以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
本実施形態に係る飲料(以下、「本飲料」という。)は、50ppb以上のシンナムアルデヒドと、植物タンパク分解物とを含む。また、実施形態に係る方法(以下、「本方法」という。)の一側面は、飲料の製造方法であって、当該飲料が50ppb以上のシンナムアルデヒドと、植物タンパク分解物とを含むように、当該シンナムアルデヒドと当該植物タンパク分解物とを使用することを含む。
本発明の発明者は、上述のとおり、飲料の香味に好ましい複雑さを付与するための技術的手段について鋭意検討を行った結果、意外にも、シンナムアルデヒドという特定の成分を植物タンパク分解物と共に使用することにより、飲料の香味が効果的に向上すること、具体的には、例えば、シンナムアルデヒド単独、及び植物タンパク分解物単独のいずれによっても達成されない、当該シンナムアルデヒドと植物タンパク分解物との組み合わせに特有の好ましい複雑さを含む香味を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
このため、本実施形態は、本方法の他の側面として、飲料の製造において、当該飲料が50ppb以上のシンナムアルデヒドと、植物タンパク分解物とを含むように、当該シンナムアルデヒドと当該植物タンパク分解物とを使用することにより、当該飲料の香味を向上させる方法を含む。
本飲料に含まれるシンナムアルデヒド(化学式:C9H8O、モル質量:132.6g/mоl、CAS登録番号104−55−2)は、芳香族アルデヒドの一つであり、シナモンの香り成分として知られる。
本飲料におけるシンナムアルデヒドの含有量は、50ppb以上であれば特に限られないが、例えば、65ppb以上であることが好ましく、80ppb以上であることがより好ましく、100ppb以上であることが特に好ましい。
本飲料におけるシンナムアルデヒドの含有量の上限値は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、当該含有量は、例えば、1000ppb以下であることとしてもよく、800ppb以下であることが好ましく、650ppb以下であることがより好ましく、600ppb以下であることが特に好ましい。
本飲料におけるシンナムアルデヒドの含有量は、上述した下限値の任意の一つと、上述した上限値の任意の一つと、によって特定されてもよい。すなわち、本飲料におけるシンナムアルデヒドの含有量は、例えば、50ppb以上、1000ppb以下であることとしてもよく、65ppb以上、800ppb以下であることが好ましく、80ppb以上、800ppb以下であることがより好ましく、80ppb以上、650ppb以下であることがより一層好ましく、100ppb以上、600ppb以下であることが特に好ましい。なお、本飲料におけるシンナムアルデヒドの含有量について、1ppbは、1μg/Lに相当する。
本発明において、飲料におけるシンナムアルデヒドの含有量は、SPME(solid phase microextraction)−GC(gas chromatography)−MS(mass spectrometry)法により測定される。具体的には、塩化ナトリウム3gを入れた容量20mLのヘッドスペースバイアルに8mLのサンプル及び40μLの内部標準液(5mg/Lのベンジルアセテート)を添加し、密栓する。密栓したバイアルを50℃で15分間振盪した後、SPME用ファイバー(Polydimethylsiloxane/Divynylbenzene 65μm:スペルコ社製)をバイアル中のヘッドスペースに露出させる。50℃で30分間揮発性成分をファイバーに吸着させた後、注入口で3分間脱着させGC/MSにより分析する。GC/MS分析の測定条件は以下のとおりである。
・分析機器:6890N GC、5973N MSD(Agilent Technologies)
・カラム:HP−1MS、30m(長さ)×0.25mm(内径)、1.0μm(膜厚)(Agilent Technologies)
・注入モード:スプリットレス注入
・流量:1mL/分(定流量)
・注入口温度:270℃
・オーブン温度:40℃(3分)→5℃/分→200℃(0分:達温)→10℃/分→320℃
・MS検出器:SIM m/z 131(シンナムアルデヒド)、108(ベンジルアセテート)
なお、上述のSPME−GC−MS法においては、標準液を別途添加して作成した検量線を使用する標準添加法により測定することとしてもよい。また、夾雑物質の影響を受ける場合、及び/又は感度が不足する場合には、ファイバーの種類、吸着温度、吸着時間及びカラムの種類からなる群より選択される1以上の条件を適宜変更すること、及び/又は、GC/MS/MS又は2次元GC−MSを使用することが好ましい。
本飲料に含まれる植物タンパク分解物は、植物に由来するタンパクの分解物である。すなわち、植物タンパク分解物は、植物に由来するタンパクを加水分解することにより得られる。植物タンパクの加水分解は、例えば、酵素処理、酸処理又はアルカリ処理により行われる。植物タンパク分解物は、植物ペプチドを含む。植物タンパク分解物は、さらに遊離アミノ酸及び植物タンパクからなる群より選択される1以上を含んでもよい。
植物タンパク分解物は、植物のタンパク分解物であれば特に限られないが、例えば、穀類、豆類及びイモ類からなる群より選択される1以上のタンパク分解物であることが好ましく、穀類タンパク分解物及び豆類タンパク分解物からなる群より選択される1以上であることが特に好ましい。豆類タンパク分解物としては、例えば、大豆タンパク分解物の市販品を使用することができる。市販されている大豆タンパク分解物としては、ハイニュートAM(不二製油社製)、ハイニュートDC6(不二製油社製)等が挙げられる。
穀類タンパク分解物は、例えば、麦類、米類及びトウモロコシからなる群より選択される1以上のタンパク分解物であることが好ましく、麦類タンパク分解物であることが特に好ましい。
麦類タンパク分解物は、例えば、大麦、小麦、ライ麦及び燕麦からなる群より選択される1以上のタンパク分解物であることが好ましく、大麦タンパク分解物及び小麦タンパク分解物からなる群より選択される1以上であることが特に好ましい。
豆類タンパク分解物は、例えば、大豆、エンドウ、小豆、黒豆、緑豆、大正金時、トラ豆、ヒヨコ豆、ソラ豆、ウズラ豆、ハナ豆、ヒラ豆及びヒタシ豆からなる群より選択される1以上のタンパク分解物であることが好ましく、大豆タンパク分解物及びエンドウタンパク分解物からなる群より選択される1以上であることが特に好ましい。
なお、穀類タンパク分解物、豆類タンパク分解物及びイモ類タンパク分解物は、発芽していない穀類、豆類又はイモ類に由来するタンパクの分解物であってもよいし、発芽した穀類、豆類又はイモ類に由来するタンパクの分解物であってもよい。
具体的に、例えば、麦類タンパク分解物は、発芽していない麦類に由来するタンパクの分解物であってもよいし、発芽した麦類(すなわち、麦芽)に由来するタンパクの分解物であってもよい。
本飲料における植物タンパク分解物の含有量は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、本飲料は、0.01重量%以上の植物タンパク分解物を含むこととしてもよい。
この場合、本飲料における植物タンパク分解物の含有量は、例えば、0.02重量%以上であることが好ましく、0.03重量%以上であることがより好ましく、0.04重量%以上であることが特に好ましい。
本飲料における植物タンパク分解物の含有量の上限値は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、当該含有量は、例えば、0.60重量%以下であることとしてもよく、0.45重量%以下であることが好ましく、0.30重量%以下であることがより好ましく、0.25重量%以下であることがより一層好ましく、0.20重量%以下であることが特に好ましい。
本飲料における植物タンパク分解物の含有量は、上述した下限値の任意の一つと、上述した上限値の任意の一つと、によって特定されてもよい。すなわち、本飲料における植物タンパク分解物の含有量は、例えば、0.01重量%以上、0.60重量%以下であることとしてもよく、0.01重量%以上、0.45重量%以下であることが好ましく、0.03重量%以上、0.45重量%以下であることがより好ましく、0.03重量%以上、0.25重量%以下であることがより一層好ましく、0.03重量%以上、0.20重量%以下であることが特に好ましい。
本飲料におけるシンナムアルデヒドの含有量と、植物タンパク分解物の含有量との組み合わせは、上述したシンナムアルデヒド含有量範囲の任意の一つと、上述した植物タンパク分解物含有量範囲の任意の一つと、によって特定されてもよい。すなわち、本飲料は、例えば、50ppb以上、1000ppb以下のシンナムアルデヒドと、0.01重量%以上、0.60重量%以下の植物タンパク分解物とを含むこととしてもよく、65ppb以上、800ppb以下のシンナムアルデヒドと、0.01重量%以上、0.45重量%以下の植物タンパク分解物とを含むことが好ましく、80ppb以上、800ppb以下のシンナムアルデヒドと、0.03重量%以上、0.45重量%以下の植物タンパク分解物とを含むことがより好ましく、80ppb以上、650ppb以下のシンナムアルデヒドと、0.03重量%以上、0.25重量%以下の植物タンパク分解物とを含むことがより一層好ましく、100ppb以上、600ppb以下のシンナムアルデヒドと、0.03重量%以上、0.20重量%以下の植物タンパク分解物とを含むことが特に好ましい。
上述のとおり、本飲料に含まれる植物タンパク分解物は、植物ペプチドを含む。このため、本飲料は、植物ペプチドを含む。すなわち、本飲料は、シンナムアルデヒドと、植物ペプチドとを含む飲料である。植物ペプチドは、植物に由来するペプチドである。植物ペプチドは、上述したように、植物に由来するタンパクの加水分解により得られる。
本飲料に含まれる植物ペプチドの分子量は、特に限られないが、例えば、当該植物ペプチドの重量平均分子量は、100,000以下、70,000以下、60,000以下、50,000以下、30,000以下、20,000以下、10,000以下、7,000以下、6,000以下、5,000以下、4,000以下、3,000以下、又は2,000以下であってもよい。また、植物ペプチドの重量平均分子量の下限値は、特に限られないが、例えば、100以上、150以上、200以上、又は300以上であってもよい。植物ペプチドの重量平均分子量は、HPLC、ゲル濾過法等の公知の方法により測定することができる。
本飲料に含まれる植物ペプチドの重量平均分子量は、上述した下限値の任意の一つと、上述した上限値の任意の一つと、によって特定されてもよい。すなわち、植物ペプチドの重量平均分子量は、例えば、100以上であって、且つ100,000以下、70,000以下、60,000以下、50,000以下、30,000以下、20,000以下、10,000以下、7,000以下、6,000以下、5,000以下、4,000以下、3,000以下、又は2,000以下であってもよいし、これらの各場合において、当該重量平均分子量は、150以上、200以上、又は300以上であってもよい。
本飲料に含まれる植物ペプチドは、植物タンパク分解物に含まれるペプチドであれば特に限られないが、例えば、穀類、豆類及びイモ類からなる群より選択される1以上のペプチドであることが好ましく、穀類ペプチド及び豆類ペプチドからなる群より選択される1以上であることが特に好ましい。
穀類ペプチドは、例えば、麦類、米類及びトウモロコシからなる群より選択される1以上のペプチドであることが好ましく、麦類ペプチドであることが特に好ましい。麦類ペプチドは、例えば、大麦、小麦、ライ麦及び燕麦からなる群より選択される1以上のペプチドであることが好ましく、大麦ペプチド及び小麦ペプチドからなる群より選択される1以上であることが特に好ましい。豆類ペプチドは、例えば、大豆、エンドウ、小豆、黒豆、緑豆、大正金時、トラ豆、ヒヨコ豆、ソラ豆、ウズラ豆、ハナ豆、ヒラ豆及びヒタシ豆からなる群より選択される1以上のペプチドであることが好ましく、大豆ペプチド及びエンドウペプチドからなる群より選択される1以上であることが特に好ましい。
本飲料における植物ペプチドの含有量は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、本飲料は、例えば、0.009重量%以上の植物ペプチドを含むこととしてもよい。
この場合、本飲料における植物ペプチドの含有量は、例えば、0.018重量%以上であることが好ましく、0.027重量%以上であることがより好ましく、0.036重量%以上であることが特に好ましい。
本飲料における植物ペプチドの含有量の上限値は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に限られないが、当該含有量は、例えば、0.540重量%以下であることとしてもよく、0.410重量%以下であることが好ましく、0.270重量%以下であることがより好ましく、0.230重量%以下であることがより一層好ましく、0.180重量%以下であることが特に好ましい。
本飲料における植物ペプチドの含有量は、上述した下限値の任意の一つと、上述した上限値の任意の一つと、によって特定されてもよい。すなわち、本飲料における植物ペプチドの含有量は、例えば、0.009重量%以上、0.540重量%以下であることとしてもよく、0.009重量%以上、0.410重量%以下であることが好ましく、0.027重量%以上、0.410重量%以下であることがより好ましく、0.027重量%以上、0.210重量%以下であることがより一層好ましく、0.027重量%以上、0.180重量%以下であることが特に好ましい。
本発明において、飲料における植物ペプチドの含有量は、Lowry法により測定される。具体的に、例えば、市販のキット(DCプロテインアッセイ、Bio−Rad社製)を使用することにより測定される。より具体的に、この場合、試料(飲料)と、酒石酸銅を含む溶液(A試薬)とを混合し、次いで、Folin試薬を含む溶液(B試薬)を加えて混合し、その後、750nmの吸光度を測定する。
本飲料におけるシンナムアルデヒドの含有量と、植物ペプチドの含有量との組み合わせは、上述したシンナムアルデヒド含有量範囲の任意の一つと、上述した植物ペプチド含有量範囲の任意の一つと、によって特定されてもよい。具体的に、本飲料は、例えば、50ppb以上、1000ppb以下のシンナムアルデヒドと、0.009重量%以上、0.540重量%以下の植物ペプチドとを含むこととしてもよく、65ppb以上、800ppb以下のシンナムアルデヒドと、0.009重量%以上、0.410重量%以下の植物ペプチドとを含むことが好ましく、80ppb以上、800ppb以下のシンナムアルデヒドと、0.027重量%以上、0.410重量%以下の植物ペプチドとを含むことがより好ましく、80ppb以上、650ppb以下のシンナムアルデヒドと、0.027重量%以上、0.210重量%以下の植物ペプチドとを含むことがより一層好ましく、100ppb以上、600ppb以下のシンナムアルデヒドと、0.027重量%以上、0.180重量%以下の植物ペプチドとを含むことが特に好ましい。
本方法に係る飲料の製造においては、原料の少なくとも一部として、シンナムアルデヒドと植物タンパク分解物とを使用する。すなわち、本方法においては、シンナムアルデヒド及び植物タンパク分解物を含む原料液を使用して飲料を製造する。本方法は、シンナムアルデヒド及び植物タンパク分解物を含む原料液を調製することと、当該原料液を使用して飲料を製造することと、を含んでもよい。
本方法において原料として使用されるシンナムアルデヒドは、例えば、植物由来のシンナムアルデヒド(例えば、シナモン等の樹木の樹皮から抽出されたシンナムアルデヒド)であってもよいし、化学的に合成されたシンナムアルデヒドであってもよい。
また、植物由来のシンナムアルデヒドを使用する場合、予め植物原料から抽出されたシンナムアルデヒド(具体的には、例えば、植物由来のシンナムアルデヒドを含む組成物)を使用してもよいし、シンナムアルデヒドを含む当該植物原料(例えば、シナモンの樹皮)を使用してもよいし、シンナムアルデヒドを含む香料を使用してもよい。
本方法における植物タンパク分解物の使用は、例えば、上述したとおり、植物原料から抽出されたタンパクに予め加水分解処理を施して得られた植物タンパク分解物を添加すること(すなわち、予め調製された植物タンパク分解物を外的に添加すること)により好ましく実施される。
本飲料は、さらに他の成分を含むこととしてもよい。すなわち、本飲料は、例えば、シンナムアルデヒド及び植物タンパク分解物以外の植物由来成分(以下、「他の植物成分」という。)、糖類、食物繊維、色素、香料、酸味料、苦味料及び甘味料からなる群より選択される1種以上をさらに含むこととしてもよいし、糖類、食物繊維、色素、香料、酸味料、苦味料及び甘味料からなる群より選択される1種以上をさらに含むこととしてもよい。
本飲料が他の植物由来成分を含む場合、当該他の植物由来成分は、飲料の製造に使用される植物に由来する成分であれば特に限られないが、例えば、次の(i)及び(ii)からなる群より選択される1以上に由来する成分であることが好ましい:(i)穀類、豆類及びイモ類からなる群より選択される1以上;、(ii)当該群より選択される1以上を発芽させたもの。
穀類は、例えば、麦類、米類及びトウモロコシからなる群より選択される1以上であることが好ましい。麦類は、例えば、大麦、小麦、燕麦及びライ麦からなる群より選択される1以上であることが好ましい。豆類は、例えば、大豆、エンドウ、小豆、黒豆、緑豆、大正金時、トラ豆、ヒヨコ豆、ソラ豆、ウズラ豆、ハナ豆、ヒラ豆及びヒタシ豆からなる群より選択される1以上であることが好ましい。イモ類は、例えば、馬鈴薯及びサツマイモからなる群より選択される1以上であることが好ましい。
本飲料が他の植物由来成分を含む場合、本方法においては、原料の一部として他の植物原料を使用することを含む。すなわち、本方法は、例えば、シンナムアルデヒド、植物タンパク分解物及び他の植物原料を含む原料と、水とを混合することを含む。
具体的に、例えば、他の植物原料として、麦類を発芽させることにより得られる麦芽を使用する場合(すなわち、麦芽由来成分を含む本飲料を製造する場合)、本方法は、当該麦芽を含む原料と水とを混合し、次いで、糖化を行うことを含むこととしてもよい。糖化においては、麦芽と水とを混合して調製された混合液を、多糖類分解酵素で処理する。多糖類分解酵素としては、麦芽に含まれる酵素を使用してもよいし、外的に添加した酵素を使用してもよい。また、本方法においては、他の植物原料の使用の有無にかかわらず、糖化を行うことなく飲料を製造することとしてもよい。
本飲料は、他の植物由来成分として、ホップ由来成分を含むこととしてもよい。本飲料がホップ由来成分を含む場合、当該ホップ由来成分は、ホップに由来する成分であれば特に限られないが、例えば、ホップ由来の苦味成分及び芳香成分からなる群より選択される1以上であることが好ましい。ホップ由来苦味成分は、例えば、イソα酸であることが好ましい。ホップ由来芳香成分は、例えば、テルペン類であることが好ましい。テルペン類は、例えば、ミルセン、フムレン、リナロール及びゲラニオールからなる群より選択される1以上であることが好ましい。
本飲料がホップ由来成分を含む場合、本方法は、原料の一部としてホップ原料を使用することを含む。ホップ原料は、ホップ由来成分を含むものであれば特に限られないが、例えば、ホップパウダー、ホップペレット、プレスホップ、生ホップ、ホップエキス、イソ化ホップ、ローホップ、テトラホップ及びヘキサホップからなる群より選択される1以上であることが好ましい。本方法においてホップ原料を使用する場合、例えば、当該ホップ原料を添加した後、加熱(例えば、煮沸)を行うこととしてもよいし、予め加熱(例えば、煮沸)された当該ホップ原料を添加することとしてもよい。
本飲料が糖類を含む場合、当該糖類は、特に限られないが、例えば、本飲料は、オリゴ糖、砂糖、ブドウ糖、果糖、乳糖及び麦芽糖からなる群より選択される1以上を含むこととしてもよい。本飲料が食物繊維を含む場合、当該食物繊維は、特に限られないが、例えば、本飲料は、難消化性デキストリン、難消化性グルカン、イヌリン及びポリデキストロースからなる群より選択される1以上を含むこととしてもよい。本飲料が色素を含む場合、当該色素は、特に限られないが、例えば、本飲料は、カラメル色素を含むこととしてもよい。本飲料が酸味料を含む場合、当該酸味料は、特に限られないが、例えば、本飲料は、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸及びリン酸からなる群より選択される1以上であることとしてもよい。
本飲料が甘味料を含む場合、当該甘味料は、特に限られないが、例えば、本飲料は、高甘味度甘味料であることとしてもよい。高甘味度甘味料は、飲料又は食品に添加するために高甘味度甘味料として使用されている甘味料であれば特に限られないが、例えば、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン及びソーマチンからなる群より選択される1以上であることとしてもよい。
ただし、本飲料は、上記特許文献1のように、アスパルテーム及びステビア抽出物を含むものである必要はない。すなわち、本飲料は、ステビア抽出物としての総ステビオサイド0.6ppm〜50ppmを含まないこととしてもよい。また、本飲料は、ステビア抽出物を含まないこととしてもよい。また、本飲料は、アスパルテームを含まないこととしてもよい。また、本飲料は、アスパルテーム及びステビア抽出物としての総ステビオサイド0.6ppm〜50ppmを含まないこととしてもよい。
本飲料が、糖類、食物繊維、色素、香料、酸味料、苦味料及び甘味料からなる群より選択される1種以上をさらに含む場合、本方法は、シンナムアルデヒドと、植物ペプチド分解物と、当該糖類、食物繊維、色素、香料、酸味料、苦味料及び甘味料からなる群より選択される1種以上と、水とを混合することを含むこととしてもよい。
本飲料は、非発酵飲料であることとしてもよい。非発酵飲料は、酵母によるアルコール発酵を行うことなく製造される。この場合、非発酵飲料である本飲料は、アルコール発酵を経ることなく製造されたにも関わらず、シンナムアルデヒドと植物タンパク分解物との相乗効果によって、複雑さを伴う発酵感が効果的に付与された香味を有する。
本方法において、非発酵飲料を製造する場合、本方法は、アルコール発酵を行うことなく当該非発酵飲料を製造する方法であって、シンナムアルデヒド及び植物タンパク分解物を使用することを含む。すなわち、この場合、アルコール発酵を行うことなく、シンナムアルデヒド及び植物タンパク分解物を含む原料液を使用して非発酵飲料を製造する。
本飲料は、発酵飲料であることとしてもよい。発酵飲料は、酵母によるアルコール発酵を行って製造される。このため、発酵飲料は、アルコール発酵において酵母が生成した発酵成分を含む。
アルコール発酵は、原料液に酵母を添加することにより行う。アルコール発酵を行う場合の原料液は、酵母が資化可能な炭素源及び窒素源を含む。炭素源は、例えば、酵母が資化できる糖類である。糖類は、例えば、グルコース、フルクトース、シュクロース(ショ糖)、マルトース(麦芽糖)及びマルトトリオースからなる群より選択される1種以上である。窒素源は、例えば、アミノ酸及び/又はペプチドである。
アルコール発酵開始時の酵母の密度は特に限られないが、例えば、1×106個/mL以上、3×109個/mL以下であることが好ましい。酵母は、アルコール発酵を行う酵母であれば特に限られないが、例えば、ビール酵母、ワイン酵母、焼酎酵母及び清酒酵母からなる群より選択される1以上であることが好ましい。アルコール発酵の条件は、発酵液中において酵母によるアルコール発酵が行われる条件であれば特に限られないが、例えば、当該発酵液を0℃以上、40℃以下の温度で、1日以上、14日以下の時間維持することにより行う。
本方法において、発酵飲料を製造する場合、本方法は、アルコール発酵を行って当該発酵飲料を製造する方法であって、シンナムアルデヒド及び植物タンパク分解物を使用することを含む。すなわち、この場合、本方法は、アルコール発酵を行うことを含み、シンナムアルデヒド及び植物タンパク分解物を含む原料液を使用して発酵飲料を製造する。
本方法に係る飲料の製造において、シンナムアルデヒド及び植物タンパク分解物を添加するタイミングは特に限られないが、アルコール発酵を行う場合には、当該植物タンパク分解物は、当該アルコール発酵の終了後に添加することが好ましい。一方、シンナムアルデヒドについては、アルコール発酵の開始前、アルコール発酵中、及びアルコール発酵の終了後のいずれのタイミングで添加してもよい。
具体的に、本方法は、例えば、原料液に酵母を添加してアルコール発酵を行うことと、当該アルコール発酵後の当該原料液を使用して発酵飲料を製造することと、を含む方法であって、当該アルコール発酵終了後の原料液に植物タンパク分解物を添加すること、及び当該アルコール発酵の開始前、当該アルコール発酵中、及び当該アルコール発酵の終了後からなる群より選択される1以上のタイミングでシンナムアルデヒドを添加することと、を含むこととしてもよい。
本飲料は、発泡性飲料であることとしてもよい。発泡性飲料は、泡立ち特性及び泡持ち特性を有する飲料である。すなわち、発泡性飲料は、例えば、炭酸ガスを含有する飲料であって、グラス等の容器に注いだ際に液面上部に泡の層が形成される泡立ち特性と、その形成された泡が一定時間以上保たれる泡持ち特性とを有する飲料であることが好ましい。
発泡性飲料は、そのNIBEM値が50秒以上であることとしてもよく、80秒以上であることが好ましく、150秒以上であることがより好ましく、200秒以上であることが特に好ましい。
飲料のNIBEM値は、文献「改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂(編集:ビール酒造組合 国際技術委員会(分析委員会)、発行所:公益財団法人日本醸造協会)」の「8.29 泡−NIBEM−Tを用いた泡持ち測定法−」に記載の方法により測定される。
発泡性飲料は、その20℃における炭酸ガス圧が0.5kg/cm2(0.049MPa)以上であることとしてもよく、1.0kg/cm2以上であることとしてもよい。発泡性飲料の20℃における炭酸ガス圧の上限値は、特に限られないが、当該炭酸ガス圧は、3.0kg/cm2以下であることとしてもよい。
飲料の炭酸ガス圧は、文献「改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂(編集:ビール酒造組合 国際技術委員会(分析委員会)、発行所:公益財団法人日本醸造協会)」の「8.21 ガス圧」に記載の方法により測定される。
本飲料が発泡性飲料であり、且つ非発酵飲料である場合、本飲料の製造においては、炭酸水の使用及び/又は炭酸ガスの使用によって発泡性を付与することとしてもよい。
本飲料は非発泡性飲料であることとしてもよい。非発泡性飲料は、上述した発泡性飲料が有するような発泡性を有しない飲料である。すなわち、非発泡性飲料は、そのNIBEM値が50秒以上であることとしてもよい。また、非発泡性飲料は、その20℃における炭酸ガス圧が0.5kg/cm2(0.049MPa)未満であることとしてもよい。
本飲料は、ノンアルコール飲料であることとしてもよい。ノンアルコール飲料は、アルコール含有量が1体積%未満の飲料である。ノンアルコール飲料のアルコール含有量は、1体積%未満であれば特に限られないが、例えば、0.5体積%未満であってもよく、0.05体積%未満であってもよく、0.005体積%未満であってもよい。
飲料のアルコール含有量は、文献「改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂(編集:ビール酒造組合 国際技術委員会(分析委員会)、発行所:公益財団法人日本醸造協会)」の「8.3.6 アルコライザー法」に記載の方法により測定される。
本飲料がノンアルコール飲料であり、且つ発酵飲料である場合、本飲料は、アルコール発酵後に、アルコール含有量を低減する処理を行って製造されることとしてもよい。
本飲料は、アルコール飲料であることとしてもよい。アルコール飲料は、アルコール含有量が1体積%以上(アルコール分1度以上)の飲料である。アルコール飲料のアルコール含有量は、1体積%以上であれば特に限られないが、例えば、1体積%以上、20体積%以下であることとしてもよい。
本飲料がアルコール飲料であり、且つ非発酵飲料である場合、本飲料は、アルコール(例えば、エタノール)の添加を含む方法により製造されてもよい。
本飲料は、麦芽飲料であることとしてもよい。麦芽飲料は、原料の一部として麦芽を使用して製造される。このため、麦芽飲料は、麦芽由来成分を含む。本飲料は、非麦芽飲料であることとしてもよい。非麦芽飲料は、麦芽を使用することなく製造される。
本飲料は、ビールテイスト飲料であることとしてもよい。ビールテイスト飲料は、ビール様の香味を有する発泡性飲料である。ビールテイスト飲料は、アルコール含有量や、製造時の条件(例えば、アルコール発酵の有無、麦芽の使用の有無)に関わらず、ビール様の香味を有する発泡性飲料であれば特に限られない。ビールテイスト飲料は、発泡性アルコール飲料であってもよいし、発泡性ノンアルコール飲料であってもよい。すなわち、ビールテイスト飲料は、ビール、発泡酒、又は、発泡酒と他のアルコール成分(例えば、焼酎、ウォッカ、ブランデー、ウイスキー等のスピリッツ)とを含有する発泡性飲料、からなる群より選択される発泡性アルコール飲料であってもよい。また、ビールテイスト飲料は、発泡性発酵飲料であってもよいし、発泡性非発酵飲料であってもよい。
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
シンナムアルデヒドと植物タンパク分解物とを含み、当該シンナムアルデヒドの含有量が異なる6種類の飲料を製造した。
すなわち、シンナムアルデヒドを含む香料と、市販の大豆タンパク分解物と、ホップ原料(ホップエキス)と、酸味料(乳酸)と、甘味料(アセスルファムカリウム)と、色素(カラメル色素)と、20℃における炭酸ガス圧が約2.3kg/cm2である炭酸水とを混合し、ビールテイスト飲料を得た。
得られたビールテイスト飲料は、非発酵飲料であり、発泡性飲料であり、アルコール含有量が0.005体積%未満のノンアルコール飲料であった。なお、使用された大豆タンパク分解物において、大豆ペプチドの含有量は90重量%以上であり、遊離アミノ酸の含有量は10重量%未満であった。
そして、得られた各飲料について、熟練した5人のパネラーによる官能検査を行った。官能検査においては、飲料の香味に関し、「複雑さ」及び「発酵感」の各項目について、0点、1点、2点、3点又は4点の点数が付与された。飲料の香味が優れているほど、大きな点数が付与された。
図1には、6種類の飲料(例1−1〜例1−6)のそれぞれについて、シンナムアルデヒドの含有量(ppb)、大豆タンパク分解物の含有量(重量%)、及び官能検査の結果(「複雑さ」及び「発酵感」)を示す。
なお、図1において官能検査の結果として示されている点数は、パネラーによって付与された点数の合計を、パネラーの人数で除して得られた算術平均値である。また、図1に示すように、例1−1〜例1−6の飲料における大豆タンパク分解物の含有量は0.08重量%であったが、上述のとおり、使用された大豆タンパク分解物における大豆ペプチド含有量は90重量%以上であったことから、当該飲料における大豆ペプチド含有量は、0.072重量%以上、0.080重量%以下であった。
図1に示すように、大豆タンパク分解物を含み、シンナムアルデヒドを含まない飲料(例1−1)の香味は、複雑さに欠け、発酵感に乏しいものであった。これに対し、大豆タンパク分解物に加えて、71ppb以上(具体的には、71ppb〜708ppb)のシンナムアルデヒドを含む飲料(例1−2〜例1−6)は、好ましい複雑さと優れた発酵感とを含む香味を有していた。
特に、71ppb超(具体的には、142ppb以上)のシンナムアルデヒドを含む飲料(例1−3〜例1−6)は、顕著に好ましい複雑さと顕著に優れた発酵感とを含む香味を有していた。
さらに、71ppb超(具体的には、142ppb以上)、708ppb未満(具体的には、566ppb以下)のシンナムアルデヒドを含む飲料(例1−3〜例1−5)は、顕著に好ましい複雑さと、極めて優れた発酵感とを含む香味を有していた。
上述の実施例1と同様にして、シンナムアルデヒドと植物タンパク分解物とを含み、当該植物タンパク分解物の含有量が異なる6種類の飲料を製造し、官能検査を行った。
図2には、6種類の飲料(例2−1〜例2−6)のそれぞれについて、シンナムアルデヒドの含有量(ppb)、大豆タンパク分解物の含有量(重量%)、及び官能検査の結果を示す。
なお、図2に示すように、飲料における大豆タンパク分解物の含有量は、例2−2において0.02重量%、例2−3において0.04重量%、例2−4において0.08重量%、例2−5において0.15重量%、例2−6において0.30重量%であったが、上述のとおり、使用された大豆タンパク分解物における大豆ペプチド含有量は90重量%以上であったことから、飲料の大豆ペプチド含有量は、例2−2において0.018重量%以上、0.020重量%以下、例2−3において0.036重量%以上、0.040重量%以下、例2−4において0.072重量%以上、0.080重量%以下、例2−5において0.140重量%以上、0.150重量%以下、例2−6において0.270重量%以上、0.300重量%以下であった。
図2に示すように、シンナムアルデヒドを含み、大豆タンパク分解物を含まない飲料(例2−1)の香味は、複雑さに欠け、発酵感に乏しいものであった。これに対し、シンナムアルデヒドに加えて、0.02重量%以上(具体的には、0.02重量%〜0.30重量%)の大豆タンパク分解物を含む飲料(例2−2〜例2−6)は、好ましい複雑さと優れた発酵感とを含む香味を有していた。
特に、0.02重量%超(具体的には、0.04重量%以上)の大豆タンパク分解物を含む飲料(例2−3〜例2−6)は、顕著に好ましい複雑さと顕著に優れた発酵感とを含む香味を有していた。
さらに、0.02重量%超(具体的には、0.04重量%以上)、0.30重量%未満(具体的には、0.15重量%以下)の大豆タンパク分解物を含む飲料(例2−3〜例2−5)は、顕著に好ましい複雑さと、極めて優れた発酵感とを含む香味を有していた。
植物タンパク分解物として、大豆タンパク分解物に代えて、市販の小麦タンパク分解物又は市販のエンドウタンパク分解物を使用したこと以外は上述の実施例1と同様にして、3種類の飲料を製造し、官能検査を行った。
図3には、3種類の飲料(例3−1〜例3−3)のそれぞれについて、シンナムアルデヒドの含有量(ppb)、小麦タンパク分解物の含有量(重量%)、エンドウタンパク分解物の含有量(重量%)及び官能検査の結果を示す。
図3に示すように、シンナムアルデヒドを含み、植物タンパク分解物を含まない飲料(例3−1)の香味は、複雑さに欠け、発酵感に乏しいものであった。これに対し、シンナムアルデヒドに加えて、小麦タンパク分解物又はエンドウタンパク分解物を含む飲料(例3−2、例3−3)は、いずれも、顕著に好ましい複雑さと、極めて優れた発酵感とを含む香味を有していた。