JP6694388B2 - 撥液性樹脂シートおよびそれを用いた建材用シート、生活品包装材用シート - Google Patents

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Description

本発明は、撥液性を備えた樹脂シートおよびそれを用いた建材用シート、生活品包装材用シートに関する。
従来から、壁紙などの建材用シート、清涼飲料水や果汁飲料、嗜好飲食品等の食品や生活用品包装材用シートとしては、紙材に高分子素材をコートしたシートが用いられてきた。例えば、特許文献1には、不織布にフッ素系共重合体をコートしたシートが提案されている。また、特許文献2、3では、紙材用、布用の撥液剤も提案されている。
一方、ディスプレイ部材などにおいては、PET樹脂に撥油剤をコートしたフィルムが提案されている(特許文献4)。さらに、自動車用部品においては、凹凸形状の表面に撥水剤をコートしたフィルムも提案されている(特許文献5)。
上記紙材やPET樹脂などに撥油剤をコートしたシート及びフィルムを、食品や生活用包装材料として用いる場合、食品(油系液体)が付着する問題があり、例えば、パウチ用シートでは、油系、又は界面活性剤系の液体が包装材に付着する虞もあった。しかしながら、特許文献1〜4に記載された手段では、このような問題を十分には解消できなかった。また、特許文献5に記載された手段でも、油系の液体および界面活性剤系の液体などに対しては、このような問題を十分には解消できなかった。
特開2010−196196号公報 特開2009−256506号公報 特開2007−291373号公報 特開2009−104054号公報 特開2008−122435号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、本発明の主たる態様では、建材用、生活品包装材用として使用した場合に、シート表面に油系の液体および界面活性剤系の液体が付着してしまうことを低減した撥液性樹脂シートを提供することを目的とする。さらに、この撥液性樹脂シートを用いて製造される、建材用シートおよび酸素バリア性に優れる食品包装材用シートを提供することを目的とする。
すなわち、本発明者は、油系の液体および界面活性剤系の液体の付着を防止するには撥液性を付与すればよいと考え、様々な撥液性発現手段を検討した結果、シート表面に微細な凹凸形状を付与し、かつ撥液剤を塗工することにより、油系、界面活性剤系の液体の付着防止を可能にする高い撥液性をシート表面に付与することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記課題を解決する本発明は、下記より構成される。
(1)ポリオレフィン系樹脂を含む組成物からなり微細な凹凸形状を有する凹凸形状層を有し、前記凹凸形状層の一方の面に少なくとも1種類以上の凸形状を有し、前記凸形状を有する面に、疎水性酸化物微粒子およびフッ素系共重合体樹脂を含有する撥液層が形成された撥液性樹脂シート。
(2)前記凹凸形状層の他方の面に、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、及びアクリル系樹脂から選択される樹脂からなる層を少なくとも1層以上有する基材層が積層された、(1)に記載の撥液性樹脂シート。
(3)前記樹脂組成物が、ポリオレフィン系樹脂を35質量%〜100質量%含有する、(1)または(2)に記載の撥液性樹脂シート。
(4)前記凹凸形状層と前記基材層との間に、変性オレフィン系重合体樹脂および水添スチレン系熱可塑性エラストマーから選択されるシ少なくとも1種の樹脂からなるシーラント樹脂層が形成されてなる、(1)から(3)の何れか一つに記載の撥液性樹脂シート。(5)前記凸形状が、第1の凸形状と第2の凸形状とからなり、第1の凸形状の高さおよび第2の凸形状の高さがそれぞれ20μm〜150μmであり、隣接する凸形状の頂点間隔が20μm〜100μmである、(1)から(4)の何れか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(6)前記第1の凸形状及び第2の凸形状が千鳥配置され、第1の凸形状の高さに対する第2の凸形状の高さの比が0.4以上0.8以下である、(5)に記載の撥液性樹脂シート。
(7)前記樹脂組成物が、230℃でのメルトマスフローレートが5g/10分以上である、(1)から(6)の何れか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(8)前記疎水性酸化物微粒子が、表面にトリメチルシリル基を有する疎水性シリカ微粒子である、(1)から(7)の何れか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(9)前記撥液層中の前記疎水性酸化物微粒子の含有量が20質量%〜70質量%であり、前記フッ素系共重合体樹脂の含有量が70質量%〜30質量%である、(1)から(8)の何れか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(10)前記凹凸形状層の厚みが、50μm〜200μmである、(1)から(9)の何れか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(11)前記凹凸形状層の表面が、油系液体または界面活性剤系液体と接触したときの接触角が130°以上であり、かつ転落角が40°以下である、(1)から(10)の何れか一つに記載の撥液性樹脂シート。
(12)(1)から(11)の何れか一つに記載の撥液性樹脂シートを用いた建材用シート。
(13)(1)から(11)の何れか一つに記載の撥液性樹脂シートを用いた生活品包装材用シート。
(14)壁紙部材用シートである(12)に記載の建材用シート。
(15)水回り部材用シートである(13)に記載の生活品包装材用シート。
(16)食品容器の蓋材用シートである(13)に記載の生活品包装材用シート。
(17)パウチ用シートである請求項(13)に記載の生活品包装材用シート。
本発明では、ポリオレフィン系樹脂組成物からなる微細な凹凸形状を有する凹凸形状層において、一方の面に少なくとも1種類以上の凸形状を有し、前記凸形状を有する面に、疎水性酸化物微粒子およびフッ素系共重合体樹脂を含有する撥液層が形成された撥液性樹脂シートにより、シート表面に油系の液体および界面活性剤系の液体に対する付着防止性が顕著に改善されることを見出した。また、前記凹凸形状層の他方の面にスチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、アクリル系樹脂から選択される樹脂からなる層を少なくとも1層以上有する基材層を積層することにより、酸素バリア性および耐候性が良好となる。このため、本発明の撥液性樹脂シートは、壁紙部材等の建材用シートや、水周り部材、食品容器の蓋材、パウチ用等の生活包装用シートに好適に用いることができる。
本発明の第一実施形態に係る撥液性樹脂シートを示す概略縦側断面図である。 図1の撥液性樹脂シートの概略平面図である。 本発明の第一実施形態に係る撥液性樹脂シートの他の形態の概略縦側断面図である。 図3の撥液性樹脂シートの概略平面図である。 本発明の第二実施形態に係る撥液性樹脂シートの積層構造を示す概略縦側断面図である。 本発明の第三実施形態に係る撥液性樹脂シートの積層構造を示す概略縦側断面図である。 本発明の第四実施形態に係る撥液性樹脂シートの積層構造を示す概略縦側断面図である。 耐衝撃性ポリスチレンの単層シート(900μm厚)を使用し、真空成形した容器である。
本発明に係る撥液性樹脂シート(以下、「樹脂シート」と略す。)は、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物(以下、「ポリオレフィン系樹脂」ということがある。)からなる凹凸形状層において、一方の面に少なくとも1種類以上の凸形状を有し、この凸形状を有する面に、疎水性酸化物微粒子およびフッ素系共重合体樹脂を含有する撥液層を備える。以下、樹脂シートの種々の実施形態を説明し、ついで樹脂シートの製造方法について説明するが、一実施形態について記載した特定の説明が他の実施形態についても当てはまる場合には、他の実施形態においてはその説明を省略している。
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る樹脂シートは、図1および図3に示すように、一方の面に少なくとも1種類以上の凸形状(1a)を備えた、微細な凹凸形状を有するポリオレフィン系樹脂組成物からなる凹凸形状層を含む。また、凸形状の一方の面には撥水層(2)を備え、撥液層は疎水性酸化物微粒子を含むフッ素系共重合体樹脂からなる。
<凹凸形状層>
凸形状は、図1に示すように1種類の凸形状であってもかまわないが、図3に示すように、形状(高さ)の異なる第1の凸形状と第2の凸形状を有することが好ましい。また、形状の異なる3種以上の凸形状を設けてもよい。ここで第1の凸形状の高さは、第2の凸形状の高さより高いものとする。第1の凸形状と、第2の凸形状を用いる場合、その配置には制約がないが、第1の凸形状と第2の凸形状は交互に配置されていることが撥液性の面で好ましい。凸形状の配置形態は特に限定はされず、縦横に配置した碁盤目配置、千鳥配置がある。より撥水性を維持したければ、千鳥配置が好ましい。なお、凹凸形状層の形成方法としては、樹脂シート表面を、レーザー彫刻法で凹凸形状を形成した転写ロールとタッチロールでキャスティングすることにより形成する方法や、ベルト状金型を利用し、シートを加熱、加圧により凹凸転写する方法などが挙げられる。
凸形状は、高さ(h)が20μm〜150μmであることが好ましい。凸形状高さが20μm未満では、撥液性を十分には確保できない場合があり、凸形状高さが150μmを超えると凹凸形状を付与するための金型での凹凸形状寸法が不安定になる場合がある。なお、凸形状高さには、後述する撥液層の厚み(100nm〜4000nm)も含んでいる。
隣接する凸形状の頂点間隔(t)は20μm〜100μmであることが好ましい。なお頂点間隔とは、隣接する最短距離にある凸形状の頂点の間隔であり、相互の凸形状が異なっても隣接するものであれば、その凸形状の頂点の間隔を意味する。頂点間隔が20μm未満では、凹凸形状を付与するための金型での凹凸形状寸法が不安定になる場合がある。また、100μmを超えると撥液性が低下する場合がある。
なお、凸形状高さ及び凸形状の頂点間隔は、レーザー顕微鏡(例えば、キーエンス社製
VK−X100)を用いて測定することができる。
2種類の凸形状を用いる場合、第1の凸形状に対する第2の凸形状の高さの比は、0.4以上0.8以下であることが好ましい。高さの比を0.4以上0.8以下にすることでより効果的に撥液性を得ることができる。
凸形状の底面は、三角錐、四角錘、六角錐、八角錐、円錐などの錐形状、角錐台形状、円錐台形状でもよいが、本発明者が本実施形態に係る樹脂シートの構成において種々検討した結果、六角錐形状の凸形状が特に好ましいことが分かった。
本発明の樹脂シートは、凹凸形状層を形成する樹脂組成物として、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物が使用される。樹脂組成物中のポリオレフィン系樹脂の含有量は、35質量%以上であることが好ましい。35質量%以上とすることで凹凸形状の転写性を向上することができる。上限値は、特に限定されず、例えば、80質量%以下、又は100質量%以下とすることができる。
また、ポリオレフィン系樹脂組成物の230℃におけるメルトマスフローレートは、5g/10分以上であることが好ましい。5g/10分とすることで、凹凸形状の転写性を向上することができる。なお、メルトマスフレートは、JIS K 7210に準拠し、試験温度230℃、荷重2.16kgの条件下で測定した場合の値である。
ポリオレフィン系樹脂とは、α−オレフィンを単量体として含む重合体からなる樹脂を意味し、特にポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂を含むことが好ましい。ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状中密度ポリエチレン等が挙げられ、また単体のみならず、それらの構造を有する共重合物やグラフト物やブレンド物も含まれる。後者の樹脂(共重合物やブレンド物)としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体や、さらにこれらの共重合体と酸無水物との3元共重合体等とブレンドしたもののように、ポリエチレン鎖に極性基を有する樹脂を共重合およびブレンドしたものが挙げられる。
また、ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンなどが挙げられる。ホモポリプロピレンを用いる場合、該ホモポリプロピレンの構造は、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックのいずれであってもよい。ランダムポリプロピレンを用いる場合、プロピレンと共重合させるαオレフィンとしては、好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数4〜12のものが挙げられ、例えばエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどを例示できる。ブロックポリプロピレンを用いる場合、ブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト共重合体等が挙げられる。これらオレフィン樹脂を単独で使用する以外に、他のオレフィン系樹脂を併用することもできる。
樹脂組成物中には、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、スチレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂等を挙げることができる。スチレン系樹脂としては、汎用ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、スチレン−共役ジエンブロック共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等を挙げることができる。他の樹脂の含有量は、凹凸形状層中に50質量%以下とすることが好ましく、20質量%以下とすることがより好ましい。
<撥液層>
撥液層には、疎水性酸化物微粒子とフッ素系共重合樹脂とを含む。撥液層の厚さは100nm〜4000nmであることが好ましいが、本発明の効果が得られればこの数値範囲に限定されない。なお、本発明における「撥液性」とは、樹脂シートへの油系の液体または界面活性剤系の液体との付着を防止するのに十分な程度の撥液性を意味し、具体的には、これらの液体の樹脂シートに対する液体の接触角が130°以上であり、かつ液体の転落角が40°以下であることを意味するものとする。
疎水性酸化物微粒子としては、疎水基を有する酸化物微粒子であればよく、表面処理により疎水化された酸化物微粒子であってもよい。例えば、親水性酸化物微粒子をシランカップリング剤等で表面処理を施し、表面状態を疎水性とした微粒子を用いることもできる。酸化物の種類も、疎水性を有するものであれば限定されない。これらの中では、疎水性ヒュームドシリカ、溶融シリカ、アルミナ、チタニア等の少なくとも1種を用いることができる。疎水性であればこれらの粒子の形状には制約がなく、球形、非球形(破砕状)のいずれの形状も使用することができる。
これらの具体例としては、例えば、シリカとしては、製品名「AEROSIL R972」、「AEROSIL R972V」、「AEROSIL R972CF」、「AEROSIL R974」、「AEROSIL RX200」、「AEROSIL RY200」(以上、日本アエロジル株式会社製)、「AEROSIL R202」、「AEROSIL R805」、「AEROSIL R812」、「AEROSIL R812S」、(以上、エボニック デグサ社製)等が挙げられる。チタニアとしては、製品名「AEROXIDE TiO2 T805」(エボニック デグサ社製)等が例示できる。アルミナとしては、製品名「AEROXIDE Alu C」(エボニック デグサ社製)等をシランカップリング剤で処理して粒子表面を疎水性とした微粒子が例示できる。
具体的には、より優れた撥水性が得られるという点において、表面にトリメチルシリル基やジメチルシロキサン基を有する疎水性シリカ微粒子が好ましい。市販品としては、例えば前記「AEROSIL R812」、「AEROSIL R812S」「AEROSIL RY300」(エボニック デグサ社製)等が挙げられる。
疎水性酸化物微粒子としては、一次粒子の平均粒子径が5nm〜1000nmであるものが好ましく、7nm〜200nmであるものがより好ましい。一次粒子の平均粒子径を5nm〜1000nmとすることで、撥液性が良好となると共に、フッ素系共重合体樹脂への分散性が良好となる。なお、一次粒子の平均粒子径とは、走査型電子顕微鏡を用いて3000個〜5000個の疎水性酸化物微粒子の直径を測定して、平均値を算出することにより得られる値のことをいう。
フッ素系共重合体樹脂は、フッ素原子を含有する共重合体であり、以下に述べる共重合体(1)と共重合体(2)とを含有することが好ましい。共重合体(1)と共重合体(2)は、以下に述べる構成単位(a)〜(d)を含有できる。ただし、共重合体(1)は、構成単位(a)および構成単位(b)を含有し、共重合体(2)は、構成単位(a)および構成単位(c)を含有する。共重合体(1)が主に樹脂シートの撥液性の発現に寄与し、共重合体(2)が主に樹脂シートの耐久性に寄与する。
構成単位(a)は、水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換されたアルキル基であり、炭素原子数は1〜6である。構成単位(a)は、炭素−炭素不飽和二重結合などの不飽和基を1個以上有する鎖状ポリフルオロ炭化水素基であってもよい。不飽和基としては(メタ)アクリレートが好ましい。
構成単位(b)は、炭素原子数が16〜40の飽和炭化水素基を有する単量体であることが好ましく、炭素原子数16〜40のアルキル基を含有する(メタ)アクリレートであることがより好ましく、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートであることがさらに好ましい。
構成単位(c)は、フッ素原子を含まず、架橋しうる官能基を有する単量体に由来する単量体である。架橋しうる官能基としては、イソシアネート基、ブロックドイソシアネート基、アルコキシシリル基、アミノ基、アルコキシメチルアミド基、シラノール基、アンモニウム基、アミド基、エポキシ基、水酸基、オキサゾリン基、カルボキシル基、アルケニル基、スルホン酸基等が好ましい。また、エポキシ基、水酸基、ブロックドイソシアネート基、アルコキシシリル基、アミノ基、カルボキシル基がより好ましい。
構成単位(c)を形成する単量体としては、(メタ)アクリレート類、共重合可能な基を2個以上もつ化合物(例えば、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート等)、ビニルエーテル類またはビニルエステル類が好ましく挙げられる。構成単位(c)は、2種以上の混合物を由来としてもよい。構成単位(c)は、主に撥液膜の造膜性、撥液性組成物の基材との接着性や密着性に影響し、耐久性を高めることに寄与する。
構成単位(d)は、構成単位(a)、(b)および(c)以外の重合性基を有する単量体に由来する構成単位である。また、造膜性が良好で、均一な共重合体溶液または分散液が得られる単量体に由来するものであるのが好ましい。構成単位(d)としては、特に、塩化ビニル、塩化ビニリデン、シクロヘキシルメタクリレート、ポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレートのアルキルエーテル、ジオクチルマレエートを由来とするのが好ましい。構成単位(d)は、組成物の基材への密着性の改良や、分散性の改良に寄与できる。
これに対応する市販品としては、「AG−E070」、「AG−E550D」(旭硝子社製)等が挙げられる。
撥液層は、好ましくは、疎水性酸化物微粒子の含有量が20質量%〜70質量%、フッ素系共重合体樹脂の含有量が70質量%〜30質量%であることが好ましい。この範囲の組成とすることによって、多層樹脂シートで、液体の転落性を得ることができる。これに対して、疎水性酸化物微粒子の含有量が20質量%未満では、満足できる撥液性、液体の転落性を得られない場合があり、疎水性酸化物微粒子の含有量が70質量%を超えると、疎水性酸化物微粒子が剥がれ落ちる場合がある。
凹凸形状面に撥液層を形成する方法としては、予めイソピルアルコール(IPA)に疎水性酸化物微粒子を添加した分散液を調製し、その後、フッ素系樹脂共重合体の水分散液とで任意の割合で調整した分散液を前記凹凸形状面にコーター等で塗布する方法が採用される。
[第二実施形態]
本発明の第二実施形態に係る樹脂シートの例としては、図5に示すように、表面に撥液層(2)が積層された凹凸形状層(1)と基材層(4)との間に、シーラント樹脂層(3)が形成された樹脂シートである。すなわち、第二実施形態に係る樹脂シートの層構成は、上から下に向かって、撥液層(2)、凹凸形状層(1)、シーラント樹脂層(3)、基材層(4)である。ここで、撥液層と凹凸形状層は、第一実施形態において説明したものと同じであるので、説明を省略する。但し、凹凸形状層の厚みは、好ましくは50μm〜200μmである。50μm未満であると、凹凸形状の転写が不良なる場合がある。また、200μmを超えると、生産コストが高くなる場合がある。
<基材層>
基材層は、スチレン系樹脂(耐衝撃性ポリスチレン、ポリブタジエン−ポリスチレン−ポリアクリロニトリルグラフト重合体など)、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリカーボネート、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ナイロン系樹脂(ナイロン6、ナイロン−66など)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂が好ましい。また、積層する場合、共押出成形による積層や無延伸フィルム、二軸延伸フィルムを用いた押出ラミネート成形、ドライラミネート成形による積層がある。
基材層としては、ポリエステル系樹脂が好ましい。例えば、基材層となるポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリメチレンテレフタレート、および共重合成分として、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分や、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分などを共重合したポリエステル樹脂などを用いることができる。
基材層には、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、顔料、染料などの着色剤、シリコンオイル等の離型剤、ガラス繊維等の繊維状強化剤、タルク、クレイ、シリカなどの着色剤、スルホン酸とアルカリ金属などとの塩化合物やポリアルキレングリコール等の帯電防止剤及び紫外線吸収剤、抗菌剤のような添加剤を添加することができる。また、本発明の多層樹脂シートの製造工程で発生したスクラップ樹脂を混合して用いることもできる。
<シーラント樹脂層>
シーラント樹脂層は、凹凸形状層と基材層の接着性を発現させるものである。樹脂成分としては、100質量%の変性オレフィン系重合体樹脂、100質量部の水添スチレン系熱可塑性エラストマーがある。
シーラント樹脂層としては、変性オレフィン系重合体が好ましい。変性オレフィン系重合体樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1等の炭素数2〜8程度のオレフィン、それらのオレフィンとエチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のオレフィンの共重合体や酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物との共重合体等のオレフィン系樹脂や、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体等のオレフィン系ゴムを、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等の不飽和カルボン酸、または、その酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステル等の誘導体、具体的には、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸グリシジル等でグラフト反応条件下に変性したものが代表的なものとして挙げられる。
なかでも、不飽和ジカルボン酸またはその無水物、特にマレイン酸またはその無水物で変性したエチレン−プロピレン−ジエン共重合体又はエチレン−プロピレン又はブテン−1共重合体ゴムが好適である。
シーラント樹脂層の厚みは、好ましくは20μm〜90μm、より好ましくは40μm〜80μmである。20μm未満であると、凹凸形状層と基材層間で層間剥離が発生する場合があり、また、90μmを超えると、生産コストが高くなる場合がある。
[第三実施形態]
本発明の第三実施形態に係る樹脂シートは、図6に示すように、第二実施形態で示したシーラント樹脂層(3)を用いずに、凹凸形状層(1)と基材層(4)を直接積層したものである。すなわち、第三実施形態に係る樹脂シートの層構成は、上から下に向かって、撥液層(2)、凹凸形状層(1)、基材層(4)であり、第二実施形態に係る熱可塑性樹脂シートからシーラント樹脂層を除いた層構成を有している。ここで、撥液層と凹凸形状層は、第一実施形態及び第二実施形態における層と同じであるので、説明を省略する。一方、本実施形態における基材層(4)は、凹凸形状層と十分な接着性を備えたものとするのが好ましい。
よって、第三実施形態に係る樹脂シートにおいて、基材層としては、凹凸形状層との接着性に優れるスチレン系樹脂を使用することが好ましい。スチレン系樹脂としては、好ましくは、60質量%〜15質量%、より好ましくは55質量%〜15質量%のポリスチレン樹脂と、40質量%〜85質量%、より好ましくは45質量%〜85質量%の耐衝撃性ポリスチレン樹脂とを含んでなるスチレン系基材層が好ましい。また、水添スチレン系熱可塑性エラストマーを添加したスチレン系樹脂組成物を用いることもできる。ポリスチレン樹脂と水添スチレン系熱可塑性エラストマーを併用するときは、90質量%〜95質量%のポリスチレン系樹脂と、5質量%〜10質量%の水添スチレン系熱可塑性エラストマーとを含んでなるスチレン系樹脂組成物が好ましい。この場合、水添スチレン系熱可塑性エラストマーの添加量が5質量%未満では凹凸形状層との接着性が不十分になり、層間剥離が発生する場合があり、10質量%を超えると生産コストが高くなる場合がある。
[第四実施形態]
本発明の第四実施形態に係る樹脂シートは、図7に示すように、撥液層(2)、凹凸形状層(1)、第1のシーラント樹脂層(3a)、酸素バリア基材層(5)、第2のシーラント樹脂層(3b)、基材層(4)の順に積層した樹脂シートである。第1のシーラント樹脂層と第2のシーラント樹脂層は、組成が同じでも異なってもよい。凹凸形状層の厚みは、好ましくは50μm〜250μmである。50μm未満であると、凹凸形状の転写が不良なる場合がある。また、200μmを超えると、生産コストが高くなる場合がある。
<基材層>
第四実施形態で基材層として使用する樹脂としては、ナイロン系樹脂またはメタクリル酸エステル系樹脂が好ましい。ナイロン系樹脂としては、カプロラクタム、ラウロラクタム等のラクタム重合体、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m−又はp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミン単位と、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸単位との重縮合体、及びこれらの共重合体等が挙げられる。具体的には、ナイロン6、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6、ナイロン6/66、ナイロン6/610、ナイロン6/6T、ナイロン6I/6T等があり、なかでもナイロン6、ナイロンMXD6が好適である。
メタクリル酸エステル系樹脂は、メタクリル酸エステル単量体に基づくビニル重合体であれば、その構造などは特に限定するものではない。このメタクリル酸エステル単量体としては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル及びメタクリル酸ヘキシルなどが挙げられる。これらのうち、特にメタクリル酸メチルが好適である。また、メタクリル酸エステル単量体におけるプロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基などのアルキル基は、直鎖であってもよく、枝分かれしてもよい。また、本実施形態の樹脂組成物に配合されるメタクリル酸エステル樹脂は、メタクリル酸エステル単量体の単独重合体や、複数のメタクリル酸エステル単量体の共重合体であってもよい。又は、メタクリル酸エステル以外の公知のビニル化合物であるエチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル及びアクリル酸などに由来する単量体単位を有してもよい。
<酸素バリア基材層>
酸素バリア基材層としては、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ナイロン系樹脂が挙げられる。そのなかでも、加工性、成形性の面でエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂が好ましい。
エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂は、通常、エチレン−酢酸ビニル共重合体を鹸化して得られるものであり、酸素バリア性、加工性、成形性を具備する為に、エチレン含有量が10モル%〜65モル%、好ましくは20モル%〜50モル%で、鹸化度が90%以上、好ましくは95%以上のものが好ましい。
また、ナイロン系樹脂としては、カプロラクタム、ラウロラクタム等のラクタム重合体、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m−又はp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミン単位と、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸単位との重縮合体、及びこれらの共重合体等が挙げられる。
ナイロン系樹脂として、具体的には、ナイロン6、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6、ナイロン6/66、ナイロン6/610、ナイロン6/6T、ナイロン6I/6T等があり、なかでもナイロン6、ナイロンMXD6が好適である。
<シーラント樹脂層>
シーラント樹脂層としては、変性オレフィン系重合体が好ましい。変性オレフィン系重合体樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1等の炭素数2〜8程度のオレフィン、それらのオレフィンと、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数2〜20程度の他のオレフィンとの共重合体や酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物との共重合体等のオレフィン系樹脂や、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体等のオレフィン系ゴムを、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等の不飽和カルボン酸、または、その酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステル等の誘導体、具体的には、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸グリシジル等でグラフト反応条件下に変性したものが代表的なものとして挙げられる。
なかでも、不飽和ジカルボン酸またはその無水物、特にマレイン酸またはその無水物で変性したエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、又はエチレン−プロピレン又はブテン−1共重合体ゴムが好適である。
シーラント樹脂層の厚みとしては、何れの側も、好ましくは10μm〜50μm、より好ましくは20μm〜40μmである。10μm未満であると、十分な層間接着強度が得られなくなる場合があり、また、50μmを超えると、生産コストが高くなる場合がある。
<撥液性樹脂シートの製造>
本発明に係る樹脂シートの製造方法は、限定されず、如何なる方法によってもよいが、典型的には、一方の面に少なくとも1種類以上の凸形状を有する単層シート又は該単層シートを凹凸形状層として含む積層樹脂シートを作製し、最後に凹凸形状の表面に撥液層を形成する工程を含む。
先ず、一方の面に少なくとも1種以上の凸形状を有する単層シート又は該単層シートを凹凸形状層として含む積層樹脂シートの作製に際しては、任意の樹脂シート成形方法を使用できる。例えば、単層の場合は1台の単軸押出機を、複層の場合は複数台の単軸押出機を用いて、各々の原料樹脂を溶融押出し、Tダイによって樹脂シートを得る方法が挙げられる。多層の場合は、マルチマニホールドダイを使用してもよい。尚、本発明の樹脂シートの各実施形態の層構成は、基本的に前述した通りであるが、他に、例えば、本発明の樹脂シートや成形容器の製造工程で発生したスクラップ原料を、物性等の劣化が見られない限り、基材層へ添加してもよいし、更なる層として積層してもよい。
次に、単層又は多層樹脂シートに凹凸形状を形成するが、この方法も特に制限はなく、当業者に知られている任意の方法を使用することができる。例えば、押出成形方式を用いて製造する方法、フォトリソグラフィー方式を用いて製造する方法、熱プレス方式を用いて製造する方法、パターンロールとUV硬化樹脂とを用いて製造する方法等である。
最後に、凹凸形状層の表面に撥液層を形成する。撥液層を形成する方法は特に限定されず、例えば、ロールコーティング、グラビアコーティング、バーコート、ドクターブレードコーティング、刷毛塗り、粉体静電法等の公知の塗工方法を採用することができる。また塗工液を調製する際の溶媒も、特に限定されず、水の他、例えばアルコール(エタノール)、シクロヘキサン、トルエン、アセトンIPA、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチルジグリコール、ペンタメチレングリコール、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ヘキシルアルコール等の有機溶剤を適宜選択することができる。この際、微量の分散剤、着色剤、沈降防止剤、粘度調整剤等を併用することもできる。
本発明に係る樹脂シートは、凹凸形状層の凸部に撥液層を有し、微細な凹凸形状と撥液層による撥液性が相俟って優れた撥液性を示す。すなわち、本発明の樹脂シートは、前述したように、液体の接触角が130°以上であり、十分な撥液性を有しており、液体が樹脂シート上を転がる。接触角が130°未満では樹脂シート上で液体の転落性が得られない場合があり、撥液性を具備しているとは言えない。また、本発明に係る樹脂シートにおいては、液体の転落角が40°以下であることが好ましい。転落角が40°を越えると樹脂シート上で液体の転落性が得られない場合があり、撥液性を具備しているとは言えない。なお、接触角及び転落角は、樹脂シートについて、自動接触角計(例えば、協和界面科学株式会社製 DM−501)を用いて測定することができる。
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は実施例等の内容に何ら限定されるものではない。
実施例等で用いた各種原料は以下の通りである。
(1)凹凸形状層
・(A−1)ランダムポリプロピレン「PM921V」(サンアロマー社製)
・(A−2)ブロックポリプロピレン「PM854X」(サンアロマー社製)
・(B−1)直鎖状中密度ポリエチレン樹脂(C4)「ネオゼックス 45200」(プライムポリマー社製)
・(B−2)直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(C6)「ウルトゼックス 20200J」(プライムポリマー社製)
・(C)スチレン−共役ジエンブロック共重合体樹脂「730L」(電気化学工業社製)(ジエン含有量25質量%)
・(D)GPPS樹脂「G100C」(東洋スチレン社製)
(2)撥液層
・(E)疎水性酸化物微粒子:疎水性シリカ「AEROSIL R812S」(エボニック デグザ社製)
・(F−1)フッ素系共重合体樹脂:「AG−E070」(旭硝子社製)
・(F−2)フッ素系共重合体樹脂:「AG−E550D」(旭硝子社製)
(3)シーラント樹脂層
・(G)水添スチレン系熱可塑性エラストマー「タフテックP2000」(旭化成社製)・(H)水添スチレン系熱可塑性エラストマー「タフテックM1943」(旭化成社製)・(I)変性オレフィン系重合体樹脂「モディックF502」(三菱化学社製)
・(J)変性オレフィン系重合体樹脂「アドマー SE810」(三井化学社製)
(4)基材層
・(G)水添スチレン系熱可塑性エラストマー「タフテックP2000」(旭化成社製)・(K)HIPS樹脂「トーヨースチロールH850N」(東洋スチレン社製、ブタジエン含量9.0質量%)
・(L)GPPS樹脂「HRM23」(東洋スチレン社製)
・(M)PET樹脂(フィルム)「エステルフィルム E5102:16μm」(東洋紡績社製)
・(N)ナイロン6樹脂(フィルム)「ハーデンフィルム N1100:15μm」(東洋紡績社製)
・(O)エチレン−ビニルアルコール共重合体「エバールJ−171B」(クラレ社製)・(P)アクリル樹脂 「HBS000」(三菱化学社製)
実施例等で作製した樹脂シートについての各種特性の評価方法は以下の通りである。
(1)凸形状観察
シートの凸形状はレーザー顕微鏡VK−X100(キーエンス社製)を用いて、凸形状高さ、凸形状の頂点間隔を測定した。また、凸形状高さおよび頂点間隔を測定するために、ミクロトームを用いて凹凸形状断面サンプルを作製した。凸形状の高さは、樹脂シートの任意の3箇所より、それぞれ形状が同じ10個の高さを測定し、その30測定値の算術平均値を用いた。凸形状が2種類以上である場合は、第1の凸形状および第2の凸形状の高さをそれぞれについて同様な方法で求めた。頂点間隔については、樹脂シートの任意の3箇所より、隣接する10個の凸形状の頂点間隔を測定し、その30測定値の算術平均値を用いた。凸形状が2種類以上である場合は、第1の凸形状と第2の凸形状の頂点間隔を測定し、その30測定値の算術平均値を用いた。
(2)接触角及び転落角
接触角及び転落角は、樹脂シートについて、自動接触角計DM−501(協和界面科学社製)を用いて測定した。また、試験液はサラダ油(日清オイリオグループ社)、ハンドソープ「キレイキレイ」(ライオン社製)、乳液「雪ごこち」(ロート製薬社製)、絵具「黒」(ぺんてる社製)を用い、滴下量は、接触角測定時は8μL、転落角測定時は20μLとした。接触角が130°以上であると撥液性が高く、液体の付着を防止できると判定できる。また転落角が40°以下であると撥液性が高く、液体の付着を防止できると判定できる。
(3)シール性評価
耐衝撃性ポリスチレンの単層シート(900μm厚)を用いて、真空成形した容器のフランジ部(図8参照)部分を切り取り、ヒートシールテスター(佐川製作所製)を用いてヒートシールを実施した。ヒートシールテスターのシールコテ幅は1.0mmのものを使用し、作製した樹脂シートを蓋材として使用した。シール温度は210℃であり、シール圧は0.36Mpaである。また、剥離強度はストログラフVE1D(東洋精機社製)を用いて、ストログラフの一方のチャック部に蓋材(樹脂シート)を挟み、もう一方のチャック部には容器のフランジ部を挟んで測定した。剥離速度は200mm/minである。剥離強度が2.8N以上であると、シール性が良好であると判定できる。
また、作製したシートの凹凸形状層が内面側になる様にして、上記のヒートシールテスター(佐川製作所製)を用いて、パウチを作製した。シール温度は210℃であり、シール圧は0.36MPaであり、シールコテ幅は5mmである。剥離強度はストログラフVE1D(東洋精機社製)を用いて、ストログラフのチャック部に樹脂シートを挟んで測定した。剥離速度は200mm/minである。剥離強度が8.5N以上であると、シール性が良好であると判定できる。
(4)メルトマスフローレートの測定
JIS K 7210に準拠し、試験温度:230℃、荷重:2.16Kgの条件下で、測定した。使用した試験機器はメルトインデックサF−F01 (株)東洋精機製作所を用いた。
(5)酸素透過率
樹脂シートの酸素透過率は、OX−TRAN酸素透過率測定装置(Mocon社製)を用いて、JIS K7126−B法に準拠し、温度25℃、相対湿度65%の測定条件下で測定した。酸素透過率が3.0ml/m・day・atm未満であると酸素バリア性が良好であると判定できる。
<実施例1(図1の層構成)>
1台の65mm単軸押出機を使用し、Tダイ法により、樹脂シートを押し出した。この押出しシートを、レーザー彫刻法で表面に凹凸形状を付与した転写ロールとタッチロールでキャスティングし、表面に凹凸形状を付与した凹凸形状層からなる樹脂シートを得た。
ついで、凹凸形状層の表面に撥液層を形成するために、疎水性シリカとフッ素系共重合体樹脂を、撥液層中の疎水性シリカが66質量%、フッ素系共重合体樹脂が34質量%となるように混合した分散液(溶媒は精製水/イソプロピルアルコールの混合液)を作製した。この混合分散液をバーコーターを用いて、コロナ処理した凹凸形状層表面にコーティングし、これを90℃〜150℃で乾燥させて撥液層を形成させた。この凹凸形状層の表面に撥液層を形成した樹脂シートの組成を表1に示した。
また上記のようにして作製した樹脂シートについて、その各種特性を前述の方法によって評価した。結果を表2に示す。


<実施例2〜12、比較例1〜6>
凹凸形状層、撥液層の組成、厚み、MFRを、表1に示すように設定した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜12及び比較例1〜6に係る樹脂シートを作製し、評価した。結果を表2に示した。
尚、比較例1では撥液層を形成せず、比較例2では凹凸形状を付与していない。比較例3では疎水性シリカを含有せず、比較例4は撥液層にフッ素系共重合体樹脂が用いられていない組成である。比較例5では撥液層に疎水性の表面処理を実施していないシリカを用いた組成であり、比較例6では凸形状が釣鐘型のシートをHIPS樹脂のみで熱プレスで成形したものである。
表2に示した結果から以下のことが明らかになった。実施例1〜12の全てにおいて、シートでの各液体に対する撥液性(接触角、転落角)に関する評価基準を全て満足する結果が得られた。これに対して、比較例1〜4、6では、シートは精製水以外の液体が転がらなかった。比較例5では、すべての液体が転がらなかった。
<実施例13(図5の層構成)>
2台の40mm単軸押出機を使用し、フィードブロック法により、凹凸形状層80μm、シーラント樹脂層40μm、基材層(PET樹脂)16μmをこの順で積層した層構成を有する、厚み136μmの多層樹脂シートをTダイ法より押し出した。尚、PET基材層は、凹凸形状層とシーラント層を押し出した際に、押出ラミネート法により積層した。
<実施例15>
3台の40mm単軸押出機を使用し、フィードブロック法により、凹凸形状層90μm、シーラント樹脂層50μm、基材層(HIPS/GPPS=80/20)310μmをこの順で積層した層構成を有する、厚み450μmの多層樹脂シートをTダイ法より押し出した。
上記で得た押出シートは、レーザー彫刻法で表面に凹凸形状を付与した転写ロールとタッチロールでキャスティングし、シート表面に凹凸形状を付与した多層樹脂シートを得た。シート厚みは0.12mmであった。
ついで、凹凸形状層の表面に撥液層を形成するために、疎水性シリカとフッ素系共重合体樹脂を、疎水性シリカが66質量%、フッ素系共重合体樹脂が34質量%となるように混合した分散液(溶媒は精製水/イソピルアルコールの混合液)を作製した。この混合分散液をバーコーターを用いて、コロナ処理した凹凸形状層表面にコーティングし、これを90℃〜150℃で乾燥させて撥液層を形成させた。この凹凸形状層の表面に撥液層を形成した樹脂シートの各層の組成、層構成を表3に示した。

また上記のようにして作製した樹脂シートについて、その各種特性を前述の方法によって評価した。結果を表4に示す。

<実施例14〜24、比較例7、比較例9〜12>
凹凸形状層、撥液層、その他の多層樹脂シート各層の組成、厚み、MFRを、表3に示すように設定した以外は実施例13または実施例15と同様にして、実施例14、16〜24及び比較例7、比較例9〜12に係る樹脂シートを作製し、結果を表4に示した。また、実施例13、14、19、22〜24ならびに、比較例11、12ではシール性を評価した。
尚、比較例7では撥液層を形成せず、比較例9では凹凸形状層にMFRが1.1g/10minのポリエチレンを用いたため、転写性が不良であり、比較例10は撥液層に疎水性シリカが用いられていない組成である。比較例11では撥液層にフッ素系共重合体樹脂を用いていない組成であり、比較例12では撥液層に疎水性の表面処理を実施していないシリカを用いた組成である。
表4に示した結果から以下のことが明らかになった。実施例13〜24の全てに、シートでの各液体に対する撥液性(接触角、転落角)、シール性(実施例13、14、19、22、23、24)に関する評価基準を全て満足する結果が得られた。これに対して、比較例7、比較例9〜11では、精製水以外の液体結果となった。比較例12はすべての液体が転がらなかった。
<実施例25(図6の層構成)>
2台の40mm単軸押出機を使用し、フィードブロック法により、凹凸形状層90μm、スチレン系基材層610μmをこの順で積層した層構成を有する、厚み700μmの多層樹脂シートをTダイより押し出した。尚、スチレン系基材層として、HIPS樹脂と水添熱可塑性エラストマーとを質量比95/5(HIPS/水添スチレン系熱可塑性エラストマー)で混合したものを用いた。上記で得た押出シートについて、実施例13と同様にして、実施例25に係る樹脂シートを形成した。形成した樹脂シートについて、実施例13と同様の評価試験を行った。結果を表4に併せて示す。
<実施例26、比較例8>
凹凸形状層、撥液層、スチレン系基材層の組成、厚み、MFRを、表3に示すように設定した以外は実施例25と同様にして、実施例26及び比較例8に係る樹脂シートを作製し、その特性の評価結果を表4に示した。尚、比較例8は凹凸形状を付与していない組成である。
表4に示した結果から以下のことが明らかになった。実施例25〜26においては、シートでの各液体に対する撥液性(接触角、転落角)に関する評価基準を全て満足する結果が得られた。これに対して、比較例8では、精製水以外の液体は転落しない結果となった。
<実施例27(図7の層構成)>
5台の40mm単軸押出機を使用し、フィードブロック法により、順に、凹凸形状層80μm、変性オレフィン系重合体からなる第1のシーラント樹脂層10μm、エチレンービニルアルコール共重合体からなる酸素バリア基材層15μm、変性オレフィン系重合体からなる第2のシーラント樹脂層10μm、ポリエステル系基材層16μmからなる、第四実施形態に係る厚み131μmの多層樹脂シートをTダイより押し出した。尚、PET樹脂、ナイロン6樹脂については、凹凸形状層から第2シーラント樹脂層を押し出した際に、押出ラミネート法により積層した。
5台の40mm単軸押出機を使用し、フィードブロック法により、順に、凹凸形状層90μm、変性オレフィン系重合体からなる第1のシーラント樹脂層20μm、エチレンービニルアルコール共重合体からなる酸素バリア基材層30μm、変性オレフィン系重合体からなる第2のシーラント樹脂層20μm、基材層(HIPS/GPPS=80/20)540μmからなる、第四実施形態に係る厚み700μmの多層樹脂シートをTダイより押し出した。
上記で得た押出しシートは、レーザー彫刻法で表面に凹凸形状を付与した転写ロールとタッチロールでキャスティングし、シート表面に凹凸形状を付与した多層樹脂シートを得た。
ついで、凹凸形状層の表面に撥水層を形成するために、疎水性シリカとオレフィン系共重合体樹脂を、疎水性シリカが66質量%、フッ素系共重合体樹脂が34質量%となるように混合した分散液(溶媒は精製水/イソピルアルコールの混合液)を作製した。この混合分散液をバーコーターを用いて、コロナ処理した凹凸形状層表面にコーティングし、これを90℃〜150℃で乾燥させて撥液層を形成させた。この凹凸形状層の表面に撥液層を形成した樹脂シートの各層の組成、層構成を表5に示した。
また上記のようにして作製した樹脂シートについて、その各種特性を前述の方法によって評価した。結果を表6に示す。


<実施例28〜29、31〜39、比較例13〜18>
凹凸形状層、撥液層、その他の多層樹脂シート各層の組成、厚み、MFRを、表5に示すように設定した以外は実施例27または実施例30と同様にして、実施例28〜29、31〜39及び比較例13〜18に係る樹脂シートを作製した。また、実施例27〜29、33、36〜39、ならびに比較例13ではシール性を評価した。
尚、比較例13では撥液層を形成せず、比較例14では凹凸形状を付与していない。比較例15では凹凸形状層にMFRが1.1g/10minのポリエチレンを用いたため、転写性が不良であり、比較例16は撥液層に疎水性シリカが用いられていない組成である。比較例17では撥液層にフッ素系共重合体を用いていない組成であり、比較例18では撥水層に疎水性の表面処理を実施していないシリカを用いた組成である。
表6に示した結果から以下のことが明らかになった。実施例27〜39の全てに、シートでの各液体に対する撥液性(接触角、転落角)、シール性、酸素バリア性に関する評価基準を全て満足する結果が得られた。これに対して、比較例13〜17では精製水以外の液体は転落しない結果となった。比較例18はすべての液体が転がらなかった。
以上、様々な実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
1a 凸形状
1b 凸部頂点
1c 第1の凸部頂点
1d 第2の凸部頂点
h 凸形状高さ
t 凸形状頂点間隔
2 撥液層
3 シーラント樹脂層
3a 第1のシーラント樹脂層
3b 第2のシーラント樹脂層
4 基材層
5 酸素バリア性基材層
6 フランジ部

Claims (15)

  1. ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物からなり微細な凹凸形状を有する凹凸形状層を有し、前記凹凸形状層の一方の面に少なくとも1種類以上の凸形状を有し、前記凸形状を有する面に、疎水性酸化物微粒子およびフッ素系共重合体樹脂を含有する撥液層が形成された撥液性樹脂シートであって、前記凹凸形状層の表面が、油系液体及び界面活性剤系液体と接触したときの接触角がいずれも130°以上であり、かつ転落角がいずれも40°以下であり、前記樹脂組成物が、ポリオレフィン系樹脂を35質量%〜100質量%含有し、前記凸形状は、高さが20μm〜150μmであり、隣接する凸形状の頂点間隔は20μm〜100μmである、撥液性樹脂シート
  2. 前記凹凸形状層の他方の面に、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、及びアクリル系樹脂から選択される樹脂からなる層を少なくとも1層以上有する基材層が積層された、請求項1に記載の撥液性樹脂シート。
  3. 前記凹凸形状層と前記基材層との間に、変性オレフィン系重合体樹脂および水添スチレン系熱可塑性エラストマーから選択される少なくとも1種の樹脂からなるシーラント樹脂層が形成された、請求項に記載の撥液性樹脂シート。
  4. 前記凸形状が第1の凸形状と第2の凸形状とからなる、請求項1からの何れか一項に記載の撥液性樹脂シート。
  5. 前記第1の凸形状及び第2の凸形状が千鳥配置され、第1の凸形状の高さに対する第2の凸形状の高さの比が0.4以上0.8以下である、請求項に記載の撥液性樹脂シート。
  6. 前記樹脂組成物が、230℃でのメルトマスフローレートが5g/10分以上である、請求項1からの何れか一項に記載の撥液性樹脂シート。
  7. 前記疎水性酸化物微粒子が、表面にトリメチルシリル基を有する疎水性シリカ微粒子である、請求項1からの何れか一項に記載の撥液性樹脂シート。
  8. 前記撥液層中の前記疎水性酸化物微粒子の含有量が20質量%〜70質量%であり、前記フッ素系共重合体樹脂の含有量が70質量%〜30質量%である、請求項1からの何れか一項に記載の撥液性樹脂シート。
  9. 前記凹凸形状層の厚みが、50μm〜200μmである、請求項1からの何れか一項に記載の撥液性樹脂シート。
  10. 請求項1からの何れか一項に記載の撥液性樹脂シートを用いた建材用シート。
  11. 請求項1からの何れか一項に記載の撥液性樹脂シートを用いた生活品包装材用シート。
  12. 壁紙部材用シートである請求項10に記載の建材用シート。
  13. 水回り部材用シートである請求項11に記載の生活品包装材用シート。
  14. 食品容器の蓋材用シートである請求項11に記載の生活品包装材用シート。
  15. パウチ用シートである請求項11に記載の生活品包装材用シート。
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