JP3455510B2 - ハイブリッド繊維及び膜並びにそれらの製造方法 - Google Patents
ハイブリッド繊維及び膜並びにそれらの製造方法Info
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子複合体よりなる成形物、特に繊維及び膜に関する。本
発明は、またそれら成形物の製造方法に関する。
菌性、キレ−ト形成能、保水性、免疫増強作用、血液凝
固因子阻害性、抗炎症作用、細胞膜間マトリックス作用
等の様々な機能を保持しており、化粧品、医薬品、抗菌
剤などに広く応用されている。
剤として利用されている。代表的な硫酸化ムコ多糖であ
るコンドロイチン硫酸は食品の乳化安定剤、保水剤とし
て使用されているが、最近グルコサミンと併せて摂取す
れば、変形性関節症による痛みを抑える効果が見出され
関節症の治療に期待されている。また酸性生体高分子で
あるヒアルロン酸は保湿剤として種々の化粧品に、保湿
性を利用して関節機能改善剤として医薬に使用されてい
る。またヘパリンはその血液凝固防止作用を利用して各
種血栓・塞栓症の治療および予防や輸血・血液検査時な
どの血液凝固防止に使用されている。アルギン酸は生体
適合性を有し、且つ酸性で糸状ゲルを形成するためこの
性質を利用してアルギン酸繊維がつくられ、手術糸など
の医療用として使用されている。キチンは優れた生体適
合性や鎮痛、止血などの効果により創傷治癒を促進する
ため創傷被覆保護材に使用されている。
単独で使用したものであり、特定の生体高分子が限られ
た用途にしか使用されていないという問題点を有してい
る。
中の個々の細胞、あるいは細胞集団と細胞集団の間のす
きまを満たしている複雑な生体高分子集合体)は臓器な
どの固さ、強さ、柔軟性などの役割だけでなく、細胞の
増殖、分化、異動などに影響を与え、その結果発生、加
齢、がんの転移、組織構築、創傷治癒、生体防御などの
生物学的役割を果たしていることが明らかになってき
た。細胞外マトリックスを構成している主な成分の一つ
のプロテオグルカンはヒアルロン酸、コンドロイチン硫
酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケラタ
ン硫酸などのグルコサミノグルカンによってコアタンパ
ク質が橋渡しされた複合タンパク質である。最近コアタ
ンパク質を架橋するグルコサミノグルカンが細胞接着阻
害性、軟骨細胞の分化・形成、細胞の移動に重要な役割
を果たしていることが明らかになってきている。
なく、2以上の生体高分子を複合化させて使用する機能
性複合体の作製が試みられている。これはそれぞれの生
体高分子の機能あるいは特性を持たせると共に、それら
機能あるいは特性を相乗的に働かせることを期待しての
ことである。そのような複合体の例として酸性糖−キト
サン結合体を作成することが試みられている(特開平1
1−21302号公報)が、これは結合体を形成させる
ことによりマイルドな条件下で水溶性となるキトサンを
提供したものでキトサンの使用法の改良および有効性改
善に利用することを目的としたものである。
用化されているコラ−ゲンとキチンオリゴマ−を複合化
することにより、免疫賦活性などの新たな機能を保持す
る生体材料の開発が行われている。例えば、キチンオリ
ゴマ−とコラ−ゲンをエチレングリコ−ルエ−テルやグ
ルタ−ルアルデヒドにて化学的に架橋する方法を利用し
た研究がある(キチン・キトサン研究 Vol.6,No.
2、190-191頁(2000))。この方法は架橋剤がコラ−ゲ
ン蛋白分子内で非特異的に結合しコラ−ゲン蛋白を変性
するので、より温和な結合法の開発が必要である。
アルギン酸塩を湿式混合紡糸法によりアルギン酸塩単独
繊維に比べ湿強度に優れたしなやかな繊維を得られるこ
とが報告されている(高分子討論会第48回(199
9)予稿集、48巻、12号、3262-3263頁)。これは
リン酸化キチンがたまたまアルギン酸と同様にカルシウ
ムイオンでゲル化するため両者の混合紡糸に成功したが
一般的なハイブリッドポリマ−の製法とは言い難くより
細胞外マトリックス機能をもつ材料の優れた製法が望ま
れている。
高分子の少なくとも2種以上を複合化させ、それぞれの
成分の少なくとも固有の機能および物理的特性、あるい
は相乗的機能および物理的特性を有する、医用材料に適
したハイブリッド繊維及び膜を提供することを目的とす
る。また本発明は化学的な架橋剤を使用せず、温和な条
件で且つ簡単な操作でしかも大量に生産しうる、ハイブ
リッド繊維あるいは膜の製造方法を提供することも目的
とする。
以上の塩基性生体高分子よりなる復合体を含む成形物で
あって、該複合体は酸性生体高分子100重量部に対し
て塩基性生体高分子0.02〜2.0重量部を含む成形
物に関する。好ましくは成形物は繊維又は膜である。本
明細書で用いる「酸性生体高分子」とは、カルボキシル
基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基等の酸性の基、ま
たはその塩を有する天然に由来する高分子をいう。好ま
しい態様では生体高分子は多糖類である。天然に存在す
る高分子を加水分解に付して上記酸性基又はその塩を生
じさせたものも「酸性生体高分子」に含む。また、天然
に存在する生体高分子をいずれかの物理的、化学的、あ
るいは酵素的手段により低分子量化したものも「酸性生
体高分子」に含む。しかしがら、酸性生体高分子の分子
量は少なくとも50,000、好ましくは少なくとも1
00,000であることが必要である。
例としては、グルコン酸、グルクロン酸、イズロン酸、
D−マンヌロン酸、ガラクツロン酸、グルロン酸、シア
ル酸を含むポリマ−、例えばヒアルロン酸、アルギン
酸、ヘパリン等が挙げられる。硫酸基を有する酸性生体
高分子の例としては、コンドロイチン硫酸、デルマタン
硫酸、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン等が挙げ
られる。
としてはヘパリン、ヘパラン硫酸等が挙げられる。リン
酸基を有する酸性生体高分子の例としてはDNA、RN
A等が挙げられる。複合体の製造においてこれら酸性生
体高分子の2種以上を用いてもよい。
は、アミノ基、イミノ基、グアジノ基等の塩基性の基ま
たはその塩を有する天然に由来する高分子をいう。天然
に存在する生体高分子を加水分解に付して上記塩基性基
又はその塩を生じさせたものも「塩基性生体高分子」に
含む。また天然に存在する高分子をいずれかの物理的、
化学的、あるいは酵素的手段により低分子量化したもの
も「塩基性生体高分子」に含む。しかしがら、塩基性生
体高分子の分子量は少なくとも300、好ましくは少な
くとも700、より好ましくは少なくとも1,000で
あることが必要である。塩基性生体高分子の例はキトサ
ン、ポリアミン、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリガ
ラクトサミン、ヒストン、クロマチン等である。
しい組み合わせとしてはアルギン酸−キトサン、ヒアル
ロン酸−キトサン等を挙げることができる。複合体の製
造においてこれら塩基性生体高分子の2種以上を用いて
もよい。
塩基性生体高分子との割合は、酸性生体高分子100重
量部に対して、塩基性生体高分子0.02〜2.0重量
部、好ましくは0.5〜1.5重量部である。0.02
重量部未満であると複合化の効果が得られず、2.0重
量部を越えると紡糸性又は製膜性の悪化を招くこととな
る。
体高分子との複合体は、酸性生体高分子が有するアニオ
ンと塩基性生体高分子が有するカチオンとの静電的相互
作用により、両者が結合して複合体を形成するものと考
えられる。
る。その方法は、 (1)酸性生体高分子と塩基性生体高分子の複合体の溶
液を調製し; (2)該複合体の溶液を、アルカリ土類金属塩を含む水
溶液からなる第1凝固浴中に押し出して複合体を凝固さ
せ; (3)該凝固物を、アルカリ土類金属塩を含む水/アル
コール溶液からなる第2凝固浴に浸漬し; (4)場合により該凝固物を延伸する;ことを含んでな
る。
の溶液と塩基性生体高分子の溶液を混合すれば得ること
ができる。好ましい態様では溶媒は水であり、それぞれ
の成分の水溶液を混合することにより複合体の水溶液を
容易に得ることができる。
類金属の塩を水に溶解した溶液が使用される。アルカリ
土金属塩としてはカルシウム塩、バリウム塩、マグネシ
ウム塩等が挙げられるが塩化カルシウムが好ましい。こ
れらの金属塩を混合して使用することも可能である。金
属塩の濃度は1〜5%範囲で使用できる。塩化カルシウ
ムの場合3%が好ましい濃度であるが、複合体の種類に
より異なることは云うまでもない。
媒にその混合溶媒に可溶性のアルカリ土類金属塩を溶解
した溶液が使用できる。アルカリ土類金属塩としてはカ
ルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩等が挙げられ
るが塩化カルシウムが好ましい。これらの金属塩を混合
して使用することも可能である。金属塩の濃度は1〜5
%範囲で使用できる。塩化カルシウムの場合3%が好ま
しい濃度であるが、複合体の種類により異なることは云
うまでもない。混合溶媒に使用するアルコ−ルとしては
メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、ブタノール等
を挙げることができるが、繊維、膜へ加工を考慮すると
メタノ−ルが好ましい。水/アルコールの割合は、10
/90〜70/30(容量/容量)、好ましくは45/
55〜55/45(容量/容量)とする。
えば以下のようにして製造することができる。複合体溶
液を適当な紡糸ノズルから第1凝固浴槽に押し出し、次
に第2凝固浴槽に移した後、第1ロ−ラ−と第2ロ−ラ
−で適切な延伸倍率で延伸した後、巻き取りロ−ラ−で
巻き取ることにより繊維を得ることが出来る(図1を参
照)。このようにして巻き取った繊維はアルコ−ルなど
に浸漬し、洗浄後、風乾する。
ば以下のようにして製造することができる。複合体溶液
を適当なスリットから第1凝固浴槽に押し出し、次に第
2凝固浴槽に移した後、、第1ロ−ラ−と第2ロ−ラ−
で適切な圧延倍率で圧延延伸した後、巻き取りロ−ラ−
で巻き取ることにより製膜することが出来る。このよう
にして巻き取った膜はアルコ−ルなどに浸漬洗浄後、風
乾する。
ルギン酸に第3成分のヒアルロン酸を加え機能を補充す
る場合には、例えば以下のようにして行なうことができ
る。 (1)アルギン酸−ヒアルロン酸−キトサン複合体の水
溶液を調製し、上述のように第1凝固浴及び第2凝固浴
を通して紡糸又は製膜する。 (2)アルギン酸−キトサン複合体の水溶液を調製し、
この水溶液を上述の第1凝固浴に通した後、ヒアルロン
酸を溶解しておいた上述の第2凝固浴に通す。
が、実施例により本発明の範囲が限定されるものでない
のは勿論である。
ッド繊維(1)紡糸液の調製 4(重量/容量)%のアルギン酸ナトリウム(紀文フ−
ドケミファ社製、NSPH2、分子量600,000)
水溶液を布で約0.5kgfcm-2で加圧濾過した。ろ液に
キトサン(分子量985)を、その濃度が0.05(重
量/容量)%となるように加え、撹拌溶解し、減圧脱泡
してアルギン酸−キトサン複合体の水溶液を調製し紡糸
液とした。紡糸操作 簡易紡糸装置(図1)を用いて紡糸を以下のように行っ
た。50ホ−ル(直径0.1mm)のノズルから、約0.6k
gfcm-2の加圧条件で、塩化カルシウムの3(重量/容
量)%水溶液(第1凝固浴:浴長40cm)に押し出
し、次に塩化カルシウムの3(重量/容量)%水/メタ
ノ−ル(1/1(容量))溶液(第2凝固浴:浴長40
cm)溶液に浸漬した後、ロ−ラ−(第1ロ−ラ−;速
度7.6m/min、第2ロ−ラ−;速度7.8m/min;
延伸倍率1.03)にかけ、最後に巻き取りロ−ラ−で
巻き取りを行った後、メタノ−ルに約3時間浸積し風乾
させ、しなやかなアルギン酸−キトサンハイブリッド繊
維を得た。またキトサンを加えないことを除けば上述の
方法と同様にしてアルギン酸単独の繊維を得た。この繊
維はしなやかさに欠けていた。繊維特性 得られたハイブリッド繊維の強度をアルギン酸単独で紡
糸した繊維と比較した。繊維強度はJIS1013-7.5及び7.6
に従い、引張強度(Tensile Strength)と結節強力(K
not Strength)をそれぞれ乾燥状態と湿潤状態で測定
した。結果を図2及び図3に示す。得られた繊維の乾燥
状態における引張強度は1.6cN/dTexとなり、アルギ
ン酸単独繊維(1.2cN/dTex)を上回る強度を示し
た。他方乾燥状態における結節強力はアルギン酸単独繊
維が0.43cN/dTexであるに対し、ハイブリッド繊維は
0.41cN/dTexとほぼ同程度であったが、湿潤状態におけ
るそれらの結節強力はそれぞれ0.36cN/dTex及び
0.51cN/dTexとなり、ハイブリッド繊維は約1.4
倍の強さを示した。
リッド繊維(2) 実施例1の方法において紡糸液中のキトサン濃度を0.
02,0.035,0.05,及び0.065(重量/
容量)%としたことを除いては実施例1と同様に紡糸液
の調製、紡糸を行い、しなやかな繊維を得た。得られた
繊維の乾燥状態及び湿潤状態における引張強度及び結節
強力を実施例1と同様にして測定した。これらの繊維の
乾燥状態における引張強度は1.2〜1.6cN/dT
exとなり、アルギン酸塩単独(1.2cN/dTex)を上回る
強度を示し、キトサン添加量の増大に伴って増加した。
また湿潤状態における引張強度は乾燥状態のそれの約3
0%に低下した。一方、乾燥状態における結節強力は引
張強度の約1/2に低下したが、湿潤状態においてほぼ
同等の強度を示した。それぞれの強度の乾湿強力比を図
4に示す。ハイブリッド繊維において結節強力の乾湿強
力比が大きく改善されている。湿潤状態での結節強力は
医用材料への応用に重要な要因であるのでこれが改善さ
れることは重要である。
との分子間相互作用の関与を立証するものであり、アル
ギン酸単独ポリマ−より物理的性質が改善されたハイブ
リッド繊維が作製出来る。またキトサンは比較的高価で
あるがキトサン−アルギン酸繊維は安価に製造できる経
済的な効果もあり医用材料への応用をより一層可能とす
るものである。
易紡糸装置を示す。
とアルギン酸単独の繊維の引張強度の比較を示す。
とアルギン酸単独の繊維の結節強力の比較を示す。
度と結節強力の乾湿強度比を示す。
Claims (3)
- 【請求項1】アルギン酸とキトサンよりなる複合体を含
む医療用繊維であって、該複合体はアルギン酸100重
量部に対してキトサン0.02〜2.0重量部を含む医
療用繊維。 - 【請求項2】 アルギン酸の分子量が50,000以上
であり、キトサンの分子量が300以上である請求項1
に記載の医療用繊維。 - 【請求項3】 (1)アルギン酸とキトサンとの複合体
の溶液を調製し; (2)該複合体の溶液を、紡糸ノズルから、アルカリ土
類金属塩を含む水溶液からなる第1凝固浴中に押し出し
て複合体を凝固させ; (3)該凝固物を、アルカリ土類金属塩を含む水/アル
コール溶液からなる第2凝固浴に浸漬し; (4)場合により該凝固物を延伸する; ことを含んでなる請求項1または2に記載の医療用繊維
の製造方法。
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