以下、本願が開示する歪みキャンセル装置および歪みキャンセル方法の実施例について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例により本発明が限定されるものではない。
[無線通信システムの構成]
図1は、本実施例に係る無線通信システムの構成の一例を示すブロック図である。本実施例に係る無線通信システムは、REC(Radio Equipment Control)100と、キャンセル装置200と、RE(Radio Equipment)300a、300bとを有する。なお、図1においては、2つのRE300a、300bを図示したが、1つまたは3つ以上のREがキャンセル装置200に接続されていても良い。また、1つのREC100を図示したが、2つ以上のRECがキャンセル装置200に接続されていても良い。
REC100は、ベースバンド処理を実行し、送信データを含むベースバンド信号をキャンセル装置200へ送信する。また、REC100は、受信データを含むベースバンド信号をキャンセル装置200から受信し、このベースバンド信号に対してベースバンド処理を施す。具体的には、REC100は、プロセッサ110と、メモリ120と、インタフェース130とを有する。
プロセッサ110は、例えばCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)またはDSP(Digital Signal Processor)などを備え、RE300a、300bそれぞれから送信される送信信号を生成する。本実施例においては、RE300aがアンテナ310a、311aからそれぞれ互いに異なる周波数f1、f2で送信信号を送信し、RE300bがアンテナ310b、311bからそれぞれ互いに異なる周波数f3、f4で送信信号を送信する場合を例に説明する。このため、プロセッサ110は、RE300aの2本のアンテナ310a、311aそれぞれから送信される送信信号Tx1、Tx2と、RE300bの2本のアンテナ310b、311bそれぞれから送信される送信信号Tx3、Tx4と、を生成する。また、プロセッサ110は、RE300a、300bによって受信された受信信号から受信データを得る。
メモリ120は、例えばRAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)などを備え、プロセッサ110が処理を実行するために使用する情報を記憶する。
インタフェース130は、例えば光ファイバなどでキャンセル装置200と接続され、キャンセル装置200との間でベースバンド信号を送受信する。インタフェース130が送信するベースバンド信号には、上述した送信信号Tx1、Tx2、Tx3、Tx4が含まれる。
キャンセル装置200は、REC100とRE300a、300bとの間に接続され、REC100とRE300a、300bとの間で送受信されるベースバンド信号を中継する。また、キャンセル装置200は、送信信号Tx1、Tx2、Tx3、Tx4に基づいて、受信信号に付加された相互変調信号(PIM信号)をキャンセルする。
なお、相互位相変調信号等の高次歪(例えば、3次歪)は、単一の送信信号、例えば、送信信号Tx1から発生する場合と、複数の送信信号、例えば、周波数の異なる送信信号Tx1と送信信号Tx2から発生する場合とがある。本実施例においては、高次歪として歪み発生源に送信信号Tx1、Tx2が照射されてPIM信号が発生し、このPIM信号の周波数がRE300a、300bの受信周波数帯に含まれるものとする。すなわち、キャンセル装置200は、送信信号Tx1、Tx2の相互変調によって発生するPIM信号を受信信号からキャンセルする。
キャンセル装置200は、インタフェース210、240と、プロセッサ220と、メモリ230とを有する。
インタフェース210は、REC100と接続され、REC100との間でベースバンド信号を送受信する。すなわち、インタフェース210は、プロセッサ110によって生成された送信信号をREC100のインタフェース130から受信する。また、インタフェース210は、RE300a、300bによって受信された受信信号をREC100のインタフェース130へ送信する。
プロセッサ220は、例えばCPU、FPGA、DSPなどを備え、インタフェース210によって受信された複数の送信信号に基づいて、PIM信号をキャンセルするためのレプリカ信号を生成する。レプリカ信号は、複数の送信信号(例えば、送信信号Tx1、Tx2)の相互変調によって発生するPIM信号のレプリカであり、PIM信号に対して同振幅かつ逆位相の信号である。レプリカ信号は、演算によって生成される。また、プロセッサ220は、インタフェース240によって受信された受信信号にレプリカ信号を合成し、受信信号に付加されたPIM信号をキャンセルする。プロセッサ220の機能については、後に詳述する。
メモリ230は、例えばRAM、ROMなどを備え、プロセッサ220が処理を実行するために使用する情報を記憶する。すなわち、メモリ230は、例えばプロセッサ220がレプリカ信号を生成する際に使用するパラメータなどを記憶する。
インタフェース240は、例えば光ファイバなどでRE300a、300bと接続され、RE300a、300bとの間でベースバンド信号を送受信する。すなわち、インタフェース240は、REC100から受信された送信信号をRE300a、300bへ送信する。また、インタフェース240は、RE300a、300bによって受信された受信信号をRE300a、300bから受信する。インタフェース240がRE300a、300bから受信する受信信号には、周波数f1の信号および周波数f2の信号の相互変調によって発生したPIM信号が付加されている。
RE300a、300bは、キャンセル装置200から受信したベースバンド信号をそれぞれ無線周波数f1〜f4にアップコンバートし、アンテナを介して送信する。すなわち、RE300aは、送信信号Tx1、Tx2をそれぞれ周波数f1、f2にアップコンバートし、アンテナ310a、311aから送信する。そして、RE300bは、送信信号Tx3、Tx4をそれぞれ周波数f3、f4にアップコンバートし、アンテナ310b、311bから送信する。また、RE300a、300bは、アンテナを介して受信した受信信号をベースバンド周波数にダウンコンバートし、キャンセル装置200へ送信する。RE300a、300bによって受信される受信信号には、上記の周波数f1、f2の信号の相互変調によって発生したPIM信号が付加されている。
[キャンセル装置200の構成]
図2は、本実施例に係る無線通信システムのキャンセル装置200のプロセッサ220の機能構成の一例を示すブロック図である。プロセッサ220は、送信信号取得部221、送信信号送出部222、受信信号取得部223、受信信号送出部224、送受信設定取得部225、および、送受信設定送出部226を有する。更に、プロセッサ220は、レプリカ制御部227、レプリカ生成部228、レプリカ合成部229、リソース割当判定部231、および、キャンセル部232を有する。
送信信号取得部221は、インタフェース210によってREC100から受信された送信信号を取得する。すなわち、送信信号取得部221は、送信信号Tx1、Tx2、Tx3、Tx4を取得する。
送信信号送出部222は、送信信号取得部221によって取得された送信信号を、インタフェース240を介してRE300a、300bへ送出する。具体的には、送信信号送出部222は、送信信号Tx1、Tx2をRE300aへ送出し、送信信号Tx3、Tx4をRE300bへ送出する。
受信信号取得部223は、インタフェース240によってRE300a、300bから受信された受信信号を取得する。例えば、受信信号取得部223によって取得される受信信号には、送信信号Tx1、Tx2の相互変調によって発生したPIM信号が付加されている。
受信信号送出部224は、キャンセル部232から出力される受信信号を受け取る。キャンセル部232から出力される受信信号は、PIM信号がキャンセルされた後の受信信号である。受信信号送出部224は、PIM信号がキャンセルされた後の受信信号を、インタフェース210を介してREC100へ送出する。
送受信設定取得部225は、インタフェース210によってREC100から受信された送信信号および受信信号の設定情報(送受信時の中心周波数、信号帯域幅)を取得する。
送受信設定送出部226は、送受信設定取得部225によって取得された設定情報を、インタフェース240を介してRE300a、300bへ送出する。
レプリカ制御部227は、送信信号取得部221によって取得された送信信号と、送受信設定取得部225によって取得された設定情報(中心周波数、信号帯域幅)とに基づいて、受信信号に付加されたPIM信号を推測する。上述のように、受信信号には、送信信号Tx1、Tx2(周波数f1、f2の信号)の相互変調によって発生したPIM信号が付加されている。例えば、中心周波数の情報は、周波数f1、f2であり、信号帯域幅の情報は受信周波数帯であり、レプリカ制御部227は、周波数(2f1−f2)が受信周波数帯に含まれる場合、この受信周波数帯におけるPIM信号を推測する。レプリカ制御部227は、推測したPIM信号をレプリカ信号としてリソース割当判定部231に出力する。
レプリカ制御部227は、リソース割当判定部231から出力される判定結果(リソース割当情報)を受け取った場合、そのリソース割当情報に対してレプリカ生成部228を構築する。レプリカ生成部228は、1つのPIM信号をキャンセルする最小の回路リソース単位「キャンセルリソース」として定義される。リソース割当情報は、キャンセル対象のPIM信号を表している。すなわち、キャンセル対象のPIM信号にキャンセルリソースが割り当てられる。ここで、レプリカ制御部227は、複数のリソース割当情報を受け取った場合、複数のリソース割当情報のそれぞれに対して複数のレプリカ生成部228を構築する。この場合、レプリカ制御部227は、設定情報(中心周波数、信号帯域幅)と複数のリソース割当情報とをそれぞれ複数のレプリカ生成部228に出力することにより、複数のレプリカ生成部228の各々を制御する。
各レプリカ生成部228は、送信信号取得部221によって取得された送信信号と、レプリカ制御部227の制御とに基づいて、各キャンセル対象のPIM信号のレプリカであるレプリカ信号を生成する。ここで、各レプリカ生成部228は、キャンセル部232から出力される受信信号を用いて、生成したレプリカ信号の振幅および位相を補正する係数を算出し、レプリカ信号に係数を与えることにより、レプリカ信号の振幅および位相を補正する。
レプリカ合成部229は、複数のレプリカ生成部228からそれぞれ出力される複数のレプリカ信号を合成し、合成レプリカ信号を生成する。レプリカ合成部229は、生成した合成レプリカ信号をキャンセル部232に出力する。
キャンセル部232は、受信信号取得部223によって取得された受信信号に、レプリカ合成部229から出力された合成レプリカ信号を重畳(加算)することにより、受信信号からキャンセル対象のPIM信号をキャンセルする。
リソース割当判定部231は、レプリカ制御部227から出力されるレプリカ信号と、受信信号取得部223によって取得された受信信号との相関演算により各遅延量に対する相関強度を算出する。リソース割当判定部231は、算出した相関強度に基づいて、各遅延量におけるキャンセル対象のPIM信号を判定し、その判定結果をリソース割当情報としてレプリカ制御部227に出力する。
ここで、本実施例によるキャンセル対象のPIM信号を判定するPIM信号判定方法については後述し、その前に、参考例として考えられるPIM信号判定方法と、その問題点とについて説明する。
PIM信号判定方法としては、前述のように、(A)順位によるPIM信号判定方法と、(B)閾値によるPIM信号判定方法とが考えられる。
[(A)順位によるPIM信号判定方法の問題点]
前述のように、(A)の方法では、まず、推測したPIM信号(レプリカ信号)と受信信号との相関演算により各遅延量に対する相関強度を算出する。相関演算は、所定の遅延探索幅と所定のサンプル数とを用いた後述の演算式(式(1))により行なわれる。そして、(A)の方法では、各遅延量において、相関強度のピーク値が設定順位内にあるPIM信号を、キャンセル対象のPIM信号として判定する。
ここで、相関強度Corrは、以下の式(1)により表される。
式(1)において、dは、遅延量であり、d=0、1、・・・、D−1により表される。ここで、Dは、最大遅延探索幅(所定の遅延探索幅)である。また、式(1)において、nは、累積数であり、n=0、1、・・・、N−1により表される。ここで、Nは、最大累積数、すなわち、相関演算のウィンドウ幅(所定のサンプル数)である。また、式(1)において、Rxは受信信号を表し、Repはレプリカ信号を表している。
図13は、参考例において、順位によるPIM信号判定方法を実現するリソース割当判定部1231の構成を示すブロック図である。リソース割当判定部1231は、遅延部1251、複素乗算部1252、相関強度累積部1253、電力変換部1254、および、ピーク探索部1255を有する。
遅延部1251は、レプリカ制御部227から出力されたレプリカ信号Rep(n)を受け取り、そのレプリカ信号Rep(n)に遅延量dを与える。複素乗算部1252は、遅延部1251から出力されたレプリカ信号Rep(n+d)と、受信信号取得部223によって取得された受信信号Rx(n)との一方の信号(例えばレプリカ信号Rep(n+d))に対して複素共役処理を施す。そして、複素乗算部1252は、複素共役処理が施された信号(conj(Rep(n+d)))と受信信号Rx(n)とを乗算する。相関強度累積部1253は、複素乗算部1252の出力である相関強度Corrを累積する。電力変換部1254は、相関強度累積部1253の出力である累積した相関強度Corr(d)を電力に変換する。
ピーク探索部1255は、電力変換部1254の出力を受け取る。そして、ピーク探索部1255は、各遅延量dにおいて、相関強度Corr(d)のピーク値が設定順位内にあるPIM信号を、キャンセル対象のPIM信号として判定する。例えば、図10に示すように、ピーク探索部1255は、各遅延量dにおいて、相関強度Corr(d)のピーク値が第一位から第三位までのPIM信号を、キャンセル対象のPIM信号として判定する。そして、ピーク探索部1255は、その判定結果をリソース割当情報としてレプリカ制御部227に出力する。
しかし、前述のように、(A)の方法では、受信信号の品質低下に影響するPIM信号の数を考慮していない。すなわち、図10に示すように、(A)の方法では、ノイズフロアを越える相関強度のピーク値が2つしか存在しない場合でも、相関強度のピーク値が第一位から第三位までのPIM信号を、キャンセル対象のPIM信号として判定してしまう。その結果、(A)の方法では、例えば、受信信号の品質低下に影響しないPIM信号(相関強度のピーク値が第三位であるPIM信号)も、キャンセル対象のPIM信号として判定してしまうことになり、歪みキャンセル性能が向上しない。
[(B)閾値によるPIM信号判定方法の問題点]
前述のように、(B)の方法では、(A)の方法と同様に、まず、推測したPIM信号(レプリカ信号)と受信信号との相関演算により各遅延量に対する相関強度を算出する。そして、(B)の方法では、各遅延量において、相関強度のピーク値が閾値を超えるPIM信号を、キャンセル対象のPIM信号として判定する。
図14は、参考例において、閾値によるPIM信号判定方法を実現するリソース割当判定部2231の構成を示すブロック図である。リソース割当判定部2231は、遅延部2251、複素乗算部2252、相関強度累積部2253、電力変換部2254、および、ピーク探索部2255を有する。
遅延部2251は、レプリカ制御部227から出力されたレプリカ信号Rep(n)を受け取り、そのレプリカ信号Rep(n)に遅延量dを与える。複素乗算部2252は、遅延部2251から出力されたレプリカ信号Rep(n+d)と、受信信号取得部223によって取得された受信信号Rx(n)との一方の信号(例えばレプリカ信号Rep(n+d))に対して複素共役処理を施す。そして、複素乗算部2252は、複素共役処理が施された信号(conj(Rep(n+d)))と受信信号Rx(n)とを乗算する。相関強度累積部2253は、複素乗算部2252の出力である相関強度Corrを累積する。電力変換部2254は、相関強度累積部2253の出力である累積した相関強度Corr(d)を電力に変換する。
ピーク探索部2255は、電力変換部2254の出力を受け取る。そして、ピーク探索部2255は、各遅延量dにおいて、相関強度Corr(d)のピーク値が閾値2256を超えるPIM信号を、キャンセル対象のPIM信号として判定し、その判定結果をリソース割当情報としてレプリカ制御部227に出力する。例えば、図11に示すように、各遅延量dにおいて、閾値2256を越える相関強度Corrのピーク値が3つ存在する。この場合、ピーク探索部2255は、各遅延量dにおいて、相関強度Corr(d)のピーク値が第一位から第三位までのPIM信号を、キャンセル対象のPIM信号として判定し、その判定結果をリソース割当情報としてレプリカ制御部227に出力する。
しかし、前述のように、(B)の方法では、送信電力の変動を考慮していない。送信電力に変動が生じる場合、相関強度にも変動が生じる。例えば、図12に示すように、送信電力が小さい場合、閾値2256を越える相関強度のピーク値が1つしか存在しないため、相関強度のピーク値が第一位であるPIM信号だけを、キャンセル対象のPIM信号として判定してしまう。すなわち、送信電力が小さい場合、受信信号の品質低下に影響する2つのPIM信号(相関強度のピーク値が第二位、第三位であるPIM信号)を、キャンセル対象のPIM信号として判定しない場合が生じるため、歪みキャンセル性能が向上しない。
[解決策]
そこで、本実施例では、(A)、(B)の方法と同様に、まず、推測したPIM信号(レプリカ信号)と受信信号との相関演算により各遅延量に対する相関強度Corrを算出する。更に、本実施例では、レプリカ信号Repの電力の総和であるレプリカ電力総和PowRepを算出する。次に、本実施例では、相関強度Corrとレプリカ電力総和PowRepとを真数で処理する場合(以下、「真数処理」と記載する)、相関強度Corrをレプリカ電力総和PowRepで正規化した値を閾値Thとして用いる。または、本実施例では、相関強度Corrとレプリカ電力総和PowRepとを対数で処理する場合(以下、「対数処理」と記載する)、その差分を閾値Thとして用いる。これらの処理は、相関強度Corrをレプリカ電力総和PowRepに対して相対値化するため、送信信号の電力の変動や設定順位に依存しない閾値Thを設けることができる。そして、本実施例では、各遅延量において、相関強度のピーク値が上記閾値Thを超えるPIM信号を、キャンセル対象のPIM信号として判定する。
ここで、レプリカ電力総和PowRepは、以下の式(2)により表される。
式(2)において、dは、遅延量であり、d=0、1、・・・、D−1により表される。ここで、Dは、最大遅延探索幅(所定の遅延探索幅)である。また、式(2)において、nは、累積数であり、n=0、1、・・・、N−1により表される。ここで、Nは、最大累積数、すなわち、相関演算のウィンドウ幅(所定のサンプル数)である。また、式(2)において、Repはレプリカ信号を表している。
また、真数処理の場合、閾値Thは、以下の式(3)により表される。対数処理の場合、閾値Thは、以下の式(4)により表される。
式(3)および式(4)において、Corrは、相関強度であり、PowRepは、レプリカ電力総和である。また、式(3)および式(4)において、αは、固定オフセットを表し、キャンセル対象とするPIM信号の最小電力から求まる固定値である。
図3および図4は、本実施例によるPIM信号判定方法を説明するための図である。図3および図4は、例えば、LTE(Long Term Evolution)の周波数帯域幅を10MHzとしたときの実機測定結果(図中では「LTE10M実機測定結果」と記載)を示している。図3および図4は、対数処理の場合の一例である。
図3において、横軸は、受信信号に付加されたPIM信号の電力(図中では「PIM電力[dBm]」と記載)を表している。図3において、縦軸は、相関強度Corrのピーク値(図中では「相関ピーク[dB]」と記載)、および、レプリカ電力総和PowRep(図中では「Rep電力総和[dB]」と記載)を表している。
また、図3において、菱形がプロットされた特性は、送信電力が大きい場合の相関強度Corrのピーク値の特性(図中では「高電力送信相関ピーク」と記載)を表している。また、図3において、三角形がプロットされた特性は、送信電力が小さい場合の相関強度Corrのピーク値の特性(図中では「低電力送信相関ピーク」と記載)を表している。また、図3において、四角形がプロットされた特性は、送信電力が大きい場合のレプリカ電力総和PowRepの特性(図中では「高電力送信Rep電力総和」と記載)を表している。また、図3において、バツ印がプロットされた特性は、送信電力が小さい場合のレプリカ電力総和PowRepの特性(図中では「低電力送信Rep電力総和」と記載)を表している。
図4において、図3と同様に、横軸は、受信信号に付加されたPIM信号の電力(図中では「PIM電力[dBm]」と記載)を表している。図4において、縦軸は、相関強度Corrのピーク値からレプリカ電力総和PowRepを減算した値(図中では「相関ピーク−Rep電力総和[dB]」と記載)を表している。すなわち、図4において、縦軸は、相関強度Corrのピーク値とレプリカ電力総和PowRepとの差分を表している。
ここで、送信電力が大きい場合の相関強度Corrのピーク値と、送信電力が大きい場合のレプリカ電力総和PowRepとの差分値を第1の差分値とする。また、送信電力が小さい場合の相関強度Corrのピーク値と、送信電力が小さい場合のレプリカ電力総和PowRepとの差分値を第2の差分値とする。この場合、図4に示すように、第1の差分値は、第2の差分値とほぼ一致する。すなわち、相関強度Corrのピーク値とレプリカ電力総和PowRepとの差分を算出することより、送信電力の大小によらず、一意の関係となっていることが図4から分かる。
このように、本実施例では、対数処理の場合、相関強度Corrのピーク値とレプリカ電力総和PowRepとの差分を算出することで、送信信号の電力の変動や設定順位に依存しない閾値Thを設けることができる。同様に、本実施例では、真数処理の場合、相関強度Corrのピーク値をレプリカ電力総和PowRepで正規化することで、送信信号の電力の変動や設定順位に依存しない閾値Thを設けることができる。
以下、本実施例では、真数処理の場合を実施例1とし、対数処理の場合を実施例2として説明する。
図5は、実施例1によるPIM信号判定方法を実現するリソース割当判定部231の構成を示すブロック図である。リソース割当判定部231は、遅延部251、複素乗算部252、相関強度累積部253、電力変換部254、および、ピーク探索部255を有する。更に、リソース割当判定部231は、レプリカ電力変換部256、レプリカ電力累積部257、および、真数処理部258を有する。
遅延部251は、レプリカ制御部227から出力されたレプリカ信号Rep(n)を受け取り、そのレプリカ信号Rep(n)に遅延量dを与える。複素乗算部252は、遅延部251から出力されたレプリカ信号Rep(n+d)と、受信信号取得部223によって取得された受信信号Rx(n)との一方の信号(例えばレプリカ信号Rep(n+d))に対して複素共役処理を施す。そして、複素乗算部252は、複素共役処理が施された信号(conj(Rep(n+d)))と受信信号Rx(n)とを乗算する。相関強度累積部253は、複素乗算部252の出力である相関強度Corrを累積する。電力変換部254は、相関強度累積部253の出力である累積した相関強度Corr(d)を電力に変換する。
レプリカ電力変換部256は、遅延部251の出力であるレプリカ信号Rep(n+d)を電力に変換する。レプリカ電力累積部257は、レプリカ電力変換部256の出力であるレプリカ信号Rep(n+d)の電力を累積し、レプリカ電力総和PowRepとして出力する。
ピーク探索部255は、電力変換部254の出力である相関強度Corrのピーク値と、レプリカ電力累積部257の出力であるレプリカ電力総和PowRepとを受け取り、真数処理部258に出力する。真数処理部258は、各遅延量dにおいて、相関強度Corrのピーク値をレプリカ電力総和PowRepで正規化した値に、固定オフセットαを乗算した値を算出し、ピーク探索部255に出力する。ピーク探索部255は、各遅延量dにおいて、上記値が閾値Thを超えるPIM信号を、キャンセル対象のPIM信号として判定し、その判定結果をリソース割当情報としてレプリカ制御部227に出力する。この処理は、レプリカ制御部227からピーク探索部255に与えられるリソース上限数設定情報の割当リソース数の上限値I(後述の図7を参照)に達するまで実行される。ピーク探索部255および真数処理部258の処理の詳細については、後述の図7を用いて説明する。
[歪みキャンセル処理]
図6は、実施例1に係る無線通信システムのキャンセル装置200の歪みキャンセル処理の一例を示すフローチャートである。キャンセル装置200は、「歪みキャンセル装置」の一例である。
キャンセル装置200のプロセッサ220において、送信信号取得部221は、送信信号取得処理を行なう(ステップS11)。
送信信号取得処理(ステップS11)において、送信信号取得部221は、インタフェース210によってREC100から受信された送信信号Tx1、Tx2、Tx3、Tx4を取得する。なお、送信信号送出部222は、送信信号取得部221によって取得された送信信号を、インタフェース240を介してRE300a、300bへ送出する。
受信信号取得部223は、受信信号取得処理を行なう(ステップS12)。
受信信号取得処理(ステップS12)において、受信信号取得部223は、インタフェース240によってRE300a、300bから受信された受信信号を取得する。例えば、受信信号取得部223によって取得される受信信号Rxには、送信信号Tx1、Tx2の相互変調によって発生したPIM信号が付加されている。
送受信設定取得部225は、設定情報取得処理を行なう(ステップS13)。設定情報取得処理(ステップS13)において、送受信設定取得部225は、インタフェース210によってREC100から受信された送信信号および受信信号の設定情報(送受信時の中心周波数、信号帯域幅)を取得する。なお、送受信設定送出部226は、送受信設定取得部225によって取得された設定情報を、インタフェース240を介してRE300a、300bへ送出する。
レプリカ制御部227は、PIM信号推測処理を行なう(ステップS14)。レプリカ制御部227は、「推測部」の一例である。
PIM信号推測処理(ステップS14)において、レプリカ制御部227は、送信信号取得部221によって取得された送信信号と、送受信設定取得部225によって取得された設定情報(中心周波数、信号帯域幅)とを取得する。レプリカ制御部227は、取得した送信信号および設定情報(中心周波数、信号帯域幅)に基づいて、受信信号に付加されたPIM信号を推測する。レプリカ制御部227は、推測したPIM信号をレプリカ信号としてリソース割当判定部231に出力する。
次に、リソース割当判定部231は、リソース割当判定処理を行なう(ステップS15)。リソース割当判定部231は、「算出部」および「判定部」の一例である。
リソース割当判定処理(ステップS15)において、リソース割当判定部231は、レプリカ制御部227から出力されるレプリカ信号Repと、受信信号取得部223によって取得された受信信号Rxとを取得する。リソース割当判定部231は、取得したレプリカ信号Repと受信信号Rxとの相関演算により各遅延量に対する相関強度Corrを算出する。また、リソース割当判定部231は、レプリカ信号Repの電力の総和であるレプリカ電力総和PowRepを算出する。そして、リソース割当判定部231は、相関強度Corrをレプリカ電力総和PowRepで相対値化することによって、キャンセル対象のPIM信号を判定し、その判定結果をリソース割当情報としてレプリカ制御部227に出力する。ここで、リソース割当判定部231の処理の詳細については後述する(後述の図7を参照)。
次に、レプリカ制御部227、レプリカ生成部228、レプリカ合成部229、および、キャンセル部232は、キャンセルリソース実行処理を行なう(ステップS16)。レプリカ制御部227、レプリカ生成部228、レプリカ合成部229、および、キャンセル部232は、「キャンセル実行部」の一例である。
キャンセルリソース実行処理(ステップS16)において、レプリカ制御部227は、リソース割当判定部231から出力される判定結果(リソース割当情報)を複数受け取る。この場合、レプリカ制御部227は、複数のリソース割当情報のそれぞれに対して複数のレプリカ生成部228を構築する。すなわち、キャンセル対象のPIM信号にキャンセルリソースが割り当てられる。
キャンセルリソース実行処理(ステップS16)において、各レプリカ生成部228は、送信信号取得部221によって取得された送信信号と、レプリカ制御部227の制御とに基づいて、各キャンセル対象のPIM信号のレプリカであるレプリカ信号を生成する。ここで、各レプリカ生成部228は、キャンセル部232から出力される受信信号を用いて、生成したレプリカ信号の振幅および位相を補正する係数を算出し、レプリカ信号に係数を与えることにより、レプリカ信号の振幅および位相を補正する。レプリカ合成部229は、複数のレプリカ生成部228からそれぞれ出力される複数のレプリカ信号を合成し、合成レプリカ信号を生成する。レプリカ合成部229は、生成した合成レプリカ信号をキャンセル部232に出力する。
キャンセルリソース実行処理(ステップS16)において、キャンセル部232は、受信信号取得部223によって取得された受信信号を、レプリカ合成部229から出力された合成レプリカ信号に重畳(加算)する。これにより、キャンセル部232は、受信信号からキャンセル対象のPIM信号をキャンセルする。
次に、受信信号送出部224は、受信信号送出処理を行なう(ステップS17)。受信信号送出処理(ステップS17)において、受信信号送出部224は、キャンセル部232から出力される受信信号を受け取る。キャンセル部232から出力される受信信号は、PIM信号がキャンセルされた後の受信信号である。受信信号送出部224は、PIM信号がキャンセルされた後の受信信号を、インタフェース210を介してREC100へ送出する。
図7は、実施例1に係る無線通信システムのキャンセル装置200の歪みキャンセル処理内のリソース割当判定処理(ステップS15)の一例を示すフローチャートである。
ここで、リソース割当判定処理(ステップS15)の一例として、リソース割当判定部231は、相関強度Corrの大きい順に以下の処理を行なう。
リソース割当判定部231は、割当リソース数の上限値Iであるリソース上限数設定情報をレプリカ制御部227から受け取る。ここで、リソース割当判定部231は、処理ループとして、割当リソース数iに「1」を設定する(ステップS101)。また、リソース割当判定部231は、遅延ループとして、遅延量dに「0」を設定する(ステップS102)。また、リソース割当判定部231は、累積ループとして、累積数nに「0」を設定する(ステップS103)。
リソース割当判定部231において、遅延部251は、レプリカ制御部227から出力されたレプリカ信号Rep(n)を受け取り、そのレプリカ信号Rep(n)に遅延量dを与える。複素乗算部252は、遅延部251から出力されたレプリカ信号Rep(n+d)と、受信信号取得部223によって取得された受信信号Rx(n)との一方の信号(例えばレプリカ信号Rep(n+d))に対して複素共役処理を施す。そして、複素乗算部252は、複素共役処理が施された信号(conj(Rep(n+d)))と受信信号Rx(n)とを乗算する。すなわち、複素乗算部252は、複素乗算の実行結果A(以下、「複素乗算結果A」と記載する)として、Rx(n)×Rep(n+d)を算出する(ステップS104)。
次に、レプリカ電力変換部256は、遅延部251の出力であるレプリカ信号Rep(n+d)を電力に変換する。すなわち、レプリカ電力変換部256は、レプリカ信号の電力変換の実行結果B(以下、「レプリカ電力変換結果B」と記載する)として、Rep(n+d)×Rep(n+d)の絶対値を算出する(ステップS105)。
次に、相関強度累積部253は、複素乗算部252の出力である複素乗算の実行結果Aを累積する。すなわち、相関強度累積部253は、複素乗算結果Aの累積処理の実行結果として、相関強度Corr(d)を生成する。レプリカ電力累積部257は、レプリカ電力変換部256の出力であるレプリカ電力変換結果Bを累積する。すなわち、レプリカ電力累積部257は、レプリカ電力変換結果Bの累積処理の実行結果として、レプリカ電力総和PowRep(d)を生成する(ステップS106)。
ここで、リソース割当判定部231は、累積数nに「1」を加算し(ステップS107)、累積数nが最大累積数Nであるか否かを判定する(ステップS108)。
累積数nが最大累積数Nではない場合(ステップS108−No)、上述のステップS104が実行される。
一方、累積数nが最大累積数Nである場合(ステップS108−Yes)、電力変換部254は、相関強度累積部253の出力である相関強度Corr(d)を電力に変換する。すなわち、電力変換部254は、相関強度Corr(d)の2乗を算出する(ステップS109)。
ここで、リソース割当判定部231は、遅延量dに「1」を加算し(ステップS110)、遅延量dが最大遅延探索幅Dであるか否かを判定する(ステップS111)。
遅延量dが最大遅延探索幅Dではない場合(ステップS111−No)、上述のステップS103が実行される。
一方、遅延量dが最大遅延探索幅Dである(ステップS111−Yes)。この場合、ピーク探索部255は、電力変換部254の出力である各遅延量dに対する相関強度Corr(d)の中から、そのピーク値が最大の相関強度Corr(dmax)を探索する(ステップS112)。
次に、ピーク探索部255は、レプリカ電力変換部256の出力であるレプリカ電力総和PowRep(d)において、最大の相関強度Corr(dmax)が得られるときのレプリカ電力総和PowRep(dmax)を決定する。ここで、ピーク探索部255は、最大の相関強度Corr(dmax)をCorrmaxとし、決定したレプリカ電力総和PowRep(dmax)をPowRepmaxとして、真数処理部258に出力する(ステップS113)。
真数処理部258は、最大の相関強度Corrmaxをレプリカ電力総和PowRepmaxで正規化した値に、固定オフセットαを乗算した値(Corrmax/PowRepmax×α)を算出し、ピーク探索部255に出力する。ピーク探索部255は、上記値(Corrmax/PowRepmax×α)が閾値Thを超えているか否かを判定する(ステップS114)。
ここで、上記値(Corrmax/PowRepmax×α)が閾値Thを超えていない(ステップS114−No)。この場合、リソース割当判定部231は、リソース割当判定処理(ステップS15)を終了する。
一方、上記値(Corrmax/PowRepmax×α)が閾値Thを超えている(ステップS114−Yes)。この場合、ピーク探索部255は、上記値が閾値Thを超えるPIM信号を、キャンセル対象のPIM信号として判定する。すなわち、ピーク探索部255は、最大の相関強度Corr(dmax)のPIM信号を、キャンセル対象のPIM信号として判定する。ピーク探索部255は、その判定結果をリソース割当情報としてレプリカ制御部227に出力する(ステップS115)。
ここで、リソース割当判定部231は、割当リソース数iに「1」を加算し(ステップS116)、割当リソース数iが割当リソース数の上限値Iであるか否かを判定する(ステップS117)。
割当リソース数iが割当リソース数の上限値Iではない場合(ステップS117−No)、上述のステップS102が実行される。すなわち、リソース割当判定部231は、最大の相関強度Corr(dmax)の次に大きい相関強度Corr(d)を最大の相関強度Corr(dmax)として検索するために、上述のステップS102を実行する。
一方、割当リソース数iが割当リソース数の上限値Iである場合(ステップS117−Yes)、リソース割当判定部231は、リソース割当判定処理(ステップS15)を終了する。
以上の説明により、実施例1に係る無線通信システムの歪みキャンセル装置(キャンセル装置200)は、送信信号取得部221、受信信号取得部223を有する。更に、キャンセル装置200は、推測部(レプリカ制御部227)、算出部(リソース割当判定部231)、判定部(リソース割当判定部231)を有する。更に、キャンセル装置200は、キャンセル実行部(レプリカ制御部227、レプリカ生成部228、レプリカ合成部229、キャンセル部232)を有する。送信信号取得部221は、異なる周波数で無線送信される複数の送信信号を取得する。受信信号取得部223は、複数の送信信号によって発生する相互変調信号(PIM信号)が付加された受信信号Rxを取得する。推測部(レプリカ制御部227)は、複数の送信信号に基づいて相互変調信号(PIM信号)を推測し、レプリカ信号Repとして出力する。算出部(リソース割当判定部231)は、レプリカ信号Repと受信信号Rxとの相関演算により各遅延量dに対する相関強度Corr(d)と、レプリカ信号Repの電力の総和であるレプリカ電力総和PowRep(d)とを算出する。判定部(リソース割当判定部231)は、各遅延量dに対する相関強度Corr(d)をレプリカ電力総和PowRep(d)で相対値化することによって、キャンセル対象のPIM信号を判定する。キャンセル実行部(レプリカ制御部227、レプリカ生成部228、レプリカ合成部229、キャンセル部232)は、受信信号Rxからキャンセル対象のPIM信号をキャンセルする。
このように、実施例1に係る無線通信システムでは、相関強度Corr(d)をレプリカ電力総和PowRep(d)に対して相対値化するため、送信信号の電力の変動や設定順位に依存しない閾値Thを設けることができる。したがって、実施例1に係る無線通信システムでは、各遅延量dにおいて、相関強度Corr(d)のピーク値が上記閾値Thを超えるPIM信号を、キャンセル対象のPIM信号として判定することができるため、歪みキャンセル性能が向上する。
具体的には、実施例1に係る無線通信システムの歪みキャンセル装置(キャンセル装置200)において、判定部(リソース割当判定部231)は、各遅延量dに対する相関強度Corr(d)の中から、最大の相関強度Corr(dmax)を探索する。ここで、リソース割当判定部231は、最大の相関強度Corr(dmax)が得られるときのレプリカ電力総和PowRep(dmax)を決定する。そして、リソース割当判定部231は、最大の相関強度Corr(dmax)を上記決定したレプリカ電力総和PowRep(dmax)で正規化した値(Corrmax/PowRepmax×α)が閾値Thを超えているか否かを判定する。上記値(Corrmax/PowRepmax×α)が閾値Thを超える場合、リソース割当判定部231は、最大の相関強度CorrmaxのPIM信号をキャンセル対象のPIM信号とする判定結果を上記キャンセル実行部に出力する。ここで、リソース割当判定部231は、判定結果を出力した場合、各遅延量dに対する相関強度Corr(d)のうちの、最大の相関強度Corr(dmax)の次に大きい相関強度Corr(d)を最大の相関強度Corr(dmax)として検索する。
このように、実施例1に係る無線通信システムでは、相関強度Corr(d)をレプリカ電力総和PowRep(d)に対して正規化するため、送信信号の電力の変動や設定順位に依存しない閾値Thを設けることができる。したがって、実施例1に係る無線通信システムでは、各遅延量dにおいて、相関強度Corr(d)のピーク値が上記閾値Thを超えるPIM信号を、キャンセル対象のPIM信号として判定することができるため、歪みキャンセル性能が向上する。
実施例1では、真数処理の場合について説明したが、実施例2では、対数処理の場合について説明する。実施例2では、実施例1の変更点を説明する。
図8は、実施例2によるPIM信号判定方法を実現するリソース割当判定部231の構成を示すブロック図である。リソース割当判定部231は、実施例1における真数処理部258に代えて、対数処理部259を有する。
ピーク探索部255は、電力変換部254の出力である相関強度Corrのピーク値と、レプリカ電力累積部257の出力であるレプリカ電力総和PowRepとを受け取り、対数処理部259に出力する。対数処理部259は、各遅延量dにおいて、相関強度Corrのピーク値とレプリカ電力総和PowRepとに対して対数変換を施す。その後、対数処理部259は、相関強度Corrのピーク値とレプリカ電力総和PowRepとの差分値に、固定オフセットαを乗算した値を算出し、ピーク探索部255に出力する。ピーク探索部255は、各遅延量dにおいて、上記値が閾値Thを超えるPIM信号を、キャンセル対象のPIM信号として判定し、その判定結果をリソース割当情報としてレプリカ制御部227に出力する。この処理は、レプリカ制御部227からピーク探索部255に与えられるリソース上限数設定情報の割当リソース数の上限値I(後述の図9を参照)に達するまで実行される。ピーク探索部255および対数処理部259の処理の詳細については、後述の図9を用いて説明する。
[歪みキャンセル処理]
図9は、実施例2に係る無線通信システムのキャンセル装置200の歪みキャンセル処理内のリソース割当判定処理(ステップS15)の一例を示すフローチャートである。
リソース割当判定処理(ステップS15)の一例として、リソース割当判定部231は、相関強度Corrの大きい順に以下の処理を行なう。リソース割当判定部231は、実施例1におけるステップS114に代えて、後述のステップS201、S202を実行する。
まず、ステップS101〜S113が実行される。なお、ステップS113において、ピーク探索部255は、最大の相関強度Corr(dmax)をCorrmaxとし、決定したレプリカ電力総和PowRep(dmax)をPowRepmaxとして、対数処理部259に出力する。
対数処理部259は、最大の相関強度Corrmaxとレプリカ電力総和PowRepmaxとに対して対数変換を施す(ステップS201)。その後、対数処理部259は、最大の相関強度Corrmaxとレプリカ電力総和PowRepmaxとの差分値に、固定オフセットαを乗算した値((Corrmax−PowRepmax)×α)を算出し、ピーク探索部255に出力する。ピーク探索部255は、上記値((Corrmax−PowRepmax)×α)が閾値Thを超えているか否かを判定する(ステップS202)。
ここで、上記値((Corrmax−PowRepmax)×α)が閾値Thを超えていない(ステップS202−No)。この場合、リソース割当判定部231は、リソース割当判定処理(ステップS15)を終了する。
一方、上記値((Corrmax−PowRepmax)×α)が閾値Thを超えている(ステップS202−Yes)。この場合、ステップS115が実行される。なお、ステップS115において、ピーク探索部255は、上記値が閾値Thを超えるPIM信号を、キャンセル対象のPIM信号として判定する。すなわち、ピーク探索部255は、最大の相関強度Corr(dmax)のPIM信号を、キャンセル対象のPIM信号として判定する。ピーク探索部255は、その判定結果をリソース割当情報としてレプリカ制御部227に出力する。その後、ステップS116、S117が実行される。
実施例2に係る無線通信システムの歪みキャンセル装置(キャンセル装置200)において、判定部(リソース割当判定部231)は、各遅延量dに対する相関強度Corr(d)の中から、最大の相関強度Corr(dmax)を探索する。ここで、リソース割当判定部231は、最大の相関強度Corr(dmax)が得られるときのレプリカ電力総和PowRep(dmax)を決定する。そして、リソース割当判定部231は、最大の相関強度Corr(dmax)と上記決定したレプリカ電力総和PowRep(dmax)とを対数変換する。その後、リソース割当判定部231は、最大の相関強度Corr(dmax)と上記決定したレプリカ電力総和PowRep(dmax)との差分値((Corrmax−PowRepmax)×α)が閾値Thを超えているか否かを判定する。上記差分値((Corrmax−PowRepmax)×α)が閾値Thを超える場合、リソース割当判定部231は、最大の相関強度CorrmaxのPIM信号をキャンセル対象のPIM信号とする判定結果を上記キャンセル実行部に出力する。ここで、リソース割当判定部231は、判定結果を出力した場合、各遅延量dに対する相関強度Corr(d)のうちの、最大の相関強度Corr(dmax)の次に大きい相関強度Corr(d)を最大の相関強度Corr(dmax)として検索する。
このように、実施例2に係る無線通信システムでは、相関強度Corr(d)とレプリカ電力総和PowRep(d)とを対数変換し、その差分をとるため、送信信号の電力の変動や設定順位に依存しない閾値Thを設けることができる。したがって、実施例2に係る無線通信システムでは、各遅延量dにおいて、相関強度Corr(d)のピーク値が上記閾値Thを超えるPIM信号を、キャンセル対象のPIM信号として判定することができるため、歪みキャンセル性能が向上する。
なお、上記各実施例においては、キャンセル装置200のプロセッサ220によって歪みキャンセル処理が実行されるものとしたが、キャンセル装置200は、必ずしも独立した装置として配置されなくても良い。すなわち、キャンセル装置200のプロセッサ220の機能が例えばREC100のプロセッサ110に備えられていても良い。また、プロセッサ220と同等の機能を有するプロセッサがRE300aまたはRE300bに備えられていても良い。
上記各実施例において説明した歪みキャンセル処理をコンピュータが実行可能なプログラムとして記述することも可能である。この場合、このプログラムをコンピュータが読み取り可能な記録媒体に格納し、コンピュータに導入することも可能である。コンピュータが読み取り可能な記録媒体としては、例えばCD−ROM、DVD、USBメモリなどの可搬型記録媒体や、例えばフラッシュメモリなどの半導体メモリが挙げられる。