(1)概要
以下、本実施形態に係る電磁継電器の概要について説明する。
本実施形態に係る電磁継電器は、例えば自動車のバッテリから負荷(例えば、ランプ、モータ等)への直流電力の供給状態を切り替えるための装置である。本実施形態に係る電磁継電器では、バッテリ等の電源から負荷への直流電力の供給路に接点装置が挿入され、接点装置を開閉することによってバッテリから負荷への直流電力の供給状態を切り替えることができる。
従来、固定接点を有する固定接点用端子がボビンに取り付けられる電磁継電器が提供されている。この電磁継電器では、固定接点用端子は、一端部に固定接点を有し、ボビンに設けられた一対の凹部に上記一端部を挿入して圧入固定することでボビンに取り付けられる。そのため、圧入固定時に発生するボビンの削り屑が固定接点に付着することで、接点の導通不良を引き起こす可能性があった。
本実施形態に係る電磁継電器は、コイルボビンの削り屑が固定接点に付着することで発生する接点(固定接点及び可動接点)の導通不良を低減することができるように、以下のように構成されている。
本実施形態に係る電磁継電器100は、図1に示すように、電磁石2と、固定端子1(第1端子板9)と、可動ばね11と、を備える。電磁石2は、コイルボビン3、及びコイルボビン3に巻かれたコイル4を有する。固定端子1は、固定接点13(図3B参照)を有する。可動ばね11は、可動接点14を有する。そして、可動ばね11は、電磁石2の励磁、消磁に応じて、可動接点14が固定接点13に接触する閉位置と、可動接点14が固定接点13から離れる開位置との間で移動する。
固定端子1は、接点部92と、突起部93と、を有する。接点部92は、固定接点13を含む。突起部93は、接点部92の少なくとも片側において接点部92から離れた位置で接点部92と同じ向きとなる第1の方向(前後方向)に突出する。コイルボビン3は、収納部35と、保持部36と、分離部37と、を有する。収納部35は、接点部92を収納する。保持部36は、突起部93が挿入され、突起部93に接触した状態で突起部93を保持する。分離部37は、収納部35と保持部36とを分離する。
本実施形態に係る電磁継電器100では、固定端子1がコイルボビン3に取り付けられた状態では、固定接点13を含む接点部92が収納部35に収納され、突起部93が保持部36に保持される。すなわち、固定端子1は、突起部93が保持部36に保持されることによってコイルボビン3に取り付けられる。このとき、突起部93は、保持部36に接触している。したがって、固定端子1がコイルボビン3に取り付けられる際には、保持部36にて削り屑が発生する可能性がある。しかしながら、収納部35と保持部36との間には両者を分離する分離部37が設けられているため、保持部36にて発生した削り屑は収納部35側に移動しにくい。すなわち、本実施形態の電磁継電器100では、上述した従来の電磁継電器と比較して、コイルボビン3の削り屑が固定接点13に付着しにくくなっており、その結果、接点(固定接点13及び可動接点14)の導通不良を低減することができる。
(2)構成
以下、本実施形態に係る電磁継電器100の構成について、図1〜図6を参照して説明する。
以下では、固定接点13と可動接点14とが並ぶ方向を上下方向とし、可動接点14から見て固定接点13側を上方、その逆を下方として説明する。また、以下では、第1端子板9と第2端子板10とが並ぶ方向を前後方向とし、第2端子板10から見て第1端子板9側を前方、その逆を後方として説明する。さらに、以下では、一対のコイル端子板8が並ぶ方向を左右方向として説明する。
なお、図1〜図6には、これらの方向(上、下、左、右、前、後)を表す矢印を示しているが、これらの矢印は、単に説明を補助する目的で記載しているに過ぎず、実体を伴わない。また、これらの方向は電磁継電器100の使用形態を限定する趣旨ではない。
本実施形態に係る電磁継電器100は、いわゆるヒンジ型リレーである。本実施形態に係る電磁継電器100は、図1に示すように、接点装置A1と、電磁石装置B1と、ケースC1と、を備えている。
接点装置A1は、図1及び図2に示すように、固定端子1としての第1端子板9と、第2端子板10と、可動ばね11と、接点板12と、を備えている。
第1端子板9(固定端子1)は、導電性材料(例えば、銅)により左右方向から見た形状がL字状となるように形成されている。第1端子板9は、図3A〜図3Cに示すように、本体部の端子片91と、接点部92と、一対の突起部93と、一対の第1突出部94と、一対の第2突出部95と、を有している。端子片91は、上下方向に長い矩形状に形成されている。接点部92は、左右方向に長い矩形状に形成されており、端子片91の上端縁から後方に突出している。接点部92は、第1面921と、第2面922と、を有している。本実施形態では、第1面921は接点部92の下面であり、第2面922は接点部92の上面である。接点部92の第1面921には、適宜の取付方法(例えば、かしめ固定等)によって固定接点13が取り付けられている(図3C参照)。言い換えると、接点部92は、固定接点13を含む。なお、固定接点13は、第1端子板9と一体に構成されていてもよい。
一対の突起部93は、端子片91の上端縁において、接点部92の左右両側から後方に突出している。各突起部93は、左右方向において接点部92から離れた位置に設けられている。言い換えると、一対の突起部93は、接点部92から離れた位置において接点部92と同じ向きとなる第1の方向(保持部36(後述する)に対する突起部93の挿入方向)に突出している。また、接点部92と各突起部93とは、第1の方向(前後方向)と交差する第2方向(左右方向)に並んでいる。各突起部93は、上下方向から見た形状が矩形状に形成されている。各突起部93の先端部(後端部)には、先端に近づくほど突起部93の厚さ(上下方向の寸法)が薄くなり、かつ幅(左右方向の寸法)が狭くなるように傾斜するテーパ部931が設けられている。言い換えると、各突起部93は、先端部において先端に近づくほど保持部36から離れる向きに傾斜するテーパ部931を有している。本実施形態では、各突起部93の上面、下面、左面及び右面にそれぞれテーパ部931が設けられている。
一対の第1突出部94の各々は、一対の突起部93の各々の左端から左方に、又は右端から右方に突出している。一対の第2突出部95の各々は、端子片91の上端部の左右両端から左方又は右方に突出している。一対の第1突出部94及び一対の第2突出部95は、端子片91の長手方向において間隔を空けて設けられている。そのため、一対の第1突出部94と一対の第2突出部95との間において第1端子板9を容易に曲げることができる。
第2端子板10は、導電性材料(例えば、銅)により形成されている。第2端子板10は、図1に示すように、端子片101と、固定片102と、連結片103と、を有している。端子片101は、上下方向に長い矩形状に形成されている。固定片102は、前後方向から見た形状が矩形状に形成されている。固定片102の前面には、前方に突出する一対の突部104が設けられている。一対の突部104の各々は円形である。一対の突部104は、第2端子板10を可動ばね11に取り付けるために用いられる。端子片101と固定片102とは、上下方向に長い矩形状の連結片103によって一体に形成されている。
可動ばね11は、導電性薄板(例えば、銅板)からなる板ばねであり、左右方向から見た形状がL字状となるように形成されている。可動ばね11は、図1に示すように、作動片111と、固定片112と、一対のばね片113と、を有している。作動片111は、上下方向から見た形状が三角状に形成されている。作動片111の後端部には、厚さ方向(上下方向)に貫通する一対の固定孔114が設けられている。一対の固定孔114の各々は円形である。一対の固定孔114は、接極子7(後述する)を可動ばね11に取り付けるために用いられる。また、作動片111の前端部には、適宜の取付方法(例えば、かしめ固定等)によって可動接点14が取り付けられている。可動接点14は、本実施形態では、第1端子板9の固定接点13と接点板12の第2固定接点15(後述する)とに接触可能なように、作動片111の上下両面から上向き及び下向きに突出している。なお、可動接点14は、可動ばね11と一体に構成されていてもよい。
固定片112は、左右方向に長い矩形状に形成されている。固定片112の下端部には、厚さ方向(前後方向)に貫通する一対の固定孔115及び一対の固定孔116が設けられている。これらの固定孔115,116は、いずれも円形である。一対の固定孔115は、左右方向において一対の固定孔116の間に設けられている。すなわち、一対の固定孔115の間隔は一対の固定孔116の間隔よりも狭い。一対の固定孔115は、可動ばね11に第2端子板10を取り付けるために用いられる。具体的には、一対の固定孔115にそれぞれ挿通させた一対の突部104を可動ばね11にかしめることで、第2端子板10が可動ばね11に取り付けられる。また、一対の固定孔116は、可動ばね11に継鉄6(後述する)を取り付けるために用いられる。具体的には、継鉄6の第1板61(後述する)の後面に設けられた一対の突部を一対の固定孔116に挿通させた後、一対の突部を可動ばね11にかしめることで、継鉄6が可動ばね11に取り付けられる。
一対のばね片113は、長手方向における中間部において折り曲げられており、左右方向の両端部において作動片111と固定片112とを連結するように構成されている。
可動ばね11は、接極子7が第1位置(接極子7が吸引部51(後述する)に接触する位置)にあるときに撓むように構成されている。そして、可動ばね11は、元の状態に復帰しようとすることで、接極子7を第1位置から第2位置(接極子7が吸引部51から離れる位置)へと移動させる向きの力を、接極子7に作用させる。つまり、可動ばね11は、弾性力により、接極子7を第1位置から第2位置へと移動させる向きの力を接極子7に作用させるように構成されている。
ここに、本実施形態では、可動ばね11の可動接点14は、接極子7が第1位置にあるときに固定接点13に接触し、接極子7が第2位置にあるときに固定接点13から離れる。すなわち、接極子7が第1位置にあるときの可動ばね11の位置が閉位置であり、接極子7が第2位置にあるときの可動ばね11の位置が開位置である。
接点板12は、導電性材料(例えば、銅)により左右方向に長い矩形状に形成されている。接点板12は、図1に示すように、第2接点部121と、一対の第2突起部122と、を有している。第2接点部121は、左右方向に長い矩形状に形成されている。第2接点部121の上面には、適宜の取付方法(例えば、かしめ固定等)によって第2固定接点15が取り付けられている。一対の第2突起部122は、第2接点部121の左右両側において第2接点部121から離れた位置で後方に突出している。接点板12は、接極子7が第2位置にある状態において可動ばね11の可動接点14が第2固定接点15に接触するように構成されている。第2固定接点15は、可動ばね11の可動を規制するダミー接点である。
電磁石装置B1は、図1及び図2に示すように、電磁石2と、固定子5と、継鉄6と、接極子7と、一対のコイル端子板8と、を備えている。固定子5と、継鉄6と、接極子7とは、いずれも磁性材料により形成されている。
電磁石2は、図1及び図2に示すように、コイルボビン3と、コイル4と、を有している。
コイルボビン3は、例えば合成樹脂材料等の電気絶縁性を有する材料により形成されており、その軸方向が上下方向と一致するように配置されている。コイルボビン3は、図4A〜図4Dに示すように、巻胴部31と、上鍔部32と、下鍔部33と、を有している。巻胴部31は、上下方向に長い円筒状に形成されており、固定子5が挿通される中空部34を有している。上鍔部32は、上下方向から見た形状が矩形状であり、巻胴部31の一端(上端)において一体に形成されている。上鍔部32の中央部には、厚さ方向(上下方向)に貫通する円形の貫通孔321が設けられている。貫通孔321は、上下方向において巻胴部31の中空部34とつながっている。
下鍔部33は、上下方向から見た形状が矩形状であり、巻胴部31の他端(下端)において一体に形成されている。下鍔部33の中央部には、厚さ方向(上下方向)に貫通する貫通孔が設けられている。下鍔部33の貫通孔は、上下方向において巻胴部31の中空部34とつながっている。言い換えると、コイルボビン3は、巻胴部31の中空部34、上鍔部32の貫通孔321及び下鍔部33の貫通孔によって、上下方向に貫通している。
下鍔部33は、収納部35と、一対の保持部36と、一対の分離部37と、を有している。また、下鍔部33は、一対の溝部38と、第2収納部39と、一対の第2保持部40と、を更に有している。なお、接点板12が省略されている場合には、第2収納部39及び一対の第2保持部40は省略されていてもよい。
収納部35は、前面及び下面が開口した箱状に形成されている。収納部35の前後寸法は、第1端子板9の接点部92の前後寸法よりも大きく、かつ収納部35の左右寸法は、接点部92の左右寸法(幅寸法)よりも大きい。さらに、収納部35の上下寸法は、接点部92の上下寸法(厚み寸法)よりも大きい。すなわち、接点部92が収納部35に収納された状態では、接点部92と収納部35とが接触していない。なお、詳細については、「(3)固定端子の取付構造」の欄にて説明する。
一対の保持部36は、収納部35の左右両側に設けられている。一対の保持部36の各々は、前面が開口した箱状に形成されている。一対の保持部36と一対の突起部93とは一対一に対応している。そして、一対の突起部93の各々が一対の保持部36のうち対応する保持部36に挿入され、保持部36に保持されることで、コイルボビン3に第1端子板9が取り付けられる。
本実施形態では、各突起部93の長手寸法(前後寸法)は、対応する保持部36の長手寸法よりも小さい。そのため、コイルボビン3に第1端子板9が取り付けられた状態では、各突起部93の先端(後端)と対応する保持部36の底部362(図5B参照)との間に隙間部363(図5B参照)が形成される。言い換えると、隙間部363は、第1の方向(前後方向)の他端部である保持部36の底部362(図5B参照)側において保持部36に挿入された突起部93の先端と保持部36の底部362との間に形成される。
ここで、保持部36の左右寸法は突起部93の左右寸法よりもわずかに小さく、かつ保持部36の上下寸法は突起部93の上下寸法よりもわずかに小さい。つまり、本実施形態では、各突起部93は、対応する保持部36に対して圧入固定されることになる。言い換えると、保持部36は、第1の方向(前後方向)と交差する第2の方向(左右方向)、及び第1の方向と第2の方向との両方と交差する第3の方向(上下方向)から突起部93に接触した状態で突起部93を保持するように構成されている。したがって、この場合には、突起部93によって保持部36の内面が削られる可能性があるが、このとき発生する削り屑の少なくとも一部については上述の隙間部363内に封じ込めることができる。
一対の分離部37の各々は、左右方向において収納部35と各保持部36との間に設けられている。一対の分離部37の各々は、本実施形態では、左右方向において収納部35と各保持部36との間に形成された縦壁である。言い換えると、一対の分離部37の各々は、収納部35と各保持部36とを分離するように構成されている。
一対の溝部38の各々は、前後方向から見た形状がU字状であり、左右方向において開口側が内側となるように形成されている。一対の溝部38にて形成される空間には、可動ばね11の作動片111が配置される。したがって、各溝部38の上下寸法は、作動片111が閉位置と開位置との間で移動可能な寸法に設定されている。
第2収納部39は、前面、後面及び上面が開口した箱状に形成されている。第2収納部39の左右両側には、一対の第2保持部40が設けられている。これらの第2収納部39及び一対の第2保持部40は、第2固定接点15が取り付けられた接点板12をコイルボビン3に取り付けるために用いられる。すなわち、接点板12は、一対の第2突起部122の各々が一対の第2保持部40のうち対応する第2保持部40に保持されることで、コイルボビン3に取り付けられる。このとき、第2固定接点15を含む第2接点部121は、第2収納部39に収納される。
さらに、下鍔部33の左右両側には、一対のコイル端子板8の各々の巻線部82(後述する)が挿通される溝部41がそれぞれ設けられている。
コイル4は、コイルボビン3の巻胴部31に電線(例えば、銅線)を巻き付けることで構成されている。コイル4は、電線の第1端が一対のコイル端子板8の一方の巻線部82に巻かれ、かつ電線の第2端が一対のコイル端子板8の他方の巻線部82に巻かれることで、一対のコイル端子板8と電気的に接続される。コイル4は、一対のコイル端子板8を介して電流が供給されることで通電し、磁束を発生する。
固定子5は、上下方向に長い円柱状に形成された鉄心である。固定子5は、その長手方向(上下方向)の両端をコイルボビン3から露出させた状態で、コイルボビン3の中空部34に挿入されている。固定子5の長手方向の第1端(下端)は、中間部よりも径寸法が大きくなっており、接極子7と対向している。以下では、固定子5の第1端を「吸引部51」という。また、固定子5の長手方向の第2端(上端)は、継鉄6の第2板62(後述する)の挿入孔621(後述する)に挿入され、固定子5が継鉄6に固定されている。
継鉄6は、固定子5及び接極子7と共に、電磁石2の通電時に生じる磁束が通る磁路を形成する。継鉄6は、上下方向に長い矩形状の板の中間部が折り曲げられることで、左右方向から見た形状がL字状となるように形成されている。継鉄6は、図1に示すように、第1板61と、第2板62と、を有している。第1板61及び第2板62は、いずれも矩形状である。第2板62は、コイル4の軸方向(上下方向)の一端側(上側)に配置されている。第2板62には、厚さ方向(上下方向)に貫通する円形の挿入孔621が設けられている。挿入孔621には、固定子5の第2端が挿入されている。第1板61は、コイル4の後側に配置されている。なお、第1板61の後面には、後方に突出する一対の突部が一体に設けられている。そして、可動ばね11の固定片112の一対の固定孔116に一対の突部をそれぞれ挿通させた後、一対の突部を固定片112にかしめることで、継鉄6に可動ばね11が取り付けられる。
接極子7は、上下方向から見た形状が矩形状に形成されている。接極子7の下面には、下向きに突出する一対の突部が一体に設けられている。そして、可動ばね11の作動片111に設けられた一対の固定孔114に一対の突部をそれぞれ挿通させた後、一対の突部を作動片111にかしめることで、接極子7が可動ばね11に取り付けられる。
一対のコイル端子板8は、導電性材料(例えば、銅)により形成されている。一対のコイル端子板8の各々は、図1及び図2に示すように、コイル端子片81と、巻線部82と、を有している。コイル端子片81は、上下方向に長い矩形状に形成されている。巻線部82は、上下方向に長い棒状であり、コイル端子片81の上端縁に一体に形成されている。巻線部82には、コイル4を構成する電線の第1端又は第2端が巻き付けられる。
ケースC1は、例えば合成樹脂等の電気絶縁性を有する材料により箱状に形成されている。ケースC1は、図1に示すように、下面が開口した箱状のカバーC11と、カバーC11の下面開口を塞ぐようにしてカバーC11に取り付けられる板状のベースC12と、を有している。そして、ケースC1は、例えば熱硬化性樹脂の接着剤を用いた接着等で、カバーC11とベースC12とを結合することにより構成されている。ケースC1は、接点装置A1及び電磁石装置B1を収納する。接点装置A1及び電磁石装置B1がケースC1に収納された状態では、第1端子板9の端子片91、第2端子板10の端子片101、及び一対のコイル端子板8のコイル端子片81が、ケースC1から露出している。
(3)固定端子の取付構造
以下、固定端子1(第1端子板9)の取付構造について、図5A、図5B及び図6を参照して説明する。図5Aは、固定端子1をコイルボビン3に取り付けた状態を下方から見たときの断面図である。図5Bは、図5Aの要部拡大図である。また、図6は、固定端子1をコイルボビン3に取り付けた状態を正面から見たときの要部を示す正面図である。
固定端子1をコイルボビン3に取り付けた状態では、固定接点13を含む接点部92は、コイルボビン3の下鍔部33に設けられた収納部35に収納されている。このとき、接点部92は、図5Aに示すように、収納部35の左右方向の両側壁部との間に寸法H1の隙間G1が設けられ、かつ収納部35の後壁部との間に寸法H2の隙間G2が設けられている。また、接点部92は、図6に示すように、収納部35の上壁部(対向面)351との間に寸法H3の隙間G3が設けられている。すなわち、接点部92は、収納部35に収納された状態において収納部35に接触していない。言い換えると、収納部35は、接点部92との間に隙間G1、G2、G3を空けた状態で接点部92を収納するように構成されている。このように、本実施形態に係る電磁継電器100は、収納部35と接点部92とが接触しない構造であり、収納部35ではコイルボビン3の削り屑は発生しない。
一方、接点部92の左右両側に位置する一対の突起部93の各々は、固定端子1がコイルボビン3に取り付けられた状態において、一対の保持部36のうち対応する保持部36により保持されている。具体的には、各突起部93は、対応する保持部36に挿入され、保持部36の内面に接触した状態で保持部36に保持される。すなわち、本実施形態では、保持部36の内面のうち、第1の方向(前後方向)の一端部である保持部36の開口側の内面により接触部361が構成されている(図5B参照)。そのため、突起部93を保持部36に保持させる際には、突起部93が接触部361に接触することで削り屑が発生する。ここで、収納部35と保持部36との間には分離部37が設けられているため、保持部36にて発生した削り屑が分離部37によって収納部35側に移動しにくくなっている。その結果、収納部35に収納された接点部92の固定接点13に削り屑が付着するのを抑えることができ、これにより従来の電磁継電器と比較して、接点(固定接点13及び可動接点14)の導通不良を低減することができる。また、保持部36内に収納された突起部93の先端と保持部36の底部362との間には隙間部363が形成されており、削り屑の少なくとも一部を隙間部363内に封じ込めることもできる。
ところで、本実施形態に係る電磁継電器100では、図5Bに示すように、突起部93の先端部にテーパ部931が設けられ、かつ保持部36の開口端にガイド部364が設けられている。ガイド部364は、第1の方向の一端部である保持部36の開口側において、開口端に近づくほど突起部93から離れる向きに傾斜している。本実施形態では、ガイド部364は、保持部36の上面、下面、左面及び右面にそれぞれ形成されている。したがって、固定端子1をコイルボビン3に取り付ける際に、固定端子1とコイルボビン3との位置が左右方向と上下方向との少なくとも一方においてずれている場合でも、保持部36に対して突起部93を挿入しやすい、という利点がある。
(4)捕集部
例えば、冬季や寒冷地等のように周囲温度が低い環境下では、密封状態のケース内にて氷結現象が発生し、これにより接点の導通不良を引き起こす可能性があった。ここに、氷結現象とは、低温環境下(0℃以下)においてケース内の水蒸気が固定接点や可動接点等に付着し、凍結することをいう。
これに対して、従来の電磁継電器では、固定接点用端子の一端部と他端部とを連結する連結部を捕集部として機能させている。ここに、捕集部とは、ケース内の水分から生じた水蒸気を結露又は氷結させて捕集する部位のことをいう。すなわち、従来の電磁継電器では、氷結の原因となるケース内の水分から生じた水蒸気を捕集部にて結露させて捕集している。しかしながら、従来の電磁継電器では、固定接点用端子の一端部と他端部とを連結する連結部のみを捕集部として機能させる構造であるため、ケース内の水分から生じた水蒸気を十分に捕集できない可能性があった。
本実施形態に係る電磁継電器100では、ケースC1内の水分から生じた水蒸気を結露又は氷結させて十分に捕集できるように、従来の電磁継電器と比較して、捕集部96の表面積を大きくしている。以下、具体的に説明する。
(4.1)構成
本実施形態に係る電磁継電器100は、図3A〜図3Cに示すように、捕集部96は、ケースC1内の固定端子1(第1端子板9)に設けられている。具体的には、捕集部96として、ケースC1内側の端子片91と、接点部92の第2面(上面)922と、一対の第1突出部94と、一対の第2突出部95と、を備えている。つまり、本実施形態に係る電磁継電器100では、従来の電磁継電器と比較して、捕集部96の表面積を大きくしている。その結果、本実施形態に係る電磁継電器100によれば、従来の電磁継電器と比較して、ケースC1内の水分から生じた水蒸気を結露又は氷結として捕集する部位の表面積を大きくすることができ、固定接点13と可動接点14との少なくとも一方が氷結することで生じる接点の導通不良を低減することができる。
(4.2)作用
捕集部96の作用について説明する。
捕集部96が設けられた固定端子1(第1端子板9)は、端子片91がケースC1の外側に突出し、温度の低い外気に接しているため、ケースC1の内側の端子片91の温度が、ケースC1内の他の構成部材より相対的に早く低くなる。さらに、端子片91につながる接点部92、一対の第1突出部94及び一対の第2突出部95の温度も相対的に早く低くなる。すると、これらの捕集部96にて水蒸気が結露又は氷結として他の部位に対して選択的に捕集される。ここで、図6に示すように、捕集部96の一部である接点部92の第2面922と、接点部92が収納される収納部35の上壁部(対向面)351との間には、寸法H3の隙間G3が設けられている。そのため、隙間G3内に流入した水蒸気を第2面922にて結露又は氷結として捕集することができる。その結果、固定接点13と可動接点14との少なくとも一方に結露が付着するのを抑えることができ、固定接点13と可動接点14との少なくとも一方が氷結することで生じる接点の導通不良を低減することができる。
(5)動作
次に、本実施形態に係る電磁継電器100の動作について説明する。
まず、接点装置A1の閉動作について説明する。接点装置A1のオフ状態では、可動ばね11は、一対のばね片113の弾性力によって開位置に位置している。このとき、可動接点14は、接点板12の第2接点部121の第2固定接点15に接触している。また、接極子7は、可動ばね11の作動片111に取り付けられているため、作動片111と共に下向きに移動し、固定子5の吸引部51から離れた位置(第2位置)に位置している。
接点装置A1のオフ状態において、電磁石2のコイル4が通電されると、コイル4が磁束を発生する。すると、接極子7と固定子5の吸引部51との間に磁気吸引力が生じることで、可動ばね11の弾性力に抗して接極子7が吸引部51に引き寄せられる。これにより、接極子7は、継鉄6との接触部位を支点として回転し、第2位置から第1位置へ移動する。
接極子7の第1位置への移動に伴って、接極子7が取り付けられている可動ばね11の作動片111も、一対のばね片113の弾性力に抗して回転する。その結果、可動接点14は、第2固定接点15から離れ、第1端子板9の接点部92の固定接点13に接触する。これにより、接点装置A1がオン状態となり、固定接点13及び可動接点14を介して第1端子板9と第2端子板10との間が導通する。
次に、接点装置A1の開動作について説明する。接点装置A1のオン状態において、電磁石2のコイル4の通電を解除すると、コイル4は磁束を発生しなくなる。すると、接極子7と、固定子5の吸引部51との間の磁気吸引力も失われる。そして、接極子7は、可動ばね11の一対のばね片113の弾性力によって閉動作時と逆向きに回転し、第1位置から第2位置へ移動する。
接極子7の第2位置への移動に伴って、接極子7が取り付けられている可動ばね11の作動片111も、一対のばね片113の弾性力によって閉動作時とは逆向きに回転する。その結果、可動接点14は、固定接点13から離れ、第2固定接点15に接触する。これにより、接点装置A1がオフ状態となる。
(6)変形例
上述の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
本実施形態では、固定接点13を含む接点部92の左右両側に突起部93をそれぞれ設けているが、突起部93は、接点部92の左右方向の少なくとも片側に設けられていればよい。
本実施形態では、電磁継電器100が、突起部93のテーパ部931と保持部36のガイド部364(図5B参照)との両方を備えている場合を例として説明している。これに対して、電磁継電器100は、テーパ部931とガイド部364との少なくとも一方を備えていてもよいし、テーパ部931とガイド部364との両方を備えていなくてもよい。
本実施形態では、保持部36は、第1の方向(前後方向)と交差する第2の方向(左右方向)及び第3の方向(上下方向)から突起部93に接触した状態で突起部93を保持するように構成されている。これに対して、保持部36は、突起部93が挿入され、突起部93に接触した状態で突起部93を保持するように構成されていればよく、第2の方向及び第3の方向の少なくとも1つの方向において保持部36が突起部93に接触するように構成されていればよい。
本実施形態では、接点部92と突起部93とが、第1の方向(前後方向)と交差する第2の方向(左右方向)に並ぶように形成されているが、接点部92と突起部93とは、上下方向に並ぶように形成されていてもよい。すなわち、接点部92と突起部93とは、第1の方向と交差する少なくとも一の方向において並ぶように形成されていればよい。
本実施形態では、テーパ部931及びガイド部364が、厚さ方向(上下方向)と幅方向(左右方向)との両方に設けられているが、テーパ部931及びガイド部364は、厚さ方向と幅方向との少なくとも一方に設けられていればよい。
本実施形態では、電磁継電器100は、可動ばね11が開位置に位置している状態で可動接点14が接触する第2固定接点15を有する接点板12を備えているが、接点板12は省略されていてもよい。
本実施形態では、接点部92の第2面922と、一対の第1突出部94と、一対の第2突出部95とで捕集部96が構成されているが、捕集部96は、少なくとも接点部92の第2面922で構成されていればよい。すなわち、一対の第1突出部94及び一対の第2突出部95は省略されていてもよい。
本実施形態では、3つの方向(前後方向、上下方向及び左右方向)において接点部92と収納部35とが接触しないように構成されているが、少なくとも1つの方向において接点部92と収納部35とが接触しないように構成されていればよい。この構成によれば、3つの方向において接点部92と収納部35とが接触している場合と比較して、コイルボビン3の削り屑を削減することができ、その結果、接点の導通不良を低減することができる。
本実施形態では、保持部36に挿入された突起部93の先端と保持部36の底部362との間に隙間部363が設けられているが、隙間部363は省略されていてもよい。収納部35と保持部36との間に分離部37が設けられているため、隙間部363が省略されていても、保持部36にて発生した削り屑は固定接点13に付着しにくい。
本実施形態では、電磁継電器100がヒンジ型リレーである場合を例として説明したが、電磁継電器100は、ヒンジ型リレーに限らず、例えばプランジャ型リレーであってもよい。
(まとめ)
以上述べた実施形態から明らかなように、第1の態様に係る電磁継電器(100)は、電磁石(2)と、固定端子(1)と、可動ばね(11)と、を備える。電磁石(2)は、コイルボビン(3)、及びコイルボビン(3)に巻かれたコイル(4)を有する。固定端子(1)は、固定接点(13)を有する。可動ばね(11)は、可動接点(14)を有する。そして、可動ばね(11)は、電磁石2の励磁、消磁に応じて、可動接点(14)が固定接点(13)に接触する閉位置と、可動接点(14)が固定接点(13)から離れる開位置との間で移動する。固定端子(1)は、接点部(92)と、突起部(93)と、を有する。接点部(92)は、固定接点(13)を含む。突起部(93)は、接点部(92)から離れた位置において接点部(92)と同じ向きとなる第1の方向に突出する。コイルボビン(3)は、収納部(35)と、保持部(36)と、分離部(37)と、を有する。収納部(35)は、接点部(92)を収納する。保持部(36)は、突起部(93)が挿入され、突起部(93)に接触した状態で突起部(93)を保持する。分離部(37)は、収納部(35)と保持部(36)とを分離する。
第1の態様によれば、収納部(35)と保持部(36)との間に両者を分離する分離部(37)が設けられているので、突起部(93)を保持部(36)に保持させた際に発生するコイルボビン(3)の削り屑が固定接点(13)に付着しにくくなる。その結果、この削り屑による接点(固定接点(13)及び可動接点(14))の導通不良を低減することができる。
第2の態様に係る電磁継電器(100)では、第1の態様において、保持部(36)は、接触部(361)と、隙間部(363)と、を有する。接触部(361)は、第1の方向(前後方向)の一端部(前端部)である保持部(36)の開口側において突起部(93)に接触する。隙間部(363)は、第1の方向の他端部(後端部)である保持部(36)の底部(362)側において保持部(36)に挿入された突起部(93)の先端と保持部(36)の底部(362)との間に形成される。
第2の態様によれば、接触部(361)を突起部(93)に接触させることで突起部(93)を介して固定端子(1)をコイルボビン(3)に保持させることができる。しかも、接触部(361)と突起部(93)とが接触することで発生するコイルボビン(3)の削り屑の少なくとも一部を隙間部(363)に封じ込めることができる。ただし、この構成は必須ではなく、保持部(36)は、隙間部(363)を有していなくてもよい。
第3の態様に係る電磁継電器(100)は、第1又は2の態様において、テーパ部(931)と、ガイド部(364)と、の少なくとも一方を備える。テーパ部(931)は、突起部(93)の先端部において先端に近づくほど保持部(36)から離れる向きに傾斜する。ガイド部(364)は、第1の方向の一端部である保持部(36)の開口側において開口端に近づくほど突起部(93)から離れる向きに傾斜する。
第3の態様によれば、電磁継電器(100)がテーパ部(931)とガイド部(364)との少なくとも一方を備えることで、保持部(36)に対して突起部(93)を挿入しやすくなるという利点がある。さらに、電磁継電器(100)がテーパ部(931)を備えている場合には、突起部(93)と保持部(36)との接触面積を小さくすることができ、これにより突起部(93)が保持部(36)に接触することで発生する削り屑を少なくすることもできる。ただし、この構成は必須ではなく、電磁継電器(100)は、テーパ部(931)とガイド部(364)との両方を備えていなくてもよい。
第4の態様に係る電磁継電器(100)は、第1〜3のいずれかの態様において、少なくとも電磁石(2)と可動ばね(11)とを収納するケース(C1)を更に備える。固定端子(1)は、ケース(C1)内の水蒸気を結露又は氷結として捕集する捕集部(96)を更に有する。接点部(92)は、固定接点(13)が配置される第1面(921)と、第1面(921)と反対側の第2面(922)と、を有する。捕集部(96)は、第2面(922)を含む。収納部(35)は、収納部(35)における第2面(922)との対向面(351)と第2面(922)との間に隙間(G1)を空けた状態で接点部(92)を収納するように構成されている。
第4の態様によれば、電磁継電器(100)のケース(C1)内の水分から生じた水蒸気を結露又は氷結として捕集部(96)にて捕集することができ、さらに捕集部(96)にて捕集した結露又は氷結を隙間(G1)に集めることができる。ただし、この構成は必須ではなく、固定端子(1)は捕集部(96)を有していなくてもよい。
第5の態様に係る電磁継電器(100)では、第1〜4のいずれかの態様において、収納部(35)は、接点部(92)との間に隙間(G1、G2、G3)を空けた状態で接点部(92)を収納するように構成されている。
第5の態様によれば、接点部(92)を収納部(35)に収納させる際に接点部(92)と収納部(35)とが接触することなく、コイルボビン(3)の削り屑が固定接点(13)に接触するのを更に抑えることができる。ただし、この構成は必須ではなく、収納部(35)と接点部(92)とが一部において接触していてもよい。
第6の態様に係る電磁継電器(100)では、第1〜5のいずれかの態様において、保持部(36)は、第2の方向及び第3の方向から突起部(93)に接触した状態で突起部(93)を保持するように構成されている。第2の方向は、第1の方向と交差する方向(左右方向)であり、第3の方向は、第1の方向と第2の方向との両方と交差する方向(上下方向)である。
第6の態様によれば、第1の方向と交差する第2の方向及び第3の方向から保持部(36)が突起部(93)に接触しているので、突起部(93)を強固に保持することができる。ただし、この構成は必須ではなく、保持部(36)は、第2の方向及び第3の方向から突起部(93)に接触するように構成されていなくてもよい。
第7の態様に係る電磁継電器(100)では、第1〜6のいずれかの態様において、接点部(92)と突起部(93)とは、第1の方向(前後方向)と交差する第2の方向(左右方向)に並んでいる。
第7の態様によれば、第1の方向と第2の方向との両方に交差する方向(上下方向)に小型化することができる。ただし、この構成は必須ではなく、接点部(92)と突起部(93)とは、第2の方向に並んでいなくてもよい。
第8の態様に係る電磁継電器(100)では、第1〜7のいずれかの態様において、接点部(92)の両側に、突起部(93)がそれぞれ設けられている。
第8の態様によれば、突起部(93)が接点部(92)の片側にしか設けられていない場合と比較して、コイルボビン(3)に固定端子(1)を強固に固定することができる。ただし、この構成は必須ではなく、突起部(93)は、接点部(92)の両側に設けられていなくてもよい。