JP6939515B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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本発明は、燃料電池システムに関する。
低負荷状態の燃料電池において、フラッディングを防止するため、例えば、燃料ガスの流量を増加することにより燃料電池内の水分を排出する掃気処理が行われる(例えば特許文献1参照)。これにより、燃料電池内の燃料ガスの流路に水分が滞留し、部分的な水素欠が発生することにより膜電極接合体(MEA: Membrane Electrode Assembly)が劣化することが抑制される。
特開2006−24478号公報
しかし、車両に搭載された燃料電池の場合、車両の停車中に掃気処理が実行されることによりMEAの電解質膜が乾燥状態になると、電気抵抗の増加により発電性能が低下し、車両が発進するときに十分な駆動力が得られないおそれがある。
そこで本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、車両の発進に影響することなく、燃料電池のフラッディングを抑制する燃料電池システムを提供することを目的とする。
本明細書に記載の燃料電池システムは、車両に供給される電力を燃料ガスから生成する燃料電池と、前記燃料電池内に流入する前記燃料ガスの流量を制御する制御部と、前記車両の発進に関わる状態として、運転席のシートの傾斜角度、運転席のシートに加わる荷重、ドアの開閉状態、前記車両の前方及び後方の障害物の有無それぞれ検出する複数の検出部とを有し、前記制御部は、前記車両が停車している状態において、前記燃料電池に要求される電力が所定値以下である場合、前記燃料ガスの流量を増加させることにより前記燃料電池内を掃気し、前記複数の検出部がそれぞれ検出した状態に関する所定の条件のうち、少なくとも1つの条件が満たされる場合、前記車両の発進の可能性が低いと判定し、何れの条件も満たされない場合、前記車両の発進の可能性が高いと判定し、前記車両の発進の可能性が高いと判定した場合、前記車両の発進の可能性が低いと判定した場合より前記燃料電池内の掃気の実行頻度を低下させる。
本発明によれば、車両の発進に影響することなく、燃料電池のフラッディングを抑制することができる。
燃料電池システムの一例を示す構成図である。 掃気頻度及び酸化剤ガス供給の制御処理の一例を示すフローチャートである。 掃気処理の一例を示すフローチャートである。
図1は、燃料電池システムの一例を示す構成図である。燃料電池システムは、例えば燃料電池車などの車両に搭載される。
燃料電池システムは、燃料電池1と、燃料タンク2と、コンプレッサ3と、気液分離器4と、ECU(Electronic Control Unit)5と、主止弁70と、調圧弁71と、パージ弁72と、三方弁73と、車速センサ60と、複数の状態センサ61と、ポンプPとを有する。また、燃料電池システムは、水素ガスなどの燃料ガスが流れるアノード供給路R20〜R22、再循環路R23a,R23b、及びアノード排出路R24〜R26と、空気などの酸化剤ガスが流れるカソード供給路R10,R11、カソードバイパス路R12、及びカソード排出路R13とを有する。
燃料電池1は、固体高分子型燃料電池であり、膜電極接合体をそれぞれ備えた複数の単セルが積層されることにより構成され、カソードには酸化剤ガスが供給され、アノードには、燃料ガスが供給される。燃料電池1は、各単セルにおいて酸化剤ガスと燃料ガスが化学反応することにより発電する。
燃料電池1の発電で生成された電力は、例えば車両を駆動するモータMや二次電池などに供給される。このように、燃料電池1は、車両に供給される電力を燃料ガス及び酸化剤ガスから生成する。
酸化剤ガスは、カソード供給路R10,R11を介して燃料電池1に供給される。酸化剤オフガスは、カソード排出路R13を介して燃料電池1から車両の外部に排出される。
コンプレッサ3は、外気から酸化剤ガスを導入して圧縮する。コンプレッサ3は、カソード供給路R10を介して酸化剤ガスを三方弁73に送出する。
三方弁73は、ECU5からの制御に従い酸化剤ガスの送出先を切り替える。三方弁73において、酸化剤ガスの入口はカソード供給路R10に接続され、酸化剤ガスの出口はカソード供給路R11及びカソードバイパス路R12に接続されている。酸化剤ガスは、カソードバイパス路R12に送出された場合、カソード排出路R13から車両の外部に排出され、カソード供給路R11に送出された場合、燃料電池1に供給される。
燃料タンク2は燃料ガスを蓄圧して貯蔵する。燃料タンク2の出口には、アノード供給路R20を介し主止弁70が接続されている。燃料ガスはアノード供給路R20から主止弁70に入る。主止弁70は、ECU5の制御に従って、燃料電池1の運用時、開放状態に維持されている。燃料ガスは、主止弁70からアノード供給路R21を流れて調圧弁71に入る。
調圧弁71は、燃料タンク2から燃料電池1に流れ込む燃料ガスの圧力を、ECU5からの制御信号に従って調整する。これにより、ECU5は、制御部の一例として、燃料電池1に流入する燃料ガスの流量を制御する。燃料ガスは、調圧弁71からアノード供給路R22を介し燃料電池1に供給される。
燃料オフガスは、燃料電池1からアノード排出路R24を流れ気液分離器4に入る。気液分離器4は、燃料オフガスから液水を分離して貯留し、燃料オフガスを再循環路R23aに送出する。
パージ弁72は、アノード排出路R25を介して気液分離器4と接続されている。パージ弁72は、ECU5の制御により開閉される。パージ弁72が開放されると、気液分離器4内の燃料オフガス及び液水はアノード排出路R26から外部に排出される。
ポンプPは、再循環路R23a,R23bに接続されている。ポンプPは、ECU5からの制御信号により駆動され、入口側の再循環路R23aから出口側の再循環路R23bに燃料オフガスを送出する。燃料オフガスは、再循環路R23bからアノード供給路R22に流れ込み、燃料ガスとともに燃料電池1に供給される。これにより、燃料オフガスは再循環される。
ECU5は、燃料電池システムの動作を制御する。ECU5には、例えばCPU(Central Processing Unit)回路5aが備えられており、CPU回路5aは、CPU、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などから構成される。CPUは、ROMに記憶されたプログラムに従って動作する。これにより、ECU5は各制御信号を生成し出力する。
ECU5には、車速センサ60及び複数の状態センサ61が電気的に接続されている。車速センサ60は、車両の移動速度を検出してECU5に通知する。ECU5は、移動速度から車両が停車した状態であるか否かを判定する。ECU5は、移動速度が所定の閾値THb以下である場合、車両が停車状態であると判定し、移動速度が所定の閾値THbを超えている場合、車両が移動状態であると判定する。
また、ECU5には、例えば、ラジエータなどの車両内の補機類(不図示)やモータMに必要な電力が通知される。つまり、ECU5には、燃料電池1に要求される電力(以下、「要求電力」と表記)が通知される。ECU5は、車両が停車している状態において、要求電力が所定の閾値THa以下である場合、燃料ガスの流量を増加させることにより燃料電池1内を掃気する。
ECU5は、例えば調圧弁71の開度を増加させることにより、あるいはポンプPの出力を増加させることにより、燃料電池1内に流入する燃料ガスの流量を増加させて掃気処理を行う。これにより、燃料電池1の発電により生成された液水(生成水)が、燃料電池1から排出される。このため、燃料電池内の燃料ガスの流路に水分が滞留し、部分的な水素欠が発生することによりMEAが劣化することが抑制される。
しかし、車両の停車中に掃気処理が実行されることによりMEAの電解質膜が乾燥状態になると、電気抵抗の増加により燃料電池1の発電性能が低下し、車両が発進するときにモータMから十分な駆動力が得られないおそれがある。そこで、ECU5は、各状態センサ61の検出値から車両の発進の可能性の高低を判定し、その判定結果に応じて掃気処理の実行頻度(以下、「掃気頻度」と表記)を変更する。
各状態センサ61は、検出部の一例であり、車両の発進に関わる状態を検出する。車両の発進に関わる状態としては、例えば、運転席のシートの傾斜角度、運転席のシートに加わる荷重、ドアの開閉状態、車両の前方及び後方の障害物の有無、サイドブレーキの位置、及びシフトレバーの位置などが挙げられる。
各状態センサ61は、センシングにより得た検出値をECU5に出力する。ECU5は、各状態センサ61の検出値から車両の発進の可能性の高低を判定する。ECU5は、一例として、以下の各条件(A)〜(F)の何れかが満たされた場合、ドライバが車両を発進させる可能性が低いと判定する。つまり、ECU5は、各条件(A)〜(F)の何れかが満たされる場合、車両の発進の可能性が低いと判定し、各条件(A)〜(F)の何れも満たされない場合、車両の発進の可能性が高いと判定する。
条件(A):運転席のシートの傾斜角度が閾値より大きい。例えば、運転席のシートが、安全な運転が不可能な角度まで倒されている。
条件(B):運転席のシートに加わる荷重が閾値より小さい。例えば、運転席のシートにドライバが座っていない
条件(C):何れかのドアが開放されている。
条件(D):車両の前方及び後方に障害物が存在する。例えば、車両が障害物に挟まれて抜け出せない。
条件(E):サイドブレーキが上がっている。
条件(F):シフトレバーの位置が「パーキング」または「ニュートラル」になっている。
ECU5は、車両の発進の可能性が高いと判定した場合、車両の発進の可能性が低いと判定した場合より掃気処理の実行頻度を低下させる。このため、ECU5は、ドライバが車両を発進させそうなとき、掃気処理の頻度を低下させることによりMEAの電解質膜の乾燥を抑制することができる。
これにより、燃料電池1の発電性能の低下が抑制されるため、車両は、発進するときにモータMから十分な駆動力を得ることができる。なお、本例の燃料電池システムは、複数の条件(A)〜(F)を判定に用いるため、複数の状態センサ61が設けられているが、1つの条件を判定に用いる場合、状態センサ61は1つだけ設けられればよい。
また、ECU5は、車両の発進の可能性が低いと判定した場合、三方弁73を制御することにより酸化剤ガスの燃料電池1への供給を停止する。このとき、酸化剤ガスは三方弁73からカソードバイパス路R12を経由してカソード排出路R13に送出される。これにより、燃料電池1の発電が停止するため、発電による生成水の生成が抑制される。
ECU5は、CPU回路5aの機能により、掃気頻度及び酸化剤ガス供給の制御処理と、掃気処理とを同時並行で実行する。以下に各処理について述べる。
図2は、掃気頻度及び酸化剤ガス供給の制御処理の一例を示すフローチャートである。ECU5は、監視タイマをスタートさせる(ステップSt1)。監視タイマは、車両が停車状態であって、燃料電池1の要求電力が低い状態、つまり燃料電池1の低負荷状態を検出するために用いられる。
次に、ECU5は、要求電力と所定の閾値THaを比較する(ステップSt2)。ECU5は、要求電力が閾値THa以下である場合(ステップSt2のYes)、車速センサ60から得た移動速度と所定の閾値THbを比較する(ステップSt3)。ECU5は、移動速度が閾値THb以下である場合(ステップSt3のYes)、監視タイマが満了したか否かを判定する(ステップSt4)。なお、閾値THbは、車両の停車状態を検出するために十分に小さい値が設定される。
ECU5は、監視タイマが未満了である場合(ステップSt4のNo)、再びステップSt2の処理を実行する。また、ECU5は、監視タイマが満了している場合(ステップSt4のYes)、車両が停車している状態であって、燃料電池1が低負荷状態であると判定し、掃気処理を実行するために以下の処理を実行する。
ECU5は、各状態センサ61から検出値を取得する(ステップSt6)。検出値は、例えば、各状態センサ61から電気信号としてECU5に入力される。
次に、ECU5は、各検出値から車両の発進の可能性の高低を判定する(ステップSt7)。本判定の手段は、上述した通りである。
ECU5は、車両の発進の可能性が低い場合(ステップSt7のNo)、三方弁73の制御により燃料電池1への酸化剤ガスの供給を停止し(ステップSt10)、掃気処理が実行される間隔(以下、「掃気間隔」と表記)Trを短い時間Taに設定する(ステップSt11)。これにより、燃料電池1の発電が停止し、掃気処理の頻度が増加するため、電解質膜の乾燥が進むが、ドライバが車両を発進させる可能性が低いため、車両の発進に影響することはない。
また、ECU5は、車両の発進の可能性が高い場合(ステップSt7のYes)、三方弁73の制御により燃料電池1への酸化剤ガスの供給を停止し(ステップSt8)、掃気間隔Trを長い時間Tb(>Ta)に設定する(ステップSt9)。これにより、ドライバが車両を発進させそうなときには、燃料電池1の発電が行われ、掃気処理の頻度が低下して電解質膜の加湿が進むため、車両が発進するときにはモータMから十分な駆動力が得られる。なお、ECU5は、車両の発進の可能性が高い場合(ステップSt7のYes)、掃気処理の実行を停止することもできる。この場合、ECU5は、ステップSt9の処理において、例えば時間Tbを所定の最大値(例えば24時間、またはそれ以上の時間)に設定する。このため、掃気処理の頻度の低下処理には、掃気処理の実行の停止も含まれる。
次に、ECU5は、掃気処理が実行されるように掃気実行フラグを「1」に設定して(ステップSt12)、監視タイマを例えば0にリセットする(ステップSt15)。その後、ステップSt1以降の各処理が再び実行される。
また、ECU5は、要求電力が閾値THaを超える場合(ステップSt2のNo)、燃料電池1が高負荷状態であると判定し、三方弁73の制御により燃料電池1への酸化剤ガスの供給を行う(再開する)(ステップSt13)。これにより、車両に必要な電力が燃料電池1により生成される。
次に、ECU5は、掃気処理が実行されないように掃気実行フラグを「0」に設定する(ステップSt14)。ECU5は、燃料電池1が高負荷状態である場合、例えば調圧弁71の開度を増加させることにより、燃料電池1への燃料ガスの流量を増加させるため、燃料電池1内の生成水は燃料ガスにより十分に掃気される。
次に、ECU5は、監視タイマを例えば0にリセットする(ステップSt15)。その後、ステップSt1以降の各処理が再び実行される。
また、ECU5は、移動速度が閾値THbを超える場合(ステップSt3のNo)も、掃気処理が実行されないように掃気実行フラグを「0」に設定する(ステップSt14)。この場合、ECU5は、車両が移動している状態であると判定し、掃気処理を停止させる。その後、ステップSt15の処理、及びステップSt1以降の各処理が再び実行される。
このようにして、掃気頻度及び酸化剤ガス供給の制御処理は実行される。
図3は、掃気処理の一例を示すフローチャートである。ECU5は、現在時刻Vを取得する(ステップSt21)。時刻は、例えばCPU回路5a内のリアルタイムクロック回路などにより計時されている。なお、ステップSt21で取得された時刻Vは、以下のステップSt24において時刻Vの初期値として用いられる。
次に、ECU5は、掃気実行フラグが「1」及び「0」の何れであるかを判定する(ステップSt22)。ECU5は、掃気実行フラグが「0」である場合(ステップSt22のNo)、再びステップSt22の処理を実行する。
また、ECU5は、掃気実行フラグが「1」である場合(ステップSt22のYes)、現在時刻Uを取得する(ステップSt23)。次に、ECU5は、ステップSt23の処理により取得した時刻Uと、ステップSt21またはステップSt27の処理により取得した時刻Vとの差分ΔTを算出する(ステップSt24)。ここで、ステップSt27の処理により取得した時刻Vは、掃気処理が実行された時刻であり、ステップSt21の処理により取得した時刻Vは初期値である。
次に、ECU5は、時刻U,Vの差分ΔTと掃気間隔Trを比較する(ステップSt25)。ECU5は、時刻U,Vの差分ΔTが掃気間隔Tr以上である場合(ステップSt25のYes)、掃気処理を実行する(ステップSt26)。掃気処理の実行手段は、上述した通りである。次に、ECU5は、現在時刻Vを取得して(ステップSt27)、ステップSt22の処理を再び実行する。また、ECU5は、時刻U,Vの差分ΔTが掃気間隔Tr未満である場合(ステップSt25のNo)、掃気処理を実行せずに、ステップSt22の処理を再び実行する。
このように、ECU5は、上記のステップSt9またはステップSt11で設定した掃気間隔Tr(=TaまたはTb)に基づいて周期的に掃気処理を実行する。これにより、ECU5は、車両の発進の可能性に応じて掃気処理の実行頻度を変更する。このようにして、掃気処理は実行される。
これまで述べたように、ECU5は、各状態センサ61が検出した状態に基づき車両の発進の可能性の高低を判定し、車両の発進の可能性が高い場合、車両の発進の可能性が低い場合より燃料電池1内の掃気の実行頻度を低下させる。このため、本例の燃料電池システムによると、ドライバが車両を発進させるときに備えて掃気処理の頻度を抑えることにより電解質膜の乾燥が抑制されるので、車両の発進に影響することなく、燃料電池のフラッディングを抑制することができる。
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
1 燃料電池
5 ECU
71 調圧弁
60 車速センサ
61 状態センサ

Claims (1)

  1. 車両に供給される電力を燃料ガスから生成する燃料電池と、
    前記燃料電池内に流入する前記燃料ガスの流量を制御する制御部と、
    前記車両の発進に関わる状態として、運転席のシートの傾斜角度、運転席のシートに加わる荷重、ドアの開閉状態、前記車両の前方及び後方の障害物の有無それぞれ検出する複数の検出部とを有し、
    前記制御部は、
    前記車両が停車している状態において、前記燃料電池に要求される電力が所定値以下である場合、前記燃料ガスの流量を増加させることにより前記燃料電池内を掃気し、
    前記複数の検出部がそれぞれ検出した状態に関する所定の条件のうち、少なくとも1つの条件が満たされる場合、前記車両の発進の可能性が低いと判定し、何れの条件も満たされない場合、前記車両の発進の可能性が高いと判定し、
    前記車両の発進の可能性が高いと判定した場合、前記車両の発進の可能性が低いと判定した場合より前記燃料電池内の掃気の実行頻度を低下させる、
    燃料電池システム。
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