本発明の説明
本発明は、以下を含むか、以下から本質的になる特定のポリペプチドに関し、これはまた「本発明のポリペプチド」としても言及される:(i)第1の免疫グロブリン単一可変ドメインから本質的になる第1のビルディングブロック、ここで、前記第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、細胞の表面上の第1の標的、好ましくはHIV受容体、例えばCD4に結合する;および(ii)第2の免疫グロブリン単一可変ドメインから本質的になる第2のビルディングブロック、ここで、前記第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、細胞の表面上の第2の標的、好ましくはHIV共受容体(CR)に結合し、およびここで、前記CRは、CD4ではない。
a)別様に指示または定義されない限り、用いられる全ての用語は当分野におけるそれらの通常の意味を有し、それらは当業者には明白であろう。例えばWO08/020079の46ページのパラグラフa)に挙げられている標準的なハンドブックが参照される。
b)別様に指示されない限り、用語「免疫グロブリン単一可変ドメイン」または「ISV」は、抗原結合ドメインまたは断片(例えば、それぞれVHHドメインまたはVHもしくはVLドメイン)を包含するが、これに限定されない一般的な用語として用いられる。用語抗原結合分子または抗原結合蛋白質は交換可能に用いられ、用語ナノボディをもまた包含する。免疫グロブリン単一可変ドメインは軽鎖可変ドメイン配列(例えばVL配列)または重鎖可変ドメイン配列(例えばVH配列)であり得る。より具体的には、それらは、重鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列または従来の4鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列であり得る。従って、免疫グロブリン単一可変ドメインは、ドメイン抗体、もしくはドメイン抗体としての使用にとって好適な免疫グロブリン配列、単一ドメイン抗体、もしくは単一ドメイン抗体としての使用にとって好適な免疫グロブリン配列、「dAb」、もしくはdAbとしての使用にとって好適な免疫グロブリン配列、またはナノボディ(VHH配列を包含するが、これに限定されない)、ならびにヒト化VHH配列およびラクダ化VH配列であり得る。本発明は異なる起源の免疫グロブリン配列を包含し、マウス、ラット、ウサギ、ロバ、ヒト、およびラクダ類免疫グロブリン配列を含む。免疫グロブリン単一可変ドメインは、完全にヒト、ヒト化、別様の配列最適化またはキメラ免疫グロブリン配列を包含する。免疫グロブリン単一可変ドメインの免疫グロブリン単一可変ドメインおよび構造は、4つのフレームワーク領域または「FR」からなると考えられ(しかしながらこれに限定されない)、それらは当分野および本明細書においてそれぞれ「フレームワーク領域1」または「FR1」、「フレームワーク領域2」または「FR2」、「フレームワーク領域3」または「FR3」、「フレームワーク領域4」または「FR4」と言われる。フレームワーク領域は3つの相補性決定(complementary determining)領域または「CDR」によって分断されており、それらは当分野においてそれぞれ「相補性決定領域1」または「CDR1」、「相補性決定領域2」または「CDR2」、「相補性決定領域3」または「CDR3」と言われる。用語ナノボディ(Nanobody)またはナノボディ(Nanobodies)はAblynx N.V.の登録商標であり、それゆえに、それぞれナノボディ(登録商標)(Nanobody)またはナノボディ(登録商標)(Nanobodies)ともまた言われ得るということが注意される。
c)別様に指示されない限り、用語「免疫グロブリン配列」、「配列」、「ヌクレオチド配列」、および「核酸」は、WO08/020079の46ページのパラグラフb)に記載されている通りである。
d)別様に指示されない限り、詳細に具体的に記載されない全ての方法、ステップ、テクニック、およびマニピュレーションは、自体公知のやり方で実施され得、且つ実施された。これは当業者には明白であろう。例えば、標準的なハンドブックおよび本明細書において挙げられる一般的な背景技術、ならびにそこに引用された参照、さらには例えば以下の総説が再び参照される。Presta, Adv. Drug Deliv. Rev. 2006, 58 (5-6): 640-56; Levin and Weiss, Mol. Biosyst. 2006, 2(1): 49-57; Irving et al., J. Immunol. Methods, 2001, 248(1-2), 31-45; Schmitz et al., Placenta, 2000, 21 Suppl. A, S106-12, Gonzales et al., Tumour Biol., 2005, 26(1), 31-43。これは蛋白質操作のためのテクニック(例えば、免疫グロブリンなどの蛋白質の特異性および他の望まれる特性を改善するための親和性成熟および他のテクニック)を記載している。
e)アミノ酸残基は、標準的な3文字または1文字アミノ酸コードに従って指示される。「Immunoglobulin single variable domains directed against IL-6R and polypeptides comprising the same for the treatment of diseases and disorders associated with Il-6-mediated signalling」と題するAblynx N.V.の国際出願WO08/020079の48ページの表A−2が参照される。
f)2つまたは3つ以上のヌクレオチド配列を比較する目的のために、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間の「配列同一性」のパーセンテージが、WO08/020079の49ページのパラグラフe)に記載されている通り計算および決定され得る(参照によって本明細書に組み込まれる)。これは例えば、[第2のヌクレオチド配列中の対応する位置のヌクレオチドと同一である第1のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの数]を[第1のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの合計数]によって除算し、[100%]によって乗算することにより、第1のヌクレオチド配列と比較して第2のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの各欠失、挿入、置換、または追加は単一のヌクレオチド(位置)における違いと考えられる。または、再びWO08/020079の49ページのパラグラフe)に記載されている通り(参照によって本明細書に組み込まれる)、好適なコンピューターアルゴリズムまたはテクニックを用いることによる。
g)2つまたは3つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインまたは他のアミノ酸配列(例えば本発明のポリペプチドなど)を比較する目的のためには、第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列との間の「配列同一性」のパーセンテージ(本明細書においては「アミノ酸同一性」ともまた言われる)が、WO08/020079の49および50ページのパラグラフf)に記載されている通り計算または決定され得る(参照によって本明細書に組み込まれる)。これは例えば、[第2のアミノ酸配列中の対応する位置のアミノ酸残基と同一である第1のアミノ酸配列中のアミノ酸残基の数]を[第1のアミノ酸配列のアミノ酸残基の合計数]によって除算して、[100%]によって乗算することにより、第1のアミノ酸配列と比較して第2のアミノ酸配列中のアミノ酸残基の各欠失、挿入、置換、または追加は、単一のアミノ酸残基(位置)における違い、すなわち本明細書において定義される「アミノ酸の違い」と考えられる。または、再びWO08/020079の49および50ページのパラグラフf)に記載されている通り(参照によって本明細書に組み込まれる)、好適なコンピューターアルゴリズムまたはテクニックを用いることによる。
2つの免疫グロブリン単一可変ドメイン間の配列同一性の程度を決定することにおいて、当業者は、WO08/020079の50ページに記載されている通りいわゆる「保存的な」アミノ酸置換をもまた考慮に入れ得る。
本明細書に記載されるポリペプチドに応用されるいずれかのアミノ酸置換は、異なる種の相同蛋白質間のアミノ酸バリエーションの頻度の分析(Schulz et al., Principles of Protein Structure, Springer-Verlag, 1978によって開発された)、構造形成能の分析(Chou and Fasman, Biochemistry 13: 211, 1974 および Adv. Enzymol., 47: 45-149, 1978によって開発された)、および蛋白質の疎水性パターンの分析(Eisenberg et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 140-144, 1984; Kyte & Doolittle; J Molec. Biol. 157: 105-132, 198 1, および Goldman et al., Ann. Rev. Biophys. Chem. 15: 321-353, 1986によって開発された)にもまた基づき得る(全て、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。ナノボディの一次、二次、および三次構造の情報は、本明細書の説明および上で引用された一般的な背景技術において与えられる。この目的のためには、ラマからのVHHドメインの結晶構造もまた、例えばDesmyter et al., Nature Structural Biology, Vol. 3, 9, 803 (1996); Spinelli et al., Natural Structural Biology (1996); 3, 752-757; および Decanniere et al., Structure, Vol. 7, 4, 361 (1999)によって与えられる。従来のVHドメインにおいて、VH/VL境界面とそれらの位置におけるあり得るラクダ化置換とを形成するアミノ酸残基のいくつかのさらなる情報は、上で引用された従来技術に見いだされ得る。
h)免疫グロブリン単一可変ドメインおよび核酸配列は、それらが100%の配列同一性(本明細書において定義される通り)をそれらの全長に渡って有する場合に、「正確に同じ」と言われる。
i)2つの免疫グロブリン単一可変ドメインを比較するときに、用語「アミノ酸の違い」は、第2の配列と比較して第1の配列のある位置の単一のアミノ酸残基の挿入、欠失、または置換を言う。2つの免疫グロブリン単一可変ドメインが1つ、2つ、または3つ以上のかかるアミノ酸の違いを含有し得るということは理解される。
j)ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列が、それぞれ別のヌクレオチド配列もしくはアミノ酸配列「を含む」または別のヌクレオチド配列もしくはアミノ酸配列「から本質的になる」と言われるときには、これはWO08/020079の51〜52ページのパラグラフi)において与えられる意味を有する。
文脈が明らかに他を要求しない限り、説明および請求の範囲全体にわたり、単語「含む(comprise)」、「comprising」などは、排他的または網羅的な意味とは反対の包括的な意味において解釈されるべきである;これは、言わば、「〜を含むが、これらに限定されない」の意味である。
k)用語「本質的に単離された形態で」はWO08/020079の52および53ページのパラグラフj)においてそれに与えられる意味を有する。
l)用語「ドメイン」および「結合ドメイン」は、WO08/020079の53ページのパラグラフk)においてそれに与えられる意味を有する。
m)用語「抗原決定基」および「エピトープ」は、本明細書において交換可能にもまた用いられ得、WO08/020079の53ページのパラグラフl)においてそれに与えられる意味を有する。
n)WO08/020079の53ページのパラグラフm)にさらに記載されている通り、具体的な抗原決定基、エピトープ、抗原、または蛋白質(または、その少なくとも1つのパーツ、断片、もしくはエピトープ)に対して(特異的に)結合し得る、親和性を有する、および/または特異性を有するアミノ酸配列(例えば、抗体、本発明のポリペプチド、または一般的に抗原結合蛋白質もしくはポリペプチド、あるいはその断片)は、その抗原決定基、エピトープ、抗原、または蛋白質「に対する(against)」または「に対する(directed against)」と言われる。
o)用語「特異性」は、特定の抗原結合分子または抗原結合蛋白質(例えば、本発明のISV、ナノボディ、またはポリペプチドなど)分子が結合し得る抗原または抗原決定基の異なる型の数を言う。抗原結合蛋白質の特異性は親和性および/またはアビディティに基づいて決定され得る。
親和性は、抗原結合蛋白質との抗原の解離の平衡定数によってあらわされ(KDまたはKD)、抗原決定基(すなわち標的)と抗原結合蛋白質(すなわちISVまたはナノボディ)上の抗原結合部位との間の結合の強さの尺度である。KDの値が小さいほど、抗原決定基と抗原結合分子との間の結合の強さは強くなる(代替的に、親和性は親和性定数(KA)としてもまた表され得、これは1/KDである)。当業者には明白であろう通り(例えば、本明細書のさらなる開示に基づいて)、親和性は、興味ある具体的な抗原に依存して自体公知のやり方で決定され得る。
アビディティはポリペプチドの親和性である。すなわち、リガンドは2つの(または3つ以上の)ファーマコフォア(ISV)によって結合する能力があり、その複数の相互作用が相乗作用して「見かけ上の」親和性を向上させる。アビディティは、本発明のポリペプチドと適合する抗原との間の結合の強さの尺度である。本発明のポリペプチドは、その2つの(または3つ以上の)ビルディングブロック(例えば、ISVまたはナノボディ)を介して少なくとも2つの標的に結合する能力があり、複数の相互作用(例えば、第1の標的に対する第1のビルディングブロック、ISV、またはナノボディ結合、および第2の標的に対する第2のビルディングブロック、ISV、またはナノボディ結合)が相乗作用して「見かけ上の」親和性を向上させる。アビディティは、抗原決定基と抗原結合分子上のその抗原結合部位との間の親和性、および抗原結合分子上に存在する適合する結合部位の数両方に関係する。例えば、限定無しに、2つまたは3つ以上のビルディングブロック(例えば、細胞上の異なる標的に対する(特に、ヒトCXCR4およびヒトCD4に対する)ISVまたはナノボディ)を含有するポリペプチドは、本発明のポリペプチド中に含まれる個体の単量体または個体のビルディングブロック(例えば、一価ISVまたはナノボディなど)のそれぞれよりも高いアビディティで結合し得る(且つ、通常は結合するであろう)。
本発明において、一価の抗原結合蛋白質(例えば、ビルディングブロックである、本発明のISV、アミノ酸配列、ナノボディ、および/またはポリペプチド)は、解離定数(KD)が10−9〜10−12モル/リットルまたはそれより小さい、好ましくは10−10〜10−12モル/リットルまたはそれより小さい、より好ましくは10−11〜10−12モル/リットルである(すなわち、109〜1012リットル/モルまたはそれより大きい、好ましくは1010〜1012リットル/モルまたはそれより大きい、より好ましくは1011〜1012リットル/モルの会合定数(KA)を有する)ときに、高親和性でそれらの抗原に結合すると言われる。
本発明において、一価抗原結合蛋白質(例えば、ビルディングブロックである、本発明のISV、アミノ酸配列、ナノボディおよび/またはポリペプチド)は、解離定数(KD)が10−6〜10−9モル/リットルまたはそれより大きい、好ましくは10−6〜10−8モル/リットルまたはそれより大きい、より好ましくは10−6〜10−7モル/リットルである(すなわち、106〜109リットル/モルまたはそれより大きい、好ましくは106〜108リットル/モルまたはそれより大きい、より好ましくは106〜107リットル/モルの会合定数(KA)を有する)ときに、低親和性でそれらの抗原に結合すると言われる。
中度の親和性は、高〜低、例えば10−10〜10−8モル/リットルに渡る値として定義され得る。
10−4モル/リットルよりも大きいいずれかのKD値(または、104リットル/モルよりも低いいずれかのKA値)は、非特異的結合を指示すると一般的に考えられる。
本発明のポリペプチドは、第1および第2のビルディングブロック、例えば第1および第2のISVまたは第1および第2のナノボディを含む。好ましくは、各ビルディングブロック(例えばISVまたはナノボディ)の親和性は個体的に決定される。換言すると、親和性は、一価ビルディングブロック、ISV、またはナノボディについて、もう一方のビルディングブロック、ISV、またはナノボディ(これは存在し得るか、または存在せずにあり得る)を原因とするアビディティ効果とは独立して決定される。一価ビルディングブロック、ISV、またはナノボディの親和性は、一価ビルディングブロック、ISV、またはナノボディそのものによって(すなわち、その一価ビルディングブロック、ISV、またはナノボディが本発明のポリペプチド中に含まれていないときに)決定され得る。代替的にまたは加えて、一価ビルディングブロック、ISV、またはナノボディについての親和性は、もう一方の標的が不在である間に1つの標的に対して決定され得る。
抗原または抗原決定基への抗原結合蛋白質の結合は、自体公知のいずれかの好適なやり方で決定され得、例えばスキャッチャード分析および/または競合結合アッセイ、例えば放射性免疫アッセイ(RIA)、酵素免疫アッセイ(EIA)、およびサンドイッチ競合アッセイ、および当分野において自体公知のその異なるバリアント、さらには本明細書において挙げられる他のテクニックを包含する。
解離定数は実際のまたは見かけ上の解離定数であり得、これは当業者には明白であろう。解離定数を決定するための方法は当業者には明白であろう。例えば、本明細書において挙げられるテクニックを包含する。これに関して、10−4モル/リットルまたは10−3モル/リットルより大きい(例えば、10−2モル/リットル)の解離定数を測定することが可能でなくあり得るということもまた明白であろう。任意で、これもまた当業者には明白であろう通り、(実際のまたは見かけ上の)解離定数は関係[KD=1/KA]によって(実際のまたは見かけ上の)会合定数(KA)に基づいて計算され得る。
親和性は、分子間相互作用の強さまたは安定性を表す。親和性は普通にはKD(または解離定数)として与えられ、これはモル/リットル(またはM)の単位を有する。親和性は会合定数KAとしてもまた表され得、これは1/KDに等しく、(モル/リットル)−1(またはM−1)の単位を有する。本明細書において、2つの分子(例えば、本発明のアミノ酸配列、例えばナノボディなどのISV、またはポリペプチドおよびその意図される標的)間の相互作用の安定性は、主にそれらの相互作用のKD値によって表される。関係KA=1/KDから判断して、そのKD値によって分子間相互作用の強さを規定することは、対応するKA値を計算するためにもまた用いられ得るということは当業者には明白である。KD値は、分子間相互作用の強さを熱力学的意味でもまたキャラクタリゼーションする。なぜなら、それは周知の関係DG=RT.ln(KD)(同等に、DG=−RT.ln(KA))による結合の自由エネルギー(DG)に関係しているからである。式中、Rは気体定数に等しく、Tは絶対温度に等しく、lnは自然対数を表す。
意味がある(例えば特異的)と考えられる生物学的相互作用についてのKDは、典型的には10−10M(0.1nM)〜10−5M(10000nM)の範囲である。相互作用が強いほど、そのKDは低くなる。
KDは、複合体の解離速度定数(koffと表される)対その結合の速度(konと表される)の比としてもまた表され得る(その結果、KD=koff/kon且つKA=kon/koff)。off速度koffは単位s−1を有する(sは秒のSI単位表記である)。on速度konは単位M−1s−1を有する。on速度は102M−1s−1〜約107M−1s−1の間で変わり得、二分子間相互作用の拡散律速結合速度定数に近づく。off速度は関係t1/2=ln(2)/koffによって所与の分子間相互作用の半減期に関係付けられる。off速度は10−6s−1(複数日のt1/2を有する不可逆的に近い複合体)〜1s−1(t1/2=0.69s)の間で変わり得る。
2分子間の分子間相互作用の親和性は、自体公知の異なるテクニック、例えば周知の表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサーテクニックによって測定され得る(例えばOber et al., Intern. Immunology, 13, 1551-1559, 2001参照)。用語「表面プラズモン共鳴」は、本明細書において用いられる場合、バイオセンサーマトリックス中の蛋白質濃度の変化の検出によってリアルタイムの生物特異的相互作用の分析を許す光学現象を言う。そこでは、1つの分子がバイオセンサーチップ上に固定化され、もう一方の分子は流動条件下で固定化された分子上を通過させられて、kon、koff測定、ゆえにKD(またはKA)値を産する。これは、例えば周知のBIACORE(登録商標)システムを用いて実施され得る(BIAcore International AB, a GE Healthcare company, Uppsala, Sweden and Piscataway, NJ)。さらなる説明については、Jonsson, U., et al. (1993) Ann. Biol. Clin. 51:19-26; Jonsson, U., et al. (1991) Biotechniques 11:620-627; Johnsson, B., et al. (1995) J Mol. Recognit. 8:125-131; および Johnnson, B., et al. (1991) Anal. Biochem. 198:268-277参照。
測定プロセスが、例えば1つの分子のバイオセンサー上のコーティングに関係するアーティファクトによって、対象分子の本来の結合親和性に何か影響する場合に、測定されるKDが見かけ上のKDに対応し得るということもまた当業者には明白であろう。見かけ上のKDは、1つの分子がもう一方の分子に対する1より多い認識部位を含有する場合にもまた測定され得る。かかる状況では、測定される親和性は、2分子による相互作用のアビディティによって影響され得る。
親和性を評価するために用いられ得る別の手法は、Friguet et al.の2ステップELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)法である(J. Immunol. Methods, 77, 305-19, 1985)。この方法は溶液相結合平衡測定を確立し、プラスチックなどの支持体上の分子の1つの吸着に関係する可能なアーティファクトを回避する。
しかしながら、KDの精密な測定は極めて労働集約型であり得、帰結として、多くの場合には見かけ上のKD値が決定されて、2つの分子の結合の強さを評価する。全ての測定が一貫した仕方で行われる(例えば、アッセイ条件を不変に保つ)限り、見かけ上のKD測定は真のKDの近似として用いられ得、ゆえに本文書においては、KDおよび見かけ上のKDは等しい重要性または妥当性で扱われるということが注意されるべきである。
最後に、多くの状況において、熟練した科学者は、何らかの参照分子と相対的に結合親和性を決定することを便利だと判断し得るということが注意される。例えば、分子AおよびB間の結合の強さを評価するために、例えば、Bに結合することが公知であり、且つELISAもしくはFACS(蛍光活性化セルソーティング)または他のフォーマット(蛍光検出のためのフルオロフォア、吸光検出のためのクロモフォア、ストレプトアビジンによって媒介されるELISA検出のためのビオチン)における容易な検出のためのフルオロフォアもしくはクロモフォア基または他の化学部分(例えばビオチン)によって好適に標識される参照分子Cを用い得る。典型的には、参照分子Cは固定濃度に保たれ、Aの濃度がBの所与の濃度または量に対して変えられる。結果として、IC50値が得られ、Aの不在下でCについて測定されたシグナルが半減するAの濃度に対応する。KDref(参照分子のKD)、さらには参照分子の合計濃度Crefが既知である場合には、相互作用A−Bについての見かけ上のKDは以下の式から得られる。KD=IC50/(1+Cref/KDref)。Cref<<KDrefである場合には、KD≒IC50であるということに注意。IC50の測定が、比較される結合因子について一貫した方法で(例えばCrefを固定したままにして)実施される場合には、分子間相互作用の強さまたは安定性はIC50によって評価され得、この測定は本書においてKDまたは見かけ上のKDと同等だと判断される。
p)本発明のアミノ酸配列、化合物、またはポリペプチドの半減期は、WO08/020079の57ページのパラグラフo)に記載されている通りに一般的には定義され得、そこに挙げられている通り、アミノ酸配列、化合物、またはポリペプチドの血清中濃度がインビボで50%低減するためにかかる時間を言う(これは例えば、配列もしくは化合物の分解および/または天然のメカニズムによる配列もしくは化合物のクリアランスもしくは隔離(sequestration)を原因とする)。本発明のアミノ酸配列、化合物、またはポリペプチドのインビボ半減期は、自体公知のいずれかのやり方、例えば薬物動態分析によって決定され得る。好適なテクニックは当業者には明白であろう。例えば一般的に、WO08/020079の57ページのパラグラフo)に記載されている通りであり得る。これもまたWO08/020079の57ページのパラグラフo)に挙げられている通り、半減期はt1/2アルファ、t1/2ベータ、および曲線下面積(AUC)などのパラメータを用いて表され得る。下の実験の部、さらには標準的なハンドブック、例えばKenneth, A et al.: Chemical Stability of Pharmaceuticals: A Handbook for Pharmacists および Peters et al.: Pharmacokinetc analysis: A Practical Approach (1996)が参照される。「Pharmacokinetics」, M Gibaldi & D Perron, published by Marcel Dekker, 2nd Rev. edition (1982)もまた参照される。用語「半減期の増大」または「増大した半減期」もまた、WO08/020079の57ページのパラグラフo)において定義される通りであり、特にt1/2ベータの増大を言い、t1/2アルファおよび/もしくはAUCまたは両方の増大有りまたは無しのいずれかである。
q)標的または抗原に関して、標的または抗原上の用語「相互作用部位」は、リガンド、受容体、もしくは他の結合パートナーとの結合の部位である標的もしくは抗原上の部位、エピトープ、抗原決定基、パーツ、ドメイン、もしくはアミノ酸残基のストレッチ、標的もしくは抗原の触媒部位、切断部位、アロステリック相互作用のための部位、多量体化に関わる部位(例えば、ホモマー化またはへテロ二量体化)、または、標的もしくは抗原の生物学的作用もしくはメカニズムに関わる標的もしくは抗原上のいずれかの他の部位、エピトープ、抗原決定基、パーツ、ドメイン、もしくはアミノ酸残基のストレッチを意味する。より一般的に、「相互作用部位」は、本発明のアミノ酸配列またはポリペプチドが結合し得る標的または抗原上のいずれかの部位、エピトープ、抗原決定基、パーツ、ドメイン、またはアミノ酸残基のストレッチであり得、その結果、標的または抗原(および/または、標的または抗原が関わるいずれかの経路、相互作用、シグナル伝達、生物学的メカニズムまたは生物学的効果)が調節される(本明細書において定義される通り)。
r)免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドは、そのアミノ酸配列またはポリペプチドが第2の標的またはポリペプチドに結合する親和性よりも少なくとも10倍、例えば少なくとも100倍、好ましくは少なくとも1000倍、10000倍以上まで良好である親和性/アビディティ(上に記載された通り、KD値、KA値、Koff速度および/またはKon速度として好適に表される)で第1の抗原に結合するときに、第2の標的または抗原と比較して第1の標的または抗原「に特異的」であると言われる。例えば、第1の抗原は、そのアミノ酸配列またはポリペプチドが第2の標的またはポリペプチドに結合するKDよりも少なくとも10倍小さい、例えば少なくとも100倍小さい、好ましくは少なくとも1000倍小さい、例えば10000倍小さい、またはさらにそれよりも小さいKD値で標的または抗原に結合し得る。好ましくは、免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドが第2の標的または抗原と比較して第1の標的または抗原「に特異的」であるときには、それは(本明細書において定義される通り)その第1の標的または抗原に対するものであるが、その第2の標的または抗原に対するものではない。
s)用語「クロスブロックする(cross-block)」、「クロスブロックされる」、および「クロスブロック」は、本明細書において交換可能に用いられて、免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドが、その受容体(単数または複数)への天然リガンドの結合と干渉する能力を意味する。本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドが、その標的(例えばCXCR4)への別の化合物(例えば天然リガンド)の結合と干渉する能力がある度合と、そのため本発明に従ってクロスブロックすると言われ得るかどうかとは、競合結合アッセイを用いて決定され得る。1つの特に好適な定量的なクロスブロックアッセイは、FACSもしくはELISAに基づく手法またはALPHASCREEN(登録商標)を用いて、本発明に従う標識された(例えば、Hisタグ付けまたはビオチン化された)免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドともう一方の結合薬剤との間の競合を、標的へのそれらの結合に関して測定する。実験の部は、結合分子が、本発明に従う免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドをクロスブロックするかまたはクロスブロックできるかどうかを決定するための、好適なFACS、ELISA、またはALPHASCREEN(登録商標)の置換に基づくアッセイを一般的に記載している。アッセイが、免疫グロブリン単一可変ドメインまたは本明細書に記載される他の結合薬剤のいずれかに用いられ得るということは認められるであろう。それゆえに、一般的に、本発明に従うクロスブロックアミノ酸配列または他の結合薬剤は、例えば、上のクロスブロックアッセイにおいて標的に結合し、その結果、アッセイ中に本発明の第2のアミノ酸配列または他の結合薬剤の存在下で、本発明に従う免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドの記録される置換が、0.01mMまたはそれより小さい量で存在する試験されるべき可能性としてのクロスブロック薬剤による最大の理論上の置換(例えば、クロスブロックされる必要があるコールドな(例えば未標識の)免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドによる置換)の60%〜100%(例えば、ELISA/ALPHASCREEN(登録商標)に基づく競合アッセイにおいて)または80%〜100%(例えば、FACSに基づく競合アッセイにおいて)であるものである(クロスブロック薬剤は、別の従来のモノクローナル抗体、例えばIgG、古典的な一価抗体断片(Fab、scFv))、および操作されたバリアント(例えば、ダイアボディ、トライアボディ(triabody)、ミニボディ、VHH、dAb、VH、VL)であり得る。
t)アミノ酸配列(例えば、本発明に従う免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドなど)は、そのVHH1型免疫グロブリン単一可変ドメインまたはVHH1型配列が85%の同一性(VHH1コンセンサス配列をクエリ配列として用い、blastアルゴリズムを標準的な設定、すなわちblosom62スコアマトリックスで用いる)をVHH1コンセンサス配列(QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTLDYYAIGWFRQAPGKEREGVSCISSSDGSTYYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAA)に対して有し、且つ位置50のシステイン、すなわちC50を必ず有する場合には(Kabatの番号付けを用いる)、「VHH1型免疫グロブリン単一可変ドメイン」または「VHH1型配列」と言われる。
u)アミノ酸配列(例えば、本発明に従う免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドなど)は、それらの異なる抗原または抗原決定基両方に(本明細書において定義される通り)特異的である場合には、2つの異なる抗原または抗原決定基(例えば、哺乳動物の2つの異なる種からの血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミンおよびカニクイザル血清アルブミン)にとって「交叉反応性」であると言われる。
v)WO08/020079の58および59ページのパラグラフq)にさらに記載されている通り(参照によって本明細書に組み込まれる)、免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ酸残基は、Kabat et al.(「Sequence of proteins of immunological interest」US Public Health Services, NIH Bethesda, MD, Publication No. 91)によって与えられるVHドメインのための一般的な番号付けに従って番号付けされる。これは、Riechmann and Muyldermans, J. Immunol. Methods 2000 Jun 23; 240 (1-2): 185-195の論文においてラクダ類からのVHHドメインに応用されている(例えば、この発表の図2参照)。従って、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR1は位置1〜30のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR1は位置31〜35のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR2は位置36〜49のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR2は位置50〜65のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR3は位置66〜94のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR3は位置95〜102のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR4は位置103〜113のアミノ酸残基を含む。
w)図面、配列リスト、および実験の部/実施例は、本発明をさらに例示するためにのみ与えられており、本明細書において別様にはっきりと指示されない限り、本発明および/または添付の請求項の範囲を限定するものとは決して言い換えまたは解釈されるべきではない。
x)半数阻害濃度(IC50)は、生物学的または生化学的機能(例えば薬理効果)を阻害することにおける化合物の有効度の尺度である。この定量的尺度は、どれくらいのISVまたはナノボディ(阻害剤)が所与の生物学的プロセス(または、プロセスの構成要素、すなわち酵素、細胞、細胞受容体、走化性、HIV侵入、HIV複製、HIV逆転写酵素活性など)を半分阻害するために必要とされるのかを指示する。換言すると、物質の半数(50%)阻害濃度(IC)である(50%ICまたはIC50)。薬物のIC50は、用量反応曲線を構築し、アゴニスト活性を逆転させることに及ぼすアンタゴニスト(例えば、本発明のISVまたはナノボディ)の異なる濃度の効果を調べることによって決定され得る。IC50値は、アゴニストの最大の生物学的応答の半分を阻害するために必要とされる濃度を決定することによって、所与のアンタゴニスト(例えば、本発明のISVまたはナノボディ)について計算され得る。
用語半数効果濃度(EC50)は、規定の暴露時間後にベースラインと最大との間の中間の応答を誘導する化合物の濃度を言う。本文脈では、ポリペプチドの、ISVの、またはナノボディの力価の尺度として用いられる。段階的用量反応曲線のEC50は、その最大効果の50%が観察される化合物の濃度をあらわす。濃度は好ましくはモル単位で表される。
生体システムにおいて、リガンド濃度の小さい変化は、シグモイド関数に従って応答の急速な変化を典型的にはもたらす。増大するリガンド濃度による応答の増大がゆっくりになり始める変曲点がEC50である。これはベストフィット直線の導分によって数学的に決定され得る。推定のためにグラフに頼ることはたいていの場合に便利である。EC50が実験の項において提供される場合には、実験は、可能な限り精密なKDを反映するように設計された。そこで、換言すると、EC50値はKD値として考えられ得る。用語「平均KD」は、少なくとも1であるが、好ましくは1より大きい、例えば少なくとも2つの実験において得られた平均KD値に関する。用語「平均」は数学用語「平均」を言う(データ中の項目数によって除算されたデータの合計)。
これは、化合物の阻害(50%阻害)の尺度であるIC50にもまた関係する。競合結合アッセイおよび機能アンタゴニストアッセイについては、IC50は用量反応曲線の最も普通の要約尺度である。アゴニスト/刺激因子アッセイについて、最も普通の要約尺度はEC50である。
様々なクラスの小分子阻害剤による相乗的なHIV感染の阻害が知られている。一般的に、これらの阻害剤は、ウイルス由来成分に対して指向されているが、ヒト受容体(CD4)および共受容体などのHIV感染に関与する細胞宿主成分に対してはあまり指向されていない。本発明者らは、共受容体(CR)および受容体CD4に対して指向された二重特異性ポリペプチドによる結合は、HIV感染を阻害することにおいて2つの結合部分の相乗作用をもたらすことを示した(例4を参照)。驚くべきことに、二重特異性ポリペプチドは、例外的に、2つの個々の部分の組み合わせより効果的であった(例8を参照)。
本発明は、(i)第1の免疫グロブリン単一可変ドメインから本質的になる第1のビルディングブロックからなる、「本発明のポリペプチド」、「二重特異性ポリペプチド」、「二重特異性構築物」または「二重特異性ナノボディ構築物」とも称される特定のポリペプチドに関し、ここで、前記第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、細胞の表面上の第1の標的、HIV受容体、例えばCD4に結合し;および(ii)第2の免疫グロブリン単一可変ドメインから本質的になる第2のビルディングブロック、ここで、前記第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、細胞の表面上の第2の標的、好ましくはHIV共受容体に結合し、およびここで、前記CRは、CD4ではない。
2つ以上の剤の間の「相乗作用」は、当該剤の組み合わせ効果であって、それらの相加効果よりも大きいものを指す。説明として、剤は、ペプチド、タンパク質、たとえば抗体、小分子、有機化合物、およびこれらの薬物形態であってよい。剤の間の相乗的、相加的または拮抗的な効果は、組み合わせ指標(CI)法を用いる用量応答曲線の分析により定量することができる。1より高いCI値は、拮抗作用を示す;1と等しいCI値は、相加効果を示す;1より低いCI値は、相乗効果を示す。一態様において、相乗的な相互作用のCI値は0.9未満である。別の態様において、CI値は0.8未満である。好ましい態様において、CI値は0.7未満である(例4およびChou and Talalay, 1984を参照;これは、本明細書において参考として援用される)。用語アンタゴニストは、当該分野において周知である。本質的には、用語アンタゴニストは、ある作用に対して作用し、これを遮断する物質に関する。例えば、アンタゴニストは、それらのコグネートな受容体に対して親和性を有するが、これに対して効力は有さず、結合は相互作用を妨害し、受容体におけるアゴニストまたはインバースアゴニストの機能を阻害する。
「HIV」は、ヒト免疫不全ウイルスを指す。HIVは、限定することなく、HIV-1およびHIV-2を含むであろう。HIV-1は、限定されないが、細胞外ウイルス粒子およびHIV-1感染細胞と関連するHIV-1の形態を含む。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、2つの既知の型のHIV(HIV-1またはHIV-2)のいずれかであってよい。HIV-1ウイルスは、既知の主要なサブタイプ(クラスA、B、C、D、E、F、G、HまたはJ)、腫瘍でないサブタイプ(群O)、またはHIV-1の未決定のサブタイプのいずれかを表し得る。HIV-1 JRFLは、元々、AIDS患者の脳組織からの剖検において単離された株である。ウイルスはクローニングされており、その外被糖タンパク質のDNA配列は公知である(GenBank受入番号U63632)。ウイルス侵入の阻害剤に対する感受性に関して、HIV-1 JFRLは、初代のHIV-1単離株を高度に代表するものであることが知られている。「JRCSF」は、サブタイプBのHIV-1単離株を指す。JRCSFは、元々、AIDS患者の脳脊髄液および脳組織から単離された株である(Science 236, 819-822, 1987)。ウイルスはクローニングされており、そのゲノムDNA配列は公知である(GenBank受入番号M38429)。HIV単離株JRFLとは異なり、JRCSFは、マクロファージに増殖的に感染しない。CXCR4を用いる(X4)HIV-1クローンNL4.3は、国立衛生研究所NIAID AIDS研究プログラム(Bethesda, MD)から得た。CCR5を用いる(R5)HIV-1株BaLは、医学研究会議(Medical Research Council)AIDS試薬プロジェクト(Herts, UK)から得た。両指向性(R5/X4)のHIV-1 HE株は、最初は、ルーベン大学病院(the University Hospital in Leuven)において患者から単離された。
本発明のポリペプチドは、HIV感染を阻害するように設計する。
用語「HIV感染」とは、感受性細胞へのHIVの侵入を指す。ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)による細胞の感染は、非共有結合的なオリゴマー複合体としてウイルスの表面およびウイルスに感染した細胞上に発現される、ウイルス外被(Env)糖タンパク質gp120およびgp41により媒介される。標的細胞中へのウイルスの侵入は、以下を含む細胞表面におけるイベントのカスケードを通して進行する:(1)HIV表面糖タンパク質gp120と細胞表面受容体CD4との間の高親和性相互作用(2)融合共受容体へのEnvの結合、および(3)ウイルスと細胞との膜の融合を媒介するウイルス膜貫通型糖タンパク質gp41における立体構造の変化。
本質的には、HIV感染を阻害することは、HIVの生活環における少なくとも1つの機能、好ましくは1つより多くの機能を阻害することに関する。これらの機能として、例えば、受容体CD4へのHIVの結合、共受容体へのHIVの結合、標的細胞へのHIVの侵入、HIVの複製、HIV逆転写酵素活性、HIVにより誘導される細胞死、および/またはHIVにより誘導される細胞−細胞シンシチウム形成が挙げられる。好ましくは、HIVの伝播が阻害される。HIV感染の阻害は、in vitroおよびin vivoの両方の多様な方法により測定することができる。好ましくは、HIV感染を阻害することにより、ウイルス負荷の減少または減少したウイルス負荷の維持がもたらされ、これは、および好ましくはHIVに感染した対象の医学的状態を寛解させることによる。用語「ウイルス負荷」とは、試料血液中のHIV粒子の量を指し、一般に、1mlあたりのコピー数として示される。例えば、100,000コピー/mlより高いウイルス負荷は、高いとみなされ、一方、10,000コピー/ml未満のウイルス負荷は、低いとみなされるであろう。好ましくは、ウイルス負荷は、検出不可能なレベル(<50コピー/ml)まで減少する。
阻害とは、本明細書において用いられる場合、完全なおよび部分的な阻害の両方を含む。したがって、本開示は、HIVのCD4および/または共受容体、例えば例えばCXCR4への結合を、1%より高く、2%より高く、5%より高く、10%より高く、20%より高く、30%より高く、40%より高く、50%より高く、60%より高く、70%より高く、80%より高く、90%より高く、または100%阻害まで阻害する、2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドを包含する。
本発明は、したがって、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記ポリペプチドは、HIV感染を、(HIV感染アッセイにおいて測定される場合に)約10%、20%、30%、40%、50%、60%、80%、90%、および好ましくは95%以上、例えば100%阻害する。
阻害はまた、HIVの50%が受容体または共受容体、例えばCXCR4への結合から疎外される阻害濃度として定義されるIC50(阻害濃度)において表すことができることが理解されるべきである。いくつかの態様において、2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドによるCD4または例えばCXCR4などの共受容体へのHIVの結合の阻害のIC50は、500μM未満、100μM未満、50μM未満、10μM未満、50μM未満、1μM未満、500nM未満、100nM未満、90nM未満、80nM未満、70nM未満、60nM未満、50nM未満、40nM未満、30nM未満、20nM未満、10nM未満、9nM未満、8nM未満、7nM未満、6nM未満、5nM未満、未満、4nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、100pM未満、50pM未満、10pM未満、5pM未満、4、3、2、1、0.5pM、またはさらにそれより低く、例えば0.4pM未満である。
いくつかの態様において、本発明のポリペプチドCD4および/または例えばCXCR4などの共受容体へのHIVの結合の阻害のIC50は、50nM未満である。いくつかの態様において、本発明のポリペプチドによるCD4および/または例えばCXCR4などの共受容体へのHIVの結合の阻害のIC50は、1nM未満である。いくつかの態様において、本発明のポリペプチドによるCD4および/または例えばCXCR4などの共受容体へのHIVの結合の阻害のIC50は、10pM未満である。
同様に、阻害はまた、EC50(上記を参照)により表すこともできる。したがって、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、HIV阻害の平均EC50値は、10nM〜0.1pM、例えば10nM以下の平均EC50値、さらにより好ましくは9nM以下、例えば8、7、6、5、4、3、2、1、0.5nM未満またはさらにそれより低く、例えば400、300、200、100、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5pM未満またはさらにそれより低く、例えば0.4pM未満の平均EC50値である。
一側面において、本開示は、HIVのCD4および/または共受容体、例えば例えばCXCR4への結合を阻害する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドを提供する。
したがって、本発明は、本明細書において記載されるポリペプチドに関し、ここで、前記ポリペプチドは、HIVとCD4+CXCR4+細胞との融合を阻害する。
HIV感染を阻害することにおける抗HIV化合物の効力は、当業者に広範に知られている多様な方法により測定することができる。例えば、形質転換したT細胞株(SupT1、H9、Molt4)、初代血液由来単核細胞(PBMC)またはマクロファージのいずれかによる細胞ベースの抗ウイルスアッセイを行うことができる。HIV複製の実験による読み出しは、p24ウイルス抗原のELISA、逆転写酵素のモニタリング、tat発現、レポーターウイルスのモニタリングにより、または細胞内または表面のウイルス抗原の染色(例えばそれぞれGagタンパク質またはEnv)により行うことができる。HIV受容体および共受容体を発現する多様な安定なレポーター細胞株を用いる単サイクル感染力アッセイは、単サイクルまたは準単サイクルアッセイを用いて、HIVまたはHIVベースのシュードタイプの感染力を評価するために用いることができる。HIV感染を阻害することにおける抗HIV化合物の効力はまた、HIVのためのin vitroモデルにより測定することができ、これは、潜在的に感染した細胞からのウイルス複製を再活性化してHIVウイルスを産生する能力を評価するアッセイ;同時(synchronized)感染におけるアッセイ、ウイルス侵入の阻害の評価、HIV逆転写酵素活性の決定、インテグラーゼアッセイ;遺伝子型および表現型バリエーションの決定を含む耐性バリアントの特徴づけ;HIVプロテアーゼ活性の評価、侵入アッセイ、組み込みアッセイ、抗体中和アッセイ、共受容体決定、HIVにより誘導されるCD4およびクラスIのMHCの発現低下、(確立されたHIV複製により)慢性的に感染した細胞における抗HIV活性、感染細胞におけるCPE効果の評価(シンシチウム形成、アポトーシス、直接殺傷)を含む。全てのこれらの方法 は、確立された方法であり、当業者に周知である。
いくつかの態様において、CD4または例えばCXCR4などのCRへのHIVの結合(の阻害)は、生化学的アッセイにより決定される。いくつかの態様において、CD4または例えばCXCR4などのCRへのHIVの結合(の阻害)は、機能アッセイにより決定される。いくつかの態様において、アッセイは、例えば天然リガンドによる競合アッセイであり、および/または標準との比較を含んでもよい。
いくつかの態様において、生化学的アッセイは、完全なまたは部分的なCD4またはCRの配列、例えばCXCR4 配列などを含むポリペプチド、またはかかる配列を発現する細胞を、HIVまたはCD4または例えばCXCR4などのCRに結合することができる1つ以上のHIVタンパク質、またはHIVのタンパク質フラグメントと接触させるステップを含む。結合は、その後、例えば一方または両方の結合パートナーの存在を検出する抗体を用いることによるELISA、表面プラズモン共鳴またはFRETなどの蛍光ベースの技術を含む多様な方法を通して決定することができる。
機能アッセイは、CD4および/または例えばCXCR4などのCR、および/またはHIVの1つ以上の生体機能の抑制または増大に基づくアッセイを含み、一般に、生細胞において行われる(例えばCD4および/またはCXCR4を発現する細胞;実験の項を参照)。例えば天然リガンド結合によるCXCR4活性化が、CXCR4がHIVにより結合された場合に抑制される細胞のシグナル伝達経路を引き起こす。したがって、かかる経路の下流のイベント、例えばcAMPのレベルをモニタリングすることにより、HIVによるCXCR4の結合および/または天然リガンドの転置の決定を可能にする機能アッセイが提供される(例の項を参照)。あるいは、CD4および/または例えばCXCR4などのCRを発現する細胞のHIVによる結合は、細胞の機能(例えば食作用)の変化をもたらし得、HIV結合の阻害は、HIV結合により誘導される細胞の機能を定量することによりモニタリンすることができる。
HIVの伝播の間に、CD4+T細胞は、セルフリーのビリオンにより感染し得るのみならず、重要なことに、ドナーHIV感染T細胞との近接した細胞−細胞の接触によっても感染し得る。例9において記載されるように、このことは、細胞の共培養中での巨細胞またはシンシチウムの出現に基づいて測定することができる。したがって、本発明は、本明細書において記載されるポリペプチドに関し、ここで、前記ポリペプチドは、HIVにより誘導される細胞−細胞シンシチウム形成を阻害する。
本発明のポリペプチドは、先行技術の抗体よりも特異的なHIV感染の阻害を提供する。好ましくは、本発明の二重特異性ポリペプチドは、例えば2つのビルディングブロック、ISVまたはナノボディなどの少なくとも2つの結合部分を含み、ここで、少なくとも第1の結合部分(機能的ISV)は、CD4に対して特異的である。
用語、本発明のポリペプチド、二重特異性ポリペプチド、二重特異性構築物、二重特異性ナノボディ構築物、二重特異性および二重特異性抗体は、本明細書において交換可能に用いられる。
したがって、本発明は、第1および第2の免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISV)を含むポリペプチドに関し、ここで、
− 前記第1のISVは、細胞の表面上に存在するCD4に結合し;
− 前記第2のISVは、前記細胞の表面上に存在する共受容体(CR)に結合する;および
ここで、前記CRは、CD4ではない。
一側面において、本開示は、CXCR4へのHIVの結合を阻害する1つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドを提供する。
いくつかの態様において、ポリペプチドは、本明細書において開示される少なくとも2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、本明細書において開示される2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインから本質的になる。2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメイン「から本質的になる」ポリペプチドとは、本明細書において開示される2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインに加えて、さらなる免疫グロブリン単一可変ドメインを有さないポリペプチドである。例えば、2つの免疫グロブリン単一可変ドメインから本質的になるポリペプチドは、任意のさらなる免疫グロブリン単一可変ドメインを含まない。しかし、2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインから本質的になるポリペプチドは、さらなる官能基、例えば標識、トキシン、1つ以上のリンカー、結合配列などを含んでもよいことが理解されるべきである。これらのさらなる官能基は、アミノ酸ベースおよび非アミノ酸ベースの基の両方を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、1つ以上の本明細書において開示される免疫グロブリン単一可変ドメインからなる。用語「ポリペプチド構築物」と「ポリペプチド」とは、本明細書において交換可能に用いることができることが理解されるべきである(文脈が明らかに他を示さない限り)。
いくつかの態様において、ポリペプチドは、本明細書において開示される免疫グロブリン単一可変ドメインを含む多価または多重特異性の構築物を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、本明細書において開示される1つ以上の抗体ベースの骨格および/または非抗体ベースの骨格を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドは、血清結合タンパク質部分を含む。いくつかの態様において、血清結合タンパク質部分は、免疫グロブリン単一可変ドメインである。いくつかの態様において、免疫グロブリン単一可変ドメインは、Nanobody(登録商標)、VHH、ヒト化VHHまたはラクダ化VHである。
単一のポリペプチドにおいて2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを組み合わせることができ、これにより、多価および/または多重特異性のポリペプチド、例えば二重特異性ポリペプチドがもたらされる。多価および/または多重特異性のポリペプチドは、単一の免疫グロブリン単一可変ドメインと比較してアビディティー(すなわち、所望される抗原についての)が改善された構築物、および/または2つ以上の異なる抗原に結合することができる構築物を可能にする。いくつかの態様において、多重特異性ポリペプチドは、同じ標的に結合する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含み、それにより、単一の抗原への結合についての親和性を増大させる。いくつかの態様において、ポリペプチドは、二重パラトピック(biparatopic)である。本発明の二重特異性または多重特異性ポリペプチドは、少なくとも2つのビルディングブロック(例えばISV)を含むかまたはそれから本質的になり、その第1のビルディングブロック(例えば第1のISV)は、その抗原(すなわち第2の標的)への第2のビルディングブロック(例えば第2のISV)の結合によって、その抗原(すなわち第1の標的)に対する増大した親和性を有する。かかる増大した親和性(見かけ上の親和性)はアビディティ効果を原因とし、「コンディショナルな二重特異性または多重特異性結合」ともまた呼ばれる。かかる二重特異性または多重特異性ポリペプチドは、「本発明のコンディショナル結合型二重特異性または多重特異性ポリペプチド」ともまた呼ばれる。
ポリペプチド上における第1のビルディングブロックおよび第2のビルディングブロックの順序(オリエンテーション)が、当業者の必要、さらには相対的な親和性(これは、ポリペプチド中におけるそれらのビルディングブロックの場所に依存し得る)に従って選ばれ得るということは認められるであろう。ポリペプチドがリンカーを含むかどうかは、設計の選び方の問題である。しかしながら、リンカー有りまたは無しのいくつかのオリエンテーションが、他のオリエンテーションと比較して好ましい結合特徴を提供し得る。例えば、本発明のポリペプチド中の第1および第2のビルディングブロックの順序は、(N末端からC末端に)(i)第1のビルディングブロック(例えば、第1のISV、例えば第1のナノボディ)−[リンカー]−第2のビルディングブロック(例えば、第2のISV、例えば第2のナノボディ)、または(ii)第2のビルディングブロック(例えば、第2のISV、例えば第2のナノボディ)−[リンカー]−第1のビルディングブロック(例えば、第1のISV、例えば第1のナノボディ)であり得る(ここで、リンカーは任意である)。全てのオリエンテーションは本発明によって包摂され、望まれる結合特徴を提供するオリエンテーションを含有するポリペプチドはルーチン的なスクリーニングによって容易に同定され得る。これは、例えば実験の項において例証されている。
前に記述されるとおり、本発明者らは、特に、強制的な研究室の設定においてすら、二重特異性ポリペプチドに対するHIVによる耐性を達成することが、極めて困難であることを示した(例8を参照)。驚くべきことに、1つの標的、例えば抗CD4部分に対して耐性にされたHIV株においてすら、二重特異性ポリペプチドがなおHIV感染を阻害することにおいて強力でことが観察された。したがって、この特性は、二重特異性ポリペプチドの使用の有効性の可能性を、1つの部分の剤に対して本質的に耐性ではない不均一な株、および別の部分に対して本質的に耐性ではない別のHIV株に対して拡大する。
本発明は、CD4アンタゴニストに対して耐性であるか、またはこれに対して耐性となったHIVウイルスによる、対象における感受性細胞のHIV感染を阻害する方法に関し、該方法は、感受性細胞を本明細書において記載されるようなポリペプチド(これがHIVとCD4+CXCR4+細胞との融合を阻害する)の有効なHIV感染阻害用量に供することを含み、好ましくはここで、有効なHIV感染阻害用量は、それによりCD4アンタゴニストに対して耐性であるか、またはこれに対して耐性となったHIV1による感受性細胞の感染を阻害するように、対象の体重1kgあたり0.1mg〜25mgを含む。
本明細書において用いられる場合、用語「力価」は、薬剤(例えば、ポリペプチド、ISV、またはナノボディ)、その生物活性の尺度である。薬剤の力価は、例えば実験の項に記載されているものなどの当分野において公知のいずれかの好適な方法によって決定され得る。細胞培養に基づく力価アッセイは、多くの場合に、生物活性を決定するための好ましいフォーマットである。なぜなら、それらは薬剤によって惹起される生理的な応答を測定し、比較的短期間で結果を出し得るからである。細胞に基づくアッセイの種々の型が、産物の作用機序に基づいて用いられ得、増殖アッセイ、細胞傷害性アッセイ、レポーター遺伝子アッセイ、細胞表面受容体結合アッセイ、および機能的に必須の蛋白質または他のシグナル分子(例えば、リン酸化蛋白質、酵素、サイトカイン、cAMP、および同類)の誘導/阻害を測定するためのアッセイ(全て当分野において公知である)を包含するが、これに限定されない。細胞に基づく力価アッセイからの結果は、対応する参照の一価ISV(例えば、1つのISVまたは1つのナノボディのみを含むポリペプチド、無関係なナノボディを任意でさらに含む)について得られた応答に対する本発明の二重特異性ポリペプチドの比較によって決定される「相対的な力価」として表され得る(実験の項参照)。
化合物(例えば二重特異性ポリペプチド)は、化合物(例えば二重特異性ポリペプチド)について得られた応答が、所与のアッセイにおいて参照化合物(例えば、小分子などの化合物、または同じ標的に指向された(従来の)抗体、または対応する一価ISVまたはナノボディ)による応答よりも少なくとも2倍、ただし好ましくは少なくとも3倍、例えば少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、少なくとも75倍、少なくとも100倍、さらにより好ましくはさらに少なくとも200倍、またはさらに少なくとも500倍、またはさらに1000倍良好(例えば機能的に良好)であるときに、参照化合物(例えば、対応する一価もしくは単一特異性ISVもしくはナノボディ、または対応する一価もしくは単一特異性(monospeciic)ISVもしくはナノボディを含むポリペプチド)よりも強力であると言われる。
本発明の細胞は、特に哺乳動物細胞、好ましくは霊長類細胞、さらにより好ましくはヒト細胞に関する。
細胞は、好ましくは免疫細胞、例えばTヘルパー細胞、単球、マクロファージ、または樹状細胞、好ましくはCD4+Tヘルパー細胞(別名、CD4細胞、CD4+細胞、Tヘルパー細胞またはT4細胞)、好ましくはCD4+CXCR4+細胞、さらにより好ましくはヒト細胞である。いくつかの態様において、細胞は、in vivoのものである。いくつかの態様において、細胞は、in vitroのものである。
細胞の原形質を取り囲む膜(細胞膜またはリン脂質二重層とも称される)は、細胞の外側の境界であり、すなわち、膜は、細胞の表面である。この膜が、細胞をその周囲の環境から分離および保護し、ほぼリン脂質の二重の層から作られている。この膜に包埋されているのは、チャネル、ポンプおよび細胞受容体などの多様なタンパク質分子である。膜は液体であるので、タンパク質分子は膜内を移動することができる。
免疫グロブリン単一可変ドメインの一般的な説明については、下のさらなる説明、さらには本明細書に引用される従来技術が参照される。しかしながら、これに関して、本明細書および従来技術が、本発明の好ましい側面を形成するいわゆる「VH3クラス」の免疫グロブリン単一可変ドメイン(すなわち、DP−47、DP−51、またはDP−29などの、VH3クラスのヒト生殖系列配列に対する配列相同性の高い程度を有する免疫グロブリン単一可変ドメイン)を主に記載しているということは注意されるべきである。しかしながら、本発明が、その最も幅広い意味において免疫グロブリン単一可変ドメインのいずれかの型を一般的にカバーし、例えば、例えばWO07/118670に記載されている通り、いわゆる「VH4クラス」に属する免疫グロブリン単一可変ドメイン(すなわち、DP−78などのVH4クラスのヒト生殖系列配列に対する配列相同性の高い程度を有する免疫グロブリン単一可変ドメイン)をもカバーするということは注意されるべきである。
一般的に、免疫グロブリン単一可変ドメイン(特に、VHH配列および配列最適化された免疫グロブリン単一可変ドメイン)は、1つまたは2つ以上の「ホールマーク残基」(本明細書に記載される通り)の、フレームワーク配列(再び、本明細書に記載される通り)の1つまたは2つ以上における存在によって特にキャラクタリゼーションされ得る。
それゆえに、一般的に、免疫グロブリン単一可変ドメインは、(一般的な)構造(下の式1参照)
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
のアミノ酸配列として定義され得、FR1〜FR4はそれぞれフレームワーク領域1〜4を言い、CDR1〜CDR3はそれぞれ相補性決定領域1〜3を言う。
好ましい側面において、本発明は、(一般的な)構造
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
のアミノ酸配列である少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドを提供し、FR1〜FR4はそれぞれフレームワーク領域1〜4を言い、CDR1〜CDR3はそれぞれ相補性決定領域1〜3を言い、
i)Kabatの番号付けに従う位置11、37、44、45、47、83、84、103、104、および108のアミノ酸残基の少なくとも1つが、下の表A−1に挙げられたホールマーク残基から選ばれ、
ii)そのアミノ酸配列は、WO2009/138519に示されている免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つ(WO2009/138519中の配列番号1〜125参照)と少なくとも80%、より好ましくは90%、さらにより好ましくは95%のアミノ酸同一性を有し、アミノ酸同一性の程度を決定する目的のためには、CDR配列を形成するアミノ酸残基(配列中のXによって指示される)は無視され、
iii)CDR配列は、一般的に、本明細書においてさらに定義される通りである(例えば、本明細書において提供される情報によって決定され得る組み合わせでのCDR1、CDR2、およびCDR3。CDRの定義はKabatの番号付けシステムに従って計算されるということに注意する)。
本発明の免疫グロブリンはまた、C末端伸長(X)nを含んでもよい(ここで、nは1〜10、好ましくは1〜5、例えば1、2、3、4または5(および好ましくは1または2、例えば1);および各々のXは(好ましくは天然に存在する)独立して選択される、好ましくはアラニン(A)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)またはイソロイシン(I))からなる群より独立して選択されるアミノ酸残基であり、これについては、WO 12/175741および米国仮出願、いずれも表題「Improved immunoglobulin variable domains」:2014年5月16日に出願されたUS 61/994552;2014年6月18日に出願されたUS 61/014,015;2014年8月21日に出願されたUS 62/040,167;および2014年9月8日に出願されたUS 62/047,560(全てAblynx N.V.に譲渡された)について参照がなされる。
再び、かかる免疫グロブリン単一可変ドメインは、いずれかの好適なやり方でいずれかの好適なソースに由来し得、例えば、天然に存在するVHH配列(すなわち、ラクダ類の好適な種、例えばラマから)または合成もしくは半合成VHもしくはVL(例えばヒトから)であり得る。かかる免疫グロブリン単一可変ドメインは、「ヒト化」または別様に「配列最適化」されたVHH、「ラクダ化」免疫グロブリン配列(特に、ラクダ化された重鎖可変ドメイン配列、すなわちラクダ化VH)、さらには、親和性成熟(例えば、合成、ランダム、または天然に存在する免疫グロブリン配列から出発する)、CDR移植、ベニアリング、異なる免疫グロブリン配列に由来する断片を組み合わせること、オーバーラッププライマーを用いるPCRアセンブリ、当業者に周知の免疫グロブリン配列を操作するための類似のテクニックなどのテクニック、または前述のもののいずれかのいずれかの好適な組み合わせによって、本明細書にさらに記載される通り変改されたヒトVH、ヒトVL、ラクダ類VHHを包含し得る。本明細書において挙げられる通り、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインの特に好ましいクラスは、天然に存在するVHHドメインのアミノ酸配列に対応するが、「ヒト化」されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン単一可変ドメインを含む(すなわち、(例えば、上で指示された)ヒトからの従来の4鎖抗体からのVHドメイン中の対応する位置(単数または複数)において起こるアミノ酸残基の1つまたは2つ以上によって、(特に、フレームワーク配列中の)その天然に存在するVHH配列のアミノ酸配列中の1つまたは2つ以上のアミノ酸残基を置き換えることによる)。これは、自体公知のやり方(これは当業者には明白であろう)で、例えば、本明細書のさらなる説明と本明細書において参照されるヒト化の従来技術とに基づいて実施され得る。再び、本発明のかかるヒト化免疫グロブリン単一可変ドメインは自体公知のいずれかの好適なやり方で得られ、それゆえに、出発材料として天然に存在するVHHドメインを含むポリペプチドを用いて得られたポリペプチドに厳密には限定されないということが注意される。
本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインの別の特に好ましいクラスは、天然に存在するVHドメインのアミノ酸配列に対応するが、「ラクダ化」されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン単一可変ドメインを含む(すなわち、重鎖抗体のVHHドメイン中の対応する位置(単数または複数)において起こるアミノ酸残基の1つまたは2つ以上によって、従来の4鎖抗体からの天然に存在するVHドメインのアミノ酸配列中の1つまたは2つ以上のアミノ酸残基を置き換えることによる)。これは、自体公知のやり方(これは当業者には明白であろう)で、例えば本明細書の説明に基づいて実施され得る。かかる「ラクダ化」置換は、VH−VL境界面および/またはいわゆるラクダ科ホールマーク残基(本明細書において定義される通り)を形成し、および/またはそこに存在するアミノ酸位置に好ましくは挿入される(例えば、WO94/04678およびDavies and Riechmann (1994および1996)をもまた参照)。好ましくは、ラクダ化免疫グロブリン単一可変ドメインを作出または設計するための出発材料または出発点として用いられるVH配列は、好ましくは哺乳動物からのVH配列、より好ましくはヒトのVH配列、例えばVH3配列である。しかしながら、本発明のかかるラクダ化免疫グロブリン単一可変ドメインは自体公知のいずれかの好適なやり方で得られ、それゆえに、出発材料として天然に存在するVHドメインを含むポリペプチドを用いて得られたポリペプチドに厳密に限定はされないということが注意される。
例えば、再び本明細書にさらに記載される通り、「ヒト化」および「ラクダ化」は両方とも、それぞれ天然に存在するVHHドメインまたはVHドメインをコードするヌクレオチド配列を提供することと、そこで、新たなヌクレオチド配列がそれぞれ本発明の「ヒト化」または「ラクダ化」免疫グロブリン単一可変ドメインをコードするような方法で、そのヌクレオチド配列中の1つまたは2つ以上のコドンを自体公知のやり方で変化させることとによって実施され得る。そこで、この核酸は、本発明の望まれる免疫グロブリン単一可変ドメインを提供するように、自体公知のやり方で発現され得る。代替的に、それぞれ天然に存在するVHHドメインまたはVHドメインのアミノ酸配列に基づいて、それぞれ本発明の望まれるヒト化またはラクダ化免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ酸配列が設計され、そこで自体公知のペプチド合成のためのテクニックを用いてデノボ合成され得る。それぞれ天然に存在するVHHドメインまたはVHドメインのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列に基づいて、それぞれ本発明の望まれるヒト化またはラクダ化免疫グロブリン単一可変ドメインをコードするヌクレオチド配列もまた設計され、そこで自体公知の核酸合成のためのテクニックを用いてデノボ合成され得る。その後に、それゆえに得られた核酸が、本発明の望まれる免疫グロブリン単一可変ドメインを提供するように自体公知のやり方で発現され得る。
一般的に、単一のビルディングブロック、単一の免疫グロブリン単一可変ドメイン、もしくは単一のナノボディを含むかもしくはそれから本質的になる蛋白質もしくはポリペプチドは、本明細書において「一価」蛋白質もしくはポリペプチドまたは「一価構築物」、またはそれぞれ一価ビルディングブロック、一価免疫グロブリン単一可変ドメイン、もしくは一価ナノボディと言われる。2つまたは3つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えば、本発明の少なくとも2つの免疫グロブリン単一可変ドメイン)を含むかもしくはそれから本質的になる蛋白質およびポリペプチドは、本明細書において「多価」蛋白質もしくはポリペプチドまたは「多価構築物」と言われる。それらは、本発明の対応する一価免疫グロブリン単一可変ドメインと比較してある種の利点を提供する。かかる多価構築物のいくつかの限定しない例は、本明細書のさらなる説明から明白になるであろう。本発明のポリペプチドは「多価」であり、すなわち2つまたは3つ以上のビルディングブロックまたはISVを含み、その少なくとも第1のビルディングブロック、ISV、またはナノボディと第2のビルディングブロック、ISV、またはナノボディとは異なり、異なる標的(例えば抗原または抗原決定基)に対するものである。少なくとも2つのビルディングブロック、ISV、またはナノボディを含有し、少なくとも1つのビルディングブロック、ISV、またはナノボディが第1の抗原に対する(すなわち、第1の標的、例えばCD4などに対する)ものであり、少なくとも1つのビルディングブロック、ISV、またはナノボディが第2の抗原に対する(すなわち、第1の標的とは異なる第2の標的、例えばCR、例えばCXCR4などに対する)ものである本発明のポリペプチドは、本発明の「多重特異性」ポリペプチドともまた言われるであろう。かかるポリペプチド中に存在するビルディングブロック、ISV、またはナノボディは、本明細書においては「多価フォーマット」にあるともまた言われるであろう。それゆえに、例えば、本発明の「二重特異性」ポリペプチドは、第1の標的(例えばCD4)に対する少なくとも1つのビルディングブロック、ISV、またはナノボディと第2の標的に対する(すなわち、その第1の標的とは異なる第2の標的、例えばCR、例えばCXCR4などに対する)少なくとも1つのさらなるビルディングブロック、ISV、またはナノボディとを含むポリペプチドであり、本発明の「三重特異性」ポリペプチドは、第1の標的(例えばCD4)に対する少なくとも1つのビルディングブロック、ISV、またはナノボディと、その第1の標的とは異なる第2の標的(例えばCR、例えばCXCR4など)に対する第2のビルディングブロック、ISV、またはナノボディと、例えば血清アルブミンなどの第3の抗原(すなわち、第1および第2の標的両方とは異なる)に対する少なくとも1つのさらなるビルディングブロック、ISV、またはナノボディとを含むポリペプチドなどである。説明から明白であろう通り、本発明の多重特異性ポリペプチドが第1の標的に対する少なくとも第1のビルディングブロック、ISV、またはナノボディと、第2の標的に対する第2のビルディングブロック、ISV、またはナノボディと、それぞれ第1のおよび/または第2の標的と同じかまたは異なり得る1つまたは2つ以上の標的に対するビルディングブロック、ISV、またはナノボディのいずれかの数とを含み得るという意味において、本発明は二重特異性ポリペプチドに限定されない。ビルディングブロック、ISV、またはナノボディは任意でリンカー配列を介して連結され得る。
従って、本発明は、少なくとも3つの結合部分(例えば3つのISV)を含むかまたはそれから本質的になる三重特異性または多重特異性ポリペプチドにもまた関し、その少なくとも3つの結合部分の少なくとも1つは低い、中程度の、高い親和性で第1の標的に対するものであり、その少なくとも3つの結合部分の少なくとも1つは高親和性で第2の標的に対するものであり、少なくとも第3の結合部分は半減期を増大させる(例えば、アルブミン結合因子など)。
上および本明細書のさらなる説明から明白であろう通り、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインが「ビルディングブロック」として用いられて、本発明のポリペプチドを形成し得る。これは、例えば、1つまたは2つ以上の望まれる特性または生物学的機能を1つの分子内に組み合わせている本明細書に記載される化合物または構築物(例えば、限定無しに、本明細書に記載される本発明の二/三/四/多価および二/三/四/多重特異性ポリペプチド)を形成するために、他の基、残基、部分、または結合単位とそれらを好適に組み合わせることによる。
本発明の化合物またはポリペプチドは、一般的に、本発明の化合物またはポリペプチドを提供するように、任意で1つまたは2つ以上の好適なリンカーを介して、1つまたは2つ以上のさらなる基、残基、部分、または結合単位に本発明の1つまたは2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを好適に連結する少なくとも1つのステップを含む方法によって調製され得る。本発明のポリペプチドは、少なくとも、本発明のポリペプチドをコードする核酸を提供するステップと、好適なやり方でその核酸を発現するステップと、本発明の発現されたポリペプチドを回収するステップとを一般的に含む方法によってもまた調製され得る。かかる方法は、自体公知のやり方(これは当業者には明白であろう)で、例えば本明細書にさらに記載される方法およびテクニックに基づいて実施され得る。
本発明のアミノ酸配列から出発して本発明の化合物またはポリペプチドを設計/選択および/または調製するプロセスは、本発明のそのアミノ酸配列を「フォーマット化」することともまた言われる。本発明の化合物またはポリペプチドの一部となった本発明のアミノ酸は、「フォーマット化された」または「本発明のその化合物またはポリペプチドのフォーマットにある」と言われる。本発明のアミノ酸配列がフォーマット化され得る方法の例、およびかかるフォーマットの例は、本明細書の開示に基づいて当業者には明白であろう。かかるフォーマット化された免疫グロブリン単一可変ドメインは本発明のさらなる側面を形成する。
例えば、かかるさらなる基、残基、部分、または結合単位は1つまたは2つ以上の追加の免疫グロブリン単一可変ドメインであり得、その結果、化合物または構築物は(融合)蛋白質または(融合)ポリペプチドである。好ましい限定しない側面において、その1つまたは2つ以上の他の基、残基、部分、または結合単位は免疫グロブリン配列である。さらにより好ましくは、その1つまたは2つ以上の他の基、残基、部分、または結合単位は、ドメイン抗体、ドメイン抗体としての使用にとって好適である免疫グロブリン単一可変ドメイン、単一ドメイン抗体、単一ドメイン抗体としての使用にとって好適である免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISV)、「dAb」、dAbとしての使用にとって好適である免疫グロブリン単一可変ドメイン、またはナノボディからなる群から選ばれる。代替的に、かかる基、残基、部分、または結合単位は、例えば、それら自体で生物学的におよび/または薬理学的に活性であり得るかまたはなくあり得る化学基、残基、部分であり得る。例えば、限定無しに、かかる基は、本明細書にさらに記載される通り本発明のアミノ酸配列またはポリペプチドの「誘導体」を提供するために、本発明の1つまたは2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインに連結され得る。
本発明の範囲内には、本明細書に記載される1つまたは2つ以上の誘導体を含むかまたはそれから本質的になる化合物または構築物もまたあり、任意で、1つまたは2つ以上の他の基、残基、部分、または結合単位(任意で、1つまたは2つ以上のリンカーを介して連結される)をさらに含む。好ましくは、その1つまたは2つ以上の他の基、残基、部分、または結合単位は免疫グロブリン単一可変ドメインである。上に記載された化合物または構築物において、本発明の1つまたは2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインと1つまたは2つ以上の基、残基、部分、または結合単位とは、互いに直接的におよび/または1つもしくは2つ以上の好適なリンカーもしくはスペーサーを介して連結され得る。例えば、1つまたは2つ以上の基、残基、部分、または結合単位が免疫グロブリン単一可変ドメインであるときには、リンカーもまた免疫グロブリン単一可変ドメインであり得、その結果、もたらされる化合物または構築物は融合蛋白質または融合ポリペプチドである。
したがって、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記ISVは、Nanobody(登録商標)、VHH、ヒト化VHHまたはラクダ化VHである。
本発明の第1のビルディングブロック、ISV、例えばナノボディまたはVHHなどは、その( 第1の)標的、すなわちCD4および多形バリアントに対して親和性を有する。本発明の第1のビルディングブロック、ISVまたはナノボディは、例えば、前記第1の標的の抗原決定因子、エピトープ、部分、ドメイン、サブユニットまたは立体構造(適用可能である場合は)に対して指向させることができる。第1のビルディングブロック、例えば第1のISV、例えばナノボディまたはVHHなどは、任意のアビディティー効果の影響に関わらず、その標的自体に対するその親和性により選択される。好ましい第1のビルディングブロックは、表A−2(B)において表される。
「CD4」または「T細胞表面糖タンパク質CD4」とは、細胞質ドメイン、疎水性膜貫通ドメイン、およびHIV-1のgp120外被糖タンパク質に結合する細胞外ドメインを含む、成熟したネイティブの膜結合CD4タンパク質を意味する。CD4はまた、T細胞表面抗原T4/Leu-3としても知られる。好ましくは、CD4はヒトCD4であり、好ましくはUniprot受入番号P01730-1(OMIM:186940)として表され、例えばアミノ酸配列:
により表されるとおりである。
前に記述されるとおり、HIV感染は、感染した個人におけるCD4+T細胞の数により特徴づけられる。健常な成人/青年のCD4カウントは、500細胞/ml〜1,200細胞/mlの範囲である。CD4カウントは、血液の試料中のCD4細胞の数を計測する。HIV感染は、CD4を含む細胞の数を減少させる。非常に低いCD4カウント(200細胞/mm3未満)は、HIVを抱えて生存しているその個人がステージ3の感染(AIDS)に進行しているか否かを決定するための方法の一つである。
本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記ポリペプチドは、前記CD4に対して、好ましくは表面プラズモン共鳴により測定される場合に、少なくとも約102M−1s−1、少なくとも約103M−1s−1、少なくとも約104M−1s−1、少なくとも約105M−1s−1、少なくとも約106M−;1s−;1、107M−1s−1、少なくとも約108M−1s−1、少なくとも約109M−1s−1、および少なくとも約1010M−;1s−1からなる群より選択されるon速度定数(Kon)を有する。
本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記ポリペプチドは、前記CD4に対して、好ましくは表面プラズモン共鳴により測定される場合に、多くとも約10−3s−1、多くとも約10−4s−1、多くとも約10−5s−1、多くとも約10−6s−1、多くとも約10−7s−1、多くとも約10−8s−1、多くとも約10−9s−1、および多くとも約10−10s−1のoff速度定数(Koff)を有する。
本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記ポリペプチドは、前記CD4に対して、好ましくは表面プラズモン共鳴により測定される場合に、多くとも約10−7M、多くとも約10−8M、多くとも約10−9M、多くとも約10−10M、多くとも約10−11M、および多くとも約10−12Mの解離定数(KD)を有する。
したがって、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第1のISVは、好ましくはSPRにより測定される場合に、例えばKinExAにより決定される場合に、10nM〜0.1pMの平均KD値で、例えば10nM以下の平均KD値で、さらにより好ましくは9nM以下、例えば8、7、6、5、4、3、2、1、0.5nM未満またはそれよりさらに低い、例えば400、300、200、100、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5pM未満、またはそれより低い、例えば0.4pM未満の平均KD値で、CD4に結合する。動力学的排除アッセイ(Kinetic Exclusion Assay:KINEXA(登録商標))(Drake et al. 2004, Analytical Biochemistry 328: 35-43)は、結合パートナーの標識を行うことなく、溶液中の結合イベントを測定し、複合体の解離を動力学的に排除することに基づく。
したがって、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第1のISVは、一価のものとして測定される場合に高親和性を有する。
したがって、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記平均KDは、組み換えタンパク質上での表面プラズモン共鳴(SPR)により測定される。
本発明はまた、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第1のISVは、10nM〜0.1pMのEC50値で、例えば10nM以下の平均EC50値で、さらにより好ましくは9nM以下、例えば8、7、6、5、4、3、2、1、0.5nM未満またはそれよりさらに低い、例えば400、300、200、100、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5pM未満またはそれよりさらに低い、例えば0.4pM未満の平均KD値で、細胞の表面上の第1の標的に結合する。
したがって、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記平均EC50は、前記標的1を含むが、前記標的2を実質的に欠失する細胞において測定される。
したがって、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記平均KDは、FACS、BIACORE(登録商標)、ELISAにより、ナノボディなどの一価の第1のISV、またはナノボディなどの一価の第1のISVを含むポリペプチドにおいて、決定される。
KDがEC50とよく相関するという例が示されている。
また、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインおよびポリペプチドが、一般に、その標的の全ての天然に存在するか合成のアナログ、バリアント、変異体、対立遺伝子、部分およびフラグメントに結合するか;または少なくとも、CD4、特にヒトCD4のアナログ、バリアント、変異体、対立遺伝子、部分およびフラグメントであって、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインおよびポリペプチドがCD4、および特にヒトCD4に結合するものと本質的に同じ抗原決定因子またはエピトープである、1つ以上の抗原決定因子またはエピトープを含むものに結合するであろうことが予測される。やはり、かかる場合において、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインおよびポリペプチドは、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインが(野生型)受容体、例えばCD4に結合する場合の親和性および特異性と同じであるかまたはこれと異なる(すなわち、これより高いかまたはこれより低い)親和性および/または特異性を有する、かかるアナログ、バリアント、変異体、対立遺伝子、部分およびフラグメントに結合することができる。
本発明はさらに、本発明のポリペプチド中に含まれるCD4結合剤に関し、これは、CD4の天然の機能を損なわないか、僅かしか損なわず、ここで、CD4は、抗原提示細胞と連絡することにおいてT細胞受容体(TCR)を補助する受容体として機能する。その細胞内ドメインを用いて、CD4は、酵素であるチロシンキナーゼLckを動員することによりTCRにより生成されたシグナルを増幅し、これは、活性化されたT細胞のシグナル伝達カスケードの多くの分子成分を活性化するために不可欠である。それにより、多様な型のTヘルパー細胞が産生される。CD4はまた、その細胞外ドメインを用いて、抗原提示細胞の表面上のMHCクラスII分子と直接相互作用する。当業者は、例えばALPHASCREEN(登録商標)アッセイ、競合ELISA、または細胞に対するFACSにより、および例えば実験の部において記載されるように、CD4の(天然の)機能を決定および測定することを完全に知悉している。
したがって、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第1のISVは、前記第1の標的の薬理学的効果を、例えば前記第1のISVの不在下における阻害と比較して、約50%未満、例えば40%、30%または20%、またはわずか10%未満、阻害する。
本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記ポリペプチドは、CD4による多量体形成を、約50%未満、例えば40%、30%または20%、またはわずか10%未満、例えば5%未満、阻害する。
したがって、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第1のISVは、前記第1の標的の(T細胞受容体との)多量体形成を、例えば前記第1のISVの不在下における阻害と比較して、約50%未満、例えば40%、30%または20%、またはわずか10%未満、阻害する。
したがって、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第1のISVは、CD4の天然の機能に関するアロステリック部位に結合する。
したがって、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第1のISVは、前記第1の標的の(天然の)機能(例えば抗原提示細胞と連絡することにおいてT細胞受容体(TCR)を補助する、および/またはチロシンキナーゼLckを動員する)を実質的に阻害しないか、またはこれをわずかのみ阻害する。
本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記ポリペプチドは、CD4によるLckの動員を、約50%未満、例えば40%、30%または20%、またはわずか10%未満、例えば5%未満、阻害する。
したがって、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第1のISVは、シグナル伝達、例えば前記第1の標的によるLckの動員を、例えば前記第1のISVの不在下における阻害と比較して、約50%未満、例えば40%、30%または20%、またはわずか10%未満、阻害する。
したがって、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第1のISVは、前記第1の標的の(天然の)機能を、例えば前記第1のISVの不在下における阻害と比較して、約50%未満、例えば40%、30%または20%、またはわずか10%未満、阻害する。
したがって、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第1のISVは、走化性アッセイにおいて、例えば前記第1のISVの不在下における阻害と比較して、約50%未満、例えば40%、30%または20%、またはわずか10%未満、走化性を阻害する。
好ましい態様において、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第1のISVは、4個のフレームワーク領域(それぞれFR1〜FR4)および3個の相補性決定領域(それぞれCDR1〜CDR3)から本質的になり、ここで、
(i)CDR1は、配列番号82〜85;および配列番号82〜85と1、2または3個のアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列からなる群より選択され;
(ii)CDR2は、配列番号88〜91;および配列番号88〜91と1、2または3個のアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列からなる群より選択され;および
(iii)CDR3は、配列番号96〜99、および配列番号96〜99と1、2、3または4個のアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列からなる群より選択される。
本発明はまた、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第1のISVは、4個のフレームワーク領域(それぞれFR1〜FR4)および3個の相補性決定領域(それぞれCDR1〜CDR3)から本質的になり、ここで、前記ISVは、以下からなる群より選択される:
− CDR1は配列番号82であり、CDR2は配列番号88であり、およびCDR3は配列番号96である;
− CDR1は配列番号83であり、CDR2は配列番号89であり、およびCDR3は配列番号97である;
− CDR1は配列番号84であり、CDR2は配列番号90であり、およびCDR3は配列番号98である;および
− CDR1は配列番号85であり、CDR2は配列番号91であり、およびCDR3は配列番号99である。
したがって、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第1のISVは、4個のフレームワーク領域(それぞれFR1〜FR4)および3個の相補性決定領域(それぞれCDR1〜CDR3)から本質的になり、ここで、CDR1は配列番号85であり、CDR2は配列番号91であり、およびCDR3は配列番号99である。
本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第1のISVは、01B6(配列番号17)、01E2(配列番号18)、01H12(配列番号19)および03F11(配列番号20)からなる群より選択され、好ましくは前記第1のISVは、03F11(配列番号20)である。
本明細書において記載されるとおり、本発明のポリペプチドは、本発明の少なくとも2つのビルディングブロック、例えばナノボディなどのISVなどを含み、このうち、第2のビルディングブロック、ISV、例えばナノボディは、HIV感染に関与する第2の標的、すなわち、HIV感染のための共受容体(関連する多形バリアントを含む)に対して指向される。好ましい第2のビルディングブロックは、表A−2(A)において表される。
また、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインおよびポリペプチドが、一般に、その標的の全ての天然に存在するか合成のアナログ、バリアント、変異体、対立遺伝子、部分およびフラグメントに結合するか;または少なくとも、CXCR4などの共受容体、特にヒトCXCR4のアナログ、バリアント、変異体、対立遺伝子、部分およびフラグメントであって、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインおよびポリペプチドが共受容体、好ましくはCXCR4、および特にヒトCXCR4に結合するものと本質的に同じ抗原決定因子またはエピトープである、1つ以上の抗原決定因子またはエピトープを含むものに結合するであろうことが予測される。やはり、かかる場合において、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインおよびポリペプチドは、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインが(野生型)受容体、例えばCXCR4に結合する場合の親和性および特異性と同じであるかまたはこれと異なる(すなわち、これより高いかまたはこれより低い)親和性および/または特異性を有する、かかるアナログ、バリアント、変異体、対立遺伝子、部分およびフラグメントに結合することができる。
本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記ポリペプチドは、前記CRに対して、好ましくは表面プラズモン共鳴により測定される場合に、少なくとも約102M−1s−1、少なくとも約103M−1s−1、少なくとも約104M−1s−1、少なくとも約105M−1s−1、少なくとも約106M−;1s−;1、107M−1s−1、少なくとも約108M−1s−1、少なくとも約109M−1s−1、および少なくとも約1010M−;1s−1からなる群より選択されるon速度定数(Kon)を有し、前記CRは、好ましくはCXCR4である。
本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記ポリペプチドは、前記CRに対して、好ましくは表面プラズモン共鳴により測定される場合に多くとも約10−3s−1、多くとも約10−4s−1、多くとも約10−5s−1、多くとも約10−6s−1、多くとも約10−7s−1、多くとも約10−8s−1、多くとも約10−9s−1、および多くとも約10−10s−1からなる群より選択されるoff速度定数(Koff)を有し、前記CRは、好ましくはCXCR4である。
本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記ポリペプチドは、前記CRに対して、好ましくは表面プラズモン共鳴により測定される場合に、多くとも約10−7M、多くとも約10−8M、多くとも約10−9M、多くとも約10−10M、多くとも約10−11M、および多くとも約10−12Mからなる群より選択される解離定数(KD)を有し、前記CRは、好ましくはCXCR4である。
本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第2のISVは、好ましくはSPRにより測定される場合に、例えばKinExAにより決定される場合に、10nM〜0.1pMの平均KD値で、例えば10nM以下の平均KD値で、さらにより好ましくは9nM以下、たと8、7、6、5、4、3、2、1、0.5nM未満、またはそれより低い、例えば400、300、200、100、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5pM未満、またはそれより低い、例えば0.4pM未満の平均KD値で、前記CRに結合し、前記CRは、好ましくはCXCR4である。
本発明のポリペプチドを設計する場合、第2のビルディングブロック、例えば第2のISVは、任意のアビディティー効果の影響に関わらず、親和性自体により選択することができる。
さらなる側面において、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第2のISVは、一価のものとして測定される場合に高親和性を有する。
本発明はまた、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記平均KDは、一価の第2のISVについての、例えばSPR、FACSまたはELISAなどの当該分野において公知の任意の技術により(間接的に)決定される。
本発明の第2のISVは、例えば、前記共受容体、および特にヒトCXCR4の第2の抗原決定因子、エピトープ、部分、ドメイン、サブユニットまたは立体構造(利用可能である場合は)に対して指向され得る。
本発明の第2の標的は、共受容体としてHIVの侵入に関与することが知られる、細胞の表面上の細胞受容体などの任意の標的であってよい。
したがって、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第2のISVは、例えばCR、例えばCXCR4などの前記第2の標的へのHIVの結合を、例えば前記第2のISVにおける不在下における阻害と比較して、例えば約10%、20%、30%、40%、50%、60%、80%、90%、および好ましくは95%またはさらには100%阻害する。
したがって、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第2のISVは、前記第2の標的が関与するHIV感染の薬理学的効果、例えば標的細胞へのHIVの侵入、HIVの複製、HIV逆転写酵素活性、HIVにより誘導される細胞死、および/またはHIVにより誘導される細胞−細胞シンシチウム形成などを、例えば前記第2のISVにおける不在下における薬理学的効果と比較して、約20%、30%、40%、50%、60%、80%、90%、および好ましくは95%またはさらには100%阻害する。
したがって、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第2のISVは、例えば前記第2のISVにおける不在下における転置と比較して、HIVのうちの約20%、30%、40%、50%、60%、80%、90%、および好ましくは95%以上を、前記共受容体に転置する。
好ましくは、ポリペプチドは、結合した場合、HIV感染を損なうかまたはこれを阻害する。好ましい態様において、前記第2の標的および/または前記第2の標的の機能は、二重特異性ポリペプチドの結合の後で損なわれないか、僅かしか損なわれない。結果的に、二重特異性ポリペプチドの結合は、限定された、または無視し得る副作用および/または毒性をもたらす。
本明細書において用いられる場合、共受容体は、限定することなく、HIV外被タンパク質に結合することができる共受容体の細胞外部分を含む。当業者は、例えばCXCR4、CCR5、CCR1、CCR2、CCR3、CCR8、CX3CR1、FPRL1、GPR1、GPR15、APJ、STRL33およびD6などのHIV感染のための共受容体の配列、機能およびリガンドについてのより多くの情報は、OMIMおよびUniprotウェブサイトを介して見出すことができることを理解するであろう。具体的なOMIMおよびUniprotの受入番号は、以下の表において提供される。
本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記CRは、CXCR4、CCR5、CCR1、CCR2、CCR3、CCR8、CX3CR1、CXCR6、FPRL1、GPR1、GPR15、APJ、STRL33およびD6、ならびにこれらの多形バリアントからなる群より選択される。好ましくは前記共受容体は、CXCケモカイン受容体4(CXCR4)である。共受容体は、好ましくはヒト共受容体、好ましくはヒトCXCR4である。
C−Cケモカイン受容体5型、別名CCR5またはCD195は、ケモカインのための受容体として作用することにより免疫系に関与する、白血球細胞の表面上のタンパク質である。この受容体のための天然リガンド、RANTES、MIP-1βおよびMIP-1α。好ましくは、CCR5アミノ酸配列は、
により表される。
CCR1はまた、CD191(表面抗原分類191)としても指定されている。この受容体のリガンドとして、マクロファージ炎症タンパク質1アルファ(MIP-1アルファ)、RANTES(regulated on activation normal T expressed and secreted)タンパク質、単球走化性タンパク質3(MCP-3)、および骨髄球系前駆細胞阻害因子1(MPIF-1)が挙げられる。
C−Cケモカイン受容体2型(CCR2またはCD192)。CCR2は、2つの主要な形態、CC CKR2AおよびCC CKR2Bを有する。CCR2は、CCL2のための受容体であり、CC CKR2Aのための主要なアゴニストはMCP1であり、一方、MCP1およびMCP3はいずれも、CC CKR2Bアイソフォームのためのリガンドである。
C−Cケモカイン受容体3型(CCR3)は、ヒトにおいてはCCR3遺伝子によりコードされるタンパク質である(CD193としても指定されている)。この受容体は、エオタキシン(CCL11)、エオタキシン−3(CCL26)、MCP-3(CCL7)、MCP-4(CCL13)、およびRANTES(CCL5)を含む多様なケモカインに結合し、これに応答する。
ケモカイン(C−Cモチーフ)受容体8、別名CCR8は、ヒトにおいてはCCR8遺伝子によりコードされるタンパク質である。CCR8はまた、CDw198としても指定されている。CCR8のリガンドは、CCL1である。CCL8はまた、CCR8アゴニストとしても機能する。
CX3Cケモカイン受容体1(CX3CR1)、別名フラクタルカイン受容体またはGタンパク質共役受容体13(GPR13)は、ヒトにおいては、CX3CR1遺伝子によりコードされるタンパク質である。この受容体は、ケモカインCX3CL1(またニューロタクチンまたはフラクタルカインとも称される)に結合する。
C−X−Cケモカイン受容体6型(CXCR6)は、ヒトにおいてはCXCR6遺伝子によりコードされるタンパク質である。CXCR6はまた、CD186(表面抗原分類186)およびSTRL33としても指定されている。STRL33は、リンパ系組織および活性化されたT細胞において発現され、活性化された末梢血リンパ球において誘導される。STRL33は、ケモカインのうちの1つのための受容体である。この受容体のための他の名称は、BonzoおよびTYMSTRである。
FPRL1:N−ホルミルペプチド受容体2は、ヒトにおいてはFPR2遺伝子によりコードされるGタンパク質共役受容体(GPCR)タンパク質である。
GPR1は、膜貫通型受容体のGタンパク質共役受容体ファミリーのメンバーである。それは、ケメリンのための受容体として機能する。
Gタンパク質共役受容体15(GPR15)は、ヒトにおいてはGPR15遺伝子によりコードされるタンパク質、オーファンのヘテロ三量体グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)共役受容体である。
アペリン受容体(別名APJ受容体)は、アペリンおおよびApela/ELABELA/Toddlerに結合するGタンパク質共役受容体である。
D6またはケモカイン結合タンパク質2は、ヒトにおいてはCCBP2遺伝子によりコードされるタンパク質である。
CXCR4はまた、フーシンまたはCD184としても知られる。CXCR4の機能の概要は、例えばSteenら(Targeting CXCR4 in HIV Cell-Entry Inhibition, Mini-Reviews in Medicinal Chemistry, 2009, 9, 1605-1621)において提供される。CXCR4の機能は、主に、CXCR4と、その天然リガンドであるストロマ細胞由来因子1(SDF-1)、別名CXCL12(ケモカインC−X−Cモチーフリガンド12)との相互作用により制御される。しかし、MIFはまた、CXCR4のためのリガンドとしても機能することができる(例えば、Schwartz et al., FEBS Lett 2009, 583: 2749; Bernhagen et al., Nat. Med. 2007, 13: 587を参照)。SDF-1は、2つの遺伝子の選択的スプライシングにより産生される2つの形態、SDF-1α/CXC12aおよびSDF-1β/CXC12bにおいて見出される。CXCR4は、多くの他のケモカイン受容体より広範に発現され、長年、その天然リガンドであるSDF-1との関係において、厳密に一対一(monogamous)であると考えられていた。しかし、CXCR7はまた、SDF-1をリガンドとして用い、最近の証拠は、ユビキチンがCXCR4のリガンドとしても機能することを明らかにした(Saini V et al., (2010). J. Biol. Chem. 285 (20): 15566-76)。CXCR4/SDF-1系は、in vivoでB細胞、形質細胞、CD4
+T細胞および樹状細胞の走化性を制御し、活性化された上皮細胞上での揺らぐ(rolling)T細胞の堅固な接着、およびそれらのその後の経内皮遊走を活性化することから、免疫細胞のトラフィッキングに関与する。CXCR4/SDF-1系は、正常な骨髄造血およびリンパ球新生のために必要とされ、さらに、多くの臓器系の適切な胚発生のために重要である。CXCR4は、末梢血リンパ球、脾臓、胸腺、脊髄、心臓、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、膵臓、小脳、大脳皮質および髄質、脳毛細血管、冠動脈および臍帯内皮細胞などの多くの組織において発現される。CXCR4またはSDF-1を欠失するマウスは、造血発生の障害、脱線した小脳ニューロンの遊走、大血管の形成不全、および心不全を引き起こし得る心室中隔欠損を有する(例えば、Ma et al., PNAS 1998, 95:9448-9453; Zou et al., Nature 1998, 393:595-599を参照)。好ましくは、CXCR4アミノ酸配列は、
により表される。
CXCR4、CCR5、CCR1、CCR2、CCR3、CCR8、CX3CR1、FPRL1、GPR1、GPR15、APJ、STRL33およびD6は、HIVにより共受容体として細胞に侵入するために用いられ得るが、一方で、CXCR4、CCR5、CCR1、CCR2、CCR3、CCR8、CX3CR1、FPRL1、GPR1、GPR15、APJ、STRL33およびD6の「天然の」機能は、ケモカインシグナル伝達におけるものである。共受容体(第2の標的)の「天然の」機能は、前記共受容体により(HIV結合の不在下において)惹起される、測定可能な生物学的または生化学的特性の任意の変化に関し、これは、ケモカインシグナル伝達に起因する細胞の生理学的変化、例えば増殖、分化、遊走、生存、アポトーシス、輸送プロセス、代謝、運動能、サイトカイン放出、サイトカイン組成物、セカンドメッセンジャー、酵素、受容体などの変化を含む。好ましくは、標的の機能は、当該分野において周知であるような細胞培養ベースの力価アッセイにより決定される。共受容体の「天然の」機能は、当業者に公知の任意の好適なアッセイ、例えばELISA、FACS、スキャッチャード分析、ALPHASCREEN(登録商標)、SPR、機能アッセイなどにより、例えば本明細書において議論されるように、決定することができる。
本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインおよびポリペプチドの、およびこれを含む組成物の、前記CRにおける天然の機能に対する効力または力価は、関与する特定の疾患または障害に依存して、それら自体公知の任意の好適なin vitroアッセイ、細胞ベースのアッセイ、in vivoアッセイおよび/または動物モデル、または任意のその組み合わせを用いて試験することができる。好適なアッセイおよび動物モデルは、当業者には明らかであり、例えば、リガンド転置アッセイ(Burgess et al., Cancer Res 2006 66:1721-9)、二量体形成アッセイ(WO2009/007427A2, Goetsch, 2009)、シグナル伝達アッセイ(Burgess et al., Mol Cancer Ther 9:400-9)、増殖/生存アッセイ(Pacchiana et al., J Biol Chem 2010 Sep M110.134031)、細胞接着アッセイ(Holt et al., Haematologica 2005 90:479-88)および遊走アッセイ(Kong-Beltran et al., Cancer Cell 6:75-84)、内皮細胞出芽アッセイ(Wang et al., J Immunol. 2009; 183:3204-11)、およびin vivo異種移植片モデル(Jin et al., Cancer Res. 2008 68:4360-8)、ならびに、以下の実験の部および本明細書において引用される先行技術において用いられるアッセイおよび動物モデルを含む。前記第2の標的の阻害を表す手段は、IC50による。
一側面において、本開示は、HIVの、共受容体、好ましくはCXCR4への結合を阻害する免疫グロブリン単一可変ドメインを提供し、この共受容体からの天然リガンドを転置しない。
本発明は、前述の請求項のいずれかに記載のポリペプチドに関し、ここで、前記ポリペプチドは、前記CRに対する天然リガンドの結合を、約50%未満、例えば40%、30%または20%未満、またはわずか10%未満、例えば5%未満、阻害する。
いくつかの態様において、天然リガンドは、ストロマ細胞由来因子1ベータ(SDF-1β)またはストロマ細胞由来因子1アルファ(SDF-1α)である。いくつかの態様において、本発明のポリペプチドの存在下におけるCXCR4からのSDF-1αまたはSDF-1βの転置のIC50は、10nM以上である。いくつかの態様において、免疫グロブリン単一可変ドメインの存在下におけるCXCR4からのSDF-1αまたはSDF-1βの転置のIC50は、は、250nM以上である。いくつかの態様において、本発明のポリペプチドの存在下におけるCXCR4からのSDF-1αまたはSDF-1βの転置のIC50は、1μM以上である。いくつかの態様において、免疫グロブリン単一可変ドメインの存在下におけるCXCR4からのSDF-1αまたはSDF-1βの転置のIC50は、HIV阻害のIC50よりも大きい。
いくつかの態様において、HIV阻害のIC50は、50nM未満、10nM未満、または1nM未満である。態様において、ポリペプチドの存在下におけるCXCR4からのSDF-1αまたはSDF-1βの転置のIC50は、HIV阻害のIC50よりも大きい。
いくつかの態様において、免疫グロブリン単一可変ドメインまたはそのポリペプチド構築物の存在下におけるCXCR4からのSDF-1αまたはSDF-1βの転置のIC50は、免疫グロブリン単一可変ドメインまたはそのポリペプチド構築物によるCXCR4などのCRへのHIVの結合の阻害のIC50よりも、例えば1pM以上、10pM以上、100pM以上、500pM以上、1nM以上、10nM以上、20nM以上、30nM以上、40nM以上、50nM以上、60nM以上、70nM以上、80nM以上、100nM以上、500nM以上、1μM以上、10μM以上、50μM以上、100μM以上、1mMまでも大きい。
いくつかの態様において、免疫グロブリン単一可変ドメインまたはそのポリペプチドの存在下におけるCXCR4からのSDF-1αまたはSDF-1βの転置のIC50は、免疫グロブリン単一可変ドメインまたはそのポリペプチドによるCXCR4へのHIVの結合の阻害のIC50よりも、1%以上、2%以上、5%以上、10%以上、20%以上、50%以上、100%以上、2×以上、5×以上、10×以上、20×以上、50×以上、100×以上、1000×以上、10,000×以上まで、大きい。
いくつかの態様において、本発明のポリペプチドによる、CD4および/または例えばCXCR4などの共受容体へのHIVの結合の阻害は、AMD3100によるCXCR4へのHIVの結合の阻害より強い(例えば、これより低いIC50を有する)。
いくつかの態様において、本発明のポリペプチドによる、CD4および/または例えばCXCR4などの共受容体へのHIVの結合の阻害は、283D2-20GS-283D4によるCXCR4へのHIVの結合の阻害より強い(例えば、より低いIC50を有する)(WO2009/138519を参照)。
多様な細胞表面受容体が活性化のために二量体形成を必要とすることから、かかる場合においては、本発明の第2のISVがこれらの二量体形成部位を損なわないことが好ましい。
いくつかの態様において、免疫グロブリン単一可変ドメインおよびそのポリペプチドは、共受容体、例えばCXCR4から天然リガンドを転置しない。いくつかの態様において、天然リガンドは、ストロマ細胞由来因子1β(SDF-1β)またはストロマ細胞由来因子1α(SDF-1α)である。
転置とは、本明細書において用いられる場合、部分的または完全な転置の両方を含む。したがって、本開示は、免疫グロブリン単一可変ドメインおよび1つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドであって、CR、例えばCXCR4から天然リガンドを転置しない、または天然リガンドを1%未満、2%未満、5%未満、10%未満、20%未満、30%未満、40%未満、50%未満、60%未満、70%未満、80%未満、90%未満、99%未満まで、転置するものを包含する。いくつかの態様において、免疫グロブリン単一可変ドメインまたはそのポリペプチドの存在下における、CR、例えばSDF-1αまたはSDF-1βなどからの天然リガンドの転置のIC50は、1pM以上、10pM以上、100pM以上、500pM以上、1nM以上、10nM以上、20nM以上、30nM以上、40nM以上、50nM以上、60nM以上、70nM以上、80nM以上、100nM以上、500nM以上、1μM以上、10μM以上、50μM以上、100μM以上、1mMまでである。
本発明はまた、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第2のISVは、4個のフレームワーク領域(それぞれFR1〜FR4)および3個の相補性決定領域(それぞれCDR1〜CDR3)から本質的になり、ここで、
(i)CDR1は、配列番号34〜40;および配列番号34〜40と1、2または3個のアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列8からなる群より選択され;
(ii)CDR2は、配列番号48〜56;および配列番号48〜56と1、2または3個のアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列からなる群より選択され;および
(iii)CDR3は、配列番号67〜75、および配列番号67〜75と1、2、3または4個のアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列からなる群より選択される。
本発明はまた、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第2のISVは、4個のフレームワーク領域(それぞれFR1〜FR4)および3個の相補性決定領域(それぞれCDR1〜CDR3)から本質的になり、ここで、前記ISVは、以下からなる群より選択される:
− CDR1は配列番号34であり、CDR2は配列番号48であり、およびCDR3は配列番号67である;
− CDR1は配列番号34であり、CDR2は配列番号49であり、およびCDR3は配列番号68である;
− CDR1は配列番号35であり、CDR2は配列番号50であり、およびCDR3は配列番号69である;
− CDR1は配列番号36であり、CDR2は配列番号51であり、およびCDR3は配列番号70である;
− CDR1は配列番号37であり、CDR2は配列番号52であり、およびCDR3は配列番号71である;
− CDR1は配列番号35であり、CDR2は配列番号53であり、およびCDR3は配列番号72である;
− CDR1は配列番号38であり、CDR2は配列番号54であり、およびCDR3は配列番号73である;
− CDR1は配列番号39であり、CDR2は配列番号55であり、およびCDR3は配列番号74である;および
− CDR1は配列番号40であり、CDR2は配列番号56であり、およびCDR3は配列番号75である。
したがって、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第2のISVは、4個のフレームワーク領域(それぞれFR1〜FR4)および3個の相補性決定領域(それぞれCDR1〜CDR3)から本質的になり、ここで、CDR1は配列番号35であり、CDR2は配列番号50であり、およびCDR3は配列番号69である。
したがって、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第2のISVは、238D4(配列番号4)、281A5(配列番号5)、281E10(配列番号6)、281D4(配列番号7)、281A6(配列番号8)、281F12(配列番号9)、283B6(配列番号10)、283E2(配列番号11)、283F1(配列番号12)、15F5(配列番号13)、15G11(配列番号14)、15A1(配列番号15)および10C3(配列番号16)からなる群より選択され、好ましくはここで、前記第2のISVは、281F12(配列番号9)である。
一態様において、本発明は、第1および第2の免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISV)を含むポリペプチドに関し、ここで、前記第1のISVは、細胞の表面上に存在するCD4および/または多形バリアントに結合し;前記第2のISVは、前記細胞の表面上に存在する共受容体(CR)に結合し、好ましくはここで、前記CRは、CXCR4、CCR5、CCR1、CCR2、CCR3、CCR8、CX3CR1、CXCR6、FPRL1、GPR1、GPR15、APJおよびD6ならびに関連する多形バリアントからなる群より選択される。好ましくは前記CRは、CXCR4である。
好ましい態様において、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第1のISVは、4個のフレームワーク領域(それぞれFR1〜FR4)および3個の相補性決定領域(それぞれCDR1〜CDR3)から本質的になり、ここで、
(i)CDR1は、配列番号82〜85;および配列番号82〜85と1、2または3個のアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列からなる群より選択され;
(ii)CDR2は、配列番号88〜91;および配列番号88〜91と1、2または3個のアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列からなる群より選択され;および
(iii)CDR3は、配列番号96〜99,および配列番号96〜99と1、2、3または4個のアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列からなる群より選択され;
および、ここで、前記第2のISVは、4個のフレームワーク領域(それぞれFR1〜FR4)および3個の相補性決定領域(それぞれCDR1〜CDR3)から本質的になり、ここで、
(i)CDR1は、配列番号34〜40;および配列番号34〜40と1、2または3個のアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列からなる群より選択され;
(ii)CDR2は、配列番号48〜56;および配列番号48〜56と1、2または3個のアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列からなる群より選択され;および
(iii)CDR3は、配列番号67〜75、および配列番号67〜75と1、2、3または4個のアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列からなる群より選択される。
本発明はまた、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第1のISVは、4個のフレームワーク領域(それぞれFR1〜FR4)および3個の相補性決定領域(それぞれCDR1〜CDR3)から本質的になり、ここで、前記ISVは、以下からなる群より選択される:
− CDR1は配列番号82であり、CDR2は配列番号88であり、およびCDR3は配列番号96である;
− CDR1は配列番号83であり、CDR2は配列番号89であり、およびCDR3は配列番号97である;
− CDR1は配列番号84であり、CDR2は配列番号90であり、およびCDR3は配列番号98;および
− CDR1は配列番号85であり、CDR2は配列番号91であり、およびCDR3は配列番号99である。
ここで、前記第2のISVは、4個のフレームワーク領域(それぞれFR1〜FR4)および3個の相補性決定領域(それぞれCDR1〜CDR3)から本質的になり、ここで、前記ISVは、以下からなる群より選択される:
− CDR1は配列番号34であり、CDR2は配列番号48であり、およびCDR3は配列番号67である;
− CDR1は配列番号34であり、CDR2は配列番号49であり、およびCDR3は配列番号68である;
− CDR1は配列番号35であり、CDR2は配列番号50であり、およびCDR3は配列番号69である;
− CDR1は配列番号36であり、CDR2は配列番号51であり、およびCDR3は配列番号70である;
− CDR1は配列番号37であり、CDR2は配列番号52であり、およびCDR3は配列番号71である;
− CDR1は配列番号35であり、CDR2は配列番号53であり、およびCDR3は配列番号72である;
− CDR1は配列番号38であり、CDR2は配列番号54であり、およびCDR3は配列番号73である;
− CDR1は配列番号39であり、CDR2は配列番号55であり、およびCDR3は配列番号74である;および
− CDR1は配列番号40であり、CDR2は配列番号56であり、およびCDR3は配列番号75である。
好ましい態様において、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第1のISVは、4個のフレームワーク領域(それぞれFR1〜FR4)および3個の相補性決定領域(それぞれCDR1〜CDR3)から本質的になり、ここで、
(i)CDR1は、配列番号85、および配列番号85と1、2または3個のアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列からなる群より選択され;
(ii)CDR2は、配列番号91、および配列番号91と1、2または3個のアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列からなる群より選択され;および
(iii)CDR3は、配列番号99、および配列番号99と1、2、3または4個のアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列からなる群より選択される;
および、ここで、前記第2のISVは、4個のフレームワーク領域(それぞれFR1〜FR4)および3個の相補性決定領域(それぞれCDR1〜CDR3)から本質的になり、ここで、
(i)CDR1は、配列番号35、および配列番号35と1、2または3個のアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列からなる群より選択され;
(ii)CDR2は、配列番号50、および配列番号50と1、2または3個のアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列からなる群より選択され;および
(iii)CDR3は、配列番号69、および配列番号69と1、2、3または4個のアミノ酸の差異を有するアミノ酸配列からなる群より選択される。
好ましい態様において、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第1のISVは、4個のフレームワーク領域(それぞれFR1〜FR4)および3個の相補性決定領域(それぞれCDR1〜CDR3)から本質的になり、ここで、
(i)CDR1は、配列番号85により表され;
(ii)CDR2は、配列番号91により表され;および
(iii)CDR3は、配列番号99により表され;
および、ここで、前記第2のISVは、4個のフレームワーク領域(それぞれFR1〜FR4)および3個の相補性決定領域(それぞれCDR1〜CDR3)から本質的になり、ここで、
(i)CDR1は、配列番号35により表され;
(ii)CDR2は、配列番号50により表され;および
(iii)CDR3は、配列番号69により表される。
好ましい態様において、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第1のISVは、01B6(配列番号17)、01E2(配列番号18)、01H12(配列番号19)および03F11(配列番号20)からなる群より選択され、およびここで、前記第2のISVは、238D4(配列番号4)、281A5(配列番号5)、281E10(配列番号6)、281D4(配列番号7)、281A6(配列番号8)、281F12(配列番号9)、283B6(配列番号10)、283E2(配列番号11)、283F1(配列番号12)、15F5(配列番号13)、15G11(配列番号14)、15A1(配列番号15)および10C3(配列番号16)からなる群より選択される。
好ましい態様において、本発明は、03F11-9GS-281F12(配列番号101)、03F11-25GS-281F12(配列番号102)、03F11-35GS-281F12(配列番号103)、281F12-9GS-03F11(配列番号104)、281F12-25GS-03F11(配列番号105)、281F12-35GS-03F11(配列番号106)、15G11(Q108L)-15GS-ALB11-15GS-03F11(Q108L)(配列番号107)、15F05(Q108L)-15GS-ALB11-15GS-03F11(Q108L)(配列番号108)、および281F12(Q108L)-15GS-ALB11-15GS-03F11(Q108L)(配列番号109)からなる群より選択されるポリペプチドに関する。
本明細書においてさらに記載されるであろう特定の、しかし非限定的な本発明の側面において、本発明のポリペプチドは、それらが誘導された元の免疫グロブリン単一可変ドメインと比較して、(本明細書においてさらに記載されるとおり)延長された血清中での半減期を有する。例えば、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインは、本発明のアミノ酸配列の半減期が延長した誘導体を提供するために、半減期を延長する1つ以上の基または部分と(化学的にまたは他の方法で)連結していてもよい(PEGなど)。
例において示すとおり、半減期の延長は、力価に実質的に影響を及ぼさなかった。このことは、半減期が延長した二重特異性構築物が、なお、それらのそれぞれの標的に同時に結合することができることを示す。
本発明の特定の側面において、本発明の化合物または本発明のポリペプチドは、対応する本発明のアミノ酸配列と比較して、延長された半減期を有していてもよい。かかる化合物およびポリペプチドのいくつかの好ましいが非限定的な例は、本明細書におけるさらなる開示に基づいて、当業者には明らかであり、例えば、その半減期が延長するように(例えば、ペグ化により)化学修飾された、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチド;血清タンパク質(血清アルブミンなど)に結合するための少なくとも1つのさららなる結合部位を含む、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン;または、本発明のアミノ酸配列の半減期を延長する少なくとも1つの部分(および特に少なくとも1つのアミノ酸配列)に連結された少なくとも1つの本発明のアミノ酸配列を含む、本発明のポリペプチドを含む。かかる半減期を延長する部分または免疫グロブリン単一可変ドメインを含む本発明のポリペプチドの例は、本明細書におけるさらなる開示に基づいて、当業者には明らかであり;および例えば、限定することなく、1つ以上の本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインが、1つ以上の血清タンパク質またはそのフラグメント(例えば(ヒト)血清アルブミンまたはその好適なフラグメント)に、または血清タンパク質に結合することができる1つ以上の結合単位(例えば、血清アルブミン(ヒト血清アルブミンなど)、IgGなどの血清免疫グロブリン、もしくはトランスフェリンなどの血清タンパク質に結合することができる、ドメイン抗体、ドメイン抗体としての使用のために好適な免疫グロブリン単一可変ドメイン、単一ドメイン抗体、単一ドメイン抗体としての使用のために好適な免疫グロブリン単一可変ドメイン、「dAb」、dAbとしての使用のために好適な免疫グロブリン単一可変ドメイン、またはナノボディなど;さらなる説明および本明細書において言及される参考文献に対して参照がなされる)に好適に連結されたポリペプチド;本発明のアミノ酸配列がFc部分(例えばヒトFc)またはその好適な部分もしくはフラグメントに連結されたポリペプチド;あるいは、1つ以上の本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインが、血清タンパク質に結合することができる1つ以上の小タンパク質またはペプチド(例えば限定することなく、WO 91/01743, WO 01/45746、WO 02/076489、WO2008/068280、WO2009/127691およびPCT/EP2011/051559において記載されるタンパク質およびペプチド)に好適に連結されたポリペプチドを含む。
一般に、半減期が延長した本発明の化合物またはポリペプチドは、好ましくは、対応する本発明のアミノ酸配列それ自体の半減期よりも、少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍、例えば少なくとも10倍または20倍より長い半減期を有する。例えば、半減期が延長した本発明の化合物またはポリペプチドは、例えばヒトにおいて、対応する本発明のアミノ酸配列それ自体と比較して、1時間より長く、好ましくは2時間より長く、より好ましくは6時間より長く、例えば12時間より長く、またはさらに24、48または72時間より長く延長した半減期を有していてもよい。
好ましいが非限定的な本発明の側面において、本発明のかかる化合物またはポリペプチドは、例えばヒトにおいて、対応する本発明のアミノ酸配列それ自体と比較して、1時間より長く、好ましくは2時間より長く、より好ましくは6時間より長く、例えば12時間より長く、またはさらに24、48または72時間より長く延長した血清半減期を有する。
別の好ましいが非限定的な本発明の側面において、本発明のかかる化合物またはポリペプチドは、少なくとも約12時間、好ましくは少なくとも24時間、より好ましくは少なくとも48時間、さらにより好ましくは少なくとも72時間以上の血清半減期を示す。例えば、本発明の化合物またはポリペプチドは、少なくとも5日間(例えば約5〜10日間)、好ましくは少なくとも9日間(例えば約9〜14日間)、より好ましくは少なくとも約10日間(例えば約10〜15日間)、または少なくとも約11日間(例えば約11〜16日間)、より好ましくは少なくとも約12日間(例えば約12〜18日間以上)、または14日間より長い(例えば約14〜19日間)半減期を有していてもよい。
特に好ましいが非限定的な本発明の側面において、本発明は、第1および第2の免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISV)を含み;および本明細書において記載されるような1つ以上の(好ましくは1つの)血清アルブミン結合免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えば、Alb8、Alb23、Alb129、Alb132、Alb11、Alb11 (S112K)-A、Alb82、Alb82-A、Alb82-AA、Alb82-AAA、Alb82-G、Alb82-GG、Alb82-GGGの血清アルブミン結合免疫グロブリン単一可変ドメイン(以下の表HLEを参照)をさらに含む、本発明のポリペプチドを提供する。
したがって、本発明は、血清タンパク質結合部分をさらに含む、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関する。
本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記血清タンパク質結合部分は、血清アルブミンに結合する。
本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記血清タンパク質結合部分は、免疫グロブリン単一可変ドメイン結合血清アルブミンである。
本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記ISV結合血清アルブミンは、4個のフレームワーク領域(それぞれFR1〜FR4)および3個の相補性決定領域(それぞれCDR1〜CDR3)から本質的になり、ここで、CDR1は、SFGMS(配列番号124)、CDR2は、SISGSGSDTLYADSVKG(配列番号125)、およびここで、CDR3はGGSLSR(配列番号126)である。
本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記ISV結合血清アルブミンは、Alb8、Alb23、Alb129、Alb132、Alb11、Alb11 (S112K)-A、Alb82、Alb82-A、Alb82-AA、Alb82-AAA、Alb82-G、Alb82-GG、Alb82-GGGを含む。
本発明のポリペプチドにおいて、2つ以上のビルディングブロック、例えばナノボディなどのISV、および任意に1つ以上のポリペプチド、1つ以上の他の基、薬物、剤、残基、部分またはビルディングユニットは、互いに直接連結されていても(例えばWO 99/23221において記載されるように)、および/または、1つ以上の好適なスペーサーまたはリンカーもしくは任意のその組み合わせを介して互いに連結されていてもよい。多価および多重特異性のポリペプチドにおける使用のための好適なスペーサーまたはリンカーは、当業者には明らかであり、一般に、当該分野においてアミノ酸配列を連結するために用いられる任意のリンカーまたはスペーサーであってよい。好ましくは、前記リンカーまたはスペーサーは、医薬用途のために意図されたタンパク質またはポリペプチドを構築することにおける使用のために好適である。予測とは対照的に、例において示すとおり、第1のISVと第2のISVとの間のリンカーの長さの明らかな影響は存在しなかった。
いくつかの特に好ましいスペーサーとして、抗体フラグメントまたは抗体ドメインを連結するために当該分野において使用されるスペーサーおよびリンカーが挙げられる。これらは、上で引用される一般的な背景技術において言及されるリンカー、ならびに、例えばダイアボディーまたはScFvフラグメントを構築するために当該分野において用いられるリンカーを含む(このことに関してはしかし、ダイアボディーにおいて、およびScFvフラグメントにおいては、用いられるリンカー配列は、妥当なVHおよびVLドメインが一緒になって完全な抗原結合部位を形成することを可能にする長さ、可撓性の程度および他の特性を有するべきであるが、一方で、本発明のポリペプチドにおいて用いられるリンカーの長さまたは可撓性については何らの特定の限定は存在しないことに留意すべきである。なぜならば、各々のナノボディが、それ自体により完全な抗原結合部位を形成するからである)。
例えば、リンカーは、好適なアミノ酸配列、および特に、1〜50、好ましくは1〜30、例えば1〜10アミノ酸残基のアミノ酸配列であってよい。かかるアミノ酸配列のいくつかの好ましい例として、gly−serリンカー、例えば(gly
xser
y)
z型のもの、例えばWO 99/42077において記載されるような(gly
4ser)
3または(gly
3ser
2)
3など、ならびに本明細書において言及されるAblynxによる出願(例えばWO 06/040153およびWO 06/122825を参照)において記載されるGS30、GS15、GS9およびGS7リンカー、ならびにヒンジ様領域、例えば天然に存在する重鎖抗体のヒンジ領域または類似の配列(WO 94/04678において記載されるような)が挙げられる。好ましいリンカーは、以下の表:リンカーにおいて表される。
表リンカー
いくつかの他の特に好ましいリンカーは、ポリアラニン(例えばAAA)、ならびにリンカーGS30(WO 06/122825における配列番号85)およびGS9(WO 06/122825における配列番号84)である。
他の好適なリンカーは、一般に、有機化合物またはポリマー、特に、医薬用途のためのタンパク質における使用のために好適なものを含む。例えば、ポリ(エチレングリコール)部分は、抗体ドメインを連結するために用いられてきた;例えばWO 04/081026を参照。
用いられるリンカーの長さ、可撓性の程度、および/または他の特性は(ScFvフラグメントにおいて用いられるリンカーについて普通である限り決定的ではないにしろ)、最終的な本発明のポリペプチドの特性(ケモカインに対する、または他の抗原の1つ以上に対する、親和性、特異性またはアビディティーを含むがこれらに限定されない)に対して何らかの影響を有し得ることは、本発明の範囲内に包含される。本明細書における開示に基づいて、当業者は、任意に何らかの限定された慣用的な実験の後で、本発明の特定のポリペプチドにおける使用のための最適なリンカーを決定することができるであろう。
例えば、第1および第2の標的に対して指向されたビルディングブロック、ISVまたはナノボディを含む本発明の多価ポリペプチドにおいて、リンカーの長さおよび可撓性は、好ましくは、それが、ポリペプチド中に存在する本発明の各々のビルディングブロック、ISVまたはナノボディが、標的の各々において、そのコグネートな標的、例えば抗原決定因子に結合することを可能にするようなものである。やはり、本明細書における開示に基づいて、当業者は、任意に何らかの限定された慣用的な実験の後で、本発明の特定のポリペプチドにおける使用のための最適なリンカーを決定することができるであろう。
また、本発明のポリペプチド1つ以上の他の有利な特性または機能を付与するために、ならびに/または、誘導体の形成のための、および/もしくは官能基の付加のための1つ以上の部位を提供するために(例えば本発明のナノボディの誘導体について本明細書において記載されるとおり)用いられるリンカーも、本発明の範囲内である。例えば、1つ以上の荷電されたアミノ酸残基を含むリンカーは、改善された親水性の特性を提供することができ、一方、小さいエピトープまたはタグを形成するかこれを含むリンカーは、検出、同定および/または精製を目的として用いることができる。やはり、本明細書における開示に基づいて、当業者は、任意に何らかの限定された慣用的な実験の後で、本発明の特定のポリペプチドにおける使用のための最適なリンカーを決定することができるであろう。
最後に、本発明のポリペプチドにおいて2つ以上のリンカーが用いられる場合、これらのリンカーは、同じであっても異なっていてもよい。やはり、本明細書における開示に基づいて、当業者は、任意に何らかの限定された慣用的な実験の後で、本発明の特定のポリペプチドにおける使用のための最適なリンカーを決定することができるであろう。
通常は、発現および生成の容易性のために、本発明のポリペプチドは、直鎖状のポリペプチドであろう。しかし、本発明は、その最も広い意味において、それに限定されない。例えば、本発明のポリペプチドが3つ以上のビルディングブロック、ISVまたはナノボディを含む場合、それらを、3つ以上の「腕(arm)」を有するリンカーの使用により連結することが可能であり、この各々の「腕」は、ビルディングブロック、ISVまたはナノボディに連結されており、それにより「星状」の構築物が提供される。また、通常はあまり好ましくないが、環状の構築物を用いることも可能である。
したがって、本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記第1のISVおよび前記第2のISVおよびおそらくは前記ISV結合血清アルブミンは、互いに対して直接連結されるか、リンカーを介して連結される。
本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記リンカーは、5GS、7GS、9GS、10GS、15GS、18GS、20GS、25GSおよび30GSのリンカーからなる群より選択される。
本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関し、ここで、前記血清タンパク質結合部分は、非抗体ベースのポリペプチド(例えばPEG)である。
本発明の医学的文脈において、HIV感染は、処置されなかった場合に進行性に悪化してAIDSおよび潜在的には死をもたらす医学的状態の傾向である。HIV感染は、感染した個人においてCD4+T細胞の数の減少をもたらす。CD4+T細胞の臨界数より下では、細胞により媒介される免疫は事実上失われ、日和見性の微生物による多様な感染が現れ、後天性免疫不全症候群(AIDS)がもたらされる。(進行性)HIV感染のこれらの現象は、当該分野において周知である。
本発明のポリペプチドの薬理学的効果は、したがって、究極的には、HIV感染の少なくとも1つの、好ましくは1つより多くの結果を阻害または障害することに帰する。
一側面において、本開示は、対象におけるHIVタイター(例えばウイルス負荷)を減少させるための方法を提供し、該方法は、対象におけるHIVタイターを低下させるために、対象に、免疫グロブリン単一可変ドメイン、または1つ以上の本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドの治療有効量を投与することを含む。いくつかの態様において、投与された免疫グロブリン単一可変ドメインまたはそのポリペプチドは、CD4および/または例えばCXCR4受容体などのCRへのHIVの結合を阻害するが、好ましくは、前記CR、例えばCXCR4などから天然リガンドを転置しない。いくつかの態様において、投与された免疫グロブリン単一可変ドメインまたはそのポリペプチドは、最小限の望ましくない副作用のみを有する。
免疫グロブリン単一可変ドメインおよびそのポリペプチドは、CD4および/または例えばCXCR4などのCRへのHIVの結合を阻害する。CD4および/または例えばCXCR4などのCRに結合することにより、免疫グロブリン単一可変ドメインまたはそのポリペプチドは、HIVが細胞に侵入することを防止する。HIVは、細胞の環境の外においては長期にわたり生存できない。したがって、HIVが細胞に侵入できず、細胞外環境に存在し続ける場合、HIVは最終的に死んで体外に処分され、最終的に、個人におけるHIVタイターの低下がもたらされる。
対象におけるHIVの量(HIVタイター)を決定するための方法は、当該分野におけるルーチンである(上記を参照)。一般に、対象からの血液試料が提供され、HIVの量(例えばHIV粒子の量)が、直接的に(HIVの存在についてアッセイすることにより)、または間接的に(例えばHIVに対する抗体の存在についてアッセイすることにより)決定される。HIV、またはHIVに対する抗体の存在を決定することは、当該分野におけるルーチンであり、例えばELISAにより行うことができる。対象におけるHIVの量を決定するさらなる方法として、上で議論される機能阻害アッセイ、特定の抗原の存在および量を決定するアッセイ、例えばp24抗原試験(例えばPerkinElmerおよびAdvanced Bioscience Laboratoriesを通して市販されている)、および(例えば逆転写酵素活性を通して(例えば、ExaVir Load;Cavidi Tech-AB、Uppsala、Sweden;例えば、Sivapalasingam et al., J Clin Microbiol 2005, 43, 3793を参照))HIVゲノムをコードする特定の核酸の存在および量を決定するアッセイが挙げられる
本明細書において開示される方法は、HIV-1およびHIV-2を含むHIVの任意の形態、ならびに全てのサブクラス例えばHIV-1B、HIV-1Dなどに対して適用可能である。いくつかの態様において、本明細書において開示される方法は、サルウイルスSIVなどのHIVに関係するウイルスに対して適用可能である。
本発明は、それを必要とする(HIV、好ましくはHIV-1、好ましくはサブタイプCに感染した)対象を処置することにおける使用のための、本明細書において記載されるようなポリペプチドに関する。
本発明は、本明細書において記載されるようなポリペプチドを含む医薬組成物に関する。
本発明は、予防用および/または治療用ポリペプチドを、体内の特定の位置、組織または細胞型に送達するための方法に関し、該方法は、本明細書において記載されるようなポリペプチドを、対象に投与するステップを含む。
本発明は、それを必要とする対象を処置するための方法に関し、該方法は、本明細書において記載されるようなポリペプチドを投与することを含む。
また、本発明は、上記のような対象を処置するための方法に関し、ここで、前記対象は、HIV R5、HIV X4および/またはHIV X4R5に感染している。
一側面において、本開示は、HIVによる感染を罹患する患者を処置するための方法を提供し、該方法は、HIVによる感染を処置するために、免疫グロブリン単一可変ドメイン、または1つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド構築物を対象に投与することを含む。いくつかの態様において、投与された免疫グロブリン単一可変ドメインまたはそのポリペプチド構築物は、 CD4および/または例えばCXCR4などのCRへのHIVの結合を阻害するが、好ましくは、前記CR、例えばCXCR4などから天然リガンドを転置しない。いくつかの態様において、投与された免疫グロブリン単一可変ドメインまたはそのポリペプチド構築物は、最小限の望ましくない副作用のみを有する。
用語「HIV感染を罹患する患者を処置すること」とは、本明細書において用いられる場合、対象におけるHIV感染に関連する症状の重篤度(例えば日和見的微生物感染)または症状の数(例えば日和見感染の数)の減少をもたらす任意の方法を指す。
いくつかの態様において、HIV感染を罹患する患者を処置することは、前記対象における白血球細胞カウントの増大をもたらす。
いくつかの態様において、HIV感染を罹患する患者を処置することは、対象におけるCD4+T細胞の数の増加をもたらす。
いくつかの態様において、HIV感染を罹患する患者を処置することは、対象におけるHIVタイターの減少をもたらす。
したがって、本発明は、対象におけるHIVタイターを低下させるための方法に関し、該方法は、対象におけるHIVタイターを低下させるために、本明細書において記載されるようなポリペプチドの治療有効量を対象に投与することを含む。
いくつかの態様において、HIV感染を罹患する患者を処置することは、個人における日和見的微生物感染の数の減少をもたらす。
処置が有効であるか否かは、例えば、HIV感染に関連する1つ以上の生理学的パラメーターの変化(例えば、HIVタイターの低下、感染細胞の数の減少、CD4+T細胞の量の増大)を決定することにより、または全身レベルにおける対象の健康(例えば、日和見感染の数の減少)を評価することにより、評価することができる。
一側面において、本開示は、HIV感染を罹患する患者を最小限の望ましくない副作用で処置するための方法を提供する。HIVプロテアーゼ阻害剤およびHIV逆転写酵素阻害剤の投与を含む伝統的な抗HIV処置レジメン(例えばART)は、肝毒性、腹部膨満、食欲の喪失などを含む多くの望ましくない副作用を伴う。当業者は、例えば、肝毒性、腹部膨満などのレベルを評価することにより、望ましくない副作用が減少したか否かを決定することができる。いくつかの態様において、望ましくない副作用は、幹細胞動員と関連する副作用である。幹細胞動員のレベルを決定する方法は、当該分野において公知である。
対象は、本明細書において用いられる場合、HIV感染に対して感受性である哺乳動物(例えばヒト)、またはSIVなどの関連するウイルスによる感染に対して感受性である哺乳動物(例えばサル)を含む。いくつかの態様において、対象は霊長類である。いくつかの態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、対象は、1つ以上の抗HIV処置レジメン(例えば、ART治療またはその成分)を受けている最中か、既にそれを受けている。
本発明において示されるとおり、HIV株にとって、耐性を誘導するための一価のナノボディを用いる場合ですら、本発明のポリペプチドに対して耐性となることは、非常に困難である。
驚くべきことに、受容体の一方に対して耐性であるウイルスに対してすら、二重特異性ポリペプチドは、HIV1侵入の阻害においてピコモル濃度範囲における強力な効力を保持し、このことは、二重特異性ポリペプチドの腕の一方のみの機能性が、他方の腕が結合アビディティーを提供し得る場合には、強力な阻害のために十分であることを示唆している。
したがって、本発明は、HIVに感染した対象を処置するための方法に関し、該方法は、本明細書において記載されるようなポリペプチドを投与することを含み、ここで、前記HIVは、少なくとも3か月間、例えば少なくとも6か月間、またはさらにより長く、例えば9m、11m、1y、1.5y、2yなど、またはさらにより長くにわたり、前記ポリペプチドに対する耐性を発生しない(例えば、延長する)。
上の方法において、本発明のアミノ酸配列、例えばナノボディなどのISV、および/またはポリペプチド、および/またはそれを含む組成物を、用いられるべき特定の医薬処方物または組成物に依存して任意の好適な様式において投与することができる。したがって、本発明のアミノ酸配列、例えばナノボディなどのISV、および/またはポリペプチド、および/またはそれを含む組成物は、やはり用いられるべき特定の医薬処方物または組成物に依存して、例えば、経口で、腹腔内に(例えば静脈内に、皮下に、筋肉内に、または胃腸管を回避する任意の他の投与の経路を介して)、鼻腔内に、経皮的に、局所的に、坐剤により、吸入により、投与することができる。医師は、予防または処置されるべき疾患または障害および医師に周知の他の要因に依存して、好適な投与の経路およびかかる投与において用いられるべき好適な医薬処方物または組成物を選択することができるであろう。
本発明のアミノ酸配列、例えばナノボディなどのISV、および/またはポリペプチド、および/またはそれを含む組成物は、予防または処置されるべきHIV感染を予防および/または処置するために好適である処置の管理体制に従って投与される。医師は、一般に、処置されるべきHIV感染のステージ、処置されるべきHIV感染 の重篤度、および/またはその症状の重篤度、用いられるべき本発明の特定のアミノ酸配列、例えばナノボディなどのISV、またはポリペプチド、特定の投与の経路、および用いられるべき医薬処方物または組成物、患者の年齢、性別、体重、食事、一般的状態などの要因、ならびに医師に周知の類似の要因に依存して、好適な処置レジメンを決定することができるであろう。
一般に、処置レジメンは、1つ以上の本発明のアミノ酸配列、例えばナノボディなどのISV、および/またはポリペプチド、またはそれを含む1つ以上の組成物の、1つ以上の医薬有効量または用量での投与を含むであろう。投与すべき特定の量または用量は、やはり、上記の要因に基づいて、医師によって決定され得る。
一般に、本明細書において言及されるHIV感染の予防および/または処置について、ならびに特定の株または型、および処置されるべき疾患のステージ、用いられるべき本発明の特定のアミノ酸配列、例えばナノボディなどのISV、およびポリペプチドの力価、特定の投与の経路および用いられる特定の医薬処方物または組成物に依存して、本発明のアミノ酸配列、例えばナノボディなどのISV、およびポリペプチドは、一般に、体重1kgあたり1日あたり1グラム〜0.01ミリグラム、好ましくは体重1kgあたり1日あたり0.1グラム〜0.01ミリグラム、例えば体重1kgあたり1日あたり約0.1、1、10、100または1000ミリグラム、例えば対象の体重1kgあたり0.1mg〜25mgの量で;連続的に(例えば点滴により)、単一の日用量として、またはその日の間の複数の分割された用量として、投与されるであろう。医師は、一般に、本明細書において言及される要因に依存して、好適な日用量を決定することができる。また、特定の場合において、医師は、例えば上記の要因および医師の専門的判断に基づいて、これらの量から逸脱することを選択することができることは、明らかであろう。一般に、本質的に同じ経路を介して投与される同じ標的に対する比較可能な従来の抗体または抗体フラグメントについての通常投与される量から、しかし、親和性/アビディティー、効力、生体内分布、半減期および当業者に周知の類似の要因の差異を考慮して、投与されるべき量についての何らかのガイダンスを得ることができる。
通常、上の方法において、本発明の単一のアミノ酸配列、例えばナノボディなどのISV、またはポリペプチドが用いられるであろう。しかし、2つ以上の本発明のアミノ酸配列、例えばナノボディなどのISV、および/またはポリペプチドを組み合わせて使用することは、本発明の範囲内である。
本発明のナノボディなどのISV、アミノ酸配列およびポリペプチドはまた、1つ以上のさらなる医薬活性化合物または原理と組み合わせて、すなわち、相乗効果をもたらす場合ももたらさない場合もある組み合わせ処置レジメンとして、用いることができる。やはり、医師は、上記の要因および医師の専門的判断に基づいて、かかるさらなる化合物または原理、ならびに好適な組み合わせ処置レジメンを選択することができるであろう。
特に、本発明のアミノ酸配列、例えばナノボディなどのISV、およびポリペプチドは、HIV感染および/または任意の日和見感染、本明細書において言及される疾患および/または障害の予防および/または処置のためであるか、あるいはこれらのために用いることができる、他の医薬活性化合物または原理と組み合わせて用いることができ、その結果として相乗効果が得られる場合も、得られない場合もある。かかる化合物および原理、ならびにそれらを投与するための経路、方法および医薬処方物または組成物の例は、医師には明らかであろう。
2つ以上の物質または原理が組み合わせ処置レジメンの部分として用いられるべきである場合、それらは、同じ投与の経路を介して、または異なる投与の経路を介して、本質的に同じ時間において、または異なる時間において(例えば本質的に同時に、継続的に、または代替的管理体制に従って)投与することができる。物質または原理が同時に同じ投与の経路を介して投与されるべきである場合、それらは、異なる医薬処方物または組成物または組み合わせた医薬処方物または組成物の部分として投与され得ることは、当業者には明らかであろう。
HIVの耐性を回避し、効力を延長するために、現代の抗HIV処置レジメンは、抗HIV薬物のカクテルを含む。したがって、例えばART治療またはその成分などの抗HIV処置レジメンに本発明のポリペプチドを含めることは有利である。いくつかの態様において、対象は、本発明のポリペプチド、ならびに、例えば1つ以上のプロテアーゼ阻害剤(PR)、例えばアンプレナビル(AMP)、アタザナビル(ATV)、インジナビル(IDV)、ロピナビル(LPV)、ネルフィナビル(NFV)、リトナビル(RTV)またはサキナビル(SQV);および/または逆転写酵素阻害剤(RTI)、例えば非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)[アバカビル(ABC)、デラビルジン(DLV)、エファビレンツ(EFV)、ネビラピン(NVP)およびテノホビル(TFV)];またはヌクレオシドアナログ逆転写酵素阻害剤(NRTI)[ジダノシン(ddl)、スタブジン(d4T)、ラミブジン(3TC)およびジドブジン(ZDV)]などのART治療またはその成分で処置される。
いくつかの態様において、HIVは、1つ以上の抗HIV処置レジメン(例えば、ART治療またはその成分)に対して耐性であるか、またはこれに対して耐性となっており、例えばここで、HIVは、1つ以上のプロテアーゼ阻害剤(PR)、例えばアンプレナビル(AMP)、アタザナビル(ATV)、インジナビル(IDV)、ロピナビル(LPV)、ネルフィナビル(NFV)、リトナビル(RTV)またはサキナビル(SQV);および/または逆転写酵素阻害剤(RTI)、例えば非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)[アバカビル(ABC)、デラビルジン(DLV)、エファビレンツ(EFV)、ネビラピン(NVP)およびテノホビル(TFV)];またはヌクレオシドアナログ逆転写酵素阻害剤(NRTI)[ジダノシン(ddl)、スタブジン(d4T)、ラミブジン(3TC)およびジドブジン(ZDV)]に対して耐性であるか、またはこれに対して耐性となったものである。
本発明はまた、HIVに感染した対象を処置するための方法に関し、該方法は、本明細書において記載されるようなポリペプチドを投与することを含み、ここで、前記対象は、少なくとも1つの他の抗HIV剤に対して耐性である。
いくつかの態様において、対象は、1つ以上の抗HIV処置レジメン(例えば、ART治療またはその成分)を受けている場合に、望ましくない副作用を有する。
本発明は、本明細書において記載されるような対象を、PR、RTIおよび/またはNRTIとの組み合わせ処置において処置するための方法に関する。
本発明はまた、非抗体CD4および/またはCR(例えばCXCR4)アンタゴニストに対して耐性であるか、またはこれに対して耐性となったHIVに感染したヒト対象において後天性免疫不全症候群の症状を処置する方法に関し、該方法は、ヒト対象に、本発明のポリペプチドを、ヒト対象において後天性免疫不全症候群の症状を処置するために有効な量で投与することを含む。
一側面において、本開示は、CD4および/または例えばCXCR4などのCRを発現する細胞の、ウイルスによる感染を抑制するための方法を提供し、該方法は、ウイルスによる細胞の感染を抑制するために、CD4および/または例えばCXCR4などのCRを発現する細胞を、本発明のポリペプチド構築物のいずれかと接触させることを含む。いくつかの態様において、方法は、in vitroでの、すなわち対象中にない細胞の感染の抑制を可能にする。いくつかの態様において、方法は、in vivoでの、すなわち対象中にある細胞の感染の抑制を可能にする。
一態様において、本発明は、HIVのCRへの結合を阻害するための方法を提供し、該方法は、ウイルスのCRへの結合を阻害するために、CRを本発明のポリペプチドと接触させることを含み、ここで、CRをポリペプチドと接触させることが、HIVのCRへの結合を阻害し、およびここで、CRをポリペプチドと接触させることは、天然リガンドをCRから転置しない。
一態様において、本発明は、HIVによる結合した天然リガンドのCRからの転置を減少させるための方法を提供し、該方法は、CRを本発明のポリペプチドと接触させることを含み、ここで、接触させることは、HIVによる天然リガンドのCRからの転置を減少させる。
一態様において、本発明は、CRを発現する細胞のウイルスによる感染を抑制するための方法を提供し、該方法は、ウイルスによる細胞の感染を抑制するために、CRを発現する細胞を本発明のポリペプチドと接触させることを含み、好ましくはここで、CRをポリペプチドと接触させることは、天然リガンドを前記CRから転置しない。
一態様において、本発明は、ヒト対象においてHIV関連障害の発症または進行を阻害する方法を提供し、その阻害は、(i)1つ以上のHIVプロテアーゼ阻害剤、(ii)1つ以上のHIV逆転写酵素阻害剤、(iii)1つ以上のHIVプロテアーゼ阻害剤および1つ以上のHIV逆転写酵素阻害剤、または(iv)本発明のポリペプチド1つのISVに対する耐性を有するHIVの、対象中のCXCR4+CD4+標的細胞への融合を阻害することによりもたらされ、該方法は、対象に、予め決定された間隔において、本発明のポリペプチドの有効な融合阻害用量を投与することを含み、好ましくはここで、ポリペプチドの各投与は、それにより対象におけるHIV関連障害の発症または進行を阻害するように、対象の体重1kgあたり0.1mg〜25mgを対象に送達する。
一側面において、本開示は、対象におけるHIV感染を予防するための方法を提供し、該方法は、対象におけるHIV感染を予防するために、免疫グロブリン単一可変ドメイン、または1つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド構築物を、対象に投与することを含む。いくつかの態様において、投与された免疫グロブリン単一可変ドメインまたはそのポリペプチド構築物は、CD4および/または例えばCXCR4などのCRへのHIVの結合を阻害するが、天然リガンドを、例えばCXCR4などの前記CRから転置しない。いくつかの態様において、投与された免疫グロブリン単一可変ドメインまたはそのポリペプチド構築物は、最小限の望ましくない副作用のみを有する。
本発明は、対象におけるHIV感染を予防するための方法に関し、該方法は、HIVによる対象の感染を予防するために、本明細書において記載されるようなポリペプチドの治療有効量を対象に投与することを含む。
一側面において、本開示は、対象におけるHIV感染を予防する方法を提供する。いくつかの態様において、HIV感染を予防することは、HIVが対象中のCD4+T細胞に侵入および/または蓄積することを妨げることにより達成される。したがって、いくつかの態様において、HIVによる感染は、対象がHIVに暴露された後、およびHIVに暴露されたことの1つ以上の兆候を有し得る場合においてすら、HIVが対象中のCD4+T細胞に侵入および/または蓄積することを妨げることにより予防される。
HIV感染を予防することとは、部分的または完全な予防の両方を指す(例えば、HIVによる感染のパーセンテージ減少、例えば約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、またはそれより高いかまたは低いかまたは中間のパーセンテージ)。例えば、対象は特定の経路(例えば静脈内注射)を通してのHIVへの暴露により、HIVに感染する50%の確率を有し得るが、本明細書において開示される免疫グロブリン単一可変ドメインまたはそのポリペプチド構築物の投与は、暴露によりわずか10%の感染の確率をもたらす(したがって、感染の確率の80%の減少をもたらす)。
感染の予防は、確立されたサルのHIVおよびSIV感染のモデルを用いて決定することができる。例えば、動物(例えばサル)の一群に、免疫グロブリン単一可変ドメインまたはそのポリペプチド構築物を投与し、その後、HIV/SIVに暴露してもよく、一方、やはりHIV/SIVに暴露に暴露された対照群は、免疫グロブリン単一可変ドメインまたはそのポリペプチド構築物を投与されなかった。免疫グロブリン単一可変ドメインまたはそのポリペプチド構築物が投与された群におけるHIV/SIV感染の発生率が、対照群よりも低い場合は、免疫グロブリン単一可変ドメインおよびその構築物は、HIVによる感染を予防することにおいて有効である。
一態様において、本発明は、ヒト対象が、(i)1つ以上のHIVプロテアーゼ阻害剤、(ii)1つ以上のHIV逆転写酵素阻害剤、(iii)1つ以上のHIVプロテアーゼ阻害剤および1つ以上のHIV逆転写酵素阻害剤、または(iv)本発明のポリペプチド1つのISVに対して耐性を有するHIVによる感染を罹患する可能性を減少させる方法を提供し、該方法は、対象に予め定義されたスケジュールで本発明のポリペプチドを投与することを含み、好ましくはここで、ポリペプチドの各投与は、それにより対象が耐性HIVによる感染に罹患する可能性を減少させるように、対象の体重1kgあたり0.1mg〜25mgを対象に送達する。
いくつかの態様において、処置の方法は、本明細書において記載される免疫グロブリン単一可変ドメインを含む免疫グロブリン単一可変ドメインおよびポリペプチド構築物のうちの1つ以上、ならびに1つ以上の既知もしくは推定の抗ウイルス化合物または抗ウイルス活性を示す化合物を投与することを含む。既知もしくは推定の抗ウイルス化合物は、ウイルス感染、ウイルス複製、および/またはウイルス感染に関連する疾患の発症を抑制または阻害する化合物である。いくつかの態様において、既知または推定の抗ウイルス化合物は、既知もしくは推定の抗HIV化合物である。
抗ウイルス薬は、ウイルスの生活環ステージのうちの1つを標的とするものとして分類することができる。抗ウイルス薬の1つのカテゴリーは、ウイルス侵入を妨害することに基づく。本明細書において記載されるとおり、ウイルスは、標的細胞に浸潤するために特異的な受容体に結合する。ウイルス侵入は、ウイルス侵入の方法を遮断することにより抑制することができる。この作用様式を有する抗ウイルス薬は、抗受容体抗体、受容体の天然リガンド、および受容体に結合することができる小分子である。抗ウイルス薬の第2のカテゴリーは、ウイルス合成を抑制する化合物である。この作用様式を有する抗ウイルス薬は、DNAおよびRNAのビルディングブロックと類似するが、ウイルスを複製するために用いられるタンパク質機構(例えば、逆転写酵素またはDNAポリメラーゼ)を不活化するヌクレオシドアナログである。他の薬物は、ウイルスDNAの転写因子を遮断すること、ウイルスDNAの産生を妨害することができるリボザイムを標的とする。他の薬物は、ウイルス核酸配列に対するsiRNAおよびアンチセンス核酸を含む破壊のためにウイルスRNAを標的とする。抗ウイルス薬のさらに別のクラスは、ウイルス特異的なタンパク質の機能を妨害することができる薬物に関する。このクラスは、HIVプロテアーゼ阻害剤を含む。抗ウイルス薬はまた、ウイルスの放出ステージを標的とする薬物を含む。このカテゴリーの薬物は、ウイルス粒子を構築するために必要なタンパク質を妨害する化合物を含む。抗ウイルス薬の別のクラスは、ウイルス感染を標的とすることにおいて免疫系を刺激する薬物である。このクラスに該当する薬物は、感染細胞におけるウイルス合成を阻害するインターフェロン、および感染細胞を免疫系による破壊のための標的とする抗体である。他の抗ウイルス剤は、米国特許第6,130,326号および同第6,440,985号、ならびに公開された米国特許出願2002/0095033において記載される。したがって、本明細書において同定される化合物は、抗ウイルス活性を有し、上記の任意の抗ウイルス機構を通して作用し得ることが理解されるべきである。いくつかの態様において、本明細書において同定される化合物は、ウイルス複製(例えば、ウイルスDNAの複製)を阻害または抑制する。
いくつかの態様において、抗ウイルス化合物は、抗HIV化合物である抗ウイルス化合物である。いくつかの態様において、抗ウイルス化合物は、抗HIV 治療において用いられ、例えばWO2009/014638の表1、4および5において記載される抗ウイルス化合物である。いくつかの態様において、抗HIV化合物は、HIVプロテアーゼ阻害剤またはHIV逆転写酵素阻害剤である。
化合物の抗ウイルス活性は、in vitroの細胞ベースのアッセイにおいてアッセイすることができる。抗ウイルス活性は、i)細胞の感染を予防するか、感染の後でウイルスの複製、発達および/または増殖を予防するための、化合物とウイルスとの相互作用、ii)細胞の感染を予防するか、感染の後でウイルスの複製、発達および/または増殖を予防するための、細胞に対する化合物の効果、あるいは、iii)任意の他の機構、または任意のその組み合わせからもたらされ得る。作用様式に関わらず、組成物は、それが細胞ベースのアッセイにおいて感染細胞のパーセンテージまたは数を減少させる場合は、抗ウイルス活性を有し得る。いくつかの態様において、化合物(または2つ以上の化合物の組み合わせ)は、それが感染細胞のパーセンテージまたは数を(例えば細胞ベースのアッセイにおいて)少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%またはそれより多く減少させる場合は、抗ウイルス活性を有する。いくつかの態様において、化合物は、それが細胞内のウイルス核酸の量を減少させる場合は、抗ウイルス活性を有する。ある態様において、化合物は、細胞内のウイルス核酸の複製を阻害する(例えば、化合物は、ウイルス複製の量を約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%減少させるか、またはそれより高いかまたは低いかまたはその中間のパーセンテージで減少させる)。ウイルス複製の減少は、細胞アッセイを用いて、ウイルスDNAの量またはウイルスDNA複製の経時的な速度(または任意の他のウイルス複製の尺度)を化合物の存在下において測定し、それを化合物の不在下における、または対照化合物の存在下におけるウイルス複製と比較することにより、測定することができることが、理解されるべきである。
いくつかの態様において、処置および/または予防の方法は、本明細書において記載される免疫グロブリン単一可変ドメインおよび免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド構築物の1つ以上を投与すること、ならびにDNAウイルスに対するワクチンを投与することを含む。ワクチンは、対象に有効量で投与された場合に保護的抗体の産生または保護的T細胞応答を刺激する、医薬組成物として定義される。いくつかの態様において、ワクチンは、DNAウイルスの配列によりコードされる1つ以上のポリペプチド配列を含む、タンパク質ワクチンである。いくつかの態様において、ワクチンは、DNAウイルスの核酸を含む、核酸ワクチンである。ワクチンのための投与管理体制は、当業者には公知である。いくつかの態様において、DNAウイルス感染の予防のためのポリペプチドワクチンの量の範囲は、0.01〜100マイクログラム/用量、例えば0.1〜50マイクログラム/用量である。DNAウイルス感染に対する十分な免疫応答およびその後の保護を達成する(例えば対象を「免疫する」)ために、対象1人あたり数回の用量が必要となる場合がある。用語「免疫する」とは、物質が、単独であるかキャリアに連結されているか、アジュバントの存在下であるか不在下であるかに関わらず、対象において体液性および/または細胞性の応答を引き起こす能力を指し、また、感染性因子の感染力を部分的にまたは完全に遮断する免疫応答を指す。
いくつかの態様において、処置または予防の方法は、本明細書において記載される免疫グロブリン単一可変ドメインおよび免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド構築物の1つ以上を投与すること、ならびにHIV治療の望ましくない副作用を軽減する化合物または治療を投与することを含む。かかる化合物の例として、制吐剤、食欲増強剤、および抗うつ剤が挙げられる。
一側面において、本開示は、免疫グロブリン単一可変ドメインおよび1つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド構築物の治療有効量の投与のための方法を提供する。ISVまたはポリペプチドの治療有効量は、医学的に望ましい結果(例えばHIVタイターの低下)を提供する、免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドの投与量である。有効量は、処置されている特定の状態、処置されている対象の年齢および身体的条件、状態の重篤度、処置の期間、併用治療(もしあれば)の性質、特定の投与の経路、および健康管理者の知識および専門的意見の範囲内における同様の因子により変化するであろう。例えば、疾患または状態(例えば、HIVによる感染の罹患)を処置または予防するための治療有効量は、疾患もしくは状態またはその症状の進行を軽減するかまたはこれを阻害するために十分な量であろう。同様に、対象におけるHIVタイターを低下させるための治療有効量は、対象におけるHIVタイターを低下させるために十分な量であろう。非免疫グロブリン単一可変ドメイン治療もまた治療有効量において投与することができることが理解されるべきである。
一側面において、本開示は、免疫グロブリン単一可変ドメイン、および1つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むそのポリペプチド構築物の投与のための方法を提供する。いくつかの態様において、免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドは、医薬組成物として投与される。医薬組成物は、免疫グロブリン単一可変ドメインおよびそのポリペプチド構築物に加えて、薬学的に受入可能なキャリアを含む。
詳細に記載されるとおり、本開示の医薬組成物は、固体または液体の形態における投与のために特に処方することができ、以下のために適用されたものを含む:経口投与、例えば、水薬(drench)(水性または非水性の溶液または懸濁液)、錠剤、例えば頬側、舌下および全身吸収を標的とするもの、ボーラス、粉末、顆粒、舌への適用のためのペースト剤;非経口投与、例えば皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射による、例えば無菌の溶液もしくは懸濁液、または持続放出処方物として;局所適用、例えば、皮膚、肺または口腔に適用されるクリーム、軟膏または制御放出貼付剤またはスプレーとして;膣内または直腸内に、例えば、ペッサリー、クリームまたは泡体として;舌下に;眼に;経皮で;または鼻へ、肺へ、および他の粘膜表面へのもの。
句「薬学的に受入可能な」は、本明細書において、健全な医学的判断の範囲内であり、過剰の毒性、刺激、アレルギー性応答、または他の問題もしくは合併症を伴わない、ヒトおよび動物の組織と接触しての使用のために好適であり、妥当な利益/リスク比により釣り合う、化合物、材料、組成物、および/または投与形態を指す。
句「薬学的に受入可能なキャリア」とは、本明細書において用いられる場合、薬学的に受入可能な材料、組成物またはビヒクル、例えば液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤または溶媒封入材料であって、対象化合物を、1つの器官または身体の部分から別の器官または身体の部分へと運搬または輸送することに関与するものを意味する。各々のキャリアは、処方物の他の成分と適合し、患者にとって有害ではないという意味において、「受入可能」でなければならない。薬学的に受入可能なキャリアとして役立ち得る材料の例として、以下が挙げられる:糖、例えば乳糖、ブドウ糖およびショ糖;デンプン、例えばコーンスターチおよび馬鈴薯デンプン;セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばカカオバターおおよび坐剤用ロウ;油脂、例えばピーナッツ油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油;グリコール、例えばプロピレングリコール;ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;アガー;緩衝化剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;pH緩衝化溶液;ポリエステル、ポリカーボネートおよび/またはポリ無水物;ならびに医薬処方物において使用される他の非毒性の適合性物質。
本開示の処方物は、経口、鼻、局所(頬側および舌下を含む)、直腸、膣および/または非経口投与のために好適なものを含む。処方物は、単位投与形態において便利に提示することができ、製薬の分野において周知の任意の方法により調製することができる。単一の投与形態を製造するためにキャリア材料と組み合わせることができる活性成分(例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインまたはそのポリペプチド構築物)の量は、処置されている宿主および特定の投与の様式に依存して変化するであろう。単一の投与形態を製造するためにキャリア材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般に、治療効果をもたらす化合物の量であろう。一般に、この量は、活性成分の約1%〜約99%、好ましくは約5%〜約70%、最も好ましくは約10%〜約30%の範囲であろう。
ある態様において、処方物は、シクロデキストリン、リポソーム、ミセル形成剤、例えば胆汁酸、ポリマー性キャリア、例えばポリエステルおよびポリ無水物からなる群より選択される賦形剤を含む。ある態様において、前述の処方物は、免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチド構築物を経口で生体に利用可能にする。
これらの処方物または組成物を調製する方法は、免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチド構築物を、キャリア、および任意に1つ以上の補助成分と関連させるステップを含む。一般的に、処方物は、免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチド構築物を、液体キャリア、または微細に分割された固体のキャリア、または両方と、均一に、および緊密に関連させて、および次いで、必要な場合には、生成物を成形することにより、調製する。
経口投与のために好適な処方物は、各々が予め決定された量の免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチド構築物を活性成分として含む、カプセル、カシェー剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(香味付けされた基剤、通常ショ糖およびアラビアゴムまたはトラガカントを用いる)、粉末、顆粒、または水性もしくは非水性の液体中の溶液または懸濁液として、または水中油型もしくは油中水型の液体エマルジョンとして、またはエリキシルもしくはシロップとして、またはトローチとして(不活性な基剤、例えばグリセリンまたはショ糖およびアラビアゴムを用いて)、および/または洗口剤としての形態であってよい。本発明の免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチド構築物はまた、ボーラス、舐剤またはペーストとして投与することができる。
経口投与のための固体の投与形態(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末、顆粒など)において、活性成分は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの1つ以上の薬学的に受入可能なキャリア、および/または以下のいずれかと混合される:充填剤または増量剤、例えばデンプン、乳糖、ブドウ糖、マンニトール、および/またはケイ酸;結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖および/またはアラビアゴム;保水剤、例えばグリセロール;崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、馬鈴薯またはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸、および炭酸ナトリウム;溶解遅延剤、例えばパラフィン;吸収促進剤、例えば四級アンモニウム化合物;湿潤剤、例えばセチルアルコール、モノステアリン酸グリセロールおよび非イオン性界面活性剤など;吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイトクレイ;潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体のポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物;および着色剤。カプセル、錠剤および丸剤の場合、医薬組成物はまた、緩衝化剤を含んでもよい。類似の型の固体の組成物はまた、乳糖または乳糖(milk sugar)などの賦形剤、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどを用いるソフトまたはハードシェルのゼラチンカプセル中で、充填剤として用いることができる。
錠剤は、圧縮または鋳型成型により、任意に1つ以上の補助成分を用いて製造することができる。圧縮された錠剤は、結合剤(例えばゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性な希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えばデンプングリコール酸ナトリウム、または架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤または分散剤を用いて調製することができる。鋳型成型された錠剤は、粉末化された化合物の混合物を不活性な液体希釈剤で湿潤化する、好適な機械において製造することができる。
医薬組成物の錠剤、および他の固体の投与形態、例えば糖衣錠、カプセル、丸剤および顆粒は、任意に、コーティングおよびシェル、例えば腸溶性コーティングおよび薬剤処方の分野において周知の他のコーティングでスコア付けまたは調製してもよい。それらはまた、その中の活性成分の遅延または制御放出を提供するために、例えば、所望される放出プロフィールを提供するための多様な比率におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはマイクロスフェアを用いて処方してもよい。それらはまた、迅速放出のために、例えば凍結乾燥して処方してもよい。それらは、例えば、細菌保持フィルターを通しての濾過により、または、使用の直前に無菌水またはいくつかの他の無菌の注射可能溶媒中に溶解することができる無菌の固体の組成物の形態の無菌化剤を組み込むことにより、無菌化することができる。これらの組成物はまた、任意に、不透化剤を含んでもよく、および、胃腸管の特定の部分において、任意に遅延された様式において、活性成分のみを、または活性成分を優先的に放出する組成物であってもよい。用いることができる包埋組成物の例として、ポリマー物質およびロウが挙げられる。活性成分はまた、適切な場合には、上記の賦形剤のうちの1つ以上を用いてマイクロカプセル化された形態であってもよい。
経口投与のための液体投与形態は、薬学的に受入可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤を含む。活性成分に加えて、液体投与形態は、当該分野において一般に用いられる不活性な希釈剤、例えば水および他の溶媒など、可溶化剤または乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油脂(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリコール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含んでもよい。
不活性な希釈剤の他に、経口組成物はまた、アジュバント、例えば湿潤化剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤および保存剤を含んでもよい。
懸濁液は、活性化合物に加えて、懸濁剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微晶質セルロース、メタ水酸化アルミニウム(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにそれらの混合物を含んでもよい。
直腸または膣投与のための医薬組成物の処方物は、免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチド構築物を、1つ以上の好適な非刺激性の賦形剤またはキャリア(これは、例えばカカオバター、ポリエチレングリコール、坐剤用ロウ、またはサリチル酸を含み、室温で固体であるが、体温では液体であり、したがって、直腸または膣腔において良好に融解して活性化合物を放出する)と混合することにより調製することができる。
膣投与のために好適な処方物はまた、当該分野において適切であると知られるキャリアを含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペーストまたはスプレー処方物を含む。
局所または経皮投与のための免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチド構築物の投与形態として、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、貼付剤および吸入剤が挙げられる。活性化合物は、無菌条件下において、薬学的に受入可能なキャリアと、および必要とされ得る任意の保存剤、緩衝化剤または噴霧剤と混合する。
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、賦形剤、例えば動物および植物性の脂肪、油脂、ロウ、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛またはこれらの混合物を含んでもよい。
粉末およびスプレーは、賦形剤、例えば乳糖、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物を含んでもよい。スプレーは、さらに、慣用的な噴霧剤、例えばクロロフルオロハイドロカーボンおよび揮発性の非置換の炭化水素、例えばブタンおよびプロパンを含んでもよい。
経皮貼付剤は、免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチド構築物の身体への制御送達を提供するという、さらなる利点を有する。化合物を適切な溶媒中で溶解するかまたは分散させることにより、かかる投与形態を製造することができる。吸収増強剤もまた、皮膚を越えての化合物の流動を増大させるために用いることができる。速度制御膜を提供すること、または化合物をポリマーマトリックスもしくはゲル中で分散させることのいずれかにより、かかる流動の速度を制御することができる。
点眼用処方物、眼軟膏、粉末、溶液などもまた、本発明の範囲内であるものとして企図される。
非経口投与のために好適な医薬組成物は、1つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチド構築物を、1つ以上の薬学的に受入可能な無菌の等張の水性もしくは非水性の溶液、分散、懸濁液もしくはエマルジョン、または使用の直前に無菌の注射可能溶液もしく分散中に再構成することができる無菌の粉末と組み合わせて含み、これは、糖、アルコール、抗酸化剤、緩衝化剤、静菌剤、処方物を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質、懸濁剤または濃縮剤を含んでもよい。
医薬組成物中で使用することができる好適な水性および非水性キャリアの例として、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)および好適なその混合物、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散の場合には必要とされる粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。
これらの組成物はまた、アジュバント、例えば保存剤、湿潤化剤、乳化剤および分散剤を含んでもよい。対象化合物に対する微生物の活動の予防は、多様な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノールなどの包含により確実にすることができる。また、等張化剤、例えば糖、塩化ナトリウムなどを組成物中に含めることが望ましい場合もある。さらに、注射可能医薬形態の吸収の延長は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる剤の包含により引き起こすことができる。
いくつかの場合において、薬物の効果を延長させるために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅延させることが望ましい。このことは、低い水溶性を有する結晶性または非結晶性材料の液体懸濁液の使用により達成することができる。そして、薬物の吸収の速度は、その溶解の速度に依存し、そしてこれは、結晶のサイズおよび結晶形態に依存し得る。あるいは、非経口投与される薬物形態の吸収の遅延は、油性ビヒクル中に薬物を溶解または懸濁することにより達成される。
注射可能デポー形態は、ポリ乳酸−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中で対象化合物のマイクロエンカプセル(microencapsule)マトリックスを形成することにより製造される。薬物対ポリマーの比、および使用される特定のポリマーの性質に依存して、薬物放出の速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例として、ポリ−(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射可能な処方物はまた、身体組織と適合性のリポソームまたはマイクロエマルジョン中に薬物を封入することにより、調製される。
本明細書において説明および議論される態様は、本発明者らに知られている最良の本発明を作製および使用する方法を当業者に教示することのみ意図される。本発明から逸脱することなく、本発明の上記の態様の改変およびバリエーションが可能であることは、上の教示を考慮して、当業者により理解される。したがって、請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内において、具体的に記載されるもの以外にも本発明を実施することができることが、理解される。
本願全体にわたり引用される参考文献(学術文献、発行された特許、公開された特許出願、および同時係属の特許出願を含む)の全ての全内容は、本明細書において上で引用される教示については特に、本明細書により参考として明確に援用される。
図および実験の部/例は、本発明をさらに説明するためにのみ示され、本明細書において他に明示的に示されない限り、決して、本発明および/または添付の請求の範囲の範囲を限定するものとして判断または解釈されるべきではない。
実験の項
例1:導入
HIVの多様性は、外被gp120においては特に、非常に広範囲であるので、交差反応性の中和抗体を広範に誘導することができるHIVワクチンを設計することは、極めて困難な挑戦である。
ウイルスは、迅速に複製し、高い変異率を有し、高度に多様な「疑似種」を作り出す。これらの疑似種は、最もよく適応した、最も「適した(fit)」遺伝子バリアントに有利であるダーウィン説の選択圧のための稔性物質である。有効な処置およびワクチンを開発するための努力は、HIV感染個体における、および罹患集団内での、複雑な進化の動態を克服しなければならない。
HIVは、個体から個体へと拡散するので、遺伝子的に多様なウイルスは、ヒトにおいて最も高度に多型性の、ヒト白血球抗原(HLA)クラスIおよびIIタンパク質をコードする遺伝子ファミリーに直面する。これらのタンパク質は、どの特異的ペプチド配列(エピトープ)が提示されて、それぞれ宿主のCD8+およびCD4+T細胞により認識されるかを決定する。遺伝子的に多様なHIVバリアントと遺伝子的に多様なヒト宿主との間の対立において、宿主の免疫エフェクター細胞による認識を回避して耐性HIVをもたらす、特異的なウイルスエピトープの変異を抱えるウイルスバリアントが選択され得る。
しかし、ウイルスの多様性は非常に高いが、多くのHIV群、株、クレードおよびサブタイプは、主にCD4+標的免疫T細胞に侵入して感染するために細胞受容体CD4、ならびに共受容体CXCR4(X4)、CCR5(R5)またはCCR5/CXCR4の両方(両指向性R5/X4)を必要とする(図1を参照)。
本発明者らは、受容体と共受容体との両方の同時遮断は、HIVの侵入を防止するのみならず、耐性を防止しないとしてもこれを延期するという仮説を立てた。驚くべきことに、二重特異性CXCR4−CD4ポリペプチドの使用は、個々の遮断薬の組み合わせよりも優れており、HIV侵入を防止し、耐性を克服することができた。
例2:一価のCD4ナノボディの同定および特徴づけ
例2.1:CD4ナノボディ候補の選択
CD4ナノボディのパネルは、以前に、ヒト末梢血リンパ球による免疫ライブラリーから同定した。Llama 58、59および60は、標準的なプロトコルに従って、2週間の間隔での、各々が約1×108ヒト末梢血リンパ球(hPBL)を有する、6回の追加免疫により免疫した。血液は、最終追加免疫の後4日および9日後に採取した。さらに、約1gの、リンパ節生検は、最終の追加免疫の4日後に動物から採取した。
末梢血単核細胞は、フィコール−ハイパックを製造者の指示に従って用いて、血液試料から調製した。
次いで、これらの細胞、および利用可能である場合にはリンパ節組織から、全RNAを抽出し、ナノボディコード遺伝子フラグメントを増幅するためのRT-PCRのための出発材料として用いた。これらのフラグメントをファージミドベクターpAX50中にクローニングした。ファージは、標準的な方法に従って調製した(例えば本明細書において引用される先行技術および出願人による出願を参照)。
CD4結合ナノボディファージライブラリー58、59および60を提示する選択されたファージを、組み換えヒトCD4(ImmunoDiagnostics, Inc.、カタログ#7001、ロット#5S30/1.5)における選択のために用いた。組み換えヒトCD4を、Maxisorpの96ウェルマイクロタイタープレート(Nunc)において、10μg/ml、0.1μg/mlおよび0μg/ml(対照)で直接的に免疫した。ファージライブラリーとのインキュベーションおよび大規模な洗浄の後で、結合したファージは、100mMのトリエチルアミン(TEA)で溶離させた。溶離したファージを増幅し、同様の2回目の選択において適用した。TEAによる溶離の後で、2回目に得られたファージを再び増幅し、同様の3回目の選択に適用し、ここで、ファージとのインキュベーションおよび大規模な洗浄の後で、結合したファージを、TEAで非特異的に、または250nMのgp120 HIV-1 IIIB(Immunodiagnostic)で特異的に溶離させた。溶離したファージのプールから得られた個々のコピーを、増殖させ、標準的な方法に従って(例えば本明細書において引用される先行技術および出願人による出願を参照)、i)新たなファージ産生のために誘導し、ii)ナノボディ発現および抽出(周辺質抽出物)のためにIPTGで誘導した。
2.2 CD4結合ナノボディのためのスクリーニング
CD4への結合特異性を決定するために、選択されたクローンを、モノクローナルファージのプールを用いてELISA結合アッセイのセットアップにおいて試験した。簡単に述べると、1μg/mlの受容体組み換えヒトCD4(ImmunoDiagnostics Inc.、カタログ#7001)を、Maxisorp ELISAプレート(Nunc)上に固定し、フリーの結合部位をPBS中、4%のMarvelスキムミルクを用いてブロッキングした。次いで、100μlの1%のMarvel PBS中の異なるクローンのモノクローナルファージ誘導からの15μlの上清を、固定された抗原に結合させた。インキュベーションおよび洗浄ステップの後で、HRP共役モノクローナル抗M13抗体(Gentaurカタログ#27942101)を用いてファージ結合を明らかにした。ファージを与えられていないか、無関係なファージを与えられた対照と比較して、OD値に基づいて結合特異性を決定した。図2は、ファージELISAにおける4つのクローンの組み換えヒトCD4への結合を示す。配列を、表2.2において表す。
表2.2 CD4ナノボディ
CD4結合ナノボディを配列分析に供し、ユニークなクローンをE.coli 発現ベクター中に再クローニングし、精製ナノボディとしてさらに特徴づけた。一価のCD4ナノボディを、発現ベクターpAX50中のC末端に連結したmyc、His6タグされたタンパク質として生成した。
選択されたナノボディが細胞表面に発現されたCD4を認識するか否かをチェックするために、フローサイトメトリー実験を行い。ここで、ヒトCD4を発現するJurkatおよびTHP-1細胞への特異的結合について、精製されたCD4ナノボディを試験した。マウスBa/F3骨髄細胞を陰性対照細胞として用いた。精製されたナノボディ(100nM)を、100μlの最終容積のPBS(Invitrogen #14190)中10%のFBS(Invitrogen、Cat 10270-106)中で、30分間4℃で、105細胞まで結合させた。マウス抗myc抗体(Serotec、カタログ#MCA2200)、およびその後にヤギ抗マウス−PE抗体(Jackson#115-115-164)で、結合したナノボディを検出した。細胞をTOPRO3(Molecular probes T3605)で染色することにより、死細胞の集団のパーセンテージを決定した。BD FACS Array Bioanalyzerシステム、PEフィルター585/42およびToproフィルター661/16を用いて、20,000回のイベントを得た。TOPRO3+細胞を除外し、平均チャネル蛍光(MCF)を計算した。10μg/mlの抗CD4モノクローナル抗体(Diaclone、クローンB-A1、カタログ#854.030.000)を用いることにより、JurkatおよびTHP-1細胞におけるCD4の発現を確認した。陰性対照として、抗mycおよび/またはヤギ抗マウス−PE抗体による細胞の染色を行った。4つの異なるナノボディおよび対照抗体から得られた結果を、図2において示し、全てのナノボディが細胞表面上に発現されたCD4に結合しており、ナノボディ03F11が、THP-1細胞において最も高い結合シグナルを示すことを確認した。
2.3 CD4−gp120相互作用を遮断するナノボディについてのスクリーニング
そのT細胞上での役割の他に、CD4はまた、HIV侵入のための一次受容体として働く。したがって、精製されたCD4ナノボディを、CD4とウイルスgp120タンパク質との相互作用を遮断する能力について分析した。一価のHisタグされたナノボディを、親和性および脱塩クロマトグラフィーにより周辺質抽出物から精製し、ELISAベースの競合セットアップにおいて用いた。簡単に述べると、1μg/mlのgp120 HIV-1 IIIB(Immunodiagnostic)を、96ウェルMaxisorpマイクロタイタープレート(Nunc)中で先にコーティングした20μg/mlのヒツジ抗gp120抗体D7324(Aalto Bio Reagents)により捕捉し、PBS中1%のカゼインでブロッキングした。平行して、0.5μg/mlのビオチン化CD4を、500nMの100μlの0.1%カゼイン/PBS中の異なる精製ナノボディと共にインキュベートした。1時間後、ビオチン化CD4−ナノボディのプレミックスを、1時間、補足したgp120と共にインキュベートした。HRP共役Extravidin(Sigma E2886)を用いて結合したビオチン化CD4を検出した。遮断するマウス抗CD4 IgG2a抗体(Diaclone、クローンB-A1、カタログ#854.030.000)を、陽性対照として用いた。ナノボディを添加しなかったウェルと比較して、O.D.シグナルの喪失として遮断活性を決定した。
図2のパネルCは、選択されたクローンのヒトCD4への結合を用いるこの遮断アッセイの結果を示す。
結果は、ナノボディ03F11および01B6が、 in vitroでのCD4とgp120との相互作用を遮断することを示す。
2.4 CD4ナノボディ3F11の特徴づけ
ナノボディ03F11(また3F11としても指定されている)を、その後、初代ヒトT細胞、MOLM-13およびTHP-1細胞への用量依存的結合について、FACSにおいて、抗flagタグの検出を用いて分析した。EC50値の結果を、表2.4において表す。初代細胞においてもまた、03F11は、0.76nMのEC50による強力な結合を示した(図2パネルD)。抗CD4ナノボディの特異性を確認するために、また、94%の純度のCD8+細胞をもたらすCD8+T細胞単離キット(Miltenyi Biotech, Cat. 130-096-495)を用いてヒトPBMCから単離された細胞傷害性CD8+T細胞に対する03F11の結合を評価した。抗CD4 03F11ナノボディによる細胞傷害性CD8+T細胞への結合は観察されなかった(データは示さず)。
結果は、ナノボディが、受容体CD4に結合して、HIV-1 gp120結合との相互作用を妨げることができることを示す。
表2.4 一価のCD4ナノボディ3F11の特徴
例3 CXCR4ナノボディ候補の同定および選択
本例において、本発明者らは、HIV1感染力アッセイにおいて機能的アンタゴニストとして作用することができた抗CXCR4ナノボディを同定して特徴づけた。
好ましくは、これらのCXCR4ナノボディは、gp120相互作用を妨害するエピトープには結合するが、リガンドCXCL12の結合を妨害するエピトープには結合せず、これにより、ナノボディは、天然のCXCR4シグナル伝達を妨害しないであろう。
3.1 CXCR4ナノボディのリガンド転置
この目的のために、HEK293T-CXCR4細胞へのそれらの結合について、およびそれらがリガンドCXCL12(またはSDF-1a)と受容体結合について競合する能力について、放射性リガンド転置アッセイにおいて、CXCR4ナノボディを分析した。それぞれのCXCR4ナノボディの配列を、表3.1Aにおいて表す。
表3.1A CXCR4ナノボディ
簡単に述べると、一過性にCXCR4を形質導入されたHEK293 細胞の膜抽出物を、精製ナノボディの連続希釈および75pMの[
125I]−CXCL12と共にインキュベートした。非特異的結合を100nMの冷たいSDF-1の存在下において決定した。アッセイは3回行い、SDF-1 阻害およびKi値の平均パーセンテージを計算した(表3.1B)。
表3.1B 一価のCXCR4ナノボディのリガンド転置親和性
図2.1において、281F12は27nMのKiにより中程度の力価および部分的な効力のみを有したが、一方、他のCXCR4ナノボディは、CXCR4受容体へのリガンドの結合を転置することにおいて完全な効力を示したことが示される。
このことは、ナノボディ281F12が、天然のCXCR4シグナル伝達を損なわないか、最小限にしか損なわないことを示すであろう。
3.2 ナノボディによるHIV-1複製の阻害
一価のCXCR4ナノボディならびに一価のCD4 3F11ナノボディが、CXCR4を用いるHIV1株の複製を遮断することができるか否かを決定するために、CXCR4およびCCR5特異的HIVクローンの両方により、HIV-1感染アッセイを行った。
NL4.3、CCR5使用(R5)HIV-1株BaL、両指向性(R5/X4)HIV-1株HEおよび両指向性(R5/X4)HIV-2 ROD株を、CD4およびCXCR4を内因的に発現するが、CCR5を発現しないヒトMT-4細胞において検討した。顕微鏡評価およびMTSバイアビリティー染色法を用いて、活性(IC50)および傷害性(CC50)を決定した。CXCR4使用(X4)HIV-1クローンNL4.3は、国立衛生研究所NIAID AIDS研究プログラム(Bethesda, MD)から得、CCR5使用(R5)HIV-1株BaLは、医学研究会議AIDS試薬プロジェクト(Herts, UK)から得た。両指向性(R5/X4)HIV-1 HE株は、ルーベン大学病院において患者から最初に単離された。全ての実験において、特異的CXCR4アンタゴニストであるAMD3100、および特異的CCR5アンタゴニストであるマラビロクを対照として用いた。MT-4細胞を、96ウェルプレート中に播種した。ナノボディを様々な濃度でHIV-1と一緒に添加し、プレートを37℃で10%のCO2中に維持した。ウイルスにより誘導される細胞変性効果を、毎日のウイルス感染細胞培養の顕微鏡評価によりモニタリングした。陽性対照(すなわち、未処置のHIV感染細胞)において強力な細胞変性効果が観察された感染の4〜5日後において、テトラゾリウム化合物MTSのin situでの減少を介して、CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Cell Proliferation Assay(Promega, Madison, WI)を用いて、細胞バイアビリティーを評価した。96ウェルプレートリーダー(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)を用いて、490nmにおける分光測定により、吸光度を測定し、4つの細胞対照複製(ウイルスおよび薬物なしの細胞)ならびに4つのウイルス対照ウェル(薬物なしのウイルス感染細胞)と比較した。IC50、すなわち、HIVにより誘導される細胞死を50%阻害する薬物濃度を、各ポリペプチドについて用量応答曲線から計算した。ポリペプチドの各々のCC50または50%細胞傷害性濃度を、剤に暴露された非感染細胞のバイアビリティーの減少から決定した。
MT-4細胞に対するCXCR4ナノボディについてのそれぞれのIC50値を、表3.2において表す。CD4ナノボディについてのIC50値を、表2.4.において表す。CD4に対して指向されたナノボディ03F11は、MT-4細胞において、X4 HIV-1 NL4.3の複製を0.52μg/mlのIC50で阻害し、これは34.7nMに相当する。抗CXCR4指向ナノボディ281F12は、匹敵する力価を有し、HIV-1 NL4.3の複製を0.34μg/mlの平均IC50で阻害し、これは22.7nMに相当する。
同じCXCR4ナノボディのセットをまた、ヒトPBMC(CD4、CXCR4およびCCR5を内因的に発現する部分集団) において、HIV-1 X4 NL4.3株、HIV-1 X4 UG270臨床単離株クレードD、X4 HIV-1 CI#17臨床単離株クレードB、X4 HIV-1 CM237臨床単離株クレードBに対して、およびHIV-1 R5 BaL株に対して評価した。やはり、全ての実験においてAMD3100およびAMD14031(マラビロク)を対照として用いた。健康なドナーからの末梢血単核細胞(PBMC)を、密度遠心分離(Lymphoprep;Nycomed Pharma, AS Diagnostics, Oslo, Norway)により単離し、フィトヘマグルチルチン(phytohemagglutin)により3日間にわたり刺激した。活性化された細胞を、PBSで洗浄し、先に記載されるようにウイルス感染を行った(Schols et al. J Exp Med 1997; 186:1383-1388)。PHAで刺激した芽細胞を、0.5×106細胞/ウェルで、IL-2を含む培地中の様々な濃度の化合物を含む48ウェルプレート(Costar;Elscolab, Kruibeke, Belgium)中に播種した。ウイルスストックを、HIV-1またはHIV-2の100 TCID50の最終用量で添加した。感染の開始の8〜10日後、酵素結合免疫吸着アッセイ(Perkin Elmer, Brussels, Belgium)により培養上清中にウイルスp24 Agを検出した。HIV-2 p27 Ag検出のために、Innogenetics(Temse, Belgium)製のINNOTESTを用いた。
表3.2は、4つのX4 HIV-1株に対するCXCR4ナノボディによるHIV中和の結果をまとめる。
結果は、CXCR4ナノボディは、CXCR4に依存的な様々な臨床単離株に対して、一貫した中和能力を示したが、一方、これらのうちのいずれも、BaL株の感染を遮断しなかった(IC50>1000ng/mL、データは示さず)ことを示す。試験されたパネルのうち、281E10および283F1は、全てのX4株に対して非常に強力なアンタゴニストであったが、一方、281F12は、最も効力が弱いナノボディであり、IC50は9〜16nMの範囲であった。HIV1中和における力価は、26nMのリガンド転置Kiと同じ親和性の範囲にあった。
HIV-1複製の阻害は(その低いリガンド転置能力と組み合わせて)、CXCR4ナノボディ281F12を、CD4ナノボディ3F11との二重特異性構築物へのフォーマッティングにおける使用のための、好適な最初の候補にする。
表3.2:CXCR4ナノボディを、PBMCにおける異なる臨床的HIV1単離株、すなわちHIV-1 X4 NL4.3株、HIV-1 X4 UG270臨床単離株(クレードD)、HIV-1 CI#17臨床単離株(クレードB)、HIV-1 CM237臨床単離株(クレードB)の感染力を遮断することについて、およびHIV-1 R5 BaL株に対して、評価した。ナノボディを、力価に従ってランク付けする。対照化合物として、AMD3100(特異的CXCR4アンタゴニスト)およびマラビロク(特異的CCR5アンタゴニスト)を含めた。
例4: 一価のCXCR4およびCD4ナノボディによる組み合わせ研究
CXCR4およびCD4ナノボディのHIV-1活性に対する組み合わせ効果を試験するために、選択されたナノボディの各々を、単独で、または別の抗HIV化合物と組み合わせて試験した。用いた抗HIV化合物は、(1)特異的CXCR4アンタゴニストであるAMD3100(プレリキサホル、商品名Mozobil、Genzyme);(2)HIV融合阻害剤として作用するgp41模倣ペプチドであるT-20(エンフビルチド、商品名FUZEON(登録商標)、Roche);(3)CD4を標的とする特異的なHIV侵入阻害剤として作用するCD4下方調節性化合物であるCADA(シクロトリアザ−ジスルホンアミド);(4)CD4のD1ドメインに結合してHIVのgp120 結合を遮断してシンシチウム形成を阻害することができるRPA-T4(抗CD4マウスmAb)である。
組み合わせの前後の抗HIV-1のEC
50およびEC
95を、上記のMTSバイアビリティー染色法を用いてMT-4細胞におけるNL4.3の 細胞変性効果を測定することにより、決定した。CalcuSynソフトウェア(Biosoft, Cambridge, UK)を用いて、ChouおよびTalalayの半有効の原理(Chou and Talalay, 1984)に基づいて、組み合わせ指標(CI)を計算した。導き出された2つの薬物についての組み合わせ指標の式は、以下のとおりである:
ここで(Dx)
1は、系をx%阻害する(D)
1「単独」について、(Dx)
2は、系をx%阻害する(D)
2「単独」について、一方、分子において、「組み合わせた」(D)
1+(D)
2もまた、x%阻害する。最後の2つの項の分母は、MEEの表現であることに留意する。CI値<0.9は、相乗作用を示し、0.9<CI<1.1は相加効果を示し、CI>1.1は拮抗作用を示す。
試験された組み合わせのそれぞれのCI値を、表4において表す。組み合わせwith ナノボディ281F12(抗CXCR4)と、AMD3100(抗CXCR4)と、T-20(FUZEON(登録商標))と、およびCADA(CD4の下方調節)との組み合わせにおいて抗CD4ナノボディ3F11の相乗作用が観察された。しかし、抗CD4モノクローナル抗体RPA-T4により拮抗作用が観察され、このことは、これらの化合物が、CD4上の重複するエピトープに結合し得ることを示唆する。CADAおよびT-20により、抗CXCR4ナノボディ281F12の相乗作用が観察されたが、AMD3100によっては相加効果のみが観察された(表4)。
まとめると、これらの結果は、二重特異性ポリペプチド(例えばCXCR4ナノボディ281F12およびCD4ナノボディ3F11)にいよるHIV1侵入の組み合わせ遮断について議論する。
例5.二重特異性CXCR4−CD4ポリペプチドの構築
例4は、個々のCXCR4ナノボディ281F12(配列番号9)およびCD4ナノボディ3F11(配列番号20)によるHIV1侵入の組み合わせ遮断の相乗効果を示した。次いで、本発明者らは、二重特異性構築物におけるCD4およびCXCR4受容体の両方の二重遮断の、HIV感染性に対する効果の評価を記載する。二重特異性CXCR4−CD4ポリペプチドを、以下に記載されるように作製した。
CXCR4およびCD4は、gp120のための共受容体として作用するので、それらは、細胞表面上ですぐ近くにあることが予測される。CCR5、CXCR4およびCD4は、主に、細胞表面上の微絨毛において見出され、マクロファージおよびT細胞を含む全ての細胞型において、均一な微小クラスターを形成する。さらに、gp120は、CD4−CXCR4の膜での共局在を誘導する。しかし、両方の受容体への同時結合およびその後のHIV1侵入の遮断のために最適な2つのナノボディビルディングブロックの間の距離は、知られていない。この理由のために、二重特異性ポリペプチドは、2つのナノボディビルディングブロックを連結するための異なる長さの可撓性のスペーサー:それぞれ、(Gly4SerGly4)(9GS)、(Gly4Ser)5(25GS)、および(Gly4Ser)7(35GS)を用いて作製した。
抗CD4ナノボディ3F11および抗CXCR4ナノボディ281F12の構築物を、産生ベクターpAX100中に導入した。このベクターは、pUC119に由来し、LacZプロモーター、カナマイシン耐性遺伝子、複数のクローニング部位、OmpAリーダー配列、C末端c-mycタグおよびHis6タグを含む。それぞれのリンカーで遺伝子融合した3F11のN末端およびC末端の両方の位置において配置された281F12を有する、二重特異性構築物を作製し、8つの異なる二重特異性構築物(表5A)を得た。全ての構築物の正確なヌクレオチド配列を、全配列の概要についての配列分析により確認した(表5Bを参照)。一価の、および二重特異性のナノボディ構築物を、E. coli中で産生させ、myc-Hisタグされたタンパク質として、ニッケルSEPHAROSE(登録商標)6 FFを用いる固定金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)により精製した。カラムからナノボディを250mMのイミダゾールで溶離させ、その後、dPBSに対して脱塩した。
表5A
爾後に、正しい一価の、および二重特異性のナノボディ構築物を、Flag3−His6タグ蛋白質としての酵母Pichia pastoris中での産生のためにpAX205ベクター中に再クローニングした。二重特異性構築物をコードするプラスミドを、P.pastoris株X−33への形質転換に先立って制限酵素による消化によって直鎖状化した。P.pastoris形質転換体の小スケール試験発現を行って、良好な発現レベルを有するクローンを選択した。ここに、24ウェルディープウェルプレート中の各構築物の4クローンの4mlスケール発現を実施した。培地中のナノボディ構築物の発現をSDS−PAGEによって評価した。培地画分を集め、ニッケルSEPHAROSE(登録商標)6FFを用いて固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)のための出発材料として用いた。ナノボディ構築物を250mMイミダゾールによってカラムから溶出し、爾後に、dPBSに対してAtoll(ATO002)によってSephadex G-25 Superfine上で脱塩した。ナノボディ構築物の純度およびインテグリティは、SDS−PAGEおよびウエスタンブロットによって抗VHHおよび抗タグ検出を用いて検証した。
表5B
例6.二重特異性CXCR4−CD4ポリペプチドの結合分析
二重特異性構築物へのフォーマッティングがCXCR4ナノボディのCXCR4への結合に影響を及ぼしたか否かを評価するために、二重特異性ポリペプチドのセット全体を、ウイルス状脂質粒子(Integral Molecular)上で、CXCR4への結合について分析した。簡単に述べると、2単位のヌルVLPおよびhCXCR4 脂質粒子を、96ウェルmaxisorpプレート上で一晩4℃でコーティングした。翌日、フリーの結合部位をPBS中4%のmarvelスキムミルクを用いて、2時間室温でブロッキングした。次いで、プレートを3回PBSで洗浄した後で、100nM、10nM、1nMおよび0nMの精製されたポリペプチドを、コーティングされたウェルに添加し、1時間室温でインキュベートした。3回PBSで洗浄した後で、結合したポリペプチドを、マウス抗c-myc(Roche、カタログ#11667149001)およびウサギ抗マウス−HRP(DAKO、カタログ#P0260)抗体で、いずれも1時間室温で検出した。O.D.値に基づいて結合を決定し、以下の対照と比較した:無関係なナノボディ、コーティングされていないウェル、両方の親の一価のビルディングブロックおよびモノクローナル抗CXCR4抗体12G5(R&D Systems、カタログ#MAB170)。
図2.2は、CXCR4 脂質粒子への結合ELISAの結果を対照脂質粒子に対して示す。CD4ナノボディとの二重特異性構築物についての配向性の効果が観察され、CXCR4の結合は、N末端の位置に配置されたCXCR4ナノボディによってのみ保持された。リンカーの長さの変化は、(恐らくはC末端の位置におけるCXCR4 部分により2つの他の二重特異体よりも損なわれていないと考えられるCD4-25GS-CXCR4 構築物を例外として)このCXCR4ナノボディの標的結合の喪失を克服できなかった。
CXCR4−CD4二重特異性ポリペプチドのパネルを、2つの標的CXCR4およびCD4の相対的発現レベルが異なる細胞株への用量依存的結合について、フローサイトメトリーにおいて分析した。細胞を、Fcブロッキング溶液(Miltenyi Biotec、カタログ#130-059-901)と共に、30分間インキュベートし、その後、モノクローナル抗CXCR4抗体12G5(R&D#MAB170)およびモノクローナル抗CD4抗体BA1(Diaclone#854030000)で染色した。結合したポリペプチドを、マウス抗c-myc(AbD Serotec、カタログ#MCA2200)およびヤギ抗マウス−PE(Jackson ImmunoResearch、カタログ#115-115-171)抗体で、いずれも30分間にわたり4℃で振盪して検出した。MCF値に基づいて結合を決定し、対照と比較した。
Jurkat細胞、THP-1細胞およびMolm-13細胞におけるCD4およびCXCR4の発現レベル、ならびに一価の、および二重特異性のナノボディ構築物の細胞株への結合曲線を、図2.3において表す。Jurkat 細胞およびMolm-13細胞のEC50値を、表6において列記する。Jurkat E6.1細胞は、CD4を発現しないか、低いレベルのCD4を発現する細胞の不均一な集団を示す。一価のCD4 3F11ナノボディは、Jurkat細胞に対して非常に低いMCFレベルの結合のみを示したが、EC50値は、THP-1およびMOLM-13細胞に対するものと類似した(それぞれ1.1nM対0.5nM対0.7nMのEC50)。
表6:二重特異性CXCR4−CD4ポリペプチドの、CXCR4およびCD4の発現レベルが異なる細胞への結合親和性および力価。CXCR4を介するSDF-1により媒介される走化性の阻害を測定することにより、機能的遮断を評価した。結果は、3回の実験の平均値である。
Jurkat細胞において、二重特異性CXCR4−CD4ナノボディ構築物は、高いCXCR4 発現レベルに従って、一価のCXCR4ナノボディ構築物と類似のEC50値を有する。二重特異性ナノボディ構築物は、一価のCXCR4ナノボディよりも僅かにより高い蛍光レベルを有する。二重陽性のTHP-1細胞において、両方の一価のナノボディ構築物と比較して、二重特異性CXCR4−CD4ナノボディ構築物の曲線の明らかなシフトが観察された。二重特異性ナノボディ構築物は、はるかにより高いMCFレベルのプラトーに達する。二重特異体ナノボディ構築物と一価のナノボディ構築物との間のEC50値の差異は、しかし、中程度のみである(0.29nM(CXCR4-CD4)対0.5nM(CD4)対3.1nM(CXCR4)のEC50)。MOLM-13細胞において、二重特異性ポリペプチドのEC50値は、CD4ナノボディ3F11のものと類似する。またここで、増大したプラトーのレベルが観察される。逆の配向(CD4−CXCR4)の二重特異性ナノボディ構築物の結合曲線は、一価のCD4ナノボディ3F11と重なる。
このフローサイトメトリーにおける全蛍光の増大は、相加的結合(各標的への単独の結合)、ならびに細胞表面上の両方の標的への同時結合を表し得る。
例7:二重特異性構築物は、CXCR4についての親和性および阻害力価の増大を示す。
7.1:CXCR4−CD4二重特異性構築物によるCXCR4により媒介される走化性の阻害
二重特異性CXCR4−CD4ポリペプチドが、両方の受容体を発現する細胞に対する親和性および力価の増大を示すか否かを評価するために、CXCR4依存的機能アッセイを行った。二重特異性CD4−CXCR4ナノボディのパネルによる、CXCL12により誘導される走化性の用量依存的阻害を、Jurkat(CXCR4+/CD4low)、およびMolm-13細胞(CXCR4++/CD4++)において、または両方または一方のみの受容体を発現する細胞の直接比較により決定した。
二重特異性ポリペプチドを、CXCR4を内因的に発現する細胞におけるCXCL12により誘導される走化性の阻害について、分析した。走化性因子として、Jurkat細胞株については100,000細胞/ウェル、およびMOLM-13細胞株については500,000細胞/ウェルに対して、750pMの濃度のSDF-1α(R&D systems)を用いた。SDF-1aおよび連続希釈されたナノボディ構築物を、小さな走化性プレート(Neuprobe 106-5)の底部に、29μlの総容積で添加した。ウェルの上部に走化性フィルターメンブレン(ChemoTx(登録商標)Disposibla、孔サイズ5μm)を置き、メンブレンが下のウェル中の溶液と接触したことを確認する。ナノボディ希釈物(各ウェル中のメンブレンの下、5×の連続希釈された最終濃度において10μl)を、メンブレンの上部に添加し、その後、40μlの細胞懸濁液を添加した。プレートを37℃で3時間、加湿されたインキュベーター(5%のCO2)中でインキュベートした。インキュベーションの後で、フィルターを慎重に取り除き、下のウェル中の細胞を、存在する溶液中で再懸濁した。完全な細胞懸濁液を、白色のポリスチレンCostarプレートの対応するウェルに移した。この後、30μlのCell Titer Glo試薬(Promega G7571)を各ウェルに添加し、その後、10分間、暗所で振盪しながらインキュベートした。発光フィルター700を備えたEnvision 2103 Multilabel Reader(Perkin Elmer)を用いて、発光を測定した(1秒/ウェル)。各プレートに対し得、対応する一価のCXCR4ナノボディを参照として含め、各プレート中の二重特異性の増大の倍率を計算することを可能にした。さらなる対照として、一価のナノボディの1:1の混合物を含めた。参照として、各プレートに対して、抗CXCR4抗体12G5を含めた。
代表例の結果を図2.4において示し、IC50値を表6において表す(n=3の実験の平均)。
二重特異性CXCR4−CD4構築物は、二重陽性の細胞に対して、一価のCXCR4ナノボディと比較して約150倍の強力な力価の増強を示し、一方、CD4ナノボディは、それ自体では、SDF-1の機能に対して何らの効果も有しなかった。注目すべきことには、逆の配向の二重特異性構築物は、構築物中でのC末端での配置に起因してそのCXCR4に対する親和性が強力に低下しているにもかかわらず、なおCXCR4の機能を遮断することができたが、遮断はほんの部分的なものだった。
機能的遮断は主にCXCR4を介して媒介されるので、抗CD4ナノボディの同時結合によるアビディティーは、走化性の阻害における力価の増大に換算されることが予測される。
このことは、二重特異性構築物中のナノボディの各々が、それらのそれぞれの標的に同時に結合することができ、受容体と共受容体との両方を共発現する細胞におけるアビディティーに寄与することを示す。
7.2.二重特異性CXCR4−CD4ナノボディ構築物によるCXCR4に対するCXCL12の阻害
一価の、および二重特異性のCXCR4−CD4ナノボディ構築物がCXCR4の天然リガンドであるSDF-1またはCXCL-12を転置する能力を、フローサイトメトリーによるCD4+T細胞(SUPT-1細胞)における結合阻害アッセイにおいて、評価した。簡単に述べると、ヒトTリンパ系SupT1-CXCR4 細胞を、アッセイバッファー(20mMのHEPESバッファーおよび0.2%ウシ血清アルブミンを含むHanks平行塩類溶液、pH7.4)で1回洗浄し、次いで、アッセイバッファー中で示された濃度で希釈された剤と共に、室温で15分間インキュベートした。CXCL12AF647(その最後から2番目のアミノ酸の位置にAlexaFluor 647 部分を担持するヒトCXCL12)は、Almac Sciences(Craigavon, UK)から得た。化合物とのインキュベーション期間の後で、アッセイバッファー中で希釈したCXCL12AF647(25ng/ml)を、細胞−化合物混合物に添加し、室温で30分間インキュベートした。その後、細胞をアッセイバッファー中で2回洗浄し、リン酸緩衝化食塩水(PBS)中の1%パラホルムアルデヒドで固定し、635nmの赤色ダイオードレーザーを備えたFACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson)のFL4チャネルで分析した。CXCL12AF647結合の阻害のパーセンテージを、式(1‐[MFI−MFINC]/[MFIPC−MFINC])×100に従って計算し、ここで、MFIは、阻害剤の存在下においてCXCL12AF647と共にインキュベートされた細胞の平均蛍光強度であり、MFINCは、陰性対照において測定された平均蛍光強度(すなわち、非標識細胞の自家蛍光)であり、MFIPCは、陽性対照(すなわち、CXCL12AF647のみに暴露された細胞)の平均蛍光強度である。
それぞれのIC
50値を、表7.2において示す。
抗CXCR4ナノボディ281F12は、特異的に標識されたCXCL12
AF647のCXCR4への結合を遮断し、これは、6.3nMのIC
50で表された。二重特異性構築物3F11-281F12および281F12-3F11は、それぞれ1.5nMおよび0.97nMの力価により極めて類似し、T細胞に対して、一価のナノボディ281F12と比較して4〜6.5倍優れていた。抗CD4ナノボディ3F11は、T細胞におけるCXCR4へのCXCL12
AF647の結合を妨害しなかった。
表7.2:CXCR4−CD4ポリペプチドによるCXCR4のリガンド結合および活性化の阻害。
7.3 二重特異性CXCR4−CD4ポリペプチド構築物による、SDF-1により誘導されるカルシウムシグナル伝達の阻害
一価の、および二重特異性のCXCR4−CD4構築物が、CXCL-12により誘導されるCa2+シグナル伝達を阻害することにおいて、CXCR4受容体の下流のシグナル伝達を阻害する能力を、評価した。この目的のために、U87.CD4.CXCR4神経膠芽腫細胞に、蛍光カルシウム指示薬Fluo-3アセトキシメチル(Molecular Probes)を、アッセイバッファー(20mMのHEPESバッファーおよび0.2%ウシ血清アルブミンを含むHanks平行塩類溶液、pH7.4)中4μMで、室温で45分間ロードした。アッセイバッファーによる徹底的な洗浄の後で、細胞を、37℃で10分間、同じバッファー中で、ナノボディ構築物またはAMD3100と共に、37℃で10分間プレインキュベートした。次いで、CXCL12への応答における細胞内カルシウム動員を、時間の関数として、全てのウェルにおいて同時に蛍光を37℃でモニタリングすることにより、蛍光定量的イメージングプレートリーダー(FLIPR;Molecular Devices, Sunnyvale, CA, USA)を用いることにより、本質的には、Princenら(Princen et al., 2003 Cytometry 51, 35-45)により記載されるように測定した。
IC50値を、表7.2において示す。
一価のポリペプチドのうちのいずれも、それ自体ではいかなる有意なCa2+シグナル伝達を誘導しなかった。二重特異性ポリペプチドCXCR4−CD4およびCD4−CXCR4の異なる配向の間で、U87.CD4.CXCR4細胞においてCXCL-12により誘導されるCa2+シグナル伝達を阻害することにおいて、IC50値の差異は観察されなかった。66.7nMのIC50を有する一価のポリペプチドCXCR4 281F12と比較した力価の増強は、12〜20倍であった。一価のナノボディ3F11は、CXCL-12により誘導されるCa2+シグナル伝達の阻害を示さなかった。
まとめると、これらの結果は、両方の標的を共発現する細胞における、二重特異性CXCR4−CD4構築物によるCD4およびCXCR4の両方への同時結合は、配向に対する明らかな影響を伴うことなく、CXCR4結合部分の親和性および力価を増強することを示す。
7.4 二重特異性CXCR4−CD4ポリペプチド構築物による抗CXCR4抗体結合の阻害
一価の、および二重特異性のCXCR4−CD4ナノボディ構築物が、異なる細胞株、SUPT-1 CD4+T細胞、THP-1およびJurkat 細胞において、抗CXCR4 mAb 12G5の結合を転置する能力を、フローサイトメトリーにより評価した。簡単に述べると、細胞をアッセイバッファー(20mMのHEPESバッファーおよび0.2%ウシ血清アルブミンを含むHanks平行塩類溶液、pH7.4)で1回洗浄し、次いで、アッセイバッファー中で示された濃度で希釈したナノボディと共に、15分間室温でインキュベートした。次いで、抗CXCR4 mAb 12G5(PE標識されたもの、10nM)を細胞−剤混合物に添加し、室温で30分間インキュベートした。その後、細胞をアッセイバッファー中で2回洗浄した。SUPT-1の場合、細胞を、リン酸緩衝化食塩水(PBS)中の1%パラホルムアルデヒドで固定した。その後、細胞を、FACS Caliburフローサイトメーター(Becton-Dickinson)のFL2チャネルにおいて分析した。
結果を、表7.2および図3において表す。
Jurkat細胞において、二重特異性281F12-3F11ナノボディ構築物は、一価のCXCR4ナノボディ構築物と比較して、2倍力価を失い、逆の配向においては、約50倍の喪失が観察された。CXCR4およびCD4を共発現するSUPT-1およびTHP-1細胞においては、二重特異性281F12-3F11ナノボディ構築物は、一価の281F12ナノボディ構築物と比較して、二相性の曲線ではあるが、12G5 mAb結合の転置の増強を示した。これは3F11ナノボディの腕のCD4 結合により提供されるアビディティーに起因するものとの仮説を立てた。
例8:二重特異性CXCR4−CD4構築物による強力かつ広範なHIV1中和
二重特異性CXCR4−CD4構築物、ならびに対応する一価のCXCR4およびCD4構築物の阻害効果の特異性を、MT-4細胞に感染するCXCR4使用(X4)HIV-1クローンNL4.3において、およびフィトヘマグルチルチン(PHA)で刺激された異なる健康なドナーからのPBMC(CD4+/CXCR4+/CCR5+を発現する)において試験した。CCR5使用(R5)HIV-1株BaLを、PBMCを感染させるために用いた。
8.1.HIV-1感染アッセイ
二重特異性CD4−CXCR4ナノボディ構築物、ならびに対応する一価のCXCR4およびCD4ナノボディ構築物の抗HIV-1力価を、MT-4およびU87細胞株において異なるHIV-1株の細胞変性効果を測定することにより、または、例3.2において記載されるように、PBMCの培養上清中のウイルスp24抗原産生の定量により、決定した。
MT-4細胞におけるHIV1中和結果を、表8.1.1におけるIC50値として表した。
NL4.3株に感染したMT-4細胞において、CXCR4ナノボディは、CXCR4を介する抗X4 HIV1侵入を特異的に阻害したが、CCR5への結合は阻害しなかった。CD4ナノボディは、MT-4細胞において、両方のX4 HIV1 感染を効果的に阻害し、CXCR4一価体と類似するIC50値を有した。二重特異性CXCR4−CD4構築物は、PHAで刺激されたPBMCにおいて、MT-4細胞におけるHIV-1 X4ウイルス複製を阻害することにおいて、極めて強力であり、30〜370pMの力価を有した。二重特異性CXCR4−CD4構築物について、力価の増大は一価のCXCR4ナノボディと比較して250〜320倍であり、最短のリンカーが、より長いリンカーよりも僅かにより良好であると考えられた。逆の配向のナノボディを有する、すなわちCXCR4を指向する親和性が低下した二重特異性ポリペプチドは、この機能アッセイにおいてはあまり活性でなかったが、なお、CD4一価体よりも少なからず強力であった。
次いで、本発明者らは、観察された二重特異性構築物の効力がCXCR4およびCD4ナノボディによる組み合わせ遮断に起因するのか、または2つのナノボディの二重特異性構築物への連結が、力価増強のために必要であったのか否かを評価した。この目的のために、MT-4細胞におけるNL4.3感染力の阻害を、二重特異性281F12-35GS-3F11ナノボディ構築物、および一価のナノボディについて、単独で、または1:1のモル濃度比において比較した。
結果を図4において示す。
一価のCXCR4およびCD4ナノボディ構築物の混合物は、最良の一価のナノボディと比較して、約2倍改善されたIC
50をもたらしたが、一方、二重特異性構築物は、150pMの力価により、320倍の改善を示した。したがって、二重特異性CXCR4−CD4ポリペプチドのCXCR4およびCD4の両方への同時結合は、CXCR4を用いるHIV-1の中和において、単独で、または一価体と組み合わせて、一価のカウンターパートと比較して、アビディティーおよび強力に増強された力価をもたらした。連結は、重要であるが、リンカーの長さの明確な効果は明らかではない。
表8.1.1:CXCR4指向性NL4.3(X4)、およびCCR5指向性(R5)BaLウイルスについての、様々な長さのリンカーを有する二重特異性ナノボディの抗HIV特異性プロフィール。
ナノボディを、それらの抗HIV活性について、異なるドナーからのPHAで刺激したPBMCにおいて、さらなるX4および両指向性X4-R5 特異的HIVクローンを用いて、さらに評価した。これらの実験のために、本発明者らは、最長のリンカーを有する二重特異性構築物(35GS;なぜならば、リンカーの長さの明らかな効果が存在しなかったからである)に加えて、対応する一価のナノボディおよびAMD3100に限定した。
PHAで刺激した芽細胞を、0.5×106細胞/ウェルで、IL-2を含有する培地中の多様な濃度の化合物を含む48ウェルプレート(Costar;Elscolab, Kruibeke, Belgium)中に播種した。ウイルスストックを、HIV-1またはHIV-2の100 TCID50の最終用量で添加した。感染の開始の8〜10日後に、酵素結合免疫吸着アッセイ(Perkin Elmer, Brussels, Belgium)により、培養上清中にウイルスp24 Agを検出した。HIV-2 p27 Ag検出のために、Innogenetics(Temse, Belgium)製のINNOTESTを用いた。各アッセイにおいて、AMD3100を対照化合物として評価した。
結果を表8.1.2において示す。
抗CXCR4ナノボディ281F12は、HIV-1 NL4.3を、全てのPBMCドナーにおいて、46.7nMのIC50で、非常に一貫して阻害した。一価の抗CD4ナノボディ3F11は、HIV-1 NL4.3に対して弱く活性であった。5つの異なるPBMCドナーにおいて、約580nMのIC50が得られたが、他の9つのPBMCドナーにおいては異なり、活性は測定されなかった(現在では不明の理由により)。二重特異性281F12-35GS-3F11構築物は、僅か86.7pMのIC50(2.6ng/ml)で、強力な抗HIV-1活性を示したが、一方、二重特異性3F11-35GS-281F12構築物は、29nMの平均IC50で一貫して複製を阻害した。AMD3100は、3.3nMの平均IC50を有した。
ナノボディを、X4-R5両指向性HIV単離株に対するそれらの抗HIV活性について、さらに評価した。両指向性(R5/X4)HIV-1株HEおよび両指向性(R5/X4)HIV-2 ROD株を、初めに、CD4およびCXCR4を内因的に発現するが、CCR5は発現しないヒトMT-4細胞について検討した。(R5/X4)HIV-1 HE株は、最初に、ルーベン大学病院において患者から単離された。活性(IC50)および傷害性(CC50)は、顕微鏡評価およびMTSバイアビリティー染色法を用いて決定した。最も強力な二重特異性281F12-3F11構築物について、両指向性HIV1 HEおよびHIV2 ROD株に対して、一貫したpMの力価を得た。
CCR5およびCXCR4の両方の共受容体を発現するPBMCにおいて、ナノボディ3F11は、両指向性R5/X4 HIV-1 HEに対して活性ではなかったが、一方、ナノボディ281F12は、266.7nMのIC50で中程度に活性であった。対照的に、二重特異性281F12-35GS-3F11構築物は、1.5nMのIC50で強力な抗HIV-1 HE活性を示したが、一方、二重特異性3F11-35GS-281F12構築物は、非常にしばしばその活性を失った。AMD3100の活性もまた、変動的であり、アッセイにおいて時折その活性を失い、これは、ドナーPBMCにおけるCXCR4(非常に高い)およびCCR5(非常に低いが、1〜20%で変動的)の共受容体発現のレベルに起因している可能性が非常に高い。注目すべきことに、AMD14031/マラビロクは、この細胞アッセイ系においていかなる有意な抗HIV-1 HE活性も示さなかった。
まとめると、これらの結果は、二重特異性ポリペプチドが、様々なX4および両指向性X4-R5 HIV株において広範な適用範囲、およびウイルス感染を遮断することにおいてピコモル濃度〜低ナノモル濃度の範囲における一貫した高い力価を有することを示す。
表8.1.2:MT-4細胞における、およびPBMCにおける、異なる両指向性単離株に対するナノボディの、X4株NL4.3と比較した抗HIV活性プロフィール。
8.2 CXCR4-共受容体使用についての特異性
CXCR4ナノボディの力価は、侵入のためにCXCR4共受容体の使用に依存するHIV-1株に対して特異的である。HIV-1共受容体のうちの一方のみの遮断の1つの潜在的な欠点は、それが、元々は標的ではなかったHIVサブタイプの再興を引き起こし得ることである。
本発明者らは、異なるCCR5依存性HIV-1株である(R5)HIV-1株BaL(医学研究会議AIDS試薬プロジェクト(Herts, UK)から得られた)、および臨床単離株DJ259(クレードC)およびSM145(クレードC)について、異なるドナーのPBMCにおいて、二重特異性ナノボディ構築物のHIV活性を試験した。R5ウイルスにおいて、二重特異性構築物中のCD4ナノボディのみが、ウイルスの中和に寄与する。いかなる理論にも拘束されることなく、CXCR4はPBMCにおいて発現されることから、これらの細胞においては、二重特異性ポリペプチド中のCXCR4ナノボディは、CXCR4に結合してアビディティーに寄与し、この様式においてCD4ナノボディの阻害力価を増強することができるという仮説を立てた。
結果を、表8.1.1および8.1.2において示す。
二重特異性CXCR4−CD4構築物は、MT-4細胞において2.5nMのIC50値でBaLの感染力を阻害することができ、これは、一価のCD4ナノボディの力価と比較して、約200倍増強された力価である(表8.1.1)。二重特異性CXCR4−CD4構築物は、逆の配向の構築物よりも強力なBaLの阻害剤であり、これは、恐らくはCXCR4 結合が損なわれる281F12の不利な位置に起因する。結果は、2つのR5臨床単離株、SMI145およびDJ259の中和を確認し、ここで、二重特異性CXCR4−CD4構築物は、1.5nMの力価を維持し、すなわち、一価のナノボディ3F11単独よりも17および20倍良好な効力を有した。
まとめると、これらの結果は、CXCR4ナノボディの細胞結合親和性は、CXCR4ナノボディが機能的侵入遮断に能動的に寄与しないR5 HIV1株に対してすら、CXCR4ナノボディは、二重特異性CXCR4−CD4ポリペプチドの高い力価に寄与することを示す。
したがって、本発明の二重特異性ポリペプチドは、HIVが1つの部分に対して耐性であるか、または別の共受容体(例えば二重特異性ポリペプチドによりターゲティングされていないCR)を用いる感染を処置するために、有効に用いることができる。
8.3 侵入阻害剤耐性HIV1ウイルスの中和
二重特異性ポリペプチドの他の部分のアビディティーにおける「アンカー」の寄与を実証するために、HIV-1変異体ウイルスのパネルについて、CXCR4小分子阻害剤AMD3100、CXCR-4リガンド、または対照抗体12G2(Polymun Scientific(Vienna, Austria))に対して耐性にしたHIV感染の遮断を評価した。
AMD3100耐性ウイルスに対する二重特異性CXCR4−CD4ナノボディのIC50値を、図5において、および表8.3において表す。
一価のCXCR4ナノボディは、力価の100倍の喪失を示し、これはAMD3100と類似する。一方、CD4の力価は影響を受けなかった。CXCR4−CD4二重特異性ポリペプチドの各々は、AMD3100耐性ウイルスの感染を遮断することについて1nM未満の力価を保持し、これは、一価のCD4ビルディングブロックよりも20倍良好であった。耐性ウイルスの完全なパネルに対して、CXCR4−CD4二重特異性ポリペプチドは、0.3〜1.1nMのIC50値で、強力な中和力価を保持した。
したがって、二重特異性ポリペプチドは、標的の一方にはもはや結合しない変異体に対しては、やや非感受性であると考えられる。
8.4 3F11および281F12耐性HIV-1 NL4.3ウイルスの作製
ウイルスのエスケープ変異体は、NL4.3を、IC90濃度の一価のナノボディの存在下において、複数の継代数にわたり培養することにより作製した。一価のナノボディの増大しながらMT-4細胞を継代し、7か月間の細胞培養の後にHIV-1 NL4.3 3F11耐性ウイルスを得た(EC50濃度から開始する)。最終的に、CXCR4に対して指向されたナノボディ281F12の存在下においてHIV-1 NL4.3を継代する2年を超える献身的な細胞培養において、HIV-1 NL4.3 281F12耐性ウイルスが得られた。
耐性株のEnv gp120配列を決定し、以下の変異体を得た:
− 3F11-res株のgp120:V40(A,V)、R118(K,R)、N158(N,S)、S160(N,S)、T311(T,I)、T378(T,I)。
− 281F12res株のgp120:S169L、V170N、M296I、H300Y(V3領域)、S435F、K460N、L464I。
このようにして同定された耐性ウイルスのクローンは、一価のポリペプチドと比較した二重特異性ポリペプチドの力価を試験するために用いた。
それぞれのIC50値を、表8.3において表す。
ナノボディ3F11(抗CD4)は、HIV-1 NL4.3 3F11resウイルスに対してのみならず、HIV-1 NL4.3 281F12resウイルスに対してもその活性を完全に失った。しかし、3F11の遮断能力は、SDF-1resおよびAMD3100resウイルスに対しては維持され、このことは、喪失は281F12res株の変異に特異的であり、gp120-CXCR4 相互作用自体とは関係していないことを示唆している。
ナノボディ281F12(抗CXCR4)は、HIV-1 NL4.3 281F12resウイルスおよびAMD3100resに対しては活性を完全に失ったが、HIV-1 NL4.3 3F11resウイルスに対しては活性であり、活性は、ウイルスストックが適切に滴定され、MT-4細胞において再評価された場合に、野生型ウイルスに匹敵した(IC50:0.3μg/ml)。AMD3100は、HIV-1 NL4.3 3F11resウイルスに対してはその活性をほぼ保った(IC50:18nM、14ng/ml)が、HIV-1 NL4.3 281F12resウイルスに対しては著しく活性を失い(IC50:400nM、317ng/ml)、このことは、CXCR4における結合部位の重複を示唆している。
表8.3:侵入阻害剤耐性HIV-1 NL4.3バリアントを用いた、MT-4細胞およびPBMCにおいて決定された、二重特異性CXCR4−CD4構築物の抗HIV活性プロフィール。
二重特異性281F12-35GS-3F11ポリペプチドは、HIV-1 NL4.3 3F11resウイルスに対して完全な活性を保ち、注目すべきことに、HIV-1 NL4.3 281F12resウイルスに対してのみ約8倍の活性を失った(野生型と耐性のウイルスを比較して、187pMから1.4nMに)が、一方、NL4.3 3F11resウイルスに対する力価は、ほぼ未変化であった。その機能のためにCD4ナノボディ結合に大きく依存する二重特異性3F11-35GS-281F12 ポリペプチドは、HIV-1 NL4.3 3F11resウイルスに対して16倍の活性を失い(野生型と耐性のウイルスを比較して、6nMから96nMに)、HIV-1 NL4.3 281F12resウイルスに対するその活性を完全に失った。
これらのデータは、標的のうちの一方に対して耐性であるウイルスにおいてすら、二重特異性CXCR4−CD4ポリペプチドが、HIV1侵入の阻害においてピコモル濃度範囲における強力な力価を保持することを示し、このことは、二重特異性CXCR4−CD4ポリペプチドの腕のうちの一方のみの機能が、他方の腕が結合アビディティーを提供し得る場合においては、強力な阻害のために十分であることを示唆している。実際に、本発明者らは、二重耐性HIVを作製することにはまだ成功していない。
まとめると、これらの結果は、二重特異性ポリペプチドが様々なHIV株において広範な適用範囲を有することを示す(表8.3を参照)。
二重特異性ポリペプチドは、このように、HIV1 感染に対する耐性を克服するための強力な手段を表し得る。
8.5 TZM-bl細胞ベースのアッセイにおけるHIV1感染力の遮断
二重特異性CXCR4−CD4ポリペプチドおよび対応する単一特異性ナノボディのパネルをまた、TZM-bl細胞、すなわち、低レベルのCXCR4を発現する、ヒトCD4およびCCR5を形質移入されたHeLa 細胞におけるそれらの抗HIV-1活性について評価した。
TZM-bl細胞を、透明な96ウェルプレート中に、1×104細胞/ウェルで、10%ウシ胎仔血清(FBS)および10mMのHEPESを含むDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地;Life Technologies, Waltham, MA, USA)中で播種した。その後、化合物を添加し、細胞/化合物混合物を37℃でインキュベートした。30分後、1ウェルあたりp-24 HIV-1Agを100pgで、HIVを添加した。48時間のインキュベーションの後で、アッセイプレートを分析した。分析のために、Steadylite plus基質溶液(PerkinElmer, Waltham, MA, USA)をアッセイプレートに添加した。暗所における10分間のインキュベーション期間の後で、溶解された細胞懸濁液の発光シグナルを、白色の96ウェルプレート中で、SpectraMax L発光マイクロプレートリーダー(Molecular Devices, Sunnyvale, CA, USA)において分析した。HIV-1 Tatタンパク質発現により誘導されるルシフェラーゼ活性を、HIV複製の量の評価として測定した(Measuring HIV neutralization in a luciferase reporter gene assay. Montefiori, Methods Mol Biol. 2009;485:395-405を参照)。
結果を、表8.5において提供する。
表8.5:TZM-bl細胞ベースのアッセイにおけるCXCR4−CD4ポリペプチドの抗HIV活性プロフィール。
これらの細胞において、ナノボディ3F11(抗CD4)は、X4 HIV-1 NL4.3の複製を131nMのIC50で阻害し、一方、抗CXCR4ナノボディ281F12は、23.5nMのIC50を有した。二重特異性ポリペプチド281F12-35GS-3F11は、わずか27pMのIC50による抗HIV-1活性を示し、一方、3F11-35GS-281F12は、TZM-bl細胞において、X4 HIV-1 NL4.3を、1.8nMのIC50で阻害した。CXCR4 281F12またはCD4 3F11ナノボディのいずれかに対して耐性であったNL4.3株において、力価は保存された。
ナノボディまたは二重特異性ポリペプチドのいずれも、あるいはAMD3100も、TZM-bl細胞においては、両指向性R5/X4 HIV-1 HE、両指向性R5/X4 HIV-2 RODおおよびR5 HIV-1 BaLウイルスに対しては活性ではなかった。注目すべきことに、これらのアッセイにおける対照として用いられた特異的CCR5 阻害剤AMD14031/マラビロクは、HIV-1 NL4.3、HIV-1 HEまたはHIV-2 RODを遮断しなかったが、R5 HIV-1 BaLウイルスを強力に遮断した(IC50:4.2μM)。2つの他のR5臨床単離株において、二重特異性CXCR4−CD4ナノボディは、nMの力価を保持し、両方の配向が類似の活性を有した。
例9:HIVにより媒介される細胞−細胞融合の阻害。
HIVの伝播の間に、CD4+T細胞は、セルフリーのビリオンにより感染するのみならず、重要なことに、また、ドナーHIV感染T細胞との緊密な細胞−細胞の接触によってもまた感染する。これらの細胞−細胞相互作用を模倣するために、本発明者らは、持続的に、HIV-1感染細胞(HUT-78/HIV-1)を非感染SupT1 CD4+標的T細胞と共培養した。感染および非感染のT細胞の間で、20時間未満の時間に、多くのシンシチウム、または巨細胞が形成される。
持続的に、NL4.3またはHIV1 IIIbによるHUT-78細胞の感染により、HIV-1感染HUT-78細胞を作製した。細胞を3〜4日間毎に部分培養し、HIV-1 p24 Ag ELISAを用いて培養上清中で持続的ウイルス感染をモニタリングした。
共培養アッセイのために、1×105のSupT1細胞/0.5mLと共に様々な濃度の試験化合物を、96ウェルプレートに添加した。HUT-78/HIV-1 細胞は、培養培地から遊離のウイルスを取り除くために徹底的に洗浄し、5×104細胞(50μl)を、96ウェルプレートに移した。2日後に、EC50値は、顕微鏡により、細胞共培養における巨細胞またはシンシチウムの出現に基づいて決定した。シンシチウムの合計数を計数した。
シンシチウム形成の阻害のためのそれぞれのIC
50値を、表9において示す。
表9:二重特異性ポリペプチドによるHIV-1により媒介される細胞−細胞融合の阻害。HIV-1感染細胞(HUT-78/HIV-1 NL4.3またはHIV1 IIIb細胞)と非感染SupT1 CD4
+標的T細胞との共培養。
平均IC50値は、一価の3F11については2.7μM、281F12については3.6μMであった。二重特異性ポリペプチド281F12-35GS-3F11は、2.3nMのIC50で強力に遮断され、一方、二重特異性ポリペプチド3F11-35GS-281F12は、28.7nMのIC50値を有した。AMD3100は、この細胞−細胞伝播アッセイにおいて、HIV複製アッセイにおけるその活性と比較して、活性を失い、1.1μMのIC50を示した。
したがって、二重特異性ポリペプチドは、HIV細胞(共)受容体/gp120により媒介される融合プロセスを妨害することにおいて、最も強力な化合物である。
例10:gp120結合部位へのCXCR4ナノボディ結合
本発明者らはさらに、HIV侵入を特異的に遮断し、好ましくは、天然のCXCR4シグナル伝達を妨害しないCXCR4ナノボディを追跡した。
CXCR4に対するgp120の相互作用を特異的に遮断するが、CXCL12結合を妨害しないか、最小限にしか妨害しないCXCR4ナノボディを同定するために、70の先に同定されたCXCR4ナノボディのパネルを、それらがMT-4細胞におけるNL4.3 HIV1の感染を中和する能力について分析した。CXCR4特異的ナノボディをまた、健康なドナーからの血液のバフィーコートから単離されたPBMCにおいて評価し、X4 HIV-1 NL4.3およびR5 HIV-1 BaLの複製に対して試験した。MT-4細胞の中和のIC50値を、図6において表し、これは、最も強力なナノボディ15A01により、ナノモル濃度以下の範囲における力価の範囲を示す。CXCR4ナノボディのいずれも、予測されるとおり、PBMCにおけるBaL R5の感染を中和した(データは示さず)。
さらに、CXCR4ナノボディを、フローサイトメトリーにおいて、一過性に遺伝子導入されたhCXCR4を発現するCaki細胞において、ビオチン化SDF-1の転置によるリガンド競合について分析した。この目的のために、ナノボディの連続希釈を、30nMのビオチン化SDF-1(R&D Systems Fluorikine kit)と共にプレインキュベートし、Caki-CXCR4細胞に対して4℃で1時間インキュベートし、その後、extravidin−PEを用いてリガンド結合を可視化した。このアッセイにおいて用いられるビオチン−SDF-1競合者濃度は、用量滴定において得られるEC50値より低く、ここで、IC50値は、Kiを反映するはずである。リガンド転置IC50値を計算し、NL4.3(X4)中和の力価と比較した。
異なる力価を比較すると、図7において表されるとおり、いくつかのCXCR4ナノボディは、リガンド転置と比較したHIV1中和におけるIC50値の間で、10倍より大きな差異を有した。
CXCR4ナノボディ15F5および15G11は特に重要であり、CXCR4へのリガンド転置はほとんど示さない。いずれのナノボディも、281F12 ナノボディより良好な力価(それぞれ、4.7nMおよび17.7nMのIC50値)で、実質的なHIV1中和能力を有する。
したがって、HIVの遮断において、ならびにリガンド転置において、ある範囲の力価を有するナノボディのパネルを作製した。
例11:gp120と競合するCXCR4ナノボディの特徴づけ
gp120結合部位(15F5、15G11、10C3および15A1)への結合を示す一価のCXCR4ナノボディは、さらに、ヒトおよびカニクイザルCXCR4への、ならびに、細胞外ループ2において先に記載された規定の点変異を有するヒトCXCR4バリアント(Jaenchen et al. 2011)への結合に関して、特徴づけた。
CXCR4ナノボディを、それぞれ、ヒトCXCR4、カニクイザル(「cyno」)CXCR4、hCXCR4-V196E、hCXCR4 D187VおよびhCXCR4 F189Vを形質移入されたHEK細胞に結合させた。抗CXCR4 mAb 12G5は、全ての点変異体に結合しており、したがって、膜発現についての対照として働く(Jaenchen et al. 2011)。エピトープマッピングのために、HEK293T細胞において、pCDNA3.1ベクター中のCXCR4 変異体、カニクイザルCXCR4および野生型ヒトCXCR4の一過性遺伝子導入を行い、その後、Mycタグと、その後の二次抗マウスPEの検出を用いたフローサイトメトリーにより、ナノボディ結合を評価した。10nMおよび100nMの2つの濃度のナノボディを試験した。実験を繰り返し、本質的に同じ結果を得た。HEK293T hCXCR4細胞へのナノボディの結合を用いて、正規化のために以下の式を用いた:それぞれの変異受容体へのナノボディ結合のパーセンテージを、以下の式に従って計算した:(1−[(MFIhCXCR4*比12G5 mAb)−MFImutant]/[MFIhCXCR4*比12G5 mAb])×100、ここで、MFIは、抗myc 検出の平均蛍光強度、および比12G5 mAb:(MFI 12G5mutant/MFI 12G5hCXCR4)である。各々のナノボディ濃度について、変異受容体に対する結合のパーセンテージを計算し、観察された残りの結合が25%未満である場合、位置は重要であるとみなされる。
CXCR4 結合分析の結果を、表11において表す。
CXCR4ナノボディ15F5および15A1は、CXCR4に対して、ヒトCXCR4に対してと同等に良好に結合し、残基F189Vの変異に対してのみ感受性である。ナノボディ15G11の結合は、細胞外ループ2中の位置F189V、V196EおよびD187Vにおける変異により損なわれるが、一方、それは、CXCR4に良好に結合する。ナノボディ10C3の結合は、全ての試験されたCXCR4 変異体に対して、およびカニクイザルCXCR4において、減少した。
表11:Hek293 T細胞において発現される変異体CXCR4受容体へのCXCR4ナノボディの結合分析
CXCR4ナノボディを、さらに、CXCR4アンタゴニストの結合の阻害について特徴づけた。競合実験のあめに、CXCR4ナノボディの連続希釈を、1nMの抗CXCR4抗体12G5とプレインキュベートし、Jurkat細胞に結合させた。簡単に述べると、500nM〜0.05nMの範囲の様々なナノボディの連続希釈を、1nMの12G5と共にRTで1時間インキュベートした。次いで、この混合物を添加し、細胞と共に30分間浸透して4℃でインキュベートした。PBS中10%のFBSによる3回の洗浄の後で、結合した抗体(12G5)を、ヤギ抗マウス−PE(Jackson Immuno-research、カタログ#115-115-164)で4℃で30分間検出した。ナノボディの不在下における12G5 結合からのシグナルおよび様々な量のナノボディの存在下における場合のシグナルの減少に基づいて、阻害力価を決定した。
これらの結果を、図8において示す。
全てのナノボディは、CXCR4からの12G5の、一価の抗CXCR4ナノボディ15F5との結合を、完全に転置することができ、1.25nMのIC50により最良の競合相手であり、その後は15G11(6.2nM)および281F12(13nM)である。
抗CXCR4 AMD3100との競合を評価するために、それらのそれぞれのEC30結合濃度において固定された濃度のCXCR4ナノボディを、10000nM〜1nMの範囲のAMD-3100の連続希釈と共にプレインキュベートし、1時間RTでJurkat細胞に結合させた。並行して、1×105細胞を、Fcブロッキング溶液(Miltenyi Biotecカタログ#130-059-901)と共に、30分間4℃で振盪してインキュベートし、その後、AMD-3100−ナノボディ混合物を添加し、さらに30分間4℃でインキュベートした。PBS中10%のFBSで3回洗浄した後、マウス抗c-myc(AbD Serotec、カタログ#MCA2200)およびヤギ抗マウス−PE(Jackson Immunoreseach、カタログ#115-115-164)抗体で、結合したナノボディを検出した。阻害力価を決定した。ADM3100が存在しない場合のシグナル、およびこの分子の濃度を増大させた場合のシグナルの減少に基づいて決定した。
これらの結果を、図8において示す。
AMD3100は、約100nMの力価により、全ての試験されたCXCR4ナノボディの結合と完全に競合することができる。
まとめると、CXCR4ナノボディ15F5および15G11は、強力なHIV1アンタゴニストであり、細胞で発現されたCXCR4への結合についてAMD3100およびmAb 12G5を阻害するが、CXCR4リガンドCXCL12とは競合せず、したがって、抗CD4ナノボディ3F11との二重特異性構築物にフォーマッティングするための好適な候補である。
例12:半減期が延長したCXCR4−CD4二重特異性ポリペプチドの作製
二重特異性CXCR4−CD4構築物を、in vivo実験のための血清中でのその半減期を延長するために、抗アルブミンナノボディによりフォーマッティングした。このことを目的として、それぞれのCXCR4ナノボディを、可撓性の15GSリンカーにより抗アルブミンナノボディと、その後、第2の15GSリンカーによりCD4ナノボディと融合させた。CXCR4ナノボディ281F12、15F05および15G11を、半減期が延長した二重特異性構築物にフォーマッティングした(配列番号107、配列番号108、配列番号109)。参照として、一価のCXCR4 281F12をまた、抗アルブミンナノボディに融合させた(配列番号110)。個別のPCR反応により(N末端について1回、中央について1回、およびC末端ナノボディサブユニットについて1回)、特異的制限部位を含むプライマーの異なるセットを用いて、多価構築物を作製した。
全ての構築物を、pPICZα(Life Technologies)から誘導されたAOX1プロモーター、ゼオシン(Zeocin)に対する耐性遺伝子、E. coliとP. pastorisとの両方のために必要な複製起点、およびS. cerevisiaeのα-MFシグナルペプチドについてのコード情報により先行される複数のクローニング部位を含む、Pichia pastoris発現ベクター中にクローニングした。ナノボディコード配列とインフレームで、ベクターは、C末端(Flag)3タグおよび(His)6タグをコードする。シグナルペプチドは、真核生物宿主の分泌経路を介して、発現されたナノボディを細胞外環境に配向させる。配列の確認の後でpAX159由来の発現構築物を、次いで、標準的な手順に従ってP. pastoris X-33にトランスフォームした(EasySelect™Pichia 発現キットマニュアル、Life Technologies)。Hisタグに対する標準的な親和性クロマトグラフィーと、その後のゲル濾過ステップを用いて、培養培地からのナノボディの精製を行った。全てのナノボディの完全性および純度を、MS分析およびSDS-PAGEにより確認した。アミノ酸配列は、表12において提供する。
例13:半減期が延長したCXCR4−CD4二重特異体による、CXCR4により媒介される走化性の阻害
減期が延長した二重特異性CXCR4−CD4ポリペプチドの機能を検証するために、本質的に例7.1において記載されるように、CXCR4依存性機能アッセイを行った。半減期が延長した一価の281F12-ALBおよび二重特異性281F12-ALB-3F11による、CXCL12により誘導される走化性の用量依存的阻害を、同じ構築物であって抗アルブミンビルディングブロックを含まないものと比較して、Jurkat E6(CXCR4+/CD4 low)、およびMolm-13細胞(CXCR4++/CD4++)において決定した。走化性因子として、Jurkat細胞株については100,000細胞/ウェルに対して750pMの濃度のSDF-1α(R&D systems)を、MOLM-13細胞株については500,000細胞/ウェルに対して1nMのSDF-1aを用いた。
代表的な実験の結果を、図9A+Bにおいて示す。
抗アルブミンナノボディとの融合は、Jurkat細胞において、一価のCXCR4 281F12または二重特異性CXCR4-ALB-CD4構築物の親和性および力価に、実質的に影響を及ぼさず、全てのナノボディフォーマットが、類似の力価を示した(アッセイに依存して16〜80nMのIC50値;図9A)。二重陽性のMOLM-13細胞において、半減期延長二重特異性CXCR4−CD4構築物の力価は、対応する半減期が延長していない二重特異性カウンターパートと類似し、このことは、抗アルブミンナノボディが、標的の各々への同時結合に影響を及ぼさなかったことを示唆している(図9B)。
これらの結果は、また、半減期が延長した二重特異性CXCR4-ALB-CD4構築物が、それらのそれぞれの標的に同時に結合することができること、および、一価のCXCR4-ALBと比較したCXCR4機能を遮断することにおける力価の増強が維持されることを示す。
表12
例14:半減期が延長したCXCR4−CD4二重特異体によるHIV1中和の遮断
半減期が延長した二重特異性CXCR4−CD4ポリペプチドが、CXCR4を用いるHIV1株NL4.3の複製を遮断する能力を、MT-4細胞株におけるHIV1 感染アッセイにおいて、例8において記載されるものと同様に評価した。このアッセイにおいて、CXCR4ナノボディ281F12により、および15F05により作製した、半減期が延長した二重特異性CXCR4-ALB-CD4構築物を、対応する一価のナノボディおよび281F12-35GS-3F11二重特異性ポリペプチドと直接比較した。AMD3100を、参照として含めた。
結果を、表14.1において表す。
結果は、半減期が延長したCXCR4-ALB-CD4構築物の両方が、プロトタイプX4株NL4.3に対するHIV1中和アッセイにおいて、ナノモル濃度以下の力価を維持し、CXCR4ナノボディ15F05による構築物が、281F12による構築物よりもわずかに優れた力価を有したことを示す
これらの結果は、半減期が延長したCXCR4-ALB-CD4ナノボディにおいて、強力な抗HIV1 活性が保存されることを確認する。
表14.1:MT-4細胞における、半減期が延長したCXCR4−CD4ポリペプチドによる、X4 NL4.3株のHIV1感染力の阻害。AMD-3100を対照化合物として用いた。3回の実験の平均IC
50を示す。
例15:カニクイザルCD4への3F11の結合
in vivoでの研究を行うために、サルのオルトログに対する交差反応性結合が好ましい。二重特異性CXCR4-ALB-CD4構築物中のCXCR4ナノボディおよびALBビルディングブロックについて、カニクイザル交差反応性を確認した。抗CD4ナノボディの交差反応性に取り組むために、一価のCD4 3F11のカニクイザルCD4+ HSC-F T細胞株への用量依存的結合を、flagタグ(マウス抗Flag、Sigmaカタログ番号F1804の検出を用いるフローサイトメトリーを介して評価した)。
結果を図10において示す。
結果は、3F11がカニクイザルCD4に対し得交差反応性であるが、飽和には達さず、カニクイザルCD4への結合親和性はヒトCD4と比較して低いことを示す。