JP6946344B2 - アクチュエータ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本願は、2016年12月27日に、日本に出願された特願2016−252346号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
α=tan−1(πdT)
(式中、dは、ポリマーファイバーの直径であり、Tは、ポリマーファイバーの長さあたりの挿入される撚りの量である。)
(1)高分子から構成される繊維状高分子材料からなり、前記繊維状高分子材料の最外表面に捻り痕を有するアクチュエータであって、
前記捻り痕が前記繊維状高分子材料の繊維軸に対して傾斜している角度xは、46°以上であり、かつ、
前記角度xと、前記繊維状高分子材料を構成する高分子から構成された繊維を、25℃の環境下で、前記繊維の引張弾性率×4.5×10−3の引張応力を加えて、コイル化が生じる限界まで又は破断する限界まで捻った際の捻り痕の、前記繊維の繊維軸に対して傾斜している角度yとが、x>y+0.5°
の関係を有するアクチュエータ。
(2)前記高分子のガラス転移温度が45℃以上である、前記(1)に記載のアクチュエータ。
(6)前記捻る工程の後、さらに、前記繊維の両端を固定して、前記繊維の捻りが戻らないようにしたうえで、残存応力緩和処理を行う工程、を含む、前記(5)に記載のアクチュエータの製造方法。
(7)前記高分子のガラス転移温度が45℃以上である、前記(5)又は(6)に記載のアクチュエータの製造方法。
(8)前記高分子がナイロンである、前記(5)〜(7)のいずれか一項に記載のアクチュエータの製造方法。
角度yは、具体的には以下のとおり決定する。繊維状高分子材料を構成する高分子から構成される繊維に、25℃においてその繊維の引張弾性率×4.5×10−3の引張応力を加えて捻じったとき破断した場合には、破断時点の捻じり回転数よりも10回転少ない回転数で再度同じ繊維を同じ条件で捻じった後、繊維状高分子材料を構成する高分子のガラス転移温度よりも40℃以上高い温度で、30分間、後述する残存応力緩和処理を行った状態の捻り痕の、繊維軸に対して傾斜している角度をyとする。また、前記繊維に、25℃においてその繊維の引張弾性率×4.5×10−3の引張応力を加えて捻じったときコイル化が生じた場合には、その後、繊維状高分子材料を構成する高分子のガラス転移温度よりも40℃以上高い温度で、30分間、後述する残存応力緩和処理を行った状態の捻り痕の、繊維軸に対して傾斜している角度をyとする。
高温であるほど、軟化する傾向があるという高分子材料の特性を考慮すると、少なくとも、繊維を捻る工程の環境の温度>25℃である製造方法を採用することが好ましい。
本発明の第二実施形態に係るアクチュエータを構成する高分子の種類としては、上述の本発明の第二実施形態に係るアクチュエータの製造方法を採用することができるという観点から、ガラス転移温度(Tg)が25℃よりも高いものが好ましい。高分子のガラス転移温度(Tg)は45℃よりも高いものであってもよい。例えば、高分子の種類としては、ナイロン6(Tg:45℃)、ナイロン6,6(Tg:47℃)等のナイロン、ポリメチルメタクリレート(Tg:100℃)等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(Tg:80℃)等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート(Tg:145℃)、ポリ塩化ビニル(Tg:82℃)、ポリカーボネート(Tg:150℃)等が挙げられる。また、ガラス転移温度(Tg)が25℃よりも低い高分子の種類としては、ポリエチレン(Tg:−120℃)、ポリプロピレン(Tg:−20℃)等が挙げられる。
アクチュエータを、光学顕微鏡を用いて観察し、繊維軸に対する線状の捻り痕の角度を計測する。捻り痕の角度とは、繊維軸方向と平行を0°とし、繊維軸と垂直方向を90°として、繊維直径方向の中央部付近に観察される捻り痕について、繊維軸方向からの捻り痕の傾斜角度を決定したものである。
12cm長のアクチュエータ試料を採取し、一方の端(端部Aとする。)から1cm(B点),6cm(C点),11cm(D点)離れた位置に印をつけ、端部Aから1cm離れたB点の位置に、長さ30mm、幅1.5mm、厚さ0.5mm、質量170mgの細長いステンレス製の板を取り付ける。具体的には、ステンレス製の板の端から10mmの箇所でそのステンレス製の板を折り曲げ、折り曲げた部分で試料を挟み、ペンチで力を加えることでアクチュエータ試料にステンレス製の板を固定する。ステンレス製の板は試料と直交する向きになるように取り付ける。端部Aから11cm離れたD点の位置からもう一方の端部(すなわち、端部Aから12cm離れた位置)までをクランプで固定し、ステンレス製の板を下にして試料が鉛直方向と平行になるようにしながらC点の印まで沈むように温度25℃の水浴につけた後、引き上げて、温度80℃の湯浴にC点の印まで沈むようにゆっくりつける。加温によりアクチュエータ試料から繊維軸を中心とした回転方向に力が加わり、ステンレス製の板がアクチュエータ試料を軸にして回転したら、ステンレス製の板の動きが止まった角度と25℃水浴浸漬時の角度の差を可動域の角度として観察する。温度25℃の水浴につけた後、温度80℃の湯浴につけるのまでの一連の回転運動を5回繰り返し、それらの可動域の角度の平均値を、そのアクチュエータ試料の回転角度とする。
ナイロン66からなる糸(東レモノフィラメント製、引張弾性率:2.9×103MPa、ガラス転移温度:47℃、直径0.5mm)を準備した。この糸を1mとり、一端に、環状の金具を介して260gの錘を接続した。また、他方の一端をモーターに接続した。錘の自重により、糸が重力方向に延びるように張り、環状の金具に金属棒を通すことにより、錘を接続した糸の一端が上下方向にのみ自由に動き、回転方向へは動かないようにした。この時、糸に印加される引張応力は12.98MPaであり、糸に印加される引っ張り応力は、糸の引張弾性率の4.5×10−3倍となる。そして、糸の周囲に、筒状のヒーター(マイセック株式会社製、製品名:マイチューブヒーター)を設置し、1mの糸の全体の周囲の環境を180℃に保ち、モーターを400rpmで580回転まで作動させた。この実施例1では、糸を捻っている間に糸にこぶは発生しなかった。この糸を、両端を固定して捻りが戻らないようにしたうえで、180℃無調湿の環境下に30分保管し、残存応力緩和処理を行った。この捻りを施した糸を測定・評価用のアクチュエータ試料とした。捻り痕の繊維軸に対する傾斜角度を測定したところ、捻り痕の角度は49.3°であった。加熱によるアクチュエータの可動域を評価したところ、回転角度は315°であった。
糸に捻りを施す際に、1mの糸の全体の周囲の環境を80℃に保ち、モーターを400rpmで540回転まで作動させ、この糸を、両端を固定して捻りが戻らないようにしたうえで、180℃無調湿の環境下に30分保管し、残存応力緩和処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にしてアクチュエータ試料を得た。この実施例2でも、糸を捻っている間に糸にこぶは発生しなかった。捻り痕の繊維軸に対する傾斜角度を測定したところ、捻り痕の角度は47.6°であった。加熱によるアクチュエータの可動域を評価したところ、回転角度は292°であった。
糸に捻りを施す際に、ヒーターで糸の周囲の温度を上げることをせずに、25℃の環境下で、580回転まで捻りを施したこと以外は、実施例1と同様にして試料を得た。この比較例1では、糸を捻っている間に糸にこぶが発生したため、こぶの無い部分をアクチュエータ試料とした。捻り痕の繊維軸に対する傾斜角度を測定したところ、捻り痕の角度は44.2°であった。加熱によるアクチュエータの可動域を評価したところ、回転角度は270°であった。
糸に捻りを施す際に、ヒーターで糸の周囲の温度を上げることをせずに、25℃の環境下で500回転まで糸に捻りを施したこと以外は、実施例1と同様にしてアクチュエータ試料を得た。この比較例2では、糸を捻っている間に糸にこぶは発生しなかった。捻り痕の繊維軸に対する傾斜角度を測定したところ、捻り痕の角度は44.5°であった。加熱によるアクチュエータの可動域を評価したところ、回転角度は270°であった。
糸に捻りを施す際に、ヒーターで糸の周囲の温度を上げることをせずに、25℃の環境下で375回転まで糸に捻りを施したこと以外は、実施例1と同様にしてアクチュエータ試料を得た。この比較例3でも、糸を捻っている間に糸にこぶは発生しなかった。捻り痕の繊維軸に対する傾斜角度を測定したところ、捻り痕の角度は33.1°であった。加熱によるアクチュエータの可動域を評価したところ、回転角度は225°であった。
糸に捻りを施す際に、ヒーターで糸の周囲の温度を上げることをせずに、25℃の環境下で250回転まで糸に捻りを施したこと以外は、実施例1と同様にしてアクチュエータ試料を得た。この比較例4でも、糸を捻っている間に糸にこぶは発生しなかった。捻り痕の繊維軸に対する傾斜角度を測定したところ、捻り痕の角度は20.0°であった。加熱によるアクチュエータの可動域を評価したところ、回転角度は160°であった。
糸に捻りを施す際に、ヒーターで糸の周囲の温度を上げることをせずに、25℃の環境下で125回転まで糸に捻りを施したこと以外は、実施例1と同様にしてアクチュエータ試料を得た。この比較例5でも、糸を捻っている間に糸にこぶは発生しなかった。捻り痕の繊維軸に対する傾斜角度を測定したところ、捻り痕の角度は10.1°であった。加熱によるアクチュエータの可動域を評価したところ、回転角度は80°であった。
比較例2,3,4,5では、捻じり痕の角度及び回転角度は、捻じり回転数におよそ比例する関係にあるが、比較例2の回転数500回を超えて回転させた比較例1の捻じり痕の角度及び回転角度では、比較例2の捻じり痕の角度及び回転角度とおよそ同じであった。すなわち、25℃の環境下では、比較例2の回転数500回がコイル化を生じる限界であり、それを超えてナイロン66の繊維を捻じると、コイル化してしまう。つまり、比較例1の捻り痕の角度44.2°がy2であり、比較例2の捻り痕の角度44.5°がy3であり、y3はy2±0.5°の範囲内にあるので、両者のうち大きいもの、すなわちy3=44.5°が実施例及び比較例で用いたナイロン6,6の繊維にとっての、角度yである。
ところが、実施例1では、ナイロン66のガラス転移温度:47℃を超えて、180℃の環境下では、580回転まで捻じっても、コイル化せず、回転角度は315°と、熱的に大きな可動域を示した。
実施例2で、ナイロン66を、80℃の環境下で、540回転まで捻じっても、コイル化せず、回転角度は292°と、熱的に大きな可動域を示した。
表1に各実施例及び比較例の捻り処理時の温度、回転数、こぶの有無、捻り痕の角度x、角度xと角度yの関係、回転角度(すなわち、アクチュエータ可動域)を示す。
Claims (8)
- 高分子から構成される繊維状高分子材料からなり、前記繊維状高分子材料の最外表面に捻り痕を有するアクチュエータであって、
前記捻り痕が前記繊維状高分子材料の繊維軸に対して傾斜している角度xは、46°以上であり、かつ、
前記角度xと、前記繊維状高分子材料を構成する高分子から構成された繊維を、25℃の環境下で、前記繊維の引張弾性率×4.5×10−3の引張応力を加えて、コイル化が生じる限界まで又は破断する限界まで捻った際の捻り痕の、前記繊維の繊維軸に対して傾斜している角度yとが、x>y+0.5°
の関係を有するアクチュエータ。 - 前記高分子のガラス転移温度が25℃以上である、請求項1に記載のアクチュエータ。
- 前記高分子がナイロンである、請求項1又は2に記載のアクチュエータ。
- 前記角度xが48°以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアクチュエータ。
- ガラス転移温度が25℃よりも高い高分子から構成される繊維を、前記繊維に対して適度な引張応力を加えながら、前記高分子のガラス転移温度よりも高い温度の環境下で、前記繊維にコイルが発生しないよう、こぶが発生しないような回数で捻る工程を含む、アクチュエータの製造方法。
- 前記捻る工程の後、さらに、前記繊維の両端を固定して、前記繊維の捻りが戻らないようにしたうえで、残存応力緩和処理を行う工程、を含む、請求項5に記載のアクチュエータの製造方法。
- 前記高分子のガラス転移温度が45℃以上である、請求項5又は6に記載のアクチュエータの製造方法。
- 前記高分子がナイロンである、請求項5〜7のいずれか一項に記載のアクチュエータの製造方法。
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