以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
≪第1実施形態≫
図1は本実施形態における成膜装置を示す断面図であり、水平方向に沿って切断した場合の成膜装置を上方から見た図である。また、図2は図1のII部の拡大図であり、図3は図2のIII-III線に沿った断面図である。
本実施形態における成膜装置1は、図1及び図2に示すように、ロールトゥロールで搬送される絶縁性フィルム110の両面111,112に、スパッタリング処理により導電性の薄膜121,122を形成することで、導電層積層フィルム100を製造する装置である。この成膜装置1により形成された導電層積層フィルム100は、セミアディティブ法やサブトラクティブ法によってプリント配線板を製造する際の基材として用いられる。
絶縁性フィルム110は、電気絶縁性を有する樹脂材料から構成されており、具体的な材料としては、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル(PE)、液晶ポリマー(LCP)等を例示することができる。特に限定されないが、この絶縁性フィルム110の厚さは5[μm]〜130[μm]であり、絶縁性フィルム110の幅は100[mm]〜1000[mm]である。また、導電性の薄膜121,122はいずれも、導電性に優れた金属材料から構成されており、その具体的な材料としては、銅(Cu)、ニッケル(Ni)やクロム(Cr)等を例示することができる。特に限定されないが、それぞれの薄膜121,122の厚さは0.01[μm]〜2[μm]である。特に限定されないが、以下の説明では、絶縁性フィルム110を液晶ポリマーで構成し、薄膜121,122を銅で構成する場合を例にとって説明する。
本実施形態における成膜装置1は、図1に示すように、帯状の絶縁性フィルム110を巻き出す(送り出す)巻出部10と、絶縁性フィルム110の両面111,112に成膜処理(スパッタリング処理)を行う成膜部20と、成膜処理が完了した絶縁性フィルム110(すなわち導電層積層フィルム100)を巻き取る巻取部80と、これらを収容するチャンバ90と、を備えている。
チャンバ90は、巻出室91、成膜室92、及び、巻取室93を備えている。巻出部10は巻出室91に収容され、成膜部20は成膜室92に収容され、巻取部80は巻取室93に収容されている。巻出室91と成膜室92は搬入路92aを介して連通しており、成膜室92と巻取室93は搬出路92bを介して連通している。また、このチャンバ90には、排気口90aと供給口90bが設けられている。排気口90aには減圧装置94が接続されており、この減圧装置94によってチャンバ90内を減圧することが可能となっている。一方、供給口90bにはガス供給装置95が接続されており、このガス供給装置95によってチャンバ90内に放電ガスを供給することが可能となっている。放電ガスの一例としては、アルゴン(Ar)ガス等の不活性ガスを例示することができる。
巻出部10は、巻出ローラ11から絶縁性フィルム110を送り出し、ガイドローラ12〜14及び張力検出ローラ15,16によって案内しながら当該絶縁性フィルム110を成膜部20に搬入する。一方、巻取部80には、成膜部20で形成された導電層積層フィルム100が搬入され、当該巻取部80は、ガイドローラ82〜84及び張力検出ローラ85,86によって案内しながら導電層積層フィルム100を巻取ローラ81に巻き取る。本実施形態における巻出部10及び巻取部80が、本発明における搬送装置の一例に相当する。
本実施形態の成膜装置1では、水平型搬送方式(被処理フィルムの主面が鉛直方向に対して実質的に直交する姿勢で当該フィルムを搬送する方式)ではなく、縦型搬送方式(被処理フィルムの主面が鉛直方向に対して実質的に平行な姿勢で当該フィルムを搬送する方式)を採用している。すなわち、本実施形態では、巻出部10の張力検出ローラ15,16と巻取部80の張力検出ローラ85,86によって絶縁性フィルム110に所定の張力が付与されており、成膜室92内では、絶縁性フィルム110の主面111,112が鉛直方向(具体的には図中のXZ平面)に実質的に平行な姿勢で、当該絶縁性フィルム110が搬送方向DC(図中のX方向)に搬送される。以下において、搬送方向DCにおいて、絶縁性フィルム110が成膜室92に搬入される側を「上流側」と称し、絶縁性フィルム110が成膜室92から搬出される側を「下流側」と称する。特に限定されないが、この成膜装置1における絶縁性フィルム110の搬送速度は0.3〜1.5[m/min]である。
なお、巻出室91と成膜室92の間に、前処理装置や圧力調整装置を設けてもよい。前処理装置としては、乾燥装置や改質装置を例示することができる。乾燥装置は、絶縁性フィルム110の主面111,112を乾燥させる装置であり、その具体例としては、赤外線乾燥装置等を例示することができる。改質装置は、薄膜121,122の付着強度の向上のために絶縁性フィルムの主面111,112を改質する装置であり、その具体例としては、イオンビーム照射装置、プラズマ照射装置、コロナ放電処理、紫外線照射装置等を例示することができる。一方、圧力調整装置は、巻出室91と成膜室92との圧力差を調整する装置である。
成膜部20は、図2及び図3に示すように、スパッタリング処理においてカソードとして機能する2つのターゲット30,35と、搬送中の絶縁性フィルム110を加熱するヒータ40と、を備えている。このターゲット30,35とヒータ40は、チャンバ90の成膜室92内に配置されている。本実施形態におけるヒータ40が、本発明における加熱装置の一例に相当する。
この成膜部20を収容する成膜室92は、絶縁性フィルム110によって2つに区分けされている。具体的には、この成膜室92は、絶縁性フィルム110の第1の主面111(図中の+Y側の主面)側に位置する第1の領域921と、当該絶縁性フィルム110の第2の主面112(図中の−Y側の主面)側に位置する第2の領域922とに分割されている。第1のターゲット30は、第1の領域921に設けられている。一方、第2のターゲット35は、第2の領域922に配置されていると共に、第1のターゲット30よりも搬送方向DCの下流側に配置されている。因みに、図3において、絶縁性フィルム110の上下両側に当該絶縁性フィルム110と並んで配置されている板状の部材21は、一方のターゲット30(35)の銅原子30a(35a)が他方のターゲット35(30)に付着するのを防止するための遮蔽板である。また、本実施形態では、この板状の部材21によって、温度センサ43への銅原子の付着を抑制することもできる。
なお、第1のターゲット30と第2のターゲット35の位置関係は、特に上記に限定されない。特に図示しないが、例えば、第2のターゲット35を第1のターゲット30よりも搬送方向DCの上流側に配置してもよい。或いは、搬送直交方向DO(図中のY方向)に見た場合に、第1のターゲット30と第2のターゲット35を同じ位置に重複して配置してもよい。ここで、搬送直交方向DOは、搬送方向DCに対して実質的に直交する方向であり、成膜室92内を搬送される絶縁性フィルム110の主面11,112に対しても実質的に直交する方向である。また、本実施形態では、搬送直交方向DOに見た場合に、第1のターゲット30の下流側の部分と、第2のターゲット35の上流側の部分とが重複しているが、特にこれに限定されず、第1のターゲット30と第2のターゲット35とが重複していなくてもよい。
第1のターゲット30は、矩形板状の銅板である。この第1のターゲット30は電源31に接続されており、スパッタリング処理においてカソードとして機能する。同様に、第2のターゲット35も矩形板状の銅板であり、電源36に接続されており、スパッタリング処理においてカソードとして機能する。電源31,36の具体例としては、例えば、直流電源や高周波電源等を例示することができる。一方、成膜室92内を搬送される絶縁性フィルム110は、特に図示しないが、ローラ12〜16,82〜86を介して接地されており、スパッタリング処理においてアノードとして機能する。
特に限定されないが、成膜部20においてターゲット30,35にスパッタリング現象を発生させて絶縁性フィルム110上に薄膜121,122を形成する処理(成膜処理)の流れとして、以下のような流れを例示することができる。
すなわち、先ず、減圧装置94によってチャンバ90内を1×10−1[Pa]以下まで減圧した後に、ガス供給装置95によって放電ガスをチャンバ90内に導入する。この際、チャンバ90内の圧力を0.1[Pa]〜5.0[Pa]とする。次いで、絶縁性フィルム110の搬送を開始した後に、電源31,36により第1及び第2のターゲット30,35に電圧を印加する。これにより、第1のターゲット30と絶縁性フィルム110との間にプラズマが生成され、このプラズマにより形成された放電ガスの陽イオンを電気的に加速させて第1のターゲット30に衝突させることで、銅原子30aを第1のターゲット30から放出させる。同様に、第2のターゲット35と絶縁性フィルム110との間にプラズマが生成され、このプラズマにより形成された放電ガスの陽イオンを第2のターゲット35に衝突させることで、銅原子35aを第2のターゲット35から放出させる。そして、ターゲット30,35から放出されたこの銅原子30a,35aが絶縁性フィルム110の第1及び第2の主面111,112にそれぞれ付着して堆積することで、絶縁性フィルム110の主面111,112上に、導電性を有する薄膜121,122がそれぞれ形成される。
この際、本実施形態では、第2のターゲット35を第1のターゲット30よりも搬送方向DCの下流側に配置することで、搬送方向DCにおいて第1のターゲット30と第2のターゲット35をシフトさせている。このため、絶縁性フィルム110の同一領域に対して、第1のターゲット30を用いたスパッタリング処理を開始した後に、第2のターゲット35を用いたスパッタリング処理を開始することができる。すなわち、絶縁性フィルム110の同一領域に対して、第1のターゲット30を用いたスパッタリング処理と、第2のターゲット35を用いたスパッタリング処理とに時間差をつけることができる。その結果、絶縁性フィルム110の同一領域に付与される熱負荷を低減することができ、絶縁性フィルム110に形成された薄膜121,122に、シワ、歪み、伸び、破損等の不具合が発生してしまうのを抑制することができる。
また、第2のターゲット35を第1のターゲット30よりも搬送方向DCの下流側に配置することで、第1の薄膜121の形成時(スパッタリング処理時)に絶縁性フィルム110に与えられた熱が搬送中の放熱分を補うので、第2のターゲット35に向かうまで絶縁性フィルム110の温度低下を抑制することができる。このため、後述するアンカー効果を高めることができ、第2の薄膜122の剥離強度の向上を図ることもできる。
第1のターゲット30には、開口33を有する第1の遮蔽板32が設けられており、この第1の遮蔽板32によって第1のターゲット30の外縁部分が覆われている。同様に、第2のターゲット35にも、開口38を有する第2の遮蔽板37が設けられており、この第2の遮蔽板37によって第2のターゲット35の外縁領域が覆われている。第1及び第2の遮蔽板32,37は、成膜装置1においてターゲット30,35と電気的に絶縁された部位(例えば、チャンバ90の成膜室92の内壁面等)に固定されており、ターゲット30,35から電気的に絶縁されている。
この遮蔽板32,37によって、放電ガスの陽イオンが衝突した際にターゲット30,35から放出される二次電子を補足することで、アーキングの発生を防止することが可能となっている。また、第1の遮蔽板32の開口33の大きさを調整することで、薄膜121の膜厚分布を調整することが可能になっている。同様に、第2の遮蔽板37の開口38の大きさを調整することで薄膜122の膜厚分布を調整することが可能となっている。
また、第1の遮蔽板32を第1のターゲット30に設けることにより、第1のターゲット30においてスパッタリングされる領域を、成膜レートが比較的高い領域に制限することができる。このため、スパッタリング処理により絶縁性フィルム110に発生する熱量を多く確保することができ、後述するアンカー効果を高めることができるので、絶縁性フィルム110の第2の主面112に形成される薄膜122の剥離強度の向上を図ることもできる。
さらに、本実施形態では、搬送直交方向DOに見た場合に、第1の遮蔽板32の開口33の下流側の辺33aと、第2の遮蔽板37の開口38上流側の辺38aとが重複している。これにより、絶縁性フィルム110の同一領域に対して、第1のターゲット30を用いたスパッタリング処理が完了した後に、第2のターゲット35を用いたスパッタリング処理を開始することができ、絶縁性フィルム110付与される熱負荷を一層低減することができる。なお、特に図示しないが、搬送直交方向DOに見た場合に、第2の遮蔽板37の開口38の上流側の辺38aが、第1の遮蔽板32の開口33の下流側の辺33aよりも下流側に位置して、第2の遮蔽板37において開口38よりも上流側の部分が、第1の遮蔽板32の開口33と重複すると共に、第1の遮蔽板32において開口33よりも下流側の部分とも重複していてもよい。
ヒータ40は、上述のスパッタリング処理の前に絶縁性フィルム110を加熱する加熱装置であり、成膜室92の第2の領域922に配置されていると共に、第1のターゲット30よりも搬送方向DCの上流側に配置されている。ヒータ40は、成膜室92内を搬送される絶縁性フィルム110の第2の主面112に対向するように配置された非接触式のヒータであり、絶縁性フィルム110を輻射熱により加熱する。ヒータ40を成膜室92内に配置することで、ヒータ40をターゲット30,35の近くに配置することができ、絶縁性フィルム110の時間経過に伴う温度低下を抑制することができるので、後述するアンカー効果を確実に得ることができる。
なお、本実施形態では、並列配置された一対のヒータ40が第1のターゲット30の上流側に配置されているが、ヒータ40の本数は特にこれに限定されない。また、第1のターゲット30よりも上流側であれば成膜室92内におけるヒータ40の設置位置も特に限定されない。特に図示しないが、ヒータ40を成膜室92の第1の領域921に配置してもよい。或いは、図4に示すように、ヒータ40を第1及び第2の領域921,922の両方に配置してもよい。図4は本実施形態における成膜部20の変形例を示す図である。
図2及び図3に示すように、本実施形態におけるヒータ40は、石英ガラスヒータであり、平板状の発熱体41と、当該発熱体41を収容した石英ガラス管42と、を備えている。このヒータ40は、発熱体41の主面が絶縁性フィルム110の第2の主面112に対して平行となるように、成膜室92内に設置されており、絶縁性フィルム110を効率的に加熱することが可能となっている。石英ガラスヒータのサイズ(長さ)は、絶縁性フィルム110の幅に応じて決定される。絶縁性フィルム110を斑なく加熱する観点から、発熱体41の長さが絶縁性フィルム110の幅よりも長いことが好ましい。一例を挙げれば、絶縁性フィルム110の幅が250[mm]である場合には、発熱体41の長さが300[mm]の石英ガラスヒータを用いる。なお、ヒータ40に代えて、絶縁性フィルム110を加熱する加熱装置として、平面状或いは曲面状の発熱面を有する赤外線ヒータを用いてもよい。
こうしたヒータ40によってスパッタリング処理の前に絶縁性フィルム110を加熱しておくことで、ターゲット30,35から放出された銅原子30a,35aを絶縁性フィルム110に深く埋め込むことができる。このように、加熱された絶縁性フィルム110に銅原子30a,35aを深く進入させる(埋め込む)ことにより、絶縁性フィルム110に対する薄膜121,122の密着性を向上させるアンカー効果を期待できる。その結果、導電層積層フィルム100における薄膜121,122の剥離強度の向上を図ることができる。
本実施形態では、ヒータ40の近傍に温度センサ43が設置されている。特に限定されないが、温度センサ43の具体例としては、熱電対等を例示することができる。この温度センサ43は、搬送直交方向DOにおいてヒータ40の発熱体41と対向するように配置されている。また、この温度センサ43は、成膜時に発生する熱の影響を回避するために、ヒータ40と絶縁性フィルム110との間に介在しないように配置されている。
ヒータ40と温度センサ43は制御装置44に接続されており、この制御装置44によって、ヒータ40による絶縁性フィルム110の加熱動作が制御されるようになっている。絶縁性フィルム110の目標温度としては、当該絶縁性フィルム110の軟化点又はその近傍の温度を例示することができる。特に限定されないが、絶縁性フィルム110として液晶ポリマーを用いる場合には、目標温度を290℃〜310℃に設定する。
ところで、本実施形態では、成膜が実行される成膜室92の内部にヒータ40が配置されているため、当該ヒータ40自体にも銅原子30a、35aが付着してしまう場合がある。ヒータ40の熱放射面に銅が付着すると、ヒータ40からの絶縁性フィルム110への伝熱効率が低下し、絶縁性フィルム110を目標温度まで加熱することができず、結果として十分な剥離強度を確保することができないこととなってしまう場合がある。特に、本実施形態のようにロールトゥロール方式を採用している場合には、成膜処理の連続処理時間に応じてヒータ40への銅の付着量が増加するため、絶縁性フィルム110の同一のロールの中でも加熱条件が異なる箇所が生じてしまうという不都合も想定される。因みに、ロールトゥロール方式では、成膜条件を絶縁性フィルム110のロールの途中で変更することはできない。
これに対し、本実施形態の成膜部20は、成膜室92内に設けられた2つのヒータカバー50,60を備えている。第1のヒータカバー50は、成膜室92の第1の領域921に配置されている。一方、第2のヒータカバー60は、成膜室92の第2の領域922に設けられている。第1及び第2のヒータカバー50,60は、搬送直交方向DOに見た場合に、いずれもヒータ40と第1のターゲット30との間に介在するように、成膜室92内に配置されている。換言すれば、搬送方向DCに実質的に平行な仮想平面(図中のXZ平面)に投影した場合に、ヒータカバー50,60は、ヒータ40と第1のターゲット30との間に介在している。本実施形態における第1のヒータカバー50が本発明における第1のカバーの一例に相当し、本実施形態における第2のヒータカバー60が本発明における第2のカバーの一例に相当する。また、本実施形態における第1のヒータカバー50が本発明における第1のヒータカバーの一例に相当し、本実施形態における第2のヒータカバー60が本発明における第2のヒータカバーの一例に相当する。
ヒータカバー50,60は、アウトガスの発生が少なく耐熱性に優れた材料から構成されており、具体的には、ステンレス又はチタン等から構成されている。ヒータカバー50,60を構成するステンレスの具体例としては、SUS304やSUS316等を例示することができる。さらに、当該ヒータカバー50,60に付着した銅の剥離を抑制するために、ヒータカバー50,60の表面は粗面化されている。特に限定されないが、一例を挙げれば、酸化アルミニウムの研削材/研磨材を用いたアルミナブラスト処理をヒータカバー50,60の表面に施す。研削材/研磨材としては、JIS R6001が規定する#F60、#F80又は#F100の粒径を有する砥粒を用いる。因みに、ヒータカバー50,60に付着した銅が剥離すると、その銅が絶縁性フィルム110に付着してしまう場合がある。このように絶縁性フィルム110に付着した銅は、薄膜121,122にピンホール等の不具合を発生する原因となり得る。
第1のヒータカバー50は、搬送直交方向DOに延在する矩形状の平板形状を有している。具体的には、この第1のヒータカバー50の全体が、絶縁性フィルム110の主面111,112に対して実質的に直交する平面(図中のYZ平面)で構成されている。同様に、第2のヒータカバー60も、搬送直交方向DOに実質的に平行な方向に延在する矩形状の平板形状を有している。具体的には、この第2のヒータカバー60の全体が、絶縁性フィルム110の主面111,112に対して実質的に直交する平面(図中のYZ平面)で構成されている。
本実施形態では、こうした垂直なヒータカバー50,60をヒータ40とターゲット30,35との間に介在させることで、ターゲット30,35から放出されヒータ40に向かって移動する銅原子30a,35aを遮ることができ、銅原子30a,35aがヒータ40に付着してしまうのを抑制することができる。因みに、温度センサ53への銅原子30a,35aの付着もこのヒータカバー50,60によって抑制することができる。
なお、第1及び第2のヒータカバー50,60が搬送直交方向DOに対して僅かに傾斜していてもよく、具体的には、絶縁性フィルム110の主面111,112に対する第1及び第2のヒータカバー50,60主面の角度θが85°〜95°の範囲にあればよい(85°≦θ≦95°)。因みに、ヒータカバーが搬送直交方向DOに対して大きく傾斜している場合には、ヒータカバーから絶縁性フィルムに伝熱し易くなったり、ヒータへの銅原子の付着を十分に抑制できなくなってしまう。
また、搬送直交方向DOに沿った断面(図中のYZ平面に沿った断面)に関して、第1のヒータカバー50の断面積S1は、成膜室92の第1の領域921の断面積S2に対して40%以上であることが好ましく(0.4×S2≦S1)、60%以上であることがより好ましい(0.6×S2≦S1)。同様に、搬送直交方向DOにおいて、第2のヒータカバー60の断面積S3は、成膜室92の第2の領域922の断面積S3に対して40%以上であることが好ましく(0.4×S4≦S3)、60%以上であることがより好ましい(0.6×S4≦S3)。ヒータカバー50,60のサイズを上記のように設定することで、ヒータ40への銅原子30a,35aの付着を一層抑制することができる。
本実施形態では、ヒータカバー50,60がヒータ40のできる限り近くに配置されている。特に限定されないが、具体的には、搬送方向DCにおける第1のヒータカバー50とヒータ40との間の距離L1は、3mm〜30mmであり(3mm≦L1≦30mm)、好ましくは、5mm〜10mmである(5mm≦L1≦10mm)。同様に、搬送方向DCにおける第2のヒータカバー60とヒータ40との間の距離L2は、3mm〜30mmであり(3mm≦L2≦30mm)、好ましくは、5mm〜10mmである(5mm≦L2≦10mm)。ヒータカバー50,60をヒータ40のできる限り近くに配置することで、ヒータ40への銅原子30a,35aの付着を一層抑制することができる。
また、理論的には、ヒータカバーと絶縁性フィルムとの間の間隔が狭いほど、ヒータへの銅原子の付着抑制の効果が向上する。しかしながら、搬送時の絶縁性フィルムは、巻出部のガイドローラと接触及び離反を繰り返すことで帯電しているため、ヒータカバーと絶縁性フィルムとの間の間隔が狭過ぎると、静電気によって絶縁性フィルムがヒータカバーに貼り付いてしまい、絶縁性フィルムの搬送が停止してしまう場合がある。こうした観点から、特に限定されないが、第1のヒータカバー50と絶縁性フィルム110との間の距離L3が、10mm〜60mmであることが好ましく(10mm≦L3≦60mm)、15mm〜50mmであることがより好ましく(15mm≦L3≦50mm)、20mm〜25mmであることがより一層好ましい(20mm≦L3≦25mm)。同様に、第2のヒータカバー60と絶縁性フィルム110との間の距離L4が、10mm〜60mmであることが好ましく(10mm≦L4≦60mm)、15mm〜50mmであることがより好ましく(15mm≦L4≦50mm)、20mm〜25mmであることがより一層好ましい(20mm≦L4≦25mm)。
以上のように、本実施形態では、搬送直交方向DOに見た場合に、ヒータ40と第1のターゲット30との間にヒータカバー50,60が介在している。これにより、第1のターゲット30から放出された銅原子30a,35aがヒータ40に付着することを抑制することができ、銅原子30a,35aの付着に起因したヒータ40の加熱効率の低下を抑制することができ、結果的に、絶縁性フィルム110に対する薄膜121,122の剥離強度の向上を図ることができる。
≪第2実施形態≫
図5は本発明の第2実施形態における成膜部を示す断面図である。本実施形態では、第2のターゲット35を省略した点が第1実施形態と相違するが、それ以外の構成は第1実施形態と同様である。以下に、第2実施形態における成膜装置について第1実施形態との相違点についてのみ説明し、第1実施形態と同様の構成である部分については同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、第1実施形態と比較して第2のターゲット35が省略されており、成膜部20は、ターゲットとして、第1のターゲット30のみを備えている。従って、本実施形態では、絶縁性フィルム110の第1の主面111のみに薄膜121が形成され、絶縁性フィルム110の第2の主面112には薄膜122が形成されない。すなわち、本実施形態における導電層積層フィルム100は、第1の薄膜121のみを備えた片面の導電層積層フィルムである。なお、本実施形態では、第1及び第2のヒータカバー50、60の両方が、本発明における第1のカバーの一例に相当すると共に、本発明における第1のヒータカバーの一例に相当する。
なお、本実施形態では、第1のターゲット30が成膜室92の第1の領域921に配置されているが、第1のターゲット30を第2の領域922に配置してもよい。また、本実施形態では、成膜室92の第1及び第2の領域921,922に第1及び第2のヒータカバー50、60がそれぞれ設けられているが、第1又は第2のヒータカバー50,60のいずれか一方を省略してもよい。さらに、本実施形態では、ヒータ40が成膜室92の第2の領域922に配置されているが、ヒータ40を第1の領域921に配置してもよいし、ヒータ40を第1及び第2の領域921,922の両方に配置してもよい。
本実施形態では、第1実施形態と同様に、搬送直交方向DOに見た場合に、ヒータカバー50,60がヒータ40と第1のターゲット30との間に介在しているので、銅原子30aがヒータ40に付着することを抑制することができ、絶縁性フィルム110に対する薄膜121の剥離強度の向上を図ることができる。
≪第3実施形態≫
図6は本発明の第3実施形態における成膜部を示す断面図であり、図7は図6のVII-VII線に沿った断面図である。本実施形態では、第1のヒータカバー50を第1のターゲットカバー55に置換すると共に、第2のターゲットカバー65を追加した点が第1実施形態と相違するが、それ以外の構成は第1実施形態と同様である。以下に、第3実施形態における成膜装置について第1実施形態との相違点についてのみ説明し、第1実施形態と同様の構成である部分については同一符号を付して説明を省略する。
図6及び図7に示すように、本実施形態の成膜部20は、第1のヒータカバー50に代えて、第1のターゲットカバー55を備えていると共に、第2のヒータカバー60に加えて、第2のターゲットカバー65を備えている。第1のターゲットカバー55は、成膜室92の第1の領域921において第1のターゲット30の周囲に設けられている。一方、第2のターゲットカバー65は、成膜室92の第2の領域922において第2のターゲット35の周囲に設けられている。このターゲットカバー55,65は、上述のヒータカバー50,60と同様に、ステンレスやチタン等のアウトガスの発生が少なく耐熱性に優れた材料から構成されており、さらにその表面が粗面化されている。これにより、ターゲットカバー55,65に付着した銅の剥離を抑制することができる。
この第1のターゲットカバー55は、L字状の断面形状を有する矩形枠であり、第1の対向部551と第1の支持部553を備えている。第1の対向部551は、絶縁性フィルム110の第1の主面111に対して実質的に平行な方向(図中のXZ平面方向)に延在していると共に、その略中央に第1の開口552を有している。従って、第1のターゲット30の中央部は、この第1の開口552を介して、絶縁性フィルム110の第1の主面111と対向している。
第1の支持部553は、成膜装置1において第1のターゲット30と電気的に絶縁された部位(例えば、チャンバ90の成膜室92の内壁面等)に固定されており、第1の対向部551を支持している。具体的には、この第1の支持部553は、第1の対向部551の四方の外縁に繋がっており、成膜室92の内壁面側(図中の+Y方向)に向かって搬送直交方向DOに沿って筒状に延在している。この第1の支持部553によって、第1のターゲット30の四方が囲われている。また、この筒状の第1の支持部553において−X方向側の第1の壁554は、搬送直交方向DOに見た場合に、ヒータ40と第1のターゲット30との間に介在している。換言すれば、この第1の壁554は、絶縁性フィルム110の主面111,112に実質的に平行な仮想平面(図中のXZ平面)に投影した場合に、ヒータ40と第1のターゲット30との間に介在している。本実施形態における第1のターゲットカバー55が本発明における第1のカバーの一例に相当すると共に、本発明における第1のターゲットカバーの一例に相当する。また、本実施形態における第1のターゲットカバー55の第1の壁554が、本発明における第1の介在部分の一例に相当する。
このように、本実施形態では、搬送直交方向DOに見た場合に、第1のターゲットカバー55の第1の壁554がヒータ40と第1のターゲット30との間に介在しているので、ヒータ40への銅原子30aの付着を抑制することができ、絶縁性フィルム110に対する薄膜121の剥離強度の向上を図ることができる。
また、本実施形態では、第1のターゲットカバー55が第1の対向部551を含むことでL字状の断面形状を有しているので、第1のターゲット30から放出される銅原子30aの散乱を抑制することができ、ヒータ40への銅原子30aの付着を一層抑制することができる。
さらに、本実施形態では、搬送直交方向DOに見た場合に、第1の対向部551が第1のターゲット30と重複しており、第1の対向部551によって第1のターゲット30が覆われている。具体的には、第1の対向部551の第1の開口552が第1の遮蔽板32の開口33と実質的に同一の大きさを有しており、且つ、これらの開口552,33が搬送直交方向DOに沿って同軸上に配置されている。このため、第1の遮蔽板32により設定された成膜レートを維持しつつ、第1のターゲット30を第1のターゲットカバー55でできる限り広く覆うことで銅原子30aの散乱を一層抑制することができる。なお、第1のターゲットカバー55の第1の対向部551が、第1のターゲット30と重複していなくてもよい。
特に限定されないが、第1のターゲットカバー55の第1の対向部551と絶縁性フィルム110との間の距離L5が、10mm〜60mmであることが好ましく(10mm≦L5≦60mm)、15mm〜50mmであることがより好ましく(15mm≦L5≦50mm)、20mm〜25mmであることがより一層好ましい(20mm≦L5≦25mm)。これにより、第1のターゲットカバー55を絶縁性フィルム110の可能な限り近くに配置しつつ、第1のターゲットカバー55への絶縁性フィルム110の付着を抑制することができる。
第2のターゲットカバー65も、第1のターゲットカバー55と同様に、L字状の断面形状を有する矩形枠であり、第2の対向部651と第2の支持部653を備えている。第2の対向部651は、絶縁性フィルム110の第2の主面112に対して実質的に平行な方向(図中のXZ平面方向)に延在していると共に、その略中央に第2の開口652を有している。従って、第2のターゲット35の中央部は、この第2の開口652を介して、絶縁性フィルム110の第2の主面112と対向している。
第2の支持部653は、成膜装置1において第2のターゲット35と電気的に絶縁された部位(例えば、成膜室92の内壁面等)に固定されており、第2の対向部651を支持している。具体的には、この第2の支持部653は、第2の対向部651の四方の外縁に繋がっており、成膜室92の内壁面側(図中の−Y方向)に向かって搬送直交方向DOに沿って筒状に延在している。この第2の支持部653によって、第2のターゲット35の四方が囲われている。また、この筒状の第2の支持部653において−X方向側の第2の壁654は、搬送直交方向DOに見た場合に、ヒータ40と第2のターゲット35との間に介在している。換言すれば、この第2の壁654は、絶縁性フィルム110の主面111,112に実質的に平行な仮想平面(図中のXZ平面)に投影した場合に、ヒータ40と第2のターゲット35との間に介在している。本実施形態における第2のヒータカバー60及び第2のターゲットカバー65が本発明における第2のカバーの一例に相当し、本実施形態における第2のヒータカバー60が本発明における第2のヒータカバーの一例に相当し、本実施形態における第2のターゲットカバー65が本発明における第2のターゲットカバーの一例に相当する。また、本実施形態における第2のターゲットカバー65の第2の壁654が、本発明における第2の介在部分の一例に相当する。
このように、本実施形態では、搬送直交方向DOに見た場合に、第2のターゲットカバー65の第2の壁654がヒータ40と第2のターゲット35との間に介在しているので、ヒータ40への銅原子35aの付着を抑制することができ、絶縁性フィルム110に対する薄膜122の剥離強度の向上を図ることができる。
また、本実施形態では、第2のターゲットカバー65が第2の対向部651を有することでL字状の断面形状を有しているので、第2のターゲット35から放出される銅原子35aの散乱を抑制することができ、ヒータ40への銅原子35aの付着を一層抑制することができる。
さらに、本実施形態では、搬送直交方向DOに見た場合に、第2の対向部651が第2のターゲット35と重複しており、第2の対向部651によって第2のターゲット35が覆われている。具体的には、第2の対向部651の第2の開口652が第2の遮蔽板37の開口38と実質的に同一の大きさを有しており、且つ、これらの開口652,38が搬送直交方向DOに沿って同軸上に配置されている。このため、第2の遮蔽板37により設定された成膜レートを維持しつつ、第2のターゲット35を第2のターゲットカバー65でできる限り広く覆うことで銅原子35aの散乱を一層抑制することができる。なお、第2のターゲットカバー65の第2の対向部651が、第2のターゲット35と重複していなくてもよい。
特に限定されないが、第2のターゲットカバー65と絶縁性フィルム110との間の距離L6が、10mm〜60mmであることが好ましく(10mm≦L6≦60mm)、15mm〜50mmであることがより好ましく(15mm≦L6≦50mm)、20mm〜25mmであることがより一層好ましい(20mm≦L6≦25mm)。これにより、第2のターゲットカバー65を絶縁性フィルム110の可能な限り近くに配置しつつ、第2のターゲットカバー65への絶縁性フィルム110の付着を抑制することができる。
なお、本実施形態では、第1のターゲットカバー55とヒータ40との間の間隔が狭いため、第1のターゲットカバー55の第1の壁554が第1のヒータカバー50の機能を兼ねることで、当該第1のヒータカバー50を省略したが、特にこれに限定されない。特に図示しないが、具体的には、成膜室92の第1の領域921に第1のヒータカバー50と第1のターゲットカバー55の両方を設けてもよい。
或いは、第1及び第2のターゲットカバー55,65によってヒータ40への銅原子30a,35aの付着を十分に抑制できる場合には、図8に示すように、第1のヒータカバー50と共に、第2のヒータカバー60を省略してもよい。なお、図8は本発明の第3実施形態における成膜部の変形例を示す図である。
すなわち、本実施形態では、成膜室92の第1の領域921に第1のヒータカバー50及び第1のターゲットカバー55の少なくとも一方を配置すると共に、第2の領域922に第2のヒータカバー60及び第2のターゲットカバー65の少なくとも一方を配置することができる。
≪第4実施形態≫
図9は本発明の第4実施形態における成膜部を示す断面図である。本実施形態では、冷却板71,75を追加した点が第3実施形態と相違するが、それ以外の構成は第3実施形態と同様である。以下に、第4実施形態における成膜装置について第3実施形態との相違点についてのみ説明し、第3実施形態と同様の構成である部分については同一符号を付して説明を省略する。
そもそも、成膜部20ではターゲット30,35から銅原子30a,35aを放出させて絶縁性フィルム110の主面111,112に成膜するため、第1及び第2のターゲットカバー55,65において絶縁性フィルム110の主面111,112と平行な第1及び第2の対向部551,651に銅原子30a,35aが衝突する可能性が高い。第1及び第2の対向部551,651に衝突した銅原子30a,35aの運動エネルギーは、当該第1及び第2の対向部551,651で熱エネルギーに変換されて熱輻射熱として放出され、絶縁性フィルム110を加熱する。また、スパッタリング処理の際に生成されるプラズマからの輻射熱によっても第1及び第の2の対向部551,651は加熱される。特に長尺の絶縁性フィルム110に成膜する場合には、成膜処理の連続処理時間に応じて第1及び第2のターゲットカバー55,65からの熱量が増加する。このように加熱された第1及び第2のターゲットカバー55,65から発せられる熱量(加熱効果)は、ヒータ40やスパッタリング処理による加熱効果とは異なり、量的な制御が困難である。このため、絶縁性フィルム110を加熱する際の温度制御が困難となり、目標とする品質の導電層積層フィルム100を得ることが困難となってしまう場合がある。
これに対し、本実施形態では、図9に示すように、第1のターゲットカバー55の第1の対向部551上に、第1の冷却板71が設けられている。この第1の冷却板71は、第1の対向部551と実質的に同じ矩形枠の形状を有しており、当該第1の対向部551と接触している。この冷却板71の内部には、冷媒が流通可能な流路72が形成されている。同様に、第2のターゲットカバー65の第2の対向部651上にも、第2の冷却板75が設けられており、この第2の冷却板75は、第2の対向部651と実質的に同じ矩形枠の形状を有し、当該第2の対向部651と接触している。この冷却板75の内部には、冷媒が流通可能な流路76が形成されている。そして、これらの流路72,76には、チラー77やポンプ78を含む配管系が接続されており、冷媒を循環させることで第1及び第2のターゲットカバー55,65を冷却することが可能となっている。
本実施形態では、第1の冷却板71が第1のターゲットカバー55と絶縁性フィルム110との間に介在しているので、第1のターゲットカバー55から絶縁性フィルム110に向かって発せられる熱を第1の冷却板71で吸収することができる。すなわち、第1の冷却板71によって絶縁性フィルム110を第1のターゲットカバー55から遮熱することができ、第1のターゲットカバー55による絶縁性フィルム110の加熱を抑制することができる。
同様に、第2の冷却板75が第2のターゲットカバー65と絶縁性フィルム110との間に介在しているので、第2のターゲットカバー65から絶縁性フィルム110に向かって発せられる熱を第2の冷却板75で吸収することができる。すなわち、第2の冷却板75によって絶縁性フィルム110を第2のターゲットカバー65から遮熱することができ、第2のターゲットカバー65による絶縁性フィルム110の加熱を抑制することができる。
また、本実施形態では、第1の冷却板71が第1のターゲットカバー55に直接接触しているので、第1の冷却板71によって第1のターゲットカバー55自体を冷却することで、第2のターゲットカバー65による絶縁性フィルム110の加熱を抑制することもできる。同様に、第2の冷却板75が第2のターゲットカバー65に直接接触しているので、第2の冷却板75によって第2のターゲットカバー65自体を冷却することで、第2のターゲットカバー65による絶縁性フィルム110の加熱を抑制することもできる。
なお、冷却板71,75に代えて、第1のターゲットカバー55と絶縁性フィルム110との間に断熱材を介在させると共に、第2のターゲットカバー65と絶縁性フィルム110との間に断熱材を介在させることで、ターゲットカバー55,65による絶縁性フィルム110の加熱を抑制してもよい。この場合には、断熱材をターゲットカバー55,56に接触させなくてもよい。また、冷却板71,75を、ターゲットカバー55,65から絶縁性フィルム110への遮熱手段としてのみ機能させる場合にも、当該冷却板71,75をターゲットカバー55,56に接触させなくてもよい。
一方、冷却板71,75がターゲットカバー55,65に直接接触している場合には、第1の冷却板71が第1のターゲットカバー55と絶縁性フィルム110との間に介在していなくてもよく、第2の冷却板75も第2のターゲットカバー65と絶縁性フィルム110との間に介在していなくてもよい。具体的には、第1のターゲットカバー55において第1の対向部551以外の部分(例えば、第1の支持部553)に第1の冷却板71が接触することで、第1の冷却板71が第1のターゲットカバー55を冷却してもよい。同様に、第2のターゲットカバー65において第2の対向部651以外の部分(例えば、第2の支持部653)に第2の冷却板75が接触することで、第2の冷却板75が第2のターゲットカバー65を冷却してもよい。この場合に、ターゲットカバー55,65を冷却する手段として、上述の冷却板71,75に代えて、ペルチェ素子等の他の冷却手段を用いてもよい。
また、第1のターゲットカバー55の第1の対向部551によって絶縁性フィルム110があまり加熱されない場合には、第1の冷却板71を省略してもよい。或いは、第2のターゲットカバー65の第2の対向部651によって絶縁性フィルム110があまり加熱されない場合には、第2の冷却板75を省略してもよい。
本実施形態における第1の冷却板71、チラー77及びポンプ78が本発明における第1の加熱抑制装置の一例に相当する。また、本実施形態における第2の冷却板75、チラー77及びポンプ78が、本発明における第2の加熱抑制装置の一例に相当する。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、絶縁性フィルム110が成膜室92内において搬送方向DCに沿って搬送されるのであれば、成膜装置1のタイプは、ロールトゥロール方式に限定されず、例えば、枚葉方式等であってもよい。