以下、エンジンの排気浄化制御装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明は、エンジンの排気浄化制御装置の一例である。図1は、エンジン1の構成を例示する概略図であり、図2は、エンジン1の排気浄化制御装置の構成を例示するブロック図である。
エンジン1は、軽油を主成分とした燃料が供給されるディーゼルエンジンであって、所謂4ストロークエンジンとして構成されているとともに、四輪の自動車(車両)に搭載されている。エンジン1の出力軸であるクランクシャフト7は、不図示の変速機を介して自動車の駆動輪に連結されており、エンジン1が運転することにより、その出力が駆動輪に伝達されて自動車が走行するようになっている。
エンジン1は、2ステージ式のターボ過給機付エンジンである。すなわち、図1に示すように、エンジン1の燃焼室6へと通じる排気通路40には、燃焼室6内へ導入されるガスを過給するように構成された第1ターボ過給機51及び第2ターボ過給機52が設けられている。この排気通路40には、後述のNOx触媒41も設けられている。
以下、エンジン1の全体構成について詳細に説明する。
(1)全体構成
エンジン1は、複数のシリンダ2(図1においては1つのみを図示)が設けられたシリンダブロック3と、このシリンダブロック3の上面に設けられたシリンダヘッド4と、各シリンダ2内に挿入されたピストン5と、を有している。このピストン5は、コンロッドを介してクランクシャフト7と連結されている。
また、各ピストン5の頂面にはキャビティが形成されている。このキャビティと、シリンダ2の内壁面と、シリンダヘッド4とによって、シリンダ2毎に燃焼室6が区画されている。
シリンダヘッド4には、シリンダ2毎に、燃焼室6へと吸気を導入するための吸気ポート16と、燃焼室6から排気を導出するための排気ポート17が形成されている。吸気ポート16は燃焼室6に開口しており、その開口を開閉する吸気弁12が配設されている。同様に、排気ポート17もまた燃焼室6に開口しており、その開口を開閉する排気弁13が配設されている。
ここで、燃焼室6を成すシリンダヘッド4又はシリンダブロック3には、燃料を噴射するためのインジェクタ10が設けられている。一方、シリンダヘッド4及びシリンダブロック3のうち、インジェクタ10が設けられた一方には、燃料を暖めるためのグロープラグ11が設けられている。
この構成例においては、燃焼室6を成すシリンダヘッド4には、燃焼室6の内部へ燃料を噴射するインジェクタ10と、各シリンダ2内のガスを昇温するためのグロープラグ11とが、各シリンダ2につき1組ずつ設けられている。
図1に示す例では、インジェクタ10の先端は、燃焼室6の天井面(具体的には、シリンダヘッド4によって区画される面)から燃焼室6に臨むように配置されている。インジェクタ10の先端には複数の噴射口(噴口)が設けられており、各噴射口の開度を制御することができるように構成されている。
後述のECU100は、インジェクタ10を通じた燃料の噴射態様を制御するべく、インジェクタ10へとパルス信号(制御信号)を入力する。このパルス信号のパルス幅、入力タイミング、入力回数等を通じて、燃料の噴射態様を制御することができる。
具体的に、インジェクタ10は、主としてエンジントルクを得るために実施されるメイン噴射と、その燃焼エネルギーがエンジントルクに殆ど寄与しないポスト噴射とを実施することができる。ここで、メイン噴射とは、噴射された燃料が圧縮上死点付近から燃焼し始めるように、圧縮上死点の手前ないし近傍で燃料を噴射することである。対して、ポスト噴射とは、メイン噴射よりも遅角側のタイミング(具体的には、膨張行程中のタイミング)で燃料を噴射することである。
またグロープラグ11は、通電されることで、その通電電圧に応じて発熱する発熱部を先端に有している。図示は省略するが、この発熱部は、燃焼室6の内部に臨んでいるとともに、インジェクタ10の先端部分の近傍に位置するように配置されている。例えば、グロープラグ11の発熱部は、インジェクタ10の各噴射口から噴射される噴霧の間に位置しており、それらの噴霧とは直接接触しないようになっている。
このような配置について、図3〜図4を参照して説明する。
前述のように、インジェクタ10は多噴口型の燃料噴射弁によって構成されている。それに対して、グロープラグ11先端の発熱部は、インジェクタ10に複数の噴射口のうち、互いに隣接する2つの噴射口から延びる噴射軸A1、A2の間に配置されている。このような配置とすることで、図3に示すように、インジェクタ10の各噴射口から噴射される噴霧SPに対して、グロープラグ11が直接接触しないようになる。
また図4に示すように、インジェクタ10先端(特に、インジェクタ10の各噴射口)の高さ位置は、気筒軸方向において、グロープラグ11の先端(特に、グロープラグの発熱部)と略同じ位置とされている。
エンジン1の一側面には吸気通路20が接続されている一方、その他側面には排気通路40が接続されている。ここで、吸気通路20は、各シリンダ2の吸気ポート16に連通しており、各燃焼室6へと新気を導入する。対して、排気通路40は、各シリンダ2の排気ポート17に連通しており、各燃焼室6から既燃ガス(排気ガス)を排出する。これら吸気通路20と排気通路40には、前述の第1ターボ過給機51と第2ターボ過給機52が配設されている。
吸気通路20には、上流側から順に、エアクリーナ21、第1ターボ過給機51のコンプレッサ51a(以下、適宜、第1コンプレッサ51aという)、第2ターボ過給機52のコンプレッサ52a(以下、適宜、第2コンプレッサ52aという)、インタークーラ22、吸気シャッター弁23及びサージタンク24が設けられている。吸気シャッター弁23は、基本的には全開状態であるが、例えばエンジン1の停止時には、ショックが生じないように全閉状態になる。
吸気通路20にはまた、第2コンプレッサ52aをバイパスする吸気バイパス通路25と、これを開閉する吸気バイパス弁26とが設けられている。吸気バイパス弁26は、全閉状態と全開状態とに切り替えられる。
排気通路40には、上流側から順に、第2ターボ過給機52のタービン52b(以下、適宜、第2タービン52bという)と、第1ターボ過給機51のタービン51b(以下、適宜、第1タービン51bという)と、前述のNOx触媒41を含んで成る第1触媒43と、DPF(Diesel Particulate Filter)44と、このDPF44に対して下流側の排気通路40に尿素を噴射する尿素インジェクタ45と、この尿素インジェクタ45から噴射された尿素を用いてNOxを浄化するSCR(Selective Catalytic Reduction)触媒46と、SCR触媒46から排出された未反応のアンモニアを酸化させて浄化するスリップ触媒47とが設けられている。
第1触媒43は、NOxを浄化するNOx触媒41と、酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)42とを含む。ここで、酸化触媒42は、NOx触媒41と一体に、又は、このNOx触媒41よりも上流側の排気通路40に設ければよい。この構成例では、第1触媒43は、NOx触媒41を成す触媒材層の表面に、酸化触媒42を成す触媒材がコーティングされることで構成されている。
NOx触媒41は、排気の空燃比が理論空燃比よりも大きいリーンな状態(空気過剰率λがλ>1の状態)において排気中のNOxを吸蔵し、この吸蔵したNOxを、排気の空燃比が理論空燃比近傍である状態(λ≒1)あるいは理論空燃比よりも小さいリッチな状態(λ<1)、つまり、NOx触媒41を通過する排気が未燃のHCを多量に含む還元雰囲気下において還元する、NOx吸蔵還元型触媒(NSC:NOx Storage Catalyst)である。ここで、「排気の空燃比」という語は、排気中の酸素濃度等に基づいて推定可能な、燃焼室6内の混合気の空燃比を指す。
酸化触媒42は、炭化水素(HC)の吸着機能を有しており、当該機能によって吸着させたHCを浄化するように構成されている。具体的に、この酸化触媒42は、排気中の酸素を用いてHC、すなわち未燃燃料や一酸化炭素(CO)などを酸化して水と二酸化炭素に変化させる。ここで、酸化触媒42で生じるこの酸化反応は発熱反応であり、酸化触媒42で酸化反応が生じると排気の温度は高められる。
具体的に、酸化触媒42を成す触媒材の表面には、HCの吸着機能を有するHC吸着部42aが設けられている。HC吸着部42aは、小径かつ多数の細孔が形成されたゼオライトからなる結晶であり、冷間始動時等の低温時には、排気ガス中のHC分子がゼオライトの細孔にトラップされることにより吸着され、高温時には、吸着されたHC分子が振動してゼオライトの細孔から飛び出すことにより、放出される。一方、酸化触媒42を成す触媒材は、白金(Pt)やパラジウム(Pd)等の触媒金属からなり、所定温度に加熱されて活性化することにより、エンジン1から排出される排気ガス中のHC、COを酸化浄化するとともに、HC吸着部42aから放出されたHCをも酸化浄化する機能を備えている。
このように、酸化触媒42は、冷間始動時など、酸化触媒42が活性化しておらずHCを十分に浄化することができない時にHCを一時的に吸着し、酸化触媒42が活性化した後に吸着されているHCを放出して浄化する機能を備えている。
一方、DPF44は、排気通路40において第1触媒43の下流に位置しており、排気中の粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集する。DPF44に捕集されたPMは、高温に曝されて且つ酸素の供給を受けることで燃焼し、DPF44から除去される。PMが燃焼除去される温度は600℃程度と比較的高温である。したがって、PMを燃焼させてDPF44から除去するためには、DPF44の温度を比較的高温にする必要がある。
また、SCR触媒46は、尿素インジェクタ45から噴射された尿素を加水分解してアンモニアを生成し、このアンモニアを排気中のNOxと反応(還元)させて浄化する。
排気通路40にはまた、第2タービン52bをバイパスする排気バイパス通路48と、これを開閉する排気バイパス弁49と、第1タービン51bをバイパスするウェイストゲート通路53と、これを開閉するウェイストゲート弁54とが設けられている。これら排気バイパス弁49とウェイストゲート弁54とは、それぞれ全閉状態と全開状態とに切り替えられるとともに、それらの状態間の任意の開度に変更される。
エンジン1はさらに、排気の一部を吸気に還流させるEGR装置55を有する。このEGR装置55は、排気通路40のうち排気バイパス通路48の上流端よりも上流側の部分と、吸気通路20のうち吸気シャッター弁23及びサージタンク24の間の部分とを接続するEGR通路56と、これを開閉する第1EGR弁57と、EGR通路56を通過する排気を冷却するEGRクーラ58とを有する。また、EGR装置55は、EGRクーラ58をバイパスするEGRクーラバイパス通路59と、これを開閉する第2EGR弁60とを有する。
次に、エンジン1の制御系について詳細に説明する。
(2)制御系
エンジンの排気浄化制御装置は、エンジン1を運転するためのECU(Engine Control Unit)100を備えている。ECU100は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラである。ECU100は、プログラムを実行する中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)と、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)により構成されてプログラム及びデータを格納するメモリと、電気信号の入出力をする入出力バスと、を備えている。ECU100は、コントローラの一例である。
ECU100には、図2に示すように、各種のセンサSW1〜SW9が接続されている。センサSW1〜SW9は、検知信号をECU100へと出力する。そうしたセンサには、以下のものが含まれる。
すなわち、エンジン1に取り付けられかつ、その冷却水の温度を検知する水温センサSW1、吸気通路20におけるエアクリーナ21の下流に配置された、吸気通路20を流れる新気の流量を検知するエアフローセンサSW2、及び、新気の温度を検知する吸気温センサSW3、エンジン1に取り付けられかつ、クランクシャフト7の回転角を検知するクランク角センサSW4、アクセルペダル機構(不図示)に取り付けられかつ、アクセルペダルの操作量に対応したアクセル開度を検知するアクセル開度センサSW5、排気通路40に設けられかつ、排気ガス中の酸素濃度を検知するO2センサSW6、車両の速度(車速)を検知する車速センサSW7、サージタンク24に取り付けられかつ、燃焼室6へと導入される空気の圧力を検知する過給圧センサSW8、並びに、排気通路40におけるDPF44とSCR触媒46との間、及び、同通路におけるSCR触媒46とスリップ触媒47との間にそれぞれ設けられ、排気ガス中のNOx濃度を検知するNOxセンサSW9である。ここで、O2センサSW6は、排気通路40を流れる排気ガス中の酸素濃度を検出するという点で、「酸素センサ」を例示している。
ECU100は、これらの検知信号に基づいてエンジン1や車両の運転状態を判断するとともに、各デバイスの制御量を計算する。ECU100は、計算をした制御量に係る制御信号を、インジェクタ10、グロープラグ11、吸気シャッター弁23、吸気バイパス弁26、排気バイパス弁49、ウェイストゲート弁54、第1EGR弁57、及び、第2EGR弁60へ出力する。
例えばECU100は、過給圧センサSW8による検知信号に基づいて、検知した時点での実際の過給圧(以下、「実過給圧」ともいう)を取得する。それと並行して、ECU100は、他のセンサからの検知信号に基づいて、過給圧の目標値(以下、「目標過給圧」ともいう)を算出する。そして、ECU100は、実過給圧が目標過給圧となるように、吸気バイパス弁26、排気バイパス弁49、ウェイストゲート弁54等の開度を調整する。
そうして、ECU100は、吸気バイパス弁26、排気バイパス弁49及びウェイストゲート弁54等の開度調整を通じて、第1ターボ過給機51と第2ターボ過給機52の作動を制御する。
このECU100は、第1触媒43やDPF44など、排気通路40に設けられた各種装置を浄化・再生するために、DeNOx制御(NOx触媒再生制御)をはじめとする各種制御を実行するようになっている。
一例として、NOx触媒41に吸蔵されたNOx(以下、「吸蔵NOx」ともいう)を還元させてNOx触媒41から放出(離脱)させるための制御であるDeNOx制御について簡単に説明する。
前記のように、NOx触媒41では、混合気の空燃比が理論空燃比近傍の状態(λ≒1)あるいは理論空燃比よりも小さいリッチな状態(λ<1)において、吸蔵NOxが還元される。したがって、吸蔵NOxを還元するためには、混合気の空燃比を通常運転時(後述の通常制御の実施時)よりも低減させる必要がある。
そこで、ECU100は、所定条件が成立したとき(この構成例では、NOx触媒41におけるNOxの吸蔵量が所定量以上となったとき)には、エンジン1の運転状態に対応した燃料噴射(メイン噴射)の後に燃料の追加噴射を行うことによって、その所定条件が成立する前よりも空燃比をリッチ化させるDeNOx制御を実行するよう、インジェクタ10へ制御信号を出力する。
具体的に、この構成例では、ECU100は、追加噴射としてのポスト噴射を実施して混合気の空燃比を低減させることにより、吸蔵NOxを還元させる。つまり、ECU100は、インジェクタ10に対し、メイン噴射に加えてポスト噴射を実行させる。そうしたDeNOx制御においては、例えば、混合気の空気過剰率λをλ=0.94〜1.06程度にする。そうすることで、NOx触媒41に吸蔵されたNOxが還元されることになる。
以下、燃料噴射制御の基本的な内容について説明した後、DeNOx制御と、そのDeNOx制御に際して実行されるグロープラグ11の制御(以下、「グロープラグ制御」ともいう)等の詳細について順番に説明をする。
−燃料噴射制御−
最初に、この構成例における燃料噴射制御について説明する。この燃料噴射制御は、車両のイグニッションがオンにされてECU100に電源が投入された場合に開始され、所定の周期で繰り返し実行される。
まず、ECU100は、車両の運転状態を判断する。具体的に、ECU100は、少なくとも、アクセル開度センサSW5が検知したアクセル開度、車速センサSW7が検知した車速、クランク角センサSW4が検知したクランク角、及び、車両の変速機において現在設定されているギヤ段を取得する。
次いで、ECU100は、判断された車両の運転状態に基づいて、車両の目標加速度を決定する。具体的に、ECU100のメモリなどには、種々の車速及び種々のギヤ段について規定された加速度特性マップが予め記憶されている。ECU100は、そうした加速度特性マップの中から、現在の車速及びギヤ段に対応する加速度特性マップを選択し、選択されたマップを参照することにより、現在のアクセル開度に対応する目標加速度を決定する。
次いで、ECU100は、決定された目標加速度を実現するための、エンジン1の目標トルクを決定する。この場合、ECU100は、現在の車速、ギヤ段、路面勾配、路面μなどに基づき、エンジン1が出力可能なトルクの範囲内で、目標トルクを決定する。
次いで、ECU100は、決定された目標トルクをエンジン1から出力させるべく、当該目標トルク及びエンジン回転数に基づいて、インジェクタ10から噴射させるべき燃料噴射量を算出する。この燃料噴射量は、メイン噴射において噴射させるべき燃料噴射量(メイン噴射量)である。
他方で、前述した処理と並行して、ECU100は、エンジン1の運転状態に応じた燃料の噴射パターンを設定する。具体的に、ECU100は、前述のDeNOx制御を行う場合には、メイン噴射に加えて少なくともポスト噴射を行うような燃料の噴射パターンを設定する。この場合、ECU100は、ポスト噴射において噴射させるべき燃料噴射量(ポスト噴射量)や、その噴射タイミング(ポスト噴射タイミング)なども決定する。これらの詳細については後述する。
その後、ECU100は、算出されたメイン噴射量および設定された噴射パターンを実現するよう、インジェクタ10へと制御信号を出力する。ここで、ポスト噴射を行う場合には、前述のポスト噴射量及びポスト噴射タイミングを実現するような制御信号が出力される。つまり、ECU100は、所望の噴射パターンにおいて、所望の量の燃料が噴射されるようにインジェクタ10を制御する。
次に、DeNOx制御時に噴射されるべきポスト噴射量(以下、「DeNOx用ポスト噴射量」と呼称する)の算出方法について図5を用いて説明する。この算出方法は、ECU100によって所定の周期で繰り返し実行されるとともに、前述の燃料噴射制御と並行して実行される。つまり、燃料噴射制御が行われている最中に、DeNOx用ポスト噴射量が随時算出される。
まず、ECU100は、エンジン1の運転状態を判断する(ステップS101)。具体的に、ECU100は、少なくとも、エアフローセンサSW2によって検知された吸入空気量(新気の流量)、O2センサSW6によって検知された排気ガス中の酸素濃度、前記の燃料噴射制御において算出されたメイン噴射量を取得する。加えて、ECU100は、所定のモデル等を用いて求められた、EGR装置55によって吸気系(具体的には、吸気通路20)へと還流される排気ガス量(EGRガス量)も取得する。
次いで、ECU100は、取得された新気量及びEGRガス量に基づき、エンジン1に導入される空気量(つまり充填量)を算出する(ステップS102)。そして、ECU100は、算出された充填量から、エンジン1に導入される空気の酸素濃度を算出する(ステップS103)。
次いで、ECU100は、インジェクタ10がメイン噴射に加えてポスト噴射を行うよう、インジェクタ10に対して制御信号を出力する。こうした制御を行うのに先立って、ECU100は、NOx触媒41に吸蔵されたNOxを還元させるために、混合気の空燃比を理論空燃比近傍あるいは理論空燃比以下の目標空燃比にするのに必要なポスト噴射量(DeNOx用ポスト噴射量)を算出(推定)する(ステップS104)。
つまり、ECU100は、目標空燃比を実現するために、メイン噴射量に加えてどれだけのポスト噴射量を噴射させるべきかを決定する。この場合、ECU100は、酸素濃度の検出値(O2センサSW6によって検知された酸素濃度)と、充填量に基づいた酸素濃度の算出値(推定値)との差を考慮して、目標空燃比を実現するためのDeNO用ポスト噴射量を算出する。具体的に、ECU100は、酸素濃度の検出値と算出値との差に応じてフィードバック処理を適宜行うことにより、目標空燃比を実現するために必要なDeNOx用ポスト噴射量を算出する。
このようにDeNOx用ポスト噴射量を算出することで、DeNOx制御におけるポスト噴射によって目標空燃比を精度良く実現し、ひいてはNOx触媒41に吸蔵されたNOxをより確実に還元させることができる。
(2−1)通常制御
まず、DeNOx制御を実施しない通常の定常運転時に実施される制御(通常制御)について説明する。
この通施制御では、燃費性能を高めるべく、燃焼室6内の混合気の空燃比が、理論空燃比よりもリーンな状態(λ>1)にされる。例えば、通常制御では、混合気の空気過剰率λは、λ=1.7程度とされる。また、この通常制御では、ポスト噴射は制限されてメイン噴射のみが実施される。また、通常制御では、グロープラグ11の作動は停止される。また、通常制御では、第1EGR弁57、第2EGR弁60、吸気バイパス弁26、排気バイパス弁49、ウェイストゲート弁54は、それぞれ、エンジン1の運転状態、例えば、エンジン回転数とエンジン負荷等に応じて、EGR率が適切な値になるように制御される。前述の如く、過給圧についても、エンジン1の運転状態に応じた目標過給圧を実現するような制御が実行される。
(2−2)DeNOx制御
次に、この構成例におけるDeNOx制御について説明する。
ECU100は、DeNOx制御として、エンジン負荷が中負荷域(図6の第2領域R12を参照)のときに実施されるアクティブDeNOx制御と、エンジン負荷が上限付近のとき(図6の第1領域R11を参照)に実施されるパッシブDeNOx制御とを使い分けることができる。
例えば、ECU100は、アクティブDeNOx制御として、NOx触媒41におけるNOxの吸蔵量(以下、単に「NOx吸蔵量」ともいう)が所定量以上の場合(典型的にはNOx吸蔵量が限界付近にある場合)に、ポスト噴射により噴射された燃料が燃焼室6内で燃焼するような噴射タイミングで、インジェクタ10からのポスト噴射を継続的に実行させる。こうすることで、多量の吸蔵NOxを強制的に還元し、ひいては、NOx触媒41におけるNOxの浄化性能を確保することができる。
アクティブDeNOx制御におけるポスト噴射の噴射タイミング(ポスト噴射タイミング)は、予め設定されており、例えば、膨張行程の前半であって圧縮上死点後30〜70°CAの間の時期に設定されている。こうすることで、ポスト噴射により噴射された燃料が、そのまま未燃燃料(つまり、HC)として排出されることや、ポスト噴射された燃料によるオイル希釈を抑制するようにしている。
さらに、この構成例においては、ポスト噴射により噴射された燃料の燃焼を促進するべく、アクティブDeNOx制御の最中、グロープラグ11を通電して混合気を加熱する。当該通電に関連した制御(前述のグロープラグ制御)については後述する。
一方、ECU100は、パッシブDeNOx制御として、NOx吸蔵量が所定量未満の場合であっても、車両の加速により空燃比がリッチ側に変化するときに、ポスト噴射により噴射された燃料が燃焼室6内では燃焼しないような噴射タイミングで、インジェクタ10からのポスト噴射を実行させる。パッシブDeNOx制御においては、車両の加速時のように、メイン噴射量が増加して混合気の空燃比が低下するような状況に乗じてポスト噴射が実行されるため、非加速時のような状況に乗じてポスト噴射が実行される場合と比較して、目標空燃比を実現するためのポスト噴射量が相対的に少なくなる。これにより、吸蔵NOxを強制的に還元しつつも、ポスト噴射による燃費悪化を抑制することが可能になる。
パッシブDeNOx制御におけるポスト噴射の噴射タイミング(ポスト噴射タイミング)は、少なくともアクティブDeNOx制御におけるポスト噴射の噴射タイミングよりも遅角側に設定されている。例えば、パッシブDeNOx制御におけるポスト噴射の噴射タイミングは、膨張行程の後半であって圧縮上死点後110°CA付近の時期に設定可能である。こうすることで、ポスト噴射により噴射された燃料の燃焼に起因した、スモーク(煤)の発生を抑制することができる。
ここで、図4を参照して、パッシブDeNOx制御及びアクティブDeNOx制御のそれぞれを実行するエンジン1の運転領域について説明する。図4の横軸はエンジン回転数を示しており、同図の縦軸はエンジン負荷を示している。また、図4において、曲線L1は、エンジン1の最大トルク線を示している。
この構成例では、ECU100は、エンジン負荷とエンジン回転数が図4に示す第2領域R12に含まれるときに、アクティブDeNOx制御を実行する。ここで、第2領域R12は、エンジン負荷が第1基準負荷Lo1以上で第2基準負荷Lo2(>第1基準負荷Lo1)未満であり、かつ、エンジン回転数が第1基準回転数N1以上で第2基準回転数(>第1基準回転数N1)未満の運転領域である。
一方、ECU100は、エンジン負荷とエンジン回転数が図4に示す第1領域R11に含まれるときに、パッシブDeNOx制御を実行する。ここで、第1領域R11は、第2領域R12よりもエンジン負荷が高い領域であって、エンジン負荷が所定の第3基準負荷(>第2基準負荷Lo2)以上となる領域である。
前記のように、第1領域R11と第2領域R12とでDeNOx制御の内容を使い分けているのは、次の理由による。
エンジン負荷が低い、あるいは、エンジン負荷が比較的高いがエンジン回転数が低い運転領域では、排気の温度が低い。それに伴って、NOx触媒41の温度が吸蔵NOxを還元できる温度よりも低くなり易い。そこで、この構成例では、そうした運転領域ではDeNOx制御を制限する。
また、前記のようにDeNOx制御ではポスト噴射を実施するが、ポスト噴射された燃料が燃焼せずにそのまま排気通路40へ排出されると、この未燃燃料に起因するデポジットによってEGRクーラ58等が閉塞する虞がある。そのため、ポスト噴射により噴射された燃料は、燃焼室6内で燃焼させるのが好ましい。しかしながら、エンジン負荷が高い、あるいは、エンジン負荷は比較的低いがエンジン回転数が高い領域では、燃焼室6内の温度が高いこと、あるいは、1クランク角度あたりの時間が短いことに伴って、燃焼室6内のガスが排出されるまでの間に、ポスト噴射により噴射された燃料と空気とを十分に混合させることが難しい場合がある。その場合、ポスト噴射により噴射された燃料を燃焼室6内で十分に燃焼させることができない虞がある。またさらに、燃料と空気との混合が不十分であることに起因して、煤が増大する虞がある。したがって、このような運転領域では、基本的にDeNOx制御を停止する。
ただし、エンジン負荷が非常に高い第1領域R11では、メイン噴射量が多いことに伴って、通常運転時であっても混合気の空燃比が小さく抑えられる。そのため、第1領域R11では、吸蔵NOxを還元するために必要なポスト噴射量を小さくして、未燃の燃料が排気通路40へ排出されることに起因した影響を小さく抑えることができる。
そこで、ECU100は、エンジン負荷およびエンジン回転数のいずれもが低すぎず、かつ、高すぎない第2領域R12では、ポスト噴射された燃料を燃焼室6内で燃焼させるアクティブDeNOx制御を実施する。一方、ECU100は、第1領域R11では、ポスト噴射された燃料を燃焼室6内で燃焼させないパッシブDeNOx制御を実施する。なお、第1領域R11は、排気の温度が十分に高く、酸化触媒42が十分に活性化する領域である。そのため、排気通路40に排出された未燃燃料は、この酸化触媒42によって浄化される。
また、DeNOx制御を停止することとした運転領域のうち、特に第2領域R12よりも高負荷側、又は、高回転側の領域(第1領域R11よりも低負荷側の領域R13)では、SCR触媒46によるNOx浄化性能が十分に確保されているので、DeNOx制御を実行せずとも、車両からのNOxの排出を確実に防止することができる。
SCR触媒46によってNOxを浄化する領域R13よりも更に高負荷側の第1領域R11では、排気ガス量が大きくなり、SCR触媒46ではNOxを浄化しきれなくなるものの、前述の如くパッシブDeNOx制御を実行することで、NOx触媒41によってNOxを浄化することができる。
ここで、エンジン1の運転状態が、図4中の矢印に示すように変化したときの制御内容について具体的に説明する。まず、エンジン1の運転状態が第2領域R12に入ると(符号A12を参照)、ECU100は、アクティブDeNOx制御を実行する。そして、エンジン1の運転状態が第2領域R12から外れると(符号A13を参照)、ECU100は、アクティブDeNOx制御を一旦中止する。このときには、SCR触媒46がNOxを浄化することになる。そして、エンジン1の運転状態が第2領域R12に再度入ると(符号A14を参照)、ECU100は、アクティブDeNOx制御を再開する。こうすることで、NOx触媒41に吸蔵されたNOxが略ゼロに低下するまで、アクティブDeNOx制御を終了させないようにする。
次に、この構成例においてパッシブDeNOx制御、又は、アクティブDeNOx制御を行う温度範囲について説明する。一般に、NOx触媒41は、比較的低温域においてNOxの浄化性能を発揮する一方、SCR触媒46は、比較的高温域、具体的にはNOx触媒41がNOxの浄化性能を発揮する温度域よりも高い温度域において、NOxの浄化性能を発揮する。
この構成例においては、エンジン1の運転状態が、仮に第1運転領域R1にあるときであっても、SCR触媒46の温度がNOxを浄化可能な温度にまで高められているときには、SCR触媒46によってNOxを浄化することができるため、アクティブDeNOx制御を実行しない。こうすることで、DeNOx制御の実行に起因する燃費の悪化を抑制することができる。
具体的に、ECU100は、SCR触媒46の温度(以下、「SCR温度」と呼称する)が、所定のSCR判定温度未満である場合にのみ、アクティブDeNOx制御の実行を許容し、SCR温度がSCR判定温度以上である場合には、アクティブDeNOx制御の実行を禁止する。ここで、「SCR判定温度」とは、NOxを浄化可能な温度範囲(SCR触媒46の温度範囲)の下限値付近に設定される判定値を指す。
−アクティブDeNOxフラグの決定に関連した処理−
ここで、この構成例においてアクティブDeNOx制御の実行フラグ(アクティブDeNOxフラグ)を決定するための処理について、図7のフローチャートを用いて説明する。図7に示すフローは、ECU100によって所定の周期で繰り返し実行されるとともに、前述の燃料噴射制御や、DeNOx用ポスト噴射量を算出する処理などと並行して実行される。
まずステップS701では、ECU100は、各種センサSW1〜SW9から出力された検知信号に基づいて各種情報を取得して、エンジン1及び車両の運転状態を判断する。このステップS701において、ECU100は、少なくとも、エンジン負荷と、エンジン回転数と、NOx触媒温度と、SCR温度と、NOx吸蔵量を取得する。
具体的に、NOx触媒温度は、例えば、NOx触媒41の直上流側に設けられた第1の排気温度センサ(不図示)の検知信号に基づいて推定される。そうした検知信号に加えて、NOx触媒41とDPF44の間に設けられた第2の排気温度センサ(不図示)の検知信号を用いてもよい。同様に、SCR温度は、SCR触媒46の直上流側に設けられた、第3の排気温度センサ(不図示)の検知信号に基づいて推定することができる。
また、NOx吸蔵量は、例えば、エンジン1の運転状態に基づいて推定された、排気ガス中に含まれるNOxの量と、NOxセンサSW9の検出値との差分の累積値に基づいて推定することができる。
次いでステップS702では、ECU100は、ステップS701において取得されたSCR温度が、所定のSCR判定値T1未満であるか否かを判定する。ここで、SCR温度がSCR判定値T1未満である場合(ステップS702:YES)、制御プロセスはステップS703へと進む。対して、SCR温度がSCR判定値T1以上である場合(ステップS702:NO)、制御プロセスはステップS705へ進む。後者の場合には、排気ガス中のNOxを、SCR触媒46によって適切に浄化させることができるので、ECU100は、アクティブDeNOx制御の実行を制限する。具体的に、ECU100は、ステップS705においてアクティブDeNOxフラグを「0」に設定し、制御プロセスを終了する。
次いでステップS703では、ECU100は、ステップS701において取得されたNOx吸蔵量が所定のDeNOx判定値以上であるか否かを判定する。ここで、DeNOx判定値は、NO吸蔵量の限界値よりも或る程度低い値に設定されている。ステップS703において、NOx吸蔵量がDeNOx判定値以上であると判定された場合(ステップS703:YES)、NOx触媒41を浄化する必要有りとみなすことができるため、制御プロセスは、ステップS704へと進む。これに対して、NOx吸蔵量がDeNOx判定値未満の場合(ステップS703:NO)、NOx触媒41を浄化する必要無しとみなすことができるため、制御プロセスは、前述のステップS705へ進む。
ステップS704において、ECU100は、アクティブDeNOx制御の実行を許容する。具体的に、ECU100は、アクティブDeNOxフラグを「1」に設定し、制御プロセスを終了する。
−アクティブDeNOx制御の具体的な内容−
次に、アクティブDeNOx制御の具体的な内容について、図8のフローチャートを用いて説明する。図8に示すフローは、ECU100によって所定の周期で繰り返し実行されるとともに、前述の燃料噴射制御、DeNOx用ポスト噴射量を算出する処理、及び、図7に示したフローなどと並行して実行される。
まずステップS801では、ECU100は、各種センサSW1〜SW9から出力された検知信号に基づいて各種情報を取得して、エンジン1及び車両の運転状態を判断する。このステップS801において、ECU100は、少なくとも、エンジン負荷と、エンジン回転数と、NOx触媒温度と、SCR温度と、NOx吸蔵量と、図5に示す制御プロセスに従って設定されたDeNOx用ポスト噴射量と、図7に示す制御プロセスに従って設定されたアクティブDeNOxフラグの値を取得する。
次いでステップS802では、ECU100は、ステップS801で取得されたアクティブDeNOxフラグが「1」であるか否かを判定する。つまり、ECU100は、アクティブDeNOx制御の実行が許容されているのか、或いは、同制御が制限されているのかを判定する。このステップS802において、アクティブDeNOxフラグが「1」であると判定された場合(ステップS802:YES)、アクティブDeNOx制御を実行するべく、制御プロセスはステップS803へ進む。対して、同フラグが「0」である場合(ステップS801:NO)、アクティブDeNOx制御を実行することなくリターンする。
次いでステップS803では、ECU100は、エンジンの運転状態(具体的には、エンジン負荷とエンジン回転数)が第2領域R12(図6を参照)に含まれているか否かを判定する。このステップS803において、エンジン1の運転状態が第2領域R12に含まれていると判定された場合(ステップS803:YES)、制御プロセスはステップS805へ進む。これに対して、エンジン1の運転状態が第2領域R12に含まれていない場合(ステップS803:NO)、制御プロセスはステップS804へ進む。
ステップS804では、ECU100は、アクティブDeNOxを実行することなく、ポスト噴射を含まない通常の燃料噴射制御を行ってリターンする(ステップS804)。この場合、実際には、ECU100は、このステップS804の処理を、前述の燃料噴射制御において実行する。そして、制御プロセスはステップS803へ戻り、ステップS803に係る判定を再度実行する。
つまり、ECU100は、アクティブDeNOxフラグが「1」である場合には、エンジン1の運転状態が第2領域R12に含まれていない間は、通常の燃料噴射制御を行うようにする一方、エンジン1の運転状態が第2領域R12に含まれるようになると、通常の燃料噴射制御からアクティブDeNOx制御における燃料噴射制御へと切り替えるようになっている。例えばECU100は、アクティブDeNOx制御における燃料噴射制御中にエンジン1の運転状態が第2領域R12から外れると、当該燃料噴射制御を中断して通常の燃料噴射制御を行い、この後に、エンジン1の運転状態が第2領域R12に入ると、アクティブDeNOx制御における燃料噴射制御を再開する。
次いでステップS805では、ECU100は、グロープラグ制御を実行する。具体的に、ECU100は、該ECU100から出力される制御信号を通じてグロープラグ11へ通電するとともに、その通電を開始してから所定時間Tgが経過したか否かを判定する、つまりグロープラグ11の通電時間が所定時間Tgに達したか否かを判定する。またステップS805で用いる所定時間Tgは、例えば、グロープラグ11が所望の温度に達するのに要する通電時間に基づき設定される。このステップS805において、グロープラグ11の通電時間が所定時間Tgに達していると判定された場合(ステップS805:Yes)、制御プロセスはステップS806へ進む。これに対して、グロープラグ11の通電時間が所定時間Tgに達していない場合(ステップS805:No)、制御プロセスはステップS803に戻る。この場合には、グロープラグ11の通電時間が所定時間Tgに達するまで待機することになる。
次いでステップS806では、ECU100は、アクティブDeNOx制御において適用されるポスト噴射の噴射タイミング(ポスト噴射タイミング)を設定する。前述のように、ポスト噴射タイミングは、ポスト噴射により噴射された燃料が燃焼室6内で燃焼するように設定される。
次いでステップS807では、ECU100は、図8に示す制御プロセスに基づいて、目標空燃比を実現するように、DeNOx用ポスト噴射量をフィードバック制御する。ECU100は、そのフィードバック制御と並行して、設定されたポスト噴射タイミングと、DeNOx用ポスト噴射量とに基づいたポスト噴射を実施する。
ステップS807の後、制御プロセスはステップS808へ進む。このステップS808では、ECU100は、NOx触媒41におけるNOx吸蔵量が実質的にゼロになったか否かを判定する。このステップS808において、NOx吸蔵量が実質的にゼロになったと判定された場合(ステップS808:YES)、制御プロセスはリターンされる。これに対して、NOx吸蔵量が実質的にゼロになったと判定されなかった場合(ステップS808:NO)、制御プロセスはステップS803へ戻る。つまり、ECU100は、NOx吸蔵量が実質的にゼロに至るまで、アクティブDeNOx制御を継続する。
特に、ECU100は、アクティブDeNOx制御中にステップS803に示す条件が成立しなくなって、アクティブDeNOx制御を中断したとしても、そうした条件が再び成立したときには、アクティブDeNOxフラグの値が「1」である限りアクティブDeNOx制御を可及的速やかに再開する。そうして、NOx吸蔵量をゼロまで減少させる。
ところで、前述のステップS805に示すように、ECU100は、アクティブDeNOx制御に際して、グロープラグ11へ通電するようになっている。これにより、ポスト噴射によって噴射された燃料を暖めて、ひいては燃焼を補助することが考えられる。
しかし、単にグロープラグ11へ通電するだけでは、ポスト噴射によって噴射された燃料が十分に燃焼せず、未燃の燃料が生じる可能性がある。その対策としては、ポスト噴射を行うタイミングを進角させることが考えられるものの、単に進角させるだけでは、エンジントルクが余分に発生してしまい、トルク変動に起因して乗員に違和感を与える可能性がある。
そこで、ECU100はさらに、前記のアクティブDeNOx制御に際して、グロープラグ11への通電を開始してから所定時間Tg経過後にポスト噴射を開始するとともに、グロープラグ11への通電電圧を、エンジン回転数が高いときには、低いときよりも高く設定する。
以下、グロープラグ11への通電電圧を設定するための処理について詳細に説明する。
−通電電圧の設定に関連した処理−
図9に示すフローは、グロープラグ11への通電電圧を設定するための処理の例示であり、ECU100によって、図8のステップS805において実行されるようになっている。すなわち、以下の説明は、前述のステップS805の内容を、より詳細に説明するものである。
まずステップS901では、ECU100は、各種センサSW1〜SW9から出力された検知信号に基づいて各種情報を取得して、エンジン1及び車両の運転状態を判断する。このステップS901において、ECU100は、少なくとも、エンジン負荷と、エンジン回転数と、エンジン冷却水の温度(エンジン水温)と、外気の温度とを取得する。ここでECU100は、例えば、吸気温センサSW3によって検知された新気の温度を外気の温度とみなしてもよい。
なお、ステップS901は必須ではなく、例えば、図8のステップS801において、各種情報を一括して取得してもよい。
次いでステップS902では、ECU100は、エンジン水温が所定の水温判定値以上であるか否かを判定する。この判定がYESであった場合、ECU100は、エンジン1が十分に暖機していると判断してステップS903へ進む。この場合、ECU100は、該ECU100から出力される制御信号を通じて、グロープラグ11へと第2電圧を通電させる。後述の如く、第2電圧は固定値ではなく、エンジン1の運転状態等に応じて設定変更されるようになっている。
一方、ECU100は、ステップS902に示す判定がNOであった場合には、エンジン1が冷間状態にあるものと判断して、ステップS907へ進む。この場合、燃料の着火性をより十分に確保することが求められるため、ECU100は、グロープラグ11への通電電圧を、前述の第2電圧よりも相対的に高い第1電圧に設定する。
ステップS903では、ECU100は、エンジン1が暖機状態にあるときにアクティブDeNOx制御をするのに適した通電電圧(以下、「第2電圧」ともいう)を決定する。
具体的に、このステップS903では、ECU100はまず、エンジン1の運転状態が、そもそもグロープラグ11への通電に適した状態にあるか否かを判定する。
詳しくは、ECU100には、エンジン回転数に応じたメイン噴射量の閾値(以下、「メイン噴射量閾値」ともいう)が予め記憶されている。メイン噴射量閾値(QSEL)は、図10(a)〜(c)各々の縦軸に示されている。同図に示すように、メイン噴射量閾値は、エンジン回転数に問わず一定であり且つ、外気温と、エンジン水温とに応じて増減するようになっている。なお、メイン噴射量閾値は、エンジン回転数が大きいときには、当該エンジン回転数が小さいときよりも大きい、としてもよい。
さらに詳しくは、図10の(a)〜(c)の各図に示すように、メイン噴射量閾値は、エンジン水温が高いときには、それが低いときよりも小さく設定されるようになっている。それと同時に、メイン噴射量閾値は、外気温が高いときには、それが低いときよりも小さく設定されるようになっている。
このステップS903において、ECU100は、前述の燃料噴射制御によって決定されたインジェクタ10による燃料の噴射量(特に、メイン噴射量)がメイン噴射量閾値未満の場合(ステップS903:YES)にはグロープラグ11への通電を許容する。すなわち、メイン噴射量がメイン噴射量閾値以上のときのように、メイン噴射によって相対的に多量の燃料が噴射される場合(ステップS903:NO)には、グロープラグ11へと通電せずとも、燃料の着火性は確保可能と考えられる。そこで、そうした場合には、グロープラグ11への通電を許容せずに制御プロセスを終了する。これにより、グロープラグ11の作動に要する電力を節約したり、グロープラグ11の高寿命化を実現したりする上で有利になる。
また、外気温が高いときや、エンジン水温が高いときには、グロープラグ11を用いずとも、燃料の着火性を十分に確保することができると考えられる。よって、そうした状況下においては、メイン噴射量閾値を低く設定する。これにより、グロープラグ11へ通電する機会を低減し、ひいては、その消費電力を節約したり、グロープラグ11の高寿命化を実現したりする上で有利になる。
次いでステップS904において、ECU100は、エンジン回転数に基づいて、第2電圧の大きさを設定する。
詳しくは、ECU100には、エンジン回転数に応じた第2電圧(グロー印加電圧)の大きさが予め記憶されている。この第2電圧は、図11(a)〜(c)各々の縦軸に示されている。同図に示すように、第2電圧は、エンジン回転数が大きいときには、それが小さいときよりも高く設定される。この第2電圧は、前述のメイン噴射量閾値と同様に、外気温と、エンジン負荷とに応じて増減するようになっている。
さらに詳しくは、図11の(a)〜(c)の各図に示すように、第2電圧は、エンジン負荷が大きいときには、それが小さいときと比較して低く設定されるようになっている。すなわち、エンジン負荷が大きいときには、それが小さいときと比較して、メイン噴射によって相対的に多量の燃料が噴射される。このときには、グロープラグ11への通電電圧を過度に高くせずとも、燃料の着火性を確保することができる。そこで、そうした場合には、グロープラグ11への通電電圧、つまり第2電圧を低く設定する。これにより、グロープラグ11の作動に要する電力を節約したり、グロープラグ11の高寿命化を実現したりする上で有利になる。
また、図11の(a)〜(c)の各図に示すように、第2電圧は、外気温が高いときには、それが低いときと比較して、若干、低く設定されるようになっている。すなわち、外気温が高いときには、それが低いときと比較して、エンジン1の内部は相対的に暖かくなるため、ポスト噴射によって噴射された燃料は、着火し易くなる。このときには、グロープラグ11への通電電圧を過度に高くせずとも、燃料の着火性は確保可能と考えられる。そこで、そうした場合には、グロープラグ11への通電電圧、つまり第2電圧を低く設定する。これにより、グロープラグ11の作動に要する電力を節約したり、グロープラグ11の高寿命化を実現したりする上で有利になる。
ただし、図11の(a)〜(c)の比較から見て取れるように、エンジン負荷が高いときには、外気温が大きく変化したとしても、第2電圧の大きさは、エンジン負荷が低いときほど増減しないようになっている。また、外気温が低いときは、それが高いときと比較して、エンジン回転数に応じて、第2電圧が相対的に大きく増減するようになっている。
なお、第2電圧の大きさは、一律、第1電圧よりも小さく設定されるようになっている。すなわち、グロープラグ11へと第1電圧を通電する状況は、エンジン1が冷間状態にあるため、燃料の着火性が相対的に悪いと考えられる。対して、グロープラグ11へと第2電圧を通電するような状況は、少なくともエンジン1は暖機状態にあるため、第1電圧より小さく設定しても十分となる。
ステップS904から続くステップS905において、ECU100は、グロープラグ11への通電を開始する。このときの通電時間は、前述の所定時間Tgとなる。前記の説明を補足すると、グロープラグ11へと通電を開始するタイミングは、燃焼室6へと噴射された燃料の着火時期が一定になるように決定される。加えて、前記の所定時間Tgは、エンジン1の運転状態に因らない固定値とされている。所定時間Tgを固定値とすると、目標トルクに基づいてエンジン1を制御するのが容易になる。
ステップS905から続くステップS906において、ECU100は、グロープラグ11への通電を開始してから、前記所定時間Tgが経過したか否かを判定する。この判定がYESの場合には、図9に示す制御プロセスを終了し、ポスト噴射の実施など、図8のステップS805から続く処理を実行する。その一方で、ステップS906の判定がNOの場合には、ステップS902へ戻る。つまり後者の場合、ECU100は、グロープラグ11へと第1電圧及び第2電圧のうちのいずれを通電するべきかを決定するための処理へと戻るようになっている。
(2−3)制御例
次に、図12を参照して、ECU100による制御(特に、アクティブDeNOx制御と、グロープラグ制御)の具体例について説明する。図12は、この構成例においてアクティブDeNOx制御を実行するときの、種々のパラメータの変化を例示するタイムチャートである。
図12では、時刻t1から時刻t2を経て時刻t3に至るまでエンジン回転数が単調に増加した後、例えばエンジンブレーキによって、時刻t3から時刻t4にかけてエンジン回転数が単調に減少していった場合(特に、エンジン1が暖機状態にある場合)について例示している。
ここで、NOx吸蔵量は、当初からDeNOx判定値以上となっており(つまり、第1条件が成立しているものとする)、アクティブDeNOxフラグの値が「1」になっているものとする。加えて、エンジン回転数が増加した結果、時刻t1においてエンジン1の運転状態が第2領域R12へと至った場合について考える。
この場合、アクティブDeNOx制御を開始するに先立って、ECU100は、グロープラグ制御を開始する。すなわち、図12の(c)に示すように、ECU100は、エンジン回転数等に応じて第2電圧を設定しつつ、そうして設定された第2電圧をグロープラグ11へと通電する。
グロープラグ11への通電を開始してから経過した時間が前述の所定時間Tgに至ると(時刻t2)、ECU100は、グロープラグ11への通電を継続しつつ、追加噴射としてのポスト噴射を開始する。
そして、例えばエンジン回転数が過度に上昇した結果、エンジン1の運転状態が第2領域R12から外れてしまうと(時刻t3)、ECU100は、アクティブDeNOx制御と、同制御において燃料の着火性を確保するためのグロープラグ11への通電を一時的に中断する。この場合、NOx吸蔵量等の条件次第では、アクティブDeNOxフラグの値は「1」のまま推移することになる。
その後、エンジン回転数が減少に転じた後に、エンジン1の運転状態が再び第2領域R12の範囲内に含まれることになると(時刻t4)、前述のように、アクティブDeNOxフラグの値は「1」のままであるため、アクティブDeNOx制御と、それに関連したグロープラグ制御を可及的速やかに再開することになる。
(3)まとめ
以上説明したように、ECU100は、アクティブDeNOx制御に際して、グロープラグ11への通電を開始してから所定時間Tg経過後にポスト噴射を開始する。図3〜図4に示すように、インジェクタ10とグロープラグ11は、双方とも、燃焼室6を成すシリンダヘッド4に配置されている。こうすることで、インジェクタ10付近にグロープラグ11を配置することができるから、インジェクタ10から噴射された燃料を確実に暖めて、その燃料の着火性を確保することができるようになる。
ここで、例えばエンジン回転数が高いときには、単位時間あたりに燃焼室6へと供給される空気の量が増加することになるから、そうして供給される空気によってグロープラグ11、及び、その周囲が冷却される可能性がある。このことは、グロープラグ11によって燃料を暖めるには不都合である。
しかし、図11に示すように、ECU100は、グロープラグ11への通電電圧(第2電圧、グロー印加電圧)を、エンジン回転数が高いときには、低いときよりも高く設定する。グロープラグ11への通電電圧を高くした分だけ、燃料を十分に暖めるとともに、その着火性を確保する上で有利になる。これにより、ポスト噴射を開始するタイミングを進角せずとも、乗員への違和感を抑制することができる。
また一般に、エンジン負荷が高いときには、それが低いときと比較して、燃料の噴射量が増えた分だけ、燃焼室6内の温度は高くなる。燃焼室6内が高温になった分だけ、燃料の着火性は確保される。
そのため、図11に示すように、燃焼室6内が高温になると想定される状況下においては、グロープラグ11への通電電圧を低く設定する。そのことで、エンジントルクをより適切に制御して、ひいてはトルク変動に起因した乗員への違和感を抑制する上で有利になる。
また一般に、グロープラグ11に向かって燃料が噴射されてしまうと、グロープラグ11が燃料によって濡れてしまい、燃料を適切に暖める上で不利になる。
しかし、図3〜図4に示すように、グロープラグ11に対して燃料の噴霧が直に当たらないように、グロープラグ11を配置することが可能になる。そのことで、噴射された直後の噴霧を適切に昇温し、ひいては、その着火性を確保する上で有利になる。
また、アクティブDeNOx制御に際して、燃料の着火時期が一定になるようにすることで、ポスト噴射によって噴射された燃料の燃焼によるエンジントルクへの影響を一定にすることができる。そのことで、エンジントルクをより適切に制御する上で有利になる。
《他の実施形態》
前記実施形態では、インジェクタ10とグロープラグ11は、双方とも、燃焼室6を成すシリンダヘッド4に配置されていたが、このような配置は必須ではない。例えば、インジェクタ10とグロープラグ11は、双方とも、燃焼室6を成すシリンダブロック3に配置されている、としてもよい。このように構成した場合であっても、インジェクタ10付近にグロープラグ11を配置することができるから、インジェクタ10から噴射された燃料を確実に暖めて、その燃料の着火性を確保することができるようになる。