図1は、本発明の一の実施の形態に係るリチウム二次電池1の構成を示す断面図である。図1では、図の理解を容易にするために、リチウム二次電池1およびその構成を、実際よりも厚く描いている。また、図1では、断面よりも手前側および奥側の一部の構造を併せて図示する。
リチウム二次電池1は、例えば、シート状デバイス、または、可撓性を有するデバイスにおける電力供給源として利用される。シート状デバイスとは、比較的小さい力によって容易に変形する薄いデバイスであり、フィルム状デバイスとも呼ばれる。本実施の形態では、リチウム二次電池1は、例えば、演算処理機能を有するスマートカードにおける電力供給源として利用される。スマートカードは、カード型の可撓性を有するデバイスである。
リチウム二次電池1は、小型かつ薄型の電池である。リチウム二次電池1の平面視における形状は、例えば略矩形状である。例えば、リチウム二次電池1の平面視における縦方向の長さは10mm〜46mmであり、横方向の長さは10mm〜46mmである。リチウム二次電池1の厚さ(すなわち、図1中の上下方向の厚さ)は、例えば、0.30mm〜0.45mmである。リチウム二次電池1は、シート状または可撓性を有する薄板状の部材である。シート状の部材とは、比較的小さい力によって容易に変形する薄い部材であり、フィルム状の部材とも呼ばれる。以下の説明においても同様である。
リチウム二次電池1は、正極2と、負極3と、セパレータ4と、電解質5と、外装体6と、2つの端子7とを備える。図1に示す例では、正極2、セパレータ4および負極3は、図中の上下方向に積層されている。以下の説明では、図1中の上側および下側を、単に「上側」および「下側」と呼ぶ。また、図1中の上下方向を、単に「上下方向」と呼び、「積層方向」とも呼ぶ。図1中の上下方向は、リチウム二次電池1がスマートカード等のデバイスに搭載される際の実際の上下方向と一致する必要はない。
図1に示す例では、セパレータ4は、積層方向において正極2の上面上に積層される。負極3は、当該積層方向においてセパレータ4の上面上に積層される。換言すれば、負極3は、積層方向においてセパレータ4の正極2とは反対側に積層される。例えば、正極2、セパレータ4および負極3はそれぞれ、平面視において略矩形状である。正極2、セパレータ4および負極3は、平面視において略同形状(すなわち、略同じ形かつ略同じ大きさ)である。
外装体6は、シート状の部材である。外装体6は、例えば、アルミニウム(Al)等の金属により形成された金属箔61と、絶縁性の樹脂層62とが積層されたラミネートフィルムにより形成される。外装体6は、樹脂層62が金属箔61の内側に位置する袋状の部材である。
外装体6は、積層方向の両側から正極2および負極3を被覆する。外装体6は、正極2、セパレータ4、負極3および電解質5を内部に収容する。電解質5は、正極2、セパレータ4および負極3の周囲に連続して存在する。換言すれば、電解質5は、正極2および負極3の間に介在する。電解質5は、液状の電解液であり、正極2、セパレータ4および負極3に含浸している。図1では、電解質5への平行斜線の付与を省略している。2つの端子7は、外装体6の内部から外部へと突出している。外装体6の内部において、一方の端子7は正極2に電気的に接続されており、他方の端子7は負極3に電気的に接続されている。
正極2は、正極集電体21と、正極活物質板22と、導電性接合層23とを備える。正極集電体21は、導電性を有するシート状の部材である。正極集電体21の下面は、正極接合層63を介して外装体6に接合されている。正極活物質板22は、リチウム複合酸化物を含む比較的薄い板状セラミック焼結体である。正極活物質板22は、導電性接合層23を介して正極集電体21の上面上に接合される。正極活物質板22は、上下方向においてセパレータ4と対向する。
正極集電体21は、例えば、アルミニウム等の金属により形成される金属箔と、当該金属箔の上面上に積層された導電性カーボン層とを備える。換言すれば、正極集電体21の正極活物質板22に対向する主面は、導電性カーボン層により被覆されている。上述の金属箔は、アルミニウム以外の様々な金属(例えば、銅、ニッケル、銀、金、クロム、鉄、スズ、鉛、タングステン、モリブデン、チタン、亜鉛、または、これらを含む合金等)により形成されてもよい。また、正極集電体21から上記導電性カーボン層は省略されてもよい。正極接合層63は、例えば、酸変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ系樹脂との混合樹脂により形成される。正極接合層63は、他の様々な材料により形成されてもよい。
正極活物質板22は、複数の(すなわち、多数の)一次粒子が結合した構造を有している。当該一次粒子は、層状岩塩構造を有するリチウム複合酸化物で構成される。リチウム複合酸化物は、典型的には、一般式:LipMO2(式中、0.05<p<1.10)で表される酸化物である。Mは少なくとも1種類の遷移金属であり、例えば、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)から選択される1種以上を含む。層状岩塩構造とは、リチウム層とリチウム以外の遷移金属層とが酸素の層を挟んで交互に積層された結晶構造である。すなわち、層状岩塩構造は、酸化物イオンを介して遷移金属イオン層とリチウム単独層とが交互に積層した結晶構造(典型的には、α−NaFeO2型構造:立方晶岩塩型構造の[111]軸方向に遷移金属とリチウムとが規則配列した構造)である。
層状岩塩構造を有するリチウム複合酸化物の好ましい例としては、コバルト酸リチウム(LipCoO2(式中、1≦p≦1.1)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(Li2MnO3)、ニッケルマンガン酸リチウム(Lip(Ni0.5,Mn0.5)O2)、一般式:Lip(Cox,Niy,Mnz)O2(式中、0.97≦p≦1.07,x+y+z=1)で表される固溶体、Lip(Cox,Niy,Alz)O2(式中、0.97≦p≦1.07、x+y+z=1、0<x≦0.25、0.6≦y≦0.9および0<z≦0.1)で表される固溶体、または、Li2MnO3とLiMO2(式中、MはCo、Ni等の遷移金属)との固溶体が挙げられる。特に好ましくは、リチウム複合酸化物はコバルト酸リチウムLipCoO2(式中、1≦p≦1.1)であり、例えば、LiCoO2である。
なお、正極活物質板22は、マグネシウム(Mg)、Al、ケイ素(Si)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ジルコニア(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、バリウム(Ba)、ビスマス(Bi)等の元素を1種類以上さらに含んでいてもよい。また、正極活物質板22には、集電助剤として金(Au)等がスパッタされていてもよい。
正極活物質板22において、上記複数の一次粒子の平均粒径である一次粒径は、例えば20μm以下であり、好ましくは15μm以下である。また、当該一次粒径は、例えば0.2μm以上であり、好ましくは0.4μm以上である。当該一次粒径は、正極活物質板22の断面のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を解析することにより測定することができる。具体的には、例えば、正極活物質板22をクロスセクションポリッシャ(CP)で加工して研磨断面を露出させ、当該研磨断面を所定の倍率(例えば1000倍)および所定の視野(例えば125μm×125μm)でSEMにより観察する。このとき、視野内に20個以上の一次粒子が存在するように視野を設定する。得られたSEM像中の全ての一次粒子について外接円を描いたときの当該外接円の直径を求め、これらの平均値を一次粒径とする。
正極活物質板22において、複数の一次粒子の平均傾斜角は、0°よりも大きく、かつ、30°以下である。また、当該平均傾斜角は、好ましくは5°以上かつ28°以下であり、より好ましくは10°以上かつ25°以下である。当該平均傾斜角は、複数の一次粒子の(003)面と、正極活物質板22の主面(例えば、正極活物質板22の下面)とが成す角度の平均値である。
一次粒子の傾斜角(すなわち、一次粒子の(003)面と正極活物質板22の主面とが成す角度)は、正極活物質板22の断面を電子線後方散乱回折法(EBSD)により解析することによって測定することができる。具体的には、例えば、正極活物質板22をクロスセクションポリッシャで加工して研磨断面を露出させ、当該研磨断面を所定の倍率(例えば1000倍)および所定の視野(例えば125μm×125μm)でEBSDにより解析する。得られたEBSD像において、各一次粒子の傾斜角は色の濃淡で表され、色が濃いほど配向角度が小さいことを示す。そして、EBSD像から求められた複数の一次粒子の傾斜角の平均値が、上述の平均傾斜角とされる。
正極活物質板22を構成する一次粒子において、傾斜角が0°以上かつ30°以下である一次粒子の占める割合は、好ましくは60%以上であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。当該割合の上限値は特に限定されず、100%であってもよい。当該割合は、上述のEBSD像において、傾斜角が0°以上かつ30°以下である一次粒子の合計面積を求め、当該一次粒子の合計面積を全粒子面積で除算することにより求めることができる。
正極活物質板22の気孔率は、例えば、25%〜45%である。本明細書において「気孔率」とは、正極活物質板22における気孔(開気孔および閉気孔を含む。)の体積比率である。当該気孔率は、正極活物質板22の断面SEM(走査電子顕微鏡)像を画像解析することにより測定することができる。例えば、正極活物質板22をクロスセクションポリッシャ(CP)で加工して研磨断面を露出させる。当該研磨断面を所定の倍率(例えば、1000倍)および所定の視野(例えば、125μm×125μm)でSEMにより観察する。得られたSEM像を画像解析し、視野内の全ての気孔の面積を視野内の正極活物質板22の面積(断面積)で除算し、得られた値に100を乗算することにより気孔率(%)を得る。
正極活物質板22に含まれる気孔の直径の平均値である平均気孔径は、例えば15μm以下であり、好ましくは12μm以下であり、より好ましくは10μm以下である。また、当該平均気孔径は、例えば0.1μm以上であり、好ましくは0.3μm以上である。上述の気孔の直径は、典型的には、当該気孔を同体積あるいは同断面積を有する球形と仮定した場合の、当該球形における直径である。平均気孔径は、複数の気孔の直径の平均値を個数基準で算出したものである。当該平均気孔径は、例えば、断面SEM画像の解析、または、水銀圧入法等、周知の方法により求めることができる。好ましくは、当該平均気孔径は、水銀ポロシメーターを用いて水銀圧入法により測定される。
導電性接合層23は、導電性粉末と、バインダとを含む。導電性粉末は、例えば、アセチレンブラック、鱗片状の天然黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ誘導体、または、カーボンナノファイバー誘導体等の粉末である。バインダは、例えば、ポリイミドアミド樹脂を含む。バインダに含まれるポリイミドアミド樹脂は、1種類であっても、2種類以上であってもよい。また、バインダは、ポリイミドアミド樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。導電性接合層23は、上述の導電性粉末およびバインダ、並びに、溶媒を含む液状またはペースト状の接着剤が、正極集電体21または正極活物質板22に塗布されて、正極集電体21と正極活物質板22との間にて溶媒が蒸発して固化することにより形成される。
好ましくは、導電性接合層23は、導電性粉末およびバインダ以外の物質は実質的に含んでいない。換言すれば、導電性接合層23における導電性粉末およびバインダの合計割合は、実質的に100重量%である。導電性接合層23における導電性粉末の重量は、バインダの重量の例えば50%〜1000%であり、好ましくは100%〜750%であり、より好ましくは250%〜750%である。導電性接合層23における導電性粉末の体積割合は、例えば50%〜90%である。
図2は、正極2を示す平面図である。正極活物質板22は、複数の活物質板要素24を備える。複数の活物質板要素24は、正極集電体21上においてマトリクス状(すなわち、格子状)に配列される。平面視における各活物質板要素24の形状は、例えば略矩形である。複数の活物質板要素24は、平面視において略同形状(すなわち、略同じ形かつ略同じ大きさ)である。複数の活物質板要素24は、平面視において互いに離間している。
図2に示す例では、平面視において略正方形の6個の活物質板要素24が、縦2個×横3個のマトリクス状に配列される。各活物質板要素24の平面視における一辺の長さは、例えば、5mm〜40mmである。なお、複数の活物質板要素24の数および配置は、様々に変更されてよい。また、各活物質板要素24の形状も様々に変更されてよい。
導電性接合層23は、複数の活物質板要素24に対応する複数の接合層要素25を備える。図2では、導電性接合層23の各接合層要素25の輪郭(すなわち、外縁)を破線にて示す。複数の接合層要素25の数は、例えば、複数の活物質板要素24の数と同じである。複数の接合層要素25はそれぞれ、上下方向において正極集電体21と複数の活物質板要素24との間に配置される。正極2では、複数の接合層要素25により、複数の活物質板要素24がそれぞれ正極集電体21に接合される。なお、正極2では、1個の接合層要素25が、2個以上の接合層要素25により正極集電体21に接合されてもよい。
平面視における各接合層要素25の形状は、例えば略円形である。平面視において、各接合層要素25は活物質板要素24よりも小さく、各接合層要素25の全体が活物質板要素24により覆われる。換言すれば、平面視において、接合層要素25の外縁全体が、活物質板要素24の外縁の内側に位置する。さらに換言すれば、各接合層要素25は、活物質板要素24の周囲にはみ出していない。平面視における接合層要素25の形状は、略円形には限定されず、略長円形や略楕円形等、様々に変更されてよい。
正極集電体21の厚さは、例えば9μm〜50μmであり、好ましくは9μm〜20μmであり、より好ましくは9μm〜15μmである。正極活物質板22の厚さ(すなわち、各活物質板要素24の厚さ)は、例えば15μm〜200μmであり、好ましくは30μm〜150μmであり、より好ましくは50μm〜100μmである。導電性接合層23の厚さ(すなわち、各接合層要素25の厚さ)は、例えば、3μm〜28μmであり、好ましくは5μm〜25μmである。
図3は、1個の活物質板要素24の正極集電体21に対向する主面を示す底面図である。当該主面は、図1中の下面であり、以下の説明では「接合面26」と呼ぶ。図3に示す例では、接合面26は略正方形状である。他の5個の活物質板要素24の接合面26も、図3に示すものと同様である。図3では、活物質板要素24の接合面26と正極集電体21との間に位置する導電性接合層23の接合層要素25の外縁を、二点鎖線にて併せて示す。
活物質板要素24の接合面26は、接合領域261と、非接合領域262とを備える。。図3では、図の理解を容易にするために、接合領域261,262に平行斜線を付す。接合領域261は、活物質板要素24と正極集電体21との間に導電性接合層23の接合層要素25が存在する領域である。したがって、接合領域261では、活物質板要素24と正極集電体21とが接合層要素25により接合されている。非接合領域262は、接合領域261の周囲に配置される領域である。非接合領域262では、活物質板要素24と正極集電体21との間に導電性接合層23は存在していない。したがって、非接合領域262では、活物質板要素24と正極集電体21とは接合されていない。
接合領域261は、接合面26の中央部に位置する。図3に示す例では、接合領域261は、略円形の領域である。非接合領域262は、好ましくは、接合領域261の周囲を全周に亘って囲む。各接合面26では、非接合領域262の面積は、接合領域261の面積の、例えば64%〜570%であり、好ましくは64%〜400%であり、より好ましくは64%〜200%である。換言すれば、接合領域261の面積は、接合領域261および非接合領域262の合計面積(すなわち、接合面26の全面積)の、例えば15%〜61%であり、好ましくは20%〜61%であり、より好ましくは30%〜61%である。
負極3は、負極集電体31と、負極活物質層32とを備える。負極集電体31は、導電性を有するシート状の部材である。負極集電体31の上面は、負極接合層64を介して外装体6に接合されている。負極活物質層32は、炭素質材料またはリチウム吸蔵物質を含む。負極活物質層32は、負極集電体31の下面上に塗工される。負極活物質層32は、上下方向においてセパレータ4と対向する。
負極集電体31は、例えば、銅等の金属により形成される金属箔である。当該金属箔は、銅以外の様々な金属(例えば、銅、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、銀、金、クロム、鉄、スズ、鉛、タングステン、モリブデン、チタン、亜鉛、または、これらを含む合金等)により形成されてもよい。負極接合層64は、例えば、酸変性ポリオレフィン系樹脂とエポキシ系樹脂との混合樹脂により形成される。負極接合層64は、他の様々な材料により形成されてもよい。負極活物質層32では、炭素質材料は、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質をもつ難黒鉛化性炭素、または、易黒鉛化炭素等であり、リチウム吸蔵物質は、例えば、シリコン、アルミ、スズ、鉄、イリジウム、または、これらを含む合金、酸化物もしくはフッ化物等である。
負極集電体31の厚さは、例えば5μm〜25μmであり、好ましくは8μm〜20μmであり、より好ましくは8μm〜15μmである。負極活物質層32の厚さは、例えば20μm〜300μmであり、好ましくは30μm〜250μmであり、より好ましくは30μm〜150μmである。
以上に説明したように、リチウム二次電池1は、正極2と、負極3と、電解質5とを備える。電解質5は、正極2および負極3の間に介在する。正極2は、導電性を有するシート状の集電体(すなわち、正極集電体21)と、リチウム複合酸化物を含む板状セラミック焼結体である活物質板(すなわち、正極活物質板22)とを備える。正極活物質板22は、導電性接合層23を介して正極集電体21に接合される。導電性接合層23は、導電性粉末と、ポリイミドアミド樹脂を含むバインダとを含む。これにより、高温下における電解質5との反応等に起因する導電性接合層23のゲル化を抑制することができる。
また、正極活物質板22は、層状岩塩構造を有する複数の一次粒子が結合した構造を有している。当該複数の一次粒子の平均傾斜角は、0°よりも大きく、かつ、30°以下である。当該平均傾斜角は、複数の一次粒子の(003)面と正極活物質板22の主面とが成す角度の平均値である。これにより、充放電サイクルに伴う結晶格子の伸縮の際に発生する正極活物質板22の内部応力が、正極活物質板22の導電性接合層23および正極集電体21と対向する主面に加わることを抑制することができる。
このように、導電性接合層23に接触する正極活物質板22の主面を、結晶格子の伸縮の際に発生する内部応力が加わりにくい主面とし、また、電解質5との反応等による導電性接合層23のゲル化を抑制することにより、正極活物質板22と正極集電体21との接合強度の低下を抑制することができる。その結果、リチウム二次電池1の充電時および放電時における電圧の安定性を向上することができる。
上述のように、リチウム二次電池1では、正極活物質板22と正極集電体21との接合強度の低下を抑制することができるため、リチウム二次電池1の変形時に正極活物質板22が正極集電体21から脱離することを抑制することができる。したがって、リチウム二次電池1は、比較的変形しやすく曲げ荷重が加わりやすいデバイス、すなわち、シート状デバイスまたは可撓性を有するデバイスにおける電力供給源に特に適している。
リチウム二次電池1が、当該可撓性を有するデバイスの1つであるスマートカードにおける電力供給源として利用される場合、スマートカードの製造時における加工温度の高温化と、正極活物質板22の正極集電体21からの脱離抑制とを好適に両立することができる。上記スマートカードの製造時における加工とは、例えば、スマートカードのラミネーション加工である。リチウム二次電池1では、例えば、加工温度100℃〜150℃のホットラミネーション加工においても、正極活物質板22と正極集電体21との接合強度の低下を抑制することができる。
表1および表2では、導電性接合層23における導電性粉末およびバインダの重量比率、導電性接合層23における導電性粉末の重量をバインダの重量で除算した値、導電性接合層23の厚さ、活物質板要素24の気孔率、並びに、正極集電体21における導電性カーボン層の有無を変更した際の、活物質板要素24および正極集電体21の接合強度、並びに、リチウム二次電池1の電池特性を示す。
実施例1〜5,9〜11では、剥離試験において測定された剥離強度は0.25N以上であり、活物質板要素24と正極集電体21とは機械的に好適に接合されていた。また、実施例1〜5,9〜11では、電池特性を示す1C/0.5Cは75%以上であり、活物質板要素24と正極集電体21とは電気的に好適に接続されていた。
実施例6では、導電性粉末の重量比率が比較的小さいため、電気特性は少し低いが、活物質板要素24と正極集電体21とは機械的に好適に接合されていた。実施例7では、バインダの重量比率が比較的小さいため、剥離強度は少し小さいが、活物質板要素24と正極集電体21とは電気的に好適に接続されていた。実施例8では、導電性接合層23が比較的厚いため、電気特性は少し低いが、活物質板要素24と正極集電体21とは機械的に好適に接合されていた。
上記剥離試験は、ピール試験機を用いて、以下の手順にて行った。ピール試験機としては、株式会社イマダ製のフォースゲージ「ZTA−20N」および縦型電動計測スタンド「MX2−500N」を使用した。
当該剥離試験では、まず、正極集電体21に対応する集電体試験片上に、導電性接合層23を介して活物質板要素24を接合して試験片を作成した。活物質板要素24は、平面視において一辺が10mmの正方形板である。集電体試験片は、福田金属箔粉工業株式会社製の厚さ9μmのアルミニウム箔であり、平面視において10mm×30mmの矩形状である。導電性接合層23は、活物質板要素24の接合面26の中央部に略円形に塗布した。活物質板要素24は、導電性接合層23を介して、集電体試験片の長手方向の一方の端部に接合した。
続いて、試験片を金属板上に固定し、当該金属板をピール試験機にセットした。当該金属板への試験片の固定は、試験片の活物質板要素24の主面(すなわち、集電体試験片に対向する主面とは反対側の主面)を、カーボンテープ等を介して金属板に接合することにより行った。次に、ピール試験機により、集電体試験片の長手方向の他方の端部(すなわち、活物質板要素24が接合されている端部とは反対側の端部)を、金属板に垂直な方向に引っ張った。そして、集電体試験片が活物質板要素24から剥離する際の引張強度の最大値を「剥離強度」として取得した。
上述の実施例1〜3および実施例6,7からも分かるように、リチウム二次電池1では、導電性接合層23における導電性粉末の重量は、バインダの重量の50%以上かつ1000%以下であることが好ましい。これにより、リチウム二次電池1では、正極活物質板22と正極集電体21との間の導通増大と接合強度の低下抑制とを好適に両立することができる。具体的には、導電性粉末の重量をバインダの重量の50%以上とすることにより、正極活物質板22と正極集電体21との間の導通を大きくすることができ、正極活物質板22と正極集電体21とを電気的に好適に接続することができる。また、導電性粉末の重量をバインダの重量の1000%以下とすることにより、正極活物質板22と正極集電体21との接合強度を大きくすることができ、正極活物質板22と正極集電体21とを機械的に好適に接続することができる。
上述の実施例1,4,8からも分かるように、導電性接合層23の厚さは、3μm以上かつ28μm以下であることが好ましい。導電性接合層23の厚さを3μm以上とすることにより、正極活物質板22と正極集電体21との接合強度を大きくすることができる。また、導電性接合層23の厚さを28μm以下とすることにより、正極2およびリチウム二次電池1を薄型化することができる。
上述の実施例1,5,9,10からも分かるように、リチウム二次電池1では、正極活物質板22の気孔率は、25%以上かつ45%以下であることが好ましい。上述のように、当該気孔には、開気孔および閉気孔の両方が含まれており、正極活物質板22の気孔率を25%以上とすることにより、開気孔が増える。その結果、導電性接合層23の一部が正極活物質板22の開気孔に好適に進入する。そして、正極活物質板22の開気孔に進入した導電性接合層23のアンカー効果により、正極活物質板22と正極集電体21との接合強度を増大させることができる。特に、導電性接合層23における導電性粉末の重量がバインダの重量の50%以上かつ1000%以下である場合、導電性接合層23が開気孔にさらに好適に進入するため、上記接合強度をさらに増大させることができる。また、正極活物質板22の気孔率を45%以下とすることにより、リチウム二次電池1の容量を大きくすることができる。
上述の実施例1,11からも分かるように、正極集電体21の正極活物質板22に対向する主面は、導電性導電性カーボン層により被覆されていることが好ましい。これにより、正極集電体21と正極活物質板22との間の導通を増大させることができる。その結果、リチウム二次電池1の出力を増大させる(すなわち、電池特性を向上させる)ことができる。
上述のリチウム二次電池1では、様々な変更が可能である。
例えば、導電性接合層23の厚さは、3μm未満であってもよく、28μmよりも大きくてもよい。
導電性接合層23,33aの成分は、様々に変更されてよい。例えば、導電性粉末の重量は、バインダの重量の50%未満であってもよく、1000%よりも大きくてもよい。
正極活物質板22の気孔率は、25%未満であってもよく、45%よりも大きくてもよい。
正極活物質板22は、必ずしも複数の活物質板要素24に分割されている必要はなく、1個の板状セラミック焼結体であってもよい。
リチウム二次電池1は、スマートカード以外の可撓性を有するデバイス(例えば、カード型デバイス)、または、シート状デバイス(例えば、衣服等に設けられたウェアラブルデバイス、もしくは、身体貼付型デバイス)における電力供給源として利用されてもよい。また、リチウム二次電池1は、上述のデバイス以外の様々な対象物(例えば、IoTモジュール)の電力供給源として利用されてもよい。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。