以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
図1は、本発明に係るプリプレグテープの積層装置に関する概略構成図である。この例では、プリプレグテープとして、後述する薄層プリプレグテープを用いている。プリプレグテープの積層装置1は、複数の薄層プリプレグテープを給送する給送部2と、給送された複数の薄層プリプレグテープを搬送する搬送部3と、搬送された複数の薄層プリプレグテープを基体表面の積層領域にそれぞれ接着させる積層ヘッド部4と、積層ヘッド部4を積層領域に対して相対移動させる移動部5とを備えており、積層ヘッド部4は、積層動作方向に配列された複数のテープ積層部4a〜4cと、テープ積層部4a〜4cを薄層プリプレグテープの幅方向に位置調整する調整部48とを備えている。調整部48は、テープ積層部4a〜4cの積層位置を調整して、プリプレグテープを全部又は部分的に重ね合せたり、幅方向に重なり合うことなく配列するように積層位置を調整して積層動作を行うことができる。
給送部2は、クリルスタンド等の支持枠体(図示せず)に取り付けられた複数のボビンに薄層プリプレグテープT1〜T3をそれぞれ巻き取ったロールR1〜R3をセットした給送部210、220及び230を備えている。薄層プリプレグテープT1〜T3は、片面に貼り合わされている離型シートを剥離して巻取ロールL1〜L3に巻き取りながらロールR1〜R3より繰り出されて給送部210〜230から給送されるようになっている。
給送部2から給送された薄層プリプレグテープT1〜T3は、搬送部3により積層ヘッド部4に搬送されるようになる。搬送部3は、薄層プリプレグテープT1〜T3を並行してそれぞれテープ積層部4a〜4cに搬送するようになっており、調整部48の側部に取り付けられた搬送ローラ30a〜30c及び調整部48の下部に取り付けられた調整ローラ31a〜31cを備えている。搬送ローラ30a〜30cは、給送部2から給送された薄層プリプレグテープT1〜T3を調整部48の側部から下方に向かって搬送するようになっており、調整ローラ31a〜31cは、下方に向かって搬送される
薄層プリプレグテープT1〜T3を調整部48の下面側に引き込んだ後テープ積層部4a〜4cに向かって捩りながら導入されるように案内する。
図2は、図1の矢印A方向からみた搬送ローラ30a及び調整ローラ31aの搬送動作を示す一部拡大図である。なお、矢印A方向と反対方向が積層ヘッド部4の積層動作方向を示している。調整ローラ31aは、テープ積層部4aに対して薄層プリプレグテープの搬送方向上流側に配置されており、搬送ローラ30aは、調整ローラ31aに対して薄層プリプレグテープの搬送方向上流側に配置されている。
調整ローラ31aは、薄層プリプレグテープT1をテープ積層部4aの積層動作方向に沿って導入するように位置調整するようになっているので、搬送ローラ30aにより下方に向かって搬送された薄層プリプレグテープT1をテープ積層部4aに向かって確実に導入することができる。搬送ローラ30b及び調整ローラ31b並びに搬送ローラ30c及び調整ローラ31cについても搬送ローラ30a及び調整ローラ31aと同様に搬送動作を行うように設定されている。
薄層プリプレグテープは、後述するように、高いドレープ性を備えているため、テープ長方向に沿う軸を中心に回動させて捩じるように変形させた場合でもダメージを受けることがほとんどない。また、調整ローラ31aに張架された薄層プリプレグテープT1は、調整ローラ31aの回転軸の軸方向(図2では紙面と直交する方向)と直交する周方向に容易に搬送方向を変化させることができる。そのため、調整ローラ31aの軸方向をテープ積層部4aの位置調整方向(紙面に沿う方向)と直交する方向に設定することで、調整ローラ31aに張架された薄層プリプレグテープT1の幅方向が位置調整方向と直交するようになり、テープ積層部4aの位置調整動作に対して薄層プリプレグテープT1が搬送方向を容易に変化させて追従するようになる。こうして、積層ヘッド部4の位置調整に対して薄層プリプレグテープを追従させながら安定した導入動作を行うことが可能となる。
また、テープ積層部4a〜4cが積層動作方向に沿って配列されているので、薄層プリプレグテープを積層動作方向に向かってテープ積層部4aに導入するように調整ローラ31aの取付位置は限定されるようになる。そのため、搬送ローラ30aを調整ローラ31aの位置調整方向側である調整部48の側部に取り付けることで、調整ローラ31aから搬送ローラ30aまでの搬送方向を積層動作方向から外れる方向に設定することができ、複数のテープ積層部が狭い間隔で配列された場合でも複数の薄層プリプレグテープをスムーズに導入することが可能となる。
テープ積層部4a〜4cは、積層動作方向に沿って所定間隔で配置されており、積層ヘッド部4は、積層動作方向に沿って配列された複数の積層位置で薄層プリプレグテープを積層するようになっている。そして、搬送部3から搬送された薄層プリプレグテープT1〜T3を基体表面の積層領域に順次積層して加圧又は加熱加圧により接着一体化させるようになっている。そのため、薄層プリプレグテープを複数の積層位置において1回の積層動作で3枚同時に積層することができ、作業効率の向上を図ることが可能となる。また、薄層プリプレグテープの積層枚数を変化させることで積層成形する厚さをきめ細かく設定することができる。
テープ積層部4a〜4cは、積層された薄層プリプレグテープT1〜T3を加圧又は加熱加圧して接着一体化するテープ積層ローラ40a〜40c、テープ積層ローラ40a〜40cをそれぞれ支持する支持部材41a〜41c、テープ積層ローラ40a〜40cの搬送方向上流側に配置された薄層プリプレグテープT1〜T3をガイドする一対のガイド部42a〜42c及び43a〜43c、ガイド部42a〜42c及び43a〜43cの間に配置された薄層プリプレグテープT1〜T3を切断するカッタ44a〜44c、及び、カッタ44a〜44cの搬送方向上流側に配置されたニップローラ45a〜45cを備えている。ガイド部42a〜42c及び43a〜43cは、内部に薄層プリプレグテープT1〜T3が通過可能な隙間が形成されており、薄層プリプレグテープT1〜T3が通過することでテープ面が積層領域の積層面に沿うように設定することができる。
薄層プリプレグテープT1〜T3は、搬送部3からニップローラ45a〜45cにそれぞれ搬入されて挟持された状態でニップローラ45a〜45cを回転駆動してそれぞれ搬送される。搬送された薄層プリプレグテープT1〜T3は、ガイド部42a〜42c及び43a〜43cを通過してテープ積層ローラ40a〜40cに向かうように案内されて基体表面の積層領域とテープ積層ローラ40a〜40cの間に導入される。薄層プリプレグテープT1〜T3の導入速度に合わせてテープ積層部4a〜4cを移動させることで、薄層プリプレグテープT1〜T3を積層領域に圧着して接着固定する。成形する形状に合わせて薄層プリプレグテープT1〜T3を所定長さ分だけ積層する場合には、所定長さだけニップローラ45a〜45cが搬送動作を行いながらカッタ44a〜44cにより薄層プリプレグテープT1〜T3を切断することで、所定長さの薄層プリプレグテープT1〜T3を正確に積層することができる。
調整部48は、テープ積層部4a〜4cを支持してそれぞれの積層位置の調整を行うとともにテープ積層部4a〜4cの積層位置の調整に合わせて調整ローラ31a〜31cの位置調整を行うようになっている。
移動部5は、積層ヘッド部4を移動させる多関節アーム部50と、多関節アーム部50を駆動制御する駆動部51とを備えている。駆動部51により多関節アーム部50を駆動して積層ヘッド部4を基体表面に対して移動させ、積層ヘッド部4は、移動動作に応じてテープ積層部4a〜4cを積層領域に位置決めして積層動作を行う。
調整部48は、例えば、テープ積層部4a〜4cが積層動作方向に沿って配列するように積層動作方向とは直交する方向(積層する薄層プリプレグテープの幅方向)に積層位置の調整を行い、薄層プリプレグテープT1〜T3が全部又は部分的に重なり合う積層動作及び幅方向に重なり合うことなく配列する積層動作を行うように設定する。
図3は、テープ積層部4a〜4cの積層動作に関する説明図である。図3(a)では、テープ積層部4a〜4cが積層動作方向Sに沿って配列するように積層位置が調整されており、薄層プリプレグテープが全部重なり合うように設定されている。図3(b)では、テープ積層部4a〜4cは薄層プリプレグテープの幅方向に所定幅だけずらすように積層位置が調整されており、薄層プリプレグテープが部分的に重なり合うように設定されている。図3(c)では、テープ積層部4a〜4cは薄層プリプレグテープの幅方向にテープ幅分ずらすように積層位置が調整されており、薄層プリプレグテープが重なり合うことなく配列されるように設定されている。
このように、テープ積層部4a〜4cの積層位置を調整することで、1回の積層動作により積層する薄層プリプレグテープの厚さ及び積層範囲を調整することができる。また、積層動作中にテープ積層部を幅方向に移動させることで積層動作方向に対して傾斜させて積層させることも可能となり、基体表面の形状に合わせて重なり合う部分を変化させるように積層をきめ細かく調整することができる。
また、調整ローラ31a〜31cについても、テープ積層部4a〜4cの積層位置の調整に合わせて同じ方向に移動させて位置調整することで、位置調整が行われた場合でも薄層プリプレグテープを安定して搬送することができるようになる。テープ積層部及び調整ローラの位置調整手段としては、例えば、調整部48内に、棒状の調整ネジ部材を架設し、調整ネジ部材に取付部材を位置調整可能に螺合させておき、取付部材にテープ積層部及び調整ローラをそれぞれ支持する支持部材を取付固定する。そして、調整ネジ部材を回転させることで、取付部材が調整ネジ部材の軸方向に移動して位置調整が行われ、それに連動してテープ積層部の積層位置の調整及び調整ローラの位置調整を精度よく行うことができる。
このように、積層ヘッド部4の1回の積層動作で複数のテープ積層部により複数枚の薄層プリプレグテープを同時に積層することができるので、1回の積層動作で1枚ずつ積層する場合に比べて作業効率を格段に向上させることが可能となる。そして、1回の積層動作で薄層プリプレグテープを重ね合せて積層することで、成形形状に合わせて様々な厚さで積層することができる。
また、調整部48は、テープ積層部4a〜4cをそれぞれ動作位置及び待機位置に設定することができ、テープ積層部4a〜4cを動作位置に設定することで、積層領域に当接して積層動作を行うようになり、積層領域から離間した待機位置に設定することで、積層動作を停止するようになる。そのため、積層枚数に応じてテープ積層部を適宜動作位置又は待機位置に設定して積層する厚さをきめ細かく設定することができる。また、テープ積層部毎に積層する長さを変化させることで、成形する曲面形状に合わせて部分的に積層枚数を変化させて積層成形することも可能となる。テープ積層部を動作位置及び待機位置に設定する位置設定手段としては、例えば、テープ積層部を支持する支持部材を2つの部材を関節部材により連結して構成し、関節部材を小型モータ等の駆動手段により回動させて位置設定を行うことができる。
積層動作により薄層プリプレグテープを同時に複数枚積層した積層体は、同じ厚さの従来のプリプレグテープと比べると、各薄層プリプレグテープ内で強化繊維材料が引き揃えられた状態で積層されており、厚さ方向の強化繊維材料の乱れが小さくなって強化繊維材料の真直性が向上している。そのため、積層体は、同じ厚さの従来のプリプレグテープに比べて引張特性、曲げ特性といった力学的特性で優れたものとなっている。そして、従来のプリプレグテープと同じ厚さの積層体を1回の積層動作で積層するので、従来と同様の作業効率で高品質の積層体を成形することができる。
また、薄層プリプレグテープは、優れたドレープ性を備えており、基体表面の積層領域の形状に追従して変形することができ、搬送する際に生じる曲げや捩りといった変形に対しても柔軟に対応して元の形状に回復する特性を備えているので、高品質の積層体を成形することが可能となる。そのため、搬送部及び積層ヘッド部において、積層ヘッド部の位置調整に対しても容易に追従して搬送することができ、また、部品を配列する際の設計自由度が大きくなり、複数の部品を小さいスペースに効率よく配置して装置をコンパクト化することができる。
また、上述したように、1回の積層動作で積層する薄層プリプレグテープの枚数を変化させることで厚さの異なる積層体を形成することができ、積層する形状に合わせて積層体の厚さを変化させることで、より正確な形状の積層体を得ることが可能となる。図4は、1回の積層動作で形成した積層体の端部形状を示す断面図である。図4(a)では、薄層プリプレグテープの端部の積層位置を所定長さごとにずらすことで、積層体の端部形状の厚さが次第に薄くなるように設定している。図4(b)では、最上位の薄層プリプレグテープの端部が最も外側となるように積層位置をずらして設定することで、積層体の端部形状が最上位の薄層プリプレグテープで被覆されて厚さが連続して薄くなるように設定することができる。
また、給送部2において、予め複数の薄層プリプレグテープを重ね合せた積層テープを予備形成して供給することもできる。この場合、積層テープは、積層する薄層プリプレグテープの枚数を変化させて部分的に厚さを変化させることもでき、積層する形状に合わせてきめ細かく厚さを設定しながら積層ヘッド部において効率よく積層動作を行うことが可能となる。
例えば、3枚の
薄層プリプレグテープを重ね合せて供給する場合、3枚積層された積層テープ、2枚積層された積層テープ及び薄層プリプレグシート1枚からなるテープの3種類の厚さの異なる予備形成テープを得ることができる。なお、積層テープは、薄層プリプレグテープ同士が仮接着された状態となっているが、一体化された成形体とはならないように形成すればよい。
こうして予備形成された積層テープを他の薄層プリプレグテープとともに給送して積層ヘッド部で重ね合せたり、幅方向に配列する積層動作を行うことで、きめ細かく積層設計に対応することができる。
薄層プリプレグテープは、樹脂含浸状態での厚さを20μm〜80μmに設定することが好ましい。薄層プリプレグテープの厚さを80μm以下としたことで、積層された成形体は、引張特性では、デラミネーション(層間剥離)の発生が抑制される効果を得る。また、曲げ特性及び圧縮特性については、種々の方向に切り出した試験片の最大強度及び初期弾性率の差が少なくなり、擬似等方性が向上する効果を得る。さらに、疲労寿命が向上する効果も得ることができる。
薄層プリプレグテープの樹脂含浸状態での厚さは、薄いほど好ましく40μm以下がより好ましい。しかし、厚さが20μm以下の薄層プリプレグテープを製造することは難しい。例えば、汎用的な炭素繊維の直径は約7μmであり、補強繊維材料に炭素繊維を使用した厚さ20μm以下に作成しようとした場合、厚さ方向に3本以下で炭素繊維を分散させなければならず、製造することが難しい。さらに、マトリックスとなる樹脂材料も10μm以下のシート状にしなければならず、テープの製造も難しく、連続して安定したプリプレグテープを得ることが難しい。よって、薄層プリプレグテープは20μm以上で作成することが品質を一定に保つことからも望ましい。
薄層プリプレグテープに用いる強化繊維材料は、複数本の強化繊維により構成されている。強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、ポリオキシメチレン繊維、アロマティック・ポリアミド繊維等の繊維補強複合材料に用いられる高強度・高弾性率の無機繊維や有機繊維などが挙げられ、これらの繊維を複数組み合せてもよく、また繊度については特に限定されない。また、公知の空気開繊方法(例えば、特許第4740131号公報参照)により強化繊維材料を薄く均等に分散させて引き揃えたものを用いるとよい。
薄層プリプレグテープのマトリックスとなる樹脂材料としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂材料又はポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、さらにはこれら熱可塑性樹脂を2種類以上混合してポリマーアロイとした樹脂等の熱可塑性樹脂材料が挙げられる。特に、熱硬化性樹脂のエポキシ樹脂が好ましく用いられ、一般に硬化剤や硬化触媒と組み合せて用いられる。
薄層プリプレグテープは、強化繊維材料に熱硬化性樹脂材料又は熱可塑性樹脂材料を含浸させる公知のプリプレグ製造装置により製造することができる。また、熱可塑性樹脂材料を用いる場合、強化繊維材料をフィルム状となった熱可塑性樹脂材料に熱融着等により貼り合わせたテープ材を薄層プリプレグテープとして製造することができる。
以上説明した例では、複数のテープ積層部により1回の積層動作で薄層プリプレグテープを複数積層して積層体を形成するようにしているが、薄層プリプレグテープには樹脂テープを貼り合せて様々な構造の積層体を成形することもできる。この場合、樹脂テープは、熱可塑性繊維からなる不織布、フィルムといった素材や、不織布に熱硬化性樹脂を含浸させた素材等を用いて積層することができる。
図5は、給送部2において樹脂テープを薄層プリプレグテープに貼り合せて予備形成する場合の概略構成図である。予備形成部201は、複数のボビンに樹脂テープT4〜T6をそれぞれ巻き取ったロールR4〜R6をセットした給送部240、250及び260を備え、樹脂テープT4〜T6が各給送部から繰り出されて重なり合うように給送されるようになっている。
給送部240では、樹脂テープT4は、片面に貼り合わされている離型シートを剥離して巻取ロールL4に巻き取りながら繰り出されて接着部241に搬送されるようになっている。接着部241では、ヒートローラ及びプレスローラの間を樹脂テープT4が圧接されながら通過するようになっている。
給送部250では、樹脂テープT5は、片面に貼り合わされている離型シートを剥離して巻取ロールL5に巻き取りながら繰り出されて接着部251に搬送されるようになっている。接着部251では、ヒートローラ及びプレスローラの間を樹脂テープT5が圧接されながら通過して切断部252に搬送されるようになっている。切断部252は、カッタ及びカッタの両側に配置された一対のニップローラを備えており、樹脂テープT5は、ニップローラに挟持されて両ニップローラを回転駆動することで繰り出されるようになっている。また、切断部252に挿入された樹脂テープT5は、所定の切断位置で一対のニップローラにより挟持された状態でカッタにより切断されるようになっている。切断部252を通過した樹脂テープT5は、接着部241に挿入されてヒートローラ及びプレスローラの間を樹脂テープT4と重なり合うように通過して接着するようになる。
給送部260では、樹脂テープT6は、片面に貼り合わされている離型シートを剥離して巻取ロールL6に巻き取りながら繰り出されて接着部261に搬送されるようになっている。接着部261は、ヒートローラ及びプレスローラの間を樹脂テープT6が通過して切断部262に搬送されるようになっている。接着部261では、搬送方向下流側から別の樹脂テープが搬送されてこないため、ヒートローラ及びプレスローラの間は離間されて接着処理は行われないようになっている。切断部262では、切断部252と同様に、樹脂テープT6は、ニップローラに挟持されて両ニップローラを回転駆動することで繰り出され、所定の切断位置で一対のニップローラにより挟持されてカッタにより切断されるようになっている。切断部262を通過した樹脂テープT6は、接着部251に挿入されてヒートローラ及びプレスローラの間を樹脂テープT5と重なり合うように通過して接着しながら搬送されて、接着部241に搬送されるようになっている。
樹脂テープT6は給送されながら切断部262で所定の長さに切断されて接着部251で樹脂テープT5に積層されるようになり、樹脂テープT5は給送されながら切断部252で所定の長さに切断されて接着部241で樹脂テープT4に積層されるようになる。そして、積層された樹脂テープは、ロールR1から繰り出された薄層プリプレグテープとともに接着部20のヒートローラ及びプレスローラの間を重なり合うように通過して接着しながら搬送される。
こうして、樹脂テープT6に樹脂テープT4及びT5を積層した3層テープ、樹脂テープT6に樹脂テープT4又はT5を積層した2層テープ、樹脂テープT6のみの1層テープの3種類の厚さの樹脂テープを薄層プリプレグテープを積層して給送することができる。
図6は、給送部2において樹脂テープを薄層プリプレグテープに貼り合せて予備形成する場合の別の概略構成図である。この例では、3枚の樹脂テープを重ね合せて厚さの異なる樹脂テープを形成することができるようになっている。この場合、樹脂テープは、離型シートに熱硬化性樹脂が塗布されたシート状の素材や、離型シートに熱可塑性樹脂パウダーを分散させた熱硬化性樹脂が塗布されたシート状の素材などを用いることができる。樹脂テープは、給送部270、280及び290において、両面に離型シートが貼り合されてそれぞれロールR7〜R9に巻き取られており、ロールR7から繰り出された樹脂テープは片面側の離型シートを剥離して巻取ロールL7aに巻き取りながら給送されていき、ヒートローラ及びプレスローラからなる接着部281に挿入される。
接着部281では、ロールR8から繰り出された樹脂テープが片面側の離型シートを剥離して巻取ロールL8aに巻き取りながら給送されて挿入される。そのため、接着部281では、給送部270からの樹脂テープと重ね合せられた2枚の樹脂テープが加熱加圧されて貼り合された後、残りの面側の離型シートを剥離して巻取ロールL8bに巻き取りながら給送されていき、接着部291に挿入される。
接着部291では、ロールR9から繰り出された樹脂テープが片面側の離型シートを剥離して巻取ロールL9aに巻き取りながら給送されて挿入される。そのため、接着部291では、接着部281からの貼り合せテープと樹脂テープが重ね合された状態で加熱加圧されて貼り合された後、残りの面側の離型シートを剥離して巻取ロールL9bに巻き取りながら給送されていき、接着部20に挿入される。
接着部20では、接着部291からの3枚の貼り合せテープとロールR1から繰り出された薄層テープが重ね合された状態で加熱加圧されて貼り合された後、残りの面側の離型シートを剥離して巻取ロールL7bに巻き取りながら給送されていく。そのた、片面側に樹脂テープが貼り合された薄層プリプレグテープを予備形成して積層ヘッド部に給送することができる。給送部280及び290では、接着部281及び291において、ヒートローラ及びプレスローラを離間させた状態に設定することで、樹脂テープの貼り合せを停止することができ、2枚又は3枚の貼り合せテープ及び1枚の樹脂テープを必要に応じて予備形成して厚さの異なる樹脂テープを薄層プリプレグテープに貼り合せることが可能となる。
図7は、プリプレグテープの積層装置に関する別の実施形態を示す概略構成図である。この例では、テープ積層部として、幅方向に配列された複数枚の薄層プリプレグテープT1〜T3を同時に積層する複数のマルチ積層部を備えている。複数のマルチ積層部により積層動作方向に沿って複数の積層位置が設定されており、幅方向に配列された薄層プリプレグテープT1〜T3を1回の積層動作により同時に積層することができる。
図7に記載された積層装置1’では、積層ヘッド部4’は、3つのマルチ積層部4A〜4Cが調整部48’に取り付けられており、移動部5’に積層ヘッド部4’が取り付けられている。マルチ積層部4Aには、給送部2A及び搬送部3Aから複数枚の薄層プリプレグテープT1が幅方向に並列して搬入されるようになっており、同様に、マルチ積層部4Bには、給送部2B及び搬送部3Bから、マルチ積層部4Cには、給送部2C及び搬送部3Cから、それぞれ複数枚の薄層プリプレグテープT2及びT3が並列搬送されて搬入されるようになっている。給送部2A〜2Cは、上述した給送部2と同様に、複数枚の薄層プリプレグテープT2及びT3をロールから繰り出して幅方向に並列しながら給送するようになっている。
図8は、図7の矢印B方向からみたマルチ積層部4A及び搬送部3Aに関する一部拡大図である。搬送部3Aは、給送部2Aから並列して給送される複数枚の薄層プリプレグテープT1を2つに分けて調整部48’の両側部に取り付けられた一対の搬送ローラ30Aに搬送し、搬送ローラ30Aにより並列搬送された薄層プリプレグテープT1は、個別に搬送ローラ31A及び32Aに案内されて調整部48’の側方から下方に回り込むように搬送される。搬送ローラ31A及び32Aは、回転軸の軸方向が搬送ローラ30Aと直交する方向となるように調整部48’に対して図示せぬ取付部材に取り付けられており、薄層プリプレグテープT1は搬送ローラ30Aから捩れるように搬送ローラ31Aに案内されるようになる。そのため、薄層プリプレグテープT1が調整部48’の側部及び下部の表面と略平行と
なるように搬送されて調整部48’と不用意に接触しないようになっている。
薄層プリプレグテープT1は、搬送ローラ32Aから調整ローラ33Aに案内される。調整ローラ33Aは、調整部48’の下方に位置調整可能に取り付けられており、調整部48’の両側から2つに分けて搬送されてきた複数枚の薄層プリプレグテープT1を合流させて下方のマルチ積層部4Aに向かって幅方向に並列配置しながら案内するようになっている。マルチ積層部4Aでは、上述したテープ積層部4aと同様に、各薄層プリプレグテープT1が一対のガイド部を通過して圧接部40Aにセットされるようになっている。圧接部40Aは、並列配置された薄層プリプレグテープT1全体の幅方向の長さよりも長い圧接部材を備えており、圧接部材の積層領域に対向する圧接面は曲面状に形成されている。そのため、薄層プリプレグテープT1は圧接面に沿って積層領域にスムーズに案内されて密着するようになる。圧接部40Aは、バネ等の弾性部材により圧接部材を付勢して圧接面が積層領域に押圧されて摺接するように設定されており、薄層プリプレグテープT1は積層領域に圧着することで仮接着されるようになる。
また、一対のガイド部の間には、テープ積層部4aと同様に、ニップローラ及びカッタが配置されており、ニップローラにより薄層プリプレグテープT1を圧接部40Aに向かって引き出して積層動作を行い、カッタにより薄層プリプレグテープT1を所定の長さで切断するようになっている。複数枚の薄層プリプレグテープT1は、圧接部40Aの基体表面に対する圧接面に幅方向に隙間なく配列するように引き出されて、圧接部40Aの圧接動作により基体表面に圧接されて積層されるようになっている。したがって、幅広い積層領域を複数枚の薄層プリプレグテープT1で一度に積層することができるようになる。
マルチ積層部4B及び4Cについても、上述したマルチ積層部4Aと同様に構成されており、マルチ積層部4A〜4Cを積層動作方向に所定間隔を空けて配列することで、一回の積層動作により幅広い積層領域を複数枚の薄層プリプレグテープで一挙に積層することができる。マルチ積層部4A〜4Cの積層動作方向の下流側には、積層ローラ46が調整部48’に支持部材47を介して取り付けられている。積層ローラ46は、積層動作により仮接着された薄層プリプレグテープ全体の幅の長さよりも長い円柱状に形成されており、積層された薄層プリプレグテープを加圧又は加熱加圧して確実に接着させるようになっている。このように、複数のマルチ積層部により複数の薄層プリプレグテープを仮接着した後積層ローラにより複数の薄層プリプレグテープをまとめて接着させて積層成形しているので、積層ヘッド部の構成をコンパクト化することができる。上述した例では、3つのマルチ積層部を設けているが、4つ以上のマルチ積層部を設けた場合でも、積層されて仮接着された薄層プリプレグテープを積層ローラにより一括して確実に積層成形することが可能となる。
調整部48’では、マルチ積層部4Aを圧接部40Aに配列された薄層プリプレグテープの幅方向である位置調整方向Mに移動させて積層位置の調整を行い、マルチ積層部4Aの積層位置の調整動作に合わせて調整ローラ33Aを同じ方向に移動させて位置調整を行うようになっている。こうした位置調整手段としては、上述した調整部48と同様の手段を用いることができる。マルチ積層部4B及び4Cについてもマルチ積層部4Aと同様の位置調整手段により位置調整方向Mに個別に移動して積層位置の調整を行うようになっている。そのため、各マルチ積層部が積層する薄層プリプレグテープが完全に重なり合った状態で積層する積層動作以外に、積層する薄層プリプレグテープを幅方向にずらして積層動作を行うこともできる。
図9から図11は、マルチ積層部の積層位置の調整により積層動作に関する説明図である。各図(a)は、積層された厚さ方向の断面を示す模式図であり、各図(b)は、マルチ積層部4A〜4Cの積層動作により積層状態を示す説明図である。図9では、マルチ積層部4A〜4Cは、積層動作方向Sに沿って所定間隔で配列されており、積層する薄層プリプレグテープが完全に重なり合うように幅方向に積層位置の調整がなされている。図10では、マルチ積層部4A〜4Cは、積層する薄層プリプレグテープが幅方向にずれて互いに一部だけ重なり合うように積層位置の調整がなされている。こうして積層成形された場合、薄層プリプレグテープの境界線が各層でずれるようになり、各層の境界線が揃っている場合に比べて強度的に均質化した積層成形物を得ることができる。図11では、マルチ積層部4A〜4Cは、積層する薄層プリプレグテープが互いに重なり合わないように積層位置の調整がなされており、1回の積層動作で、より広範囲の積層領域を積層することが可能となって作業効率の向上を図ることができる。
図7に示す例では、1つの積層ローラにより接着させるようにしているが、積層領域が凹凸形状となっている場合には、1つの積層ローラでは積層領域に対して追従して積層動作を行うことが難しくなる。そのため、積層ローラを複数の分割ローラで構成することで積層領域の形状に合わせて積層動作を容易に行うようにしてもよい。
図12は、積層ローラを複数の分割ローラで構成して配置した変形例に関する概略構成図である。この例では、積層ローラとして分割ローラ46a及び46bを2段にずらして配置するようにしている。分割ローラ46a及び46bは、積層ローラ46と同様に、支持部材47a及び47bを介して調整部48’に取り付けられている。図13は、分割ローラの配置レイアウトを示す説明図である。積層動作方向Sに対して、上流側に分割ローラ46aが所定の間隔を空けて配置されており、下流側に分割ローラ46bが分割ローラ46aの間に所定の間隔を空けて配置されている。そのため、積層動作方向Sに分割ローラ46a及び46bが移動した場合に、分割ローラの間に隙間が生じることなく積層動作を行うことができる。また、積層領域に凹凸形状がある場合でも凹凸形状に合わせて分割ローラを個別に上下動させて追従させることが可能で、積層動作に使用しない一部の分割ローラを待機位置に移動させておくこともできる。
図7に示す例では、マルチ積層部は、複数枚の薄層プリプレグテープを積層ローラにより一括して接着させるようにしているが、図1に示すように、テープ積層ローラを薄層プリプレグテープ毎に取り付けてテープ積層部に構成し、薄層プリプレグテープを個別に積層するように構成することもできる。このように、複数のテープ積層部を薄層プリプレグテープの幅方向に並列配置して個別に積層動作を行うようにすることで、テープ積層部の間隔を調整して薄層プリプレグテープの積層動作を行うことができる。
図14は、並列配置された複数のテープ積層部の間隔調整を行うための間隔調整機構の一例を示す概略構成図である。この例では、調整部48’は、円筒状の回転体48a’、回転体48a’を軸支する回転軸体48b’、回転体48a’の表面に形成された複数の間隔調整用溝48c’及び間隔調整用溝48c’にそれぞれ摺動可能に嵌合した複数の支持体48d’を備えている。
間隔調整用溝48c’は、支持体48d’の間隔を等間隔で拡大縮小しながら回転軸体48b’の軸方向に沿って移動するように形成されている。支持体48d’は、ガイドバー48e’により回転軸体48b’の軸方向にのみ移動するように規制されており、そのため回転体48a’を回転動作させることで、支持体48d’を等間隔に保持した状態で移動させることができる。
なお、こうした間隔調整機構としては、上述した以外の機構を用いることもでき、特に限定されない。例えば、マジックハンド等に使用されるリンク機構の軸支部分に支持体を取り付けてリンク機構を伸縮動作させることで、等間隔を保持した状態で支持体の間隔を調整することができる。
回転体48a’は、回転軸体48b’に中心軸に沿って移動可能に取り付けられており、軸方向に位置調整可能となっている。支持体48d’には、テープ積層部がそれぞれ取り付けられており、図14では、マルチ積層部4A’の各テープ積層部がそれぞれ支持体48d’に取り付けられている。そのため、回転体48a’の軸方向の位置調整によりマルチ積層部4A’全体の積層位置の調整が行われ、回転体48a’の回転動作により各テープ積層部の間隔調整が行われて各テープ積層部の積層位置の調整が行われる。マルチ積層部4B’及び4C’についても、マルチ積層部4A’と同様に、各テープ積層部の積層位置の調整が行われるようになっている。
図15から図17は、図14に示すマルチ積層部の積層位置の調整により積層動作に関する説明図である。各図(a)は、積層された厚さ方向の断面を示す模式図であり、各図(b)は、マルチ積層部4A’〜4C’の積層動作により積層状態を示す説明図である。図15では、マルチ積層部4A’〜4C’は、積層動作方向Sに沿って所定間隔で配列されており、積層する薄層プリプレグテープが完全に重なり合うように幅方向に積層位置の調整がなされている。図16では、マルチ積層部4A’〜4C’は、薄層プリプレグテープの幅の半分だけ間隔を空けるようにテープ積層部の積層位置を調整し、積層する薄層プリプレグテープが幅方向に半分ずつずれて互いに一部だけ重なり合うようになっている。こうして積層成形された場合、薄層プリプレグテープは、全体として薄層プりプレグテープを2層分積層した状態となっている。図17では、マルチ積層部4A’〜4C’は、薄層プリプレグテープの幅の2倍の間隔を空けるようにテープ積層部の積層位置を調整して積層する薄層プリプレグテープが互いに重なり合わないようになっており、1回の積層動作で、より広範囲の積層領域を積層することが可能となって作業効率の向上を図ることができる。
以上説明したように、薄層プリプレグテープを重ね合せて積動動作を行い、薄層プリプレグテープの積層位置を調整することで、薄層プリプレグテープの積層形態を様々な形態に変化させることが可能となり、積層領域の形状に合わせてきめ細かく積層することができる。なお、薄層プリプレグテープを重ね合せる積層位置で固定して積層動作を行うこともでき、重ね合せる枚数に応じて積層する厚さをきめ細かく設定することが可能となる。