JP6942462B2 - 液体吐出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置に関する。
液体を被記録媒体に吐出することにより記録を行う液体吐出装置では、吐出口に連通した圧力室と圧力室内の液体に吐出のためのエネルギーを付与する記録素子とを有する液体吐出ヘッドを使用する。吐出口から吐出されるインク等の液体には、溶媒に何らかの成分を添加したものが用いられるが、吐出口から溶媒成分が気化し蒸発することによって、吐出口近傍の液体の粘度が上昇することがある。吐出口近傍の液体の粘度が上昇すると、吐出特性にも影響が及び、記録品質の低下がもたらされる恐れがある。そこで吐出口及び記録素子が設けられている圧力室に対して液体を循環させ、より高品位の記録を達成する技術が知られている(特許文献1)。しかしながら液体の循環を行うためには液体吐出ヘッド内に複雑な流路を形成する必要があり、液体吐出ヘッドが大型化する要因となる。その一方で、高精細な記録を実現するために、記録素子を高密度に配置して同じ記録素子の個数であれば液体吐出ヘッドを小型化する要求がある。液体吐出ヘッドにおいては一般に記録素子は基板の一方の表面に設けられるが、基板の他方の表面に液体の流路となる溝を設けるとともにこの溝に連通して基板を貫通する貫通流路を設け、液体吐出ヘッドの小型化を実現することが行われている(特許文献2)。
特表2014−510649号公報 米国特許公開第2005/0157033号明細書
例えば液体を循環させるように構成するときには複雑な流路を形成する必要があり、液体吐出ヘッドが大型化する傾向にある。一方、基板において記録素子が設けられる面とは反対側の面に液体の流路を溝として形成し、さらにこの溝を記録素子が設けられる面に連通させる貫通流路を形成した場合には下記の課題がある。つまり、基板を小型化した場合に、液体が通過する経路(溝として形成された流路及び貫通流路)も必然的に狭くなって粘性抵抗が大きくなる。粘性抵抗が大きくなると圧力損失も大きくなり、吐出時の圧力室への液体の再充填も遅くなり、被記録媒体に吐出される液体の量が過少となるなど記録品位が劣化しやすくなる。特に基板の他方の面に流路を形成する構成において液体を循環させるようにした場合には、液体が常時流れるため、特に圧力損失が大きくなりがちであって記録品位の劣化が懸念される。
本発明の目的は、一方の面に記録素子が形成された基板の他方の面に溝状の流路を形成して記録素子基板の小型化を図り、かつ、圧力室への液体の再充填を速やかに行える液体吐出ヘッドを用いる液体吐出装置を提供することにある。
本発明の液体吐出装置は、液体を吐出するエネルギーを発生する複数の記録素子が第1の面に設けられた複数の記録素子基板と、隣接する記録素子の間に配置された隔壁と、記録素子に対応して設けられた吐出口と、隔壁により区画され記録素子を内部に備える圧力室と、を有し、複数の吐出口が一列に並んで吐出口列を形成する液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置であって、液体吐出ヘッドは、複数の圧力室に液体を供給する、記録素子基板の第1の面とは反対側となる第2の面に溝状に設けられた液体供給路と、第1の面と液体供給路との間を連通し、液体供給路から圧力室に液体を供給する複数の供給口と、液体供給路に液体を供給するための供給側開口を備え、液体供給路を覆うように第2の面に設けられた蓋部材と、複数の圧力室から液体を回収する、第2の面に溝状に設けられた液体回収路と、第1の面と液体回収路との間を連通し、圧力室から液体回収路に液体を回収する複数の回収口と、液体回収路から液体を回収するための、蓋部材に設けられた回収側開口と、を有し、吐出口から液体を吐出後、圧力室に液体が充填される過程における、任意の供給側開口から、その供給側開口と連通し、その供給側開口から最も離れた位置にある供給口までの液体供給路での液体の圧力損失と、最も離れた位置にある供給口での液体の圧力損失と、の和P1が5000Pa以下であり、液体吐出装置は、液体を貯える貯留手段と、貯留手段から液体を循環させる第1の循環系と、第1の循環系よりも低い圧力で貯留手段から液体を循環させる第2の循環系と、を備え、液体供給路は第1の循環系に連通し、液体回収路は第2の循環系に連通することを特徴とする。
本発明によれば、流路の圧力損失を抑制しつつ、複数の記録素子を有する記録素子基板の小型化を図ることが可能になる。
第1の構成例の液体吐出装置の概略構成を示す図である。 第1の循環形態を説明する図である。 第2の循環形態を説明する図である。 第3の循環形態を説明する図である。 液体吐出ヘッドの構成を示す斜視図である。 液体吐出ヘッドを示す分解斜視図である。 各流路部材の表面及び裏面の構成を示す図である。 各流路の接続関係を示す透視図である。 流路構成部材及び吐出モジュールを示す断面図である。 吐出モジュールを説明する図である。 記録素子基板の構成を示す図である。 記録素子基板を示す一部破断斜視図である。 隣接する記録素子基板を示す平面図である。 第1の構成例の別の液体吐出装置を説明する図である。 液体吐出ヘッドの構成を示す斜視図である。 液体吐出ヘッドの構成を示す分解斜視図である。 各流路の接続関係を示す透視図である。 第2の構成例の液体吐出装置の概略構成を示す図である。 液体吐出ヘッドの構成を示す斜視図である。 液体吐出ヘッドを示す分解斜視図である。 各流路部材の構成を示す図である。 各流路の接続関係を示す透視図である。 流路構成部材及び吐出モジュールを示す断面図である。 吐出モジュールを説明する図である。 記録素子基板の構成を示す図である。 第3の構成例の液体吐出装置の概略構成を示す図である。 第4の循環形態を説明する図である。 液体吐出ヘッドの構成を示す斜視図である。 液体吐出ヘッドの構成を説明する図である。 本発明の第1の実施形態の液体吐出ヘッドを説明する図である。 第1の実施形態の液体吐出ヘッドの記録素子基板を説明する図である。 第1の実施形態の液体吐出ヘッドの記録素子基板を説明する図である。 第1の実施形態の液体吐出ヘッドの記録素子基板を説明する図である。 圧力損失と記録品位との関係を示すグラフである。 第3の実施形態の液体吐出ヘッドの記録素子基板を説明する図である。 第4の実施形態の液体吐出ヘッドの記録素子基板を説明する図である。 第5の実施形態の液体吐出ヘッドの記録素子基板を説明する図である。 第5の実施形態の液体吐出ヘッドの記録素子基板を説明する図である。
以下、図面を用いて本発明を適用可能な各構成例及び各実施の形態の例を説明する。ただし、以下の記載は本発明の範囲を限定するものではない。一例として、以下の説明では、液体を吐出するエネルギーを発生する記録素子として発熱素子を使用し、熱によって圧力室内の液体に気泡を発生させて吐出口から液体を吐出させるいわゆるサーマル方式の液体吐出ヘッドを例に挙げて説明する。しかしながら、本発明が適用可能な液体吐出ヘッドはサーマル方式のものに限られるものではなく、圧電素子を使用するピエゾ方式や、その他の各種の液体吐出方式を採用する液体吐出ヘッドにも本発明を適用することができる。インク等の液体を吐出する本発明の液体吐出ヘッド及び液体吐出ヘッドを搭載した液体吐出装置は、プリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサなどの装置に適用可能である。さらには各種処理装置と複合的に組み合わせた産業記録装置に適用可能である。例えば、バイオチップ作製や電子回路印刷や半導体基板作製などの用途としても用いることができる。
また以下の説明では、記録液(例えばインク)等の液体をタンクと液体吐出ヘッドの間で循環させる液体吐出装置において用いられる液体吐出ヘッドを説明するが、本発明に基づく液体吐出ヘッドが用いられる液体吐出装置はこれに限られるものではない。液体を循環させずに上流側と下流側とにそれぞれタンクを設け、一方のタンクから液体吐出ヘッドを介して他方のタンクへ液体を流すことで液体吐出ヘッドの圧力室内で液体を流動させる形態の液体吐出装置にも本発明を適用することができる。
さらに、以下の説明では、液体吐出ヘッドが、被記録媒体の幅に対応した長さを有するいわゆるライン型(ページワイド型)のヘッドとして構成されているものとする。しかしながら、主走査方向及び副走査方向への走査によって被記録媒体における記録を完成させる、いわゆるシリアル型の液体吐出ヘッドに対しても本発明を適用することができる。シリアル型の液体吐出ヘッドとしては、例えば、黒色の記録液用及びカラーの記録液用の記録素子基板を各1つずつ搭載する構成のものがあるが、これに限られるものではない。シリアル型の液体吐出ヘッドは、数個の記録素子基板を吐出口列方向に吐出口をオーバーラップさせるよう配置した、被記録媒体の幅よりも短い短尺のラインヘッドを作成し、それを被記録媒体に対してスキャンさせる形態のものであってもよい。
(第1の構成例の液体吐出装置の説明)
まず、本発明に基づく液体吐出装置の一例として、吐出口から液体として記録液を吐出して被記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置1000(以下、記録装置とも称する)について説明する。図1は第1の構成例の液体吐出装置である記録装置1000の概略構成を示している。記録装置1000は、被記録媒体2を搬送する搬送部1と、被記録媒体2の搬送方向と略直交して配置されるライン型の液体吐出ヘッド3とを備え、複数の被記録媒体2を連続もしくは間欠に搬送しながら1パスで連続記録を行うライン型記録装置である。被記録媒体2は例えばカット紙であるが、カット紙以外にも連続したロール紙などであってもよい。液体吐出ヘッド3は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の各色(以下、これらの色をまとめてCMYKとも称する)の記録液によりフルカラーでの記録が可能なものである。後述するように、液体吐出ヘッド3には、液体を液体吐出ヘッド3へ供給する供給路である液体供給手段、メインタンク及びバッファタンク(図2参照)が流体的に接続される。液体吐出ヘッド3は、後述の図2に示すように、大別すると、液体供給ユニット220、負圧制御ユニット230及び液体吐出ユニット300によって構成されている。液体吐出ユニット300には、複数の記録素子基板10と共通供給流路211と共通回収流路212とが設けられており、各記録素子基板10にはそれぞれ複数の記録素子が設けられている。液体吐出ヘッド300において、各記録素子基板10に対して図示矢印で示すように共通供給流路211から記録液が供給され、この記録液は共通回収流路212を介して回収されるようになっている。また、液体吐出ヘッド3には、液体吐出ヘッド3へ電力及び吐出制御信号を伝送する電気制御部が電気的に接続される。液体吐出ヘッド3内における液体経路及び電気信号経路の詳細については後述する。
(第1の循環形態の説明)
図2は、本発明に基づく液体吐出装置に適用される循環経路構成の一形態である第1の循環形態を示している。第1の循環形態では、液体吐出ヘッド3が、高圧側の第1循環ポンプ1001、低圧側の第1循環ポンプ1002、及びバッファタンク1003などに流体的に接続している。なお図2では、説明を簡略化するためにCMYKの各色の記録液のうちの一色の記録液が流動する経路のみを示しているが、実際には4色分の循環経路が液体吐出ヘッド3及び記録装置本体に設けられる。メインタンク1006と接続される、サブタンクとしてのバッファタンク1003は、記録液を貯留する貯留手段として機能するものであり、タンク内部と外部とを連通する大気連通口(不図示)を有し、記録液中の気泡を外部に排出することが可能である。バッファタンク1003は、補充ポンプ1005とも接続されている。補充ポンプ1005は、記録液を吐出しての記録や吸引回復等、液体吐出ヘッドの吐出口から記録液を吐出(排出)することによって液体吐出ヘッド3で液体が消費された際に、消費された記録液分をメインタンク1006からバッファタンク1003へ移送する。
2つの第1循環ポンプ1001,1002は、液体吐出ヘッド3の液体接続部111から液体を引き出してバッファタンク1003へ流す役割を有する。第1循環ポンプ1001,1002としては、定量的な送液能力を有する容積型ポンプを用いることが好ましい。具体的にはチューブポンプ、ギアポンプ、ダイヤフラムポンプ、シリンジポンプ等が挙げられるが、例えば一般的な定流量弁やリリーフ弁をポンプ出口に配して一定流量を確保する形態のポンプであっても用いることができる。液体吐出ヘッド300の駆動時には高圧側の第1循環ポンプ1001及び低圧側の第1循環ポンプ1002によって、それぞれ、共通供給流路211及び共通回収流路212内をある一定流量で記録液が流れる。この流量としては、液体吐出ヘッド3内の各記録素子基板10間の温度差が、被記録媒体2上での記録品質に影響しない程度以上に設定することが好ましい。もっとも、過度に大きな流量を設定すると、液体吐出ユニット300内の流路の圧損の影響により、各記録素子基板10で負圧差が大きくなり過ぎて記録画像での濃度ムラが生じてしまう。このため、各記録素子基板10間の温度差と負圧差を考慮しながら、流量を設定することが好ましい。記録液が循環する経路のうち、高圧側の第1循環ポンプ1001を含む方の経路はこの液体吐出装置での第1の循環系を構成し、低圧側の第1循環ポンプ1002を含む方の経路はこの液体吐出装置での第2の循環系を構成する。
バッファタンク1003から液体吐出ヘッド3に向けて記録液を供給する経路には第2循環ポンプ1004が設けられている。負圧制御ユニット230は、第2循環ポンプ1004と液体吐出ユニット300との間の経路に設けられている。負圧制御ユニット230は、記録を行う時にデューティの差によって循環系の流量が変動した場合でも、負圧制御ユニット230よりも下流側(すなわち液体吐出ユニット300側)の圧力を予め設定した一定圧力に維持する機能を有する。負圧制御ユニット230は、それぞれ異なる制御圧が設定されている2つの圧力調整機構を備えている。これら2つの圧力調整機構としては、それ自身よりも下流の圧力を、所望の設定圧を中心として一定の範囲以下の変動で制御できるものであれば、どのような機構を用いてもよい。一例として、いわゆる減圧レギュレーターと同様の機構のものを採用することができる。圧力調整機構として減圧レギュレーターを用いる場合には、図2に示すように、液体供給ユニット220を介して負圧制御ユニット230の上流側を第2循環ポンプ1004によって加圧するようにすることが好ましい。このようにするとバッファタンク1003の液体吐出ヘッド3に対する水頭圧の影響を抑制できるので、記録装置1000におけるバッファタンク1003のレイアウトの自由度を広げることができる。第2循環ポンプ1004としては、液体吐出ヘッド3の駆動時に使用する記録液の循環流量の範囲内において、一定圧以上の揚程圧を有するものであればよく、ターボ型ポンプや容積型ポンプなどを使用できる。具体的には、ダイヤフラムポンプ等が使用可能である。また第2循環ポンプ1004の代わりに、例えば負圧制御ユニット230に対してある一定の水頭差をもって配置された水頭タンクを設けることもできる。
負圧制御ユニット230内の2つ圧力調整機構のうち、相対的に高圧が設定されている圧力調整機構(図2においてHで表示)は、液体供給ユニット220内を経由して液体吐出ユニット300内の共通供給流路211に接続されている。同様に相対的に低圧が設定されている圧力調整機構(図2においてLで表示)は、液体供給ユニット220内を経由して液体吐出ユニット300内の共通回収流路212に接続されている。液体吐出ユニット300には、共通供給流路211及び共通回収流路212のほかに、各記録素子基板10とそれぞれ連通する個別供給流路213及び個別回収流路214が設けられている。記録素子基板ごとに設けられる個別供給流路213及び個別回収流路214を総称して個別流路と称する。個別流路は、共通供給流路211から分岐して共通回収流路212に合流するように設けられてこれらと連通している。したがって、記録液など液体の一部が共通供給流路211から記録素子基板10の内部流路を通過して共通回収流路212へと流れる流れ(図2の白抜きの矢印)が発生する。これは、共通供給流路211には高圧側の圧力調整機構Hが、共通回収流路212には低圧側の圧力調整機構Lがそれぞれ接続されているため、共通供給流路211と共通回収流路212の間に差圧が生じるからである。
このようにして、液体吐出ユニット300では、共通供給流路211及び共通回収流路212内をそれぞれ通過するように液体を流しつつ、一部の液体が各記録素子基板10内を通過するような流れが発生する。このため、各記録素子基板10で発生する熱を共通供給流路211及び共通回収流路212の流れで記録素子基板10の外部へ排出することができる。液体吐出ヘッド3による記録を行っている際に、記録を行っていない吐出口や圧力室においても記録液の流れを生じさせることができるので、その部位において記録液の溶媒成分の蒸発に起因して記録液の粘度が高まることを抑制することができる。また、増粘した記録液や記録液中の異物を共通回収流路212へと排出することができる。このため、上述した液体吐出ヘッド3を用いることにより、高速かつ高品位での記録を行うことが可能となる。
(第2の循環形態の説明)
図3は、本発明に基づく液体吐出装置に適用される循環経路構成のうち、上述した第1の循環形態とは異なる循環形態である第2の循環形態を示している。第2の循環形態の第1の循環形態との主な相違点は、負圧制御ユニット230を構成する2つの圧力調整機構が、いずれも、負圧制御ユニット230よりも上流側の圧力を、所望の設定圧を中心として一定範囲内の変動で制御する機構であることである。このような圧力調整機構は、いわゆる背圧レギュレーターと同じ作用の機構部品として構成することができる。また、第2循環ポンプ1004が負圧制御ユニット230の下流側を減圧する負圧源として作用し、高圧側及び低圧側の第1循環ポンプ1001,1002が液体吐出ヘッド3の上流側に配置されている。これに伴って、負圧制御ユニット230は液体吐出ヘッド3の下流側に配置されている。
第2の循環形態において負圧制御ユニット230は、液体吐出ヘッド3により記録を行う際に記録デューティの変化によって生じる流量の変動があっても、自身の上流側の圧力変動を、予め設定された圧力を中心として一定範囲内に安定にするように作動する。ここでは負圧制御ユニット230の上流側は、液体吐出ユニット300側となる。図3に示すように、第2循環ポンプ1004によって、液体供給ユニット220を介して負圧制御ユニット230の下流側を加圧することが好ましい。このようにすると液体吐出ヘッド3に対するバッファタンク1003の水頭圧の影響を抑制できるので、記録装置1000におけるバッファタンク1003のレイアウトの選択幅を広げることができる。第2循環ポンプ1004の代わりに、例えば負圧制御ユニット230に対して所定の水頭差をもって配置された水頭タンクを設けてもよい。
第1の循環形態での場合と同様に、図3に示したように負圧制御ユニット230は、それぞれが互いに異なる制御圧が設定された2つの圧力調整機構を備えている。高圧設定側(図3においてHと記載)及び低圧設定側の圧力調整機構(図3においてLと記載)は、それぞれ、液体供給ユニット220内を経由して液体吐出ユニット300内の共通供給流路211及び共通回収流路212に接続されている。これら2つの圧力調整機構により共通供給流路211の圧力を共通回収流路212の圧力より相対的に高くすることで、共通供給流路211から個別流路及び各記録素子基板10の内部流路を介して共通回収流路212へと流れる記録液の流れが発生する。記録液の流れは図3において白抜きの矢印で示されている。このように第2の循環形態では、液体吐出ユニット300内では第1の循環形態と同様の記録液の流れ状態が得られるが、第1の循環経路の場合とは異なる2つの利点がある。
第1の利点は、第2の循環形態では負圧制御ユニット230が液体吐出ヘッド3の下流側に配置されているので、負圧制御ユニット230から発生するゴミや異物が液体吐出ヘッド3へ流入する懸念が少ないことである。
第2の利点は、第2の循環形態では、バッファタンク1003から液体吐出ヘッド3へ供給する必要流量の最大値が、第1の循環形態の場合よりも少なくて済むことである。その理由は次の通りである。記録待機時に循環している場合の、共通供給流路211及び共通回収流路212内の流量の合計をAとする。Aの値は、記録待機中に液体吐出ヘッド3の温度調整を行う場合に液体吐出ユニット300内の温度差を所望の範囲内にするために必要な最小限の流量として定義される。また液体吐出ユニット300の全ての吐出口から記録液を吐出する場合(全吐時)の吐出流量をFと定義する。そうすると、図2に示す第1の循環形態の場合(図2)では、第1循環ポンプ(高圧側)1001及び第1循環ポンプ(低圧側)1002の設定流量がAとなるので、全吐時に必要な液体吐出ヘッド3への液体供給量の最大値はA+Fとなる。一方、図3に示す第2の循環形態の場合、記録待機時に必要な液体吐出ヘッド3への液体供給量は流量Aである。そして、全吐時に必要な液体吐出ヘッド3への供給量は流量Fとなる。そうすると、第2の循環形態の場合、高圧側及び低圧側の第1循環ポンプ1001,1002の設定流量の合計値、すなわち必要供給流量の最大値はAまたはFの大きい方の値となる。このため、同一構成の液体吐出ユニット300を使用する限り、第2の循環形態における必要供給量の最大値(AまたはF)は、第1の循環形態における必要供給流量の最大値(A+F)よりも必ず小さくなる。そのため第2の循環形態の場合、適用可能な循環ポンプの自由度が高まり、例えば構成の簡便な低コストの循環ポンプを使用したり、本体側経路に設置される冷却器(不図示)の負荷を低減したりすることができ、記録装置本体のコストを低減できる。この利点は、AまたはFの値が比較的大きくなるライン型ヘッドであるほど大きくなり、ライン型ヘッドの中でも長手方向に長いヘッドほど有益である。
しかしながら一方で、第1の循環形態の方が第2の循環形態に対して有利になる点もある。第2の循環形態では、記録待機時に液体吐出ユニット300内を流れる流量が最大であるため、記録デューティの低い画像であるほど、各吐出口に高い負圧が印加された状態となる。このため、特に共通供給流路211及び共通回収流路212の流路幅を小さくしてヘッド幅を小さくした場合、ムラの見えやすい低デューティ画像において吐出口に高い負圧が印加されるためにサテライト滴の影響が大きくなるおそれがある。ここで共通供給流路211及び共通回収流路212の流路幅とは、液体の流れ方向と直交する方向の長さであり、ヘッド幅とは、液体吐出ヘッド3の短手方向の長さである。一方、第1の循環形態の場合、高い負圧が吐出口に印加されるのは高デューティ画像形成時であるため、仮にサテライト滴が発生しても記録された画像では視認されにくく、画像への影響は小さいという利点が生ずる。これら2つの循環形態の選択では、液体吐出ヘッド3及び記録装置本体の仕様(吐出流量F、最小循環流量A、及び液体吐出ヘッド3内の流路抵抗)に照らして、好ましいものを選べばよい。
(第3の循環形態の説明)
図4は、本構成例の記録装置に適用される循環経路のさらなる一形態である第3の循環形態を示す模式図である。上記第1及び第2の循環形態と同様な機能、構成については説明を省略し、異なる点について主体的に説明する。
本循環形態では、液体吐出ヘッド3の長手方向の中央部の2個所と、液体吐出ヘッド3の長手方向の一端側の計3か所から液体吐出ヘッド3内に液体が供給される。液体は、共通供給流路211から各圧力室23を経た後に共通回収流路212に回収され、液体吐出ヘッド3の他端部にある回収開口から外部へ回収される。ここに示した例では、共通液体流路211が液体吐出ヘッド3の長手方向に2つに分割されており、そのそれぞれに対して圧力調整機構Hから液体が供給されるようになっている。個別供給流路213及び個別回収流路214がそれぞれ共通供給流路211及び共通回収流路212と連通している。個別供給流路213と個別回収流路214とを接続する経路中に記録素子基板10及びその記録素子基板内に配される圧力室23が設けられている。よって、第1循環ポンプ1002を流れる液体の一部は、共通供給流路211から記録素子基板10の圧力室23内を通過して、共通回収流路212へと流れたものである(図4の矢印)。これは、共通供給流路211に接続された圧力調整機構Hと、共通回収流路212に接続された圧力調整機構Lとの間に圧力差が設けられ、第1循環ポンプ1002が共通回収流路212のみに接続されているからである。
このようにして、本循環形態の液体吐出ユニット300では、共通回収流路212内を通過するような液体の流れと、共通供給流路211から各記録素子基板10内の圧力室23を通過し共通回収流路212に流れが発生する。このため、圧力損失の増大を抑制しつつ、各記録素子基板10で発生する熱を共通供給流路211から共通回収流路212への流れで記録素子基板10の外部へ排出することができる。また、本循環形態によれば、上記第1及び第2の循環形態に比べて液体の輸送手段であるポンプの数を少なくすることが可能となる。
(液体吐出ヘッド構成の説明)
次に、液体吐出ヘッド3の構成について、図5を用いて説明する。図5の(a)は、液体吐出ヘッド3において吐出口が形成された面の側から見た斜視図であり、(b)は(a)とは反対方向から見た斜視図である。液体吐出ヘッド3は、それぞれがシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の4色の記録液を吐出可能な記録素子基板10が直線上に15個配列(インラインに配置)されたライン型の液体吐出ヘッドである。図5(a)に示すように、液体吐出ヘッド3は、15個の記録素子基板10とフレキシブル配線基板40と電気配線基板90とを備えている。電気配線基板90には信号入力端子91及び電力供給端子92が設けられており、信号入力端子91及び電力供給端子92は、電気配線基板90及びフレキシブル配線基板40を介して各記録素子基板10に電気的に接続されている。信号入力端子91及び電力供給端子92は、記録装置1000の制御回路に対して電気的に接続されるものであり、それぞれ、吐出駆動信号及び吐出に必要な電力を記録素子基板10に供給する。電気配線基板90内の電気回路によって配線を集約することで、信号出力端子91及び電力供給端子92の数を記録素子基板10の数に比べて少なくできる。これにより、記録装置1000に対して液体吐出ヘッド3を組み付ける時または液体吐出ヘッドの交換時に取り外しが必要な電気接続部の数を少なくすることができる。図5(b)に示すように、液体吐出ヘッド3の長手方向の両端部に設けられた液体接続部111は、例えば図2あるいは図3に示したような記録装置1000の液体供給系と接続される。これによりCMYKの各色の記録液が記録装置1000の供給系から液体吐出ヘッド3に供給され、また液体吐出ヘッド3内を通った記録液が記録装置1000の供給系へ回収されるようになっている。このように各色の記録液は、記録装置1000の経路と液体吐出ヘッド3の経路を介して循環可能である。
図6は、液体吐出ヘッド3を構成する各部品またはユニットをその機能ごとに分割して示している。液体吐出ヘッド3は筺体80を備えており、この筺体80に対して液体吐出ユニット300、液体供給ユニット220及び電気配線基板90が取り付けられている。液体供給ユニット220には液体接続部111(図2〜4参照)が設けられている。液体供給ユニット220の内部には、供給される記録液中の異物を取り除くため、液体接続部111の各開口と連通する各色別のフィルタ221(図2、図3参照)が設けられている。図示したものでは1つの液体吐出ヘッドに対して2つの液体供給ユニット220と2つの負圧制御ユニット230が設けられている。2つの液体供給ユニット220には、それぞれに2色分ずつのフィルタ221が設けられている。フィルタ221を通過した記録液は、それぞれの色に対応して供給ユニット220上に配置された負圧制御ユニット230へ供給される。負圧制御ユニット230は圧力調整機構を有し、圧力調整機構の内部に設けられる弁やバネ部材などの作用により、液体の流量の変動に伴って生じる記録装置1000の供給系内(液体吐出ヘッド3の上流側の供給系)の圧損変化を大幅に減衰させることができる。これにより負圧制御ユニット230は、その圧力制御ユニットよりも下流側(液体吐出ユニット300側)の負圧変化をある一定範囲内で安定化させることが可能である。上述したように、負圧制御ユニット230では、各色ごとに2つの圧力調整機構が設けられており、色ごとの2つの圧力調整機構の制御圧力は異なる値に設定されている。高圧側の圧力調整機構は液体吐出ユニット300内の共通供給流路211に連通し、低圧側の圧力調整機構は共通回収流路212に連通している。
筐体80は、液体吐出ユニット支持部81及び電気配線基板支持部82とから構成され、液体吐出ユニット300及び電気配線基板90を支持するとともに、液体吐出ヘッド3の剛性を確保している。電気配線基板支持部82は、電気配線基板90を支持するためのものであって、液体吐出ユニット支持部81にネジ止めによって固定されている。液体吐出ユニット支持部81は、液体吐出ユニット300の反りや変形を矯正して複数の記録素子基板10の相対位置精度を確保する役割を有し、それにより記録物におけるスジやムラを抑制する。そのため液体吐出ユニット支持部81は、十分な剛性を有することが好ましく、その材質としては、ステンレス鋼(SUS)やアルミニウムなどの金属材料、もしくはアルミナなどのセラミックが好適である。液体吐出ユニット支持部81の長手方向の両端部には、ジョイントゴム100が挿入される開口83、84が設けられている。液体供給ユニット220から供給される記録液などの液体は、ジョイントゴム100を介して液体吐出ユニット300を構成する後述する第3流路部材70へと導かれる。
液体吐出ユニット300は、複数個の吐出モジュール200と複数の吐出モジュール200を支持する流路構成部材210とからなり、液体吐出ユニット300の被記録媒体側の面にはカバー部材130が取り付けられる。図6に示すようにカバー部材130は、長尺の開口131が設けられた額縁状の表面を持つ部材であり、開口131からは吐出モジュール200に含まれる記録素子基板10及び封止材110(図10参照)が露出している。開口131の周囲の枠部は、液体吐出ヘッド3の吐出口が形成されている面を記録待機時にキャップするキャップ部材の当接面としての機能を有する。このため、開口131の周囲に沿って接着剤、封止材、充填材等を塗布し、液体吐出ユニット300の吐出口形成面上の凹凸や隙間を埋めることで、キャップ時に閉空間が形成されるようにすることが好ましい。
次に液体吐出ユニット300に含まれる流路構成部材210の構成について説明する。流路構成部材210は、液体供給ユニット220から供給された記録液などの液体を各吐出モジュール200へと分配し、また吐出モジュール200から還流する液体を液体供給ユニット220へと戻すためのものである。図6に示すように、流路構成部材210は、第1流路部材50、第2流路部材60及び第3流路部材70をこの順で積層したものであり、液体吐出ユニット支持部81にネジ止めで固定されている。これにより流路構成部材210の反りや変形が抑制されている。
図7(a)〜(f)は、第1乃至第3流路部材50,60,70の表面と裏面とを示している。図7(a)は、第1流路部材50の、吐出モジュール200が搭載される側の面を示し、これに対して図7(f)は、第3流路部材70の、液体吐出ユニット支持部81と当接する側の面を示している。図7(b)は、第1流路部材50の、第2流路部材60との当接面を示し、これに対応して図7(c)は、第2流路部材60の、第1流路部材50との当接面を示している。同様に図7(d)は、第2流路部材60の、第3流路部材70との当接面を示し、図7(e)は、第3流路部材70の、第2流路部材60との当接面を示している。図7の(d)と(e)に示す面で第2流路部材60と第3流路部材70とを接合することにより、それぞれの流路部材60,70に形成される共通流路溝62,71によって、これら流路部材60,70の長手方向に延在する8本の共通流路が形成される。これによりCMYKの各色ごとの共通供給流路211と共通回収流路212の組が流路構成部材210内に形成される(図8参照)。第3流路部材70の連通口72は、ジョイントゴム100の各穴と連通しており、液体供給ユニット220と流体的に流通している。第2流路部材60の共通流路溝62の底面には連通口61が複数形成されており、第1流路部材50の個別流路溝52の一端部と連通している。第1流路部材50の個別流路溝52の他端部には連通口51が形成されており、連通口51を介して、複数の吐出モジュール200と流体的に連通している。この個別流路溝52により第1流路部材50の短手方向の中央側へ流路を集約することが可能となる。なお以下の説明で、記録液の色ごとに分けて共通供給流路211を示すときは符号211の代わりに符号211a〜211dを使用し、色ごとに分けて共通回収流路212を示すときは符号212の代わりに符号212a〜212dを使用する。同様に、記録液の色ごとに分けて個別供給流路213を示すときは符号213の代わりに符号213a〜213dを使用し、色ごとに分けて共通回収流路214を示すときは符号214の代わりに符号214a〜214dを使用する。
流路構成部材210を構成する第1乃至第3流路部材50,60,70は、記録液などの液体に対して耐腐食性を有するとともに、線膨張率の低い材質からなることが好ましい。その材質としては例えば、アルミナや、LCP(液晶ポリマー)、PPS(ポリフェニルサルファイド)やPSF(ポリサルフォン)、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)を母材としてシリカ微粒子やファイバーなどの無機フィラーを添加した複合材料(樹脂材料)を好適に用いることができる。流路構成部材210の形成方法としては、3つの流路部材50,60,70を積層させて互いに接着してもよいし、材質として樹脂複合樹脂材料を選択した場合には、溶着による接合方法を用いてもよい。
次に、図8を用いて流路構成部材210内の各流路の接続関係について説明する。図8は、第1乃至第3流路部材50,60,70を接合して形成される流路構成部材210の内部の流路を第1の流路部材50の、吐出モジュール200が搭載される面側から一部を拡大してみた透視図である。図8において一点鎖線で囲まれた領域は、記録素子基板10の配置位置に対応している。流路構成部材210には、色ごとに液体吐出ヘッド3の長手方向に伸びる共通供給流路211a〜211d及び共通回収流路212a〜212dが設けられている。各色の共通供給流路211a〜211dには、個別流路溝52によって形成される複数の個別供給流路213a〜213dがそれぞれ連通口61を介して接続されている。また、各色の共通回収流路212a〜212dには、個別流路溝52によって形成される複数の個別回収流路214a〜214dがそれぞれ連通口61を介して接続されている。このような流路構成により、各共通供給流路211から個別供給流路213を介して、流路構成部材210の中央部に対応して設けられた記録素子基板10に対して記録液を集約することができる。また記録素子基板10から個別回収流路214を介して、各共通回収流路212に記録液を回収することができる。
図9は、図8のE−E線における流路構成部材210及び吐出モジュール200の断面構成を示している。図示するように、それぞれの個別回収流路214a,214cは、連通口51を介して、吐出モジュール200と連通している。図9では個別回収流路214a,214cのみ図示しているが、別の断面においては、図8に示すように個別供給流路213と吐出モジュール200とが連通している。各吐出モジュール200に含まれる支持部材30及び記録素子基板10には、第1流路部材50からの記録液を記録素子基板10に設けられている記録素子15(図11参照)に供給するための流路が形成されている。さらに支持部材30及び記録素子基板10には、記録素子15に供給した液体の一部または全部を第1流路部材50に回収(還流)するための流路も形成されている。各色の共通供給流路211は、対応する色の負圧制御ユニット230の高圧側の圧力調整機構に対して液体供給ユニット220を介して接続されている。同様に共通回収流路212は、対応する色の負圧制御ユニット230の低圧側の圧力調整機構に対して液体供給ユニット220を介して接続されている。負圧制御ユニット230内のこれらの圧力調整機構により、共通供給流路211と共通回収流路212との間に差圧(圧力差)を生じさせるようになっている。このため、図8及び図9に示したように各流路を接続した液体吐出ヘッド3内では、各色ごとに、共通供給流路211→個別供給流路213→記録素子基板10→個別回収流路214→共通回収流路212へと順に流れる流れが発生する。
(吐出モジュールの説明)
次に、吐出モジュール200について説明する。図10(a)は吐出モジュール200の斜視図であり、図10(b)はその分解図である。吐出モジュール200の製造方法としては、まず、記録素子基板10及びフレキシブル配線基板40を、予め液体連通口31が設けられた支持部材30上に接着する。その後、記録素子基板10上の端子16と、フレキシブル配線基板40上の端子41とをワイヤーボンディングによって電気的に接続し、その後にワイヤーボンディング部(電気接続部)を封止材110で覆って封止する。フレキシブル配線基板40での記録素子基板10とは反対側の端子42は、電気配線基板90の接続端子93(図6参照)と電気的に接続される。支持部材30は、記録素子基板10を支持する支持体であるとともに、記録素子基板10と流路構成部材210とを流体的に連通させる流路連通部材であるため、平面度が高く、また十分に高い信頼性をもって記録素子基板と接合できるものが好ましい。支持部材30の材質としては、例えばアルミナや樹脂材料が好ましい。
(記録素子基板の構造の説明)
次に、記録素子基板10の構成について説明する。図11(a)は記録素子基板10の吐出口13が形成される側の面の平面図であり、図11(b)は図11(a)のAで示した部分の拡大図であり、図11(c)は図11(a)の裏面にあたる側の平面図である。図11(a)に示すように、記録素子基板10は、複数の吐出口13が列をなして形成された吐出口形成部材12を有する。吐出口形成部材12には、記録液の色であるCMYKの4色にそれぞれ対応する4列の吐出口列が形成されている。なお、吐出口列を複数備える場合にその数は4に限定されるものではなく、例えば記録液の種類に応じて適宜に増減することができる。以後、複数の吐出口13が配列される吐出口列が延びる方向を「吐出口列方向」と呼称する。図11(b)に示すように、各吐出口13に対応した位置には液体を熱エネルギーにより発泡させるための発熱素子である記録素子15が配置されている。隔壁22により、記録素子15を内部に備える圧力室23が区画されている。記録素子15は記録素子基板10に設けられる電気配線(不図示)によって、図11(a)に示す端子16と電気的に接続されている。記録素子15は、記録装置1000の制御回路から電気配線基板90(図6)及びフレキシブル配線基板40(図10)を介して入力されるパルス信号に基づいて発熱し、圧力室23の液体を沸騰させ、この沸騰による発泡の力で液体を吐出口13から吐出する。図11(b)に示すように、各吐出口列に沿って、一方の側には液体供給路18が、他方の側には液体回収路19が延在している。液体供給路18及び液体回収路19は、記録素子基板10に設けられた吐出口列の方向に延びた流路であり、それぞれ供給口17a及び回収口17bを介して吐出口13と連通している。すなわち液体供給路18及び液体回収路19は、吐出口列の延在方向に対して平行に設けられている。供給口17a及び回収口17bは、基板本体11を貫通して設けられるものであるので、総称して貫通流路と呼ぶ。
図11(c)及び図12に示すように、記録素子基板10の、吐出口13が形成される面の裏面にはシート状の蓋部材20が積層されており、蓋部材20には、後述する液体供給路18及び液体回収路19に連通する開口21が複数設けられている。ここで示した例では、1本の液体供給路18に対して3個、1本の液体回収路19に対して2個の開口21が蓋部材20に設けられている。図11(b)に示すように蓋部材20のそれぞれの開口21は、図7(a)に示した複数の連通口51と連通している。図12に示すように蓋部材20は、記録素子基板10の基板11に形成される液体供給路18及び液体回収路19の壁の一部を形成する蓋としての機能を有する。蓋部材20は、記録液などの液体に対して十分な耐食性を有している材料から構成されることが好ましく、また、混色防止の観点から、開口21の開口形状及び開口位置には高い精度が求められる。このため蓋部材20の材質として感光性樹脂材料やシリコン板を用い、フォトリソグラフィープロセスによって開口21を設けることが好ましい。このように蓋部材20は開口21により流路のピッチを変換するものであり、圧力損失を考慮すると厚みは薄いことが望ましく、フィルム状の部材、特には感光性を有する樹脂フィルムで構成されることが望ましい。
次に、記録素子基板10内での液体の流れについて説明する。図12は、図11(a)におけるB−B面での記録素子基板10及び蓋部材20の断面を示している。記録素子基板10では、シリコン(Si)基板により形成される基板本体11と感光性の樹脂により形成される吐出口形成部材12とが積層されており、基板本体11の裏面には蓋部材20が接合されている。基板本体11の一方の面側には記録素子15が形成されており(図11参照)、その裏面側には、吐出口列に沿って延在する液体供給路18及び液体回収路19を構成する溝が形成されている。基板本体11と蓋部材20とによって形成される液体供給路18及び液体回収路19は、それぞれ、流路構成部材210内の共通供給流路211及び共通回収流路212と接続されており、液体供給路18と液体回収路19との間には差圧が生じている。第1流路部材50には個別供給流路213及び個別回収流路214が形成されているが、個別供給流路213は液体供給路18と共通供給流路211とを接続し、個別回収流路214は液体回収路19と共通回収流路212とを接続する。液体吐出ヘッド3の複数の吐出口13から液体を吐出し記録を行っている際に吐出動作を行っていない吐出口においては、この差圧によって、液体供給路18内の液体は、供給口17a→圧力室23→回収口17bを経由して液体回収路19へ流れる。この流れは図12において矢印Cで示されている。この流れによって、記録を休止している吐出口13や圧力室23において、吐出口13からの溶媒の気化によって生じた増粘した記録液や、泡・異物などを液体回収路19へ回収することができる。また吐出口13や圧力室23での記録液の増粘を抑制することができる。液体回収路19へ回収された記録液などの液体は、蓋部材20の開口21及び支持部材30の液体連通口31(図10(b)参照)を通じて、流路構成部材210内の連通口51、個別回収流路214、共通回収流路212の順に回収される。この回収された液体は、最終的には記録装置1000の供給経路へと回収される。
結局、記録装置1000の本体から液体吐出ヘッド3へ供給される記録液などの液体は、下記の順に流動し、供給及び回収される。液体は、まず液体供給ユニット220の液体接続部111から液体吐出ヘッド3の内部に流入する。そしてこの液体は、ジョイントゴム100、第3流路部材70に設けられた連通口72及び共通流路溝71、第2流路部材60に設けられた共通流路溝62及び連通口61、第1流路部材に設けられた個別流路溝52及び連通口51の順に供給される。その後、液体は、支持部材30に設けられた液体連通口31、蓋部材20に設けられた開口21、基板本体11に設けられた液体供給路18及び供給口17aを順に介して圧力室23に供給される。圧力室23に供給された液体のうち、吐出口13から吐出されなかった液体は、基板本体11に設けられた回収口17b及び液体回収路19、蓋部材20に設けられた開口21、支持部材30に設けられた液体連通口31を順に流れる。その後、液体は、第1流路部材に設けられた連通口51及び個別流路溝52、第2流路部材に設けられた連通口61及び共通流路溝62、第3流路部材70に設けられた共通流路溝71及び連通口72、ジョイントゴム100を順に流れる。そして、液体供給ユニット220に設けられた液体接続部111から液体吐出ヘッド3の外部へ液体が流動する。図2に示す第1の循環形態を採用した場合には、液体接続部111から流入した液体は負圧制御ユニット230を経由した後にジョイントゴム100に供給される。一方、図3に示す第2の循環形態を採用した場合には、圧力室23から回収された液体は、ジョイントゴム100を通過した後、負圧制御ユニット230を介して液体接続部111から液体吐出ヘッド3の外部へ流動する。
なお、液体吐出ユニット300の共通供給流路211の一端から流入した全ての液体が個別供給流路213aを経由して圧力室23に供給されるわけではない。図2及び図3に示すように、個別供給流路213aに流入することなく、共通供給流路211の他端から液体供給ユニット220に流動する液体もある。このように記録素子基板10を経由することなく流動する経路を備えることで、微細で流抵抗の大きい流路を備える記録素子基板10を備える場合であっても、液体の循環流の逆流を抑制することができる。このようにして液体吐出ヘッド3では、圧力室や吐出口近傍部の液体の増粘を抑制できるので、吐出よれや不吐を抑制でき、結果として高画質な記録を行うことができる。
(記録素子基板間の位置関係の説明)
上述したように液体吐出ヘッド3は複数の吐出モジュール200を備えている。図13は隣接する2つの吐出モジュール200における、記録素子基板10の隣接部を部分的に拡大して示しいる。図11に示すように、ここでは略平行四辺形の記録素子基板10を用いるものとする。図13に示すように、各記録素子基板10において吐出口13が配列される各吐出口列14a〜14dは、被記録媒体の搬送方向Lに対し一定角度傾くように配置されている。これによって記録素子基板10同士の隣接部における吐出口列は、少なくとも1つの吐出口が被記録媒体の搬送方向Lにオーバーラップするようになっている。図13に示したものでは、線D上の2つの吐出口13が互いにオーバーラップする関係にある。このような配置によって、仮に記録素子基板10の位置が所定位置から多少ずれた場合であっても、相互にオーバーラップする吐出口の駆動制御によって、記録画像における黒色のすじや白抜け部分を目立たなくすることができる。複数の記録素子基板10を千鳥配置ではなくインラインに配置したときも、図13のような構成により、液体吐出ヘッド3の被記録媒体の搬送方向の長さの増大を抑えつつ、記録素子基板10同士のつなぎ部における黒スジや白抜け対策を行うことができる。なお、ここでは記録素子基板10の輪郭形状は略平行四辺形であるが、これに限られるものではなく、例えば長方形、台形、その他形状の記録素子基板10を用いた場合でも、本発明の構成を好ましく適用することができる。
(第1の構成例の液体吐出ヘッドの変形例の説明)
次に、図14〜図17を用いて、上述の液体吐出ヘッド構成についての変形例を説明する。上述した例と同様な構成、機能については説明を省略し、異なる点について主体的に説明する。図14は、図1に示すものと同様の液体吐出装置であるが、本変形例に基づく液体吐出ヘッド3を備えた液体吐出装置を示している。図15、図16は、本変形例の液体吐出ヘッドの斜視図と分解斜視図である。
本変形例の液体吐出ヘッド3では、液体吐出ヘッド3と外部との液体の接続部である複数の液体接続部111が、液体吐出ヘッド3の長手方向の一端側に集約して配置されている。液体吐出ヘッド3の他端側には複数の負圧制御ユニット230が集約して配置されている(図16)。本変形例では、液体吐出ヘッド3に含まれる液体供給ユニット220は、液体吐出ヘッド3の長さに対応した長尺状のユニットとして構成され、供給する4色の液体に対応した流路及びフィルタ221を備える。図16に示すように、液体吐出ユニット220の支持部81に設けられる開口83〜86も、上述した液体吐出ヘッド3とは異なる位置に設けられている。
図17は、変形例の液体吐出ヘッド3における流路部材50,60,70の積層状態を示すものであって、上述した液体吐出ヘッドに関する図8に対応するものである。複数の流路部材50,60,70のうちの最上層である流路部材50の上面に、複数の記録素子基板10が直線状に配列されている。各記録素子基板10の裏面側に形成される開口21(図24)に連通する流路は、液体の色ごとに、個別供給流路213が2つ、個別回収流路214が1つとなっている。これに対応して、記録素子基板10の裏面に設けられる蓋部材20に形成される開口21も、液体の色ごとに供給開口21が2つ、回収開口21が1つとなっている。図17に示すように、液体吐出ヘッド3の長手方向に沿って延在する共通供給流路211と共通回収流路212とが交互に並列されている。
(第2の構成例の液体吐出装置の説明)
本発明を適用できる液体吐出装置は、上述した第1の構成例のものに限られるものではない。以下、本発明に基づく液体吐出装置の第2の構成例であるインクジェット記録装置1000(以下、記録装置とも称する)について説明する。図18は第2の構成例の液体吐出装置である記録装置1000の概略構成を示している。以下の説明では、主として第1の構成例と異なる部分のみを説明し、第1の構成例と同様の部分については説明を省略する。
図18に示す記録装置1000は、CMYKの各色にそれぞれ対応した単色用の液体吐出ヘッド3を4つ並列配置させることで、被記録媒体2に対してフルカラー記録を行う点が第1の構成例のものとは異なっている。第1の構成例では、1色の記録液あたりに使用できる吐出口列数が1列であったのに対し、この第2の構成例において1色あたりに使用できる吐出口列数を複数(後述の図25(a)に示す例では20列)とすることができる。このため、記録データを複数の吐出口列に適宜振り分けて記録を行うことで、非常に高速な記録が可能となる。さらに、不吐になる吐出口があったとしても、その吐出口に対して被記録媒体の搬送方向Lに対応する位置にある、他列の吐出口から補間的に吐出を行うことで信頼性が向上する。したがって第2の構成例の記録装置1000は、商業印刷などの分野において使用するのに好適である。第1の構成例と同様に、各液体吐出ヘッド3に対して、記録装置1000の供給系、バッファタンク1003及びメインタンク1006が流体的に接続される。また、それぞれの液体吐出ヘッド3には、液体吐出ヘッド3へ電力及び吐出制御信号を伝送する電気制御部が電気的に接続される。第2の構成例においても、第1の構成例と同様に、図2及び図3にそれぞれ示した第1及び第2の循環形態のいずれをも用いることができる。
(液体吐出ヘッド構造の説明)
第2の構成例での液体吐出ヘッド3の構造について、図19を用いて説明する。図19の(a)は、液体吐出ヘッド3において吐出口が形成された面の側から見た斜視図であり、(b)は(a)とは反対方向から見た斜視図である。液体吐出ヘッド3は、その長手方向に直線上に配列される16個の記録素子基板10を備えており、単一の色の記録液での記録が可能なインクジェット式のライン型液体吐出ヘッドである。液体吐出ヘッド3は、第1の構成例と同様に、液体接続部111、信号入力端子91及び電力供給端子92を備える。しかしながらこの液体吐出ヘッド3は、第1の構成例のものと比べて吐出口列が多いため、液体吐出ヘッド3の両側に信号出力端子91及び電力供給端子92が配置されている。これは記録素子基板10に設けられる配線部で生じる電圧低下や信号伝送遅れを低減のためである。
図20は、第2の構成例の液体吐出ヘッド3を構成する各部品またはユニットをその機能ごとに分割して示している。各ユニット及び部材の役割や液体吐出ヘッド3内での液体流通の順は、基本的には第1の構成例でのものと同様であるが、第2の構成例では液体吐出ヘッド3の剛性を担保する機能が異なっている。第1の構成例では主として液体吐出ユニット支持部81によって液体吐出ヘッド剛性を担保していたが、第2の構成例の液体吐出ヘッドでは、液体吐出ユニット300に含まれる第2流路部材60によって液体吐出ヘッドの剛性を担保している。第2の構成例での液体吐出ユニット支持部81は、第2流路部材60の両端部側に接続されており、この液体吐出ユニット300は記録装置1000のキャリッジと機械的に結合されて、液体吐出ヘッド3の位置決めを行う。負圧制御ユニット230を備える液体供給ユニット220と電気配線基板90とが、液体吐出ユニット支持部81に結合される。2つの液体供給ユニット220内にはそれぞれフィルタ(不図示)が内蔵されている。第2の構成例では、各負圧制御ユニット230ごとに2通りの圧力の制御を行うようにはなっていない。2つの負圧制御ユニット230の一方に対して高圧側の負圧制御ユニットとして相対的に高い負圧で圧力を制御するようが設定なされ、他方に対して低圧側の負圧制御ユニットとして相対的に低い負圧で圧力を制御するようが設定なされている。図20に示すように液体吐出ヘッド3の長手方向の両端部に、それぞれ、高圧側と低圧側の負圧制御ユニット230を設置した場合、液体吐出ヘッド3の長手方向に延在する共通供給流路211と共通回収流路212とにおける液体の流れが互いに対向する。このようにすると、共通供給流路211と共通回収流路212との間での熱交換が促進されて、これらの共通流路内における温度差が低減されることになる。したがって、共通供給流路211及び共通回収流路212に沿って複数設けられる各記録素子基板10における温度差が付きにくくなり、温度差による記録ムラが生じにくくなるという利点がある。
次に液体吐出ユニット300の流路構成部材210の詳細について説明する。図20に示すように流路構成部材210は、第1流路部材50及び第2流路部材60を積層したものであり、液体供給ユニット220から供給された記録液などの液体を各吐出モジュール200へと分配する。また流路構成部材210は、吐出モジュール200から還流する液体を液体供給ユニット220へと戻すための回収流路部材として機能する。流路構成部材210の第2流路部材60は、内部に共通供給流路211及び共通回収流路212が形成された部材であるとともに、液体吐出ヘッド3の剛性を主に担うという機能を有する。このため、第2流路部材60の材質としては、記録液などの液体に対する十分な耐食性と高い機械強度を有するものが好ましく、具体的にはステンレス鋼やチタン(Ti)、アルミナなどを好ましく用いることができる。
次に、図21を用いて、第1流路部材50及び第2流路部材60の詳細を説明する。図21(a)は、第1流路部材50の、吐出モジュール200が取り付けられる側の面を示し、図21(b)は、その裏面であって、第2流路部材60と当接される側の面を示している。第1の構成例とは異なり、第2の構成例における第1流路部材50は、各吐出モジュール200ごとに対応した複数の部材を隣接して配列したものである。このように分割した構造を採用することで、このようなモジュールを複数配列することにより、液体吐出ヘッド3に要求される長さに対応することができるようになる。この構成は、例えば、JIS(日本工業規格)B2サイズ及びそれ以上の寸法に対応した長さの比較的長い液体吐出ヘッドに特に好適に適用できる。図21(a)に示すように、第1流路部材50の連通口51は吐出モジュール200と流体的に連通し、図21(b)に示すように、第1流路部材50の個別連通口53は第2流路部材60の連通口61と流体的に連通する。図21(c)は、第2流路部材60の、第1流路部材50と当接される側の面を示し、図21(d)は、第2流路部材60の厚み方向中央部の断面を示し、図21(e)は、第2流路部材60の、液体供給ユニット220と当接する側の面を示している。第2流路部材60の流路や連通口の機能は、第1の構成例での1色分の記録液に対するものと同様である。第2流路部材60の共通流路溝71は、その一方が図22に示す共通供給流路211であり、他方が共通回収流路212であり、それぞれ、液体吐出ヘッド3の長手方向に沿って一端側から他端側に液体が供給される。この構成例では、第1の構成例とは異なり、共通供給流路211と共通回収流路212での液体の流れる方向は、液体吐出ヘッド3の長手方向に沿って互いに反対方向である。
図22は、記録素子基板10と流路構成部材210との間での各流路の接続関係を示している。図21を用いて説明したように、流路構成部材210内には、液体吐出ヘッド3の長手方向に延びる一組の共通供給流路211及び共通回収流路212が設けられている。第2流路部材60の連通口61は、各々の第1流路部材50の個別連通口53と位置を合わせて接続されており、第2流路部材60の連通口72から共通供給流路211を介して第1流路部材50の連通口51へと連通する液体供給流路が形成されている。同様に、第2流路部材60の連通口72から共通回収流路212を介して第1流路部材50の連通口51へと連通する液体供給流路も形成されている。
図23は、図22のF−F線における断面を示している。この図に示したように、共通供給流路211は、連通口61、個別連通口53及び連通口51を介して、吐出モジュール200へ接続されている。図23では不図示であるが、別の断面においては、共通回収流路212が同様の経路で吐出モジュール200へ接続されていることは、図22を参照すれば明らかである。第1の構成例と同様に、各吐出モジュール200及び記録素子基板10には、各吐出口13の形成個所である圧力室23に連通する流路が形成されている。供給した液体の一部または全部は、この流路によって、吐出動作を休止している吐出口13に対応する圧力室23を通過して還流できるようになっている。また第1の構成例と同様に、共通供給流路211は高圧側の負圧制御ユニット230と、共通回収流路212は低圧側の負圧制御ユニット230と、それぞれ液体供給ユニット220を介して接続されている。このため、これらの負圧制御ユニット230によって生じる差圧によって、共通供給流路211から記録素子基板10の圧力室23を通過して共通回収流路212へと流れる流れが発生する。
(吐出モジュールの説明)
次に、第2の構成例での吐出モジュール200を説明する。図24(a)は吐出モジュール200の斜視図であり、図24(b)はその分解図である。第1の構成例との差異は、記録素子基板10の複数の吐出口列方向に沿った両辺部(記録素子基板10の各長辺部)に複数の端子16がそれぞれ配置され、それに電気接続されるフレキシブル配線基板40も1つの記録素子基板10あたり2枚配置される点である。これは、記録素子基板10に設けられる吐出口列数が例えば20列であり、第1の構成例の4列よりも大幅に増加しているためである。すなわち、端子16から、吐出口列に対応して設けられる記録素子15までの最大距離を短く抑制して、記録素子基板10内の配線部で生じる電圧低下や信号伝送遅れを低減することを目的としている。また支持部材30の液体連通口31は、記録素子基板10に設けられる全吐出口列を跨るように開口している。その他の点は、第1の構成例におけるものと同様である。
(記録素子基板の構造の説明)
次に、第2の構成例での記録素子基板10の構成について説明する。図25(a)は記録素子基板10の吐出口13が形成される側の面の平面図であり、図25(b)は液体供給路18及び液体回収路19が形成されている部分を示す図であり、図25(c)は図25(a)の裏面にあたる側の平面図である。ここで図25(b)は、図25(c)において記録素子基板10の裏面側に設けられている蓋部材20を除去した状態を示している。図25(b)に示すように、記録素子基板10の裏面側には、吐出口列方向に沿って、液体供給路18と液体回収路19とが交互に設けられている。吐出口列数は第1の構成例よりも大幅に増加しているものの、第1の構成例との本質的な差異は、前述のように端子16が記録素子基板10の吐出口列方向に沿った両辺部に配置されていることである。各吐出口列ごとに一組の液体供給路18及び液体回収路19が設けられていること、蓋部材20に、支持部材30の液体連通口31と連通する開口21が設けられていることなど、基本的な構成は第1の構成例のものと同様である。
(第3の構成例の説明)
本発明の第3の構成例の液体吐出装置であるインクジェット記録装置とこの記録装置の設けられる液体吐出ヘッド3の構成を説明する。第3の構成例において液体吐出ヘッド3は、JIS B2サイズの被記録媒体に対して1スキャンで記録を行うページワイド型のものである。第3の構成例は第2の構成例と類似している点が多いため、以降の説明においては、主として第2の構成例と異なる部分を説明し、第2の構成例と同様の部分については説明を省略する。
(インクジェット記録装置の説明)
図26に本構成例のインクジェット記録装置の模式図を示す。記録装置1000は、液体吐出ヘッド3から被記録媒体に直接記録を行わず、一度、中間転写体(中間転写ドラム1007)に液体を吐出し画像を形成した後に、その画像を被記録媒体2に転写する構成である。記録装置1000では、CMYKの4種類の記録液にそれぞれ対応した4つの単色用の液体吐出ヘッド3が、中間転写ドラム1007に沿って円弧状に配置されている。これによって中間転写体上にフルカラー記録が行われ、その記録画像は、中間転写体上で適切な乾燥状態にされた後、紙搬送ローラー1009によって搬送される被記録媒体2へ、転写部1008において転写される。転写部1008では、中間転写ドラム1007に対して付勢された押圧ローラー1020が設けられており、被記録媒体2が中間転写ドラム1007と押圧ローラー1020によって挟持されつつ搬送されることにより、転写が行われる。第2の構成例での被記録媒体2の搬送系は主にカット紙を意図した水平搬送であったのに対し、本構成例においては本体ロール(不図示)から供給される連続紙にも対応可能である。このようなドラム搬送系では、被記録媒体である紙に対して一定の張力をかけながら搬送することが容易なため、高速記録時においても搬送ジャムが少ない。このため装置の信頼性が向上し、商業印刷などに好適である。第1及び第2の構成例と同様、各液体吐出ヘッド3に対して、記録装置1000の供給系、バッファタンク1003及びメインタンク1006が流体的に接続される。また、それぞれの液体吐出ヘッド3には、液体吐出ヘッド3へ電力及び吐出制御信号を伝送する電気制御部が電気的に接続される。
(第4の循環形態の説明)
第3の構成例では、第2の構成例のものと同様に、記録装置1000のタンクと液体吐出ヘッド3との間における液体の循環形態として、図2または図3に示した第1及び第2の循環形態も適用可能であるが、図27に示す循環形態を用いることが好適である。図27に示す第4の循環形態の図3に示す第2の循環形態との主な相違点は、第1循環ポンプ1001,1002及び第2循環ポンプ1004の各々に対し、その循環ポンプの出口と入口を短絡するバイパス弁1010が付加されていることである。バイパス弁1010は、予め設定された圧力を超過する弁を開くように構成されており、バイパス弁1010の上流側の圧力を下げるという機能(第1の機能)を有する。またバイパス弁1010は、記録装置本体の制御基板からの信号によって、任意のタイミングで弁を開閉する機能(第2の機能)も有する。
バイパス弁1010の第1の機能により、第1循環ポンプ1001,1002の下流側または第2循環ポンプ1004の上流側の流路に、過剰または過小な圧力が掛かることを抑制することができる。例えば、第1循環ポンプ1001,1002の機能に支障が発生した場合、過剰な流量や圧力が液体吐出ヘッド3に加わる場合がある。それにより液体吐出ヘッド3の吐出口から液体の漏洩が生じたり、液体吐出ヘッド3内の各接合部に破断が生じたりするおそれがある。しかし本構成例のように、第1循環ポンプ1001、1002にバイパス弁1010が追加されていると、過剰な圧力が発生した場合にバイパス弁1010が開くことで各循環ポンプの上流側へと液体経路が開放されるため、上記のようなトラブルを抑制できる。
また第2の機能により、循環を停止したときには、第1循環ポンプ1001,1002及び第2循環ポンプ1004の停止後に、本体側からの制御信号に基づいて、速やかに全てのバイパス弁1010を開放することができる。これにより、液体吐出ヘッド3の下流部(負圧制御ユニット230から第2循環ポンプ1004までの間)での高い負圧状態(例えば、数〜数十kPa)を短時間に開放することができる。循環ポンプとしてダイヤフラムポンプなど容積型ポンプを使用した場合には、通常、ポンプ内に逆止弁が内蔵されている。しかしながら、バイパス弁1010を開くことで、下流側のバッファタンク1003側からも液体吐出ヘッド3の下流部の圧力開放を行える。上流側からだけでも液体吐出ヘッド3の下流部の圧力開放を行えるが、液体吐出ヘッド3の上流側流路と液体吐出ヘッド3の内部の流路には圧力損失がある。そのため、圧力開放に時間がかかり、過渡的に液体吐出ヘッド3内の共通流路内の圧力が下がり過ぎて、吐出口13に形成されている記録液のメニスカスが破壊される恐れがある。液体吐出ヘッド3の下流側のバイパス弁1010を開くことで、液体吐出ヘッドの下流側の圧力開放が促進されるため、吐出口のメニスカス破壊のリスクが軽減される。
(液体吐出ヘッド構造の説明)
第3の構成例での液体吐出ヘッド3の構造について、図28及び図28を用いて説明する。図28(a),(b)は、それぞれ、液体吐出ヘッド3の斜視図及び分解斜視図である。液体吐出ヘッド3は、その長手方向に直線状(インライン)に配列される36個の記録素子基板10を備え、1色の液体で記録を行うインクジェット式のページワイド型の記録ヘッドである。液体吐出ヘッド3は、第2の構成例と同様に、信号入力端子91及び電力供給端子92を備える他、ヘッドの長手側面を保護するシールド板132が設けられている。
図28(b)では、液体吐出ヘッド3を構成する各部品またはユニットがその機能ごとに分割されて表示されている(ただしシールド板132は不図示)。各ユニット及び各部材の役割や、液体吐出ヘッド3内の液体流通の順は第2の構成例と同様である。第2の構成例との主な相違点は、電気配線基板90が複数に分割されて配置されていること、負圧制御ユニット230の位置、及び第1流路部材50の形状である。本構成例のように、例えばJIS B2サイズの被記録媒体に対応した長さを有する液体吐出ヘッド3の場合、液体吐出ヘッド3の使用電力が大きいため、8枚の電気配線基板90が設けられる。各々の電気配線基板90は、液体吐出ユニット支持部81に取り付けられた長尺の電気配線基板支持部82の両側面に4枚ずつ取り付けられる。
図29(a)は、液体吐出ユニット300、液体供給ユニット220及び負圧制御ユニット230を備える液体吐出ヘッド3の側面図、図29(b)は、液体の流れを示す概略図、図29(c)は図29(a)のG−G線における断面を示す斜視図である。理解を容易にするために、一部の構成は簡略化している。また、図29(b)では記録素子基板10は下向きに描かれているが、図29(c)では記録素子基板10は上向きに描かれている。
液体供給ユニット220内には液体接続部111とフィルタ221が設けられるとともに、負圧制御ユニット230が液体供給ユニット220の下方に一体化して形成されている。これによって負圧制御ユニット230と記録素子基板10との高さ方向の距離が、第2の構成例に比べて短くなっている。この構成により、液体供給ユニット220内の流路接続部の数が減り、記録液の漏洩に対する信頼性が向上するだけでなく、部品点数や組み立て工程数も低減できるという利点がある。また負圧制御ユニット230と吐出口が形成される面とにおける水頭差が相対的に小さくなるので、図26に示すような、水平面に対する傾斜角度が液体吐出ヘッド3ごとに異なるような記録装置へ好適に適応できる。水頭差を小さくできるため、複数の液体吐出ヘッド3を異なる傾斜角で用いても、それぞれの記録素子基板10の吐出口に加わる負圧差を低減できる。またこの構成は、負圧制御ユニット230と記録素子基板10との間の距離が小さくなることでその間の流れ抵抗も小さくなるので、液体の流量変化による圧損差も小さくなり、より安定な負圧制御が行える点でも好ましい。
図27では説明を簡略化するために共通供給流路211と共通回収流路212の流れを同じ方向で示しているが、図29(b)は、液体吐出ヘッド3の各構成部品内での実際の液体の流れを示している。長尺状の第2流路部材60内には、液体吐出ヘッド3の長手方向に伸びる一組の共通供給流路211及び共通回収流路212が設けられている。共通供給流路211及び共通回収流路212は互いに対向する方向に液体が流れるように構成されており、それぞれの流路の上流側にはフィルタ221が設けられ、接続部111等から侵入する異物をトラップする。このように共通供給流路211及び共通回収流路212に互いに対向する方向で液体を流すことは、液体吐出ヘッド3内の長手方向における温度勾配を軽減する点で好ましい。
共通供給流路211及び共通回収流路212の下流側には、それぞれ負圧制御ユニット230が接続されている。また、共通供給流路211の途中には複数の個別供給流路213への分岐部があり、共通回収流路212の途中には複数の個別回収流路214への分岐部がある。個別供給流路213及び個別回収流路214は、いずれも、複数の第1流路部材50の各々の内部に形成されており、記録素子基板10の裏面に設けられた蓋部材20の開口21(図25(c)参照)と連通している。
図29(b)においてHとLで示した負圧制御ユニット230は、それぞれ、相対的に高(H)、低(L)の負圧で、当該負圧制御ユニット230よりも上流側の圧力を制御するように設定された背圧型圧力調整機構で構成されている。共通供給流路211は負圧制御ユニット230(高圧側)と接続され、共通回収流路212は負圧制御ユニット230(低圧側)と接続されており、それにより共通供給流路211と共通回収流路212の間に差圧が発生する。この差圧によって、記録液などの液体が、共通供給流路211から個別供給流路213、記録素子基板10内の吐出口13(圧力室23)、個別回収流路2134を順に通過して共通回収流路212へと流れる。
図29(c)に示すように本構成例においては、個々の吐出モジュール200は、第1流路部材50、記録素子基板10及びフレキシブル配線基板40から構成されている。本構成例においては第2の構成例で説明した支持部材30(図23)が設けられておらず、蓋部材20を備える記録素子基板10が、直接、第1流路部材50に接合されている。第2流路部材に設けられる共通供給流路211は、その上面に形成される連通口61から、第1流路部材50の下面に形成される個別連通口53を介して、個別供給流路213に供給される。その後液体は、圧力室23を経由して個別回収流路214、個別連通口53、連通口61を順に経由して共通回収流路212へと回収される。
ここでは、図23に示した第2の構成例とは異なり、第1流路部材50の下面(第2流路部材60側の面)にある個別連通口53は、第2流路部材50の上面に形成される連通口61に対して十分大きな開口となっている。この構成により、吐出モジュール200を第2流路部材60上に取り付ける際に位置がずれた場合であっても、第1流路部材50と第2流路部材60との間で確実に流体連通が行わるようになり、ヘッド製造時の歩留まりが向上しコストダウンが図られる。
(第1の実施形態)
以下、上述したような液体吐出装置あるいは液体吐出ヘッドにおいて、圧力室への液体の再充填を迅速に行うことができる、本発明に基づく構成を説明する。図30は、本発明の第1の実施形態の液体吐出ヘッドの構成を示すものであって、(a)は被記録媒体2と液体吐出ヘッド3との関係を示す図であり、(b)は(a)の破線で囲った部分における記録素子基板10の拡大透視図である。図30に示した液体吐出ヘッド3では、図1乃至図29に示した構成における流路構成部材210が、液体吐出ヘッド3の全長(図示X方向の長さ)に相当する長さを有する一体化された部材として構成されている。そして液体を吐出するエネルギーを発生する複数の記録素子が高密度に配置された4個の記録素子基板10が、流路構成部材210上に、支持部材30(図30には不図示)を介して液体吐出ヘッド3の短手方向に互い違いにずれながら長手方向に配置している。これによって長尺な1つの液体吐出ヘッドが構成されている。隣接する2つの記録素子基板10の間には、互いに重複する領域が設けられており、この領域を設けることによって被記録媒体2に対する記録の観点からは吐出口が隙間なく配置されるようになっている。液体吐出ヘッド3の長手方向とは直交する方向に被記録媒体2を液体吐出ヘッド3に対して相対的に移動させることにより、被記録媒体2上に画像などの記録を形成できるようになっている。ここでは記録素子基板10を互い違いに配置しているが、図1乃至図29に示したように複数の記録素子基板10が一直線上に配置した液体吐出ヘッドに対しても本発明を適用することができる。記録素子基板10の表面には複数列の吐出口列14が形成されており、各吐出口列14の延びる方向は、液体吐出ヘッド3の長手方向となっている。図30には示されていないが、この液体吐出ヘッド3においても、図1乃至図29に示したものと同様に、液体供給ユニット及び負圧制御ユニットが設けられている。
図31は、第1の実施形態の液体吐出ヘッド3における記録素子基板10を示す図であって、特に吐出口13や記録素子15の形成領域を詳細に示している。図31において(a)は、記録素子基板10の拡大透視平面図であり、(b)は(a)のA−A’線での断面図である。ここでは説明のために、1列の吐出口列14の端部近傍の構成が示されている。図1乃至図29に示したものと同様に、吐出口形成部材12には複数の吐出口13が貫通孔として一列に形成されており、記録素子基板10の基板本体11の一方の面には、各吐出口13に対応して吐出口13に対向するように記録素子15が設けられている。基板本体11には複数の記録素子15が設けられているが、隣接する記録素子15の間には、記録素子15より長い隔壁22が設けられている。相互に隣接する隔壁22と基板本体11の表面と吐出口形成部材12に囲まれた空間が流路となっており、この流路のうち、記録素子15と吐出口13とによって囲まれた部分が圧力室23となっている。したがって、1つの圧力室23には1つの記録素子15と1つの吐出口13とが対応することになる。記録素子15は、例えば、液体を加熱して気泡を生じさせるヒータである。この液体吐出ヘッド3では、ヒータによる加熱によって生じた気泡の撃力によって記録液などの液体を吐出口13から吐出させ、被記録媒体2に着弾させることにより、記録を行うことができる。
図31に示す構成では複数の圧力室23が吐出口列14の方向に沿って一列に並んでいることになるが、圧力室23の列の図示右側の領域には、基板本体11の他方の面に形成されている液体供給路18に連通する供給口17aが設けられている。同様に圧力室23の列の図示左側には、基板本体11の他方の面に形成されている液体回収路19に連通する回収口17bが設けられている。供給口17a及び回収口17bは、いずれも、基板本体11を貫通する貫通流路であって、2個の圧力室23あたり1個の割合で吐出口列の方向に複数配置している。図31では、相互に隣接する隔壁22と基板本体11の表面と吐出口形成部材12とに囲まれて形成された流路のうち、圧力室23から見て供給口17a側の部分が符号27aで示され、圧力室23から見て回収口17b側の部分が符号27bで示されている。
図32は、記録素子基板10の全体構成を説明する図であって、(a)は記録素子基板10の透視平面図、(b)は(a)のA−A’線での断面図、(c)は(a)のB−B’線での断面図である。図33は、基板本体11及び蓋部材20を説明する図であって、(a)は基板本体11及び蓋部材20の側面図、(b)は基板本体11の第1の面の平面図、(c)は(a)のA−A’線での矢視図、(d)は蓋部材20側から見た平面図である。なお図32(b)では、説明のため、吐出口形成部材12は示されていない。本実施形態の液体吐出ヘッド3においても、上述のものと同様に、記録素子基板10の基板本体11には、記録素子15が形成される面すなわち第1の面36と反対側となる面(第2の面)に、液体供給路18及び液体回収路19が設けられている。液体供給路18及び液体回収路19は、吐出口列14の方向に延びて基板本体11の第2の面に溝状に形成されている。さらに基板本体11の第2の面には、蓋部材20が取り付けられ、蓋部材20により液体供給路18及び液体回収路19は蓋をされている。図1乃至図29に示したものと同様に、不図示の支持部材を介して液体供給路18に液体を供給し、液体回収路19から液体を回収するために、開口が設けられている。ここではこれらの開口のうち液体供給路18に連通する開口を供給側開口21aと呼び、液体回収路19に連通する開口を回収側開口21bと呼ぶ。供給側開口21a及び回収側開口21bは、液体供給路18及び液体回収路19に対し、それぞれ複数個設けられている。ここで示したものでは、記録素子15の列が4列設けられており、これに対応して基板本体11には4本の液体供給路18と4本の液体回収路19とが交互に配置している。そして各液体供給路18に設けられる供給側開口21aの数は、その液体供給路18に連通する供給口17aの数よりも少ない。同様に、液体回収路19に設けられる回収側開口21bの数は、その液体回収路19に連通する回収口17bの数よりも少ない。また、供給側開口21a及び回収側開口21bの位置は、いずれも液体供給路18及び液体回収路19の吐出口列方向での端部よりも内側となっており、これにより記録素子基板10の大きさを抑えることが可能となっている。より具体的には、供給側開口21aは、液体供給路18において吐出口列の延在方向における両方の末端にそれぞれ対応する供給口17aよりも、液体供給路18の長さ方向の中心側に設けられている。回収側開口21bの位置も同様である。
次にこの液体吐出ヘッド3における、記録液などの液体の流れについて説明する。図1乃至図29に示したものと同様に、流路構成部材210内には共通供給流路211及び共通回収流路212が設けられている。共通供給流路211から分流した液体は、支持部材30の液体連通口31から供給側開口21a介して液体供給路18内に入り、液体供給路18内を吐出口列方向に流れながら、貫通流路である供給口17a、流路27aを経て圧力室23に入る。供給側開口21aの数は供給口17aの数よりも少ないから、1つの供給側開口21aからは液体供給路18を介して複数の供給口17aに液体が供給されることになる。そして圧力室23で吐出されなかった液体は、流路27b、貫通流路である回収口17bを経て液体回収路19に入る。液体回収路19では、複数の回収口17bからの液体が合流し、合流した液体は回収側開口21bから液体連通口31を経て共通回収流路212に合流する。液体の流れは、図31(b)において矢印で示されている。この液体吐出ヘッド3でも液体吐出装置との間で記録液などの液体を循環する構成となっており、吐出口13からの溶媒の気化に伴う液体の増粘を抑制し、記録品位の低下を防ぐことができる。
上述したような液体吐出ヘッド3において、多数の吐出口13から一度に連続して液滴を吐出させる場合、基板本体11の第2の面に形成された液体供給路18に大量の液体が流れることとなる。これにより、液体供給路18と貫通流路である供給口17aとにおいて圧力損失が発生する。吐出口13から吐出を行った際には吐出された量に相当する液体を圧力室23に対して充填しなければならないが、ここで述べた圧力損失が大きいと、圧力室23への再充填速度が遅くなる。再充填が遅いと、連続吐出を行ったときに1回の吐出当たりの吐出液滴の体積が減少し、さらにはミストと呼ばれる微小液滴が多数発生するようになる。その結果、被記録媒体2に形成される記録の濃度が薄くなったり、あるいは、液体吐出装置の内部がミストで汚染されたりするようになる。以下に示すように本発明者らの考察によれば、圧力損失が5000Paを超えると、記録液を吐出して被記録媒体2の表面に画像などの記録を形成した場合に、記録濃度の希薄化が顕著に視認されるようになった。ここでいう圧力損失とは、吐出による記録液の流れがある状態での圧力損失である。つまり、吐出口13から液体を吐出後、圧力室23に液体が充填される過程で、液体供給路18内の液体が流動している状態における圧力損失のことを示す。より具体的には、液体供給路18での圧力損失と供給口17aでの圧力損失との和P1、すなわち合成圧力損失のことである。液体供給路18での圧力損失とは、蓋部材20に形成された供給側開口21aから、その供給側開口21aから供給を受けることになっている供給口17aのうち最遠のものまでの液体供給路18での圧力損失である。供給側開口21aは複数設けられるから、供給側開口21aごとにここでいう合成圧力損失が異なる場合があるが、その場合は、それらの合成圧力損失のうちの最大のものを考える。
本発明者らは、合成圧力損失と記録品位との関係について実験を行った。基板本体11に溝として形成される液体供給路18の幅を変えると圧力損失が変化するから、液体供給路18の幅が異なる複数の記録素子基板10を作成し、これらの記録素子基板10を用いて液体吐出ヘッド3を作成した。そして、これらの液体吐出ヘッド3を用い、記録素子15を駆動して液滴を吐出する周波数すなわち吐出周波数を変えて吐出を行い、被記録媒体2上に記録を形成し、記録品位を評価した。結果を図34に示す。図34において、「〇」は記録濃度の希薄化が目立たなかった条件を示し、「×」は画像濃度の希薄化が顕著だった条件を示している。吐出周波数にもよるが、合成圧力損失が5000Paを超えるところから記録濃度の希薄化が顕著になることが分かった。そこで本実施形態では、液体を吐出するときにおける液体供給路18での圧力損失と貫通流路である供給口17aでの圧力損失との合計である合成圧力損失を5000Pa以下に抑えるようにする。液体供給路18での圧力損失は供給側開口21aと供給口17aとの位置関係に応じて変化し得る。そこでより具体的には、任意の供給側開口21aからその供給側開口21aから最も離れた位置にある供給口17aまでの液体供給路18での液体の圧力損失と、供給口17aでの液体の圧力損失と、の和P1が5000Pa以下になるようにする。これにより、圧力室23への記録液などの液体の再充填を速やかに行うことができて、記録品位の低下を防止することができる。合成圧力損失は、好ましくは4000Pa以下に抑え、さらに好ましくは、3000Pa以下に抑える。
合成圧力損失を5000Pa以下に抑えるためには、液体供給路18及び供給口17aの断面積を大きくすればよい。しかしながらこれらの断面積をむやみに大きくすると、記録素子基板10のサイズが大きくなってコスト上昇の原因となる。特に、液体供給路18の幅を広げると、吐出口列の方向に直交する方向での記録素子基板10の幅が大きくなる。そこで、基板本体11に対して溝として形成される液体供給路18の深さを深くすることで、基板サイズの増加を抑えつつ液体供給路18の断面積を大きくすることができる。例えば、液体供給路18の少なくとも一部の区間において液体供給路18の幅に対して深さを2倍以上にすることで、圧力損失の低減と基板サイズの増加の抑制とを両立することができる。また合成圧力損失を小さくするためには、液体供給路18の少なくとも一部の区間において液体供給路18の深さDを300μm以上とすることが好ましく、隣接する供給口17aの相互間の距離Lを100μm以下とすることが好ましい。蓋部材20の厚さは0.1μm以上100μm以下とすることが好ましい。
ここでは、記録液が循環する構成の液体吐出ヘッド3における圧力損失について説明したが、記録液が循環しない構成の液体吐出ヘッドにおいても、良好な記録のためには全吐時の合成圧力損失を5000Pa以下とする。また、ここで述べた記録液が循環する構成の液体吐出ヘッド3では、吐出口から記録液を吐出したときに、液体回収路19から回収口17bを介しても圧力室23に記録液が充填されることがある。そのため、液体回収路19の圧力損失と回収口17bでの圧力損失との和P2も5000Pa以下とすることが好ましい。液体回収路19での圧力損失とは、蓋部材20に形成された回収側開口21bから見てその回収側開口21bに記録液が流れ込むことになっている回収口17bのうち最遠のものから、その回収側開口21bまでの液体回収路19での圧力損失である。また、記録液が循環する構成の液体吐出ヘッドでは、記録液を吐出するときにおける上述した合成圧力損失と記録液の吐出を行わない待機状態における合成圧力損失との総和を5000Pa以下とすることが好ましい。
液体供給路18及び供給口17aの合成圧力損失を5000Pa以下にするものの一例として、図32及び図33に示すものでは、液体供給路18の断面は長方形とし、また、供給口17a平面形状も長方形としている。液体回収路19は液体供給路18と同一形状であり、回収口17bは供給口17aと同一形状である。供給口17a及び回収口17bは、それぞれ、液体供給路18及び液体回収路19において等間隔に配置している。そして液体供給路18の幅Wを190μm、その深さDを425μm、隣接する供給口17a間の距離Lを85μmとしている。貫通流路として形成された供給口17aは、その開口部の形状において一方の幅w1が40μm、他方の幅w2が45μmであり、その長さdは160μmである。吐出される液体である記録液の粘度ηを6mPa・s、全吐出口から連続吐出させたときに供給口17aを流れる流量Qを90000pl/sとする。蓋部材20に形成された供給側開口21aから最も離れた供給口17aまでの区間に含まれる供給口の数のうち最大の数nを92とする。蓋部材20に形成された任意の供給側開口21aから最も離れた供給口17aは、吐出口列の方向での記録素子基板10の端部に形成された吐出口17aである。このとき、記録液の流量がQであるときの合成圧力損失ΔPは、式(1)によって決まる。
Figure 0006942462
式(1)において右辺第1項は、供給側開口21aからその最も離れた供給口17aまでの圧力損失であり、右辺第2項は、供給口17aにおける圧力損失である。ここでRは、隣り合う供給口17a間における液体供給路18を流れる液体の粘性抵抗であり、式(2)によって求められる。また、rは、供給口17aにおける粘性抵抗であり、式(3)によって求められる。式(2)及び式(3)は断面が長方形である液体流路において一般的に成り立つ式である。
Figure 0006942462
ここで説明した例では、吐出によって発生する流量Qが90000pl/sとしたときに、蓋部材20の任意の供給側開口21aから最も離れた供給口17aまでの圧力損失は、約2000Paである。この値は5000Paを下回っているため、全吐出口から連続吐出させても画像品位を維持できる。また、ここで示した液体吐出ヘッド3では、非吐出時においても記録液は液体供給路18及び供給口17aを流れ続ける。ここで非吐出時に供給口17aを流れる記録液の流量Qを4800pl/sとすると、合成圧力損失ΔPは約100Paとなる。このとき、非吐出時と全吐出時の圧力損失の差が5000Pa以下であり、非吐出時と全吐出時の圧力損失の和も5000Pa以下であるので、全吐出口から連続吐出させても画像品位を維持できる。ここで述べた例では、液体吐出ヘッド3から吐出される液体は記録液であるとしたが、記録液以外の液体を吐出する場合にも本発明が適用できることは言うまでもない。
上述した例では、液体供給路18及び液体回収路19に対して供給口17a及び回収口17bがそれぞれ均等に配置されているが、供給口17a及び回収口17bはそれぞれ不均一に配置されていてもよい。その場合、蓋部材20の供給側開口21aから見てi番目の供給口17aとi+1番目の供給口17aとの間の距離をLiとする。また、供給側開口21aを流れる記録液の流量をqとする。このとき、合成圧力損失ΔPは、式(1)の代わりに式(1a)で表されることになる。
Figure 0006942462
式(1a)におけるRiは、式(2a)に示すように、蓋部材20の供給側開口21aから見てi番目の供給口17aとi+1番目の供給口17aとの間の区間(距離Li)での液体供給路18における液体の粘性抵抗である。供給口17aが不均一に配置されている場合においても、式(1a)によって示される合成圧力損失ΔPを5000Paとすることにより、圧力室23への記録液の再充填を速やかに行うことができて、記録品位の低下を防止することができる。
(第2の実施形態)
本発明が適用される液体吐出ヘッド3の構成は、第1の実施形態に示したものに限定されるものではない。液体供給路18や供給口17aの寸法を変えても、合成圧力損失ΔPが5000Pa以下であれば、圧力室23への記録液の再充填を速やかに行うことができて、記録品位の低下を防止することができる。その具体例として第2の実施形態の液体吐出ヘッド3は、その基本的構成は第1の実施形態と同様にして、液体供給路18の幅Wを100μm、その深さDを625μm、隣接する供給口17a間の距離Lを85μmとする。また、供給口17aは開口部の形状として1辺が35μmの正方形(すなわち、w1=35μm、w2=35μm)であり、貫通流路としての供給口17aの長さdを100μmとする。吐出される液体である記録液の粘度ηを6mPa・s、全吐出口から連続吐出させたときに供給口17aを流れる流量Qを90000pl/sとする。蓋部材20に形成された供給側開口21aから最も離れた供給口17a(記録素子基板10の端部にある供給口17a)までの区間に含まれる供給口の数のうち最大の数nを92とする。このときの合成圧力損失ΔPは約4500Paであり、5000Paを下回っているため、第2の実施形態の液体吐出ヘッド3でも、全吐出口から連続吐出させた場合においても記録品位を維持できる。この構成では、液体供給路18の幅が第1の実施形態よりも狭いため、記録素子基板10のサイズをより小さくすることができる。
(第3の実施形態)
図35は、第3の実施形態の液体吐出ヘッド3における記録素子基板10の構成を示している。図35において、(a)は基板本体11及び蓋部材20の側面図、(b)は基板本体11の第1の面の平面図、(c)は(a)のA−A’線での矢視図、(d)は蓋部材20側から見た平面図である。本実施形態の液体吐出ヘッド3は、第1の実施形態のものと同様のものであるが、液体供給路18及び液体回収路19の幅Wが吐出口列の方向に沿って変化している点で第1の実施形態のものとは異なっている。全ての吐出口から吐出を行う全吐出時において、全ての供給口17aには等しい流量の記録液が流れる。このとき、蓋部材20の供給側開口21aの数は供給口17aの数よりも少ないため、供給側開口21aに近い位置ほど液体供給路18を流れる流量が多くなる。流路断面積が同じであるとすると流量が大きいほど圧力損失が大きくなるので、本実施形態では、流量が大きい位置における液体供給路18の幅を広げて流路断面積を大きくすることで、圧力損失を抑制している。その一方で、供給側開口21aから離れた位置では流量が相対的に小さいため、液体供給路18の幅を狭めても圧力損失の増加にはつながりにくい。本実施形態では、蓋部材20において供給側開口21aと回収側開口21bとを千鳥状に配置しており、これによって供給側開口21aの位置で液体供給路18の幅を広げ、その位置から遠ざかるにつれて徐々に幅が狭まるようにしている。同様に液体回収路19の幅も、回収側開口21bの位置で広がり、ここから遠ざかるにつれて徐々に狭まっている。この構成では、液体供給路18の断面積は、供給側開口21aの位置で極大であって、供給側開口21aの位置から遠ざかるにつれて減少することになる。
一例として、供給側開口21a付近の液体供給路18の幅を220μmとし、供給側開口21aから最も離れた位置での幅を128μmとし、この間で直線的に液体供給路18の幅が変化する構成とする。その他の寸法は、第1の実施形態と同様に、液体供給路18の深さDを425μm、隣接する供給口17a間の距離Lを85μm、供給路17aの開口部での一方の辺の幅w1を40μm、他方の辺の幅w2を45μm、供給口17aの長さdを160μmとする。吐出する記録液の粘度ηを6mPa・s、全吐出時に各貫通流路を流れる流量Qを90000pl/s、供給側開口21aからその最も離れた供給口17a(記録素子基板10の端部にある供給口17a)までの区間に含まれる最大の貫通流路数nを92とする。このとき、供給側開口21aからその最も離れた供給口17aまでの圧力損失の最大値は約1900Paとなり、供給口17a自体での圧力損失を考慮しても合成圧力損失が5000Paを下回るため、全吐出口から連続吐出させても記録品位を維持できる。また本実施形態では、供給側開口21aと回収側開口21bとを千鳥状に配置することで、記録素子基板10の幅をより狭くしても、低い圧力損失を維持することができる。
(第4の実施形態)
上述した各実施形態では液体供給路18の断面形状は長方形であったが、液体供給路18の断面形状は長方形に限られるものではない。図36は、第4の実施形態の液体吐出ヘッド3での記録素子基板10の全体構成を説明する図であって、(a)は記録素子基板10の透視平面図、(b)は(a)のA−A’線での断面図、(c)は(a)のB−B’線での断面図である。図36に示すように、第4の実施形態は、第1の実施形態での液体供給路18及び液体回収路19の断面形状を、長方形の角の一部が丸まった形状としたものである。液体供給路18及び液体回収路19の断面形状や寸法は同一である。例えば、液体供給路18の上底側(蓋部材20に接する側)の幅W1を200μm、下底側(供給口17a側)の幅W2を180μm、液体供給路18の深さDを425μmとする。液体供給路18の下底と側壁とがなす角部が丸まった形状となっており、下底側の幅W2は、この丸まった部分を含まずに平坦となっている部分のみの幅を表している。隣接する供給口17a間の距離Lを85μm、供給路17aの開口部での一方の辺の幅w1を40μm、他方の辺の幅w2を45μm、供給口17aの長さdを160μmとする。吐出する記録液の粘度ηを6mPa・s、全吐出時に各貫通流路を流れる流量Qを90000pl/s、供給側開口21aからその最も離れた供給口17a(記録素子基板10の端部にある供給口17a)までの区間に含まれる最大の貫通流路数nを92とする。このとき、供給側開口21aからその最も離れた供給口17aまでの圧力損失の最大値は約2000Paとなり、供給口17a自体での圧力損失を考慮しても合成圧力損失が5000Paを下回るため、全吐出口から連続吐出させても記録品位を維持できる。本実施形態では、基板本体11において、隣接する液体供給路18と液体回収路19とを区切る壁部分の根元側が太く形成される構成となるので、記録素子基板10の強度が向上するという利点も得られる。
(第5の実施形態)
上述した各実施形態では液体供給路18の深さDは一定であるが、液体供給路18の深さは一定である必要はない。図37は、第5の実施形態の液体吐出ヘッド3での記録素子基板10の全体構成を説明する図であって、(a)は記録素子基板10の透視平面図、(b)は(a)のA−A’線での断面図、(c)は(a)のB−B’線での断面図である。本実施形態では、液体供給路18の深さDが一定ではなく、蓋部材20に形成されている供給側開口21aから離れるほど、液体供給路18の深さDが小さくなっており、溝としての液体供給路18が浅くなっている。したがって、供給側開口21aの位置からは遠ざかるほど液体供給路18の断面積が減少していることになる。例えば、供給側開口21aの形成位置での液体供給路18の深さD1が425μm、供給側開口21aから最も離れた位置にある供給口17a(記録素子基板10の端部の供給口17a)の形成位置での液体供給路18の深さD2が333μmであるものとする。ここでは液体供給路18の下底が一定の勾配で上底側に近づくようになっている。液体供給路18の幅Wを190μm、供給路17aの開口部での一方の辺の幅w1を40μm、他方の辺の幅w2を45μmとする。吐出する記録液の粘度ηを6mPa・s、全吐出時に各貫通流路を流れる流量Qを90000pl/s、供給側開口21aからその最も離れた供給口17a(記録素子基板10の端部にある供給口17a)までの区間に含まれる最大の貫通流路数nを92とする。貫通流路としての供給口17aの長さは、基板本体11の厚さから液体供給路18の深さを引いた値となる。このため、供給側開口21aの形成位置近傍の供給口17aの深さ方向の長さd1は160μm、記録素子基板10ぼ端部近傍の供給口17aの深さ方向の長さは333μmとなる。このとき、供給側開口21aからその最も離れた供給口17aまでの圧力損失の最大値は約3000Paとなり、供給口17a自体での圧力損失を考慮しても合成圧力損失が5000Paを下回るため、全吐出口から連続吐出させても記録品位を維持できる。この構成では、吐出口列の方向において記録素子基板10の端部ほど液体供給路18が浅く形成されるため、記録素子基板10の強度が向上する。
図38は、第5の実施形態の液体吐出ヘッド3の別の例での記録素子基板10の全体構成を説明する図であって、(a)は記録素子基板10の透視平面図、(b)は(a)のA−A’線での断面図、(c)は(a)のB−B’線での断面図である。図38に示したものは、図37に示したものと異なり、吐出口列方向での末端部分でのみ液体供給路18の深さが変化している。例えば、末端部分での液体供給路18の深さD2が380μmであり、末端から例えば200μmである距離Aまでの範囲で直線的に液体供給路18の深さが変化し、距離Aの位置から供給側開口21a側では深さD1を425μmで一定とする。この場合も、吐出口列の方向の端部において基板本体11の実質的な厚さが大きくなるため、記録素子基板10の強度向上を期待できる。
3 液体吐出ヘッド
10 記録素子基板
13 吐出口
15 記録素子
17a 供給口
18 液体供給路
20 蓋部材
21a 供給側開口
22 隔壁
23 圧力室

Claims (15)

  1. 液体を吐出するエネルギーを発生する複数の記録素子が第1の面に設けられた複数の記録素子基板と、隣接する記録素子の間に配置された隔壁と、前記記録素子に対応して設けられた吐出口と、前記隔壁により区画され前記記録素子を内部に備える圧力室と、を有し、複数の前記吐出口が一列に並んで吐出口列を形成する液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置であって、
    前記液体吐出ヘッドは、
    複数の前記圧力室に液体を供給する、前記記録素子基板の前記第1の面とは反対側となる第2の面に溝状に設けられた液体供給路と、
    前記第1の面と前記液体供給路との間を連通し、前記液体供給路から前記圧力室に液体を供給する複数の供給口と、
    前記液体供給路に液体を供給するための供給側開口を備え、前記液体供給路を覆うように前記第2の面に設けられた蓋部材と、
    複数の前記圧力室から液体を回収する、前記第2の面に溝状に設けられた液体回収路と、
    前記第1の面と前記液体回収路との間を連通し、前記圧力室から前記液体回収路に液体を回収する複数の回収口と、
    前記液体回収路から液体を回収するための、前記蓋部材に設けられた回収側開口と、
    を有し
    記吐出口から液体を吐出後、前記圧力室に液体が充填される過程における、任意の前記供給側開口から、当該供給側開口と連通し、当該供給側開口から最も離れた位置にある前記供給口までの前記液体供給路での液体の圧力損失と、前記最も離れた位置にある供給口での液体の圧力損失と、の和P1が5000Pa以下であり、
    前記液体吐出装置は、
    前記液体を貯える貯留手段と、
    前記貯留手段から前記液体を循環させる第1の循環系と、
    前記第1の循環系よりも低い圧力で前記貯留手段から前記液体を循環させる第2の循環系と、
    を備え、
    前記液体供給路は前記第1の循環系に連通し、前記液体回収路は前記第2の循環系に連通することを特徴とする、液体吐出装置
  2. 前記液体吐出ヘッドにおける前記供給側開口の位置からi番目の前記供給口とi+1番目の前記供給口との間で前記液体供給路を流れる前記液体の粘性抵抗をRi、前記供給口を流れる前記液体の粘性抵抗をr、前記供給口の各々を流れる液体の流量をQ、前記供給側開口を流れる液体の量をq、前記供給側開口から当該供給側開口から前記最も離れた位置にある供給口までの区間に含まれる前記供給口の数をnとして、合成圧力損失ΔPを
    Figure 0006942462
    としたとき、前記合成圧力損失ΔPが5000Pa以下である、請求項1に記載の液体吐出装置
  3. 前記液体吐出ヘッドにおいて複数の前記供給口が配列されており、互いに隣接する前記供給口の間を連通する前記液体供給路を流れる液体の粘性抵抗をR、前記供給口を流れる前記液体の粘性抵抗をr、前記供給口の各々を流れる液体の流量をQ、前記供給側開口から当該供給側開口から前記最も離れた位置にある供給口までの区間に含まれる前記供給口の数をnとして、合成圧力損失ΔPを
    Figure 0006942462
    としたとき、前記合成圧力損失ΔPが5000Pa以下である、請求項1に記載の液体吐出装置
  4. 前記液体吐出ヘッドにおいて、前記液体供給路の、液体の流れ方向と直交する方向における断面が長方形であって、前記液体供給路の少なくとも一部の区間において、前記液体供給路の幅に対して前記液体供給路の深さが2倍以上である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体吐出装置
  5. 前記液体吐出ヘッドにおいて、前記液体供給路の、液体の流れ方向と直交する方向における断面積が、前記供給側開口の位置から遠ざかるにつれて減少する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体吐出装置
  6. 前記液体吐出ヘッドが前記吐出口列を複数備える、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出装置
  7. 前記液体吐出ヘッドにおいて前記液体供給路は、前記吐出口列の延在方向に対して平行に設けられている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液体吐出装置
  8. 前記液体吐出ヘッドにおいて前記供給側開口は、前記液体供給路の延在方向に関して、前記液体供給路の両端部側に設けられる前記供給口よりも前記延在方向の中心側に設けられている、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の液体吐出装置
  9. 前記吐出口から液体を吐出後、前記圧力室に液体が充填される過程における、任意の前記回収側開口から、当該回収側開口と連通し、当該回収側開口から最も離れた位置にある前記回収口までの前記液体回収路での前記液体の圧力損失と、前記最も離れた位置にある回収口での前記液体の圧力損失と、の和P2が5000Pa以下である、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の液体吐出装置
  10. 前記圧力損失の和P1と、
    前記吐出口からの液体の吐出を行わない待機状態における、任意の前記供給側開口から、当該供給側開口と連通し、当該供給側開口から最も離れた位置にある供給口までの前記液体供給路での前記液体の圧力損失と、前記最も離れた位置にある供給口での前記液体の圧力損失との和と、
    の総和が5000Pa以下である、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の液体吐出装置
  11. 前記吐出口から液体を吐出後、前記圧力室に液体が充填される過程における、任意の前記回収側開口から、当該回収側開口と連通し、当該回収側開口から最も離れた位置にある回収口までの前記液体回収路での前記液体の圧力損失と、前記最も離れた位置にある回収口での前記液体の圧力損失と、の和と、
    前記吐出口からの液体の吐出を行わない待機状態における、任意の前記回収側開口から、当該回収側開口と連通し、当該回収側開口から最も離れた位置にある回収口までの前記液体回収路での前記液体の圧力損失と、前記最も離れた位置にある回収口での前記液体の圧力損失と、の和と、
    の総和が5000Pa以下である、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の液体吐出装置
  12. 前記蓋部材は感光性を有する樹脂フィルムで構成される、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の液体吐出装置
  13. 前記圧力室内の液体は当該圧力室の外部との間で循環される、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の液体吐出装置
  14. 前記液体吐出ヘッドは、ページワイド型の液体吐出ヘッドであって、前記複数の記録素子基板を支持する支持部材をさらに備える、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
  15. 前記支持部材は、前記複数の記録素子基板に液体を供給するための共通供給流路と、前記複数の記録素子基板から液体を回収するための共通回収流路と、を備える、請求項14に記載の液体吐出装置
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