以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図において共通または対応する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を簡略化または省略する。本開示は、以下の各実施の形態で説明する構成のうち、組み合わせ可能な構成のあらゆる組み合わせを含み得る。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による給湯システムを示す図である。図1に示すように、本実施の形態の給湯システムは、水を加熱する加熱手段であるヒートポンプユニット2と、貯湯タンク1を有する貯湯ユニット40と、リモコン25とを備えた貯湯式の給湯システムに相当する。ヒートポンプユニット2と、貯湯ユニット40との間は、HP往き配管48と、HP戻り配管49と、電気配線(図示省略)とを介して接続されている。ヒートポンプユニット2内には、圧縮機、給湯用熱交換器、膨張弁、空気熱交換器を順次冷媒配管で接続したヒートポンプ回路が備えられている。
本実施の形態の給湯システムは、ヒートポンプユニット2及び貯湯ユニット40により構成される給湯機の運転を制御する制御部24を備える。後述する複数の弁及びポンプを含む各種のアクチュエータ並びに各種のセンサは、制御部24に対して電気的に接続されている。典型的には、制御部24は、少なくとも1つのプロセッサと少なくとも1つのメモリとを有する処理回路を備えた制御基板により構成されている。図示の例では、貯湯ユニット40内に制御部24が配置されている。このような構成に限らず、ヒートポンプユニット2内に制御部が配置されていてもよいし、貯湯ユニット40の制御部24とヒートポンプユニット2の制御部とが連携して給湯機の運転を制御するように構成してもよい。
制御部24と、リモコン25との間は、有線通信または無線通信により、双方向に通信可能である。制御部24と、リモコン25とが、ネットワークを介して通信可能でもよい。リモコン25は、ユーザーインターフェースの例である。リモコン25は、ユーザーが操作する操作部と、情報を表示する表示部25aとを有する。リモコン25は、操作部及び表示部25aの両方の機能を有するタッチスクリーンを備えてもよい。ユーザーは、リモコン25を操作することで、給湯システムを遠隔操作し、各種の設定などを行うことが可能である。リモコン25の表示部25aは、ユーザー等の人間に情報を報知する報知手段としての機能を有する。本実施の形態におけるリモコン25は、表示部25aを報知手段として備えるが、変形例として、例えば音声案内装置のような他の報知手段を備えてもよい。
本実施の形態において、リモコン25は、例えば台所、リビング、浴室などの壁に設置されたものでもよい。または、例えばスマートフォンのような携帯情報端末がリモコン25のようなユーザーインターフェースとしての機能を有するように構成してもよい。複数のリモコン25が制御部24に対して通信可能でもよい。
貯湯タンク1は、湯水を貯留する。貯湯タンク1の内部では、温度による水の密度の差によって、上側が高温で下側が低温になる温度成層を形成することができる。
貯湯タンク1の外面には、貯湯タンク1の最上部からの容積が、例えば0L、50L、100L、150L、170L、220Lの各位置に、第1の温度センサ5a、第2の温度センサ5b、第3の温度センサ5c、第4の温度センサ5d、第5の温度センサ5e、第6の温度センサ5fがそれぞれ設けられており、各位置で水温を検出する。第1の温度センサ5a、第2の温度センサ5b、第3の温度センサ5c、第4の温度センサ5d、第5の温度センサ5e、及び第6の温度センサ5fは、貯湯タンク1内の残湯熱量を検出する残湯熱量検出手段として機能する。HP往き配管48には、ヒートポンプユニット2への入水温度を検出する第7の温度センサ5gが設けられている。
貯湯ユニット40内には、循環ポンプ4、一般給湯側電動混合弁7、高温配管8、給水管9、風呂給湯側電動混合弁11、風呂用電磁弁13、風呂循環ポンプ14、入水切替弁17、給湯用流量センサ19、給湯用温度センサ20、風呂用流量センサ21、風呂用温度センサ22、給水温度センサ23、出湯切替弁26、中温戻し切替弁27、中温取出切替弁28、中温配管30などがさらに備えられている。
給水管9の上流は、例えば水道管のような水源に接続されている。給水管9の下流側は、給水管9a及び給水管9bに分岐している。給水管9aは、貯湯タンク1の下部に接続されている。水源から供給される低温水が給水管9aから貯湯タンク1の下部に流入することで、貯湯タンク1内は満水状態に維持される。
中温取出切替弁28は、中温入口28a、低温入口28b、及び水出口28cを有する。低温入口28bに給水管9bが接続されている。中温入口28aに中温配管30の一端が接続されている。高温配管8の上流部は、貯湯タンク1の上部にある第一位置1aにて貯湯タンク1内に連通する。中温配管30の他端は、第一位置1aよりも低位にある第二位置1bにて貯湯タンク1内に連通する。第二位置1bは、給水管9aが接続された貯湯タンク1の下部よりも上位にある。すなわち、第二位置1bは、貯湯タンク1の上部と下部との間の中間部にある。
貯湯タンク1から中温配管30を通って供給される中温水が中温入口28aに流入する。当該中温水よりも温度の低い低温水が低温入口28bに流入する。本実施の形態では、水源から給水管9bを通って供給される低温水が低温入口28bに流入する。中温取出切替弁28は、「中温位置」と「低温位置」とに流路を切り替え可能である。「中温位置」では、中温入口28aが水出口28cへ連通し、低温入口28bが遮断される。「中温位置」のときには、中温配管30からの中温水が水出口28cへ流れる。「低温位置」では、低温入口28bが水出口28cへ連通し、中温入口28aが遮断される。「低温位置」のときには、給水管9bからの低温水が水出口28cへ流れる。
一般給湯側電動混合弁7は、湯側入口7a、水側入口7b、及び湯出口7cを備える。風呂給湯側電動混合弁11は、湯側入口11a、水側入口11b、及び湯出口11cを備える。高温配管8の下流部は、湯側入口7a及び湯側入口11aのそれぞれに連通している。中温取出切替弁28の水出口28cは、水側入口7b及び水側入口11bのそれぞれに連通している。
第一給湯管10の一端は、湯出口7cに接続されている。一般給湯側電動混合弁7は、貯湯タンク1から高温配管8を通って供給される第一温水と、中温取出切替弁28の水出口28cからの第二温水とを混合する。第二温水は、第一温水よりも温度が低い。このため、一般給湯側電動混合弁7が第一温水と第二温水との混合比を調整することにより、給湯温度を調整できる。一般給湯側電動混合弁7にて温度調節された湯は、第一給湯管10に流入する。第一給湯管10を通る湯は、例えば蛇口、シャワーのような給湯先へ供給される。
第二給湯管18の一端は、湯出口11cに接続されている。風呂給湯側電動混合弁11は、貯湯タンク1から高温配管8を通って供給される第一温水と、中温取出切替弁28の水出口28cからの第二温水とを混合し、温度調節する。その温度調節された湯は、第二給湯管18に流入する。
給水管9には、給水温度センサ23が設けられている。給水温度センサ23は、給水管9を流れる水の温度である給水温度を検出する。第一給湯管10には、給湯用流量センサ19及び給湯用温度センサ20が設けられている。給湯用流量センサ19は、第一給湯管10を流れる湯水の流量を検出する。給湯用温度センサ20は、第一給湯管10を流れる湯水の温度を検出する。第二給湯管18には、風呂用電磁弁13、風呂用流量センサ21、及び風呂用温度センサ22が設けられている。風呂用電磁弁13は、第二給湯管18を開閉する開閉弁に相当する。風呂用流量センサ21は、第二給湯管18を流れる湯水の流量を検出する。風呂用温度センサ22は、第二給湯管18を流れる湯水の温度を検出する。
第二給湯管18は、風呂側循環回路12に接続されている。貯湯ユニット40内には熱交換器15が配置されている。風呂側循環回路12は、給湯システムの外部の浴室にある浴槽(図示省略)から浴水を引き込み、熱交換器15を経由した浴水を浴槽内に戻すことのできる経路である。風呂側循環回路12の途中に接続された風呂循環ポンプ14を運転すると、浴槽から浴水が風呂側循環回路12を通過して浴槽に戻るように循環する。熱交換器15は、浴水と、熱媒体との間で熱を交換する。熱媒体は、例えば、貯湯タンク1から供給される湯水である。
貯湯ユニット40から浴槽に湯を注入する湯張り動作を行うときには、以下のようになる。風呂用電磁弁13が開かれる。風呂給湯側電動混合弁11で温度調節された湯は、第二給湯管18及び風呂側循環回路12を通って、浴槽に流入する。風呂用電磁弁13が閉じると、湯張り動作が終了する。
中温取出切替弁28が低温位置にあるときには、水源からの低温水と、貯湯タンク1の上部からの高温湯とが、一般給湯側電動混合弁7及び風呂給湯側電動混合弁11にて混合される給湯動作を実行可能である。中温取出切替弁28が中温位置にあるときには、貯湯タンク1から中温配管30へ流出した中温水と、貯湯タンク1の上部からの高温湯とが、一般給湯側電動混合弁7及び風呂給湯側電動混合弁11にて混合される給湯動作を実行可能である。本実施の形態であれば、貯湯タンク1から中温配管30へ流出する中温水を給湯に利用可能であるので、貯湯タンク1内の中温水の量を低減できる。このため、ヒートポンプユニット2への入水温度を低くすることができ、ヒートポンプユニット2の運転効率を向上できる。以下の説明では、中温取出切替弁28を中温位置とすることで中温水を給湯に利用することを「中温水利用」と呼ぶ。
制御部24は、例えば次のようにして、中温水利用が可能であるかどうかを判定してもよい。制御部24は、リモコン25にてユーザーが設定した給湯設定温度に基づいて中温取出許可温度を算出し、第4の温度センサ5dにて検知される中温水温度が中温取出許可温度以下であれば中温水利用が可能と判定し、中温取出切替弁28を中温位置へ切り替える。これに対し、中温水温度が中温取出許可温度よりも高い場合には、制御部24は、中温水利用が不可と判定し、中温取出切替弁28を低温位置へ切り替える。
入水切替弁17は、入口となるaポート及びbポートと、出口となるcポートとを有する流路切替手段である。入水切替弁17は、a−c、b−cの2つの経路の間で流路切替可能に構成されている。
出湯切替弁26は、入口となるaポート及びbポートと、出口となるcポート及びdポートとを有する流路切替手段である。出湯切替弁26は、a−c、a−d、b−c、b−dの4つの経路の間で流路切替可能に構成されている。
中温戻し切替弁27は、入口となるaポートと、出口となるbポート、cポート、及びdポートとを有する流路切替手段である。中温戻し切替弁27は、a−b、a−c、a−dの3つの経路の間で流路切替可能に構成されている。
貯湯ユニット40は、バイパス配管32、配管41、配管42、配管43、配管45、配管46、及び配管47をさらに備えている。バイパス配管32は、出湯切替弁26のcポートと、貯湯タンク1の下部との間を接続する。配管41は、貯湯タンク1の下部と、入水切替弁17のaポートとの間を接続する。配管42は、入水切替弁17のcポートと、循環ポンプ4の入口との間を接続する。HP往き配管48は、循環ポンプ4の出口と、ヒートポンプユニット2の入口との間を接続する。HP戻り配管49は、ヒートポンプユニット2の出口と、出湯切替弁26のbポートとの間を接続する。配管43は、出湯切替弁26のdポートと、中温戻し切替弁27のaポートとの間を接続する。配管45は、中温戻し切替弁27のbポートと、貯湯タンク1の上部の温水導入出口1cとの間を接続する。配管46は、中温戻し切替弁27のdポートと、高温配管8の途中の位置との間を接続する。配管47は、中温戻し切替弁27のcポートと、貯湯タンク1の中間部に設けられた温水導入口1dとの間を接続する。
以下の説明では、ヒートポンプユニット2から流出する湯の温度を「出湯温度」と称する。温水導入出口1cの近くに出湯温度センサ6が設けられている。出湯温度センサ6は、出湯温度を検出する出湯温度検出手段に相当する。
第一タンク循環配管16は、配管45の途中の位置と、熱交換器15の熱媒体の入口との間を接続する。第二タンク循環配管50は、熱交換器15の熱媒体の出口と、入水切替弁17のbポートとの間を接続する。配管51は、HP往き配管48における循環ポンプ4とヒートポンプユニット2の入口との間から分岐し、出湯切替弁26のaポートに接続される。風呂熱回収配管31は、第二タンク循環配管50の途中の位置から分岐して、中温配管30の途中の位置に接続されている。
本実施の形態の給湯システムは、ヒートポンプユニット2で加熱された湯を貯湯タンク1の上部に流入させる沸上運転を実行できる。沸上運転では、以下のようになる。ヒートポンプユニット2及び循環ポンプ4が運転される。貯湯タンク1の下部から取り出された水が、配管41、入水切替弁17、配管42、循環ポンプ4、及びHP往き配管48を通ってヒートポンプユニット2内に導かれる。ヒートポンプユニット2内で加熱された湯は、HP戻り配管49、出湯切替弁26、配管43、中温戻し切替弁27、及び配管45を通って、温水導入出口1cから貯湯タンク1に流入する。このように水が循環する回路は、貯湯タンク1の下部から取り出した水を、ヒートポンプユニット2を経由して貯湯タンク1の上部に流入させる沸上回路に相当する。沸上運転は、典型的には、深夜電力時間帯を中心に実施され、翌日に使用される分の湯を貯湯タンク1に貯える。
本実施の形態の給湯システムは、例えば沸上運転の前に、バイパス運転を実行する。バイパス運転では、以下のようになる。ヒートポンプユニット2及び循環ポンプ4が運転される。貯湯タンク1の下部から取り出された水が、配管41、入水切替弁17、配管42、循環ポンプ4、及びHP往き配管48を通ってヒートポンプユニット2内に導かれる。ヒートポンプユニット2内で加熱された湯は、HP戻り配管49、出湯切替弁26、及びバイパス配管32を通って、貯湯タンク1の下部に流入する。このように水が循環する回路は、貯湯タンク1の下部から取り出した水を、ヒートポンプユニット2を経由して貯湯タンク1の下部に流入させるバイパス回路に相当する。本実施の形態では、出湯切替弁26により、沸上回路とバイパス回路とを切り替えることができる。
本実施の形態では、一般給湯側電動混合弁7、風呂給湯側電動混合弁11、入水切替弁17、出湯切替弁26、中温戻し切替弁27、及び中温取出切替弁28を総称して「電動弁」と呼ぶ。図示を省略するが、電動弁は、ケーシングと、このケーシングの内部で変位可能に設けられた弁体と、この弁体を変位させる例えばステッピングモータのような駆動手段とを備える。弁体は、例えば回転可能に設けられていてもよい。なお、本実施の形態の給湯システムは、上述した6個の電動弁を備えるが、電動弁の個数は2以上であればいくつでもよい。
一般給湯側電動混合弁7は、弁体の位置(例えば回転位置)に応じて湯側入口7aの開口面積と水側入口7bの開口面積との比を変えることで、湯側入口7aから流入する第一温水と、水側入口7bから流入する第二温水との混合比を調整できる。風呂給湯側電動混合弁11も同様の構成を有する。制御部24は、一般給湯側電動混合弁7及び風呂給湯側電動混合弁11の動作を制御することで、それぞれの給湯温度を調整する。
入水切替弁17、出湯切替弁26、中温戻し切替弁27、及び中温取出切替弁28の各々は、弁体の位置を変えることで、流路を切り替えるように構成されている。制御部24は、これらの電動弁によって流路を切り替えることで、上述した沸上運転及びバイパス運転のほか、浴槽内の浴水を加熱する追焚運転、浴槽内の浴水の熱を貯湯タンク1内に回収する風呂熱回収運転などを行う。
各々の電動弁には、弁体の位置に関して所定の原点位置が定められている。例えば、以下のようにしてもよい。一般給湯側電動混合弁7については、湯側入口7aを全開として水側入口7bを全閉とする弁体位置を原点位置としてもよいし、湯側入口7aを全閉として水側入口7bを全開とする弁体位置を原点位置としてもよいし、混合比を1:1にするような弁体位置を原点位置としてもよい。出湯切替弁26については、aポート−cポート間を連通させる弁体位置と、aポート−dポート間を連通させる弁体位置と、bポート−cポート間を連通させる弁体位置と、bポート−dポート間を連通させる弁体位置とのいずれかの弁体位置を原点位置としてもよい。中温取出切替弁28については、中温位置と低温位置とのいずれかの弁体位置を原点位置としてもよい。
各々の電動弁は、原点位置を検出するための原点センサ(図示省略)を備える。本実施の形態における原点センサは、電動弁のケーシングに設置されたホールIC素子と、弁体に設置された磁石とを備える。ホールIC素子は、ハイレベルかローレベルかの論理レベルの信号を出力する。ホールIC素子に給電されている場合において、弁体が原点位置にあると、磁石がホールIC素子に接近し、ホールIC素子に作用する磁束密度が閾値を超える。その結果、ホールIC素子は、ローレベル信号を出力する。ホールIC素子に給電されている場合において、弁体が原点以外の位置にあるときには、磁石がホールIC素子から離れ、ホールIC素子に作用する磁束密度が閾値を下回る。その結果、ホールIC素子は、ハイレベル信号を出力する。このようにして、各電動弁の弁体が原点位置にあるか原点以外の位置にあるかを当該電動弁のホールIC素子により検出することができる。また、ホールIC素子に給電されていない場合には、弁体が原点位置にあるか否かにかかわらず、ホールIC素子は、ローレベル信号を出力する。本実施の形態では、ホールIC素子の、ローレベル信号が「第一信号」に相当し、ハイレベル信号が「第二信号」に相当する。
なお、本開示における原点センサは、ホールIC素子を用いたものに限定されるものではなく、例えば、磁気抵抗素子、リードスイッチのような他の磁気センサを用いた位置センサでもよいし、あるいは発光素子及び受光素子を有する光学式の位置センサなどでもよい。
本実施の形態の制御部24は、ホールIC電源回路24aと、ホールIC電源回路制御手段24bと、電動弁原点位置検知手段24cと、故障診断手段24dとを備える。ホールIC電源回路24aは、各電動弁の原点センサのホールIC素子に供給される電力を出力可能な電源回路である。ホールIC電源回路24aは、すべての電動弁のホールIC素子に対して一括して電力を供給する。
ホールIC電源回路制御手段24bは、ホールIC電源回路24aの出力を制御する。ホールIC電源回路制御手段24bは、ハイレベルかローレベルかの論理レベルの信号を出力する出力ポートを備える。本実施の形態では、ホールIC電源回路制御手段24bがホールIC電源回路24aに対してハイレベル信号を出力すると、ホールIC電源回路24aは、すべての電動弁のホールIC素子に対して一括して給電する。また、ホールIC電源回路制御手段24bがホールIC電源回路24aに対してローレベル信号を出力すると、ホールIC電源回路24aは、すべての電動弁のホールIC素子に対する給電を一括して停止する。このように、本実施の形態では、すべての電動弁のホールIC素子に対する給電のON及びOFFを一括して切り替える。本実施の形態では、ホールIC電源回路制御手段24bが出力するハイレベル信号は、ホールIC電源回路24aによるホールIC素子への給電をONにする給電ON信号に相当し、ホールIC電源回路制御手段24bが出力するローレベル信号は、ホールIC電源回路24aによるホールIC素子への給電をOFFにする給電OFF信号に相当する。
ホールIC電源回路制御手段24bは、例えば、いずれかの電動弁が弁体を動かすとき、及び、いずれかの電動弁のエラーが発生しているときなどの、所定の状況のときには、ハイレベル信号を出力し、すべての電動弁のホールIC素子への給電がONとなるようにホールIC電源回路24aを制御する。上記所定の状況以外のときには、ホールIC電源回路制御手段24bは、ローレベル信号を出力し、すべての電動弁のホールIC素子への給電がOFFとなるようにホールIC電源回路24aを制御する。
電動弁原点位置検知手段24cは、電動弁のホールIC素子の出力信号が入力される入力ポートを備える。電動弁原点位置検知手段24cは、電動弁のホールIC素子の出力信号に基づいて、電動弁の原点位置を検知する。制御部24は、電動弁の数と同数の電動弁原点位置検知手段24cを備えている。これにより、制御部24は、各電動弁について、当該電動弁が原点位置にあるかどうかを個別に検知することができる。
故障診断手段24dは、複数の電動弁のホールIC素子が出力する信号と、ホールIC電源回路制御手段24bが出力する信号とに基づいて、ホールIC電源回路24aの故障診断を行う。
制御部24が給湯機の運転を適切に制御するには、各電動弁が適正に動作する必要がある。各電動弁を適正に動作させるためには、各電動弁の原点位置を検知することが重要となる。ホールIC電源回路24aが故障すると、電動弁の原点位置を検知できない可能性があるので、各電動弁を適正に動作させることができない場合がある。よって、ホールIC電源回路24aが故障した場合には、ホールIC電源回路24aが設けられた制御基板の修理が必要となる。その一方で、電動弁に関する異常としては、電動弁の弁体が固着して動かなくなるような、電動弁自体の故障が原因となる場合もある。その場合には、電動弁自体の修理が必要となる。
本実施の形態であれば、故障診断手段24dを備えたことで、以下の効果が得られる。ホールIC電源回路24aの故障を検知することができるので、電動弁に関する異常を適切に修理する上で有利になる。例えば、修理の際に、ホールIC電源回路24aの故障が原因であるにもかかわらず、電動弁自体の故障であると修理者が誤解することを確実に抑制できる。その結果、修理に失敗したり、余計な交換部品を取り付けたりするようなことを確実に抑制できる。
図2は、実施の形態1による給湯システムにおいて故障診断手段24dが行う制御動作を示すフローチャートである。まず、ステップS100として、故障診断手段24dは、ホールIC電源回路制御手段24bの出力がハイレベル信号であるかどうかを確認する。ホールIC電源回路制御手段24bがハイレベル信号を出力している場合には、故障診断手段24dは、ステップS200へ進み、すべての電動弁のホールIC素子への給電がONになるように制御されている状態であると判定する。その後、ステップS200からステップS300に進む。
これに対し、ホールIC電源回路制御手段24bがローレベル信号を出力している場合には、故障診断手段24dは、ステップS100からステップS220へ進み、すべての電動弁のホールIC素子への給電がOFFになるように制御されている状態であると判定する。その後、ステップS220からステップS320に進む。
ステップS300で、故障診断手段24dは、電動弁原点位置検知手段24cへの入力信号、すなわち各電動弁のホールIC素子が出力する信号を確認する。すべての電動弁のホールIC素子がローレベル信号を出力している場合にはステップS400へ進む。これに対し、少なくとも一つの電動弁のホールIC素子がハイレベル信号を出力している場合にはステップS530へ進む。ホールIC素子は給電された状態でないとハイレベル信号を出力しない。このため、少なくとも一つの電動弁のホールIC素子がハイレベル信号を出力している場合には、ホールIC電源回路24aからその電動弁のホールIC素子へ正常に給電されていると判断することができる。よって、故障診断手段24dは、ステップS530においてホールIC電源回路24aに異常無しと判定する。その後、制御部24は、ステップS730として、通常の制御動作を継続する。
ステップS300ですべての電動弁のホールIC素子がローレベル信号を出力している場合には、すべての電動弁が原点位置にあるという第一の可能性と、ホールIC電源回路24aの故障によって各電動弁のホールIC素子へ給電されていないという第二の可能性とが考えられる。この第一の可能性及び第二の可能性を判別するために、ステップS400で、故障診断手段24dは、いずれかの電動弁の原点固着の有無を次のようにして検知する。すなわち、ステップS400で、故障診断手段24dは、いずれか一つの電動弁に対して、当該電動弁を原点以外の位置へ動かす指令を出力した後、当該電動弁の出力を確認する。当該電動弁の出力が依然としてローレベル信号のままであった場合、すなわち電動弁の原点固着がある場合には、ホールIC電源回路24aから各電動弁のホールIC素子へ給電されていないと考えられる。このため、この場合には、ステップS500へ進み、故障診断手段24dは、ホールIC電源回路24aの故障によりホールIC素子への給電がOFFに固定されている状態である「ホールIC電源回路出力OFF固定異常」が発生していると判定する。
これに対し、ステップS400で、当該電動弁がハイレベル信号を出力した場合には、ホールIC電源回路24aから当該電動弁のホールIC素子へ正常に給電されていると判断することができるので、ステップS530へ進み、故障診断手段24dは、ホールIC電源回路24aに異常無しと判定する。
以上、ホールIC電源回路制御手段24bがハイレベル信号を出力している場合、すなわち各電動弁のホールIC素子への給電がONになるように制御されている場合の故障診断処理について説明した。次に、ホールIC電源回路制御手段24bがローレベル信号を出力している場合、すなわち各電動弁のホールIC素子への給電がOFFになるように制御されている場合の故障診断処理について説明する。この場合、ステップS320で、故障診断手段24dは、電動弁原点位置検知手段24cへの入力信号、すなわち各電動弁のホールIC素子が出力する信号を確認する。すべての電動弁のホールIC素子がローレベル信号を出力している場合には、ホールIC電源回路制御手段24bの制御どおりに、各電動弁のホールIC素子への給電がOFFであり、正常であるとみなせるので、ステップS530へ進み、故障診断手段24dは、ホールIC電源回路24aに異常無しと判定する。
これに対し、ステップS320で、少なくとも一つの電動弁のホールIC素子がハイレベル信号を出力している場合には、ホールIC電源回路制御手段24bの制御に反して、各電動弁のホールIC素子への給電がONになっていると考えられる。この場合には、ステップS520へ進み、故障診断手段24dは、ホールIC電源回路24aの故障によりホールIC素子への給電がONに固定されている状態である「ホールIC電源回路出力ON固定異常」が発生していると判定する。
図3は、ホールIC電源回路24aの故障であると故障診断手段24dにより判定された場合に、修理の必要性に関する情報を使用者に報知するためにリモコン25の表示部25aに表示される文言の例を示す。ステップS500でホールIC電源回路出力OFF固定異常が発生していると判定された場合、すなわちエラーAが発生した場合には、ステップS600へ進む。ステップS600で、表示部25aには、電動弁エラーを表示せず、図3(a)に示すように、「基板故障の可能性があります 販売店へ連絡して下さい」との文言を表示する。また、ステップS520でホールIC電源回路出力ON固定異常が発生していると判定された場合、すなわちエラーBが発生した場合には、ステップS620へ進む。ステップS620で、表示部25aには、電動弁エラーを表示せず、図3(b)に示すように、「基板に不具合がある可能性があります 取扱説明書に従い処置して下さい」との文言を表示する。
本実施の形態であれば、ホールIC電源回路24aの故障であると故障診断手段24dが判定した場合には、電動弁エラーを表示せず、制御基板の修理の必要性に関する情報を報知するようにしたことで、故障していない電動弁を無駄に交換したりするような事態を確実に防止できる。
ホールIC電源回路出力OFF固定異常が発生した場合には、すべての電動弁のホールIC素子に給電することができず、すべての電動弁の原点位置を検知できない。このため、電動弁の動作を適切に制御できない。そこで、ホールIC電源回路出力OFF固定異常が発生した場合には、ステップS600からステップS700に進み、制御部24は、すべての電動弁でエラーが発生した場合と同じように、給湯機の動作を制限する。例えば、制御部24は、沸上運転、追焚運転、蛇口等への給湯動作、浴槽湯張り動作などの実行を禁止する。
これに対し、ホールIC電源回路出力ON固定異常が発生した場合には、電動弁を動作させる上での支障はないので、その他のエラーが発生しない限り、制御部24は、給湯機の動作を制限しない。
本実施の形態において、図3(b)のエラーBの報知情報は、修理の必要性に関する第一情報に相当し、図3(a)のエラーAの報知情報は、第一情報よりも修理の必要性が高いことを示す第二情報に相当する。ホールIC電源回路出力OFF固定異常が発生した場合には、すべての電動弁でエラーが発生した場合と同等に動作を制限するため、給湯機の機能及び性能が著しく低下する。そのため、修理の必要性が高いことを示す第二情報を報知し、制御部24を構成する制御基板の修理または交換を実施するように、速やかに販売店へ連絡をするように促すガイダンスを表示する。
これに対し、ホールIC電源回路出力ON固定異常の場合には、給湯機の動作が制限されないので、緊急に修理を行う必要性は低い。この場合には、図3(b)のように、制御部24を構成する制御基板に不具合がある可能性を伝えた上で、取扱説明書に従うように促すガイダンスを表示する。そして、取扱説明書において、早めに制御基板の修理または交換を実施するように促す。
以上説明したように、本実施の形態であれば、電動弁に関する異常が発生した場合でも、それが制御基板の異常が原因である場合、不必要に電動弁を修理または交換することを抑制することができ、より正確に修理または交換をすることができる。なお、ホールIC電源回路出力OFF固定異常が発生した場合には、制御部24は、ホールIC電源回路制御手段24bの出力をハイレベルからローレベルに切り替えるようにすることが好ましい。
実施の形態2.
次に、図4を参照して、実施の形態2について説明するが、前述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分については説明を簡略化または省略する。図4は、実施の形態2による給湯システムにおいて故障診断手段24dが行う制御動作を示すフローチャートである。図4のフローチャートにおいて、前述した図2と同様のステップには、同じ番号を付し、説明を省略する。
ステップS200で、すべての電動弁のホールIC素子への給電がONになるように制御されている状態であると判定した場合には、故障診断手段24dは、ステップS301に進む。ステップS301で、故障診断手段24dは、いずれかの電動弁が原点固着しているかどうかを判断する。すなわち、故障診断手段24dは、対象となる電動弁に対して、原点以外の位置へ弁体を動かす指令を出力し、当該電動弁のホールIC素子がハイレベル信号を出力するかどうかを確認する。当該電動弁のホールIC素子がハイレベル信号を出力した場合には、ステップS530へ進み、故障診断手段24dは、ホールIC電源回路24aに異常無しと判定する。
ステップS301で、原点以外の位置へ弁体を動かすように指令された電動弁のホールIC素子の出力がローレベルのままである場合、故障診断手段24dは、当該電動弁が原点固着していると判定する。この原点固着した電動弁を以下「第一電動弁」と呼ぶ。この場合には、故障診断手段24dは、ステップS301からステップS401へ進む。ステップS401で、故障診断手段24dは、原点固着している第一電動弁とは無関係の第二電動弁に対して、原点以外の位置へ弁体を動かすように指令する。続いて、ステップS402として、故障診断手段24dは、第二電動弁のホールIC素子がハイレベル信号を出力するかどうかを確認することにより、第二電動弁が原点固着しているかどうかを判定する。第二電動弁も原点固着している場合、すなわち第二電動弁のホールIC素子の出力がローレベルのままである場合、故障診断手段24dは、ステップS500へ進み、ホールIC電源回路出力OFF固定異常が発生していると判定する。二つの電動弁の原点固着故障が同時に発生する可能性は極めて低い。よって、第二電動弁のホールIC素子がハイレベル信号を出力しない場合には、第二電動弁自体の故障ではなく、ホールIC電源回路出力OFF固定異常が第二電動弁の原点固着の原因であると判定することができる。
一方、ステップS402で第二電動弁の原点固着がない場合、すなわち第二電動弁のホールIC素子がハイレベル信号を出力した場合には、ホールIC素子に正常に給電されていることになる。よって、この場合には、故障診断手段24dは、第一電動弁自体の原点固着故障であると判定する。このようにして、第一電動弁自体の原点固着故障と判定された場合には、ステップS610として、通常の電動弁故障エラーをリモコン25の表示部25aに表示する。さらに、ステップS710として、制御部24は、通常の電動弁エラー発生時と同じように、給湯機の動作を制限する。この場合、制御部24は、原点固着故障した電動弁に応じて、制限する動作を決めてもよい。例えば、風呂給湯側電動混合弁11が原点固着故障している場合には浴槽湯張り動作を制限する一方で、一般給湯側電動混合弁7からの給湯動作、沸上運転などについては制限を行わなくてもよい。
なお、ステップS301、ステップS401、ステップS402の処理において、制御部24は、複数の電動弁を同時に動作させて原点固着の有無を検知し、ホールIC電源回路24aの故障を判断してもよい。