JP6942520B2 - 粘着樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、粘着樹脂組成物に関する。
近年、様々な分野において、使用される部材に難燃性が要求されている。高い難燃性が要求される分野としては、例えば、電子機器、電子部品、航空機、および原子力発電所などが挙げられる。難燃性は、部材に要求されるだけでなく、部材同士を固定する粘着テープや部材に貼付される粘着ラベル等の粘着シートにも要求されている。
特許文献1には、粘着剤層に、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、臭素系難燃剤、三酸化アンチモン、タッキファイヤーおよびポリイソシアネート系硬化剤を含有する不燃性化粧シートが開示されている。
特開2010−229327号公報
しかしながら、特許文献1には、低温での粘着性能、及び、定荷重性については検討されておらず、低温及び常温でも粘着性能を発揮し、防火性及び、粘着物性に優れ、且つ定荷重性に優れる粘着樹脂組成物の提供が求められる。
本発明は、上記事情に鑑み、防火性、粘着物性及び定荷重性に優れる粘着樹脂組成物を提供することを目的とする。
発明者らは、粘着剤とリン系難燃剤及び臭素系難燃剤とを含有させることにより、防火性及び粘着物性に優れ、且つ、定荷重性に優れることにより、粘着シート貼付経過後の浮き剥がれを抑制できる粘着樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、下記の特徴を有する粘着樹脂組成物を提供するものである。
(1)粘着剤とリン系難燃剤及び臭素系難燃剤とを含む粘着樹脂組成物であって、
該粘着樹脂組成物の総発熱量が下記発熱性試験において、30MJ/m以下であり、
基材フィルムと、基材フィルムの両面または片面に前記粘着樹脂組成物を含有する粘着剤層を備えた粘着シートが、下記初期粘着力試験において、初期粘着力が5℃環境下で、4N/25mm以上、23℃、50%RH環境下で、7N/25mm以上であり、かつ、
下記定荷重性試験において、剥離距離が5mm以下である粘着樹脂組成物。
発熱性試験:50mm×50mm×1.6mmのサイズに加工した前記粘着樹脂組成物のマルチカロリーメータによって測定される総発熱量試験
初期粘着力:JIS Z0237:2009に準拠し、粘着シートの試験片をステンレス試験板(試験板)にローラ圧着しながら貼付し、貼付から30秒以内に、剥離速度300mm/minの条件で、試験片を試験板に対して180°に引きはがす試験方法により測定される初期粘着力試験
定荷重性試験:粘着シートから幅25mm、長さ100mmの試験片を切り出し、試験片の一方の端部から50mmの粘着剤層面を試験板に対してローラ圧着しながら貼付し、貼付直後から24時間、23℃、50%RHの標準環境下に放置した後、試験板を試験片が貼付された面を下側に向けて水平に配置し、試験片の他方の端部に、試験片が鉛直方向に剥離するように質量50gのおもりを取り付け、その状態を24時間維持した後、試験片が試験板の表面から剥離される距離(剥離距離、mm)で測定される定荷重性試験
(2)前記粘着樹脂組成物が、粘着剤乾燥質量100質量部に対して、リン系難燃剤を乾燥質量として10〜50質量部、臭素系難燃剤を乾燥質量として5〜30質量部それぞれ含有する(1)に記載の粘着樹脂組成物。
(3)前記リン系難燃剤が、リン酸エステル系難燃剤である、(1)又は(2)に記載の粘着樹脂組成物。
(4)前記リン酸エステル系難燃剤が、縮合リン酸エステルである、(3)に記載の粘着樹脂組成物。
(5)前記臭素系難燃剤が、臭素化イソシアヌラートである、(1)〜(4)のいずれか一つに記載の粘着樹脂組成物。
(6)前記臭素化イソシアヌラートが、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌラートである、(5)に記載の粘着樹脂組成物。
(7)前記粘着剤がアクリル系粘着剤である、(1)〜(6)のいずれか一つに記載の粘着樹脂組成物。
本発明によれば、防火性及び粘着物性に優れる粘着樹脂組成物を提供できる。
本発明の粘着樹脂組成物を用いる粘着シートの一例の構成を示す断面図である。
≪粘着樹脂組成物≫
本発明の粘着樹脂組成物は、粘着剤とリン系難燃剤及び臭素系難燃剤とを含み、
該粘着樹脂組成物の総発熱量が下記発熱性試験において、30MJ/m以下であり、
基材フィルムと、基材フィルムの両面または片面に前記粘着樹脂組成物を含有する粘着剤層とを備えた粘着シートが、下記初期粘着力試験において、初期粘着力が5℃環境下で、4N/25mm以上、23℃、50%RH環境下で、7N/25mm以上であり、かつ、前記粘着シートが、下記定荷重性試験において、剥離距離が5mm以下である粘着樹脂組成物である。
発熱性試験:50mm×50mm×1.6mmのサイズに加工した前記粘着樹脂組成物のマルチカロリーメータによって測定される総発熱量試験
初期粘着力:JIS Z0237:2009に準拠し、粘着シートの試験片をステンレス試験板(試験板)にローラ圧着しながら貼付し、貼付から30秒以内に、剥離速度300mm/minの条件で、試験片を試験板に対して180°に引きはがす試験方法により測定される初期粘着力試験
定荷重性試験:粘着シートから幅25mm、長さ100mmの試験片を切り出し、試験片の一方の端部から50mmの粘着剤層面を試験板に対してローラ圧着しながら貼付し、貼付直後から24時間、23℃、50%RHの標準環境下に放置した後、試験板を試験片が貼付された面を下側に向けて水平に配置し、試験片の他方の端部に、試験片が鉛直方向に剥離するように質量50gのおもりを取り付け、その状態を24時間維持した後、試験片が試験板の表面から剥離される距離(剥離距離、mm)で測定される定荷重性試験
本発明の粘着樹脂組成物には、粘着剤とリン系難燃剤及び臭素系難燃剤とを含む。粘着樹脂組成物に、粘着剤と、リン系難燃剤及び臭素系難燃剤とを含有させることにより、粘着樹脂組成物の粘着物性を担保しつつ、難燃性を高めることができる。
本発明の樹脂組成物は、粘着剤に、リン系難燃剤及び臭素系難燃剤を添加し、架橋剤を反応させて製造することができる。
粘着樹脂組成物中の、リン系難燃剤の含有量は、粘着剤乾燥質量100質量部に対して、乾燥質量として、10〜50質量部、好ましくは、20〜40質量部である。粘着樹脂組成物中の、臭素系難燃剤の含有量は、粘着剤乾燥質量100質量部に対して、乾燥質量として、5〜30質量部、好ましくは、10〜20質量部である。
リン系難燃剤としては、例えば、リン酸エステル系難燃剤、ポリリン酸アンモニウム系難燃剤、メラミンリン酸塩系難燃剤、リン酸アミド系難燃剤、フォスファゼン化合物系難燃剤などが挙げられるが、リン酸エステル系難燃剤が好ましい。
市販のリン酸エステル系難燃剤としては、例えば、
大八化学工業社製非ハロゲンリン酸エステルであるTMP(トリメチルホスフェート)、TEP(トリエチルホスフェート)、TPP(トリフェニルホスフェート)、TCP(トリクレジルホスフェート)、TXP(トリキシレニルホスフェート)、CDP(クレジルジフェニルホスフェート)、NDPP(2−ナフチルジフェニルホスフェート)、PX−110(クレジルジ2,6−キシレニルホスフェート)、 非ハロゲン縮合リン酸エステルであるCR−733S、CR−741、PX−200、DAIGUARD−580、DAIGUARD−610、DAIGUARD−880、
含ハロゲンリン酸エステルであるTMCPP(トリス(クロロプロピル)ホスフェート)、CR−900(トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート)、
含ハロゲン縮合リン酸エステルであるCR−504L、CR−570、DAIGUARD−540、
アクゾノーベルジャパン社製フォスフレックス112、112B、179A等のフォスフレックスシリーズ、ファイヤロールフレックスRDP、BDP、4800、ファイヤクエル220、EHC、ファイロールDPN、6、DMMP等のファイロールシリーズ;
味の素ファインテクノ社製非ハロゲンリン酸エステルであるレオフォス35、50、65、95、110、TPP、RDP、BAPP、CDPといったレオフォスシリーズ、クロニテックスCDP、TCP、TXPといったクロニテックスシリーズ、レオモールTIBP、TOP等のレオモールシリーズ、レオルーブHYD−110、デュラッドCDP、TCP、TXP等のデュラッドシリーズ;
ADEKA社製縮合リン酸エステルであるアデカスタブPFR、FP−500、FP−600、FP−700等のアデカスタブシリーズ;
アルベマール日本社製縮合リン酸エステルであるNcendXP−30、含ハロゲンリン酸エステルであるAntiblazeTMCP、195、含ハロゲン縮合リン酸エステルであるAntiblazeV−6;
ケムチュラ・ジャパン社製非ハロゲンリン酸エステルであるReofosTPP、RDP、BAPP等のReofosシリーズ;
等が挙げられるが、揮発性が低い縮合リン酸エステルが好ましい。
ポリリン酸アンモニウム系難燃剤としては、ポリリン酸アンモニウム単体、もしくは該ポリリン酸アンモニウムを主成分とする化合物等が挙げられる。
該ポリリン酸アンモニウムは、一般式(NH4r+2PrO3r+1(但し、rは20〜1000の整数)で表すことができる化合物であり、rが十分に大きいときはメタリン酸の式(NH4PO3r(ここでrは前記と同じ)で近似できる化合物である。
一方、該ポリリン酸アンモニウムを主成分とする化合物としては、該ポリリン酸アンモニウムを熱硬化性樹脂で被覆もしくはマイクロカプセル化したもの、メラミンモノマーや他の含窒素有機化合物等で該ポリリン酸アンモニウム表面を被覆したもの、界面活性剤やシリコーン化合物で処理したもの、あるいはポリリン酸アンモニウムを製造する過程でメラミン等を添加し難溶化したもの等が挙げられる。
市販のポリリン酸アンモニウム系難燃剤としては、例えば、クラリアント社製エキソリット(Exolit)−422、463、700、AP−750、モンサント社製フォスチェク(Phos−chek)−P/30、P/40、住友化学工業社製スミセーフ−P、PM、チッソ社製テラージュ(TERRAJU)−S10、S20、C60、C70、C80、アルベマール日本社製AntiblazeMC、PI等が挙げられる。
などが挙げられる。
臭素系難燃剤としては、例えば、
テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAジアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジメタリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルのトリブロモフェノール付加物、
テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS、などの臭素化ビスフェノール系化合物あるいはその誘導体、
ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ペンタブロモベンジルブロマイド、ビス(2,4,6ートリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ無水フタル酸、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ペンタブロモベンジルアクリレート、トリブロモフェニルアリルエーテル、2,3−ジブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテルなどの臭素化芳香族化合物あるいはその誘導体、
モノ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌラート、ジ(2,3−ジブロモプロピルイソシアヌラート)、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌラート、モノ(2,3,4−トリブロモブチル)イソシアヌラート、ジ(2,3,4−トリブロモブチル)イソシアヌラート、トリス(2,3,4−トリブロモブチル)イソシアヌラートなどの臭素化イソシアヌラートあるいはエチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)1,3,5−トリアジンなどの臭素および窒素原子含有化合物、
テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロモ化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマーなどの臭素化ビスフェノール類誘導体オリゴマー、
ペンタブロモベンジルアクリレートポリマーなどの臭素化アクリル樹脂、
トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(ブロモフェニル)ホスフェート等の臭素および燐原子含有化合物、
臭化アンモニウムなどの臭素化無機化合物、等が挙げられる。これらのなかでも、溶剤への溶解性に優れるという観点から、臭素化イソシアヌラートが好ましく、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌラートがより好ましい。
粘着剤は、後述する粘着シート1(剥離ライナー30を除く)やラベル等の粘着シートを被着体に貼付させることができるものであれば特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂等の粘着性を示す粘着性樹脂が挙げられ、架橋剤を反応させて製造される。
本発明の粘着樹脂組成物の粘着力は、基材フィルムと、基材フィルムの両面または片面に前記粘着樹脂組成物を含有する粘着剤層とを備えた粘着シートが、下記初期粘着力試験において、初期粘着力が5℃環境下で、4N/25mm以上であって、23℃、50%RH環境下で、7N/25mm以上であり、下記定荷重性試験において、5mm以下である。
初期粘着力は、JIS Z0237:2009に準拠して、粘着シートの試験片をステンレス試験板(試験板)にローラー圧着しながら貼付し、貼付から30秒以内に、剥離速度300mm/minの条件で、試験片を試験板に対して180°に引きはがす試験方法により測定された値であって、5℃±1℃環境下において、4N/25mm以上であり、4〜100N/25mmであることが好ましく、4〜40N/25mmであることがより好ましく、23℃±1℃、50%RH環境下において、7N/25mm以上であり、8〜100N/mmであることが好ましく、9〜40N/25mmであることがより好ましい。前記初期粘着力が5N/25mm以上であると、被着体と粘着シート間の貼り付きが良好となり好ましい。前記粘着力が100N/25mm以下であると、粘着シートの貼付性が良好となり好ましい。
定荷重性は、粘着シートから幅25mm、長さ100mmの試験片を切り出し、試験片の一方の端部から50mmの粘着剤層面を試験板に対してローラ圧着しながら貼付し、貼付直後から24時間、23℃、50%RHの標準環境下に放置した後、 試験板を試験片が貼付された面を下側に向けて水平に配置し、試験片の他方の端部に、試験片が鉛直方向に剥離するように質量50gのおもりを取り付け、その状態を24時間維持した後、試験片が試験板の表面から剥離される距離(剥離距離、mm)で測定された値であって、5mm以下であり、3mm以下が好ましい。前記定荷重性が、5mm以下であると、粘着シート貼付経時後の浮き剥がれが少なくなり好ましい。
(粘着剤)
粘着剤は、本発明の粘着樹脂組成物に含まれる。粘着剤は、アクリル系樹脂を含有するアクリル系粘着剤であることが好ましい。粘着剤層100質量%に対する、アクリル系樹脂の含有量は、20〜99.9質量%であってよく、40〜90質量%であってよく、65〜85質量%であってよい。アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルの重合体が挙げられ、例えば(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を有する重合体又は共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有量は、全構成単位中、好ましくは70〜99.9質量%、より好ましくは80〜99.5質量%、更に好ましくは85〜99質量%、より好ましくは88〜95質量%である。(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、活性水素を有する官能基を含む単量体と、任意で用いられる他の単量体との共重合体が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を含む概念である。
アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
活性水素を有する官能基を含む単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等のヒドロキシル基含有モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル等の(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
架橋剤の使用量は、その種類にもよるが、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100質量部に対して、例えば0.01〜20質量部であってもよく、例えば0.1〜10質量部であってもよい。
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤及びアミン系架橋剤、アミノ樹脂系架橋剤等が挙げられる。
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5、5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、2,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、リジンイソシアネート等の多価イソシアネート化合物が挙げられる。
本発明の粘着樹脂組成物は、基材フィルムを被着体に貼付させる機能を有する粘着剤層に含有される。粘着剤層は、基材フィルムを被着体に貼付できる機能を有するものであれば、特に制限はない。本発明の粘着樹脂組成物が用いられる粘着シートは、本発明の粘着樹脂組成物が粘着剤層に含有されるものであれば、特に制限はなく、化粧シート、ラベル等が挙げられる。
≪粘着シート≫
本発明の粘着樹脂組成物は、基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくとも一方の側に設けられた粘着剤層とを備えた粘着シートに用いることができる。
以下、本発明の粘着樹脂組成物を用いる粘着シートを、図1を用いて説明する。
本発明の粘着樹脂組成物を用いる粘着シート1は、基材シート10上に、本発明の粘着樹脂組成物を含有する前記粘着剤層20を設けるものである。
(基材フィルム)
基材フィルム10の材質は特に限定されず、難燃性を有するものであっても、有しないものであってもよい。難燃性を有する基材フィルムとしては、樹脂単体で難燃性を有する樹脂からなる基材フィルム、難燃剤を含有させた樹脂からなる基材フィルム、上記樹脂がフィルムにコート又はラミネートされてなる基材フィルム、及び金属箔等を用いることができる。
樹脂単体で難燃性を有する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂やポリフェニレンエーテルイミド樹脂等のポリイミド樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等が挙げられる。
難燃剤を含有させた樹脂からなる基材フィルムに用いられる樹脂としては、上記樹脂単体で難燃性を有する樹脂のほか、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、EVA樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、エポキシ樹脂、ポリスチレン−ポリカーボネートアロイ樹脂、ポリスチレン−ABSアロイ樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
難燃剤としては、リン系難燃剤、シリコーン系化合物、メラミン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、グアニジン系化合物等の有機系難燃剤や、アンチモン系化合物、金属水酸化物等の無機系難燃剤が挙げられる。上記難燃剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、前記した樹脂単体で難燃性を有する樹脂や、難燃剤を含有させた樹脂がフィルムにコート又はラミネートされてなる基材フィルムを用いてもよい。該フィルムとしては、例えば、フィルム状のプラスチック、含浸紙等の紙、織布、不織布等が挙げられる。
難燃性を有しない基材フィルムとしては、一般ラベル用の基材フィルムである蒸着基材フィルム、紙、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系フィルム、ポリオレフィン系やポリエステル系の合成紙等が挙げられる。
(粘着剤層)
粘着剤層20の厚みは、粘着シートの種類により異なるが、例えば、粘着ラベルの場合は、5μm以上70μm以下であることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましく、10〜30μmであることがさらに好ましい。
(剥離ライナー)
剥離ライナー30は、公知のいずれのものを使用してもよい。剥離ライナー30の基材としては、例えば、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどよりなる樹脂フィルムが挙げられる。そして、この基材の粘着剤層20との接合面を剥離剤(例えば、シリコーン系剥離剤など)で処理したものが好適に使用される。
剥離ライナー30の厚さは特に限定されず、例えば、20〜200μm程度が好ましい。
本発明の粘着樹脂組成物によれば、粘着剤とリン系難燃剤及び臭素系難燃剤とを含有することにより、総発熱量を30MJ/m以下とすることができ、防火性及び粘着物性に優れる粘着樹脂組成物を提供できる。
また、本発明の粘着樹脂組成物は、基材フィルムと、基材フィルムの両面または片面に前記粘着樹脂組成物を含有する粘着剤層とを備えた粘着シートの前記初期粘着力が、5℃環境下で、5N/25mm以上、23℃、50%RH環境下で、15N/25mm以上であって、前記定荷重性が、5mm以下であるため、粘着物性がよく、低温及び常温での貼付性に優れている。
≪粘着シートの製造方法≫
本発明の粘着樹脂組成物を用いる粘着シート1は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、粘着剤層の形成のための本発明の粘着樹脂組成物を用意する。粘着樹脂組成物は、粘着剤とリン系難燃剤及び臭素系難燃剤とを含む本発明の粘着樹脂組成物上記で挙げた粘着剤層を構成する各成分を適宜の割合で配合して得られる。配合に際しては、各成分を予め分散媒や溶媒を用いて希釈しておいてもよく、また混合時に分散媒や溶媒を加えてもよい。
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソブタノール、n−ブタノール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
基材フィルム上に、上記で得た粘着樹脂組成物を公知の塗工装置により適宜の厚さに塗布する。続いて、基材フィルム上の粘着樹脂組成物を加熱し乾燥させることにより、粘着樹脂組成物中の溶媒を除去し、基材フィルム上に粘着剤層を設ける。粘着剤層に上記の剥離ライナーを貼着してもよい。
又は、適当な剥離ライナー上に、粘着樹脂組成物を公知の塗工装置により適宜の厚さに塗布する。続いて、剥離ライナー上の粘着樹脂組成物を加熱し乾燥させることにより、粘着樹脂組成物中の溶媒を除去し、剥離ライナー上に粘着剤層を形成させる。その後、当該粘着剤層を上記基材フィルム上に転写し、基材フィルムに粘着剤層を設けてもよい。
上記加熱の温度は、80〜150℃程度とすることが挙げられる。
塗工装置としては、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、ファウンテンダイコーター、スロットダイコーター、リバースコーター等が挙げられる。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(粘着樹脂組成物の製造)
単量体成分として、アクリル酸ブチル92質量部、及びアクリル酸8質量部、溶剤として、酢酸エチル200質量部、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部を反応器に入れ混合した。4時間窒素ガスで脱気を行い、60℃まで徐々に昇温した後、24時間撹拌しながら重合反応を行い、重量平均分子量が65万のアクリル系共重合体を含む酢酸エチル溶液(乾燥質量濃度33質量%)を得た。
得られたアクリル系共重合体の乾燥質量100質量部に対して、イソシアネート系架橋剤(東ソー株式会社製、商品名「コロネートL」)を2.25質量部、リン酸エステル系難燃剤(大八化学工業社製、商品名「CR741」、常温で液体)を30質量部、及び臭素系難燃剤(トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌラート、マナック社製、商品名「EB−70」)を15質量部、それぞれ乾燥質量として添加した。この混合物を、乾燥質量濃度が28質量%となるように酢酸エチルで希釈し、粘着樹脂組成物の溶液を調製した。
この溶液を、剥離ライナーに、乾燥後の粘着剤層の厚さが20μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥した後に、透明なポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)に転写して粘着剤層を形成し、粘着シートの一例として実施例1の各粘着シートを作製した。
[比較例1]
難燃剤を用いない以外は、上記実施例1の粘着シートと同様にして、比較例1の粘着シートを製造した。
[比較例2]
難燃剤として、臭素系難燃剤(トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌラート、マナック社製、商品名「EB−70」)を15質量部用いた以外は、実施例1の粘着シートと同様にして、比較例2の粘着シートを製造した。
[比較例3]
難燃剤として、臭素系難燃剤(トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌラート、マナック社製、商品名「EB−70」)を30質量部用いた以外は、実施例1の粘着シートと同様にして、比較例3の粘着シートを製造した。
[比較例4]
難燃剤として、リン酸エステル系難燃剤(大八化学工業社製、商品名「CR741」、常温で液体)を30質量部用いた以外は、実施例1の粘着シートと同様にして、比較例4の粘着シートを製造した。
[比較例5]
難燃剤として、リン酸エステル系難燃剤(大八化学工業社製、商品名「CR741」、常温で液体)を50質量部用いた以外は、実施例1の粘着シートと同様にして、比較例5の粘着シートを製造した。
Figure 0006942520
[総発熱量]
粘着樹脂組成物の総発熱量の測定には、株式会社東洋精機製作所製のマルチカロリーメータ(製品名:MCM−2)を用いた。具体的には、マルチカロリーメータが備えるコーンカロリーメータ試験装置を利用した。最大発熱速度の測定は、下記の条件で行った。
・輻射量 :50kW
・加熱方法 :スパーク着火方式
・試験片サイズ:50mm×50mmの積層体
・構成 :アルミ板(厚さ1mm)/粘着剤層(厚さ1.6mm)
最大発熱速度の測定に用いた試験片は、次のような手順で作製した。まず、剥離フィルム上に形成された厚さ50μmの粘着剤層に、別の剥離フィルム上の厚さ50μmの粘着剤層を積層させ、100μmの粘着剤層を得た。一方の剥離フィルムを剥離し、さらに別の剥離フィルム上の厚さ50μmの粘着剤層をさらに積層させるという操作を同様に繰り返し、合計厚さ1.6mmの粘着剤層を剥離フィルムの上に形成した。粘着剤層に厚さ1mmのアルミ板を貼り合わせて、剥離フィルム/粘着剤層/アルミ板、という構成体を得た。この構成体を、50mm×50mmの大きさに切り出した。測定時には剥離フィルムを剥がし、試験片とした。この試験片をコーンカロリーメータ試験装置のチャンバー内の所定箇所に置いた。この際、試験片の粘着剤層をコーンヒータと対向させた。前記条件で実施した発熱性試験において、5分間の試験時間で試験された際の、総発熱量を測定した。
[初期粘着力]
25mm×300mmにカットした上記実施例1、及び比較例1〜5の粘着シートを粘着力測定用の試験片とし、JIS Z0237:2009に準拠して、前記試験片をステンレス試験板(試験板)にローラ圧着しながら貼付し、貼付から30秒以内に、23℃±1℃、50%RH環境下、又は、5℃±1℃環境下で、剥離速度300mm/minの条件で、試験片を試験板に対して180°に引きはがす試験方法により粘着力を測定した。結果を表1に示す。
[定荷重性]
得られた粘着シートにおける定荷重性を評価した。すなわち、得られた粘着シートから、幅25mm、長さ100mmの試験片を切り出し、試験片の一方の端部から50mmの粘着剤層面を試験板に対してローラ圧着しながら貼付し、貼付直後から24時間、23℃、50%RHの標準環境下に放置した。
次いで、試験板を試験片が貼付された面を下側に向けて水平に配置し、試験片の他方の端部に、試験片が鉛直方向に剥離するように質量50gのおもりを取り付け、その状態を24時間維持した後、試験片が試験板の表面から剥離される距離(剥離距離、mm)を測定し、定荷重性を評価した。得られた結果を表1に示す。
実施例1の粘着樹脂組成物は、総発熱量が低く、また、粘着シートに用いた場合、粘着シートの5℃環境下及び23℃環境下での初期粘着力が高く、定荷重性(剥離距離)の値も低かった。それに対し、比較例1及び2の粘着樹脂組成物は、粘着シートに用いた場合、粘着シートの5℃環境下及び23℃環境下での初期粘着力の値は高く、定荷重性(剥離距離)の値も低かったが、粘着樹脂組成物の総発熱量が高かった。比較例3の粘着シートは、総発熱量は低かったが、粘着シートに用いた場合、5℃環境下での初期粘着力の値が低かった。比較例4の粘着樹脂組成物は、総発熱量が高く、粘着シートに用いた場合、定荷重性(剥離距離)の値も高かった。試験例5の粘着シートの試験片は、総発熱量は低かったが、粘着シートに用いた場合、5℃環境下及び23℃環境下での初期粘着力の値が低く、定荷重性(剥離距離)の値も高かった。
上記の結果から、実施例1の粘着樹脂組成物は、比較例1〜5の粘着樹脂組成物と比較して、総発熱量が低く、防火性に優れるとともに、粘着シートに用いた場合、5℃環境下及び23℃環境下での初期粘着力が高く、かつ、定荷重性(剥離距離)の値が低く、粘着物性に優れていた。
1…粘着シート、10…基材フィルム、20…粘着剤層、30…剥離ライナー

Claims (5)

  1. 粘着剤とリン系難燃剤及び臭素系難燃剤とを含む粘着樹脂組成物であって、
    前記粘着樹脂組成物の総発熱量が下記発熱性試験において、30MJ/m以下であり、
    基材フィルムと、基材フィルムの両面または片面に前記粘着樹脂組成物を含有する粘着剤層とを備えた粘着シートが、下記初期粘着力試験において、初期粘着力が5℃環境下で、4N/25mm以上、23℃、50%RH環境下で、7N/25mm以上であり、かつ、
    前記粘着シートが、下記定荷重性試験において、剥離距離が5mm以下であって、
    前記粘着樹脂組成物が、粘着剤乾燥質量100質量部に対して、リン系難燃剤を乾燥質量として20〜40質量部、臭素系難燃剤を乾燥質量として10〜20質量部それぞれ含有し、
    前記臭素系難燃剤が、臭素化イソシアヌラートである、粘着樹脂組成物。
    発熱性試験:50mm×50mm×1.6mmのサイズに加工した前記粘着樹脂組成物のマルチカロリーメータによって測定される総発熱量試験
    初期粘着力:JIS Z0237:2009に準拠し、粘着シートの試験片をステンレス試験板(試験板)にローラ圧着しながら貼付し、貼付から30秒以内に、剥離速度300mm/minの条件で、試験片を試験板に対して180°に引きはがす試験方法により測定される初期粘着力試験
    定荷重性試験:粘着シートから幅25mm、長さ100mmの試験片を切り出し、試験片の一方の端部から50mmの粘着剤層面を試験板に対してローラ圧着しながら貼付し、貼付直後から24時間、23℃、50%RHの標準環境下に放置した後、試験板を試験片が貼付された面を下側に向けて水平に配置し、試験片の他方の端部に、試験片が鉛直方向に剥離するように質量50gのおもりを取り付け、その状態を24時間維持した後、試験片が試験板の表面から剥離される距離(剥離距離、mm)で測定される定荷重性試験
  2. 前記リン系難燃剤が、リン酸エステル系難燃剤である、請求項に記載の粘着樹脂組成物。
  3. 前記リン酸エステル系難燃剤が、縮合リン酸エステルである、請求項に記載の粘着樹脂組成物。
  4. 前記臭素化イソシアヌラートが、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌラートである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘着樹脂組成物。
  5. 前記粘着剤がアクリル系粘着剤である、請求項1〜のいずれか一項に記載の粘着樹脂組成物。
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