JP6927303B2 - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Description

本発明はリチウムイオン二次電池に関する。
従来、種々の電子機器の電源として、二次電池が用いられている。二次電池は、正極、負極、正極と負極との間に配置されたセパレータ、および電解質が外装体に封入された構造を有している。特にリチウムイオン二次電池においては、電解質を介してリチウムイオンが正極と負極との間で移動して電池の充放電が行われる。
近年では、リチウムイオン二次電池の高エネルギー密度化の要請から、充電終止電圧を高く設定したリチウムイオン二次電池が提案されている(例えば、特許文献1)。
特開2012−23052号公報
本発明の発明者等は、従来のリチウムイオン二次電池において、充電終止電圧を4.41V以上まで高くすると、高電圧化により、電池材料の劣化が促進され、サイクル後においてセルの体積エネルギー密度が悪化するという、新たな問題が生じることを見い出した。リチウムイオン二次電池において、サイクル後のセルの体積エネルギー密度が悪化すると、充放電の繰り返しにより放電容量が低下するため、寿命が延びない。
本発明は、充電終止電圧を4.41V以上まで高電圧化しても、サイクル後において、より良好なセルの体積エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
本発明は、
正極、負極、該正極と該負極との間に配置されたセパレータ、および非水電解質を含み、充電終止電圧が4.41V以上、4.47V以下であるリチウムイオン二次電池であって、
前記正極に含まれる正極活物質の単位重量あたりの放電容量が169.0mAh/g以上、178.0mAh/g以下であり、かつ
前記リチウムイオン二次電池の満充電時における正極電位が「充電終止電圧+0.015」V(vs. Li/Li)以上、4.49V(vs. Li/Li)以下である、リチウムイオン二次電池、に関する。
本発明のリチウムイオン二次電池は、充電終止電圧を4.41V以上まで高電圧化しても、サイクル後において、より良好なセルの体積エネルギー密度が得られる。
実施例および比較例で製造されたリチウムイオン二次電池の模式的断面図である。
[二次電池]
本発明はリチウムイオン二次電池を提供する。本明細書中、「リチウムイオン二次電池」という用語は、リチウムイオンによる電子の伝達により、充電および放電の繰り返しが可能な電池のことを指している。従って、「リチウムイオン二次電池」は、その名称に過度に拘泥されるものではなく、例えば、「リチウムイオン蓄電デバイス」等も包含し得る。
本発明のリチウムイオン二次電池(以下、単に「二次電池」ということがある)は、充電終止電圧が4.41V以上であり、二次電池の高電圧化によるエネルギー密度の増大の観点から、好ましくは4.43V以上、より好ましくは4.45V以上である。二次電池の高電圧化によるエネルギー密度の増大と、サイクル後のセルの体積エネルギー密度のさらなる向上とのバランスの観点から好ましい充電終止電圧は、4.41V以上、4.47V以下であり、より好ましくは4.43V以上、4.47V以下、さらに好ましくは4.45V以上、4.47V以下、最も好ましくは4.46V以上、4.47V以下である。充電終止電圧は、二次電池の設計時に決められている充電時の終止電圧のことであり、「充電上限電圧」とも呼ばれ、二次電池の仕様の1つである。
本明細書中、サイクル後のセルの体積エネルギー密度は、充放電の繰り返しによっても、放電容量の低下がより十分に抑制される特性を示す1つの指標である。「サイクル後」とは、「充放電を繰り返し行った後」という意味である。
本発明の二次電池は、正極、負極、当該正極と当該負極との間に配置されているセパレータ、および非水電解質を含む。本発明の二次電池は通常、正極、負極およびセパレータから構成されている電極組立体および非水電解質が外装体に封入されて構成されている。
本発明は、少なくとも正極活物質の放電容量および満充電時の正極電位がそれぞれ所定の範囲内であることにより、相対的に高い充電終止電圧(例えば上記充電終止電圧)の環境下でのサイクル後において、セルの体積エネルギー密度が向上することを見い出したものである。正極活物質の放電容量および満充電時の正極電位は、充電終止電圧により変化するパラメータであるため、本発明の二次電池は、当該パラメータが所定の範囲内になるように、充電終止電圧を上記範囲内から選択して設定された二次電池と言うこともできる。
本発明においては、正極に含まれる正極活物質の単位重量あたりの放電容量(以下、放電容量Aということがある)は169.0mAh/g以上、178.0mAh/g以下であり、サイクル後のセルの体積エネルギー密度のさらなる向上の観点から、好ましくは169.0mAh/g以上、176.0mAh/g以下である。放電容量Aが上記範囲内であることにより、相対的に高い充電終止電圧の環境下においても、十分に高い効率で、電池反応を可逆的に起こすことができ、結果としてサイクル後のセルの体積エネルギー密度が向上する。放電容量Aが低すぎると、正極から得られる容量が小さいために、サイクル後のセルの体積エネルギー密度が低下する。放電容量Aが高すぎると、正極の電位が上がり過ぎ、正極活物質が劣化するため、電池反応が可逆的に起こり難くなり、サイクル後のセルの体積エネルギー密度が低下する。
放電容量Aは、「初期セル容量(mAh)」を二次電池の正極と負極の対向部に含まれる正極活物質重量(g)で除することにより算出される値である。
「初期セル容量(mAh)」は、安定化された二次電池の放電容量であり、以下の方法で測定される放電容量のことである。二次電池の充放電を繰り返し、n回目の充放電による放電容量P(mAh)と、「n+1」回目の充放電による放電容量Pn+1(mAh)との容量変化率[{(P−Pn+1)/Pn+1}×100(%)]がはじめて0.2%以下になるとき、放電容量Pn+1(mAh)が「初期セル容量(mAh)」である。nは1以上の整数である。
二次電池を用いて充放電を繰り返すとき、n回目の充放電による放電容量P(mAh)と、「n+1」回目の充放電による放電容量Pn+1(mAh)との容量変化率[{(P−Pn+1)/Pn+1}×100(%)]は、nの値が大きくなるほど、小さくなるのが一般的である。従って、例えば、市販の二次電池を用いて充放電を繰り返し、容量変化率「{(P−P)/P}×100(%)」が0.2%超となり、容量変化率「{(P−P)/P}×100(%)]が0.2%以下となるとき、放電容量Pが当該二次電池の初期セル容量である。
二次電池の正極と負極の対向部に含まれる正極活物質重量(g)は、正極と負極の対向部の面積(cm)、正極活物質層の単位面積あたりの目付量(mg/cm)および正極活物質層に含まれる正極活物質の割合から算出され得る値である。
二次電池の正極(特に正極活物質層)と負極(特に負極活物質層)の対向部に含まれる正極活物質重量(g)は、当該二次電池がセパレータを介して対向する2組以上の正極活物質層および負極活物質層を有する場合、各組の正極(特に正極活物質層)と負極(特に負極活物質層)の対向部に含まれる正極活物質重量(g)の合計量のことである。
放電容量Aは、負極の負極活物質層の目付量に対する正極の正極活物質層の目付量の割合、リチウムイオン二次電池の充電終止電圧、正極活物質の種類、負極活物質の種類、および負極活物質の初回効率を調整することにより制御することができる。
例えば、負極の負極活物質層の目付量に対する正極の正極活物質層の目付量の割合を増加させると、放電容量Aは増加する。当該割合を減少させると、放電容量Aは減少する。
また例えば、リチウムイオン二次電池の充電終止電圧を高くすると放電容量Aは増加する。充電終止電圧を低くすると放電容量Aは減少する。
また例えば、正極活物質及び負極活物質の種類によりそれぞれの活物質の可逆容量が変化するため、放電容量Aを制御することができる。
また例えば、初回効率の高い負極活物質を用いた場合には放電容量Aは増加し、初回効率の低い負極活物質を用いた場合には放電容量Aは低下する。
負極の負極活物質層の目付量は、負極の片面における負極活物質層の単位面積あたりの堆積量(乾燥後)のことである。負極の負極活物質層の目付量は通常、5mg/cm以上、15mg/cm以下であり、正極活物質の放電容量、満充電時の正極電位および負極活物質の容量利用率の制御の観点から、好ましくは9mg/cm以上、12mg/cm以下であり、より好ましくは9.4mg/cm以上、11.1mg/cm以下である。
正極の正極活物質層の目付量は、正極の片面における正極活物質層の単位面積あたりの堆積量(乾燥後)のことである。正極の正極活物質層の目付量は通常、10mg/cm以上、30mg/cm以下であり、正極活物質の放電容量および満充電時の正極電位の制御の観点から、好ましくは18mg/cm以上、24mg/cm以下であり、より好ましくは18.5mg/cm以上、19.2mg/cm以下である。
正極電位は、二次電池の満充電時において、「充電終止電圧+0.015」V(vs. Li/Li)以上、4.49V(vs. Li/Li)以下である。サイクル後のセルの体積エネルギー密度のさらなる向上の観点から好ましい正極電位は、充電終止電圧に応じて以下の通りである。
二次電池の満充電時における正極電位:
充電終止電圧が4.41Vのとき、
好ましくは4.440V(vs. Li/Li)以上、4.485V(vs. Li/Li)以下;
より好ましくは4.452V(vs. Li/Li)以上、4.460V(vs. Li/Li)以下。
充電終止電圧が4.43Vのとき、
好ましくは4.450V(vs. Li/Li)以上、4.484V(vs. Li/Li)以下;
より好ましくは4.465V(vs. Li/Li)以上、4.470V(vs. Li/Li)以下。
充電終止電圧が4.45Vのとき、
好ましくは4.470V(vs. Li/Li)以上、4.490V(vs. Li/Li)以下;
より好ましくは4.475V(vs. Li/Li)以上、4.489V(vs. Li/Li)以下。
充電終止電圧が4.47Vのとき、
好ましくは4.487V(vs. Li/Li)以上、4.490V(vs. Li/Li)以下;
より好ましくは4.488V(vs. Li/Li)以上、4.489V(vs. Li/Li)以下。
正極電位が満充電時において上記範囲内であることにより、高い充電終止電圧の環境下においても、十分に高い効率で、電池反応を可逆的に起こすことができ、結果としてサイクル後のセルの体積エネルギー密度が向上する。正極電位が低すぎると、正極から得られる容量が小さいために、サイクル後のセルの体積エネルギー密度が低下する。正極電位が高すぎると、正極の電位が上がり過ぎ、正極活物質が劣化するため、電池反応が可逆的に起こり難くなり、サイクル後のセルの体積エネルギー密度が低下する。
満充電時の正極電位は、安定化された二次電池における満充電時の正極電位のことであり、上記した「初期セル容量(mAh)」の測定方法において測定できる。詳しくは、n回目の充放電による放電容量P(mAh)と、「n+1」回目の充放電による放電容量Pn+1(mAh)との容量変化率[{(P−Pn+1)/Pn+1}×100(%)]がはじめて0.2%以下になったとき、「n+1」回目の充放電における定電圧充電終了直前の補助電極と正極との電位差を満充電時の正極電位とする。正極電位の単位は詳しくはV(vs. Li/Li)で表され、補助電極であるリチウム金属の酸化還元電位を基準とした場合の正極電位「V」という意味である。
満充電時の正極電位は、負極の負極活物質層の目付量に対する正極の正極活物質層の目付量の割合、リチウムイオン二次電池の充電終止電圧、正極活物質の種類、および負極活物質の種類を調整することにより制御することができる。
例えば、負極の負極活物質層の目付量に対する正極の正極活物質層の目付量の割合を増加させると、満充電時の正極電位は高くなる。当該割合を減少させると、満充電時の正極電位は低くなる。
また例えば、リチウムイオン二次電池の充電終止電圧を高くすると、満充電時の正極電位は高くなる。充電終止電圧を低くすると満充電時の正極電位は低くなる。
また例えば、正極活物質及び負極活物質の種類によりそれぞれの活物質の作動電位が変化するため、満充電時の正極電位を制御することができる。
本発明においては、負極に含まれる負極活物質の容量利用率は通常、80%以上、99%以下であり、サイクル後のセルの体積エネルギー密度のさらなる向上の観点から、好ましくは91%以上、97%以下であり、より好ましくは91.5%以上、96.5%以下である。当該容量利用率を、上記のような好ましい範囲の値、またはより好ましい範囲の値とすることにより、相対的に高い充電終止電圧の環境下においても、より一層、高い効率で、電池反応を可逆的に起こすことができ、結果としてサイクル後のセルの体積エネルギー密度がさらに向上する。
負極活物質の容量利用率(%)は、負極活物質の可逆容量(mAh/g)に対する負極活物質の単位重量あたりの放電容量(mAh/g)の割合である。
負極活物質の可逆容量は、負極活物質が有する固有の物性値であり、負極と対極としてのリチウム金属とを用いて、温和な条件で充放電を行ったときの放電容量(mAh/g)である。
負極活物質の可逆容量は通常、300mAh/g以上1000mAh/gであり、正極活物質の放電容量の制御およびサイクル特性のさらなる向上の観点から、好ましくは330mAh/g以上370mAh/gである。
負極活物質の単位重量あたりの放電容量(以下、放電容量Bということがある)は、上記の「初期セル容量(mAh)」を二次電池の正極と負極の対向部に含まれる負極活物質重量(g)で除することにより算出される値である。
二次電池の正極と負極の対向部に含まれる負極活物質重量(g)は、正極と負極の対向部の面積(cm)、負極活物質層の単位面積あたりの目付量(mg/cm)および負極活物質層に含まれる負極活物質の割合から算出され得る値である。
二次電池の正極(特に正極活物質層)と負極(特に負極活物質層)の対向部に含まれる負極活物質重量(g)は、当該二次電池がセパレータを介して対向する2組以上の正極活物質層および負極活物質層を有する場合、各組の正極(特に正極活物質層)と負極(特に負極活物質層)の対向部に含まれる負極活物質重量(g)の合計量のことである。
負極活物質の容量利用率は、負極の負極活物質層の目付量に対する正極の正極活物質層の目付量の割合、リチウムイオン二次電池の充電終止電圧、正極活物質の種類、負極活物質の種類、および負極活物質の初回効率を調整することにより制御することができる。
例えば、負極の負極活物質層の目付量に対する正極の正極活物質層の目付量の割合を増加させると、負極活物質の容量利用率は増加する。当該割合を減少させると、負極活物質の容量利用率は減少する。
また例えば、リチウムイオン二次電池の充電終止電圧を高くすると負極活物質の容量利用率は増加する。充電終止電圧を低くすると負極活物質の容量利用率は減少する。
また例えば、正極活物質及び負極活物質の種類によりそれぞれの活物質の可逆容量が変化するため、負極活物質の容量利用率を制御することができる。
また例えば、初回効率の高い負極活物質を用いた場合には、負極活物質の容量利用率は増加する。初回効率の低い負極活物質を用いた場合には、放電容量Aは低下する。
(正極)
正極は少なくとも正極活物質層を有する。正極は通常、正極活物質層および正極集電体(箔)から構成されており、正極集電体の少なくとも片面に正極活物質層が設けられている。例えば、正極は、正極集電体の両面に正極活物質層が設けられていてもよいし、または正極集電体の片面に正極活物質層が設けられていてもよい。二次電池のさらなる高容量化の観点から好ましい正極は正極集電体の両面に正極活物質層が設けられている。
正極活物質層は正極活物質を含み、通常はバインダーおよび導電助剤をさらに含む。正極活物質は通常、粒状体からなり、粒子同士の十分な接触と形状保持のためにバインダーが正極活物質層に含まれている。更には、電池反応を推進する電子の伝達を円滑にするために導電助剤が正極活物質層に含まれていることが好ましい。
正極活物質は、二次電池において電子の受け渡しに直接関与する物質であり、充放電、すなわち電池反応を担う正極の主物質である。より具体的には、「正極活物質層に含まれる正極活物質」に起因して電解質にイオンがもたらされ、かかるイオンが正極と負極との間で移動して電子の受け渡しが行われて充放電がなされる。正極活物質層は特にリチウムイオンを吸蔵放出可能な層である。リチウムイオンが電解質を介して正極と負極との間で移動して電池の充放電が行われる。
正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵放出に資する物質であれば特に限定されないが、正極活物質の放電容量および満充電時の正極電位の制御の観点から、リチウム含有複合酸化物を含むことが好ましい。リチウム含有複合酸化物は通常、リチウム遷移金属複合酸化物である。遷移金属はあらゆる遷移金属(遷移元素)であってもよく、例えば、第1遷移元素、第2遷移元素および第3遷移元素が挙げられる。好ましい遷移金属は第1遷移元素である。
正極活物質は、正極活物質の放電容量および満充電時の正極電位の制御の観点から、リチウムと、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛からなる群(特にコバルト、ニッケル、マンガンおよび鉄からなる群)から選択される少なくとも1種の遷移金属とを含むリチウム遷移金属複合酸化物であることが好ましい。このようなリチウム遷移金属複合酸化物の具体例として、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、または、それらの遷移金属の一部を別の金属で置き換えたもの(特にドープしたもの)が挙げられる。別の金属(ドープ金属)としては、例えば、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、ニッケル、マンガンおよびチタンからなる群から選択される1種以上の金属が挙げられる。正極活物質の放電容量および満充電時の正極電位の制御の観点から、正極活物質はコバルト酸リチウムを含むことが好ましい。
正極活物質は、正極活物質の放電容量および満充電時の正極電位の制御の観点から、主成分としてコバルト酸リチウム系化合物を含むことがより好ましい。正極活物質が主成分としてコバルト酸リチウム系化合物を含むとは、正極活物質に対するコバルト酸リチウム系化合物の含有量が50重量%以上であるという意味である。同様の観点から、コバルト酸リチウム系化合物の含有量は正極活物質に対して80重量%以上であることがさらに好ましく、100重量%であることが最も好ましい。
コバルト酸リチウム系化合物は、LiCoOの化学式で表される純粋コバルト酸リチウム、および当該コバルト酸リチウムにおいてコバルトの一部が別の金属で置き換えられた(特にドープされた)ドープコバルト酸リチウムを包含する。正極活物質の放電容量および満充電時の正極電位の制御の観点から、ドープコバルト酸リチウムが好ましい。ドープコバルト酸リチウムにおいて、別の金属(ドープ金属)としては、例えば、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、ニッケル、マンガンおよびチタンからなる群から選択される1種以上の金属が含まれ、同様の観点から好ましくは、当該群から選択される2種以上の金属が含まれる。同様の観点からより好ましい別の金属(ドープ金属)は、当該2種以上の金属として、アルミニウムまたはマグネシウムの一方を含む。正極活物質の放電容量および満充電時の正極電位の制御の観点から、置換量(ドープ量)は通常、ドープコバルト酸リチウム中、コバルト100重量部に対して、0.001〜5重量部であり、好ましくは0.1〜5重量部である。相対的により高い充電終止電圧(例えば、4,45V以上4,47V以下)の環境下での正極活物質の放電容量および満充電時の正極電位の制御の観点から、置換量(ドープ量)は、ドープコバルト酸リチウム中、コバルト100重量部に対して、好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは0.8〜5重量部、より好ましくは1〜5重量部である。ドープコバルト酸リチウムが別の金属(ドープ金属)として2種以上の金属を含む場合、それらの合計置換量(合計ドープ量)が上記範囲内であればよい。
本明細書中、正極活物質のドープ量は、ICP分析による定量分析により測定された値を用いている。
正極活物質の平均粒径D50は、正極活物質の放電容量および満充電時の正極電位の制御の観点から、5μm以上30μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上25μm以下であり、さらに好ましくは12μm以上20μm以下である。
本明細書中、平均粒径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製LA960)により測定された値を用いている。
正極活物質の比表面積は、正極活物質の放電容量および満充電時の正極電位の制御の観点から、0.05m/g以上2m/g以下であることが好ましく、より好ましくは0.1m/g以上1m/g以下であり、さらに好ましくは0.15m/g以上0.5m/g以下である。
本明細書中、比表面積は比表面積測定装置(Mountech製Macsorb)により測定された値を用いている。
正極活物質は市販品として入手することもできるし、または公知の方法により製造することもできる。例えば、正極活物質を製造する場合、公知の無機化合物の製造方法を用いることができる。詳しくは、原料となる複数の化合物を、所望の組成比となるように秤量し、均質に混合し、焼成することにより、正極活物質を製造することができる。原料となる化合物としては、例えば、リチウム含有化合物、遷移元素含有化合物、典型元素含有化合物、アニオン含有化合物が挙げられる。リチウム含有化合物としては、例えば、リチウムの水酸化物、塩化物、硝酸塩および炭酸塩等が使用可能である。遷移元素含有化合物としては、例えば、遷移元素の酸化物、水酸化物、塩化物、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩および有機酸塩等が使用可能である。遷移元素含有化合物の具体例として、遷移元素がCo、MnおよびFeの場合、例えば、二酸化マンガン,γ−MnOOH、炭酸マンガン、硝酸マンガン、水酸化マンガン、Co、CoO、水酸化コバルト、FeおよびFe等が挙げられる。典型元素含有化合物としては、例えば、典型元素の酸化物、水酸化物、塩化物、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩および有機酸塩等が使用可能である。アニオン含有化合物としては、アニオンがフッ素の場合、例えば、フッ化リチウム等が使用可能である。焼成温度は通常、400℃以上1200℃以下である。焼成は、大気中、真空中、酸素雰囲気中、水素雰囲気中、または窒素および希ガス等の不活性ガス雰囲気中で行ってよい。
正極活物質の含有量は通常、正極活物質層の全重量(固形分重量)に対して、90重量%以上99重量%以下であり、好ましくは95重量%以上99重量%以下である。正極活物質層は2種以上の正極活物質を含有してもよく、その場合、それらの合計含有量が上記範囲内であればよい。
正極活物質層に含まれる得るバインダーは特に制限されない。正極活物質層のバインダーとして、例えば、ポリフッ化ビリニデン(PVdF)、ビリニデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビリニデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体およびポリテトラフルオロエチレン等からなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。正極活物質層のバインダーは、正極活物質の放電容量および満充電時の正極電位の制御の観点から、ポリフッ化ビリニデン(PVdF)を含むことが好ましい。
正極活物質層のバインダーの含有量は通常、正極活物質層の全重量(固形分重量)に対して、0.1重量%以上5重量%以下であり、正極活物質の放電容量および満充電時の正極電位の制御の観点から、好ましくは0.5重量%以上3重量%以下であり、より好ましくは0.5重量%以上2重量%以下である。正極活物質層は2種以上のバインダーを含有してもよく、その場合、それらの合計含有量が上記範囲内であればよい。
正極活物質層に含まれる得る導電助剤は特に制限されない。正極活物質層の導電助剤として、例えば、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックおよびアセチレンブラック等のカーボンブラック;黒鉛;カーボンナノチューブおよび気相成長炭素繊維等の炭素繊維;銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀等の金属粉末;ならびにポリフェニレン誘導体等からなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。正極活物質層の導電助剤は、正極活物質の放電容量および満充電時の正極電位の制御の観点から、炭素繊維(特にカーボンナノチューブ)を含むことが好ましい。
炭素繊維(特にカーボンナノチューブ)の平均直径は通常、1nm以上20nm以下であり、好ましくは2nm以上12nm以下である。炭素繊維(特にカーボンナノチューブ)の平均鎖長は通常、0.05μm以上500μm以下であり、好ましくは0.1μm以上300μm以下である。平均直径および平均鎖長は任意の100本の炭素繊維の平均値である。
正極活物質層の導電助剤の含有量は通常、正極活物質層の全重量(固形分重量)に対して、0.1重量%以上5重量%以下であり、正極活物質の放電容量および満充電時の正極電位の制御の観点から、好ましくは0.5重量%以上2重量%以下である。正極活物質層は2種以上の導電助剤を含有してもよく、その場合、それらの合計含有量が上記範囲内であればよい。
正極活物質層は、例えば、正極活物質および所望により添加されるバインダーおよび導電助剤を溶媒に分散させて得られた正極スラリーを正極集電体に塗布および乾燥させ、ロールプレス機等により圧密化(圧延)して得ることができる。圧密化の際の圧力を調整することにより、密度を制御することができる。正極スラリーの溶媒は特に限定されず、通常はバインダーを溶解させ得る溶媒が使用される。正極スラリーの溶媒として、例えば、N−メチルピロリドン、トルエン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン等の有機溶媒および水が挙げられる。正極スラリーの片面塗工量は、乾燥後において上記した正極活物質層の目付量が達成されるような範囲であればよい。正極活物質の放電容量および満充電時の正極電位の制御の観点から、好適な態様では、正極活物質層における正極活物質およびバインダーはコバルト酸リチウム系化合物(特にドープコバルト酸リチウム)とポリフッ化ビニリデンとの組合せである。
正極に用いられる正極集電体は電池反応に起因して正極活物質で発生した電子を集めたり供給したりするのに資する部材である。このような正極集電体は、シート状の金属部材であってよく、多孔または穿孔の形態を有していてよい。例えば、正極集電体は金属箔、パンチングメタル、網またはエキスパンドメタル等であってよい。正極に用いられる正極集電体は、アルミニウム、ステンレスおよびニッケル等からなる群から選択される少なくとも1種を含んだ金属箔からなるものが好ましく、例えばアルミニウム箔であってよい。
正極活物質層は密度が通常、3.5g/cm以上4.5g/cm以下であり、正極活物質の放電容量および満充電時の正極電位の制御の観点から、好ましくは3.6g/cm以上4.4g/cm以下であり、より好ましくは3.7g/cm以上4.3g/cm以下であり、さらに好ましくは3.8g/cm以上4.2g/cm以下である。
本明細書中、正極活物質層の密度は、当該層の質量を当該層の体積で除することにより算出される値である。正極活物質層の質量は正極集電体から剥離した正極活物質層を秤量することにより求めることができる。正極活物質層の体積は、正極の厚みから正極集電体の厚みを差し引くことから正極活物質層の厚みを算出し、正極活物質層の厚みと、正極活物質層の形成面積との積から求めることができる。
(負極)
負極は少なくとも負極活物質層を有する。負極は通常、負極活物質層および負極集電体(箔)から構成されており、負極集電体の少なくとも片面に負極活物質層が設けられている。例えば、負極は、負極集電体の両面に負極活物質層が設けられていてもよいし、または負極集電体の片面に負極活物質層が設けられていてもよい。二次電池のさらなる高容量化の観点から好ましい負極は負極集電体の両面に負極活物質層が設けられている。
負極活物質層は負極活物質を含み、通常は、正極活物質層と同様に、バインダーおよび導電助剤をさらに含む。負極活物質は通常、粒状体からなり、粒子同士の十分な接触と形状保持のためにバインダーが負極活物質層に含まれている。更には、電池反応を推進する電子の伝達を円滑にするために導電助剤が負極活物質層に含まれていることが好ましい。
負極材層に含まれる負極活物質もまた、正極活物質層に含まれる正極活物質と同様に、二次電池において電子の受け渡しに直接関与する物質であり、充放電、すなわち電池反応を担う負極の主物質である。より具体的には、「負極活物質層に含まれる負極活物質」に起因して電解質にイオンがもたらされ、かかるイオンが正極と負極との間で移動して電子の受け渡しが行われて充放電がなされる。負極材層は特にリチウムイオンを吸蔵放出可能な層である。
負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵放出に資する物質であれば特に限定されず、例えば、各種の炭素材料、酸化物、リチウム合金、シリコン、シリコン合金、錫合金等であることが好ましい。負極活物質は、正極活物質の放電容量、満充電時の正極電位および負極活物質の容量利用率の制御の観点から、炭素材料が好ましい。
負極活物質の各種の炭素材料としては、例えば、黒鉛(例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、MCMB(メソカーボンマイクロビーズ)、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素)、ハードカーボン、ソフトカーボン、ダイヤモンド状炭素等を挙げることができる。特に、黒鉛は電子伝導性が高く、負極集電体との接着性が優れる点等で好ましい。負極活物質の酸化物としては、酸化シリコン[SiOx(0.5≦x≦1.5)]、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛および酸化リチウム等からなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。負極活物質のリチウム合金は、リチウムと合金形成され得る金属であればよく、例えば、Al、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、La等の金属とリチウムとの2元、3元またはそれ以上の合金であってよい。このような酸化物およびリチウム合金は、その構造形態としてアモルファスとなっていることが好ましい。結晶粒界または欠陥といった不均一性に起因する劣化が引き起こされにくくなるからである。正極活物質の放電容量、満充電時の正極電位および負極活物質の容量利用率の制御の観点から、負極活物質は炭素材料を含むことが好ましく、黒鉛(特に人造黒鉛)を含むことがより好ましい。
負極活物質は、正極活物質の放電容量、満充電時の正極電位および負極活物質の容量利用率の制御の観点から、主成分として黒鉛(特に人造黒鉛)を含むことがより好ましい。負極活物質が主成分として黒鉛(特に人造黒鉛)を含むとは、負極活物質に対する黒鉛(特に人造黒鉛)の含有量が50重量%以上であるという意味である。同様の観点から、黒鉛(特に人造黒鉛)の含有量は負極活物質に対して80重量%以上であることがさらに好ましく、100重量%であることが最も好ましい。
負極活物質の平均粒径D50は通常、5μm以上30μm以下であり、正極活物質の放電容量、満充電時の正極電位および負極活物質の容量利用率の制御の観点から、好ましくは10μm以上25μm以下であり、より好ましくは12μm以上20μm以下である。
負極活物質の比表面積は通常、0.5m/g以上10m/g以下であり、正極活物質の放電容量、満充電時の正極電位および負極活物質の容量利用率の制御の観点から、好ましくは1m/g以上5m/g以下であり、より好ましくは1.5m/g以上3m/g以下である。
負極活物質の含有量は通常、負極活物質層の全重量(固形分重量)に対して、90重量%以上99重量%以下であり、好ましくは95重量%以上99重量%以下である。負極活物質層は2種以上の負極活物質を含有してもよく、その場合、それらの合計含有量が上記範囲内であればよい。
負極活物質層に含まれる得るバインダーは特に制限されない。負極活物質層のバインダーとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリイミド系樹脂およびポリアミドイミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。負極活物質層のバインダーは、正極活物質の放電容量、満充電時の正極電位および負極活物質の容量利用率の制御の観点から、スチレンブタジエンゴムを含むことが好ましい。
負極活物質層のバインダーの含有量は通常、正極活物質層の全重量(固形分重量)に対して、0.1重量%以上5重量%以下であり、正極活物質の放電容量、満充電時の正極電位および負極活物質の容量利用率の制御の観点から、好ましくは0.5重量%以上3重量%以下であり、より好ましくは1重量%以上3重量%以下である。負極活物質層は2種以上のバインダーを含有してもよく、その場合、それらの合計含有量が上記範囲内であればよい。
負極活物質層に含まれる得る導電助剤は特に制限されない。負極活物質層の導電助剤としては、例えば、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックおよびアセチレンブラック等のカーボンブラック、カーボンナノチューブおよび気相成長炭素繊維等の炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀等の金属粉末、ならびに、ポリフェニレン誘導体等からなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
負極活物質層の導電助剤の含有量は通常、負極活物質層の全重量(固形分重量)に対して、0重量%以上5重量%以下であり、好ましくは0.5重量%以上2重量%以下である。負極活物質層は2種以上の導電助剤を含有してもよく、その場合、それらの合計含有量が上記範囲内であればよい。
負極活物質層は増粘剤を含んでもよい。増粘剤として、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸等が挙げられる。
負極活物質層の増粘剤の含有量は通常、負極活物質層の全重量(固形分重量)に対して、0.1重量%以上5重量%以下であり、好ましくは0.5重量%以上2重量%以下である。負極活物質層は2種以上の増粘剤を含有してもよく、その場合、それらの合計含有量が上記範囲内であればよい。
負極活物質層は、例えば、負極活物質および所望により添加されるバインダー、導電助剤および増粘剤を溶媒に分散させて得られた負極スラリーを負極集電体に塗布および乾燥させ、ロールプレス機等により圧密化(圧延)して得ることができる。負極スラリーの溶媒は特に限定されず、正極スラリーの溶媒として例示した同様の溶媒が挙げられる。負極スラリーの片面塗工量は、乾燥後において上記した負極活物質層の目付量が達成されるような範囲であればよい。正極活物質の放電容量、満充電時の正極電位および負極活物質の容量利用率の制御の観点から、好適な態様では、負極活物質層における負極活物質およびバインダーは黒鉛(特に人造黒鉛)とスチレンブタジエンゴムとの組合せである。
負極に用いられる負極集電体は電池反応に起因して正極活物質で発生した電子を集めたり供給したりするのに資する部材である。このような集電体は、シート状の金属部材であってよく、多孔または穿孔の形態を有していてよい。例えば、負極集電体は、正極集電体と同様に、金属箔、パンチングメタル、網またはエキスパンドメタル等であってよい。負極に用いられる負極集電体は、銅、ステンレスおよびニッケル等からなる群から選択される少なくとも1種を含んだ金属箔からなるものが好ましく、例えば銅箔であってよい。
負極活物質層は密度が通常、1.0g/cm以上1.9g/cm以下であり、正極活物質の放電容量、満充電時の正極電位および負極活物質の容量利用率の制御の観点から、好ましくは1.2g/cm以上1.85g/cm以下であり、より好ましくは1.5g/cm以上1.8g/cm以下である。
本明細書中、負極活物質層の密度は、当該層の質量を当該層の体積で除することにより算出される値である。負極活物質層の質量は負極集電体から剥離した負極活物質層を秤量することにより求めることができる。負極活物質層の体積は、負極の厚みから負極集電体の厚みを差し引くことから負極活物質層の厚みを算出し、負極活物質層の厚みと、負極活物質層の形成面積との積から求めることができる。
(セパレータ)
セパレータは、正極と負極との間の電気的接触を防止しつつイオンを通過させることができる限り特に限定されない。セパレータを構成する材料は、正極と負極との間の電気的接触を防止できる限り特に限定されず、例えば、電気絶縁性ポリマー等が挙げられる。電気絶縁性ポリマーとして、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、アラミド、セルロース等が挙げられる。好ましくは、セパレータは多孔性または微多孔性の絶縁性部材であり、その小さい厚みに起因して膜形態を有している。あくまでも例示にすぎないが、ポリオレフィン製の微多孔膜がセパレータとして用いられてよい。セパレータの表面は無機粒子コート層および/または接着層等により覆われていてもよい。セパレータの表面は接着性を有していてもよい。
セパレータと正極および/または負極とは接着されていてもよい。接着は、セパレータとして接着性セパレータを用いること、電極活物質層(正極活物質層および/または負極活物質層)の上に接着性バインダーを塗布すること、および/または熱圧着することなどにより達成することができる。セパレータまたは電極活物質層に接着性または接着力を付与するために接着剤を用いることができる。接着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、アクリル系接着剤などを用いることができる。また、接着剤と共にアルミナ、シリカなどのフィラー粒子を用いてもよい。
セパレータの厚みは特に限定されず、例えば、1〜100μm、特に5〜20μmであってよい。セパレータの厚みは二次電池内部での厚みである。
(非水電解質)
非水電解質は電極(正極・負極)から放出されたリチウムイオンの移動を助力する。非水電解質は非水系溶媒および電解質塩を含む。非水電解質は液体状またはゲル状等の形態を有し得る(なお、本明細書において“液体状”の非水電解質は「非水電解質液」とも称される)。
非水電解質の非水系溶媒としては、特に限定されず、例えば、カーボネート系溶媒、エステル系溶媒、スルトン系溶媒、ニトリル系溶媒等、およびそれらのフッ素化物からなる群から選択される少なくも1種を挙げることができる。非水電解質は、正極活物質の放電容量、満充電時の正極電位および負極活物質の容量利用率の制御の観点から、非水系溶媒として、カーボネート系溶媒を含むことが好ましい。
カーボネート系溶媒は環状カーボネート類および/または鎖状カーボネート類を含み、正極活物質の放電容量、満充電時の正極電位および負極活物質の容量利用率の制御の観点から、環状カーボネート類および鎖状カーボネート類を含むことが好ましい。環状カーボネート類としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ブチレンカーボネート(BC)およびビニレンカーボネート(VC)からなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。鎖状カーボネート類としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジプロピルカーボネート(DPC)からなる群から選択される少なくも1種を挙げることができる。カーボネート系溶媒の含有量は通常、非水電解質の非水系溶媒に対して、20体積%以上であり、正極活物質の放電容量、満充電時の正極電位および負極活物質の容量利用率の制御の観点から、好ましくは25体積%以上、より好ましくは30体積%以上である。
エステル系溶媒として、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチルからなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
スルトン系溶媒として、例えば、プロパンスルトン(PS)、プロペンスルトンからなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
ニトリル系溶媒として、例えば、アジポニトリル(ADN)、スクシノニトリル、スベロニトリル、アセトニトリル、グルタロニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリルからなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
非水系溶媒は、正極活物質の放電容量、満充電時の正極電位および負極活物質の容量利用率の制御の観点から、環状カーボネート類および鎖状溶媒を含むことが好ましい。鎖状溶媒は、上記した鎖状カーボネート類およびエステル系溶媒を包含する。環状カーボネート類と鎖状溶媒との体積割合(環状カーボネート類/鎖状溶媒)は通常、20/80以上80/20以下であり、正極活物質の放電容量、満充電時の正極電位および負極活物質の容量利用率の制御の観点から、好ましくは25/75以上75/25以下であり、より好ましくは30/70以上70/30以下である。
非水電解質の電解質塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFN、LiB(CN)等のLi塩が好ましく用いられる。正極活物質の放電容量、満充電時の正極電位および負極活物質の容量利用率の制御の観点から好ましい電解質塩はLiPFである。
非水電解質における電解質塩の濃度は特に限定されず、例えば、0.1モル/L以上4モル/L以下であってよく、正極活物質の放電容量、満充電時の正極電位および負極活物質の容量利用率の制御の観点から、好ましくは0.5モル/L以上2モル/L以下である。
[二次電池の製造]
二次電池は、正極、負極およびセパレータからなる電極組立体および非水電解質を外装体に封入し、その後、初期充電を行うことにより、製造することができる。初期充電工程の後、エージング工程をさらに行ってもよい。
電極組立体は通常、正極と負極とがセパレータを介して交互に配置されてなっている。電極組立体の構造は特に限定されない。例えば、電極組立体は、正極、負極および正極と負極との間に配置されたセパレータを含む複数の電極ユニット(電極構成層)を平面状に積層した平面積層構造を有していてもよい。また例えば、電極組立体の構造は、正極、負極および正極と負極との間に配置されたセパレータを含む電極ユニット(電極構成層)をロール状に巻回した巻回構造(ジェリーロール型)を有していてもよい。また例えば、電極組立体は、正極、セパレータ、負極を長いフィルム上に積層してから折りたたんだ、いわゆるスタックアンドフォールディング構造を有していてもよい。
外装体はフレキシブルパウチ(軟質袋体)であってよいし、またはハードケース(硬質筐体)であってもよい。
外装体がフレキシブルパウチである場合、フレキシブルパウチは通常、ラミネートフィルムから形成され、周縁部をヒートシールすることにより、封止および封入が達成される。ラミネートフィルムとしては、金属箔とポリマーフィルムを積層したフィルムが一般的であり、具体的には、外層ポリマーフィルム/金属箔/内層ポリマーフィルムからなる3層構成のものが例示される。外層ポリマーフィルムは水分等の透過および接触等による金属箔の損傷を防止するためのものであり、ポリアミドおよびポリエステル等のポリマーが好適に使用できる。金属箔は水分およびガスの透過を防止するためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。内層ポリマーフィルムは、内部に収納する電解質から金属箔を保護するとともに、ヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィンまたは酸変性ポリオレフィンが好適に使用できる。ラミネートフィルムの厚さは特に限定されず、例えば、1μm以上1mm以下が好ましい。
外装体がハードケースである場合、ハードケースは通常、金属板から形成され、周縁部をレーザー照射することにより、封止および封入が達成される。金属板としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、銅、ステンレス等からなる金属材料が一般的である。金属板の厚さは特に限定されず、例えば、1μm以上1mm以下が好ましい。
二次電池は通常、2つの外部端子を有する。2つの外部端子は集電リードを介して電極(正極または負極)に連結され、結果として外装体から外部に導出されている。
初期充電工程は、負極表面にSEI被膜を形成することを目的として行われる最初の充電工程であり、コンディショニング工程またはフォーメーション工程とも呼ばれる。SEI被膜は、本工程において電解質に含まれる添加剤が負極表面で還元分解することにより形成され、二次電池としての使用時における負極表面での当該添加剤のさらなる分解を防止する。SEI被膜は通常、LiF、LiCO、LiOHおよびLiOCOOR(Rは1価有機基、例えば、アルキル基を示す)からなる群から選択される1種以上の物質を含む。このようなSEI被膜が負極表面により均一に形成されることにより、二次電池において電解質成分の分解が防止され、二次電池の容量安定化および長寿命化を達成することができる。
初期充電工程では、充電を少なくとも1回行えばよい。通常は1回以上の充放電を行う。1回の充放電は、1回の充電およびその後の1回の放電を含む。充放電を2回以上行う場合、充電−放電を当該回数だけ繰り返す。本工程で行われる充放電の回数は通常、1〜3回である。
充電方法は、定電流充電方法または定電圧充電方法であっても、またはこれらの組み合わせであってもよい。例えば、一度の充電の間に定電圧充電と定電圧充電を繰り返してもよい。充電条件は、SEI被膜が形成される限り特に限定されない。SEI被膜の厚みの均一性のさらなる向上の観点からは、定電流充電を行った後、定電圧充電を行うことが好ましい。定電流充電を行った後、定電圧充電を行う場合、SEI被膜厚みの均一性のさらなる向上の観点から、以下の充電条件を採用することが好ましい。
定電流充電方法:
0.01C以上3C以下、特に0.05C以上2C以下の一定の電流値で1V以上6V以下、特に3V以上5V以下の電圧値になるまで定電流充電を行う。ここで、1Cとはその二次電池の定格容量を1時間で放電する時の電流値のことである。
定電圧充電方法:
定電流充電により達成された電圧値で、定電流充電時の一定の電流値よりも小さい所定の値になるまで、または一定時間が経過するまで定電圧充電を行う。
放電方法は通常、定電流放電方法または定電圧放電方法であっても、またはこれらの組み合わせであってもよい。放電条件は、SEI被膜が形成される限り特に限定されない。SEI被膜の厚みの均一性のさらなる向上の観点からは、定電流放電を行うことが好ましい。定電流放電を行う場合、SEI被膜厚みの均一性のさらなる向上の観点から、以下の放電条件を採用することが好ましい。
定電流放電方法:
0.1C以上3C以下、特に0.2C以上2C以下の一定の電流値で1V以上4V以下、特に2V以上3.5V以下の電圧値になるまで定電流放電を行う。
初期充電工程において二次電池は通常、25℃以上100℃以下の範囲内の温度に維持され、好ましくは35℃以上90℃以下の範囲内、より好ましくは40℃以上85℃以下の温度に維持される。
エージング工程は初期充電工程後の二次電池を開回路状態で放置することでSEI被膜を安定化させる工程である。エージング工程は熟成工程とも呼ばれる。
エージング工程において二次電池の温度は特に限定されず、例えば15℃以上80℃以下の範囲内に維持されてもよい。二次電池は、SEI被膜のさらなる安定化の観点から20℃以上75℃以下の範囲内の温度に維持されることが好ましく、より好ましくは25℃以上70℃以下の温度に維持される。詳しくは、二次電池を一定温度に設定された空間に放置することで温度を上記範囲内に維持することができる。
エージング工程において放置時間はSEI被膜の安定化が促進される限り特に限定されず、通常は10分以上30日以下であり、上記SEI被膜のさらなる安定化の観点から好ましくは30分以上14日以下の範囲内であり、より好ましくは1時間以上7日以下の範囲内である。
<実施例/比較例>
(正極の製造)
正極活物質として表1に示す2種類のコバルト酸リチウム(LCO1およびLCO2)のうち、表3〜表6に記載のものを用いた。LCO1またはLCO2を97.5重量%、導電助剤として平均直径5nm、平均鎖長200μmのカーボンナノチューブを1.0重量%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを1.5重量%用いた。これらをNMPと混合して正極合材スラリーを得た。次いで、正極合材スラリーを厚さ10μmのアルミニウム箔に均一に塗布してロールプレス機で圧延することで、正極活物質層を両面に有する両面正極、および正極活物質層を片面に有する片面正極を得た。正極の正極活物質層の目付量(片面あたり)および密度は表3〜表6の通りとした。
Figure 0006927303
(負極の製造)
負極活物質として表2に示す人造黒鉛(AG1)を用いた。AG1を97.0重量%、バインダーとしてスチレンブタジエンゴムを2.0重量%、増粘剤としてカルボキシルメチルセルロース1.0重量%を用いた。これらを水と混合して負極合材スラリーを得た。次いで、負極合材スラリーを厚さ6μmの銅箔に均一に塗布してロールプレス機で圧延することで、負極活物質層を両面に有する両面負極、および負極活物質層を片面に有する片面負極を得た。負極の負極活物質層の目付量(片面あたり)および密度は表3〜表6の通りとした。
Figure 0006927303
(電解液の製造)
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの体積比が3:7である溶液98体積部に、電解液中での濃度が1モル/LになるようにLiPFを溶解し、2体積部のビニレンカーボネートを混合することで電解液を得た。
(電池の製造)
上記の方法に従い製造された10枚の両面正極11a、2枚の片面正極11b、11枚の両面負極12aおよび電解液13を、セパレータ14とともに、ラミネート外装体15に封入して、図1に示す、容量が約2.2Ahの積層型リチウムイオン二次電池を製造した。正極と負極とはセパレータを介して交互に配置され、最上層および最下層の電極として片面正極を用いた。片面正極は、その正極活物質層が負極の負極活物質層とセパレータを介して対向するように配置した。リチウム電位基準での正極電位の測定のため、最上層の片面正極11bの外側にセパレータ14を介してリチウム金属を備えた補助電極16を配置した。正極、負極および補助電極には外部端子17を設け、外装体15から外部に導出した。充放電には正極および負極から導出した2つの外部端子を用いた。セパレータ14としてポリエチレン製微多孔膜の両面にポリフッ化ビニリデンとアルミナ粒子からなる接着層を備えたセパレータを用いた。
初期充電工程およびエージング工程を行った。
初期充電工程では、60℃の環境下、0.5Cで4.0Vになるまで定電流充電を行った後、当該電圧値で30分間定電圧充電を行った。
エージング工程では、60℃で24時間のエージング処理を行った。
(電池の安定化)
上記の二次電池を用い、25℃の恒温槽中にて充放電を繰り返し、電池の安定化を行った。
詳しくは、n回目の充放電による放電容量P(mAh)と、「n+1」回目の充放電による放電容量Pn+1(mAh)との容量変化率[{(P−Pn+1)/Pn+1}×100(%)]がはじめて0.2%以下になるときまで充放電を繰り返した。ここでnは1以上の整数である。より詳しくは、繰り返される充放電のうち、充電は、表3〜表6に記載の充電終止電圧まで0.5Cの電流値で定電流充電した後、充電終止電圧で1時間の定電圧充電を行った。放電は、充電完了後、10分間休止した後、電圧3.0Vまで0.2Cの電流値で定電流放電を行った。この定電流放電時の容量を放電容量として測定した。放電後は10分間の休止をした。
(初期セル容量)
上記のように電池の安定化を行い、n回目の充放電による放電容量P(mAh)と、「n+1」回目の充放電による放電容量Pn+1(mAh)との容量変化率[{(P−Pn+1)/Pn+1}×100(%)]がはじめて0.2%以下になったとき、「n+1」回目の充放電による放電容量Pn+1(mAh)を初期セル容量とした。
(満充電時の正極電位)
上記のように電池の安定化を行い、n回目の充放電による放電容量P(mAh)と、「n+1」回目の充放電による放電容量Pn+1(mAh)との容量変化率[{(P−Pn+1)/Pn+1}×100(%)]がはじめて0.2%以下になったとき、「n+1」回目の充放電における定電圧充電終了直前の補助電極と正極との電位差を「満充電時における正極電位(V vs. Li+/Li)」として測定した。単位「V vs. Li+/Li」は補助電極の電位を基準にした場合の正極の電位「V」という意味である。
(正極活物質の単位重量あたりの放電容量(mAh/g))
「初期セル容量」と二次電池の正極と負極の対向部に含まれる正極活物質重量(g)とから、「正極活物質の単位重量あたりの放電容量(mAh/g)」を算出した。なお、二次電池の正極と負極の対向部に含まれる正極活物質重量W1(g)は以下の式から算出した。
W1(g)=正極と負極の対向部の面積(cm)×正極活物質層の単位面積あたりの目付量(mg/cm)×正極活物質層に含まれる正極活物質の割合
(負極活物質の単位重量あたりの放電容量(mAh/g))
「初期セル容量」と二次電池の正極と負極の対向部に含まれる負極活物質重量(g)とから、「負極活物質の単位重量あたりの放電容量(mAh/g)」を算出した。なお、二次電池の正極と負極の対向部に含まれる負極活物質重量W2(g)は以下の式から算出した。
W2(g)=正極と負極の対向部の面積(cm)×負極活物質層の単位面積あたりの目付量(mg/cm)×負極活物質層に含まれる負極活物質の割合
(負極活物質の初回効率および可逆容量)
負極活物質の初回効率および可逆容量は以下の方法で測定された値である。片面負極を用いた対極リチウムのコインセルで0.01〜1.5Vの範囲で充放電サイクルを行い、1サイクル目の充電容量に対する1サイクル目の放電容量の割合(%)を初回効率とした。また、3サイクル目の放電容量(mAh/g)を可逆容量とした。充放電サイクルにおける充放電条件は以下の通りとした。
充電:0.4mA、0.01V、25℃、定電流定電圧充電(定電圧充電は5時間);
放電:0.4mA、1.5V、25℃、定電流放電。
(負極活物質の容量利用率)
負極活物質の可逆容量に対する負極活物質の単位重量あたりの放電容量の割合を「負極活物質の容量利用率(%)」として算出した。
(サイクル試験)
上記の二次電池を用い、25℃の恒温槽中にてサイクル試験を行った。充電は表3〜表6に記載の充電終止電圧まで1.0Cの電流値で定電流充電した後、充電終止電圧で1時間の定電圧充電を行った。充電完了後、10分間休止した後、電圧3.0Vまで1.0Cの電流値で定電流放電を行い、放電後10分間の休止をした。この充放電サイクルを400サイクル繰り返した。その後、以下の条件で充放電(401回目)を行い、定電流放電時の放電容量を「サイクル後のセル容量」とした。
充電:表3〜表6に記載の充電終止電圧まで0.5Cの電流値で定電流充電した後、充電終止電圧で1時間の定電圧充電を行った;および
放電:充電完了後、10分間休止した後、電圧3.0Vまで0.2Cの電流値で定電流放電を行った。
400サイクル後の容量測定における定電流放電時の平均電圧(V)と、「サイクル後のセル容量(mAh)」と、セル体積(L)から、「サイクル後の体積エネルギー密度(Wh/L)」を算出した。
「サイクル後の体積エネルギー密度」を以下の基準に従って評価した。
◎:650Wh/L以上(最良):
〇:600Wh/L以上(良):
△:580Wh/L以上(実用上問題なし(許容範囲内)):
×:580Wh/L未満(実用上問題あり)。
表3,表4,表5および表6にそれぞれ充電終止電圧が4.41V、4.43V、4.45Vおよび4.47Vにおける結果を示す。
Figure 0006927303
Figure 0006927303
Figure 0006927303
Figure 0006927303
正極活物質の単位重量あたりの放電容量が169.0mAh/g以上、178.0mAh/g以下であり、かつ、前記二次電池の満充電時における正極電位が「充電終止電圧+0.015」V(vs. Li/Li)以上、4.49V(vs. Li/Li)以下の二次電池は、「サイクル後の体積エネルギー密度」が580Wh/L以上と高くなっており、充電終止電圧が4.41V以上、4.47V以下の全ての二次電池において良好なサイクル特性が得られた。
上記した良好なサイクル特性を有する二次電池の中でも、特に負極活物質の容量利用率が91.5%以上、96.5%以下の二次電池は、「サイクル後の体積エネルギー密度」が650Wh/L以上とより高くなっており、充電終止電圧が4.41V以上、4.47V以下の全ての二次電池において、より良好なサイクル特性が得られた。
<測定方法>
(正極活物質のドープ元素およびドープ量)
正極活物質のドープ元素およびドープ量は、ICP分析による定量分析により測定した。正極活物質に含まれるCo量を100重量部とした場合の、ドープ元素の含有量を求めた。
(平均粒径D50)
平均粒径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製LA960)によって測定した。本明細書ではこの測定装置によって測定された体積基準の累積50%径(D50)を平均粒径と表現する。
(比表面積(SSA))
比表面積(SSA)は比表面積測定装置(Mountech製Macsorb)によって測定した。本明細書ではこの測定装置によって測定された比表面積(m/g)をSSAと表現する。
(密度)
正極活物質層の密度を以下の方法により算出した。正極の厚みから正極集電体の厚みを差し引くことから正極活物質層の厚みを算出し、正極活物質層の厚みと正極活物質層の形成面積との積から正極活物質層の体積を算出し、正極活物質層の重量を体積で除することで密度を算出している。
負極活物質層の密度は上記した正極活物質層の密度の算出方法に準じて算出した。
本発明の二次電池は、蓄電が想定される様々な分野に利用することができる。あくまでも例示にすぎないが、本発明の二次電池は、モバイル機器等が使用される電気・情報・通信分野(例えば、携帯電話、スマートフォン、スマートウォッチ、ノートパソコン、デジタルカメラ、活動量計、アームコンピューターおよび電子ペーパー等のモバイル機器分野)、家庭・小型産業用途(例えば、電動工具、ゴルフカート、家庭用・介護用・産業用ロボットの分野)、大型産業用途(例えば、フォークリフト、エレベーター、湾港クレーンの分野)、交通システム分野(例えば、ハイブリッド車、電気自動車、バス、電車、電動アシスト自転車、電動二輪車等の分野)、電力系統用途(例えば、各種発電、ロードコンディショナー、スマートグリッド、一般家庭設置型蓄電システム等の分野)、IoT分野、ならびに、宇宙・深海用途(例えば、宇宙探査機、潜水調査船等の分野)などに利用することができる。

Claims (6)

  1. 正極、負極、該正極と該負極との間に配置されたセパレータ、および非水電解質を含み、充電終止電圧が4.41V以上、4.47V以下であるリチウムイオン二次電池であって、
    前記正極に含まれる正極活物質の単位重量あたりの放電容量が169.0mAh/g以上、176.0mAh/g以下であり、
    前記正極は前記正極活物質としてリチウム遷移金属複合酸化物を含み、
    前記正極活物質は主成分としてコバルト酸リチウム系化合物を含み、
    前記正極は前記正極活物質を含む正極活物質層を有し、
    前記正極活物質層は18.5mg/cm 以上、19.2mg/cm 以下の目付量を有し、
    前記リチウムイオン二次電池の満充電時における正極電位が「充電終止電圧+0.015」V(vs. Li/Li)以上、4.49V(vs. Li/Li)以下であり
    前記負極に含まれる負極活物質の容量利用率が91%以上、97%以下であ
    前記負極は前記負極活物質として炭素材料を含み、
    前記負極活物質は主成分として黒鉛を含み、
    前記負極は前記負極活物質を含む負極活物質層を有し、
    前記負極活物質層は9.4mg/cm 以上、11.1mg/cm 以下の目付量を有する、リチウムイオン二次電池。
  2. 前記負極に含まれる負極活物質の容量利用率が91.5%以上、96.5%以下である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 前記非水電解質は液体である、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
  4. 前記非水電解質はカーボネート系溶媒を含む、請求項1〜のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
  5. 前記二次電池がモバイル機器用二次電池である、請求項1〜のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
  6. 充電終止電圧が4.46V以上、4.47V以下である、請求項1〜のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
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