本実施形態の駆動装置によれば、基礎となる第1ベース部と当該第1ベース部に支持される第2ベース部とが、弾性を有する第1弾性部によって接続されている。更に、第2ベース部と回転可能に支持される被駆動部(例えば、後述するミラー等)とが、弾性を有する第2弾性部によって接続されている。第2ベース部は、第1弾性部のねじり弾性(例えば、第2ベース部を他の方向(例えば、後述のX軸方向)に沿った軸を回転軸として回転させることができるという弾性)によって他の方向に沿った軸を回転軸として回転する。従って、第2ベース部と第2弾性部を介して接続されている被駆動部もまた、他の方向に沿った軸を回転軸として(第2ベース部と被駆動部が一体となって)回転する。
加えて、被駆動部は、第2弾性部のねじり弾性により、(例えば、被駆動部を一の方向(後述のY軸方向)に沿った軸を回転軸として回転させることができるという弾性)、他の方向とは異なる(好ましくは直交する)一の方向に沿った軸を回転軸として回転する。つまり、本実施形態の駆動装置は、一の方向に沿った軸を回転軸とした被駆動部の1軸駆動と、一の方向に沿った軸と他の方向に沿った軸の両方の軸を回転軸とした被駆動部の2軸駆動を行うことができる。
但し、本実施形態の駆動装置は、被駆動部の多軸駆動(例えば、3軸駆動、4軸駆動・・・)を行ってもよい。
第2ベース部の一部の箇所の剛性が第2ベース部の他の一部の箇所の剛性よりも高くなる駆動装置の態様では、Y軸の方向に沿った辺の剛性をX軸の方向に沿った辺の剛性よりも高くすることが好ましい。ただし、ここで言う曲げ剛性が高いとは、固有振動モードにおける固有振動数(共振周波数)が高いということを表している。
本実施形態の駆動装置では、コイル部に流れる電流に起因した力によって、被駆動部が回転する。言い換えれば、被駆動部が回転するための駆動力は、コイル部と磁界付与部との間の電磁相互作用に起因した電磁力である。
より具体的には、コイル部には、一の方向に沿った軸を回転軸として被駆動部を回転させるための制御電流が供給される。この制御電流は、例えば、一の方向に沿った軸を回転軸として被駆動部が回転する周波数と同一の周波数を有する交流電流であることが好ましい。つまり制御電流は、被駆動部及び第2弾性部及び第1弾性部、第2ベース部を含めた後述する定常波状の変形振動の周波数と同一の周波数を有する交流電流であることが好ましい。一方で、コイル部には、磁界付与部から磁界が付与される。このため、コイル部に供給される制御電流と磁界付与部が付与する磁界との電磁相互作用により、コイル部には、ローレンツ力が発生する。
このローレンツ力によってコイル部には振動が発生する。そしてこの振動は定常波状の変形振動を発生させる。言い換えれば、コイル部の発生する電磁力は第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動を発生させる。そしてこの定常波状の変形振動が被駆動部を共振回転させる。
ここで前記定常波状の変形振動(定常波状の第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動)について説明する。本実施形態の駆動装置ではコイル部が発生する周期的電磁加振力により、各部(第1弾性部、第2ベース部(被駆動部及び第2弾性部を含む))のバネ弾性及び質量により定常波状の共振が発生する。この共振において、第1弾性部a、第2ベース部(被駆動部及び第2弾性部を含む)及び第1弾性部bは他の方向に沿い、連なって、弦の2倍モードのような変形姿態を示す。
この時、前記定常波状の変形振動には他の方向に沿って腹及び節が現れる。つまり第1弾性部a及び第2ベース部との接続部には腹が現れ、第2ベース部(被駆動部及び第2弾性部を含む)には節(2つ)及び腹が現れ、第1弾性部bの第2ベース部との接続部には腹が現れるようなモードを有する共振が発生する。このような第2ベース部及び第1弾性部(被駆動部及び第2弾性部を含む)の連成された変形振動(以下、第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動と略す。)は、いわゆる定常波状の変形姿態を示し、その腹及び節の位置は実質的には固定されている。
そして、本実施形態の駆動装置では被駆動部の回転共振と前記第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動(連成振動)が同一の周波数で発生する。更に厳密に言えば、前記第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動によって前記被駆動部の共振周波数の遷移が行われる。よってこの時の前記被駆動部の共振周波数は、被駆動部及び第2弾性部より定まる共振周波数とは異なる周波数となる。
加えて、第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動により、被駆動部の共振周波数の遷移を行ったので、前記被駆動部の共振周波数は典型的には、前記被駆動部及び第2弾性部より定まる共振周波数より高い共振周波数となる。
加えて、共振の遷移すなわち共振の合成が適確に行われ、つまりは被駆動部の回転共振と、第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の共振の合成が適確に行われたので、前記被駆動はより大きな回転角で回転し、より高効率、低消費電力の駆動装置が提供できる。従って、本実施形態の駆動装置によれば、同一の電力を用いて加振が行われた場合には、第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動による被駆動部の共振周波数の遷移を行わない場合に比較して、被駆動部の回転量を増大させることができる。つまり、単位電力当たりの被駆動部の回転振幅を増大させることができる。
更に、前記第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動において第2ベース部上にある振動の節(被駆動部側)の位置を被駆動部の回転軸に対応する位置、つまりは第2弾性部の回転軸の位置に一致させることが好ましい。このようにすると被駆動部の不要振動(並進動)が抑制され、効率的に被駆動部を回転させることが出来る。ただしここで言う一致とは厳密な一致でなくともよい、その他設計条件との兼ね合いを考慮し適宜節の位置を調整すればよい。
上述の定常波状の変形振動を実現するために、第1弾性部a、第2ベース部(第2弾性部、被駆動部を含む)及び第1弾性部bの剛性、質量、長さ、幅等が調整される。具体的には第1弾性部の長さ、幅、形状、断面形状、剛性、第2ベース部の形状、質量、剛性、コイル部の形状等を調整することが好ましい。これらを調整することで節、腹の位置が適切となり、被駆動部の共振周波数の遷移が行われ、上述の定常波状の変形振動が好適に実現され、被駆動部の好適な回転が実現される。
本実施形態ではコイル部が単一の場合に、2軸以上の駆動を行うためには2以上の信号の重畳を行うとよい。つまり、一の方向に沿った軸周りを担う駆動信号と、他の方向に沿った軸周りを担うための、2つの駆動用信号を重畳する。よって、2つの信号を重畳した駆動信号がコイル部に供給されるとよい。
本実施例の他の形態1ではコイル部は、被駆動部から離間して配置され、第2ベース部上に配置される。言い換えれば、コイル部は被駆動部が配置される箇所から所定方向(他の方向、後述のX軸方向)にシフトした位置に配置される。より具体的には、コイル部は、被駆動部の中心が配置される箇所から所定方向にシフトした位置にコイル部の中心が配置されるように第1弾性部上に配置される。
このローレンツ力によって発生するコイル部の回転力はY軸方向に沿った軸を中心軸としてコイル部をねじる力となり、このねじり振動は定常波状の変形振動を発生させる。言い換えれば、コイル部の発生する電磁力は第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動を発生させる。そしてこの定常波状の変形振動が被駆動部を共振回転させる。
このとき、Y軸方向に沿ったコイル部の回転軸は、Y軸方向に沿った被駆動部の回転軸とは異なっている。具体的には、Y軸方向に沿ったコイル部141の回転軸は、Y軸方向に沿ったミラーの回転軸を基準として、X軸方向に所定距離シフトした位置に存在する。このため、Y軸方向に沿った軸を回転軸とするコイル部141の回転は、Y軸方向に沿った軸を回転軸として被駆動部を直接的に回転させることはない。
ここで前記定常波状の変形振動(定常波状の第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動)について説明する。本実施形態の駆動装置ではコイル部が発生する周期的電磁加振力により、各部(第1弾性部、第2ベース部(被駆動部及び第2弾性部を含む))のバネ弾性及び質量により定常波状の共振が発生する。この共振において、第1弾性部a、第2ベース部(被駆動部及び第2弾性部を含む)及び第1弾性部bは他の方向に沿い、連なって、弦の2倍モードのような変形姿態を示す。
更に、本実施形態の駆動装置では、コイル部が発生する電磁加振力(及びこれに起因したねじり振動)により前記第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動、つまりは第1弾性部a、第2ベース部(被駆動部及び第2弾性部を含む)及び第1弾性部bが連なって、他の方向に沿って定常波状に変形し変形振動する場合において、コイル部の回転中心は節に対応する位置にある。ただし、ここでの節の位置とは厳密な意味ではなく節に近い位置と解釈してよい。この時コイル部は回転中心を含む軸(第二弾性部の伸長方向に平行な軸=後述するY軸方向)を回転軸とした回転運動を行う。よって、コイル部が発生する電磁力による駆動力も回転中心を含む軸(第二弾性部の伸長方向に平行な軸=後述するY軸方向)を回転軸とした回転力が好ましい。
そして、コイル部(第2ベース上)の共振による振動形態と加振力の形態を一致させることで、共振を好適に増大させることができる。このようにコイル部に回転力(及び回転力に起因したねじり振動)を加えれば共振を好適に増大させることになり、第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動を増大させ、その結果被駆動部との共振(定常波状の変形振動)により、より小さな駆動力でより大きな被駆動部の回転振幅を得ることが可能になる。ただしここで言う上述のコイル部の振動形態と加振力の形態の一致とは厳密な一致でなくともよい、前記回転軸がずれ、例えば回転動と並進動が混在しても振幅の増大効果を得ることができる。よってその他設計条件との兼ね合いを考慮し適宜、振動形態と加振力の形態の合致調整を行えばよい。
本実施形態の他の態様3では圧電体の発生する変形力によって被駆動部が回転する。言い換えれば被駆動部が回転するための駆動力は圧電体の伸長、収縮による変位力である。
本実施形態の他の態様4では第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動において、第2ベース部はあまり変形しない。言い換えれば第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動において、主に変形するのは第1弾性部である。
図面を参照しながら、駆動装置の実施例について説明する。尚、第1実施例から第5実施例では、駆動装置をMEMSミラー駆動装置に適用した例について説明する。
(1)第1実施例
初めに、図1、図2を参照して、MEMSミラー駆動装置の第1実施例について説明する。
(1−1)基本構成
図1を参照して、第1実施例のMEMSミラー駆動装置100の基本構成について説明する。図1は、第1実施例のMEMSミラー駆動装置100の基本構成を概念的に示す平面図である。
図1に示すように、第1実施例のMEMSミラー駆動装置100は、第1ベース部110−1と、第1弾性部120a−1及び120b−1からなる第1弾性部120と、上辺110−2ou、縦辺110−2a、縦辺110−2b、下辺110−2odからなる第2ベース部110−2と、第2弾性部120a−2及び120b−2からなる第2弾性部120−2と、ミラー130と、コイル部141と、磁界付与部としての磁極142a〜hhを含む駆動源部140とを備えている。
第1ベース部110−1は、内部に空隙を備える枠形状を有している。つまり、第1ベース部110−1は、図1中のY軸方向に延伸する2つの辺と図1中のX軸方向に延伸する2つの辺とを有すると共に、Y軸方向に延伸する2つの辺とX軸方向に延伸する2つの辺とによって取り囲まれた空隙を有する枠形状を有している。図1に示す例では、第1ベース部110−1は、長方形の形状を有しているが、これに限定されることはなく、例えばその他の形状(例えば、正方形等の矩形の形状や円形の形状等)を有していてもよい。また、第1ベース部110−1は、第1実施例のMEMSミラー駆動装置100の基礎となる構造体であって、不図示の基板ないしは支持部材に対して固定されていることが好ましい。
尚、上述のように図1では、第1ベース部110−1が枠形状を有している例を示しているが、その他の形状を有していてもよいことは言うまでもない。例えば、第1ベース部110−1は、その一部の辺が開口となるコの字型形状を有していてもよい。或いは、例えば、第1ベース部110−1は、内部に空隙を備える箱型形状を有していてもよい。つまり、第1ベース部110−1は、X軸及びY軸によって規定される平面上に分布する2つの面と、X軸及び不図示のZ軸(つまり、X軸及びY軸の双方に直交する軸)によって規定される平面上に分布する2つの面と、Y軸及び不図示のZ軸によって規定される平面上に分布する2つの面とを有すると共に、これらの6つの面によって取り囲まれた空隙を有する箱形状を有していてもよい。或いは、ミラー130が配置される態様に応じて適宜第1ベース部110−1の形状を任意にかえてもよい。
第1弾性部120a−1は、例えばシリコン、銅合金、鉄系合金、その他金属、樹脂等を材料とするバネ等のような弾性を有する部材である。第1弾性部120a−1は、図1中X軸の方向に延伸するように配置される。言い換えれば、第1弾性部120a−1は、X軸の方向に延伸する長手を有すると共にY軸の方向に延伸する短手を有する形状を有している。但し、後述する共振周波数の設定状況に応じて、第1弾性部120a−1は、X軸の方向に延伸する短手を有すると共にY軸の方向に延伸する長手を有する形状を有していてもよく、その他任意の形状を有していてもよい。また、複数の弾性材で構成されていてもよい。第1弾性部120a−1の一方の端部は、第1ベース部110−1の内側の辺に接続される。第1弾性部120a−1の他方の端部は、X軸の方向に沿って第1ベース部110−1の内側の辺に対向する第2ベース部110−2の外側の辺の接続部110−2aに接続される。
第1弾性部120b−1は、例えばシリコン、銅合金、鉄系合金、その他金属、樹脂等を材料とするバネ等のような弾性を有する部材である。第1弾性部120b−1は、図1中X軸の方向に延伸するように配置される。言い換えれば、第1弾性部120b−1は、X軸の方向に延伸する長手を有すると共にY軸の方向に延伸する短手を有する形状を有している。但し、後述する共振周波数の設定状況に応じて、第1弾性部120b−1は、X軸の方向に延伸する短手を有すると共にY軸の方向に延伸する長手を有する形状を有していてもよく、その他任意の形状を有していてもよい。また、複数の弾性材で構成されていてもよい。第1弾性部120b−1の一方の端部は、X軸の方向に沿って第2ベース部110−2の枠部110−2hに接続される。第1弾性部120b−1の他方の端部は、X軸の方向に沿って第1ベース部110−1の内側の辺に接続される。
第2ベース部110−2は内部に空隙を備える枠形状を有している。すなわち、図1中のX軸に平行な上辺110−2ouと、縦辺110−2aと、X軸方向に平行な下辺110−2odと、縦辺110−2bとを有する。上記4つの辺は互いに接続される。第2ベース部110−2の接続部、縦辺110−2aには第1弾性部120a−1が接続され、縦辺110−2bの中心部には第1弾性部120b−1が接続される。
第2ベース部110−2は第1弾性部120−1の中心線を対称軸として上下に線対称の形状をしている。しかし、第2ベース部110−2はこれらに限定されることはなく、例えばその他の形状(例えば、正方形や、ひし形、六角形、八角形、多角形、円形、楕円の形状等)を有していてもよい。また、言うまでもなく対称形でなくともかまわない。
第2ベース部110−2を構成する辺(上辺110−2ou、縦辺110−2a、縦辺110−2b、下辺110−2od)は同一の厚みでもよいし、辺により厚みが異なっていてもよい、またリブ等で補強されてもよい。動作の項で詳細に説明する第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動を好適に実現するために、上記辺の剛性を異ならせてもよい。具体的にはY軸の方向に沿った辺の剛性をX軸の方向に沿った辺の剛性よりも高くすることが好ましい、ここで言う剛性とは、単なる硬さ(ヤング率)ではなく、共振周波数を意味するもので、言い換えればY軸の方向に沿った第2ベース部110−2の変形振動の共振周波数はX軸の方向に沿った第2ベース部110−2の変形振動の共振周波数よりも高いことを意味するものと解釈するのがよい。
第2ベース部110−2は、第1ベース部110−1の内部の空隙に、第1弾性部120a−1及び120b−1によって吊り下げられる又は支持されるように配置される。第2ベース部110−2は、第1弾性部120a−1及び120b−1の弾性によって、X軸に沿った方向を回転軸として回転するように構成されている。言いかえればX軸に平行な軸の回りに回転するように構成されている。
第2弾性部120a−2は、例えばシリコン、銅合金、鉄系合金、その他金属、樹脂等を材料とするバネ等のような弾性を有する部材である。第2弾性部120a−2は、図1中Y軸の方向に延伸するように配置される。言い換えれば、第2弾性部120a−2は、Y軸の方向に延伸する長手を有すると共にX軸の方向に延伸する短手を有する形状を有している。但し、後述する共振周波数の設定状況に応じて、第2弾性部120a−2は、Y軸の方向に延伸する短手を有すると共にX軸の方向に延伸する長手を有する形状を有していてもよい。第2弾性部120a−2の一方の端部は、第2ベース部110−2の上辺110−2ouに接の内側に続される。第2弾性部120a−2の他方の端部は、Y軸の方向に沿って第2ベース部110−2の内側の辺に対向するミラー130の一方の端部に接続される。
第2弾性部120b−2は、例えばシリコン、銅合金、鉄系合金、その他金属、樹脂等を材料とするバネ等のような弾性を有する部材である。第2弾性部120b−2は、図1中Y軸の方向に延伸するように配置される。言い換えれば、第2弾性部120b−2は、Y軸の方向に延伸する長手を有すると共にX軸の方向に延伸する短手を有する形状を有している。但し、後述する共振周波数の設定状況に応じて、第2弾性部120b−2は、Y軸の方向に延伸する短手を有すると共にX軸の方向に延伸する長手を有する形状を有していてもよい。第2弾性部120b−2の一方の端部は、Y軸の方向に沿って第2ベース部110−2の下辺110−2odの内側に接続される。第2弾性部120b−2の他方の端部は、Y軸の方向に沿って第2ベース部110−2の内側の辺に対向するミラー130の(120a−2が接続されていない側の)端部に接続される。
ミラー130は、第2ベース部110−2の内部の空隙に、第2弾性部120a−2及び120b−2によって吊り下げられる又は支持されるように配置される。ミラー130は、第2弾性部120a−2及び120b−2の弾性によって、Y軸方向に沿った軸を回転軸として回転するように構成されている。言いかえればY軸に平行な軸の回りに回転するように構成されている。
ミラー130はベースとなる基材、例えばシリコン、銅合金、鉄系合金、その他金属、樹脂等に、メッキ、金属蒸着等で形成してもよいし、金属ミラー、ガラスミラー等を貼り付けてもよい。
駆動源部140は、ミラー130をY軸の方向に沿った軸を中心軸として回転させるために必要な振動をコイル部141に発生させる。すなわち、後述するように、第1弾性部120а−1、第2ベース部110−2(ミラー130、第2弾性部120а−2、120b−2を含む)、第1弾性部120b−1が連なって定常波状に共振(後述の定常波状の変形振動)するための加振力を加えることができる。また第2ベース部110−2に対して力を加えることが出来るように構成されてもよい。具体的には第2ベース部110−2にX軸に沿った軸周りのねじり力を加えることにより、第2ベース部110−2及びこれに接続されるミラー130を回転させる力を加えてもよい。
より具体的には、駆動源部140は、電磁力に起因した力を加える駆動源部であって、コイル部141と、第1ベース部110−1に固定される磁界付与部を形成する磁極142a、142b、142c、142d、142e、142f、142g及び142hとを備える。この場合、コイル部141には、不図示の駆動源部制御回路から所望のタイミングで、所望の電流が印加され、コイル部141と磁極142a〜142hとの間に電磁相互作用が生ずる。その結果、電磁相互作用による電磁力が発生する。この電磁力は振動またはねじり力として、コイル部141及び第1弾性部120(120a−1、120b−1)、第2ベース部110−2及びミラー130に伝えられ、ミラー130を回転させる。
コイル部141は、例えば相対的に導電率の高い材料(例えば、金や銅、アルミ等)から構成される巻き線を備える。第2ベース部110−2の枠部110−2h上にメッキ或いは蒸着等で形成してもよいし、エッチング等で形成してもよい。第1実施例では、コイル部141は、長方形の形状を有している。但し、コイル部141は、任意の形状(例えば、正方形やひし形や平行四辺形や円形や楕円形や多角形やその他の任意のループ形状)を有していてもよい。
コイル部141は、第2ベース部110−2上に配置される。つまり、コイル部141は、ミラー130の周囲に配置される。
磁界付与部は永久磁石及び磁界を誘導するヨーク(鉄等の磁性材料)等で構成され、磁極142a〜磁極142hより磁界をコイル部141に与える。磁極142a〜磁極142fはコイル部141の周囲に配置される。磁極142g磁極142hはコイル部141の内側の空隙に配置される。
磁極142a及び142bはY軸方向に沿ってコイル部141を挟み込むように配置される。磁極142aが磁界の出射側(N極)になり磁極142bが磁界の入射側(S極)になる例を用いて説明を行うが、言うまでもなく、出射側(N極)と入射側(S極)が入れ替わってもかまわない。ここで磁極142g及び磁極142hは中間ヨークとなっており磁束の中継を行う役目を担っている。同様にX軸の方向に沿ってコイル部141を挟み込むように磁極142c、142d、142e及び142fが配置される。磁極142c及び142dが磁界の出射側(N極)になり磁極142e、142fが磁界の入射側(S極)になる例を用いて説明を行うが、言うまでもなく、出射側(N極)と入射側(S極)が入れ替わってもかまわない。また、磁極の数は上記数値に限定することなく適宜設定してかまわない。また、永久磁石の代わりに電磁石を用いてもかまわない。また、中間ヨークは無くてもかまわない。
続いて図2を参照して駆動源部140を含めた構成について説明する。
図2は第1弾性部120а−1、第2ベース部110−2(ミラー130、第2弾性部120а−2、120b−2、コイル部141を含む)、第1弾性部120b−1、及び磁極142c〜142eを側面から見た図である。
図2に示すように第1弾性部120а−1、第2ベース部110−2(ミラー130、第2弾性部120а−2、120b−2、コイル部141を含む、)、第1弾性部120b−1が連なり、定常波状に(共振)振動する。この時の振動姿態は、ミラー130の中心に対応する位置、つまりは第2ベース部110−2の中心付近の第2弾性部110−2との接続部に節が現れ、第1弾性部120a−1と第2ベース部との接続部には腹が現れ、第1弾性部120b−1と第2ベース部との接続部に腹が現れる。このような練成した、定常波状の振動姿態が現れるように、各部の剛性、質量等が調整される。この共振については動作の態様の項で第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動として詳細に説明するため、ここではその概要の説明にとどめる。
(1−2)MEMSミラー駆動装置の動作
続いて、図1〜図4を参照して、第1実施例のMEMSミラー駆動装置100の動作の態様(具体的には、ミラー130を回転させる動作の態様)について説明する。
初めに、図1を参照してミラー130のX軸の方向に沿った軸を中心軸とした回転について説明する。第1実施例のMEMSミラー駆動装置100の動作時には、コイル部141には、不図示の駆動源部制御回路から所望のタイミングで、所望の電流が印加され、コイル部141と磁極142a及び142bとの間に電磁相互作用が生ずる。その結果、電磁相互作用による電磁力が発生する。この電磁力はコイル部141をX軸方向に沿った軸を中心軸としてねじる力となり、第2ベース部110−2をX軸方向に沿った軸を中心軸として回転させる。よって第2ベース部に接続されるミラー130もX軸方向に沿った軸を中心軸として回転させられる。
ここで、コイル部141と磁極142aとの間の電磁相互作用による電磁力の方向は、図1中奥側(紙面奥側)から手前側(紙面手前側)方向である。コイル部141と磁極142bとの間の電磁相互作用による電磁力の方向は、図1中手前側から奥側方向である。その結果、この電磁力は、第1弾性部120a−1及び120b−1の伸長方向(X軸に沿った方向)を回転軸方向として、コイル部141を回転させる。その結果、コイル部141が装着された第2ベース部110−2が、X軸の方向に沿った軸を中心軸として回転し、第2ベース部110−2に支持されているミラー130も上記X軸の方向に沿った軸を中心軸として回転する。
尚、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)は後述するミラー共振周波数よりも低い若しくは高い周波数での回転動作を繰り返してもよい。例えば、第1実施例のMEMSミラー駆動装置100をディスプレイ(或いは、ヘッドマウントディスプレイ)に適用する場合には、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)は、例えばディスプレイの走査周期又はフレームレートに応じた周波数(例えば、60Hz)での回転動作を繰り返してもよい。
或いは、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)は、第2ベース部110−2及びミラー130等の被懸架部並びに第1弾性部120より定まる共振周波数での回転動作を繰り返してもよい。具体的には、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)は、第2ベース部110−2及びコイル部141等の被懸架部並びに第1弾性部120a−1及び120b−1に応じて定まる共振周波数で共振するように回転してもよい。例えば、第2ベース部110−2(ミラー130等を含む)のX軸に沿った軸回りの慣性モーメント(より具体的には、第2ベース部110−2内に備えられる第2弾性部120a−2及び120b−2並びにミラー130の夫々の質量をも加味した第2ベース部110−2という系全体からなる被懸架設部のX軸に沿った軸回りの慣性モーメント)がI1であり且つ第1弾性部120a−1及び120b−1を1本のバネとみなした場合のねじりバネ定数がk1であるとすれば、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)は、(1/(2π))×√(k1/I1)にて特定される共振周波数、若しくは共振周波数近傍(或いは、(1/(2π))×√(k1/I1)のN倍(但し、Nは1以上の整数)の共振周波数)で共振するように、X軸の方向に沿った軸を中心軸として回転してもよい。
続いて、図1、図2を参照して、ミラー130のY軸の方向に沿った軸を中心軸とした回転について説明する。第1実施例のMEMSミラー駆動装置100の動作時には、コイル部141には、不図示の駆動源部制御回路から所望のタイミングで、所望の制御電流が印加される。
制御電流は、Y軸方向に沿った軸を回転軸としてミラー130を回転させるための電流成分を含んでいる。第1実施例では、ミラー130は、ミラー130及び第2弾性部120a−2及び120b−2より定まる共振周波数を、後述する第2ベース部110−2及び第1弾性部120−1の定常波状の変形振動を用いて、遷移させた周波数で共振するように、Y軸方向に沿った軸を回転軸として回転する。言い換えればミラー130及び第2弾性部120a−2及び120b−2より定まる共振周波数とは異なる周波数で共振回転する。
尚、本実施形態ではコイル部が単一の場合に、2軸以上の駆動を行うためには2以上の信号の重畳をするとよい。つまり、X軸方向に沿った軸周りの回転を担う電流成分とY軸方向に沿った軸周りの回転を担う電流成分の2つの信号を重畳した信号を駆動コイル141に印可するとよい。
ここで、図1に示すように、反時計周りの方向に流れる制御電流がコイル部141に供給されており、磁極142c、142dから磁極142e、142fに向かう磁界がコイル部141に付与されている。コイル部141への電流の印加によって、コイル部141と磁極142c、磁極142d、磁極142e及び磁極142fとの間に電磁相互作用が生ずる。
コイル部141と磁極142c、142dとの間の電磁相互作用による電磁力の方向は、図1中奥側(紙面手前側)から手間側(紙面奥側)方向である。コイル部141と磁極142d、磁極142eとの間の電磁相互作用による電磁力の方向は図1中手前側から奥側方向である。
言い換えれば、図2に示すように、コイル部141aと磁極142c、磁極142dとの電磁相互作用による電磁力の方向は、図2中、下側から上側方向である。コイル部141bと磁極142e、磁極142fとの電磁相互作用による電磁力の方向は、図2中、上側から下側方向である。つまり、X軸方向に沿って対向するコイル部141の2つの長辺には、相互に異なる方向の電磁力が発生する。言い換えれば、X軸方向に沿って対向するコイル部141の2つの長辺141a、141bには、偶力となる電磁力が発生する。従って、コイル部141は、図2における時計周りの方向に回転する。
一方で、制御電流が交流電流であるため、半周期後には時計周りの方向に流れる制御電流がコイル部141に供給される。従って、コイル部141は、図2における時計周りの方向に向かって回転する。その結果コイル部141はY軸方向に沿った軸を回転軸として反復回転する。
上述のようなコイル141の反復回転は、Y軸方向に沿った軸を中心軸としたコイル部141のねじり振動として、第2ベース部110−2及び第1弾性部120−1に伝達され、第2ベース部及び第1弾性部の定常波状の変形振動を発生させる。
続いて前記第2ベース部及び第1弾性部の定常波状の変形振動について図2を用いて説明する。コイル部141の発生する加振力により、第1弾性部120a−1、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)及び第1弾性部120b−1は連なって、他の方向に沿って定常波状に変形振動し、共振となる。言い換えれば、第1弾性部120a−1、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)及び第1弾性部120b−1は連なって、X軸方向に沿って弦の2倍モードのような変形姿態で振動する。つまり、第1弾性部120a−1、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)及び第1弾性部120b−1はそのある一部分が定常波状の変形振動の腹となり且つその他の一部分が定常波状の変形振動の節となるような変形姿態を示す。
上述の定常波状の変形振動において、コイル部141の中心には節が現れる。第2ベース部110−2の上辺110−2ou及び下辺110−2odの第2弾性部の接続部、言い換えれば、ミラー130の回転中心の位置には節が現れる。第2ベース部110−2の中心には節が現れ、第1弾性部120a−1の右端と第2ベース部110−2aとの接続部には腹が現れ、第1弾性部120b−1の左端と第2ベース部110−2bとの接続部には腹が現れる。つまりコイル部141の中心は定常波状の波における節の位置にある。
ここでY軸方向に沿った軸を回転軸としてミラー130を回転共振させるための力は直接的にミラー130を回転させる態様ではなく、駆動源部としてのコイル部141に定常波状の変形振動のエネルギー源として加振力を加えることにより、ミラー130を共振駆動する。
一方で上述のように、ミラー130の回転中心は節の位置にある。このため図2に示すように動きの形態には上下(Z軸に沿った方向)の動きは小さく、Y軸の方向に沿った軸を中心とした回転動が発生し好適に回転を享受できる。尚、上述の変形振動は、いわゆる定常波状の変形姿態を示し、その腹及び節の位置は実質的には固定されている。
ただし上述のミラー130またはコイル部141が節の位置にあるとは、厳密に位置しているという意味ではなく、ミラー130またはコイル部141が節に近い位置にあると解釈してよい。節に近いほど効率良く回転すると捉えるのがよい。
このような、第1弾性部120a−1、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)及び第1弾性部120b−1の定常波状の変形振動に起因して、ミラー130は回転させられる。
そして、ミラー130の回転共振と前記第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動は同じ周波数で発生するが、その周波数はミラー130と第2弾性部より定まる共振周波数とは異なる。すなわち、ミラー130の共振周波数は前記第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動により遷移させられる。その結果ミラー130はミラー130と第2弾性部より定まる共振周波数とは異なる周波数で共振回転する。この時のミラー130の共振周波数は典型的にはミラー130と第2弾性部より定まる共振周波数より高い周波数である。更にこの時ミラー130の回転角は定常波状の変形振動により周波数が遷移させられていない場合と比較して大きくなる。
上述の定常波状の変形振動を実現するために、第1弾性部120a−1、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)、及び第1弾性部120b−1の剛性、質量、長さ等が調整される。具体的には第1弾性部の長さ、断面形状、剛性、第2ベース部110−2の形状、質量、剛性、コイル部141の形状、質量、剛性等を調整してもよい。これらを調整することで節、腹の位置及び共振周波数が適切となり、上述の定常波状の変形振動が好適に実現され、ミラー130の好適な回転が実現される。
ここで更に詳細に定常波状の変形振動における共振周波数の調整方法について図3、図4を用いて説明を行う。近年では計算技術が発達し、試作を行わなくてもパソコン等で簡便にシミュレーションが行え、また試作とシミュレーションの値も高い精度で一致するようになった。ここではパソコンでのシミュレーションによる例として定常波状の変形振動における共振周波数の調整方法、剛性の調整方法について説明する。目標とするミラー130の共振周波数を約25kHzとする。
(調整1)
まず、ミラー130及び第2弾性部120−2より定まるミラー130の共振周波数を計算する。ミラー130、第2弾性部(120a−2、120b−2)、第2ベース部110−2、コイル部141を装備し、厚み、直径、長さ、幅等を適切に調整する。そして第2ベース部110−2の境界条件として完全固定を入力する。この状態でシミュレーションソフトにて固有値解析(共振周波数解析)を行えば、ミラー130と第2弾性部120−2により定まるミラー130の共振周波数が計算される。この時ミラー130のY軸方向に沿った回転方向の共振周波数が25kHとなるように各部の寸法を(繰り返し計算により)決定する。
(調整2)
次に第1弾性部120a−1及び120b−1、及び第1ベース部110−1を追加装備し、厚み、長さ、幅等を適切に調整する。この状態で今度は第1ベース部−1の境界条件として完全固定を入力すると、第1弾性部120a−1、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)、及び第1弾性部120b−1の(回転運動と並進運動の連成された)定常波状の共振の共振周波数及び共振モードが計算される。この時のN次の共振モードが図3のような弦の2倍モードのような変形姿態となるよう各部の寸法(厚み、長さ、幅、大きさ)を調整する。またミラー130の回転軸に対応する位置(ミラーの回転中心)及びコイル部141の回転中心の位置に節が現れるように各部の微調整を行うことが好ましい。
そして上述の振動姿態での共振周波数が25.000kHzと計算されれば、この状態は定常波状の変形振動の周波数が、ミラー130の共振周波数(ミラー130(被駆動部)及び第2弾性部120で定まる)に合致調整された状態である。
(調整3)
しかしながら前述の状態(25.000kHz)が本実施例での最良の状態ではない。次に例えば第2ベース部110−2の上辺110−2ou及び下辺110−2odの厚みを少々増やした場合を想定する。バネ剛性は厚みの3乗に比例して高くなり質量は厚みの1乗に比例するため(言いかえれば剛性は高くなるが質量はあまり大きくならない)、第2ベース部110を含んだ系の共振周波数は上がり、定常波状の変形振動の共振周波数は上昇する。
そしてシミュレーションによる計算結果は25.25KHz(定常波状の変形振動の周波数=被駆動部の周波数)に変化したとする。この時の振動姿態の概念を図4に示す。定常波状の変形振動の振幅は減少し、ミラーの回転角は大きくなる。そしてこの時ミラー130はミラー130及び第2弾性部120−2より定まる周波数(25.000kHz)とは異なる周波数で共振することが分かる。
(定常波状の変形振動によりミラーの共振周波数が遷移させられた状態)
また逆に第2ベース部110−2の上辺110−2ou及び下辺110−2odの厚みを薄くして同様のシミュレーションをした場合には先ほどとは逆に定常波状の変形振動の共振周波数は下がり24.75KHとなり、定常波状の変形振動の振幅は大きくなり、ミラー130の触れ角は小さくなる。
このように本実施例においては、ミラー130はミラー130及び第2弾性部120−2より定まる共振周波数とは異なる共振周波数で共振する。言い換えれば定常波状の変形振動によりミラー130の共振周波数が遷移される。
また様々な態様の計算によれば、典型的には、ミラー130の共振周波数が定常波状の変形振動により、高い周波数に遷移させられる場合にミラーの回転角が大きくなる。
尚コイル部141の回転方向とミラー130の回転方向が互いに同じ向きとなる(同相と呼ぶ)場合には、上述の遷移周波数(偏差)は大きくなる傾向があり、その偏差は1%から10%程度となる例がある。また図4に示すように、第2ベース部110−2とミラー130の動きが逆向きとなる場合(逆相と呼ぶ)には、上述の偏差は小さく、その偏差は0.03%から2%程度となる例がある。
或いは、1例ではあるが、定常波状の変形振動の振動モードをより低次のモード、つまりは弦の2倍モードに近い振動モードにした場合、上述の遷移周波数(偏差)は大きくなる傾向があり30%にもなる例が確認されている。
また、上述の典型例とは逆に前記ミラー130の共振周波数が定常波状の変形振動により低く遷移させられることが好適な例もあり、よって前記ミラー130の共振周波数を前記ミラー130及び第2弾性部120−2より定まる周波数よりも低く設定してもよいことを付け加えておく。
ここでミラー130の共振周波数に関し、前記の異なる共振周波数(周波数偏差)について触れておく。MEMS等のシリコン及び金属バネ等で構成される構造物は材料としての減衰が小さく、周波数特性図における共振峰は鋭く急峻な形状をしている。この共振峰の鋭さを表す数値として代表的なものにQ値がある。前記MEMS及び金属では、Q値が大きく、典型的には1500程度である。ここで、Q値を用いて共振周波数の偏差について説明する。
Q値の定義は、ωを共振ピークでの共振周波数、ω1をωより低い周波数側において振動エネルギーが共振ピークの半値となる周波数、ω2をωより高い周波数側において振動エネルギーが共振ピークの半値となる周波数とすれば、Q値は、Q=ω/(ω2−ω1)で表わされる。ここに前記のω=25000Hz、Q=1500を代入して変形すれば、ω2−ω1=25000/1500=16.67Hzとなる。また共振峰の対称性より、共振ピーク周波数ωとω1(ω2)との差は16.67/2=8.34Hzとなる。つまり駆動装置の周波数特性において、加振共振周波数が共振ピーク周波数ωから8.34Hz離れると、その系の共振エネルギーは半分(回転角は√(0.5))に低下するということになる。8.34Hzは25kHzの0.0334%≒0.03%となる。よって0.03%の共振周波数(ピーク周波数)の偏差によりその共振エネルギーは半分になる。従って共振周波数の0.03%の差は十分な差であると考えてよいことになる。上述の例は共振エネルギーが半分になる場合についての考察例であり、この計算に限らず任意に、前記異なる共振周波数を定めてもよい。
以上説明したように、第1実施例のMEMSミラー駆動装置100はX軸方向に沿った軸を回転軸としてミラー130を回転させることが出来ると同時にY軸方向に沿った軸を回転軸としてミラー130を共振回転させることが出来る。つまり第1実施例のMEMSミラー駆動装置100は2軸駆動を行うことが出来る。
ここでY軸方向に沿った軸を回転軸としてミラー130を回転共振させるための力は直接的にミラー130を回転させる態様ではなく、コイル部141に定常波状の変形振動のエネルギー源として加振力を加えることにより、ミラー130を共振駆動する。
特にミラー130の共振周波数は、ミラー130及び第2弾性部120−2より定まる共振周波数とは異なる。第2ベース部110−2及び第1弾性部120−1との定常波状の変形振動によりミラー130の共振周波数を遷移(典型的には高い周波数)させ、かつ適確に共振の合成を行うことで、被駆動をより大きな回転角で回転させ、より高効率、低消費電力の駆動装置を提供することが可能となる。
(2)第2実施例
初めに、図5、図6を参照して、MEMSミラー駆動装置の第2実施例について説明する。
(2−1)基本構成
図5を参照して、第2実施例のMEMSミラー駆動装置101の基本構成について説明する。図5は、第2実施例のMEMSミラー駆動装置101の基本構成を概念的に示す平面図である。
図5に示すように、第2実施例のMEMSミラー駆動装置101は、第1ベース部110−1と、第1弾性部120a−1及び120b−1からなる第1弾性部120と、上辺110−2ou、縦辺110−2a、下辺110−2od、枠部110−2hからなる第2ベース部110−2と、第2弾性部120a−2及び120b−2からなる第2弾性部120−2と、ミラー130と、コイル部141と、磁界付与部としての磁極142a〜eを含む駆動源部140とを備えている。
第1ベース部110−1は、内部に空隙を備える枠形状を有している。つまり、第1ベース部110−1は、図5中のY軸方向に延伸する2つの辺と図5中のX軸方向に延伸する2つの辺とを有すると共に、Y軸方向に延伸する2つの辺とX軸方向に延伸する2つの辺とによって取り囲まれた空隙を有する枠形状を有している。図5に示す例では、第1ベース部110−1は、長方形の形状を有しているが、これに限定されることはなく、例えばその他の形状(例えば、正方形等の矩形の形状や円形の形状等)を有していてもよい。また、第1ベース部110−1は、第2実施例のMEMSミラー駆動装置101の基礎となる構造体であって、不図示の基板ないしは支持部材に対して固定されていることが好ましい。
尚、上述のように図5では、第1ベース部110−1が枠形状を有している例を示しているが、その他の形状を有していてもよいことは言うまでもない。例えば、第1ベース部110−1は、その一部の辺が開口となるコの字型形状を有していてもよい。或いは、例えば、第1ベース部110−1は、内部に空隙を備える箱型形状を有していてもよい。つまり、第1ベース部110−1は、X軸及びY軸によって規定される平面上に分布する2つの面と、X軸及び不図示のZ軸(つまり、X軸及びY軸の双方に直交する軸)によって規定される平面上に分布する2つの面と、Y軸及び不図示のZ軸によって規定される平面上に分布する2つの面とを有すると共に、これらの6つの面によって取り囲まれた空隙を有する箱形状を有していてもよい。或いは、ミラー130が配置される態様に応じて適宜第1ベース部110−1の形状を任意にかえてもよい。
第1弾性部120a−1は、例えばシリコン、銅合金、鉄系合金、その他金属、樹脂等を材料とするバネ等のような弾性を有する部材である。第1弾性部120a−1は、図5中X軸の方向に延伸するように配置される。言い換えれば、第1弾性部120a−1は、X軸の方向に延伸する長手を有すると共にY軸の方向に延伸する短手を有する形状を有している。但し、後述する共振周波数の設定状況に応じて、第1弾性部120a−1は、X軸の方向に延伸する短手を有すると共にY軸の方向に延伸する長手を有する形状を有していてもよく、その他任意の形状を有していてもよい。第1弾性部120a−1の一方の端部は、第1ベース部110−1の内側の辺に接続される。第1弾性部120a−1の他方の端部は、X軸の方向に沿って第1ベース部110−1の内側の辺に対向する第2ベース部110−2の外側の辺の接続部110−2aに接続される。
第1弾性部120b−1は、例えばシリコン、銅合金、鉄系合金、その他金属、樹脂等を材料とするバネ等のような弾性を有する部材である。第1弾性部120b−1は、図5中X軸の方向に延伸するように配置される。言い換えれば、第1弾性部120b−1は、X軸の方向に延伸する長手を有すると共にY軸の方向に延伸する短手を有する形状を有している。但し、後述する共振周波数の設定状況に応じて、第1弾性部120b−1は、X軸の方向に延伸する短手を有すると共にY軸の方向に延伸する長手を有する形状を有していてもよく、その他任意の形状を有していてもよい。第1弾性部120b−1の一方の端部は、X軸の方向に沿って第2ベース部110−2の枠部110−2hに接続される。第1弾性部120b−1の他方の端部は、X軸の方向に沿って第1ベース部110−1の内側の辺に接続される。
第2ベース部110−2は内部に空隙を備える枠形状を有している。すなわち、図5中のX軸に平行な上辺110−2ouと、縦辺110−2aと、X軸方向に平行な下辺110−2odと、コイルを装着する長方形の枠部110−2hとを有する。上記3つの辺は互いに接続され、枠部110−2hの左上端から始まり、上辺110−2ou、縦辺110−2a、下辺110−2odの順につながり、枠部110−2hの左下端に帰結する。第2ベース部110−2の接続部110−2aには第1弾性部120a−1が接続され、枠部110−2hの右側の辺の中心部には第1弾性部120b−1が接続される。
第2ベース部110−2は第1弾性部120−1の中心線を対称軸として上下に線対称の形状をしている。しかし、第2ベース部110−2はこれらに限定されることはなく、例えばその他の形状(例えば、正方形や、ひし形、六角形、八角形、多角形、円形、楕円の形状等)を有していてもよい。また、言うまでもなく対称形でなくともかまわない。
第2ベース部110−2を構成する辺(上辺110−2ou、縦辺110−2a、下辺110−2od、枠部110−2h)は同一の厚みでもよいし、辺により厚みが異なっていてもよい、またリブ等で補強されてもよい。動作の項で詳細に説明する第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動を好適に実現するために、上記辺の剛性を異ならせてもよい。具体的にはY軸の方向に沿った辺の剛性をX軸の方向に沿った辺の剛性よりも高くすることが好ましい、ここで言う剛性とは、単なる硬さ(ヤング率)ではなく、共振周波数を意味するもので、言い換えればY軸の方向に沿った第2ベース部110−2の変形振動の共振周波数はX軸の方向に沿った第2ベース部110−2の変形振動の共振周波数よりも高いことを意味するものと解釈するのがよい。
第2ベース部110−2は、第1ベース部110−1の内部の空隙に、第1弾性部120a−1及び120b−1によって吊り下げられる又は支持されるように配置される。第2ベース部110−2は、第1弾性部120a−1及び120b−1の弾性によって、X軸に沿った方向を回転軸として回転するように構成されている。言いかえればX軸に平行な軸の回りに回転するように構成されている。
第2弾性部120a−2は、例えばシリコン、銅合金、鉄系合金、その他金属、樹脂等を材料とするバネ等のような弾性を有する部材である。第2弾性部120a−2は、図5中Y軸の方向に延伸するように配置される。言い換えれば、第2弾性部120a−2は、Y軸の方向に延伸する長手を有すると共にX軸の方向に延伸する短手を有する形状を有している。但し、後述する共振周波数の設定状況に応じて、第2弾性部120a−2は、Y軸の方向に延伸する短手を有すると共にX軸の方向に延伸する長手を有する形状を有していてもよい。第2弾性部120a−2の一方の端部は、第2ベース部110−2の上辺110−2ouに接の内側に続される。第2弾性部120a−2の他方の端部は、Y軸の方向に沿って第2ベース部110−2の内側の辺に対向するミラー130の一方の端部に接続される。
第2弾性部120b−2は、例えばシリコン、銅合金、鉄系合金、その他金属、樹脂等を材料とするバネ等のような弾性を有する部材である。第2弾性部120b−2は、図5中Y軸の方向に延伸するように配置される。言い換えれば、第2弾性部120b−2は、Y軸の方向に延伸する長手を有すると共にX軸の方向に延伸する短手を有する形状を有している。但し、後述する共振周波数の設定状況に応じて、第2弾性部120b−2は、Y軸の方向に延伸する短手を有すると共にX軸の方向に延伸する長手を有する形状を有していてもよい。第2弾性部120b−2の一方の端部は、Y軸の方向に沿って第2ベース部110−2の下辺110−2odの内側に接続される。第2弾性部120b−2の他方の端部は、Y軸の方向に沿って第2ベース部110−2の内側の辺に対向するミラー130の(120a−2が接続されていない側の)端部に接続される。
ミラー130は、第2ベース部110−2の内部の空隙に、第2弾性部120a−2及び120b−2によって吊り下げられる又は支持されるように配置される。ミラー130は、第2弾性部120a−2及び120b−2の弾性によって、Y軸方向に沿った軸を回転軸として回転するように構成されている。言いかえればY軸に平行な軸の回りに回転するように構成されている。
駆動源部140は、ミラー130をY軸の方向に沿った軸を中心軸として回転させるために必要なねじり力をコイル部141に発生させる。すなわち、後述するように、第1弾性部120а−1、第2ベース部110−2(ミラー130、第2弾性部120а−2、120b−2を含む)、第1弾性部120b−1が連なって定常波状に共振(後述の定常波状の変形振動)するための加振力を加えることができる。また第2ベース部110−2に対して力を加えることが出来るように構成されてもよい。具体的には第2ベース部110−2にX軸に沿った軸周りのねじり力を加えることにより、第2ベース部110−2及びこれに接続されるミラー130を回転させる力を加えてもよい。
より具体的には、駆動源部140は、電磁力に起因した力を加える駆動源部であって、コイル部141と、第1ベース部110−1に固定される磁界付与部を形成する磁極142a、142b、142c、142d及び142eとを備える。この場合、コイル部141には、不図示の駆動源部制御回路から所望のタイミングで、所望の電流が印加され、コイル部141と磁極142a〜142eとの間に電磁相互作用が生ずる。その結果、電磁相互作用による電磁力が発生する。この電磁力はねじり力として、コイル部141及び第1弾性部120(120a−1、120b−1)、第2ベース部110−2及びミラー130に伝えられ、ミラー130を回転させる。
コイル部141は、例えば相対的に導電率の高い材料(例えば、金や銅、アルミ等)から構成される巻き線を備える。第2ベース部110−2の枠部110−2h上にメッキ或いは蒸着等で形成してもよいし、エッチング等で形成してもよい。第2実施例では、コイル部141は、長方形の形状を有している。但し、コイル部141は、任意の形状(例えば、正方形やひし形や平行四辺形や円形や楕円形や多角形やその他の任意のループ形状)を有していてもよい。
コイル部141は、第2ベース部110−2上にミラー130に対しシフトして配置される。つまり、コイル部141は、ミラー130が配置される箇所から所定方向(他の方向、X軸方向)にシフトした位置に配置される。より具体的には、コイル部141は、第2ベース部110−2の中心(つまりミラー130の回転中心ないし重心)が配置される箇所から所定方向にシフトした位置にコイル部の中心(例えば、巻き線の中心ないし重心)が配置されるように第2ベース部110−2上に配置される。言い換えれば、ミラー130は、コイル141を構成する巻き線の外側に配置される。
磁界付与部は永久磁石及び磁界を誘導するヨーク(鉄等の磁性材料)等で構成され、磁極142a〜磁極142eより磁界をコイル部141に与える。磁極142a〜磁極142eはコイル部141の周囲に配置される。磁極142a及び142bはY軸方向に沿ってコイル部141を挟み込むように配置される。磁極142aが磁界の出射側(N極)になり磁極142bが磁界の入射側(S極)になる例を用いて説明を行うが、言うまでもなく、出射側(N極)と入射側(S極)が入れ替わってもかまわない。同様にX軸の方向に沿ってコイル部141を挟み込むように磁極142c、及び磁極142d、142eが配置される。磁極142cが磁界の出射側(N極)になり磁極142d、142eが磁界の入射側(S極)になる例を用いて説明を行うが、言うまでもなく、出射側(N極)と入射側(S極)が入れ替わってもかまわない。また言うまでもなく、磁極の数は上記数値に限定することなく適宜設定してかまわない。また、永久磁石の代わりに電磁石を用いてもかまわない。
続いて図6を参照して駆動源部140を含めた構成について説明する。
図6は第1弾性部120а−1、第2ベース部110−2(ミラー130、第2弾性部120а−2、120b−2、コイル部141を含む)、第1弾性部120b−1、及び磁極142c〜142eを側面から見た図である。
図6に示すように第1弾性部120а−1、第2ベース部110−2(ミラー130、第2弾性部120а−2、120b−2、コイル部141を含む、)、第1弾性部120b−1が連なり、定常波状に(共振)振動する。この時の振動姿態は、ミラー130の中心に対応する位置、つまりは第2ベース部110−2と第2弾性部110−2の接続部に節が現れ、コイル部141の中心位置に節が現れ、第2ベース部110−2の中心付近には腹が現れ、第1弾性部120a−1と第2ベース部との接続部には腹が現れ、120b−1と第2ベース部との接続部に腹が現れる。このような練成した、定常波状の振動姿態が現れるように、各部の剛性、質量等が調整される。この共振については動作の態様の項で第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動として詳細に説明するため、ここではその概要の説明にとどめる。
(2−2)MEMSミラー駆動装置の動作
続いて、図5〜図8を参照して、第2実施例のMEMSミラー駆動装置101の動作の態様(具体的には、ミラー130を回転させる動作の態様)について説明する。
初めに、図5を参照してミラー130のX軸の方向に沿った軸を中心軸とした回転について説明する。第2実施例のMEMSミラー駆動装置101の動作時には、コイル部141には、不図示の駆動源部制御回路から所望のタイミングで、所望の電流が印加され、コイル部141と磁極142a及び142bとの間に電磁相互作用が生ずる。その結果、電磁相互作用による電磁力が発生する。この電磁力はコイル部141をX軸方向に沿った軸を中心軸としてねじる力となり、第2ベース部110−2をX軸方向に沿った軸を中心軸として回転させる。よって第2ベース部に接続されるミラー130もX軸方向に沿った軸を中心軸として回転させられる。
ここで、コイル部141と磁極142aとの間の電磁相互作用による電磁力の方向は、図5中奥側(紙面奥側)から手前側(紙面手前側)方向である。コイル部141と磁極142bとの間の電磁相互作用による電磁力の方向は、図5中手前側から奥側方向である。その結果、この電磁力は、第1弾性部120a−1及び120b−1の伸長方向(X軸に沿った方向)を回転軸方向として、コイル部141を回転させる。その結果、コイル部141が装着された第2ベース部110−2が、X軸の方向に沿った軸を中心軸として回転し、第2ベース部110−2に支持されているミラー130も上記X軸の方向に沿った軸を中心軸として回転する。
尚、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)は後述するミラー共振周波数よりも低い若しくは高い周波数での回転動作を繰り返してもよい。例えば、第2実施例のMEMSミラー駆動装置101をディスプレイ(或いは、ヘッドマウントディスプレイ)に適用する場合には、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)は、例えばディスプレイの走査周期又はフレームレートに応じた周波数(例えば、60Hz)での回転動作を繰り返してもよい。
或いは、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)は、第2ベース部110−2及びミラー130等の被懸架部並びに第1弾性部120より定まる共振周波数での回転動作を繰り返してもよい。具体的には、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)は、第2ベース部110−2及びコイル部141等の被懸架部並びに第1弾性部120a−1及び120b−1に応じて定まる共振周波数で共振するように回転してもよい。例えば、第2ベース部110−2(ミラー130等を含む)のX軸に沿った軸回りの慣性モーメント(より具体的には、第2ベース部110−2内に備えられる第2弾性部120a−2及び120b−2並びにミラー130の夫々の質量をも加味した第2ベース部110−2という系全体からなる被懸架設部のX軸に沿った軸回りの慣性モーメント)がI1であり且つ第1弾性部120a−1及び120b−1を1本のバネとみなした場合のねじりバネ定数がk1であるとすれば、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)は、(1/(2π))×√(k1/I1)にて特定される共振周波数、若しくは共振周波数近傍(或いは、(1/(2π))×√(k1/I1)のN倍(但し、Nは1以上の整数)の共振周波数)で共振するように、X軸の方向に沿った軸を中心軸として回転してもよい。
続いて、図5、図6を参照して、ミラー130のY軸の方向に沿った軸を中心軸とした回転について説明する。第2実施例のMEMSミラー駆動装置101の動作時には、コイル部141には、不図示の駆動源部制御回路から所望のタイミングで、所望の制御電流が印加される。
制御電流は、Y軸方向に沿った軸を回転軸としてミラー130を回転させるための電流成分を含んでいる。第2実施例では、ミラー130は、ミラー130及び第2弾性部120a−2及び120b−2より定まる共振周波数を、後述する第2ベース部110−2及び第1弾性部120−1の定常波状の変形振動を用いて、遷移させた周波数で共振するように、Y軸方向に沿った軸を回転軸として回転する。言い換えればミラー130及び第2弾性部120a−2及び120b−2より定まる共振周波数とは異なる周波数で共振回転する。
尚、本実施形態ではコイル部が単一の場合に、2軸以上の駆動を行うためには2以上の信号の重畳をするとよい。つまり、X軸方向に沿った軸周りの回転を担う電流成分とY軸方向に沿った軸周りの回転を担う電流成分の2つの信号を重畳した信号を駆動コイル141に印可するとよい。
ここで、図5に示すように、反時計周りの方向に流れる制御電流がコイル部141に供給されており、磁極142c、から磁極142d、142eに向かう磁界がコイル部141に付与されている。コイル部141への電流の印加によって、コイル部141と磁極142c、磁極142d及び磁極142eとの間に電磁相互作用が生ずる。
コイル部141と磁極142cとの間の電磁相互作用による電磁力の方向は、図5中奥側(紙面奥側)から手前側(紙面手前側)方向である。コイル部141と磁極142d、磁極142eとの間の電磁相互作用による電磁力の方向は図5中手前側から奥側方向である。
言い換えれば、図6に示すように、コイル部141aと磁極142cとの電磁相互作用による電磁力の方向は、図6中、下側から上側方向である。コイル部141bと磁極142d、磁極142eとの電磁相互作用による電磁力の方向は、図6中、上側から下側方向である。つまり、X軸方向に沿って対向するコイル部141の2つの長辺には、相互に異なる方向の電磁力が発生する。言い換えれば、X軸方向に沿って対向するコイル部141の2つの長辺141a、141bには、偶力となる電磁力が発生する。従って、コイル部141は、図6における時計周りの方向に回転する。
一方で、制御電流が交流電流であるため、半周期後には時計周りの方向に流れる制御電流がコイル部141に供給される。従って、コイル部141は、図6における時計周りの方向に向かって回転する。その結果コイル部141はY軸方向に沿った軸を回転軸として反復回転する。
上述のようなコイル141の反復回転は、Y軸方向に沿った軸を中心軸としたコイル部141のねじり振動として、第2ベース部110−2及び第1弾性部120−1に伝達され、第2ベース部及び第1弾性部の定常波状の変形振動を発生させる。
このとき、Y軸方向に沿ったコイル部141の回転軸は、Y軸方向に沿ったミラー130の回転軸とは異なっている。具体的には、Y軸方向に沿ったコイル部141の回転軸は、Y軸方向に沿ったミラー130の回転軸を基準として、X軸方向に所定距離シフトした位置に存在する。このため、Y軸方向に沿った軸を回転軸とするコイル部141の回転は、Y軸方向に沿った軸を回転軸としてミラー130を直接的に回転させることはない。言い換えれば、コイル部141は、ミラー130(第2ベース部110−2に支持される)そのものに回転方向のねじれを与える力を加えることに代えて、ミラー130を回転させるための定常波状の変形振動のエネルギー源として加振力(ねじり振動)を加える。
続いて前記第2ベース部及び第1弾性部の定常波状の変形振動について図6を用いて説明する。コイル部141の発生する回転力により、第1弾性部120a−1、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)及び第1弾性部120b−1は連なって、他の方向に沿って定常波状に変形振動し、共振となる。言い換えれば、第1弾性部120a−1、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)及び第1弾性部120b−1は連なって、X軸方向に沿って弦の3倍モードのような変形姿態で振動する。つまり、第1弾性部120a−1、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)及び第1弾性部120b−1はそのある一部分が定常波状の変形振動の腹となり且つその他の一部分が定常波状の変形振動の節となるような変形振動を示す。
上述の定常波状の変形振動において、コイル部141の中心には節が現れる。第2ベース部110−2の上辺110−2ou及び下辺110−2odの第2弾性部の接続部、言い換えれば、ミラー130の回転中心の位置には節が現れる。第2ベース部110−2の中心には腹が現れ、第1弾性部120a−1の右端と第2ベース部110−2aとの接続部には腹が現れ、第1弾性部120b−1の左端と第2ベース部110−2hとの接続部には腹が現れる。つまりコイル部141は定常波状の波における節の位置にある。
一方で上述のように、ミラー130の回転中心は節の位置にある。このため図6に示すように動きの形態には上下(Z軸に沿った方向)の動きは小さく、Y軸の方向に沿った軸を中心とした回転動が発生し好適に回転を享受できる。尚、上述の変形振動は、いわゆる定常波状の変形姿態を示し、その腹及び節の位置は実質的には固定されている。
ただし上述のミラー130またはコイル部141が節の位置にあるとは、厳密に位置しているという意味ではなく、ミラー130またはコイル部141が節に近い位置にあると解釈してよい。節に近いほど効率良く回転すると捉えるのがよい。
このような、第1弾性部120a−1、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)及び第1弾性部120b−1の定常波状の変形振動に起因して、ミラー130は回転させられる。
そして、ミラー130の回転共振と前記第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動は同じ周波数で発生するが、その周波数はミラー130と第2弾性部より定まる共振周波数とは異なる。すなわち、ミラー130の共振周波数は前記第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動により遷移させられる。その結果ミラー130はミラー130と第2弾性部より定まる共振周波数とは異なる周波数で共振回転する。この時のミラー130の共振周波数は典型的にはミラー130と第2弾性部より定まる共振周波数より高い周波数である。更にこの時ミラー130の回転角は定常波状の変形振動により周波数が遷移させられていない場合と比較して大きくなる。
上述の定常波状の変形振動を実現するために、第1弾性部120a−1、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)、及び第1弾性部120b−1の剛性、質量、長さ等が調整される。具体的には第1弾性部の長さ、断面形状、剛性、第2ベース部110−2の形状、質量、剛性、コイル部141の形状、質量、剛性等を調整してもよい。これらを調整することで節、腹の位置及び共振周波数が適切となり、上述の定常波状の変形振動が好適に実現され、ミラー130の好適な回転が実現される。
ここで更に詳細に定常波状の変形振動における共振周波数の調整方法について図7、図8を用いて説明を行う。近年では計算技術が発達し、試作を行わなくてもパソコン等で簡便にシミュレーションが行え、また試作とシミュレーションの値も高い精度で一致するようになった。ここではパソコンでのシミュレーションによる例として定常波状の変形振動における共振周波数の調整方法、剛性の調整方法について説明する。目標とするミラー130の共振周波数を約25kHzとする。
(調整1)
まず、ミラー130及び第2弾性部120−2より定まるミラー130の共振周波数を計算する。ミラー130、第2弾性部(120a−2、120b−2)、第2ベース部110−2、コイル部141を装備し、厚み、直径、長さ、幅等を適切に調整する。そして第2ベース部110−2の境界条件として完全固定を入力する。この状態でシミュレーションソフトにて固有値解析(共振周波数解析)を行えば、ミラー130と第2弾性部120−2により定まるミラー130の共振周波数が計算される。この時ミラー130のY軸方向に沿った回転方向の共振周波数が25kHとなるように各部の寸法を(繰り返し計算により)決定する。
(調整2)
次に第1弾性部120a−1及び120b−1、及び第1ベース部110−1を追加装備し、厚み、長さ、幅等を適切に調整する。この状態で今度は第1ベース部−1の境界条件として完全固定を入力すると、第1弾性部120a−1、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)、及び第1弾性部120b−1の(回転運動と並進運動の連成された)定常波状の共振の共振周波数及び共振モードが計算される。この時のN次の共振モードが図7のような弦の3倍モードのような変形姿態となるよう各部の寸法(厚み、長さ、幅、大きさ)を調整する。またミラー130の回転軸に対応する位置(ミラーの回転中心)及びコイル部141の回転中心の位置に節が現れるように各部の微調整を行うことが好ましい。
そして上述の振動姿態での共振周波数が25.000kHzと計算されれば、この状態は定常波状の変形振動の周波数が、ミラー130の共振周波数(ミラー130(被駆動部)及び第2弾性部120で定まる)に合致調整された状態である。
(調整3)
しかしながら前述の状態(25.000kHz)が本実施例での最良の状態ではない。次に例えば第2ベース部110−2の上辺110−2ou及び下辺110−2odの厚みを少々増やした場合を想定する。バネ剛性は厚みの3乗に比例して高くなり質量は厚みの1乗に比例するため(言いかえれば剛性は高くなるが質量はあまり大きくならない)、第2ベース部110を含んだ系の共振周波数は上がり、定常波状の変形振動の共振周波数は上昇する。
そしてシミュレーションによる計算結果は25.25KHz(定常波状の変形振動の周波数=被駆動部の周波数)に変化したとする。この時の振動姿態の概念を図8に示す。定常波状の変形振動の振幅は減少し、ミラーの回転角は大きくなる。そしてこの時ミラー130はミラー130及び第2弾性部120−2より定まる周波数(25.000kHz)とは異なる周波数で共振することが分かる。
(定常波状の変形振動によりミラーの共振周波数が遷移させられた状態)
また逆に第2ベース部110−2の上辺110−2ou及び下辺110−2odの厚みを薄くして同様のシミュレーションをした場合には先ほどとは逆に定常波状の変形振動の共振周波数は下がり24.75KHとなり、定常波状の変形振動の振幅は大きくなり、ミラー130の触れ角は小さくなる。
このように本実施例においては、ミラー130はミラー130及び第2弾性部120−2より定まる共振周波数とは異なる共振周波数で共振する。言い換えれば定常波状の変形振動によりミラー130の共振周波数が遷移される。
また様々な態様の計算によれば、典型的には、ミラー130の共振周波数が定常波状の変形振動により、高い周波数に遷移させられる場合にミラーの回転角が大きくなる。
尚コイル部141の回転方向とミラー130の回転方向が互いに同じ向きとなる(同相と呼ぶ)場合には、上述の遷移周波数(偏差)は大きくなる傾向があり、その偏差は1%から10%程度となる例がある。また図8に示すように、第2ベース部110−2とミラー130の動きが逆向きとなる場合(逆相と呼ぶ)には、上述の偏差は小さく、その偏差は0.03%から2%程度となる例がある。
或いは、1例ではあるが、定常波状の変形振動の振動モードをより低次のモード、つまりは弦の2倍モードに近い振動モードにした場合、上述の遷移周波数(偏差)は大きくなる傾向があり30%にもなる例が確認されている。
また、上述の典型例とは逆に前記ミラー130の共振周波数が定常波状の変形振動により低く遷移させられることが好適な例もあり、よって前記ミラー130の共振周波数を前記ミラー130及び第2弾性部120−2より定まる周波数よりも低く設定してもよいことを付け加えておく。
ここでミラー130の共振周波数に関し、前記の異なる共振周波数(周波数偏差)について触れておく。MEMS等のシリコン及び金属バネ等で構成される構造物は材料としての減衰が小さく、周波数特性図における共振峰は鋭く急峻な形状をしている。この共振峰の鋭さを表す数値として代表的なものにQ値がある。前記MEMS及び金属では、Q値が大きく、典型的には1500程度である。ここで、Q値を用いて共振周波数の偏差について説明する。
Q値の定義は、ωを共振ピークでの共振周波数、ω1をωより低い周波数側において振動エネルギーが共振ピークの半値となる周波数、ω2をωより高い周波数側において振動エネルギーが共振ピークの半値となる周波数とすれば、Q値は、Q=ω/(ω2−ω1)で表わされる。ここに前記のω=25000Hz、Q=1500を代入して変形すれば、ω2−ω1=25000/1500=16.67Hzとなる。また共振峰の対称性より、共振ピーク周波数ωとω1(ω2)との差は16.67/2=8.34Hzとなる。つまり駆動装置の周波数特性において、加振共振周波数が共振ピーク周波数ωから8.34Hz離れると、その系の共振エネルギーは半分(回転角は√(0.5))に低下するということになる。8.34Hzは25kHzの0.0334%≒0.03%となる。よって0.03%の共振周波数(ピーク周波数)の偏差によりその共振エネルギーは半分になる。従って共振周波数の0.03%の差は十分な差であると考えてよいことになる。上述の例は共振エネルギーが半分になる場合についての考察例であり、この計算に限らず任意に、前記異なる共振周波数を定めてもよい。
以上説明したように、第2実施例のMEMSミラー駆動装置101はX軸方向に沿った軸を回転軸としてミラー130を回転させることが出来ると同時にY軸方向に沿った軸を回転軸としてミラー130を共振回転させることが出来る。つまり第2実施例のMEMSミラー駆動装置101は2軸駆動を行うことが出来る。
ここでY軸方向に沿った軸を回転軸としてミラー130を回転共振させるための力は直接的にミラー130を回転させる態様ではなく、コイル部に定常波状の変形振動のエネルギー源として加振力を加えることにより、ミラー130を共振駆動する。
特にミラー130の共振周波数は、ミラー130及び第2弾性部120−2より定まる共振周波数とは異なる。第2ベース部110−2及び第1弾性部120−1との定常波状の変形振動により被駆動部の共振周波数を遷移(典型的には高い周波数)させ、かつ適確に共振の合成を行うことで、前記被駆動をより大きな回転角で回転させ、より高効率、低消費電力の駆動装置を提供することが可能となる。
(3)第3実施例
図9を参照して、MEMSミラー駆動装置の第3実施例について説明する。
(3−1)基本構成
第3実施例のMEMSミラー駆動装置102の基本構成について説明する。図9は、第3実施例のMEMSミラー駆動装置102の基本構成を概念的に示す平面図である。
図9に示すように、第3実施例のMEMSミラー駆動装置102は、第1ベース部110−1と、第1弾性部120a−1及び120b−1からなる第1弾性部120と、上辺110−2ou、縦辺110−2a、縦辺110−2b、下辺110−2odからなる第2ベース部110−2と、第2弾性部120a−2及び120b−2からなる第2弾性部120−2と、ミラー130と、第2ベース部110−2に直接的または間接的に接続され設置される可動側電極151a〜fと、第1ベース部110−1に直接的または間接的に接続され設置される固定側電極152a〜fを含む駆動源部140とを備えている。第1実施例の電磁駆動に代え、第3実施例は静電引力による静電駆動方式となっているが、その他の基本構成は第1実施例と同様であり、同一の参照符号を付することでその詳細な説明は省略する。
また、第2ベース部の形状については第1実施例と同様に長方形に限定することなく適宜形状を変更してもかまわない。また駆動源部を構成する電極(固定部側電極、可動部側電極)についても適宜構成(形状、個数等)を変更してもかまわない。
(3−2)MEMSミラー駆動装置の動作
第3実施例のMEMSミラー駆動装置102の動作の態様(具体的には、ミラー130を回転させる動作の態様)について説明する。第3実施例のMEMSミラー駆動装置103の動作時には、駆動源部140には、不図示の駆動源部制御回路から所望のタイミングで、所望の電圧が印加され、可動側電極151a〜fと、固定側電極152a〜fの間に静電引力が発生する。この静電引力は第2ベース部110−2(ミラー130を含む)をX軸方向に沿った軸を中心軸としてねじる力及びY軸方向に沿った軸を回転軸としてミラー130を回転させるための微振動を発生させる。
第3実施例では第1実施例での電磁力を静電引力に置き換えたため駆動力の印加タイミングは少々異なるが基本的には同様の動作となる。よって第1実施例と同等の効果を享受することができる。
第3実施例のMEMSミラー駆動装置102はX軸方向に沿った軸を回転軸としてミラー130を回転させることが出来ると同時にY軸方向に沿った軸を回転軸としてミラー130を共振回転させることが出来る。つまり第3実施例のMEMSミラー駆動装置100は2軸駆動を行うことが出来る。
ここでY軸方向に沿った軸を回転軸としてミラー130を回転共振させるための力は直接的にミラー130を回転させる態様ではなく、静電電極部に変形振動のエネルギー源として加振力を加えることにより、ミラー130を共振駆動する。
特にミラー130の共振周波数は、ミラー130及び第2弾性部120−2より定まる共振周波数とは異なる。第2ベース部110−2及び第1弾性部120−1との定常波状の変形振動によりミラー130の共振周波数を遷移(典型的には高い周波数)させ、かつ適確に共振の合成を行うことで、前記被駆動をより大きな回転角で回転させ、より高効率、低消費電力の駆動装置を提供することができる。
(3)第4実施例
図10、11を参照して、MEMSミラー駆動装置の第4実施例について説明する。
(4−1)基本構成
第4実施例のMEMSミラー駆動装置103の基本構成について説明する。図10は、第4実施例のMEMSミラー駆動装置103の基本構成を概念的に示す平面図である。
図10に示すように、第4実施例のMEMSミラー駆動装置103は、第1ベース部110−1と、第1弾性部120a−1及び120b−1からなる第1弾性部120と、上辺110−2ou、縦辺110−2a、縦辺110−2b、下辺110−2odからなる第2ベース部110−2と、第2弾性部120a−2及び120b−2からなる第2弾性部120−2と、ミラー130と、第2ベース部110−2上に配置されるコイル部141と、磁界付与部としての磁極142a、142bを含む駆動源部140と、第2ベース部110−2上に直接的または間接的に設置される圧電体143a〜dを含む圧電駆動源部143とを備えている。
第4実施例はX軸に沿った方向を回転軸として回転する態様では第1実施例と同様であるが、Y軸に沿った方向を回転軸として回転する態様では第1実施例の電磁駆動に代え、圧電体による圧電駆動方式となっている。
圧電駆動源部143は、ミラー130をY軸の方向に沿った軸を中心軸として回転させるために必要な振動を第2ベース部110−2に発生させる。すなわち、第1実施例と同様に、第1弾性部120а−1、第2ベース部110−2(ミラー130、第2弾性部120а−2、120b−2を含む)、第1弾性部120b−1が連なって定常波状に共振(後述の定常波状の変形振動)するための加振力を加えることができる。
より具体的には圧電体143a〜dは第2ベース部に直接的または間接的に設置され、圧電体自身が、伸長または収縮をするような変位を発生する。よってバイメタルの原理により第2ベース部110−2が変形振動を発生するように構成される。その他の基本構成は第1実施例と同様であり、同一の参照符号を付することでその詳細な説明は省略する。
また、第2ベース部の形状については第1実施例と同様に長方形に限定することなく適宜形状を変更してもかまわない。また圧電駆動源部143を構成する圧電体143a〜dについても適宜構成(形状、個数等)を変更してもかまわない。
(4−2)MEMSミラー駆動装置の動作
第4実施例のMEMSミラー駆動装置103の動作の態様(具体的には、ミラー130を回転させる動作の態様)について説明する。図10は、第4実施例のMEMSミラー駆動装置103の基本構成を概念的に示す平面図である。図11は、第4実施例のMEMSミラー駆動装置103の動作の態様を概念的に示す側面図である。X軸方向に沿った軸を中心軸として回転する態様においては第1実施例と同様のため省略し、Y軸方向に沿った軸を中心軸として回転する態様について説明する。
Y軸方向に沿った軸を中心軸としてミラー130が回転する場合には、圧電駆動源部143には、不図示の駆動源部制御回路から所望のタイミングで、所望の電圧が印加され、圧電体143a〜143dには図10に示すような伸長、圧縮力が発生する。圧電体143a、143bには伸びる方向の力、圧電体143c、143dには縮む方向の力が発生する。
その結果第2ベース部には、バイメタルの原理により変形力が発生し図11に示すように第2ベース部は変形を生じ、この変形は第1実施例と同様に第1弾性部120a−1、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)及び第1弾性部120b−1の定常波状の変形振動を発生させ、ミラー130は共振回転させられる。
そして、ミラー130の回転共振と前記第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動は同じ周波数で発生するが、その周波数はミラー130と第2弾性部より定まる共振周波数とは異なる。すなわち、ミラー130の共振周波数は前記第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の変形振動により遷移させられる。その結果ミラー130はミラー130と第2弾性部より定まる共振周波数とは異なる周波数で共振回転する。この時のミラー130の共振周波数は典型的にはミラー130と第2弾性部より定まる共振周波数より高い周波数である。更にこの時ミラー130の回転角は定常波状の変形振動により周波数が遷移させられていない場合と比較して大きくなる。その他の動作については第1実施例と同様である。よって第1実施例と同等の効果を享受することができる。
第4実施例のMEMSミラー駆動装置103はX軸方向に沿った軸を回転軸としてミラー130を回転させることが出来ると同時にY軸方向に沿った軸を回転軸としてミラー130を共振回転させることが出来る。つまり第4実施例のMEMSミラー駆動装置100は2軸駆動を行うことが出来る。
ここでY軸方向に沿った軸を回転軸としてミラー130を回転共振させるための力は直接的にミラー130を回転させる態様ではなく、圧電駆動源に変形振動のエネルギー源として加振力を加えることにより、ミラー130を共振駆動する。
特にミラー130の共振周波数は、ミラー130及び第2弾性部120−2より定まる共振周波数とは異なる。第2ベース部110−2及び第1弾性部120−1との定常波状の変形振動によりミラー130の共振周波数を遷移(典型的には高い周波数)させ、かつ適確に共振の合成を行うことで、前記被駆動をより大きな回転角で回転させ、より高効率、低消費電力の駆動装置を提供することができる。
(5)第5実施例
図12,13を参照して、MEMSミラー駆動装置の第5実施例について説明する。
(5−1)基本構成
第5実施例のMEMSミラー駆動装置104の基本構成について説明する。図12は、第5実施例のMEMSミラー駆動装置104の基本構成を概念的に示す平面図である。
図12に示すように、第5実施例のMEMSミラー駆動装置104は第1実施例と同様に、第1ベース部110−1と、第1弾性部120a−1及び120b−1からなる第1弾性部120と、上辺110−2ou、縦辺110−2a、縦辺110−2b、下辺110−2odからなる第2ベース部110−2と、第2弾性部120a−2及び120b−2からなる第2弾性部120−2と、ミラー130と、コイル部141と、磁界付与部としての磁極142a〜hhを含む駆動源部140とを備えている。第1実施例と異なるのは第2ベース部110−2の剛性である。
第2ベース部110−2を構成する各辺、つまり上辺110−2ou、縦辺110−2a、縦辺110−2b、下辺110−2odの剛性が第1実施例の場合と比較して高くなっており、変形を起こしづらい形状となっている。その他の基本構成は第1実施例と同様であり、同一の参照符号を付することでその詳細な説明は省略する。
(5−2)MEMSミラー駆動装置の動作
第5実施例のMEMSミラー駆動装置104の動作の態様(具体的には、ミラー130を回転させる動作の態様)について説明する。図13は、第5実施例のMEMSミラー駆動装置104の基本の動作を概念的に示す側面図である。第5実施例のMEMSミラー駆動装置104の動作時には、駆動源部140には、不図示の駆動源部制御回路から所望のタイミングで、所望の電流が印加され、コイル141と磁極142a〜142hの間に電磁力が発生する。この電磁力は第2ベース部110−2(ミラー130を含む)をX軸方向に沿った軸を中心軸としてねじる力及びY軸方向に沿った軸を回転軸としてミラー130を回転させるための微振動を発生させる。
X軸方向に沿った軸を中心軸とした回転については第1実施例と同様であるため省略し
Y軸方向に沿った軸を回転軸とした回転する場合について説明する。
第5実施例では第2ベース部の剛性を高くしたため、第2ベース部110−2の変形が小さい。よって図13に示すように第1弾性部120а−1、第2ベース部110−2(ミラー130、第2弾性部120а−2、120b−2、コイル部141を含む)、第1弾性部120b−1が連なり、定常波状に(共振)変形振動する場合に、第1弾性部120а−1、120b−1が主な変形箇所となる。
第1実施例と同様に不図示の駆動源部制御回路から所望のタイミングでコイル141には所望の制御電流が印加される。コイル部141はY軸方向に沿った軸を回転軸として反復回転し、振動を発生させる。コイル141が発生する振動が加振力となり、第1弾性部120a−1、第2ベース部110−2(第2弾性部120a−2、120b−2及びミラー130を含む)及び第1弾性部120b−1が連なって定常波状の振動が発生する。その結果、前記定常波状の振動に起因してミラー130は共振回転させられる。
そして、ミラー130の回転共振と前記第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の振動は同じ周波数で発生するが、その周波数はミラー130と第2弾性部より定まる共振周波数とは異なる。すなわち、ミラー130の共振周波数は前記第2ベース部及び第1弾性部との定常波状の振動により遷移させられる。その結果ミラー130はミラー130と第2弾性部より定まる共振周波数とは異なる周波数で共振回転する。この時のミラー130の共振周波数は典型的にはミラー130と第2弾性部より定まる共振周波数より高い周波数である。更にこの時ミラー130の回転角は定常波状の変形振動により周波数が遷移させられていない場合と比較して大きくなる。その他の動作については第1実施例と同様である。よって第1実施例と同等の効果を享受することができる。
第5実施例のMEMSミラー駆動装置104はX軸方向に沿った軸を回転軸としてミラー130を回転させることが出来ると同時にY軸方向に沿った軸を回転軸としてミラー130を共振回転させることが出来る。つまり第5実施例のMEMSミラー駆動装置104は2軸駆動を行うことが出来る。
ここでY軸方向に沿った軸を回転軸としてミラー130を回転共振させるための力は直接的にミラー130を回転させる態様ではなく、コイル部141に変形振動のエネルギー源として加振力を加えることにより、ミラー130を共振駆動する。
特にミラー130の共振周波数は、ミラー130及び第2弾性部120−2より定まる共振周波数とは異なる。第2ベース部110−2及び第1弾性部120−1との定常波状の振動によりミラー130の共振周波数を遷移(典型的には高い周波数)させ、かつ適確に共振の合成を行うことで、前記被駆動をより大きな回転角で回転させ、より高効率、低消費電力の駆動装置を提供することができる。
また、第5実施例においては電磁力による駆動の例を示したが、これに限定されることなく、第3実施例、第4実施例で示したような静電引力、圧電体による伸長・収縮力を用いてもよい。
尚、上述した第1実施例のMEMSミラー駆動装置(100)〜第5実施例のMEMSミラー駆動装置(104)は、例えば、ヘッドアップディスプレイや、ヘッドマウントディスプレイや、網膜走査ディスプレイや、レーザスキャナや、レーザプリンタや、走査型駆動装置等の各種電子機器に対して適用することができる。従って、これらの電子機器もまた、本発明の範囲に含まれるものである。
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う駆動装置もまた本発明の技術思想に含まれる。