JP6943384B2 - 食品の食感劣化防止用ソフトカプセル、並びに、該食感劣化防止用ソフトカプセル及び食用油を含有する食品 - Google Patents
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Description
しかしながら、特許文献1におけるソフトカプセルは、単にそれを含有する酸味調味料の風味を保持するためのものであり、ソフトカプセルを、それを含有する食品全体としての食感・外観・使い勝手・味等を特徴付けるように含有するものでも、特徴付けられる程多量に含有するものでもなかった。
本発明の「食感劣化防止用ソフトカプセル」(本明細書では、「 」内を単に「ソフトカプセル」と略記する場合がある)は、食用油を含有する食用媒体中で使用される、食品の食感劣化防止用ソフトカプセルであって、皮膜の主成分として寒天を含有することを特徴とする。
「食用媒体」とは、「食用油を含有する媒体」のことをいう。該形態には、特に制限はなく、例えば、固体、液体、ペースト状、乳化状、2層以上に分離された形態等である。
「食品」とは、「ソフトカプセル及び食用媒体を含有する食品」のことをいう。
「食品の食感劣化防止」とは、「食品を保存したときに、経時により該食品全体としての食感が劣化することを抑制又は防止」することをいう。
「食品の食感劣化防止用ソフトカプセル」とは、「経時による食感劣化が抑制又は防止された食品」という用途に用いられるソフトカプセルのことをいう。
また、本発明のソフトカプセルを製膜する前の原料時点では、該皮膜の水分を除く主成分としての寒天の含有量は特に制限されないが、製膜する前の水分を含む原料時点において、1質量%以上20質量%以下が好ましく、2質量%以上18質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上15質量%以下であることが特に好ましい。
該皮膜は、寒天の他に、本発明の効果を損なわない範囲内で、その他の皮膜の基質成分を含有することができる。その他の皮膜の基質成分の例として、親水性高分子が挙げられる。
該食感劣化抑制剤の例として、例えば、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール等の糖アルコールや、デキストリンや増粘性の多糖類等が挙げられる。中でも、該食感劣化抑制剤は、糖アルコールであることが好ましく、エリスリトールであることが特に好ましい。
また、香味成分をソフトカプセルの皮膜と合わせて内容液に同一の香味成分を含有させることでさらに香味成分を強く、長く効果的に使用できるので好ましい。
該可塑剤の含有量は、特に制限されないが、皮膜全体を100質量%とした場合、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上30質量%以下であることが特に好ましい。
該内容液は、下記で詳細に説明される食用媒体と同じ組成であっても、異なる組成であってもよい。
本発明のソフトカプセルの大きさは、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、食感、味、外観、取り扱い易さ等の点から、外径で0.5mm以上15mm以下が好ましく、1mm以上10mm以下が好ましく、2mm以上5mm以下が特に好ましい。
該食用油は、常温(例えば20℃)で液体でも固体でもよく、常温(例えば20℃)で固体であるが調理時又は食事時に液体になるものでもよい。
該食用油は、何れか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用していてもよい。
そして、食用媒体中の水分は制限されないが、30質量%以下が好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
本発明の食品は、上記ソフトカプセル及び食用油を含有することを特徴とする。
具体的には、例えば、バター、マーガリン、ルウ、ソース、たれ、ドレッシング等の各種調味料;チョコレート、アイスクリーム等の菓子類;野菜・果実加工品;スープ等の液体食品;パテ、テリーヌ等の練食品;等が挙げられる。
さらに、本発明の食品の水分量は特に制限はないが、長期保存可能な食品である場合は、ソフトカプセルおよびソフトカプセルより大きい固形分を除いた食品を100質量%とした場合の水分は、40質量%以下が好ましく、20質量%以下が特に好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
そして、各種食品の製造方法におけるこれら食品へのソフトカプセル添加後は、ソフトカプセルが維持される条件に適宜設定することができるが、0℃〜80℃で製造することが好ましく、5℃〜60℃で製造することが特に好ましく、10℃〜50℃で製造することが更に好ましい。
皮膜溶液は、寒天粉末(伊那寒天UP−16、伊那食品工業株式会社製)300gを水9700gに投入し、約90℃まで加熱し溶解することによって得られた。内容液は、わさびを粉砕しひまわり油にわさびの風味を抽出した油状ワサビ香料25gにひまわり油475gを混合したものを使用した。内容液をフロイント産業株式会社製シームレスカプセル装置(SPHEREX(登録商標))で、シームレスカプセル化した。
具体的には、図1のように、調製した2つの溶液(内容液2及び皮膜溶液3)を、二重ノズルを用いてカプセル化した。皮膜溶液3は外側ノズルから流し、内側のノズルから内容液2を流して、10〜15℃の油系冷却液体6(ココナードMT、花王株式会社製)中に連続して押し出し、水分を含んだ生カプセル8を得た。得られた生カプセルは、遠心分離によりカプセル表面に付着した油を除去し、その後送風により乾燥させて、ソフトカプセルが得られた。
皮膜溶液は、寒天粉末300g、グリセリン(食品添加物グリセリン、阪本薬品工業株式会社製)200g、エリスリトール(ユングブンツラワー株式会社製)100gを水9400gへと投入し、約90℃まで加熱し溶解することによって得られた。内容液は、実施例1と同じ内容液を使用した。調製した2つの溶液(内容液及び皮膜溶液)からのカプセル化は実施例1に従って行い、ソフトカプセルが得られた。
皮膜溶液は、寒天粉末300g、グリセリン300g、エリスリトール300gを水9100gへと投入し、約90℃まで加熱し溶解することによって得られた。内容液は、実施例1と同じ内容液を使用した。調製した2つの溶液(内容液及び皮膜溶液)からのカプセル化は実施例1に従って行い、ソフトカプセルが得られた。
皮膜溶液は、寒天粉末300g、グリセリン200g、エリスリトール99g、香味成分として目開き400μのメッシュを通過したホースラディッシュ粉末1gを水9300gへと投入し、約90℃まで加熱し溶解することによって得られた。内容液は、実施例1と同じ内容液を使用した。調製した2つの溶液(内容液及び皮膜溶液)からのカプセル化は実施例1に従って行い、ソフトカプセルが得られた。
エリスリトールを99gから99.5gに変更し、香味成分をホースラディッシュ粉末1gから目開き190μのメッシュを通過したわさび葉粉末0.5gに代えた以外は、実施例4に従って行い、ソフトカプセルが得られた。
寒天粉末をゼラチン粉末(ROUSSELOT 250 PS 8、ルスロ株式会社製)に代え、加熱温度を約90℃から約70℃に変更した以外は、実施例1と同様にソフトカプセルを調製した。
寒天粉末をゼラチン粉末に代え、加熱温度を約90℃から約70℃に変更した以外は、実施例2と同様にソフトカプセルを調製した。
寒天粉末をゼラチン粉末に代え、加熱温度を約90℃から約70℃に変更した以外は、実施例4と同様にソフトカプセルを調製した。
寒天粉末をゼラチン粉末に代え、加熱温度を約90℃から約70℃に変更した以外は、実施例3と同様にソフトカプセルを調製した。
皮膜溶液は、寒天粉末100g、グリセリン500g、エリスリトール100gを水9300gへと投入し、約90℃まで加熱し溶解することによって得られた。内容液は、実施例1と同じ内容液を使用した。調製した内容液及び皮膜溶液からのカプセル化は実施例1に従って行い、ソフトカプセルの調製を試みた。
[ソフトカプセルの評価方法]
実施例1〜5及び比較例1〜5で得られたソフトカプセルについて、ソフトカプセルの皮膜の組成(乾燥後)、カプセル化の可否、カプセルの香味性、及び食用油中での硬化性の試験結果を表1に示す。表1中の数値は質量%である。
各ソフトカプセルを食用油(オリーブ油)に浸漬させ、蓋をして密封し、25℃で保管した。保管を開始してから2カ月後にガラス瓶からソフトカプセルを取り出し、10人のパネラーによる官能評価を行った。ソフトカプセルの皮膜の状態を、食用油に浸漬させていないカプセルを官能前に10分間浸漬させたカプセルと比較して、該皮膜が硬化しているか否かを以下の評価基準を基に評価した。
◎:9人以上が皮膜の硬化を感じなかった。
○:6人以上が皮膜の硬化を感じなかったうえ、硬化を感じたもの全員が、わずかな硬化しか感じなかった。
×:5人以上が明らかな硬化を感じた。
−:カプセル成形不可により、判定不能。
皮膜溶液は、寒天粉末750gとエリスリトール250gを水10kgに投入し、約90℃まで加熱し溶解することによって得られた。内容液は、実施例1と同じ内容液を使用した。調製した2つの溶液(内容液及び皮膜溶液)からのカプセル化は実施例1に従って行い、ソフトカプセルが得られた。
皮膜溶液は、寒天粉末500gとエリスリトール500gを水10kgに投入し、約90℃まで加熱し溶解することによって得られた。内容液は、実施例1と同じ内容液を使用した。調製した2つの溶液(内容液及び皮膜溶液)からのカプセル化は実施例1に従って行い、ソフトカプセルが得られた。
皮膜溶液は、寒天粉末300gとエリスリトール700gを水10kgに投入し、約90℃まで加熱し溶解することによって得られた。内容液は、実施例1と同じ内容液を使用した。調製した2つの溶液(内容液及び皮膜溶液)からのカプセル化は実施例1に従って行い、ソフトカプセルが得られた。
皮膜溶液は、寒天粉末250gとエリスリトール750gを水10kgに投入し、約90℃まで加熱し溶解することによって得られた。内容液は、実施例1と同じ内容液を使用した。調製した2つの溶液(内容液及び皮膜溶液)からのカプセル化は実施例1に従って行い、ソフトカプセルが得られた。
皮膜溶液は、寒天粉末200gとエリスリトール800gを水10kgに投入し、約90℃まで加熱し溶解することによって得られた。内容液は、実施例1と同じ内容液を使用した。調製した2つの溶液(内容液及び皮膜溶液)からのカプセル化は実施例1に従って行い、ソフトカプセルが得られた。
皮膜溶液は、寒天粉末100gとエリスリトール900gを水10kgに投入し、約90℃まで加熱し溶解することによって得られた。内容液は、実施例1と同じ内容液を使用した。調製した2つの溶液(内容液及び皮膜溶液)からのカプセル化は実施例1に従って行い、ソフトカプセルが得られた。
皮膜溶液は、エリスリトール1000gを水10kgに投入し、混合して溶解することによって得られた。内容液は、実施例1と同じ内容液を使用した。調製した2つの溶液(内容液及び皮膜溶液)からのカプセル化は実施例1に従って行い、ソフトカプセルが得られた。
[ソフトカプセルの評価方法]
実施例6〜10及び比較例6〜7で得られたソフトカプセルについて、カプセル成形後に乾燥させ、カプセル形状を保持するか否かを以下の評価基準を基に評価した。評価結果を表2に示す。表2中の数値は質量%である。
◎:良好なカプセルであり、カプセル形状を保持した。
〇:衝撃によっては壊れやすいが、カプセル形状を保持した。
×:カプセル成形はできなかった。
実施例4で調製したソフトカプセルに食用油を浸漬又は付着させることを検討した。該ソフトカプセル(1g)に、2gのエキストラバージンオリーブ油(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)に浸漬させた。食用油に浸漬させたソフトカプセルの食味や風味は良好であった。
エキストラバージンオリーブ油の量を2gから1gに変更した以外は、検討例1と同様にソフトカプセルを食用油に浸漬させた。食用油に浸漬させたソフトカプセルの食味や風味は良好であった。
実施例4で調製したソフトカプセル(1g)に、0.1gのエキストラバージンオリーブ油を付着させた。ソフトカプセル全体に食用油が付着し、該ソフトカプセルの食味や風味は良好であった。
エキストラバージンオリーブ油の量を0.1から0.01gに変更した以外は、検討例3と同様にソフトカプセルに食用油を付着させた。ソフトカプセル全体に食用油が薄く付着し、該ソフトカプセルの食味や風味は良好であった。
食用油が0.01g以上であると、該食用油が1gのソフトカプセル全体に付着することが分かった。また、食用油が0.1g以上であると、1gのソフトカプセルは浸漬することが分かった。
実施例2で得られたソフトカプセルを100粒充填したガラス瓶を用意した。該ガラス瓶にオリーブ油を50mL充填し、ガラス瓶中のソフトカプセルを食用油に浸漬させて食品を調製した。
オリーブ油をひまわり油に変更した以外は、実施例11と同様に食品を調製した。
オリーブ油をコーン油に変更した以外は、実施例11と同様に食品を調製した。
オリーブ油を米油に変更した以外は、実施例11と同様に食品を調製した。
実施例2で得られたソフトカプセルを、比較例2で得られたソフトカプセルに変更した以外は、実施例11〜14とそれぞれ同様に食品を調製した。
[食品の評価方法]
ソフトカプセルが食用油中に浸漬した状態のまま蓋をして密封し、25℃で保管した。
保管を開始してから2週間後、4週間後、8週間後にガラス瓶からソフトカプセルを取り出し、10人のパネラーによる官能評価を行った。ソフトカプセルの皮膜の状態を、食用油に浸漬させていないカプセルを官能前に10分間浸漬させたカプセルと比較して、該皮膜が硬化しているか否かを以下の評価基準を基に評価した。
評価結果を表3に示す。
◎:9人以上が皮膜の硬化を感じなかった。
○:6人以上が皮膜の硬化を感じなかったうえ、硬化を感じたもの全員が、わずかな硬化しか感じなかった。
△:5人以下が皮膜の硬化を感じなかったうえ、硬化を感じたもの全員が、明らかな皮膜の硬化を感じなかった。
△〜×:1〜4人が明らかな皮膜の硬化を感じた。
×:5人以上が明らかな硬化を感じた。
実施例2で得られたソフトカプセル100粒(1.3g)を入れたガラス瓶に、融点が35℃に調整された食用油(パーム油脂を主成分とする植物由来油)を40℃で溶かした状態で充填し、十分に撹拌し25℃の状態で保管した。
保管してから4週間後に、ガラス瓶より食用油及びソフトカプセルをステンレストレーに取り出した。40℃のお湯に浮かべて食用油を溶かしソフトカプセルを食した結果、該皮膜の硬化はなく、食感は維持されていた。
実施例2で得られたソフトカプセル100粒(1.3g)を入れたガラス瓶に、融点が42℃に調整された食用油(ヘットを主成分とする動物由来油)を50℃で溶かした状態で充填し、十分に撹拌し25℃の状態で保管した。
保管してから4週間後に、ガラス瓶より食用油及びソフトカプセルをステンレストレーに取り出した。50℃のお湯に浮かべて食用油を溶かしソフトカプセルを食した結果、該皮膜の硬化はなく、食感は維持されていた。
「融点が35℃に調整された食用油(パーム油脂を主成分とする植物由来油)」を「融点が30℃のバター」に変更した以外は、検討例5と同様に評価した結果、ソフトカプセルの皮膜の硬化はなく、食感が維持されていた。
「融点が42℃に調整された食用油(ヘットを主成分とする動物由来油)」を「食用油30質量%、水分1.5質量%、小麦粉28質量%、砂糖、塩、香辛料等を含むカレールウ」に変更した以外は、検討例6と同様に評価した結果、ソフトカプセルの皮膜の硬化はなく、食感が維持されていた。
「融点が35℃に調整された食用油(ココアバターを主成分とする植物由来油)」を「食用油35質量%及び水分1.2質量%を含むチョコレート」に変更した以外は、検討例5と同様に評価した結果、ソフトカプセルの皮膜の硬化はなく、食感が維持されていた。
2 内容液
3 皮膜溶液
4 ジェット
5 整流版
6 油状冷却液体
7 振動機
8 生カプセル
Claims (3)
- 食用油を含有する食用媒体を含有する食品中で使用されるためのソフトカプセルであって、ソフトカプセルの皮膜が該食用油で硬化することによる該食品の食感の劣化を抑制又は防止するソフトカプセルであり、
該皮膜が、該皮膜の主成分として寒天を含有し、更に、グリセリン、及び、食感劣化抑制剤としてエリスリトールを含有することを特徴とする食感劣化防止用ソフトカプセル。 - 請求項1に記載の食感劣化防止用ソフトカプセル、及び、食用油を含有する食品であって、
該食感劣化防止用ソフトカプセルの皮膜が該食用油で硬化することによる食感の劣化が抑制又は防止されているものであることを特徴とする食品。 - 請求項1に記載の食感劣化防止用ソフトカプセルを、食用油を含有する食用媒体を含有する食品中に加えることによって、該食用油で該食感劣化防止用ソフトカプセルの皮膜が硬化することによる該食品の食感の劣化を抑制又は防止することを特徴とする食品の食感劣化防止方法。
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