JP6933915B2 - 車両パネル構造体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、車両パネル構造体及びその製造方法に関する。
従来、一対の面板が複数のリブ部で接続された複数の押出し中空形材(以下、ダブルスキン形材という)を接合することで、車両パネル構造体を形成する手法が知られている。例えば特許文献1に記載の車両パネル構造体では、一対の面板の一方同士と他方同士とをそれぞれ摩擦撹拌接合することで複数のダブルスキン形材同士の接合が実現されている。
特開2006−192995号公報
摩擦撹拌接合では、入熱による熱収縮等よってダブルスキン形材に歪みが発生するため、当該歪みを修整する工程が必要となる。特に、鉄道車両などに適用される車両パネル構造体では、大面積のダブルスキン形材同士を接合するため、比較的長い接合線に沿って接合を行う必要がある。このため、摩擦撹拌接合後のダブルスキン形材の歪みの問題が顕著に生じることが考えられる。
本発明は、接合による歪みの発生を抑制可能なダブルスキン構造の車両パネル構造体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一側面に係る車両パネル構造体は、互いに対向する第一及び第二面板と、第一及び第二面板間に位置する複数のリブ部と、によって構成される一対のダブルスキン形材同士の突き合わせ部分を結合してなる車両パネル構造体であって、突き合わせ部分には、一対のダブルスキン形材それぞれの第一面板、第二面板、及びリブ部によって中空部が形成されており、第一面板同士は、突き合わせ部分に沿って締結部材によって締結され、第二面板同士は、突き合わせ部分に沿って摩擦撹拌接合部によって接合されている。
この車両パネル構造体では、一対のダブルスキン形材の突き合わせ部分において、第一面板同士が締結部材によって締結され、第二面板同士が摩擦撹拌接合部によって接合されている。このような構成により、摩擦撹拌接合による入熱が車両パネル構造体の片面側のみに作用するため、接合後のダブルスキン形材の歪みを抑えることができる。また、この車両パネル構造体では、突き合わせ部分には、第一面板、第二面板、及びリブ部によって中空部が形成されている。したがって、車両パネル構造体における断面構造の連続性も保たれる。
突き合わせ部分において、一方のダブルスキン形材における第一面板の端部と、他方のダブルスキン形材における第一面板の端部とは、一対のダブルスキン形材の厚み方向に互いに重なる重なり領域を有し、締結部材は、重なり領域で第一面板同士を締結していてもよい。このような構成を採用することにより、一対のダブルスキン形材について、簡単な製造工程で強固な締結を実現することができる。
締結部材は、重なり領域に溶着されていてもよい。このような構成を採用することにより、一対のダブルスキン形材について、簡単な製造工程でさらに強固な締結を実現することができる。
中空部を形成する一方のダブルスキン形材のリブ部は、他方のダブルスキン形材における第一面板の端部を一対のダブルスキン形材の厚み方向に支持する支持面を有していてもよい。このような構成を採用することにより、一方のダブルスキン形材のリブ部における支持面が、他方のダブルスキン形材における第一面板に加わる荷重を受ける。このため、他方のダブルスキン形材における第一面板が、例えば、締結部材による締結時に加わる荷重に起因して変形することが防止されている。したがって、簡単な構成で製造効率が向上されている。
一対のダブルスキン形材の第一面板側に配置された柱部材を更に備え、突き合わせ部分において、柱部材が締結部材によって第一面板に共締めされていてもよい。このような構成を採用することにより、当該車両パネル構造体は、簡単な製造工程で、ダブルスキン構造とセミモノコック構造との併用を実現することができる。
複数のリブ部は、第一及び第二面板に対して垂直に配置されていてもよい。このような構成を採用することにより、車両パネル構造体を所定形状に加工する場合に、任意の中空部の位置で切断することができる。したがって、例えば、開口フレームの取付位置において専用のリブ部を設ける必要がなくなり、製造コストの低減が図られる。
本発明の一側面に係る車両パネル構造体の製造方法は、互いに対向する第一及び第二面板と、第一及び第二面板間に位置する複数のリブ部と、によって構成される一対のダブルスキン形材同士の突き合わせ部分を結合してなる車両パネル構造体の製造方法であって、一対のダブルスキン形材同士を突き合わせ、一対のダブルスキン形材それぞれの第一面板、第二面板、及びリブ部によって突き合わせ部分に中空部を形成する突き合わせ工程と、第一面板同士を突き合わせ部分に沿って締結部材によって締結する締結工程と、第二面板同士を突き合わせ部分に沿って摩擦撹拌接合によって接合する接合工程と、を有する。
この車両パネル構造体の製造方法では、第一面板同士を突き合わせ部分に沿って締結部材によって締結し、第二面板同士を突き合わせ部分に沿って摩擦撹拌接合によって接合する。したがって、摩擦撹拌接合による入熱が車両パネル構造体の片面側のみに作用するため、接合後のダブルスキン形材の歪みを抑えることができる。この車両パネル構造体の製造方法では、突き合わせ部分には、第一面板、第二面板、及びリブ部によって中空部が形成される。したがって、製造された車両パネル構造体における断面構造の連続性も保たれる。
締結工程を実施した後、接合工程を実施してもよい。この場合、一対のダブルスキン形材の第一面板同士を締結部材によって締結した後に、第二面板同士を摩擦撹拌接合によって接合する。このため、摩擦撹拌接合を行う際には、既に一つのダブルスキン形材の第一面板が締結されているため、摩擦撹拌接合における位置合わせが容易である。したがって、ダブルスキン構造の車両パネル構造体を簡単な製造工程で製造することができる。
突き合わせ工程では、一方のダブルスキン形材における第一面板の端部と、他方のダブルスキン形材における第一面板の端部とを、一対のダブルスキン形材の厚み方向に互いに重ねて重なり領域を形成し、締結工程では、締結部材を高速回転させて重なり領域を貫通させることにより、締結部材を重なり領域に溶着させてもよい。この場合、一対のダブルスキン形材について、簡単な製造工程で強固な締結を実現することができる。
締結工程では、締結部材によって柱部材を一対のダブルスキン形材の第一面板に共締めしてもよい。この場合、簡単な製造工程で、ダブルスキン構造とセミモノコック構造との併用を実現することができる。
接合工程では、プローブ部の先端にショルダ部が設けられた回転ツールと、プローブ部が挿通した状態でショルダ部と対向する裏当部材とを用い、中空部内に配置したショルダ部と中空部の外側に配置した裏当部材とによって突き合わせ部分を挟持した状態で、突き合わせ部分に挿入したプローブ部を突き合わせ部分に沿って走査してもよい。この場合、中空部内の面にショルダ部が当接するため、当該面にビードが形成される。中空部の外側の面に裏当部材が当接するため、当該面にはビードが形成されない。これにより、ビードを研削するという工程等を省くことが可能となる。このため、簡単な製造工程でダブルスキン構造の車両パネル構造体を製造することができる。
ダブルスキン形材として、複数のリブ部が第一及び第二面板に対して垂直に配置されているダブルスキン形材を用いてもよい。この場合、製造された車両パネル構造体を所定形状に加工する場合に、任意の中空部の位置で切断することができる。したがって、例えば、開口フレームの取付位置において専用のリブ部を設ける必要がなくなり、製造コストの低減が図られる。
本発明によれば、接合による歪みの発生を抑制可能なダブルスキン構造の車両パネル構造体が得られる。
本実施形態に係る車両パネル構造体を適用した鉄道車両構体の一例を示す概略斜視図である。 図1に示した鉄道車両構体の側構体として用いられる車両パネル構造体の斜視図である。 図2の要部拡大断面図である。 車両パネル構造体の製造工程の一例に用いられるダブルスキン形材の要部拡大断面図である。 車両パネル構造体の製造工程の一例を示す図である。 車両パネル構造体の製造工程の一例を示す図である。 車両パネル構造体の製造工程の一例を示す図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図1は、車両パネル構造体を有する鉄道車両構体の一例を示す概略斜視図である。鉄道車両構体1は、床構体2と、側構体3と、屋根構体4と、妻構体5とを備えている。これらの各構体が相互に接合されることにより、鉄道車両構体1は、乗客を収容する空間を内部に有する箱型形状をなしている。
床構体2は、車両の床部を構成する構体として鉄道車両構体1の底部に配置されている。床構体2の下部には、鉄道車両構体1を支持する一対の台車(不図示)が設置されている。側構体3及び妻構体5は、車両の側部を構成する構体として、床構体2の左右の縁部及び前後の縁部を囲むように立設されている。
側構体3には、乗客らが乗り降りするためのドア部6が等間隔に複数設けられている。また、ドア部6,6間と側構体3の両端部とには、窓部7がそれぞれ設けられている。側構体3は、例えば腰パネル、吹き寄せパネル、幕パネル、ドア上パネル等の各部位を形成する車両パネル構造体11(図2参照)によって構成されている。
腰パネルは、窓部7と床構体2との間に位置するパネルであり、吹き寄せパネルは、ドア部6と窓部7との間、及び窓部7と妻構体5との間に位置するパネルである。幕パネルは、窓部7と屋根構体4との間に位置するパネルであり、ドア上パネルは、ドア部6と屋根構体4との間に位置するパネルである。
妻構体5は、乗客らが車両間を行き来するための出入口部8が設けられている。屋根構体4は、車両の屋根部を構成する構体として鉄道車両の構体の上部に空間に蓋をするように配置されている。車両の屋根構体4には、上部に車内の温度を調整するためのエアコンディショナー及びパンタグラフ(図示しない)などが設置されている。
次に、上述した側構体3を構成する車両パネル構造体11について更に詳細に説明する。
図2は、図1に示した鉄道車両構体1の側構体3として用いられる車両パネル構造体の斜視図である。車両パネル構造体11は、互いに結合された一対のダブルスキン形材12によって構成されており、ダブルスキン構造を有している。結合された一対のダブルスキン形材12は、互いに平行な主面22a,22bを有している。主面22aは側構体3の外側面を構成し、主面22bは側構体3の内側面を構成する。車両パネル構造体11は、3以上のダブルスキン形材12が結合されることによって構成されていてもよい。
本実施形態において車両パネル構造体11は、一対のダブルスキン形材12の主面22b(面板31b)に結合された柱部材13も有しており、ダブルスキン構造とセミモノコック構造とが併用されている。柱部材13は、ハット形状を有しており、一対のフランジ部13aを含んでいる。柱部材13は、一対のフランジ部13aの溶接部13bにおいて、スポット溶接によって主面22bに接合されている。柱部材13は、鉄道車両構体1への適用時において、側構体3の高さ方向に延在する。
柱部材13は、例えば、ダブルスキン形材12よりも強度が高い材料からなる。柱部材13の材料としては、例えば7N01等の高強度アルミ合金が挙げられる。柱部材13は、ダブルスキン形材12と同一の材料を用いて構成されていてもよい。柱部材13の厚さは、例えば数ミリ程度となっている。
各ダブルスキン形材12は、互いに対向する一対の面板31と、一対の面板31間に複数の中空部S1を形成する複数のリブ部32とによって構成されている。各ダブルスキン形材12の厚さは、10〜40mmである。各ダブルスキン形材12は、例えば6N01等のアルミ合金からなる板材であり、例えば押出成形によって形成される。一対の面板31は、主面22a側に位置する面板31aと、主面22b側に位置する面板31bとを含んでいる。面板31aと面板31bとは互いに対向しており、各面板31a,31bの厚さは例えば数ミリ程度である。
各ダブルスキン形材12において、複数のリブ部32は、面板31aと面板31b間に配置されており、面板31aと面板31bとの対向方向(ダブルスキン形材12の厚み方向)及び一対のダブルスキン形材12の突き合わせ方向に対して、直交する方向に平行に延在している。したがって、複数のリブ部32は、鉄道車両構体1の長手方向に平行に延在する。各リブ部32の厚さは、例えば数ミリ程度である。複数のリブ部32は、一対のダブルスキン形材12の突き合わせ方向において所定間隔で平行に配列されている。各リブ部32は、面板31aと面板31bとに接続する平面形状を有しており、面板31a,31bに対して垂直に配置されている。したがって、複数のリブ部32によって形成された中空部S1は、断面矩形状となっている。
一対のダブルスキン形材12の突き合わせ部分70においても、一対のダブルスキン形材12それぞれの面板31a、面板31b、及びリブ部32A,32Bによって中空部S2が形成されている。リブ部32A,32Bは、上述した複数のリブ部32に含まれている。中空部S2は、中空部S1と同様に、鉄道車両構体1の長手方向に平行に延在し、断面矩形状となっている。したがって、各リブ部32、中空部S1、及び中空部S2は、柱部材13が延在する方向と直交する方向に延在している。
上述したように、車両パネル構造体11では、一対のダブルスキン形材12は、互いに突き合わされ、当該突き合わせ部分70で結合されている。具体的には、一対のダブルスキン形材12の面板31a同士が、突き合わせ部分70に沿って摩擦撹拌接合によって接合されており、一対のダブルスキン形材12の面板31b同士が、突き合わせ部分70に沿って締結部材42によって締結されている。
摩擦撹拌接合は、回転ツールを回転させながらプローブ部を金属材等の材料に押し込み、摩擦熱で軟化させた母材同士を塑性流動により一体化させる固相接合方法である。摩擦撹拌接合では、アーク溶接及びレーザ溶接のような溶融溶接と比較して母材への入熱量が小さいので、高品質な継手を得ることが可能であり、融点の低いアルミニウム合金の接合に適している。
車両パネル構造体11における摩擦撹拌接合部40は、上記突き合わせ部分70に対する摩擦撹拌接合による接合痕が現れている領域である。摩擦撹拌接合部40は、主面22a側の面板31aに設けられており、一対のダブルスキン形材12の突き合わせ部分70に沿って、鉄道車両構体1の長手方向となる、各リブ部32、中空部S1、及び中空部S2が延在する方向に平行に延在する。
本実施形態では、一対のダブルスキン形材12の突き合わせ方向Aにおいて、中空部S2の幅は、各中空部S1の幅と同じである。中空部S2の幅は、各中空部S1の幅よりも大きくてもよい。この場合、摩擦撹拌接合時において、プローブ部に高い走査精度が要求されることを回避でき、中空部S2における摩擦撹拌接合の容易化が図られる。
本実施形態で用いられる締結部材42は、一般的なネジと同様に、頭部とネジ部を有し、ネジ部には螺旋状のネジ山を有している。本実施形態において、締結部材42は、高速回転されて対象物に挿入されることで、摩擦熱によって当該対象物に溶着される。このため、一般的なネジ締結用のタップを加工する工程を省略することができる。摩擦熱が発生する領域が回転ツールを用いた摩擦撹拌接合よりも小さいため、少ない入熱量かつ短時間で一つのダブルスキン形材12を結合することができる。締結部材42は、一般的なネジであって対象物に螺合されてもよい。この場合、タップを加工する工程が増加する。
締結部材42は、鉄道車両構体1の長手方向となる、各リブ部32、中空部S1、及び中空部S2が延在する方向において、所定間隔で設けられている。本実施形態では、柱部材13の一対のフランジ部13aは、所定間隔で設けられた複数の締結部材42の一部によって面板31bに共締めされている。
図3は、中空部S2付近の拡大断面図である。なお、図3では、説明の簡略のため、柱部材13が締結部材20によって共締めされていない部分の形態を示す。上述したように、一対のダブルスキン形材12の面板31a同士の突き合わせ部分70に摩擦撹拌接合部40が設けられており、一対のダブルスキン形材12の面板31b同士の突き合わせ部分70に締結部材42が設けられている。中空部S2は、主面22a側の突き合わせ部分70と主面22b側の突き合わせ部分70との間に位置する。
突き合わせ部分70において、ダブルスキン形材12bの面板31bの端部とダブルスキン形材12aの面板31bの端部とは、ダブルスキン形材12の厚み方向に互いに重なる重なり領域Rを有している。ダブルスキン形材12bの面板31bの端部は、主面22bに含まれる面を有しており、ダブルスキン形材12a側に延在している。ダブルスキン形材12aの面板31bの端部は、面板31bの厚み分だけ面板31a側にずれた位置で、主面22bと平行にダブルスキン形材12b側に延在している。ダブルスキン形材12aにおける面板31bが中空部S2内の面22dを構成し、ダブルスキン形材12bにおける面板31bが中空部S2外側の面、すなわち主面22bを構成する。
中空部S2を形成するダブルスキン形材12aのリブ部32Aは、他のダブルスキン形材12aのリブ部32と同様に、面板31aと面板31bとに接続する平面形状を有しており、面板31a,31bに対して垂直に配置されている。
中空部S2を形成するダブルスキン形材12bのリブ部32Bは、面板31aから面板31aに対して垂直方向に延在して、面板31b付近でダブルスキン形材12bが形成する中空部S1側に直角に折れ曲って延在している。これにより、ダブルスキン形材12aにおける面板31bの端部をダブルスキン形材12の厚み方向に支持する支持面32aが形成されている。ダブルスキン形材12aにおける面板31bの端部は、ダブルスキン形材12bにおける面板31bの端部と支持面32aとによって挟み込まれている。
リブ部32Bは、支持面32aの端から、面板31b側に直角に折れ曲がって延在し、面板31bに接続されている。これにより、ダブルスキン形材12aにおける面板31bの端部と一対のダブルスキン形材12の突き合わせ方向で当接する当接面32bが形成されている。
摩擦撹拌接合部40は、中空部S2内の面22cにビード41を有する。摩擦撹拌接合部40の中空部S2外側の面、すなわち主面22aは、平坦である。締結部材42は、重なり領域Rを貫通し、ダブルスキン形材12a,12bの面板31b同士を締結している。本実施形態では、締結部材42は、重なり領域Rに溶着されている。
次に、図4〜図6を参照して、本実施形態に係る車両パネル構造体11の製造工程について説明する。図4は、車両パネル構造体11の製造工程の一例に用いられるダブルスキン形材の要部拡大断面図である。各ダブルスキン形材12は、面板31a,31bに対して垂直に配置されている複数のリブ部32を有する。各ダブルスキン形材12の一対の面板31a,31bは、接合時に他のダブルスキン形材12と突き合わされる端面45を有している。端面45は、平面である。一方のダブルスキン形材12aの端面45と他方のダブルスキン形材12bの端面45は、互いに嵌合する凹凸形状であってもよい。
車両パネル構造体11の製造工程では、まず、図5に示されるように、一方のダブルスキン形材12aの一対の面板31と他方のダブルスキン形材12bの一対の面板31とを互いの対向方向Aで突き合わせる。これにより、一対のダブルスキン形材12それぞれの面板31a,面板31b、及びリブ部32によって突き合わせ部分70に中空部S2を形成する。この際、一対のダブルスキン形材12の面板31aの端面45同士が当接し、ダブルスキン形材12aの面板31bの端部がダブルスキン形材12bのリブ部32の当接面32bに当接する。これにより、面板31aの端面45の境界部分Bを形成すると共に、ダブルスキン形材12aの面板31bの端部とダブルスキン形材12bの面板31bの端部とを、一対のダブルスキン形材12の厚み方向に互いに重ねて重なり領域Rを形成する。ダブルスキン形材12aにおける面板31bが中空部S2内の面22dを構成し、ダブルスキン形材12bにおける面板31bが中空部S2外側の面、すなわち主面22bを構成する。
続いて、締結部材42を重なり領域Rに対して溶着させることにより、一対のダブルスキン形材12を締結する締結工程を実施する。具体的には、締結部材42のネジ山を主面22bに向けて締結部材42を主面22bに対して直立させた状態で、締結部材42を高速回転させて、面板31bの重なり領域Rに挿入する。締結部材42を挿入方向Cで加圧することで、締結部材42のネジ山と面板31bとの摩擦熱により塑性流動が生じる。この際、ダブルスキン形材12aにおける面板31bの端部は、ダブルスキン形材12bにおけるリブ部32の支持面32aによって挿入方向Cに対向する方向に支持される。締結部材42の頭部が主面22bに当接し締結部材42が重なり領域Rを貫通すると、締結部材42の回転を停止する。これにより、締結部材42を重なり領域Rに溶着する。
締結部材42による上記締結工程を突き合わせ部分70に沿って複数回行うことで、複数の締結部材42を中空部S2が延在する方向に所定間隔で設ける。本実施形態では、これらの複数の締結部材42の一部によって、複数のリブ部32等が延在する方向と直交する方向に延在するように配置された柱部材13のフランジ部13aを、一対のダブルスキン形材12の面板31bに共締めする。すなわち、柱部材13のフランジ部13aと重なり領域Rとを共締めする。その後、フランジ部13aの溶接部13bにおいて、柱部材13を面板31bに対してスポット溶接して主面22bに結合する。
次に、回転ツールを回転させながらプローブ部を一対のダブルスキン形材12の突き合わせ部分70に押し込み、当該突き合わせ部分70に沿って、面板31aの端部同士を摩擦撹拌接合で接合する接合工程を実施する。摩擦撹拌接合では、回転ツールとダブルスキン形材12との間で発生する摩擦熱による塑性流動によって、突き合わせ部分70が接合される。摩擦撹拌接合は、境界部分Bが摩擦撹拌接合部40に含まれるように行われる。塑性流動によって境界部分Bが摩擦撹拌接合部40に含まれるように、摩擦撹拌接合が行われてもよい。
具体的には、図6及び図7に示されている回転ツール50を用いて、摩擦撹拌接合が行われる。図6は摩擦撹拌接合による接合工程を示す斜視図であり、図7は摩擦撹拌接合による接合工程を示す断面図である。回転ツール50には、プローブ部51の先端にショルダ部52が設けられており、プローブ部51の基端側には裏当部材53が設けられている。プローブ部51は、裏当部材53の中央に設けられている貫通孔53aに挿通されており、裏当部材53に対して回転自在である。裏当部材53は、プローブ部51が挿通した状態でショルダ部52と対向する。
接合工程では、各リブ部32及び中空部S2が延在する方向に位置する面板31aの端面側から上述した突き合わせ部分70に、プローブ部51を回転させながら挿入する。この際、プローブ部51の先端に設けられているショルダ部52を一対のダブルスキン形材12の中空部S2内に配置し、裏当部材53を中空部S2の外側に配置する。そして、ショルダ部52と裏当部材53とで突き合わせ部分70を挟持すると共にダブルスキン形材12に対して走査方向D側にプローブ部51を傾斜した状態で、突き合わせ部分70に挿入したプローブ部51を回転させながら突き合わせ部分70に沿って走査する。具体的には、ショルダ部52が中空部S2内の面22cに当接し、裏当部材53が中空部S2の外側の面、すなわち主面22aに当接している状態で、プローブ部51を走査する。
プローブ部51の走査において、ショルダ部52はプローブ部51と共に一対のダブルスキン形材12に対して回転しながら走査方向Dに移動するが、裏当部材53は一対のダブルスキン形材12に対して回転せずにプローブ部51と共に走査方向Dに移動する。中空部S2内の面22cには、プローブ部51の当接によってビード41が形成される。主面22aには回転しない裏当部材53が当接するため、主面22aは平坦である。接合工程の後に、主面22a側において、摩擦撹拌接合部40をグラインダ等によって研磨してもよい。
以上説明したように、車両パネル構造体11では、一対のダブルスキン形材12の突き合わせ部分70において、面板31b同士が締結部材42によって締結され、面板31a同士が摩擦撹拌接合部40によって接合されている。車両パネル構造体11の製造方法では、面板31b同士を突き合わせ部分70に沿って締結部材によって締結し、面板31a同士を突き合わせ部分70に沿って摩擦撹拌接合によって接合する。このため、摩擦撹拌接合による入熱が車両パネル構造体11の片面側のみに作用するため、接合後のダブルスキン形材12の歪みを抑えることができる。また、この車両パネル構造体11では、突き合わせ部分70には、面板31a、面板31b、及びリブ部32によって中空部S2が形成されている。したがって、車両パネル構造体11における断面構造の連続性も保たれている。
突き合わせ部分70において、一方のダブルスキン形材12aにおける面板31bの端部と、他方のダブルスキン形材12bにおける面板31bの端部とは、一対のダブルスキン形材12の厚み方向に互いに重なる重なり領域Rを有する。締結部材42は、重なり領域Rで面板31b同士を締結している。このため、一対のダブルスキン形材12について、簡単な製造工程で強固な締結を実現することができる。
締結部材42は、重なり領域Rに溶着されている。このため、一対のダブルスキン形材12について、簡単な製造工程でさらに強固な締結を実現することができる。
中空部S2を形成する一方のダブルスキン形材12bのリブ部32は、他方のダブルスキン形材12aにおける面板31bの端部を厚み方向に支持する支持面32aを有している。このため、一方のダブルスキン形材12bのリブ部32における支持面32aが、他方のダブルスキン形材12aにおける面板31bに加わる荷重を受ける。したがって、他方のダブルスキン形材12aにおける面板31bが、例えば、締結部材42による締結時に加わる荷重に起因して変形することが防止されている。よって、簡単な構成で製造効率が向上されている。
一対のダブルスキン形材12の面板31b側に配置された柱部材13を更に備え、突き合わせ部分70において、柱部材が締結部材によって第一面板に共締めされている。締結工程では、締結部材によって柱部材を一対のダブルスキン形材の第一面板に共締めしている。このため、車両パネル構造体11は、簡単な製造工程で、ダブルスキン構造とセミモノコック構造との併用を実現することができる。
一対のダブルスキン形材12の厚さは、10〜40mmである。ダブルスキン形材12の厚さが40mm以下であるため、安価かつ軽量な構造を実現できる。ダブルスキン形材12の厚さが10mm以上であるため、摩擦撹拌接合において歪みが少ない構造を実現できる。したがって、柱部材13を設置してセミモノコック構造を構成することによって、簡単な製造工程で、安価かつ軽量であると共に、ダブルスキン構造とセミモノコック構造を併用した高い剛性を有する構造を実現できる。
複数のリブ部32は、一対の面板31a,31bに対して垂直に配置されている。このため、車両パネル構造体を所定形状に加工する場合に、任意の中空部の位置で切断することができる。したがって、例えば、開口フレームの取付位置において専用のリブ部を設ける必要がなくなり、製造コストの低減が図られる。
締結部材42による締結工程を実施した後、摩擦撹拌接合による接合工程を実施する。このため、一対のダブルスキン形材12の面板31b同士を締結部材42によって締結した後に、面板31a同士を摩擦撹拌接合によって接合する。したがって、摩擦撹拌接合を行う際には、既に一つのダブルスキン形材12の面板が締結されているため、摩擦撹拌接合における位置合わせが容易である。よって、ダブルスキン構造の車両パネル構造体11を簡単な製造工程で製造することができる。
突き合わせ工程では、一方のダブルスキン形材12aにおける面板31bの端部と、他方のダブルスキン形材12bにおける面板31bの端部とを、一対のダブルスキン形材12の厚み方向に互いに重ねて重なり領域Rを形成する。締結工程では、締結部材42を高速回転させて重なり領域Rを貫通させることにより、締結部材42を重なり領域Rに溶着させる。このため、一対のダブルスキン形材12について、簡単な製造工程で強固な締結を実現することができる。
接合工程では、プローブ部51の先端にショルダ部52が設けられた回転ツール50と、プローブ部51が挿通した状態でショルダ部52と対向する裏当部材53とを用いる。そして、中空部S2内に配置したショルダ部52と中空部S2の外側に配置した裏当部材53とによって突き合わせ部分70を挟持した状態で、突き合わせ部分70に挿入したプローブ部51を突き合わせ部分70に沿って走査する。この場合、中空部S2内の面22cにショルダ部52が当接するため、当該面22cにビードが形成される。中空部S2の外側の面、すなわち主面22aに裏当部材53が当接するため、当該主面22aにはビードが形成されない。これにより、ビードを研削するという工程等を省くことが可能となる。このため、簡単な製造工程でダブルスキン構造の車両パネル構造体を製造することができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、製造工程は本実施形態で示した順序に限定されない。本実施形態では、締結部材42による締結工程を実施した後に摩擦撹拌接合による接合工程を実施したが、接合工程を実施した後に締結工程を実施してもよい。
11…車両パネル構造体、12,12a,12b…ダブルスキン形材、13…柱部材、22a,22b…主面、31,31a,31b…面板、32…リブ部、32a…支持面、40…摩擦撹拌接合部、42…締結部材、50…回転ツール、51…プローブ部、52…ショルダ部、53…裏当部材、70…突き合わせ部分、R…重なり領域、S2…中空部。

Claims (12)

  1. 互いに対向する第一及び第二面板と、前記第一及び第二面板間に位置する複数のリブ部と、によって構成される一対のダブルスキン形材同士の突き合わせ部分を結合してなる車両パネル構造体であって、
    前記突き合わせ部分には、前記一対のダブルスキン形材それぞれの前記第一面板、第二面板、及び前記リブ部によって中空部が形成されており、
    前記第一面板同士は、前記突き合わせ部分に沿って締結部材によって締結され、
    前記第二面板同士は、前記突き合わせ部分に沿って摩擦撹拌接合部によって接合されており、
    前記第一及び第二面板の対向方向から見て、前記摩擦撹拌接合部及び前記締結部材は、前記中空部を形成する一方のダブルスキン形材の前記リブ部と、前記中空部を形成する他方のダブルスキン形材の前記リブ部との間に位置している、車両パネル構造体。
  2. 前記突き合わせ部分において、一方のダブルスキン形材における前記第一面板の端部と、他方のダブルスキン形材における前記第一面板の端部とは、前記一対のダブルスキン形材の厚み方向に互いに重なる重なり領域を有し、
    前記締結部材は、前記重なり領域で前記第一面板同士を締結している、請求項1に記載の車両パネル構造体。
  3. 前記締結部材は、前記重なり領域に溶着されている、請求項2に記載の車両パネル構造体。
  4. 前記中空部を形成する一方のダブルスキン形材の前記リブ部は、他方のダブルスキン形材における前記第一面板の端部を前記一対のダブルスキン形材の厚み方向に支持する支持面を有している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両パネル構造体。
  5. 前記一対のダブルスキン形材の前記第一面板側に配置された柱部材を更に備え、
    前記突き合わせ部分において、前記柱部材が前記締結部材によって前記第一面板に共締めされている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両パネル構造体。
  6. 前記複数のリブ部は、前記第一及び第二面板に対して垂直に配置されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両パネル構造体。
  7. 互いに対向する第一及び第二面板と、前記第一及び第二面板間に位置する複数のリブ部と、によって構成される一対のダブルスキン形材同士の突き合わせ部分を結合してなる車両パネル構造体の製造方法であって、
    前記一対のダブルスキン形材同士を突き合わせ、前記一対のダブルスキン形材それぞれの前記第一面板、第二面板、及び前記リブ部によって前記突き合わせ部分に中空部を形成する突き合わせ工程と、
    前記第一面板同士を前記突き合わせ部分に沿って締結部材によって締結する締結工程と、
    前記第二面板同士を前記突き合わせ部分に沿って摩擦撹拌接合によって接合する接合工程と、を有し、
    前記締結工程では、前記第一及び第二面板の対向方向から見て、前記中空部を形成する一方のダブルスキン形材の前記リブ部と、前記中空部を形成する他方のダブルスキン形材の前記リブ部との間において、前記第一面板同士を前記締結部材によって締結し、
    前記接合工程では、前記第一及び第二面板の対向方向から見て、前記中空部を形成する一方のダブルスキン形材の前記リブ部と、前記中空部を形成する他方のダブルスキン形材の前記リブ部との間において、前記第二面板同士を前記摩擦撹拌接合によって接合する、車両パネル構造体の製造方法。
  8. 前記締結工程を実施した後、前記接合工程を実施する、請求項7に記載の車両パネル構造体の製造方法。
  9. 前記突き合わせ工程では、一方のダブルスキン形材における前記第一面板の端部と、他方のダブルスキン形材における前記第一面板の端部とを、前記一対のダブルスキン形材の厚み方向に互いに重ねて重なり領域を形成し、
    前記締結工程では、前記締結部材を高速回転させて前記重なり領域を貫通させることにより、前記締結部材を前記重なり領域に溶着させる、請求項7又は8に記載の車両パネル構造体の製造方法。
  10. 前記締結工程では、前記締結部材によって柱部材を前記一対のダブルスキン形材の前記第一面板に共締めする、請求項7〜9のいずれか一項に記載の車両パネル構造体の製造方法。
  11. 前記接合工程では、
    プローブ部の先端にショルダ部が設けられた回転ツールと、前記プローブ部が挿通した状態で前記ショルダ部と対向する裏当部材とを用い、
    前記中空部内に配置した前記ショルダ部と前記中空部の外側に配置した前記裏当部材とによって前記突き合わせ部分を挟持した状態で、前記突き合わせ部分に挿入した前記プローブ部を前記突き合わせ部分に沿って走査する、請求項7〜10のいずれか一項に記載の車両パネル構造体の製造方法。
  12. 前記ダブルスキン形材として、前記複数のリブ部が前記第一及び第二面板に対して垂直に配置されているダブルスキン形材を用いる、請求項7〜11のいずれか一項に記載の車両パネル構造体の製造方法。
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