JP6935282B2 - 酸素同位体置換方法及び酸素同位体置換装置 - Google Patents
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Description
一方、酸素には16O、17O及び18Oという3種類の安定同位体が存在し、自然界における存在の割合は、それぞれ99.76%、0.04%および0.20%である。
よって、一酸化炭素には、12C16O、12C17O、12C18O、13C16O、13C17O及び13C18Oという6種類の安定同位体分子が存在する。
また、酸素同位体を蒸留によって分離する場合には、例えば、スクランブラを有する蒸留装置が用いられている(例えば、特許文献3,4を参照)。
一方、水蒸気改質方法による反応では、多量の一酸化炭素COが含まれている場合が多いが、COは燃料電池に不具合を生じさせるおそれのある化合物であるため、一酸化炭素CO及び二酸化炭素CO2のメタン化反応(メタネーション)によるCOの除去方法について、従来から多数の提案がなされている(例えば、特許文献6を参照)。
即ち、大量の一酸化炭素COにおける効率的な酸素同位体置換を、製造ライン内で行うための方法や装置は、これまで提案されていなかった。
本発明によれば、上記のような平衡反応を行う反応工程を備えることで、一酸化炭素COの内部に任意の酸素同位体を任意の比率で効率的に導入できる。従って、所望の酸素同位体を有する高純度の一酸化炭素安定同位体を、工業生産的なスケールで、低コストで効率的に得ることが可能になる。
本発明によれば、上記のような平衡反応を行う反応器を備えた構成を採用することにより、上記同様、所望の酸素同位体を有する高純度の一酸化炭素安定同位体を、工業生産的なスケールで、低コストで効率的に得ることが可能になる。
本発明において酸素同位体の置換に用いることが可能な酸素同位体置換装置の一例について、図1,2を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施形態におけるガス流路を簡略化して示す概略図であり、図2は、装置構成及びガス流路をより詳細に説明する図である。
図2に示すように、反応器1の入口側には原料供給ラインL1が接続され、炭素同位体12C及び13Cを含む一酸化炭素COが供給されるように構成される。さらに、原料供給ラインL1の経路には、水供給ラインL2が接続され、反応器1に対して、原料供給ラインL1を介して、COとともに、酸素同位体16O、17O及び18Oを含むH2Oを供給できるように構成されている。
上記の第1吸着器31及び第2吸着器32としては、従来公知の吸着設備を何ら制限無く採用することができる。
なお、本発明で説明する「高純度」に生成された一酸化炭素安定同位体とは、一酸化炭素安定同位体の合計の濃度が99.9%以上であることをいう。
本実施形態の酸素同位体置換方法は、一酸化炭素に任意の酸素同位体を導入する方法である。以下、本実施形態の酸素同位体置換方法について、図2に示すような、本実施形態の酸素同位体置換装置10を使用して置換を行う場合を例に挙げて詳述する。
以下、各工程について説明する。
まず、反応工程において、炭素同位体12C及び13Cを含む一酸化炭素COと、酸素同位体16O、17O及び18Oを含むH2Oとを含有する混合ガスG1を反応器1内で反応させ、平衡反応を生じさせる。この際、原料供給ラインL1から、炭素同位体12C及び13Cを含む一酸化炭素COを供給するとともに、水供給ラインL2から、原料供給ラインL1を介して、酸素同位体16O、17O及び18Oを含むH2Oを供給する。ここで、H2Oに含まれる酸素同位体を一酸化炭素COに効果的に導入するためには、このH2Oを大量に供給することが好ましい。このように、大量に供給するH2O量の目安としては、例えば、一酸化炭素COの供給量に対する体積比で、10〜30倍程度の範囲とすればよく、特に、一酸化炭素COに酸素同位体17O又は18Oを導入する場合には、H2Oを可能な限り大量に供給することがより好ましい。
12C18O+H2 16O→12C16O+H2 18O ・・・・・(1)
正反応)12C18O+H2 16O→12C16O+H2 18O ・・・・・(2)
逆反応)12C18O+H2 16O←12C16O+H2 18O ・・・・・(3)
正反応)12C18O+13C16O→12C16O+13C18O ・・・・・(4)
逆反応)12C18O+13C16O←12C16O+13C18O ・・・・・(5)
本発明者等が鋭意実験検討を重ねた結果、上記のような平衡反応は、特に、反応器1の内部の温度、即ち、混合ガスG1の温度が上記の範囲の高温域である場合に生じ易くなることを初めて発見した。即ち、反応器1内の温度を上記の範囲とすることにより、一酸化炭素中に任意の酸素同位体を導入して置換するのが容易になり、所望の一酸化炭素安定同位体をさらに効率的に得ることが可能になる。
また、上記の観点から、反応器1内の温度は、700〜900℃がより好ましい。
即ち、本実施形態の酸素同位体置換方法における反応工程では、一酸化炭素安定同位体12C16O、12C17O、12C18O、13C16O、13C17O又は13C18Oのうちの何れかを選択的に生成させることが可能である。
次に、精製工程においては、上記の反応工程における平衡反応後の反応ガスG2、即ち、一酸化炭素安定同位体12C16O、12C17O、12C18O、13C16O、13C17O又は13C18Oのうちの何れかを含む反応ガスG2を脱水器2で脱水処理し、反応工程で発生した副生成物であるH2Oを一定程度まで除去する。
次いで、第2吸着器32を用いて、副生成物であるCO2を回収する。
次いで、第2蒸留塔42を用いて、第1蒸留塔41においてH2が回収された反応ガスG2を蒸留処理することで、さらに、未反応物であるCH4等の炭化水素を回収する。
ここで、本実施形態の精製工程においては、第1蒸留塔41及び第2蒸留塔で、反応器1で生成された一酸化炭素安定同位体を高純度に精製する。この際、例えば、精製工程の開始直後(第1蒸留塔41及び第2蒸留塔42の起動直後)においては、各一酸化炭素安定同位体の濃度は、各蒸留塔において、ほぼ一様である。その後、工程時間が経過するにつれて、比較的沸点の高い一酸化炭素安定同位体、特に13C16O、12C18O及び13C18Oが第1蒸留塔41及び第2蒸留塔42の塔底側に濃縮される。従って、第2蒸留塔42の塔底側から、高純度に精製された13C16O、12C18O又は13C18Oを取り出すことができる一方、第2蒸留塔42の塔頂側からは、比較的沸点の低い12C16O等を高純度で精製された状態で取り出すことができる。
次に、返送工程においては、精製工程において回収された、未反応物である炭化水素、及び、副生成物であるCO2を反応工程に返送して再反応に供する。
このように、本実施形態の酸素同位体置換方法においては、反応工程における未反応物(CH4等の炭化水素)及び副生成物(H2及びCO2)を、再び反応工程(反応器1)に戻すことで、原料に対する、所望の一酸化炭素安定同位体の収率が向上する。
以上、実施形態により本発明に係る酸素同位体置換方法及び酸素同位体置換装置の一例を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記の実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
例えば、本実施形態では、蒸留塔3を第1蒸留塔41及び第2蒸留塔42の2基が設けられた例を説明しているが、これには限定されず、任意の基数に設定することが可能である。
以上説明したように、本実施形態の酸素同位体置換方法によれば、少なくとも、CO及びH2Oを含む混合ガスを反応器内で平衡反応させ、COに任意の酸素同位体を導入して置換することで、12C16O、12C17O、12C18O、13C16O、13C17O又は13C18Oの何れかを選択的に生成させる反応工程を有した構成を採用している。このような平衡反応を行う反応工程を備えることで、一酸化炭素COの内部に任意の酸素同位体を任意の比率で効率的に導入できる。従って、所望の酸素同位体を有する高純度の一酸化炭素安定同位体を、工業生産的なスケールで、低コストで効率的に得ることが可能になる。
さらに、上記の返送工程を備えることで、原料を無駄にすることなく効率的な平衡反応を生じさせることができ、高純度の一酸化炭素安定同位体が安価に得られる。
本実施例においては、図2に示すような酸素同位体置換装置10を用いて、以下に示す条件及び手順で一酸化炭素同位体13C16Oの合成(反応)〜精製を行った。また、この際の、図2中に示す酸素同位体置換装置10中の各流路(A)〜(M)におけるガスの流量、濃度、濃度比について、下記表1に示した。
12C18O+H2 16O→12C16O+H2 18O ・・・・・(1)
正反応)12C18O+H2 16O→12C16O+H2 18O ・・・・・(2)
逆反応)12C18O+H2 16O←12C16O+H2 18O ・・・・・(3)
正反応)12C18O+13C16O→12C16O+13C18O ・・・・・(4)
逆反応)12C18O+13C16O←12C16O+13C18O ・・・・・(5)
次いで、脱水処理後の反応ガスG2を第1吸着器31に導入して、より十分な脱水処理を実施した後、第2吸着器32に導入して、CO2を除去した(図2及び下記表1中に示す(G)、(H)を参照)。
比較例においては、反応器1内の温度を150℃とし、内圧を1atmに調整し、反応器1内の原料ガスG1に平衡反応を生じさせなかった点を除き、上記実施例と同様の条件及び手順で一酸化炭素同位体COを得た。
2…脱水器
3…吸着器
31…第1吸着器
32…第2吸着器
4…蒸留塔
41…第1蒸留塔
42…第2蒸留塔
5…返送部
51…第1返送ライン
52…第2返送ライン
6…吸着器再生処理部
10…酸素同位体置換装置
G1…原料ガス
G2…反応ガス
L1…原料供給ライン
L2…水供給ライン
L3…接続ライン
L4…接続ライン
L5…排水ライン
L6…接続ライン
L7…接続ライン
L8…接続ライン
L9…最終ライン
Claims (10)
- 一酸化炭素に任意の酸素同位体を導入する酸素同位体置換方法であって、
少なくとも、炭素同位体12C及び13Cを含む一酸化炭素COと、酸素同位体16O、17O及び18Oを含むH2Oとを含有する混合ガスを反応器内で反応させ、平衡反応を生じさせることにより、前記一酸化炭素COに、前記酸素同位体16O、17O又は18Oのうちの任意の酸素同位体を導入して置換することで、一酸化炭素安定同位体12C16O、12C17O、12C18O、13C16O、13C17O又は13C18Oのうちの何れかを選択的に生成させる反応工程を含み、
前記反応工程は、前記H 2 Oを、前記一酸化炭素COの供給量に対する体積比で、10〜30倍の範囲で前記反応器内に供給し、
さらに、前記反応工程は、前記反応器内の温度を700〜900℃の範囲として前記平衡反応を生じさせることを特徴とする酸素同位体置換方法。 - さらに、前記反応工程における平衡反応後の反応ガスを脱水処理して、副生成物であるH2Oを除去した後、吸着器を用いて副生成物であるCO2を回収し、
次いで、蒸留塔を用いて、前記反応工程における未反応物である炭化水素、及び、副生成物であるH2を回収することにより、前記反応工程で生成された前記一酸化炭素安定同位体を高純度に精製する精製工程を有することを特徴とする請求項1に記載の酸素同位体置換方法。 - さらに、前記精製工程で回収された、前記未反応物である炭化水素、及び、前記副生成物であるCO2を前記反応工程に返送して再反応に供する返送工程を有することを特徴とする請求項2に記載の酸素同位体置換方法。
- さらに、前記精製工程は、前記蒸留塔で回収されたH2を前記吸着器に返送し、該吸着器の再生処理を行うことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の酸素同位体置換方法。
- 前記反応工程は、前記反応器内に予めH2が収容された状態で前記平衡反応を生じさせることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の酸素同位体置換方法。
- 一酸化炭素に任意の酸素同位体を導入する酸素同位体置換装置であって、
少なくとも、炭素同位体12C及び13Cを含む一酸化炭素COと、酸素同位体16O、17O及び18Oを含むH2Oとを含有する混合ガスを内部で反応させて平衡反応を生じさせることにより、前記一酸化炭素COに、前記酸素同位体16O、17O又は18Oのうちの任意の酸素同位体を導入して置換することで、一酸化炭素安定同位体12C16O、12C17O、12C18O、13C16O、13C17O又は13C18Oのうちの何れかを選択的に生成させる反応器を備え、
前記反応器は、前記H 2 Oが、前記一酸化炭素COの供給量に対する体積比で、10〜30倍の範囲で内部に供給され、
さらに、前記反応器は、該反応器内の温度を700〜900℃の範囲として前記平衡反応を生じさせることを特徴とする酸素同位体置換装置。 - さらに、前記反応器における平衡反応後の反応ガスを脱水処理し、副生成物であるH2Oを除去する脱水器と、
副生成物であるCO2を吸着して回収する吸着器と、
前記反応器における未反応物である炭化水素、及び、副生成物であるH2を回収することにより、前記反応器で生成された前記一酸化炭素安定同位体を高純度に精製する蒸留塔と、を備えることを特徴とする請求項6に記載の酸素同位体置換装置。 - さらに、前記吸着器で回収された前記副生成物であるCO2、及び、前記蒸留塔で回収された前記未反応物である炭化水素を、前記反応器に返送する返送部を備えることを特徴とする請求項7に記載の酸素同位体置換装置。
- さらに、前記蒸留塔で回収されたH2を前記吸着器に返送し、該吸着器の再生処理を行うための吸着器再生処理部を備えることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の酸素同位体置換装置。
- 前記反応器は、内部に予めH2が収容された状態で前記平衡反応を生じさせることを特徴とする請求項6〜請求項9の何れか一項に記載の酸素同位体置換装置。
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