以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態の液体吐出装置は、液体としてのインクを吐出するインクジェット液体吐出ヘッドを用いて、画像を記録するインクジェット記録装置としての適用例である。尚、インク等の液体を吐出する本発明の液体吐出ヘッドおよび液体吐出ヘッドを搭載した液体吐出装置は、プリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサなどの装置に適用可能である。さらには各種処理装置と複合的に組み合わせた産業記録装置に適用可能である。例えば、バイオチップ作製や電子回路印刷や半導体基板作製などの用途としても用いることができる。
また、以下に述べる各実施形態は、本発明の適切な具体例であるから、技術的に好ましい様々の限定が付けられている。しかし、本発明の思想に沿うものであれば、本適用例および実施形態は、本明細書の適用例、実施形態、その他の具体的方法に限定されるものではない。
(記録装置の構成)
図1(a)は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置101の基本構成を説明するための要部の概略斜視図である。本例の記録装置101は、いわゆるページワイド型の液体吐出ヘッドを搭載した記録装置であり、記録媒体104を矢印Aの搬送方向に搬送する搬送部103と、インクを吐出可能なインクジェット液体吐出ヘッド(液体吐出ヘッド)102と、備えている。本例の搬送部103は、搬送ベルト103Aを用いて記録媒体104を搬送する。液体吐出ヘッド102は、記録媒体104の搬送方向と交差(本例の場合は、直交)する方向に延在するライン型(ページワイド型)の液体吐出ヘッドであり、インクを吐出可能な複数の吐出口が記録媒体104の幅方向に沿って配列されている。液体吐出ヘッド102に対しては、不図示のインクタンクから、インク流路を構成するインク供給部を通してインクが供給される。記録媒体104を連続的に搬送しつつ、記録データ(吐出データ)に基づいて、液体吐出ヘッド102の吐出口からインクを吐出することにより、記録媒体104に画像が記録される。記録媒体104はカットシートのみに限定されず、長尺なロールシートなどであってもよい。
図1(b)は、記録装置101の制御系の構成例を説明するためのブロック図である。CPU105は、記録装置101の動作の制御処理やデータ処理等を実行する。ROM106には、それらの処理手順等のプログラムが格納され、RAM107は、それらの処理を実行するためのワークエリアなどとして用いられる。液体吐出ヘッド102は、複数の吐出口と、それぞれの吐出口に連通する複数のインク流路と、それぞれのインク流路に配備された複数の吐出エネルギー発生素子と、が備えられており、これらによってインクを吐出可能な複数のノズルが形成されている。これらのノズルは記録素子として機能する。吐出エネルギー発生素子としては、電気熱変換素子やピエゾ素子などを用いることができる。電気熱変換素子を用いた場合には、その電気熱変換素子の発熱によりインク流路内のインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用して吐出口からインクを吐出することができる。液体吐出ヘッド102からのインクの吐出は、ホスト装置108などから入力される画像データに基づいて、CPU105がヘッドドライバ102Aを介して吐出エネルギー発生素子を駆動することにより行われる。CPU105は、モータドライバ103Bを介して、搬送部103を駆動する搬送モータ103Cを駆動する。
(液体吐出ヘッドの構成)
液体吐出ヘッド102は、図2のように、記録素子基板(液体吐出基板)202と、それを支持する支持部材201と、を含み、記録素子基板202には、吐出口203、インク流路、および吐出エネルギー発生素子が備えられている。
図2(a)の液体吐出ヘッド102においては、複数の記録素子基板202が千鳥状に配置されており、複数の吐出口203が矢印Aの搬送方向と交差(本例の場合は、直交)する方向に配列されている。本例の場合、吐出口203は4つ吐出口列を形成するように配列されており、それらの吐出口列は、それぞれ異なるインクを吐出するものであってもよく、同じインクを吐出するものであってもよい。図2(b)の液体吐出ヘッド102においては、複数の記録素子基板202が隣接するように配置されている。図2(c)の液体吐出ヘッド102においては、単独の記録素子基板202が配置されている。液体吐出ヘッド102の構成は、これらの図2(a),(b),(c)の例のみに限定されず任意である、種々の構成を採用することができる。
(インク供給系の構成)
図3は、液体吐出ヘッド102にインクを供給する供給系の構成例を説明するための模式図である。
液体吐出ヘッド102は、その液体接続部302bが共通流路303を介してメインタンク301と流体的に接続される。共通流路303と液体吐出ヘッド102は液体接続部302aにおいて接続されており、メインタンク301内のインクが液体吐出ヘッド102が供給される。液体吐出ヘッド102に供給されたインクは、共通流路303から複数に分岐した分岐流路304を経由して、それらの分岐流路304に対応する記録素子基板202に供給される。
(記録素子基板の構成の説明)
図4(a),(b),(c)は、液体吐出ヘッド102における記録素子基板202の構成例の説明図である。
図4(a)は、本例の記録素子基板202の斜視図であり、基板402上にオリフィスプレート401が接合されている。オリフィスプレート401には複数の吐出口203が設けられており、それらの吐出口203は吐出口列403を形成している。基板402の表面には、半導体加工により、吐出エネルギー発生素子、電気回路、電気配線、および温度センサーなどの電子デバイスが配置可能であり、そのため基板402の材料としては、MEMS加工により流路が形成可能な半導体基板などの材料が望ましい。オリフィスプレート401の材料としては、任意の材料が使用できる。例えば、レーザー加工により吐出口を形成可能な樹脂基板、ダイシングにより吐出口を形成可能な無機プレート、光硬化により吐出口および流路を形成可能な感光樹脂材料、およびMEMS加工により吐出口および流路を形成可能な半導体基板などが使用できる。
図4(b)は、記録素子基板202をオリフィスプレート401側から見た拡大透視図であり、図4(c)は、図4(b)のIVc−IVc線に沿う断面図である。図4(b)および図4(c)を用いて記録素子基板の構成を説明する。基板402とオリフィスプレート401との間の空間には、圧力室404が形成されている。吐出口203と対向する基板402の位置には、吐出口203からインクを吐出させるためのエネルギー発生素子405が配備されている。エネルギー発生素子405として、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などを用いることができる。圧力室404は共通液室407に流体的に接続されて、一連のインク流路(流体流路)を形成する。図4(b)中の上下方向に延在する共通液室407の両側(図4(b),(c)中の左右)には、吐出口列403が共通液室407と平行に形成されており、共通液室407内のインクは、その両側の圧力室404を通って吐出口203から吐出される。
(インク供給系の圧力損失)
一般に、液体吐出ヘッド102からインクを吐出して画像を記録する場合、インクの粘度が高いほど、およびインクの吐出周波数が高いほど、インク供給系における圧力損失が大きくなって、インクの供給不足により記録不良が生じやすくなる。以下、その理由について説明する。
吐出口からインクが吐出される際の圧力損失ΔPは、ΔP=供給流路の粘性抵抗R×インク流量Qによって求められる。粘性抵抗Rは、インクの粘度によって変化し、インクが高粘度になるほど圧力損失が増大する。加えて、吐出口の高密度化のために、吐出口までのインクの供給流路が狭くなっていることも、圧力損失を増大させる要因となる。そのため、メニスカスが落ち込むことで滴形成が乱れるため(ミスト増加、吐出量Vdの変動)、記録不良となる懸念がある。したがって、監視領域の単位で圧力損失を算出することで、局所的な圧力損失の影響を抑制できると考えられる。流量Qは、インクの吐出周波数(単位時間当たりのインクの吐出数に対応)と、吐出口の数と、によって決まる。
本実施形態においては、図6から図10に示すように、並列した分岐流路に対応する記録素子基板の監視領域毎の圧力損失を算出する。しかし、監視領域は本実施形態以外の形態であってもよい。例えば、上流から下流へ循環流が流れるようなメインの共通の供給流路から、複数の記録素子基板202にインクが供給される構成においては、上流側に位置する記録素子基板202よりも、下流側に位置する記録素子基板202の方が、圧力損失が大きい。このような構成において、上流側と下流側の記録素子基板の双方からインクを吐出した場合、下流側の記録素子基板202の方が供給不足を生じやすい。このように記録素子基板毎における圧力損失の影響を加味して、インク流量(液体流量)を制御することにより、複数の記録素子基板における局所的なインクの供給不足を緩和して、正常なインク吐出が可能となる。なお、監視領域におけるデューティーの閾値について、吐出口の配列方向に関しては後述するようにインク流量を算出して決める。また、記録媒体の搬送方向(液体吐出ヘッドとの相対移動方向)は印字画像から圧力損失の影響を判断し、任意で設定できるものとする。
(インク流量の制御例)
図5は、CPU105によって実行されるインク流量の制御処理を説明するためのフローチャートである。
CPU105は、ホスト装置108などから画像データを読み込み(ステップS1)、その後、インク流量の監視領域を指定してから(ステップS2)、その領域内の吐出口の数を算出する(ステップS3)。インク流量の監視領域については後述する。ステップS2,S3の処理は既知のパラメータに基づいて実行することができ、記録動作時毎に、それらの監視領域および吐出口の数を算出する必要はなく、それらを既定値として設計時に記憶しておいてもよい。それぞれの監視領域毎に、それらの監視領域から吐出されるインクの吐出周波数、吐出量、および監視領域内の吐出口数から、それらの監視領域を通過するインクの平均流量Qを算出する(ステップS4)。そして、それらの監視領域を圧力損失部として捉え、それぞれの監視領域毎に、インクの粘性抵抗Rおよび平均流量Qから圧力損失ΔPを算出する(ステップS5)し、それらの圧力損失ΔPが所定値ΔTPを越えるか否かを判定する(ステップS6)。圧力損失ΔPが所定値ΔTPを越えなければ、インク流量の制御はせずに記録動作を実施する(ステップS7)。一方、圧力損失ΔPが所定値ΔTPを越える場合には、インク流量を制御する(ステップS8)。すなわち、インクの吐出周波数を低下させると共に、それに対応するように記録媒体104の搬送速度を低下させることにより、監視領域を通過するインク流量を減少させる。これにより、監視領域における圧力損失ΔPを所定値ΔTP以下に抑えることができる。その後、記録動作を実施する(ステップS7)。
図6は、インク流量の監視領域の説明図である。
図6(a)のように、液体吐出ヘッド102における4つの記録素子基板202を基板C1,C2,C3,C4とする。本実施形態における液体吐出ヘッドは記録媒体の幅に対応した長さを有するページワイド型を想定しているが、説明を簡略化するために4つの記録素子基板を備える構成で説明する。図6(b),(c),(d)は、記録媒体104に記録される記録パターン701を示し、パターン701(C1),701(C2),701(C3),701(C4)は基板C1,C2,C3,C4に対応する。説明の便宜上、基板C1,C2,C3,C4のそれぞれにおいて、記録デューティーが25%のときに圧力損失が所定値ΔTPとなり、平均記録デューティーが25%を超えたときに圧力損失が所定値ΔTPを越えるものとする。記録デューティーは、単位記録領域当たりのインクの付与量に対応し、所謂、ベタ画像を記録するときには記録デューティーが100%となる。
図6(b)は、全ての基板C1,C2,C3,C4の記録デューティーが25%の場合の説明図であり、この場合には、液体吐出ヘッド102全体の平均記録デューティーも25%となり、正常に画像を記録することができる。図6(c)は、基板C1,C2,C3の記録デューティーが0%であり、基板C4の記録デューティーが100%の場合の説明図であり、この場合にも液体吐出ヘッド102全体の平均記録デューティーは25%となる。しかし、基板C4の記録デューティーが100%であるため、基板C4の分岐流路304(4)に多量のインクが流れて圧力損失が増大する。仮に、このような状況において、液体吐出ヘッド102全体の平均記録デューティーが25%を越えたことを条件としてインク流量を制御した場合には、インク流量が制御されず、基板C4にインクの供給不足が生じるおそれがある。さらに、仮に、このようなインクの供給不足を回避しようとした場合には、基板C1,C2,C3,C4の1つでも記録デューティーが25%を越えたときにインク流量を制御する必要がある。そのためには、図6(d)のように、基板C1,C2,C3の記録デューティーが0%、基板C4の記録デューティーが25%の場合をも想定し、基板C4の記録デューティーが25%を越えたときに、インク流量を制御しなければならない。この図6(d)の場合、液体吐出ヘッド102全体の平均記録デューティーは6%となり、この6%にまで平均記録デューティーを抑えなければならず、このことは、インク流量を過剰に抑制することになる。具体的には、インクの吐出周波数および記録媒体の搬送速度を1/4にしなければならない。
本実施形態においては、このような状況を考慮し、インクの分岐流路に対応する記録素子基板毎(液体吐出基板毎)の記録デューティーに基づいて、インク流量を制御する。上記の例においては、基板C1,C2,C3,C4の内の少なくとも1つの記録デューティーが25%を越える場合に、インク流量を制御する。
本実施形態においては、図7(a)のように、基板C1,C2,C3,C4単位の監視領域801(801(1),801(2),801(3),801(4))を設定し、それらの領域毎の圧力損失ΔPを算出する。一般的に圧力損失ΔPは、流抵抗をR[Pa・s/m3]、流量をQ[m3/s]とした場合に、下式(1)によって表される。
ΔP=R×Q ・・・ (1)
流量Qは、吐出口数をn、吐出量をVd[m3]、吐出周波数fop[Hz]とした場合に、下式(2)によって表される。
Q=n×Vd×fop ・・・ (2)
本実施形態においては、監視領域801(801(1),801(2),801(3),801(4))毎に、圧力損失ΔPを算出する。つまり、図7(b)のように、共通流路303から分岐した4つの分岐流路304(304(1),304(2),304(3),304(4))からインクが供給される基板C1,C2,C3,C4毎に、圧力損失ΔPを算出する。メインタンク301と共通流路303とを接続する接続部302aから、共通流路303と液体吐出ヘッド102とを接続する接続部302bと、の間の流抵抗をR0、流量をQ0とする。まず、分岐流路304(1)の流抵抗をR1、流量をQ1とした場合、基板C1の圧力損失ΔP1は、下式(3)によって表される。
ΔP1=R0×Q0+R1×Q1 ・・・ (3)
同様に、基板C2,C3,C4の圧力損失ΔP2,ΔP3,ΔP4は、下式(4),(5),(6)によって表される。
ΔP2=R0×Q0+R2×Q2 ・・・ (4)
ΔP3=R0×Q0+R3×Q3 ・・・ (5)
ΔP4=R0×Q0+R4×Q4 ・・・ (6)
基板C1,C2,C3,C4のそれぞれにおいて、記録デューティーが25%のときに圧力損失が所定値ΔTPとなり、平均記録デューティーが25%を超えたときに圧力損失が所定値ΔTPを越えるものとする。図6(b)の記録パターン701を記録する場合には、基板C1,C2,C3,C4の記録デューティーが全て25%を超えないため、インクの吐出周波数および記録媒体の搬送速度を低下させる必要がない。つまり、記録速度を低下させることなく画像を記録することができる。また図6(c)の記録パターン701を記録する場合には、基板C4の記録デューティーが25%を超えるため、インクの吐出周波数および記録媒体の搬送速度を低下させて、インク流量を少なくする。これにより、圧力損失を抑えて、インクの供給不足の発生を抑制する。
複数の記録素子基板202にインクを供給するために、基板共通流路303を複数の分岐流路304に分岐する形態は、1つの分岐流路304が1つの記録素子基板202に対応する形態のみに限定されない。
例えば、図8(a),(b)のように、1つの分岐経路が複数の記録素子基板202に対応する形態であってもよい。図8(a),(b)においては、分岐経路304(1)から基板C1,C2にインクが供給されて、それらの基板C1,C2が監視領域802(1)となる。また、分岐経路304(2)から基板C3,C4にインクが供給されて、それの基板C3,C4が監視領域802(2)となる。また、図9(a),(b)のように、1つの分岐経路が1つの記録素子基板202における1つの吐出口列と対応する形態であってもよい。図9(a),(b)においては、分岐経路304(1)から、基板C1における一方の吐出口列403に対してインクが供給されて、その吐出口列403が監視領域803(1)となる。また、分岐経路304(2)から基板C1における他方の吐出口列403に対してインクが供給されて、その吐出口列403が監視領域803(2)となる。図9(a),(b)における他の分岐流路と監視領域との関係も同様である。また、図10(a),(b)のように、1つの分岐経路304が1つの記録素子基板202における複数の吐出口203と対応する形態としてもよく、この場合には、同じ分岐経路304からインクが供給される吐出口203が監視領域804となる。図7の場合と同様に、これらの図8,図9,図10の場合にも監視領域毎に圧力損失を算出し、いずれか1つの監視領域における圧力損失が閾値を越えるときに、インクの吐出周波数および記録媒体の搬送速度を低下させて、インク流量を少なくすることができる。
このように本実施形態においては、共通流路から分岐した分岐流路を通して、それぞれの記録素子基板にインクを供給する構成において、画像データに基づいて、分岐流路に対応する記録素子基板の監視領域毎の圧力損失を算出する。そして、監視領域毎の圧力損失が所定の閾値を超えた場合には、インクの吐出周波数と記録媒体の搬送速度とを関連的に低下させることにより、液体吐出ヘッドにおける局所的な圧力損失を抑制することができる。つまり、液体吐出ヘッドからインクの単位時間当たりの吐出量を低下させることにより、インクを確実に供給することができる。インクの単位時間当たりの吐出量は、単位時間当たりのインクの吐出数に対応する吐出周波数の他、インク滴の大きさを変更することによっても制御することができる。監視領域毎のインク流量が所定量以下となるように、インクの単位時間当たりの吐出量が制御できればよい。本発明は上述した実施形態に限られず、例えば、共通流路から分岐した複数の分岐流路を有する構成において、監視領域を、複数の分岐流路毎に1つずつ、もしくは分岐流路毎に複数設け、監視領域毎の圧力損失を算出する形態にも適用可能である。
(第2の実施形態)
第1の実施形態においては、図4のように、共通液室407の両側に吐出口203が配列されて、共通流路から分岐する分岐流路を通して各記録素子基板にインクを供給する構成において、分岐流路に対応する記録素子基板の監視領域毎に圧力損失を算出した。本実施形態は、吐出口にインクを供給するための複数の開口が液体吐出ヘッドに形成された構成において、その開口単位で圧力損失を算出する。
また、本実施形態の記録装置は、図11(a)のようなシリアルスキャン方式の記録装置である。液体吐出ヘッド102は、キャリッジ54に搭載されて、不図示の移動機構によってキャリッジ54と共に矢印Xの主走査方向に往復移動される。記録媒体104は、搬送ローラや搬送ベルトを用いる搬送機構部103によって、主走査方向と交差(本例の場合は、直交)する矢印Yの副走査方向に搬送される。本例の搬送部103は、搬送ローラを用いて記録媒体104を搬送するように構成されている。キャリッジ54と共に液体吐出ヘッド102を主走査方向に移動させつつ、液体吐出ヘッド102からインクを吐出する動作と、記録媒体104を副走査方向に搬送する搬送動作と、を交互に繰り返すことにより、記録媒体104上に画像を順次記録される。
(液体吐出ヘッドの構成)
図11(b)は、本実施形態における液体吐出ヘッド102の要部の斜視図である。本例の液体吐出ヘッド102は、単独の記録素子基板202が支持部材201に支持される。記録素子基板202における複数の吐出口203は、主走査方向と交差(本例の場合は、直交)する方向に延在する吐出口列を形成するように配列されている。記録素子基板202の形態は本例のみに限定されず、例えば、複数の記録素子基板202が配置された形態であってもよい。
(インク供給系の構成)
図12は、本実施形態における液体吐出ヘッド102にインクを供給するためのインク供給系の模式図である。液体吐出ヘッド102に対しては、共通流路303を介してメインタンク301からインクが供給される。共通流路303とメインタンク301は液体接続部302aによって接続され、共通流路203と液体吐出ヘッド102は液体接続部302bによって接続されている。液体吐出ヘッド102に供給されたインクは、共通流路303から分岐した流入側開口1401(1401(1),1401(2),1401(3))を経由して、それらの開口1401に対応する吐出口に供給される。流入側開口1401については後述する。
(記録素子基板の構成)
図13は、液体吐出ヘッド102における記録素子基板202の構成例の説明図である。
本例の記録素子基板202においては、図13(a)のように、カバープレート1501と基板402が接合され、さらに、基板402とオリフィスプレート401が接合されており、オリフィスプレート401には複数の吐出口203が形成されている。複数の吐出口203は、矢印Xの主走査方向と交差(本例の場合は、直交)する吐出口列403を形成するように配列されている。基板402の表面には、半導体工程により、吐出エネルギー発生素子、電気回路、電気配線、温度センサーなどの電子デバイスが配置可能であり、基板402の材料としては、MEMS加工により流路を形成できるSi等の半導体基板などが望ましい。オリフィスプレート401の材料としては、任意のものが使用できる。例えば、レーザー加工により吐出口が形成可能な樹脂基板、ダイシングにより吐出口が形成可能な無機プレート、光硬化により吐出口および流路が形成可能な感光樹脂材料、またはMEMS加工により吐出口および流路が形成可能な半導体基板などが使用できる。
図13(b)は、記録素子基板202をオリフィスプレート401側から見た拡大透視図である。基板402とオリフィスプレート401との間の空間に、圧力室404が形成されている。吐出口203に対向する基板402の位置には、吐出口203からインクを吐出するための吐出エネルギー発生素子405が配備されている。吐出エネルギー発生素子405としては、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などを用いることができる。圧力室404には、垂直供給口1502を通してインクが供給される。図13(c)は、図13(b)の記録素子基板202をXIII−XIII線に沿って断面した断面図である。垂直供給口1502は基板402を貫通し、垂直供給口1502に連通している流入側裏面流路1503は、カバープレート1501の流入側開口1401と流体的に接続している。
(インク流量の制御例)
本実施形態におけるインク流量の監視領域は、図12のように、共通流路303から分岐した開口1401(1401(1),1401(2),1401(3))に対応する吐出口201を含む領域805(805(1),805(2),805(3))である。監視領域805内の吐出口201に対しては、主として、その監視領域805に対応する開口1401からインクが供給されることになる。
図14は、本実施形態のインク流量の制御処理を説明するためのフローチャートである。第1の実施形態と同様に、画像データに基づいて監視領域805毎の圧力損失ΔPを算出し(ステップS1からS5)、それらの圧力損失ΔPが所定値ΔTPを越えるか否かを判定する(ステップS6)。圧力損失ΔPが所定値ΔTPを越えなければ、インク流量の制御はせずに記録動作を実施する(ステップS7)。一方、圧力損失ΔPが所定値ΔTPを越える場合には、インク流量を制御する(ステップS11)。本実施形態においては、インクの吐出周波数を低下させると共に、それに対応するようにキャリッジ54の移動速度を低下させることにより、監視領域を通過するインク流量を減少させる。さらに、記録媒体104の搬送速度を低下させてもよい。これにより、監視領域における圧力損失ΔPを所定値ΔTP以下に抑えることができる。その後、記録動作を実施する(ステップS7)。
本実施形態における液体吐出ヘッドは、図12および図13のような構成のみに限定されず、例えば、第1の実施形態のように複数の記録素子基板を備える液体吐出ヘッドなどであってもよく、このような液体吐出ヘッドに対しても本実施形態は適用可能である。
このように本実施形態における液体吐出ヘッドは、記録素子基板が単独もしくは複数配備されて、垂直供給口1502に連通している流入側裏面流路1503と、カバープレート1501の流入側開口1401と、が連通されている。このような液体吐出ヘッドにおいて、共通流路303から分岐した流入側開口1401に対応する監視領域805毎の圧力損失ΔPを算出する。そして、監視領域805毎の圧力損失ΔPが所定の閾値ΔTPを超えた場合には、インクの吐出周波数およびキャリッジの移動速度を低下させることにより、液体吐出ヘッドにおける局所的な圧力損失を抑制することができる。その場合には、記録媒体の搬送速度をも低下させてもよい。
また本発明は、開口位置を境とした監視領域毎の圧力損失を算出する構成や、開口位置を境とした領域内を更に複数に分割した監視領域毎の圧力損失を算出する構成にも適用可能である。
(第3の実施形態)
第2の実施形態の構成例においては、液体吐出ヘッドにインクを供給する分岐流路に対応する監視領域の単位で圧力損失を算出した。本実施形態では、流入側開口から吐出口を通して回収側開口へインクが流れる、所謂、循環構成において、その流入側開口および回収側開口毎に対応する監視領域の単位で圧力損失を算出する。
(インク供給系の構成)
図15は、本実施形態における液体吐出ヘッド102にインクを供給するためのインク供給系の模式図である。インクタンク1601内のインクは、インク供給流路1602を通して液体吐出ヘッド102に供給される。液体吐出ヘッド102に供給されたインクの一部は圧力室404に供給され、一部の液体は吐出口203から吐出され、他のインクは、インク回収流路1607通してインクタンク1601に回収される。インク供給流路1602に備わる負圧調整装置1603と、インク回収流路1607に備わる定流量ポンプ1606と、によって、インクタンク1601と液体吐出ヘッド102との間にインクの循環流を生じさせつつ、吐出口203におけるインクの圧力を調整する。インクの循環流を発生させる定流量ポンプ1606および負圧調整装置1603は、液体吐出ヘッド102と一体的に設けることができ、あるいは液体吐出ヘッド102の外部に取り付けて、供給チューブ等を介して液体吐出ヘッド102に接続さえることもできる。また、記録素子基板の内部に、マイクロポンプのようなMEMS素子として組み込むことも可能である。
(記録素子基板の構成)
図16は、液体吐出ヘッド102における記録素子基板202の構成例の説明図であり、記録素子基板202は第2の実施形態と同様に構成されている。
図16(b)は、記録素子基板202をオリフィスプレート401側から見た拡大透視図である。基板402とオリフィスプレート401との間の空間に、圧力室404が形成される。吐出口203と対向する圧力室404の内部には、吐出口203からインクを吐出するための吐出エネルギー発生素子405が配備されている。吐出エネルギー発生素子405としては、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などを用いることができる。圧力室404には、垂直供給口1502を通してインクが供給される。図16(c)は、図16(b)の記録素子基板202をXVIc−XVIc線に沿って断面した断面図である。圧力室404には、流入流路1604と回収流路1605とで流体的に接続されており、それらは一連の流路を形成する。したがってインクは、流入流路1604から圧力室404を通って回収流路1605の方向に流れる。垂直供給口1502および垂直回収口1701は基板402を貫通して、それぞれ流入流路1604および液体回収流路1605に連通する。また、垂直供給口1502に連通している流入側裏面流路1503、および垂直回収口1701に連通している回収側裏面流路1702は、それぞれカバープレート1501の流入側開口1401、および回収側開口1703に連通している。
本実施形態においてはインクの循環経路が形成されており、流入流路1604から回収流路1605に向かうインクの流れが生じている状態において、吐出エネルギー発生素子405を駆動することにより、吐出口203からインクが吐出される。流入流路1604から回収流路1605に向かうインクの流れが生じている状態において、インクの吐出動作を行ってもインク滴の着弾精度に及ぼす影響は小さい。
(インク流量の制御例)
本実施形態における流入側開口から吐出口を通って回収側開口へインクが流れる構成において、記録素子基板の端部に位置する吐出口で供給不足が懸念される理由について、以下説明する。図28(a)は、図16(a)に示す記録素子基板202の平面図、図28(b)は、図28(a)のA部分の拡大図、図28(c)は、図28(a)の記録素子基板202の裏面図である。図29は、図28(a)のXXIX−XXIXに沿う記録素子基板10およびカバープレート20の断面図である。図29に示すように、カバープレート20の開口21の位置から、液体供給路18、圧力室23、および液体回収路19を介してインクが循環するように構成されている。吐出口13の配列方向における端部に位置する開口21から、その端部に位置する吐出口13までの、液体供給路18もしくは液体回収路19の流路長は、長くなるため、それに応じて圧力損失が増加する。加えて、複数の吐出口13からインクを吐出させる場合、液体供給路18もしくは液体回収路19内のインク流量が増加することも圧力損失を増加させる要因となる。
第2の実施形態と同様に、図14のように監視領域毎の圧力損失に基づいてインクの流量を制御することにより、圧力損失によるインク供給不足を抑制することができる。
本実施形態においては、図17のように、共通流路である流入側裏面流路1503から流入側開口1401(1401(1),1401(2),1401(3))が分岐している。また、共通流路である回収側裏面流路1702から回収側裏面開口1703(1703(1),1703(2)が分岐している。図16で説明したように、記録素子基板202の裏面に設けられたカバープレート1501に形成された複数の流入側開口1401から供給されたインクは共通流路である流入側裏面流路1503を介して、複数の圧力室404へと供給される。その後、インクは共通流路である回収側裏面流路1702を経由して回収側裏面開口1703へと供給される。本実施形態における監視領域は、流入側開口1401と回収側裏面開口1703のそれぞれに対応するノズル列403の領域806(806(1)から806(5))である。
これらの監視領域806毎に圧力損失が算出される。その際には、吐出口203毎におけるインクの循環流量Q′を考慮し、流量Qは下式(7)によって表される。ここで、監視領域における全ノズル数をn‘とする。
Q=(n×Vd×fop)+(n‘×Q’) ・・・ (7)
ただし、前述したように、インクの循環流量Q’は、インク吐出動作時にインク滴の着弾精度に及ぼす影響は少ない。
流入側開口1401と回収側裏面開口1703のそれぞれに対応する監視領域806毎の圧力損出の算出方法は、第1の実施形態と同様である。液体吐出ヘッドは、インクを循環可能な形態であればよく、図16および図17のような構成のみに限定されない。このように本実施形態における液体吐出ヘッドは、記録素子基板が単独もしくは複数配備されて、垂直供給口1502に流入側裏面流路1503が連通し、垂直回収口1701に回収側裏面流路1702が連通している。それらの流入側裏面流路1503および回収側裏面流路1702は、それぞれカバープレート1501の流入側開口1401および回収側開口1703に連通することによって、インクの循環流路を形成する。このような液体吐出ヘッドにおいて、流入側開口1401および回収側開口1703に対応する監視領域806毎に圧力損失を算出し、その圧力損失に基づいてインク流量を制御する。これにより、液体吐出ヘッドにおける局所的な圧力損失を抑制して、インクの正常な吐出を可能とする。
また、本発明は上述した例に限られず、例えば、開口位置を境とした監視領域毎の圧力損失を算出する構成や、開口位置を境とした領域内を更に複数に分割した監視領域毎の圧力損失を算出する構成が挙げられる。特に、開口位置を境とした領域内を更に分割した監視領域とすることで、より詳細な圧力損失の抑制が可能となる。
(第4の実施形態)
図18から図30は、本発明の第4の実施形態の説明図であり、第3の実施形態と同様のインクの循環経路が形成されている。第3の実施形態と同様に、監視領域を設定して、監視領域毎の圧力損失に基づいてインク流量を制御することにより、液体吐出ヘッドにおける局所的な圧力損失を抑制することができる。
(インクジェット記録装置の説明)
図18は、本発明の液体を吐出する液体吐出装置、特にはインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置(以下、記録装置とも称す)1000の概略構成を示した図である。記録装置1000は、記録媒体2を搬送する搬送部1と、記録媒体2の搬送方向と略直交して配置されるライン型(ページワイド型)の液体吐出ヘッド3とを備え、複数の記録媒体2を連続もしくは間欠に搬送しながら1パスで連続記録を行うライン型記録装置である。液体吐出ヘッド3は循環経路内の圧力(負圧)を制御する負圧制御ユニット230と、負圧制御ユニット230と流体連通した液体供給ユニット220と、液体供給ユニット220へのインクの供給および回収口となる液体接続部111と、筺体80とを備えている。記録媒体2は、カット紙に限らず、連続したロール媒体であってもよい。液体吐出ヘッド3は、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックKのインクによるフルカラー記録が可能であり、液体を液体吐出ヘッド3へ供給する供給路である液体供給手段、メインタンクおよびバッファタンク(後述する図19参照)が流体的に接続される。また、液体吐出ヘッド3には、液体吐出ヘッド3へ電力および吐出制御信号を伝送する電気制御部が電気的に接続される。液体吐出ヘッド3内における液体経路および電気信号経路については後述する。
記録装置1000は、インク等の液体を後述するタンクと液体吐出ヘッド3との間で循環させる形態のインクジェット記録装置である。その循環の形態としては、液体吐出ヘッド3の下流側に配備した2つの循環ポンプ(高圧用、低圧用)によって循環させる第1循環形態と、液体吐出ヘッド3の上流側に配備した2つの循環ポンプ(高圧用、低圧用)によって循環させる第2循環形態とがある。以下、この循環の第1循環形態と第2循環形態とについて説明する。
(第1循環形態の説明)
図19は、本実施形態の記録装置1000に適用される循環経路の第1循環形態を示す模式図である。液体吐出ヘッド3は、第1循環ポンプ(高圧側)1001、第1循環ポンプ(低圧側)1002およびバッファタンク1003等に流体的に接続されている。なお図19では、説明を簡略化するため、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックKのインクの内の1色のインクが流動する経路のみを示しているが、実際には4色分の循環経路が、液体吐出ヘッド3および記録装置本体に設けられる。
第1循環形態では、メインタンク1006内のインクは、補充ポンプ1005によってバッファタンク1003に供給され、その後、第2循環ポンプ1004によって液体接続部111を介して液体吐出ヘッド3の液体供給ユニット220に供給される。その後、液体供給ユニット220に接続された負圧制御ユニット230で異なる2つの負圧(高圧、低圧)に調整されたインクは、高圧側と低圧側の2つの流路に分かれて循環する。液体吐出ヘッド3内のインクは、第1循環ポンプ(高圧側)1001及び第1循環ポンプ(低圧側)1002の作用により液体吐出ヘッド内を循環し、液体接続部111を介して液体吐出ヘッド3から回収されてバッファタンク1003に戻る。
サブタンクであるバッファタンク1003は、メインタンク1006と接続され、タンク内部と外部とを連通する不図示の大気連通口を有し、インク中の気泡を外部に回収することが可能である。バッファタンク1003とメインタンク1006との間には、補充ポンプ1005が設けられている。補充ポンプ1005は、インクを吐出しての記録や吸引回復等、液体吐出ヘッド3の吐出口からインクを吐出(排出)することによって消費されたインクをメインタンク1006からバッファタンク1003へ移送する。
2つの第1循環ポンプ1001、1002は、液体吐出ヘッド3の液体接続部111から液体を引き出してバッファタンク1003へ流す。第1循環ポンプとしては、定量的な送液能力を有する容積型ポンプが好ましい。具体的にはチューブポンプ、ギアポンプ、ダイヤフラムポンプ、シリンジポンプ等が挙げられるが、例えば一般的な定流量弁やリリーフ弁をポンプ出口に配して一定流量を確保する形態であってもよい。液体吐出ヘッド3の駆動時には、第1循環ポンプ(高圧側)1001および第1循環ポンプ(低圧側)1002を稼働することによって、それぞれ共通供給経路211、共通回収流路212内を所定流量のインクが流れる。このようにインクを流すことで、記録時の液体吐出ヘッド3の温度を最適の温度に維持している。液体吐出ヘッド3駆動時の所定流量は、液体吐出ヘッド3内の各記録素子基板10間の温度差が記録画質に影響しない程度に維持可能である流量以上に設定することが好ましい。もっとも、あまりに大きな流量に設定すると、液体吐出ユニット300内の流路の圧力損失の影響により、各記録素子基板10で負圧差が大きくなり画像の濃度ムラが生じてしまう。そのため、各記録素子基板10間の温度差と負圧差を考慮しながら流量を設定することが好ましい。
負圧制御ユニット230は、第2循環ポンプ1004と液体吐出ユニット300との間の経路に設けられている。この負圧制御ユニット230は、単位面積あたりの吐出量の差等によって循環系におけるインクの流量が変動した場合でも、負圧制御ユニット230よりも下流側(即ち液体吐出ユニット300側)の圧力を予め設定した一定圧力に維持するように動作する。負圧制御ユニット230を構成する2つの圧力調整機構としては、負圧制御ユニット230よりも下流の圧力を、所望の設定圧を中心として一定の範囲以下の変動で制御できるものであれば、どのような機構を用いてもよい。一例としては所謂「減圧レギュレータ」と同様の機構を採用することができる。本実施形態における循環流路では、第2循環ポンプ1004によって、液体供給ユニット220を介して負圧制御ユニット230の上流側を加圧している。このようにすると、バッファタンク1003の液体吐出ヘッド3に対する水頭圧の影響を抑制できるので、記録装置1000におけるバッファタンク1003のレイアウトの自由度を広げることができる。
第2循環ポンプ1004としては、液体吐出ヘッド3の駆動時に使用するインク循環流量の範囲において、一定圧以上の揚程圧を有するものであればよく、ターボ型ポンプや容積型ポンプなどを使用できる。具体的には、ダイヤフラムポンプ等が適用可能である。また第2循環ポンプ1004の代わりに、例えば負圧制御ユニット230に対してある一定の水頭差をもって配置された水頭タンクでも適用可能である。図19に示したように負圧制御ユニット230は、それぞれが互いに異なる制御圧が設定された2つの圧力調整機構を備えている。2つの負圧調整機構の内、相対的に高圧設定側(図19では、Hと記載)、相対的に低圧側(図19では、Lと記載)は、それぞれ、液体供給ユニット220内を経由して、液体吐出ユニット300内の共通供給経路211、共通回収流路212に接続されている。液体吐出ユニット300には、共通供給経路211、共通回収流路212、各記録素子基板と連通する個別流路215(個別供給流路213、個別回収流路214)が設けられている。共通供給流路211には圧力調整機構Hが、共通回収流路212には圧力調整機構Lが接続されており、2つの共通流路間に差圧が生じている。個別供給流路213および個別回収流路214は、共通供給経路211および共通回収流路212と連通しているので、液体の一部は、共通供給流路211から記録素子基板10の内部流路を通過して共通回収流路212へと流れる(図19中の矢印)。
このようにして、液体吐出ユニット300では、共通供給流路211および共通回収流路212内をそれぞれ通過するように液体を流しつつ、一部の液体が各記録素子基板10内を通過するような流れが発生する。このため、各記録素子基板10で発生する熱を共通供給流路211および共通回収流路212を流れるインクによって記録素子基板10の外部へ回収することができる。またこのような構成により、液体吐出ヘッド3による記録を行っている際に、吐出を行っていない吐出口や圧力室においてもインクの流れを生じさせることができる。これによって、吐出口内で増粘したインクの粘度を低下させることで、インクの増粘を抑制することができる。また、増粘したインクやインク中の異物を共通回収流路212へと回収することができる。このため、本実施形態の液体吐出ヘッド3は、高速で高画質な記録が可能となる。
(第2循環形態の説明)
図20は、本実施形態の記録装置に適用される循環経路のうち、上述した第1循環形態とは異なる循環形態である第2循環形態を示す模式図である。前述の第1循環形態との主な相違点は、負圧制御ユニット230を構成する2つの圧力調整機構が共に、負圧制御ユニット230よりも上流側の圧力を、所望の設定圧を中心として一定範囲内の変動で制御する点である。また、第1循環形態との相違点として、第2循環ポンプ1004が負圧制御ユニット230の下流側を減圧する負圧源として作用する点がある。更に、第1循環ポンプ(高圧側)1001および第1循環ポンプ(低圧側)1002が液体吐出ヘッド3の上流側に配置され、負圧制御ユニット230が液体吐出ヘッド3の下流側に配置されている点も相違する点である。
第2循環形態では、メインタンク1006内のインクは、補充ポンプ1005によってバッファタンク1003に供給される。その後インクは2つの流路に分けられ、液体吐出ヘッド3に設けられた負圧制御ユニット230の作用で高圧側と低圧側の2つの流路で循環する。高圧側と低圧側の2つの流路に分けられたインクは、第1循環ポンプ(高圧側)1001及び第1循環ポンプ(低圧側)1002の作用で液体吐出ヘッド3に液体接続部111を介して液体吐出ヘッド3に供給される。その後、第1循環ポンプ(高圧側)1001及び第1循環ポンプ(低圧側)1002の作用で液体吐出ヘッド内を循環したインクは、負圧制御ユニット230を経て、液体接続部111を介して液体吐出ヘッド3から回収される。回収されたインクは、第2循環ポンプ1004によってバッファタンク1003に戻される。
第2循環形態での負圧制御ユニット230は、単位面積あたりの吐出量の変化によって生じる流量の変動があっても、負圧制御ユニット230の上流側(即ち液体吐出ユニット300側)の圧力変動を予め設定された圧力を中心として一定範囲内に安定させる。本実施形態の循環流路では、第2循環ポンプ1004によって、液体供給ユニット220を介して負圧制御ユニット230の下流側を減圧している。このようにすると液体吐出ヘッド3に対するバッファタンク1003の水頭圧の影響を抑制できるので、記録装置1000におけるバッファタンク1003のレイアウトの選択幅を広げることができる。第2循環ポンプ1004の代わりに、例えば負圧制御ユニット230に対して所定の水頭差をもって配置された水頭タンクであっても適用可能である。第2循環形態は第1循環形態と同様に、負圧制御ユニット230は、それぞれが互いに異なる制御圧が設定された2つの圧力調整機構を備えている。2つの負圧調整機構の内、高圧設定側(図20では、Hと記載)、低圧設定側(図20では、Lと記載)はそれぞれ、液体供給ユニット220内を経由して、液体吐出ユニット300内の共通供給経路211および共通回収流路212に接続されている。2つの負圧調整機構により、共通供給流路211の圧力を共通回収流路212の圧力より相対的に高くすることで、共通供給流路211から個別流路213および各記録素子基板10の内部流路を介して共通回収流路212へと流れるインク流れが発生する。
このような第2循環形態では、液体吐出ユニット300内には第1循環形態と同様のインク流れ状態が得られるが、第1循環形態の場合とは異なる2つの利点がある。1つ目の利点は、第2循環形態では負圧制御ユニット230が液体吐出ヘッド3の下流側に配置されているので、負圧制御ユニット230から発生するゴミや異物が液体吐出ヘッド3へ流入する懸念が少ないことである。2つ目の利点は、第2循環形態では、バッファタンク1003から液体吐出ヘッド3へ供給する必要流量の最大値が、第1循環形態の場合よりも少なくて済むことである。その理由は次の通りである。
記録待機時に循環している場合の、共通供給流路211および共通回収流路212内の流量の合計を流量Aとする。流量Aの値は、記録待機中に液体吐出ヘッド3の温度調整にあたり、液体吐出ユニット300内の温度差を所望の範囲内にするために必要な最小限の流量として定義される。また液体吐出ユニット300の全ての吐出口からインクを吐出する場合(全吐出時)の吐出流量を流量F(1吐出口当りの吐出量×単位時間当たりの吐出周波数×吐出口数)と定義する。
図21は、第1循環形態と第2循環形態とにおける、液体吐出ヘッド3へのインクの流入量の違いを示した概略図である。図21(a)は、第1循環形態における待機時を示しており、図21(b)は、第1循環形態における全吐出時を示している。図21(c)から図21(f)は第2循環形態を示しており、図21(c)、(d)が流量F<流量Aの場合で、図21(e)、(f)が流量F>流量Aの場合であり、それぞれ、待機時と全吐出時の流量を示している。流量F=流量Aの場合は、図21(c)、(d)または図21(e)、(f)のいずれであってもよい。
定量的な送液能力を有する第1循環ポンプ(高圧側)1001及び第1循環ポンプ(低圧側)1002が液体吐出ヘッド3の下流側に配置されている第1循環形態の場合(図21(a)、(b))、それらのポンプ1001,1002の合計設定流量はAとなる。この流量Aによって、待機時の液体吐出ユニット300内の温度管理が可能となる。液体吐出ヘッド3で全吐出が行われる場合には、ポンプ1001及びポンプ1002の合計設定流量は流量Aのままである。しかし、液体吐出ヘッド3での吐出によって生じる負圧が作用して、液体吐出ヘッド3へ供給される最大流量は、合計設定流量Aに全吐出による消費分(流量F)が加算される。よって、液体吐出ヘッド3への供給量の最大値は、流量Fが流量Aに加算されるため流量A+流量Fとなる(図21(b))。
一方で、第1循環ポンプ1001および第1循環ポンプ1002が液体吐出ヘッド3の上流側に配置されている第2循環形態の場合(図21(c)から図21(f))は、記録待機時に必要な液体吐出ヘッド3への供給量は、第1循環形態と同様に流量Aである。従って、第1循環ポンプ1001および第1循環ポンプ1002が液体吐出ヘッド3の上流側に配置されている第2循環形態では、流量Fよりも流量Aが多い場合(図21(c)、(d))には、全吐出時でも液体吐出ヘッド3への供給量は流量Aで十分である。その際、液体吐出ヘッド3からの回収流量は、流量A−流量Fとなる(図21(d))。しかし、流量Aよりも流量Fが多い場合(図21(e)、(f))には、全吐出時には液体吐出ヘッド3への供給流量を流量Aとすると流量が足りなくなってしまう。そのため、流量Aよりも流量Fが多い場合には、液体吐出ヘッド3への供給量を流量Fとする必要がある。その際、全吐出が行われると、液体吐出ヘッド3では流量Fが消費されるため、液体吐出ヘッド3からの回収流量は、ほとんど回収されない状態となる(図21(f))。なお、流量Aよりも流量Fが多い場合で、吐出は行うが全吐出ではない場合には、流量Fから吐出で消費された分が引かれた量が液体吐出ヘッド3から回収される。
このように、第2循環形態の場合、第1循環ポンプ1001および第1循環ポンプ1002の設定流量の合計値、即ち必要供給流量の最大値は、流量Aまたは流量Fの大きい方の値となる。このため、同一構成の液体吐出ユニット300を使用する限り、第2循環形態における必要供給量の最大値(流量Aまたは流量F)は、第1循環形態における必要供給流量の最大値(流量A+流量F)よりも小さくなる。
そのため第2循環形態の場合、適用可能な循環ポンプの自由度が高まり、例えば構成の簡便な低コストの循環ポンプを使用したり、本体側経路に設置される冷却器(不図示)の負荷を低減したりすることができ、記録装置のコストを低減できるという利点がある。この利点は、流量Aまたは流量Fの値が比較的大きくなるラインヘッドであるほど大きくなり、ラインヘッドの中でも長手方向の長さが長いラインヘッドほど有益である。
しかしながら一方で、第1循環形態の方が、第2循環形態に対して有利になる点もある。すなわち第2循環形態では、記録待機時に液体吐出ユニット300内を流れる流量が最大であるため、単位面積当たりの吐出量が少ない画像(以下、低Duty画像ともいう)であるほど、各吐出口に高い負圧が印加された状態となる。このため、流路幅が狭く高い負圧である場合、ムラの見えやすい低Duty画像で吐出口に高い負圧が印加されるため、インクの主滴に伴って吐出される所謂サテライト滴が多く発生して記録品位が低下する虞がある。
一方、第1循環形態の場合、高い負圧が吐出口に印加されるのは単位面積当たりの吐出量が多い画像(以下、高Duty画像ともいう)形成時であるため、仮にサテライト滴が発生しても視認されにくく、画像への影響は小さいという利点がある。これら2つの循環形態の選択は、液体吐出ヘッドおよび記録装置本体の仕様(吐出流量F、最小循環流量A、およびヘッド内流路抵抗)に照らして好ましい選択を採ることができる。
(液体吐出ヘッド構成の説明)
本実施形態に係る液体吐出ヘッド3の構成について説明する。図22(a)および図22(b)は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド3を示した斜視図である。液体吐出ヘッド3は、1つの記録素子基板310でシアンC/マゼンタM/イエローY/ブラックKの4色のインクを吐出可能な記録素子基板10を直線状に15個配列(インラインに配置)されるライン型の液体吐出ヘッドである。図22(a)に示すように液体吐出ヘッド3は、各記録素子基板310と、フレキシブル配線基板40および電気配線基板90を介して電気的に接続された信号入力端子91と電力供給端子92を備える。信号入力端子91および電力供給端子92は、記録装置1000の制御部と電気的に接続され、それぞれ吐出駆動信号および吐出に必要な電力を記録素子基板310に供給する。電気配線基板90内の電気回路によって配線を集約することで、信号出力端子91および電力供給端子92の数を記録素子基板310の数に比べて少なくすることができる。これにより、記録装置1000に対して液体吐出ヘッド3を組み付ける時または液体吐出ヘッドの交換時に取り外しが必要な電気接続部数が少なくて済む。図22(b)に示すように、液体吐出ヘッド3の両端部に設けられた液体接続部111は、記録装置1000の液体供給系と接続される。これによりシアンC/マゼンタM/イエローY/ブラックK4色のインクが記録装置1000の供給系から液体吐出ヘッド3に供給され、また液体吐出ヘッド3内を通ったインクが記録装置1000の供給系へ回収されるようになっている。このように各色のインクは、記録装置1000の経路と液体吐出ヘッド3の経路を介して循環可能である。
図23は、液体吐出ヘッド3を構成する各部品またはユニットを示した分解斜視図である。液体吐出ユニット300、液体供給ユニット220および電気配線基板90が筺体80に取り付けられている。液体供給ユニット220には液体接続部111(図20参照)が設けられ、液体供給ユニット220の内部には、供給されるインク中の異物を取り除くため、液体接続部111の各開口と連通する各色別のフィルタ221(図19、図20参照)が設けられている。2つの液体供給ユニット220は、それぞれに2色分ずつのフィルタ221が設けられている。図19のような第1循環形態において、フィルタ221を通過した液体は、それぞれの色に対応して液体供給ユニット220上に配置された負圧制御ユニット230へ供給される。負圧制御ユニット230は、各色別の圧力調整弁からなるユニットであり、それぞれの内部に備わる弁やバネ部材などの働きで液体の流量の変動に伴って生じる記録装置1000の供給系内(液体吐出ヘッド3の上流側の供給系)の圧力損失変化を大幅に減衰させる。これによって負圧制御ユニット230は、負圧制御ユニットよりも下流側(液体吐出ユニット300側)の負圧変化をある一定範囲内で安定化させることが可能である。各色の負圧制御ユニット230内には、図19で記述したように各色2つの圧力調整弁が内蔵されている。2つの圧力調整弁は、それぞれ異なる制御圧力に設定され、高圧側が液体吐出ユニット300内の共通供給流路211(図19参照)、低圧側が共通回収流路212(図19参照)と液体供給ユニット220を介して連通している。
筐体80は、液体吐出ユニット支持部81および電気配線基板支持部82とから構成され、液体吐出ユニット300および電気配線基板90を支持するとともに、液体吐出ヘッド3の剛性を確保している。電気配線基板支持部82は、電気配線基板90を支持するためのものであり、液体吐出ユニット支持部81にネジ止めによって固定されている。液体吐出ユニット支持部81は、液体吐出ユニット300の反りや変形を矯正して、複数の記録素子基板10の相対位置精度を確保する役割を有し、それにより記録物におけるスジやムラを抑制する。そのため液体吐出ユニット支持部81は、十分な剛性を有することが好ましく、材質としてはSUSやアルミなどの金属材料、もしくはアルミナなどのセラミックが好適である。液体吐出ユニット支持部81には、ジョイントゴム100が挿入される開口83、84が設けられている。液体供給ユニット220から供給される液体は、ジョイントゴムを介して液体吐出ユニット300を構成する第3流路部材70へと導かれる。
液体吐出ユニット300は、複数の吐出モジュール200、流路部材210からなり、液体吐出ユニット300の記録媒体側の面にはカバー部材130が取り付けられる。ここで、カバー部材130は、図23に示したように長尺の開口131が設けられた額縁状の表面を持つ部材であり、開口131からは吐出モジュール200に含まれる記録素子基板10および封止材110(後述する図27参照)が露出している。開口131の周囲の枠部は、記録待機時に液体吐出ヘッド3をキャップするキャップ部材の当接面としての機能を有する。このため、開口131の周囲に沿って接着剤、封止材、充填材等を塗布し、液体吐出ユニット300の吐出口面上の凹凸や隙間を埋めることで、キャップ時に閉空間が形成されるようにすることが好ましい。
次に、液体吐出ユニット300に含まれる流路部材210の構成について説明する。図23に示したように流路部材210は、第1流路部材50、第2流路部材60および第3流路部材70を積層したものであり、液体供給ユニット220から供給された液体を各吐出モジュール200へと分配する。また流路部材210は、吐出モジュール200から環流する液体を液体供給ユニット220へと戻すための流路部材である。流路部材210は、液体吐出ユニット支持部81にネジ止めで固定されており、それにより流路部材210の反りや変形が抑制されている。
図24(a)から(f)は、第1から第3流路部材の各流路部材の表面と裏面を示した図である。図24(a)は、第1流路部材50の、吐出モジュール200が搭載される側の面を示し、図24(f)は、第3流路部材70の、液体吐出ユニット支持部81と当接する側の面を示す。第1流路部材50と第2流路部材60とは、夫々の流路部材の当接面である図24(b)と図24(c)が対向するように接合し、第2流路部材と第3流路部材とは、夫々の流路部材の当接面である図24(d)と図7(e)が対向するように接合する。第2流路部材60と第3流路部材70を接合することで、各流路部材に形成される共通流路溝62と71とから、流路部材の長手方向に延在する8本の共通流路(211a、211b、211c、211d、212a、212b、212c、212d)が形成される。これにより色毎に共通供給流路211と共通回収流路212のセットが流路部材210内に形成される。共通供給流路211から液体吐出ヘッド3にインクが供給されて、液体吐出ヘッド3に供給されたインクは共通回収流路212によって回収される。第3流路部材70の連通口72(図24(f)参照)は、ジョイントゴム100の各穴と連通しており、液体供給ユニット220(図23参照)と流体的に流通している。第2流路部材60の共通流路溝62の底面には、連通口61(共通供給流路211と連通する連通口61−1、共通回収流路212と連通する連通口61−2)が複数形成されており、第1流路部材50の個別流路溝52の一端部と連通している。第1流路部材50の個別流路溝52の他端部には連通口51が形成されており、連通口51を介して複数の吐出モジュール200と流体的に連通している。この個別流路溝52により流路部材の中央側へ流路を集約することが可能となる。
第1から第3流路部材は、液体に対して耐腐食性を有するとともに、線膨張率の低い材質からなることが好ましい。材質としては例えば、アルミナや、LCP(液晶ポリマー)、PPS(ポリフェニルサルファイド)やPSF(ポリサルフォンや変形PPE(ポリフェニレンエーテル))を母材としてシリカ微粒子やファイバーなどの無機フィラーを添加した複合材料(樹脂材料)を好適に用いることができる。流路部材210の形成方法としては、3つの流路部材を積層させて互いに接着してもよいし、材質として樹脂複合樹脂材料を選択した場合には、溶着による接合方法を用いてもよい。
図25は、図24(a)のα部を示しており、第1から第3流路部材を接合して形成される流路部材210内の流路を第1の流路部材50の、吐出モジュール200が搭載される面側から一部を拡大して示した透視図である。共通供給流路211と共通回収流路212とは、両端部の流路からそれぞれ交互に共通供給流路211と共通回収流路212とが配置されている。ここで、流路部材210内の各流路の接続関係について説明する。
流路部材210には、色毎に液体吐出ヘッド3の長手方向に伸びる共通供給流路211(211a、211b、211c、211d)および共通回収流路212(212a、212b、212c、212d)が設けられている。各色の共通供給流路211には、個別流路溝52によって形成される複数の個別供給流路(213a、213b、213c、213d)が連通口61を介して接続されている。また、各色の共通回収流路212には、個別流路溝52によって形成される複数の個別回収流路(214a、214b、214c、214d)が連通口61を介して接続されている。このような流路構成により各共通供給流路211から個別供給流路213を介して、流路部材の中央部に位置する記録素子基板10にインクを集約することができる。また記録素子基板10から個別回収流路214を介して、各共通回収流路212にインクを回収することができる。
図26は、図25のIX−IXにおける断面を示した図である。それぞれの個別回収流路(214a、214c)は連通口51を介して、吐出モジュール200と連通している。図26では個別回収流路(214a、214c)のみ図示しているが、別の断面においては図25に示すように個別供給流路213と吐出モジュール200とが連通している。各吐出モジュール200に含まれる支持部材30および記録素子基板10には、第1流路部材50からのインクを記録素子基板10に設けられる記録素子15に供給するための流路が形成されている。更に、支持部材30および記録素子基板10には、記録素子15に供給した液体の1部または全部を第1流路部材50に回収(環流)するための流路が形成されている。
ここで、各色の共通供給流路211は、対応する色の負圧制御ユニット230(高圧側)と液体供給ユニット220を介して接続されており、また共通回収流路212は負圧制御ユニット230(低圧側)と液体供給ユニット220を介して接続されている。この負圧制御ユニット230により、共通供給流路211と共通回収流路212間に差圧(圧力差)を生じさせるようになっている。このため、図25および図26に示したように、各流路を接続した本実施形態の液体吐出ヘッド内では、各インク色毎に、共通供給流路211、個別供給流路213、記録素子基板10、個別回収流路214、および共通回収流路212の順の流れが発生する。
(吐出モジュールの説明)
図27(a)は、1つの吐出モジュール200を示した斜視図であり、図27(b)は、その分解図である。吐出モジュール200の製造方法としては、まず記録素子基板10およびフレキシブル配線基板40を、予め液体連通口31が設けられた支持部材30上に接着する。その後、記録素子基板10上の端子16と、フレキシブル配線基板40上の端子41とをワイヤーボンディングによって電気接続し、その後にワイヤーボンディング部(電気接続部)を封止材110で覆って封止する。フレキシブル配線基板40の記録素子基板10と反対側の端子42は、電気配線基板90の接続端子93(図23参照)と電気接続される。支持部材30は、記録素子基板10を支持する支持体であるとともに、記録素子基板10と流路部材210とを流体的に連通させる流路部材であるため、平面度が高く、また十分に高い信頼性をもって記録素子基板と接合できるものが好ましい。材質としては例えばアルミナや樹脂材料が好ましい。
(記録素子基板の構造の説明)
図28(a)は記録素子基板10の吐出口13が形成される側の面の平面図を示し、図28(b)は、図28(a)のAで示した部分の拡大図を示し、図28(c)は、図28(a)の裏面の平面図を示す。ここで、本実施形態における記録素子基板10の構成について説明する。図28(a)に示すように、記録素子基板10の吐出口形成部材12に、各インク色に対応する4列の吐出口列が形成されている。なお、以後、複数の吐出口13が配列される吐出口列が延びる方向を「吐出口列方向」と呼称する。図28(b)に示すように、各吐出口13に対応した位置には液体を熱エネルギにより発泡させるための発熱素子である記録素子15が配置されている。隔壁22により、記録素子15を内部に備える圧力室23が区画されている。記録素子15は、記録素子基板10に設けられる電気配線(不図示)によって、端子16と電気的に接続されている。そして記録素子15は、記録装置1000の制御回路から、電気配線基板90(図6参照)およびフレキシブル配線基板40(図27参照)を介して入力されるパルス信号に基づいて発熱して液体を沸騰させる。この沸騰による発泡の力で液体を吐出口13から吐出する。図28(b)に示すように、各吐出口列に沿って、一方の側には液体供給路18が、他方の側には液体回収路19が延在している。液体供給路18および液体回収路19は記録素子基板10に設けられた吐出口列方向に伸びた流路であり、それぞれ供給口17a、回収口17bを介して吐出口13と連通している。
図28(c)に示すように、記録素子基板10の、吐出口13が形成される面の裏面にはシート状のカバープレート20が積層されており、カバープレート20には、後述する液体供給路18および液体回収路19に連通する開口21が複数設けられている。本実施形態においては、液体供給路18の1本に対して3個、液体回収路19の1本に対して2個の開口21がカバープレート20に設けられている。図28(b)に示すようにカバープレート20の夫々の開口21は、図24(a)に示した複数の連通口51と連通している。カバープレート20は、液体に対して十分な耐食性を有している物が好ましく、また、混色防止の観点から、開口21の開口形状および開口位置には高い精度が求められる。このためカバープレート20の材質として、感光性樹脂材料やシリコン板を用い、フォトリソプロセスによって開口21を設けることが好ましい。このようにカバープレート20は、開口21により流路のピッチを変換するものであり、圧力損失を考慮すると厚みは薄いことが望ましく、フィルム状の部材で構成されることが望ましい。
図29は、図28(a)におけるXXIX−XXIXにおける記録素子基板10およびカバープレート20の断面を示す斜視図である。ここで、記録素子基板10内での液体の流れについて説明する。カバープレート20は、記録素子基板10の基板11に形成される液体供給路18および液体回収路19の壁の一部を形成する蓋としての機能を有する。記録素子基板10は、Siにより形成される基板11と感光性の樹脂により形成される吐出口形成部材12とが積層されており、基板11の裏面にはカバープレート20が接合されている。基板11の一方の面側には、記録素子15が形成されており(図28参照)、その裏面側には、吐出口列に沿って延在する液体供給路18および液体回収路19を構成する溝が形成されている。基板11とカバープレート20とによって形成される液体供給路18および液体回収路19は、それぞれ流路部材210内の共通供給流路211と共通回収流路212と接続されており、液体供給路18と液体回収路19との間には差圧が生じている。吐出口13から液体を吐出して記録を行っている際に、吐出を行っていない吐出口では、この差圧によって基板11内に設けられた液体供給路18内の液体が、供給口17a、圧力室23、回収口17bを経由して液体回収路19へ流れる(図29の矢印C)。この流れによって、記録を休止している吐出口13や圧力室23において、吐出口13からの蒸発によって生じる増粘インク、泡および異物などを液体回収路19へ回収することができる。また吐出口13や圧力室23のインクが増粘するのを抑制することができる。液体回収路19へ回収された液体は、カバープレート20の開口21および支持部材30の液体連通口31(図27(b)参照)から、流路部材210内の連通口51、個別回収流路214、共通回収流路212の順に回収される。その後、記録装置1000の供給経路へと回収される。つまり、記録装置本体から液体吐出ヘッド3へ供給される液体は、下記の順に流動し、供給および回収される。
液体は、まず液体供給ユニット220の液体接続部111から液体吐出ヘッド3の内部に流入する。そして液体は、ジョイントゴム100、第3流路部材に設けられた連通口72および共通流路溝71、第2流路部材に設けられた共通流路溝62および連通口61、第1流路部材に設けられた個別流路溝52および連通口51の順に供給される。その後、支持部材30に設けられた液体連通口31、カバープレート20に設けられた開口21、基板11に設けられた液体供給路18および供給口17aを順に介して圧力室23に供給される。圧力室23に供給された液体のうち、吐出口13から吐出されなかった液体は、基板11に設けられた回収口17bおよび液体回収路19、カバープレート20に設けられた開口21、支持部材30に設けられた液体連通口31を順に流れる。その後液体は、第1流路部材に設けられた連通口51および個別流路溝52、第2流路部材に設けられた連通口61および共通流路溝62、第3流路部材70に設けられた共通流路溝71および連通口72、ジョイントゴム100を順に流れる。そして液体は、液体供給ユニット220に設けられた液体接続部111から液体吐出ヘッド3の外部へ流動する。
図19に示す第1循環形態の形態においては、液体接続部111から流入した液体は、負圧制御ユニット230を経由した後にジョイントゴム100に供給される。また図20に示す第2循環形態の形態においては、圧力室23から回収された液体は、ジョイントゴム100を通過した後、負圧制御ユニット230を介して液体接続部111から液体吐出ヘッドの外部へ流動する。また液体吐出ユニット300の共通供給流路211の一端から流入した全ての液体が、個別供給流路213を経由して圧力室23に供給されるわけではない。つまり、共通供給流路211の一端から流入した液体で、個別供給流路213に流入することなく、共通供給流路211の他端から液体供給ユニット220に流動する液体もある。このように、記録素子基板10を経由することなく流動する経路を備えることで、本実施形態のような微細で流抵抗の大きい流路を備える記録素子基板10を備える場合であっても、液体の循環流の逆流を抑制することができる。このように、本実施形態の液体吐出ヘッド3では、圧力室23や吐出口近傍部の液体の増粘を抑制することができるので、吐出のヨレや不吐出を抑制することができ、結果として高画質な記録を行うことができる。
(記録素子基板間の位置関係の説明)
図30は、隣り合う2つの吐出モジュールにおける、記録素子基板の隣接部を部分的に拡大して示した平面図である。本実施形態では略平行四辺形の記録素子基板を用いている。各記録素子基板10における吐出口13が配列される各吐出口列(14aから14d)は、記録媒体の搬送方向に対し一定角度傾くように配置されている。そして、記録素子基板10同士の隣接部における吐出口列は、少なくとも1つの吐出口が記録媒体の搬送方向にオーバーラップするようになっている。図30では、線D上の2つの吐出口が互いにオーバーラップする関係にある。このような配置によって、仮に記録素子基板10の位置が所定位置から多少ずれた場合でも、オーバーラップする吐出口の駆動制御によって、記録画像の黒スジや白抜けを目立たなくすることができる。複数の記録素子基板10を千鳥配置ではなく、直線状(インライン)に配置した場合も、図30のような構成により液体吐出ヘッドの記録媒体の搬送方向の長さの増大を抑えつつ記録素子基板10同士のつなぎ部における黒スジや白抜け対策を行うことができる。なお、本実施形態では記録素子基板の主平面は平行四辺形であるが、これに限るものではなく、例えば長方形、台形、その他形状の記録素子基板を用いた場合でも、本発明の構成を好ましく適用することができる。
(第5の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第5の実施形態によるインクジェット記録装置2000および液体吐出ヘッド2003の構成を説明する。なお以降の説明においては、主として第4の実施形態と異なる部分のみを説明し、第4の実施形態と同様の部分については説明を省略する。本実施形態においても、第3の実施形態と同様のインクの循環経路が形成されており、第3の実施形態と同様に、監視領域を設定して、監視領域毎の圧力損失に基づいてインク流量を制御する。これにより、液体吐出ヘッドにおける局所的な圧力損失を抑制することができる。
(インクジェット記録装置の説明)
図38は、本実施形態を適用可能な、液体を吐出して記録を行うインクジェット記録装置2000を示した図である。本実施形態の記録装置2000は、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックKの各インクごとに対応した単色用の液体吐出ヘッド2003を4つ並列配置させることで記録媒体へフルカラー記録を行う点が第1の実施形態とは異なる。第4の実施形態において1色あたりに使用できる吐出口列数が1列だったのに対し、本実施形態においては、1色あたりに使用できる吐出口列数は20列となっている。このため、記録データを複数の吐出口列に適宜振り分けて記録を行うことで、非常に高速な記録が可能となる。更に、不吐出になる吐出口があったとしても、その吐出口に対して記録媒体の搬送方向に対応する位置にある、他列の吐出口から補間的に吐出を行うことで信頼性が向上し、商業記録などに好適である。第4の実施形態と同様に、各液体吐出ヘッド2003に対して、記録装置2000の供給系、バッファタンク1003(図19、図20参照)およびメインタンク1006(図19、図20参照)が流体的に接続されている。また、それぞれの液体吐出ヘッド2003には、液体吐出ヘッド2003へ電力および吐出制御信号を伝送する電気制御部が電気的に接続されている。
(循環経路の説明)
第4の実施形態と同様に、記録装置2000および液体吐出ヘッド2003間の液体循環経路としては、第4の実施形態同様、図19または図20に示した第1および第2循環形態を用いることができる。
(液体吐出ヘッド構造の説明)
図31(a)および(b)は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド2003を示した斜視図である。ここで、本実施形態に係る液体吐出ヘッド2003の構造について説明する。液体吐出ヘッド2003は、液体吐出ヘッド2003の長手方向に直線状に配列される16個の記録素子基板2010を備え、1色の液体で記録が可能なインクジェット式のライン型液体吐出ヘッドである。液体吐出ヘッド2003は、第1の実施形態と同様、液体接続部111、信号入力端子91および電力供給端子92を備える。しかしながら本実施形態の液体吐出ヘッド2003は、第4の実施形態に比べて吐出口列が多いため、液体吐出ヘッド2003の両側に信号出力端子91および電力供給端子92が配置されている。これは記録素子基板2010に設けられる配線部で生じる電圧低下や信号伝送遅れを低減するためである。
図32は、液体吐出ヘッド2003を示した斜視分解図であり、液体吐出ヘッド2003を構成する各部品またはユニットがその機能毎に分割して示している。各ユニットおよび部材の役割や液体吐出ヘッド内の液体流通の順は、基本的に第4の実施形態と同様であるが、液体吐出ヘッドの剛性を担保する機能が異なる。第4の実施形態では主として液体吐出ユニット支持部81によって液体吐出ヘッド剛性を担保していたが、第5の実施形態の液体吐出ヘッド2003では、液体吐出ユニット2300に含まれる第2流路部材2060によって液体吐出ヘッドの剛性を担保している。本実施形態における液体吐出ユニット支持部81は、第2流路部材2060の両端部に接続されており、この液体吐出ユニット2300は記録装置2000のキャリッジと機械的に結合されて、液体吐出ヘッド2003の位置決めを行う。負圧制御ユニット2230を備える液体供給ユニット2220と、電気配線基板90は、液体吐出ユニット支持部81に結合される。2つの液体供給ユニット2220内にはそれぞれフィルタ(不図示)が内蔵されている。
2つの負圧制御ユニット2230は、それぞれ異なる、相対的に高低の負圧で圧力を制御するように設定されている。また、この図31のように、液体吐出ヘッド2003の両端部にそれぞれ、高圧側と低圧側の負圧制御ユニット2230を設置した場合、液体吐出ヘッド2003の長手方向に延在する共通供給流路と共通回収流路における液体の流れが互いに対向する。このような構成では、共通供給流路と共通回収流路の間で熱交換が促進されて、2つの共通流路内における温度差が低減される。これによって、共通流路に沿って複数設けられる各記録素子基板2010における温度差が少なくなり、温度差による記録ムラが生じにくくなるという利点がある。
次に、液体吐出ユニット2300の流路部材2210の詳細について説明する。図32に示すように流路部材2210は、第1流路部材2050と第2流路部材2060とを積層したものであり、液体供給ユニット2220から供給された液体を各吐出モジュール2200へと分配する。また流路部材2210は、吐出モジュール2200から環流する液体を液体供給ユニット2220へと戻すための流路部材として機能する。流路部材2210の第2流路部材2060は、内部に共通供給流路および共通回収流路が形成された流路部材であるとともに、液体吐出ヘッド2003の剛性を主に担うという機能を有する。このため、第2流路部材2060の材質としては、液体に対する十分な耐食性と高い機械強度を有するものが好ましい。具体的にはSUSやTi、アルミナなど用いることができる。
図33(a)は、第1流路部材2050の、吐出モジュール2200がマウントされる面を示した図であり、図33(b)は、その裏面を示しており、第2流路部材2060と当接される面を示した図である。第4の実施形態とは異なり、本実施形態における第1流路部材2050は、各吐出モジュール2200毎に対応した複数の部材を隣接して配列したものである。このように分割した構造を採ることで、複数のモジュールを配列させて、液体吐出ヘッド2003の長さに対応することができるので、例えばB2サイズおよびそれ以上の長さに対応した比較的ロングスケールの液体吐出ヘッドに特に好適に適用することができる。図33(a)に示すように、第1流路部材2050の連通口51は、吐出モジュール2200と流体的に連通し、図33(b)に示すように、第1流路部材2050の個別連通口53は、第2流路部材2060の連通口61と流体的に連通する。図33(c)は、第2流路部材60の、第1流路部材2050と当接される面を示し、図33(d)は、第2流路部材60の厚み方向中央部の断面を示し、図33(e)は、第2流路部材2060の、液体供給ユニット2220と当接する面を示す図である。第2流路部材2060の流路や連通口の機能は、第4の実施形態の1色分と同様である。第2流路部材2060の共通流路溝71は、その一方が後述する図34に示す共通供給流路2211であり、他方が共通回収流路2212であり、夫々、液体吐出ヘッド2003の長手方向に沿って設けられており、その一端側から他端側に液体が供給される。本実施形態は第4の実施形態と異なり、共通供給流路2211と共通回収流路2212の液体の流れは互いに反対方向となっている。
図34は、記録素子基板2010と流路部材2210との液体の接続関係を示した透視図である。流路部材2210内には、液体吐出ヘッド2003の長手方向に延びる一組の共通供給流路2211および共通回収流路2212が設けられている。第2流路部材2060の連通口61は、各々の第1流路部材50の個別連通口53と位置を合わせて接続されている。これにより、第2流路部材2060の連通口72から共通供給流路2211を介して第1流路部材2050の連通口51へと連通する液体供給経路が形成されている。同様に、第2流路部材2060の連通口72から共通回収流路2212を介して第1流路部材2050の連通口51へと連通する液体供給経路も形成されている。
図35は、図34のXXXV−XXXV線における断面を示した図である。共通供給流路2211は、連通口61、個別連通口53、連通口51を介して、吐出モジュール2200へ接続されている。図35では不図示であるが、別の断面においては、共通回収流路2212が同様の経路で吐出モジュール2200へ接続されていることは、図34を参照すれば明らかである。第4の実施形態と同様に、各吐出モジュール2200および記録素子基板2010には、各吐出口に連通する流路が形成されており、供給した液体の一部または全部が、吐出動作を休止している吐出口を通過して、環流できるようになっている。また第4の実施形態と同様に、共通供給流路2211は、負圧制御ユニット2230(高圧側)と、共通回収流路2212は負圧制御ユニット2230(低圧側)と液体供給ユニット2220を介して接続されている。従ってその差圧によって、共通供給流路2211から記録素子基板2010の吐出口を通過して共通回収流路2212へと流れる流れが発生する。
(吐出モジュールの説明)
図36(a)は、1つの吐出モジュール2200を示した斜視図であり、図36(b)は、その分解図である。第4の実施形態との差異は、記録素子基板2010の複数の吐出口列方向に沿った両辺部(記録素子基板2010の各長辺部)に複数の端子16がそれぞれ配置されている点である。これに伴い記録素子基板2010と電気接続されるフレキシブル配線基板40も、1つの記録素子基板2010に対して2枚配置されている。これは記録素子基板2010に設けられる吐出口列数が20列あり、第4の実施形態の8列よりも大幅に増加しているためであり、端子16から記録素子までの最大距離を短くして記録素子基板2010内の配線部で生じる電圧低下や信号遅れを低減するためである。また支持部材2030の液体連通口31は、記録素子基板2010に設けられ全吐出口列を跨るように開口している。その他の点は、第4の実施形態と同様である。
(記録素子基板の構造の説明)
図37(a)は、記録素子基板2010の吐出口13が配される面の模式図であり、図37(c)は、図37(a)の面の裏面を示す模式図である。図37(b)は図37(c)において、記録素子基板2010の裏面側に設けられているカバープレート2020を除去した場合の記録素子基板2010の面を示す模式図である。図37(b)に示すように、記録素子基板2010の裏面には吐出口列方向に沿って、液体供給路18と液体回収路19とが交互に設けられている。吐出口列数は、第4の実施形態よりも大幅に増加しているものの、第4の実施形態との本質的な差異は、前述のように端子16が記録素子基板の吐出口列方向に沿った両辺部に配置されていることである。各吐出口列毎に一組の液体供給路18と液体回収路19が設けられていること、カバープレート2020に、支持部材2030の液体連通口31と連通する開口21が設けられていることなど、基本的な構成は第4の実施形態と同様である。
なお、上記実施形態の記載は本発明の範囲を限定するものではない。1例として、本実施形態では発熱素子により気泡を発生させて液体を吐出するサーマル方式について説明したが、ピエゾ方式およびその他の各種液体吐出方式が採用された液体吐出ヘッドにも本発明を適用することができる。
本実施形態は、インク等の液体をタンクと液体吐出ヘッドとの間で循環させる形態のインクジェット記録装置(記録装置)について説明したが、その他の形態であってもよい。その他の形態は、例えばインクを循環せずに、液体吐出ヘッド上流側と下流側に2つのタンクを設け、一方のタンクから他方のタンクへインクを流すことで、圧力室内のインクを流動させる形態であってもよい。
また本実施形態は、記録媒体の幅に対応した長さを有する、所謂ライン型ヘッドを用いる例を説明したが、記録媒体に対してスキャンを行いながら記録を行う、所謂シリアル型の液体吐出ヘッドにも本発明を適用することができる。シリアル型の液体吐出ヘッドとしては、例えばブラックインクを吐出する記録素子基板およびカラーインクを吐出する記録素子基板を各1つずつ搭載する構成が挙げられるが、これに限るものではない。つまり、複数個の記録素子基板を吐出口列方向に吐出口がオーバーラップするよう配置した、記録媒体の幅よりも短い短尺の液体吐出ヘッドを作成し、それを記録媒体に対してスキャンさせる形態であってもよい。
(第6の実施形態)
第3から第5の実施形態の構成例においては、流入側開口1401から圧力室404を介して回収側開口1703へインクが流れる構成において、流入側開口1401および回収側開口1703毎に対応する監視領域の単位で圧力損失を算出した。本実施形態では、記録素子基板内の端部側の吐出口を基準として、記録素子基板内を等分割した領域毎に対応する監視領域の単位で圧力損失を算出する。
第3から第5の実施形態と同様の部分については説明を省略する。本実施形態においても第3〜第5の実施形態と同様のインクの循環経路が形成されている。
(インク流量の制御例)
図39は、第4の実施形態における図28(a)と同様に、記録素子基板10の吐出口13が形成される側の面の平面図を示している。本実施形態では、1パスで連続記録を行い、複数の記録素子基板を有するページワイド型の液体吐出ヘッドを備える記録装置における例を示す。図39に、液体吐出ヘッドの端部側に位置する1つの記録素子基板を示す。図39において、1つの吐出口列に対し、一端部の吐出口の位置807aを基準として、他端部の吐出口である807bまでを均等に分割した領域807(1)〜807(6)を監視領域とする。この場合、第3〜第5の実施形態と同様の方法で、監視領域毎の圧力損失に基づいてインク流量を制御することにより、液体吐出ヘッドにおける局所的な圧力損失を制御することができる。
ここで本実施形態において、監視領域毎に制御するインク流量の閾値は、カバープレート2020(図37)の開口21との間隔が最も大きく、圧力損失が一番大きい領域における値とする。例えば、図39において、記録素子基板10の、吐出口の配列方向に関する両端部に注目すると、カバープレートの開口21から領域の端部までの距離が最も遠いのは、監視領域807(1)である。この監視領域807(1)の圧力損失が最も大きくなるので、監視領域807(1)内における流量を閾値として採用する。最も圧力損失の厳しい領域を基準として閾値を設けることで、必然的に、記録素子基板内の他の監視領域内も記録デューティーが閾値以下であれば記録可能となる。
この場合、各監視領域における記録デューティーの閾値は、全ての各領域で一律の閾値を設けることも出来るし、各領域内でそれぞれ異なる閾値を設けることも出来る。また、これに限るものではなく、列ごとに閾値を変えることも出来るし、記録素子基板単位で閾値を設けることもできる。
図40は、第4の実施形態における図30と同様の構成とし、複数の記録素子基板10を有するページワイド型の液体吐出ヘッドにおける、最端部の記録素子基板10aと、それに隣接する記録素子基板10bの繋ぎ部を示す。図39に示すように、端部の吐出口位置807aを含む記録素子基板10aを、監視領域分割の基準とする。その場合、記録素子基板10a内を図39のように等分割をする(807(1)〜807(6)の6分割)。このとき、前述したように、記録素子基板10は略平行四辺形を用いており、記録素子基板10aにおける吐出口13が配列される各吐出口列14a〜14dは記録媒体の搬送方向に対し一定角度傾くように配置されている。そして、記録素子基板10aおよび10bの隣接部における吐出口列は、少なくとも1つの吐出口が記録媒体の搬送方向にオーバーラップするようになっている。そのため、例えば、記録素子基板10bの吐出口列14dにおける監視領域のスタートは、記録素子基板10aとの繋ぎ部より2ノズル目の吐出口位置807cとなる。これにより、隣り合う記録素子基板ごとに監視領域がずれていく。従って、本実施形態においては、複数の記録素子基板を有するページワイド型液体吐出ヘッドで、監視領域内にカバープレートの開口21を含まない場所も存在するが、他の監視領域同様の閾値によって、圧力損失を制御する。
本実施形態における液体吐出ヘッドは、図39および図40のような構成のみに限定されず、例えば、第2の実施形態のように1つの記録素子基板のみを有する液体吐出ヘッドであってもよく、このような液体吐出ヘッドに対しても本実施形態は適用可能である。また、開口数や監視領域の分割数も本実施形態に限定されない。なお、本実施形態では記録素子基板の主平面は平行四辺形であるが、これに限るものではなく、例えば長方形、台形、その他形状の記録素子基板を用いた場合でも、本発明の構成を好ましく適用することができる。監視領域についても、隣り合う記録素子基板の繋ぎ部で記録媒体の搬送報告にオーバーラップしない形態であってもよく、これに限られるものでもない。
(他の実施形態)
本発明は、種々の記録方式のインクジェット記録装置に対して適用することができ、その記録方式は、液体吐出ヘッドと記録媒体との相対移動を伴って画像を記録するフルライン方式およびシリアルスキャン方式等、任意である。
また本発明は、インクを吐出可能なインクジェット液体吐出ヘッドを用いて画像を記録するインクジェット記録装置の他、種々の液体を吐出可能な液体吐出ヘッドを用いる液体吐出装置に対して広く適用可能である。例えば、プリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサなどの装置、さらには、各種処理装置と複合的に組み合わせた産業記録装置に適用可能である。また、バイオチップ作製や電子回路印刷などの用途としても用いることができる。