以下、本発明の一実施の形態に係る建設機械を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る建設機械である油圧ショベルの外観を示す図である。
図1において、油圧ショベルは、下部走行体101と、上部旋回体109と、スイング式のフロント作業機104を備え、フロント作業機104は、ブーム104a、アーム104b、バケット104cから構成されている。上部旋回体109は下部走行体101に対して旋回モータ3cによって旋回可能である。上部旋回体109の前部にはスイングポスト103が取り付けられ、このスイングポスト103にフロント作業機104が上下動可能に取り付けられている。スイングポスト103はスイングシリンダ3eの伸縮により上部旋回体109に対して水平方向に回動可能であり、フロント作業機104のブーム104a、アーム104b、バケット104cはブームシリンダ3a,アームシリンダ3b,バケットシリンダ3dの伸縮により上下方向に回動可能である。下部走行体102の中央フレームには、ブレードシリンダ3hの伸縮により上下動作を行うブレード106が取り付けられている。下部走行体101は、走行モータ3f,3gの回転により左右の履帯101a,101b(図1では左側のみ図示)を駆動することによって走行を行う。
上部旋回体109にはキャノピータイプの運転室108が設置され、運転室108内には、運転席121、フロント/旋回用の左右の操作装置122,123(図1では左側のみ図示)、走行用の操作装置124a,124b(図1では左側のみ図示)、図示しないスイング用の操作装置及びブレード用の操作装置、ゲートロックレバー125等が設けられている。
上部旋回体109の運転席121の後方にはエンジンルームが形成され、このエンジンルームにエンジン1と、このエンジン1を始動させるスタータ2などが配置されている。
図2は、エンジン1の燃料供給系を示す図である。
図2において、エンジン1の燃料供給系は、燃料タンク4と、燃料タンク4からエンジン1に燃料を供給する燃料供給配管5と、燃料供給配管5の途中に設けられ、燃料に含まれる水を分離して貯留する水分離装置7とを有している。燃料タンク4は上部旋回体109の運転席121の右側収納スペースに配置され、水分離装置7は例えばその右側収納スペースの燃料タンク4の近くに配置されている。
水分離装置7は、分離した水を貯留するタンク7aと、タンク7aの底部に設けられ、タンク7aに貯留された水を排出するためのコック7bとを備え、オペレータはコック7bを開操作することで、水を外部に排出することができる。
また、水分離装置7は、水分離装置7によって分離されて貯留された水の水位が所定の高さに到達したときに作動し、水位が所定の高さ以上にある間、水位到達信号(電気信号)を発生し続ける水位センサ10を備えている。
水位センサ10は、比重が燃料よりも大きく、水よりも小さく設定され、水分離装置7内の燃料と水との境界面に浮遊するフロート10aと、このフロート10aを鉛直方向へ案内するガイド10bと、このガイド10bによって案内されたフロート10aの鉛直上方向への移動に対して上限を設定するストッパ10cと、水分離装置7内の水位が所定の高さに到達したときに作動して、水位が所定高さ以上にある間、水位到達信号を発生し続ける出力装置11とを有している。
出力装置11は、例えばガイド10bの内部に設けられ、2つの金属板が上述の所定の高さ位置に所定の間隔を空けて配置されたリードスイッチ11aと、フロート10aの内部に埋め込まれた磁石11bとから構成されている。
水分離装置7が燃料に含まれる水を分離してタンク7aに貯留することにより、水分離装置7のタンク7a内の水の量が増してゆく。水位が所定の高さに到達したとき、燃料と水との境界面に浮遊するフロート10aの内部の磁石11bがリードスイッチ11aの2つの金属板のうち一方に近づき、この金属板が磁力を帯びるので、金属板が互いに引き寄せられる。これにより、両金属板が互いに接触して導通する。水位センサ10は、このとき流れた電気信号、すなわち水位到達信号を発生し、エンジンコントローラ40(図3)に送信する。また、水位が所定の高さ或いはそれ以上にある限り、水位センサ10は水位到達信号を発生し続ける。
図3は、本実施の形態の建設機械(油圧ショベル)に備えられるエンジン保護機能を備えたエンジンシステムを示す図である。
図3において、本実施の形態におけるエンジンシステムは、エンジンコントロールダイヤル20と、車体モニタ22と、キースイッチ24と、スタータリレー26と、バッテリ(電源装置)28と、車体コントローラ30と、エンジンコントローラ40とを備えている。
エンジンコントロールダイヤル20、車体モニタ22及びキースイッチ24は、上部旋回体109の運転室108内の適所に配置され、バッテリ28、車体コントローラ30及びエンジンコントローラ40は、上部旋回体109の運転席121の下側などのエンジンルームから離れた場所に配置されている。
エンジンコントロールダイヤル20はオペレータの操作によりエンジン1の目標回転数を指示する指示信号を出力する。
車体モニタ22は、エンジンの運転状態や燃料タンク内の燃料の残量を含む各種の情報を表示する。また、車体モニタ22は、水位センサ10の水位到達信号が発生し、車体コントローラ30を経由してエンジンコントローラ40から報知信号(後述)を入力したとき、水分離装置7内の水を排出するように促す排水通知を表示する。すなわち、車体モニタ22は、水位センサ10の水位到達信号に基づいて水分離装置7の排水作業が必要であることをオペレータに知らせる報知装置としての役割を有している。
キースイッチ24は、OFF位置と電源ON位置とエンジン始動位置を含む複数のキーポジションを有し、電源ON位置に操作されたときに電源ONのキー信号を出力し、エンジン始動位置に操作されたときにエンジン始動のキー信号を出力する。スタータリレー26は、電源系統のキースイッチ24とエンジン1のスタータ2との間に配置されている。キースイッチ24がOFF位置にあるとき、バッテリ28はキースイッチ24のいずれの接点とも接続されておらず、エンジンコントロールダイヤル20、車体モニタ22、車体コントローラ30、エンジンコントローラ40を含む電装品の電源はOFFである。オペレータがキースイッチ24にエンジンキーを差し込み、キースイッチ24がOFF位置から電源ON位置に操作されると、接点Bがバッテリ28と接続され(通電され)、電源がONとなる。キースイッチ24が電源ON位置から更にエンジン始動位置へと操作されると接点Cがバッテリ28と接続される(通電される)。このとき、スタータリレー26の接点26aが閉じて通電している場合は、スタータ2が駆動し、エンジン1は始動する。スタータリレー26の接点26aの開閉はエンジンコントローラ40によって制御される(後述)。
車体コントローラ30は、エンジンコントロールダイヤル20及び車体モニタ22と電気的に接続されかつエンジンコントローラ40と電気的に接続されている。車体コントローラ30は、エンジンコントロールダイヤル20の指示信号が入力されて、その指示信号(目標回転数)に基づいて設定回転数信号を生成し、その設定回転数信号をエンジンコントローラ40に出力する。また、車体コントローラ30は、エンジンコントローラ40から報知信号(後述)を入力すると、その報知信号を車体モニタ22に送信する。
エンジンコントローラ40は、エンジン1の電子ガバナ(図示せず)と、水位センサ10と、キースイッチ24と、スタータリレー26と電気的に接続され、水位センサ10からの水位到達信号とキースイッチ24からのキー信号を入力し、報知装置である車体モニタ22の動作とエンジン1を制御する。
エンジンコントローラ40は以下の制御を行う。
まず、エンジンコントローラ40は、エンジン1の始動前にキースイッチ24から電源ONのキー信号が入力され、水位センサ10から水位到達信号が入力されたときは車体モニタ22(報知装置)を動作させるとともに、その後、エンジン始動のキー信号が入力されてエンジン1を始動させたときには、水位センサ10からの水位到達信号の入力を無効とし、エンジン1の設定回転数を定格回転数より低い回転数に低下させることによってエンジン1の回転数を低下させる回転数制限制御と、エンジン1の最大燃料噴射量を定格の最大燃料噴射量よりも減少させることによってエンジン1の最大出力馬力を低下させる燃料噴射量制限制御とを含むフェールセーフ制御を行う。
また、エンジンコントローラ40は、上記フェールセーフ制御を開始した後、所定時間経過するとエンジン1を停止させるエンジン停止制御を行う。
また、エンジンコントローラ40は、電源ONのキー信号が入力される都度、水位到達信号の入力の有無を記憶装置40d(図4参照)に記憶しておき、前回の電源ONのキー信号入力時と今回の電源ONのキー信号入力時の両方で水位到達信号が入力されたと判定したとき、エンジン1の始動を不能とするエンジン始動不能制御を行う。
更に、エンジンコントローラ40は、電源ONのキー信号が入力されたとき、スタータリレー26の接点を遮断し、前回の電源ONのキー信号入力時と今回の電源ONのキー信号入力時の両方で水位到達信号が入力されたと判定したとき、スタータリレーの接点を遮断したままとし、エンジン始動不能制御を行う。
図4は、エンジンコントローラ40の処理機能の概略を示す機能ブロック図である。エンジンコントローラ40は、エンジン制御部40aと、信号入力制御部40bと、報知制御部40cの各機能と、記憶装置40dを有している。
図5A及び図5Bは、エンジンコントローラ40の処理機能の詳細を示すフローチャートである。
図5Aにおいて、まず、オペレータがキースイッチ24にエンジンキーを差し込み、電源ON位置に操作すると、キースイッチ24から電源ONのキー信号がエンジンコントローラ40に出力され、エンジンコントローラ40のエンジン制御部40aと信号入力制御部40bにはその電源ONのキー信号が入力される(ステップS100)。エンジン制御部40aは、電源ONのキー信号が入力されると、スタータリレー26の接点26aを遮断し、エンジン1の始動を不能とする(ステップS110)。信号入力制御部40bは、電源ONのキー信号が入力されると、水位センサ10からの水位到達信号の入力を有効にする(ステップS120)。すなわち、信号入力制御部40bは、電源ONのキー信号が入力されなかったときは接点を開いて水位到達信号の入力を無効(不能)とし、電源ONのキー信号が入力されたときは接点を閉じて水位到達信号の入力を可能とするスイッチ手段として機能する。これにより電源ONのキー信号入力時に水位センサ10が水位到達信号を発生していた場合は、エンジン制御部40aと報知制御部40cにその水位到達信号を入力することができる。
次いで、エンジン制御部40aは、前回の電源ONのキー信号の入力時と今回の電源ONのキー信号の入力時のそれぞれにおいて水位到達信号が入力されたかどうかを判定する(ステップS130,S140,S300)。
ステップS130,S140において、前回の電源ONのキー信号の入力時と今回の電源ONのキー信号の入力時のいずれにおいても水位到達信号が入力されなかったと判定したときは、前回の電源ONのキー信号入力時以降、水分離装置7の水位が所定の高さに到達していない場合であり、エンジン制御部40aは、スタータリレー26の接点26aを閉じて通電させ、エンジン1の始動を可能とする(ステップS150)。前回の電源ONのキー信号の入力時における水位到達信号の入力の有無の判定は、キースイッチ24から電源ONのキー信号が入力される都度、水位到達信号の入力の有無を記憶装置40dに記憶しておき、その記憶した判定結果を用いることにより行う。また、この状態で、オペレータがキースイッチ24をエンジン始動位置に操作すると、バッテリ28からスタータ2に電力が与えられ、スタータ2が駆動し、エンジン1が始動する。
次いで、信号入力制御部40bは、オペレータがキースイッチ24をエンジン始動位置に操作し、エンジン始動のキー信号が入力されたかどうかの判定を行い(ステップS160)、エンジン始動のキー信号が入力されたと判定すると、水位到達信号の入力を無効とする処理を行う(ステップS170)。これにより、その後の建設機械の稼動時に、掘削、走行等により水分離装置が衝撃で大きな振動を受けた場合の水位センサ10の誤検出による報知装置である車体モニタ22の誤報知やエンジン1の誤制御を防止することができる。
次に、ステップS130において、前回の電源ONのキー信号の入力時に水位到達信号が入力されていないと判定し、ステップS140において、今回の電源ONのキー信号の入力時に水位到達信号が入力されたと判定したときは、前回の電源ONのキー信号の入力後の建設機械の稼働時に水分離装置7の水位が所定の高さに到達した場合であり、報知制御部40cは車体モニタ22(報知装置)を動作させ、水分離装置7の排水作業が必要であることをオペレータに知らせる(ステップS200)。次いで、エンジン制御部40aはスタータリレー26の接点26aを閉じて通電させ、エンジン1の始動を可能とする(ステップS210)。この状態で、オペレータがキースイッチ24をエンジン始動位置に操作すると、バッテリ28からスタータ2に電力が与えられ、スタータ2が駆動し、エンジン1が始動する。
また、信号入力制御部40bは、オペレータがキースイッチ24をエンジン始動位置に操作し、エンジン始動のキー信号が入力されたかどうかの判定を行い(ステップS220)、エンジン始動のキー信号が入力されたと判定すると、水位到達信号の入力を無効とする処理を行う(ステップS230)。これによりステップS170の場合と同様、その後の建設機械の稼動時に、掘削、走行等により水分離装置が衝撃で大きな振動を受けた場合の水位センサ10の誤検出による報知装置である車体モニタ22の誤報知やエンジン1の誤制御を防止することができる。
次いで、エンジン制御部40aは、エンジン1の回転数を低下させる回転数制限制御とエンジン1の最大出力馬力を低下させる燃料噴射量制限制御を含むフェールセーフ制御を行う(ステップS240)。
エンジン1の回転数制限制御は、エンジン1の設定回転数をエンジン1の定格回転数(例えば2000rpm)よりも低下させる制御であり、エンジン制御部40aは、エンジンの電子ガバナに出力されるエンジン制御信号の設定回転数をエンジンコントロールダイヤル20が指示する目標回転数から、エンジン1の定格回転数よりも低い中間回転数(例えば1500rpm)へと変更し、その回転数を設定回転数とするエンジン制御信号をエンジン1の電子ガバナに出力することで回転数制限制御を行う。
燃料噴射量制限制御は、電子ガバナの最大燃料噴射量を定格の最大燃料噴射量よりも減少させ、エンジン1の出力馬力をエンジン1の定格馬力よりも例えば約15%低下させる制御である。エンジン制御部40aは、例えば目標回転数から燃料噴射量を演算する際に最大燃料噴射量を制限する処理を行うことで燃料噴射量制限制御を行う。
次いで、エンジン制御部40aは、回転数制限制御と燃料噴射量制限制御を開始した後、所定時間が経過したかどうかを判定し(ステップS250)、所定時間が経過するとエンジン1を停止させるエンジン停止制御を行う。所定時間は例えば2時間である。エンジン停止制御は、例えば電子ガバナに出力するエンジン制御信号をOFFにして燃料噴射を停止することによって行うことができる。
このように回転数制限制御と燃料噴射量制限制御を開始した後、依然として、オペレータがエンジンを停止して水分離装置の排水作業を行わなかった場合は、強制的にエンジンを停止させて油圧ショベルの稼動を不能とし、オペレータが排水作業を行わざるを得ないようにする。
次に、ステップS130において、前回の電源ONのキー信号の入力時に水位到達信号が入力されたと判定したが、ステップ300において、今回の電源ONのキー信号の入力時に水位到達信号が入力されなかったと判定したときは、前回の電源ONのキー信号の入力後の建設機械の稼働時にオペレータが水分離装置7の排水作業を行った場合であり、エンジン制御部40aと信号入力制御部40bはステップ150,S160,S170と同様の処理を行う。すなわち、エンジン制御部30aはエンジン1の始動を可能とし(ステップS310)、信号入力制御部30bにエンジン始動のキー信号が入力された後、水位到達信号の入力を無効とする処理を行う(ステップS320,S330)。この状態で、オペレータがキースイッチ24をエンジン始動位置に操作すると、バッテリ28からスタータ2に電力が与えられ、スタータ2が駆動し、エンジン1が始動する。また、ステップS330において、水位到達信号の入力を無効(不能)とする処理を行うことにより、ステップS170の場合と同様、その後の建設機械の稼動時に、掘削、走行等により水分離装置が衝撃で大きな振動を受けた場合の水位センサ10の誤検出による報知装置である車体モニタ22の誤報知やエンジン1の誤制御を防止することができる。
一方、ステップS130において、前回の電源ONのキー信号の入力時に水位到達信号が入力されたと判定し、ステップS300において、今回の電源ONのキー信号の入力時にも水位到達信号が入力されたと判定したときは、前回の電源ONのキー信号の入力時におけるステップS200において排水作業の必要性を報知し、ステップS240において回転数制限制御及び燃料噴射量制御、更にはステップS260においてエンジン停止制御を行ったにも係わらず、オペレータが水分離装置7の排水作業を行わなかった場合である。この場合は、報知制御部40cは車体モニタ22(報知装置)を動作させ、水分離装置7の排水作業が必要であることをオペレータに改めて知らせた上で(ステップS400)、スタータリレー26の接点26aを遮断したままとし、オペレータがキースイッチ24をエンジン始動位置に操作しても、エンジン1が始動しないエンジン始動不能制御を行う。また、信号入力制御部30bはエンジン始動のキー信号を入力した後、水位到達信号の入力を無効とする処理を行う(ステップS410,S420)。
図6は、回転数制限制御と燃料噴射量制限制御を行った場合のエンジン1の回転数と出力トルク特性の変化を示す図である。横軸はエンジン1の回転数であり、縦軸はエンジン1の出力トルクである。また、符号Aは、回転数制限制御と燃料噴射量制限制御が行われていないときの定格回転数におけるエンジン1の出力トルク特性であり、符号Bは回転数制限制御と燃料噴射量制限制御を行ったときのエンジン1の出力トルク特性である。
エンジン1の出力トルク特性Aは、電子ガバナの燃料噴射量が最小から最大に増加するまでのレギュレーション特性Traと、電子ガバナの燃料噴射量が最大に達したときの全負荷特性Tfaとから構成されている。図示の例では、レギュレーション特性Traは、電子ガバナの燃料噴射量の増減に係わらずエンジン回転数を一定に制御するアイソクロナス特性の例である。レギュレーション特性Traは、電子ガバナの燃料噴射量が増大するにしたがってエンジン回転数が低下するドループ特性であってもよい。全負荷特性Tfaは、燃料噴射量が最大であるとき、エンジン1の出力回転数が低下するにしたがって出力トルクが増加し、中間回転数よりも低いE点で最大トルクとなる特性を有しており、これにより電子ガバナの燃料噴射量が最大になった後も、エンジン負荷の増大による出力回転数の低下に応じて出力トルクが増加し、エンジンストールが生じにくい特性となっている。
回転数制限制御と燃料噴射量制限制御を行うと、エンジン1の出力トルク特性はBのように変化する。すなわち、回転数制限制御によりレギュレーション特性はTraからTrbへと変化し、燃料噴射量制限制御により全負荷特性はTfaからTfbへと変化する。
回転数制限制御はエンジン1の設定回転数を定格回転数(例えば2000rpm)よりも低下させる制御であり、設定回転数は矢印Cで示すように定格回転数から、例えば、最大トルク点Eの回転数よりも200rpm程度高い回転数(例えば1500rpm)に低下する。
ここで、回転数制限制御だけを行った場合は、電子ガバナの燃料噴射量は全負荷特性Tfa上のトルク点Gで最大となるのに対し、燃料噴射量制限制御を行い、電子ガバナの最大燃料噴射量を制限した場合は、最大燃料噴射量となるトルク点はG点から例えばH点に低下する。このため全負荷特性はTfaからTfbへと変化し、最大燃料噴射量におけるエンジン1の最大出力馬力(出力トルクと回転数の積)も低下する。燃料噴射量の制限量は、例えば、最大出力馬力が定格よりも15%程度低下するように設定されている。
このようにエンジン1の最大回転数だけでなく、燃料噴射量制限制御によってエンジン1の最大出力馬力も低下させることにより、ブームシリンダ3a、アームシリンダ3b、バケットシリンダ3dなどのアクチュエータの駆動速度だけでなく、駆動力も低下するため、作業性の低下が著しくなり、オペレータにエンジン性能が低下していることを確実に気付かせることができる。これにより水分離装置7に貯留した水の流出に関する深刻性を強くオペレータに認識させ、オペレータに強制的にエンジンを停止させ、水分離装置7の排水作業を行わせることができる。
以上のように構成した本実施の形態によれば以下の効果が得られる。
1.ステップS100においてキースイッチ24から電源ONのキー信号が入力された後、ステップS120において水位センサ10からの水位到達信号の入力を有効にし、ステップS160,S220,S320,S410においてエンジン始動のキー信号が入力されと判定した後、ステップS170,S230,S330,S420において水位到達信号の入力を無効とする処理を行う。このようにエンジン1の始動前の電源ONのキー信号の入力直後のみ、水位センサ10からの水位到達信号の入力を有効とするにより、建設機械の作業時に掘削、走行等により水分離装置が衝撃で大きな振動を受けた場合の水位センサ10の誤検出による車体モニタ22(報知装置)の誤報知やエンジン1の誤制御を防止することができる。
2.ステップS120,S130,S140,S200,S240において、水位到達信号の入力を有効としかつ水位到達信号が入力されたときに車体モニタ22(報知装置)を動作させるとともに、エンジン1の回転数を低下させる回転数制限制御とエンジン1の最大出力馬力を低下させる燃料噴射量制限制御を含むフェールセーフ制御を行う。これによりオペレータに水分離装置に貯留した水の流出に関する深刻性を強く認識させ、オペレータに強制的に水分離装置の排水作業を行わせることが可能となる。
3.ステップS130において前回の電源ONのキー信号入力時に水位到達信号が入力されず、その後エンジンを停止させるまでの間に水分離装置7の水位が所定の高さに到達した場合は、ステップ140において今回の電源ONのキー信号の入力時に水位センサ10から水位到達信号が入力され、ステップS240〜S260において、回転数制限制御と燃料噴射量制限制御並びにエンジン停止制御が行われる。これによりオペレータは、今回のエンジン始動前の電源ONのキー信号の入力時のみに水分離装置7の排水作業を行えばよくなり、作業性に及ぼす影響を最小に留めることができる。
4.エンジンコントローラ40は、水位到達信号が入力されたとき、回転数制限制御と燃料噴射量制限制御を行うだけでなく、更に、ステップS250,S260において、所定時間経過するとエンジン1を停止させるエンジン停止制御を行う。これによりオペレータは水分離装置7の排水作業を行わざるを得なくなり、オペレータに更に強制的に水分離装置7の排水作業を行わせることを可能となる。
5.エンジンコントローラ40は、ステップS130,S300において前回の電源ONのキー信号入力時と今回の電源ONのキー信号入力時の両方で水位到達信号が入力されたと判定したときは、エンジン1の始動を不能とするエンジン始動不能制御を行う。これによりオペレータは水分離装置7の排水作業を行わないと建設機械を稼動できなくなるため、オペレータに確実に水分離装置7の排水作業を行わせることを可能となる。
6.エンジンコントローラ40は、ステップS110において、電源ONのキー信号が入力されたとき、スタータリレー26の接点を遮断し、ステップS130,S300において、前回の電源ONのキー信号入力時と今回の電源ONのキー信号入力時の両方で水位到達信号が入力されたと判定したときは、スタータリレーの接点を遮断したままとすることで、エンジン始動不能制御を行う。これによっても既存のスタータリレー26を用いて、簡易な構成でステップS260のエンジン停止制御を行うことができる。
〜その他〜
なお、上記実施の形態は種々の変形が可能である。以下に幾つかの変形例を説明する。
1.上記実施の形態においては、エンジンコントローラ40は、水位到達信号が入力されたとき、ステップS250,S260において、所定時間経過後にエンジン1を停止させるエンジン停止制御を行ったが、ステップS240の回転数制限制御と燃料噴射量制限制御だけを行ってもよい。その場合でも、アクチュエータの駆動速度だけでなく、駆動力も低下するため、作業性の低下が著しくなり、従来技術に比べ、オペレータにエンジン性能が低下していることを確実に気付かせることができる。
2.上記実施の形態においては、エンジンコントローラ40は、ステップS120において、電源ONのキー信号が入力される都度、水位到達信号の入力の有無を判定し、ステップS130,S300において前回の電源ONのキー信号入力時と今回の電源ONのキー信号入力時の両方で水位到達信号が入力されたと判定したとき、エンジンの始動を不能とするエンジン始動不能制御を行ったが、このエンジン始動不能制御は省略することができる。ただし、このエンジン始動不能制御を設けることにより、上記のように、オペレータは水分離装置7の排水作業を行わないと建設機械を稼動できなくなり、オペレータに確実に水分離装置7の排水作業を行わせることを可能となるため、エンジン保護の観点から極めて好ましい。
3.上記実施の形態においては、ステップS240のフェールセーフ制御において、回転数制限制御と燃料噴射量制限制御を同時に開始する場合を説明したが、回転数制限制御を開始した後、所定時間経過すると燃料噴射量制限制御を行うようにしてもよい。この場合の所定時間は例えば1時間45分であり、その後の燃料噴射量制御の継続時間は例えば15分である。
4.上記実施の形態においては、エンジンコントローラ40にエンジン制御部40a、信号入力制御部40b、報知制御部40cの各機能と、記憶装置40dを設けたが、これらの要素の全て或いは少なくとも一部を車体コントローラ30に設けてもよい。例えば、エンジン制御部40a、信号入力制御部40b、報知制御部40c、記憶装置40dの全てを車体コントローラ30に設けた場合は、水位センサ10からの水位到達信号は車体コントローラ30に入力され、キースイッチ24からのキー信号は例えばエンジンコントローラ40を経由して車体コントローラ30に入力される。車体コントローラ30の報知制御部40cはダイレクトに車体モニタ22(報知装置)に報知信号を出力し、エンジン制御部40aはエンジン制御信号とスタータリレー26の制御信号をエンジンコントローラ40に送信し、エンジンコントローラ40を介してエンジン1の制御とスタータリレー26の接点26aを開閉する制御を行えばよい。
5.上記実施の形態では、建設機械が油圧ショベルである場合について説明したが、水分離装置と水位センサを備えた建設機械であれば、油圧ショベル以外建設機械(例えばホイールローダ、油圧クレーン、ホイール式ショベル等)に本発明を適用してもよく、この場合も同様の効果が得られる。