方性導電フィルムを、一方に抵抗測定用の引き回し線を有するアルミニウム電極(高さ0.2μm、L/S=20μm/20μm)が設けられたガラス基板(幅3cm、長さ3cm)のアルミニウム電極のほぼ中央部へ貼り付けた。次いで同じアルミニウム電極が設けられた2層フレキシブルプリント基板(幅2cm、長さ1cm)を電極同士が重なるように、位置合わせをしてから貼り合わせた。このガラス基板と2層フレキシブルプリント基板との積層体を、10N、180℃、及び20秒間の圧着条件で熱圧着し、接続構造体を得た。
接続抵抗の測定:
得られた接続構造体の対向する電極間の接続抵抗を4端子法により測定した。接続抵抗を下記の基準で判定した。
[接続抵抗の評価基準]
○○:接続抵抗が3.0Ω以下
○:接続抵抗が3.0Ωを超え、4.0Ω以下
△:接続抵抗が4.0Ωを超え、5.0Ω以下
×:接続抵抗が5.0Ωを超える
(6)高温条件及び高湿条件下での接続信頼性
上記(5)接続抵抗の評価で得られた接続構造体100個を、85℃、85%RHにて100時間放置した。試験後の100個の接続構造体について、上下の電極間の導通不良が生じているか否かを評価した。
○○:接続構造体100個のうち、導通不良が生じている個数が1個以下である
○:接続構造体100個のうち、導通不良が生じている個数が2〜5個である
△:接続構造体100個のうち、導通不良が生じている個数が6〜10個である
×:接続構造体100個のうち、導通不良が生じている個数が11個以上である
結果を下記の表1に示す。なお、実施例1〜4,7,8で得られた基材粒子のアスペクト比はいずれも1.2以下であった。なお、実施例3〜5における接続抵抗の評価結果はいずれも「○○」であるが、実施例5における接続抵抗の値は実施例3,4における接続抵抗の値よりも低かった。突起が影響していると考えられる。