JP6928309B2 - 反射鏡の製造方法 - Google Patents

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本発明は、赤外線等に対して高い反射率を有する反射鏡の製造方法に関し、特に反射層としてAg層を含むものを用いる反射鏡の製造方法に関する。
反射鏡として、表面からの順で、ZnS−SiO/Ag/ZnS−SiO/フィルムの構造を有し、SiOを含有するZnS層の厚みを20nm以上としたものが公知となっている(特許文献1参照)。上記反射鏡では、ZnS層をアモルファス化することで耐剥離性及び耐湿性を確保することができる。この反射鏡は、フィルムミラーを想定したものであり、ZnS層をアモルファス化することで折り曲げ耐性を向上させ、Ag層の劣化を抑えている。
反射鏡として、基材上に設けられた少なくとも1つのAg層と、このAg層を覆う硫化亜鉛(ZnS)層とを含み、これらのAg層とZnS層との間に少なくとも1つの遮蔽層又は中間層(MgF,Y等)を挿入することで、反射率を確保しつつ耐久性を確保するものが公知となっている(特許文献2参照)。
測距装置は、屋外その他の過酷な環境に置かれるため、測距用のミラーは、高い反射率を有するだけでなく高い耐久性を有することが求められる。特許文献1に開示された反射鏡では、耐久性は確保できても下地に対するAg層の密着性が十分でない。また、特許文献2に開示された反射鏡では、下地に対するAg層の密着性が悪化する。
特開2015−108790号公報 特開平6−313803号公報
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、高い反射率及び耐久性を有し、下地に対する密着性を高めた反射鏡の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る反射鏡の製造方法は、光反射用のAg層を一対のZnS層で挟んだ構造を形成する反射鏡の製造方法であって、ZnS、AgS、Ag、及びZnSの順番で成膜を行い、ZnSは蒸着法又はイオンアシスト法によって成膜し、AgS及びAgは蒸着法によって成膜し、一対のZnS層のうち基材側である下側のZnS層の厚みを18nm以下とし、下側のZnS層とAg層との間にAgS層を成膜する。
上記反射鏡の製造方法によれば、基材側である下側のZnS層の厚みを18nm以下とするので、ZnS層によって応力のバランスが崩れることを抑制でき、或いはAg層の結晶性が劣化することを抑制でき、ZnS層とAg層との接着性又は密着性を向上させ、反射鏡の耐久性を向上させることができる。また、光反射用のAg層を一対のZnS層で挟んだ構造を有するので、反射鏡の反射率を高く保持することができる。
また、下側のZnS層とAg層との間にAgS層を介在させることで、ZnS層とAg層との接着性又は密着性を向上させることができる。
また、蒸着法又はイオンアシスト法によって、ZnS、AgS、Ag、及びZnSの順番で成膜を行うことにより、積層されるZnS層、AgS層、及びAg層間の密着性をさらに向上させることができ、ZnS層等の膜質を向上させることができる。
本発明の具体的な側面では、上記反射鏡の製造方法において、AgS層は、ZnS及びAgを同時蒸着することによって形成される。この場合、下側のZnS層とAg層との間にAgS層を介在させることができ、ZnS層とAg層との接着性を向上させることができる。
本発明の別の側面では、ZnS上にSガス雰囲気下でAgを蒸着することによってAgとSとを反応させてAgS層を形成する。この場合、下側のZnS層とAg層との間にAgS層を介在させることができ、ZnS層とAg層との接着性を向上させることができる。




実施形態の第1の反射鏡の構造を説明する拡大断面図である。 反射鏡の反射率の一例を説明する図である。 実施形態の第2の反射鏡の構造を説明する拡大断面図である。 反射鏡を組み込んだ測距装置の概略的な構造を説明する図である。 第1の反射鏡の製造方法について説明する図である。 (A)は、第2の反射鏡の製造方法について説明する図であり、(B)は、第2の反射鏡の製造方法に関する変形例について説明する図である。 第2の反射鏡の製造方法に関する別の変形例について説明する図である。 (A)〜(C)は、Ag層の下側のZnS層の膜厚を変化させて反射膜の剥離性を調べた結果を示す。
〔実施形態〕
図面を参照して、本発明の一実施形態に係る反射鏡及びその製造方法等について説明する。
図1に示すように、本実施形態の反射鏡10は、平板状の基板である基材20と、基材20上に形成された薄膜である反射膜30とを備える。この反射鏡10は、波長800nm〜2000nmの赤外波長域で使用することを前提としている。
基材20は、例えば板状の部材であり、反射膜30よって被覆される平坦な又は湾曲した光学面21を有する。基材20は、光透過性を有する必要はない。基材20は、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリエチレンテレフタラート(PET)等の樹脂材料で形成されているが、樹脂材料に限らず、石英、ガラス、セラミックスその他の無機材料で形成されてもよい。
反射膜30は、基材20の光学面21上に形成される下地層31と、下地層31上に形成されるAg層32と、Ag層32上でAg層32を覆うZnS層33と、ZnS層33上に形成される増反射層34とを備える。つまり、Ag層32は、下地層31とZnS層33との間に挟まれている。なお、増反射層34については、用途によるが、省略することもできる。
下地層31は、例えばZnS層31aで形成され、ZnS層31aを基材20側から支持する追加層31bを含めることができる。下地層31は、基材20からAg層32への水分を遮断することや基材20からAg層32への応力を調整する役割を有する。
ZnS層31a、つまりAg層32に対して下側のZnS層31aは、水分の透過を防止しつつAg層32の剥離を防止する役割を有する。下側のZnS層31aは、18nm以下の厚みを有し、蒸着法、イオンアシスト法等によって形成される。
追加層31bを含める場合、追加層31bも、基材20からAg層32への水分を遮断することや基材20からAg層32への応力を調整する役割を有することが望ましい。追加層31bを含める場合、追加層31bについては、基材20との密着が良いことが重要となり、ZnS層31aについては、Ag層32との密着が良いことが重要となる。追加層31bとしては、例えばAl、LaTiO(Substance H4)等の使用が可能である。追加層31bは、55nm〜155nm程度の厚みを有する。追加層31bは、蒸着法、イオンアシスト法等によって形成される。
Ag層32は、銀のみで形成された光反射用の薄膜である。Ag層32は、数70nm〜130nm程度、より好ましくは80nm〜130nm程度の厚みを有する。Ag層32が薄いと870nmでの反射率が97%を確保できなくなり、Ag層32の厚みが130nmを超えてくると反射率98.5%で飽和する。なお、Ag層32は、金属腐食耐性をさらに強化したい場合には、反射率が低下しない程度の範囲内で、金やアルミニウム、ビスマスといった材料を添加した合金を使用しても構わない。
Ag層32を覆うZnS層33、つまりAg層32に対して上側のZnS層33は、増反射層34からAg層32への水分を遮断することや増反射層34からAg層32への応力を調整する役割を有する。上側のZnS層33は、10nm〜80nm程度の厚みを有する。上側のZnS層33は、蒸下側のZnS層31aと同様に、蒸着法、イオンアシスト法等によって形成される。
上側のZnS層33と下側のZnS層31aとは、一対のZnS層を構成し、Ag層32を上下から挟む構造を形成する。
上側のZnS層33とAg層32との間には、意図しない反応層としてAgS層37が形成される。AgS層37は、ZnS層33を成膜する際に成膜材料がAg層32の表面のAgと反応することで形成される。ZnS層33を例えば蒸着のような比較的反応性の低い成膜方法で形成する場合であっても、ZnS層33とAg層32との界面に薄いAgS層37が形成される。AgS層37は、0.1nm〜10nm程度の厚みを有する。なお、下側のZnS層31aとAg層32との間には、意図しないAgS層が形成されない。Ag層32の成膜方法にもよるが、Ag層32の成膜に際してSイオンが強制的に生成される状況が発生しないことによる。
図2は、反射鏡10の反射率を説明するチャートであり、実線は具体的な反射鏡10の実測の反射率を示し、点線はシミュレーションによる反射率を示す。横軸は使用波長であり、縦軸は透過率である。反射鏡10の構成は、下から順に、ポリカーボネート(PC)上にまずAl2O及びLaTiO(Substance H4)を積層し、その上にZnS、Ag、及びZnSを積層したものであり、仕上げの増反射層34として、Al、LaTiO、SiO、LaTiO、及びSiOを順次積層したものとなっている。Agを挟む上下のZnS層の厚みは、40nmとした。具体的な反射率については、波長650nm以下の可視域で反射率低下が生じているが、意図しない反応層としてのAgS層37の形成が原因と考えられる。つまり、反射鏡10の反射率を監視することで、AgS層37の有無や厚みを評価することができる。なお、反射鏡10は赤外波長域で使用されるので、AgS層37が形成されても光学的な性能低下は生じない。
図1に戻って、増反射層34は、図示を省略するが、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜であり、最上層は、低屈折率材料層で形成される。高屈折率材料層33aは、例えば1.8以上の屈折率を有し、低屈折率材料層33bは、例えば1.55以下の屈折率を有する。低屈折率材料層の材料は、SiO等から選ばれる。高屈折率材料層の材料は、LaTiO、TiO、Nb、Ta、ZrO等から選ばれる。
図3は、変形例の反射鏡10の断面構造を説明する図である。この場合、反射鏡10は、下側のZnS層31aとAg層32との間にAgS層35を介在させた構造を有する。
AgS層35は、蒸着法又はイオンアシスト法によって、下側のZnS層31a上に強制的に成膜することができる。AgS層35は、0.1nm〜10nm程度の厚みを有する。なお、AgS層35が18nm以上になると密着性の確保が容易でなくなる。蒸着法を用いる場合、AgS層35は、例えばZnS及びAgを同時蒸着することによって形成される。イオンアシスト法(或いはイオンアシスト蒸着法)を用いる場合、下側のZnS層31a上にAgを成膜することにより、下側のZnS層31aとAg層との界面で反応を生じさせてAgS層35を形成することができる。蒸着法を用いる場合、下側のZnS層31a上に、Sガス雰囲気下でAgを蒸着することによってZnSとAg層との界面で反応を生じさせてAgS層35を形成することができる。
図4は、図1又は図3に示す反射鏡10を組み込んだ測距装置100の概略的な構造を示す。測距装置100は、例えば屋内外監視用途や車載用途のレーザーレーダーであり、検出対象の存在や当該検出対象までの距離を検出する。
測距装置100は、投光部101と、受光部102と、回転反射部103と、制御部104と、外装部品105とを備える。
投光部101は、後述する回転反射部103の反射鏡110にレーザー光L1を投射する。投光部101は、図示を省略するが、レーザー光源とカップリングレンズとを有する。前者のレーザー光源は、制御部104の制御下で動作することによって所定のタイミングでパルス光をレーザー光L1として射出する。後者のカップリングレンズは、レーザー光源と回転反射部103との間の光路上に配置され、レーザー光L1を平行光又はわずかに発散した発散光とする。レーザー光L1は、反射鏡110で反射され、後述する外装部品105の光学窓53を介して検出対象OB側、つまり外装部品105の外部に射出される。
受光部102は、外装部品105の光学窓53を介して入射し、回転反射部103の反射鏡110で反射された検出対象OBからの反射光L2を受光する。より詳細には、検出領域内に物体等の検出対象OBがあると、測距装置100から射出されたレーザー光L1が検出対象OBで反射され、検出対象OBで反射された光の一部が反射光L2として測距装置100の受光部102に戻される。受光部102は、図示を省略するが、集光レンズとセンサーとを有する。前者の集光レンズは、回転反射部103とセンサーとの間の光路上に配置され、この反射光L2を集光する。後者のセンサーは、高速で動作する1次元又は2次元の光検出デバイスであり、集光レンズを介して反射光L2を受光し、受光光量や受光位置に対応した信号を制御部104に出力する。
回転反射部103は、反射鏡110と回転駆動部103bとを有する。回転反射部103の反射鏡110は、2回反射型のポリゴンミラーであり、第1反射部3aと第2反射部3bとを有する。第1及び第2反射部3a,3bは、回転軸RXに沿って上下にそれぞれ配置されている。第1及び第2反射部3a,3bは角錐状又は円錐状の形状を有しており、これらの境界部分に対して略対称となっている。反射鏡110において、投光部101から投射されたレーザー光L1は、第1反射部3aの鏡面に導かれる。第1反射部3aの鏡面は、入射したレーザー光L1を反射させ、第2反射部3bの鏡面に導く。第2反射部3bの鏡面は、入射したレーザー光L1を反射させ、検出対象OB側へ導く。検出対象OBで反射された反射光L2は、レーザー光L1の経路と逆の経路をたどり、受光部102で検出される。つまり、反射鏡110は、検出対象OBで反射された反射光L2を、第2反射部3bの鏡面で反射させ、第1反射部3aの鏡面に導く。続いて、反射光L2は、第1反射部3aの鏡面で反射され、受光部102側へ導かれる。反射鏡110が回転すると、Z軸方向に直交する平面(つまり、XY面)内において、レーザー光L1の進行方向が変化する。つまり、レーザー光L1は、反射鏡110の回転に伴って、Y軸方向に沿って走査される。レーザー光L1によって走査される領域が検出領域となる。
制御部104は、投光部101のレーザー光源、受光部102のセンサー、回転反射部103の回転駆動部103b等の動作を制御する。また、制御部104は、受光部102のセンサーで受光した反射光L2から変換された電気信号から検出対象OBの物体情報を得る。具体的には、センサーにおける出力信号が所定の閾値以上である場合、制御部104において、センサーが検出対象OBからの反射光L2を受光したと判断される。この場合、レーザー光源での発光タイミングとセンサーでの受光タイミングとの差から検出対象OBまでの距離が求められる。また、センサーでの反射光L2の受光位置等によって検出対象OBの位置、大きさ、形状等の物体情報を求めることができる。
外装部品105は、測距装置100の内蔵部品を覆い、保護するためのものである。外装部品105は、蓋状の主外装部51と、円筒容器状の副外装部52とを有する。
以下、図5を参照して、図1に示す反射鏡10の一製造方法について説明する。まず、光学面21を有する基材20を形成する(ステップS11)。基材20を樹脂材料で形成する場合、例えば光学転写面を有する成形型を使用する射出成形を利用することができる。
次に、基材20の光学面21上に、蒸着法、イオンアシスト法等の物理蒸着法を利用して追加層31bを成膜する(ステップS12)。蒸着法を用いる場合、図示を省略するが、真空容器内に、成膜材料源としての蒸着源と、複数の基材20の基板を複数のワークとして真空容器内に支持して回転させる蒸着ホルダーと、蒸着源及び蒸着ホルダー間に配置されて膜厚やその分布を調節する膜厚補正板とを組み込んだものを用いる。イオンアシスト法を用いる場合、真空容器内に、蒸着源、蒸着ホルダー、及び膜厚補正板の他に、成膜時に基材20又はワークの表面にイオンビームを照射するイオンガンと、イオンを中和させる中和ガンとを組み込んだものを用いる(イオンアシスト法の詳細については、例えば特開2011−184706号公報等に開示されている)。
次に、追加層31b上に、蒸着法、イオンアシスト法等の物理蒸着法を利用して下側のZnS層31aを成膜し、下地層31を完成する(ステップS13)。ZnS層31aは、真空容器から出さないで、真空容器中で連続して追加層31b上に成膜する。なお、以下で成膜するAg層32、ZnS層33、及び増反射層34も真空容器中で連続して成膜する。このため、真空容器内には、各種蒸着源が配置を入れ替え可能にセットされている。
次に、下側のZnS層31a上に、蒸着法等の物理蒸着法を利用してAg層32を成膜する(ステップS14)。Ag層32は、比較的弱いイオンビームを用いたイオンアシスト法によっても成膜することができ、この場合、AgS層35の形成を抑制できる。
次に、Ag層32上に、蒸着法、イオンアシスト法等の物理蒸着法を利用して上側のZnS層33を成膜する(ステップS15)。この際、上側のZnS層33とAg層32との間に、反応層としてのAgS層37が自然に形成される。
次に、上側のZnS層33上に、蒸着法、イオンアシスト法等の物理蒸着法を利用して増反射層34を成膜する(ステップS16)。増反射層34は、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した構造を有するので、膜厚を制御しながら複数の蒸着源を切り換えつつ順次成膜を行うことになる。
以下、図6(A)を参照して、図3に示す反射鏡10の一製造方法について説明する。この場合、基材20の形成(ステップS11)、追加層31bの成膜(ステップS12)、及びZnS層31aの成膜(ステップS13)までは、図5を用いて説明した製法と同じである。
ZnS層31aの成膜後、ZnS及びAgを同時蒸着することによって、ZnS層31a上に薄いAgS層35を強制的に成膜する(ステップS23)。この場合、蒸着用の真空容器内の所定位置にZnS蒸着源とAg蒸着源とを配置し、両蒸発源に同時に蒸発動作を行わせる。結果的に、下地のZnS層31a側ではZnS層が形成されるが、表面に薄いAgS層35が形成される。AgS層35の厚みは、0.1nm〜10nm程度である。なお、ZnSとAgとを同時蒸着する際には、対象にイオンを照射することができる。つまり、ZnSとAgとをイオンアシスト法で同時成膜することができる。
その後は、図5を用いて説明した製法と同様に、Ag層32を成膜し(ステップS14)、上側のZnS層33を成膜し(ステップS15)、増反射層34を成膜する(ステップS16)。
以下、図6(B)を参照して、図6(A)に示す製造方法の変形例について説明する。この場合、AgS層35の成膜方法を変更している(ステップS33)。具体的には、ZnS層31aの成膜後、イオンアシスト法によってZnS層31a上にAgを堆積する成膜を行う。これにより、ZnSとAg層31aとの界面で反応を生じさせてAgS層35を形成する。その後は、イオンガンの動作を停止し、蒸着法によってAg層32を成膜する(ステップS14)。
以下、図7を参照して、図6(A)に示す製造方法の別の変形例について説明する。この場合も、AgS層35の成膜方法を変更している(ステップS43)。具体的には、ZnS層31aの成膜後、ZnS層31a上にSガス雰囲気下でAgを堆積する成膜を行う。これにより、AgとSとを反応させてAgS層35を形成する。その後は、Sガスの供給を停止して真空容器内を減圧し、蒸着法によってAg層、ZnS層、Al、LaTiO(Substance H4)32等を成膜する(ステップS14〜S16)。
以上のように、実施形態の反射鏡10では、基材20側である下側のZnS層31aの厚みが18nm以下であるので、ZnS層31aによって応力のバランスが崩れることを抑制でき、或いはAg層32の結晶性が劣化することを抑制でき、ZnS層31aとAg層32との接着性又は密着性を向上させ、反射鏡10の耐久性を向上させることができる。また、光反射用のAg層32を一対のZnS層31a,33で挟んだ構造を有するので、反射鏡10の反射率を高く保持することができる。
〔実施例〕
以下、本発明に係る反射鏡の具体的な実施例について説明する。
基材20の材料として、ポリカーボネート(PC)を用い、成膜の対象すなわちワークとした。なお、比較例として、ガラス(Glass)を用いた場合、具体的な材料はコーニング7059であった。
基材20上に、下地層31として、下側のZnSを成膜し、必要に応じて密着層としてのAlやLaTiO(Substance H4)を成膜した。具体的には、蒸着装置としてオプトラン社製のGENER−1300を用いて、基材に対し下記のとおり反射膜を形成した。
より具体的に説明すると、基材としては、三菱エンジニアリングプラスチックス社製のポリカーボネート(PC)H−3000Rを用い、直径30mmで厚さ3mmに成形したものを使用した。基材は、想定される実際の製品の被成膜面(反射面)が蒸着入射角度45度に位置するため、蒸着源に直交する面または蒸着ホルダーの支持面に対して45度傾けた状態で設置した。
Ag層を形成する場合、Agをモリブデン製抵抗加熱ボートに装填した。真空槽又は真空容器を1×10−4Paまで減圧した後、モリブデン製抵抗加熱ボートに通電加熱(予備加熱)し、その後抵抗加熱ボートの通電加熱条件を適宜調整しながら予備加熱より高い温度で本加熱して形成速度16.0nm/秒で蒸着し、所定の層厚となるようにAg層(反射層)を形成した。なお、予備加熱(条件)として、10秒で200Aまで上昇させ10秒間保持し、10秒で270Aまで上昇させ5秒間保持し、5秒で290Aまで上昇させ85秒間保持した。
下地層としてAl層を形成する場合、メルク製Alを銅製坩堝に装填した。真空槽を1×10−4Paまで減圧した後、電子銃にて加熱し、電子銃の通電加熱条件を適宜調整して形成速度5.0nm/秒で蒸着し、層厚60nmのAl層(密着層の第1層)を形成した。蒸着中は1.5×10−2Paに達するまでOを導入した。
下地層としてLaTiO層を形成する場合、メルク製LaTiO(Substance H4)を銅製坩堝に装填した。真空槽を1×10−4Paまで減圧した後、電子銃にて加熱し、電子銃の通電加熱条件を適宜調整して形成速度4.0nm/秒で蒸着し、所定の層厚となるようにLaTiO層(密着層の第2層)を形成した。
密着層としてのAl層やLaTiO層の形成ではIAD(Ion Assisted Deposition)を使用した。IAD条件は表1のとおりとした。
〔表1〕
Figure 0006928309
増反射膜としてLaTiO層を形成する場合、メルク製LaTiO(Substance H4)を銅製坩堝に装填した。真空槽を1×10−4Paまで減圧した後、電子銃にて加熱し、電子銃の通電加熱条件を適宜調整して形成速度4.0nm/秒で蒸着し、層厚1nmのLaTiO層(増反射層の第2層)を形成した。蒸着に際して、IAD(Ion Assisted Deposition)を使用した。IAD条件は表1のとおりとした。
増反射膜としてAl層を形成する場合、Alを銅製坩堝に装填した。真空槽を1×10−4Paまで減圧した後、電子銃にて加熱し、電子銃の通電加熱条件を適宜調整して形成速度4.0nm/秒で蒸着し、層厚1nmのAl層(増反射層の第1層)を形成した。蒸着に際して、IAD(Ion Assisted Deposition)を使用した。IAD条件は表1のとおりとした。
介在層又は上側層としてZnS層を形成する場合、メルク製ZnSをモリブデン製抵抗加熱ボートに装填した。真空槽を1×10−4Paまで減圧した後、抵抗加熱ボートに通電加熱し、抵抗加熱ボートの通電加熱条件を適宜調整して形成速度4.0nm/秒で蒸着し、所定の層厚でZnS層(密着層)を形成した。
増反射膜としてSiO層を形成する場合、メルク製SiOを銅製坩堝に装填した。真空槽を1×10−4Paまで減圧した後、電子銃にて加熱し、電子銃の通電加熱条件を適宜調整して形成速度8.0nm/秒で蒸着し、層厚15nmのSiO層(増反射層の第3層)を形成した。
下地層である密着層の第2層、並びに、増反射層の第2層と同様にして、層厚75nmのLaTiO層(増反射層の第4層)を形成した。
増反射層の第3層と同様にして、層厚30nmのSiO層(増反射層の第5層)を形成した。
なお、比較例1として、Ag層32上に、蒸着法を用いてMgF層を形成し、その上に蒸着法を用いて上側のZnS層33を成膜した。
以下の表2に、具体的な実施例1〜6及び比較例1〜3の膜構成と膜特性とを列挙した。「膜構成」の欄において、材料の後のカッコ内は膜厚(nm)を示し、カッコが無いものは膜厚が極めて薄いことを示す。表2中で、「密着性」の欄は、テープテストの結果を示す。テープテストは、粘着面を設けたテープを反射膜に一旦貼り付けた後に剥がす実験であり、反射膜が全面で剥離する場合を「×」とし、反射膜の半分が残っている場合を「△」とし、反射膜の剥離が無い場合を「○」とした。また、表2中で、「70℃90%、3week」の欄は、加速試験の結果を示す。具体的には、反射鏡を高温多湿な、温度70℃、相対湿度90%の環境に置き、3週間保持した。上記加速試験のため、反射鏡の雰囲気温度や雰囲気湿度を調整する環境試験装置を用いた。結果の記号「△」は、10日で数百μmの斑点状の外観異常が3個以上発生している場合を示し、結果の記号「○」は、42日で斑点状の外観異常が発生しなかった場合を示す。「870nm、反射率(%)」の欄は、加速試験後の透過率を示す。測定光の波長は870nmであった。
〔表2〕
Figure 0006928309
その他、参考的な実験を行った。膜構成は、
(1)SiO/LaTiO/SiO/LaTiO/Al/Ag/ZnS(40nm)/LaTiO/Al/PC、
(2)SiO/LaTiO/SiO/LaTiO/Al/ZnS(40nm)/Ag/LaTiO/Al/PC、
(3)SiO/LaTiO/SiO/LaTiO/Al/ZnS(40nm)/Ag/ZnS(40nm)/LaTiO/Al/PC、
(4)SiO/LaTiO/SiO/LaTiO/Al/ZnS(40nm)_IAD/Ag/ZnS(40nm)_IAD/LaTiO/Al/PC
の4種類を準備した。以上の膜構成で特に示さないものは蒸着によって成膜し、IADを付したものは、イオンアシスト法又はイオンアシスト蒸着法によって成膜した。膜構成(1)では、Ag層と下側のZnS層との間で剥離が生じた。また、膜構成(2)では、Ag層と下側のLaTiO層との間で剥離が生じた。膜構成(3)及び(4)では、Ag層と下側のZnS層との間で剥離が生じた。なお、表2の実施例5については、Ag層の下側のZnS層の膜厚を10nm、20nm、40nmと変化させてテープテストを行った。図8(A)は、下側のZnS層の膜厚が10nmの場合を示し、図8(B)は、下側のZnS層の膜厚が20nmの場合を示し、図8(C)は、下側のZnS層の膜厚が40nmの場合を示す。この結果から、Ag層の下側のZnS層が厚いと剥離が生じやすいことが分かり、特に下側のZnS層が20nm未満であることが望ましいといえる。これは、ZnS層が厚いとZnS層に応力が残留して応力バランスが崩れAg層/ZnS層間の剥離が生じ易くなると考えられる。一方、Ag層と上側のZnS層との間には、反応層としてAgS層が自然に形成され、密着性が高まったと考えられる。
以上、本発明に係る反射鏡、その製造方法等を実施形態又は実施例に即して説明したが、本発明に係る反射鏡等は、上記した具体例に限定されるものではない。
例えば下地層31の追加層31bは、AlやLaTiOに限らず、基材20の素材や反射鏡10の用途に応じて適宜変更できる。また、増反射層34の膜構成も、例示のものに限らず、用途や仕様に応じて様々なものとできる。
下地層31の追加層31bや増反射層34は、蒸着やイオンアシスト法に限らず、他の成膜方法によって形成することができる。具体的には、スパッタリング法、RF蒸着法、イオンプレーティング法、クラスターイオンビーム(Ionized Cluster Beam)蒸着法、プラズマイオンビーム蒸着法等によって形成することができる。
反射鏡10は、測距装置100に限らず、赤外線用ミラー等、様々な用途に用いることができる。
3a,3b…反射部、 10…反射鏡、 20…基材、 21…光学面、 30…反射膜、 31…下地層、 31a…ZnS層、 32…Ag層、 33…ZnS層、 34…増反射層、 35…AgS層、 37…AgS層、 53…光学窓、 100…測距装置、 101…投光部、 102…受光部、 103…回転反射部、 105…外装部品、 L1…レーザー光、 L2…反射光、 OB…検出対象

Claims (3)

  1. 光反射用のAg層を一対のZnS層で挟んだ構造を形成する反射鏡の製造方法であって、
    ZnS、AgS、Ag、及びZnSの順番で成膜を行い、ZnSは蒸着法又はイオンアシスト法によって成膜し、AgS及びAgは蒸着法によって成膜し、
    前記一対のZnS層のうち基材側である下側のZnS層の厚みが18nm以下とし、
    前記下側のZnS層と前記Ag層との間にAgS層を成膜することを特徴とする反射鏡の製造方法。
  2. 前記AgS層は、ZnS及びAgを同時蒸着することによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の反射鏡の製造方法。
  3. 前記ZnS上にSガス雰囲気下でAgを蒸着することによってAgとSとを反応させて前記AgS層を形成することを特徴とする請求項1に記載の反射鏡の製造方法。
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