JP6940852B2 - ポリイオンコンプレックス、及びポリイオンコンプレックスの成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリイオンコンプレックス、及びポリイオンコンプレックスの成形体に関する。
バイオマテリアルは、生体分子及び細胞等の生体を構成する要素に対して適応する、又は生体に直接接触させて利用する材料である。バイオマテリアルには、生体適合性が求められるため、ヒドロキシアパタイト及び多糖類等の生体中に存在する材料が利用されることが多い。
多糖類を利用したバイオマテリアルとして、例えば、特許文献1には、酸性又は塩基性の水溶性多糖類及び当該多糖類の電荷と反対の電荷を持つ水溶性生体高分子を主成分として含み、前記水溶性多糖類と前記水溶性生体高分子とがイオン結合していることを特徴とする非多孔質体が開示されている。
国際公開第2010/101242号
ところで、生体に直接接触させて利用するバイオマテリアルは、体液等の液体に接触した場合でも寸法変化が小さい寸法安定性を有することが望ましい。
そこで、本発明は、液体と接触した場合の寸法安定性が改善された成形体を形成可能なポリイオンコンプレックスを提供することを目的とする。本発明はまた、当該ポリイオンコンプレックスから形成された成形体を提供することも目的とする。
本発明者らは、カルボキシメチル基を導入した修飾ヒアルロン酸(カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸)と、キトサンとを含むポリイオンコンプレックスが、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、例えば、以下の各発明に関する。
[1] カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の修飾ヒアルロン酸類と、キトサン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種のキトサン類とを含む、ポリイオンコンプレックス。
[2] 上記修飾ヒアルロン酸類に含まれるアニオン性官能基のモル数と、上記キトサン類に含まれるカチオン性官能基のモル数との比が、0.8:1〜1.2:1の範囲内にある、[1]に記載のポリイオンコンプレックス。
[3] 上記カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸における構成ヒアルロン酸に対するカルボキシメチル基の修飾率が、5%以上200%以下である、[1]又は[2]に記載のポリイオンコンプレックス。
[4] 上記カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸の分子量が、4,000以上200万以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリイオンコンプレックス。
[5] 上記キトサンの分子量が、5,000以上50万以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載のポリイオンコンプレックス。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載のポリイオンコンプレックスから形成された成形体。
[7] フィルム、糸若しくは当該糸を含む編布、又はマイクロニードルである、[6]に記載の成形体。
[8] 最大応力が70MPa以上である、[6]又は[7]に記載の成形体。
本発明によれば、液体と接触した場合の寸法安定性が改善された成形体を形成可能なポリイオンコンプレックスの提供が可能となる。本発明によればまた、当該ポリイオンコンプレックスから形成された寸法安定性が改善された成形体の提供が可能となる。
本発明に係る成形体は、体液等の液体と接触した場合でも膨潤速度が緩やかなうえ、最大に膨潤したときの膨潤率が低く抑えられているため、成形体の急激な膨潤による組織損傷、組織からの脱落、強度の低下等を抑制できるので、生体に適用するバイオマテリアルとして優れた特性を有している。
カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸(HYA誘導体)とキトサン(H−CHI)とのポリイオンコンプレックスのゲルを示す写真である。 HYA誘導体とH−CHIとのポリイオンコンプレックスから作製したフィルム(HYA誘導体/H−CHIフィルム)を示す写真である。 HYA誘導体/H−CHIフィルムの超純水(UPW)及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の膨潤性を評価した結果を示すグラフである。 HYA誘導体/H−CHIフィルムの超純水(UPW)及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の重量損失を評価した結果を示すグラフである。 HYA誘導体/H−CHIフィルムの引張強度を評価した結果を示すグラフである。 未修飾ヒアルロン酸(HYA−LQ又はHYA−LQH)とキトサン(H−CHI)とのポリイオンコンプレックスから作製したフィルム(HYA−LQ/H−CHIフィルム(図6(A))又はHYA−LQH/H−CHIフィルム(図6(B)))の超純水(UPW)中の膨潤性を評価した結果を示すグラフである。 HYA−LQ/H−CHIフィルム又はHYA−LQH/H−CHIフィルムのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の膨潤性(図7(A))及び重量損失(図7(B))を評価した結果を示すグラフである。 HYA−LQ/H−CHIフィルム(図8(A))又はHYA−LQH/H−CHIフィルム(図8(B))の引張強度を評価した結果を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
<本発明の特徴>
(ポリイオンコンプレックス)
本発明は、カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種と、キトサン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種とを含む、ポリイオンコンプレックスを提供することに特徴を有する。
(ポリイオンコンプレックスから形成された成形体)
本発明はまた、本発明に係るポリイオンコンプレックスから形成された成形体を提供することに特徴を有する。
<カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸及びその塩>
本明細書において、「カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸及びその塩」(以下、まとめて「修飾ヒアルロン酸類」と記載することもある。)とは、少なくとも一部にカルボキシメチル基が導入されているヒアルロン酸及びその塩のことをいう。ここで、「カルボキシメチル基」とは、「−CH−COH」または「−CH−CO 」で表される基のことをいう。
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸類は、例えば、ヒアルロン酸(下記式(1)参照)を構成する水酸基(下記式(1)において、ヒアルロン酸を構成するN−アセチルグルコサミンのC−4位及びC−6位、並びにヒアルロン酸を構成するグルクロン酸のC−2位及びC−3位)のうち、少なくとも一部の水酸基の水素原子が−CH−COH及び/又は−CH−CO で表される基に置換されている化合物又はその塩であってよい。
Figure 0006940852

式(1)中、nは1以上7,500以下の数を示す。
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸類は、例えば、下記式(2)で表される化合物又はその塩であってよい。
Figure 0006940852

式(2)中、R〜Rは独立して、水素原子、−CH−COHで表される基、又は−CH−CO で表される基を示し(ただし、R〜Rがいずれも水素原子を表す場合を除く。)、nは1以上7,500以下の数を示す。
カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩等の形態が挙げられる。
(修飾ヒアルロン酸類の分子量)
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸類の分子量は、例えば、4,000以上200万以下であってもよい。液体と接触した場合の寸法安定性に優れると共に、機械的強度(例えば、引張強度)にも優れる成形体が得られるという観点から、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸類の分子量は、10万以上180万以下であることが好ましく、40万以上160万以下であることがより好ましく、60万以上140万以下であることが更に好ましく、80万以上120万以下であることが更により好ましい。
修飾ヒアルロン酸類の分子量は、以下の方法にて測定することができる。
まず、ゲル濾過カラムを用いて、分子量が既知である複数の(精製)ヒアルロン酸(基準物質)を液体クロマトグラフィー分析することで、それらの保持時間より検量線を作成する。同様に、測定対象である修飾ヒアルロン酸類を液体クロマトグラフィー分析し、作製した検量線を用いて分子量を求めることで、修飾ヒアルロン酸類の分子量を求めることができる。
液体クロマトグラフィー分析に使用することができる液体クロマトグラフィー分析装置としては、例えば、Waters Alliance 2690 HPLC Separations Module(Waters社製)、Waters Alliance 2695 HPLC Separations Module(Waters社製)、1200 Series(Agilent社製)が挙げられる。また、液体クロマトグラフィー分析に使用することができるカラムとしては、例えば、shodex社製配位子交換クロマトグラフィー用カラム(配位子交換モード+サイズ排除モード)、型名「SUGAR KS−801」、「SUGAR KS−802」、「SUGAR KS−803」、「SUGAR KS−804」、「SUGAR KS−805」、「SUGAR KS−806」、「SUGARKS−807」や、TOSOH製サイズ排除クロマトグラフィーカラム、型名「TSKgel GMPW」が挙げられる。
(修飾ヒアルロン酸類の修飾率)
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸類の修飾率(カルボキシメチル化率)は、ヒアルロン酸を構成する2糖単位を1単位とし、当該1単位あたりに含まれるカルボキシメチル基の数を意味し、具体的には、当該1単位を100%とした場合の、該1単位に対する、該1単位あたりに含まれるカルボキシメチル基の数の割合(%)をいう。ここで、ヒアルロン酸を構成する2糖単位とは、ヒアルロン酸を構成する、隣り合って結合する2糖(グルクロン酸及びN−アセチルグルコサミン)で構成される1単位をいう。
修飾ヒアルロン酸類の修飾率は、例えば、修飾ヒアルロン酸類のH−NMRスペクトルにおいて、ヒアルロン酸骨格中のC−2位に結合するN−アセチル基のメチル基(−CH)のプロトンを示すピーク(2ppm付近に発現)の積算値に対する、−CH−COH及び/又は−CH−CO で表される基中のメチレン基(−CH−)のプロトンを示すピーク(3.8ppm以上4.2ppm以下の範囲に発現)の積算値の割合(%)で表される。
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸類の修飾率は、例えば、5%以上200%以下であってもよい。液体と接触した場合の寸法安定性に優れると共に、機械的強度(例えば、引張強度)にも優れる成形体が得られるという観点から、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸類の修飾率は、20%以上180%以下であることが好ましく、35%以上150%以下であることがより好ましく、50%以上120%以下であることが更に好ましく、65%以上95%以下であることが更により好ましい。
(修飾ヒアルロン酸類の入手方法)
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸類は、例えば、温度が30℃以下の含水溶媒(例えば、水、又はエタノール等の水溶性有機溶媒と水との混合液)中で、溶解したヒアルロン酸及び/又はその塩をハロ酢酸及び/又はその塩と反応させることにより得ることができる。また、本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸類は、例えば、特開2015−147945号公報に記載された製造方法により得ることができる。
本実施形態に係る修飾ヒアルロン酸類は、市販されているものを使用してもよい。市販されている修飾ヒアルロン酸類としては、例えば、ヒアロキャッチ(登録商標)(キユーピー株式会社製)を挙げることができる。
<キトサン及びその塩>
本実施形態に係るキトサン及びその塩(以下、まとめて「キトサン類」と記載することもある。)としては、特に制限されるものではなく、例えば、カニ、エビ等の甲殻類の外骨格から得られるキチンを脱アセチル化して得たものを利用することができる。キトサンの塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、ギ酸塩等の形態が挙げられる。
(キトサン類の分子量)
本実施形態に係るキトサン類の分子量は、例えば、5,000以上50万以下であってもよい。液体と接触した場合の寸法安定性に優れると共に、機械的強度(例えば、引張強度)にも優れる成形体が得られるという観点から、本実施形態に係るキトサン類の分子量は、1万以上40万以下であることが好ましく、5万以上30万以下であることがより好ましく、10万以上20万以下であることが更に好ましい。キトサン類の分子量は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定することができる。
(キトサン類の脱アセチル化度)
本実施形態に係るキトサン類の脱アセチル化度は、例えば、60%以上100%以下であってもよい。液体と接触した場合の寸法安定性に優れると共に、機械的強度(例えば、引張強度)にも優れる成形体が得られるという観点から、本実施形態に係るキトサン類の脱アセチル化度は、75%以上100%以下であることが好ましく、80%以上98%以下であることがより好ましく、85%以上95%以下であることが更に好ましい。キトサン類の脱アセチル化度は、例えば、NMR測定、赤外吸収スペクトル測定により、−NH基と−NHCOCH基の比率を算出することにより、求めることができる。
(キトサン類の入手方法)
本実施形態に係るキトサン類は、市販されているものを使用してもよい。市販されているキトサン類としては、例えば、キトサン(フレーク状,分子量10万以上,脱アセチル化度90.2%,ナカライテスク株式会社製)、CHITOSAN POWDER PURIFIED(分子量1万5千以下,脱アセチル化度85%以上,POLYSCIENCES社製)を挙げることができる。
<ポリイオンコンプレックス>
ポリイオンコンプレックスは、例えば、アニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーとを水溶液中で混合することで静電相互作用により形成される複合体である。本発明に係るポリイオンコンプレックスは、アニオン性ポリマーとして修飾ヒアルロン酸類を、カチオン性ポリマーとしてキトサン類を使用して得られるものである。
(修飾ヒアルロン酸類とキトサン類との含有比)
本実施形態に係るポリイオンコンプレックスに含まれる修飾ヒアルロン酸類とキトサン類との比は、特に限定されるものではないが、例えば、修飾ヒアルロン酸類に含まれるアニオン性官能基(−CH−CO 及び−CH−COH)のモル数と、キトサン類に含まれるカチオン性官能基(−NH)のモル数との比が、0.8:1〜1.2:1となる範囲であることが好ましく、0.9:1〜1.1:1となる範囲であることがより好ましく、0.95:1〜1.05:1となる範囲であることが更に好ましく、1:1となる範囲であることが更により好ましい。
(ポリイオンコンプレックスに含まれる成分)
本実施形態に係るポリイオンコンプレックスは、修飾ヒアルロン酸類からなる群より選択される少なくとも1種と、キトサン類からなる群より選択される少なくとも1種とを含むものであればよく、修飾ヒアルロン酸類を2種以上含むものであってもよく、キトサン類を2種以上含むものであってもよく、修飾ヒアルロン酸類及びキトサン類をそれぞれ2種以上含むものであってもよい。本実施形態に係るポリイオンコンプレックスは実質的に修飾ヒアルロン酸類からなる群より選択される少なくとも1種、及びキトサン類からなる群より選択される少なくとも1種とからなるものであるのが好ましく、修飾ヒアルロン酸類からなる群より選択される少なくとも1種、及びキトサン類からなる群より選択される少なくとも1種のみからなるものであるのがより好ましい。なお、いずれの態様においても、ポリイオンコンプレックスの調製に伴い不可避的に含まれる不純物を含むことを排除するものではない。
<ポリイオンコンプレックスの製造方法>
本実施形態に係るポリイオンコンプレックスは、修飾ヒアルロン酸類からなる群より選択される少なくとも1種と、キトサン類からなる群より選択される少なくとも1種とを混合すること(以下、「混合工程」ともいう。)により製造することができる。
(混合工程)
混合工程において、修飾ヒアルロン酸類とキトサン類を混合する方法は、特に限定されるものではないが、均質なポリイオンコンプレックスが得られるという観点から、それぞれの溶液を調製し、両溶液を混合する方法が好ましい。溶液を調製する際に用いる溶媒としては、水が好ましく、蒸留水又は超純水がより好ましい。溶媒としては、必要に応じて、緩衝液を用いてもよく、酢酸、アルコール等の有機溶媒を添加してもよい。
(修飾ヒアルロン酸類溶液)
修飾ヒアルロン酸類溶液における、修飾ヒアルロン酸類の濃度は特に限定されるものではないが、例えば、0.01重量%以上20重量%以下の範囲とすることができる。混合工程の操作性を向上させる観点からは、修飾ヒアルロン酸類の濃度は、0.1重量%以上5重量%以下の範囲であることが好ましい。
(キトサン類溶液)
キトサン類溶液における、キトサン類の濃度は特に限定されるものではないが、例えば、0.01重量%以上20重量%以下の範囲とすることができる。混合工程の操作性を向上させる観点からは、キトサン類の濃度は、0.1重量%以上5重量%以下の範囲であることが好ましい。
(修飾ヒアルロン酸類溶液及びキトサン類溶液の粘度)
修飾ヒアルロン酸類溶液及びキトサン類溶液を混合した後、均質なポリイオンコンプレックスを得るために、修飾ヒアルロン酸類溶液及びキトサン類溶液の粘度を調整することが好ましい。修飾ヒアルロン酸類溶液及びキトサン類溶液の粘度は、例えば、5Pa・s以下であることが好ましく、0.5Pa・s以下であることがより好ましい。修飾ヒアルロン酸類溶液及びキトサン類溶液の粘度は、例えば、修飾ヒアルロン酸類及びキトサン類の濃度を調整することにより調整することができる。
(混合工程の諸条件)
混合工程では、必要に応じて、撹拌をしながら修飾ヒアルロン酸類溶液及びキトサン類溶液を混合してもよい。また、混合時の各溶液の温度は、特に制限されるものではないが、例えば、0〜100℃であることが好ましく、4〜80℃であることがより好ましい。
混合工程では、ポリイオンコンプレックス中の修飾ヒアルロン酸類とキトサン類との含有比が、上述した範囲内となるように、使用する修飾ヒアルロン酸類溶液及びキトサン類溶液の割合を決定することが好ましい。また、例えば、修飾ヒアルロン酸類溶液及びキトサン類溶液のいずれか一方の溶液に対し、他方の溶液をゲル形成が飽和するまで滴下することで、修飾ヒアルロン酸類に含まれるアニオン性官能基のモル数と、キトサン類に含まれるカチオン性官能基のモル数との比が、約1:1となるようにすることもできる。
(超音波処理)
本実施形態に係るポリイオンコンプレックスの製造方法では、混合工程で修飾ヒアルロン酸類とキトサン類を混合した後、超音波処理を行うことが好ましい。これにより、ポリイオンコンプレックスの収率を向上させることができる。超音波処理の条件としては、これに限られるものではないが、例えば、バス型超音波照射器を用い、出力240kWで25分間超音波照射することで行うことができる。
<ポリイオンコンプレックスの成形体>
本発明に係る成形体は、上述した本発明のポリイオンコンプレックスから形成されたものである。
(成形体の形状)
本実施形態に係る成形体の形状は、本発明のポリイオンコンプレックスが任意の形状に成形できるため、特に制限されるものではないが、生体に好ましく適用できるという観点から、例えば、フィルム、糸及び当該糸を含む編布、マイクロニードルの形状であることが好ましい。本実施形態に係る成形体は、体液等の液体と接触した場合の膨潤率が低く抑えられ、寸法安定性に優れること、及び引張強度等の機械的特性に優れることから、フィルム、糸及び当該糸を含む編布、マイクロニードル等の形状にして、生体に好ましく適用できる。
(成形体の膨潤率)
本実施形態に係る成形体は、体液等の液体と接触した場合の膨潤率が低く抑えられ、寸法安定性に優れている。したがって、本実施形態に係る成形体は、例えば、超純水に30分間浸漬したときの膨潤率が160%以下であってよく、150%以下であるのが好ましく、140%以下であることがより好ましい。膨潤率は、浸漬前の成形体の重量をW、浸漬後の成形体の重量をWとしたときに下記式Aで表される値である。
Figure 0006940852
また、本実施形態に係る成形体は、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に90分間浸漬したときの膨潤率が500%以下であってよく、450%以下であるのが好ましく、400%以下であることがより好ましく、350%以下であるのが更に好ましい。更に、本実施形態に係る成形体は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に浸漬したときに膨潤率が飽和するまでの浸漬時間が、40分間以上であってよく、50分間以上であることが好ましく、60分間以上であることがより好ましく、70分間以上であることが更に好ましく、80分間以上であることが更により好ましく、90分間以上であることが更によりまた好ましい。
(成形体の重量損失)
本実施形態に係る成形体は、体液等の液体と接触した場合の重量損失が低く抑えられており、ポリイオンコンプレックスの構成成分が安定に保持されている。したがって、本実施形態に係る成形体は、例えば、超純水に60分間浸漬したときの重量損失が5%以下であってよく、4%以下であるのが好ましく、3%以下であることがより好ましい。また、本実施形態に係る成形体は、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に90分間浸漬したときの重量損失が15%以下であってよく、10%以下であることが好ましく、7.5%以下であることがより好ましい。重量損失は、浸漬前の成形体の重量をW、浸漬後の成形体の乾燥重量をWとしたときに下記式Bで表される値である。
Figure 0006940852
(成形体の最大応力)
本実施形態に係る成形体は、引張強度等の機械的特性に優れている。したがって、本実施形態に係る成形体は、例えば、最大応力が70MPa以上であってよく、75MPa以上であることが好ましく、80MPa以上であることがより好ましい。最大応力は、例えば、卓上精密万能試験機(AGS−J,島津製作所製)に垂直になるように試料(フィルム)を挟み、ロードセル定格500N、クロスヘッド1mm/min、標点距離20mmで引張試験を行ったとき、試験力を断面積で除した応力が最大となるときの値である。
(フィルム)
本実施形態に係る成形体がフィルムの形状である場合、フィルムの厚みは、特に制限されず用途に応じて適宜選定可能であるが、例えば、0.02μm〜500μmであることが好ましく、0.2μm〜200μmであることがより好ましい。フィルムの大きさは、特に制限されず用途に応じて適宜選定可能であるが、例えば、0.01cm以上であることが好ましく、0.5cm以上であることがより好ましい。
<ポリイオンコンプレックスの成形体の製造方法>
本発明に係る成形体は、例えば、本発明に係るポリイオンコンプレックスを成形すること(以下、「成形工程」)で得ることができる。また、本発明に係るポリイオンコンプレックスがゲル状の析出物である場合、ゲル状の析出物を、凍結乾燥、自然乾燥等の手法により乾燥して固形体とし、固形体を成形工程に用いてもよい。
(成形工程)
成形工程は、本発明に係るポリイオンコンプレックスを加圧成形する工程であってもよい。加圧成形は、加熱しながら行なうこともできる(加熱加圧成形)。加熱する場合には、加熱と加圧を同時に行ってもよい。加熱加圧成形は、例えば、熱プレス機、加熱延伸機を用いて行ってもよい。加熱加圧成形を行うことで、均一で緻密な成形体を得ることができる。
成形工程は、本発明に係るポリイオンコンプレックスを射出成形する工程であってもよい。射出成形は、例えば、加熱射出成形機を用いて行ってもよい。射出成形機の金型の形状を選択することで、例えば、糸の形状の成形体など、金型の形状に対応した成形体を製造することができる。また、糸の形状の成形体を得た後、当該糸を編み込んで編布の形状の成形体を得ることもできる。
成形工程は、本発明に係るポリイオンコンプレックスを鋳型に充填し乾燥する工程であってもよく、ステンレス線又はシリコン線を直立配列させ、これらの線を本発明に係るポリイオンコンプレックス溶液の表面に接触させゆっくり引き上げる又は引き下げることにより成形する工程であってもよい。
(加熱加圧成形)
成形工程で加熱加圧成形を行う場合、成形工程を繰り返し行ってもよい。成形工程を繰り返し行う場合、繰り返しの回数は、例えば、2回以上20回以下であってよく、2回以上6回以下であることが好ましい。また、必要に応じて、本発明に係るポリイオンコンプレックスを追加しながら加熱加圧成形を繰り返してもよい。
成形工程を繰り返し行う場合、成形工程の初期の段階、例えば、一回目の成形工程と二回目の成形工程との間に、対象物の表面を水で濡らすことが好ましい。これにより、均質で徹密な成形体が得られやすくなる。これは、加圧加熱対象物が多少ゲル状態に戻って流動性を発現し、塊が動きやすくなって、全体として均質になるものと推察される。
加熱加圧成形の際の加熱温度は、例えば、25℃以上250℃以下とすることができ、50℃以上150℃以下としてもよい。加熱加圧成形の際の加熱温度は、修飾ヒアルロン酸類及びキトサン類の少なくとも一方のガラス転移温度以上の温度であることが好ましい。
加圧成形の際の加圧は、任意の圧力で行えばよく、加圧力が大きいほどより徹密な成形体が得られる。加圧成形の際の加圧力は、例えば、1MPa以上100MPa以下であってよく、5MPa以上25MPa以下であってもよい。また、加圧時に少量の水及び/又はエタノール、グリセロール等の低級アルコールで対象物の表面を濡らしてもよい。これにより、均質で緻密な成形体が得られやすくなる。
また、加熱加圧成形の際に、厚さの決まったスペーサーを用いることによって、得られる成形体の厚みを制御することができる。スペーサーは、加熱加圧成形によってもその形態が変化しない材質からなり、通常は薄板状であり、その中心に目的とする成形体の面積に相当する穴を空けたものである。熱プレス機のプレス部にこのスペーサーを置き、スペーサー穴の部分に本発明に係るポリイオンコンプレックスを充分な量置いた後、加熱加圧操作を行うと、このスペーサーの厚みに相当する厚さをもった成形体が得られる。
<成形体の用途>
本実施形態に係る成形体の用途としては、例えば、医療分野の医用材料、特に生体材料(人工弁、人工臓器、人工血管、創傷被覆材等)の一部として生体組織の皮膚や臓器などの修復、再生、治療等が挙げられる。また、マイクロニードル、再生医療分野における生体組織培養の足場としても好ましく用いることができる。
生体材料の中でも医療器具用コーティング剤として利用することができる。具体的には、機械的人工心臓弁、生体人工心臓弁、人工血管、血管修復用材料、個人用透析装置、人工心肺装置、気泡型人工肺、膜型人工肺、植込型ペースメーカ、体外型ペースメーカ、心臓ペースメーカの部品及び付属品、人工腎臓用血液回路、血液ろ過器、血液ろ過用装置、吸着型血液浄化器、吸着型血液浄化装置、膜型血漿分離器、膜型血漿成分分離器、遠心型血液成分分離装置、膜型血漿分離装置、腹膜潅流システム、透析用監視装置、多人数用透析液供給装置、中空糸型透析器、コイル型透析器、積層型透析器、人工肝臓、人工すい臓、腹水ろ過濃縮器、補助循環装置などの内蔵機能代用器が挙げられる。
本実施形態に係る成形体はまた、衛生材料、化粧品材料、食品産業材料として好ましく使用することができる。さらに、創傷パッド、経皮吸収剤担持膜、皮膚の保湿シート、可食性食品保護フィルム、食品包装フィルム等への応用も可能である。
以下、実施例等に基づいて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1:HYA誘導体/H−CHIフィルムの作製と物性評価(1)〕
(1−1)HYA誘導体/H−CHIフィルムの作製
カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸(ヒアロキャッチ(登録商標),平均分子量80万〜120万,修飾率65.0〜95.0%,キユーピー株式会社製)とキトサン(キトサン(フレーク状),平均分子量100,000以上,脱アセチル化度90.2%,ナカライテスク株式会社製)を用いてフィルム(HYA誘導体/H−CHIフィルム)を作製した。
(1−1−1)乾燥ゲルの調製
500mLビーカーにキトサン(H−CHI)1.0gと1.0重量%酢酸水溶液100mLを加え、マグネチックスターラで約1日撹拌し、1.0重量%H−CHI溶液を調製した。同様に、500mLビーカーにカルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸(HYA誘導体)1.0gと超純水100mLを加え、マグネチックスターラで約1日攪拌し、1.0重量%HYA誘導体溶液を調製した。
1.0重量%H−CHI溶液7.5mLを50mL遠沈管に入れ、そこに1.0重量%HYA誘導体溶液をシリンジで滴下し(約11mL)、ボルテックスミキサーで激しく撹拌して、HYA誘導体とH−CHIとのポリイオンコンプレックス(PIC)ゲルを形成させた(図1(a))。
遠心分離機(CN−2060,AS ONE製)で遠心分離(6000rpm,5分間)し、上清を廃棄した後、超純水を約15mL加え、よく振り混ぜPICゲルを洗浄した。遠心分離(6000rpm,3分間)し、上清を廃棄して、HYA誘導体/H−CHI PICゲルを得た(図1(b))。
液体窒素で予備凍結した後、凍結乾燥機(FDU−1200,東京理化器械株式会社製)で約1日凍結乾燥を行い、乾燥ゲルを得た(図1(c))。乾燥ゲルの収率は、63.98±5.27%(n=5)であった。得られた乾燥ゲルは、参考例に示した従来のHYA/CHIゲルと巨視像では違いが見られなかった。
(1−1−2)HYA誘導体/H−CHIフィルムの作製
(1−1−1)で調製した乾燥ゲル、ポリエチレンテレフタラート(PET)シート、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートを、PETシート−PTEFシート−乾燥ゲル−PTFEシート−PETシートの順に重ねたものを、熱プレス機(AH−2003,AS ONE製)を使用して熱プレス(120℃,20MPa)し、すぐに取り出した(図2(a))。
熱プレス後の乾燥ゲルに対し、表面覆う程度の量の超純水を滴下し、その状態で5分間程度放置した。キムワイプで余分な水分をふき取った後、PETシート、PTFEシート、PETシート、PTFEシートの順に挟みこみ、熱プレス機で熱プレス(120℃,0MPa)し、ゲル中の水分が蒸発する音が聞こえなくなる前に取り出した(図2(b))。
水分を飛ばした後のゲルをピンセットで四角形になるように折りたたんだ(図2(c))。PTFEシートにスペーサー(PETシートの中央部を3×3cmに切り抜いたもの)を重ね、スペーサーの中央部の切り抜き部に折りたたんだゲルを配置した後、更にPTFEシートを重ねた(PTFEシート−スペーサー−PTFEシートの順)。これを熱プレス機で3分間熱プレス(120℃,20MPa)した。熱プレス後、室温で放冷し、HYA誘導体/H−CHIフィルムを得た(図2(d))。得られたHYA誘導体/H−CHIフィルムは、平滑で緻密な構造であり、参考例に示した従来のHYA/CHIフィルムと巨視像では違いが見られなかった。
(1−2)HYA誘導体/H−CHIフィルムの物性評価
作製したHYA誘導体/H−CHIフィルムについて、以下の手順で超純水(UPW)膨潤性、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)膨潤性、及び重量損失を評価した。
(1−2−1)超純水(UPW)膨潤性評価
HYA誘導体/H−CHIフィルムを1×1cmに切り出し、その重量(浸漬前の重量)を測定した。次に、サンプルケースに超純水を4mL入れ、そこにフィルムを浸漬させた。浸漬の開始から1,3,5,10,20,30,40,50及び60分後にフィルムを取り出し、キムワイプで余分な水分をふき取った後、重量(浸漬後の重量)を測定した。60分間浸漬させたフィルムをシリカゲルの入ったサンプルケースに入れ、約1日乾燥させた後、再度重量(乾燥後の重量)を測定した。
下記式Aに従って、膨潤率を算出した。
Figure 0006940852

:浸漬前の重量,W:浸漬後の重量
(1−2−2)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)膨潤性
サンプルケース中の超純水をPBSに代えたこと、及びPBSへの浸漬を浸漬開始から90分後まで行ったこと以外は、(1−2−1)超純水(UPW)膨潤性評価と同じ手順で測定を行い、式Aに従って膨潤率を算出した。
(1−2−3)重量損失評価
(1−2−1)及び(1−2−2)と同じ手順で測定を行い、下記式Bに従って、重量損失を算出した。
Figure 0006940852

:浸漬前の重量,W:乾燥後の重量
超純水(UPW)膨潤性、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)膨潤性、及び重量損失は、それぞれ2サンプルに対して測定を行い、その平均値を求めた。評価結果を図3及び図4、並びに表1に示す。
Figure 0006940852
超純水に浸漬したHYA誘導体/H−CHIフィルムの膨潤率は、参考例に示した従来のHYA/CHIフィルムと比べ、低いものであった。また、PBSに浸漬したHYA誘導体/H−CHIフィルムの膨潤率は、参考例に示した従来のHYA/CHIフィルムと比べ、ゆっくり膨潤率が増加し、また定常値に達した後の膨潤率も低いものであった。これらの結果は、HYA誘導体/H−CHIフィルムの寸法安定性が優れていることを示している。さらに、HYA誘導体/H−CHIフィルムは、参考例に示した従来のHYA/CHIフィルムと比べ、重量損失が小さく、フィルムからのHYA誘導体又はH−CHIの放出が抑えられていることが示唆された。
〔実施例2:HYA誘導体/H−CHIフィルムの作製と物性評価(2)〕
(2−1)HYA誘導体/H−CHIフィルムの作製
カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸(ヒアロキャッチ(登録商標),平均分子量80万〜120万,修飾率65.0〜95.0%,キユーピー株式会社製)とキトサン(キトサン(フレーク状),平均分子量100,000以上,脱アセチル化度90.2%,ナカライテスク株式会社製)を用いてフィルム(HYA誘導体/H−CHIフィルム)を作製した。
(2−1−1)乾燥ゲルの調製
500mLビーカーにキトサン(H−CHI)1.0gと1.0重量%酢酸水溶液100mLを加え、マグネチックスターラで約1日撹拌し、1.0重量%H−CHI溶液を調製した。同様に、500mLビーカーにカルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸(HYA誘導体)1.0gと超純水100mLを加え、マグネチックスターラで約1日攪拌し、1.0重量%HYA誘導体溶液を調製した。
1.0重量%H−CHI溶液15mLを50mL遠沈管に入れ、そこに1.0重量%HYA誘導体溶液をシリンジで滴下し(約22mL)、ボルテックスミキサーで激しく撹拌して、HYA誘導体とH−CHIとのポリイオンコンプレックス(PIC)ゲルを形成させた。次いで、超音波洗浄機(ASU−10,AS ONE製)を使用し、25分間超音波処理をした。
遠心分離機(CN−2060,AS ONE製)で遠心分離(6000rpm,5分間)し、上清を廃棄した後、超純水を約15mL加え、よく振り混ぜPICゲルを洗浄した。遠心分離(6000rpm,3分間)し、上清を廃棄して、HYA誘導体/H−CHI PICゲルを得た。
液体窒素で予備凍結した後、凍結乾燥機(FDU−1200,東京理化器械株式会社製)で約1日凍結乾燥を行い、乾燥ゲルを得た。乾燥ゲルの収率は、71.96±3.41%(n=2)であった。得られた乾燥ゲルは、参考例に示した従来のHYA/CHIゲルと巨視像では違いが見られなかった。
(2−1−2)HYA誘導体/H−CHIフィルムの作製
スペーサーとして、PETシートの中央部を4×4cm切り抜いたものを使用したこと以外は、(1−1−2)と同じ手順で、(2−1−1)で調製した乾燥ゲルからHYA誘導体/H−CHIフィルムを作製した。
(2−2)HYA誘導体/H−CHIフィルムの物性評価
作製したHYA誘導体/H−CHIフィルムについて、以下の手順で引張強度を評価した。
(2−2−1)引張強度評価
卓上精密万能試験機(AGS−J,島津製作所製)に垂直になるように試料(フィルム)を挟み、ロードセル定格500N、クロスヘッド1mm/min、標点距離20mmで引張試験を行った。
引張強度は、5サンプルに対して測定を行い、その平均値を求めた。評価結果を図5及び表2に示す。図5は、測定結果の試験力を断面積で除した応力(Stress,単位MPa)を縦軸とし、ストロークを元の長さで除した歪み(Strain)を横軸にプロットしたグラフである。また、測定日の湿度は25%であった。
Figure 0006940852
HYA誘導体/H−CHIフィルムは、参考例に示した従来のHYA/CHIフィルムと比べ、最大応力が高く、歪みが小さかった。これらの結果は、HYA誘導体/H−CHIフィルムは、機械的強度にも優れていることを示している。
〔参考例:未修飾ヒアルロン酸/H−CHIフィルムの作製と物性評価〕
(S−1)未修飾ヒアルロン酸/H−CHIフィルムの作製
未修飾のヒアルロン酸HYA−LQ(平均分子量85万〜160万,キユーピー株式会社製)又はHYA−LQH(平均分子量120万〜220万,キユーピー株式会社製)とキトサン(キトサン(フレーク状),平均分子量100,000以上,脱アセチル化度90.2%,ナカライテスク株式会社製)を用いてフィルムを作製した。
(S−1−1)乾燥ゲルの調製
500mLビーカーにキトサン(H−CHI)5.0gと1.0重量%酢酸水溶液500mLを加え、マグネチックスターラで約1日撹拌し、1.0重量%H−CHI溶液を調製した。同様に、500mLビーカーに未修飾ヒアルロン酸(HYA−LQ又はHYA−LQH)1.0gと超純水l00mLを加え、マグネチックスターラで約1日撹拌し、1.0重量%ヒアルロン酸溶液を調製した。
1.0重量%H−CHI溶液7.5mLを50mL遠沈管に入れ、そこに1.0重量%ヒアルロン酸溶液をシリンジで滴下し(約16mL)、ボルテックスミキサーで激しく撹拌して、ヒアルロン酸とH−CHIとのポリイオンコンプレックス(PIC)ゲルを形成させた。
遠心分離機(CN−2060,AS ONE製)で遠心分離(6000rpm,5分間)し、上清を廃棄した後、超純水を約15mL加え、よく振り混ぜPICゲルを洗浄した。遠心分離(6000rpm,3分間)し、上清を廃棄して、未修飾ヒアルロン酸/H−CHI PICゲルを得た。
液体窒素で予備凍結した後、凍結乾燥機(FDU−1200,東京理化器械株式会社製)で約1日凍結乾燥を行い、乾燥ゲルを得た。
(S−1−2)未修飾ヒアルロン酸/H−CHIフィルムの作製
(1−1−2)と同じ手順で、(S−1−1)で調製した乾燥ゲルから未修飾ヒアルロン酸/H−CHIフィルムを作製した。
(S−2)未修飾ヒアルロン酸/H−CHIフィルムの物性評価
未修飾ヒアルロン酸としてHYA−LQを使用した未修飾ヒアルロン酸/H−CHIフィルム(HYA−LQ/H−CHIフィルム)、及びHYA−LQHを使用した未修飾ヒアルロン酸/H−CHIフィルム(HYA−LQH/H−CHIフィルム)について、(1−2−1)〜(1−2−3)及び(2−2−1)と同じ手順で、超純水(UPW)膨潤性、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)膨潤性、重量損失、及び引張強度を評価した。
超純水(UPW)膨潤性、及び超純水での重量損失の評価結果を図6及び表3に示す。なお、表3には、最終的な膨潤率のみを示す。
Figure 0006940852
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)膨潤性、及びPBSでの重量損失の評価結果を図7に示す。
引張強度の評価結果を図8及び表4に示す。
Figure 0006940852

Claims (8)

  1. ポリイオンコンプレックスであって、
    カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の修飾ヒアルロン酸類と、キトサン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種のキトサン類とを含む、ポリイオンコンプレックス。
  2. 請求項1に記載のポリイオンコンプレックスにおいて、
    前記修飾ヒアルロン酸類に含まれるアニオン性官能基のモル数と、前記キトサン類に含まれるカチオン性官能基のモル数との比が、0.8:1〜1.2:1の範囲内にある、
    ポリイオンコンプレックス。
  3. 請求項1又は2に記載のポリイオンコンプレックスにおいて、
    前記カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸における構成ヒアルロン酸に対するカルボキシメチル基の修飾率が、5%以上200%以下である、
    ポリイオンコンプレックス。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリイオンコンプレックスにおいて、
    前記カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸の分子量が、4,000以上200万以下である、
    ポリイオンコンプレックス。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリイオンコンプレックスにおいて、
    前記キトサンの分子量が、5,000以上50万以下である、
    ポリイオンコンプレックス。
  6. ポリイオンコンプレックスから形成された成形体であって、
    請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリイオンコンプレックスから形成された成形体。
  7. 請求項6に記載の成形体において、
    フィルム、糸若しくは当該糸を含む編布、又はマイクロニードルである、
    成形体。
  8. 請求項6又は7に記載の成形体において、
    最大応力が70MPa以上である、
    成形体。
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