以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るエンジンの制御装置について説明する。
(1)全体構成
図1は、本実施形態のエンジンの制御装置が適用されたエンジンシステム100の概略構成図である。
エンジンシステム100は、4ストロークのエンジン本体1と、エンジン本体1に空気(吸気)を導入するための吸気通路20と、エンジン本体1から外部に排気を排出するための排気通路40と、第1ターボ過給機51と、第2ターボ過給機52とを備えている。このエンジンシステム100は車両に設けられ、エンジン本体1は車両の駆動源として用いられる。エンジン本体1は、例えば、ディーゼルエンジンであり、図1の紙面に直交する方向に並ぶ4つの気筒2を有する。図示は省略するが、本実施形態では、車両に、複数の変速ギアを含みエンジン本体1の出力を変速しつつ車輪に伝達する変速機が設けられている。
エンジン本体1は、気筒2が内部に形成されたシリンダブロック3と、シリンダブロック3の上面に設けられたシリンダヘッド4と、気筒2に往復摺動可能に挿入されたピストン5とを有している。ピストン5の上方には燃焼室6が形成されている。
ピストン5はクランク軸7と連結されており、ピストン5の往復運動に応じてクランク軸7はその中心軸回りに回転する。
シリンダヘッド4には、燃焼室6内(気筒2内)に燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射装置)10と、燃焼室6内の温度を上昇させるためのグロープラグ11とが、各気筒2につきそれぞれ1組ずつ設けられている。
図2は、燃焼室6を上方から見た模式図である。インジェクタ10は、燃焼室6の天井面の中央に、燃焼室6を上方から臨むように設けられている。インジェクタ10は、先端部に複数の噴口を備えるマルチホール型であり、これら噴口から複数の方向に向かって燃料を噴射する(図2において二点鎖線で示した領域Spは各噴口からの噴霧を示している)。
グロープラグ11は、通電されることで発熱する発熱部11aを先端に有しており、この発熱部11aが、インジェクタ10の先端部分の近傍に位置するように燃焼室6の天井面に取り付けられている。より詳細には、発熱部11aは、インジェクタ11の複数の噴口からの複数の噴霧SPの間に位置するように配置されている。つまり、燃料の噴霧SPに直接接触しない位置にグロープラグ11の発熱部11aが配置されている。これにより、グロープラグ11の発熱部11aに燃料が直接かかることによる不具合(グロープラグ11の故障など)が防止されている。
インジェクタ10は、主としてエンジントルクを得るために実施される噴射であって圧縮上死点付近で燃焼する燃料を燃焼室6内に噴射するメイン噴射と、メイン噴射よりも遅角側であって燃焼してもその燃焼エネルギーがエンジントルクにほとんど寄与しない時期に燃焼室6内に燃料を噴射するポスト噴射とを実施できるようになっている。
シリンダヘッド4には、吸気通路20から供給される空気を各気筒2の燃焼室6に導入するための吸気ポートと、吸気ポートを開閉する吸気弁12と、各気筒2の燃焼室6で生成された排気を排気通路40に導出するための排気ポートと、排気ポートを開閉する排気弁13とが設けられている。
吸気通路20には、上流側から順に、エアクリーナ21、第1ターボ過給機51のコンプレッサ51a(以下、適宜、第1コンプレッサ51aという)、第2ターボ過給機52のコンプレッサ52a(以下、適宜、第2コンプレッサ52aという)、インタークーラ22、吸気シャッター弁23(いわゆる、スロットルバルブ)、サージタンク24が設けられている。また、吸気通路20には、第2コンプレッサ52aをバイパスする吸気側バイパス通路25と、これを開閉する吸気側バイパスバルブ26とが設けられている。吸気側バイパスバルブ26は、駆動装置(不図示)によって全閉の状態と全開の状態とに切り替えられる。
排気通路40には、上流側から順に、第2ターボ過給機52のタービン52b(以下、適宜、第2タービン52bという)、第1ターボ過給機51のタービン51b(以下、適宜、第1タービン51bという)、第1触媒43、排気中の粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集するDPF(Diesel particulate filter)44、DPF44の下流側の排気通路40中に尿素を噴射する尿素インジェクタ45、尿素インジェクタ45から噴射された尿素を用いてNOxを浄化するSCR(Selective Catalytic eduction)触媒46、SCR触媒46から排出された未反応のアンモニアを酸化させて浄化するスリップ触媒47、が設けられている。
SCR触媒46は、尿素インジェクタ45から噴射された尿素を加水分解してアンモニアを生成し、このアンモニアを排気中のNOxと反応(還元)させて浄化する。
第1触媒43は、NOxを浄化するNOx触媒41と、排気中の酸素を用いて炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)などを酸化して水と二酸化炭素に変化させる酸化触媒(DOC: Diesel Oxidation Catalyst)42とを含む。
NOx触媒41は、排気の空燃比が理論空燃比よりも大きいリーンな状態(空気過剰率λがλ>1の状態)において排気中のNOxを吸蔵し、この吸蔵したNOxを、排気の空燃比が理論空燃比近傍である状態(λ≒1)あるいは理論空燃比よりも小さいリッチな状態(λ<1)、つまり、NOx触媒41を通過する排気が未燃のHCを多量に含む還元雰囲気下において還元する、NOx吸蔵還元型触媒(NSC:NOx Storage Catalyst)である。第1触媒43は、例えば、DOCの触媒材層の表面に、NSCの触媒材がコーティングされることで形成されている。なお、本実施形態では、排気通路に別途空気や燃料を供給する装置が設けられておらず、排気の空燃比と燃焼室6内の混合気の空燃比とは対応する。つまり、燃焼室6内の混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンのときに排気の空燃比もリーンとなり、燃焼室6内の混合気の空燃比が理論空燃比近傍である状態(λ≒1)あるいは理論空燃比よりも小さいリッチな状態(λ<1)のときに排気の空燃比も理論空燃比近傍である状態(λ≒1)あるいは理論空燃比よりも小さいリッチな状態(λ<1)になる。
また、NOx触媒41は、NOxに加えてSOxも吸蔵する。具体的には、NOx触媒41は、排気の空燃比が理論空燃比よりも大きいリーンな状態(λ>1)において排気中のSOxを吸蔵し、この吸蔵したSOxを、排気の空燃比が理論空燃比近傍である状態(λ≒1)あるいは理論空燃比よりも小さいリッチな状態(λ<1)において還元する。
SCR触媒46とNOx触媒41とは、いずれもNOxを浄化可能であるが、これらは浄化率(NOx吸蔵率)が高くなる温度が互いに異なっており、SCR触媒46のNOx浄化率(NOx吸蔵率)は排気の温度が比較的高温のときに高くなり、NOx触媒41のNOx浄化率は排気の温度が比較的低温のときに高くなる。
排気通路40には、第2タービン52bをバイパスする排気側バイパス通路48と、これを開閉する排気側バイパスバルブ49と、第1タービン51bをバイパスするウエストゲート通路53と、これを開閉するウエストゲートバルブ54とが設けられている。これら排気側バイパスバルブ49とウエストゲートバルブ54とは、それぞれ、駆動装置(不図示)によって全閉と全開の状態に切り替えられるとともに、これらの間の任意の開度に変更される。本実施形態では、これら排気側バイパスバルブ49とウエストゲートバルブ54、およびこれらを駆動する駆動装置が、過給圧を変更する過給圧変更装置として機能する。
排気側バイパスバルブ49、ウエストゲートバルブ54、および吸気側バイパスバルブ25は、エンジン回転数及びエンジン負荷に基づいて制御される。
図3は、これらバルブ49、54、25の制御マップを示した図である。本実施形態では、図3に示すように、エンジン回転数と、エンジン負荷とに応じて、各バルブ49、54、25の開閉状態が決められている。具体的には、エンジン回転数が低い第1回転領域A1では、吸気側バイパスバルブ25は全閉とされ、排気側バイパスバルブ49とウエストゲートバルブ54の開度がエンジン回転数とエンジン負荷とによって変更される。また、第1回転領域A1よりもエンジン回転数が高い第2回転領域A2では、吸気バイパスバルブおよび排気側バイパスバルブ49が全開とされて第2ターボ過給機52による過給は停止され、ウエストゲートバルブ54の開度のみがエンジン回転数とエンジン負荷とによって変更される。
本実施形態によるエンジンシステム100は、排気の一部を吸気に還流させるEGR装置55を有する。EGR装置55は、排気通路40のうち排気側バイパス通路49の上流端よりも上流側の部分と、吸気通路20のうち吸気シャッター弁23とサージタンク24との間の部分とを接続するEGR通路56と、これを開閉する第1EGRバルブ57と、EGR通路56を通過する排気を冷却するEGRクーラー58とを有する。また、EGR装置55は、EGRクーラー58をバイパスするEGRクーラバイパス通路59と、これを開閉する第2EGRバルブ60とを有する。
(2)制御系
図4を用いて、エンジンシステムの制御系について説明する。本実施形態のエンジンシステム100は、主として、車両に搭載されたPCM(制御手段、パワートレイン制御モジュール、制御手段)200によって制御される。PCM200は、CPU、ROM、RAM、I/F等から構成されるマイクロプロセッサであり、本発明にかかる制御手段に相当する。
PCM200には、各種センサからの情報が入力される。例えば、PCM200は、クランク軸7の回転数つまりエンジン回転数を検出する回転数センサSN1、エアクリーナ21付近に設けられて吸気通路20を流通する新気(空気)の量である吸入空気量を検出するエアフローセンサSN2、サージタンク24に設けられてターボ過給機51、52によって過給された後のサージタンク24内の吸気の圧力つまり過給圧を検出する吸気圧センサSN3、排気通路40のうち第1ターボ過給機51と第1触媒43との間の部分の酸素濃度を検出する排気O2センサSN4等と電気的に接続されており、これらのセンサSN1〜SN4からの入力信号を受け付ける。また、車両には、運転者により操作されるアクセルペダル(不図示)の開度であるアクセル開度を検出するアクセル開度センサSN5や、車速を検出する車速センサSN6等が設けられており、これらのセンサSN5、SN6による検出信号もPCM200に入力される。PCM200は、各センサ(SN1〜SN6等)からの入力信号に基づいて種々の演算等を実行して、インジェクタ10、グロープラグ11等を制御する。詳細には、PCM200は、インジェクタ10を駆動する装置、グロープラグ11に電力を供給して発熱部11aに通電する装置等を制御する。
(2−1)DeNOx制御
NOx触媒41に吸蔵されたNOx(以下、適宜、吸蔵NOxという)を還元してNOx触媒41から放出(離脱)させるための制御であるDeNOx制御について説明する。
本実施形態では、DeNOx制御および後述するDeSOx制御を実施しない通常運転時は、燃費性能を高めるべく、燃焼室6内の混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーン(λ>1、例えばλ=1.7程度)にされる。以下、適宜、燃焼室6内の混合気の空燃比を、単に混合気の空燃比という。
一方、前記のように、NOx触媒41では、排気の空燃比ひいては混合気の空燃比が理論空燃比近傍である状態(λ≒1)あるいは理論空燃比よりも小さいリッチな状態(λ<1)において、吸蔵NOxが還元されてNOx触媒41からNOxが放出される。従って、吸蔵NOxを還元するためには、排気の空燃比および混合気の空燃比を通常運転時よりも低減させる必要がある。
混合気の空燃比を低減する一つの方法として、燃焼室6に導入される新気(空気)の量を少なくすることが考えられる。しかし、新気の量を単純に少なくするとエンジントルクを適切に得ることができないおそれがある。特に、加速時に新気の量が低減されると加速性が悪化するおそれがある。
そこで、本実施形態では、新気の量を低減させることなく、あるいは、新気の量の低減量を少なく抑えつつ、混合気の空燃比を低減させるべく、ポスト噴射を実施して吸蔵NOxを還元させるようにする。つまり、PCM200は、インジェクタ10にメイン噴射に加えてポスト噴射を実施させることで混合気の空燃比を低減する。なお、通常運転時は、ポスト噴射は停止される。
本実施形態では、このように吸蔵NOxを還元するためにポスト噴射を実施するDeNOx制御を、図5に示す第1領域(DeNOx領域)R1と第2領域R2とでのみ実施する。第1領域R1は、エンジン回転数が予め設定された第1基準回転数N1以上且つ予め設定された第2基準回転数N2以下で、エンジン負荷が予め設定された第1基準負荷Tq1以上且つ予め設定された第2基準負荷Tq2以下の領域である。第2領域R2は、第1領域R1よりもエンジン負荷が高い領域であって、エンジン負荷が予め設定された第3基準負荷Tq3以上となる領域である。
また、第1領域R1では、ポスト噴射された燃料が燃焼室6内で燃焼するタイミングであって予め設定された基準ポスト噴射タイミングでポスト噴射を実施するアクティブDeNOx制御を実施する。基準ポスト噴射タイミングは、例えば、膨張行程の前半であって、圧縮上死点後30〜70°CAの間の時期に設定されている。アクティブDeNOx制御では、ポスト噴射された燃料の燃焼を促進するためにグロープラグ11を通電して混合気を加熱する。
一方、第2領域R2では、ポスト噴射された燃料が燃焼室6内で燃焼しないタイミング(膨張行程の後半、例えば、圧縮上死点後110°CA)でポスト噴射を実施するパッシブDeNOx制御を実施する。
これは、次の理由による。
エンジン負荷が低い、あるいは、エンジン負荷は比較的高いがエンジン回転数が低い領域では、排気の温度が低いことに伴ってNOx触媒41の温度が吸蔵NOxを還元できる温度よりも低くなりやすい。そこで、本実施形態では、この領域ではDeNOx制御を停止する。
また、前記のようにDeNOx制御ではポスト噴射を実施するが、ポスト噴射された燃料が燃焼せずにそのまま排気通路40に排出されると、この未燃燃料に起因するデポジットによってEGR通路56やEGRクーラー58等が閉塞するおそれがある。そのため、ポスト噴射された燃料は燃焼室6内で燃焼させるのが好ましい。しかしながら、エンジン負荷が高い、あるいは、エンジン負荷は比較的低いがエンジン回転数が高い領域では、燃焼室6内の温度が高いこと、あるいは、1クランク角度あたりの時間が短いことに伴って、燃焼室6内のガスが排気されるまでの間にポスト噴射された燃料と空気とを十分に混合させることが難しく、ポスト噴射された燃料を燃焼室6内で十分に燃焼させることができないおそれがある。また、前記混合が不十分でることによって煤が増大するおそれがある。従って、このような領域では基本的にDeNOx制御を停止する。
ただし、エンジン負荷が非常に高い第2領域R2では、メイン噴射の噴射量(以下、適宜、メイン噴射量という)が多いことに伴って通常運転時であっても混合気および排気の空燃比が小さく抑えられる。そのため、第2領域R2では、吸蔵NOxを還元するために必要なポスト噴射の噴射量(以下、適宜、ポスト噴射量という)を小さくして、未燃燃料が排気通路40に排出されることによる前記影響を小さく抑えることができる。
そこで、前記のように、エンジン負荷およびエンジン回転数が低すぎず且つ高すぎない第1領域R1では、ポスト噴射された燃料が燃焼室6内で燃焼するアクティブDeNOx制御を実施し、第2領域R2では、ポスト噴射された燃料を燃焼室6内で燃焼させないパッシブDeNOx制御を実施する。なお、第2領域R2は、排気の温度が十分に高くDOC触媒42が十分に活性化する領域である。そのため、排気通路40に排出された未燃燃料はこのDOC触媒42によって浄化される。
ここで、請求項におけるDeNOx制御はアクティブDeNOx制御を指しており、以下では、アクティブDeNOx制御について説明する。
(i)DeNOx実施フラグの設定手順
DeNOx実施フラグの設定手順について、図6のフローチャートを用いて説明する。DeNOx実施フラグは、アクティブDeNOx制御の基本的な実施条件であるDeNOx実施条件が成立すると1とされてアクティブDeNOx制御が終了すると0にされるとともに、アクティブDeNOx制御が開始されていない状態で前記の基本的な実施条件が非成立であるときに0とされるフラグである。本実施形態では、DeNOx制御をいったん開始した後は、基本的に、吸蔵NOxの量つまりNOx触媒41に吸蔵されているNOxの量であるNOx吸蔵量が予め設定されたDeNOx終了判定量(第2基準量)以下に低下するまでアクティブDeNOx制御を実施するように構成されている。これに伴い、DeNOx実施フラグは、0から1に変化した後は、NOx吸蔵量がDeNOx終了判定量以下に低下するまで(つまり、アクティブDeNOx制御が完了するまで)1に維持されて、NOx吸蔵量がDeNOx終了判定量以下に低下すると0にされる。
まず、PCM200は、ステップS10にて、車両の各種情報を読み込む。例えば、PCM200は、NOx触媒41の温度であるNOx触媒温度と、SCR触媒46の温度であるSCR温度と、NOx触媒41に吸蔵されているNOxの量であるNOx吸蔵量とを取得する。
NOx触媒温度は、例えば、NOx触媒41の直上流側に設けられた温度センサによって検出された温度に基づいて推定される。また、SCR温度は、例えば、SCR触媒46の直上流側に設けられた温度センサによって検出された温度に基づいて推定される。また、NOx吸蔵量は、例えば、エンジン本体1の運転状態や排気の流量および温度等に基づいて推定された排気中のNOx量を積算していくことで求められる。
次に、PCM200は、ステップS11にて、SCR温度が予め設定されたSCR判定温度未満であるか否かを判定する。SCR判定温度は、SCR触媒46によってNOxを浄化できるSCR触媒46の温度の最小値である。
ステップS11の判定がNOであって、SCR温度がSCR判定温度以上でありSCR触媒46によってNOxを適切に浄化させることができる場合は、ステップS21に進み、PCM200は、DeNOx実施フラグを0に設定する。一方、ステップS11の判定がYESの場合は、ステップS12に進む。
ステップS12では、PCM200は、NOx触媒温度が予め設定されたNOx還元可能温度以上であるか否かを判定する。NOx還元可能温度は、吸蔵NOxを還元可能なNOx触媒温度の最小値である。
ステップS12の判定がNOであってNOx触媒温度がNOx還元可能温度未満の場合は、ステップS21に進み、PCM200はDeNOx実施フラグを0に設定する。一方、ステップS12の判定がYESの場合は、ステップS13に進む。
ステップS13では、PCM200は、エンジン本体1が第1領域R1で運転されているか否かを判定する。この判定がNOの場合は、ステップS21に進みDeNOx実施フラグを0に設定する。一方、この判定がYESの場合は、ステップS14に進む。
ステップS14では、PCM200は、現在の変速ギアの段数が予め設定された基準段数以上であるか否かを判定する。本実施形態では、基準段数は、5速以上の段数(例えば、5速と6速)に設定されている。なお、変速ギアの段数つまりギア段は、車速とエンジン回転数とに基づいて算出される。
ステップS14の判定がNOの場合は、ステップS21に進みDeNOx実施フラグを0に設定する。
一方、ステップS14の判定がYESの場合は、ステップS15に進む。ステップS15では、PCM200はエンジン始動後にアクティブDeNOx制御を一度も実行していないか否かを判定する。この判定がYESの場合は、ステップS16に進み、この判定がNOの場合は、ステップS17に進む。
ステップS16では、PCM200は、NOx吸蔵量が予め設定された第1吸蔵量判定値(第1基準量)以上であるか否かを判定する。第1吸蔵量判定値は、例えば、NOx触媒41が吸蔵できるNOxの量の最大値よりもある程度低い値に設定されている。
ステップS16の判定がNOであってNOx吸蔵量が第1吸蔵量判定値未満の場合は、NOx触媒41の還元処理を行う必要がないため、PCM200は、ステップS21に進み、DeNOx実施フラグを0に設定する。一方、ステップS16の判定がYESの場合は、ステップS18に進む。ステップS18では、PCM200は、DeNOx実施フラグを1に設定する。
ステップS15の判定がNOの場合に進むステップS17では、PCM200は、NOx吸蔵量が予め設定された第2吸蔵量判定値(第1基準量)以上であるか否かを判定する。第2吸蔵量判定値は、第1吸蔵量判定値よりも大きな値に設定されている。例えば、第2吸蔵量判定値は、NOx触媒41が吸蔵できるNOxの量の最大値付近の値に設定されている。ステップS17の判定のNOであってNOx吸蔵量が第2吸蔵量判定値未満の場合は、PCM200は、ステップS21に進み、DeNOx実施フラグを0に設定する。一方、ステップS17の判定がYESの場合は、PCM200は、ステップS18に進み、DeNOx実施フラグを1に設定する。
このように、本実施形態では、SCR46の温度がSCR判定温度未満で、NOx触媒温度がNOx還元可能温度以上で、NOx吸蔵量が所定量(第1吸蔵量判定値、第2吸蔵量判定値)以上で、エンジンが第1領域R1で運転されており、且つ、ギア段が基準段数以上であるという特定条件(DeNOx実施条件)が成立すると、DeNOx実施フラグが1に設定されて、アクティブDeNOx制御が許可される。つまり、この特定条件が、アクティブDeNOx制御の基本的な実施条件として設定されている。ただし、エンジン始動後にアクティブDeNOx制御を一度も実行していない場合には、NOx触媒41のNOx浄化性能を確保するべく、前記所定量が比較的小さい値に設定される。なお、第1吸蔵量判定値および第2吸蔵量判定値はDeNOx終了判定量よりも大きい値に設定されている。
ここで、前記特定条件にギア段が基準段数以上であるという条件が含まれているのは、次の理由による。つまり、ギア段が高く車両が高速運転されているときは、エンジン回転数およびエンジントルクの変動が小さくなりやすいため、安定してDeNOx制御を実施すること、および、DeNOx制御を実施してもエンジン回転数等の変動を小さく抑えることができる。そこで、本実施形態では、ギア段が基準段数以上の場合に、アクティブDeNOx制御を実施する。
なお、ポスト噴射に起因するオイル希釈を抑制するべく、ステップS15の判定の後に、アクティブDeNOx制御の前回実行時点からの走行距離が所定の判定距離以上であるか否かの判定を行い、この判定がYESのときにステップS18に進みアクティブDeNOx制御を実施する一方、この判定がNOのときにはステップS21に進み、DeNOx実施フラグを0にしてもよい。
(ii)中断フラグの設定手順
本実施形態では、前記のアクティブDeNOx制御の基本的な実施条件が成立してDeNOx実施フラグが1である場合でも、これとは別の中断条件が成立するとアクティブDeNOx制御を中断するようになっている。
この中断条件について次に説明する。本実施形態では、この中断条件が成立すると1とされてこの中断条件が非成立であると0とされる中断フラグが設けられており、以下では、図7のフローチャートを用いて中断フラグの設定手順を説明する。
まず、PCM200は、ステップS31にて、DeNOx実施フラグが1であるか否かを判定する。この判定がNOであれば、ステップS38に進み、PCM200は、中断フラグを0に設定して処理を終了する(ステップS31に戻る)。つまり、DeNOx制御が実施されていない場合は、これを中断するか否かの判定は行わず中断フラグを0に設定して処理を終了する。
一方、ステップS31の判定がYESであれば、PCM200はステップS32に進む。ステップS32にて、PCM200は、エンジン本体1が第1運転領域R1で運転されているか否かを判定する。この判定がNOであれば、ステップS37に進み中断フラグを1に設定して処理を終了する(ステップS31に戻る)。一方、ステップS32の判定がYESであれば、PCM200はステップS33に進む。
ステップS33にて、PCM200は、ギア段が基準段数以上であるか否かを判定する。この判定がNOであれば、PCM200は、ステップS37に進み中断フラグを1に設定して処理を終了する(ステップS31に戻る)。一方、ステップS33の判定がYESであれば、PCM200はステップS34に進む。
ステップS34にて、PCM200は、車速の単位時間あたりの変化量(例えば、1秒あたりの変化量)が予め設定された車速判定量(所定量)未満であるか否かを判定する。この判定がNOであって車速の変化量が車速判定量以上であれば、PCM200は、ステップS37に進み中断フラグを1に設定して処理を終了する(ステップS31に戻る)。一方、ステップS34の判定がYESであれば、PCM200はステップS35に進む。
ステップS35にて、PCM200は、ギア段が変化してからの経過時間が予め設定されたギア変化判定時間(所定時間)以上か否かを判定する。この判定がNOであれば、PCM200は、ステップS37に進み中断フラグを1に設定して処理を終了する(ステップS31に戻る)。なお、PCM200は、ギア段が変化するとそれからの経過時間を計測するとともに、新たにギア段が変化するとこの経過時間をリセットして新たにギア段が変化してからの経過時間を計測する。一方、ステップS35の判定がYESであれば、ステップS36に進む。
ステップS36にて、PCM200は、排気の温度である排気温度が、予め設定された基準排気温度未満であるか否かを判定する。この判定がNOであれば、PCM200は、ステップS37に進み中断フラグを1に設定して処理を終了する(ステップS31に戻る)。なお、この判定に利用される排気温度は、例えば、排気通路40のうち第2タービン52bよりも上流側の部分の温度である。また、この排気温度は、例えば、温度センサによって検出される。
一方、ステップS36の判定がYESであれば、PCM200は、ステップS38に進み、PCM20は、中断フラグを0に設定して処理を終了する(ステップS31に戻る)。
このように、本実施形態では、DeNOx実施フラグが1の状態で、エンジン本体1が第1領域R1で運転されていないという条件が成立すると中断フラグが1とされる。また、DeNOx実施フラグが1の状態で、ギア段が基準段数以上の状態から外れると中断フラグが1とされる。また、DeNOx実施フラグが1の状態で、車両が加速または減速して車速の単位時間あたりの変化量が車速判定量以上になると中断フラグが1とされる。また、DeNOx実施フラグが1の状態で、ギア段が変化してからの経過時間がギア変化判定時間未満でありギア段が変化してからの経過時間が短いと、中断フラグが1とされる。また、DeNOx実施フラグが1の状態で、排気温度が基準排気温度以上になると、中断フラグが1とされる。そして、この中断フラグが1になると、アクティブDeNOx制御が中断される。また、後述するように、DeSOx制御も中断される。
(iii)アクティブDeNOx制御および中断時の制御内容
次に、アクティブDeNOx制御の制御内容およびこれが中断されたときの制御内容について、図8のフローチャートを用いて説明する。なお、図8に示したフローはDeNOx実施フラグが1のときに実施される。
まず、ステップS52において、PCM200は、中断フラグが0であるか否かを判定する。この判定がNOの場合は、ステップS61に進む。一方、この判定がYESであれば、ステップS53に進む。
ステップS53にて、PCM200は、混合気の空燃比の目標値であって吸蔵NOxを還元してNOx触媒41から放出させるために必要な混合気の空燃比である目標空燃比を設定する。この目標空燃比は、前記のように、理論空燃比近傍あるいは理論空燃比よりも小さい値に設定されている。例えば、目標空燃比は、空気過剰率λが0.94〜1.06の間の値となるように設定される。ステップS53の後は、ステップS54に進む。
ステップS54にて、PCM200は、ポスト噴射の噴射量を、ステップS53で設定した目標空燃比が実現される量に調整する。具体的には、PCM200は、別途演算したメイン噴射量と吸気酸素濃度等を用いて、目標空燃比を実現できるポスト噴射量を算出する。なお、メイン噴射量は、例えば、アクセル開度と車速等に基づいて、車両の加速度の目標値である目標車両加速度を算出するとともに、これとエンジン回転数等に基づいてエンジントルクの目標値である目標エンジントルクを算出した後、この目標エンジントルクに基づいて算出される。また、吸気酸素濃度は、燃焼が行われる前の燃焼室6内の酸素濃度であり、PCM200は、例えば、吸入空気量、排気の酸素濃度、EGRバルブ57、60の開度、過給圧等に基づいて推定する。ステップS54の後は、ステップS55に進む。
ステップS55にて、PCM200は、グロープラグ11に通電してこれを作動させる(既に通電されているときはこれを維持する)。また、このとき、PCM200は、グロープラグ11の発熱部11aの温度が予め設定されたグロー基準温度以上となるような電圧(第1電圧)を発熱部11aにかける。グロー基準温度は、前記のように膨張行程の前半等に設定された基準ポスト噴射タイミングでポスト噴射された燃料のほぼ全量が燃焼室6内で燃焼するような温度に設定されている。ステップS55の後は、ステップS56に進む。
ステップS56では、PCM200は、インジェクタ10にメイン噴射とポスト噴射とを実施させる。このとき、PCM200は、ポスト噴射量を、ステップS54で算出したポスト噴射量として、この量の燃料をポスト噴射によって噴射させる。ステップS56の後はステップS57に進む。
ステップS57にて、PCM200は、NOx吸蔵量が予め設定されたDeNOx終了判定量以下であるか否かを判定する。この判定がYESであれば、ステップS58に進み、PCM200は、DeNOx実施フラグを0にしてアクティブDeNOx制御を終了する。また、PCM200は、ステップS59に進み、グロープラグ11の作動を停止する。つまり、グロープラグ11の発熱部11aへの通電を停止する。一方、ステップS57の判定がNOの場合は、ステップS52に戻る。
ステップS52の判定がNOの場合であって中断フラグが1のときに進むステップS61では、PCM200は、アクティブDeNOx制御を停止させる。例えば、アクティブDeNOx制御が中断されてパッシブDeNOx制御が実施される場合は、ポスト噴射は維持されるが、DeNOx制御が中断されて通常制御が実施される場合は、ポスト噴射が停止される。ステップS61の後は、ステップS62に進む。
ステップS62では、PCM200は、グロープラグ11の発熱部11aにかける電圧を、ステップS55の実行時(つまり、DeNOx実施フラグが1且つDeNOx中断フラグが0であってDeNOx制御を実施している時)に発熱部11aにかける第1電圧よりも低い第2電圧とする。ステップS62の後は、ステップS57に進む。
このように、本実施形態では、DeNOx制御の実施時にこれを中断させる要求があると、グロープラグ11の発熱部11aに通電してこれを作動させる一方で発熱部11aに加える電圧をDeNOx制御の実施時よりも低くするグロー保温制御を実施する。そして、このように発熱部11aに加えられる電圧が低くされることで、グロープラグ11の発熱部11aの温度はDeNOx制御の実施時よりも低くされる。
(2−2)DeSOx制御
NOx触媒41に吸蔵されたSOx(以下、適宜、吸蔵SOxという)を還元してNOx触媒41から放出させるための制御であるDeSOx制御の概要を説明する。
前記のように、NOx触媒41では、排気の空燃比が理論空燃比近傍である状態(λ≒1)あるいは理論空燃比よりも小さいリッチな状態(λ<1)において、吸蔵SOxが還元される。これに伴い、本実施形態では、DeSOx制御でも、DeNOx制御と同様に、メイン噴射に加えてポスト噴射を実施する。ただし、SOxはNOxに比べて結合力が強いため、吸蔵SOxを還元するためには、DeNOx制御時よりもNOx触媒41の温度ひいてはこれを通過する排気の温度をより高温にする必要がある。これに対して、第1触媒43に含まれる酸化触媒42において未燃のHCを酸化反応させれば第1触媒43ひいてはNOx触媒41を通過する排気の温度を高めることができる。
そこで、本実施形態では、DeSOx制御として、DeNOx制御と同様にポスト噴射を行って排気の空燃比を通常運転時よりもリッチにして理論空燃比近傍あるいはこれよりも小さくするリッチステップと、排気の空燃比を理論空燃比よりもリーンとしつつポスト噴射して酸化触媒42に空気と未燃のHCとを供給してこれらを酸化触媒42で酸化させるリーンステップとを、交互に実施する。
詳細には、リッチステップでは、アクティブDeNOx制御と同様に、ポスト噴射された燃料が燃焼室6内で燃焼するタイミング(膨張行程の前半であって、例えば、圧縮上死点後30〜70°CA)でポスト噴射を実施する。一方、リーンステップでは、ポスト噴射された燃料が燃焼室6内で燃焼しないタイミング(膨張行程の後半であって、例えば、圧縮上死点後110°CA)でポスト噴射を実施する。
また、リッチステップでは、第1EGRバルブ57は全閉にする一方第2EGRバルブ60は開く。また、PCM200は、吸気シャッター弁23、排気側バイパスバルブ49およびウエストゲートバルブ54を、それぞれ、吸入空気量が通常運転時よりも減少する方向に制御する。また、リーンステップでは、未燃燃料がEGR通路56およびEGRクーラー58に流入しないように、EGRバルブ57、60をいずれも全閉にする。また、PCM200は、吸気シャッター弁23、排気側バイパスバルブ49およびウエストゲートバルブ54を、それぞれ、吸入空気量が通常運転時と同程度となるように(少なくともリッチステップ時よりも多くなるように)制御する。
(i)DeSOx実施フラグの設定手順
次に、DeSOx実施フラグの設定手順について、図9のフローチャートを用いて説明する。DeSOx実施フラグは、DeSOx制御の基本的な実施条件が成立すると1とされて、この実施条件が非成立の場合は0とされるフラグである。本実施形態では、基本的に、吸蔵SOxの量が予め設定されたDeSOx終了判定量以下に低下するまでDeSOx制御を実施するように構成されている。これに伴い、DeSOx実施フラグは、いったん0から1に変化した後は、SOx吸蔵量がDeSOx終了判定量以下に低下するまで(つまり、DeSOx制御が完了するまで)1に維持されて、SOx吸蔵量がDeSOx終了判定量以下に低下すると0にされる。
まず、PCM200は、ステップS110にて、車両の各種情報を読み込む。例えば、PCM200は、NOx触媒41の温度であるNOx触媒温度とNOx触媒41に吸蔵されているSOxの量であるSOx吸蔵量とを取得する。SOx吸蔵量は、例えば、車両の走行距離等に基づいて推定される。
次に、ステップS111にて、PCM200は、NOx触媒温度が予め設定されたSOx還元可能温度以上であるか否かを判定する。SOx還元可能温度は、吸蔵SOxを還元可能なNOx触媒温度の最小値である。
ステップS111の判定がNOであってNOx触媒温度がSOx還元可能温度未満の場合は、ステップS121に進み、PCM200はDeSOx実施フラグを0に設定する。一方、ステップS111の判定がYESの場合は、ステップS112に進む。
ステップS112では、PCM200は、エンジン本体1が第1領域R1で運転されているか否かを判定する。この判定がNOの場合は、ステップS121に進みDeSOx実施フラグを0に設定する。一方、この判定がYESの場合は、ステップS113に進む。このように、本実施形態では、DeSOx制御も、アクティブDeNOx制御と同様に、エンジン本体1が第1領域R1で運転されているときに実施される。
ステップS113では、PCM200は、現在の変速ギアの段数が基準段数以上であるか否かを判定する。ステップS113の判定がNOの場合は、ステップS121に進みDeSOx実施フラグを0に設定する。一方、ステップS113の判定がYESの場合は、ステップS114に進む。このように、本実施形態では、DeSOx制御も、アクティブDeNOx制御と同様に、変速ギアの段数が基準段数以上のときに実施する。
ステップS114では、PCM200は、SOx吸蔵量が予め設定されたDeSOx開始判定吸蔵量以上であるか否かを判定する。DeSOx開始判定吸蔵量は、例えば、NOx触媒41が吸蔵できるSOxの量の最大値付近の値に設定されている。
ステップS114の判定がNOであってSOx吸蔵量がDeSOx開始判定吸蔵量未満の場合は、NOx触媒41におけるSOxの還元処理をまだ行わなくてもよいため、PCM200は、ステップS121に進みDeSOx実施フラグを0に設定する。一方、ステップS114の判定がYESの場合は、ステップS115に進む。ステップS115では、PCM200は、DeSOx実施フラグを1に設定する。
このように、本実施形態では、NOx触媒温度がSOx還元可能温度以上で、SOx吸蔵量がDeSOx開始判定吸蔵量以上で、エンジン本体1が第1領域R1で運転されており、且つ、ギア段が基準段数以上であるという条件が成立すると、DeSOx実施フラグが1に設定されて、DeSOx制御が実施される。
(ii)DeSOx制御の中断条件
本実施形態では、アクティブDeNOx制御と同様に、DeSOx制御においても前記中断条件が成立するとDeSOx制御が中断されるようになっている。つまり、エンジン本体1が運転されている領域が第1領域R1から外れるとDeSOx制御が中断される。また、ギア段が基準段数以上の状態から外れるとDeSOx制御が中断される。また、車両が加速または減速して車速の単位時間あたりの変化量が車速判定量以上になるとDeSOx制御が中断される。また、ギア段が変化してからの経過時間がギア段判定時間未満であるとDeSOx制御が中断される。
(iii)DeSOx制御および中断時の制御内容
次に、DeSOx制御の制御内容およびこれが中断されたときの制御内容について、図10のフローチャートを用いて説明する。なお、図10に示したフローはDeSOx実施フラグが1のときに実施される。
まず、ステップS152において、PCM200は、中断フラグが0であるか否かを判定する。この判定がNOの場合は、ステップS161に進む。一方、この判定がYESであれば、ステップS153に進む。
ステップS153にて、PCM200は、リッチステップ時の混合気の空燃比の目標値と、リーンステップ時の混合気の空燃比の目標値とをそれぞれ設定する。リッチステップ時の目標空燃比は、前記のように、理論空燃比近傍あるいは理論空燃比よりも小さい値に(例えば、空気過剰率λが0.94〜1.06の間の値となるように)設定される。リーンステップ時の目標空燃比は、前記のように、理論空燃比よりも大きい値に(例えば、空気過剰率λが1.2〜1.4の間の値となるように)設定される。ステップS153の後は、ステップS154に進む。
ステップS154では、PCM200は、リッチステップ時とリーンステップ時の各ポスト噴射の噴射量を、ステップS153で設定した各目標空燃比が実現される量に調整する。ステップS154の後は、ステップS155に進む。
ステップS155にて、PCM200は、グロープラグ11に通電してこれを作動させる(既に通電されているときはこれを維持する)とともに、発熱部11aに第1電圧をかける。
ステップS156では、PCM200は、リッチステップとリーンステップとが交互に実施されるようにリッチステップあるいはリーンステップを実施する。ステップS156の後はステップS157に進む。
ステップS157では、PCM200は、SOx吸蔵量が予め設定されたDeSOx終了判定量以下であるか否かを判定する。この判定がYESであれば、ステップS158に進み、PCM200は、DeSOx実施フラグを0にしてDeSOx制御を終了する。また、PCM200は、ステップS159に進み、グロープラグ11の発熱部11aへの通電を停止してグロープラグ11の作動を停止する。一方、ステップS157の判定がNOの場合は、ステップS152に戻る。
ステップS152の判定がNOの場合であって中断フラグが1のときに進むステップS161では、DeSOx制御を停止させる。ステップS161の後は、ステップS162に進む。
ステップS162では、PCM200は、グロープラグ11の発熱部11aにかける電圧を第2電圧とする。ステップS162の後は、ステップS157に進む。
このように、本実施形態では、DeSOx制御の実施時も、アクティブDeNOx制御の実施時と同様に、これを中断させる要求があってもグロープラグ11の発熱部11aに通電してこれを作動させる一方で、発熱部11aに加える電圧をDeSOx制御の実施時よりも低くする。
(2−3)DPF再生制御
DPF44に捕集されたPMを除去してDPF44の浄化能力を再生するための制御であるDPF再生制御について簡単に説明する。
本実施形態では、DPF44に捕集されているPMの量が所定量以上になったと推定されるとDPF再生制御が開始される。そして、DPF44に捕集されているPMの量が所定量以下になったと推定されるとDPF再生制御が終了される。DPF44に捕集されているPMの量は、例えば、DPF44の上流側および下流側に設けられた圧力センサから算出されるDPF44の前後差圧(DPF44よりも上流側の圧力と下流側の圧力との差)等から算出される。
DPF44に捕集されているPMは、高温下で燃焼させることでDPF44から除去することができる。ここで、前記のように、酸化触媒42において未燃のHCを酸化反応させれば、これよりも下流側に位置するDPF44内の温度を高めることができる。
そこで、本実施形態では、DPF再生制御として、排気の空燃比を理論空燃比よりもリーンとしつつポスト噴射して酸化触媒42に空気と未燃のHCとを供給してこれらを酸化触媒42で酸化させる制御を実施する。具体的には、DPF再生制御では、ポスト噴射された燃料が燃焼室6内で燃焼しないタイミング(膨張行程の後半であって、例えば、圧縮上死点後110°CA)でポスト噴射を実施する。また、DPF再生制御では、ポスト噴射を燃焼させる必要がないためグロープラグ11への通電を停止しグロープラグ11を作動させない。また、DPF再生制御では、未燃燃料が排気通路等に流入して排気通路等が閉塞されるのを回避するべく、EGRバルブ57、60は全閉とされる。
(3)作用等
以上のように、本実施形態では、アクティブDeNOx制御時およびDeSOx制御時において、グロープラグ11によって燃焼室6内の温度が高められることで、ポスト噴射された燃料と空気の混合気とをより確実に燃焼させることができる。そのため、ポスト噴射によって、混合気および排気の空燃比を吸蔵NOxおよび吸蔵SOxを還元可能な空燃比にしつつ、未燃の燃料が排気通路40に排出されるのを抑制することができる。
しかも、本実施形態では、アクティブDeNOx制御およびDeSOx制御が中断されてもグロープラグ11を作動させる。そのため、これらの制御の中断後もグロープラグ11を保温してその温度を高くすることができ、これらの制御の再開時にグロープラグ11(発熱部11a)の温度が所定の温度(ポスト噴射を適切に燃焼できる温度)に上昇するまでの時間を短く抑えることができる。従って、アクティブDeNOx制御およびDeSOx制御が再開された後(再開が可能となった後)、より早いタイミングで吸蔵NOxおよび吸蔵SOxを還元することが可能となり、これらの還元処理の機会を多く確保することができる。
特に、本実施形態では、ポスト噴射された燃料を燃焼室6内で燃焼させるアクティブDeNOx制御を第1領域R1でのみ実施するようにし、これにより、未燃燃料の排気通路40への排出を抑制しながらNOxの還元を実現している。そのため、加減速等に伴って、エンジン本体1の運転領域が、図5の矢印Y1で示すように第1領域R1からその他の領域に移行した後矢印Y2で示すように第1領域R1に復帰するという運転がなされやすい。つまり、第1領域R1に留まる時間が短くなりやすい。そのため、第1領域R1を外れてアクティブDeNOx制御が停止されるのに伴ってグロープラグ11の作動を停止して第1領域R1に復帰してからグロープラグ11の作動を再開させたのでは、第1領域R1に留まっている期間中にグロープラグ11の温度を十分に高められない。これに対して、本実施形態では、第1領域R1を外れてもグロープラグ11が保温されるため、第1領域R1に留まっている期間中にグロープラグ11の温度を適切に高めてアクティブDeNOx制御を適切に実施することができる。
ただし、単純にグロープラグ11をアクティブDeNOx制御の実施あるいはアクティブDeSOx制御の実施時と同様に作動させたのでは、発熱部11aに高い電圧が加え続けられて保温されることで、発熱部11aが比較的早期に劣化するおそれがある。
これに対して、本実施形態では、アクティブDeNOx制御およびDeSOx制御の中断時には、グロープラグ11の発熱部11aに加える電圧を、アクティブDeNOx制御およびDeSOx制御の実施時よりも低くしている。そのため、発熱部11aの温度を高くしながら、発熱部11aの劣化を抑制することができる。
また、本実施形態では、ギア段が基準段数以上の状態から外れるとアクティブDeNOx制御およびDeSOx制御を中断させるようにしている。そのため、ギア段が基準段数未満であってエンジン本体および車両の挙動が不安定になりやすい状態でアクティブDeNOx制御やDeSOx制御が実施されて前記挙動が不安定になるのを抑制することができる。つまり、アクティブDeNOx制御およびDeSOx制御では、ポスト噴射をその燃料が燃焼室6内で燃焼するように実施しており、メイン燃焼に加えてポスト噴射の変動によってもエンジントルクが変動しやすい。そのため、これらの制御を前記状態で実施するとエンジン本体および車両の挙動がより不安定になりやすい。従って、前記のように構成すれば、エンジン本体および車両の挙動が不安定になるのを回避できる。
また、本実施形態では、車両が加速または減速して車速の単位時間あたりの変化量が車速判定量以上のとき、および、ギア段が変化してからの経過時間が短いときも、車両の挙動は不安定になりやすい。これに対して、本実施形態では、これらのときにも、アクティブDeNOx制御およびDeSOx制御を中断させている。従って、エンジン本体および車両の挙動が不安定になるのを回避できる。
また、本実施形態では、排気温度が基準排気温度以上と高温であるときに、アクティブDeNOx制御およびDeSOx制御を中断させる。そのため、排気通路40に設けられた各種装置の熱害を抑制できる。つまり、アクティブDeNOx制御およびDeSOx制御を実施すると、ポスト噴射された燃料が燃焼すること、および、NOx触媒41や酸化触媒42で反応が生じることによって排気温度が高められる。そのため、これらの制御を排気温度が高い状態で実施すると、この温度が好ましくない値にまで高められるおそれがある。これに対して、本実施形態では、前記のように構成していることで、排気温度が過剰に高くなるのを抑制することができ、前記熱害を抑制できる。
(4)他の実施形態
前記実施形態では、アクティブDeNOx制御およびDeSOx制御の中断時にグロープラグ11の発熱部11aの温度を低下させるために、発熱部11aにかける電圧を低下させた場合について説明したが、前記目的を達成するためのグロー保温制御として、前記構成に代えて次のような構成としてもよい。
図11は、第2の実施形態に係るグロー保温制御を実施したときの、DeNOx実施フラグ、中断フラグ、グロープラグ11に加えられる電圧、グロープラグ11の発熱部11aの温度、の時間変化を模式的に示した図である。
図11に示すように、第2実施形態では、時刻t1にて、DeNOx実施フラグが1である状態で中断フラグが1になると、つまり、アクティブDeNOx制御の実施時にこれを中断させる要求があると、グロープラグ11の発熱部11aの電圧を0と所定値とに交互に切り替えてグロープラグ11を作動状態と停止状態とに交互に切り替える制御(グロー保温制御)を実施する。また、このとき、このグロープラグ11の作動時間△t1と停止時間△t2とを、発熱部11aの温度が所定の温度Tg以上(図11の例ではTg1以上)に維持されるように設定し、これが実現されるように作動状態と停止状態とを切り替える。例えば、発熱部11aの温度を、発熱部11aに加えられた電圧や推定した燃焼室6内の温度等から推定し、この推定した発熱部11aの温度が予め設定された第1判定温度Tg1(所定の温度Tgと同じあるいはこれよりもわずかに高い温度、図11の例では所定の温度Tgと同じ)以下になるとグロープラグ11の作動を再開させ、推定した発熱部11aの温度が予め設定された第2判定温度Tg2(第1判定温度Tg1よりも高い温度)以上になるとグロープラグ11の作動を停止させる。
図11の発熱部11aの温度のグラフにおいて、実線は、この第2実施形態に係る温度変化を表し、破線は、アクティブDeNOx制御およびDeSOx制御の中断時にこれら制御の実施時と同様にグロープラグ11を作動させたときの温度変化を表し、鎖線は、アクティブDeNOx制御およびDeSOx制御の中断時にグロープラグ11の作動を完全に停止させたときの温度変化を表している。このグラフに示されるように、この第2実施形態によっても、アクティブDeNOx制御およびDeSOx制御の中断時にこれら制御の実施時と同様にグロープラグ11を作動させたときよりも、発熱部11aの温度を低く抑えることができる。また、この第2実施形態によっても、アクティブDeNOx制御およびDeSOx制御の中断時にグロープラグ11の作動を完全に停止させたときよりも、アクティブDeNOx制御およびDeSOx制御の再開時において発熱部11aの温度を高くすることができる。従って、グロープラグ11の劣化を抑制しつつ、吸蔵NOxおよび吸蔵SOxをより早期に還元させることができる。
なお、第2実施形態において、前記構成に代えて、グロープラグ11の作動時間△t1と停止時間△t2とを予め設定しておき、この設定時間だけグロープラグ11の作動と停止とを行うようにしてもよい。