JP3988482B2 - 難燃性耐熱性樹脂組成物、これを用いた接着フィルム及び接着剤付きポリイミドフィルム - Google Patents
難燃性耐熱性樹脂組成物、これを用いた接着フィルム及び接着剤付きポリイミドフィルム Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性耐熱性樹脂組成物、これを用いた接着フィルム及び接着剤付きポリイミドフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種電子機器の小型化、軽量化が急速に進むのに伴って電子部品の搭載密度も高くなり、それに用いられる各種電子部品、材料に要求される特性も多様化してきている。このような中で特にプリント配線板は、配線占有面積が小型、高密度になり多層配線板化(ビルドアップ配線板)、フレキシブル配線板化(FPC)等の要求も益々高まってきている。これらの配線板は、製造工程において種々の接着剤あるいは接着フィルムを用いており、接着剤に使用される樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等が主に挙げられる。しかしながら、これらの樹脂はいずれも耐熱性、電気絶縁性等の特性を満足させるのに不十分であった。
【0003】
これに対して、優れた耐熱性と電気絶縁性を有するものとしてポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂系接着剤が知られているが、配線板製造工程における熱履歴によって被着体と接着剤間に熱応力が発生して配線基板に反りが生じるという問題があった。
【0004】
更に、これまで各種プリント配線板用材料の難燃剤として、最も一般的に用いられているのは難燃効果の優れた臭素系化合物等のハロゲン系化合物ならびにアンチモン系化合物であった。しかしながら、ハロゲン系化合物は、最近の研究によって燃焼時に人体に有毒なダイオキシン等を含むガスを発生するため、その使用がヨーロッパ諸国を中心に制限されつつある。このような有毒ガスを発生させない難燃剤として、具体的には水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機充填剤又はリン系化合物等が知られている。
【0005】
しかしながら、これら化合物は十分な難燃性を得るために目的の樹脂に対して大量に添加する必要があり、本来の樹脂の有する特性を大幅に低下させることがある。具体的には、水酸化アルミニウムは一般的に製造時に混入する可溶性ナトリウムのため、例えば各種配線板用接着剤の中でFPC用接着剤においては、長期高温高湿処理をすると被着体であるポリイミドフィルム表面上で加水分解反応が発生してポリイミドフィルム表面が脆弱化し、剥離強度が低下することが知られている。更に、水酸化マグネシウムは、耐酸性を低下させることが一般的に知られている。また、リン系化合物の中でも良く知られているリン酸エステル類は可塑剤として機能し、耐熱性等を低下させるので種類及び使用量を制限する必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、各種プリント配線板用接着剤、接着フィルムに有用な優れた熱応力低下効果を有する難燃性耐熱性樹脂組成物を提供することにある。更には難燃助剤であるリン系化合物によってハロゲンフリーで優れた難燃性を有し、且つ変性ポリアイミドイミド樹脂のミクロ相分離構造に起因した応力緩和作用による優れた接着性を有する各種プリント配線板用接着剤、接着フィルムに有用な難燃性耐熱性樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、ハロゲンフリーで優れた耐熱性及び難燃性を有し、且つポリアミドイミド樹脂のミクロ相分離構造に起因した応力緩和作用による優れた接着性を有し、各種プリント配線板用として好適な接着フィルムを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、優れた接着性を有する各種プリント配線板に好適な更に耐熱性に優れる接着剤付きポリイミドフィルムを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)一般式(A式)
【化17】
(式中、R及びR′は、各々独立に2価の有機基を示す)
で示される繰り返し単位を有し、全繰り返し単位中のR及びR′として、
【化18】
(式中、Xは
【化19】
を示す)
と、
【化20】
(式中、R3及びR4は各々独立に2価の有機基を示し、R5〜R8は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を示し、nは1〜50の整数である)
と、
【化21】
との少なくとも3種の2価の有機基を有し、ミクロ相分離構造を有するポリアミドイミド樹脂、(B)熱硬化性樹脂及び(C)有機リン系化合物を含有してなる難燃性耐熱性樹脂組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、(A)成分がRとして
【化22】
(式中、Xは
【化23】
を示す)
と
【化24】
(式中、R3及びR4は各々独立に2価の有機基を示し、R5〜R8は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を示し、nは1〜50の整数である)
とを有し、R′として
【化25】
を有する前記難燃性耐熱性樹脂組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、(A)成分が、芳香族環を3個以上有するジアミン(a)とシロキサンジアミン(b)の混合物と無水トリメリット酸を反応させて得られる一般式(1式)
【化26】
〔式中R1は、
【化27】
(式中、Xは
【化28】
を示す)を示す。〕
で示される芳香族ジイミドジカルボン酸(1)及び一般式(2式)
【化29】
〔式中R2は
【化30】
(ただしR3及びR4は各々独立に2価の有機基を示し、R5〜R8は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を示し、nは1〜50の整数である。)を示す。〕
で示されるシロキサンジイミドカルボン酸(2)を含む混合物とノルボルネンジイソシアネートとを反応させて得られるミクロ相分離構造を有するポリアミドイミド樹脂である前記難燃性耐熱性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、(A)ポリアミドイミド樹脂100重量部、(B)熱硬化性樹脂10〜100重量部及び(C)有機リン系化合物2〜20重量部を含有してなる前記難燃性耐熱性樹脂組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、シロキサンジアミン(b)のアミン当量が400〜2,500g/molである前記難燃性耐熱性樹脂組成物に関する。
また、本発明は(B)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂とその硬化促進剤又は硬化剤からなる前記難燃性耐熱性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、エポキシ樹脂がリン含有エポキシ樹脂である前記難燃性耐熱性樹脂組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、(C)有機リン系化合物が一般式(3式)
【化31】
(式中、Wはなし(単結合)、炭素数1〜5のアルキレン基、−S−、−SO2−、−O−、又は−N=N−である結合基を示し、n1は10〜50の整数である。)
で示されるリン酸エステル系化合物又は一般式(4式)
【化32】
(式中、n2は10〜50の整数である。)
で示されるリン酸エステル系化合物である前記難燃性耐熱性樹脂組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、前記難燃性耐熱性樹脂組成物から形成される接着剤層を有する接着フィルムに関する。
また、本発明は、ポリイミドフィルムの片面又は両面に前記接着剤層が積層された接着剤付きポリイミドフィルムに関する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の難燃性耐熱性樹脂組成物は、(A)一般式(A式)で示される繰り返し単位を有し、ミクロ相分離構造を有するポリアミドイミド樹脂、(B)熱硬化性樹脂及び(C)有機リン系化合物を含有してなる。(A)成分のポリアミドイミド樹脂は、一般式(A式)で表される全繰り返し単位中のR及びR′として、
【化33】
(式中、Xは上記と同じ意味を有する。)
と、
【化34】
(式中、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びnは、上記と同じ意味を有する。)
と、
【化35】
との少なくとも3種の2価の有機基を有する。
【0016】
本発明に用いられる(A)成分のポリアミドイミド樹脂は、(A式)で示される繰り返し単位を有することから、ソフトセグメントであるシロキサンユニットと脂環族ユニット及びハードセグメントである芳香族ユニットからなり、ミクロ相分離構造(海島構造)を有する。本明細書におけるミクロ相分離構造とは、樹脂中に分散粒子が存在し、この分散粒子が島で、粒子のない部分が海を形成している構造を意味する。このミクロ相分離構造における海は、シロキサンユニットからなり、島はシロキサンユニット以外のユニットからなると推定される。本発明の難燃性耐熱性樹脂組成物は、接着剤層を形成する際には、通常、溶媒に溶解した溶液として使用されるが、ポリアミドイミド樹脂は、難燃性耐熱性樹脂組成物の溶液を塗布して乾燥した後、又は乾燥後に難燃性耐熱性樹脂組成物を硬化させた後に上記ミクロ相分離構造となることが好ましい。接着剤層中のポリアミドイミド樹脂がこのミクロ相分離構造を有することによって、特異的に応力緩和作用が発現し、高耐熱性を保持したまま優れた接着性を得ることが出来る。
【0017】
(A)成分のポリアミドイミド樹脂としては、例えば、(A式)中、Rとして
【化36】
(式中、Xは上記と同じ意味を有する。)
と
【化37】
(式中、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びnは、上記と同じ意味を有する。)
とを有し、R′として
【化38】
を有するものがある。このようなポリアミドイミド樹脂は、例えば、(A)芳香族環を3個以上有するジアミン(a)及びシロキサンジアミン(b)の混合物と無水トリメリット酸とを反応させて得られる一般式(1式)の芳香族ジイミドジカルボン酸(1)及び一般式(2式)のシロキサンジイミドジカルボン酸(2)を含む混合物と、ノルボルネンジイソシアネートとを反応させることにより、得ることができる。
【0018】
上記一般式(A式)及び(2式)中、R3及びR4が示す2価の有機基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素数1〜20のアルキレン基、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基等の炭素数6〜18のアリーレン基等が挙げられる。
【0019】
上記一般式(A式)及び(2式)中、R5〜R8が示す炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、これらの構造異性体が挙げられる。
上記一般式(A式)及び(2式)中、R5〜R8が示す炭素数6〜18のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられ、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数1〜20のアルキル基等で置換されてもよい。
【0020】
前記芳香族環を3個以上有するジアミン(a)は、下記一般式(5式)で示されるものである。
H2N−R1−NH2 (5式)
(式中、R1は、一般式(1式)におけると同じ意味を有する。)
この芳香族環を3個以上有するジアミン(a)としては、例えば、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(以下、BAPPと略す。)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等が挙げられ、ポリアミドイミド樹脂の特性のバランスとコストの見地からは、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンが特に好ましい。これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。
【0021】
本発明で用いるシロキサンジアミン(b)は、下記一般式(6式)で表されるものである。
【化39】
(式中R3−R8及びnは、一般式(2式)におけると同じ意味を有する。)
【0022】
このようなシロキサンジアミン(b)としては下記式に示すもの等が挙げられる。
【化40】
(式中、nは1〜50の整数を示す。)
【0023】
商業的に入手可能なものとしてはシロキサン系両末端アミンであるアミノ変性シリコーンオイルX−22−161AS(アミン当量450、信越化学工業株式会社製商品名)、X−22−161A(アミン当量840、信越化学工業株式会社製商品名)、X−22−161B(アミン当量1540、信越化学工業株式会社製商品名)、BY16−853(アミン当量650、東レダウコーニングシリコーン株式会社製商品名)、BY16−853B(アミン当量2200、東レダウコーニングシリコーン株式会社製商品名)などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。
【0024】
ここで、(A)ポリアミドイミド樹脂に難燃性を付与し、更には接着性を向上させるミクロ相分離構造を形成させるには、シロキサンジアミン(b)のアミン当量を、400〜2,500g/molとすることが好ましく、800〜2,300g/molとすることがより好ましく、800〜2,000g/molとすることが更に好ましく、800〜1,800g/molとすることが特に好ましい。これらの例としては、例えば、X−22−161A(アミン当量840)、X−22−161B(アミン当量1540)、以上信越化学工業株式会社製商品名等が挙げられる。シロキサンジアミン(b)は、単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。
【0025】
また、(A)成分のポリアミドイミド樹脂の合成に用いられるノルボルネンジイソシアネートの他に、耐熱性の見地から4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)、2,4−トリレンジイソシアネート(以下、TDIと略す)、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等の芳香族ジイソシアネートをこれらは単独で又は2種類以上組み合わせて、ノルボルネンジイソシアネートに対して5〜20モル%程度で使用することができる。
また、可とう性付与の見地からヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイシシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートを、ノルボルネンンジイソシアネートに対して5〜20モル%程度で併用することができる。
【0026】
また、耐熱性の見地から、前記芳香族ジイミドジカルボン酸とシロキサンジイミドジカルボン酸に加えて、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸も、上記芳香族ジイミドジカルボン酸及びシロキサンジイミドジカルボン酸の混合物に対して5〜10モル%程度で併用することができる。
【0027】
本発明で用いる(A)成分のミクロ相分離構造を有するポリアミドイミド樹脂は、例えば、芳香族環を3個以上有するジアミン(a)及びシロキサンジアミン(b)の混合物と無水トリメリット酸(以下、TMAと略す)とを非プロトン性極性溶媒の存在下に、50〜90℃で0.2〜1.5時間反応させ、さらに水と共沸可能な芳香族炭化水素を非プロトン性極性溶媒の0.1〜0.5重量比で投入し、120〜180℃で反応を行い、前記一般式(1式)で表される芳香族ジイミドジカルボン酸(1)と前記一般式(2式)で表されるシロキサンジイミドジカルボン酸(2)を含む混合物を合成し、更にノルボルネンジイソシアネートを投入して前記一般式(1式)で表される芳香族ジイミドジカルボン酸(1)及び前記一般式(2式)で表されるシロキサンジイミドジカルボン酸(2)を含む混合物と150〜250℃程度で0.5〜3時間程度反応させることで製造できる。
【0028】
また、前記一般式(1式)で表される芳香族ジイミドジカルボン酸(1)と前記一般式(2式)で表されるシロキサンジイミドジカルボン酸(2)を含む混合物を製造した後、その溶液を150〜250℃程度に加熱することでその溶液から水と共沸可能な芳香族炭化水素を除去し、その後ノルボルネンジイソシアネートとの反応を行うことによって製造することもできる。また、ポリアミドイミド樹脂は非プロトン性極性溶媒を含むワニスであることが好ましい。
【0029】
前記芳香族環を3個以上有するジアミン(a)及びシロキサンジアミン(b)の混合物の混合比としては、(a)/(b)=(50.0〜90.0)/(10.0〜50.0)(各数値の単位はモル%であり(a)及び(b)の合計量を100モル%とする。)であることが好ましい。
この範囲から外れた割合の混合物を用いて得られる樹脂は、反りの発生又は難燃性の低下又はミクロ相分離構造の消失又は分子量の低下の傾向がある。この割合の範囲は、(60.0〜90.0)/(10.0〜40.0)(モル%)であることがより好ましく、(70.0〜90.0)/(10.0〜30.0)(モル%)とすることが更に好ましい。
【0030】
さらに上記混合物と無水トリメリット酸(TMA)とを反応させ、前記一般式(1式)の芳香族ジイミドジカルボン酸(1)及び前記一般式(2式)のシロキサンジイミドジカルボン酸(2)を含む混合物を得るための原料の使用量は、前記芳香環を3個以上有するジアミン(a)、シロキサンジアミン(b)の合計モル数とTMAのモル数のモル比((a)+(b))/TMA=1/2.20〜1/2.05であることが好ましく、1/2.15〜1/2.10であることがより好ましい。このモル比が1/2.20未満ではTMAが残存し、最終的に得られる樹脂の分子量が低下する傾向があり、1/2.05を超えるとジアミン類が残存し、最終的に得られる樹脂の分子量が低下する傾向がある。
【0031】
次いで前記一般式(1式)で示される芳香族ジイミドジカルボン酸(1)及び前記一般式(2式)で表されるシロキサンジイミドジカルボン酸(2)を含む混合物((1)+(2))とノルボルネンジイソシアネートとを反応させ、ポリアミドイミド樹脂を得るためのモル比は、((1)+(2))/ノルボルネンジイソシアネート=1/1.50〜1/1.05であることがより好ましく、1/1.3〜1/1.1であることがより好ましい。このモル比が1/1.50未満では得られる樹脂の分子量が低下する傾向にあり、1/1.05を超えると得られる樹脂の分子量が低下する傾向がある。
【0032】
前記非プロトン性極性溶媒としては、芳香族環を3個以上有するジアミン(a)、シロキサンジアミン(b)、TMAと反応しない有機溶媒であることが好ましく、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、スルホラン、シクロヘキサノン等が例示できる。イミド化反応には、高温を要するため沸点の高い、N−メチル−2−ピロリドンがより好ましい。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0033】
これらの非プロトン性極性溶媒中に含まれる水分量は0.1〜0.2重量%とすることが好ましい。この水分量が0.2重量%を超えるとTMAが水和して生成するトリメリット酸により、十分に反応が進行せず、ポリマーの分子量が低下する傾向がある。また、本発明で使用する非プロトン性極性溶媒の使用量は、芳香族環を3個以上有するジアミン(a)、シロキサンジアミン(b)及びTMAの総量に対して、2.1〜2.5倍量の範囲になることが好ましく、2.2〜2.4倍量の範囲になることがより好ましい。この使用量が2.1倍量未満ではTMAの溶解性が低下し、十分な反応が行えなくなる傾向があり、2.6倍量を超えると工業的製造法として不利である傾向がある。
【0034】
前記芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0035】
(A)ミクロ相分離構造を有するポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は、30,000〜300,000であることが好ましく、40,000〜200,000であることがより好ましく、50,000〜10,000であることが特に好ましい。重量平均分子量が30,000未満であるとフィルム状態での強度や可とう性の低下、タック性の増大及びミクロ層分離構造が消失する傾向があり、300,000を超えるとフィルム状態での可とう性及び接着性が低下する傾向がある。なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定され、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算されたものである。
【0036】
本発明で用いる(B)成分の熱硬化性樹脂としては、(A)成分のミクロ相分離構造を有するポリアミドイミド樹脂骨格中のアミド基と熱等によって反応すれば制限はなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂及びその変性物、ビキシレニルジグリシジルエーテル、YDC1312(東都化成(株)製、商品名)、エポトートYD−8125(東都化成(株)製、商品名)、TMH574(住友化学工業(株)製、商品名)、エピコート1031S(油化シェルエポキシ(株)製、商品名)等の芳香族系エポキシ樹脂、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等の脂肪族系エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネート等の複素環式エポキシ化合物などが挙げられる。このうち接着性及び耐熱性の見地からは芳香族系エポキシ樹脂が好ましく、さらには難燃性の見地から分子内にリン原子を含有する芳香族系エポキシ樹脂が特に好ましい。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0037】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、リン含有エポキシ樹脂ZX−1548−1(リン含有量:2.0重量%)、ZX−1548−2(リン含有量:2.5重量%)、ZX−1548−3(リン含有量:3.0重量%)、ZX−1548−4(リン含有量:4.0重量%)(以上、東都化成株式会社製商品名)等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。リン含有エポキシ樹脂のリンの含有量は、1〜30重量%であることが好ましく、1〜20重量%であることがより好ましい。
また、エポキシ樹脂は、エポキシ当量が200〜500であることが好ましく、250〜400であることがより好ましく、分子量又はゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量が100〜2000であることが好ましく、150〜1500であることがより好ましい。。
【0038】
上記(B)成分の熱硬化性樹脂の配合量は、(A)成分のミクロ相分離構造を有するポリアミドイミド樹脂100重量部に対して10〜100重量部であることが好ましく、20〜80重量部であることがより好ましく、30〜50重量部であることが特に好ましい。この配合量が10重量部未満では、難燃性が不十分となり、かつ硬化剤としての機能が低下する傾向があり、100重量部を超えると硬化後の樹脂の架橋構造が密となり、脆弱化する傾向がある。
【0039】
本発明で用いる(B)成分の熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂とその硬化促進剤又は硬化剤からなることが更に好ましい。
上記硬化促進剤としては、(B)成分のリン含有エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と反応するもの、又は、(A)成分と(B)成分との硬化反応を促進させるものであれば特に制限はなく、例えば、アミン類、イミダゾール類が使用できる。これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。
上記アミン類としては、例えば、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、グアニル尿素等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。
上記イミダゾール類としては、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のアルキル基置換イミダゾール、ベンゾイミダゾール等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。
【0040】
上記硬化促進剤の配合量は、アミン類の場合はアミンの活性水素の当量とリン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量が、それぞれほぼ等しくなる量が好ましい。イミダゾールの場合は、リン含有エポキシ樹脂100重量部に対して、0.1〜2.0重量部であることが好ましい。この配合量は、少なければ未硬化のリン含有エポキシ樹脂が残存して、架橋樹脂のガラス転移温度が低くなり、多すぎると未反応の硬化促進剤が残存して、ポットライフ、絶縁性等が低下する傾向がある。
【0041】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、アミン、ポリアミド、酸無水物及びフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有する化合物であるビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等が使用できるが、特にフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等を用いることが好ましい。
上記硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して5〜20重量部配合することが好ましい。
【0042】
本発明に使用される(C)成分の有機リン系化合物としては、例えば、前記一般式(3式)で表されるリン酸エステル系化合物、前記一般式(4式)で示されるリン酸エステル系化合物、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、クレジルジ2,6−キシレニルホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。これらの有機リン系化合物の市販品としては、CR−733S、CR−741、CR−747、PX−200(以上、大八化学工業株式会社製商品名)等のリン酸エステル系化合物、SP−703、SP−601(四国化成工業株式会社製商品名)、「レオフォス」シリーズの35、50、65、95、110(以上、味の素株式会社製商品名)等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。
【0043】
前記一般式(3式)及び前記一般式(4式)中において、化合物中のベンゼン環は炭素数1〜5のアルキル基等の置換基を有していてもよい。この置換基が2つ以上の場合は、2つ以上の置換基は各々同一でも相違してもよい。
上記炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
【0044】
上記(C)成分の有機リン系化合物の配合量は、(A)成分のミクロ相分離構造を有するポリアミドイミド樹脂100重量部に対して2〜20重量部であることが好ましく、2〜10重量部であることがより好ましく、2〜5重量部であることが特に好ましい。この配合量が2重量部未満では、難燃性が不十分となる傾向があり、20重量部を超えると接着性、はんだ耐熱性が低下する傾向がある。
【0045】
本発明では、上記の(A)、(B)及び(C)成分を有機溶媒中で混合して、固形分20〜40重量%程度の難燃性耐熱性樹脂組成物とすることが好ましい。上記有機溶媒としては、溶解性が得られるものであれば特に制限はなく、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、スルホラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、アセトン等が挙げられる。
【0046】
また、本発明の難燃性耐熱性樹脂組成物には、上記各成分の他に必要に応じて、カップリング剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、イオントラップ剤等を適宜配合しても良い。
【0047】
本発明の難燃性耐熱性樹脂組成物を用いて接着剤層を形成するには、例えば、そのまま塗布して接着剤層を形成してもよいし、接着フィルムの形態にして耐熱性樹脂組成物の層を積層することによって接着剤層を形成してもよい。また、接着フィルムを使用する時は積層してから支持基材を除去してもよいし、積層する前に除去してもよい。
【0048】
本発明の接着フィルムは、例えば、支持基材上に、所定の有機溶剤に溶解した難燃性耐熱性樹脂組成物を塗布後、加熱又は熱風吹き付けにより溶剤を乾燥させて接着剤層を形成することにより作製することができる。溶剤を乾燥させる際の加熱条件は、難燃性耐熱性樹脂組成物が硬化しないか、又は硬化してもB−ステージ状態までしか硬化しない条件とする。通常、加熱温度は、120〜140℃とすることが好ましい。
上記支持基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、テフロン(登録商標)フィルム、離型紙、銅箔、アルミニウム箔等の金属箔等が挙げられる。支持基材の厚みは10〜150μmが好ましい。なお、支持基材にはマット処理、コロナ処理、離型処理を施してもよい。
【0049】
上記有機溶剤としては、溶解性が得られるものであれば特に制限はなく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルセロソブル等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。
【0050】
上記支持基材上に積層された難燃性耐熱性樹脂組成物から形成される接着剤層の厚みは5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましい。
上記接着フィルムの形態としては、例えば、ある一定の長さで裁断されたシート状、ロール状等が挙げられる。保存性、生産性及び作業性の見地からは、難燃性耐熱性樹脂組成物からなる接着剤層上に保護フィルムをさらに積層し、ロール状に巻き取って貯蔵することが好ましい。
上記保護フィルムとしては、例えば、支持基材と同じく、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、テフロン(登録商標)フィルム、離型紙が挙げられる。上記保護フィルムの厚みは10〜100μmであることがより好ましい。なお、保護フィルムにはマット処理、コロナ処理、離型処理を施してもよい。
【0051】
本発明の接着フィルムは、例えば、ポリイミドフィルム等に積層することで接着剤付きポリイミドフィルムとすることができ、例えば、フレキシブル配線板用カバーレイフィルムならびにベースフィルムとすることができる。さらには金属箔を積層することでフレキシブル配線板用基板等とすることもできる。また、ポリイミドフィルムの片面又は両面に本発明の難燃性耐熱性樹脂組成物から形成される接着剤層を積層して、接着剤付きポリイミドフィルムとしてもよい。
【0052】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0053】
(合成例1〜4)
還流冷却器を連結したコック付き25mlの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに芳香族環を3個以上有するジアミンとしてBAPP(2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン)、シロキサンジアミンとして反応性シリコーンオイルX−22−161−B(信越化学工業株式会社製商品名、アミン当量1540、一般式(2式)中、R3及びR4:プロピレン基、R5〜R8:メチル基)、TMA(無水トリメリット酸)、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン、水分含有量:0.1重量%)及びγ−BL(γ−ブチロラクトン、水分含有量:0.1重量%)をそれぞれ表1に示した配合比で仕込み、80℃で30分間撹拌した。そして、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mlを投入してから温度を上げ約160℃で2時間還流させた。
【0054】
水分定量受器に水が約3.6ml以上溜まっていること、水の流出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器に溜まっている流出水を除去しながら、約190℃まで温度を上げてトルエンを除去した。
その後、溶液を室温に戻し、ノルボルネンジイソシアネートを表1に示した量を投入し、190℃で2時間反応させた。反応終了後、ポリアミドイミド樹脂のNMP/γ−BL溶液A−1〜A−4を得た。
【0055】
【表1】
*1:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
*2:反応性シリコーンオイル(信越化学工業(株)製商品名、アミン等量 1540)
*3:無水トリメリット酸
*4:N−メチル−2−ピロリドン
*5:γ−ブチロラクトン
【0056】
(実施例1〜3及び比較例1〜2)
合成例1〜4で得られたポリアミドイミド樹脂溶液(A−1〜A−4)に対して表2に示す材料を配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した後、脱泡のため室温で24時間静置して難燃性耐熱性樹脂組成物溶液を得た。
また、得られた難燃性耐熱性樹脂組成物溶液を厚さ50μmのテフロン(登録商標)フィルム(ニチアス株式会社製商品名:ナフロンテープTOMBO9001)に乾燥後の膜厚が20μmになるように塗布し、130℃で4分間乾燥させたものを作製して、乾燥機で160℃×120分間硬化させ、テフロン(登録商標)フィルム付き硬化フィルムを得、テフロン(登録商標)フィルムを剥がした硬化フィルムを液体窒素中で破断した。この破断面を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、ポリアミドイミド樹脂溶液A−1〜A−3を用いたものはミクロ相分離構造を有していることが確認され、A−4を用いたものはミクロ相分離構造を有していないことが確認された。
【0057】
【表2】
*6:東都化成(株)製商品名
*7:大八化学工業(株)製商品名(一般式(3式)のもの)
*8:大日本インキ化学工業(株)製商品名
【0058】
また、得られた難燃性耐熱性樹脂組成物溶液を厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製商品名:カプトン100H)に乾燥後の膜厚が20μmになるように塗布し、130℃で4分間乾燥させたものを作製して、さらに35μmの圧延銅箔(日鉱グールドホイール株式会社製商品名:BHY−22B−T)の粗化面側を張り合わせ、温度140℃、圧力490kPa(5kgf/cm2)で熱ロールラミネートを行って仮接着し、乾燥機で160℃×120分間硬化させ、試料とした。(試料A)
【0059】
また、得られた難燃性耐熱性樹脂組成物溶液を厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製商品名:カプトン100H)に乾燥後の膜厚が20μmになるように塗布し、130℃で4分間乾燥させたものを作製して、さらに35μmの圧延銅箔(日鉱グールドホイール株式会社製商品名:BHY−22B−T)の光沢面側を張り合わせ、温度140℃、圧力490kPa(5kgf/cm2)で熱ロールラミネートを行って仮接着し、乾燥機で160℃×120分間硬化させ、試料とした。(試料B)
【0060】
また、得られた難燃性耐熱性樹脂組成物溶液を厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製商品名:カプトン100H)に乾燥後の膜厚が20μmになるように塗布し、130℃で4分間乾燥させたものを作製して、乾燥機で160℃×120分間硬化させ、試料とした。(試料C)
【0061】
また、得られた難燃性耐熱性樹脂組成物溶液を厚さ50μmのテフロン(登録商標)フィルム(ニチアス株式会社製商品名:ナフロンテープTOMBO9001)に乾燥後の膜厚が20μmになるように塗布し、130℃で4分間乾燥させたものを作製して、乾燥機で160℃×120分間硬化させ、テフロン(登録商標)フィルム付き硬化フィルムを得、テフロン(登録商標)フィルムを剥がして試料とした。(試料D)
【0062】
また、得られた難燃性耐熱性樹脂組成物溶液を厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製商品名:カプトン100H)に乾燥後の膜厚が25μmになるように塗布し、130℃で4分間乾燥させたものを作製して、試料とした。(試料E)
【0063】
これら試料を用いて、接着性(試料A、B)、はんだ耐熱性(試料A)、難燃性(試料C)、ガラス転移温度(試料D)、及び貯蔵弾性率(試料D)、乾燥後の反り(試料E)を測定し、その結果を表3に示した。これら特性の測定方法、条件を次に示す。
【0064】
(接着性)
試料A(試料構成:ポリイミドフィルム/難燃性耐熱性樹脂組成物/圧延銅箔粗化面)、試料B(試料構成:ポリイミドフィルム/難燃性耐熱性樹脂組成物/圧延銅箔光沢面)を用いて90°方向の引き剥がし試験を圧延銅箔引きで下記条件で行い、圧延銅箔粗化面、圧延銅箔光沢面及びポリイミドフィルムとの剥離強度(kN/m)を測定した。
測定温度:25℃、剥離速度:50mm/min
【0065】
(はんだ耐熱性)
試料A(試料構成:ポリイミドフィルム/難燃性耐熱性樹脂組成物/圧延銅箔粗化面)を用いて300℃のはんだ浴に3分間、試料を浸漬し、ふくれ、はがれ等の外観異常の有無を調べた。
○:ふくれ、はがれ等の外観異常無し
×:ふくれ、はがれ等の外観異常有り
【0066】
(難燃性)
試料C(試料構成:ポリイミドフィルム/難燃性耐熱性樹脂組成物)を用いてUL94難燃性規格に準拠して難燃性グレードを測定した。
【0067】
(ガラス転移温度及び貯蔵弾性率)
試料D(試料構成:硬化フィルムのみ)を用いて動的粘弾性測定(レオメトリック株式会社製商品名)を下記条件で行った。ガラス転移温度(Tg)はtanδピークの最大値を用いた。
測定モード:引張り、 チャック間距離:22.5mm、 測定温度:−50〜300℃、
昇温速度:5℃/分、 測定周波数:10Hz、 試料サイズ:5mm幅×20mm長
【0068】
(乾燥後の反り)
試料E(試料構成:ポリイミドフィルム/難燃性耐熱性樹脂組成物)を水平なところに置き、試料の反り高さを測定した。
○:反り無し(高さ0mm)
△:反り若干あり(高さ<10mm)
×:反り有り(高さ>10mmでカール状)
【0069】
【表3】
【0070】
【発明の効果】
本発明の難燃性耐熱性樹脂組成物は、熱応力低減効果を有する脂環式ユニット及びシロキサンユニットを含むポリアミドイミド樹脂を含有することから、優れた熱応力低減効果を示し、各種プリント配線板用接着剤、接着フィルムに有用な難燃性耐熱性樹脂組成物である。更には本発明の難燃性耐熱性樹脂組成物は、ポリアミドイミド樹脂の芳香族ユニット及びシロキサンユニットに由来する難燃効果を示し、また、難燃助剤である有機リン系化合物によってハロゲンフリーで優れた難燃性を有し、且つポリアミドイミド樹脂のミクロ相分離構造に起因した応力緩和作用による優れた接着性を有し、各種プリント配線板用接着剤、接着フィルムに有用である。
【0071】
本発明の接着フィルムは、優れた熱応力低減効果を有し、各種プリント配線板用接着剤、接着フィルムに有用であり、ハロゲンフリーで優れた難燃性を有し、且つポリアミドイミド樹脂のミクロ相分離構造に起因した応力緩和作用による優れた接着性を有する。
【0072】
本発明の接着剤付きポリイミドフィルムは、耐熱性に優れるとともに優れた熱応力低減効果を有し、各種プリント配線板用接着剤、接着フィルムに有用であり、ハロゲンフリーで優れた難燃性を有し、且つポリアミドイミド樹脂のミクロ相分離構造に起因した応力緩和作用による優れた接着性を有する。
Claims (8)
- (A)一般式(A式)
で示される繰り返し単位を有し、全繰り返し単位中のR及びR′として、
と、
と、
(B)エポキシ樹脂とその硬化促進剤又は硬化剤とからなる熱硬化性樹脂及び
(C)一般式(3式)
で示されるリン酸エステル系化合物又は一般式(4式)
で示されるリン酸エステル系化合物である有機リン系化合物を含有してなる難燃性耐熱性樹脂組成物。 - (A)成分が、芳香族環を3個以上有するジアミン(a)とシロキサンジアミン(b)の混合物と無水トリメリット酸を反応させて得られる下記一般式(1式)
で示される芳香族ジイミドジカルボン酸(1)及び一般式(2式)
で示されるシロキサンジイミドジカルボン酸(2)を含む混合物とノルボルネンジイソシアネートとを反応させて得られるミクロ相分離構造を有するポリアミドイミド樹脂である請求項1又は2記載の難燃性耐熱性樹脂組成物。 - (A)ポリアミドイミド樹脂100重量部、(B)熱硬化性樹脂10〜100重量部及び(C)有機リン系化合物2〜20重量部を含有してなる請求項3記載の難燃性耐熱性樹脂組成物。
- シロキサンジアミン(b)のアミン当量が400〜2,500g/molである請求項3記載の難燃性耐熱性樹脂組成物。
- エポキシ樹脂がリン含有エポキシ樹脂である請求項1〜5のいずれか記載の難燃性耐熱性樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか記載の難燃性耐熱性樹脂組成物から形成される接着剤層を有する接着フィルム。
- ポリイミドフィルムの片面又は両面に請求項7記載の接着剤層が積層された接着剤付きポリイミドフィルム。
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