JP6934303B2 - 脂肪族アルコールの生産方法 - Google Patents
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Description
天然油脂から精製又は化学合成によって得られた脂肪族アルコールは、工業用として広く利用されている。例えば、ステアリルアルコール(炭素原子数18の直鎖状飽和脂肪族アルコール)、エイコサノール(炭素原子数20の直鎖状飽和脂肪族アルコール)、ベヘニルアルコール(炭素原子数22の直鎖状飽和脂肪族アルコール)といった脂肪族アルコールは、乳化剤や界面活性剤として、化粧品、シャンプー、コンディショナー、潤滑油などに用いられている。
植物においては、脂肪酸合成経路で合成された炭素原子数が16や18のアシル-ACPは、チオエステラーゼや長鎖アシルCoAシンテターゼによって、炭素原子数が16や18のアシル-CoAに変換され、小胞体においてさらなる伸長反応を受けることが知られている。そして、小胞体で伸長された炭素原子数が20以上のアシル-CoAは、脂肪酸アシル-CoAレダクターゼ(Fatty acyl-CoA reductase、以下「FAR」という)によって、炭素原子数が20以上の長鎖脂肪族アルコールに変換される。
一般的に微生物に脂肪族アルコールの生産能を付与し、脂肪族アルコールの生産性を向上させるには、FARの導入及び強化が有効であると考えられている。例えば非特許文献1〜3には、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来のFARをコードする遺伝子を大腸菌やシアノバクテリアに導入し、脂肪族アルコールを合成する方法が記載されている。しかし、炭素原子数が20以上の脂肪酸合成経路を持たないこれら細菌では、炭素原子数が18以下のアシル-ACP又はアシル-CoAが、FARの細胞内での基質となる。よって、これらの細菌にFAR遺伝子のみを導入した場合に合成される脂肪族アルコールの炭素原子数は18以下であり、炭素原子数20以上の長鎖脂肪族アルコールを合成することはできない。
さらに、非特許文献4には、炭素原子数20以上のアシル-CoA合成能を有する酵母(Saccharomyces cerevisiae)に、シロイヌナズナ由来のFARをコードする遺伝子を導入し、長鎖脂肪族アルコールの合成能を付与する方法が記載されている。しかし、非特許文献4には、炭素原子数20以上の長鎖脂肪族アルコールの合成能を有さない宿主微生物に対して、長鎖脂肪族アルコールの合成能を付与することについて、何ら開示されていない。
また本発明は、長鎖脂肪族アルコールの生産能を有さない宿主微生物に、長鎖脂肪族アルコールの生産能を付与する方法の提供を課題とする。
また本発明は、長鎖脂肪族アルコールの生産性を付与した形質転換体の提供を課題とする。
本発明者らはまず、長鎖脂肪酸の合成に関与する酵素として、藻類の1種であるナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属の藻類から、KASIIとしての機能を有するKASを同定した。そしてこのタンパク質が、長鎖脂肪族アルコールの前駆体となる炭素原子数が20以上の脂肪酸の合成能を持つことを見出した。
さらに、アシル-ACPを基質として脂肪族アルコールを生成する反応を触媒するFARとして、シロイヌナズナ由来のFAR(以下、「AtFAR」ともいう。)及びブラシカ・ラパ(Brassica rapa)由来のFAR(以下、「BrFAR」ともいう。)に着目した。
そして、前記KASをコードする遺伝子と、AtFAR又はBrFARをコードする遺伝子の発現を宿主微生物の細胞内で促進させた結果、炭素原子数が20以上の長鎖脂肪族アルコールの生産能を元来有さない宿主微生物が、炭素原子数が20以上の長鎖脂肪族アルコールの生産能を獲得することを見い出した。
本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
また本発明は、KAS遺伝子及びFAR遺伝子の発現を微生物の細胞内で促進させる、長鎖脂肪族アルコールの生産能を微生物に付与する方法に関する。
さらに本発明は、KAS遺伝子及びFAR遺伝子の発現が促進されている、微生物の形質転換体に関する。
また本発明の長鎖脂肪族アルコールの生産能の付与方法によれば、元来長鎖脂肪族アルコールの生産能を有さない宿主微生物に、当該生産能を付与できる。
また本発明の形質転換体は、長鎖脂肪族アルコールの生産性に優れる。
一般に誘導脂質に分類される脂肪酸は、脂肪酸そのものを指し、「遊離脂肪酸」を意味する。本発明では単純脂質及び複合脂質分子中の脂肪酸部分又はアシル基の部分を「脂肪酸残基」と表記する。そして、特に断りのない限り、「脂肪酸」は「遊離脂肪酸」と「脂肪酸残基」の総称として用いる。
また本明細書において、「脂肪族アルコール組成」とは、全脂肪族アルコールの重量に対する各脂肪族アルコールの重量割合を意味する。脂肪族アルコールの重量(生産量)や脂肪族アルコール組成は、実施例で用いた方法により測定できる。
さらに本明細書において、塩基配列及びアミノ酸配列の同一性は、Lipman-Pearson法(Science,1985,vol.227,p.1435-1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Winのホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
また本明細書において「ストリンジェントな条件」としては、例えばMolecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook,David W.Russell.,Cold Spring Harbor Laboratory Press]記載の方法が挙げられる。例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
さらに明細書において、遺伝子の「上流」とは、翻訳開始点からの位置ではなく、対象として捉えている遺伝子又は領域の5'側に続く領域を示す。一方、遺伝子の「下流」とは、対象として捉えている遺伝子又は領域の3'側に続く領域を示す。
これに対し、後述の実施例でも示すように、大腸菌(Escherichia coli)やシアノバクテリアなど、元来長鎖脂肪族アルコールの生産能を有さない微生物に対して、KAS遺伝子とFAR遺伝子の発現を促進することで、長鎖脂肪族アルコールの生産能を付与した形質転換体を作製できる。
脂肪酸合成の第一段階では、アセチル-CoAとマロニルACPとの縮合反応により、アセトアセチルACPが生成する。この反応をKASが触媒する。次いで、β-ケトアシル-ACPレダクターゼによりアセトアセチルACPのケト基が還元されてヒドロキシブチリルACPが生成する。続いて、β−ヒドロキシアシル-ACPデヒドラーゼによりヒドロキシブチリルACPが脱水され、クロトニルACPが生成する。最後に、エノイル-ACPレダクターゼによりクロトニルACPが還元されて、ブチリルACPが生成する。これら一連の反応により、アセチル-ACPからアシル基の炭素鎖が2個伸長されたブチリルACPが生成する。以下、同様の反応を繰り返すことで、アシル-ACPの炭素鎖が伸長し、最終的に炭素原子数16又は18のアシル-ACPが合成される。
KASはその基質特異性によってKAS I、KAS II、KAS III、又はKAS IVに分類される。KAS IIIは、炭素原子数2のアセチル-CoAを基質とし、炭素原子数2から4の伸長反応を触媒する。KAS Iは、主に炭素原子数4から16の伸長反応を触媒し、炭素原子数16のパルミトイル-ACPを合成する。KAS IIは、主に炭素原子数16から18までの長鎖アシル基への伸長反応を触媒し、長鎖アシル-ACPを合成する。KAS IVは主に炭素原子数6から14の伸長反応を触媒し、中鎖アシル-ACPを合成する。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつβ-ケトアシル-ACPシンターゼ活性(以下、「KAS活性」ともいう)を有するタンパク質。
(C)配列番号96で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質。
(E)配列番号98で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(F)前記タンパク質(E)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質。
前記タンパク質(A)は、ナンノクロロプシス属に属する藻類であるナンノクロロプシス・オキュラータ(Nannochloropsis oculata)NIES2145株由来のKASの1つである。
また、ChloroP(http://www.cbs.dtu.dk/services/ChloroP/)やtargetP(http://www.cbs.dtu.dk/services/TargetP/)を用いた局在予測より、前記タンパク質(A)は葉緑体局在型のKASであり、N末端側のアミノ酸30〜40残基は葉緑体移行シグナル配列であると考えられる。
さらに、前記タンパク質(A)〜(F)は、主に炭素原子数16から18の長鎖アシル基への伸長反応に関与するKASII型のKASのうち、炭素原子数18以上の長鎖β-ケトアシル-ACP合成活性を有するKASIIであることが好ましい。なお本明細書において「長鎖β-ケトアシル-ACP合成活性」とは、主に炭素原子数16以上のアシル-ACPを基質とし、炭素原子数18以上の長鎖アシル-ACP合成の伸長反応を触媒する活性のことをいう。
一般に、酵素タンパク質をコードしているアミノ酸配列は、必ずしも全領域の配列が保存されていなければ酵素活性を示さないというものではなく、アミノ酸配列が変化しても酵素活性に影響を与えない領域も存在することが知られている。このような酵素活性に必須でない領域においては、アミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加といった変異が導入されても酵素本来の活性を維持することができる。本発明においても、このようにKAS活性が保持され、かつアミノ酸配列が一部変異したタンパク質を用いることができる。
またタンパク質(B)として、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、KAS活性を有し、かつ葉緑体移行シグナル配列が削除されていてもよい。
またタンパク質(B)として、前記タンパク質(A)又は(B)のアミノ酸配列にタンパク質の輸送や分泌に関与するシグナルペプチドが付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であってもよい。
またタンパク質(D)として、前記タンパク質(C)又は(D)のアミノ酸配列にタンパク質の輸送や分泌に関与するシグナルペプチドが付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であってもよい。
またタンパク質(F)として、前記タンパク質(E)又は(F)のアミノ酸配列にタンパク質の輸送や分泌に関与するシグナルペプチドが付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であってもよい。
なお、ナンノクロロプシス・オキュラータ等の藻類は、私的又は公的な研究所等の保存機関より入手することができる。例えば、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株は、国立環境研究所(NIES)から入手することができる。
(a)配列番号2で表される塩基配列からなるDNA。
(b)前記DNA(a)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)配列番号97で表される塩基配列からなるDNA。
(d)前記DNA(c)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(e)配列番号99で表される塩基配列からなるDNA。
(f)前記DNA(e)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質をコードするDNA。
配列番号2の塩基配列は、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質(ナンノクロロプシス・オキュラータNIES2145株由来のKAS)をコードする遺伝子の塩基配列である。
またDNA(b)として、前記DNA(a)の塩基配列との同一性が60%以上の塩基配列からなり、KAS活性を有する前記タンパク質(A)又は(B)をコードし、かつ葉緑体移行シグナル配列をコードする領域の塩基配列が削除されていてもよい。
また前記DNA(b)として、前記DNA(a)又は(b)の塩基配列に、タンパク質の輸送や分泌に関与するシグナルペプチドをコードする塩基配列が付加された塩基配列からなるDNAであってもよい。
また前記DNA(d)として、前記DNA(c)又は(d)の塩基配列に、タンパク質の輸送や分泌に関与するシグナルペプチドをコードする塩基配列が付加された塩基配列からなるDNAであってもよい。
また前記DNA(f)として、前記DNA(e)又は(f)の塩基配列に、タンパク質の輸送や分泌に関与するシグナルペプチドをコードする塩基配列が付加された塩基配列からなるDNAであってもよい。
タンパク質がFAR活性を有することは、例えば、FAR遺伝子欠損株を用いた系により確認することができる。あるいは、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAをFAR遺伝子欠損株に導入し、脂肪族アルコールの生成を検討することで確認できる。あるいは、FAR又はこれを含有する細胞破砕液を調製し、脂肪酸アシル-CoA、脂肪酸アシル-ACPなどを含む反応液と反応させ、常法に従い脂肪族アルコール量の増加を測定することで確認できる。
(G)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(H)前記タンパク質(G)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質。
(I)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(J)前記タンパク質(I)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質。
(K)配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(L)前記タンパク質(K)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質。
(M)配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(N)前記タンパク質(M)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質。
(O)配列番号100で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(P)前記タンパク質(O)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質。
(Q)配列番号101で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(R)前記タンパク質(Q)のアミノ酸配列と同一性が80%以上のアミノ酸配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質。
配列番号100のアミノ酸配列からなるタンパク質(タンパク質(O)、以下、「BrFAR1」ともいう。)、及び配列番号101のアミノ酸配列からなるタンパク質(タンパク質(Q)、以下、「BrFAR5」ともいう。)はいずれも、ブラシカ・ラパ由来のFARの1種である。本明細書において、ブラシカ・ラパ由来の上記FARをまとめて、「BrFAR」ともいう。
一般に、酵素タンパク質をコードしているアミノ酸配列は、必ずしも全領域の配列が保存されていなければ酵素活性を示さないというものではなく、アミノ酸配列が変化しても酵素活性に影響を与えない領域も存在することが知られている。このような酵素活性に必須でない領域においては、アミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加といった変異が導入されても酵素本来の活性を維持することができる。本発明においても、このようにFAR活性が保持され、かつアミノ酸配列が一部変異したタンパク質を用いることができる。
(g)配列番号4で表される塩基配列からなるDNA。
(h)前記DNA(g)の塩基配列と同一性が80%以上の塩基配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(i)配列番号6で表される塩基配列からなるDNA。
(j)前記DNA(i)の塩基配列と同一性が80%以上の塩基配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(k)配列番号8で表される塩基配列からなるDNA。
(l)前記DNA(k)の塩基配列と同一性が80%以上の塩基配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(m)配列番号10で表される塩基配列からなるDNA。
(n)前記DNA(m)の塩基配列と同一性が80%以上の塩基配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(o)配列番号35で表される塩基配列からなるDNA。
(p)前記DNA(o)の塩基配列と同一性が80%以上の塩基配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(q)配列番号36で表される塩基配列からなるDNA。
(r)前記DNA(q)の塩基配列と同一性が80%以上の塩基配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNA。
配列番号6の塩基配列は、配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質(AtFAR3)をコードする遺伝子(以下、「AtFAR3遺伝子」ともいう)の塩基配列である。
配列番号8の塩基配列は、配列番号7のアミノ酸配列からなるタンパク質(AtFAR4)をコードする遺伝子(以下、「AtFAR4遺伝子」ともいう)の塩基配列である。
配列番号10の塩基配列は、配列番号9のアミノ酸配列からなるタンパク質(AtFAR5)をコードする遺伝子(以下、「AtFAR5遺伝子」ともいう)の塩基配列である。
配列番号35の塩基配列は、配列番号100のアミノ酸配列からなるタンパク質(BrFAR1)をコードする遺伝子(以下、「BrFAR1遺伝子」ともいう)の塩基配列である。
配列番号36の塩基配列は、配列番号101のアミノ酸配列からなるタンパク質(BrFAR5)をコードする遺伝子(以下、「BrFAR5遺伝子」ともいう)の塩基配列である。
また前記DNA(h)として、前記DNA(g)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上296個以下、好ましくは1個以上222個以下、より好ましくは1個以上148個以下、より好ましくは1個以上119個以下、より好ましくは1個以上74個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上15個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(h)として、前記DNA(g)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
また前記DNA(j)として、前記DNA(i)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上297個以下、好ましくは1個以上223個以下、より好ましくは1個以上149個以下、より好ましくは1個以上119個以下、より好ましくは1個以上75個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上15個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(j)として、前記DNA(i)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
また前記DNA(l)として、前記DNA(k)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上297個以下、好ましくは1個以上223個以下、より好ましくは1個以上149個以下、より好ましくは1個以上119個以下、より好ましくは1個以上75個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上15個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(l)として、前記DNA(k)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
また前記DNA(n)として、前記DNA(m)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上299個以下、好ましくは1個以上224個以下、より好ましくは1個以上150個以下、より好ましくは1個以上120個以下、より好ましくは1個以上75個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上15個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(n)として、前記DNA(m)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
また前記DNA(p)として、前記DNA(o)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上297個以下、好ましくは1個以上223個以下、より好ましくは1個以上149個以下、より好ましくは1個以上119個以下、より好ましくは1個以上75個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上15個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(p)として、前記DNA(o)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
また前記DNA(r)として、前記DNA(q)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上299個以下、好ましくは1個以上225個以下、より好ましくは1個以上150個以下、より好ましくは1個以上120個以下、より好ましくは1個以上75個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上15個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(r)として、前記DNA(q)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
以下本明細書において、目的のタンパク質をコードする遺伝子の発現を促進させたものを「形質転換体」ともいい、目的のタンパク質をコードする遺伝子の発現を促進させていないものを「宿主」又は「野生株」ともいう。
本発明の形質転換体のうち、前記KAS遺伝子とFAR遺伝子の発現を促進させた形質転換体は、炭素原子数20以上の長鎖脂肪族アルコール、好ましくは炭素原子数20〜26の長鎖脂肪族アルコール、より好ましくは炭素原子数20〜26の飽和長鎖脂肪族アルコール若しくは1価の不飽和長鎖脂肪族アルコール、より好ましくは炭素原子数20又は22の飽和長鎖脂肪族アルコール若しくは1価の不飽和長鎖脂肪族アルコールの生産に好適に用いることができる。
なお、宿主や形質転換体の脂肪族アルコールの生産性については、実施例で用いた方法により測定することができる。
前記KAS遺伝子及びFAR遺伝子は、通常の遺伝子工学的手法により得ることができる。例えば、配列番号1、96若しくは98に示すアミノ酸配列又は配列番号2、97若しくは99に示す塩基配列に基づいて、KAS遺伝子を人工的に合成できる。また同様にして、配列番号3、5、7、9、100若しくは101に示すアミノ酸配列又は配列番号4、6、8、10、35若しくは36に示す塩基配列に基づいて、FAR遺伝子を人工的に合成できる。
KAS遺伝子及びFAR遺伝子の合成は、例えば、インビトロジェン社等のサービスを利用することができる。また、ナンノクロロプシス・オキュラータやシロイヌナズナ、ブラシカ・ラパからクローニングによって取得することもできる。例えば、Molecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook,David W.Russell,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)]記載の方法等により行うことができる。また、使用する宿主の種類に応じて、前記遺伝子の塩基配列の一部を最適化してもよい。例えば、Thermo Fisher Scientific社のGeneArt人工遺伝子合成サービスを利用することができる。
なお、実施例で用いたナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145は、国立環境研究所(NIES)より入手することができる。
本発明で用いるKAS遺伝子及びFAR遺伝子はそれぞれ、1種でもよいし、2種以上の遺伝子を組合せて用いてもよい。
前記微生物は原核生物、真核生物のいずれであってもよく、エシェリキア(Escherichia)属の微生物やバシラス(Bacillus)属の微生物、シアノバクテリア(藍色細菌)等の原核生物、又は酵母や糸状菌等の真核微生物を用いることができる。なかでも原核生物が好ましく、長鎖脂肪族アルコールの生産能を付与する観点から、エシェリキア属の微生物及びシアノバクテリアがより好ましく、大腸菌又はシアノバクテリアがより好ましい。
シアノバクテリアは多様性に富んでおり、細胞の形状のみを見ても、シネコシスティス・エスピー(Synechocystis sp.)PCC6803株のような単細胞性のもの、ヘテロシストを形成し窒素固定を行うアナベナ・エスピー(Anabaena sp.)PCC7120株のように多細胞がヒモ状に繋がっている糸状性のもの、又はらせん状や分岐状のもの等がある。
生育環境についても、別府温泉から単離されたサーモシネココッカス・エロンガタス(Thermosynechococcus elongatus)BP-1のような好熱性のもの、海洋性で沿岸部に生息するシネココッカス・エスピー(Synechococcus sp.)CC9311株、又は外洋に生息するシネココッカス・エスピーWH8102株など、様々な条件に適応した種が見られる。
また、種独自の特徴を持つものとして、ミクロシスティス・エルギノーサ(Microcystis aeruginosa)のように、ガス小胞を持ち毒素を産生することのできるものや、チラコイドを持たず集光アンテナであるフィコビリソームが原形質膜に結合しているグロイオバクター・ビオラセウス(Gloeobacter violaceus)PCC7421株、又は一般的な光合成生物のようにクロロフィルaでなくクロロフィルdを主要な(>95%)光合成色素として持つ海洋性のアクリオクロリス・マリナ(Acaryochloris marina)なども挙げられる。
シアノバクテリアでは、光合成により固定された二酸化炭素は多数の酵素反応プロセスを経てアセチル-CoAへと変換される。脂肪酸合成の最初の段階は、アセチル-CoAカルボキシラーゼの作用による、アセチル-CoAと二酸化炭素からのマロニル-CoAの合成である。次に、マロニル-CoAがマロニルCoA:ACPトランスアシラーゼの作用によってマロニル-ACPへと変換される。その後、β-ケトアシル-ACPシンターゼの進行的作用時に、炭素単位2個の連続的付加が起こり、炭素が2個ずつ増加した、アシル-ACPが合成され、膜脂質等の合成中間体として利用される。
本発明で好ましく用いることができる発現ベクターとしては、pBluescript(pBS) II SK(-)(Stratagene社製)、pSTV系ベクター(タカラバイオ社製)、pUC系ベクター(タカラバイオ社製)、pET系ベクター(タカラバイオ社製)、pGEX系ベクター(GEヘルスケア社製)、pCold系ベクター(タカラバイオ社製)、pHY300PLK(タカラバイオ社製)、pUB110(Mckenzie,T.et al.,1986,Plasmid 15(2),p.93-103)、pBR322(タカラバイオ社製)、pRS403(ストラタジーン社製)、pMW218/219(ニッポンジーン社製)pRI系ベクター(タカラバイオ社製)、pBI系ベクター(クロンテック社製)、及びIN3系ベクター(インプランタイノベーションズ社製)が挙げられる。
また、導入する遺伝子は宿主微生物におけるコドン使用頻度にあわせてコドンを至適化されることが好ましい。各種生物が使用するコドンの情報は、Codon Usage Database(www.kazusa.or.jp/codon/)から入手可能である。
形質転換方法は、使用する宿主の種類に応じて常法より適宜選択することができる。例えば、自然形質転換法、カルシウムイオンを用いる形質転換方法、一般的なコンピテントセル形質転換方法、プロトプラスト形質転換法、エレクトロポレーション法、LP形質転換方法、アグロバクテリウムを用いた方法、パーティクルガン法、及び接合法が挙げられる。
「発現調節領域」とは、プロモーターやターミネーターを示し、これらの配列は一般に隣接する遺伝子の発現量(転写量、翻訳量)の調節に関与している。ゲノム上に前記遺伝子を有する宿主においては、当該遺伝子の発現調節領域を改変して前記遺伝子の発現を促進させることで、長鎖脂肪族アルコールの生産性を向上させることができる。
発現調節領域の改変方法としては、例えばプロモーターの入れ替えが挙げられる。ゲノム上に前記各種遺伝子を有する宿主において、当該遺伝子のプロモーターを、より転写活性の高いプロモーターに入れ替えることで、前記各種遺伝子の発現を促進させることができる。
前述のプロモーターの改変は、相同組換えなどの常法に従い行うことができる。具体的には、標的とするプロモーターの上流、下流領域を含み、標的プロモーターに代えて別のプロモーターを含む直鎖状のDNA断片を構築し、これを宿主細胞に取り込ませ、宿主ゲノムの標的プロモーターの上流側と下流側とで2回交差の相同組換えを起こす。その結果、ゲノム上の標的プロモーターが別のプロモーター断片と置換され、プロモーターを改変することができる。このような相同組換えによる標的プロモーターの改変方法は、例えば、Besher et al.,Methods in molecular biology,1995,vol.47,p.291-302等の文献を参考に行うことができる。
したがって、本発明の形質転換体を適切な条件で培養し、次いで得られた培養物から長鎖脂肪族アルコールを回収すれば、長鎖脂肪族アルコールを効率よく製造することができる。ここで「培養物」とは培養した後の培養液及び形質転換体をいう。
<2>KAS及びFARの発現、又はKAS遺伝子及びFAR遺伝子の発現を微生物の細胞内で促進させる、長鎖脂肪族アルコールの生産能を微生物(好ましくは、長鎖脂肪族アルコールの生産能を元来有さない微生物)に付与する方法。
<4>KAS遺伝子及びFAR遺伝子を前記微生物に導入し、導入したKAS遺伝子及びFAR遺伝子の発現を促進させる、前記<1>〜<3>のいずれか1項記載の方法。
<6>前記KASが、下記タンパク質(A)〜(F)からなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質、好ましくは下記タンパク質(E)及び(F)からなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質、である、前記<1>〜<5>のいずれか1項記載の方法。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質。
(C)配列番号96で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質。
(E)配列番号98で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(F)前記タンパク質(E)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質。
<8>前記タンパク質(D)が、前記タンパク質(C)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上174個以下、より好ましくは1個以上152個以下、より好ましくは1個以上130個以下、より好ましくは1個以上108個以下、より好ましくは1個以上87個以下、より好ましくは1個以上65個以下、より好ましくは1個以上43個以下、より好ましくは1個以上34個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上8個以下、さらに好ましくは1個以上4個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<6>項記載の方法。
<9>前記タンパク質(F)が、前記タンパク質(E)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上183個以下、より好ましくは1個以上160個以下、より好ましくは1個以上137個以下、より好ましくは1個以上114個以下、より好ましくは1個以上92個以下、より好ましくは1個以上69個以下、より好ましくは1個以上46個以下、より好ましくは1個以上37個以下、より好ましくは1個以上23個以下、より好ましくは1個以上10個以下、さらに好ましくは1個以上5個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<6>項記載の方法。
<10>前記タンパク質(A)〜(F)が、長鎖β-ケトアシル-ACP合成活性(主に炭素原子数16以上のアシル-ACPを基質とし、炭素原子数18以上の長鎖アシル-ACP合成の伸長反応を触媒する活性)を有するKASである、前記<6>〜<9>のいずれか1項記載の方法。
(a)配列番号2で表される塩基配列からなるDNA。
(b)前記DNA(a)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)配列番号97で表される塩基配列からなるDNA。
(d)前記DNA(c)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(e)配列番号99で表される塩基配列からなるDNA。
(f)前記DNA(e)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつKAS活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<13>前記DNA(d)が、前記DNA(c)の塩基配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上523個以下、より好ましくは1個以上457個以下、より好ましくは1個以上392個以下、より好ましくは1個以上327個以下、より好ましくは1個以上261個以下、より好ましくは1個以上196個以下、より好ましくは1個以上130個以下、より好ましくは1個以上104個以下、より好ましくは1個以上65個以下、より好ましくは1個以上26個以下、より好ましくは1個以上13個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加された塩基配列からなり、かつKAS活性を有する前記タンパク質(C)又は(D)をコードするDNA、又は前記DNA(c)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつKAS活性を有する前記タンパク質(C)又は(D)をコードするDNAである、前記<11>項記載の方法。
<14>前記DNA(f)が、前記DNA(e)の塩基配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上549個以下、より好ましくは1個以上480個以下、より好ましくは1個以上412個以下、より好ましくは1個以上343個以下、より好ましくは1個以上275個以下、より好ましくは1個以上206個以下、より好ましくは1個以上138個以下、より好ましくは1個以上110個以下、より好ましくは1個以上69個以下、より好ましくは1個以上28個以下、より好ましくは1個以上14個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加された塩基配列からなり、かつKAS活性を有する前記タンパク質(E)又は(F)をコードするDNA、又は前記DNA(e)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつKAS活性を有する前記タンパク質(E)又は(F)をコードするDNAである、前記<11>項記載の方法。
(G)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(H)前記タンパク質(G)のアミノ酸配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質。
(I)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(J)前記タンパク質(I)のアミノ酸配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質。
(K)配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(L)前記タンパク質(K)のアミノ酸配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質。
(M)配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(N)前記タンパク質(M)のアミノ酸配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質。
(O)配列番号100で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(P)前記タンパク質(O)のアミノ酸配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質。
(Q)配列番号101で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(R)前記タンパク質(Q)のアミノ酸配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質。
<17>前記タンパク質(J)が、前記タンパク質(I)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上99個以下、より好ましくは1個以上74個以下、より好ましくは1個以上50個以下、より好ましくは1個以上40個以下、より好ましくは1個以上25個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上5個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<15>項記載の方法。
<18>前記タンパク質(L)が、前記タンパク質(K)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上99個以下、より好ましくは1個以上74個以下、より好ましくは1個以上50個以下、より好ましくは1個以上40個以下、より好ましくは1個以上25個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上5個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<15>項記載の方法。
<19>前記タンパク質(N)が、前記タンパク質(M)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上100個以下、より好ましくは1個以上75個以下、より好ましくは1個以上50個以下、より好ましくは1個以上40個以下、より好ましくは1個以上25個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上5個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<15>項記載の方法。
<20>前記タンパク質(P)が、前記タンパク質(O)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上99個以下、より好ましくは1個以上74個以下、より好ましくは1個以上50個以下、より好ましくは1個以上40個以下、より好ましくは1個以上25個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上5個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<15>項記載の方法。
<21>前記タンパク質(R)が、前記タンパク質(Q)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上100個以下、より好ましくは1個以上75個以下、より好ましくは1個以上50個以下、より好ましくは1個以上40個以下、より好ましくは1個以上25個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上5個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質である、前記<15>項記載の方法。
(g)配列番号4で表される塩基配列からなるDNA。
(h)前記DNA(g)の塩基配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(i)配列番号6で表される塩基配列からなるDNA。
(j)前記DNA(i)の塩基配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(k)配列番号8で表される塩基配列からなるDNA。
(l)前記DNA(k)の塩基配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(m)配列番号10で表される塩基配列からなるDNA。
(n)前記DNA(m)の塩基配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(o)配列番号35で表される塩基配列からなるDNA。
(p)前記DNA(o)の塩基配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(q)配列番号36で表される塩基配列からなるDNA。
(r)前記DNA(q)の塩基配列と同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<24>前記DNA(j)が、前記DNA(i)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上297個以下、より好ましくは1個以上223個以下、より好ましくは1個以上149個以下、より好ましくは1個以上119個以下、より好ましくは1個以上75個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上15個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(i)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<22>項記載の方法。
<25>前記DNA(l)が、前記DNA(k)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上297個以下、より好ましくは1個以上223個以下、より好ましくは1個以上149個以下、より好ましくは1個以上119個以下、より好ましくは1個以上75個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上15個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(k)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<22>項記載の方法。
<26>前記DNA(n)が、前記DNA(m)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上299個以下、より好ましくは1個以上224個以下、より好ましくは1個以上150個以下、より好ましくは1個以上120個以下、より好ましくは1個以上75個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上15個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(m)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<22>項記載の方法。
<27>前記DNA(p)が、前記DNA(o)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上297個以下、より好ましくは1個以上223個以下、より好ましくは1個以上149個以下、より好ましくは1個以上119個以下、より好ましくは1個以上75個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上15個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(o)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<22>項記載の方法。
<28>前記DNA(r)が、前記DNA(q)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上299個以下、より好ましくは1個以上225個以下、より好ましくは1個以上150個以下、より好ましくは1個以上120個以下、より好ましくは1個以上75個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上15個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(q)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつFAR活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<22>項記載の方法。
<30>前記シアノバクテリアが、シネコシスティス属、シネココッカス属、サーモシネココッカス属、トリコデスミウム属、アカリオクロリス属、クロコスファエラ属、及びアナベナ属からなる群より選ばれるシアノバクテリア、好ましくはシネコシスティス属又はシネココッカス属のシアノバクテリア、である、前記<29>項記載の方法。
<31>前記KAS遺伝子及びFAR遺伝子をシアノバクテリアのゲノム上に導入して前記遺伝子の発現を促進させる、前記<29>又は<30>項記載の方法。
<33>前記微生物が生産する全脂肪族アルコールに占める、長鎖脂肪族アルコールの含有量が、全脂肪族アルコール重量の1%以上、好ましくは2%以上、より好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、99%以下、好ましくは95%以下、である、前記<1>〜<32>のいずれか1項記載の方法。
<35>KAS遺伝子及びFAR遺伝子の発現が前記微生物の細胞内で促進され、KAS及びFARの発現が促進されている、前記<34>項記載の形質転換体。
<36>KAS遺伝子若しくは当該遺伝子を含有する組換えベクター、並びにFAR遺伝子、又はKAS遺伝子若しくは当該遺伝子を含有する組換えベクターを含んでなる、微生物の形質転換体。
<37>KAS遺伝子及びFAR遺伝子、又はKAS遺伝子を含有する組換えベクター及びFAR遺伝子を含有する組換えベクターを、宿主微生物に導入する、形質転換体の作製方法。
<38>前記KASが、前記<6>〜<10>のいずれか1項で規定する前記タンパク質(A)〜(F)からなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質、好ましくは下記タンパク質(E)及び(F)からなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質、である、前記<34>〜<37>のいずれか1項記載の形質転換体、又はその作製方法。
<39>前記KAS遺伝子、好ましくは前記タンパク質(A)〜(F)からなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質をコードする遺伝子が、前記<11>〜<14>のいずれか1項で規定する前記DNA(a)〜(f)からなる群より選ばれる少なくとも1種のDNAからなる遺伝子、好ましくは下記DNA(e)及び(f)からなる群より選ばれる少なくとも1種のDNAからなる遺伝子、である、前記<34>〜<38>のいずれか1項記載の形質転換体、又はその作製方法。
<40>前記FARが、前記<15>〜<21>のいずれか1項で規定する前記タンパク質(G)〜(R)からなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質である、前記<34>〜<39>のいずれか1項記載の形質転換体、又はその作製方法。
<41>前記FAR遺伝子、好ましくは前記タンパク質(G)〜(R)からなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質をコードする遺伝子が、前記<22>〜<28>のいずれか1項で規定する前記DNA(g)〜(r)からなる群より選ばれる少なくとも1種のDNAからなる遺伝子である、前記<34>〜<40>のいずれか1項記載の形質転換体、又はその作製方法。
<43>前記シアノバクテリアが、シネコシスティス属、シネココッカス属、サーモシネココッカス属、トリコデスミウム属、アカリオクロリス属、クロコスファエラ属、及びアナベナ属からなる群より選ばれるシアノバクテリア、好ましくはシネコシスティス属又はシネココッカス属のシアノバクテリア、である、前記<42>項記載の形質転換体、又はその作製方法。
<45>前記長鎖脂肪族アルコールが炭素原子数20以上の長鎖脂肪族アルコール、好ましくは炭素原子数20〜26の長鎖脂肪族アルコール、より好ましくは炭素原子数20〜26の飽和長鎖脂肪族アルコール若しくは1価の不飽和長鎖脂肪族アルコール、より好ましくは炭素原子数20又は22の飽和長鎖脂肪族アルコール若しくは1価の不飽和長鎖脂肪族アルコールである、前記<44>項記載の使用。
<47>前記<46>項記載のタンパク質をコードする遺伝子。
<48>前記<22>〜<28>のいずれか1項で規定した、前記DNA(g)〜(r)からなる群より選ばれる少なくとも1種のDNAからなる遺伝子。
<49>前記<47>又は<48>項記載の遺伝子を含有する、組換えベクター。
(1)N末端側のオリゴヌクレオチドを改変したNoKASII遺伝子発現用プラスミドの構築
pBS-SK(-)プラスミド(アジレント・テクノロジー社製)を鋳型とし、表3記載のプライマーpBS-SK-fw及びプライマーpBS-SK-rvを用いてPCRを行い、pBS-SK(-)線状プラスミドを増幅した。
また、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株より作製したcDNAライブラリーを鋳型として、表3記載の、プライマーpBS/NoKASII(-ATG)-fw及びプライマーpBS/NoKASII-rv、プライマーpBS/NoKASII(-20)-fw及びプライマーpBS/NoKASII-rv、プライマーpBS/NoKASII(-40)-fw及びプライマーpBS/NoKASII-rv、並びにプライマーpBS/NoKASII(-60)-fw及びプライマーpBS/NoKASII-rvをそれぞれ用いてPCRを行い、NoKASII(-ATG)断片、NoKASII(-20)断片、NoKASII(-40)断片、及びNoKASII(-60)断片を増幅した。
ここで、NoKASII(-ATG)断片は、配列番号2の7位〜1428位の塩基配列からなる。また、NoKASII(-20)断片は、配列番号2の61位〜1428位の塩基配列からなる。また、NoKASII(-40)断片は、配列番号2の121位〜1428位の塩基配列からなる。さらに、NoKASII(-60)断片は配列番号2の181位〜1428位の塩基配列からなる。
なお、前記プラスミドは、NoKASIIのアミノ酸配列のN末端側に、pBS-SK(-)由来のlacZ29アミノ酸残基が融合する形で発現するように設計されている。
pBS-SK(-)プラスミド(アジレント・テクノロジー社製)を鋳型とし、表3記載のプライマーRBS/pBS-SK-rv及びプライマーpBS-SK-fwを用いてPCRを行い、pBS-SK(-)線状プラスミドを増幅した。
また、シロイヌナズナより作製したcDNAライブラリーを鋳型とし、表3記載のプライマーRBS/AtFAR1-fw及びプライマーpBS-SK/AtFAR1-rvを用いてPCRを行い、AtFAR1遺伝子断片(Gene ID:AT5G22500.1、配列番号4)を増幅した。
上記方法と同様に、表3記載の、プライマーRBS/AtFAR2(-120)-fw及びプライマーpBS-SK/AtFAR2-rv、プライマーRBS/AtFAR3-fw及びプライマーpBS-SK/AtFAR3-rv、プライマーRBS/AtFAR4-fw及びプライマーpBS-SK/AtFAR4-rv、並びにプライマーRBS/AtFAR5-fw及びプライマーpBS-SK/AtFAR5-rvをそれぞれ用いてPCRを行い、AtFAR2(-120)遺伝子断片(Gene ID:AT3G11980.1、配列番号29)、AtFAR3遺伝子断片(Gene ID:AT4G33790.1、配列番号6)、AtFAR4遺伝子断片(Gene ID:AT3G44540.1、配列番号8)、並びにAtFAR5遺伝子断片(Gene ID:AT3G44550.1、配列番号10)をそれぞれ増幅した。
前述のpBS-SK(-)線状プラスミドと、AtFAR1遺伝子断片、AtFAR2(-120)遺伝子断片、AtFAR3遺伝子断片、AtFAR4遺伝子断片、又はAtFAR5遺伝子断片とを、In-Fusion(登録商標)PCRクローニングシステム(Clontech社)を用いて連結し、pBS-SK(-)-AtFAR1プラスミド、pBS-SK(-)-AtFAR2(-120)プラスミド、pBS-SK(-)-AtFAR3プラスミド、pBS-SK(-)-AtFAR4プラスミド、及びpBS-SK(-)-AtFAR5プラスミドを作出した。
前述のpBS-SK(-)-NoKASIIプラスミド、pBS-SK(-)-NoKASII(-20)プラスミド、又はpBS-SK(-)-NoKASII(-40)プラスミドを鋳型とし、表3記載のプライマーpBS-SK-fw及びプライマーRBS/NoKASII-rvを用いてPCRを行い、pBS-SK(-)-NoKASII線状プラスミド、pBS-SK(-)-NoKASII(-20)線状プラスミド、及びpBS-SK(-)-NoKASII(-40)線状プラスミドをそれぞれ増幅した。
pBS-SK(-)-NoKASII線状プラスミドと、前述のAtFAR1遺伝子断片、AtFAR2(-120)遺伝子断片、AtFAR3遺伝子断片、AtFAR4遺伝子断片、又はAtFAR5遺伝子断片とを、In-Fusion(登録商標)PCRクローニングシステム(Clontech社)を用いて連結し、pBS-SK(-)-NoKASII-RBS-AtFAR1プラスミド、pBS-SK(-)-NoKASII-RBS-AtFAR2(-120)プラスミド、pBS-SK(-)-NoKASII-RBS-AtFAR3プラスミド、pBS-SK(-)-NoKASII-RBS-AtFAR4プラスミド、及びpBS-SK(-)-NoKASII-RBS-AtFAR5プラスミドを作出した。
同様に、pBS-SK(-)-NoKASII(-20)線状プラスミドと、前述のAtFAR1遺伝子断片、AtFAR2(-120)遺伝子断片、AtFAR3遺伝子断片、AtFAR4遺伝子断片、又はAtFAR5遺伝子断片とを、In-Fusion(登録商標)PCRクローニングシステム(Clontech社)を用いて連結し、pBS-SK(-)-NoKASII(-20)-RBS-AtFAR1プラスミド、pBS-SK(-)-NoKASII(-20)-RBS-AtFAR2(-120)プラスミド、pBS-SK(-)-NoKASII(-20)-RBS-AtFAR3プラスミド、pBS-SK(-)-NoKASII(-20)-RBS-AtFAR4プラスミド、及びpBS-SK(-)-NoKASII(-20)-RBS-AtFAR5プラスミドを作出した。
同様に、pBS-SK(-)-NoKASII(-40)線状プラスミドと、前述のAtFAR1遺伝子断片、AtFAR2(-120)遺伝子断片、AtFAR3遺伝子断片、AtFAR4遺伝子断片、又はAtFAR5遺伝子断片とを、In-Fusion(登録商標)PCRクローニングシステム(Clontech社)を用いて連結し、pBS-SK(-)-NoKASII(-40)-RBS-AtFAR1プラスミド、pBS-SK(-)-NoKASII(-40)-RBS-AtFAR2(-120)プラスミド、pBS-SK(-)-NoKASII(-40)-RBS-AtFAR3プラスミド、pBS-SK(-)-NoKASII(-40)-RBS-AtFAR4プラスミド、及びpBS-SK(-)-NoKASII(-40)-RBS-AtFAR5プラスミドを作出した。
LB培地1mLに植菌した大腸菌K27ΔFadD株(Coli genetic stock centerより入手、http://cgsc.biology.yale.edu/Strain.php?ID=5655参照)を37℃でOD600が0.3〜0.4程度になるまで培養した。
菌体を遠心により回収し、氷冷したTSS溶液(10%PEG6000、5%DMSO、35mM MgSO4)100μLと、前記プラスミド溶液とを混合し、30分間氷上で静置した。その後、42℃1分間のヒートショックを行い、アンピシリン含有LBプレートに塗布して30℃で一晩培養した。培養後、薬剤耐性を指標として、プラスミドが導入された株を選抜した。
(1)BrFAR遺伝子発現用プラスミドの構築
ブラシカ・ラパより作製したcDNAライブラリーを鋳型とし、表3記載のプライマーRBS/BrFAR1-fw及びプライマーpBS-SK/BrFAR1-rvを用いてPCRを行い、BrFAR1遺伝子断片(NCBI Accession number:XM_009122403、配列番号35)を増幅した。
上記方法と同様に、表3記載のプライマーRBS/BrFAR5-fw及びプライマーpBS-SK/BrFAR5-rvを用いてPCRを行い、BrFAR5遺伝子断片(NCBI Accession number:XM_009152061、配列番号36)を増幅した。
作製例1と同様の方法で作製したpBS-SK(-)-NoKASII線状プラスミド、pBS-SK(-)-NoKASII(-20)線状プラスミド、又はpBS-SK(-)-NoKASII(-40)線状プラスミドと、BrFAR1遺伝子断片又はBrFAR5遺伝子断片とを、それぞれIn-Fusion(登録商標)PCRクローニングシステム(Clontech社)を用いて連結し、pBS-SK(-)-NoKASII-RBS-BrFAR1、pBS-SK(-)-NoKASII-RBS-BrFAR5プラスミド、pBS-SK(-)-NoKASII(-20)-RBS-BrFAR1、pBS-SK(-)-NoKASII(-20)-RBS-BrFAR5プラスミド、pBS-SK(-)-NoKASII(-40)-RBS-BrFAR1、及びpBS-SK(-)-NoKASII(-40)-RBS-BrFAR5プラスミドを作出した。
LB培地1mLに植菌した大腸菌K27ΔFadD株(Coli genetic stock centerより入手、http://cgsc.biology.yale.edu/Strain.php?ID=5655参照)を37℃でOD600が0.3〜0.4程度になるまで培養した。
菌体を遠心により回収し、氷冷したTSS溶液(10%PEG6000、5%DMSO、35mM MgSO4)100μLと、前記プラスミド溶液とを混合し、30分間氷上で静置した。その後、42℃1分間のヒートショックを行い、アンピシリン含有LBプレートに塗布して30℃で一晩培養した。培養後、薬剤耐性を指標として、プラスミドが導入された株を選抜した。
作製例1及び2で得られた形質転換体のコロニーをOvernight Express Instant TB Medium(Takara社製)2mLに植菌し、30℃で24時間振とう培養(160rpm)した。
培養液1mLをガラス試験管に分取し、3,000rpmで遠心することにより菌体を回収した。上清を除去した沈殿を蒸留水0.5mLに懸濁し、内部標準としてクロロホルムに溶解したC23:0アルコール(1-トリコサノール)(1mg/mL)をそれぞれ25μLずつ添加した。これに、クロロホルム0.5mL、及びメタノール1mLを加えて攪拌し、30分間静置した。さらに、クロロホルム0.5mL、及び1.5%KCl溶液0.5mLを加えて攪拌し、3,000rpmで15分間遠心分離を行い、有機層(下層)をパスツールピペットでふた付き試験管に回収し、窒素ガスで乾固した。
乾固した脂質画分に0.5N KOHメタノール溶液0.7mLを加えて攪拌し、80℃で30分間けん化した。さらに、3フッ化ホウ素メタノール溶液1mLを加え、80℃で10分間メチルエステル化反応を行った。この反応液に、ヘキサン0.2〜0.5mL及び飽和食塩水1mLを加えて攪拌し、室温にて10分間遠心分離した後、上層のヘキサン層を回収した。
まず、ガスクロマトグラフ質量分析解析にて、脂肪酸メチルエステル及びTMS化脂肪族アルコールの同定を行った。次に、ガスクロマトグラフィー解析により得られた波形データのピーク面積より、各形質転換体が産出する総脂肪酸量に占める各種脂肪酸量の割合(%)、及び総脂肪族アルコール量に占める各種脂肪族アルコール量の割合(%)を算出した。
<ガスクロマトグラフ質量分析解析>
分析装置:7890A GC system(Agilent社製)、5975 Inert XL MSD(Agilent社製)
キャピラリーカラム:DB-1 MS(30m×20μm×0.25μm、J&W Scientific社製)
移動相:高純度ヘリウム
カラム内流量:1.0mL/min
昇温プログラム:100℃(1分)→12.5℃/分(200℃まで)→5℃/分(250℃まで)→250℃(9分)
平衡化時間:0.5分
注入口:スプリット注入(スプリット比:0.1:1)
圧力:55.793 psi
注入量:5μL
洗浄バイアル:メタノール・クロロホルム
検出器温度:350℃
<ガスクロマトグラフィー解析>
分析装置:7890A GC system(Agilent社製)
キャピラリーカラム:DB-1 MS(30m×20μm×0.25μm、J&W Scientific社製)
移動相:ヘリウム
カラム内流量:0.25mL/分
昇温プログラム:80℃(0分)→15℃/分(320℃まで)
平衡化時間:0.5分
注入口:スプリット注入(スプリット比:75:1)
圧力:48.475 psi
注入量:5μL
洗浄バイアル:メタノール・クロロホルム
検出器温度:350℃
これに対して、表8〜10に示すようにNoKASII遺伝子、NoKASII(-20)遺伝子又はNoKASII(-40)遺伝子と、AtFAR1遺伝子、AtFAR3遺伝子、AtFAR4遺伝子、AtFAR5遺伝子、BrFAR1遺伝子又はBrFAR5遺伝子とを導入して共に発現した株において、炭素原子数が20〜26の脂肪族アルコールの生成が確認された。よって、長鎖脂肪族アルコールの生産には、KASII遺伝子とFAR遺伝子両方の発現が必要である。
但し、NoKASII遺伝子、NoKASII(-20)遺伝子、又はNoKASII(-40)遺伝子と、AtFAR2(-120)遺伝子とを導入して共に発現した株では炭素原子数が20以上のアルコールの生成は見られなかった。そのため、NoKASII遺伝子と炭素原子数が20以上のアシル-ACPを基質とするFAR遺伝子とを適切に組み合わせて用いる必要がある。なお、各種FARのアミノ酸配列に対するAtFAR2(-120)の同一性は、AtFAR1に対しては39%、AtFAR3に対しては38%、AtFAR4に対しては41%、AtFAR5に対しては40%、BrFAR1に対しては40%、BrFAR5に対しては40%であった。
また、長鎖脂肪族アルコールの全脂肪族アルコールに占める長鎖脂肪族アルコール量の割合は、同じFAR遺伝子を導入した場合でも、NoKASII(-20)遺伝子を導入した場合が最も高く、次いでNoKASII(-40)遺伝子を導入した場合、次いでNoKASII遺伝子を導入した場合が高い傾向にあった。
(1)カナマイシン耐性遺伝子発現用プラスミドの構築
シネココッカス・エロンガタスエスピーPCC7942株のゲノムDNAを鋳型とし、表4記載のプライマーpUC118/NS1up-F及びプライマーKmr/NS1up-Rを用いてPCRを行い、ニュートラルサイトNS1領域の上流断片(NS1up断片:配列番号73)を増幅した。また、前記ゲノムDNAを鋳型とし、表4記載のプライマーKmr/NS1down-F及びプライマーpUC118/NS1down-Rを用いてPCRを行い、ニュートラルサイトNS1領域の下流断片(NS1down断片:配列番号76)を増幅した。
さらに、pJH1プラスミド(Trieu-Cuot P et al., Gene, 1983, vol. 23, p. 331-341)を鋳型として、表4記載のプライマーKmr-F及びプライマーKmr-Rを用いてPCRを行い、カナマイシン耐性マーカー遺伝子断片(Kmr断片:配列番号45)を増幅した。
前記NS1up断片、NS1down断片及びKmr断片を、pUC118プラスミド(タカラバイオ社製)のHincIIサイトに、In-Fusion(登録商標)PCRクローニングシステム(Clontech社)を用いて挿入し、pUC118-NS1::Kmプラスミドを取得した。
前記pUC118-NS1::Kmプラスミドを鋳型とし、表4記載のプライマーKmr-R及びプライマーNS1down-Fを用いてPCRを行い、pUC118-NS1::Kmプラスミドを線状化した。
次に、pTrc99Aクローニングプラスミド(NCBI Accession number:M22744)の配列より人工合成したtrcプロモーター配列を鋳型とし、表4記載のプライマーKmr/Ptrc-F及びプライマーPtrc-Rを用いてPCRを行い、trcプロモーター断片(Ptrc断片、配列番号80)を増幅した。
また、シネコシスティス・エスピーPCC6803株の野生型ゲノムDNAを鋳型とし、表4記載のプライマーTrbc-F及びプライマーNS1down/Trbc-Rを用いてPCRを行い、rbc遺伝子のターミネーター断片(Trbc断片、配列番号52)を増幅した。
さらに、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株より作製したcDNAライブラリーを鋳型とし、表4記載のプライマーPtrc/NoKASII(-40)-F及びプライマーTrbc/NoKASII-Rを用いてPCRを行い、葉緑体移行シグナルを削除したNoKASII遺伝子断片(NoKASII(-40)断片、配列番号2の121位〜1428位の塩基配列の5'末端側に開始コドン(ATG)を付加した塩基配列、配列番号97)を増幅した。
シネココッカス・エロンガタスエスピーPCC7942の野生株のゲノムDNAを鋳型とし、表4記載のプライマーpUC118/orf1593up-F及びプライマーSp/orf1593up-Rを用いてPCRを行い、orf1593領域の上流断片(orf1593up断片:配列番号85)を増幅した。また、前記ゲノムDNAを鋳型とし、表4記載のプライマーSp/orf1594down-F及びプライマーpUC118/orf1594down-Rを用いてPCRを行い、orf1594領域の下流断片(orf1594down断片:配列番号88)を増幅した。
さらにpDG1726プラスミド(Guerout-Fleury et al., Gene, 1995, vol. 167, p. 335-336)を鋳型とし、表4記載のプライマーSp-F及びプライマーSp-Rを用いてPCRを行い、スペクチノマイシン耐性マーカー遺伝子断片(Sp断片:配列番号63)を増幅した。
前記pUC118-orf1593/1594::Spプラスミドを鋳型とし、表4記載のプライマーSp-F及びプライマーorf1594up-Rを用いてPCRを行い、pUC118-orf1593/1594::Spプラスミドを線状化した。
次に、pTrc99Aクローニングプラスミド(NCBI Accession number:M22744)の配列より人工合成したtrcプロモーター配列を鋳型とし、表4記載のプライマーorf1593up/Ptrc-F及びプライマーPtrc-Rを用いてPCRを行い、trcプロモーター断片(Ptrc断片、配列番号80)を増幅した。同様に、シネココッカス・エロンガタスエスピーPCC7942のゲノムDNAを鋳型とし、表4記載のプライマーorf1593up/PrrnA-F及びプライマーPrrnA-Rを用いてPCRを行い、シネココッカス・エロンガタスエスピーPCC7942由来rrnAオペロン遺伝子のプロモーター断片(Prrn断片:配列番号93)を増幅した。
また、シネコシスティス・エスピーPCC6803株の野生型ゲノムDNAを鋳型とし、表4記載のプライマーTrbc-F及びプライマーSp/Trbc-Rを用いてPCRを行い、rbc遺伝子のターミネーター領域(Trbc断片:配列番号52)を増幅した。
さらに、シロイヌナズナより作製したcDNAライブラリーを鋳型とし、表4記載のプライマーPtrc99A2-AtFAR1-F及びプライマーTrbc/AtFAR1-rvを用いてPCRを行い、AtFAR1遺伝子断片(配列番号4)を増幅した。同様に、表4記載のプライマーPrrnA2-AtFAR4-F及びプライマーTrbc/AtFAR4-rvを用いてPCRを行い、AtFAR4遺伝子断片(配列番号8)を増幅した。
上記方法と同様に、線状化したpUC118-orf1593/1594::Spプラスミド、PrrnA断片、Trbc断片、及びAtFAR4遺伝子断片を混合し、In-Fusion(登録商標)PCRクローニングシステム(Clontech社)を用いることで、シネココッカス・エロンガタスエスピーPCC7942株由来のorf1593/1594領域中にrrnAオペロン遺伝子のプロモーター、AtFAR4遺伝子断片、rbcターミネーター、及びスペクチノマイシン耐性遺伝子カセットがこの順で挿入された、pUC118-orf1593/1594::PrrnA-AtFAR4-Trbc-Spプラスミドを得た
得られたpUC118-NS1::Km-Ptrc-NoKASII(-40)-Trbcプラスミド、pUC118-orf1593/1594::Ptrc-AtFAR1-Trbc-Sp、及びpUC118-orf1593/1594::PrrnA-AtFAR4-Trbc-Spプラスミドを用いて、自然形質転換法によりシネココッカス・エロンガタスエスピーPCC7942株を形質転換し、カナマイシン耐性及びスペクチノマイシン耐性により選抜した。
このようにしてシネココッカス・エロンガタスエスピーPCC7942株のゲノム上のNS1領域中に、NoKASII(-40)遺伝子発現用コンストラクトを導入し、orf1593/1594領域中にAtFAR1遺伝子又はAtFAR4遺伝子を導入した、ΔNS1::NoKASII(-40)Δorf1593/1594::AtFAR1株、及びΔNS1::NoKASII(-40)Δorf1593/1594::AtFAR4株をそれぞれ取得した。
また、同様の方法で、NoKASII(-40)遺伝子発現用コンストラクトを導入したΔNS1::NoKASII(-40)株、orf1593/1594領域中にAtFAR4遺伝子を導入したΔorf1593/1594::AtFAR4株をそれぞれ取得した。
下記表9に示す組成のBG-11液体培地20mLを加えた50mL三角フラスコ中で、作製例3で作製した形質転換体並びにシネココッカス・エロンガタスエスピーPCC7942株(wild type)を14日間培養した。培養は一定の照明下(60μE・m-2・sec-1)、30℃にてロータリーシェーカー(120rpm)を用いて行い、初発菌体濃度をOD730=0.2に設定した。なお形質転換体を培養するBG-11培地には、適切な抗生物質を25μg/mLの濃度となるよう添加した。
乾固した脂質画分に0.5N KOHメタノール溶液0.7mLを加えて攪拌し、80℃で30分間けん化した。さらに、3フッ化ホウ素メタノール溶液1mLを加え、80℃で10分間メチルエステル化反応を行った。この反応液に、ヘキサン0.2〜0.5mL及び飽和食塩水1mLを加えて攪拌し、室温にて10分間遠心分離した後、上層のヘキサン層を回収した。
まず、ガスクロマトグラフ質量分析解析にて、脂肪酸メチルエステル及びTMS化脂肪族アルコールの同定を行った。次に、ガスクロマトグラフィー解析により得られた波形データのピーク面積より、各形質転換体が産出する総脂肪族アルコール量に占める各種脂肪族アルコール量の割合(%)を算出した。ガスクロマトグラフ質量分析解析及びガスクロマトグラフィー解析の条件は試験例1と同様である。
ガスクロマトグラフ質量分析解析で得られたクロマトグラフを図1に示す。また、各形質転換体の総脂肪族アルコール量に占める各種脂肪族アルコール量の割合(%)を算出した結果を表12に示す。
これに対して、図1と表12に示すように、NoKASII遺伝子とAtFAR4遺伝子とをシネココッカス・エロンガタスエスピーPCC7942株に導入することで、炭素原子数が20の鎖長の脂肪族アルコールの生産が確認された。
また、NoKASII遺伝子とAtFAR1遺伝子とをシネココッカス・エロンガタスエスピーPCC7942株に導入することで、炭素原子数が20及び22の鎖長の脂肪族アルコール生産能を付与できた。
以上のように、シアノバクテリアにおける長鎖脂肪族アルコールの生産能の獲得及び生産性の向上には、NoKASII遺伝子とAtFAR遺伝子両方の導入が重要である。
(1)カナマイシン耐性遺伝子発現用プラスミドの構築
シネコシスティス・エスピーPCC6803株のゲノムDNAを鋳型とし、表5記載のプライマーpUC118/slr0168up-F及びプライマーKmr/slr0168up-Rを用いてPCRを行い、ニュートラルサイトslr0168領域の上流断片(slr0168up断片:配列番号39)を増幅した。また、前記ゲノムDNAを鋳型とし、表5記載のプライマーKmr/slr0168down-F及びプライマーpUC118/slr0168down-Rを用いてPCRを行い、ニュートラルサイトslr0168領域の下流断片(slr0168down断片:配列番号42)を増幅した。
前述の、slr0168up断片、slr0168down断片、及び作製例3と同様の方法で作製したKmr断片をpUC118プラスミド(タカラバイオ社製)のHincIIサイトに、In-Fusion(登録商標)PCRクローニングシステム(Clontech社)を用いて挿入し、pUC118-slr0168::Kmプラスミドを取得した。
前記pUC118-slr0168::Kmプラスミドを鋳型とし、表4記載のプライマーKmr-F及び表5記載のプライマーslr0168up-Rを用いてPCRを行い、pUC118-slr0168::Kmプラスミドを線状化した。
次に、シネコシスティス・エスピーPCC6803株のゲノムDNAを鋳型とし、表5記載のプライマーslr0168up/Pcpc560-F及びプライマーPcpc560-Rを用いてPCRを行い、高発現cpc560プロモーター断片(Jie Z et al., Scientific Reports, 2014, vol. 4, p. 4500、Pcpc560断片:配列番号49)を増幅した。
また、シネコシスティス・エスピーPCC6803株のゲノムDNAを鋳型とし、表4記載のプライマーTrbc-F及び表5記載のプライマーKm/Trbc-Rを用いてPCRを行い、rbc遺伝子のターミネーター領域(Trbc断片:配列番号52)を増幅した。
さらに、ナンノクロロプシス・オキュラータNIES-2145株より作製したcDNAライブラリーを鋳型とし、表5記載のプライマーPcpc560/NoKASII(-40)-F及び表4記載のプライマーTrbc/NoKASII-Rを用いてPCRを行い、NoKASII(-40)遺伝子断片を増幅した。
シネコシスティス・エスピーPCC6803の野生株のゲノムDNAを鋳型とし、表5記載のプライマーpUC118/sll0208up-F及びプライマーSp/sll0208up-Rを用いてPCRを行い、sll0208領域の上流断片(sll0208up断片:配列番号57)を増幅した。また、前記ゲノムDNAを鋳型とし、表5記載のプライマーSp/sll0209down-F及びプライマーpUC118/sll0209down-Rを用いてPCRを行い、sll0209領域の下流断片(sll0209down断片:配列番号60)を増幅した。
前記pUC118-sll0208/0209::Spプラスミドを鋳型とし、表4記載のプライマーSp-F及び表5記載のプライマーsll0208up-Rを用いてPCRを行い、pUC118-sll0208/0209::Spプラスミドを線状化した。
次に、シネコシスティス・エスピーPCC6803株のゲノムDNAより、表5記載のプライマーsll0208up/Pcpc560-F及びプライマーPcpc560-Rを用いてPCRを行い、Pcpc560断片(配列番号49)を増幅した。
さらに、シロイヌナズナより作製したcDNAライブラリーを鋳型とし、表5記載のプライマーPcpc560/AtFAR1-fw及び表4記載のプライマーTrbc/AtFAR1-rvを用いてPCRを行い、AtFAR1遺伝子断片(配列番号4)を増幅した。同様に、表5記載のプライマーPcpc560/AtFAR4-fw及び表4記載のプライマーTrbc/AtFAR4-rvを用いてPCRを行い、AtFAR4遺伝子断片(配列番号8)を増幅した。
得られたpUC118-slr0168::Pcpc560-NoKASII(-40)-Trbc-Kmプラスミド、pUC118-sll0208/0209::Pcpc560-AtFAR1-Trbc-Spプラスミド、及びpUC118-sll0208/0209::Pcpc560-AtFAR4-Trbc-Spプラスミドを用いて、自然形質転換法によりシネコシスティス・エスピーPCC6803株を形質転換し、カナマイシン耐性とスペクチノマイシン耐性により選抜した。
このようにして、シネコシスティス・エスピーPCC6803株のゲノム上のslr0168領域中にNoKASII遺伝子発現用コンストラクトを導入し、sll0208/0209領域中にAtFAR1遺伝子又はAtFAR4遺伝子を導入した、Δslr0168::NoKASII(-40)Δsll0208/0209::AtFAR1株及びΔslr0168::NoKASII(-40)Δsll0208/0209::AtFAR4株を取得した。
また、同様の方法で、slr0168領域中にNoKASII(-40)遺伝子発現用コンストラクトを導入したΔslr0168::NoKASII(-40)株、並びに、sll0208/0209領域中にAtFAR1遺伝子又はAtFAR4遺伝子を導入したΔsll0208/0209::AtFAR1株及びΔsll0208/0209::AtFAR4株を取得した。
試験例2と同様の方法で、作製例4で作製した形質転換体から脂質を抽出した。ガスクロマトグラフ質量分析解析にて脂肪酸メチルエステル及びTMS化脂肪族アルコールの同定を行い、ガスクロマトグラフィー解析により得られた波形データのピーク面積より、各形質転換体の総脂肪族アルコール量に占める各種脂肪族アルコール量の割合(%)を算出した。
ガスクロマトグラフ質量分析解析で得られたクロマトグラフの結果を図2に示す。また、各形質転換体の総脂肪族アルコール量に占める各種脂肪族アルコール量の割合(%)を算出した結果を表13に示す。
よって、前記KAS遺伝子とFAR遺伝子の発現を共に促進させることで、長鎖脂肪族アルコールの生産性を獲得した形質転換体、又は長鎖脂肪族アルコールの生産性が向上した形質転換体を作製できる。そしてこの形質転換体を培養することで、長鎖脂肪族アルコールの生産性を向上させることができる。
Claims (12)
- 下記タンパク質(A)〜(F)からなる群より選ばれる少なくとも1種のβ-ケトアシル-ACPシンターゼをコードする遺伝子及び下記タンパク質(G)〜(R)からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸アシルCoAレダクターゼをコードする遺伝子の発現を促進させた微生物を培養し、炭素原子数が20以上の長鎖脂肪族アルコールを生産する方法。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつβ-ケトアシル-ACPシンターゼ活性を有するタンパク質。
(C)配列番号96で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつβ-ケトアシル-ACPシンターゼ活性を有するタンパク質。
(E)配列番号98で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(F)前記タンパク質(E)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつβ-ケトアシル-ACPシンターゼ活性を有するタンパク質。
(G)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(H)前記タンパク質(G)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
(I)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(J)前記タンパク質(I)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
(K)配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(L)前記タンパク質(K)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
(M)配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(N)前記タンパク質(M)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
(O)配列番号100で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(P)前記タンパク質(O)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
(Q)配列番号101で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(R)前記タンパク質(Q)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
- 下記タンパク質(A)〜(F)からなる群より選ばれる少なくとも1種のβ-ケトアシル-ACPシンターゼをコードする遺伝子及び下記タンパク質(G)〜(R)からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸アシルCoAレダクターゼをコードする遺伝子の発現を微生物の細胞内で促進させる、炭素原子数が20以上の長鎖脂肪族アルコールの生産能を微生物に付与する方法。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつβ-ケトアシル-ACPシンターゼ活性を有するタンパク質。
(C)配列番号96で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつβ-ケトアシル-ACPシンターゼ活性を有するタンパク質。
(E)配列番号98で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(F)前記タンパク質(E)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつβ-ケトアシル-ACPシンターゼ活性を有するタンパク質。
(G)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(H)前記タンパク質(G)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
(I)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(J)前記タンパク質(I)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
(K)配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(L)前記タンパク質(K)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
(M)配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(N)前記タンパク質(M)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
(O)配列番号100で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(P)前記タンパク質(O)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
(Q)配列番号101で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(R)前記タンパク質(Q)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
- 前記β-ケトアシル-ACPシンターゼをコードする遺伝子及び前記脂肪酸アシルCoAレダクターゼをコードする遺伝子を前記微生物に導入し、導入したβ-ケトアシル-ACPシンターゼをコードする遺伝子及び脂肪酸アシルCoAレダクターゼをコードする遺伝子の発現を促進させる、請求項1又は2記載の方法。
- 前記微生物が大腸菌又はシアノバクテリアである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記シアノバクテリアが、シネコシスティス(Synechocystis)属又はシネココッカス(Synechococcus)属のシアノバクテリアである、請求項4記載の方法。
- 前記炭素原子数が20以上の長鎖脂肪族アルコールが炭素原子数20〜26の長鎖脂肪族アルコールである、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
- 前記炭素原子数が20以上の長鎖脂肪族アルコールが炭素原子数20又は22の飽和長鎖脂肪族アルコール又は1価の不飽和長鎖脂肪族アルコールである、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
- 前記微生物が生産する全脂肪族アルコールに占める、長鎖脂肪族アルコールの含有量が、全脂肪族アルコールの重量の1%以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 下記タンパク質(A)〜(F)からなる群より選ばれる少なくとも1種のβ-ケトアシル-ACPシンターゼをコードする遺伝子及び下記タンパク質(G)〜(R)からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸アシルCoAレダクターゼをコードする遺伝子の発現が促進されている、微生物の形質転換体。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつβ-ケトアシル-ACPシンターゼ活性を有するタンパク質。
(C)配列番号96で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつβ-ケトアシル-ACPシンターゼ活性を有するタンパク質。
(E)配列番号98で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(F)前記タンパク質(E)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつβ-ケトアシル-ACPシンターゼ活性を有するタンパク質。
(G)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(H)前記タンパク質(G)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
(I)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(J)前記タンパク質(I)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
(K)配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(L)前記タンパク質(K)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
(M)配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(N)前記タンパク質(M)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
(O)配列番号100で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(P)前記タンパク質(O)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
(Q)配列番号101で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(R)前記タンパク質(Q)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
- 下記タンパク質(A)〜(F)からなる群より選ばれる少なくとも1種のβ-ケトアシル-ACPシンターゼをコードする遺伝子若しくは当該遺伝子を含有する組換えベクター、並びに下記タンパク質(G)〜(R)からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸アシルCoAレダクターゼをコードする遺伝子若しくは当該遺伝子を含有する組換えベクターを含んでなる、微生物の形質転換体。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつβ-ケトアシル-ACPシンターゼ活性を有するタンパク質。
(C)配列番号96で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつβ-ケトアシル-ACPシンターゼ活性を有するタンパク質。
(E)配列番号98で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(F)前記タンパク質(E)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつβ-ケトアシル-ACPシンターゼ活性を有するタンパク質。
(G)配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(H)前記タンパク質(G)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
(I)配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(J)前記タンパク質(I)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
(K)配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(L)前記タンパク質(K)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
(M)配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(N)前記タンパク質(M)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
(O)配列番号100で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(P)前記タンパク質(O)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
(Q)配列番号101で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(R)前記タンパク質(Q)のアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ脂肪酸アシルCoAレダクターゼ活性を有するタンパク質。
- 前記微生物が大腸菌又はシアノバクテリアである、請求項9又は10記載の形質転換体。
- 前記シアノバクテリアが、シネコシスティス(Synechocystis)属又はシネココッカス(Synechococcus)属のシアノバクテリアである、請求項11記載の形質転換体。
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