JP6932357B1 - 飛来物源の固縛構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】飛来物源および支持基礎に過大な衝撃力を作用させず、一部の固縛装置に巨大な引張力が集中することを防止して飛来物源を固縛できる、飛来物源の固縛構造を提供すること。【解決手段】突風エネルギーの減衰機能と固縛移動機能を有する複数の固縛装置30を使用し、飛来物源10と支持基礎20との間に複数の固縛装置30を配置し、複数の固縛装置30が固縛装置30の一部に一定以上の張力が作用すると、固縛装置30が突風エネルギーの減衰機能を発揮しつつ、固縛装置30による固縛距離が伸長することで、飛来物源が飛んでしまうことを抑止する。【選択図】図6

Description

本発明は突風発生時に、車両やコンテナ等の固縛対象設備である飛来物源が飛ばされないように、固縛しつつ、固縛状態での移動を可能としており、突風エネルギーを減衰可能に固縛する飛来物源の固縛構造に関する。
近年、竜巻、台風、ダウンバースト、ガストフロント等による突風被害が相次いで発生している。
発電施設等の重要防護施設においては、突風発生時に退避不能な車両等の飛来物源が飛ばされないための防災対策工を講じる必要がある。
特許文献1には、車両の荷台を跨いで掛け渡したベルト材の両端部を地上に固定して張設した第一竜巻対策装置と、車両の底面と地表部の間に鋼製ロープを張設した第二竜巻対策装置とを組み合わせた竜巻対策装置が開示されている。
特許文献2には、車両の周囲に周回して巻き掛けた高強度繊維製の環状ロープと、環状ロープの一部を地上の固定材に連結する高強度繊維製のサイドロープとを組み合わせた車両用の固縛装置が開示されている。
車両の他の固縛手段として、車両本体と車両周囲に設けた支持基礎の係留片との間にレバーブロック(登録商標)等の複数の緊縛装置を掛け渡すことが提案されている。
緊縛装置の鎖ロープを巻き取って車両を緊縛すると、地震発生時に緊縛装置や緊縛装置の取付部が破壊されることから、地震対策として車両の揺れを許容し得るように、鎖ロープ等に予め弛み(余長)を持たせている。
予め鎖ロープに弛みを持たせておくと、突風発生時に弛みが原因で車両の転倒等を誘発するだけでなく、鎖ロープが伸びきると緊縛装置に巨大な衝撃が作用して緊縛装置や緊縛装置の取付部が破壊される。
そのため、通常時は地震対策として緊縛装置から延出した鎖ロープに弛みを持たせておき、突風発生時に緊縛装置の鎖ロープを強制的に巻き取るためのに電動式の巻取装置(電動ドリル)を各緊縛装置に配備している。
実用新案登録第3208218号公報 特開2019−52478号公報
特許文献1,2に記載の固縛技術はつぎの問題点を内包する。
<1>特許文献1に記載の竜巻対策装置は、第一竜巻対策装置および第二竜巻対策装置を構成する複数のロープの取り付け作業と、複数のロープの緊張作業に多くの時間と労力を要し、緊急時の対応性に問題がある。
<2>特許文献2に記載の固縛装置は、予めサイドロープにたるみ(余長)を持たせているため、突風発生時に車両が横滑りを生じ、サイドロープが伸びきったときに車両が急停止する。
サイドロープが伸びきった展張時において、車両に衝撃力が加わると同時に、サイドロープに過大な張力が作用して、ロープ本体またはサイドロープの取付部が破損するおそれがある。
特に、サイドロープの弛み寸法が長くなるほど、車両の横滑りが加速されるため、サイドロープの弛み量に比例して展張時における衝撃力が大きくなる。
複数の緊縛装置と巻取装置を組合わせて使用する従来の固縛技術にはつぎの問題点を内包する。
<1>固縛を実施するためには、複数の緊縛装置と巻取装置のハード要素だけでなく、竜巻等の警報時に巻取装置と緊縛装置による巻取り操作を行うための操作要員を、現場近くに長時間に亘って待機させておく必要がある。
<2>緊縛装置による巻取操作は操作要員が屋外で行わなければならない危険を伴う作業であり、操作要員の安全性確保の問題が残る。
車両と支持基礎の係留片との間に複数の固縛装置を、列単位で配置して連結した従来の固縛技術は、つぎの共通した問題点を内包する。
<1>固縛装置の設置数は、予想される突風段級や車両重量等に基づいて算出し、同列上に配置した複数の固縛装置で以て突風エネルギーを分散して支持するように設計している。
しかしながら、同列上に配置したすべての固縛装置で以て突風エネルギーを均等に分散して支持することは技術的に難しい。
<2>同列上に配置した複数の固縛装置の固縛長さに差が生じていると、突風発生時に同列上に配置した複数の固縛装置における展張タイミングにズレが生じる。
固縛長さの最も短い一部の固縛装置に対して瞬時に巨大張力が集中して破壊され易い。
一部の固縛装置が破壊すると、他の固縛装置の負担荷重が増して連鎖的に破壊が進行して、最終的に固縛機能を喪失して車両が飛んでしまう。
本発明は以上の問題点解消できる飛来物源の固縛構造を提供することを目的とする。
本発明は、飛来物源と、飛来物源の周囲に設けた単数または複数の支持基礎と、飛来物源と支持基礎との間に配置した複数の固縛装置とを具備し、固縛装置の両端を飛来物源と支持基礎の係留片に連結し、突風発生時に飛来物源を支持基礎に繋ぎ留める飛来物源の固縛構造であって、前記固縛装置が突風エネルギーの減衰機能と固縛移動機能を有し、前記固縛装置の一部に一定以上の張力が作用すると、固縛装置が突風エネルギーの減衰機能を発揮しつつ、固縛装置による固縛移動が可能である。
本発明の他の形態において、前記固縛装置は、飛来物源と支持基礎の間に配設した単数または複数の係留材と、係留材に配設した単数または複数の張力減衰装置とを具備し、前記固縛装置に一定以上の張力が作用すると、固縛装置の全長が伸長可能である。
本発明の他の形態において、前記固縛装置の最大伸長距離は想定される飛来物源の最大移動距離よりも長い寸法関係にある。
本発明の他の形態において、飛来物源のひとつの連結部から延びる複数の固縛装置を複数の支持基礎の係留片に分散して連結してもよいし、支持基礎のひとつの係留片を複数の固縛装置に共有させて連結してもよい。
本発明の他の形態において、飛来物源の連結部と支持基礎の係留片との間に予め多少の弛みを持たせて固縛装置を連結してもよいし、予め固縛装置を緊張状態で連結してもよい。
本発明の他の形態において、前記張力減衰装置が、摩擦摺動式、塑性変形式またはダンパー式の何れかひとつ、または複数の組み合わせである。
本発明は以上の構成を有することで少なくともつぎのひとつの効果を奏する。
<1>突風エネルギーの減衰機能と固縛移動機能を有する複数の固縛装置を使用して、巨大な突風発生時において、固縛装置と、固縛装置の連結対象飛来物源である車両および支持基礎に過大な衝撃力を作用させない固縛構造とした。
そのため、固縛装置そのものの破壊を防止しつつ、固縛装置の両端の連結部の破壊および支持基礎の破壊も防止できるので、竜巻等の突風によって車両が飛んでしまうことを効果的に抑止できる。
<2>巨大な突風の発生予報時において、車両と支持基礎の間に連結した複数の固縛装置はそのままで対応可能である。
従来のような作業要員に頼った複数の固縛装置の再緊張操作が一切不要であり、緊急時の対応性が格段に向上するだけでなく、作業員の安全性確保が可能となる。
<3>固縛装置は配設形態(飛来物源と支持基礎との間に多少の弛みを持たせて連結する形態または緊張状態で連結する形態)の如何に拘らず、突風発生時だけでなく、地震発生時においても機能する。
<4>固縛装置が固縛距離の伸長追従機能を有していることで、同列上に配置した複数の固縛装置に張力差があっても、すべての固縛装置の減衰機能を同調させて発揮することができる。
したがって、一部の固縛装置に巨大な引張力が集中することを防止して、固縛装置の連鎖的な破損を回避できて、最終的に固縛機能を喪失することがない。
<5>同列上に配置した複数の固縛装置に予め多少の固縛長さにバラツキがあっても、固縛装置が個別に伸長してバラツキを吸収して、過大な張力に起因した固縛装置の破壊を防止することができる。
本発明に係る飛来物源の固縛構造の説明図で、飛来物源の側面図 図1Aに示した飛来物源の正面図 図1Aに示した飛来物源の背面図 固縛構造の説明図で、(A)は飛来物源側の連結部の斜視図、(B)は張力減衰装置の一例の斜視図、(C)は支持基礎側の連結部の斜視図 張力減衰装置の配置位置の説明図で、(A)は係留材の重合部に張力減衰装置の配置を配置した形態の説明図、(B)は支持基礎側に係留材を配置した形態の説明図、(C)は係留材に複数の張力減衰装置の配置を配置した形態の説明図 固縛装置の配設形態の説明図で、(A)は固縛装置を複数の支持基礎に分散して連結した固縛装置の配設形態の説明図、(B)はひとつの支持基礎を共有して複数の固縛装置を連結した固縛装置の配設形態の説明図 固縛装置の作用の説明図 複数の固縛装置の作用の説明図 図6におけるVII-VIIの断面図
以下図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
<1>飛来物源
図1A〜1Cを参照して説明すると、本発明における「飛来物源10」とは、重要防護施設内の地表または既設建物の屋上等に配備し、突風発生時に退避不能な有体物を意味し、例えば各種の施設(給水施設、発電施設等)を搭載した大型車両、コンテナ、簡易建屋等を含む。
本発明では、飛来物源10が大型車両である場合について説明する。
飛来物源10の前後および左右の周囲には、フック等の複数の連結部11を有する。
飛来物源10が大型トラックの場合には、荷台部の左右面と前後のシャーシに複数の連結部11を設ける。
<2>支持基礎
支持基礎20は飛来物源10の周囲の床面等に設けた単数または複数の反力源である。
本例では飛来物源10の前後左右の四方向に沿って複数の帯状の支持基礎20を設けた形態について説明するが、飛来物源10の前後または左右の二方向に沿って支持基礎20を設けてもよい。
支持基礎20の設置数や飛来物源10に対する支持基礎20の設置方向は適宜選択が可能である。
各支持基礎20は突風エネルギーに耐え得るコンクリート製や鋼製等の基礎構造物であり、その上面には所定の間隔を隔てて複数の係留素子である係留片21が配備してある。
各支持基礎20は飛来物源10の位置から離れた周囲の床面に設けるが、飛来物源10の想定される横滑り距離を考慮し、飛来物源10が特定の方向に向けて変位しても支持基礎20と干渉しない位置に設ける。
<3>固縛装置
飛来物源10と支持基礎20との間には複数の固縛装置30を配設し、各固縛装置30の両端を飛来物源10と特定の係留片21に固定する。
固縛装置30は、突風発生時において、飛来物源10を急停止させずに支持基礎20に繋ぎ留めるための装置である。
特に固縛装置30は、突風エネルギーの減衰機能(ブレーキ機能)と、固縛距離の伸長を許容する固縛移動機能を具備していて、これらの両機能により、固縛装置30と、固縛装置30の連結対象である飛来物源10および支持基礎20に過大な衝撃力を作用させない構造とした。
固縛装置30は、飛来物源10と支持基礎20の間に配設したロープ状を呈する単数または複数の係留材31と、係留材31の端部近くに配設した張力減衰装置32とを具備する。
係留材31に一定以上の張力が作用すると、固縛装置30による連結距離(固縛長)が伸長する。
本例では、2本の係留材31,31と単数の張力減衰装置32を組み合わせて固縛装置30を構成する形態について説明するが、係留材31は1本以上であればよい。
<3.1>係留材
係留材31は荷重を伝達可能な非延伸部材であり、例えばワイヤーロープに代表される鋼製ロープを使用できる。係留材31はその他にチェーンや鋼棒等を使用することもできる。
なお、係留材31の素材に高弾性部材を含まないことは勿論である。
図2を参照して説明すると、係留材31の一端には掛止素子31aを一体に形成し、掛止素子31aを介して係留材31の一端を飛来物源10の連結部11および支持基礎20の係留片21にそれぞれ連結可能である。
掛止素子31aには、ロープの端部にアイ(アイ圧縮止め)加工を施して形成したアイ部、またはロープの端部に一体に付設した鋼製フック等が適用可能である。
掛止素子31aは連結部11や係留片21に直接連結してもよいし、図示するようにシャックル等の中継金具32を介して連結してもよい。
<3.2>張力減衰装置
張力減衰装置32は係留材31に作用する張力の減衰機能を有していて、固縛装置30による連結距離(固縛長)を伸長変化しながら、張力減衰装置32が張力減衰機能を発揮する。
固縛装置30による減衰機能の発揮時期と、連結距離(固縛長)の伸長変化を生じる時期は同じであり、固縛装置30による摺動許容張力と伸長許容張力は共に等しい。
張力減衰装置32にはつぎの減衰方式が適用可能である。
〔ア〕摩擦摺動式の張力減衰装置
本形式は、ロープ製の係留材31を包囲する単数または複数の鋼製把持具と、鋼製把持具を締付け可能な複数の締付ボルトとを少なくとも具備し、係留材31と鋼製把持具の周面間の摩擦抵抗を超える引張力が作用したときに係留材31の摺動を許容する構造になっていて、把持部の摺動抵抗により係留材31に作用する張力を減衰する。
係留材31の摺動を許容する張力が、固縛装置30の伸長許容張力となる。
本例では摩擦摺動式の張力減衰装置32を適用した形態について説明する。
張力減衰装置32は、2本のロープ製の係留材31,31の端部近くの重合部を把持している。張力減衰装置32から延出した係留材31,31には余長部31bを形成していて、余長部31bの長さが係留材31の摺動許容距離となる。
したがって、余長部31bの長さは、突風発生時に想定される飛来物源10の横移動距離よりも長い寸法関係にしておく。
摩擦摺動式の張力減衰装置32としては、例えば特開2003−301419号公報、特開2003−129424号公報に開示されたロープ用の張力減衰装置が使用可能である。
図2(B)を参照して説明すると、このロープ用の張力減衰装置32はばね鋼板の中央を折り返して拡張部32aを形成した拘束板32bと、拘束板32bの拡張部32aの内空を区画する仕切板32cと、拘束板32bを締め付ける複数の締付ボルト32dとを具備し、拘束板32bの拡張部32a内に収容した2本のロープ製の係留材31,31を摺動可能に把持している。
〔イ〕塑性変形式の張力減衰装置
本形式は、塑性変形が可能なシェル構造を呈する単数または複数の支圧体と係留材31とを組み合わせたもので、係留材31に作用する張力が支圧体の変形強度を超えると支圧体が塑性変形し、支圧体の変形抵抗により係留材31に作用する張力を減衰する。
塑性変形式の張力減衰装置32としては、例えば特開2004−1693363号公報に開示されたロープ用張力減衰装置が使用可能である。
この張力減衰装置32は、シェル構造を呈する複数の荷重伝達体を具備していて、複数の荷重伝達体は外力が作用すると連鎖的に変形し、荷重伝達体の変形抵抗により係留材31に作用する張力を減衰する。
荷重伝達体の板厚と設置数に比例して減衰性能が高くなる。
なお、シェル構造体は皿形状体の他に円筒体や蛇腹状の筒体でもよい。
〔ウ〕ダンパー式の張力減衰装置
本形式は、シリンダ内にロッド付きピストンを配置し、流体(液体)を封入したシリンダ内をピストンがスライド移動するときの移動抵抗により係留材31に作用する張力を減衰する。
張力減衰装置32は上記した〔ア〕〜〔ウ〕の例示に限定されず、各種のブレーキ機能を有する公知の装置が適用可能である。
〔エ〕飛来物源の横移動距離と固縛装置の伸長距離の関係
張力減衰装置32が何れの減衰形式であっても、突風発生時において、飛来物源10の横移動に追従し得るように、固縛装置30の最大伸長距離(減衰距離)は、想定される飛来物源10の最大移動距離よりも長い寸法関係になっている。
固縛装置30の伸長距離が飛来物源10の想定される横移動距離より短いと、飛来物源10の横滑り中に固縛装置30が伸びきって飛来物源10が急停止し、固縛装置30が伸びきった展張時において、飛来物源10に衝撃力が加わると同時に、固縛装置30に過大な張力が作用して連結部が破損するおそれがあるためである。
[固縛方法]
つぎに固縛装置30を用いた固縛方法について説明する。
<1>固縛装置の連結
図1A〜1Cに示すように、飛来物源10と支持基礎20との間に、既述した固縛装置30を配設し、固縛装置30の両端を飛来物源10の前後左右に設けた複数の連結部11と、支持基礎20の対応する係留片21にそれぞれ連結して固縛する。
本発明では、飛来物源10と支持基礎20との間に複数の固縛装置30を配置して連結するだけの簡単な係留作業だけで、飛来物源10を支持基礎20に固縛することができる。
<2>張力減衰装置の配置位置
図3を参照して固縛装置30を構成する張力減衰装置32の配置位置について説明する。
図3(A)は、飛来物源10の連結部11および支持基礎20の係留片21から延びる2本の係留材31,31の重合部に張力減衰装置32の配置を配置した形態を示す。
図3(B)は、支持基礎20の係留片21、または飛来物源10の連結部11の何れか一方に張力減衰装置32を直接連結した形態を示す。
<3>張力減衰装置の設置数(図3(C))
同一線上に配置した係留材31に対する張力減衰装置32の配置数は単数に限定されず、間隔を隔てて複数の張力減衰装置32を配置して構成してもよい。
張力減衰装置32の設置数は、想定される突風エネルギーの大きさ等を考慮して適宜選択する。
<4>固縛装置の配置形態(図4)
飛来物源10の連結部11の単体と支持基礎20の係留片21の単体との間に1組の固縛装置30を配置して連結することを基本とするが、以下に説明する固縛装置30の設置形態も可能である。
図4(A)は、飛来物源10のひとつの連結部11から延びる複数の固縛装置30,30を複数の係留片21に分散して連結した形態を示していて、ひとつの連結部11を複数の係留片21で分散して支持するようにした。
図4(B)は、支持基礎20のひとつの係留片21に対して飛来物源10の複数の連結部11との間に複数の固縛装置30を連結した形態を示していて、ひとつの係留片21を複数の連結部11に共有させて支持するようにした。
固縛装置30の設置形態は、想定される突風エネルギーの大きさや連結部11の形成数や係留片耐力等を考慮して適宜選択する。
<5>固縛装置の弛みの有無
固縛装置30は巨大な突風エネルギー等の外力を受けることにより、自身の全長が長く延びて、連結距離(固縛長)が長くなる構造である。
したがって、飛来物源10の連結部11と支持基礎20の係留片21との間に固縛装置30を配置する場合は、固縛装置30を構成する係留材31に多少の弛みを持たせて連結しておくことが望ましい。
固縛装置30の配置形態は多少の弛みを持たせて連結することの他に、予め係留材31を緊張状態で張設しておいてもよく、現場の状況などを考慮してどちらの配設形態でも対応が可能である。
[固縛装置の作用]
つぎに地震発生時および突風発生時における固縛装置30の作用について説明する。
<1>地震発生時
飛来物源10は、複数の固縛装置30を介して、支持基礎20に固縛してある。
地震発生時は飛来物源10に横揺れまた縦揺れが生じる。
例えば、図3(A)に示すように、固縛装置30を構成する係留材31に予め弛みを持たせて連結してある場合、飛来物源10の揺れが係留材31の弛みの範囲内であれば、係留材31に過大な張力は作用しない。
図5を参照して縛装置30を構成する係留材31を予め緊張状態で張設した場合、または飛来物源10の揺れが係留材31の弛みの範囲を超えた場合は、飛来物源10の揺れに伴い係留材31に一定以上の張力が作用する。
固縛装置30に作用する張力が、固縛装置30の伸長許容張力を超えると、固縛装置30による伸長前の連結距離(固縛長)Lが連結距離Lに伸長して変化して、飛来物源10の揺れを許容する。
固縛装置30が摩擦摺動式である場合は、係留材31に生じる張力が、ロープ製の係留材31,31の重合部を把持する張力減衰装置32の把持力を超えると、把持部に摺動を生じて連結距離Lを伸長しつつ、飛来物源10の揺れを許容する。
このように地震発生時においては、固縛装置30が飛来物源10のあらゆる方向の揺れを許容するので、固縛装置30そのものが破壊される心配がないうえに、固縛装置30の両端の連結部が破壊される心配もない。
<2>突風発生時
竜巻等の突風の発生時において、複数の固縛装置30に対して再緊張操作は一切不要であり、そのための作業要員も専用の緊張機材も不要である。作業員は安全なエリア等に退避している。
飛来物源10と支持基礎20の間に連結した複数の固縛装置30はそのままで対応可能であるので、従来と比べて緊急時の対応性が格段に向上する。
飛来物源10に巨大な突風エネルギーが作用すると、突風エネルギーは、飛来物源10を固縛する複数の固縛装置30に引張力となって作用し、最終的に支持基礎20が突風エネルギーを支持する。
<2.1>固縛装置が伸長許容張力に達しないとき
固縛装置30に作用する張力が、固縛装置30の伸長許容張力に達しないときは、固縛装置30による連結距離は変化しない。
したがって、飛来物源10に大きな横滑りや浮上は生じない。
<2.2>固縛装置が伸長許容張力に達したとき
図6,7を参照して説明すると、固縛装置30に作用する張力が、固縛装置30の伸長許容張力に達すると、固縛装置30による連結距離が伸長することに伴い、飛来物源10が横滑りをして当初の位置から風下側へ向けた移動距離Lが増していく。
<2.2.1>固縛装置による突風エネルギーの減衰作用
固縛装置30の全長が伸長する際に張力減衰装置32が張力減衰機能を発揮して突風エネルギーを減衰する。
すなわち、固縛装置30は突風エネルギーを減衰しつつ、連結距離を伸長する。
したがって、本発明では、飛来物源10の自由な横滑りを抑制しつつ、飛来物源10の加速度も効果的に減速でき、最終的に竜巻などの突風によって飛来物源10が飛んでしまうことを効果的に抑止することができる。
このように飛来物源10に巨大な突風エネルギーが作用したときにおいても、固縛装置30が突風エネルギーの減衰機能と固縛距離(連結距離)の伸長追従機能を発揮することで、固縛装置30そのものが破壊される心配がないうえに、固縛装置30の両端の連結部が破壊される心配もない。
<2.2.2>複数の固縛装置による同調作用
突風エネルギーの減衰機能と、連結距離の伸長追従機能を具備しない従来の固縛装置で連結した場合、同列上に配置した各固縛装置が伸びきる展張タイミングにズレが生じ、複数の固縛装置に作用する張力にバラツキが生じる。
そのため、固縛距離が最も短い固縛装置に過大な張力が作用して破壊され易い、といった問題点を内包している。
これに対して、本発明では固縛装置30が突風エネルギーの減衰機能と固縛移動機能を具備しているので、受撃初期において、同列上に配置した複数の固縛装置30に作用する張力にバラツキが生じても、各固縛装置30が個別に伸長して、全ての固縛装置30の張力が均等になるので、これ以降は全ての固縛装置30において、前記した二つの機能が同調して発揮される。
図6を参照して説明する。同図は図面の下向きの突風の影響を受けて、飛来物源10が下方へ変位し、飛来物源10の一側面と上位の支持基礎20との間に配列した複数の固縛装置30〜30が伸長した状態を示している。
受撃初期において、複数の固縛装置30〜30の間に張力差があっても、各固縛装置30が個別に伸長して、全ての固縛装置30の張力が均等になる。
これ以降は全ての固縛装置30が同調して機能するので、固縛装置30が連鎖的に破損することを回避できる。
全ての固縛装置30〜30が協働して突風エネルギーの減衰機能を最大限発揮することができる。
<2.2.3>固縛装置による固縛距離について
突風エネルギーの減衰機能と、固縛移動機能を具備しない従来の固縛装置に弛みを持たせて連結した場合の固縛距離は、固縛装置が伸びきった時点での不変距離であり、受撃前に設定した特定の固縛距離に制限される。
これに対して本発明に係る固縛装置30の固縛距離は突風エネルギーを受けることで伸長する可変距離であって、受撃前の固縛距離に制限されない。
しかもその最大伸長距離は受撃前に任意に設定することができる。
本発明は、従来と比べて、固縛装置30の負担張力が小さくて済むだけでなく、衝撃も緩和できて、最終的に固縛機能を喪失することがない。
[他の実施例]
以上は飛来物源10の本体に固縛装置30を直接的に連結する形態について説明したが、飛来物源10の一部に取り付けた別途の押えロープを介して、固縛装置30を間接的に連結してもよい。
また以上は飛来物源10が車両である場合について説明したが、飛来物源10が車輪を持たないコンテナである場合は、コンテナ側面の所定の高さに連結部11を設けて、先の実施例と同様に複数の固縛装置30を使用して固縛することができる。
10・・・・・飛来物源
11・・・・・飛来物源の連結部
20・・・・・支持基礎
21・・・・・係留片
30・・・・・固縛装置
31・・・・・係留材
31a・・・・掛止素子
31b・・・・余長部
32・・・・・張力減衰装置
32a・・・・拡張部
32b・・・・拘束板
32c・・・・仕切板
32d・・・・締付ボルト

Claims (8)

  1. 飛来物源と、飛来物源の周囲に設けた単数または複数の支持基礎と、飛来物源と支持基礎との間に配置した複数の固縛装置とを具備し、固縛装置の両端を飛来物源と支持基礎の係留片に連結し、突風発生時に固縛装置が伸長して飛来物源の滑動を許容して支持基礎に繋ぎ留める飛来物源の固縛構造であって、
    前記飛来物源は車両であり、
    前記車両を構成する車体の一部に設けた連結部と支持基礎の繋留片との間に固縛装置を配設し、
    前記固縛装置が突風エネルギーの減衰機能と固縛移動機能を有し、
    前記固縛装置の一部に一定以上の張力が作用して車両に滑動を生じたときに、固縛装置が突風エネルギーの減衰機能を発揮して車両を急停止させずに車両の加速度を減速することを特徴とする、
    飛来物源の固縛構造。
  2. 前記固縛装置は、車両と支持基礎の間に配設した単数または複数の係留材と、係留材に配設した単数または複数の張力減衰装置とを具備し、前記固縛装置に一定以上の張力が作用すると、固縛装置の全長が伸長可能であることを特徴とする、請求項1に記載の飛来物源の固縛構造。
  3. 前記固縛装置の最大伸長距離は想定される車両の最大移動距離よりも長い寸法関係にあることを特徴とする、請求項1または2に記載の飛来物源の固縛構造。
  4. 車両のひとつの連結部から延びる複数の固縛装置を複数の支持基礎の係留片に分散して連結したことを特徴とする、請求項1または2に記載の飛来物源の固縛構造。
  5. 支持基礎のひとつの係留片を複数の固縛装置に共有させて連結したことを特徴とする、請求項1または2に記載の飛来物源の固縛構造。
  6. 車両の連結部と支持基礎の係留片との間に予め多少の弛みを持たせて固縛装置を連結したことを特徴とする、請求項1乃至5の何れか一項に記載の飛来物源の固縛構造。
  7. 車両の連結部と支持基礎の係留片との間に予め固縛装置を緊張状態で連結したことを特徴とする、請求項1乃至5の何れか一項に記載の飛来物源の固縛構造。
  8. 前記張力減衰装置が、摩擦摺動式、塑性変形式またはダンパー式の何れかひとつ、または複数の組み合わせであることを特徴とする、請求項2に記載の飛来物源の固縛構造。
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