JP6929176B2 - 立体成型物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、立体成型物の製造方法に関する。
表面に凹凸等の複雑な形状が設けられた被着体表面に、従来の塗装に代えて、着色やデザインを施した樹脂フィルムをラミネートすることで被着体表面の装飾を行う試みがなされている。このような被着体としては、例えば自動車やオートバイの外装部品や内装部品、電子部品、家具等が挙げられる。
さらに製品としての表面保護や意匠性の向上のため、ハードコート材料を設ける方法が行われている。
例えば特許文献1には、成型用積層ハードコートフィルムの発明が記載されている。特許文献1に記載のハードコートフィルムは、活性エネルギー線硬化性樹脂を含む。
特開2013−139105公報
特許文献1に記載されている成型用積層ハードコートフィルムを使用する場合には、被着体に成型用積層ハードコートフィルムで被覆し、紫外線を照射してハードコート層を硬化する工程が必要となる。このとき、被着体が複雑な三次元成型品の場合には、すべての面に紫外線を均一に照射することが困難であり、ハードコート層を完全に均一に硬化させることが困難である、という課題がある。または、三次元成型品のすべての面に紫外線を均一に照射するため、三次元成型品を動かすような複雑な設備と工程数の増加が必要になる、という問題がある。
本発明者らが鋭意検討した結果、ハードコート層の形成材料に熱硬化性樹脂を用い、ハードコート層を含む積層体を予め所望の形状に予備成型することにより、射出成型により積層する樹脂と良好に接着させることができることを見出した。
すなわち、本発明は射出成型工程を備えるフィルムラミネート成型において、被着体の表面の形状に沿ってハードコート層を簡素な工程により短時間で接着することができる、立体成型物の製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は以下の構成を採用した。
[1]少なくともハードコート前駆体層、接着シート層をこの順で備える積層体を加熱して変形させ、積層成型体を形成する工程と、前記積層成型体を射出成型用の金型内に設置し、射出成型する工程と、を備え、前記ハードコート前駆体層および前記接着シート層は、それぞれ熱硬化性樹脂を形成材料として含み、前記積層成型体を形成する工程において、加熱により前記ハードコート前駆体層を硬化させてハードコート層とすると共に、前記接着シート層を硬化させて接着層とし、前記ハードコート層と前記接着層とが積層した前記積層成型体を形成し、前記射出成型する工程において、前記積層成型体の前記ハードコート層側が前記金型の内壁に接し、前記積層成型体の前記接着層側が前記金型の金型内空隙側に面するように、前記金型内に前記積層成型体を設置して射出成型する立体成型物の製造方法。
[2]前記接着シート層の形成材料が、アクリル系ポリマーを含む、[1]に記載の立体成型物の製造方法。
[3]前記ハードコート前駆体層の形成材料が熱重合開始剤(A)を含み、前記接着シート層の形成材料が熱重合開始剤(B)を含む、[1]又は[2]に記載の立体成型物の製造方法。
本発明によれば、射出成型工程を備えるフィルムラミネート成型において、被着体の表面の形状に沿ってハードコート層を簡素な工程により短時間で接着することができる、立体成型物の製造方法を提供することができる。
本実施形態に用いる接着シート挟持体の一例の断面図である。 本実施形態に用いる樹脂積層体の一例の断面図である。 本実施形態の立体成型物の製造方法の一例の概略工程図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は本発明の一例であり、これに限定されるものではない。
本明細書において、「積層体」とは、ハードコート前駆体層、接着シート層をこの順で備えるものを意味する。
本明細書において、「積層成型体」とは、ハードコート層、接着シート層をこの順で備える積層体の成型体を意味する。
<第1実施形態>
本実施形態の立体成型物の製造方法は、少なくともハードコート前駆体層、接着シート層をこの順で備える積層体を加熱して変形させ、積層成型体を形成する工程と、前記積層成型体を射出成型用の金型内に設置し、射出成型する工程と、を備え、前記ハードコート前駆体層および前記接着シート層は、それぞれ熱硬化性樹脂を形成材料として含み、前記積層成型体を形成する工程において、加熱により前記ハードコート前駆体層を硬化させてハードコート層とすると共に、前記接着シート層を硬化させて接着層とし、前記ハードコート層と前記接着層とが積層した前記積層成型体を形成し、前記射出成型する工程において、前記積層成型体の前記ハードコート層側が前記金型の内壁に接し、前記積層成型体の前記接着層側が前記金型の金型内空隙側に面するように、前記金型内に前記積層成型体を設置して射出成型する。
本実施形態によれば、複雑な形状の被着体の表面を保護するためのハードコート層を被着体の表面に形状に沿って、簡素な工程により短時間で接着することができる。
以下、本実施形態の各構成について説明する。
≪積層成型体を形成する工程≫
本実施形態においては、まず、少なくともハードコート前駆体層、接着シート層、をこの順で備える積層体を立体成型、積層成型体を形成する。本実施形態に用いる積層体は、ハードコート前駆体層と接着シート層を必須の層をして備えていればよいが、積層体はハードコート前駆体層、任意の基材層、接着シート層、任意の離型シート、任意の保護フィルム層から構成されることが好ましい。
図3(a)に本実施形態に用いる積層体30の一例を示す。積層体30は、離型シート10、接着シート層11、基材層20、ハードコート前駆体層21、任意の保護フィルム層22とをこの順で備える。積層体30は、最外層に離型シート10を有する。
以下、本実施形態に用いる各材料について説明する。
[離型シート]
離型シートは、熱成型をした際に樹脂の延展性がよい材料であれば特に限定されない。熱成型をした際の延展性が良好であると、積層体の接着シートを離型シートで保護した状態で立体成型をすることができる。このような材料としては、ポリプロピレンを含む樹脂フィルムであることが好ましい。本実施形態においては、プロピレン単独重合体を主成分とし、ポリプロピレンの耐熱性を発揮できれば他の成分を含有していてもよい。本実施形態においては、融点162℃以上であるプロピレン単独重合体を99質量%以上含むことが好ましい。
[接着シート層]
接着シート層は、アクリル系ポリマーと、熱重合開始剤と、を含む接着剤原料組成物を調製し、該接着剤原料組成物から製造することが好ましい。
接着剤原料組成物は、有機溶剤に溶解している方が、より厚みの精度良く塗布することが可能となるため、有機溶剤を含むことが好ましい。接着剤原材料組成物から溶剤を乾燥することで、接着シート層が得られる。つまり、接着剤原材料組成物の組成は、接着シート層を構成する接着性樹脂組成物の組成に、溶剤を加えたものであってもよい。接着シートは、常温では(熱硬化前)、粘着層として機能する。
本実施形態に使用する接着剤シート層は、図1に示すように接着剤原材料組成物を離型シート12に溶媒を含んだ状態で塗布し、乾燥し、さらに離型シート10により保護されることで製造することができる。
アクリル系ポリマーと、重合開始剤とを混合して接着剤原料組成物を製造し、前記接着剤原料組成物を離型シート12上に塗布し、さらに他の離型シート10を重ねて挟持し、接着シート層11が、離形シート10及び12で挟持された接着シート挟持体1を製造する工程を有することが好ましい。
本実施形態において、図1に示す接着シート挟持体1の離型シート10及び12の各形成材料は、同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、離型シート10にポリエチレンフィルムを用い、離型シート12にポリプロピレンフィルムを用いた場合、成型をより容易に行う観点から、剥離工程においてポリエチレンフィルムである離型シート10を剥離することが好ましい。
接着剤原材料組成物は、ダイやパイプドクターを用いて塗布することが好ましい。溶剤の乾燥においては、加熱、送風、減圧又はこれらの組み合わせ等で乾燥させることが好ましい。溶媒の乾燥時間に関しては、生産性を考慮すると、10分間以下であることが好ましく、2〜5分間であることがさらに好ましい。また、有機溶媒を十分に乾燥することが必要なため、有機溶媒の沸点以上の温度で乾燥させることが好ましく、熱重合開始剤の1分間半減期温度以下での乾燥をすることが好ましい。
以下、接着層を構成する各材料について説明する。
・アクリル系ポリマー
アクリル系ポリマーを構成するモノマーは、エステル基(−COO−)を有するアクリル系モノマー、カルボキシル基(−COOH)を有するアクリル系モノマー、アミド基(−CONR,Rは水素原子又はアルキル基等の置換基)を有するアクリル系モノマー、ニトリル基(−CN)を有するアクリル系モノマー、オレフィン類、スチレン、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、ビニルシラン等の非アクリル系モノマーが挙げられる。アクリル系ポリマーは、2種以上のモノマーからなる共重合体が好ましい。光重合前におけるアクリル系ポリマーの数平均分子量は、例えば5〜100万程度が好ましい。粘度は、例えば1000〜10000mPa・s程度が挙げられる。
エステル基(−COO−)を有するアクリル系モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基(水酸基)を有する(メタ)アクリレート、アルコキシ基又はポリエーテル基を有する(メタ)アクリレート、アミノ基又は置換アミノ基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
カルボキシ基(−COOH)を有するアクリル系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシル基(−COOH)を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミド基(−CONR,Rは水素原子又はアルキル基等の置換基)を有するアクリル系モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。
ニトリル基(−CN)を有するアクリル系モノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
アクリル系ポリマーは、構成モノマーの50重量%以上が、アクリル系モノマーからなることが好ましい。特に、構成モノマーの50重量%以上が、一般式CH=CR−COOR(式中、Rは水素又はメチル基、Rは炭素数1〜14のアルキル基を示す。)で表わされるアルキル(メタ)アクリレートの1種又は2種以上からなることが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。特に、アルキル基Rの炭素数が4〜12のアルキル(メタ)アクリレートを必須として(例えば50〜100モル%)用いることが好ましい。
また、水酸基を含有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクタン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等の1種又は2種以上が挙げられる。
・アクリル系モノマー又はアクリル系オリゴマー
アクリル系モノマー又はアクリル系オリゴマーのうち、アクリル系モノマーとしては、前記アクリル系ポリマーを構成するモノマーと同様なモノマー、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基を含有する(メタ)アクリレート、アクリルアミド等の1種又は2種以上が挙げられる。1分子中の(メタ)アクリロイル基等の重合性官能基の数は、ひとつでも2以上でもよい。
特に、アクリル系モノマー又はアクリル系オリゴマーの少なくとも一部として、水酸基を有する(メタ)アクリレートのモノマーを含有する場合、極性を有する水酸基が接着シートの全体に分散しやすくなる。これにより、湿度の高い(さらに高温の)環境でも、水分が凝集しにくく、接着シートの白濁が抑制されるため、好ましい。水酸基を有する(メタ)アクリレートにおいて、1分子中の水酸基の数は、ひとつでも2以上でもよい。
また、アクリル系モノマー又はアクリル系オリゴマーの少なくとも一部として、硬化性ウレタンアクリレートを用いることができる。ウレタンアクリレートは、同一分子中にウレタン結合(−NH−COO−)及び(メタ)アクリロイルオキシ基(X=H又はCHとして、CH=CX−COO−)を有する化合物である。硬化性ウレタンアクリレートは、ウレタンアクリレートのうち、重合性官能基である(メタ)アクリロイルオキシ基により硬化性を有する化合物である。1分子中のウレタン結合の数は、ひとつでも2以上でもよい。また、1分子中の(メタ)アクリロイルオキシ基の数は、ひとつでも2以上でもよい。
ウレタンアクリレートとしては、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とイソシアネート化合物とを反応させて得られる化合物、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマーに、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物を反応させて得られる化合物等が挙げられる。ポリオール化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
アクリル系モノマー又はアクリル系オリゴマーは、重合開始剤による硬化によりポリマーの一部になり、かつポリマーよりも粘度が低い液体(流動体)であることが好ましい。アクリル系モノマー及びアクリル系オリゴマーを併用することも可能である。アクリルオリゴマーとして、ウレタンアクリレートオリゴマー等のアクリレートオリゴマーが挙げられる。アクリルモノマー又はアクリルオリゴマーの有する重合性官能基の数は、例えば1〜10、あるいは2〜5である。本実施形態においては、多官能アクリレートモノマーを使用することが好ましい。
接着性樹脂組成物は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、アクリル系モノマー又はアクリル系オリゴマーを5〜50重量部含有することが好ましい。アクリルモノマー又はアクリルオリゴマーの添加量が多すぎると、重合させたときに、接着性樹脂層の接着力が低下しすぎる場合がある。
・熱重合開始剤
熱重合開始剤としては、熱により分解して、モノマーの重合(ラジカル重合)と樹脂の硬化を開始するラジカル開始剤が挙げられる。ラジカル開始剤としては、接着シートの取り扱いを容易にする観点では、(有機)過酸化物系、アゾ系等が好ましい。
本実施形態において、熱重合開始剤の重合開始温度は、射出成型工程における樹脂の溶融温度よりも10℃以上50℃以下低いことが好ましい。重合開始温度が前記の条件を満たすことにより、射出成型工程における溶融樹脂の温度により、同時に接着シート層に含まれるポリマー成分の重合反応を行うことができる。
(有機)過酸化物系の熱重合開始剤の具体例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化デカノイル、過酸化ラウロイル等のジアシルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート等のアルキルペルオキシエステル、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド等が挙げられる。好ましい有機過酸化物としては、t−ヘキシルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、ジラウロイルペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジスクシニックアシッドペルオキシド、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシマレイン酸、t−ブチルペルオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ヘキシルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ヘキシルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド等が挙げられる。
アゾ系の熱重合開始剤としては、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(4−シアノバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(メチルイソブチレート)、1,1′−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等が挙げられる。
アクリル系ポリマー100質量部に対して、熱重合開始剤の添加量が0.001〜0.5質量部であることが好ましい。
接着性樹脂組成物は、上記以外の任意成分をさらに含有することができる。
例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート化合物等の架橋剤(硬化剤)は、アクリル系ポリマーを、又はアクリルモノマー又はアクリルオリゴマーの重合により生成するポリマーを架橋させるため、好適に用いられる。この場合、必要に応じて、アクリル系ポリマー又はアクリルモノマー又はアクリルオリゴマーの少なくとも一部として、架橋剤と反応する官能基を有するポリマー又はモノマーが使用される。架橋剤と反応する官能基は、例えばイソシアネート系架橋剤の場合、水酸基やカルボキシル基等である。架橋剤の添加量は、ポリマーの官能基に対して例えば1.5当量以下が好ましい。
架橋剤(硬化剤)によるアクリル系ポリマーの硬化は、被着体に貼合する前の接着シートを製造する段階で、エージングにより進行させてもよい。
その他の任意成分としては、例えば、酸化防止剤、充填剤、可塑剤等が挙げられる。接着性樹脂層の製造に用いられる接着剤原材料組成物は、水や有機溶剤等の溶剤を含んでもよく、無溶剤のシロップ状組成物でもよい。基材上にITO等の酸化物導電膜や卑金属等、腐食の可能性がある材料が存在し、これに接着性樹脂層が接触する場合、接着性樹脂組成物の材料としては酸等の腐食性成分を削減し、例えば酸価の低いポリマーを使用することが好ましい。
[基材層]
基材層の材質としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミドなどからなる樹脂フィルムを用いることができる。ポリエステルは、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどである。ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレンなどである。
本実施形態に使用できる基材層の材質としては、積層体成型工程において真空成型法や圧空成型法等の方法を実施した場合に、他の層の延伸に追従できる材質であることが好ましい。このため上記のなかでも延伸フィルムであることが好ましい。
[ハードコート前駆体層]
本実施形態に用いることができるハードコート前駆体層の材質としては、シリコーン系、メラミン系等の熱硬化型ハードコート樹脂が使用できる。また、ハードコート前駆体層が硬化したハードコート層の厚さは、1〜10μmが好ましく、2〜8μmがより好ましい。ハードコート層の厚さが1μmより薄いと、ハードコート性が得られず耐擦傷性が低下し易くなる。
また、ハードコート層の厚さが10μmより厚いと、ハードコート層にクラックが発生し易くなり、ハードコートフィルム自体がカールし易くなるので好ましくない。
また、ハードコート層には帯電防止剤、紫外線吸収剤などの各種の機能を付与するための添加剤を必要に応じて添加してもよい。
本実施系形態に使用するハードコート前駆体層の材質は、熱重合開始剤を含むことが好ましい。ハードコート前駆体層の材質が含有する熱重合開始剤としては、前記接着シート層の形成材料として記載した材料が挙げられる。
本実施形態において、ハードコート前駆体層の形成材料が含む熱重合開始剤を「熱重合開始剤(A)」とし、接着シート層の形成材料が含む熱重合開始剤を「熱重合開始剤(B)」とした場合に、熱重合開始剤(A)の熱重合開始温度と、熱重合開始剤(B)の熱重合開始温度との差は15℃以内であることが好ましく、10℃以内がより好ましく、5℃以内が特に好ましい熱重合開始剤(A)と熱重合開始剤(B)の熱重合開始温度との差が上記の範囲であると、積層体成型工程、及び射出成型工程においてかかる熱によって、ハードコート前駆体層及び接着シート層それぞれの硬化を同時に進行させることができる。
熱重合開始剤(A)の熱重合開始温度と、熱重合開始剤(B)の熱重合開始温度はどちらが高くても良い。例えば、下記の例が挙げられる。
・熱重合開始剤(A)の熱重合開始温度のほうが、熱重合開始剤(B)の熱重合開始温度よりも高い場合:ハードコート前駆体層の硬化が接着シート層の硬化よりも後に開始する。このため、ハードコート前駆体層が曲面追従し、接着シート層が硬化して密着力が上がってからハードコート前駆体層が硬化させることができる。
・熱重合開始剤(B)の熱重合開始温度のほうが、熱重合開始剤(B)の熱重合開始温度よりも高い場合:ハードコート前駆体層の硬化が先に開始する。このため、ハードコート前駆体層が曲面に追従してから接着シート層を硬化させることができる。
本実施形態においては、熱重合開始剤(A)と熱重合開始剤(B)とは、熱重合開始温度の差が小さいものが好ましく、同じものを使用することがさらに好ましい。
[保護フィルム層]
保護フィルム層は、立体成型品の製造工程のから立体成型品の使用前までのいずれかの段階で剥離除去される。このため、ハードコート層への粘着剤の転移が無い(粘着剤が残らない)ように剥離可能に貼りあわされている構成とすることが好ましい。
本実施形態において、保護フィルム層の材質としては、上述の特性を有する材料であれば特に限定されないが、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリオレフィン系フィルム(例えばポリエチレン、ポリプロピレンなど)などが好ましい。
[樹脂]
本実施形態において、射出成型する樹脂の種類は、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。中でもアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂であることが特に好ましい。
積層体30は、図1に示す接着シート挟持体1と、図2に示す樹脂積層体2とを積層することにより得られる。図2に示す樹脂積層体2は、基材層20、ハードコート層21、保護フィルム層22がこの順で積層した積層体である。接着シート挟持体1は、ポリプロピレンを含む離型シート10及び12に、単層の接着シート層11が挟持されている。離型シート10には、接着シート層11と合される側の面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤等により離型処理がなされている。積層体30は、接着シート挟持体1の離型シート12を剥離し除去して接着シート層11を露出させ、樹脂積層体2の基材層20の、ハードコート層21とは反対の面と貼り合せて積層することにより製造できる。
積層体30の離型シート10は、耐熱性が高く、機械強度にも優れた素材であるポリプロピレンを含むことが好ましい。これにより、積層体の接着シートを離型シートで保護した状態で立体成型を行うことができる。
本実施形態においては、離型シート10を備えたまま、積層体30を成型することが好ましい。離型シート10は耐熱性を有するポリプロピレンを含む場合、離型シート10を備えたまま、熱成型により積層体30を成型することができる。成型前は平坦な積層体30を予め成型し、積層成型体30aを形成しておくことにより、射出成型工程において積層成型体30aが射出成型機の金型の形状に沿って変形しやすくなり、被着体の表面に形状に沿って、射出成型工程により樹脂層を良好に接着することができる。
積層体30を熱成型する方法としては、真空成型法や圧空成型法等の公知の方法が挙げられる。より具体的には、積層体30を赤外線ヒーター等によって加熱した後、機械力、真空、圧空等の外力により、積層体30を金型に密着させる、又は図3(b)に示すように金型38aと、金型38bとの間に挟んで型締めした、その後加熱してもよい。
本実施形態においては、加熱によりハードコート前駆体層と接着シート層を硬化させながら積層体30の成型を行う。加熱温度は、ハードコート前駆体層と接着シート層が硬化させることができる温度とする。加熱により、ハードコート前駆体層11はハードコート層11aとなり、接着シート層11は接着層11aとなる。
加熱温度の下限値の一例を挙げると、100℃以上、120℃以上、150℃以上が挙げられる。また、加熱温度の上限値の一例としては、200℃以下、180℃以下、160℃以下が挙げられる。
上記加熱温度の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
本実施形態においては、ハードコート前駆体層を成型し(即ち、ハードコート層を半硬化のまま成型し)、加熱して硬化させることにより、ハードコート層にクラックが生じにくく、容易に成型することができる。
加熱時間は、上記の温度範囲においてハードコート前駆体層と接着シート層が硬化させることができる加熱時間とする。
加熱時間の下限値の一例を挙げると、0.5分間以上、1分間以上、3分間以上が挙げられる。また、加熱時間の上限値の一例としては、10分間以下、5分間以下、1分間以下が挙げられる。
上記加熱時間の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
≪任意の剥離工程≫
本実施形態においては、前記積層成型体30aを形成する工程の後に、積層成型体30aの離型シート10を剥離し、接着層11aを露出させる工程を備えることが好ましい。離型シート10は前記成型体を形成する工程において、接着層11aを保護する機能を有していた層であり、積層体の成型が終了した後に、離型シート10を剥離して除去し、接着層11aを露出させる。
≪射出成型工程≫
本実施形態においては、積層成型体30aを形成する後、又は剥離工程後の積層成型体30aを、接着層11aが金型内空隙側となるように射出成型金型内に設置し、積層成型体30aの接着層11a側の面に対して金型内に樹脂を射出する射出成型工程を備える。
図3(c)に示すように、金型内空隙34c側となるように、金型34aと金型34bとの間に離型シートを剥離した積層成型体30aを設置する。金型34aは、樹脂をインサートするためのスプルー35を備える。
金型34aを金型34bに向かって移動させ、金型内空隙34cに、金型34a側からスプルー35を介して溶融樹脂35aを射出する。
このときに、溶融樹脂35aの熱量によって、さらに、接着層11aの重合が進み、接着層11aと溶融樹脂とが融着して貼りあわされる。
接着層11a、及び基材層20は射出成型機の金型の形状に沿って予め成型されているため、射出成型時に樹脂が隙間なくインサートされ、金型の形状に沿った成型品を製造することができる。
本工程により製造される立体成型物1の断面図を図3(e)に示す。成型品30bは、樹脂層35b、接着層11a、基材層20、ハードコート層21a、任意の保護フィルム層22をこの順で備える。
本工程により製造される他の態様の立体成型物2の断面図を図3(f)に示す。成型品30cは、樹脂層35b、接着層11a、基材層20、ハードコート層21a、をこの順で備える。
1…接着シート挟持体、2…樹脂積層体、10…離型シート、11…接着シート層、11a…接着層、12…離型シート、20…基材層、21…ハードコート前駆体層、21a…ハードコート層、22…保護フィルム層、30…積層体、30a…積層成型体、30b…立体成型物1、30c…立体成型物2、34a…金型、34b…金型、35…スプルー、35a…溶融樹脂、35b…樹脂層

Claims (4)

  1. 少なくともハードコート前駆体層、接着シート層をこの順で備える積層体を加熱して変形させ、積層成型体を形成する工程と、
    前記積層成型体を射出成型用の金型内に設置し、射出成型する工程と、を備え、
    前記ハードコート前駆体層および前記接着シート層は、それぞれ熱硬化性樹脂を形成材料として含み、
    前記積層成型体を形成する工程において、加熱により前記ハードコート前駆体層を硬化させてハードコート層とすると共に、前記接着シート層を硬化させて接着層とし、前記ハードコート層と前記接着層とが積層した前記積層成型体を形成し、
    前記射出成型する工程において、前記積層成型体の前記ハードコート層側が前記金型の内壁に接し、前記積層成型体の前記接着層側が前記金型の金型内空隙側に面するように、前記金型内に前記積層成型体を設置して射出成型する立体成型物の製造方法であって、
    前記接着シート層は熱重合開始剤を含む接着剤原料組成物から形成され、
    前記熱重合開始剤の重合開始温度は、前記射出成型する工程における樹脂の溶融温度よりも10℃以上50℃以下低い、立体成型物の製造方法
  2. 前記ハードコート前駆体層の形成材料が熱重合開始剤(A)を含み、前記接着シート層の形成材料が熱重合開始剤(B)を含む、請求項1に記載の立体成型物の製造方法。
  3. 少なくともハードコート前駆体層、接着シート層をこの順で備える積層体を加熱して変形させ、積層成型体を形成する工程と、
    前記積層成型体を射出成型用の金型内に設置し、射出成型する工程と、を備え、
    前記ハードコート前駆体層および前記接着シート層は、それぞれ熱硬化性樹脂を形成材料として含み、
    前記積層成型体を形成する工程において、加熱により前記ハードコート前駆体層を硬化させてハードコート層とすると共に、前記接着シート層を硬化させて接着層とし、前記ハードコート層と前記接着層とが積層した前記積層成型体を形成し、
    前記射出成型する工程において、前記積層成型体の前記ハードコート層側が前記金型の内壁に接し、前記積層成型体の前記接着層側が前記金型の金型内空隙側に面するように、前記金型内に前記積層成型体を設置して射出成型する立体成型物の製造方法であって、
    前記ハードコート前駆体層の形成材料が熱重合開始剤(A)を含み、前記接着シート層の形成材料が熱重合開始剤(B)を含み、
    前記熱重合開始剤(A)の熱重合開始温度と、前記熱重合開始剤(B)の熱重合開始温度との差は15℃以内である、立体成型物の製造方法。
  4. 前記接着シート層の形成材料が、アクリル系ポリマーを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の立体成型物の製造方法。
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