本発明の細胞処理装置において、前記レーザ照射手段は、例えば、複数のレンズを含み、
前記スポット径調整手段は、前記レンズを変更することにより、前記スポットの径を調整する。
本発明の細胞処理装置において、前記スポット径調整手段は、例えば、前記レーザ照射手段と、前記被照射物との距離を調整することにより、前記スポットの径を調整する。
本発明の細胞処理装置において、前記制御部は、例えば、前記スポット径調整手段による前記スポットの径の調整を制御するスポット径調整制御部を含む。
本発明の細胞処理装置において、前記第1領域は、例えば、前記第2領域の上部に配置されている。
本発明の処理方法において、例えば、前記第1のスポット径は、前記第2のスポット径より大きい。
本発明の処理方法において、例えば、前記光は、レーザである。
以下、本発明の細胞処理装置について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明に限定されない。なお、以下の図1〜図9において、同一部分には、同一符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、図面においては、説明の便宜上、各部の構造は適宜簡略化して示す場合があり、各部の寸法比等は、実際とは異なり、模式的に示す場合がある。
(実施形態1)
本実施形態は、細胞処理装置の一例である。図1〜図9に、本実施形態の細胞処理装置の構成の一例を示す。図1は、本実施形態の細胞処理装置の構成の一例を示す斜視図であり、図2は、本実施形態の細胞処理装置の第1領域の構成の一例を示す斜視図であり、図3は、図1におけるI−I方向からみた前記第1領域の断面図であり、図4において、(a)は、本実施形態の細胞処理装置における培養容器配置部の一例を示す分解斜視図であり、(b)は、図4(a)におけるIII-III方向からみた断面図であり、図5は、前記第1領域の外壁を外した場合における前記第1領域および循環手段の斜視図であり、図6は、図1におけるII-II方向からみた前記第1領域の上部および前記循環手段の断面図であり、図7において、(a)は、本実施形態の細胞処理装置の第2領域の構成の一例を示す斜視図であり、(b)は、前記第2領域の構成の他の例を示す斜視図であり、図8は、本実施形態の細胞処理装置における制御部の一例を示すブロック図であり、図9は、本実施形態の細胞処理装置の構成の他の例を示す斜視図である。
本実施形態において、処理対象の細胞は、特に制限されず、細胞、細胞から構成される細胞塊、組織、臓器等でもよい。前記細胞は、例えば、培養細胞でもよいし、生体から単離した細胞でもよい。また、前記細胞塊、組織または臓器は、例えば、前記細胞から作製した細胞塊、組織または臓器でもよいし、生体から単離した細胞塊、組織または臓器でもよい。本発明の細胞処理装置は、例えば、前記細胞に代えて、細菌、真菌等の菌類を処理してもよい。この場合、本発明の細胞処理装置は、例えば、菌類処理装置ということもできる。
図1に示すように、本実施形態の細胞処理装置100は、第1領域1と、第2領域3と、第3領域5と、循環手段7とを含み、第1領域1と、第2領域3と、第3領域5とが、この順番で上から下方向に連続して配置されている。本実施形態の細胞処理装置100は、循環手段7を含むが、循環手段7は、任意の構成であり、あってもよいし、なくてもよい。また、第1領域1、第2領域3および第3領域5の位置関係は、第1領域1と第2領域3とが連続(隣接)して配置されていればよく、第3領域5は、任意の位置に配置できる。第3領域5は、例えば、図9に示すように、第1領域1と第2領域3とは別個に配置してもよい。図9に示すように、第3領域5が、第1領域1および第2領域3と別個に配置されている場合、細胞処理装置100は、例えば、細胞処理システムということもできる。前記細胞処理システムは、例えば、卓上型のシステムとしてもよい。第1領域1は、第2領域3の上部に配置されていることが好ましい。細胞培養容器184の上部から後述するレーザ照射手段33によりレーザを照射する場合、レーザ照射手段33の焦点位置を安定化させるために、細胞培養容器184内の培地内に、レーザ出射部332の出射口を配置する必要がある。しかしながら、この状態でレーザ照射を行なうと、前記培地の成分が、レーザ出射部332の出射口に固着する、焼き付く等の問題が生じ、レーザ出射部332の出射口に汚れが生じる。このため、本実施形態の細胞処理装置100のように配置することで、例えば、後述するレーザ照射手段33で、細胞培養容器184内の細胞を培養する際に、レーザ照射手段33のレーザ出射口の汚れを抑制できる。したがって、本発明の細胞処理装置100によれば、例えば、レーザ照射手段33から出射されるレーザの出力を安定化することができ、効率よく細胞を処理できる。各領域の形成材料は、特に制限されず、例えば、ステンレス板、防錆処理された鉄板、真空成型、射出成型、圧空成型等による成型が可能な樹脂板等があげられる。各領域の形成材料は、後述する第2の撮像手段により、細胞培養容器184内の細胞をより明確に撮像できることから、非透光性の材料であることが好ましい。前記「非透光性」は、例えば、前記第2の撮像手段による撮像に影響を与える波長の光の透過を抑制することを意味する。前記第2の撮像手段が蛍光顕微鏡の場合、前記光の波長は、例えば、検出する蛍光に対応する波長があげられる。具体例として、前記非透光性の材料は、例えば、前述の各領域の形成材料等があげられる。各領域の大きさおよび形状は、特に制限されず、各領域内に配置する部材の大きさおよび形状に応じて適宜設定できる。本実施形態の細胞処理装置100において、第1領域1と第2領域3とは、別個の筐体で構成し、第1領域1を構成する筐体および第2領域3を構成する筐体を隣接して配置しているが、これに限定されず、第1領域1と第2領域3とを1つの筐体で構成し、1つの筐体内で、第1領域1と第2領域3とを区分けすることで構成してもよい。本実施形態の細胞処理装置100は、第1領域1および第2領域3を別個の筐体で構成することにより、例えば、細胞処理装置100内の各部材のメンテナンスを容易に実施でき、また、細胞処理装置100の組み立てが容易となる。
第1領域1は、その前面(図1において手前側)に作業用の開口部11aを含み、またその側面にメンテナンスが可能な開口部11bを含む。開口部11aは、第1領域1内の細胞処理室内で細胞処理に関連する作業を行なうための開口部である。開口部11bは、前記細胞処理室のメンテナンスが可能な開口部である。開口部11aの開口面積は、例えば、メンテナンス作業が容易になることから、開口部11bの開口面積より小さいことが好ましい。開口部11aならびに開口部11bの大きさおよび数は、特に制限されず、例えば、安全キャビネットにおける作業用の開口部およびメンテナンスが可能な開口部の大きさおよび数を参照できる。具体例として、開口部11aならびに開口部11bの大きさおよび数は、例えば、EN規格であるEN12469:2000で特定される安全キャビネットの規格を参照できる。開口部11bの数は、特に制限されず、任意の数とできるが、例えば、メンテナンスがより容易となることから、2以上が好ましい。第1領域1における開口部11aおよび開口部11bの配置箇所は、特に制限されず、任意の場所とできるが、開口部11aと開口部11bとは、第1領域1の異なる場所(例えば、異なる側面)に配置することが好ましい。本実施形態において、開口部11bは、細胞処理装置100内のメンテナンスを容易に行うことを主目的としたが、他の目的でも使用してもよい。本実施形態の細胞処理装置100は、例えば、開口部11bから内部の各部材の動き等を観察可能とすることで、細胞処理装置100にトラブルが発生した場合に不具合箇所を直接観察でき、対応策を検討することができる。
第1領域1の前面の壁は、外壁および内壁を有する二重壁となっており、扉12aは、前記外壁と前記内壁との間の空間に配置されたレールを昇降することにより、開口部11aの開口を開閉する。開口部11bは、その開口を、前記開口を覆う扉12bの着脱により開閉可能である。開口部11bは、例えば、前記細胞処理室内で細胞の処理を行なう際に、その開口が扉12bに封止されていることが好ましい。これにより、例えば、細胞処理装置100外の気体およびそれに含まれる埃の前記細胞処理室内への流入を防止できる。本実施形態の細胞処理装置100において、開口部11aおよびその扉12a、ならびに開口部11bおよびその扉12bは、任意の構成であり、あってもよいし、なくてもよいし、いずれかの開口部およびその扉のみを含んでもよい。また、第1領域1の壁は、二重壁でもよいし、一重壁でもよいが、他の部材を内部に配置することで、細胞処理装置100の大きさを小さくできることから前者が好ましい。また、第1領域1の壁が一重壁の場合、扉12aは、例えば、扉12bのように第1領域1の外部に配置される。前記扉の開閉の形式は、特に制限されず、例えば、扉12aのように昇降式でもよいし、扉12bのように外付け式でもよいし、その他の形式でもよい。前記その他の形式は、例えば、観音開き式、アコーディオン式、引き扉式等があげられる。前記扉の形成材料は、特に制限されず、例えば、前述の各領域の形成材料を援用でき、非透光性の材料が好ましい。
図2に示すように、本実施形態の細胞処理装置100の第1領域1の内部は、細胞を処理する細胞処理室であり、扉12a、12bを閉めることにより閉鎖可能である、すなわち開閉可能である。前記細胞処理室は、吸引吐出移動手段であるXYステージ13aおよびアーム13bと、吸引吐出手段14と、光源15と、排液容器配置部16aと、収容容器配置部17aと、培養容器配置部18と、回収容器配置部19aとを含む。本実施形態において、前記細胞処理室は、XYステージ13a、アーム13b、吸引吐出手段14、光源15、排液容器配置部16a、収容容器配置部17a、および回収容器配置部19aを含むが、いずれも任意の構成であり、あってもよいし、なくてもよく、また、いずれか1つを含んでもよいし、2つ以上を含んでもよい。XYステージ13aは、前記細胞処理室の底面に配置されており、矢印X方向および矢印Y方向に移動可能なように配置されている。XYステージ13aの上部には、一対のアームを含むアーム13bが配置されている。アーム13bの一方のアーム先端部分には、吸引吐出手段14が、その吸引吐出口を下方向に向けて配置されている。また、アーム13bの他方のアーム先端部分には、光源15が、下方向に光を投光(照射)可能なように配置されている。排液容器配置部16a、収容容器配置部17a、培養容器配置部18、および回収容器配置部19aは、前記細胞処理室の底面において、XYステージ13aの矢印X方向の移動方向にそって、この順番で配置されている。排液容器配置部16aには、先端部材脱離手段16cを有する排液容器16bが配置され、収容容器配置部17aには、収容容器17bが配置され、回収容器配置部19aには、回収容器19bが配置されている。
本実施形態の細胞処理装置100は、吸引吐出移動手段として、XYステージ13aおよびアーム13bを設けているが、前記吸引吐出移動手段は、これに限定されず、吸引吐出手段14を移動可能であればよく、例えば、公知の移動手段が使用できる。前記吸引吐出移動手段の移動方向は、特に制限されず、例えば、1方向(例えば、矢印Y方向)に移動可能でもよいし、2方向(例えば、矢印XおよびY方向)に移動可能でもよいし、3方向(例えば、矢印X、YおよびZ方向)に移動可能でもよい。2方向の場合、第1方向が、第2方向と平行でなければよく、好ましくは、前記第1方向が、前記第2方向と略直交または直交する。この場合、前記第1方向および前記第2方向を含む平面は、培養容器配置部18の配置面に略平行な平面であることが好ましい。また、3方向の場合、第3の方向は、例えば、前記第1方向および前記2方向を含む平面と交差すればよく、好ましくは、前記第1方向および前記2方向を含む平面と略直交または直交する。本実施形態において、XYステージ13aは、例えば、リニアモータ台車などを介して、対象物を矢印X方向および矢印Y方向に沿って高速かつ精密に移動可能な公知のものである。アーム13bは、上下方向(矢印Z方向)に伸縮可能であるが、アーム13bは、固定されていてもよい。後者の場合、前記吸引吐出移動手段は、前記細胞処理室の底面に対して略平行方向な平面上のみにおいて、すなわち、図2において、矢印Xおよび矢印Y方向のみに、吸引吐出手段14を移動可能である。
吸引吐出手段14は、例えば、細胞培養容器184内の培地、細胞等を吸引および吐出する。吸引吐出手段14は、例えば、その吸引吐出口側に、後述する先端部材を装着して使用する。吸引吐出手段14は、特に制限されず、例えば、公知の吸引吐出手段が利用でき、具体例として、電動ピペッタ、電動シリンジポンプ等があげられる。
光源15は、例えば、培養容器配置部18の上部から培養容器配置部18に向かって、光を照射する。光源15は、例えば、後述する第2の撮像手段として、位相差顕微鏡等の光学顕微鏡を使用する際に併用することが好ましい。光源15が照射する光は、例えば、可視光である。光源15は、特に制限されず、例えば、キセノン光源、LED(light emitting diode)照明、レーザーダイオード(LD)等の公知の光源があげられる。本実施形態において、光源15は、前記吸引吐出移動手段のアーム13bに配置され、吸引吐出手段14の移動と同期して移動するが、吸引吐出手段14と非同期して移動してもよい。具体例として、光源15は、例えば、前記吸引吐出移動手段とは異なる、光源15を移動可能な光源移動手段に配置されてもよい。この場合、後述する制御部51は、光源移動手段の移動を制御する光源移動制御手段を含んでもよい。前記光源移動手段の移動方向は、例えば、前記吸引吐出手段の移動方向の説明を援用できる。
排液容器配置部16aは、吸引吐出手段14により吸引した吸引液を排液する排液容器16bを配置可能な領域である。本実施形態において、排液容器配置部16aには、排液容器16bが配置されているが、排液容器16bは、任意の構成であり、あってもよいし、なくてもよい。本実施形態において、排液容器16bは、上部開口の箱であり、収容容器配置部17a側の壁が上方向に伸びており、その上端に、半円状の凹部(切り欠き)として形成されている先端部材脱離手段16cを含む、前記細胞処理室の底面に対して略平行方向な壁(上面)を有する。排液容器16bは、吸引吐出手段14から脱離した先端部材を回収可能であることから、例えば、先端部材回収容器ということもでき、また、排液容器配置部16aは、先端部材回収容器配置部ということもできる。先端部材脱離手段16cは、排液容器16bに形成されているが、別個に配置されてもよい。また、先端部材脱離手段16cは、吸引吐出手段14の近傍、具体的には、吸引吐出手段14が配置されている前記吸引吐出移動手段に配置されてもよい。
収容容器配置部17aは、吸引吐出手段14に着脱可能な先端部材が収容された収容容器17bを配置可能な領域である。本実施形態において、収容容器配置部17aには、収容容器17bが配置されているが、収容容器17bは、任意の構成であり、あってもよいし、なくてもよい。前記先端部材は、特に制限されず、吸引吐出手段14により吸引された液体を内部に貯留可能な部材であればよく、例えば、吸引吐出手段14がピペッタの場合、チップがあげられる。収容容器17bは、例えば、前記チップが収容されたラックがあげられる。本実施形態の細胞処理装置100は、先端部材脱離手段16cおよび収容容器配置部17aを含むことで、細胞培養容器184内の培地、細胞等を吸引および吐出する際の移動を簡素化(短く)できる。
回収容器配置部19aは、吸引吐出手段14により回収した細胞を含む吸引液を回収する回収容器19bを配置可能な領域である。本実施形態において、回収容器配置部19aには、回収容器19bが配置されているが、回収容器19bは、任意の構成であり、あってもよいし、なくてもよい。回収容器19bは、例えば、公知のディッシュ、フラスコ等の培養容器等があげられる。
本実施形態において、前記細胞処理室の底面には、培養容器配置部18の配置面、すなわち、前記細胞処理室の底面に対して略平行方向な平面において、XYステージ13aの長軸方向(矢印X方向)の移動方向にそって、排液容器配置部16a、収容容器配置部17a、培養容器配置部18、および回収容器配置部19aが、この順番で配置されているが、各配置部は、前記長軸方向にそって配置されていなくてもよく、また、この順序で配置されていなくてもよい。本実施形態において、排液容器配置部16a、収容容器配置部17a、培養容器配置部18、および回収容器配置部19aが、前述の順序で配置されていることにより、例えば、吸引吐出手段14の移動を直線的にでき、細胞培養容器184内の培地、細胞等を吸引および吐出する際の移動を簡素化(短く)できる。
また、図3に示すように、本実施形態の細胞処理装置100の前記細胞処理室の前面側の壁には、開口部11aの上部に、第1のカメラ20、照明灯21a、21bおよび殺菌灯22を含む。第1のカメラ20の矢印X方向の両側には、照明灯21a、21bが配置されており、また、上部には、殺菌灯22が配置されている。
本実施形態において、第1の撮像手段として、カメラ20を設けているが、前記第1の撮像手段は、任意の構成であり、あってもよいし、なくてもよい。また、前記第1の撮像手段は、カメラに限定されず、前記細胞処理室内を撮像可能であればよい。前記第1の撮像手段は、特に制限されず、顕微鏡、カメラ等の公知の撮像手段が使用でき、また公知の撮像手段と、CCDやCMOS(Complementary MOS)等の固体撮像素子(イメージセンサ)とを組合せたものでもよい。本実施形態において、カメラ20は、前記細胞処理室内の前面の壁に配置されているが、カメラ20の位置は、特に制限されず、任意の位置とでき、前記細胞処理室内の広い範囲を撮像可能なように配置することが好ましい。具体的には、本実施形態の細胞処理装置100のように、前記細胞処理室において、培養容器配置部18の奥側(図2において左上側)に、吸引吐出移動手段であるXYステージ13aおよびアーム13bと吸引吐出手段14とが配置されている場合、前記細胞処理室内の広い範囲を撮像可能であることから、前記細胞処理室の手前側(図2において右下側)に配置することが好ましい。前記第1の撮像手段は、複数の倍率(例えば、異なる倍率)で撮像可能なことが好ましいが、1つの倍率で撮像可能であってもよい。前記倍率は、例えば、撮像倍率を意味する。具体例として、カメラ20は、例えば、複数の倍率(例えば、異なる倍率)のレンズを含む。前記第1の撮像手段は、例えば、光学ズーム、デジタルズーム等が可能であってもよい。本実施形態の細胞処理装置100はカメラ20を含むことで、例えば、前記細胞処理室内の作業を確認可能であり、作業の確実性が向上する。前記細胞処理室内に配置される第1の撮像手段の数は、特に制限されず、1つでもよいし、複数でもよい。
本実施形態において、照明手段として、照明灯21a、21bを設けているが、前記照明手段は、任意の構成であり、あってもよいし、なくてもよい。また、前記照明手段は、照明灯に限定されず、前記細胞処理室内に投光(照明)可能あればよい。前記照明手段は、特に制限されず、例えば、蛍光灯、LED(light emitting diode)灯等の公知の照明が使用できる。本実施形態において、照明灯21a、21bは、前記細胞処理室内の前面の壁に配置されているが、照明灯21a、21bの位置は、特に制限されず、任意の位置とでき、前記細胞処理室内の広い範囲に投光可能、すなわち、前記細胞処理室内に影ができにくいように配置することが好ましい。具体的には、本実施形態の細胞処理装置100のように、前記細胞処理室において、培養容器配置部18の奥側(図2において左上側)に、吸引吐出移動手段であるXYステージ13aおよびアーム13bと吸引吐出手段14とが配置されている場合、前記細胞処理室内の広い範囲に投光可能であることから、前記細胞処理室の手前側(図2において右下側)に配置することが好ましい。本実施形態の細胞処理装置100は照明灯21a、21bを含むことで、例えば、前記細胞処理室内の作業を確認可能であり、作業の確実性が向上する。前記細胞処理室内に配置される照明手段の数は、特に制限されず、1つでもよいし、複数でもよい。
本実施形態において、殺菌手段として、殺菌灯22を設けているが、前記殺菌手段は、任意の構成であり、あってもよいし、なくてもよい。また、前記殺菌手段は、殺菌灯に限定されず、前記細胞処理室内、特に、培養容器配置部18周囲を殺菌可能あればよい。前記殺菌手段は、特に制限されず、例えば、殺菌灯、紫外LED灯等の公知の殺菌手段が使用できる。本実施形態において、殺菌灯22は、前記細胞処理室内の前面の壁に配置されているが、殺菌灯22の位置は、特に制限されず、任意の位置とできる。殺菌灯22の位置は、例えば、細胞処理装置100外の埃等は、開口部11a、11bから流入することから、開口部11a、11b近傍を殺菌可能に配置されていることが好ましい。具体的には、本実施形態の細胞処理装置100のように、前記細胞処理室の前面側の壁に、開口部11aが設けられている場合、前記細胞処理室の前面側の壁において、開口部11aの上部に前記殺菌手段を配置することが好ましい。本実施形態の細胞処理装置100のように、前記細胞処理室の側面側の壁に、開口部11bが設けられている場合、前記細胞処理室の側面側の壁において、開口部11bの上部に前記殺菌手段を配置することが好ましい。また、細胞処理装置100が前記照明手段および前記殺菌手段を含む場合、両者を前記細胞処理室の同じ壁、例えば、開口部11aが設けられている壁に配置することが好ましい。この場合、前記殺菌手段を、前記照明手段の上方に設けることが好ましい。本実施形態の細胞処理装置100は殺菌灯22を含むことで、例えば、前記細胞処理室内の清浄性が向上する。前記細胞処理室内に配置される殺菌手段の数は、特に制限されず、1つでもよいし、複数でもよい。
本実施形態の第1領域1において、前記細胞処理室の大きさ、形状、構造等は、例えば、前記安全キャビネットの大きさ、形状、構造等を参照でき、具体例として、前述のEN12469:2000で特定される安全キャビネットの規格を参照できる。
図4に示すように、本実施形態の細胞処理装置100の培養容器配置部18は、上蓋181および底部182を含み、上蓋181は、底部182に着脱可能に装着される。本実施形態において、培養容器配置部18は、上蓋181および底部182を含む箱であり、その内部に細胞培養容器184が配置されているが、培養容器配置部18は、これに限定されず、細胞培養容器184を配置可能であり、前記細胞処理室において第2領域3と隣接するように配置され、かつ培養容器配置部18における第2領域3との隣接部(図4において、底板186)が透光可能であればよい。前記「透光」は、例えば、第2領域3のレーザ照射手段33から照射されるレーザが透過することを意味する。また、第2領域3が後述する第2の撮像手段を含む場合、前記第2の撮像手段が、底板186を介して撮像可能であることを意味する。上蓋181は、細胞培養容器184に対して、光源15から光を照射可能なように、透光領域183が設けられている。透光領域183は、例えば、透明なガラス板、アクリル板等から形成される。底部182は、底壁185および透光性の底板186を含む。透光性の底板186は、例えば、透明なガラス板、アクリル板等から形成される。底板186は、第2領域3と隣接している。このため、培養容器配置部18の第2領域3との隣接部、すなわち、底板186は、前記細胞処理室の壁の一部を形成しているということもできる。底板186と前記細胞処理室の壁との接触部は、例えば、パッキン、シール材等の封止部材で封止されていることが好ましい。これにより、例えば、第2領域3内の気体およびそれに含まれる埃等が培養容器配置部18および前記細胞処理室に流入することを防止できる。底壁185は、4つの細胞培養容器184をそれぞれ配置可能な、4つの凹部187を含み、各凹部187の側面は、前記細胞処理室の内部から前記細胞処理室の外部方向(図4(b)において、上から下方向)に向かって狭まる逆テーパ状である。また、各凹部187は、その底板186端側において、凹部187の内側方向に突出する突出部188を含む。細胞培養容器184は、その底部端が、突出部188と接触する。本実施形態の細胞処理装置100において、底壁185は、4つの凹部187を有するが、底壁185が有する凹部187の数は、これに限定されず、配置する細胞培養容器184の数に応じて適宜設定できる。凹部187の大きさは、配置する細胞培養容器184の大きさに応じて適宜設定できる。本実施形態の培養容器配置部18は、凹部187が上述の構造を有することで、例えば、細胞培養容器184の側面の形状によらず、培養容器配置部18に細胞培養容器184を配置可能となる。本実施形態の細胞処理装置100において、底壁185は、その底面の壁と、その側面の壁とが一体形成されているが、底壁185は、これに限定されず、それぞれを別部材としてもよい。底壁185を別部材で構成することにより、例えば、異なる数および大きさの凹部187を有する、複数の底壁185の底面の壁の部材を準備しておくことができる。これにより、例えば、細胞培養容器184の大きさおよび数に応じて、細胞培養容器184の配置に適した大きさおよび数を有する底壁185の底面の壁の部材に取替えることができ、細胞培養容器184を好適に配置することができる。
細胞培養容器184は、特に制限されず、例えば、細胞培養に用いられる公知のディッシュ、フラスコ等の培養容器があげられる。細胞培養容器184の形成材料は、特に制限されず、例えば、後述するレーザ照射手段33により照射されるレーザを透過する材料があげられ、具体例として、レーザを透過するプラスチック、ガラス等があげられる。プラスチックは、例えば、ポリスチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー(ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等)、ポリビニルピリジン系ポリマー(ポリ(4−ビニルピリジン)、4−ビニルピリジン−スチレン共重合体等)、シリコーン系ポリマー(ポリジメチルシロキサン等)、ポリオレフィン系ポリマー(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等)、ポリエステル系ポリマー(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等)、ポリカーボネート系ポリマー、エポキシ系ポリマー等があげられる。
細胞培養容器184は、例えば、後述するレーザ照射手段33からレーザが照射される側の面(図4において、下側)に、前記レーザを吸収する色素構造(発色団)を含むポリマー、またはレーザを吸収し酸性物質を発生する光酸発生剤により形成されるレーザ吸収層を含むことが好ましい。前記色素構造および光酸発生剤は、例えば、特許6033980号公報の説明を援用できる。細胞培養容器184は、前記レーザ吸収層を含むことで、例えば、後述するレーザ照射手段33でレーザを照射した際に、前記レーザのエネルギーを熱、酸等に変換し、前記レーザ吸収層の上部に存在する細胞を死滅、遊離等させることができる。
培養容器配置部18は、例えば、さらに細胞培養容器184の温度を調整する温度調整手段を含んでもよい。前記温度調整手段を含むことにより、細胞培養容器184内の細胞を処理する間の培養条件を一定にでき、例えば、細胞処理時の細胞へのダメージを低減できる。前記温度調整手段は、例えば、ヒータ等の加温手段があげられる。
培養容器配置部18は、例えば、さらに細胞培養容器184内の培地のpHを調整するpH調整手段を含んでもよい。前記pH調整手段を含むことにより、細胞培養容器184内の細胞を処理する間の培養条件を一定にでき、例えば、細胞処理時の細胞へのダメージを低減できる。前記pH調整手段としては、例えば、二酸化炭素ボンベ、二酸化炭素濃度調整手段等があげられ、具体例として、細胞処理装置100外の二酸化炭素供給手段と接続する接続部等があげられる。
図5および6に示すように、本実施形態の細胞処理装置100において、循環手段7は、吸気部71と、循環流路72と、気体供給部73と、排気部74とを含む。これにより、循環手段7は、前記細胞処理室内の気体を循環させる。
吸気部71は、前記細胞処理室内の気体を吸気する。吸気部71は、前記細胞処理室内の気体に代えて、または加えて細胞処理装置100外の気体を吸気してもよい。本実施形態において、吸気部71は、前記細胞処理室の開口部11aの近傍(例えば、直下)に配置されている。具体的には、吸気部71は、その上面に複数の開口(例えば、スリット)が形成されており(図示せず)、前記開口が開口部11aと連通するように、開口部11aの下側に配置されている。このように、前記細胞処理室の開口部11aの近傍に吸気部71を配置することで、例えば、扉12aを開き、作業者が前記細胞処理室内で作業をする際に、細胞処理装置100外の気体およびそれに含まれる埃等が前記細胞処理室内に流入することを防止できる。吸気部71は、開口部11aに代えて、または加えて開口部11bの近傍に配置されてもよい。吸気部71は、例えば、ファン等の送風手段により前記細胞処理室内の気体を吸気してもよい。
循環流路72は、吸気部71と気体供給部73および排気部74とを接続する。本実施形態において、循環流路72は、前記外壁と前記内壁との間の空間および第1領域1の上部に配置されている。循環流路72は、例えば、中空の筒である。また、循環流路72は、その一端が吸気部71と連通し、その他端が、気体供給部73および排気部74と連通している。本実施形態の細胞処理装置100のように、循環流路72を、前記外壁と前記内壁との間の空間に配置することで、例えば、細胞処理装置100の大きさを小さくできる。また、本実施形態において、循環手段7は、循環流路72を含むが、循環流路72はあってもよいし、なくてもよい。後者の場合、吸気部71は、例えば、気体供給部73および排気部74と直接的に接続している。循環流路72は、例えば、ファン等の送風手段により、吸気部71により吸気された気体を、気体供給部73および排気部74に送風してもよい。
循環流路72が前記送風手段を含む場合、前記送風手段は、吸気部71、気体供給部73、または排気部74の近傍に配置してもよいし、これらの中央部等のその他の位置に配置してもよいが、吸気部71からの吸気がよくなり、例えば、後述する気体供給部73により生じるダウンフローと比較して、埃等が前記細胞処理室内に流入することをより効果的に防止できることから、吸気部71の近傍に配置することが好ましい。前記送風手段が吸気部71の近傍に配置される場合、前記送風手段は、例えば、第2領域3または第3領域5に配置されることが好ましい。具体例として、本実施形態の細胞処理装置100において、循環流路72が、さらに前記送風手段を含む場合、前記送風手段は、第2領域3または第3領域5内において、手前側(図1における左下側)、すなわち、吸気部71の下側に配置されている。そして、この場合、循環流路72は、吸気部71と前記送風手段の吸気側とを接続し、かつ前記送風手段の送風側と気体供給部73および排気部74とを接続する。すなわち、循環流路72は、第2領域3、または第2領域3および第3領域5と、前記外壁と前記内壁との間の空間と、第1領域1の上部とに配置されている。
気体供給部73は、吸気部71が吸気した気体の一部を前記細胞処理室内に供給する。本実施形態において、気体供給部73は、第1領域1の上端と、吸気部71より吸気した気体を前記細胞処理室内に供給可能なように連通されている。気体供給部73は、例えば、ファン等の送風手段により気体を前記細胞処理室内に供給してもよい。また、気体供給部73は、例えば、気体清浄化手段を含んでもよい。この場合、気体供給部73から前記細胞処理室内に供給される気体は、前記気体清浄化手段を通過する。前記気体清浄化手段を含むことにより、例えば、埃等が前記細胞処理室内に流入することを防止できる。前記気体清浄化手段は、例えば、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)、ULPAフィルタ(Ultra Low Penetration Air Filter)等の微粒子捕集用フィルタ等があげられる。本実施形態の細胞処理装置100は、前記細胞処理室の上部において気体供給部73と接続していることにより、例えば、気体供給部73からの送風によりダウンフローが生じ、これにより開口部11aから埃等が前記細胞処理室内に流入することをより効果的に防止できる。
排気部74は、吸気部71が吸気した気体の残部を前記細胞処理室外、具体的には、細胞処理装置100外に排気する。本実施形態において、排気部74は、吸気部71より吸気した気体を細胞処理装置100の外部に排気可能なように、細胞処理装置100の上端(最上部)に配置されている。このように排気部74を細胞処理装置100の最上部に設けることにより、例えば、細胞処理装置100の大きさを小さくでき、かつ排気によって舞い上がった埃が、前記細胞処理室内に流入することを防止できる。排気部74は、例えば、ファン等の送風手段により気体を細胞処理装置100の外部に排気してもよい。また、排気部74は、例えば、前記気体清浄化手段を含んでもよい。この場合、排気部74から細胞処理装置100外に排出される気体は、前記気体清浄化手段を通過する。前記気体清浄化手段を含むことにより、例えば、前記細胞処理室内で生じた微粒子等の細胞処理装置100外への流出を防止できる。
本実施形態の循環手段7において、各部の大きさ、形状、構造等は、例えば、前記安全キャビネットの大きさ、形状、構造等を参照でき、具体例として、前述のEN12469:2000で特定される安全キャビネットの規格を参照できる。
図7(a)に示すように、本実施形態の細胞処理装置100において、第2領域3は、第2のXYステージ31、3種類の異なる倍率の対物レンズ321a〜cを有する顕微鏡32およびレーザ照射手段33を含む。本実施形態の細胞処理装置100は、XYステージ31および顕微鏡32を含むが、XYステージ31および顕微鏡32は、任意の構成であり、あってもよいし、なくてもよく、またいずれか一方を含んでもよい。XYステージ31は、培養容器配置部18の配置面、すなわち、前記細胞処理室の底面と略平行な第2領域3の底面に配置されている。XYステージ31において、矢印Y方向の共通のレール(移動路)上には、2つの矢印X方向のレールが、前記共通のレール上を移動可能に配置されている。前記2つの矢印X方向のレール上には、それぞれ、台車311a、311bがレールを移動可能なように配置されている。レーザ照射手段33は、レーザ光源331、レーザ出射部332および光ファイバ333を含む。XYステージ31の上部には、顕微鏡32が、その対物レンズ321a〜cを上方向(矢印Z方向)に向けて台車311bに、また、レーザ照射手段33のレーザ出射部332のレーザ出射口を上方向(矢印Z方向)に向けて、台車311aに配置されている。台車311aは、上下方向(矢印Z方向)に昇降可能であり、これにより、レーザが被照射物の被照射部に形成するスポットの径を調整可能である。レーザ光源331は、第2領域3において、XYステージ31の可動範囲と重ならない領域において、第2領域3の底面に配置されている。光ファイバ333は、その一端がレーザ光源331と、その他端がレーザ出射部332と、接続している。
本実施形態の細胞処理装置100は、レーザ移動手段および第2の撮像移動手段として、XYステージ31を設けているが、前記レーザ移動手段および前記第2の撮像移動手段は、これに限定されず、それぞれ、レーザ照射手段33および後述する第2の撮像手段を移動可能であればよく、例えば、公知の移動手段が使用できる。また、本実施形態において、前記レーザ移動手段および前記第2の撮像移動手段は、矢印X方向(第1方向)のレールを共有しているが、前記レーザ移動手段および前記第2の撮像移動手段は、独立していてもよい。具体例として、図7(b)に示すように、第2領域3の底面に、前記レーザ移動手段は、例えば、XYステージ31aとして配置され、前記第2の撮像移動手段は、XYステージ31bとして配置されてもよい。前記レーザ移動手段および前記第2の撮像移動手段の移動方向は、特に制限されず、例えば、1方向(例えば、矢印Y方向)に移動可能でもよいし、2方向(例えば、矢印Xおよび矢印Y方向)に移動可能でもよいし、3方向(例えば、矢印X、YおよびZ方向)に移動可能でもよい。2方向の場合、第1方向が、第2方向と平行でなければよく、好ましくは、前記第1方向が、前記第2方向と略直交または直交する。この場合、前記第1方向および前記第2方向を含む平面は、培養容器配置部18の配置面に略平行な平面であることが好ましい。また、3方向の場合、第3の方向は、例えば、前記第1方向および前記2方向を含む平面と交差すればよく、好ましくは、前記第1方向および前記2方向を含む平面と略直交または直交する。前記レーザ移動手段が、例えば、培養容器配置部18の配置面、すなわち、細胞培養容器184の底面に対し、略直交方向に、レーザ移動手段33を移動可能な場合、前記レーザ移動手段は、後述するスポット径を調整可能である。この場合、前記レーザ移動手段は、例えば、後述するスポット径調整手段を兼ねる。本実施形態において、XYステージ31は、例えば、リニアモータ台車などを介して、対象物を矢印X方向および矢印Y方向に沿って高速かつ精密に移動可能な公知のものである。
前記レーザ移動手段および前記第2の撮像移動手段は、本実施形態のXYステージ31のように、培養容器配置部18の配置面に対し略平行な平面において、それぞれ、第1方向(例えば、図7(a)における矢印Y方向)に、レーザ照射手段33および前記第2の撮像手段を移動可能であり、かつ前記レーザ移動手段によるレーザ照射手段33の第1方向の移動と、前記第2の撮像移動手段による第2の撮像手段の第1方向の移動とが、同一直線上であることが好ましい。このように、同一直線上で、レーザ照射手段33および前記第2の撮像手段が移動することで、例えば、細胞培養容器184内の細胞を前記第2の撮像手段で撮像後、レーザ照射手段33で処理する等の細胞処理を行なう際に各手段の移動回数を低減でき、処理時間を低減できる。また、本実施形態のXYステージ31のように、前記レーザ移動手段は、レーザ照射手段33を配置する台車311aおよび台車311aが移動し、かつ前記第1方向にそって配置された移動路(レール)を含み、前記第2の撮像移動手段は、前記第2の撮像手段を配置する台車311bおよび台車311bが移動し、かつ前記第1方向にそって配置された移動路(レール)を含み、前記レーザ移動手段の移動路と、前記第2の撮像手段の移動路が同じであることが好ましい。このように構成することにより、前記第2の撮像手段で撮像後、レーザ照射手段33で処理する等の細胞処理を行なう際に各手段の移動回数をさらに低減でき、処理時間をさらに低減できる。
本実施形態の細胞処理装置100は、前記第2の撮像手段として、3種類の倍率の対物レンズ321a〜cを有する顕微鏡32が設けられているが、これに限定されず、培養容器配置部18に配置された細胞培養容器184内の細胞を撮像可能であればよい。前記第2の撮像手段は、特に制限されず、顕微鏡、カメラ等の公知の撮像手段が使用でき、また公知の撮像手段と、CCDやCMOS(Complementary MOS)等の固体撮像素子(イメージセンサ)とを組合せたものでもよい。前記顕微鏡は、例えば、位相差顕微鏡、蛍光顕微鏡等の光学顕微鏡があげられる。前記顕微鏡は、例えば、前記位相差顕微鏡および前記蛍光顕微鏡の両者の機能を有してもよい。前記第2の撮像手段は、例えば、複数の倍率で撮像可能であることが好ましいが、1つの倍率で撮像可能でもよい。具体例として、前記第2の撮像手段が顕微鏡の場合、前記顕微鏡は、複数の倍率(例えば、異なる倍率)の対物レンズを含むことが好ましい。本実施形態において、対物レンズ321a〜cの倍率は、例えば、それぞれ、2倍、4倍および8倍である。前記第2の撮像手段は、例えば、光学ズーム、デジタルズーム等が可能であってもよい。また、本実施形態の細胞処理装置100のように、前記第1の撮像手段および前記第2の撮像手段を含む場合、細胞培養容器184内の細胞をより明確に撮像できることから、前記第2の撮像手段の倍率は、前記第1の撮像手段の倍率より高倍率であることが好ましい。
本実施形態の細胞処理装置100において、レーザ照射手段33は、レーザ光源331、レーザ出射部332および光ファイバ333を含むが、レーザ照射手段33は、これに限定されず、培養容器配置部18に配置された細胞培養容器184にレーザを照射可能であればよい。レーザ照射手段33は、例えば、レーザ光源331を含み、レーザ光源331から直接的に細胞培養容器184にレーザを照射してもよい。また、レーザ光源331のレーザをレーザ出射部332に導光する場合、光ファイバ333に代えて、ミラー、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等の導光手段を用いて、導光してもよいが、第2領域3内におけるレーザ光源331の配置を自由に設定でき、例えば、第2領域3において、前記レーザ移動手段、前記第2の撮像手段、および前記第2の撮像移動手段等の他の手段が配置されておらず、また他の手段の可動範囲と重ならない領域にレーザ光源331を配置することで、細胞処理装置100の大きさを小さくでき、かつ他の導光手段と比較して細胞処理装置100の重量を低減できることから、光ファイバ333が好ましい。
レーザ光源331は、例えば、連続波レーザまたはパルスレーザを発振する装置である。レーザ光源331は、例えば、連続波に近い、パルス幅の長い高周波レーザでもよい。レーザ光源331から発振されるレーザの出力は、特に制限されず、例えば、処理および細胞に応じて、適宜決定できる。レーザ光源331が発振するレーザの波長は、特に制限されず、例えば、405nm、450nm、520nm、532nm、808nm等の可視光レーザ、赤外線レーザ等があげられる。前述のように、細胞培養容器184にレーザ吸収層を設けている場合、レーザ光源331は、例えば、前記レーザ吸収層が吸収可能な波長を発振する。レーザ光源331は、細胞への影響を抑制できることから、波長が380nmより長いレーザを発振することが好ましい。具体例として、レーザ光源331は、波長が405nm近傍にある最大出力5Wの連続波ダイオードレーザがあげられる。
レーザ照射手段33がレーザ出射部332を含む場合、前記レーザ移動手段は、レーザ出射部332を移動させることが好ましい。また、前記レーザ移動手段がレーザ出射部332を上下方向(図7において、矢印Z方向)に移動させる場合、レーザ出射部332のレーザ出射口が、前記細胞処理室の底面、好ましくは、培養容器配置部18の底面と接触しないように移動させることが好ましい。具体例として、前記レーザ移動手段は、レーザ出射部332のレーザ出射口を、培養容器配置部18の底面を基準として、1mm以内に接近しないように移動させることが好ましい。このような範囲で、前記レーザ移動手段がレーザ出射部332を移動させることにより、例えば、レーザ出射部332と培養容器配置部18の底面との接触で生じる、培養容器配置部18に配置された細胞培養容器184内の培地の揺れを防止できる。
本実施形態において、前記第2の撮像移動手段である顕微鏡32は、手前側(図7において、左下側)に配置され、レーザ照射手段33は、奥側(図7において、右上側)に配置されている。ただし、前記第2の撮像移動手段およびレーザ照射手段33との位置関係は、これに限定されず、例えば、前記第2の撮像移動手段を奥側に配置し、レーザ照射手段33を手前側に配置してもよい。一般的に顕微鏡等の前記第2の撮像手段は、レーザ照射手段33と比較して、その体積が大きい。このため、第1領域1において培養容器配置部18が手前側に配置されている場合、前記第2の撮像移動手段を奥側に配置し、レーザ照射手段33は、手前側に配置することで、細胞処理装置100の大きさを小さくすることができる。
本実施形態において、前記スポット径調整手段として、昇降可能な台車311aが設けられているが、これに限定されず、前記レーザが被照射物の被照射部(例えば、細胞培養容器184の底面)に形成するスポットの径を調整可能であればよい。前記スポット径は、前記レーザと前記被照射物との接触部におけるレーザのビーム径を意味する。本実施形態において、前記スポット径は、台車311aを昇降させること、すなわち、矢印Z方向の移動により、レーザ照射手段33と前記被照射物である細胞培養容器184の底面との距離を変更することにより調整している。レーザ照射手段33と、前記被照射物との距離は、例えば、培養容器配置部18の配置面、すなわち、細胞培養容器184の底面に対し、略直交方向の距離を意味する。また、レーザ照射手段33がレーザ出射部332を含む場合、レーザ照射手段33と、前記被照射物との距離は、レーザ出射部332と、前記被照射物との距離を意味する。ただし、本発明はこれに限定されず、前記スポット径は、レーザ照射手段33のレンズの切替えにより、調整してもよい。前記レンズの切替えにより実施する場合、レーザ照射手段33は、例えば、複数のレンズを含み、前記スポット径調整手段は、前記レンズを変更することにより、前記スポットの径を調整することが好ましい。前記複数のレンズは、例えば、複数のレーザ集光レンズでもよいし、複数のコリメータレンズでもよし、1以上の集光レンズと1以上のコリメータレンズとの組合せでもよい。前記複数の集光レンズは、例えば、互いに異なる焦点距離を有する。前記複数のコリメータレンズは、例えば、互いに異なる焦点距離を有する。前記レンズの変更は、例えば、手動で行なってもよいし、後述するスポット径調整制御部により、変更されてもよい。後者の場合、例えば、レンズの変更手段を含み、前記変更手段により、レンズが変更される。前記スポット径調整手段は、例えば、小さいスポット径が好ましい細胞処理を実施する場合、例えば、細胞塊の分割、特定領域の細胞の切り出し、特定の細胞の致死(死滅)等を実施する場合、スポット径を小さく調整する。また、前記スポット径調整手段は、例えば、大きいスポット径が好ましい細胞処理を実施する場合、例えば、特定領域の細胞の死滅等を実施する場合、スポット径を大きく調整する。前記スポット径の大きさは、特に制限されず、例えば、細胞処理の種類、細胞の大きさ等に応じて、適宜設定できる。
本実施形態の細胞処理装置100において、前記細胞処理室と第2領域3との間において、気体の移動が抑制されていることが好ましい。前記気体の移動の抑制は、例えば、前記細胞処理室における第2領域3との隣接部を、前述のパッキン、シール材等の封止部材で封止することにより実施できる。このように気体の移動を抑制することで、例えば、前記気体に含まれる埃の前記細胞処理室内への流入を防止できる。
本実施形態の細胞処理装置100において、第3領域5は、制御部51および電源供給部52を含む。図8に示すように、制御部51は、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、ワークステーション等と類似する構成を含む。図8に示すように、制御部51は、中央演算装置(CPU)51a、メインメモリ51b、補助記憶デバイス51c、ビデオコーデック51d、I/Oインターフェイス51e等を含み、これらがコントローラ(システムコントローラ、I/Oコントローラ等)51fにより制御され、連携動作する。補助記憶デバイス51cは、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の記憶手段があげられる。ビデオコーデック51dは、CPU51aより受けた描画指示をもとに表示する画面を生成し、その画面信号を、例えば、細胞処理装置100外の表示装置等に向けて送信するGPU(Graphics Processing Unit)、画面および画像のデータを一時的に記憶しておくビデオメモリ等を含む。I/O(input-output)インターフェイス51eは、第1のXYステージ13aおよびアーム13b(吸引吐出移動手段)、吸引吐出手段14、カメラ20(第1の撮像手段)、第2のXYステージ31(レーザ移動手段および第2の撮像移動手段)、顕微鏡32(第2の撮像手段)、レーザ照射手段33等と通信可能に接続してこれらを制御するためのデバイスである。I/Oインターフェイス51eは、サーボドライバ(サーボコントローラ)を含んでもよい。また、I/Oインターフェイス51eは、例えば、細胞処理装置100外の入力装置と接続してもよい。表示装置は、映像により出力するモニター(例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、ブラウン管(CRT)ディスプレイ等の各種画像表示装置等)等があげられる。入力装置8は、ユーザが手指で操作可能なタッチパネル、トラックパッド、マウス等のポインティングデバイス、キーボード、押下ボタン等があげられる。
制御部51が実行するプログラムは、補助記憶デバイス51cに記憶されている。前記プログラムは、実行時にメインメモリ51bに読み込まれ、CPU51aによって解読される。そして、制御部51は、プログラムに従い、各部材を制御する。
本実施形態において、制御部51は、レーザ制御部、吸引吐出制御部、第1の撮像制御部、第2の撮像制御部、およびスポット径調整制御部を含むが、前記レーザ制御部、前記吸引吐出制御部、前記第1の撮像制御部、前記第2の撮像制御部、および前記スポット径調整制御部は、任意の構成であり、あってもよいし、なくてもよい。本実施形態の細胞処理装置100において、制御部51は、レーザ制御部、吸引吐出制御部、第1の撮像制御部、第2の撮像制御部、およびスポット径調整制御部等の機能を有することで、例えば、各部材に制御部を個別に設ける必要がなく、細胞処理装置を小型化できる。ただし、本発明はこれに限定されず、例えば、制御部51の負荷を軽減するために、各部材に制御部を設け、制御部51と各部材の制御部とを協働させて、各部材を制御させてもよい。具体例として、レーザ発振等の制御は、例えば、各部材に設けられた制御部で制御し、レーザ照射手段33の移動は、例えば、制御部51に制御させてもよい。また、制御部51は、1つの半導体素子で構成してもよいし、複数の半導体素子をワンパッケージ化したチップとしてもよいし、複数の半導体素子を基板上に設けた構成としてもよい。
本実施形態において、前記レーザ制御部は、レーザ照射手段33によるレーザ照射ならびに前記レーザ移動手段であるXYステージ31および台車311aによるレーザ移動手段33のレーザ出射部332の移動を制御するが、前記レーザ制御部は、いずれか一方を制御してもよい。
本実施形態において、前記吸引吐出制御部は、吸引吐出手段14による吸引吐出ならびに前記吸引吐出移動手段であるXYステージ13aおよびアーム13bによる吸引吐出手段14の移動を制御するが、前記吸引吐出制御部は、いずれか一方を制御してもよい。
本実施形態において、前記第1の撮像制御部は、前記第1の撮像手段であるカメラ20による前記細胞処理室内の撮像を制御する。
本実施形態において、前記第2の撮像制御部は、前記第2の撮像手段である顕微鏡32による細胞の撮像ならびに前記第2の撮像移動手段であるXYステージ31および台車311bによる顕微鏡32の移動を制御するが、前記レーザ制御部は、いずれか一方を制御してもよい。
本実施形態において、前記スポット径調整制御部は、前記スポット径調整手段である台車311aの昇降を制御するが、前記スポット径調整制御部は、前記スポット径調整手段による前記スポットの径の調整を制御できればよい。また、前述のように、手動により、前記レンズの切替え等を行なう場合、前記スポット径調整制御部は、なくてもよい。
電源供給部52は、特に制限されず、公知の電源を使用できる。電源供給部52は、例えば、レーザ照射手段33、前記レーザ移動制御手段、前記第1の撮像手段、前記第2の撮像手段、前記第2の撮像移動手段、吸引吐出手段14、前記吸引吐出移動手段、循環手段7、照明手段、殺菌手段、制御部51等の電力により稼働する部材(手段)に電力を供給する。このため、電源供給部52は、例えば、前記電力により稼働する部材(手段)と、電気的に接続されている。電源供給部52は、例えば、100Vの電圧で電力を供給する。これにより、例えば、一般的な電力環境においても、細胞処理装置100が使用可能となる。本実施形態の細胞処理装置100は、全体の電源供給を、電源供給部52に担わせることによって、各部材にそれぞれ、個別に電源供給部を設けなくてもよいので、例えば、細胞処理装置100の小型化や軽量化を実現することができる。ただし、本発明はこれに限定されず、例えば、各手段の少なくとも一つに専用の電源供給部を設けてもよい。
本実施形態の細胞処理装置100は、さらに、第3領域5に、通信部(図示せず)を設けてもよい。前記通信部は、例えば、有線もしくは無線により、パーソナルコンピュータ、移動体通信機器等の外部の機器とデータの送受信機能またはインターネット等との接続機能を有する。前記通信部は、例えば、既存の通信モジュール等があげられる。このように通信部を設けることで、外部と細胞処理装置100を接続できるようになるため、例えば、外部から細胞処理装置100を操作すること、または外部からのデータを細胞処理装置100が受信することができる。また、細胞処理装置100内のデータを、例えば、外部から接続することで閲覧可能とすることができる。
つぎに、本実施形態の細胞処理装置100を用いた細胞の処理および処理された細胞の回収について、例をあげて説明する。
まず、殺菌灯22を消灯し、照明灯21a、21bを点灯させる。また、前記第1の撮像制御部により、カメラ20を起動させ、前記細胞処理室内の撮像を開始する。カメラ20により撮像された前記細胞処理室内の画像は、例えば、制御部51を介して、前記表示装置に出力される。つぎに、循環手段7を稼働させ、前記細胞処理室内の気体を循環させる。さらに、作業者が、開口部11aの扉12aを開け、培養容器配置部18に細胞培養容器184を配置し、また、回収容器配置部19aに回収容器19bを配置する。細胞培養容器184の底面には、前記レーザ吸収層が形成されている。前記配置後、前記作業者は、開口部11aの扉12aを閉じる。
つぎに、前記第2の撮像制御部により、XYステージ31および台車311bが移動するよう制御され、顕微鏡32が、細胞培養容器184の底面の下側に移動する。また、前記吸引吐出制御部により、XYステージ13aが移動するように制御され、光源15が、細胞培養容器184の上面の上部、すなわち、培養容器配置部18の上部に移動する。そして、顕微鏡32により、細胞培養容器184内の細胞が撮像される。顕微鏡32による撮像は、例えば、処理対象の細胞の大きさに応じて、異なる倍率の対物レンズ321a〜cを用いて複数回行なわれる。顕微鏡32により撮像される画像は、例えば、位相差顕微鏡により撮像された位相差顕微鏡画像、蛍光顕微鏡により撮像された蛍光顕微鏡画像等があげられる。前記撮像された画像は、例えば、制御部51を介して、前記表示装置に出力される。
作業者が、例えば、前記撮像された画像に基づき、処理対象の細胞領域(例えば、回収する細胞領域)を前記入力装置により指定すると、前記レーザ制御部により、XYステージ31および台車311aが移動するように制御され、レーザ出射部332は、細胞培養容器184の底面の下側において、前記処理対象の細胞領域の周囲の細胞にレーザを照射可能な位置に移動する。そして、前記レーザ制御部により、レーザ光源331が、レーザを発振するように制御される。発振されたレーザは、光ファイバ333により導光され、レーザ出射部332から照射される。また、前記レーザ照射とともに、前記レーザ制御部により、XYステージ31および台車311aが、前記処理対象の細胞の周囲を移動する。この際に、前記処理対象の細胞領域の周囲の細胞の大きさに応じて、台車311aを昇降させることで、前記スポット径の大きさを適切な大きさに調整し、前記処理対象の細胞領域内の細胞に影響が出ないようにする。照射されたレーザは、細胞培養容器184の底面に形成された前記レーザ吸収層に吸収され、前記レーザ吸収層から生じる熱等により、前記処理対象の細胞の周囲の細胞を致死させる。これにより、前記処理対象の細胞領域を切り出すことができる。
つぎに、前記吸引吐出制御部により、XYステージ13aが移動するように制御され、吸引吐出手段14が、収容容器17bの上部に移動する。前記吸引吐出制御部により、アーム13bが降下および上昇するように制御され、吸引吐出手段14の吸引吐出口側に、前記先端部材であるチップが装着される。さらに、前記吸引吐出制御部により、XYステージ13aが移動するように制御され、吸引吐出手段14は、細胞培養容器184の上部において、前記処理対象の細胞領域の上部に移動する。前記吸引吐出制御部により、アーム13bが降下するように制御され、前記チップの開口を前記処理対象の細胞領域の近傍に配置する。この状態で、前記吸引吐出制御部により、吸引吐出手段14が吸引するように制御され、前記処理対象の細胞領域の細胞を周囲の培地とともに前記チップ内に吸引する。
さらに、前記吸引吐出制御部により、アーム13bが上昇し、かつ、XYステージ13aが移動するように制御され、吸引吐出手段14は、回収容器19bの上部に移動する。また、前記吸引吐出制御部により、アーム13bが降下するように制御され、回収容器19bの内部に前記チップの開口が移動する。この状態で、前記吸引吐出制御部により、吸引吐出手段14が吐出するように制御され、前記チップ内の前記処理対象の細胞領域の細胞を含む培地を、回収容器19b内に吐出する。
前記吐出後、前記吸引吐出制御部により、アーム13bが上昇し、かつ、XYステージ13aが移動するように制御され、吸引吐出手段14は、排液容器16bの上部に移動する。さらに、前記吸引吐出制御部により、アーム13bが降下し、かつ、XYステージ13aが移動するように制御され、前記チップの上側端を、排液容器16bに設けられた上面の凹部である先端部材脱離手段16cに引っかける。この状態で、前記吸引吐出制御部により、アーム13bが上昇するように制御され、吸引吐出手段14から前記チップが脱離する。
そして、作業者が、開口部11aの扉12aを開け、培養容器配置部18から細胞培養容器184を回収し、また、回収容器配置部19aから回収容器19bを回収する。このようにすることで、実施形態の細胞処理装置100により、細胞の処理および処理された細胞の回収を実施できる。
本実施形態の細胞処理装置100によれば、細胞培養容器184の細胞に対し、例えば、選別、回収等の処理を簡易に実施できる。また、本実施形態の細胞処理装置100は、作業者自身ではなく、レーザ照射手段により細胞を処理するため、例えば、作業者の技術レベルによる影響を受けない。このため、例えば、処理後に得られる細胞の品質が、安定する。さらに、本実施形態の細胞処理装置100はスポット径調整手段を含むため、例えば、細胞に対して行なう処理によりスポット径を適切な大きさに調整することができ、迅速に細胞処理を実施できる。また、適切な大きさのスポット径に調整できるため、例えば、処理を行なわない細胞への影響を低減することができる。
つぎに、本発明の対象物の処理方法について、例をあげて説明する。
本発明の対象物の処理方法は、前述のように、光吸収層および前記光吸収層上に存在する培養物を含む対象物において、前記培養物の切断対象領域に対応する前記光吸収層に光を照射することにより、前記光吸収層上に存在する前記培養物を所定形状に切断する切断工程と、
前記切断対象領域以外の領域に対応する前記光吸収層に光を照射することにより、前記光吸収層上に存在する前記培養物を死滅処理する処理工程とを含み、
前記切断工程における、前記光が前記光吸収層の被照射部に形成する第1のスポット径は、前記処理工程における、前記光が前記光吸収層の被照射部に形成する第2のスポット径と、異なる大きさであることを特徴とする
本発明の処理方法は、前記第1のスポット径が、前記第2のスポット径と、異なる大きさであることが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の処理方法は、前記第1のスポット径が、前記第2のスポット径と異なる大きさであるため、例えば、前記切断および前記死滅処理に適したスポット径とすることができる。このため、本発明の処理方法によれば、前記切断に適したスポット径で切断工程を実施でき、また前記死滅処理に適したスポット径で処理工程を実施できるため、例えば、作業性が向上し、これにより処理時間が短縮できる。本発明の処理方法は、例えば、前記本発明の細胞処理装置の説明を援用できる。本発明の処理方法は、例えば、前記本発明の細胞処理装置により実施できる。なお、前記本発明の細胞処理装置で実施する場合、前記「レーザ」は、「光」に、「被照射物」は、「光吸収層」に読み替えてその説明を援用できる。
前記培養物は、特に制限されず、例えば、細胞、細菌、真菌等があげられる。前記細胞は、例えば、細胞から構成される細胞塊、組織、臓器等でもよい。前記細胞は、例えば、培養細胞でもよいし、生体から単離した細胞でもよい。また、前記細胞塊、組織または臓器は、例えば、前記細胞から作製した細胞塊、組織または臓器でもよいし、生体から単離した細胞塊、組織または臓器でもよい。
前記光吸収層は、光応答性物質を含む層である。前記光応答性物質は、例えば、光を吸収する色素構造(発色団)を含むポリマー、または光を吸収し酸性物質を発生する光酸発生剤等があげられる。前者および後者としては、例えば、公知のポリマーおよび光酸発生剤を使用できる。前記光がレーザの場合、前記光応答性物質は、例えば、前述のレーザを吸収する色素構造を含むポリマー、レーザを吸収し酸性物質を発生する光酸発生剤の説明を援用できる。前記光吸収層は、前記光応答性物質を含むことで、例えば、光照射手段で光を照射した際に、前記光のエネルギーを熱、酸等に変換し、前記レーザ吸収層の上部に存在する培養物を死滅、遊離等させることができる。
前記培養物は、前記光吸収層上に存在していればよく、例えば、前記光吸収層と直接的に接してもよいし、間接的に接してもよい。後者の場合、例えば、前記光吸収層には、細胞外マトリックス等の培養物の足場が、積層しており、前記培養物は、前記足場に直接的に接している。
前記切断工程は、前記培養物の切断対象領域に対応する前記光吸収層に光を照射することにより、前記光吸収層上に存在する前記培養物を所定形状に切断する工程である。前述のように、前記光照射層は、前記光応答性物質を含む。このため、前記光吸収層への光の照射により、前記光吸収層は、例えば、熱、酸等を生じ、その結果、前記光吸収層に対応する前記培養物を死滅、遊離等させることができる。前記切断工程は、例えば、前記切断領域に対応する前記光吸収層に対し、所定形状となるように、光の照射位置を移動することにより実施できる。前記光の照射は、例えば、公知の光源を用い、前記光源から発振された光を前記光吸収層に導光することにより、実施できる。前記光吸収層に照射する光の波長は、特に制限されず、例えば、前記光吸収層が含む光応答性物質の種類に応じて、適宜決定できる。前記光は、例えば、波長分布を有する光でもよいが、単一波長の光、すなわち、レーザが好ましい。前記光をレーザとすることで、例えば、後述する第1のスポット径を精度良くコントロールできるため、より精度のよい切断が可能となる。前記レーザの波長は、特に制限されず、例えば、前述のレーザの波長の説明を援用できる。前記光は、ビーム状であることが好ましい。前記光源は、特に制限されず、前記光の波長および種類に応じて、適宜決定できるが、例えば、前述の光源の説明を援用できる。前記光がレーザの場合、前記光源は、例えば、前記レーザ光源があげられる。
前記培養物の切断形状は、特に制限されず、例えば、円、真円、楕円等の円形状;半円形状;三角形、四角形、正方形および長方形等の多角形状等があげられる。前記切断工程において、1つの培養物から、複数の切断形状の培養物を作製してもよく、具体例として、1つの培養物から、複数の同じ切断形状の切断物を作成してもよいし、異なる切断形状の切断物を作製してもよい。
前記切断工程において、前記光が前記光吸収層の被照射部に形成する第1のスポット径の大きさは、前記所定形状に応じて設定される。前記第1のスポット径は、前記光と前記光吸収層との接触部における光のビーム径を意味する。精度がよい切断が必要な場合、第1のスポット径は、例えば、精度が不要な切断を実施する場合のスポット径と比較して、小さくすることが好ましい。また、複雑な所定形状に切断する場合、スポット径(P1)は、例えば、円形状等の単純な形状に切断する場合のスポット径(P2)と比較して、小さくすること、すなわち、P1<P2とすることが好ましい。P1およびP2は、例えば、前記培養物の大きさ、光源の出力、細胞処理時のスポットの走査速度等に応じて適宜設定できる。具体例として、前記iPS細胞を対象とする場合、P1は、例えば、10μmであり、P2は、例えば、20μmである。前記細胞処理装置を用い、前記切断工程を実施する場合、前記光の移動は、例えば、前記レーザ移動手段により、前記第1のスポット径の調整は、例えば、前記スポット径調整手段により実施できる。
前記処理工程は、前記切断対象領域以外の領域に対応する前記光吸収層に光を照射することにより、前記光吸収層上に存在する前記培養物を死滅処理する工程である。前記死滅処理は、例えば、前記培養物を致死できればよく、前記培養物を破壊することで実施してもよい。前記光の照射は、例えば、前記切断工程における光の照射の説明を援用できる。前記光は、レーザが好ましい。前記光をレーザとすることで、例えば、後述の第2のスポット径を精度よくコントロールできるため、より精度のよい処理が可能となる。
前記処理工程において、前記光が対象生物の被照射部に形成する第2のスポット径の大きさは、前記処理に応じて設定される。前記第2のスポット径は、前記光と前記対象生物との接触部における光のビーム径を意味する。前記第2のスポット径は、前記第1のスポット径より大きいことが好ましい。これにより、例えば、広範囲の対象生物を処理できるので、短時間で効率よく死滅処理を実施できる。前記第1のスポット径(S1)と前記第2のスポット径(S2)との比(S1:S2)は、好ましくは、1:2以上である。また、前記処理工程において、前記光を照射する領域が単純である場合のスポット径(P3)は、境界等が存在する複雑な領域の対象生物の処理を実施する場合のスポット径(P4)と比較して、大きくすること、すなわち、P3>P4とすることが好ましい。したがって、前記切断工程および前記処理工程における前記第1のスポット径と前記第2のスポット径とを比較した場合、各スポット径は、P1<P2<P4<P3を満たすことが好ましい。P3およびP4は、例えば、前記培養物の大きさ、光源の出力、細胞処理時のスポットの走査速度等に応じて適宜設定できる。具体例として、前記iPS細胞を対象とする場合、P3は、例えば、100μmであり、P4は、例えば、40μmである。前記細胞処理装置を用い、前記処理工程を実施する場合、前記第2のスポット径の調整は、例えば、前記スポット径調整手段により実施できる。
このようにして、前記対象物の切断および処理を実施できる。
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。