[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による固体撮像装置について、図1乃至図5を用いて説明する。
図1は、本実施形態による固体撮像装置の概略構成を示すブロック図である。図2は、本実施形態による固体撮像装置の画素の等価回路図である。図3は、本実施形態による固体撮像装置の画素の平面レイアウトを示す図である。図4は、本実施形態による固体撮像装置の画素の概略断面図である。図5は、本実施形態の比較例による固体撮像装置の画素の平面図である。
本実施形態による固体撮像装置100は、図1に示すように、画素領域10と、垂直走査回路20と、列読み出し回路30と、水平走査回路40と、制御回路50と、出力回路60とを有している。
画素領域10には、複数行及び複数列に渡ってマトリクス状に配された複数の画素12が設けられている。画素領域10の画素アレイの各行には、行方向(図1において横方向)に延在して、制御信号線14が配されている。制御信号線14は、行方向に並ぶ画素12にそれぞれ接続され、これら画素12に共通の信号線をなしている。また、画素領域10の画素アレイの各列には、列方向(図1において縦方向)に延在して、垂直出力線16が配されている。垂直出力線16は、列方向に並ぶ画素12にそれぞれ接続され、これら画素12に共通の信号線をなしている。
各行の制御信号線14は、垂直走査回路20に接続されている。垂直走査回路20は、画素12から画素信号を読み出す際に画素12内の読み出し回路を駆動するための制御信号を、制御信号線14を介して画素12に供給する回路部である。各列の垂直出力線16の一端は、列読み出し回路30に接続されている。画素12から読み出された画素信号は、垂直出力線16を介して列読み出し回路30に入力される。列読み出し回路30は、画素12から読み出された画素信号に対して所定の信号処理、例えば増幅処理やAD変換処理等の信号処理を実施する回路部である。列読み出し回路30は、差動増幅回路、サンプル・ホールド回路、AD変換回路等を含み得る。
水平走査回路40は、列読み出し回路30において処理された画素信号を列毎に順次、出力回路60に転送するための制御信号を、列読み出し回路30に供給する回路部である。制御回路50は、垂直走査回路20、列読み出し回路30及び水平走査回路40の動作やそのタイミングを制御する制御信号を供給するための回路部である。出力回路60は、バッファアンプ、差動増幅器などから構成され、列読み出し回路30から読み出された画素信号を固体撮像装置100の外部の信号処理部に出力するための回路部である。
それぞれの画素12は、図2に示すように、光電変換部PDと、転送トランジスタM1と、リセットトランジスタM2と、増幅トランジスタM3と、選択トランジスタM4とを含む。光電変換部PDは、例えばフォトダイオードであり、アノードが接地電圧線に接続され、カソードが転送トランジスタM1のソースに接続されている。転送トランジスタM1のドレインは、リセットトランジスタM2のソース及び増幅トランジスタM3のゲートに接続されている。転送トランジスタM1のドレイン、リセットトランジスタM2のソース及び増幅トランジスタM3のゲートの接続ノードは、いわゆるフローティングディフュージョン(FD)であり、このノードが含む容量成分からなる電荷電圧変換部を構成する。リセットトランジスタM2のドレイン及び増幅トランジスタM3のドレインは、電源電圧線(Vdd)に接続されている。増幅トランジスタM3のソースは、選択トランジスタM4のドレインに接続されている。選択トランジスタM4のソースは、垂直出力線16に接続されている。垂直出力線16の他端には、電流源18が接続されている。
制御信号線14は、図2に示す回路構成の場合、転送ゲート信号線TX、リセット信号線RES、選択信号線SELを含む。転送ゲート信号線TXは、転送トランジスタM1のゲートに接続される。リセット信号線RESは、リセットトランジスタM2のゲートに接続される。選択信号線SELは、選択トランジスタM4のゲートに接続される。
光電変換部PDは、入射光をその光量に応じた量の電荷に変換(光電変換)するとともに、生じた電荷を蓄積する。転送トランジスタM1は、オンすることにより光電変換部PDの電荷をフローティングディフュージョンFDに転送する。フローティングディフュージョンFDは、その容量による電荷電圧変換によって、光電変換部PDから転送された電荷の量に応じた電圧となる。増幅トランジスタM3は、ドレインに電源電圧が供給され、ソースに選択トランジスタM4を介して電流源18からバイアス電流が供給される構成となっており、ゲートを入力ノードとする増幅部(ソースフォロワ回路)を構成する。これにより増幅トランジスタM3は、フローティングディフュージョンFDの電圧に基づく信号を、選択トランジスタM4を介して垂直出力線16に出力する。リセットトランジスタM2は、オンすることによりフローティングディフュージョンFDを電源電圧Vddに応じた電圧にリセットする。
図3は、本実施形態による固体撮像装置の画素12の平面レイアウトを示す図である。図4は、図3のA−A′線に沿った概略断面図である。図3及び図4には、画素12の構成要素のうち、光電変換部PD及び転送トランジスタM1のみを示している。なお、図3には1つの画素12の平面レイアウトのみを示しているが、実際には左右方向及び上下方向に所定の単位画素ピッチで図3の平面レイアウトが周期的に配されている。図3に示す点線は、隣接する画素12との間の境界線の一例である。
不純物濃度の低いn型の半導体基板110の表面部には、活性領域112を画定する素子分離絶縁領域114が設けられている。活性領域112には、光電変換部PDを構成するフォトダイオードと、転送トランジスタM1と、光電変換部PDから転送される電荷を保持する電荷保持部としてのフローティングディフュージョンFDとが配される。
光電変換部PDは、半導体基板110の活性領域112の表面部に設けられたp型半導体領域116と、p型半導体領域116の下部に接して設けられたn型半導体領域118とを含む埋め込みフォトダイオードである。n型半導体領域118は、光電変換部PDで生じた信号電荷(電子)を蓄積するための電荷蓄積層である。
フローティングディフュージョンFDは、半導体基板110の活性領域112の表面部にn型半導体領域118から離間して設けられたn型半導体領域120により構成されている。
転送トランジスタM1は、n型半導体領域118とn型半導体領域120との間の半導体基板110上にゲート絶縁膜122を介して設けられたゲート電極124を含む。n型半導体領域118とn型半導体領域120との間の半導体基板110内には、これらを電気的に分離するためのp型半導体領域126が設けられている。
n型半導体領域118の下部には、n型半導体領域118から下方に空乏層が広がるのを抑制するための空乏化抑制層としてのp型半導体領域128が設けられている。p型半導体領域128は、平面視において、行方向(図において横方向)に延在するストライプ状のパターンにより構成されている。図3には、隣接する2つのストライプ状のパターンのp型半導体領域128a,128bと、これらの間の間隙140とを示している。p型半導体領域128aとp型半導体領域128bとの間の間隙140は、平面視において、n型半導体領域118を横断するように配されている。或いは、n型半導体領域118とp型半導体領域128aとが重なる領域を第1の領域、n型半導体領域118とp型半導体領域128bとが重なる領域を第2の領域と定義すると、第1の領域と第2の領域とが互いに離間していると言うこともできる。さらに言えば、第2半導体領域である、n型半導体領域118は、平面視において、第1の端部と、第1の端部に対向する第2の端部とを備える。第1の端部の一部と、第2の端部の一部とに渡って、第1の領域と第2の領域とが離間されていると言える。なお、本明細書において平面視とは、固体撮像装置の各構成部分を半導体基板110の表面に平行な面に投影することにより得られる2次元平面図であり、例えば図3の平面レイアウト図に対応する。
半導体基板110の深部には、p型半導体領域130,132,134が設けられている。p型半導体領域130は、半導体基板110の内部において画素12間の分離の役目を果たすものである。p型半導体領域132は、p型半導体領域130よりも深い半導体基板110の内部において画素12間の分離の役目を果たすものである。p型半導体領域134は、半導体基板110中で発生した信号電荷を有効に集める深さを規定するためのものである。なお、本明細書では、p型半導体領域126によって電気的に分離された半導体基板110の表面部を、半導体領域と呼ぶこともある。
n型半導体領域118の下部にp型半導体領域128を設けることで、n型半導体領域118とp型半導体領域128との間にはpn接合容量が形成される。Q=CVで表される関係式から明らかなように、光電変換部PDのpn接合にある決まった逆バイアス電圧Vを印加した場合、pn接合容量Cが大きいほどに蓄積電荷量Qは大きくなる。n型半導体領域118に蓄積された信号電荷は信号出力部に転送されるが、n型半導体領域118の電位が電源電圧等によって決まるある所定の電位に達すると、n型半導体領域118の信号電荷は転送されなくなる。つまり、信号電荷の転送に伴う電圧Vの変動量は決まっているので、光電変換部PDのpn接合容量に比例して飽和電荷量は大きくなる。したがって、p型半導体領域128を設けることで、電荷蓄積層としてのn型半導体領域118の飽和電荷量を増加することができる。
また、p型半導体領域128aとp型半導体領域128bとの間の間隙140は、n型半導体領域118とp型半導体領域134との間の半導体基板110内で発生した信号電荷をn型半導体領域118に集める際の信号電荷の移動経路となる。したがって、間隙140の大きさや形状、p型半導体領域128の不純物濃度を適切に設定することにより、n型半導体領域118とp型半導体領域134との間の半導体基板110内で発生した信号電荷をすみやかにn型半導体領域118に集めることができる。すなわち、p型半導体領域128を設けない構造において得られる感度と同等の感度を得ることができる。
なお、間隙140は、平面視におけるn型半導体領域118の中央部の近傍に配置することが望ましい。n型半導体領域118は、電位の分布を持ち、中央部の電位が高く、端部の電位は低くなっている。このため、p型半導体領域128よりも深い場所で発生した信号電荷をドリフトによってn型半導体領域118に効果的に収集するうえで、電位の高いn型半導体領域118の中央部の近傍に間隙140を設けることが有効である。また、間隙140をn型半導体領域118の中央部の近傍に配置することには、信号電荷の移動経路を短くできるメリットもある。
したがって、本実施形態の上記構成によれば、光電変換部PDにおける受光感度を低下することなく、光電変換部PDの飽和電荷量を増加することができる。
前述のように、本実施形態による固体撮像装置では、p型半導体領域128aとp型半導体領域128bとの間の間隙140を、平面視においてn型半導体領域118を横断するように配置している。これは、製造ばらつきに起因する特性変動を抑制するためである。
平面視におけるn型半導体領域118の角部は、実際の形成時には例えば図3に示すように丸まるが、その丸まり方は形成時の条件等によって必ずしも一定にはならない。そのため、例えば図5に示すように間隙140をn型半導体領域118の端部と重なるように配置した場合、n型半導体領域118と間隙140とが重なる部分の形状は、n型半導体領域118の形成条件等によって変動する。
もし、形成時のばらつきによってn型半導体領域118と間隙140とが重なる部分の形状が変わるならば、そのばらつきがあっても十分な感度が得られるように、n型半導体領域118と間隙140とが重なる部分の面積を広めに設定する必要が生じる。しかしその場合には、n型半導体領域118とp型半導体領域128a,128bとが重なる部分の面積が小さくなるので、光電変換部PDの飽和電荷量を十分に大きくすることが難しくなる。
この点、本実施形態による固体撮像装置においては、図3に示すように、p型半導体領域128aとp型半導体領域128bとの間の間隙140を、n型半導体領域118の角部から離間している。したがって、n型半導体領域118と間隙140とが重なる部分の形状は、n型半導体領域118とp型半導体領域128a,128bとの位置が多少ずれても変化しない。つまり、本実施形態による固体撮像装置では、形成時のばらつきによらず一定の感度が得られるため、高い感度と大きな飽和電荷量とを両立することができる。
なお、間隙140がゲート電極124と重なると、互いの位置関係のずれによって信号電荷の転送性能にばらつきが生じる虞があるので、間隙140は、ゲート電極124がない方向にn型半導体領域118を横断するように配置することが望ましい。
このように、本実施形態によれば、光電変換部の感度を安定的に維持しつつ飽和電荷量を増加することができる。これにより、安定的に高感度で飽和信号量が大きい固体撮像装置を実現することができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による固体撮像装置について、図6乃至図8を用いて説明する。第1実施形態による固体撮像装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。
図6は、本実施形態による固体撮像装置の画素の平面レイアウトを示す図である。図7は、本実施形態による固体撮像装置の画素の概略断面図である。図7は、図6のB−B′線断面図である。図8は、本実施形態の比較例による固体撮像装置の画素の平面図である。
本実施形態による固体撮像装置は、n型半導体領域118から下方に空乏層が広がるのを抑制するためのp型半導体領域128に設けられた間隙140の配置が、第1実施形態による固体撮像装置とは異なっている。
すなわち、本実施形態による固体撮像装置では、図6に示すように、p型半導体領域128に設けられた間隙140を画素12毎に孤立したパターンとして、隣接する画素12の間隙140が繋がらないように、p型半導体領域128をレイアウトしている。間隙140は、平面視において、周囲をp型半導体領域128により囲まれることになる。また、p型半導体領域128の間隙140の角部が平面視においてn型半導体領域118内に位置しないように、p型半導体領域128をレイアウトしている。
つまり、本実施形態による固体撮像装置においても、p型半導体領域128に設けられた間隙140は、平面視において、n型半導体領域118を横断するように配されている。換言すると、平面視においてn型半導体領域118とp型半導体領域128とが重なる領域は、第1の領域と、間隙140によって第1の領域から離間した第2の領域とを含む。
第1実施形態では、p型半導体領域128(p型半導体領域128a,128b)を行方向に延在するストライプ状のパターンとし、これらパターンの間隙(間隙140)がn型半導体領域118を横断するように、p型半導体領域128を配置した。しかしながら、間隙140をこのように配置することによって行方向に隣接する画素12の間隙140が繋がった場合、画素12のレイアウトによっては、信号電荷がこの間隙140を介して隣接する画素12に漏れ込み、画素間クロストークを生じる虞がある。
しかしながら、本実施形態による固体撮像装置のように間隙140を画素12毎に孤立したパターンとすることで、隣接する画素12の間隙140の間にはp型半導体領域128が配置されるため、画素間クロストークを低減することができる。
また、第1実施形態において説明したn型半導体領域118の場合と同様、p型半導体領域128(間隙140)の角部も、形成時に予測が難しい丸まりを生じる。そのため、例えば図8に示すように間隙140をn型半導体領域118の内側に配置すると、間隙140の形状の変動に応じて受光感度が変動することになる。
しかしながら、本実施形態の固体撮像装置のように、n型半導体領域118を横断するように間隙140を配置することで、n型半導体領域118と間隙140とが重なる部分の形状は、形成時のばらつきによらず一定となる。これにより、形成時のばらつきによらず一定の感度を得ることができ、高い感度と大きな飽和電荷量とを両立することができる。
したがって、本実施形態の固体撮像装置によれば、光電変換部の感度を安定的に維持しつつ飽和電荷量を増加するとともに、画素間クロストークを低減することができる。これにより、安定的に高感度で飽和信号量が大きい固体撮像装置を実現することができる。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態による固体撮像装置について、図9を用いて説明する。第1及び第2実施形態による固体撮像装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。
図9は、本実施形態による固体撮像装置の画素の概略断面図である。
第1及び第2実施形態では、光電変換部PD及び転送トランジスタM1を第1導電型の半導体基板110内に配置した例を示した。本実施形態では、光電変換部PD及び転送トランジスタM1を、半導体基板110とは逆導電型のウェル内に配置した例を示す。
本実施形態による固体撮像装置は、図9に示すように、n型の半導体基板110に設けられたp型半導体領域142を有する。このp型半導体領域142が、p型ウェルを構成する。n型半導体領域118及びp型半導体領域116,128,130,132は、p型半導体領域142内に配される。本構成例では、n型半導体領域118とn型半導体領域120との間はp型半導体領域142で構成されるため、第1実施形態で説明したp型半導体領域126は不要である。p型半導体領域128,130,132を構成するp型不純物の不純物濃度は、p型半導体領域142を構成するp型不純物の不純物濃度よりも高くなっている。その他の構成は、第1又は第2実施形態による固体撮像装置と同様である。
本実施形態の固体撮像装置においても、p型半導体領域128に設けられた間隙140は、第1及び第2実施形態の場合と同様に、平面視において、n型半導体領域118を横断するように配されている。したがって、間隙140の大きさや形状、p型半導体領域128の不純物濃度を適切に設定することにより、p型半導体領域128を設けない構造によって得られる感度と同等の感度を得ることができる。
また、n型半導体領域118と間隙140とが重なる部分の形状は、形成時のばらつきによらず安定的に形成される。したがって、間隙140を余分に拡げる必要はなく、その分、n型半導体領域118とp型半導体領域128とが重なる面積を確保することができ、光電変換部PDの飽和電荷量を十分に大きくすることができる。
光電変換部PDと転送トランジスタM1とをp型ウェル内に配置する本実施形態の固体撮像装置は、第1及び第2実施形態による固体撮像装置と比較して信号電荷の収集力が弱く感度が低い。しかし、間隙140が配置された部分においてもn型半導体領域118とp型半導体領域142との間にpn接合容量が形成されるので、第1及び第2実施形態による固体撮像装置よりも光電変換部PDの飽和電荷量は大きくすることができる。何れの構成を用いるかは、より重要視する特性や目的等に応じて適宜選択することができる。
このように、本実施形態によれば、光電変換部の感度を安定的に維持しつつ飽和電荷量を増加することができる。これにより、安定的に高感度で飽和信号量が大きい固体撮像装置を実現することができる。
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態による固体撮像装置について、図10乃至図12を用いて説明する。第1実施形態乃至第3による固体撮像装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。
図10は、本実施形態による固体撮像装置の画素の概略断面図である。図11及び図12は、信号電荷の転送時における半導体基板内のポテンシャル図である。
本実施形態による固体撮像装置は、図10に示すように、p型半導体領域144を更に有しているほかは、第1及び第2実施形態による固体撮像装置と同様である。p型半導体領域144は、平面視において少なくとも一部が間隙140と重なるように設けられている。p型半導体領域144は、断面視においては、図10に示すように、p型半導体領域116とn型半導体領域118との間に設けられている。p型半導体領域144は、上部においてp型半導体領域116の下部に接し、n型半導体領域118の下部よりも浅い半導体基板110内に設けられている。
前述のように、n型半導体領域118とp型半導体領域128との間には、pn接合容量が形成される。したがって、n型半導体領域118が空乏化する電位(空乏化電位)がp型半導体領域128を設けない場合と変わらなければ、光電変換部PDの飽和電荷量を増すことができる。
しかし、n型半導体領域118からn型半導体領域120に信号電荷を転送する際の転送性能の観点からみると、空乏化電位が同じであれば、p型半導体領域128を設けた場合の方が、p型半導体領域128を設けない場合よりも転送性能は低下する。
図11及び図12は、転送トランジスタM1がオンのときの、光電変換部PD(n型半導体領域118)からチャネル部を介してフローティングディフュージョンFD(n型半導体領域120)に至る部分の電位分布を示す図である。図11は、p型半導体領域128を設けていない場合であり、そのときの空乏化電位をVdep1で表している。図12は、p型半導体領域128を設けた場合であり、そのときの空乏化電位をVdep2で表している。
空乏化電位Vdep1と空乏化電位Vdep2とが等しい場合、p型半導体領域128を設けたときの方がp型半導体領域128を設けないときよりも光電変換部PDの飽和電荷量は大きくなる。
しかしながら、p型半導体領域128を設けたときには、図12に示すように、光電変換部PDには比較的大きなポテンシャルの窪みが生じ、転送性能が低下する。このポテンシャルの窪みは、p型半導体領域128の間隙140が設けられた部位に対応して生じる。これは、平面視においてn型半導体領域118とp型半導体領域128とが重なる部分に比べて、n型半導体領域118と間隙140とが重なる部分のほうが同じ電位に対して空乏化しにくいからである。このようなポテンシャルの窪みには信号電荷が留まりやすく、転送動作時には転送性能の低下として表れる。
固体撮像装置において光電変換部PDの飽和電荷量とは、光電変換部PDにおいて保持できる電荷量の最大値であり、フローティングディフュージョンFDへと転送可能な電荷量ということもできる。p型半導体領域128の存在は、n型半導体領域118との間のpn接合容量を増し、同じ空乏化電位であればn型半導体領域118は、より多くの電荷を保持することができる。一方で、間隙140の存在は、ポテンシャルの窪みを生じやすく、転送性能の低下の原因となる。この2つの効果が打ち消しあうことで、光電変換部PDの飽和電荷量はp型半導体領域128を設けない場合よりは増加するものの、その増加量はpn接合容量の増加量に応じたほどではなくなる。また、場合によっては、飽和電荷量の増加がほとんどない場合も起こりうる。
このような観点から、本実施形態による固体撮像装置では、平面視において間隙140とほぼ重なる場所のn型半導体領域118内に、p型半導体領域144を設けている。
p型半導体領域144を設けることで、間隙140が設けられた部分のn型半導体領域118におけるポテンシャルの窪みが解消され、フローティングディフュージョンFDへと転送可能な電荷量を増加することができる。このときの、p型半導体領域128を設けない場合と比較した飽和電荷量の増加量は、n型半導体領域118とp型半導体領域128との間に形成されるpn接合容量の増加量に応じた量以上となる。
p型半導体領域128を設けない場合でも、n型半導体領域118の中央部分は、最も電位が高く、もともとポテンシャルの窪みが生じやすい箇所である。そのため、間隙140がn型半導体領域118の中央部分の近くに存在すると、p型半導体領域128の導入によってポテンシャルの窪みが更に深くなる。ポテンシャルの窪みが生じる箇所にp型半導体領域144を設けることで、ポテンシャルの窪みやバリアを小さくし、フローティングディフュージョンFDへと転送可能な電荷量を増加することができる。
なお、p型半導体領域144は、上部においてp型半導体領域116に接し、下部にはn型半導体領域118が存在するため、p型半導体領域144が間隙140を塞いで感度の低下を招くようなことはない。したがって、p型半導体領域128を設けない場合と同じ感度を維持しつつ、転送可能な信号電荷量を第1実施形態の場合よりも増加することができる。
このように、本実施形態によれば、光電変換部の感度を安定的に維持しつつ飽和電荷量を増加することができる。これにより、安定的に高感度で飽和信号量が大きい固体撮像装置を実現することができる。
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態による固体撮像装置について、図13を用いて説明する。第1実施形態による固体撮像装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。図13は、本実施形態による固体撮像装置の画素の概略断面図である。
本実施形態による固体撮像装置は、図13に示すように、n型半導体領域146を更に有しているほかは、第1又は第2実施形態による固体撮像装置と同様である。n型半導体領域146は、p型半導体領域128が設けられた領域と平面視において実質的に等しい領域の、p型半導体領域116とp型半導体領域128との間の深さに設けられている。n型半導体領域146は、n型半導体領域118とほぼ同じ深さに位置している。なお、実質的に等しい領域とは、n型半導体領域146とp型半導体領域128とが同じマスクパターンを用いてイオン注入により形成されたものであることを意図している。
n型半導体領域118の不純物濃度は、例えば、n型半導体領域146を設けない場合と同等の飽和電荷量が得られるように設定される。このため、本実施形態の固体撮像装置におけるn型半導体領域118の不純物濃度は、第1実施形態の固体撮像装置におけるn型半導体領域118の不純物濃度よりも低濃度となる。平面視において間隙140と重なる部分にはn型半導体領域146は設けられていないため、間隙140が設けられた部分のn型半導体領域118にポテンシャルの窪みは形成されにくく、転送可能な信号電荷量を増加することができる。
しかも本実施形態においては、p型半導体領域128とn型半導体領域146とを同じマスク工程で形成することが可能であり、第4実施形態の場合と比較してフォトリソグラフィ工程を1工程少なくすることができる。また、p型半導体領域128とn型半導体領域146との間に位置合わせずれが生じることはなく、安定した飽和電荷量、転送特性、感度特性を得ることができる。
このように、本実施形態によれば、光電変換部の感度を安定的に維持しつつ飽和電荷量を増加することができる。これにより、安定的に高感度で飽和信号量が大きい固体撮像装置を実現することができる。
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態による撮像システムについて、図14を用いて説明する。第1乃至第5実施形態による固体撮像装置と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し或いは簡潔にする。図14は、本実施形態による撮像システムの概略構成を示すブロック図である。
上記第1乃至第5実施形態で述べた固体撮像装置100は、種々の撮像システムに適用可能である。適用可能な撮像システムの例としては、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダ、監視カメラ、複写機、ファックス、携帯電話、車載カメラ、観測衛星などが挙げられる。また、レンズなどの光学系と撮像装置とを備えるカメラモジュールも、撮像システムに含まれる。図14には、これらのうちの一例として、デジタルスチルカメラのブロック図を例示している。
図14に例示した撮像システム200は、撮像装置201、被写体の光学像を撮像装置201に結像させるレンズ202、レンズ202を通過する光量を可変にするための絞り204、レンズ202の保護のためのバリア206を有する。レンズ202及び絞り204は、撮像装置201に光を集光する光学系である。撮像装置201は、第1乃至第5実施形態で説明した固体撮像装置100であって、レンズ202により結像された光学像を画像データに変換する。
撮像システム200は、また、撮像装置201より出力される出力信号の処理を行う信号処理部208を有する。信号処理部208は、撮像装置201が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換を行う。また、信号処理部208はその他、必要に応じて各種の補正、圧縮を行って画像データを出力する動作を行う。信号処理部208の一部であるAD変換部は、撮像装置201が設けられた半導体基板に形成されていてもよいし、撮像装置201とは別の半導体基板に形成されていてもよい。また、撮像装置201と信号処理部208とが同一の半導体基板に形成されていてもよい。
撮像システム200は、さらに、画像データを一時的に記憶するためのメモリ部210、外部コンピュータ等と通信するための外部インターフェース部(外部I/F部)212を有する。さらに撮像システム200は、撮像データの記録又は読み出しを行うための半導体メモリ等の記録媒体214、記録媒体214に記録又は読み出しを行うための記録媒体制御インターフェース部(記録媒体制御I/F部)216を有する。なお、記録媒体214は、撮像システム200に内蔵されていてもよく、着脱可能であってもよい。
さらに撮像システム200は、各種演算とデジタルスチルカメラ全体を制御する全体制御・演算部218、撮像装置201と信号処理部208に各種タイミング信号を出力するタイミング発生部220を有する。ここで、タイミング信号などは外部から入力されてもよく、撮像システム200は少なくとも撮像装置201と、撮像装置201から出力された出力信号を処理する信号処理部208とを有すればよい。
撮像装置201は、撮像信号を信号処理部208に出力する。信号処理部208は、撮像装置201から出力される撮像信号に対して所定の信号処理を実施し、画像データを出力する。信号処理部208は、撮像信号を用いて、画像を生成する。
第1乃至第5実施形態による固体撮像装置100を適用することにより、安定的に高感度で飽和信号量が大きい良質な画像を取得しうる撮像システムを実現することができる。
[第7実施形態]
本発明の第7実施形態による撮像システム及び移動体について、図15を用いて説明する。図15は、本実施形態による撮像システム及び移動体の構成を示す図である。
図15(a)は、車戴カメラに関する撮像システムの一例を示したものである。撮像システム300は、撮像装置310を有する。撮像装置310は、上記第1乃至第5実施形態のいずれかに記載の固体撮像装置100である。撮像システム300は、撮像装置310により取得された複数の画像データに対し、画像処理を行う画像処理部312と、撮像システム300により取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う視差算出部314を有する。また、撮像システム300は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する距離計測部316と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部318と、を有する。ここで、視差算出部314や距離計測部316は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部318はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
撮像システム300は車両情報取得装置320と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、撮像システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置である制御ECU330が接続されている。また、撮像システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置340とも接続されている。例えば、衝突判定部318の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU330はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置340は音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方又は後方を撮像システム300で撮像する。図15(b)に、車両前方(撮像範囲350)を撮像する場合の撮像システムを示した。車両情報取得装置320が、所定の動作を行うように撮像システム300ないしは撮像装置310に指示を送る。このような構成により、測距の精度をより向上させることができる。
上記では、他の車両と衝突しないように制御する例を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御や、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。さらに、撮像システムは、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機あるいは産業用ロボットなどの移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
[変形実施形態]
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態である。例えば、第4実施形態のp型半導体領域144を、第3又は第5実施形態の固体撮像装置に適用してもよい。
また、上記実施形態では、信号電荷として電子を生成する光電変換部PDを用いた固体撮像装置を例にして説明したが、信号電荷として正孔を生成する光電変換部PDを用いた固体撮像装置についても同様に適用可能である。この場合、画素12の各部を構成する半導体領域の導電型は、逆導電型になる。なお、上記実施形態に記載したトランジスタのソースとドレインの呼称は、トランジスタの導電型や着目する機能等に応じて異なることもあり、上述のソース及びドレインの全部又は一部が逆の名称で呼ばれることもある。
また、図2に示した画素12の回路構成は一例であり、適宜変更が可能である。画素12は、少なくとも、光電変換部PDと、光電変換部PDから電荷保持部に電荷を転送する転送トランジスタM1とを有していればよい。本発明は、CMOSイメージセンサのみならず、CCDイメージセンサにも適用可能である。また、光電変換部PDから電荷が転送される電荷保持部は、必ずしも増幅部の入力ノードとしてのフローティングディフュージョンFDである必要はなく、光電変換部PD及びフローティングディフュージョンFDとは別の電荷保持部であってもよい。
また、上記第1実施形態では、p型半導体領域128を、平面視において行方向に延在するストライプ状のパターンにより構成したが、平面視において列方向に延在するストライプ状のパターンにより構成してもよい。この場合も、p型半導体領域128aとp型半導体領域128bとの間の間隙140は、平面視においてn型半導体領域118を横断するように配置する。同様に、第2実施形態において、間隙140を列方向に延在するパターンとしてもよい。
また、上記第4及び第5実施形態では、第1及び第2実施形態による固体撮像装置の構成を前提として各実施形態の特徴部分を説明した。しかしながら、第4及び第5実施形態においては、p型半導体領域128の平面レイアウトは、必ずしも図3や図6に示すものと同じである必要はない。例えば、第4及び第5実施形態の固体撮像装置において、図8に示すp型半導体領域128と同様の平面レイアウトを適用してもよい。
この場合、前述のように、間隙140の角部の形状がばらつき、それが特性のばらつきに影響する虞もある。しかしながら、例えばn型半導体領域118の平面形状が正方形に近い場合など、このばらつきを見込んでも飽和電荷量の増大効果の方が大きい場合には、図8の平面レイアウトの場合でも、感度を維持しつつ従来よりも大きな飽和電荷量を得ることが可能である。
また、第6及び第7実施形態に示した撮像システムは、本発明の撮像装置を適用しうる撮像システム例を示したものであり、本発明の撮像装置を適用可能な撮像システムは図14及び図15に示した構成に限定されるものではない。
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。