JP6934774B2 - イミダゾールジペプチド合成活性を有するタンパク質及びイミダゾールジペプチドの製造方法 - Google Patents

イミダゾールジペプチド合成活性を有するタンパク質及びイミダゾールジペプチドの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6934774B2
JP6934774B2 JP2017165715A JP2017165715A JP6934774B2 JP 6934774 B2 JP6934774 B2 JP 6934774B2 JP 2017165715 A JP2017165715 A JP 2017165715A JP 2017165715 A JP2017165715 A JP 2017165715A JP 6934774 B2 JP6934774 B2 JP 6934774B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
protein
seq
residue
amino acid
activity
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017165715A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018102287A (ja
Inventor
木野 邦器
邦器 木野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tokai Bussan Co Ltd
Original Assignee
Tokai Bussan Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tokai Bussan Co Ltd filed Critical Tokai Bussan Co Ltd
Priority to US15/854,921 priority Critical patent/US10704036B2/en
Publication of JP2018102287A publication Critical patent/JP2018102287A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6934774B2 publication Critical patent/JP6934774B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Description

本発明は、カルノシン、アンセリン及びバレニン等のイミダゾールジペプチドに対して合成活性を有するタンパク質及びイミダゾールジペプチドの製造方法に関する。
イミダゾールジペプチドは、イミダゾール基を含むアミノ酸残基が結合したペプチドの総称であり、カルノシン(carnosine:β−alanyl−L−histidine)、アンセリン(anserine:β−alanyl−3−methyl−L−histidine)及びバレニン(balenine:Nα−β−alanyl−1−methyl−L−histidine)等のヒスチジン残基又はその誘導体を含むジペプチドが含まれる。これらのジペプチドは、長距離を飛行する鳥類の胸肉、マグロやカツオ、鯨等の長距離を回遊する海洋生物の筋肉に多く含有されており、抗疲労効果、活性酸素消去能、血圧降下作用、抗炎症作用及び尿酸値効果作用等が知られ、ニワトリ等の家畜の筋肉から抽出されたこれらのイミダゾールジペプチドがサプリメントとして利用されている(非特許文献1〜3)。しかし、カルノシン、アンセリン及びバレニンに対する簡便かつ低コストな製造方法は、まだ確立されていない。
Song B.ら、Nutr Res Pract.2014,8:3−10 Bellia F.ら、Molecules 2014,19:2299−2329 Boldyrev A.A.ら、Physiol Rev.2013,93:1803−45
本発明は、簡便に、かつ、低コストでこれらのイミダゾールジペプチドを提供することを目的に、カルノシン及びアンセリン及びバレニンのイミダゾールジペプチドを高効率で生産可能なタンパク質、及び、該タンパク質をコードする遺伝子を導入した宿主細胞、並びに前記タンパク質を使用した前記イミダゾールペプチドの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、L−アミノ酸α−リガーゼが、ATPの加水分解反応と共役し、無保護のアミノ酸を基質としてαペプチド結合を形成することによりペプチド合成を触媒する酵素であることに着目し、バチルス属由来でL−アミノ酸α−リガーゼ活性を有するタンパク質YwfEの部位特異的変異を導入した変異型酵素を作製し、そのイミダゾールジペプチド合成活性を評価し、特定の部位を特定のアミノ酸残基に置換した変異型酵素が、強いイミダゾールペプチド合成活性、特に、カルノシン合成活性、アンセリン合成活性及び/又はバレニン合成活性を有することを見出し、本発明を完成させた。
具体的には、本発明は、配列番号1で表されるL−アミノ酸α−リガーゼ:YwfEのアミノ酸配列の少なくとも1〜3個のアミノ酸残基の置換を含む変異タンパク質であり、
N末端より108位のアスパラギン(N)残基がアラニン(A)残基、グルタミン酸(E)残基又はグルタミン(Q)残基に置換され、又は、さらに、
112位のイソロイシン(I)残基がバリン(V)残基に置換され、及び/又は、378位のヒスチジン(H)残基がリジン(K)残基又はアルギニン(R)残基に置換されていることを特徴とする、変異タンパク質を提供する。
本発明の前記変異タンパク質が、L−アミノ酸α−リガーゼ活性を有する場合がある。
本発明の前記変異タンパク質が、
(i)配列番号2〜16のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号2〜16のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、かつ、L−アミノ酸α−リガーゼ活性を有するタンパク質、
(iii)配列番号2〜16のアミノ酸配列の1又は複数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、L−アミノ酸α−リガーゼ活性を有するタンパク質の場合がある。
本発明において、前記L−アミノ酸α−リガーゼ活性が、カルノシン合成活性、アンセリン合成活性及び/又はバレニン合成活性から選択される場合がある。
本発明において、前記L−アミノ酸α−リガーゼ活性が、カルノシン合成活性の場合に、前記変異タンパク質が、
(i)配列番号2〜4、6、7、9、10、12〜16のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号2〜4、6、7、9、10、12〜16のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、かつ、カルノシン合成活性を有するタンパク質、
(iii)配列番号2〜4、6、7、9、10、12〜16のアミノ酸配列の1又は複数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、カルノシン合成活性を有するタンパク質の場合がある。
本発明において、前記L−アミノ酸α−リガーゼ活性が、アンセリン合成活性の場合に、前記変異タンパク質が、
(i)配列番号2、3、5、6、8〜16のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号2、3、5、6、8〜16のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、かつ、アンセリン合成活性を有するタンパク質、
(iii)配列番号2、3、5、6、8〜16のアミノ酸配列の1又は複数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アンセリン合成活性を有するタンパク質、
であることを特徴とする、請求項4に記載の変異タンパク質。
本発明において、前記L−アミノ酸α−リガーゼ活性が、バレニン合成活性の場合に、前記変異タンパク質が、
(i)配列番号6、7、11、14〜16のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号6、7、11、14〜16のアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、かつ、バレニン合成活性を有するタンパク質、
(iii)配列番号6、7、11、14〜16のアミノ酸配列の1又は複数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、バレニン合成活性を有するタンパク質の場合がある。
本発明は、本発明の変異タンパク質をコードする、核酸を提供する。
本発明は、本発明の核酸を含むポリヌクレオチドを挿入した、ベクターを提供する。
本発明は、本発明のベクターを少なくとも1種以上を含む、宿主細胞を提供する。
本発明は、本発明の変異タンパク質を使用する、ジペプチドの製造方法を提供する。
本発明の製造方法において、ペプチダーゼの活性阻害剤とともに、本発明のタンパク質を使用する場合がある。
本発明の製造方法において、本発明の宿主細胞を使用する場合がある。
本発明の製造方法において、前記宿主細胞が、ペプチダーゼの欠損細胞である場合がある。
本発明の製造方法において、前記ペプチダーゼがペプチダーゼDである場合がある。
本発明の製造方法において、前記欠損細胞が、JW0227株である場合がある。
本発明の製造方法において、前記ジペプチドが、イミダゾールジペプチドである場合がある。
本発明の製造方法において、前記イミダゾールジペプチドが、カルノシン、アンセリン及び/又はバレニンである場合がある。
イミダゾールジペプチドを高効率で生産するタンパク質、及び、該タンパク質を含有する宿主細胞を提供することにより、簡便に低コストでこれらのカルノシン、アンセリン及びバレニンを含むイミダゾールジペプチドを提供できる。また宿主細胞として、ペプチダーゼ欠損細胞を用いることで、イミダゾールジペプチド、特にカルノシンを高効率で製造できる。
野生型YwfE及び部位特異的変異型YwfEを含む変異型酵素のカルノシン合成活性を評価した結果を表す図。 図中、*は、p値が0.05未満であることを示し、**は、p値が0.01未満であることを示し、***は、p値が0.001未満であることを示す。 野生型YwfE及び部位特異的変異型YwfEを含む変異型酵素のアンセリン合成活性を評価した結果を表す図。 図中、*は、p値が0.05未満であることを示し、**は、p値が0.01未満であることを示し、***は、p値が0.001未満であることを示す。 野生型YwfE及び部位特異的変異型YwfEを含む変異型酵素のバレニン合成活性を評価した結果を表す図。 図中、*は、p値が0.05未満であることを示し、**は、p値が0.01未満であることを示し、***は、p値が0.001未満であることを示す。 カルノシン合成におけるペプチダーゼの影響を評価した結果を表す図。
1.本発明のタンパク質
本発明の実施態様の1つは、バチルス属細菌であるBacillus subtilis由来でL−アミノ酸α−リガーゼ活性を有するタンパク質YwfEの変異型酵素である。
本明細書において、前記L−アミノ酸α−リガーゼ活性は、イミダゾールジペプチド合成活性であり、イミダゾールジペプチドとしては、カルノシン、アンセリン及びバレニンが挙げられる。
前記変異型酵素は、野生型YwfEのN末端より108位のアスパラギン(N)残基がアラニン(A)残基、グルタミン酸(E)残基又はグルタミン(Q)残基に置換され、又は、さらに、112位のイソロイシン(I)残基がバリン(V)残基に置換され、及び/又は、378位のヒスチジン(H)残基がリジン(K)残基又はアルギニン(R)残基に置換させることにより、N末端側基質がβ−アラニンで、C末端側基質がヒスチジン又はその誘導体であるアミノ酸に対するリガーゼ活性が向上した酵素である。
なお、本明細書において、タンパク質の配列は、当業者に周知慣用のアミノ酸の3文字又は1文字による表記法で記述される。本明細書においてアミノ酸は、特に記載のない限りL体である。また、変異型タンパク質を表す場合、当業者に周知慣用の方法である野生型タンパク質の変異が導入されるアミノ酸の1文字表記、変異位置を表す数字、及び、変異されたアミノ酸の1文字表記が使用される。また、本明細書において、特段の説明がない場合には、アミノ酸はL−体を表す。
具体的には、本発明のタンパク質である前記変異型酵素は、配列番号1で表されるL−アミノ酸α−リガーゼ:YwfEのアミノ酸配列の少なくとも1〜3個のアミノ酸残基の置換を含む変異タンパク質であり、
N末端より108位のアスパラギン(N)残基がアラニン(A)残基、グルタミン酸(E)残基又はグルタミン(Q)残基に置換され、又は、さらに、
112位のイソロイシン(I)残基がバリン(V)残基に置換され、及び/又は、378位のヒスチジン(H)残基がリジン(K)残基又はアルギニン(R)残基に置換されていることを特徴とする、変異タンパク質を提供する。
すなわち、本発明のタンパク質は、
(i)配列番号2〜16のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号2〜16のアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の相同性を有し、かつ、L−アミノ酸α−リガーゼ活性を有するタンパク質、
(iii)配列番号2〜16のアミノ酸配列の1又は複数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、L−アミノ酸α−リガーゼ活性を有するタンパク質であってもよい。
また、前記L−アミノ酸α−リガーゼ活性は、好ましくはジペプチド合成活性であり、より好ましくは、カルノシン(L−Carnosine)合成活性、アンセリン(L−Anserine)合成活性及び/又はバレニン(L−Balenine)合成活性である。
Figure 0006934774
Figure 0006934774
Figure 0006934774
本明細書において、前記の「L−アミノ酸α−リガーゼ活性を有する限り」とは、野生型YwfEのL−アミノ酸α−リガーゼ活性と同等又はより向上した活性をいい、野生型YwfEと本発明のタンパク質の活性とを被験タンパク質の相違以外は同一条件で比較した場合に、野生型YwfEのL−アミノ酸α−リガーゼ活性と比較して、向上したL−アミノ酸α−リガーゼ活性を示すタンパク質をいう。
本明細書において、L−アミノ酸α−リガーゼ活性、特に、ジペプチド合成活性の評価は、例えば、被験タンパク質、基質であるアミノ酸、ATPを含む例えばpH5〜11の緩衝水溶液中で、例えば20〜50℃の所定の温度で、例えば2〜150時間の所定の時間インキュベーションし、インキュベーションによって産生するジペプチドの量若しくは濃度の増加、基質であるアミノ酸の量若しくは濃度の減少、ATPの量若しくは濃度の減少、ADPの量若しくは濃度の増加、又は無機リン酸の量若しくは濃度の増加の中の少なくとも1つを指標として、例えば、高速液体クロマトグラフィー等を用いて測定し、被験タンパク質以外の条件が同一条件で測定する野生型YwfEのジペプチド合成活性と比較することにより、実施できる。
また、本明細書において、「配列番号XのN末端からY番目のZ残基(Z)に相当するアミノ酸残基をZ残基(Z)に置換したタンパク質」(「X」及び「Y」は、1以上の整数を、「Z」及び「Z」は任意のアミノ酸を表し、「(Z)」及び「(Z)」は、それぞれのアミノ酸を1文字表記したものである)とは、前記タンパク質のアミノ酸配列と、配列番号Xとを最も高い相同性スコアを与えるようにアライメントしたときに、配列番号Xのアミノ酸配列のN末端からY番目の位置に相当するZ残基がZ残基に置換されたアミノ酸配列を有するタンパク質をいう。
以下に、本発明のタンパク質の特性を詳細に説明する。
バチルス属由来でL−アミノ酸α−リガーゼ活性を有するタンパク質YwfEの野生型タンパク質自体は、C末端がL−ヒスチジンであるジペプチドの合成活性を有するものの(Tabata K.ら、J.Bacteriol.,2005,187:5195-5202)、N末端がβ−アラニンでC末端がヒスチジンのジペプチドであるカルノシン並びにその誘導体であるアンセリン及びバレニンの産生に対して、強いα−リガーゼ活性を保有しない(図2参照)。すなわち、強いカルノシン合成活性、強いアンセリン合成活性及びバレニン合成活性は、YwfEの野生型タンパク質に対して変異体とすることにより、もたらされる。
本発明のタンパク質のL−アミノ酸α−リガーゼ活性の発現において、N末端基質としてAla及びGlyを、C末端基質としてHisを使用する場合と比較し、N末端基質としてβ−Alaを、C末端基質としてHisを使用する場合には、より強い活性を示し、本発明のタンパク質は、特に、カルノシン又はその誘導体であるアンセリン若しくはバレニンの合成に対して選択的な強い活性を有する。カルノシン又はその誘導体であるアンセリン若しくはバレニンの合成に対する至適な変異型酵素は必ずしも一致しない。
そして、本発明の1アミノ酸変異型タンパク質から得られた特性に基づき、本発明は2個又は3個のアミノ酸残基を置換した変異型酵素が設計され、二重変異型酵素又は三重変異型酵素であるタンパク質が本発明によって提供される。
N108A、N108E又はN108Qの変異、I112Vの変異、H378K又はH378Rの変異、並びに、これらの変異の組み合わせによる二重変異型酵素又は三重変異型酵素の多くにおいて、カルノシン合成活性と、アンセリン合成活性と、バレニン合成活性とは野生型YwfEの各活性よりも活性が向上するが、必ずしも全ての活性が同様に向上するとは限らない。
すなわち、本発明の前記タンパク質の前記L−アミノ酸α−リガーゼ活性の例がカルノシン合成活性である場合、該タンパク質は、配列番号1のN末端から108番目のアスパラギン(N)残基の、アラニン(A)残基、グルタミン酸(E)残基又はグルタミン(Q)残基から選択されるアミノ酸残基への置換;配列番号1のN末端から112位のイソロイシン(I)残基の、バリン(V)残基への置換;及び/又は、配列番号1の378番目のヒスチジン(H)残基の、リジン(K)残基又はアルギニン(R)残基への置換を含むことが好ましい。
また、本発明の前記タンパク質の前記L−アミノ酸α−リガーゼ活性の例がアンセリン合成活性である場合、該タンパク質は、配列番号1のN末端から108番目のアスパラギン(N)残基の、アラニン(A)残基、グルタミン酸(E)残基又はグルタミン(Q)残基から選択されるアミノ酸残基への置換;配列番号1のN末端から112位のイソロイシン(I)残基の、バリン(V)残基への置換;及び/又は、配列番号1の378番目のヒスチジン(H)残基の、リジン(K)残基又はアルギニン(R)残基への置換を含むことが好ましい。
さらに、本発明の前記タンパク質の前記L−アミノ酸α−リガーゼ活性の例がバレニン合成活性である場合、該タンパク質は、配列番号1のN末端から108番目のアスパラギン(N)の、アラニン(A)残基又はグルタミン(Q)残基から選択されるアミノ酸残基への置換;配列番号1のN末端から112位のイソロイシン(I)残基の、バリン(V)残基への置換;及び/又は、配列番号1の378番目のヒスチジン(H)残基の、リジン(K)残基又はアルギニン(R)残基への置換を含むことが好ましい。
前記YwfEの変異タンパク質は、例えば、配列番号17で表されるDNAをテンプレートとして、配列番号33〜44に示される核酸配列を有するプライマーを用い、当業者に周知慣用のPCRにより部位特異的変異導入を行い、下記に記載の本発明の配列番号2〜16のタンパク質をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを挿入したベクター(以下、「核酸挿入ベクター」と記載)、さらに該核酸挿入ベクターを導入した下記の本発明の核酸挿入ベクターを含む宿主細胞(以下、「形質転換細胞」と記載する場合がある)を作製し、該形質転換細胞を含む宿主細胞を適切な培地で培養し、該形質転換体により製造されたタンパク質を塩沈法、ゲルクロマトグラフィー、ゲル電気泳動法等の通常の酵素の単離精製法を用いることにより、単離精製し、1変異型酵素を製造することができる。
前記テンプレートとして使用するDNAは、例えば、配列番号17のポリヌクレオチド配列の部分配列より設計されるプローブを用い、Bacillus subtilis 168等のYwfEタンパク質又はその類縁タンパク質をコードする微生物の染色体DNAに対するサザンハイブリダイゼーション法等により全長の配列番号17のポリヌクレオチドを取得できる。
また、二重変異型酵素は、前記1変異型酵素の製造で使用した1変異型の部位特異的変異を導入した核酸挿入ベクターをテンプレートとして、さらに、配列番号33〜44に示される核酸配列を有するプライマーを用い、当業者に周知慣用のPCRにより部位特異的変異導入を行い、1変異型酵素の製造と同様に、二重変異を導入した核酸ベクターを含む宿主細胞を適切な培地で培養後、二重変異型酵素を単離精製することにより製造できる。
さらに、三重変異型酵素は、前記2変異型酵素の製造で使用した2変異型の部位特異的変異を導入した核酸挿入ベクターをテンプレートとして、さらに、配列番号33〜44に示される核酸配列を有するプライマーを用い、当業者に周知慣用のPCRにより部位特異的変異導入を行い、2変異型酵素の製造と同様に、三重変異を導入した核酸ベクターを含む宿主細胞を適切な培地で培養後、三重変異型酵素を単離精製することにより製造できる。
そして、本発明のタンパク質は、カルノシン、アンセリン又はバレニンを製造するための酵素として使用され、さらに、該タンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸を導入した形質転換細胞を作製し、該形質転換細胞の細胞培養によりカルノシン、アンセリン及び/又はバレニンの製造に利用される。
2.本発明の核酸
本発明のもう1つの実施態様は核酸であり、
(i)配列番号2〜16のアミノ酸配列を有するタンパク質、
(ii)配列番号2〜16のアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の相同性を有し、かつ、L−アミノ酸α−リガーゼ活性を有するタンパク質、
(iii)配列番号2〜16のアミノ酸配列の1又は複数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、L−アミノ酸α−リガーゼ活性を有するタンパク質をコードする核酸を挙げることができる。
前記核酸は、例えば、配列番号17のポリヌクレオチド配列より設計されるプライマーを用い、Bacillus subtilis 168等のYwfEタンパク質又はその類縁タンパク質をコードする微生物の染色体DNAを鋳型とした部位特異的変異法を用いて部位特異的変異の導入によって取得される。
鋳型遺伝子への目的の変異導入は、より具体的には、基本的には配列番号17のポリヌクレオチドを鋳型DNAとして用いるPCR増幅や各種DNAポリメラーゼによる複製反応に基づき、当業者には周知の様々な部位特異的変異導入法を用いて行うことができる。部位特異的変異導入法は、例えば、PCR法やアニーリング法等(村松ら編、「改訂第4版 新遺伝子工学ハンドブック」、羊土社、p.82−88)の任意の手法により行うことができる。必要に応じてQuickChange II Site−Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社、米国)や、QuickChange Multi Site−Directed Mutagenesis Kit(アジレント テクノロジー社、米国)等の各種の市販の部位特異的変異導入用キットを使用することもできる。
YwfE遺伝子を含む鋳型DNAは、YwfEタンパク質を産生する細菌から、常法により、ゲノムDNAを抽出するか、又はRNAを抽出し逆転写によりcDNAを合成することによって調製することができる。YwfEタンパク質を産生する細菌は、枯草菌(Bacillus subtilis)等のバチルス属細菌、クロストリジウム属細菌、アシドサーマス属細菌を含む細菌の他、植物や動物でも報告されているが、枯草菌(Bacillus subtilis)等のバチルス属細菌が好ましく、当業者であれば容易に入手することができる。例えば、バチルス・エスピーのKSM−S237株(受託番号FERM BP−7875)、KSM−64株(受託番号FERM BP−2886)、KSM−635株(受託番号FERM BP−1485)は、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に、それぞれ併記した受託番号に基づいて寄託されている。
これらバチルス属細菌からのゲノムDNAの調製は、例えば、Pitcher et al.,Lett.Appl.Microbiol.,1989,8:p.151−156に記載の方法等を用いて行うことができる。YwfE遺伝子を含む鋳型DNAは、調製したcDNA又はゲノムDNAから切り出したYwfE遺伝子を含むDNA断片を任意のベクター中に挿入した形で調製してもよい。
YwfE遺伝子への部位特異的変異の導入は、最も一般的には、導入すべきヌクレオチド変異を含む変異プライマーを用いて行うことができる。そのような変異プライマーは、YwfE遺伝子内の置換対象のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列を含む領域にアニーリングし、かつその置換対象のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(コドン)に代えて置換後のアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列(コドン)を有する塩基配列を含むように設計すればよい。
これらの方法で取得された核酸を用い、下記の本発明のタンパク質を宿主細胞で発現させるためのベクターの調製、該ベクターを導入した宿主細胞、すなわち、形質転換細胞の作製、さらに、前記の本発明のタンパク質の製造に使用できる。
3.本発明のタンパク質をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを挿入したベクター(核酸挿入ベクター)
本発明のもう1つの実施態様は、前記の本発明のタンパク質をコードする遺伝子及び適切な発現配列を含む核酸挿入ベクターである。これらの組換えDNAを作製するための発現ベクターは、商業的に利用可能である。これらのベクターを入手し、利用することにより本発明の核酸挿入ベクターを作製し、下記の本核酸挿入ベクターを含む宿主細胞、すなわち形質転換細胞の作製に使用することができる。
ベクターとしては、例えば、宿主細胞にエシェリヒア・コリを用いる場合、pColdI(タカラバイオ社製)、pCDF−1b、pRSF−1b(いずれもノバジェン社製)、pMAL−c2x(ニューイングランドバイオラブス社製)、pGEX−4T−1(ジーイーヘルスケアバイオサイエンス社製)、pTrcHis(インビトロジェン社製)、pSE280(インビトロジェン社製)、pGEMEX−1(プロメガ社製)、pQE−30(キアゲン社製)、pET−3(ノバジェン社製)、pBluescriptII SK(+)、pBluescript II KS(−)(ストラタジーン社製)、pTrS30[エシェリヒア・コリ JM109/pTrS30(FERM BP−5407)より調製]、等を挙げることができる。
前記ベクターを用いる場合のプロモーターとしては、エシェリヒア・コリ等の宿主細胞中で機能するものであればいかなるものでもよいが、例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)、PLプロモーター、PRプロモーター、PSEプロモーター等の、エシェリヒア・コリやファージ等に由来するプロモーターを用いることができる。また親株としてバチルス属に属する微生物を用いる場合、バチルス・サチルスで機能するSPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等も用いることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター、tacプロモーター、lacT7プロモーター、let Iプロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
本発明のタンパク質を生成する目的において、ベクターを利用する場合には、特に発現ベクターが有用である。発現ベクターとしては、試験管内、大腸菌内、培養細胞内、生物個体内でタンパク質を発現するベクターであれば特に制限されないが、例えば、試験管内発現であればpBESTベクター(プロメガ社製)、大腸菌であればpETベクター(インビトロジェン社製)、培養細胞であればpME18S−FL3ベクター(GenBank Accession No.AB009864)、生物個体であればpME18Sベクター(Mol Cell Biol.8:466−472(1988))等が好ましい。ベクターへの本発明のDNAの挿入は、常法により、例えば、制限酵素サイトを用いたリガーゼ反応により行うことができる(Current protocols in Molecular Biology Edited by Ausubel et al.(1987)Publish. John Wiley & Sons.Section 11.4−11.11)。
4.本発明の宿主細胞
本発明のもう1つの実施態様は、前記核酸挿入ベクターを宿主細胞に導入し、本発明の前記タンパク質を発現する形質転換された宿主細胞である。核酸挿入ベクターを宿主細胞に導入するための試薬は、各種の試薬が商業的に利用可能であり、これらを入手して形質転換細胞の作製に使用できる。
宿主細胞は酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、動物細胞、昆虫細胞、細菌細胞、植物細胞及び古細菌細胞から選択され、好ましくは、細菌細胞である。細菌細胞の例としては、Escherichia細胞、Bacillus細胞、Lactobacillus細胞、Rhodococcus細胞、Pseudomonas細胞、Aspergillus細胞等が挙げられるが、これらに限定されない。イミダゾールジペプチド生成物(例えば、カルノシン、アンセリン、バレニン)を高効率に製造する観点から、前記宿主細胞は、イミダゾールジペプチドの分解酵素、具体的にはペプチダーゼDの欠損細胞であることが好ましい。
具体的には、本発明のベクターを導入する宿主細胞の例としては、エシェリヒア(Escherichia)属細菌、例えば、大腸菌、放線菌(Actinomycetes)属細菌、バチルス(Bacillus)属細菌、セラチア(Serratia)属細菌、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属細菌、ラクトバチルス(Lactobacillus)属細菌、ストレプトマイセス(Streptomyces)属細菌、サーマス(Thermus)属細菌、ストレプトコッカス(Streptococcus)属細菌、サッカロミセス(Saccharomyces)属酵母、ピキア(Pichia)属酵母、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属酵母、キャンディダ(Candida)属酵母、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属酵母、デバリヨミセス(Debaryomyces)属酵母、ヤロウィア(Yarrowia)属酵母、クリプトコッカス(Cryptococcus)属酵母、キサントフィロミセス(Xanthophyllomyces)属酵母、モルティエレラ(Mortierella)属糸状菌、フザリウム(Fusarium)属糸状菌、シゾキトリウム(Schizochytrium)属、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)属等に属する微生物を好適に用いることができる。好ましくは、宿主細胞は大腸菌、放線菌、シュードモナス属に属する細菌、サッカロミセス属に属する酵母である。
本発明の宿主細胞は、より具体的には、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、バチルス・サチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、セラチア・マーセッセンス(Serratia marcescens)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)、ストレプトコッカス・ラクティス(Streptococcus lactis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、キャンディダ・ユティリス(Candida utilis)、キャンディダ・グラブラータ(Candida glabrata)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、デバリヨミセス・ハンセニ(Debaryomyces hansenii)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lypolitica)、クリプトコッカス・カバタス(Cryptococcus curvatus)、キサントフィロミセス・デンドロロウス(Xanthophyllomyces dendrorhous)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus nigar)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、モルティエレラ・ラマニアナ(Mortierella ramanniana)、モルティエレラ・バイニエリ(Mortierella bainieri)、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)カニンガメラ・エレガンス(Cunninghamella elegans)、フザリウム・フジクロイ(Fusarium fujikuroi)、シゾキトリウム・リマシアム(Schizochytrium limacium)、スラウストキトリウム・アウレウム(Thraustochytrium aureum)等を用いることができる。
宿主細胞への前記核酸挿入ベクターの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、リポソーム媒介トランスフェクション(リポフェクション)、接合、天然の形質転換、エレクトロポレーション及び当業者に公知のその他の方法を含む様々な方法によって実施できる。また、商業的に利用可能なトランスフェクション試薬を入手し、これらを利用することにより、宿主細胞への前記発現ベクターの導入を実施できる。[参考文献:Current protocols in molecular biology. 3 vols. Edited by Ausubel F.M.et al., John Wiley & Son,Inc., Current Protocols.]
5.本発明のジペプチドの製造方法
前記の本発明のタンパク質又は形質転換細胞を用い、本発明のタンパク質の基質となる製造原料であるアミノ酸をATPの共存下、緩衝液中でインキュベーションする又は細胞培養用培地中で細胞培養することにより産生される所望とするジペプチドを緩衝液又は培地から単離することにより、これらのジペプチドを製造できる。原料とするアミノ酸としては、L−アラニン(L−Ala)、L−グルタミン(L−Gln)、L−グルタミン酸(L−Glu)、L−バリン(L−Val)、L−ロイシン(L−Leu)、L−イソロイシン(L−Ile)、L−プロリン(L−Pro)、L−フェニルアラニン(L−Phe)、L−トリプトファン(L−Trp)、L−メチオニン(L−Met)、L−セリン(L−Ser)、L−スレオニン(L−Thr)、L−システイン(L−Cys)、L−アスパラギン(L−Asn)、L−チロシン(L−Tyr)、L−リジン(L−Lys)、L−アルギニン(L−Arg)、L−ヒスチジン(L−His)、L−アスパラギン酸(L−Asp)、L−α−Aminobutyric acid、L−Azaserine、L−Theanine、L−4−Hydroxyproline、L−3−Hydroxyproline、L−Ornithine、L−Citrulline、L−6−Diazo−5−oxo−norleucine、グリシン(Gly)及びβ−アラニン(β−Ala)からなる群より選ばれる1種又は2種のアミノ酸の組み合わせを挙げることができる。
緩衝液としては、例えば、当業者に慣用のリン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液及びトリス塩酸緩衝液等が挙げられる。
細胞培養培地に含まれる成分として、炭素源としては、宿主細胞及び形質転換細胞が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類等を用いることができる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、並びに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕及び大豆粕加水分解物、各種発酵菌体、及びその消化物等を用いることができる。
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。この他にペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、カザミノ酸、ビオチン等の各種ビタミン等の栄養素を培地に添加することができる。
培養は、通常、通気撹拌、振とう等の好気条件下で行う。培養温度は、宿主細胞又は形質転換細胞の生育し得る温度であれば特に制限はなく、また、培養途中のpHについても宿主細胞又は形質転換細胞が生育し得るpHであれば特に制限はない。培養中のpH調整は、酸又はアルカリを添加して行うことができる。
上記培養において、ペプチダーゼによるイミダゾールジペプチド生成物(例えば、カルノシン、アンセリン、バレニン)の分解を妨げるために、本発明のタンパク質を使用する場合にペプチダーゼ、特にペプチダーゼDの活性阻害剤を用いる、又は、宿主細胞を用いる場合に宿主細胞としてペプチダーゼの欠損細胞、特にJW0227株を用いることにより、カルノシン、アンセリン及び/又はバレニンを高効率で製造することができる。
培養物からの所望とする酵素の採取は、所望とする酵素の活性を指標として公知の採取方法により行うことができる。所望とする酵素は必ずしも均一にまで精製される必要はなく、用途に応じた精製度まで精製すればよい。
以下に、ジペプチドがカルシノン、アンセリン及びバレニンの場合について、より具体的に説明する。
(1)本発明のタンパク質を基質であるアミノ酸を含む緩衝液中でインキュベーションすることによるカルノシンの製造方法
カルノシンは、β−アラニンとL−ヒスチジンとを基質として、本発明のタンパク質が触媒として縮合反応することにより産生される。したがって、β−アラニン及びL−ヒスチジンを含む緩衝液に本発明のタンパク質を添加し所定の時間インキュベーション後、産生されるカルノシンを単離精製することにより、所望とするカルノシンを製造できる。
前記製造法において、本発明のタンパク質は、基質として用いるアミノ酸1mgあたり0.01〜100mg、好ましくは0.1〜10mg添加する。前記製造法において、基質として用いるアミノ酸は、0.1〜100g/L、好ましくは0.2〜40g/Lの濃度になるように水性媒体中に初発又は反応途中に添加する。前記製造法において、エネルギー源としてATPを用いることができ、ATPは、0.5〜1mol/Lの濃度で用いる。
インキュベーションによる生成反応は水性媒体中、pH5〜11、好ましくはpH6〜10、20〜50℃、好ましくは25〜45℃の条件で2〜72時間、好ましくは6〜36時間行う。
緩衝液中に生成、蓄積したカルノシンの単離・精製は、当業者に慣用の活性炭やイオン交換樹脂等を用いる方法あるいは、有機溶媒による抽出、結晶化、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等により行うことができる。
(2)本発明を使用するカルノシンの製造方法
カルノシンは、β−アラニンとL−ヒスチジンとを基質として、本発明のタンパク質が触媒として縮合反応することにより生成される。したがって、β−アラニン及びL−ヒスチジンを含む細胞培養用培地で本発明の形質転換細胞を培養後、産生されるカルノシンを単離精製することにより、所望とするカルノシンを製造し、取得できる。
前記製造法において、本発明のタンパク質は、基質として用いるアミノ酸1mgあたり0.01〜100mg、好ましくは0.1〜10mg添加する。前記製造法において、添加するβ−アラニンとL−ヒスチジンの量は、各々通常0.5〜100g/L、好ましくは2〜50g/Lである。これらのアミノ酸を含む細胞培地において、本発明の形質転換細胞を、当業者に周知慣用の方法に従って培養する。
培養は、通常振盪培養又は深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常5時間〜7日間である。培養中pHは3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機又は有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。
緩衝液中に生成、蓄積したカルノシンの単離・精製は、当業者に慣用の活性炭やイオン交換樹脂等を用いる方法あるいは、有機溶媒による抽出、結晶化、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等により行うことができる。
(3)本発明のタンパク質を基質であるアミノ酸を含む緩衝液中でインキュベーションすることによるアンセリンの製造方法
アンセリンは、β−アラニンと3−メチル−L−ヒスチジンとがペプチド結合したジペプチドである。したがって、本発明のタンパク質を利用してアンセリンを製造する場合には、前記の「(1)本発明のタンパク質を基質であるアミノ酸を含む緩衝液中でインキュベーションすることによるカルノシンの製造方法」に記載において、基質の1つであるL−ヒスチジンの代わりに3−メチル−L−ヒスチジンを使用する以外は、該「(1)カルノシンの製造方法」と同様の条件でインキュベーションし、単離・精製することにより、アンセリンを製造し、取得できる。
(4)本発明の形質転換細胞を使用するアンセリンの製造方法
アンセリンは、β−アラニンと3−メチル−L−ヒスチジンとがペプチド結合したジペプチドである。したがって、本発明のタンパク質を利用してアンセリンを製造する場合には、前記の「(2)本発明の形質転換細胞を使用するカルノシンの製造方法」に記載において、基質の1つであるL−ヒスチジンの代わりに3−メチル−L−ヒスチジンを使用する以外は、「(2)本発明の形質転換細胞を使用するカルノシンの製造方法」と同様の条件で、実施することにより、アンセリンを製造し、取得できる。
(5)本発明のタンパク質を基質であるアミノ酸を含む緩衝液中でインキュベーションすることによるバレニンの製造方法
アンセリンは、β−アラニンと1−メチル−L−ヒスチジンとがペプチド結合したジペプチドである。したがって、本発明のタンパク質を利用してバレニンを製造する場合には、前記の「(1)本発明のタンパク質を基質であるアミノ酸を含む緩衝液中でインキュベーションすることによるカルノシンの製造方法」に記載において、基質の1つであるL−ヒスチジンの代わりに1−メチル−L−ヒスチジンを使用する以外は、該「(1)カルノシンの製造方法」と同様の条件でインキュベーションし、単離・精製することにより、バレニンを製造し、取得できる。
(6)本発明の形質転換細胞を使用するバレニンの製造方法
バレニンは、β−アラニンと1−メチル−L−ヒスチジンとがペプチド結合したジペプチドである。したがって、本発明のタンパク質を利用してバレニンを製造する場合には、前記の「(2)本発明の形質転換細胞を使用するカルノシンの製造方法」に記載において、基質の1つであるL−ヒスチジンの代わりに1−メチル−L−ヒスチジンを使用する以外は、「(2)本発明の形質転換細胞を使用するカルノシンの製造方法」と同様の条件で、実施することにより、バレニンを製造し、取得できる。
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。ここに記述される実施例は本発明の実施形態を例示するものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
以下の実施例において、ポリヌクレオチド(DNA、mRNA)の調製、PCR、塩基配列決定、形質転換、タンパク質の発現、タンパク質の精製、HPLC分析等は、当業者に周知慣用の方法を用いて行うことができる。例えば、Sambrook、J.及びRussell、D.W.、Molecular Cloning A Laboratory Manual 4rd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2012)等を参照せよ。
YwfEへの部位特異的変異の導入
YwfE遺伝子(配列番号11)を組み込んだpETベクターを鋳型として、製造者の指示に従ってQuick Change Site−Directed Mutagenesis(Strategene、米国)を用いて目的の変異を導入した。PCR反応は、表1(組成)及び表2(PCRサイクル)に示す反応条件で実施した。PCR反応では、KOD−Plus−Neo−DNA polymerase(Toyobo Co., Ltd.、大阪)を用いた。プライマー(配列番号33〜44)を使用し、N1
08A、N108E又はN108Qの部位特異的変異を導入したベクターを得た。なお、N108Aに対するベクターはYwfEタンパク質のN末端から108番目のアスパラギン(N)残基をアラニン(A)残基に置換したYwfEタンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号18)を、N108Eに対するベクターはYwfEタンパク質の108番目のアスパラギン(N)残基をグルタミン酸(E)残基に置換したYwfEタンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号19)を、N108Qに対するベクターはYwfEタンパク質の108番目のアスパラギン(N)残基をグルタミン(Q)残基に置換したYwfEタンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号20)を表す。
Figure 0006934774
Figure 0006934774
PCR反応後、得られたPCR産物について、DNAシークエンサー(アプライドバイオシステムズ、ライフテクノロジーズジャパン株式会社、東京)で解析し、部位特異的変異が導入されたかを確認した。
大腸菌から抽出されたベクターは、Damメチラーゼにより、Dpn Iサイトがメチル化されている一方、PCR産物は、Dpn Iサイトがメチル化されていないため、これを利用することにより、鋳型ベクターと、PCR産物とを区別できる。簡潔には、PCR後の反応液に含まれる鋳型ベクターを除去するために、精製したPCR産物をDpn Iで37℃、2時間処理した。制限酵素反応は、表3に示した反応条件で実施した。
Figure 0006934774
Dpn Iでの消化後、フェノール・クロロホルム処理及びエタノール沈殿によって精製した部位特異的変異導入ベクターを、TE緩衝液pH8.0に溶解した。
部位特異的変異導入ベクターによる大腸菌JM109の形質転換
大腸菌JM109のコンピテントセルと、部位特異的変異導入ベクターとをともに、42℃で熱処理した。その後SOC培地を加えて培養し、カナマイシン50μg/mL含有LB寒天培地に植菌し、37℃で終夜培養した。
生育したコロニーから1つのコロニーを選択し、カナマイシン含有LB培地3mLに懸濁し、37℃で5時間培養した。培養後、アルカリSDS法により形質転換細胞から部位特異的変異導入ベクターを抽出した。抽出した部位特異的変異導入ベクターをフェノール・クロロホルム処理とエタノール沈殿により精製し、TE緩衝液(pH8.0)に溶解した。
精製酵素の調製
部位特異的変異導入ベクターによる大腸菌BL21の形質転換
精製した部位特異的変異導入ベクターを用いて、ヒートショック法により大腸菌BL21の形質転換を行った。大腸菌BL21のコンピテントセルと部位特異的変異導入ベクターとをともに、42℃で熱処理した。その後SOC培地を加えて培養し、カナマイシン50μg/mL含有LB寒天培地に植菌し、37℃で終夜培養した。ここでコロニーを形成した大腸菌を、YwfE発現形質転換細胞とした。
IPTGによる発現誘導
生育したYwfE発現形質転換細胞のコロニーから1つのコロニーを選択し、試験管中でカナマイシン含有LB培地3mLに懸濁して、37℃で5時間、前培養を行った。次に、500mLバッフル付エルレンマイヤーフラスコ中のカナマイシン含有LB培地200mLに前培養液2mLを添加した。37℃、120rpmで2時間本培養した後、100mM IPTG 200μLを添加した。IPTG添加後の培養液を25℃、120rpmで終夜培養した。
終夜培養後、5000×g、10分間の遠心分離を行って集菌し、菌体ペレットを100mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)で懸濁して洗菌した。この操作を2回繰り返して培地成分を除去した。洗菌後、菌体ペレットを−80℃で凍結保存した。
酵素精製
解凍した菌体ペレットに、BugBuster(BugBusterTM Protein Extraction Reagent、メルクKGaA社、独国)とリゾチームとを添加し、タンパク質を抽出した。菌体破砕液は遠心分離によって、沈殿(不溶性画分)と上清(無細胞抽出液)とに分離した。無細胞抽出液をHis GraviTrap(GEヘルスケア社、米国)を用いて製造者の指示に従って適用した。溶出した溶液をPD−10カラム(GEヘルスケア社)を用いて、製造者の指示書に従って脱塩した。精製した酵素を、以下の実験で使用されるまで、−80℃で保存した。
精製酵素の濃度測定
精製した酵素の濃度を、クマシーブリリアントブルーを用いた呈色反応後、マイクロプレートリーダーMODEL550(Bio−Rad社、米国)により測定した。検量線法により595nmの吸光度の測定値から精製した酵素濃度を決定した。
二重変異型酵素
N108A、N108E又はN108Qの変異と、I112V、H378K又はH378Rの変異とを組み合わせた二重変異型酵素N108A/I112V(配列番号5)、N108A/H378K(配列番号6)、N108A/H378R(配列番号7)、N108E/I112V(配列番号8)、N108E/H378K(配列番号9)、N108E/H378R(配列番号10)、N108Q/I112V(配列番号11)、N108Q/H378K(配列番号12)及びN108Q/H378R(配列番号13)を作製し、カルノシン合成活性を評価した。簡潔には、上記の部位特異的変異の導入と同様に、N108A、N108E又はN108Qの部位特異的変異を有するベクターを鋳型にして、I112Vのプライマー(配列番号39及び40)、H378Kのプライマー(配列番号41及び42)又はH378Rのプライマー(配列番号43及び44)を用いて部位特異的変異(I112V、H378K又はH378R)をさらに導入し、二重部位特異的変異を有するベクターを得た。その後、上記と同様に、精製した二重部位特異的変異型YwfE(配列番号5〜13)を得た。
三重変異型酵素
N108A/I112V、N108Q/I112Vの変異と、H378K、H378Rの変異とを組み合わせた三重変異型酵素N108A/I112V/H378R(配列番号14)、N108Q/I112V/H378K(配列番号15)及びN108Q/I112V/H378R(配列番号16)を作製し、カルノシン合成活性を評価した。簡潔には、上記の部位特異的変異の導入と同様に、N108A/I112V、N108Q/I112Vの部位特異的変異を有するベクターを鋳型にして、H378Kのプライマー(配列番号41及び42)又はH378Rのプライマー(配列番号43及び44)を用いて部位特異的変異(H378K又はH378R)をさらに導入し、三重部位特異的変異を有するベクターを得た。その後、上記と同様に、精製した三重部位特異的変異型YwfE(配列番号14〜16)を得た。
カルノシン合成活性評価(HPLC分析)
カルノシンの標品は、市販のカルノシン(Sigma−Aldrich、米国)を使用した。ペプチドの合成量について、Nα−(5−fluoro−2,4−dinitrophenyl)−L−alanineamide(FDAA)誘導体化法を用いたHPLC分析を実施し、検量線法により定量した。該HPLC分析は表4(溶離液組成)及び表5(グラジエントプログラム)に示した条件で定法に従って実施された。
<分析条件>
使用機器:HITACHI L−7000 シリーズ(株式会社日立製作所、東京)
使用カラム:WH−C18A(4×150mm)(株式会社日立ハイテクノロジーズ、東京)
サンプル注入量:10μL
流速:0.5mL/分
カラム温度:40℃
UV検出波長:340nm
Figure 0006934774
Figure 0006934774
カルノシン合成は、表6に示す組成の反応液中で、30℃で20時間実施された。酵素として、野生型酵素(配列番号1)と、単変異型酵素N108A(配列番号2)、N108E(配列番号3)、N108Q(配列番号4)と、二重変異型酵素N108A/I112V(配列番号5)、N108A/H378K(配列番号6)、N108A/H378R(配列番号7)、N108E/I112V(配列番号8)、N108E/H378K(配列番号9)、N108E/H378R(配列番号10)、N108Q/I112V(配列番号11)、N108Q/H378K(配列番号12)、N108Q/H378R(配列番号13)と、三重変異型酵素N108A/I112V/H378R(配列番号14)、N108Q/I112V/H378K(配列番号15)、N108Q/I112V/H378R(配列番号16)とを用いた。反応終了後、カルノシン合成の評価するために上記と同様の方法でHPLCによって分析した。
統計学的検定は、統計検定ソフト:EZR(http://www.jichi.ac.jp/saitama−sct/SaitamaHP.files/statmed.htm)を用い、野生型酵素によって生成されるカルノシンの濃度を対照群として、各変異型酵素によって生成されるカルノシンの濃度に対して、一元配置分散分析(ANOVA)及びDunnettの検定法により、p値0.05を有意水準としてpost hoc解析した(各群n=3)。また、下記のアンセリン合成活性評価、及び、バレニン合成活性評価の統計学的解析も同様に実施した。
Figure 0006934774
結果
図1は、野生型酵素(配列番号1)と、単変異型酵素N108A(配列番号2)、N108E(配列番号3)、N108Q(配列番号4)と、二重変異型酵素N108A/I112V(配列番号5)、N108A/H378K(配列番号6)、N108A/H378R(配列番号7)、N108E/I112V(配列番号8)、N108E/H378K(配列番号9)、N108E/H378R(配列番号10)、N108Q/I112V(配列番号11)、N108Q/H378K(配列番号12)、N108Q/H378R(配列番号13)と、三重変異型酵素N108A/I112V/H378R(配列番号14)、N108Q/I112V/H378K(配列番号15)、N108Q/I112V/H378R(配列番号16)のカルノシン合成によるカルノシン濃度を示す。N108A/I112V(配列番号5)、N108E/I112V(配列番号8)及びN108Q/I112V(配列番号11)を除いて、いずれの変異型酵素においても、野生型と比較して統計学的有意なカルシノン合成活性の上昇を認めた。また、カルシノン合成活性は、N108E/H378K(配列番号9)が最も高く、収率は91.4%であった。
アンセリン合成活性の評価
実施例1のカルノシン合成活性の評価と同様に、15種類の変異型酵素(N108A、N108E、N108Q、N108A/I112V、N108A/H378K、N108A/H378R、N108E/I112V、N108E/H378K、N108E/H378R、N108Q/I112V、N108Q/H378K、N108Q/H378R、N108A/I112V/H378R、N108Q/I112V/H378K及びN108Q/I112V/H378R)のアンセリン合成活性を、野生型の活性と比較し評価した。簡潔には、アンセリン合成は、表7に示す組成の反応液中で、30℃で20時間実施された。反応終了後、アンセリン濃度を実施例1と同様にHPLCで定量することにより各変異型酵素のアンセリン合成活性を評価した。アンセリンの標品は、市販のアンセリン(和光純薬工業株式会社、大阪)を使用した。
Figure 0006934774
結果
図2に測定結果を示した。N108Q(配列番号4)及びN108A/H378R(配列番号7)を除いて、いずれの変異型酵素においても、野生型と比較して統計学的有意なアンセリン合成活性の上昇を認めた。また、アンセリン合成活性は、N108Q/I112V/H378K(配列番号15)が最も高く、収率は94.7%であった。
バレニン合成活性の評価
実施例1のカルノシン合成活性の評価と同様に、15種類の変異型酵素(N108A、N108E、N108Q、N108A/I112V、N108A/H378K、N108A/H378R、N108E/I112V、N108E/H378K、N108E/H378R、N108Q/I112V、N108Q/H378K、N108Q/H378R、N108A/I112V/H378R、N108Q/I112V/H378K及びN108Q/I112V/H378R)のバレニン合成活性を、野生型の活性と比較し評価した。簡潔には、バレニン合成は、表8に示す組成の反応液中で、30℃で20時間実施された。反応終了後、バレニン濃度を実施例1と同様にHPLCで定量することにより各変異型酵素のバレニン合成活性を評価した。バレニンの標品は、市販のバレニン(浜理薬品工業株式会社、大阪)を使用した。
Figure 0006934774
結果
図3に測定結果を示した。6種類の変異型酵素(N108A/H378K、N108A/H378R、N108Q/I112V、N108A/I112V/H378R、N108Q/I112V/H378K及びN108Q/I112V/H378R)において、野生型と比較して統計学的有意なバレニン合成活性の上昇を認めた。また、バレニン合成活性は、N108A/H378K(配列番号6)が最も高く、収率は38.8%であった。
以上の結果から、4種類の変異型酵素(N108A/H378K(配列番号6)、N108A/I112V/H378R(配列番号14)、N108Q/I112V/H378K(配列番号15)及びN108Q/I112V/H378R(配列番号16))については、野生型と比較して統計学的有意なカルノシン合成活性、アンセリン合成活性及びバレニン合成活性の上昇を認めた。
カルノシン合成におけるペプチダーゼの影響評価
ペプチダーゼD(pepD)は、N末端側の任意のアミノ酸(Xaa)と、C末端側のヒスチジン(His)とからなるジペプチド(Xaa−His)を認識し、これを分解する(J.Gen.Microbiol.172,2337−2343(1986))。そのため、細胞を用いる製造方法では、pepDを欠損する菌体を使用することでカルノシンの分解を抑制できると考えられた。
そこで、エシェリヒア・コリ JM101株及びJW0227株を使用して、カルノシンの分解活性を比較評価した。JW0227株はJM101株からペプチダーゼの一種であるpepDの遺伝子を欠損させたものである。表9にJM101株のGenotypeを示す。
Figure 0006934774
菌体反応によるカルノシン分解は、表10に示す組成の反応液中で、30℃で0又は20時間実施された。反応終了後の溶液について90℃で10分間処理し、反応を停止させた。20分間の遠心分離後、上清をHPLCにより分析を行った。0時間のカルノシン濃度を100%としたときの20時間反応後のカルノシン残存率を算出した。
Figure 0006934774
結果
図4は、宿主細胞としてJM101株、JW0227株それぞれを使用した際のカルノシン残存率を示す。カルノシン残存率はJM101株では64.2%であり、JW0227株では74.7%であった。このことから、ペプチダーゼの欠損株を用いることにより、生成されたカルノシンの分解を抑制し、カルノシンを高効率で製造できることが明らかとなった。また、アンセリン及びバレニンもペプチダーゼの欠損株を用いることにより、高効率で製造できることが示唆された。
イミダゾールジペプチド、特にカルノシン、アンセリン及び/又はバレニンを高効率で生産するタンパク質、該タンパク質をコードする核酸を含むベクター、及び、該タンパク質を含有する宿主細胞を提供することにより、簡便に低コストでこれらのイミダゾールジペプチドを提供することができる。また宿主細胞として、ペプチダーゼ欠損細胞を用いることで、イミダゾールジペプチド、特にカルノシンを高効率で製造できる。

Claims (12)

  1. 配列番号1で表されるL−アミノ酸α−リガーゼ:YwfE活性を有する変異タンパク質であり、
    この変異タンパク質は配列番号2〜16のアミノ酸配列を有し、
    N末端より108位のアスパラギン(N)残基がアラニン(A)残基、グルタミン酸(E)残基又はグルタミン(Q)残基に置換され、又は、さらに、
    112位のイソロイシン(I)残基がバリン(V)残基に置換され、及び/又は、378位のヒスチジン(H)残基がリジン(K)残基又はアルギニン(R)残基に置換されていることを特徴とする、変異タンパク質。
  2. 前記L−アミノ酸α−リガーゼ活性が、カルノシン合成活性、アンセリン合成活性及び/又はバレニン合成活性から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の変異タンパク質。
  3. 請求項1に記載のタンパク質をコードすることを特徴とする、核酸。
  4. 請求項3に記載の核酸を含むポリヌクレオチドを挿入したことを特徴とする、ベクター。
  5. 請求項4に記載のベクターを少なくとも1種以上を含むことを特徴とする、宿主細胞。
  6. 請求項1に記載の変異タンパク質を使用することを特徴とする、ジペプチドの製造方法。
  7. ペプチダーゼの活性阻害剤とともに、請求項1に記載のタンパク質を使用することを特徴とする、ジペプチドの製造方法。
  8. 請求項7に記載の宿主細胞を使用することを特徴とする、ジペプチドの製造方法。
  9. 前記宿主細胞が、ペプチダーゼの欠損細胞であることを特徴とする、請求項1に記載のジペプチドの製造方法。
  10. 前記ペプチダーゼがペプチダーゼDであることを特徴とする、請求項7又は9に記載のジペプチドの製造方法。
  11. 前記ジペプチドが、イミダゾールジペプチドであることを特徴とする、請求項7〜10のいずれか1項に記載のジペプチドの製造方法。
  12. 前記イミダゾールジペプチドが、カルノシン、アンセリン及び/又はバレニンであることを特徴とする、請求項11に記載のジペプチドの製造方法。
JP2017165715A 2016-12-27 2017-08-30 イミダゾールジペプチド合成活性を有するタンパク質及びイミダゾールジペプチドの製造方法 Active JP6934774B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US15/854,921 US10704036B2 (en) 2016-12-27 2017-12-27 Protein having synthetic activity for imidazole dipeptid and production method of imidazole dipeptide

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016252275 2016-12-27
JP2016252275 2016-12-27

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018102287A JP2018102287A (ja) 2018-07-05
JP6934774B2 true JP6934774B2 (ja) 2021-09-15

Family

ID=62784504

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017165715A Active JP6934774B2 (ja) 2016-12-27 2017-08-30 イミダゾールジペプチド合成活性を有するタンパク質及びイミダゾールジペプチドの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6934774B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020022433A (ja) * 2018-08-01 2020-02-13 東海物産株式会社 イミダゾールジペプチドの製造方法
JP7321017B2 (ja) * 2019-07-17 2023-08-04 東海物産株式会社 機能性食品
WO2021261564A1 (ja) 2020-06-25 2021-12-30 協和発酵バイオ株式会社 ジペプチドの製造法
JPWO2023054695A1 (ja) * 2021-09-30 2023-04-06
KR20240113674A (ko) * 2023-01-13 2024-07-23 씨제이제일제당 (주) 신규 카르노신 합성 효소 및 이를 이용한 카르노신 생산 방법

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013081407A (ja) * 2011-10-07 2013-05-09 Kyowa Hakko Bio Co Ltd 新規ジペプチド合成酵素およびそれを用いたジペプチドの製造法
JP5951953B2 (ja) * 2011-10-07 2016-07-13 協和発酵バイオ株式会社 新規ジペプチド合成酵素およびそれを用いたジペプチドの製造法
JP2013081404A (ja) * 2011-10-07 2013-05-09 Kyowa Hakko Bio Co Ltd 新規ジペプチド合成酵素およびそれを用いたジペプチドの製造法
JP2013081406A (ja) * 2011-10-07 2013-05-09 Kyowa Hakko Bio Co Ltd 新規ジペプチド合成酵素およびそれを用いたジペプチドの製造法
RU2012129311A (ru) * 2012-07-11 2014-01-20 Закрытое акционерное общество " Научно-исследовательский институт Аджиномото-Генетика" (ЗАО "АГРИ") Днк, кодирующая дипептид-синтезирующий фермер (варианты), бактерия рода escherichia и способ получения дипептидов с ее использованием

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018102287A (ja) 2018-07-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6934774B2 (ja) イミダゾールジペプチド合成活性を有するタンパク質及びイミダゾールジペプチドの製造方法
JP4881739B2 (ja) L−アルギニン、l−オルニチンまたはl−シトルリンの製造法
RU2683208C1 (ru) Мутант пируватдегидрогеназы, микроорганизм, содержащий мутант, и способ получения L-аминокислоты с использованием микроорганизма
US10704036B2 (en) Protein having synthetic activity for imidazole dipeptid and production method of imidazole dipeptide
JP2017523787A (ja) フィードバック抵抗性アセトヒドロキシ酸シンターゼ変異体及びそれを用いたl−バリンの生産方法
JP7035024B2 (ja) テアニンの製造方法
WO2007047680A2 (en) Increasing the activity of radical s-adenosyl methionine (sam) enzymes
CN111560410A (zh) 咪唑二肽的制备方法
Lynch et al. Method for producing 3-hydroxypropionic acid and other products
JP5951953B2 (ja) 新規ジペプチド合成酵素およびそれを用いたジペプチドの製造法
Liu et al. The 138th residue of acetohydroxyacid synthase in Corynebacterium glutamicum is important for the substrate binding specificity
JP2011507485A (ja) (2s,3r,4s)−4−ヒドロキシ−l−イソロイシンの製造方法
JP2013081404A (ja) 新規ジペプチド合成酵素およびそれを用いたジペプチドの製造法
EP4230723A1 (en) Polypeptide with aspartate kinase activity and use thereof in production of amino acid
JP2023128529A (ja) β-Ala-DOPAの製造方法
JP4780749B2 (ja) 発酵法によるl−アミノ酸の製造方法
JP2013081407A (ja) 新規ジペプチド合成酵素およびそれを用いたジペプチドの製造法
EP2522737B1 (en) Process for production of l-amino acid
JP2013081406A (ja) 新規ジペプチド合成酵素およびそれを用いたジペプチドの製造法
US20200263222A1 (en) Production method of imidazoledipeptide
KR20200008997A (ko) 피루브산 카르복실라제 및 피루브산 카르복실라제 암호화 dna, 상기 dna를 함유한 플라스미드 및 그 생산을 위한 미생물, 그리고 자체의 생합성에서 전구체로서 옥살로아세테이트가 포함되는 것인 생성물의 제조 방법, 그리고 염색체
US20240141402A1 (en) Method for producing dipeptide
WO2024005155A1 (ja) 4-(アミノメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸の製造方法
WO2018088434A1 (ja) N-サクシニル-ヒドロキシ-d-アミノ酸及び/又はヒドロキシ-d-アミノ酸の製造方法
JP2021019518A (ja) ビオラセイン又はデオキシビオラセインの製造法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170901

A80 Written request to apply exceptions to lack of novelty of invention

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A80

Effective date: 20170911

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20171120

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20171120

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20171120

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200515

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210428

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210617

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210823

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210824

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6934774

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250