JP6939161B2 - 熱延鋼板の平坦度予測方法 - Google Patents
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Description
まず、本発明に係る熱間圧延設備の構成について説明する。図1は、熱間圧延設備1の仕上圧延機2以降の構成の概略を示す説明図である。
本発明は、以上の構成の熱間圧延設備で製造されるコイルにおいて、熱延鋼板の平坦度を予測するものである。熱延鋼板の巻き取り温度は、材質によって異なるがおよそ100〜800℃までの範囲であり、熱間圧延設備で製造されたコイルはコイルヤードに搬送され、常温まで冷却された後、巻き解かれる。本発明において予測する平坦度は、このコイルを巻き解いた熱延鋼板の平坦度であって、かかる場合、熱延鋼板の幅方向端部には耳波と呼ばれる波状の面外変形が生じている。ここで、多くの熱延鋼板Hにおいて起きる平坦度悪化は耳波であり、本発明は、この耳波を改善することを意図して予測するものである。それ以外の場合で、コイラーの軸やピンチロールのクラウンプロフィールが凸形状で、巻き取り張力が異常に大きい場合は、幅方向端部ではなく中央部に波の出る中波が発生する場合があるが、これは本発明の対象外である。
1つ目の温度要因による平坦度悪化について説明する。コイラーに巻き取られる直前の熱延鋼板には、幅方向の不均一温度分布によって熱ひずみが生じる。この熱ひずみが伸びひずみ差(残留ひずみ)となって、熱延鋼板の平坦度悪化(形状悪化)となる。
2つ目の巻き締まり要因による平坦度悪化について説明する。例えば仕上げ圧延後の熱延鋼板に生じるクラウンによって、コイラーに巻き取られる際に熱延鋼板に作用する張力が幅方向に不均一に分布するが、この不均一張力分布での巻き締まりによってコイルの内周部が塑性変形して塑性ひずみが生じる。この塑性ひずみが伸びひずみ差(残留ひずみ)となって、熱延鋼板の平坦度悪化(形状悪化)となる。
(A)まず、コイラーで熱延鋼板を一定張力で巻き取ると、コイルの表面における熱延鋼板には引張応力が作用するが、マンドレル近傍のコイルの内周部における熱延鋼板には圧縮応力が作用する。
(B)また、一般的な熱延鋼板は、幅方向中央部が凸型となるようなクラウンを有している。このようなクラウンを有する熱延鋼板に、さらにクラウンを有する別の熱延鋼板が巻き重ねられると、内側の熱延鋼板の中央部と外側の熱延鋼板の中央部が接触する。このため、コイルの内周部において幅方向中央部には端部に比べ、より大きな圧縮応力が作用する。
(C)実操業では、マンドレルは待機径で熱延鋼板が搬送されるのを待っており、所定の巻き数だけ熱延鋼板が巻き付くと、さらに拡大(過拡大)させることになる。そして、マンドレルを拡大しようとするシリンダー部の押し力と、コイルからの面圧とが釣り合った時点でその拡大は止まり、マンドレルは一定径を保持することになる。しかしながら、実際には、熱延鋼板の巻き取り時の張力、熱延鋼板の板厚、熱延鋼板間の摩擦力等の影響で巻き締まり力が過大になり、シリンダー部の押し力が負けて、マンドレルの径は巻き締まりが完了した時点から徐々に縮小していく。このようなマンドレルの径縮小によって、本来マンドレルが受けるべき圧縮の巻き締まり力を、コイルの内周部の熱延鋼板が受け持たざるを得ない状況となる。
(D)以上のような現象が重なると、コイルの内周部において、特に幅方向中央部で圧縮応力が大きくなり、熱間状態での操業であることから、幅方向中央部に圧縮塑性変形、変態塑性による変形やクリープ変形が発生することになる。その結果、見かけ上、幅方向中央部が縮み、端部が伸びることになり、耳波が発生する。
以上が熱延鋼板の平坦度悪化のメカニズムであり、本発明者らはかかる知見に基づいてさらに検討を進め、高精度に平坦度(形状)を予測する方法を見出した。その予測方法とはすなわち、上述した温度要因と巻き締まり要因の2つの要因で生じる伸びひずみ差を重ね合わせる方法である。図10は、この平坦度予測方法(形状予測方法)を説明する概念図である。
まず、温度要因によって生じる伸びひずみ差分布Δεt(i:熱延鋼板の幅方向位置)を算出する。巻き取り温度分布ΔT(i)は、例えば図1に示した冷却装置とコイラーの間に設けられた温度計で測定できる。そして、この巻き取り温度分布ΔT(i)が、コイルの巻き解き時において常温に下げられる際に、熱延鋼板に熱ひずみ分布が生じ、この熱ひずみ差分布が生じる伸びひずみ差分布Δεt(i)となる。なお、この巻き取り温度分布ΔT(i)から伸びひずみ差分布Δεt(i)を算出する方法は、公知の方法、例えば特許文献1に記載された方法を用いることができる。
また、巻き締まり要因によって生じる伸びひずみ差分布Δεc(i)を算出する。上述したように、例えば仕上げ圧延後の熱延鋼板に生じるクラウンによって、コイラーに巻き取られる際に熱延鋼板に作用する張力が幅方向に不均一に分布するが、この不均一張力分布での巻き締まりによってコイルの内周部が塑性変形して塑性ひずみが生じる。この塑性ひずみ分布が伸びひずみ差分布Δεc(i)となる。
Δεc(i)=F{Cr(i)、Ut、Δφ、N} ・・・(2)
Δεc(i)=α・Cr(i)・Ut・Δφ・N ・・・(3)
但し、α:係数
Δεc(i)=α・Cr(i)+β・Ut+γΔφ+εN+ω ・・・(4)
但し、α、β、γ、ε、ω:係数
熱延鋼板のコイル内周部に内在する真の伸びひずみ差分布Δε(i)は、下記式(5)に示すとおり、温度要因による伸びひずみ差分布Δεt(i)と巻き取り要因による伸びひずみ差分布Δεc(i)を重ね合わせて算出することができる。
Δε(i)=Δεt(i)+Δεc(i) ・・・(5)
Δε(i,j)=Δεt(i,j)+Δεc(i,j) ・・・(5’)
以上の平坦度予測方法では、巻き締まり要因によって生じる伸びひずみ差分布Δεc(i)を算出していたが、これに代えて、巻き締まり要因によって生じる急峻度を算出してもよい。急峻度λは、上記式(4)の回帰式を変形したものであって、下記式(6)で算出することができる。式(6)中、Crは熱延鋼板のクラウンであって、幅方向中央部と端部の差である。また、Utは、長手方向に平均の張力である。
λ=α・Cr+β・Ut+γΔφ+εN+ω ・・・(6)
但し、α、β、γ、ε、ω:係数
以上が熱延鋼板の平坦度予測方法の概念であるが、次にその具体的な方法について説明する。
(a)例えば図1に示した仕上圧延機と冷却装置に設けられた板厚計により、熱延鋼板の幅方向の板厚分布を測定する。
(b)コイラーへの巻き付け開始から終了(時間)までのマンドレル径の縮小量を測定する(縮小量を示す信号を取得する)。またこのとき、熱延鋼板の巻き取り速度も測定する。そして、最終的には、巻き取り速度の測定結果に基づいて、時間とマンドレル径の縮小量との関係を、距離又は長手方向の巻き取り位置ごとのマンドレル径の縮小量との関係に変換する。
(c)次に有限要素法や軸対称モデルによって、所定円筒厚、例えば20mmのサイズのマンドレルに対し、板厚4mm、クラウン40μmの板厚分布を持った円筒を、予め測定した操業引張応力、例えば20MPaで1巻きずつ巻き付ける。その際、別途測定した巻き締まりデータをもとに所定の巻き数になったら、測定した値(取得した信号値)に従いマンドレル径を小さくする。
次に、本発明の平坦度予測方法を行った場合の効果について説明する。本発明の平坦度予測方法は図10に示した方法であって、温度要因による伸びひずみ差分布と巻き取り要因による伸びひずみ差分布を重ね合せて真の伸び歪差分布を算出し、この真の伸び歪差分布について、有限要素法(FEM)による大たわみ解析、又は理論モデルを用いた解析を行うことで、熱延鋼板の急峻度を予測した。また、比較例として、この本発明の平坦度予測方法で用いた操業条件と同じ操業条件で熱間圧延工程を行い、熱延鋼板の形状を測定した。
2 仕上圧延機
3 冷却装置
4 コイラー
5 ランアウトテーブル
6 板厚計
7 温度計
10 ピンチロール
11 シュート
12 マンドレル
13 ラッパーロール
20 マンドレルセグメント
21 ウェッジ
22 スライドロッド
23 ウェッジシャフト
24 シリンダー部
25 セグメントツバ部
26 ウェッジアゴ部
27 セグメント−ウェッジ部
C コイル
H 熱延鋼板
Claims (3)
- 熱間圧延工程においてコイラーによりコイル状に巻き取られた熱延鋼板の平坦度を予測する方法であって、
熱延鋼板の巻き取り前の幅方向温度分布に起因して生じる第1伸びひずみ差分布と、熱延鋼板のコイルが巻き締まる力に起因して生じる第2伸びひずみ差分布と、を重ね合せて熱延鋼板の伸びひずみ差分布を算出し、平坦度を予測することを特徴とする、熱延鋼板の平坦度予測方法。 - 前記第2伸びひずみ差分布は、仕上げ圧延後の熱延鋼板に生じるクラウン、前記コイラーにより熱延鋼板を巻き取る際の張力、巻き数、及び前記コイラーが備えるマンドレルの径の縮小量に基づいて決定されることを特徴とする、請求項1に記載の熱延鋼板の平坦度予測方法。
- 前記第1伸びひずみ差分布と前記第2伸びひずみ差分布を重ね合せた伸びひずみ差分布を、熱延鋼板の座屈解析で用いられる有限要素法、又は熱延鋼板の形状予測に関する理論モデルを用いて予測し、
前記理論モデルでは、熱延鋼板に作用する応力を、形状変換する応力と熱延鋼板に残留する応力成分とに分離し、前記形状変換する応力を用いて形状予測を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱延鋼板の平坦度予測方法。
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