JP6934972B2 - ペルオキシレドキシン発現増大剤のスクリーニング方法 - Google Patents
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Description
ヒトにおいては、ペルオキシレドキシンとしては、6つのアイソフォームの存在が知られている。そのうち、ペルオキシレドキシン1−3は表皮に存在し、ペルオキシレドキシン1−2は顆粒層に近いほど発現が増大し、ペルオキシレドキシン3は基底層での発現が多い。
また、ペルオキシレドキシンの発現上昇は、ライフスパン延長に関与し、特にペルオキシレドキシン6の発現低下は、皮膚がんの発症増加に関与することが示唆されている。(例えば、非特許文献1参照)。
例えば、特許文献1には、ナツメの果実等の抽出物を含むメラニン含有ケラチノサイト分裂促進剤、及びこれを含む色素沈着抑制剤が記載されている。また、特許文献2にはタイソウ抽出物を含む皮膚化粧料が、老化防止効果及び美肌効果を有することについて記載されている。
そこで、本発明は、新規なペルオキシレドキシンの発現増大剤を提供することを課題とする。
その結果、オレイン酸の存在によって、表皮細胞におけるGM−CSF(Granulocyte Macrophage colony-stimulating Factor:顆粒球単球コロニー刺激因子)の発現が増大すること、GM−CSFの存在によって表皮細胞におけるペルオキシレドキシンの発現が低下することを見出した。
そして、ナツメ(Ziziphus jujuba)抽出物に、ペルオキシレドキシンの発現を増大させる作用があること、特に、遊離脂肪酸であるオレイン酸の存在下でペルオキシレドキシンの発現を増大させる作用があることを見出した。
本発明者は、以上の知見に基づいて、本発明を完成させた。
これにより、優れたペルオキシレドキシン発現増大効果を得ることができる。
本発明のペルオキシレドキシン発現増大剤は、皮膚においてオレイン酸を主とする遊離脂肪酸が増加する季節(春から夏)における、皮膚の機能低下、及びこれに起因する状態、疾患を予防、改善又は治療する効果に優れる。
本発明のペルオキシレドキシン発現増大剤は、外用剤又は経口剤の形態とすることが好ましい。外用剤としては、例えば、化粧料、医薬部外品、皮膚外用医薬等の形態が挙げられる。また、それらの剤形は特に制限されない。中でも、ペルオキシレドキシン発現を増大させるという用途との関係から、継続的に使用可能な化粧料の形態が好ましく、中でも、化粧水、美容液、乳液、クリーム、ジェル、サンケア品等の形態が好ましい。
また、経口剤としては、錠剤、顆粒剤、ドリンク剤等の剤形を有するサプリメント、飲食品の形態が好ましい。
また、本発明のペルオキシレドキシン発現増大剤は、特に、活性酸素による肌状態の低下の予防、改善に有用である。このような肌状態の低下は、色素沈着、肌の微細な凹凸、毛穴の目立ち、肌理、しわ、たるみ、しみ、くすみ、乾燥等の現象を含む。
さらに、後述する実施例に示す通り、有効成分である前記抽出物とメラニン生成抑制剤とを組み合わせることにより、有効成分である前記抽出物のペルオキシレドキシン発現作用を増大することが確認された。そのため、これらの組み合わせにより、ペルオキシレドキシン発現増大剤の優れた効果を得ることができる。
本試験は、ナツメ抽出物添加によるペルオキシレドキシンの発現量の変化を測定する目的で行った。
本試験では、ナツメ抽出物として、一丸ファルコス製のタイソウエキスを用いた(以下の試験例においても同じ)。また、比較例として、丸善製薬製のローズヒップエキスを用いた。
図1に示す通り、タイソウエキスを添加した場合には、コントロールに対しペルオキシレドキシンの発現量が増大するのに対し、ローズヒップエキスを添加した場合には、ペルオキシレドキシンの発現量の増大は見られないことが確認された。
これより、ナツメ抽出物は、ペルオキシレドキシンの発現を増大させる作用を有することが明らかとなった。また、抗酸化作用が知られているローズヒップエキスにはペルオキシレドキシンの発現を増大させる作用がないことが明らかとなった。
本試験は、遊離脂肪酸添加によるGM−CSF発現、ペルオキシレドキシン発現、これに対するナツメ抽出物の作用を測定する目的で行った。
本試験は、遊離脂肪酸添加によるGM−CSFの発現量の変化を測定する目的で行った。本試験では、遊離脂肪酸として、皮脂における主要な遊離脂肪酸の一つであるオレイン酸(和光純薬工業株式会社製)を用いた。
図2に示す通り、オレイン酸を添加した試料では、これを添加しないコントロールに比して、細胞におけるGM−CSFの発現量の増大が観察された(核周辺に赤色の蛍光の増大を検出)。
これより、オレイン酸等の遊離脂肪酸の存在によって、GM−CSFの発現が増大することが示された。
本試験は、GM−CSFのペルオキシレドキシンの発現に対する影響を測定する目的で行った。
新生児ケラチノサイト(倉敷紡績製)を、5.0×104cell/wellで播種し24時間培養した。続いて、GM−CSFを50ng/mL添加し、24時間培養した。培養終了後、細胞を回収し、qRT−PCRにて、ペルオキシレドキシンのmRNA発現量を測定した。なお、コントロールとして、溶媒のみを添加して同様に培養したものを用いた。
図3に示す通り、GM−CSFを添加した試料では、これを添加しないコントロールに比して、細胞におけるペルオキシレドキシンの発現量の低下が観察された。
これより、GM−CSFの存在によって、ペルオキシレドキシンの発現が低下することが示された。
本試験は、皮脂の構成成分である遊離脂肪酸の添加によるペルオキシレドキシンの発現量の変化、及びナツメ抽出物添加によるペルオキシレドキシンの発現量の変化を測定する目的で行った。
本試験では、皮脂における主要な遊離脂肪酸の一つであるオレイン酸を用いた。
図4に示す通り、オレイン酸を添加することにより、ペルオキシレドキシンの発現量が低下することが確認された。また、オレイン酸とタイソウエキスを添加することにより、ペルオキシレドキシンの発現量が、オレイン酸を添加した系に対してコントロールと同等にまで増大することが確認された。
これより、ナツメ抽出物は、ペルオキシレドキシンの発現増大の作用を有することが明らかとなった。特に、ナツメ抽出物は、オレイン酸等の遊離脂肪酸の存在下で、ペルオキシレドキシンの発現増大の作用を有することが明らかとなった。
本試験は、皮脂の構成成分であるトリグリセライドの添加によるペルオキシレドキシンの発現量の変化を確認し、ペルオキシレドキシンの発現量の低下が遊離脂肪酸存在下に特有のものであることを確認する目的で行った。
本試験では、トリグリセライドとしてトリパルミチンを用いた。
図5に示す通り、トリパルミチンを添加した試料では、これを添加しないコントロールに比して、細胞におけるペルオキシレドキシンの発現量の低下は観察されなかった。
本試験は、ナツメ抽出物とメラニン生成抑制剤との混合物の添加によるペルオキシレドキシンの発現量の変化を測定する目的で行った。
メラニン生成抑制剤として、トラネキサム酸を用いた。
図6に示す通り、タイソウエキスとトラネキサム酸の混合物を添加した場合には、ペルオキシレドキシンの発現量が、トラネキサム酸を単独で添加した場合に比較して有意に増大することが確認された。一方で、トラネキサム酸を単独で添加した場合には、ペルオキシレドキシンの発現量の増大は見られないことが確認された。
これより、ナツメ抽出物とトラネキサム酸を組み合わせることにより、ナツメ抽出物のペルオキシレドキシンの発現を増大させる作用が増大することが明らかとなった。
以下の表1に示す処方に従って、本発明の化粧料である化粧水を作製した。
以下の表2に示す処方に従って、本発明の化粧料である化粧水を作製した。
以下の表3に示す処方に従って、本発明の食品を作製した。即ち、処方成分を10重量部の水と共に転動相造粒(不二パウダル株式会社製「ニュ−マルメライザ−」)し、打錠して錠剤状の食品1gを得た。
Claims (3)
- 遊離脂肪酸の存在下でのペルオキシレドキシンの発現量を指標として、ペルオキシレドキシン発現増大剤の有効成分をスクリーニングすることを特徴とする、スクリーニング方法。
- 前記ペルオキシレドキシンの発現量は、表皮細胞の培養系に遊離脂肪酸と被験物質とを添加することで測定される、請求項1に記載のスクリーニング方法。
- 前記遊離脂肪酸がオレイン酸である、請求項1又は2に記載のスクリーニング方法。
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