以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明の両面粘着シートのサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
この明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion : Fundamental and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E*(1Hz)<107dyne/cm2を満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)である。
特記しない場合、本明細書において「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、「(メタ)アクリル」とはアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
ここに開示される両面粘着シートは、シート形状の基材(支持基材)の両面にそれぞれ粘着剤層を有する形態の基材付き両面粘着シートである。この明細書中では、基材の一方の表面である第一面上に配置されている粘着剤層を第一粘着剤層といい、基材の他方の表面である第二面上に配置されている粘着剤層を第二粘着剤層という。ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。なお、ここに開示される粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の粘着シートであってもよい。
<基材>
ここに開示される技術において使用される基材の種類は、両面粘着シートとした場合に、所定の20%モジュラスと破断応力を有するものである限り特に限定されない。例えば、基材として樹脂フィルムを好ましく使用することができる。上記樹脂フィルムは、非発泡の樹脂フィルム、ゴム状フィルム、発泡体フィルム等であり得る。なかでも、非発泡の樹脂フィルム、ゴム状フィルムが好ましく、非発泡の樹脂フィルムがより好ましい。非発泡の樹脂フィルムは、機械的強度の点で弱点となり得る気泡(ボイド)が実質的に存在せず、発泡体と比べて破断応力等の機械的強度に優れる傾向がある。非発泡の樹脂フィルムはまた、加工性や寸法安定性、厚み精度、経済性(コスト)等の点にも優れる。
なお、この明細書における「樹脂フィルム」は、実質的に非多孔質のフィルムであって、いわゆる不織布や織布とは区別される概念(すなわち、不織布や織布を除く概念)である。また、非発泡の樹脂フィルムとは、発泡体とするための意図的な処理を行っていない樹脂フィルムのことを指す。非発泡の樹脂フィルムは、具体的には、発泡倍率が1.1倍未満(例えば1.05倍未満、典型的には1.01倍未満)の樹脂フィルムであり得る。
ここに開示される樹脂フィルムを構成する樹脂材料の好適例としては、エーテル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン等のポリウレタン;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;等が挙げられる。上記樹脂材料は、スチレンブタジエン共重合体、スチレンイソプレン共重合体、スチレンエチレンブチレン共重合体、スチレンエチレンプロピレン共重合体、スチレンブタジエンスチレン共重合体、スチレンイソプレンスチレン共重合体等のスチレン系共重合体(典型的にはスチレン系エラストマー)であってもよく、アクリルゴムと称されるアクリル系共重合体であってもよい。上記樹脂材料は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、上記樹脂材料には一般にゴムと称されるものが包含される。
好ましい一態様では、基材はポリウレタン系樹脂フィルムである。ここでポリウレタン系樹脂フィルムとは、樹脂成分としてポリウレタンを含む樹脂フィルムのことをいう。ポリウレタン系樹脂フィルムは、典型的には降伏点を実質的に示さない材料から構成されており、所定の20%モジュラスや破断応力を示す両面粘着シートを実現しやすいフィルム材料である。ポリウレタン系樹脂フィルムはまた、例えば可塑剤等の添加成分を添加しなくても良好な物性を実現し得るため、上記添加成分のブリードアウトを防止する点でも、ここに開示される技術において好ましい基材となり得る。
ポリウレタン系樹脂フィルムに含まれる樹脂成分に占めるポリウレタンの割合は特に限定されず、通常は25重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上であり、例えば45重量%以上とすることができる。好ましい一態様において、樹脂成分の主成分(最も配合割合の高い成分、典型的には50重量%を超えて含まれる成分。以下同じ。)がポリウレタンであるポリウレタン系樹脂フィルムを用いることができる。上記ポリウレタンの割合が60重量%以上であってもよく、70重量%以上であってもよく、75重量%以上(例えば80重量%以上)であってもよい。
ここに開示されるポリウレタン系樹脂フィルムは、ポリウレタンとその他の樹脂とのポリマーブレンドからなるフィルムであってもよい。上記他の樹脂は、例えば(メタ)アクリル系重合物(以下「アクリル系重合物」と表記する。)、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート等の1種または2種以上であり得る。
あるいは、ここに開示される技術は、ポリウレタン以外の樹脂成分を実質的に含まないポリウレタン系樹脂フィルムを基材に用いる態様でも実施することができる。例えば、ポリウレタンの含有率が97〜100重量%であってもよく、99〜100重量%であってもよい。
上記ポリウレタンは、ポリオール(例えばジオール)とポリイソシアネート(例えばジイソシアネート)とを所定の割合で重付加反応させることにより合成される高分子化合物である。なお、ポリウレタンのNCO/OH比は、所望の機械的特性(例えば20%モジュラス、破断応力)となるように、当業者の技術常識に基づいて適宜設定することができる。
ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール;多価アルコール(例、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等)と多価カルボン酸(例、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等)とを縮重合させることによって得られるポリエステルポリオール;カプロラクトンジオール等が挙げられる。
イソシアネートとしては、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートや、これらのジイソシアネートの多量体(例えば2量体、3量体)等が挙げられる。例えば、エチレンジイソシアネート、1,2−ジイソシアネートプロパン、1,3−ジイソシアネートプロパン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシル)イソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2−ジイソシアネートエチル、2,6−ジイソシアネートヘキサノエート等のジイソシアネートが挙げられる。
ポリウレタンには、ポリオールおよびポリイソシアネートに加えて、他の共重合成分が導入されていてもよい。他の共重合成分として、モノカルボン酸やジカルボン酸、三官能以上のポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アルコキシカルボン酸、それらの誘導体等の1種または2種以上を使用することができる。
ポリウレタンの好適例として、ウレタン(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体が挙げられる。ウレタン(メタ)アクリレートとは、一分子中にウレタン結合と(メタ)アクリロイル基を有する化合物のことをいい、かかる化合物を特に制限なく用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは好ましくは2つ以上のウレタン結合と2つ以上の(メタ)アクリロイル基とを有する。ウレタン(メタ)アクリレートの有する(メタ)アクリロイル基の数は、2〜5が好ましく、2〜3がより好ましい。例えば、(メタ)アクリロイル基を2つ有するウレタン(メタ)アクリレートを好ましく使用し得る。また、ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタンアクリレートであることが好ましい。ここで「ウレタンアクリレート」とは、ウレタン(メタ)アクリレートに含まれる(メタ)アクリロイル基のうちアクリロイル基の個数割合が50%を超えるものをいう。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、市販されている各種ウレタン(メタ)アクリレートを用いることができる。例えば、日本合成化学工業(株)製の商品名「UV−3300B」、荒川化学(株)製の商品名「ビームセット505A−6」等を好ましく用いることができる。
また、ウレタン(メタ)アクリレートは、公知方法に従い合成して入手することができる。例えば、イソシアネート、ポリオール、および(メタ)アクリル酸を反応させる、イソシアネート、および水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルを反応させる等により合成することができる。
(メタ)アクリル酸に代えて、(メタ)アクリル酸塩や(メタ)アクリル酸ハライドを反応に用いてもよい。
水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
好ましい一態様において、基材は、ウレタン(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体を含む。かかる重合体を含むポリウレタン系樹脂フィルムが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体は、ウレタン(メタ)アクリレートの単独重合体であってもよいし、ウレタン(メタ)アクリレートと他のモノマーとが共重合された共重合体であってもよい。
ウレタン(メタ)アクリレートと共重合させる上記他のモノマーは、該ウレタン(メタ)アクリレートと共重合可能なものであればよく、特に限定されない。なかでも(メタ)アクリル系モノマーを好ましく使用し得る。すなわち、ここに開示される技術において、ウレタン(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体は、ウレタン(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体であることが好ましい。このとき、より高い押圧接着力を得ることができる。
ここで、(メタ)アクリル系モノマーとは、一分子中に(メタ)アクリロイル基を有するモノマーをいう。ウレタン(メタ)アクリレートと共重合されるウレタン(メタ)アクリレートとしては、このような(メタ)アクリル系モノマーを特に制限なく用いることができる。(メタ)アクリル系モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(メタ)アクリル系モノマーの好適例として、下記式(1)で表されるアクリレートが挙げられる。このようなアクリレートを共重合させた場合には、より高い押圧接着力を得ることができる。
CH2=CHCOOR0 (1)
(式(1)中、R0は炭素原子数1〜30の脂肪族炭化水素基を示す。)
R0で表される炭素原子数1〜30の脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。R0が飽和脂肪族炭化水素基である(メタ)アクリル系モノマーを好ましく使用し得る。R0で表される脂肪族炭化水素基の炭素原子数としては、2〜20がより好ましく、3〜10がより好ましい。
R0で表される炭素原子数1〜30の脂肪族炭化水素基の例としては、炭素原子数1〜30の直鎖または分岐状のアルキル基、炭素原子数1〜30の直鎖または分岐状のアルケニル基、炭素原子数1〜30の環構造を有する脂肪族炭化水素基等が挙げられる。直鎖または分岐状のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基等が挙げられる。直鎖または分岐状のアルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等が挙げられる。環構造を有する脂肪族炭化水素基の例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシルメチル基、メチルシクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基等が挙げられる。これらの中でも、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、およびイソボルニル基が好ましく、2−エチルヘキシル基がより好ましい。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、上記式(1)で表されるアクリレート以外にも、上記式(1)で表されるアクリレートのアクリロイル基をメタクリロイル基に代えたメタクリレート、(メタ)アクリル酸、水酸基を有する(メタ)アクリレート等のほか、後述するアクリル系粘着剤を構成するモノマー成分に使用し得るものとして例示した各種の(メタ)アクリル系モノマーを用いることができる。
ウレタン(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体には、(メタ)アクリル系モノマーとして、多官能(メタ)アクリレートが共重合されていてもよい。多官能(メタ)アクリレートの例としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体には、(メタ)アクリル系モノマー以外のモノマーが共重合されていてもよい。(メタ)アクリル系モノマー以外のモノマーとしては、例えば、後述するアクリル系粘着剤を構成するモノマー成分に使用し得るものとして例示した各種のモノマー(例えば、N含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アジリジン基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、アルコキシ基含有モノマー等)のうち、(メタ)アクリロイル基を有しないものを用いることができる。
また、ウレタン(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体には、ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマーが共重合されていてもよい。
ウレタン(メタ)アクリレートと他のモノマーとの共重合体においては、(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位の含有率が、5〜70重量%であることが好ましい。このとき、より高い押圧接着力を得ることができる。また、多官能(メタ)アクリレートを使用する場合、該多官能(メタ)アクリレートの含有率は、(メタ)アクリル系モノマーに由来する全構成単位に対して0.01〜1重量%であることが好ましい。
なお、上記ウレタン(メタ)アクリレートと他のモノマーとの共重合体は、上記他のモノマーの全部が上記ウレタン(メタ)アクリレートと化学結合しているものに限定されない。例えば、上記他のモノマーの一部が上記ウレタン(メタ)アクリレートと化学結合した共重合体を形成し、上記他のモノマーの残部は上記ウレタン(メタ)アクリレートとは化学結合しない重合体を形成していてもよい。
好ましい一態様において、上記基材は、ホモポリマーのTgが0℃以上である(メタ)アクリロイル基含有モノマー単位を含む。ここで、ホモポリマーのTgが0℃以上である(メタ)アクリロイル基含有モノマー単位とは、ホモポリマーにした際にTgが0℃以上となる(メタ)アクリル系モノマー(以下「高Tg(メタ)アクリル系モノマー」ともいう。)に対応するモノマー単位をいう。このような基材を有する両面粘着シートは、良好な押圧接着力が得られる傾向にある。基材は、ホモポリマーのTgが0℃以上である(メタ)アクリロイル基含有モノマー単位(以下、「高Tg(メタ)アクリロイル基含有モノマー単位」ともいう。)を、1種または2種以上含むことができる。上記高Tg(メタ)アクリル系モノマーのホモポリマーにおけるTgの上限は特に限定されず、典型的には180℃以下、通常は150℃以下、例えば120℃以下である。
上記基材における上記高Tg(メタ)アクリロイル基含有モノマー単位の含有率は、破断応力向上の観点から、10重量%以上とすることが好ましく、15重量%以上としてもよい。上記含有率の上限は特に限定されないが、20%モジュラスを抑える観点から、通常は70重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましい。
上記基材は、上記高Tg(メタ)アクリロイル基含有モノマー単位として、カルボキシ基含有モノマー以外の高Tg(メタ)アクリル系モノマー(すなわち、カルボキシ基を有しない高Tg(メタ)アクリル系モノマー)に対応するモノマー単位を含むことが好ましい。このような基材を有する両面粘着シートでは、より高い押圧接着力が得られる傾向にある。かかる高Tg(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
カルボキシ基含有モノマー以外の高Tg(メタ)アクリル系モノマーに対応するモノマー単位を含む基材において、該基材における上記モノマー単位の含有率は特に限定されず、例えば10重量%以上とすることができる。破断応力向上の観点から、上記含有率を20重量%以上とすることができ、35重量%以上としてもよい。上記含有率の上限は特に限定されないが、20%モジュラスを抑える観点から、通常は80重量%以下が好ましく、70重量%以下がより好ましい。
基材が高Tg(メタ)アクリロイル基含有モノマー単位を含む形態としては、例えば、上記ウレタン(メタ)アクリレートの少なくとも一部として、Tgが0℃以上のものを使用する、少なくとも1種の高Tg(メタ)アクリル系モノマーを含むモノマー成分と上記ウレタン(メタ)アクリレートとの共重合体(好ましくは、Tgが0℃以上の共重合体)を基材に含有させる、高Tg(メタ)アクリル系モノマーの単独重合体を基材に含有させる、1種または2種以上の高Tg(メタ)アクリル系モノマーを含むモノマー成分の共重合体を基材に含有させる、等が挙げられる。なかでも、少なくとも1種の高Tg(メタ)アクリル系モノマーを含むモノマー成分と上記ウレタン(メタ)アクリレートとの共重合体を基材に含有させる形態が好ましい。上記少なくとも1種の高Tg(メタ)アクリル系モノマーを含むモノマー成分は、該モノマー成分の重合物のTgが0℃以上となる組成を有することが好ましい。また、上記1種または2種以上の高Tg(メタ)アクリル系モノマーを含むモノマー成分の共重合体は、該共重合体のTgが0℃以上となる組成を有することが好ましい。ここで、上記共重合体のTgとは、後述するアクリル系重合物と同様、該共重合体を構成する各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のTgおよび該モノマーの重量分率に基づいてフォックス(Fox)の式から求められる値をいう。上記モノマー成分の重合物のTgについても同様である。
上記基材は、該基材を備える両面粘着シートにおいて所望の意匠性や光学特性(例えば、遮光性、光反射性等)を発現させるために、黒色や白色(例えば乳白色)、その他の色に着色されていてもよい。上記着色には、例えば、基材の原料に公知の有機または無機の着色剤(顔料、染料等)を配合するとよい。
上記基材には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、難燃剤、界面活性剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。
基材の表面には、必要に応じて、適宜の表面処理が施されていてもよい。この表面処理は、例えば、粘着剤層に対する密着性を高めるための化学的または物理的な処理であり得る。かかる表面処理の例としては、コロナ放電処理、クロム酸処理、オゾン曝露、火炎曝露、紫外線照射処理、プラズマ処理、下塗剤(プライマー)の塗布等が挙げられる。
基材の20%モジュラスは5N/mm2以下であることが好ましい。基材の20%モジュラスが5N/mm2以下であると、押圧力を印加した際に(特に、押圧力の印加の初期に)基材内において応力が適度に分散され、高い押圧接着力が得られやすい。基材の20%モジュラスとしては、4.5N/mm2以下が好ましく、4.2N/mm2以下がより好ましい。より高い押圧接着力を得る観点から、好ましい一態様において、基材の20%モジュラスを3N/mm2以下とすることができ、さらに2N/mm2以下としてもよい。一方、基材の強度の観点から、基材の20%モジュラスは0.1N/mm2以上が好ましく、0.3N/mm2以上がより好ましく、0.5N/mm2以上(例えば1.0N/mm2以上)がさらに好ましい。
なお、本明細書において、基材について「20%モジュラス」とは、後述する両面粘着シートの20%モジュラスと同様にして、ただし両面粘着シートの代わりに基材を測定サンプルとして引張試験を行った際に、測定サンプルの伸び率が20%のときの引張強度のことをいう。
基材の破断応力は10N/mm2以上であることが好ましい。基材の破断応力が10N/mm2以上であると、押圧力を印加した際に(特に、押圧力印加の初期以降に)基材の弾性変形により応力が効果的に吸収されて粘着面にかかる負荷が軽減され、高い押圧接着力を得られやすい。基材の破断応力としては、12N/mm2以上が好ましく、15N/mm2以上がより好ましい。より高い押圧接着力を得る観点から、好ましい一態様において、基材の破断応力を17N/mm2以上とすることができ、さらに20N/mm2以上としてもよい。基材の破断応力は高いほどよく、その上限に定めはないが、例えば、80N/mm2以下であり、60N/mm2以下であり、40N/mm2以下である。
なお、本明細書において、基材について「破断応力」とは、後述する両面粘着シートの破断応力と同様にして、ただし両面粘着シートの代わりに基材を測定サンプルとして引張試験を行った際に、測定サンプルが切断(破断)したときの引張強度のことをいう。
ここに開示される基材は、破断応力(単位:N/mm2)を20%モジュラス(単位:N/mm2)で除した値が5〜30(より好ましくは10〜20)の範囲にあることが好ましい。このような基材によると、両面粘着シートの押圧接着力が高くなる傾向にある。
ここに開示される基材は、100%以上の破断時伸びを示すことが好ましい。上記破断時伸びを示す基材は、破断に至るまでによく伸張する。したがって、押圧力を印加した際に基材の伸張により応力が効果的に吸収されて粘着面にかかる負荷が軽減され、高い押圧接着力が得られやすい。上記破断時伸びは、より好ましくは200%以上、さらに好ましくは300%以上である。上記破断時伸びの上限は特に限定されないが、基材の強度や寸法安定性の観点から、通常は1000%以下(典型的には800%以下、例えば600%以下)が適当である。
上記破断時伸びは、後述する両面粘着シートの破断時伸びと同様にして、ただし両面粘着シートの代わりに基材を測定サンプルとして測定される。
基材は単層構造であってもよく、2層、3層またはそれ以上の多層構造であってもよい。基材は、好ましくは単層構造である。
基材の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択できるが、一般的には4〜500μmであり、好ましくは10〜200μmである。より高い押圧接着力を得る観点から、基材の厚さは、20μm以上とすることが有利であり、50μm以上が好ましく、80μm以上がより好ましく、100μm以上(例えば100〜200μm)がさらに好ましい。
基材は公知方法に従い製造することができる。例えば、押出成形、インフレーション成形、Tダイキャスト成形、カレンダーロール成形等の一般的なフィルム成形方法を適宜採用することができる。基材にウレタン(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体を使用する場合には、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートと光重合開始剤と必要に応じて使用される(メタ)アクリル系モノマーとを含むモノマー組成物を、透明なフィルム上に塗布し、光照射して光硬化させることにより、基材を作製することができる。
<両面粘着シート>
ここで開示される技術において、第一粘着剤層が基材の第一面上に配置され、第二粘着剤層が第二面上に配置される。これにより、ここで開示される技術は、基材付き両面粘着シートとして機能する。
第一粘着剤層と第二粘着剤層の各々を構成する粘着剤としては、公知の粘着剤、例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤などを用いることができる。これらのなかでも、アクリル系粘着剤が好ましい。第一粘着剤層と第二粘着剤層を構成する粘着剤の種類は、同一でも異なっていてもよく、基材や被着体の材質に応じて適宜選択するとよい。
ここに開示される両面粘着シートは、第一粘着剤層および第二粘着剤層の一方または両方(好ましくは両方)を構成する粘着剤に含まれる重合体と、基材を構成する重合体とが、同種のモノマーに由来する構成単位を含んでいる態様で好ましく実施され得る。上記同種のモノマーとは、同一のモノマーのほか、主な分子構造が共通するモノマー(例えば、重合性官能基の種類が同じモノマー)を包含する概念である。かかる態様の両面粘着シートは、基材と粘着剤との親和性がよくなる傾向にある。このような両面粘着シートは、基材と各粘着剤層との間の接着力が高く、粘着剤層の投錨力が高いものとなりやすい。粘着剤層の投錨力が高い両面粘着シートは、より良好な押圧接着力を示すものとなり得るので好ましい。また、両面粘着シートを被着体から剥離する場合における糊残りの防止や、該両面粘着シートの曲面接着性等の観点からも有利である。
基材と粘着剤層とに共通して含まれ得る構成単位の例としては、(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位、ポリオレフィンに由来する構成単位、共役ジエンに由来する構成単位等が挙げられる。なかでも(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位を含む基材と粘着剤との組合せが好ましい。そのような組合せの一好適例として、ウレタン(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体を含む基材と、アクリル系粘着剤との組合せが挙げられる。
ここに開示される第一粘着剤層と第二粘着剤層の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。良好な押圧接着力を得る観点から、通常は、各粘着剤層の厚さは3〜250μm程度が適当であり、5〜150μm程度が好ましい。好適な適用対象である携帯電子機器の内部スペースを考慮して、各粘着剤層の厚さは、好ましくは10〜100μmであり、より好ましくは25〜80μmである。なお、第一粘着剤層と第二粘着剤層の厚さは同じであってもよく、異なっていてもよい。
ここに開示される両面粘着シートの総厚は特に限定されず、凡そ10〜1000μmの範囲とすることが適当である。粘着シートの総厚は、粘着特性等を考慮して、20〜500μm(例えば40〜400μm)程度とすることが好ましい。より高い押圧接着力を得る観点から、両面粘着シートの総厚は、70μm以上とすることが好ましく、120μm以上がより好ましく、150μm以上がさらに好ましい。
<両面粘着シートの構成>
ここに開示される両面粘着シートは、例えば、図1、図2に模式的に示される断面構造を有するものであり得る。図1に示す両面粘着シート1は、基材10と、その基材10の第一面および第二面にそれぞれ支持された第一粘着剤層21および第二粘着剤層22とを備える。第一面および第二面は、いずれも非剥離性の表面(非剥離面)である。両面粘着シート1は、第一粘着剤層21の表面(第一粘着面)および第二粘着剤層22の表面(第二粘着面)をそれぞれ被着体に貼り付けて使用される。使用前の両面粘着シート1は、第一粘着面および第二粘着面が、少なくとも該粘着剤面側が剥離性を有する表面(剥離面)となっている剥離ライナー31,32によってそれぞれ保護された構成を有している。図2に示す両面粘着シート2は、剥離ライナー31として両面が剥離面となっているものを使用し、図1に示す剥離ライナー32を有しない他は、図1に示す両面粘着シート1と同様に構成されている。この種の両面粘着シート2は、該粘着シートを巻回して第二粘着面を剥離ライナー31の裏面に当接させることにより、第二粘着面もまた剥離ライナー31によって保護された構成とすることができる。
剥離ライナー31,32としては、特に限定されず、例えば、樹脂フィルムや紙等のライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により上記ライナー基材を表面処理して形成されたものであり得る。
<両面粘着シートのサイズ>
ここに開示される両面粘着シートの平面形状は特に限定されない。ここに開示される両面粘着シートは、幅4mm以下(例えば3mm以下、典型的には2mm以下)の部分を有する形状で好ましく使用され得る。上記幅が凡そ0.5〜1.5mm(典型的には凡そ0.8〜1.2mm)であってもよい。例えば、このような幅を有する長さ10mm以上(典型的には20mm以上、例えば30mm以上)の線状部分を含む形状で好ましく使用され得る。ここに開示される両面粘着シートは、上記のような幅の狭い線状部分を含む形状(例えば枠状)で用いられる場合にも良好な押圧接着力を発揮し得る。このような形状の両面粘着シートは、例えば後述の携帯型電子機器のような小型の電子機器において構成部材の接合や固定に用いられる両面粘着シートとして有用である。
<両面粘着シートの特性>
ここに開示される両面粘着シートの20%モジュラスは5N/mm2以下である。20%モジュラスが5N/mm2以下であると、押圧力を印加した際に(特に、押圧力の印加の初期に)両面粘着シート内において応力が適度に分散され、高い押圧接着力が得られる。20%モジュラスとしては、4.5N/mm2以下が好ましく、4.2N/mm2以下がより好ましい。より高い押圧接着力を得る観点から、好ましい一態様において、20%モジュラスを3N/mm2以下とすることができ、さらに2N/mm2以下としてもよい。一方、両面粘着シートの強度の観点から、20%モジュラスは0.1N/mm2以上が好ましく、0.3N/mm2以上がより好ましく、0.5N/mm2以上(例えば1.0N/mm2以上)がさらに好ましい。
なお、本明細書において、両面粘着シートについて「20%モジュラス」とは、後述する実施例に記載の方法で両面粘着シートの測定サンプルの引張試験を行った際に、測定サンプルの伸び率が20%のときの引張強度のことをいう。なお、上記測定における引張方向は、特に限定されないが、両面粘着シートが長尺状の場合には、その長手方向と一致させることが好ましい。
ここに開示される両面粘着シートの破断応力は10N/mm2以上である。破断応力が10N/mm2以上であると、押圧力を印加した際に(特に、押圧力印加の初期以降に)両面粘着シートの弾性変形により応力が効果的に吸収されて粘着面にかかる負荷が軽減され、高い押圧接着力が得られる。破断応力としては、12N/mm2以上が好ましく、15N/mm2以上がより好ましい。より高い押圧接着力を得る観点から、好ましい一態様において、破断応力を17N/mm2以上とすることができ、さらに20N/mm2以上としてもよい。破断応力は高いほどよく、その上限に定めはない。20%モジュラスが上述した好ましい範囲にある両面粘着シートが得られやすいという観点からは、両面粘着シートの破断応力として、80N/mm2以下が適当であり、60N/mm2以下が好ましく、40N/mm2以下がより好ましい。
なお、本明細書において、両面粘着シートについて「破断応力」とは、後述する実施例に記載の方法で両面粘着シートの測定サンプルの引張試験を行った際に、測定サンプルが切断(破断)したときの引張強度のことをいう。なお、上記測定における引張方向は、特に限定されないが、両面粘着シートが長尺状の場合には、その長手方向と一致させることが好ましい。
このように、両面粘着シートの20%モジュラスと両面粘着シートの破断応力の2つのパラメータが組み合わさることによって、優れた押圧接着力を発揮することができる。両面粘着シートの20%モジュラスを5N/mm2以下とし、破断応力を10N/mm2以上とするには、基材を構成する材料を適宜選択すればよい。例えば、基材がウレタン(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体を含む場合には、該重合体に用いられるウレタン(メタ)アクリレートの種類を適宜選択するとよい。また、基材にウレタン(メタ)アクリレートと(メタ)アクリレートの共重合体を使用する場合には、各モノマーの種類を適宜選択するとともに、各モノマーの使用量を適宜調整するとよい。共重合体の各モノマーの種類の好適な例としては、ホモポリマーとした際の鉛筆硬度がB〜6Bのウレタン(メタ)アクリレートとホモポリマーとした際のTgが0℃以上の(メタ)アクリレートとの組み合わせが挙げられる。
ここに開示される両面粘着シートは、破断応力(単位:N/mm2)を20%モジュラス(単位:N/mm2)で除した値が5〜30(より好ましくは10〜20)の範囲にあることが好ましい。このような両面粘着シートは、押圧接着力が高くなる傾向にある。
ここに開示される両面粘着シートは、100%以上の破断時伸びを示すことが好ましい。上記破断時伸びを示す両面粘着シートは、破断に至るまでによく伸張する。したがって、押圧力を印加した際に基材の伸張により応力が効果的に吸収されて粘着面にかかる負荷が軽減され、高い押圧接着力が得られやすい。上記破断時伸びは、より好ましくは200%以上、さらに好ましくは300%以上である。上記破断時伸びの上限は特に限定されないが、両面粘着シートの強度や寸法安定性の観点から、通常は1000%以下(典型的には800%以下、例えば600%以下)が適当である。
両面粘着シートの破断時伸びは、JIS K 7311:1995に記載の「伸び」の測定方法に準拠して測定される。より具体的には、3号形ダンベル状の試験片(幅5mm、標線間隔20mm)を用いて引張速度300mm/分の条件で上記破断時伸びを測定することができる。なお、上記測定における引張方向は、特に限定されないが、両面粘着シートが長尺状の場合には、その長手方向と一致させることが好ましい。
<アクリル系粘着剤>
ここに開示される両面粘着シートの好適な一態様として、第一粘着剤層および第二粘着剤層の少なくとも一方(好ましくは両方)を構成する粘着剤がアクリル系粘着剤である態様が挙げられる。以下、かかる態様において好ましく採用し得るアクリル系粘着剤および該アクリル系粘着剤の形成に使用し得る粘着剤組成物につき説明するが、本発明の範囲を限定する意図ではない。
この明細書において「アクリル系粘着剤」とは、アクリル系重合物を主成分(重合物成分のなかの主成分、すなわち50重量%を超えて含まれる成分)として含む粘着剤のことをいう。ここで、重合物とは、ポリマーだけでなく、一般にオリゴマーと称されることのある比較的低重合度の重合物も包含する概念である。
アクリル系重合物を構成するモノマー成分の主成分として、典型的には、鎖状アルキル(メタ)アクリレートが用いられる。良好な粘着特性を実現する観点から、鎖状アルキル(メタ)アクリレートは、アクリル系重合物を構成する全モノマー成分のうち50重量%以上(好ましくは60重量%以上、例えば70重量%以上)の割合で含まれることが適当である。鎖状アルキル(メタ)アクリレートとしては、下記式(2)で表わされる鎖状アルキル(メタ)アクリレートの1種または2種以上を用いることができる。
CH2=CR1COOR2 (2)
上記式(2)において、R1は、水素原子またはメチル基である。また、R2は鎖状アルキル基であり、典型的には炭素原子数1〜20の鎖状アルキル基(以下「C1−20」のように略記する場合がある。)である。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、R2がC1−14(例えばC1−12、典型的にはC1−10)である鎖状アルキル(メタ)アクリレートを好ましく使用し得る。上記アルキル基は直鎖状または分岐状であり得る。好ましく用いられる鎖状アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート(MMA)、エチルアクリレート(EA)、n−ブチルアクリレート(BA)、イソブチルメタクリレート(IBMA)、t−ブチルアクリレート(t−BA)、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、イソオクチルアクリレート(IOA)、ノニルアクリレート(NA)、イソノニルアクリレート(INA)、ラウリルアクリレート(LA)、ラウリルメタクリレート(LMA)等が挙げられる。
粘着特性(例えば、押圧接着力と他の粘着特性との両立)の観点から、上記式(2)においてR2がC4−12(例えばC6−10、典型的にはC6−8)である鎖状アルキル(メタ)アクリレートを好ましく使用し得る。上記鎖状アルキル(メタ)アクリレートの好適例としては、BA、IBMA、t−BA、2EHA、IOA、LA、LMAが挙げられる。なかでも、2EHAが特に好ましい。
上記式(2)においてR2がC4−12である鎖状アルキル(メタ)アクリレートは、上記アクリル系重合物の構成モノマー成分として含まれる全鎖状アルキル(メタ)アクリレートのうち、50重量%超(例えば70重量%以上、典型的には80重量%以上)を占めることが好ましい。また、その上限は、上記全鎖状アルキル(メタ)アクリレートにおいて100重量%以下(例えば95重量%以下)であり得る。
上記アクリル系重合物は、その構成モノマー成分として極性基含有モノマーを含む。極性基含有モノマーが含まれることにより、粘着剤層の凝集力が向上する。該極性基含有モノマーは、好ましくは窒素原子含有モノマー(以下「N含有モノマー」ともいう)を含む。
N含有モノマーとしては、例えば窒素原子(N)含有環を有するモノマー、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー等が挙げられる。
N含有環(典型的にはN含有複素環)を有するモノマーとしては、例えばN−ビニル−2−ピロリドン(NVP)、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、N−ビニルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
アミノ基含有モノマーとしては、例えばN,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のN−アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノ(メタ)アクリレート等のN,N−ジアルキルアミノ(メタ)アクリレート;N−メチルアミノ(メタ)アクリレート等のN−アルキルアミノ(メタ)アクリレート;アミノメチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート;アミノ(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
アミド基含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
シアノ基含有モノマーとしては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
イミド基含有モノマーとしては、例えばN−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;N−(メタ)アクリロキシメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;等が挙げられる。
イソシアネート基含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリロイルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、N含有環を有するモノマー(典型的にはNVP、N−アクリロイルモルホリン(ACMO))、アミノ基含有モノマー(典型的にはN,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート)、アミド基含有モノマー(典型的には、N,N−ジエチルアクリルアミド(DEAA)、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA))が好ましい。
極性基含有モノマーは、N含有モノマー以外の極性基含有モノマー(その他の極性基含有モノマー)の1種または2種以上を含み得る。その他の極性基含有モノマーとしては、例えば下記のものが挙げられる。
・カルボキシ基含有モノマー:例えばアクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸およびその無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸等)。
・水酸基含有モノマー:例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類。
・スルホン酸基含有モノマー:例えばスチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸。
・リン酸基含有モノマー:例えば2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート。
・アジリジン基含有モノマー:例えば(メタ)アクリロイルアジリジン、2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート。
・エポキシ基含有モノマー:例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル。
・ケト基含有モノマー:例えばジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アリルアセトアセテート、ビニルアセトアセテート。
・アルコキシ基含有モノマー:例えばメトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート。
・アルコキシシリル基含有モノマー:例えば3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン。
・ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー。
その他の極性基含有モノマーとしては、カルボキシ基含有モノマー(例えばAA、MAA)や水酸基含有モノマー(例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA))が好ましい。
アクリル系重合物を構成する極性基含有モノマーとしてN含有モノマーを用いる場合、アクリル系重合物を構成する全モノマー成分に占めるN含有モノマーの割合は、凡そ5重量%以上(例えば10重量%以上、典型的には15重量%以上)であることが好ましい。これにより、良好な押圧接着力を示す傾向が高まる。また、後述の(メタ)アクリル系オリゴマーの組成に対応して、N含有モノマー(例えばN含有環を有するモノマー)の種類や使用比率を選定することにより、(メタ)アクリル系オリゴマーとの相溶性が向上し得る。同様の観点から、アクリル系重合物を構成する全モノマー成分に占めるN含有モノマーの割合の上限は、凡そ50重量%未満(例えば30重量%以下、典型的には25重量%以下)とすることが適当である。
アクリル系重合物を構成する極性基含有モノマーとして、その他の極性基含有モノマーを用いる場合には、アクリル系重合物を構成する全モノマー成分に占めるその他の極性基含有モノマーの割合は、その他の極性基含有モノマーの効果を良好に発現させる観点から、凡そ0.1重量%以上(例えば1重量%以上、典型的には2重量%以上)であることが好ましい。また上記その他の極性基含有モノマーの割合の上限は、凡そ30重量%以下(例えば10重量%以下、典型的には5重量%以下)とすることが適当である。
アクリル系重合物にカルボキシ基含有モノマーが共重合される場合には、アクリル系重合物を構成する全モノマー成分に占めるカルボキシ基含有モノマーの割合は、低極性の被着体に対する接着性等の観点から、5重量%以下とすることが適当であり、好ましくは5重量%未満(例えば4重量%未満、典型的には3重量%未満)であり、より好ましくは2.5重量%以下(典型的には2重量%以下)である。また押圧接着力向上の観点から、上記カルボキシ基含有モノマーの割合は、0.5重量%以上(例えば1重量%以上、典型的には1.5重量%以上)であることが好ましい。
好ましい一態様において、アクリル系重合物を構成する全極性基含有モノマー成分に占めるN含有モノマーの割合を40重量%以上とすることができる。N含有モノマーを上記の割合で用いることにより、押圧接着力と他の粘着特性とを高レベルで両立しやすくなる傾向にある。アクリル系重合物を構成する全極性基含有モノマー成分に占めるN含有モノマーの割合は、凡そ50重量%超(例えば60重量%以上、典型的には70重量%以上)であることがより好ましい。上記全極性基含有モノマー成分に占めるN含有モノマーの割合の上限は特に限定されないが、例えば100重量%以下であってもよく、その他の極性基含有モノマーの効果を良好に発現させる観点から、凡そ90重量%以下(例えば80重量%以下)であってもよい。
上記N含有モノマーの含有率に対応して、アクリル系重合物を構成する全極性基含有モノマー成分に占めるその他の極性基含有モノマーの割合は、好ましくは60重量%以下であり、50重量%未満(例えば40重量%以下、典型的には30重量%以下)とすることが適当であり、さらには凡そ10重量%以下であってもよい。
好ましい一態様では、上記極性基含有モノマーとして、N含有モノマー(例えばN含有環を有するモノマー、典型的にはNVP)とカルボキシ基含有モノマー(例えばAA)とを併用する。これにより、粘着力の凝集性が安定して発現する傾向が高まる。このことは押圧接着力向上の観点から好ましい。N含有モノマーとカルボキシ基含有モノマーとを併用する場合には、N含有モノマーおよびカルボキシ基含有モノマーの合計含有量に対するN含有モノマーの含有量の割合は、凡そ50重量%以上(例えば70重量%以上、典型的には80重量%以上)とすることが好ましい。また、上記割合は凡そ100重量%未満(例えば95重量%以下)とすることが好ましい。これにより、酸/塩基がバランスされる傾向があり、極性基含有モノマーの少量添加で凝集性を効率的に改善し得る。
アクリル系重合物に、その他の極性基含有モノマーとしてカルボキシ基含有モノマー(例えばAA)が共重合されている場合には、アクリル系重合物を構成する全モノマー成分に占めるカルボキシ基含有モノマーの割合は、低極性表面に対する接着性等の観点から、10重量%以下とすることが適当であり、7重量%未満(例えば5重量%未満)とすることが好ましい。また、適度な凝集性を得る観点から、上記カルボキシ基含有モノマーの割合は、0.5重量%以上(典型的には1重量%以上、例えば2重量%以上)であることが好ましい。
また、その他の極性基含有モノマーとして、水酸基含有モノマーを含むことが好ましい。なかでも、HEA、4HBAが好ましい。粘着剤層の凝集性等の観点から、アクリル系重合物を構成する全極性基含有モノマー成分に占める水酸基含有モノマーの割合は、凡そ1〜40重量%(例えば5〜30重量%、典型的には10〜20重量%)とすることが適当である。
上記極性基含有モノマーは、その効果を充分に発現して粘着特性に寄与するため、好ましくはアクリル系重合物を構成する全モノマー成分のうち15重量%以上の割合で含まれる。アクリル系重合物を構成する全モノマー成分に占める極性基含有モノマーの総量は、凡そ18重量%以上(例えば20重量%以上、典型的には22重量%以上)であることが好ましく、凡そ40重量%以下(例えば30重量%以下)であることが好ましい。
アクリル系重合物は、その構成モノマー成分として、Tgの調整や凝集力の向上等の目的で、上記鎖状アクリル(メタ)アクリレートおよび極性基含有モノマーとは異なるその他の共重合性モノマーを含んでもよい。そのようなその他の共重合性モノマーとしては、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;スチレン、置換スチレン(α−メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;アリール(メタ)アクリレート、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート、アリールアルキル(メタ)アクリレート等の芳香族性環含有(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;等の1種または2種以上を用いることができる。
アクリル系重合物の構成モノマー成分が、その他の共重合性モノマー(例えば脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート)を含む場合には、その含有量は、アクリル系重合物を構成する全モノマー成分のうち20重量%以下(例えば10重量%以下、典型的には5重量%以下)とすることが適当である。また上記含有量は、その他の共重合性モノマーとして例えば脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを用いる場合には、0.5重量%以上(例えば1重量%以上、典型的には2重量%以上)であり得る。あるいは、ここに開示されるアクリル系重合物は、その構成単位として、上記その他の共重合性モノマーを実質的に含まないものであってもよい。
また、上記その他の共重合性モノマーとして、架橋等を目的として多官能モノマーを必要に応じて含んでもよい。多官能モノマーとしては、例えば1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の、1分子中に2以上(典型的には3以上)の重合性官能基(典型的には(メタ)アクリロイル基)を有するモノマーが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。アクリル系重合物の構成モノマー成分が多官能モノマーを含む場合には、その含有量は、アクリル系重合物を構成する全モノマー成分のうち0.01〜1重量%(例えば0.02〜1重量%)とすることが好ましい。
アクリル系粘着剤は、典型的には、上記モノマー成分の完全重合物である(メタ)アクリル系ポリマーを含む。(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、20×104以上であることが好ましく、より好ましくは30×104以上であり、例えば40×104以上であり得る。上記Mwの上限は特に限定されないが、粘着剤組成物の調製容易性や塗工性等の観点から、通常は、Mwは200×104以下であることが好ましく、150×104以下であることがより好ましい。
アクリル系粘着剤は、任意成分として、後述するような(メタ)アクリル系オリゴマーを含む粘着剤組成物を用いて形成されたものであってもよい。
上記粘着剤は、必要に応じて、粘着付与剤を含有するものであり得る。
ここに開示される技術における粘着剤(例えばアクリル系粘着剤)に使用される粘着付与剤としては、特に制限されないが、例えば、ロジン系、テルペン系、炭化水素系、フェノール系等の各種粘着付与樹脂を用いることができる。このような粘着付与剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
好ましい一態様では、粘着剤組成物は、粘着付与剤として炭化水素系粘着付与樹脂を含む。炭化水素系粘着付与樹脂の例としては、炭素原子数4〜5程度のオレフィン(1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン等)およびジエン(ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン等)等の脂肪族系炭化水素樹脂;炭素原子数8〜10程度のビニル基含有芳香族系炭化水素(スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、インデン、メチルインデン等)の重合体等の芳香族系炭化水素樹脂;いわゆる「C4石油留分」や「C5石油留分」を環化二量体化した後に重合した脂環式炭化水素系樹脂や、環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテン等)の重合体またはその水素添加物、芳香族系炭化水素樹脂または脂肪族・芳香族系石油樹脂の芳香環を水素添加した脂環式炭化水素系樹脂等の脂肪族系環状炭化水素樹脂;脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン−オレフィン系共重合体等);脂肪族・脂環族系石油樹脂;水素添加炭化水素樹脂;クマロン系樹脂;クマロンインデン系樹脂;等が挙げられる。なかでも、脂肪族系環状炭化水素樹脂の水素添加物が好ましい。この種の粘着付与樹脂は、石油系樹脂に水素添加処理を行うことにより調製され得る。
ここに開示される技術では、軟化点(軟化温度)が凡そ60℃以上(好ましくは凡そ80℃以上、典型的には100℃以上)である粘着付与樹脂を好ましく使用し得る。上記軟化点を有する粘着付与樹脂によると、より高性能な(例えば接着性の高い)粘着シートが実現され得る。粘着付与樹脂の軟化点の上限は特に制限されず、凡そ180℃以下(例えば凡そ140℃以下)とすることができる。なお、ここでいう粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K 5902:2006およびJIS K 2207:2006のいずれかに規定する軟化点試験方法(環球法)によって測定された値として定義される。
粘着付与剤の使用量は特に制限されないが、粘着剤の粘着性と凝集性とのバランスを考慮して、通常は、アクリル系重合物100重量部に対して凡そ0.5〜50重量部(より好ましくは1〜10重量部、さらに好ましくは1〜3重量部)が適当である。粘着剤組成物に粘着付与剤を含有させる方法は特に限定されない。例えば、アクリル系重合物の重合物(例えば部分重合物)を得た後に粘着付与剤は添加され得る。ここに開示される技術は、粘着付与剤を実質的に含有しない粘着剤を用いる態様で実施することができる。
(その他の添加成分)
粘着剤には、アクリル系重合物の他に、必要に応じて各種の架橋剤を含有させることができる。架橋剤としては、例えばエポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等の1種または2種以上を用いることができる。架橋剤は、所望の粘着特性が得られるように当業者の技術常識に基づいて適当な量を使用すればよい。なお、ここに開示される技術は、上記多官能モノマー以外の架橋成分(架橋剤)を実質的に含有しない粘着剤組成物を用いる態様で実施することができる。
ここに開示される粘着剤は、その目的や適用箇所に応じて各種の着色剤(顔料、染料等)を含んでもよい。例えば、粘着剤組成物を光重合法により硬化させて粘着剤層を形成する場合には、該粘着剤層を着色させるために、光重合を疎外しない程度の顔料を着色剤として使用することができる。粘着剤層の色彩として黒色が望まれる場合には、例えば着色剤としてカーボンブラックが好ましく用いられ得る。着色剤の使用量は、着色の度合い等を考慮して、粘着剤層中において10重量%以下(例えば0.001〜5重量%)、好ましくは0.01〜3重量%の範囲から選択することが望ましい。
ここに開示される粘着剤は、粘着剤に含まれ得る従来公知の種々の充填剤を含有してもよい。充填剤としては、各種の粒子状物質や繊維状物質を用いることができる。粒子状物質の構成材料は、例えば、金属、金属酸化物、炭酸カルシウム等の炭化物、水酸化アルミニウム等の水酸化物、窒化物等の無機材料;ポリマー等の有機材料;等であり得る。あるいは、クレー等の天然原料粒子を用いてもよい。さらに、粘着剤は、中空構造の粒子状物質(例えば中空ガラスバルーン)や各種発泡剤(例えば熱膨張性微小球)を含んでもよい。繊維状物質としては、各種合成繊維材料や天然繊維材料を使用することができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。このような充填剤の添加量は特に限定されず、目的や当業者の技術常識に基づき、適当量を添加すればよい。
ここに開示される粘着剤は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、可塑剤、軟化剤、架橋助剤、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、安定剤、防腐剤等の、アクリル系粘着剤に用いられ得る公知の添加剤や、各種任意ポリマー成分を必要に応じてさらに含有してもよい。これらについては、従来公知のものを常法により使用することができる。
上記アクリル系粘着剤は、上述のような組成のモノマー成分を、重合物(例えば(メタ)アクリル系ポリマーや(メタ)アクリル系オリゴマー)、未重合物(すなわち、重合性官能基が未反応である形態)、あるいはこれらの混合物の形態で含有する粘着剤組成物を用いて形成され得る。
(粘着剤組成物)
ここに開示されるアクリル系粘着剤は、アクリル系重合成分(polymerizing component)を含有する粘着剤組成物を用いて形成され得る。アクリル系重合成分は、(メタ)アクリル系モノマーを含むモノマー成分の未反応物(未重合物、すなわちモノマー成分)および反応生成物(部分重合物および完全重合物)を包含する概念であり、上記モノマー成分を、例えば部分的にまたは完全に重合することによって得られる。なお、以下の説明では、(メタ)アクリル系モノマーを「アクリル系モノマー」と表記する。
好ましい一態様において、アクリル系重合成分は、上述のモノマー成分を少なくとも部分的に重合することにより調製することができる。上記モノマー成分の重合方法は特に限定されず、従来公知の各種重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合等の熱重合(典型的には、熱重合開始剤の存在下で行われる。);UV等の光を照射して行う光重合(典型的には、光重合開始剤の存在下で行われる。)や、β線、γ線等の放射線を照射して行う放射線重合等の活性エネルギー線照射重合を適宜採用することができる。なかでも、活性エネルギー線照射重合(特に光重合)が好ましい。
重合の態様は特に限定されず、従来公知のモノマー供給方法、重合条件(温度、時間、圧力、活性エネルギー線照射量等)、モノマー以外の使用材料(重合開始剤、界面活性剤等)等を適宜選択して行うことができる。例えば、モノマー供給方法としては、全モノマー成分を一度に反応容器に供給(一括供給)してもよく、徐々に滴下して供給(連続供給)してもよく、何回分かに分割して所定時間ごとに各分量を供給(分割供給)してもよい。モノマー成分は、一部または全部を、溶媒に溶解させた溶液もしくは水に乳化させた分散液として供給してもよい。
上記モノマー成分の重合にあたっては、重合方法や重合態様等に応じて、公知または慣用の重合開始剤の1種または2種以上を適宜選択して使用することができる。熱重合開始剤または光重合開始剤の使用量は、重合方法や重合態様等に応じた使用量とすることができ、特に限定されない。例えば、上記アクリル系重合成分の構成モノマー成分100重量部に対して開始剤0.001〜5重量部(典型的には0.01〜2重量部、例えば0.01〜1重量部)とすることができる。
アクリル系重合成分におけるモノマーの重合転化率(モノマーコンバーション)は特に制限されない。したがって、上記アクリル系重合成分は、未反応(未重合)のモノマーを含んでもよく、実質的に含まなくてもよい。ここで、未反応のモノマーを実質的に含まないとは、未反応モノマーの含有割合がアクリル系重合成分の1重量%未満(典型的には0.1重量%未満)であることをいう。また、上記アクリル系重合成分は、該重合成分を得るための重合の際に用いられたモノマー以外の材料(例えば重合開始剤、溶媒、分散媒等)を含んでもよい。
好ましい一態様において、アクリル系重合成分は、モノマー成分を部分的に重合した部分重合物であり得る。ここで「部分重合物」とは、その構成モノマー成分が部分的に重合された重合反応物をいう。このような部分重合物は、典型的には、モノマー成分の一部から形成された重合物と未反応のモノマーとが混在するシロップ状(粘性のある液状)を呈する。以下、このような性状の部分重合物を「ポリマーシロップ」または単に「シロップ」ということがある。
このような部分重合物におけるモノマー成分の重合転化率は、凡そ70重量%以下とすることが適当であり、60重量%以下とすることが好ましい。粘着剤組成物の調製容易性や塗工性等の観点から、上記重合転化率は、50重量%以下(例えば40重量%以下、典型的には30重量%以下)がより好ましい。重合転化率が20重量%以下であってもよく、15重量%以下であってもよい。重合転化率の下限は特に制限されないが、1重量%以上とすることが適当であり、粘着性能等の観点から、好ましくは3重量%以上(例えば5重量%以上)である。
モノマー成分を部分的に重合する際の重合方法は特に制限されないが、効率および簡便性の観点から、活性エネルギー線照射重合法(例えば光重合法)を好ましく採用し得る。例えば光重合によると、光の照射量(光量)等の重合条件によって、上記モノマー成分の重合転化率を制御することができる。
上記部分重合物を含む粘着剤組成物は、モノマー成分の一部から形成された重合物を未反応モノマー中に含む形態(典型的には、上記重合物が未反応モノマーに溶解した形態)であるので、溶媒または分散媒によって希釈されなくても、常温で塗工可能な粘度を有するものであり得る。したがって、溶媒を実質的に含まない粘着剤組成物(無溶剤型粘着剤組成物)として好適である。このような無溶剤型粘着剤組成物は、光照射や放射線照射等の適切な硬化手段(重合手段)を適用することによって粘着剤層を形成することができる。なお、粘着剤組成物が溶媒を実質的に含まないとは、粘着剤組成物のうち溶媒の含有割合が5重量%以下(典型的には2重量%以下、好ましくは1重量%以下)であることをいう。
好ましい一態様では、粘着剤組成物は、アクリル系重合成分として、上記重合物(例えば部分重合物)に加えて、追加モノマー成分を含む。追加モノマー成分は、上記重合物を得た後に、該重合物に対して添加され得る。
追加モノマー成分は、上記で例示した鎖状アルキル(メタ)アクリレート、極性基含有モノマー(N含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー等)、その他の共重合性モノマーのいずれであってもよい。上記追加モノマー成分としては、上記で例示した各種モノマーの1種または2種以上を用いることができる。なかでも、極性基含有モノマーが好ましく、カルボキシ基含有モノマー(典型的にはAA)がより好ましい。
追加モノマー成分を用いる場合には、粘着剤組成物における追加モノマー成分の含有量は、当該追加モノマー成分の作用(例えば極性基含有モノマーの場合は凝集性等)や塗工性等を考慮して、アクリル系重合成分の総量の凡そ0.1〜15重量%(例えば0.5〜10重量%、典型的には1〜5重量%)とすることが好ましい。
また、粘着剤組成物は、その他の共重合性モノマーとして、架橋等を目的として、上記で例示したような多官能モノマーを含むことが好ましい。ここに開示される粘着剤組成物が多官能モノマーを含む場合には、その含有量は、アクリル系重合成分を構成する全モノマー成分のうち0.005〜1重量%(例えば0.01〜1重量%、典型的には0.02〜0.5重量%)とすることが好ましい。
多官能モノマーは、アクリル系重合成分の例えば部分重合前に粘着剤組成物に添加されてもよく、当該重合後(少なくとも部分的な重合後)に添加されてもよい。アクリル系重合物(例えば部分重合物)を形成した後に多官能モノマーを添加する場合、粘着剤組成物は、当該添加後に反応(典型的には架橋反応)するような処理に供される。多官能モノマーを使用する一態様では、凝集性を確実に高める観点から、アクリル系重合成分の部分重合物を形成した後に、多官能モノマーが添加された粘着剤組成物が好ましく用いられる。
アクリル系重合成分として部分重合物を含む粘着剤組成物(例えば無溶剤型粘着剤組成物)は、例えば、上記モノマー成分を適当な重合方法により部分的に重合して得られた部分重合物と、後述の(メタ)アクリル系オリゴマー、必要に応じて用いられる他の成分(例えば、未反応のモノマーや、上記光重合開始剤、追加モノマー、多官能モノマー、後述の粘着付与剤、架橋剤等)とを混合することによって調製することができる。
他の一態様では、アクリル系重合成分は、重合転化率95重量%超(典型的には99重量%超)の完全重合物であり得る。このようなアクリル系重合成分の完全重合物を含む粘着剤組成物は、未反応モノマーを実質的に含まないことが好ましい。例えば、未反応モノマーの含有割合が1重量%未満(典型的には0.5重量%未満)であることが好ましい。アクリル系重合成分が完全重合物である場合、そのMwは、粘着剤組成物の調製容易性や塗工性等の観点から、20×104〜200×104(例えば30×104〜150×104)程度であり得る。本明細書において、重合物(部分重合物および完全重合物を包含する。)のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定することができる。より具体的には、例えばGPC測定装置として商品名「HLC−8120GPC」(東ソー(株)製)を用い、上記重合物をサンプルとして、標準ポリスチレン換算値として算出することができる。なお、部分重合物中に含まれ得る未反応のモノマーは、上記GPC測定から求められるMwの値にはほとんど影響しないことが留意される。
上記完全重合物は、例えば、溶剤型粘着剤組成物、水分散型粘着剤組成物(典型的にはエマルション状の粘着剤組成物)等のように、粘着成分が溶媒で適度な粘度に希釈(溶解または分散)された形態の粘着剤組成物に好ましく適用することができる。上記粘着剤組成物は、比較的高分子量の完全重合物を含むことにより、該組成物を乾燥させる等の簡便な硬化処理により高性能の粘着剤層を形成することができる。溶剤型の粘着剤組成物は、例えばアクリル系重合成分の構成モノマー成分に対応する組成のモノマー成分を常法により溶液重合に供することにより調製し得る。エマルション状の粘着剤組成物は、例えばアクリル系重合成分の構成モノマー成分に対応する組成のモノマー成分を常法によりエマルション重合に供することにより調製し得る。
アクリル系重合成分の全構成モノマー成分の組成は、その完全重合物のTgが−60℃以上−10℃以下となるように設定され得る。低温特性等の観点から、アクリル系重合成分の全構成モノマー成分の組成から算出されるTgは、−15℃以下(例えば−20℃以下、典型的には−25℃以下)であることが好ましい。また粘着剤の凝集性の観点から、上記Tgは−60℃以上(例えば−55℃以上)とすることが適当である。好ましい一態様では、上記全構成モノマー成分の組成から算出されるTgは、−60℃〜−30℃(典型的には−55℃〜−35℃)であり得る。
ここで、上記Tgとは、アクリル系重合成分を構成する各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のTgおよび該モノマーの重量分率(重量基準の共重合割合)に基づいてフォックス(Fox)の式から求められる値をいう。したがって、当該Tgは、その構成モノマー成分の組成を適宜変えることにより調整することができる。ホモポリマーのTgとしては、公知資料に記載の値を採用するものとする。
ここに開示される技術では、上記ホモポリマーのTgとして、具体的には以下の値を用いるものとする。
2−エチルヘキシルアクリレート −70℃
メチルメタクリレート 105℃
ジシクロペンタニルメタクリレート 175℃
N−ビニル−2−ピロリドン 54℃
2−ヒドロキシエチルアクリレート −15℃
N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド 98℃
2−メトキシエチルアクリレート −50℃
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 43℃
アクリル酸 106℃
上記で例示した以外のホモポリマーのTgについては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いるものとする。上記Polymer Handbookにも記載されていない場合には、特開2007−51271号公報に記載の測定方法により得られる値を用いるものとする。
((メタ)アクリル系オリゴマー)
ここに開示される粘着剤組成物は、任意成分として、(メタ)アクリル系オリゴマー(以下「アクリル系オリゴマー」と表記する。)を含んでもよい。アクリル系オリゴマーを採用することによって、押圧接着力と他の粘着特性とのバランスを改善し得る。また、アクリル系オリゴマーは、粘着剤組成物を活性エネルギー線照射(例えばUV照射)により硬化させる場合に、一般的なアクリル系粘着剤用の粘着付与樹脂(例えばロジン系やテルペン系等の粘着付与樹脂)に比べて硬化阻害(例えば、未反応モノマーの重合阻害)を起こしにくいという利点を有する。なお、アクリル系オリゴマーは、その構成モノマー成分としてアクリル系モノマーを含む重合体であり、上記アクリル系重合成分から形成されるアクリル系ポリマーよりもMwの小さい重合体として定義される。
アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占めるアクリル系モノマーの割合は、典型的には50重量%超であり、好ましくは60重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上(例えば80重量%以上、さらには90重量%以上)である。好ましい一態様では、アクリル系オリゴマーは、実質的にアクリル系モノマーのみからなるモノマー組成を有する。
アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分としては、上記アクリル系重合成分に利用され得るモノマーとして例示した鎖状アルキル(メタ)アクリレート、極性基含有モノマー、その他の共重合性モノマー(例えば脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート)を用いることができる。アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分としては、上記で例示した各種モノマーの1種または2種以上を用いることができる。
アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分として用いられ得る鎖状アルキル(メタ)アクリレートとしては、上記式(1)においてR2がC1−12(例えばC1−8)である鎖状アルキル(メタ)アクリレートが好ましく使用される。その好適例としては、MMA、EA、BA、IBMA、t−BA、2EHAが挙げられる。なかでもMMAがより好ましい。
アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分として用いられ得る極性基含有モノマーの好適例としては、NVP、ACMO等のN含有環(典型的にはN含有複素環)を有するモノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;AA、MAA等のカルボキシ基含有モノマー;HEA等の水酸基含有モノマー;が挙げられる。
アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分として用いられ得るその他の共重合性モノマーの好適例としては、上記で例示した脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの1種または2種以上が挙げられる。脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの脂環式炭化水素基の炭素原子数は4〜20とすることが適当である。上記炭素原子数は、好ましくは5以上(例えば6以上、典型的には8以上)であり、また好ましくは16以下(例えば12以下、典型的には10以下)である。具体的には、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましく、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)が特に好ましい。
好ましい一態様では、アクリル系オリゴマーは、その構成モノマー成分として鎖状アルキル(メタ)アクリレートおよび/または脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを含む。この態様において、上記アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占める上記鎖状アルキル基含有および脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルの割合は、凡そ80重量%以上(例えば90〜100重量%、典型的には95〜100重量%)とすることが好ましい。上記アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分は、実質的に鎖状アルキル(メタ)アクリレートおよび/または脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートからなることがより好ましい。
アクリル系オリゴマーは、その構成モノマー成分として、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。この態様において、上記アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占める上記脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの割合(すなわち共重合割合)は、粘着性や凝集性の観点から、凡そ30〜90重量%(例えば50〜80重量%、典型的には55〜70重量%)とすることが好ましい。また、構成モノマー成分として脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを用いたアクリル系オリゴマーは、そのモノマー種を適切に選定することにより、極性基含有モノマー(例えばN含有モノマー、典型的にはN含有環を有するモノマー)を構成モノマー成分とするアクリル系重合成分と相溶する傾向が高まるという利点がある。
アクリル系オリゴマーが、鎖状アルキル(メタ)アクリレートと脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとを含むモノマー混合物の共重合物である場合、鎖状アルキル(メタ)アクリレートと脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとの比率は、特に限定されない。好ましい一態様では、アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分における鎖状アルキル(メタ)アクリレートの重量割合(WA)と脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの重量割合(WB)との重量比率(WA:WB)は、1:9〜9:1であり、好ましくは2:8〜7:3(例えば3:7〜6:4、典型的には3:7〜5:5)である。
特に限定するものではないが、アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分の組成(すなわち重合組成)は、該アクリル系オリゴマーのTgが10℃以上300℃以下となるように設定され得る。ここで、アクリル系オリゴマーのTgとは、該アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分の組成に基づいて、上記アクリル系重合成分の構成モノマー組成に基づくTgと同様にして求められる値をいう。アクリル系オリゴマーのTgは、初期接着性の観点から、180℃以下(例えば160℃以下)であることが好ましい。また上記Tgは、粘着剤の凝集性の観点から、60℃以上(例えば100℃以上、典型的には120℃以上)であることが好ましい。
アクリル系オリゴマーのMwは、特に限定されないが、典型的には0.1×104〜3×104程度である。粘着特性を向上する観点から、アクリル系オリゴマーのMwは、1.5×104以下が好ましく、1×104以下がより好ましく、0.8×104以下(例えば0.6×104以下)がさらに好ましい。また粘着剤の凝集性等の観点から、上記Mwは、0.2×104以上(例えば0.3×104以上)が好ましい。
アクリル系オリゴマーは、その構成モノマー成分を重合することにより形成され得る。重合方法や重合態様は特に限定されず、従来公知の各種重合方法(例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合、光重合、放射線重合等)を、適宜の態様で採用することができる。必要に応じて使用し得る重合開始剤の種類や使用量についても概ね上述のとおりであるので、ここでは説明は繰り返さない。
アクリル系オリゴマーの分子量を調整するために、重合に際して連鎖移動剤を用いることができる。使用し得る連鎖移動剤の例としては、メルカプト基を有する化合物、チオグリコール酸およびその誘導体等が挙げられる。なかでも好ましい連鎖移動剤の例として、チオグリコール酸が挙げられる。
連鎖移動剤の使用量は特に制限されず、目的とするアクリル系オリゴマーのMw等に応じて適宜調節することができる。通常は、アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分100重量部に対して、連鎖移動剤を0.1〜20重量部(好ましくは0.2〜15重量部、さらに好ましくは0.3〜10重量部)程度用いることが好ましい。
アクリル系オリゴマーを使用する場合、粘着剤組成物における該アクリル系オリゴマーの含有量は特に限定されない。例えば、アクリル系重合成分100重量部に対して例えば0.5重量部以上とすることができる。アクリル系オリゴマーの効果をよりよく発揮させる観点からは、上記アクリル系オリゴマーの含有量は、1重量部以上(例えば1.5重量部以上、典型的には2重量部以上)とすることが好ましい。また、粘着剤組成物の硬化性やアクリル系重合成分との相溶性等の観点から、上記アクリル系オリゴマーの含有量は、50重量部未満(例えば10重量部未満)とすることが適当であり、8重量部未満(例えば7重量部未満、典型的には5重量部以下)とすることが好ましい。
ここに開示される粘着剤組成物は、上述の粘着剤に含まれる添加成分として例示した各種の添加成分(粘着付与剤、着色剤等)を、必要に応じて含み得る。その詳細(化合物名、配合割合等)については、粘着剤において説明した内容と基本的に同じであるので、ここでは説明は繰り返さない。
ここに開示される粘着剤組成物の形態は特に限定されず、例えば上述のように、UVや放射線等の活性エネルギー線により硬化して粘着剤を形成するように調製された組成物(活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物)、有機溶媒中に粘着剤(粘着成分)を含む形態の組成物(溶剤型粘着剤組成物)、粘着剤が水性溶媒に分散した形態の組成物(水分散型粘着剤組成物)であってもよく、加熱溶融状態で塗工され、室温付近まで冷えると粘着剤を形成するホットメルト型粘着剤組成物等の種々の形態の粘着剤組成物であり得る。
好ましい一態様において、粘着剤組成物から粘着剤(例えばアクリル系粘着剤)を形成する際の重合(典型的には光重合)は、UV照射により行うことができる。UV照射に用いられるUVランプとしては、波長300〜400nm領域にスペクトル分布をもつものが好適に用いられる。例えば、ケミカルランプ(例えば、東芝ライテック(株)製のケミカルランプ)、ブラックライト、メタルハライドランプ等を光源として用いることができる。特に、波長300〜400nmにおける照度が1〜50mW/cm2となるようにUVを照射することが好ましい。UVの照度を50mW/cm2以下(典型的には40mW/cm2以下、例えば30mW/cm2以下)とすることは、より良好な粘着特性を得る観点から有利である。UVの照度を1mW/cm2以上(より好ましくは2mW/cm2以上、例えば3mW/cm2以上)とすることは、生産性の観点から有利である。上記UVの照度は、ピーク感度波長約350nmの工業用UVチェッカー((株)トプコン製、商品名「UVR−T1」、受光部型式UD−T36)を用いて測定することができる。なお、粘着剤層の形成をUV照射を利用して行う場合には、雰囲気中の酸素による反応阻害を抑制する観点から、粘着剤層の両面が剥離ライナーや基材に覆われた状態で硬化反応を行うことが好ましい。
ここに開示される第一粘着剤層および第二粘着剤層の一方または両方は、ゲル分率が凡そ10重量%以上であることが適当である。凝集性の観点から、上記ゲル分率は30重量%以上(例えば50重量%以上、典型的には60重量%以上)が好ましい。また粘着性の観点から、上記ゲル分率は90重量%以下(例えば85重量%以下、典型的には80重量%以下)が適当である。上記ゲル分率は、モノマー組成、構成モノマー成分の重合転化率、重合物のMw、粘着剤層の形成条件(粘着剤組成物の硬化条件、例えば光照射条件や乾燥条件)等により調整することができる。上記ゲル分率の数値は、例えばアクリル系粘着剤から形成される粘着剤層について好ましく適用され得る。
上記ゲル分率は、以下の方法により測定することができる。すなわち、測定サンプル約0.1gを、平均孔径0.2μmのテトラフルオロエチレン樹脂製多孔質シートで巾着状に包み、口を凧糸で縛る。テトラフルオロエチレン樹脂製多孔質シートと凧糸の合計重量Wa(mg)は予め計測しておく。そして、包みの重量(粘着剤と包みの合計重量)Wb(mg)を計測する。この包みを容量50mLのスクリュー管に入れ(1個の包みにつきスクリュー管1本を使用する。)、このスクリュー管に酢酸エチルを満たす。これを室温(典型的には23℃)で7日間静置した後、上記包みを取り出して120℃で2時間乾燥させ、乾燥後における包みの重量Wc(mg)を計測する。該粘着剤のゲル分率(%)は、上記Wa,WbおよびWcを以下の式に代入することにより求められる。上記テトラフルオロエチレン樹脂製多孔質シートとしては、日東電工(株)製の商品名「ニトフロンNTF1122」(平均孔径0.2μm、気孔率75%、厚さ85μm)またはその相当品を使用することができる。
ゲル分率[%]=(Wc−Wa)/(Wb−Wa)×100
<用途>
ここに開示される両面粘着シートは、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属材料;ガラス、セラミックス等の無機材料;ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料;天然ゴム、ブチルゴム等のゴム材料;およびこれらの複合素材等からなる表面を有する被着体に貼り付けられて用いられ得る。
好適には、ここに開示される両面粘着シートは、携帯型電子機器(例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノートパソコン等)の構成部材の接合または固定に用いることができる。具体的には、液晶表示モジュールユニットとバックライトユニットの固定用、上記携帯型電子機器の表示部を保護する保護パネル(レンズ)固定用、携帯電話のキーモジュール部材固定用、テレビのデコレーションパネル固定用、ノートパソコンのバッテリーパック固定用、デジタルビデオカメラのレンズ防水等の用途に好ましく適用され得る。特に、液晶表示装置を内蔵する携帯型電子機器に好ましく使用され得る。
なお、この明細書において「携帯」とは、単に携帯することが可能であるだけでは十分ではなく、個人(標準的な成人)が相対的に容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味するものとする。また、この明細書における「レンズ」は、光の屈折作用を示す透明体および光の屈折作用のない透明体の両方を含む概念である。つまり、本明細書における「レンズ」には、屈折作用がない、単なる携帯型電子機器の表示部を保護する保護パネルも含まれる。
ここに開示される技術の好ましい一態様によると、押圧接着力が200N以上(より好ましくは220N以上、さらに好ましくは230N以上、特に好ましくは250N以上)の押圧接着力を示す両面粘着シートが提供され得る。このように押圧接着力の高い両面粘着シートは、上記両面粘着シートに部材を貼り合わせた場合に内部応力による剥がれが生じにくく、接着信頼性に優れるので好ましい。例えば、携帯型電子機器に用いられる両面粘着シートのように接着領域が小面積化する傾向にある用途においても、高い接着信頼性を維持することが可能である。なお、上記押圧接着力は、横59cm、縦113cm、幅1mmの窓枠状(「額縁状」ともいう)の両面粘着シートにより、ステンレス鋼(SUS)製の枠体とガラス板とを0.12MPaで10秒間の圧着条件で貼り合わせることによって評価用サンプルを作製し、この評価用サンプルにおいて上記ガラス板を10mm/分の負荷速度で内部から外部に向かってガラス板の厚さ方向に押圧して、ガラス板とSUS製枠体とが分離するまでの間に観測される最大応力として定義される。上記押圧接着力は、より具体的には、後述する実施例に記載の手順により測定することができる。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
(例1)
(基材層(1)の作製)
冷却管、温度計および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとしてアクリル酸(AA)10重量部およびn−ブチルアクリレート(BA)19重量部、イソボルニルアクリレート(IBXA)71重量部と、ポリオールとしてポリオキシテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)68.4重量部と、ジイソシアネート(商品名:タケネート600、三井化学(株)製)25.5重量部とを投入し、65℃で5時間反応させた。その後、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)6.1重量部を投入し、65℃で2時間反応させ、ウレタンアクリレート(1)/アクリル系モノマー混合物を得た。その後、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート0.03重量部および光重合開始剤(商品名:イルガキュア651、BASF(株)製)0.1重量部を添加した。
ウレタンアクリレート(1)/アクリル系モノマー混合物を、片面をシリコーンで剥離処理した厚さ38μmのポリエステルフィルム(商品名:MRF、三菱化学ポリエステル(株)製)の剥離処理面に、最終的な厚さが150μmになるようにアプリケータで塗布して塗布層を形成した。次いで、塗布されたウレタンアクリレート(1)/アクリル系モノマー混合物の表面に、片面をシリコーンで剥離処理した厚さ38μmのポリエステルフィルム(商品名:MRE、三菱化学ポリエステル(株)製)を、当該フィルムの剥離処理面が塗布層側になるようにして被覆した。これにより、ウレタンアクリレート(1)/アクリル系モノマー混合物の塗布層を酸素から遮断した。これにケミカルランプ(商品名:FL10BL,東芝ライテック(株)製)を用いて照度4mW/cm2の紫外線を720mJ/cm2照射し、ウレタンアクリレート(1)/アクリル系モノマー共重合体からなる基材層(1)を得た。
(粘着剤層(1)の作製)
2一エチルヘキシルアクリレート(2EHA)78重量部、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)18重量部、HEA4重量部、ならびに光重合開始剤として商品名:イルガキュア651(BASF(株)製)0.05重量部および商品名:イルガキュア184(BASF(株)製)0.05重量部を、3つ口フラスコに投入した。そして、混合物を窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合させることによって、重合転化率8重量%の部分重合物を得た。
上述した部分重合物に、AA4重量部および1,6−ヘキサンジオールジアクリレート0.03重量部を添加した後、これらを均一に混合してアクリル系粘着剤組成物を調製した。
片面をシリコーンで剥離処理した厚さ38μmのポリエステルフィルム(商品名:MRF、三菱化学ポリエステル(株)製)の剥離処理面に、上述のアクリル系粘着剤組成物を、最終的な厚さが50μmになるようにアプリケータで塗布して塗布層を形成した。次いで、塗布されたアクリル系粘着剤組成物の表面に、片面をシリコーンで剥離処理した厚さ38μmのポリエステルフィルム(商品名:MRE、三菱化学ポリエステル(株)製)を、当該フィルムの剥離処理面が塗布層側になるようにして被覆した。これにより、アクリル系粘着剤組成物の塗布層を酸素から遮断した。これにケミカルランプ(商品名:FL10BL,東芝ライテック(株)製)を用いて照度4mW/cm2の紫外線を720mJ/cm2照射し、粘着剤層(1)を得た。
(両面粘着シート(1)の作製)
上記基材層(1)の第一面および第二面からポリエステルフィルムを剥がした。次いで、上記粘着剤層(1)の片面からポリエステルフィルムを剥がし、粘着剤層(1)を基材層(1)に対向した状態となるように該基材層(1)の第一面および第二面に積層して粘着剤層(1)を基材層(1)に転写した。このようにして、粘着剤層(1)/基材層(1)/粘着剤層(1)の構成の両面粘着シート(1)を得た。
(例2)
(基材層(2)の作製)
紫外線硬化性ウレタンアクリレート(商品名:UV−3300B、日本合成化学工業(株)製)50重量部に、イソボルニルアクリレート(IBXA)50重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート0.03重量部、および光重合開始剤(商品名:イルガキュア651、BASF(株)製)0.1重量部を添加した後、これらを均一に混合してウレタンアクリレート(2)/アクリル系モノマー混合物を得たこと以外は基材層(1)と同様にして、ウレタンアクリレート(2)/アクリル系モノマー共重合体からなる基材層(2)を得た。
(両面粘着シート(2)の作製)
上記基材層(1)に代えて基材層(2)を用いたこと以外は同様にして、粘着剤層(1)を基材層(2)の両面に転写し、粘着剤層(1)/基材層(2)/粘着剤層(1)の構成の両面粘着シート(2)を得た。
(例3)
(基材層(3)の作製)
紫外線/電子線硬化性ウレタンアクリレート(商品名:ビームセット505A−6、荒川化学(株)製)83重量部に、2EHA17重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート0.03重量部、および光重合開始剤(商品名:イルガキュア651、BASF(株)製)0.1重量部を添加した後、これらを均一に混合してウレタンアクリレート(3)/アクリル系モノマー混合物を得たこと以外は基材層(1)と同様にして、ウレタンアクリレート(3)/アクリル系モノマー共重合体からなる基材層(3)を得た。
(両面粘着シート(3)の作製)
上記基材層(1)に代えて基材層(3)を用いたこと以外は同様にして、粘着剤層(1)を基材層(3)の両面に転写し、粘着剤層(1)/基材層(3)/粘着剤層(1)の構成の両面粘着シート(3)を得た。
(例4)
(基材層(4)の作製)
紫外線/電子線硬化性ウレタンアクリレート(商品名:ビームセット502H、荒川化学(株)製)50重量部に、2EHA50重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート0.03重量部、および光重合開始剤(商品名:イルガキュア651、BASF(株)製)0.1重量部を添加した後、これらを均一に混合してウレタンアクリレート(4)/アクリル系モノマー混合物を得たこと以外は基材層(1)と同様にして、ウレタンアクリレート(4)/アクリル系モノマー共重合体からなる基材層(4)を得た。
(両面粘着シート(4)の作製)
上記基材層(1)に代えて基材層(4)を用いたこと以外は同様にして、粘着剤層(1)を基材層(4)の両面に転写し、粘着剤層(1)/基材層(4)/粘着剤層(1)の構成の両面粘着シート(4)を得た。
(例5)
(基材層(5)の作製)
紫外線/電子線硬化性ウレタンアクリレート(商品名:ビームセットAQ−17、荒川化学(株)製)83重量部に、2EHA17重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート0.03重量部、および光重合開始剤(商品名:イルガキュア651、BASF(株)製)0.1重量部を添加した後、これらを均一に混合してウレタンアクリレート(5)/アクリル系モノマー混合物を得たこと以外は基材層(1)と同様にして、ウレタンアクリレート(5)/アクリル系モノマー共重合体からなる基材層(5)を得た。
(両面粘着シート(5)の作製)
上記基材層(1)に代えて基材層(5)を用いたこと以外は同様にして、粘着剤層(1)を基材層(5)の両面に転写し、粘着剤層(1)/基材層(5)/粘着剤層(1)の構成の両面粘着シート(5)を得た。
(例6)
(基材層(6)の作製)
紫外線硬化性ウレタンアクリレート(商品名:UV−3000B、日本合成化学工業(株)製)50重量部に、IBXA50重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート0.03重量部、および光重合開始剤(商品名:イルガキュア651、BASF(株)製)0.1重量部を添加した後、これらを均一に混合してウレタンアクリレート(6)/アクリル系モノマー混合物を得たこと以外は基材層(1)と同様にして、ウレタンアクリレート(6)/アクリル系モノマー共重合体からなる基材層(6)を得た。
(両面粘着シート(6)の作製)
上記基材層(1)に代えて基材層(6)を用いたこと以外は同様にして、粘着剤層(1)を基材層(6)の両面に転写し、粘着剤層(1)/基材層(6)/粘着剤層(1)の構成の両面粘着シート(6)を得た。
(例7)
(両面粘着シート(7)の作製)
上記基材層(1)に代えて厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(パナック(株)製)を基材層(7)として用いた以外は同様にして、粘着剤層(1)を基材層(7)の両面に転写し、粘着剤層(1)/基材層(7)/粘着剤層(1)の構成の両面粘着シート(7)を得た。
(例8)
(基材層(8)の作製)
イソブチレンゴム系樹脂(商品名:SIBSTAR 07BT、(スチレンコンテント30%、(株)カネカ製)30重量部に、2EHA70重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート0.03重量部、および光重合開始剤(商品名:イルガキュア651、BASF(株)製)0.1重量部を添加した後、これらを均一に混合してゴム系樹脂(1)/アクリル系モノマー混合物を得たこと以外は基材層(1)と同様にして、ゴム系樹脂(1)/アクリル系モノマー共重合体からなる基材層(8)を得た。
(両面粘着シート(8)の作製)
上記基材層(1)に代えて基材層(8)を用いたこと以外は同様にして、粘着剤層(1)を基材層(8)の両面に転写し、粘着剤層(1)/基材層(8)/粘着剤層(1)の構成の両面粘着シート(8)を得た。
(評価試験)
例1〜8について、以下のようにして各両面粘着シートの評価試験を行った。結果を表1に示す。
<20%モジュラスおよび破断応力>
JIS Z 0237:2009に準拠して、20%モジュラスおよび破断応力を測定した。具体的には、両面粘着シートをダンベル状試験片3号形(狭い平行部の幅5mm、標線間隔20mm)の形状に打ち抜いたものを測定サンプルとした。このとき、ダンベル状試験片は、該試験片の長手方向(引張試験における引張方向)が基材の長手方向と一致する向きとなるように打ち抜いた。万能引張試験機(製品名「TG−1kNB」、ミネベア(株)製)を用いて、引張速度50mm/分で引張試験を行い、それを測定サンプルの断面積で除し、引張強度(N/mm2)を求めた。上記測定サンプルの伸び率が20%のときの引張強度(N/mm2)を20%モジュラスとし、上記測定サンプルがダンベル形状平行部で切断(破断)したときの引張強度(N/mm2)を破断応力とした。
<破断時伸び>
上記引張試験において、測定サンプルがダンベル形状平行部で切断(破断)する直前の標線間隔から破断時伸び(%)を求めた。その結果、例1〜3の破断時伸びは、いずれも300%以上(より詳しくは、300%〜800%)であった。
<押圧接着力>
両面粘着シートを、横59mm、縦113mm、幅1mmの窓枠状(額縁状)にカットして、窓枠状両面粘着シートを得た。この窓枠状両面粘着シートを用いて、横59mm、縦113mm、厚さ1.5mmのガラス板(コーニング社製Gorillaガラス)と、ステンレス鋼(SUS)製の枠体(幅70mm、長さ130mm、厚さ2mm)とを、0.12MPaで10秒間圧着することにより貼り合わせて、評価用サンプルを得た。
図3は、上記評価用サンプルの概略図であって、(a)は上面図、(b)はA−A’断面図である。また図4は、押圧接着力の測定方法を示す説明図である。図3,4において、符号50は窓枠状両面粘着シート、符号51はSUS製枠体、符号52はガラス板、符号53はプローブをそれぞれ示している。
上記で得た評価用サンプルを23℃、50%RHの環境下で1時間エージングした後、上記万能引張試験機にセットした。そして、図4に示すように、SUS製枠体51の枠内に、55mm×95mmの矩形状接触面を有する角型プローブ53を通過させ、このプローブ53を10mm/分の速度で下降(図中、矢印方向に下降)させることにより、ガラス板52をSUS製枠体51から離れる方向に押圧した。そして、ガラス板52とSUS製枠体51とが分離するまでの間に観測された最大応力を押圧接着力(N)として測定した。測定は23℃、50%RHの環境下で行った。また、評価用サンプルは、そのSUS製枠体51の外縁近傍が上記試験機の支持台(図示せず)に固定された状態で測定に供された。なお、上記押圧接着力測定において、SUS製枠体51は、ガラス板52がプローブ53で押圧されることにより加わる負荷によって撓んだり破損したりすることはなかった。
<投錨力>
例1に係る両面粘着シートの一方の剥離ライナーを剥がし、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合わせ、それを20mm幅に切断したものを試験片とした。20mm幅の試験片の他方の剥離ライナーを剥がし、ハンドローラーを用いて、粘着テープ(品番:No.31B、日東電工(株)製)の粘着面と上記試験片の粘着面とを貼り合わせた。これを23℃の環境下で30分間放置した後、上記万能引張試験機を用いてTの字になるように速度300mm/分で粘着面同士を剥がし、このときに観測される応力を投錨力(単位:N/20mm)として測定した。その結果、例1に係る粘着剤の投錨力は9.1N/20mmであり、良好な投錨性を示すことがわかった。
例1〜例8に係る両面粘着シートの20%モジュラス、破断応力および押圧接着力の測定結果を表1に示す。なお、例7の破断応力は装置の測定限界値以上であったため、表1にはN.D.と表示している。
上記表1に示されるように、ウレタン(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体を含む基材を用い、20%モジュラスが5N/mm2以下、破断応力が10N/mm2以上の範囲内にある例1〜3において、200N以上の高い押圧接着力が得られた。一方、破断応力が10N/mm2未満の例4,5では、押圧接着力が200Nを下回った。20%モジュラスが5Nmm2を超える例6〜8でも、押圧接着力が200Nを下回った。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。