JP6941597B2 - 撥液性樹脂シート及びそれを用いた物品 - Google Patents

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Description

本発明は、撥液性を備えた樹脂シート及びそれを用いた物品に関する。
従来から、清涼飲料水や果汁飲料、嗜好飲食品等の食品や生活用品包装材用として、紙材、高分子素材が用いられてきた。例えば、特許文献1には、樹脂シート上に凹凸形状が設けられ、さらにその表面に撥水剤がコートされた、撥液性を備えた樹脂シートが提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載される撥液性樹脂シートは、液体から圧力がかかることにより、撥液性樹脂シート表面に液体がなじむ現象、つまり撥液性の低下又は損失が起こり、撥液性の安定性に問題があった。
国際公開第2014/087695号
本発明は、液体からの圧力に対して安定した撥液性を備えた樹脂シート及びそれを用いた物品を提供することを課題とする。
本発明者は、様々な撥液性発現手段を検討した結果、シート表面に微細な凸形状を付与し、かつ疎水性無機微粒子とバインダー樹脂とを特定の割合で含有する撥液層を設けることにより、液体からの圧力に対して安定した撥液性をシート表面に付与することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記課題を解決する本発明は、以下より構成される。
(1)少なくとも1種の微細な凸形状を有し熱可塑性樹脂組成物を含む凸形状層と、前記凸形状層の凸形状を有する面に疎水性無機微粒子及びバインダー樹脂を含む撥液層とを備え、前記撥液層における疎水性無機微粒子の含有量が80質量%を越え、かつ95質量%以下であり、バインダー樹脂の含有量が5質量%以上かつ20質量%未満である、撥液性樹脂シート。
(2)糖を含む水系液体に対して撥液性を有する、(1)に記載の撥液性樹脂シート。
(3)前記熱可塑性樹脂組成物の230℃でのメルトマスフローレートが5g/10分以上である、(1)または(2)に記載の撥液性樹脂シート。
(4)前記熱可塑性樹脂組成物が、ポリオレフィン系樹脂組成物を含む、(1)から(3)のいずれか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(5)前記ポリオレフィン系樹脂組成物が、ポリオレフィン系樹脂を35質量%〜100質量%含有する、(4)に記載の撥液性樹脂シート。
(6)前記疎水性無機微粒子が、表面にトリメチルシリル基を有する疎水性シリカ微粒子である、(1)から(5)のいずれか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(7)前記疎水性無機微粒子の平均一次粒子径が、5nm〜1000nmである、(1)から(6)のいずれか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(8)前記バインダー樹脂が、オレフィン系共重合体及びフッ素系共重合体から選択される1種類以上の樹脂を含む、(1)から(7)のいずれか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(9)前記凸形状が、第1の凸形状と第2の凸形状とからなり、第1の凸形状の高さおよび第2の凸形状の高さがそれぞれ20μm〜150μmであり、隣接する凸形状の頂点間隔が20μm〜100μmである、(1)から(8)のいずれか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(10)前記凸形状層の厚みが、50μm〜200μmである、(1)から(9)のいずれか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(11)前記撥液層を有する側の表面が、糖類を含む液体と接触したときの接触角が130°以上であり、かつ転落角が40°以下である、(1)から(10)のいずれか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(12)前記凸形状層の表面において、液体上から866Paの圧力を加えても撥液性が維持される、(1)から(11)のいずれか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(13)前記凸形状層の凸形状を有する面の他方の面に、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、及びアクリル系樹脂から選択される1種類以上の樹脂を含む1層以上の基材層が積層された、(1)から(12)のいずれか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(14)前記凸形状層と前記基材層との間に、変性オレフィン系重合体樹脂および熱可塑性エラストマーから選択される少なくとも1種の樹脂を含むシーラント樹脂層が形成された、(13)に記載の撥液性樹脂シート。
(15)(1)から(14)のいずれか一つに記載の撥液性樹脂シートを用いた物品。
(16)生活用品、包装材又は建材である、(15)に記載の物品。
(17)食品容器、パウチ、雨合羽、傘、壁紙又は水回り部材である(16)に記載の物品。
本発明によれば、液体からの圧力に対して安定した撥液性を備えた撥液性樹脂シート及びそれを用いた物品を提供することができる。
本発明の第一実施形態に係る撥液性樹脂シートを示す概略縦側断面図である。 図1の撥液性樹脂シートの概略平面図である。 本発明の第一実施形態に係る撥液性樹脂シートの他の形態の概略縦側断面図である。 図3の撥液性樹脂シートの概略平面図である。 本発明の第二実施形態に係る撥液性樹脂シートの積層構造を示す概略縦側断面図である。 本発明の第三実施形態に係る撥液性樹脂シートの積層構造を示す概略縦側断面図である。 本発明の第四実施形態に係る撥液性樹脂シートの積層構造を示す概略縦側断面図である。 本発明の加圧試験の評価基準を示す図である。
[第一実施形態]
本発明に係る第一実施形態の撥液性樹脂シートは、図1に示すように、少なくとも1種の微細な凸形状(1a)を有する熱可塑性樹脂組成物を含む凸形状層(1)と、前記凸形状(1a)を有する面に疎水性無機微粒子及びバインダー樹脂を含む撥液層(2)とを備え、前記撥液層における疎水性無機微粒子の含有量が80質量%を越え、かつ95質量%以下であり、バインダー樹脂の含有量が5質量%以上かつ20質量%未満であり、撥液性を有する。
<凸形状層>
凸形状層は、熱可塑性樹脂組成物を用いて形成することができる。熱可塑性樹脂組成物としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂などが挙げられる。例えば食品容器として用いる場合は、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、特にポリオレフィン系樹脂を35質量%以上含有することが好ましい。ポリオレフィン系樹脂を35質量%以上とすることで凸形状の転写性を向上することができる。また、ポリオレフィン系樹脂組成物の230℃におけるメルトマスフローレートは、5g/10分以上であることが好ましく、15g/10分以上であることがより好ましい。メルトマスフローレートを5g/10分以上とすることで、凸形状の転写性を向上することができる。なお、メルトマスフローレートは、JIS K 7210に準拠し、一定時間ごとの流出質量(g/10分)を測定することにより算出される。メルトマスフローレートは、標準的な条件として、試験温度190℃から230℃、荷重2.16kg〜10.00kgで測定される。
ポリオレフィン系樹脂とは、α−オレフィンを単量体として含む重合体を主として含む樹脂を意味し、特にポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂を含むことが好ましい。ポリエチレン樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状中密度ポリエチレン、エチレンを主成分としてなる共重合体やグラフト共重合体が挙げられ、これらのブレンド物も含まれる。前記共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体などが挙げられ、前記グラフト共重合体としては、例えば、スチレン−エチレングラフト共重合体が挙げられる。
また、ポリプロピレン樹脂としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンなどが挙げられる。ホモポリプロピレンを用いる場合、該ホモポリプロピレンの構造は、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックのいずれであってもよい。ランダムポリプロピレンを用いる場合、プロピレンと共重合させるαオレフィンとしては、好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数4〜12のものが挙げられ、例えばエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどを例示できる。ブロックポリプロピレンを用いる場合、ブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト共重合体等が挙げられる。これらオレフィン樹脂を単独で使用する以外に、他のオレフィン系樹脂を併用することもできる。
熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の添加物を含有していてもよい。他の添加物としては、安定剤、界面活性剤、滑剤、充填剤、発泡剤、色材、結晶核剤等を挙げることができる。
(凸形状)
凸形状層は、1種類以上の微細な凸形状を有する。凸形状は、図1に示すように1種類の凸形状であってもかまわないが、図3に示すように、形状の異なる第1の凸形状と第2の凸形状とを有することが好ましい。また、凸形状は、形状の異なる3種以上の凸形状を有していてもよい。ここで凸形状が第1の凸形状と第2の凸形状とを有する場合、第1の凸形状の高さは、第2の凸形状の高さより高いものとする。第1の凸形状と第2の凸形状の配置には制約がないが、第1の凸形状と第2の凸形状とは交互に配置されていることが撥液性の面で好ましい。凸形状の配置形態は特に限定はされず、縦横に配置した碁盤目配置、千鳥配置がある。より撥液性を維持したければ、千鳥配置が好ましい。なお、凸形状層の形成方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、樹脂シート表面を、レーザー彫刻法で凹凸形状を形成した転写ロールとタッチロールでキャスティングすることにより形成する方法や、ベルト状金型を利用し、シートを加熱、加圧により凹凸転写する方法などが挙げられる。
凸形状は、高さ(h)が20μm〜150μmであることが好ましい。凸形状高さを20μm以上とすることで、撥液性を十分に確保することができ、凸形状高さを150μm以とすることで、凸形状を付与するための金型での凸形状寸法を安定させることができる。なお、凸形状高さには、後述する撥液層の厚み(100nm〜4000nm)を加えたものである。凸形状層の厚さとしては、特に限定されず、上記した凸形状の高さを含め、50μm〜1000μmとすることができる。
隣接する凸形状の頂点間隔(t)は20μm〜100μmであることが好ましい。なお頂点間隔とは、隣接する最短距離にある凸形状の間隔であり、相互の凸形状が異なっても隣接するものであれば、その凸形状の間隔を意味する。頂点間隔を20μm以上とすることで、凸形状を付与するための金型での凸形状寸法を安定させることができる。また、100μm以とすることで、撥液性が低下することを防ぐことができる。
なお、凸形状高さ及び凸形状の頂点間隔は、レーザー顕微鏡(例えば、キーエンス社製
VK−X100)を用いて測定することができる。
2種類の凸形状を用いる場合、第1の凸形状に対する第2の凸形状の高さの比は0.4以上0.8以下であることが好ましい。高さの比を0.4以上0.8以下にすることでより効果的に撥液性を得ることができる。
凸形状の底面は、三角錐、四角錐、六角錐、八角錐、円錐などの錐形状、角錐台形状、円錐台形状でもよいが、本発明者が本実施形態に係る樹脂シートの構成において種々検討した結果、六角錐形状の凸形状が特に好ましいことが分かった。
<撥液層>
撥液層は、凸形状層の凸形状がシート表面にほぼそのまま維持されるように凸形状層の表面にほぼ一定の厚みで形成される。撥液層は、部材への成形後でも撥液性を維持するために設けられ、疎水性無機微粒子及びバインダー樹脂を用いて形成される。撥液層の厚さは、100nm〜4000nmであることが好ましいが、本発明の効果が得られれば特に限定されない。なお、「撥液性」とは、ここでは樹脂シートへの糖類系の液体(糖類を含む液体)の付着を防止するのに十分な程度の撥液性を意味し、具体的には、これらの液体の樹脂シートに対する液体の接触角が130°以上及び/又は転落角が40°以下であることを意味するものとする。なお、接触角及び転落角は、樹脂シートについて、自動接触角計(例えば、協和界面化学株式会社製 DM−501)を用いて測定することができる。また、「液体上から866Paの圧力を加えても撥液性が維持される」とは、液体からの圧力に対する安定した撥液性を意味するものであり、液体に圧力、例えば866Paの圧力を加えた場合においても撥液性が維持されることを意味するものとする。
撥液層は、疎水性無機微粒子の含有量が80質量%を越え、かつ95質量%以下であり、バインダー樹脂の含有量が5質量%以上かつ20質量%未満であることを特徴とする。また、疎水性無機微粒子の含有量が85質量%〜95質量%、バインダー樹脂の含有量が5質量%〜15質量%であることが好ましい。この範囲の組成とすることによって、液体から圧力がかかった場合でも安定した撥液性を得ることができる。これに対して、疎水性無機微粒子の含有量が80質量%以下では、液体から圧力がかかった場合に十分に安定した撥液性が得られない場合があり、疎水性無機微粒子の含有量が95質量%を超えると、疎水性無機微粒子が剥がれ落ちる場合がある。
凸形状面に撥液層を形成する方法としては、予めイソピルアルコール(IPA)に疎水性無機微粒子を添加した分散液を調製し、その後、バインダー樹脂と任意の割合で混合し、前記凸形状面にコーター等で塗布する方法が採用される。
(疎水性無機微粒子)
疎水性無機微粒子としては、疎水基を有するものであればよく、表面処理により疎水化されたものであってもよい。例えば、表面にトリメチルシリル基、ジメチルシロキサン基、アルキルシリル基、アミノアルキルシリル基、メタクリルシリル基、ジメチルポリシロキサン基又はジメチルシリル基を有する疎水性シリカ微粒子が好ましい。また、親水性無機微粒子をシランカップリング剤等で表面処理を施し、表面状態を疎水性とした微粒子を用いることもできる。無機物の種類も、疎水性を有するものであれば限定されない。これらの中では、疎水性ヒュームドシリカ、溶融シリカ、アルミナ、チタニア等の少なくとも1種を用いることができる。疎水性であればこれらの粒子の形状には制約がなく、球形、非球形(破砕状)のいずれの形状も使用することができる。平均一次粒子径が5nm〜1000nmであるものが好ましく、7nm〜200nmであるものがより好ましく、7nm〜25nmであるものがさらに好ましい。平均一次粒子径を5nm〜1000nmとすることで、本発明の条件を満たす撥液性が得られると共に、バインダー樹脂への分散性が良好となる。なお、平均一次粒子径とは、走査型電子顕微鏡を用いて、視野を変えて複数の画像を撮影し、画像解析ソフトを用いて任意に抽出した3000個〜5000個の疎水性無機微粒子の直径を測定して、平均値を算出することにより得られる値のことを言う。これらの具体例としては、例えば、シリカとしては、製品名「AEROSIL R972」、「AEROSIL R972V」、「AEROSIL R972CF」、「AEROSIL R974」、「AEROSIL RX200」、「AEROSIL RY200」(以上、日本アエロジル株式会社製)、「AEROSIL R202」、「AEROSIL R805」、「AEROSIL R812」、「AEROSIL R812S」、「AEROSIL RY300」(以上、エボニック デグサ社製)等が挙げられる。チタニアとしては、製品名「AEROXIDE TiO2 T805」(エボニック デグサ社製)等が例示できる。アルミナとしては、製品名「AEROXIDE Alu C」(エボニック デグサ社製)等をシランカップリング剤で処理して粒子表面を疎水性とした微粒子が例示できる。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂とは、オレフィン系共重合体及びフッ素系共重合体の何れか1種類以上が水に分散した分散液を表している。本明細書において、バインダー樹脂の含有量とは、用いたバインダー樹脂中の樹脂を主体とした固形分の含有量を示す。
オレフィン系共重合体とは、α−オレフィンを単量体として含む重合体を意味し、ポリエチレン系重合体やポリプロピレン系重合体が含まれる。例えば、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン(エチレンとα−オレフィンとの共重合体)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アルキルアクリレート共重合体、エチレン−アルキルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、低密度ポリエチレン等のアイオノマー、プロピレン系エラストマー材料などが挙げられる。これに対応する市販品としては、「ケミパールS−100」(三井化学社製)、「アクアテックスAC−3100」、「アクアテックスEC−3500」(ジャパンコーティングレジン社製)、「アローベースSE−1200」、「アローベースSD−1200」、「アローベースYA−4010」(ユニチカ社製)等が挙げられる。
フッ素系共重合体は、フッ素を含有する炭化水素系樹脂であり、以下に述べる共重合体(1)と共重合体(2)とを含有することが好ましい。共重合体(1)と共重合体(2)は、以下に述べる構成単位(a)〜(d)を含有できる。ただし、共重合体(1)は、構成単位(a)および構成単位(b)を含有し、共重合体(2)は、構成単位(a)および構成単位(c)を含有する。共重合体(1)が主に樹脂シートの撥液性の発現に寄与し、共重合体(2)が主に樹脂シートの耐久性に寄与する。
構成単位(a)は、アルキル基の水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換された基であり、炭素原子数は1〜6である。構成単位(a)は、炭素−炭素不飽和二重結合などの不飽和基を1個以上有する鎖状ポリフルオロ炭化水素基であってもよい。不飽和基としては(メタ)アクリレートが好ましい。
構成単位(b)は、炭素原子数が16〜40の飽和炭化水素基を有する単量体であることが好ましく、炭素原子数16〜40のアルキル基を含有する(メタ)アクリレートであるのがより好ましく、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートであるのがさらに好ましい。
構成単位(c)は、フッ素原子を含まず、架橋しうる官能基を有する単量体に由来する単量体である。架橋しうる官能基としては、イソシアネート基、ブロックドイソシアネート基、アルコキシシリル基、アミノ基、アルコキシメチルアミド基、シラノール基、アンモニウム基、アミド基、エポキシ基、水酸基、オキサゾリン基、カルボキシル基、アルケニル基、スルホン酸基等が好ましい。また、エポキシ基、水酸基、ブロックドイソシアネート基、アルコキシシリル基、アミノ基、カルボキシル基がより好ましい。
構成単位(c)を形成する単量体としては、(メタ)アクリレート類、共重合可能な基を2個以上もつ化合物、ビニルエーテル類またはビニルエステル類が好ましく挙げられる。
構成単位(c)は、2種以上の混合物を由来としてもよい。構成単位(c)は、主に撥液膜の造膜性、撥液性組成物の基材との接着性や密着性に影響し、耐久性を高めることに寄与する。
構成単位(d)は、構成単位(a)、(b)および(c)以外の重合性基を有する単量体に由来する構成単位である。また、造膜性が良好で、均一な共重合体溶液または分散液が得られる単量体に由来するものであるのが好ましい。構成単位(d)としては、特に、塩化ビニル、塩化ビニリデン、シクロヘキシルメタクリレート、ポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレートのアルキルエーテル、ジオクチルマレエートを由来とするのが好ましい。構成単位(d)は、組成物の基材への密着性の改良や、分散性の改良に寄与できる。
これに対応する市販品としては、「アサヒガードAG−E070」、「アサヒガードAG−E550D」(旭硝子社製)、「ユニダインTG−5546」、「ユニダインTG−5671」、「ユニダインTG−6071」(ダイキン工業社製)等が挙げられる。
<水系液体>
本実施形態における水系液体とは、水を溶媒とした流動性を有する液体であり、液体の粘度は問わない。特に糖類を含む液体など、食品用の液体を包含する。具体的にはヨーグルト、ゼリー、プリン、フルーツソース、シロップ、ケチャップ、ジュース、お粥、蜂蜜、糖蜜、液糖などが含まれる。
[第二実施形態]
本発明の第二実施形態に係る樹脂シートの例としては、図5に示すように、表面に撥液層(2)が積層された凸形状層(1)と基材層(4)との間に、シーラント樹脂層(3)が形成された樹脂シートである。すなわち、第二実施形態に係る樹脂シートの層構成は、上から下に向かって、撥液層(2)、凸形状層(1)、シーラント樹脂層(3)、基材層(4)である。ここで、撥液層と凸形状層は、第一実施形態において説明したものと同じであるので、説明を省略する。但し、凸形状層の厚みは、好ましくは50μm〜200μmである。50μm以上とすることで、凸形状の転写が不良なることを防ぐことができる。また、200μm以とすることで、生産コストが高くなることを防ぐことができる。
<基材層>
基材層は、スチレン系樹脂(耐衝撃性ポリスチレン、ポリブタジエン−ポリスチレン−ポリアクリロニトリルグラフト重合体など)、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリカーボネート、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ナイロン系樹脂(ナイロン6、ナイロン−66など)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂が好ましい。また、積層する場合、共押出成形による積層や無延伸フィルム、二軸延伸フィルムを用いた押出ラミネート成形、ドライラミネート成形による積層がある。
基材層としてはポリエステル系樹脂が好ましい。例えば、基材層となるポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリメチレンテレフタレート、および共重合成分として、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分や、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分などを共重合したポリエステル樹脂などを用いることができる。
基材層には、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、顔料、染料などの着色剤、シリコンオイル等の離型剤、ガラス繊維等の繊維状強化剤、タルク、クレイ、シリカなどの着色剤、スルホン酸とアルカリ金属などとの塩化合物やポリアルキレングリコール等の帯電防止剤及び紫外線吸収剤、抗菌剤のような添加剤を添加することができる。また、本発明の多層樹脂シートの製造工程で発生したスクラップ樹脂を混合して用いることもできる。
<シーラント樹脂層>
シーラント樹脂層は、凸形状層と基材層の接着性を発現させるものである。樹脂成分としては、100質量%の変性オレフィン系重合体樹脂、100質量部の熱可塑性エラストマーがある。
シーラント樹脂層としては、変性オレフィン系重合体が好ましい。変性オレフィン系重合体樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1等の炭素数2〜8程度のオレフィン、それらのオレフィンとエチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のオレフィンとの共重合体や酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物との共重合体等のオレフィン系樹脂;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体等のオレフィン系ゴムを、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等の不飽和カルボン酸、または、その酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステル等の誘導体、具体的には、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸グリシジル等でグラフト反応条件下に変性したもの;が代表的なものとして挙げられる。
なかでも、不飽和ジカルボン酸またはその無水物、特にマレイン酸またはその無水物で変性したエチレン−プロピレン−ジエン共重合体又はエチレン−プロピレン又はブテン−1共重合体ゴムが好適である。
シーラント樹脂層の厚みは、好ましくは20μm〜90μm、より好ましくは40〜80μmである。20μm未満であると、凸形状層と基材層間で層間剥離が発生する場合があり、また、90μmを超えると、生産コストが高くなる場合がある。
[第三実施形態]
本発明の第三実施形態に係る樹脂シートは、図6に示すように、第二実施形態で示したシーラント樹脂層(3)を用いずに、凸形状層(1)と基材層(4)を直接積層したものである。すなわち、第三実施形態に係る樹脂シートの層構成は、上から下に向かって、撥液層(2)、凸形状層(1)、基材層(4)であり、第二実施形態に係る熱可塑性樹脂シートからシーラント樹脂層を除いた層構成を有している。ここで、撥液層と凸形状層は、第一実施形態及び第二実施形態における層と同じであるので、説明を省略する。一方、本実施形態における基材層(4)は、凸形状層と十分な接着性を備えたものとするのが好ましい。
よって、第三実施形態に係る樹脂シートにおいて、基材層としては、凸形状層との接着性に優れるスチレン系樹脂を使用することが好ましい。スチレン系樹脂としては、好ましくは、60質量%〜15質量%、より好ましくは55質量%〜15質量%のポリスチレン樹脂と、40質量%〜85質量%、より好ましくは45質量%〜85質量%の耐衝撃性ポリスチレン樹脂とを含んでなるスチレン系基材層が好ましい。また、水添スチレン系熱可塑性エラストマーを添加したスチレン系樹脂組成物を用いることもできる。ポリスチレン樹脂と水添スチレン系熱可塑性エラストマーを併用するときは、90質量%〜95質量%のポリスチレン系樹脂と、5質量%〜10質量%の水添スチレン系熱可塑性エラストマーとを含んでなるスチレン系樹脂組成物が好ましい。この場合、水添スチレン系熱可塑性エラストマーの添加量が5質量%未満では凸形状層との接着性が不十分になり、層間剥離が発生する場合があり、10質量%を超えると生産コストが高くなる場合がある。
[第四実施形態]
本発明の第四実施形態に係る樹脂シートは、図7に示すように、撥液層(2)、凸形状層(1)、第1のシーラント樹脂層(3a)、酸素バリア基材層(5)、第2のシーラント樹脂層(3b)、基材層(4)の順に積層した樹脂シートである。第1のシーラント樹脂層と第2のシーラント樹脂層は組成が同じでも異なってもよい。凸形状層の厚みは、好ましくは50〜250μmである。50μm未満であると、凸形状の転写が不良なる場合がある。また、200μmを超えると、生産コストが高くなる場合がある。
<基材層>
第四実施形態で基材層として使用する樹脂としては、ナイロン系樹脂またはメタクリル酸エステル系樹脂が好ましい。ナイロン系樹脂としては、カプロラクタム、ラウロラクタム等のラクタム重合体、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m−又はp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミン単位と、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸単位との重縮合体、及びこれらの共重合体等が挙げられる。具体的には、ナイロン6、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6、ナイロン6/66、ナイロン6/610、ナイロン6/6T、ナイロン6I/6T等があり、なかでもナイロン6、ナイロンMXD6が好適である。
メタクリル酸エステル系樹脂は、メタクリル酸エステル単量体に基づくビニル重合体であれば、その構造などは特に限定するものではない。このメタクリル酸エステル単量体としては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル及びメタクリル酸ヘキシルなどが挙げられる。これらのうち、特にメタクリル酸メチルが好適である。また、メタクリル酸エステル単量体におけるプロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基などのアルキル基は、直鎖であってもよく、枝分かれしてもよい。また、本実施形態の樹脂組成物に配合されるメタクリル酸エステル樹脂は、メタクリル酸エステル単量体の単独重合体や、複数のメタクリル酸エステル単量体の共重合体であってもよい。又は、メタクリル酸エステル以外の公知のビニル化合物であるエチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル及びアクリル酸などに由来する単量体単位を有してもよい。
<酸素バリア基材層>
酸素バリア基材層としては、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ナイロン系樹脂が挙げられる。そのなかでも、加工性、成形性の面でエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂が好ましい。
エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂は、通常、エチレン−酢酸ビニル共重合体を鹸化して得られるものであり、酸素バリア性、加工性、成形性を具備する為に、エチレン含有量が10モル%〜65モル%、好ましくは20モル%〜50モル%で、鹸化度が90%以上、好ましくは95%以上のものが好ましい。
また、ナイロン系樹脂としては、カプロラクタム、ラウロラクタム等のラクタム重合体、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m−又はp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミン単位と、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸単位との重縮合体、及びこれらの共重合体等が挙げられる。
ナイロン系樹脂として、具体的には、ナイロン6、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6、ナイロン6/66、ナイロン6/610、ナイロン6/6T、ナイロン6I/6T等があり、なかでもナイロン6、ナイロンMXD6が好適である。
<シーラント樹脂層>
シーラント樹脂層としては、変性オレフィン系重合体が好ましい。変性オレフィン系重合体樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1等の炭素数2〜8程度のオレフィン、それらのオレフィンとエチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のオレフィンの共重合体や酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物との共重合体等のオレフィン系樹脂;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体等のオレフィン系ゴムを、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等の不飽和カルボン酸、または、その酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステル等の誘導体、具体的には、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸グリシジル等でグラフト反応条件下に変性したもの;が代表的なものとして挙げられる。
なかでも、不飽和ジカルボン酸またはその無水物、特にマレイン酸またはその無水物で変性したエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、又はエチレン−プロピレン又はブテン−1共重合体ゴムが好適である。
シーラント樹脂層の厚みとしては、何れの側も、好ましくは10μm〜50μm、より好ましくは20μm〜40μmである。10μm未満であると、十分な層間接着強度が得られなくなる場合があり、また、50μmを超えると、生産コストが高くなる場合がある。
[撥液性樹脂シートの製造]
本発明に係る樹脂シートの製造方法は、限定されず、如何なる方法によってもよいが、典型的には、一方の面に少なくとも1種類以上の凸形状を有する単層シート又は該凸形状を有する層を含む積層樹脂シートを作製し、最後に凸形状の表面に撥液層を形成する工程を含んでなる。
先ず、一方の面に少なくとも1種以上の凸形状を有する単層シート又は該凸形状を有する層を含む積層樹脂シートの作製に際しては、任意の樹脂シート成形方法を使用できる。例えば、単層の場合は1台の単軸押出機を、複層の場合は複数台の単軸押出機を用いて、各々の原料樹脂を溶融押出し、Tダイによって樹脂シートを得る方法が挙げられる。多層の場合は、マルチマニホールドダイを使用してもよい。尚、本発明の樹脂シートの各実施形態の層構成は、基本的に前述した通りであるが、他に、例えば、本発明の樹脂シートや部材の製造工程で発生したスクラップ原料を、物性等の劣化が見られない限り、基材層へ添加してもよいし、更なる層として積層してもよい。
次に、単層又は多層樹脂シートに凸形状を形成するが、この方法も特に制限はなく、当業者に知られている任意の方法を使用することができる。例えば、押出成形方式を用いて製造する方法、フォトリソグラフィー方式を用いて製造する方法、熱プレス方式を用いて製造する方法、パターンロールとUV硬化樹脂とを用いて製造する方法等である。
最後に、凸形状層の表面に、特定の含有量の疎水性無機微粒子及びバインダー樹脂を含む撥液層を形成する。撥液層を形成する方法は特に限定されず、例えば、ロールコーティング、グラビアコーティング、バーコート、ドクターブレードコーティング、刷毛塗り、粉体静電法等の公知の塗工方法を採用することができる。また塗工液を調製する際の溶媒も、特に限定されず、水の他、例えばアルコール(エタノール)、シクロヘキサン、トルエン、アセトン、IPA、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチルジグリコール、ペンタメチレングリコール、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ヘキシルアルコール等の有機溶剤を適宜選択することができる。この際、微量の分散剤、着色剤、沈降防止剤、粘度調整剤等を併用することもできる。
[物品]
本発明にかかる撥液性樹脂シートは、前記に示した撥液性が必要とされる物品に適用できる。以下、具体的に記載する。
本発明の撥液性樹脂シートは、食品容器、パウチ等の包装材や、雨合羽、傘などの生活用品、キッチン、風呂場、トイレなどの水回り部材、壁紙などの建材として適用できる。
例えば、本発明の撥液性樹脂シートは、食品容器、パウチなどに適用することで、内容物が容器などの内壁へ付着することを防止し、内容物を最後まで使い切り易いという効果やごみの分別時に容器を洗浄する手間を少なくする効果などが得られる。
例えば、本発明の撥液性樹脂シートは、雨合羽、傘などの雨具に適用することで、水滴が付着し難く、折りたたむ際に手に水滴などが付着し難いという効果も得られる。
例えば、本発明の撥液性樹脂シートは、浴室の壁パネルに適用することで、水滴などが付着し難いという効果が得られる。
例えば、本発明の撥液性樹脂シートは、内装材などに適用することで、汚れなどが付着し難いという効果が得られる。
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は実施例等の内容に何ら限定されるものではない。
実施例等で用いた各種原料は以下の通りである。
(1)凸形状層
(A)ランダムポリプロピレン「PM921V」(サンアロマー社製)、メルトマストフローレート:25g/10min(試験温度:230℃、荷重:2.16kg)
(2)撥液層
(B)疎水性無機微粒子:疎水性シリカ「AEROSIL R812S」(エボニック デグザ社製)、平均一次粒径:7nm、トリメチルシリル基修飾
(C)疎水性無機微粒子:疎水性シリカ「AEROSIL R8200」(エボニック デグザ社製)、平均一次粒径:12nm、トリメチルシリル基修飾
(D)疎水性無機微粒子:疎水性シリカ「AEROSIL NAX50」(日本アエロジル社製)、平均一次粒径:30nm、トリメチルシリル基修飾
(E)バインダー樹脂:オレフィン系共重合体「アクアテックスAC−3100」(ジャパンコーティングレジン社製)、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂
(F)バインダー樹脂:フッ素系共重合体「アサヒガードAG−E550D」(旭硝子社製)、(メタ)アクリレート系フッ素共重合体樹脂
実施例等で作製した樹脂シートについての各種特性の評価方法は以下の通りである。
(1)凸形状観察
シートの凸形状はレーザー顕微鏡VK−X100(キーエンス社製)を用いて、凸形状高さ、凸形状の頂点間隔を測定した。また、凸形状高さおよび頂点間隔を測定するために、ミクロトームを用いて凸形状断面サンプルを作製した。凸形状の高さは、樹脂シートの任意の3箇所より、それぞれ形状が同じ10個の高さを測定し、その30測定値の算術平均値を用いた。凸形状が2種類以上である場合は、第1の凸形状および第2の凸形状の高さをそれぞれについて同様な方法で求めた。頂点間隔については、樹脂シートの任意の3箇所より、隣接する10個の凸形状の頂点間隔を測定し、その30測定値の算術平均値を用いた。凸形状が2種類以上である場合は、第1の凸形状と第2の凸形状の頂点間隔を測定し、その30測定値の算術平均値を用いた。
(2)接触角及び転落角
接触角及び転落角は、樹脂シートについて、自動接触角計DM−501(協和界面科学社製)を用いて測定した。また、試験液は純粋はちみつ(日新蜂蜜社製)、トマトケチャップ(カゴメ社製)を用い、滴下量は、接触角測定時は8μL、転落角測定時は20μLとした。接触角が130°以上であると撥液性が高く、液体の付着を防止できると判定できる。また転落角が40°以下であると撥液性が高く、液体の付着を防止できると判定できる。
(3)加圧試験
加圧試験は、樹脂シート上に試験液を1g乗せ、さらに液上から円筒状ポリプロピレン製ケース(以下、円筒ケース)を乗せることで行った。円筒ケースは、直径32mm、重さ70gであり、液体に加わる圧力は866Paとなる。加圧後、円筒ケースを取り去ったときの樹脂シート上の液残り体の付着について、図8に示すように、全く付着がない状態を「5」、最も付着がある状態を「1」として、目視により5段階で評価した。この5段階評価において、「4」以上であれば付着が抑制されていると判断した。
<実施例1(図1の層構成)>
1台の65mm単軸押出機を使用し、Tダイ法により、樹脂シートを押し出した。この押出しシートを、レーザー彫刻法で表面に凹凸形状を付与した転写ロールとタッチロールでキャスティングし、表面に凸形状を付与した凸形状層を有する樹脂シートを得た。
ついで、凸形状層の表面に撥液層を形成するために、疎水性シリカとバインダー樹脂を、撥液層中の疎水性シリカが90質量%、バインダー樹脂が10質量%となる組成比に混合した分散液(溶媒はいずれも精製水/イソプロピルアルコールの混合液)を作製した。この混合分散液をバーコーターを用いて凸形状層表面にコーティングし、これを90℃で乾燥させて撥液層を形成させた。
<実施例2〜8、比較例1〜5>
撥液層の組成、撥液層の有無及び凸形状の有無を表1に示すように設定した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜8及び比較例1〜5に係る樹脂シートを作製し、評価した。撥液層の組成を表1に示し、結果を表2に示した。
なお、比較例1〜3では、撥液層中のシリカ微粒子含有量及びバインダー樹脂含有量を変更し、比較例4では撥液層を形成せず、比較例5では凸形状を付与していない。
Figure 0006941597
Figure 0006941597
表2に示した結果から以下のことが明らかになった。
実施例1〜8の全てにおいて、シートでの各液体に対する撥液性(接触角、転落角、加圧試験)に関し、接触角130°以上、転落角40°以下、加圧試験4以上という結果が得られた。これに対して、比較例1では加圧試験で撥液層が剥がれ落ち、形成された撥液層を維持することができなかった。比較例2では、接触角130°以上、転落角40°以下という結果が得られたものの、加圧試験において3以下となった。比較例3では、接触角130°以上という結果が得られたものの、転落角40°以上、加圧試験において2以下となった。また、比較例4及び5では接触角、転落角及び加圧試験の何れに関しても効果が得られなかった。
以上、様々な実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
1a 凸形状
1b 凸部頂点
1c 第1の凸部頂点
1d 第2の凸部頂点
h 凸形状高さ
t 凸形状頂点間隔
2 撥液層
3 シーラント樹脂層
3a 第1のシーラント樹脂層
3b 第2のシーラント樹脂層
4 基材層
5 酸素バリア性基材層

Claims (15)

  1. 少なくとも1種の微細な凸形状を有し熱可塑性樹脂組成物を含む凸形状層と、前記凸形状層の凸形状を有する面に疎水性無機微粒子及びバインダー樹脂を含む撥液層とを備え、
    前記撥液層における疎水性無機微粒子の含有量が80質量%を越え、かつ95質量%以下であり、バインダー樹脂の含有量が5質量%以上かつ20質量%未満であり、
    前記疎水性無機微粒子の平均一次粒子径が、5nm〜1000nmであり、
    前記バインダー樹脂が、オレフィン系共重合体及びフッ素系共重合体から選択される1種類以上の樹脂を含み、
    凸形状の高さが20μm〜150μmであり、隣接する凸形状の頂点間隔が20μm〜100μmである、撥液性樹脂シート。
  2. 糖を含む水系液体に対して撥液性を有する、請求項1に記載の撥液性樹脂シート。
  3. 前記熱可塑性樹脂組成物の230℃でのメルトマスフローレートが5g/10分以上である、請求項1または2に記載の撥液性樹脂シート。
  4. 前記熱可塑性樹脂組成物が、ポリオレフィン系樹脂組成物を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の撥液性樹脂シート。
  5. 前記ポリオレフィン系樹脂組成物が、ポリオレフィン系樹脂を35質量%〜100質量%含有する、請求項4に記載の撥液性樹脂シート。
  6. 前記疎水性無機微粒子が、表面にトリメチルシリル基を有する疎水性シリカ微粒子である、請求項1から5のいずれか一項に記載の撥液性樹脂シート。
  7. 前記凸形状が、第1の凸形状と第2の凸形状とからなり、第1の凸形状の高さおよび第2の凸形状の高さがそれぞれ20μm〜150μmであり、隣接する凸形状の頂点間隔が20μm〜100μmである、請求項1からのいずれか一項に記載の撥液性樹脂シート。
  8. 前記凸形状層の厚みが、50μm〜200μmである、請求項1からのいずれか一項に記載の撥液性樹脂シート。
  9. 前記撥液層を有する側の表面が、糖類を含む液体と接触したときの接触角が130°以上であり、かつ転落角が40°以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の撥液性樹脂シート。
  10. 前記凸形状層の表面において、液体上から866Paの圧力を加えても撥液性が維持される、請求項1からのいずれか一項に記載の撥液性樹脂シート。
  11. 前記凸形状層の凸形状を有する面の他方の面に、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、及びアクリル系樹脂から選択される1種類以上の樹脂を含む1層以上の基材層が積層された、請求項1から10のいずれか一項に記載の撥液性樹脂シート。
  12. 前記凸形状層と前記基材層との間に、変性オレフィン系重合体樹脂および熱可塑性エラストマーから選択される少なくとも1種の樹脂を含むシーラント樹脂層が形成された、請求項11に記載の撥液性樹脂シート。
  13. 請求項1から12のいずれか一項に記載の撥液性樹脂シートを用いた物品。
  14. 生活用品、包装材又は建材である、請求項13に記載の物品。
  15. 食品容器、パウチ、雨合羽、傘、壁紙又は水回り部材である請求項14に記載の物品。
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