JP4255289B2 - 複合体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、アニオン性高分子とカチオン性高分子とを主成分とする複合体及びその製造方法に関する。より詳細には、各種包装資材あるいは包装材へのラミネートやコーティングに用いられる材料としてのフィルム、混合溶液又は分散液、試験研究や医用材料として用いられる膜、その他の様々な一般用及び産業用資材などの材料として有用である、主にイオン結合により強度を維持し、かつ、十分な機械物性(強度、柔軟性、ゴム弾性)を有することを特徴とする複合体、及びその簡便かつ効率的な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
天然高分子であるセルロースあるいはセルロース誘導体などのセルロース系高分子及びキチンあるいはその誘導体であるキトサンなどからなる素材は、生分解性を有することや生体に対する害が無いことから、将来の環境調和型資材として重要である。その上さらに、それらの素材は、原料となるセルロースやキチンが自然界で大量に生産され、天然に豊富に存在しているため、地球上の二酸化炭素排出量の低減や廃棄物処理量の低減など環境問題対策が重要視される昨今に於いて、重要かつ有用である。
【0003】
従来のセルロースのフィルムとしての利用形態にはセロハンがあるが、セルロースが各種溶媒への溶解性が悪く取り扱いが難しい事から、製造時に複雑多段階の工程を経る必要があるため、生産効率は良いとは言い難い。セルロース同様天然に産するキチンや、置換度が0.1程度以下の低置換度セルロース誘導体についても、セルロース同様、水などの汎用溶媒への溶解性が悪いため製造が難しく、フィルムとして広く利用されるには至っていない。
【0004】
一方、セルロースを誘導体化すると、酸・アルカリ性水溶液や各種有機溶媒への溶解性が上がり、フィルム製造が容易となるが、しかし、セルロース誘導体は、セルロースが本来持っている水酸基間の水素結合やそれによる結晶構造が失われ、機械的強度も失われる他、水溶性のものは乾燥した環境での利用に限られ、包装材、医用材料などには適さない。
【0005】
従って、取り扱いが容易なセルロース誘導体を用いて、耐水性があり、かつ、機械的強度が維持される素材が望まれる。
【0006】
ところで、セロハンは乾燥状態及び湿潤状態のいずれにおいても各種汎用合成高分子フィルムに勝るかあるいは同程度の強度を有するが、これは上述のようにセルロース分子間の水素結合力によると考えられている。しかし、セルロースを誘導体化するとそれらの水素結合力が減少することによって、特に湿潤状態で強度が弱くなるため、それを補強する必要がある。そこで、高分子間に働く結合力として静電的相互作用すなわちイオン結合力を付与することにより、機械強度及びその他の特性を持たせる方法を我々は考えた。また、その方法は、セルロース骨格を持たない高分子に対しても適用でき、機械強度及びその他の特性を向上させることができると我々は考えた。
【0007】
そのようなイオン結合を部分的に含むと思われる複合体を具現化した例として、アニオン性多糖類等のポリアニオン成分及びキトサン等のポリカチオン成分を複合化させて材料を得ることは、特許文献1等に記載されている。このような材料は、これまでの高分子電解質単独から成る素材や、中性高分子から成る素材とは異なる機械強度、機能、物性が期待される。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−279604号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記特許文献1に記載の方法は、ポリカチオン成分とポリアニオン成分との界面に形成されるポリイオンコンプレックスを糸状に引き上げるものであり、フィルム、シート、成形体等を製造するには適していない。
【0010】
また、ポリカチオン成分とポリアニオン成分とを、瞬時に混合する方法では、不均一な凝集物ができ、均質な複合体の形成が困難である。この問題を解決する方法としては、ポリカチオン成分及びポリアニオン成分の溶液として高分子濃度の非常に低い溶液を用いるか、あるいは、ホモジナイザーなどによって機械的に激しく攪拌することによって、ある程度不均一構造を減少させることができるが、工業的には非効率であり、フィルムの製造への実用化には至っていない。このため、ポリカチオン成分とポリアニオン成分からなるポリイオンコンプレックスを、フィルム、素材、膜、粒子などの実用に供せられる形で、特殊な設備や薬品を用いることなく、効率的に製造する方法は、従来存在しなかったものと考えられる。実際に、ポリカチオン成分とポリアニオン成分からなるポリイオンコンプレックスが汎用のフィルム、素材、膜等として利用されている例は見当たらない。
【0011】
そこで、この発明は、アニオン性高分子及びカチオン性高分子による分子レベルでの複合化を利用して、機械的特性の優れた複合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明は、置換度が0.1以上のアニオン性高分子と、置換度が0.1以上のカチオン性高分子とを、水を5〜100体積%含有する溶媒中で分子レベルで分散・相溶させた相溶溶液を、流延法、浸漬法又は沈殿生成法を行うことにより、上記の課題を解決したのである。
【0013】
所定のアニオン性高分子とカチオン性高分子とを、所定の溶媒中で分子レベルで分散・相溶させた相溶溶液を用い、流延法、浸漬法又は沈殿生成法を行うので、簡便に複合体を製造することができる。また、この方法により、均質、平滑で、かつ、機械的特性の優れた複合体を得ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下において、この発明について詳細に説明する。
この発明にかかる複合体は、所定のアニオン性高分子と、カチオン性高分子とで構成されるポリイオンコンプレックスを主成分とする複合体である。
【0015】
[アニオン性高分子]
上記アニオン性高分子とは、官能基としてアニオン性を発揮する官能基を有する高分子をいう。このため、アニオン性を発揮する官能基は、上記アニオン性高分子の重合度に合わせて多数存在する。
【0016】
上記アニオン性高分子を構成するモノマー単位当たりに含まれる、アニオン性を発揮する官能基の数、すなわち、置換度は、0.1以上がよく、0.2以上が好ましく、0.3以上がより好ましい。0.1より小さいと、後述する水を含有する溶媒に溶解しない場合がある。一方、上記官能基の数の上限は、特に限定されないが、モノマー単位当たり3程度で十分である。
【0017】
このアニオン性高分子の重合度は、10以上が好ましく、100以上がより好ましい。10より小さいと、カチオン性高分子と複合したときに、水に不溶な沈殿を生じない場合がある。重合度の上限としては、特に限定されないが、10万程度で十分である。
【0018】
上記アニオン性高分子の例としては、カルボキシル(カルボン酸)基や硫酸基をもつ高分子などの合成アニオン性高分子のほか、ピラノース環を有するアニオン性高分子及びその塩化合物があげられる。上記合成アニオン性高分子としては、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸等や、これらの塩化合物等があげられる。また、上記ピラノース環を有するアニオン性高分子又はそれらの塩化合物としては、カルボキシメチルセルロース、硫酸セルロースやその塩化合物等のアニオン性セルロース誘導体及びその塩化合物があげられる。さらに、上記塩化合物としては、ナトリウム塩、カリウム塩等があげられる。また、上記各アニオン性高分子は、単独で又は2種以上併用することができる。
【0019】
上記アニオン性セルロース誘導体とは、cell−R1,R2,R3(ただしcellはセルロース骨格モノマー単位、R1、R2、R3はセルロースの場合水酸基(−OH基)であってそれが他の置換基に置換しうる部位)の構造を有するセルロース誘導体でR1、R2、R3全体のうち3%以上がアニオン基であるようなセルロース誘導体(R1、R2、R3は、モノマー単位ごとに異なっても構わない)である。置換基の置換度とは、モノマー単位数に対するその置換基の個数の比の値である。例としては、カルボキシメチルセルロース、硫酸セルロース、又はそれらの塩化合物等があげられる。
【0020】
[カチオン性高分子]
上記カチオン性高分子とは、官能基としてカチオン性を発揮する官能基を有する高分子をいう。このため、カチオン性を発揮する官能基は、上記カチオン性高分子の重合度に合わせて多数存在する。
【0021】
上記カチオン性高分子を構成するモノマー単位当たりに含まれる、カチオン性を発揮する官能基の数、すなわち、置換度は、0.1以上がよく、0.2以上が好ましく、0.3以上がより好ましい。0.1より小さいと、水に溶解しない場合がある。一方、上記官能基の数の上限は、特に限定されないが、モノマー単位当たり3程度で十分である。
【0022】
このカチオン性高分子の重合度は、10以上が好ましく、100以上がより好ましい。10より小さいと、アニオン性高分子と複合したときに、水に不溶な沈殿を生じない場合がある。重合度の上限としては、特に限定されないが、10万程度で十分である。
【0023】
上記カチオン性高分子の例としては、合成カチオン性高分子、ピラノース環を有するカチオン性高分子等又はそれらの塩化合物があげられる。上記合成カチオン性高分子又はその塩化合物としては、ポリアリルアミン、ポリビニルアミンやそれらの塩化合物等があげられる。また、上記ピラノース環を有するカチオン性高分子等又はそれらの塩化合物としては、キチン、キトサン、ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル等のカチオン性セルロース誘導体、デンプン糖ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル等のカチオン化デンプン等やそれらの塩化合物等があげられる。上記塩化合物としては、塩酸塩等があげられる。また、上記各カチオン性高分子は、単独で又は2種以上併用することができる。
【0024】
上記カチオン性セルロース誘導体とは、cell−R’1,R’2,R’3(ただしcellはセルロース骨格モノマー単位、R’1、R’2、R’3はセルロースの場合水酸基(−OH基)であってそれが他の置換基に置換しうる部位)の構造を有するセルロース誘導体で、R’1、R’2、R’3全体のうち3%以上がカチオン基であるようなセルロース誘導体(R’1、R’2、R’3は、モノマー単位ごとに異なっても構わない)である。置換基の置換度は、モノマー単位数に対するその置換基の個数の比の値である。例としては、水溶性キチン、すなわち脱アセチル化度(置換度)が約0.5のキトサン、あるいは脱アセチル化度(置換度)が0.1〜1のキトサンあるいはそれらの塩酸塩などの塩化合物が挙げられる。必ずしも天然に産するキチンから製造されたキトサンに限らず、キトサンと同様の化学構造を有するものであれば良い。
【0025】
これらのカチオン性高分子の中でも、脱アセチル化度が0.1以上のキトサンやその塩化合物、又はそれらの誘導体がより好ましい。
【0026】
[複合体]
上記両高分子、すなわち、アニオン性高分子とカチオン性高分子とは、イオンコンプレックスを形成し、後述する製造方法により、全体にわたって均一に複合化した複合体となる。
【0027】
この複合体には、必要に応じて、無機又は有機微粒子を含有させることができる。上記無機微粒子の例としては、コロイダルシリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、ゼオライト、その他の金属酸化物などのイオン性及び非イオン性の無機高分子微粒子等があげられる。また、上記有機微粒子の例としては、ポリスチレンラテックス、ポリメタクリル酸メチルラテックス等のラテックス粒子、スチレン−ブタジエンエマルジョン、アクリロニトリル−ブタジエンエマルジョン等の合成樹脂エマルジョン粒子等があげられる。
【0028】
これらの微粒子のうちイオン性微粒子は、一般に分散液中で分散液のpHに応じてカチオン性あるいはアニオン性微粒子として振る舞い、上記のカチオン性高分子やアニオン性高分子と同様に、イオン結合性の複合体を形成するため、これらの粒子の複合体中における分散性、親和性は高いと考えられる。
【0029】
[複合体の製造]
次に、上記複合体の製造方法について説明する。
まず、上記のアニオン性高分子とカチオン性高分子とを、水を含有する溶媒中で分子レベルで分散・相溶させて相溶溶液を作製する。
【0030】
なお、ここで、アニオン性高分子及びカチオン性高分子が「分子レベルで分散・相溶している」とは、アニオン性高分子とカチオン性高分子の混合溶液が沈殿物を生じず透明であり(波長600nm又は685nmの光の、1cm当たりの透過率が50%以上、好ましくは、80%以上)、かつ、系中のすべての高分子鎖の殆どの部分が互いに会合せずに、局所的に分散している状態をいう。例えば、小角X線散乱実験に於ける絶対強度測定から得られる高分子鎖の単位長さ当たりの分子量ML,obsd.の値が、分子構造式から単一鎖に対して計算される値ML,calcd.(±50%)に等しくなる状態である。
【0031】
[水を含有する溶媒]
上記水を含有する溶媒とは、水を含有する溶媒をいい、水と混合させる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール、アセトン、アセトニトリル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の水溶性の有機溶剤があげられる。この溶媒の種類としては、酸又はアルカリ性の水溶液や、塩濃度が20重量%未満の中性水溶液、又はこれらに上記有機溶剤を含有したものがよい。
【0032】
上記水を含有する溶媒中の水の含有率は、5〜100体積%がよく、50〜100体積%が好ましく、80〜100体積%がより好ましい。5体積%より少ないと、上記両高分子が相溶しない場合がある。
【0033】
[相溶溶液の製造方法]
上記の相溶溶液は、例えば、下記の(1)〜(6)の方法で製造することができる。
(1)上記のカチオン性高分子及びアニオン性高分子を別々に酸性水溶液に溶解し、それらの溶液を混合する方法。
(2)上記のカチオン性高分子及びアニオン性高分子を別々にアルカリ性水溶液に溶解し、それらの溶液を混合する方法。
(3)上記カチオン性高分子を酸性水溶液に溶解し、上記アニオン性高分子を水又は薄いアルカリ性水溶液に溶解し、それらの溶液を混合する方法。
(4)上記カチオン性高分子を水又は薄い酸性水溶液に溶解し、上記アニオン性高分子をアルカリ性水溶液に溶解し、それらの溶液を混合する方法。
(5)上記のカチオン性高分子及びアニオン性高分子を同時に又は順に(上記のカチオン性高分子及びアニオン性高分子を入れる順番は問わない)、酸性水溶液に溶解する方法。
(6)上記のカチオン性高分子及びアニオン性高分子を同時に又は順に(上記のカチオン性高分子及びアニオン性高分子を入れる順番は問わない)、アルカリ性水溶液に溶解する方法。
(7) 上記のカチオン性高分子及びアニオン性高分子を所定の水系媒体に溶解させ、次いで、いずれか一方又は両方の高分子溶液に、所定の塩類を溶解させ、そして、両方の高分子溶液を混合させる方法。
この場合、高分子及び塩類を溶解させる順番は問わず、又同時に添加しても構わない。また、塩類を添加した水系溶媒に、両高分子を同時に又は順に(順番は問わない)溶解させても構わない。
【0034】
なお、上記の(1),(2),(5),(6)の方法では微量(10%以下)の不溶物が生成する場合があるが、例えば遠心分離機により簡単に除去可能である。
【0035】
上記の(1)〜(6)の方法は、pHを1〜4付近まで低くし、又は中性以上に高くすることにより、上記のカチオン性高分子とアニオン性高分子とを溶媒中に分子レベルで分散・相溶させる方法であり、上記(7)の方法は、所定の塩濃度とすることにより、上記のカチオン性高分子とアニオン性高分子とを溶媒中に分子レベルで分散・相溶させる方法である。
【0036】
なお、上記のカチオン性高分子とアニオン性高分子とが相溶するためのpH条件は、高分子の種類に依存し、例えば、上記カチオン性高分子としてキトサンを用い、かつ、上記アニオン性高分子としてカルボキシメチルセルロースを用いる場合は、pHを1〜3程度に低くするか、又は7以上に高くすることが好ましい。
【0037】
上記の相溶溶液を製造する際における、上記のカチオン性高分子やアニオン性高分子を含有する酸性水溶液やアルカリ性水溶液等中の上記のカチオン性高分子やアニオン性高分子の濃度は、0.1〜50wt%がよく、0.5〜10wt%が好ましく、1〜7wt%がより好ましい。溶質高分子の分子量が10万以上の場合で、10wt%を超える高濃度では、ゲル状態あるいは粘ちょうとなり、流動性が非常に低い。一方、0.1wt%未満では、最終的に得られる複合体に対して使用する上記水溶液の量が多く、効率的でない。特に、1〜7wt%とすると、フィルム作成、コーティング等において好ましい。
【0038】
また、上記相溶溶液中のカチオン性高分子とアニオン性高分子の重量比は1:50〜50:1がよく、より好ましくは、アニオン性高分子及びカチオン性高分子の荷電状態に依存する。重量比が上記範囲を外れると、十分な強度を有する複合体が得られない場合がある。
【0039】
上記酸性水溶液としては、上記高分子相溶溶液が安定に存在しえるものであれば限定されず、例えば、塩酸水溶液等があげられる。また、上記アルカリ性水溶液としては、上記高分子相溶溶液が安定に存在しえるものであれば限定されず、例えば、水酸化ナトリウム水溶液等があげられる。また、上記の酸性水溶液やアルカリ性水溶液、水には、上記したように所定量の上記有機溶剤を含有させてもよい。
【0040】
また、上記の酸性水溶液、アルカリ性水溶液、又は水には、上記高分子相溶溶液が安定に存在し得る範囲で、塩類を含有させてもよい。その場合の塩類の種類は特に限定しないが、例としては、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸リチウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等があげられる。
【0041】
上記塩酸水溶液の濃度は、0.000001〜10mol/Lがよく、0.00001〜1mol/Lがより好ましい。0.000001mol/Lより薄いと、相溶しない場合がある。一方、10mol/Lを超えると、中和に必要なアルカリ性水溶液の量が多くなり、経済的に不利となる。
【0042】
上記水酸化ナトリウム水溶液の濃度は、0.000001〜10mol/Lがよく、0.00001〜1mol/Lがより好ましい。0.000001mol/Lより薄いと、相溶しない場合があり、一方、10mol/Lを超えると、中和に必要な酸性水溶液の量が多くなり、経済的に不利となる。
【0043】
上記(7)の方法における相溶溶液中の塩濃度は、0.1〜20重量%がよく、1〜10重量%が好ましい。0.1重量%より少ないと、上記カチオン性高分子とアニオン性高分子が部分的な複合化が起こり相溶しない場合がある。一方、20重量%より大きいと、塩類が飽和状態に達する場合がある。
【0044】
上記塩類の種類の例としては、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸リチウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム等があげられる。上記高分子相溶溶液に溶解される上記の塩類は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0045】
上記(7)の方法における相溶溶液には、上記高分子相溶溶液が安定に存在し得る範囲内の濃度で、塩類を含有させてもよい。その場合の塩類の種類は特に限定しないが、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸アルミニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどが挙げられる。
【0046】
上記(7)の方法における相溶溶液には、酸又はアルカリを含有させてもよい。その場合の酸又はアルカリの種類は、上記高分子相溶溶液が安定に存在し得るものであれば特に限定しない。その場合のpHの範囲(酸、アルカリの濃度の範囲)は、上記高分子相溶溶液が安定に存在し得る範囲であれば特に限定しない。
【0047】
上記の相溶溶液を製造する際、上記2種類の溶液を混合するときにおける上記アニオン性高分子とカチオン性高分子との組成は、カチオン性高分子に含有されるカチオン性を発揮する官能基数の溶液中における総数(以下、「カチオン当量」と称する。)とアニオン性高分子に含有されるアニオン性を発揮する官能基数の溶液中における総数(以下、「アニオン当量」と称する。)との比が、カチオン当量/アニオン当量=0.05〜20がよく、0.5〜2が好ましい。上記範囲を逸脱すると、十分な強度を有する複合体が得られない場合がある。
【0048】
上記相溶溶液の波長600nm又は685nmにおける可視光の透過率は、溶液部分を透過する光路長が1cmの場合50%以上がよく、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。50%より小さいと、相溶状態になく、上記のカチオン性高分子及びアニオン性高分子が不均一に複合化していると考えられる。
【0049】
[相溶溶液からの複合体の製造]
次に、上記相溶溶液を用いて、流延法、浸漬法又は沈殿生成法によって複合体を製造する方法について説明する。
【0050】
まず、上記(1)〜(6)の方法で製造された相溶溶液を用いて、pHの変化により複合体を析出させて製造する方法について説明する。
【0051】
上記流延法は、まず、上記相溶溶液を、ガラス板上あるいは型に流延(キャスト)した後、乾燥し、ガラス板あるいは型から剥がすことにより、均一フィルムを得る方法である。さらに、得られたフィルムを水洗、すなわち、水、酸、塩基、無機塩化合物又は有機塩化合物の水溶液に浸漬した後、100℃以上で熱処理する事により、通常湿潤状態での強度が水洗、熱処理しないフィルムと比べて、引張強度その他の物性が向上し、強い均一フィルムが得られる。
【0052】
上記浸漬法は、まず、上記相溶溶液を、ガラス板上あるいは型に流延(キャスト)し、凝固液につけて複合体を析出させた後、乾燥し、ガラス板あるいは型から剥がすことにより、均一フィルムを得る方法である。得られたフィルムを水洗、すなわち、水、酸、塩基、無機塩化合物又は有機塩化合物の水溶液に浸漬した後、100℃以上で熱処理する事により、通常湿潤状態での強度が水洗、熱処理しないフィルムと比べて、引張強度その他の物性が向上し、強い均一フィルムが得られる。
【0053】
上記凝固液としては、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、有機溶剤、及びそれらの混合物のいずれもが利用でき、塩を含んでいてもかまわない。上記の酸やアルカリの例としては、塩酸、硫酸、硝酸、アミド硫酸、シュウ酸、過塩素酸、臭素酸、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等があげられる。この凝固液としては、pHの大きな変動を抑制するため、緩衝液を用いてもよい。この緩衝液としては、シュウ酸塩緩衝液、フタル酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸塩緩衝液等があげられる。
【0054】
上記有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール、アセトン、アセトニトリル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。
【0055】
上記凝固液のpHとしては、上記相溶溶液のpHから1以上、好ましくは2以上離れたものとすると、複合体を析出させることができる。例えば、上記アニオン性高分子としてカルボキシメチルセルロース、上記カチオン性高分子としてキトサンを用いる場合、相溶溶液のpHは、1〜3又は8以上であるが、これをpHを4〜5にすると、よりよい複合体が得られる。
上記の方法により、複合体の収率は、70%以上となる。
【0056】
次に、沈殿生成法について説明する。これは、上記の相溶溶液のpHを変化させることにより、上記両高分子を結合させて不溶化させ、沈殿を生成させ、次いで、この沈殿の上澄みを除去するか、又は濾別若しくは遠心分離をして取り出すことにより、複合体を製造する方法である。得られた白沈物、すなわち不溶体を乾燥することにより、無色あるいは黄色味を帯びた高分子複合体が得られる。別の方法として、乾燥前の沈殿物を水に分散させてから、ガラス板上あるいは型に流延(キャスト)し、乾燥させることにより複合体を製造する方法もある。又、別の方法として、乾燥前の沈殿物を、水洗、すなわち、水、酸、塩基、無機塩化合物又は有機塩化合物の水溶液中で撹拌若しくは浸漬した後、又は水洗を繰り返した後、水又は薄い酸、塩基、塩、有機溶剤等を含む水溶液、又は緩衝液中に分散させてから、ガラス板上あるいは型に流延(キャスト)し、凝固液に浸漬するか、又は乾燥させることにより、複合体を製造する方法もある。
【0057】
上記の相溶溶液のpHを変化させるとは、上記相溶溶液の液性が酸性であれば、水素イオン濃度を減少させることをいい、液性がアルカリ性であれば、水素イオン濃度を増加させることをいう。これは、一般にpHメーターによって測定でき、pHメーターの示す値で見ることができる。これは、上記水系媒体として水溶性有機溶媒を含んでいる場合でも同様である。
【0058】
上記のpHの値の変化量は、使用されるカチオン性高分子及びアニオン性高分子の種類にもよるが、1以上あればよく、2以上あれば好ましい。一方、pHを変化させる上限は、上記相溶溶液の液性が中性付近(pH7±3)となる状態で十分である。上記の相溶溶液のpHを変化させていくと、透明状態から、白濁状態に変化して、続いて、中性付近で白沈物が生じる状態となる。そして、続けてpHを変化させていくと、白沈物が生じる状態から、再び白濁状態に変化して、最後には、相溶状態となる。このため、上記相溶溶液の液性が酸性の場合にアルカリ性までpHを変化させたり、上記相溶溶液の液性がアルカリ性の場合に酸性までpHを変化させてもよいが、変化させるpHの値によっては、不溶化した高分子複合体が再び相溶化する場合がある。このため、中性付近(pH7±3)までで十分である。
【0059】
具体的なpHの変化量は、pHを変化させて不溶化させて高分子複合体を形成させて白沈を生じさせたとき、これを含む水系媒体の水溶液部に存在する上記両高分子の量が、いずれも残存率が、30%以下となる場合がよく、10%以下となる場合が好ましく、5%以下となる場合がより好ましい。30%を超えると、効率的でなくなる。
【0060】
上記のpHを変化させる方法としては、特に限定しないが、塩酸水溶液等の酸性水溶液や、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液を上記相溶溶液に添加する方法等があげられる。また、上記相溶溶液を異なるpHの水溶液に流し込む方法等があげられる。
【0061】
次に、上記(7)の方法で製造された相溶溶液を用いて、塩濃度の変化により複合体を析出させて製造する方法について説明する。
【0062】
上記(7)の方法で製造された相溶溶液の塩濃度を低下させることにより、上記両高分子を結合させて不溶化させて沈殿を生成させ、次いで、この沈殿の上澄みを除去するか、又は濾別若しくは遠心分離をして取り出すことにより、複合体を製造することができる。得られた白沈物、すなわち不溶体を乾燥することにより、無色あるいは黄色味を帯びた高分子複合体が得られる。別の方法として、乾燥前の沈殿物を水に分散させてから、ガラス板上あるいは型に流延(キャスト)し、乾燥させることにより複合体を製造することができる。又、別の方法として、乾燥後の沈殿物を必要に応じて粉砕し、水系溶媒に分散させてから、ガラス板上あるいは型に流延(キャスト)し、乾燥させることにより複合体を製造することができる。又、別の方法として、乾燥前の沈殿物を、水洗、すなわち、水、酸、塩基、無機塩化合物又は有機塩化合物の水溶液中で撹拌若しくは浸漬した後、又は水洗を繰り返した後、水又は薄い酸、塩基、塩、有機溶剤等を含む水溶液、又は緩衝液中に分散させてから、ガラス板上あるいは型に流延(キャスト)し、凝固液に浸漬するか、又は乾燥させることにより、複合体を製造することができる。
【0063】
上記の塩濃度を低下させる方法としては、特に限定しないが、上記相溶溶液を上記塩類を含有しない水系媒体に添加する方法等があげられる。上記塩類を含有しない水系媒体に添加するため、塩濃度が大幅に低下する。このため、塩濃度が減少し、この両高分子による会合体の形成抑制が解除されるからである。
【0064】
上記水系媒体としては、上記の凝固液と同様のものを用いることができる。
【0065】
また、別の沈殿生成法として、上記pHを変化させることにより、又は塩濃度を変化させることにより沈殿を生成させた後、静置した状態で、水洗、すなわち、水、酸、塩基、無機塩化合物又は有機塩化合物の水溶液中で浸漬すること、又は水洗を繰り返すことにより、連続したひとかたまりの複合体を生成せしめ、上澄みを除去し、乾燥し、又はさらに水洗、乾燥、熱処理等を行うか、又はさらにそれを繰り返すことにより、均一な複合体を生成する方法がある。相溶溶液を全く撹拌することなく、複合体を生成せしめるため、試料全体にわたって連続的に複合化が進み、湿潤状態でもちぎれ難い高強度な複合体が得られる。
【0066】
上記の方法において、沈殿から得られた複合体を、酸性又はアルカリ性溶媒などの上記水を含有する溶媒に再分散させてから、再度、流延法又は浸漬法を行うことにより、複合体を製造することができる。
【0067】
上記の方法で得られる複合体はいずれも、熱処理することにより、耐水性や湿潤状態での引張強度が改善される。
【0068】
熱処理条件は特に制限されないが、また、高分子の種類にも依存するが、熱処理温度は、40℃〜300℃がよく、80℃〜200℃が好ましく、100℃〜150℃がより好ましい。40℃より低いと熱処理による効果は小さく、また、300℃より高いと複合体が熱分解する場合がある。
【0069】
また、熱処理時間は、熱処理温度に依存するが、0.01h〜100hがよく、0.5h〜20hが好ましく、1h〜4hがより好ましい。熱処理時間が0.01hより短いと効果は小さく、また、100hより長くてもよいが非効率的となる。また熱処理を必要以上に長時間行うと得られる複合体の強度が弱くなる場合もある。
【0070】
また、上記の複合体の製造方法は、無機酸あるいは無機塩基、あるいは場合によっては少量の酢酸のみを用いて、穏やかな攪拌操作のみによって製造することが可能な方法であり、安全に製造することが可能である。特にカルボキシメチルセルロースナトリウム塩及びキトサンなどのセルロース骨格をもつ高分子をアニオン性高分子及びカチオン性高分子として用いる場合、組成物中に残存する物質はそれらの高分子及び塩化ナトリウム(及び場合によっては酢酸)のみであり、いずれも食品に添加される、安全、無毒な成分のみである。無機酸及び無機塩基及び水のみを用いて、製造することが可能であり、酢酸以外の有機酸などの危険物、有害物を全く使用せずに製造が可能である。
【0071】
さらに、高濃度の高分子溶液から製造でき、無機酸あるいは無機塩基、あるいは場合によっては少量の酢酸のみを用いて、穏やかな攪拌操作のみによって製造することができ、効率的(簡便、低コスト)である。
【0072】
なお、上記の複合体の製造において、溶剤や塩類などの低分子添加物に限らず、主成分となるカチオン性高分子及びアニオン性高分子以外に、非イオン性のその他の高分子成分や無機物、及びそれらの集合体である凝集体や微粒子を添加してもよい。
【0073】
[複合体の形状、物性等]
上記の方法で得られる複合体は、ガラス板上あるいは型に流延(キャスト)されて製造されるので、その形状としては、フィルム、シート又は各種形状の成形体となる。また、この成形体は、使用する型に合わせて任意の形状をとることができる。
【0074】
上記の方法で得られた複合体は、両高分子がその殆どの部分で互いに会合せずに局所的に分散している状態で相溶した溶液から、乾燥あるいは浸漬により高分子複合体を生成せしめているため、分子レベルで緻密に複合化した平滑、均質な複合体となる。具体的には、分子レベルで三次元的に緻密な構造が、1μm3以上(〜cm3オーダーにわたる)にわたって連続したイオン結合性複合体となる。
【0075】
上記複合体のフィルムの厚みは、特に限定されないが、0.1μm以上がよく、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。厚さが1μm未満では単独での機械強度が弱くなるが、他の基材へのコーティングあるいは他の基材と重ねることにより機械的強度を持たせることができる。上限は特にないが、0.25mm以上のものは、一般にシートの範疇に入るので、フィルムの厚みの上限は、0.25mmとすることができる。また、上記複合体の厚みについても特に制限されない。
【0076】
上記複合体は、通常の取り扱い上破れないかそれ以上の十分な機械強度を有する。乾燥状態での引張強度は、構成高分子の化学構造、分子量、置換度、イオン結合率、その他の製造条件などによって変化し、また水に湿潤状態での引張強度は構成高分子の親水性や疎水性、化学構造、分子量、置換度、イオン結合率、その他の製造条件などによって変化するが、引張強度は通常、23℃、50%RHにおいて、20〜1000MPaがよく、50〜500MPaが好ましく、100〜300以上がより好ましい。20MPaより小さいと、強度が弱く、破れやすい。一方、1000MPaより大きくてもよいが、例えば包装資材として利用した場合に、中身を取り出す場合や廃棄する場合などに、破りにくく不都合となる場合がある。
【0077】
また、25℃湿潤状態では0.3〜500MPaがよく、1〜300Paが好ましく、5〜100MPa以上がより好ましい。0.3MPaより小さいと、強度が弱く、破れやすい。一方、500MPaより大きくてもよいが、例えば包装資材として利用した場合に、中身を取り出す場合や廃棄する場合などに、破りにくく不都合となる場合がある。
【0078】
さらに、分子量が1〜10万程度のカルボキシメチルセルロース−キトサン複合体の場合、23℃、50%RHにおける引張強度は、20〜500MPaがよく、50〜300MPaが好ましい。20MPaより小さいと、強度が弱く破れやすい。一方、500MPaより大きくてもよいが、例えば包装資材として利用した場合に、中身を取り出す場合や廃棄する場合などに、破りにくく不都合となる場合がある。
【0079】
また、23℃湿潤状態では、0.3〜200MPaがよく、1〜100MPaが好ましい。0.3MPaより小さいと、強度が弱く破れやすい。一方、200MPaより大きくてもよいが、例えば包装資材として利用した場合に、中身を取り出す場合や廃棄する場合などに、破りにくく不都合となる場合がある。
【0080】
上記複合体の湿潤状態で破断点伸びは、20%〜400%がよく、50%〜300%が好ましく、100%〜200%がより好ましい。20%より小さいと、柔軟性が小さい。一方、400%より大きいと、破断時の断面積が小さくなり、引張強度の値が小さくなる。
なお、上記複合体がゴム弾性又は柔軟性を特徴とする場合には100%〜1000%が好ましく、150%〜500%がより好ましい。
【0081】
フィルムは通常、一旦伸びた後、引張応力を無くすと元のサイズに戻るものも可能である(但し、セロハンでは伸びた後、もとのサイズに戻らない)。戻り方は製造方法によって異なるが、上記複合体においては、2倍に伸ばした後でも元のサイズからの変化が10%以内にまで戻るものがよく、5%以内にまで戻るものが好ましい。10%を超えると、変形に対する回復が不完全である。
【0082】
上記複合体は、湿潤状態で破断点伸びが50%以上であるような柔軟性を有するという特徴を有するため、この複合体を破壊することなく延伸することが可能であり、それによって延伸フィルムを製造することができる。得られた延伸フィルムは未延伸複合体フィルムやセロハンなどの従来のセルロース系フィルムと比べて1.5倍以上の高強度を有する。
【0083】
特に両高分子が、いずれも糖鎖高分子のみからなる複合体で、水に湿潤状態での引張強度が0.5MPa以上で、かつ、引張破断時の伸びが50%以上である複合体を得ることが可能となり、厚みのあるシートや成形体は湿潤状態で加硫ゴムと同様のゴム弾性を有する。
【0084】
上記複合体は、柔軟性を有し、可塑剤などを全く添加しない状態でも、折り曲げても切れたり割れたりしない。室温(25℃)、50%RHの標準的な環境のもとで、可塑剤を十分に添加したポリエチレン樹脂あるいはテフロン(R)のような柔軟性を有する。
【0085】
上記複合体は、水に不溶のものであり、少なくとも、水中で3ヶ月間変化しないものもある。
【0086】
さらに、3ヶ月水中に放置した後の複合体の寸法の変化は、放置前の大きさに対して0〜50%がよく、0〜20%が好ましく、0〜10%がより好ましい。この範囲を満たさないと、乾燥時にしわがよりやすい。
【0087】
さらにまた、3ヶ月水中に放置した複合体は、放置前の湿潤状態の引張強度を維持しうる。通常、水中に浸漬して3ヵ月以上経過後の湿潤状態での引張強度が少なくとも0.3MPa以上を維持している。
【0088】
さらに、3ヶ月水中に放置した複合体の破断点伸びは、20%〜400%がよく、50%〜300%が好ましい。20%より小さいと、柔軟性が小さいため、ちぎれ易くなり、一方、400%より大きいと、破断時の断面積が小さくなり、引張強度の値が小さくなる。
【0089】
上記複合体は、水に限られず、弱酸水溶液、弱塩基水溶液、エタノール、メタノール、アセトンその他の有機溶剤にも不溶である。
【0090】
例えば、複合体を構成するアニオン性高分子がカルボキシメチルセルロース又はそのナトリウム塩でカチオン性高分子がキトサン又はその塩酸塩の場合で、複合体中に他の成分が殆ど含有されていない場合には、イオン結合率を以下のようにして見積もることができる。カルボキシメチルセルロース又はそのナトリウム塩のアニオン基であるカルボキシル基の状態は、(a)COO−H型、(b)COO-−Na+型、又は(c)COO-−(カチオン性高分子のカチオン基)型、のいずれかと考えられる。赤外吸収測定で、1730〜1740cm-1での吸収を(a)COO−H型によるものとみなして(a)の数を定量し、エネルギー分散型X線マイクロ分析装置(EDS)又は原子吸光法などでナトリウム量の定量を行い、(b)COO-−Na+型の数を定量した場合、全カルボキシル基数(a+b+c)から、(a)COO−H型及び(b)COO-−Na+型の数を差し引くことで、(c)COO-−(カチオン性高分子のカチオン基)型の数を見積もることができる。ここでは、イオン結合率として、イオン結合率(%)=[1−(COOH基数/全カルボキシル基数)−(Na原子数/全カルボキシル基数)]×100、すなわち、イオン結合率(%)=[1−(a/a+b+c)−(b/a+b+c)]×100によって定義する。ここで、「全カルボキシル基数(a+b+c)」はイオン型(COO-)及び非イオン型(COOH)の個数の和であるから、複合体中のアニオン性高分子組成及び置換度から得られる。
【0091】
このようにして見積もった上記複合体中のイオン結合率は、0.1以上であり、0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましい。0.1未満だと、引張強度、特に湿潤状態での引張強度が低下する。
【0092】
アニオン性高分子の種類とカチオン性高分子の種類の組合せが上記以外の場合でも、複合体中のアニオン基及びカチオン基の各状態の数が定量できれば、同様の考え方でイオン結合率を定義し、それを定量することは可能である。その場合の好ましいイオン結合率は高分子の種類の組合せによるが、0.01以上がよく、0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましい。
【0093】
例えば、複合体を構成するアニオン性高分子がカルボキシメチルセルロース又はそのナトリウム塩でカチオン性高分子がキトサン又はその塩酸塩の場合で、複合体中に他の成分が殆ど含有されていない場合で、カチオン当量:アニオン当量=1:1である場合には、このイオン結合率とは、複合体中の構成する高分子鎖の持つイオン性の全置換基数に対する、イオン結合対の形成に寄与する置換基の数の比の値である。イオン結合率が1に近い場合、複合体を水に漬けても、アニオン性高分子及びカチオン性高分子が全体にわたって分子レベルでイオン結合しているため、アニオン性高分子及びカチオン性高分子が水中に殆ど溶出しない。
【0094】
上記複合体のいずれについても水につけた場合の高分子の溶出量は30%以下がよく、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。30%を超えると、湿潤状態での強度が弱くなる傾向にある。
【0095】
上記複合体は、室温(25℃)、50%RHの標準的な環境のもとで、例えばカルボキシメチルセルロース−キトサン複合体の場合、5%以上の平衡含水率を有する場合があり、構成高分子(カルボキシメチルセルロース単独あるいはキトサン単独)の場合に比べて大きい場合がある。
【0096】
上記複合体には、セルロース及びその誘導体、及び、キチン又はキトサン及びそれらの誘導体のみからなる複合体が含まれ、上記特徴を備えた環境適応型素材として有用である。それらセルロース系高分子は生分解性を有する事が知られており、また、複合体の構成成分であるキトサンは、抗菌性や生理活性を有し、複合体フィルムあるいは成形体は柔軟性があり、可塑剤が不要であるため環境汚染物質を含む添加剤が不要となる。
【0097】
この発明によると、上述のように、高濃度の高分子溶液から製造でき、無機酸あるいは無機塩基、あるいは場合によっては少量の酢酸のみを用いて、穏やかな攪拌操作のみによって製造することが可能な方法であり、効率的(簡便、低コスト)かつ安全にこの発明の複合体を製造することが可能である。特にカルボキシメチルセルロースナトリウム塩及びキトサンなどのセルロース骨格をもつ高分子をアニオン性高分子及びカチオン性高分子として用いる場合、組成物中に残存する物質はそれらの高分子及び塩化ナトリウム(及び場合によっては酢酸)のみであり、いずれも食品に添加される、安全、無毒な成分のみである。そのように、製造条件によってはセルロース誘導体及びキチン誘導体、及び低分子無機塩あるいは酢酸のみからなるような、安全で無毒である成分のみからなる複合体の製造が可能である。また、無機酸及び無機塩基及び水のみを用いて製造することが可能であり、有機酸などの危険物、有害物を全く使用せずに製造が可能であるため、それらの有害物を一切含まない安全無害の複合体も本請求に含まれる。
【0098】
上記相溶溶液、すなわちアニオン性高分子及びカチオン性高分子とが分子レベルで分散溶解している混合溶液から上記した方法でポリイオンコンプレックスを製造すれば、上記のような特徴を有するポリイオンコンプレックスを主成分とした複合体を得ることが可能である。
【0099】
上記複合体には非イオン性高分子などの第3あるいはそれ以上の成分が含まれてもよい。
【0100】
上記の複合体は、各々の高分子から成るの膜の積層体ではなく両高分子がその複合体全体にわたって均一に複合化したものなので、延伸処理を施すことができる。特に、上記複合体は、湿潤状態で破断点伸びが0.5倍以上であるようなゴム弾性を有するという特徴を有するため、フィルムを破壊することなく延伸することが可能であり、それによって延伸フィルムを製造することができる。得られた延伸フィルムは未延伸複合体フィルムやセロハンなどの従来のセルロース系フィルムと比べて1.5倍以上の高強度を有する。
【0101】
延伸の方法は特に制限しないが、この複合体が湿潤状態でゴム弾性を有する事から、湿潤状態で、1軸方向に約2倍延伸させ、延伸した状態を固定して、乾燥させる事により、2倍延伸フィルムを得る事ができる。
【0102】
この延伸フィルムは上記の特性を有するほか、乾燥状態での引張強度が延伸前の150%以上となる高強度フィルムが得られる。また、フィルム内の高分子配列が配向することも広角X線回折からわかった。
【0103】
また、この延伸フィルムは、内部で高分子が1軸方向に配向される。そして、高分子配向の配向の程度は、複合体からのX線散乱強度の測定実験において、散乱ベクトルの大きさが1〜2Å-1の範囲において、配向軸方向へのX線散乱強度の最大値(a)と、配向軸に対して垂直方向へのX線散乱強度の最大値(b)との比(a/b)で示すことができる。このa/bは、0より大きく0.9以下の場合がよく、0.1〜0.8が好ましく、0.2〜0.7がより好ましい。0.9より大きいと、配向度が低すぎるため、高強度となりにくい。
【0104】
なお、上記の製造方法で、相溶溶液を凝固液に漬ける前に一旦溶媒を蒸発させてから凝固液に漬けることにより、複合体の凝固を効率的に行うことができる。
【0105】
【実施例】
以下に実施例及び比較例をあげてこの発明をさらに具体的に説明するが、この発明は実施例の範囲に制限されるものではない。なお、この実施例及び比較例における評価法は次に示す通りである。
【0106】
(イオン結合率)
エネルギー分散型X線マイクロ分析装置(EDS)、原子吸光法を用いて複合体中のナトリウム濃度を決定した。また、元素分析装置により、複合体中の窒素含有率を決定し、それによって複合体中のカチオン高分子組成を決定した。また、赤外吸収測定より、複合体中の−COOH基の量を決定した。これらの値より、複合体中の全アニオン基に対する、カチオン性高分子のカチオン基とイオン結合したアニオン基の比率を求め、イオン結合率を決定した。
イオン結合率は、アニオン基がカルボキシル基の場合で、元素分析測定よりカチオン当量:アニオン当量=1:1であることが確認された場合、イオン結合率(%)=[1−(Na原子数/全カルボキシル基数)−(COOH基数/全カルボキシル基数)]×100によって計算した。ここで、「全カルボキシル基数」は、イオン型(COO-)及び非イオン型(COOH)の個数の和であり、複合体中のアニオン性高分子組成及び置換度から得られる。
【0107】
(引張強度及び破断点伸び)
フィルムをJIS K7113 1(1/2)号ダンベル型に切抜き、24時間以上50%RH・23℃環境下に置き、剥離試験機を用いて、50%RH・23℃及び湿潤状態・25℃で、引張速度10mm/minで測定した。湿潤状態での引張強度は24時間以上水中に浸漬し、水が噴霧されている中でフィルムに水が常に十分付着した状態(25℃)で行った。湿潤状態で伸びの大きいものについては一部、引張速度100mm/minで行った。
なお厚みのある複合体シートについては、断面積が約1mm2程度となるような小型のダンベル型の試料片を作成し引張試験を行った。
【0108】
(溶質の単位長さ当たりの分子量)
溶液あるいは分散液中の溶質の、単位長さあたりの分子量ML,obsd.は、小角X線散乱実験により測定される絶対散乱強度(Δi(q)、q:散乱ベクトルの大きさ)から決定した。Δi(q)の定義及び測定方法の詳細は、文献(H.Ando and T.Konishi,Phys. Rev. E,62,727−733(2000))に記載されている。なお、単一高分子鎖の単位長さ当たりの分子量の理論値ML,calcd.は、モノマー単位当たりの分子量を、高分子鎖に沿った方向でのモノマー単位当たりの長さで割って得られる。キトサン、カルボキシメチルセルロースについては、いずれも40gmol-1Å-1と計算される。
混合溶液中で高分子が複合化や会合などにより並列に結合する場合、高分子セグメントの平均の結合数は、通常ML.obsd./ML.calcd.となるから、ML.obsd.=ML.calcd.(±50%)であれば、結合数は1±0.5となり、各高分子が1本1本孤立して分散していることを表し、したがって高分子が複合化せずに、分子レベルで分散・相溶していることを示す。
【0109】
(フィルムの耐溶媒性)
試料片を48時間所定の溶媒に浸漬し、浸漬前後の乾燥重量を測定し、試料厚さ及び質量の減少比率を求めた。
【0110】
(実施例1)(相溶溶液)
脱アセチル化度53%のキトサン(商品名DAC−50甲陽ケミカル(株)社製、含水率2.8wt%、以下「DAC50」と略する)6.1gを0.24M塩酸水溶液144gに溶解し、4.0wt%の濃度のDAC50溶液150gを得た。
【0111】
また、置換度0.74のカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(東京化成(株)社製、含水率7.8wt%、以下「CMC」と略する)5.0gを1×10-5M水酸化ナトリウム水溶液145gに溶解し、3.4wt%の濃度のCMC溶液150gを得た。上記DAC50溶液40gにCMC溶液40gを加えマグネチックスターラーで攪拌し透明なDAC50−CMC相溶溶液を得た。
【0112】
この相溶溶液のpHは1で、溶液中の高分子の重量分率は0.034(DAC50:2.0wt%、CMC:1.4wt%)、DAC50のモノマー単位のモル濃度は0.1mol/L、CMCのモノマー単位のモル濃度は0.07mol/Lであり、アニオン性を発揮する官能基のモル濃度及びカチオン性を発揮する官能基のモル濃度はいずれも0.05mol/Lである(カチオン当量とアニオン当量との比は1:1)。
【0113】
この相溶溶液の可視光の光路1cm当たりの透過率は90%以上であった。また、小角X線散乱測定に於ける絶対強度測定から得られる高分子鎖の単位長さ当たりの分子量ML,obsd.の値は38gmol-1Å-1であり、分子構造式から単一鎖に対して計算される値ML,calcd.(±50%)に等しいことから相溶性を確認した。
【0114】
(実施例2)
実施例1で得られたDAC50−CMC相溶溶液を真空ポンプを用いた減圧下で脱泡した後、1mmの厚さでガラス板(縦幅200mm、横幅300mm)上に流延し(厚さ1mmのスリットを用いた)、3Lの酢酸塩緩衝液水溶液(酢酸塩の濃度:0.006mol/L、pH=5)につけて(38min)、複合体を凝固・析出させた後、50℃で乾燥(26h)することにより平滑で、均一なDAC50−CMCフィルムが得られた。
【0115】
このフィルムの厚さは約20μmであった。収率は90%であった。このフィルムの断片を水につけると縦幅、横幅がいずれも一旦2〜3倍に膨潤したあと、数分以内にほぼ元のサイズに戻った。このフィルムを340日間水につけても溶け出すことは無く、膨潤もせず、形状を保っている。
【0116】
また、このフィルムの乾燥(50%RH、23℃)状態、及び湿潤状態(25℃)での引張強度及び破断点伸びを表1に示す。フィルムは、水、1M塩水溶液、pH=3の弱酸性水溶液、pH=9の弱塩基水溶液、トルエン、アセトン、メタノール、エタノールなどに不溶であった。
【0117】
(実施例3)
実施例1で得られたDAC50−CMC相溶溶液を、1.5mmの厚さでガラス板(縦幅200mm、横幅150mm)上に流延し、3Lの薄い塩酸水溶液(pH=5)につけて(20min)複合体を凝固・析出させた後、50℃で乾燥(40min)することにより平滑で、均一なDAC50−CMCフィルムが得られた。このフィルムの厚さは30μmであった。
【0118】
(実施例4)
実施例2で得られたDAC50−CMCフィルムを薄い塩酸水溶液(pH=5)に漬けて(15h)、洗浄した後、50℃で乾燥させたあと、110℃で熱処理(1.9h)した。均一な、厚さ20μmのフィルムが得られた。
【0119】
このフィルムは水につけた場合、縦幅、横幅のいずれも10%も膨潤しなかった。このフィルムを340日間水につけても溶け出すことは無く、膨潤もせず、形状を保っている。このフィルムの乾燥(50%RH、23℃)状態、及び湿潤状態(25℃)での引張強度及び破断点伸びを表1に示す。
【0120】
(実施例5)
実施例2と同様の方法で流延の際のスリット幅が2mmで得たDAC50−CMCフィルムを薄い酢酸塩緩衝液(酢酸塩の濃度:0.0003mol/L、pH=5)に漬けて(1.5h)洗浄した後、室温で乾燥させたあと、110℃で熱処理(2h)した。平滑、均一な、厚さ40μmのフィルムが得られた。
このフィルムは水につけた場合、縦幅、横幅のいずれも10%も膨潤しなかった。このフィルムを180日間水につけても溶け出すことは無く、膨潤もせず、形状を保っている。
【0121】
(実施例6)
実施例2で得られたDAC50−CMCフィルムを110℃で熱処理(1.3h)した。平滑、均一な、厚さ20μmのフィルムが得られた。このフィルムの乾燥(50%RH、23℃)状態、及び湿潤状態(25℃)での引張強度及び破断点伸びを表1に示す。
また、このフィルムを純水又は薄い酢酸塩緩衝液(酢酸塩の濃度:0.0001−0.0003mol/L、pH=5)に漬けた場合、フィルムは一旦少し膨潤するが50%未満であり、一旦熱処理することにより膨潤、収縮によるサイズ変化が抑えられた。
このフィルムを190日間水につけても溶け出すことは無く、膨潤もせず、形状を保っている(湿潤状態(25℃)での引張強度:4MPa)。
【0122】
(実施例7)
実施例2で得られたDAC50−CMCフィルムを110℃で熱処理(1.2h)した後薄い酢酸塩緩衝液(酢酸塩の濃度:0.00015mol/L、pH=5)に漬けて(4h)洗浄した後、室温で乾燥させたあと、110℃で熱処理(1h)した。平滑、均一な、厚さ20μmのフィルムが得られた。
元素分析から、カチオン当量:アニオン当量=1:1であることが確認され、EDSから(Na原子数/カルボキシル基数)<0.05、及びIRから(COOH基数/全カルボキシル基数)<0.05であり、したがって、イオン結合率は90%以上であった。このフィルムは水につけた場合、縦幅、横幅のいずれも10%も膨潤しなかった。このフィルムの乾燥状態(50%RH、23℃)、及び湿潤状態(25℃)での引張強度及び破断点伸びを表1に示す。このフィルムを160日間水につけても溶け出すことは無く、膨潤もせず、形状を保っている。
【0123】
(実施例8)
実施例2で複合体の凝固の際に、水の代わりにアセトンあるいはメタノール又はエタノールを用いた。同様に平滑、均一な、厚さ20μmの複合体フィルムが得られた。水の場合より凝集固化し易く、また、乾燥が速く、調製時の取扱いが容易であった。いずれのフィルムも水、アセトン、メタノール、エタノールに不溶であった。
【0124】
(実施例9)
実施例1で得られたDAC50−CMC相溶溶液を1mmの厚さでガラス板(縦幅200mm、横幅300mm)上に流延し(厚さ1mmのスリットを用いた)、そのまま50℃で33分間送風乾燥器である程度水分を蒸発させた後、3Lの酢酸塩緩衝液水溶液(酢酸塩の濃度:0.006mol/L、pH=5)につけて(12h)複合体を凝固・析出させた後、50℃で乾燥(4h)することにより平滑で、均一なDAC50−CMCフィルムが得られた。
【0125】
このフィルムを180日間水につけても溶け出すことは無く、膨潤もせず、形状を保っている。この方法では凝固の際には高分子相溶溶液がかなり濃厚となっており複合体の流出が抑えられる。このフィルムの乾燥(50%RH、23℃)状態、及び湿潤状態(25℃)での引張強度及び破断点伸びを表1に示す。湿潤状態(25℃)での引張強度測定の後、フィルムのサイズはほぼ元のサイズに戻った。
【0126】
(実施例10)
実施例9で得られたDAC50−CMC複合体を薄い酢酸塩緩衝液(酢酸塩の濃度:0.0003mol/L、pH=5)に漬けて(90h)洗浄した後、室温で24h乾燥させたあと、110℃で熱処理(4h)した。平滑で、均一なDAC50−CMCフィルムが得られた。
このフィルムの乾燥(50%RH、23℃)状態、及び湿潤状態(25℃)での引張強度及び破断点伸びを表1に示す。このフィルムを180日間水につけても溶け出すことは無く、膨潤もせず、形状を保っている。
【0127】
(実施例11)
実施例1の相溶溶液に酢酸塩緩衝液及び水酸化ナトリウム水溶液を添加しpHを5に維持した状態で複合体沈殿を生成せしめた。沈殿を遠心機及びデカンテーションにより取り出し、これに0.0003M酢酸塩緩衝液を添加してホモジナイザーで攪拌することにより洗浄し、これを4回繰り返した後沈殿物を乾燥することにより厚さ80μmの均質な複合体フィルムを得た。
このフィルムを160日間水につけても溶け出すことは無く、膨潤もせず、形状を保っている。
【0128】
(実施例12)
DAC50を0.1M塩酸水溶液に溶解して得られる、高分子濃度が1.0wt%のDAC50溶液、及び、CMCを水に溶解して得られる、高分子濃度が1.0wt%のCMC溶液を混合し、マグネチックスターラーで攪拌しDAC50−CMC相溶溶液を得た(カチオン当量とアニオン当量との比は1:1)。この相溶溶液に水酸化ナトリウム水溶液を添加しpHを5に維持した状態で、複合体沈殿を生成せしめた。これを金網で濾別させた後、沈殿物を水に分散してホモジナイザーで攪拌した。分散液を乾燥(50℃)することにより厚さ50μmの均質な複合体フィルムを得た。このフィルムを110℃で熱処理(1h)した後、純水に漬けて水洗した後、50℃で乾燥させたあと、110℃で熱処理(1h)した。平滑で、均一な厚さ50μmのフィルムが得られた。
このフィルムの乾燥(50%RH、23℃)状態、及び湿潤状態(25℃)での引張強度及び破断点伸びを表1に示す。
【0129】
(実施例13)
実施例1の相溶溶液に水酸化ナトリウム水溶液を添加してアルカリ性相溶溶液(pH=8)を調製し、これに酢酸塩緩衝液を添加してpHを5に維持した状態で複合体沈殿を生成せしめた。沈殿を遠心機及びデカンテーションにより取り出し、これに0.0003M酢酸塩緩衝液(pH=5)を添加してホモジナイザーで攪拌することにより洗浄し、これを5回繰り返した後沈殿物を乾燥することにより厚さ約0.2mmの均質な複合体フィルムを得た。
このフィルムの乾燥(50%RH、23℃)状態、及び湿潤状態(25℃)での引張強度及び破断点伸びを表1に示す(湿潤状態での引張強度は水中に浸漬後145日後での結果)。このフィルムを145日間水につけても溶け出すことは無く、膨潤もせず、形状を保っている(湿潤状態(25℃)での引張強度:2MPa)。
【0130】
(参考例1)
実施例1の相溶溶液に酢酸緩衝液を加えpHを5に保持して複合体を生成せしめ、これに対して0.0003M酢酸塩緩衝液でホモジナイザーを用いた洗浄を4回繰り返した後、沈殿物を50℃で乾燥し、水で洗浄し、110℃で約1時間熱処理し、厚さ1.3mmの均一なシートを得た。乾燥状態では非常に硬く、湿潤状態ではゴム弾性を有する。また、水による湿潤及び乾燥を繰り返しても元の状態に戻る。このシートの湿潤状態(25℃)での引張強度及び破断点伸びを表1に示す。
【0131】
(実施例14)
DAC50を0.25M塩酸水溶液に溶解して得られる、高分子濃度が2.0wt%のDAC50溶液、及び、CMCを2×10−4M水酸化ナトリウム水溶液に溶解して得られる、高分子濃度が2.0wt%のCMC溶液を混合し、マグネチックスターラーで攪拌し透明なDAC50−CMC相溶溶液を得た(pH=1.5、カチオン当量とアニオン当量との比は1:1)。
【0132】
この相溶溶液に水酸化ナトリウム水溶液及び酢酸緩衝液を添加しpHを5に維持した状態で、ホモジナイザーで攪拌しながら複合体沈殿を生成せしめた。これに対して0.0003M酢酸緩衝液でホモジナイザーを用いた洗浄を3回繰り返した後、上澄みを除去し、塩酸水溶液を添加して攪拌棒で攪拌し、pH=1の複合体微粒子分散液を得た。
【0133】
溶質高分子濃度は5.4wt%の酸性相溶(分散)溶液(pH=1〜2、DAC50濃度:3.1wt%、CMC濃度:2.3wt%)であった。
【0134】
(実施例15)
実施例14で得られた溶質高分子濃度が5.4wt%の酸性相溶溶液(pH=1〜2、DAC50濃度:3.1wt%、CMC濃度:2.3wt%)に静置した状態で水酸化ナトリウム水溶液及び酢酸緩衝液を加えpHを5に保持して連続したひとかたまりの複合体を生成せしめ、これに対してうすい酢酸緩衝液(0.0003M)での洗浄を6回繰り返した後、上澄みを除去し、50℃で乾燥し、水で洗浄し、室温で乾燥させた後、110℃で約1時間熱処理し、厚さ1.6mmの均一なシートを得た。
【0135】
相溶溶液を全く攪拌することなく複合体を生成せしめたため試料全体に渡って連続的に複合化が進んだため湿潤状態でもちぎれ難く高強度であった。元素分析から、カチオン当量:アニオン当量=1:1であることが確認され、原子吸光法から(Na原子数/カルボキシル基数)<0.05、及びIRから(COOH基数/全カルボキシル基数)<0.05であり、したがって、イオン結合率は90%以上であった。乾燥状態では非常に硬く、湿潤状態ではゴム弾性を有した。また、水による湿潤・乾燥を繰り返しても元の状態に戻った。このシートの乾燥(50%RH、23℃)状態での引張強度、及び湿潤状態(25℃)での引張強度及び破断点伸びを表1に示す(湿潤状態での引張強度は水中に浸漬後60日後での結果)。
このシートを60日間水につけても溶け出すことは無く、膨潤もせず、形状を保っている(湿潤状態(25℃)での引張強度:1.3MPa)。
【0136】
(実施例16)
コロイダルシリカ(平均粒子半径=50nm)を複合体固形分に対して20wt%となるように添加し、実施例1と同様に相溶溶液を調製し、1mm幅のスリットを用いて実施例5と同様にフィルムを作成した。元素分析から、カチオン当量:アニオン当量=1:1であることが確認され、EDSから(Na原子数/カルボキシル基数)<0.05、及びIRから(COOH基数/全カルボキシル基数)<0.05であり、したがって、このフィルム中のイオン結合率は90%以上であった。ガラス成分が高いにもかかわらず柔軟で、折り曲げても割れたり切れたりしなかった。また、水中(湿潤状態)ではゴム弾性を有する。様々な無機フィラーなどの添加が可能であることを示す。このフィルムの乾燥(50%RH、23℃)状態、及び湿潤状態(25℃)での引張強度及び破断点伸びを表1に示す。
【0137】
(実施例17)
キトサン−CMC相溶溶液から得られた実施例2と同様の複合体フィルム(厚さ30μm)を湿潤状態で1軸方向に2倍に延伸した後、形状を固定して乾燥し、110℃で熱処理し、平滑、均一な、厚さ10〜20μmの2倍延伸フィルムを得た。このフィルムの乾燥(50%RH、23℃)状態、及び湿潤状態(25℃)での引張強度及び破断点伸びを表1に示す。
この2倍延伸フィルムからのX線散乱強度を測定した結果、散乱ベクトルの大きさが1〜2Å−1の範囲において、配向軸(延伸軸)方向へのX線散乱強度の最大値(a)と、配向軸に対して垂直方向へのX線散乱強度の最大値(b)との比が、a/bで0.65であった。
【0138】
(実施例18)
脱アセチル化度91%のキトサン(商品名FM−80、甲陽ケミカル(株)社製、含水率5.7wt%、以下「FM80」と略する)を0.2M塩酸水溶液に溶解して得られる、高分子濃度が1.0wt%のFM80溶液(15g)、及び、CMCを水に溶解して得られる、高分子濃度が1.0wt%のCMC溶液(25g)を混合し、マグネチックスターラーで攪拌し透明なFM80−CMC相溶溶液を得た(カチオン当量とアニオン当量との比は1:1)。
【0139】
この相溶溶液に水酸化ナトリウム水溶液を添加しpHを4に維持した状態で複合体沈殿を生成せしめた。これを金網で濾別させた後、沈殿物を水に分散してホモジナイザーで攪拌した。分散液を乾燥(室温)することにより均質な複合体フィルムを得た。このフィルムを純水に漬けて水洗した後、室温で乾燥させた。平滑、均一な、厚さ80μmのフィルムが得られた。このフィルムの乾燥(50%Rh、23℃)状態、及び湿潤状態(25℃)での引張強度及び破断点伸びを表1に示す。
【0140】
(実施例19)
市販のキチン(和光純薬製)3gから、所定の方法(文献:キチン・キトサン実験マニュアル、キチン・キトサン研究会編、技報堂出版)で、キチン濃度1wt%、水酸化ナトリウム濃度10wt%のアルカリキチン水溶液300gを調製した。さらに所定の方法により脱アセチル化を行い、アルカリキチン水溶液を25℃で77時間放置後、5℃に冷やし、210gの純水で作った氷を加え、水溶性キチン水溶液を調製した。ここで生成した水溶性キチンは、脱アセチル化度が0.5のキトサンである。この溶液にCMCを2g加え攪拌し、相溶させた。この相溶溶液に濃塩酸および希塩酸を加えてpHを7に調整した。これを攪拌しながら4.5Lの純水中に注入し、キトサン−CMC複合体を析出させた。この沈殿物を、水及びアセトンで洗浄後、真空乾燥し、白色繊維状の複合体4gが得られた。この複合体を、電動ミル及び乳鉢で粉砕して(0.25mmメッシュパス)、水に不溶であるが吸水性の高い微粒子粉末状複合体を得た(カチオン当量とアニオン当量との比は1:1)。この複合体微粒子を水に分散させ均一になるまで練り、高粘性の半透明ゲル状の複合体微粒子分散液を得、真空下で脱泡した後、それをガラス板上に流延し(厚さ2mm)、110度で乾燥、熱処理することにより平滑、均一な、水に不溶の厚さ約10μmのフィルムが得られた。
このフィルムの乾燥(50%RH、23℃)状態、及び湿潤状態(25℃)での引張強度及び破断点伸びを表1に示す。
【0141】
(参考例2)
実施例19の複合体微粒子を0.01M塩酸水溶液に攪拌分散させ、白色に懸濁した複合体微粒子分散液を得、真空下で脱泡した後、それをガラス板上に流延し(厚さ2mm)、50℃で乾燥後、110℃で3h熱処理することにより平滑、均一な、水に不溶の厚さ約20μmのフィルムが得られた。
このフィルムの乾燥(50%RH、23℃)状態での引張強度を表1に示す。
【0142】
(実施例20)
実施例19の複合体微粒子を10vol%の酢酸水溶液に攪拌分散させ、白色に懸濁した複合体微粒子分散液を得、真空下で脱泡した後、それをガラス板上に流延し(厚さ2mm)、50℃で乾燥後、110℃で3h熱処理することにより平滑、均一な、水に不溶の厚さ約10μmのフィルムが得られた。このフィルムの乾燥(50%RH、23℃)状態、及び湿潤状態(25℃)での引張強度及び破断点伸びを表1に示す。また、元素分析から、カチオン当量:アニオン当量=1:1であることが確認され、EDSから(Na原子数/カルボキシル基数)<0.05、及びIRから(COOH基数/カルボキシル基数)<0.05であり、したがって、イオン結合率は90%以上であった。
【0143】
(実施例21)
実施例19の複合体微粒子を10vol%のギ酸水溶液に攪拌分散させ、複合体微粒子分散液を得、真空下で脱泡した後、それをガラス板上に流延し(厚さ2mm)、50℃で乾燥後、110℃で3h熱処理することにより平滑、均一な、水に不溶の厚さ約20μmのフィルムが得られた。このフィルムの乾燥(50%RH、23℃)状態、及び湿潤状態(25℃)での引張強度及び破断点伸びを表1に示す。また、元素分析から、カチオン当量:アニオン当量=1:1であることが確認され、EDSから(Na原子数/カルボキシル基数)<0.05、及びIRから(COOH基数/カルボキシル基数)<0.05であり、したがって、イオン結合率は90%以上であった。
【0144】
(実施例22)
実施例19の複合体微粒子を1vol%のギ酸水溶液に攪拌分散させ、白色に懸濁した複合体微粒子分散液を得、真空下で脱泡した後、それをガラス板上に流延し(厚さ2mm)、50℃で乾燥後、110℃で3h熱処理することにより平滑、均一な、水に不溶の厚さ約20μmのフィルムが得られた。このフィルムの乾燥(50%RH、23℃)状態、及び湿潤状態(25℃)での引張強度及び破断点伸びを表1に示す。また、元素分析から、カチオン当量:アニオン当量=1:1であることが確認され、EDSから(Na原子数/カルボキシル基数)<0.05、及びIRから(COOH基数/カルボキシル基数)<0.05であり、したがって、イオン結合率は90%以上であった。
【0145】
(比較例6)
実施例1で得られたDAC50−CMC相溶溶液を1mmの厚さでガラス板(縦幅200mm、横幅300mm)上に流延し(厚さ1mmのスリットを用いた)、そのまま50℃で乾燥(3h)することにより平滑で、均一なDAC50−CMCフィルムが得られた。このフィルムの乾燥(50%RH、23℃)状態、及び湿潤状態(25℃)での引張強度及び破断点伸びを表1に示す。
【0146】
(比較例1)(DAC50フィルム)
DAC50を1wt%酢酸水溶液に溶解し、DAC50の濃度が1wt%のDAC50溶液を得た。これをシャーレに移し、50℃で乾燥してDAC50フィルムを得た。このフィルムの乾燥(50%RH、23℃)状態での引張強度及び破断点伸びを表1に示す。このフィルムは湿潤状態で非常に弱く、攪拌によって分散、溶解して形状が消滅し、湿潤状態での引張強度は測定できなかった。
【0147】
(比較例2)(キトサンフィルム)
FM80を1wt%酢酸水溶液に溶解し、FM80の濃度が1wt%のキトサン溶液を得た。これをシャーレに移し、50℃で乾燥してFM80フィルムを得た。このフィルムの乾燥(50%RH、23℃)状態での引張強度及び破断点伸びを表1に示す。このフィルムは湿潤状態で非常に弱く、手やピンセットでつまもうとすると壊れ、あるいは、攪拌により壊れ、湿潤状態での引張強度は測定できなかった。
【0148】
(比較例3)(CMCフィルム)
CMCを水に溶解し、CMCの濃度が1wt%のCMC溶液を得た。これをシャーレに移し、室温で乾燥してCMCフィルムを得た。このフィルムの乾燥(50%RH、23℃)状態での引張強度及び破断点伸びを表1に示す。このフィルムは湿潤状態で溶解して形状が消滅し、湿潤状態での引張強度は測定できなかった。
【0149】
(比較例4)
DAC50を1wt%酢酸水溶液に溶解し、DAC50の濃度が1wt%のキトサン溶液を得た。また、CMCを水に溶解し、CMCの濃度が1wt%のCMC溶液を得た。
上記DAC50溶液(20g)とCMC溶液(18g)とを混合し(カチオン当量:アニオン当量=1:1)、マグネチックスターラーで攪拌したが、不均質な複合体の塊ができ、得られた混合分散液をガラス板上に流延し、乾燥したが、凹凸や穴があり、厚さが約1mmのもろい固体となり、フィルム状のものを得ることは困難であった。
【0150】
(比較例5)
FM80を0.5wt%酢酸水溶液に溶解して得られる、高分子濃度が1.0wt%のFM80溶液(15g)、及び、CMCを水に溶解して得られる、高分子濃度が1.0wt%のCMC溶液(25g)を瞬時に混合し(カチオン当量とアニオン当量との比は1:1)、ホモジナイザーで激しく攪拌して複合体沈殿を得た。上澄みを除去した後、複合体沈殿を乾燥(室温)した。不均質で凹凸があるが、厚さ100μm程度のフィルム状のものが得られた。
このフィルムの乾燥(50%RH、23℃)状態、及び湿潤状態(25℃)での引張強度及び破断点伸びを表1に示す。
【0151】
【表1】
【0152】
【発明の効果】
この発明によると、所定のアニオン性高分子とカチオン性高分子とを、所定の溶媒中で分子レベルで分散・相溶させた相溶溶液を用い、流延・浸漬法又は沈殿生成法を行うので、簡便に複合体を製造することができる。
【0153】
また、この方法により、均質、平滑で、かつ、機械的特性の優れた複合体を得ることができる。
Claims (5)
- モノマー単位当たりに含まれるアニオン性を発揮する官能基の数が0.1以上3以下であるカルボキシメチルセルロース又はその塩化合物と、モノマー単位当たりに含まれるカチオン性を発揮する官能基の数が0.1以上3以下で脱アセチル化度が0.1〜1であるキトサン又はその塩化合物とで構成されるポリイオンコンプレックスを主成分とし、浸漬法又は沈殿生成法により製造する、その乾燥状態での引張強度が40〜1000MPaで、かつ、水に湿潤状態での引張強度が0.9〜500MPaであり、形状がフィルム又はシートである複合体。
- 無機又は有機微粒子を含む請求項1に記載の複合体。
- 内部で高分子が1軸方向に配向され、散乱ベクトルの大きさが、1〜2Å−1の範囲において、配向軸方向へのX線散乱強度の最大値(a)と、配向軸に対して垂直方向へのX線散乱強度の最大値(b)との比が、a/bで0より大きく0.9以下である請求項1又は2に記載の複合体。
- モノマー単位当たりに含まれるアニオン性を発揮する官能基の数が0.1以上3以下であるカルボキシメチルセルロース又はその塩化合物と、モノマー単位当たりに含まれるカチオン性を発揮する官能基の数が0.1以上3以下で脱アセチル化度が0.1〜1であるキトサン又はその塩化合物とを、水を5〜100体積%含有する溶媒中で分子レベルで分散・相溶させたp H 1〜3、又は7以上の相溶溶液を用い、浸漬法又は沈殿生成法によって複合体を製造した、フィルム、又はシートである複合体の製造方法。
- 請求項4に記載の製造方法で得られる複合体を延伸する延伸複合体の製造方法。
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