JP6926463B2 - 電極 - Google Patents

電極 Download PDF

Info

Publication number
JP6926463B2
JP6926463B2 JP2016243719A JP2016243719A JP6926463B2 JP 6926463 B2 JP6926463 B2 JP 6926463B2 JP 2016243719 A JP2016243719 A JP 2016243719A JP 2016243719 A JP2016243719 A JP 2016243719A JP 6926463 B2 JP6926463 B2 JP 6926463B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
skeleton
lithium ion
hydrocarbon chain
positive electrode
anion
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016243719A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018095621A (ja
Inventor
佑介 杉山
佑介 杉山
友邦 阿部
友邦 阿部
浩平 間瀬
浩平 間瀬
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Industries Corp
Original Assignee
Toyota Industries Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Industries Corp filed Critical Toyota Industries Corp
Priority to JP2016243719A priority Critical patent/JP6926463B2/ja
Publication of JP2018095621A publication Critical patent/JP2018095621A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6926463B2 publication Critical patent/JP6926463B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

Landscapes

  • Conductive Materials (AREA)
  • Battery Electrode And Active Subsutance (AREA)

Description

本発明は、電極に関するものである。
リチウムイオン二次電池に代表される二次電池は、現在、携帯電子機器用の電源として主に用いられており、さらに、電気自動車用の電源としても実用化されている。使用態様の多様化に伴い、二次電池の高容量化が求められているため、高電圧で駆動させることで二次電池を高容量化する検討が行われている。しかしながら、二次電池を高電圧で駆動させた場合には、酸化状態の正極活物質との接触に因る電解液の酸化分解が生じるとの問題があった。
そのため、正極活物質と電解液との直接接触を低減する技術として、正極活物質を含有する正極活物質層の表面に、保護層を形成する技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、正極活物質の表面を被覆するコート層を設ける技術が開示されている。具体的には、集電体及び正極活物質層からなる正極を、ポリエチレンイミン溶液及びポリエチレングリコール溶液に浸漬させて、正極をポリマーでコートする技術が開示されている。
また、特許文献2にも、正極活物質の表面を被覆するコート層を設ける技術が開示されている。具体的には、集電体及び正極活物質層からなる正極を、ポリエチレングリコール溶液に浸漬させて、正極をポリマーでコートする技術が開示されている。
特開2013−243105号公報 特開2014−096343号公報
しかしながら、本来、ポリマーはリチウムイオンなどの電荷担体の移動に対する抵抗因子であるため、特許文献1及び特許文献2に開示の技術を適用した二次電池は電池としての機能面に課題があるといえる。ここで、本発明者は、電極の保護材料となり得るリチウムイオン伝導性材料の必要性を認識した。
本発明はかかる事情に鑑みて為されたものであり、リチウムイオン伝導性材料となり得る化合物を有する電極を提供することを目的とする。
さて、電極の保護材料となり得るリチウムイオン伝導性材料としては、リチウムイオンに対する親和性が求められるが、その程度がリチウムイオンの移動を阻害するほど強く無いことが求められる。例えば、ポリアクリル酸を含有するリチウムイオン伝導性材料であれば、アクリル酸を構成するカルボン酸はリチウムイオンと親和性を示すものの、カルボン酸のプロトンとリチウムイオンとがイオン交換して形成するカルボン酸リチウム塩は電気的に中性であり安定であるため、リチウムイオンがポリアクリル酸にトラップされることになり、結果的に、リチウムイオンの移動が阻害される。したがって、ポリアクリル酸を含有するリチウムイオン伝導性材料は、電極の保護材料としては適切とはいえない。
そこで、本発明者は、分子内にカチオンとアニオンの両者を含む双性イオン化合物に着目した。双性イオン化合物であれば、そのアニオンがリチウムイオンと一定程度の親和性を示すものの、双性イオン化合物内のカチオンの存在に因り、リチウムイオンが双性イオン化合物に完全にトラップされる状態を抑制できると考えられる。しかも、本発明者は、双性イオン化合物のカチオンとして、第四級アンモニウムカチオンを用いることを想起した。その理由は、プロトンが存在する第一級〜第三級アンモニウムカチオンであれば、当該プロトンとリチウムイオンとがイオン交換にて置換して、リチウムイオンがトラップされる可能性があるものの、プロトンが存在しない第四級アンモニウムカチオンであれば、その可能性が無いためである。
本発明者は、分子内に第四級アンモニウムカチオンとアニオンの両者を含む双性イオン化合物を合成し、当該双性イオン化合物を保護材料とした電極及びリチウムイオン二次電池を製造した。そして、本発明者が上記電極を具備するリチウムイオン二次電池を充放電させたところ、リチウムイオン伝導性は示したものの、容量の維持率に課題があることを見出した。容量の維持率に課題があるということは、双性イオン化合物が電極を十分に保護していないことを意味する。本発明者は、単に第四級アンモニウムカチオンとアニオンの両者のみを含む双性イオン化合物では、リチウムイオン二次電池の充放電中に、電極から剥離又は電解液に溶解するため、十分に電極を保護できなかったと推定した。
本発明者のさらなる検討の結果、分子内に第四級アンモニウムカチオンとアニオンと、さらにシロキサン骨格又はポリリン酸骨格とを含む双性イオン化合物を、本発明者は想起した。そして、かかる双性イオン化合物を実際に合成して、試験を行ったところ、当該双性イオン化合物が好適に電極を保護し得ることを本発明者は発見した。かかる発見に基づき、本発明者は本発明を完成するに至った。
本発明の双性イオン化合物は、第四級アンモニウムカチオンと、アニオンと、シロキサン骨格又はポリリン酸骨格と、を含むことを特徴とする。
本発明により、リチウムイオン伝導性材料となり得る双性イオン化合物を利用した電極を提供することができる。
中間体Aの赤外吸収スペクトルである。 実施例1のリチウムイオン伝導性材料の赤外吸収スペクトルである。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a〜b」は、下限a及び上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな上限や下限の数値とすることができる。
本発明の双性イオン化合物は、第四級アンモニウムカチオンと、アニオンと、シロキサン骨格又はポリリン酸骨格と、を含むことを特徴とする。本発明の双性イオン化合物は、ゲル状態であるのが好ましい。
双性イオン化合物とは、カチオンとアニオンの両者を一分子内に含有する化合物である。酢酸アンモニウムなどのカチオンとアニオンとの単なる塩は双性イオン化合物ではない。本発明の双性イオン化合物は、第四級アンモニウムカチオンと、アニオンと、シロキサン骨格又はポリリン酸骨格とを、一分子内に含有する化合物である。
本発明において、第四級アンモニウムカチオンとは、窒素の4つの結合手すべてが炭素、酸素、硫黄又は窒素と結合しているカチオンを意味する。窒素と炭素等との結合は単結合でも良いし、二重結合でも良く、三重結合でも良い。化学的安定性の観点から、第四級アンモニウムカチオンは、窒素と炭素との4つの単結合で構成されているか、又は、窒素と炭素との2つの単結合と、窒素と炭素との1つの二重結合とで構成されているのが好ましい。
アニオンとしては酸に由来するアニオンが好ましい。酸に由来するアニオンとして、−SO で表されるスルホン酸アニオン、−CO で表されるカルボン酸アニオン、−PO(OH) で表されるホスホン酸アニオン、並びに、 (−O−)PO(OH)及び−O−PO(OH) で表されるリン酸アニオンを例示できる。
シロキサン骨格は、Si−O−Si結合を有する構造を意味する。ポリリン酸骨格は、−[P(=O)(OH)−O−]n−との構造を意味する。ここでnは2以上の整数である。本発明の双性イオン化合物は、シロキサン骨格又はポリリン酸骨格の存在に因り、電極からの離脱が抑制されて、電極の保護材料としての機能が付与されるといえる。
本発明の双性イオン化合物は、下記一般式1〜3のいずれかの構造を有する双性イオン化合物と表現することもできる。
一般式1:Skeleton−(L)−Cation−(L)−Anion
一般式2:Skeleton−(L)−Anion−(L)−Cation
一般式3:Anion−(L)−Skeleton−(L)−Cation
(Skeletonはシロキサン骨格又はポリリン酸骨格を意味する。Cationは第四級アンモニウムカチオンを意味する。Anionはアニオンを意味する。Lはそれぞれ独立にリンカーを意味し、リンカーは置換基を有していてもよい有機鎖である。nはそれぞれ独立に0又は1である。リンカーはSkeleton及び/又はCationと一緒に環を形成してもよい。)
リンカーの有機鎖は炭化水素鎖で構成されていてもよいし、炭化水素鎖とヘテロ元素で構成されていてもよい。ヘテロ元素としては、N、O、Sを例示できる。炭化水素鎖とヘテロ元素で構成される有機鎖として、炭化水素鎖−O−炭化水素鎖、炭化水素鎖−O−C=O−炭化水素鎖、炭化水素鎖−O−C=O−O−炭化水素鎖、炭化水素鎖−NH−炭化水素鎖、炭化水素鎖−NH−C=O−炭化水素鎖、炭化水素鎖−NH−C=O−NH−炭化水素鎖、炭化水素鎖−S−炭化水素鎖を例示できる。
リンカーの有機鎖は、飽和若しくは不飽和のいずれでもよく、又は直線状、分岐状若しくは環状のいずれであってもよいし、さらに、これらの状態が組み合わされたものであってもよい。
リンカーの有機鎖における炭素数及びヘテロ元素数は限定されない。有機鎖における炭素数及びヘテロ元素数の合計として、1〜18、2〜12又は3〜8を例示できる。CationとAnionとを連結するリンカーにおいては、CationとAnionとの間の最短距離の元素数として、1〜6の範囲内が好ましく、2〜4の範囲内がより好ましい。CationとAnionとの間の最短距離の元素数が過剰であれば、アニオンに対する第四級アンモニウムカチオンの作用が弱くなるため、リチウムイオンがアニオンにトラップされる状態となる虞がある。
リンカーについての「置換基を有していてもよい」との文言について説明する。「置換基を有していてもよい」有機鎖とは、有機鎖の水素の一つ若しくは複数が置換基で置換されている有機鎖、又は、特段の置換基を有さない有機鎖を意味する。
「置換基を有していてもよい」との文言における置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、不飽和シクロアルキル基、芳香族基、複素環基、ハロゲン、OH、SH、CN、SCN、OCN、ニトロ基、アルコキシ基、不飽和アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、シリル基等が挙げられる。これらの置換基はさらに置換基で置換されてもよい。また置換基が2つ以上ある場合、置換基は同一でも異なっていてもよい。置換基としては、リチウムイオンとの相互作用が弱いものが好ましい。
リンカーがCationと一緒に環を形成する場合には、環の骨格として、ピロール骨格、イミダゾール骨格、トリアゾール骨格、テトラゾール骨格、ピラゾール骨格、ピリジン骨格、ピラジン骨格、ピリミジン骨格、ピリダジン骨格、アゼピン骨格、ジアゼピン骨格、オキサゾール骨格、イソオキサゾール骨格、チアゾール骨格、イソチアゾール骨格、フラザン骨格、オキサジアゾール骨格、オキサジン骨格、オキサジアジン骨格、オキサゼピン骨格、オキサジアゼピン骨格、チアジアゾール骨格、チアジン骨格、チアジアジン骨格、チアゼピン骨格、チアジアゼピン骨格、アジリジン骨格、アゼチジン骨格、ピロリン骨格、ピロリジン骨格、イミダゾリン骨格、イミダゾリジン骨格、トリアゾリン骨格、トリアゾリジン骨格、テトラゾリン骨格、テトラゾリジン骨格、ピラゾリン骨格、ピラゾリジン骨格、ジヒドロピリジン骨格、テトラヒドロピリジン骨格、ピペリジン骨格、ジヒドロピラジン骨格、テトラヒドロピラジン骨格、ピペラジン骨格、ジヒドロピリミジン骨格、テトラヒドロピリミジン骨格、パーヒドロピリミジン骨格、ジヒドロピリダジン骨格、テトラヒドロピリダジン骨格、パーヒドロピリダジン骨格、ジヒドロアゼピン骨格、テトラヒドロアゼピン骨格、パーヒドロアゼピン骨格、ジヒドロジアゼピン骨格、テトラヒドロジアゼピン骨格、パーヒドロジアゼピン骨格、ジヒドロオキサゾール骨格、テトラヒドロオキサゾール骨格、ジヒドロイソオキサゾール骨格、テトラヒドロイソオキサゾール骨格、ジヒドロチアゾール骨格、テトラヒドロチアゾール骨格、ジヒドロイソチアゾール骨格、テトラヒドロイソチアゾール骨格、ジヒドロフラザン骨格、テトラヒドロフラザン骨格、ジヒドロオキサジアゾール骨格、テトラヒドロオキサジアゾール骨格、ジヒドロオキサジン骨格、テトラヒドロオキサジン骨格、ジヒドロオキサジアジン骨格、テトラヒドロオキサジアジン骨格、ジヒドロオキサゼピン骨格、テトラヒドロオキサゼピン骨格、パーヒドロオキサゼピン骨格、ジヒドロオキサジアゼピン骨格、テトラヒドロオキサジアゼピン骨格、パーヒドロオキサジアゼピン骨格、ジヒドロチアジアゾール骨格、テトラヒドロチアジアゾール骨格、ジヒドロチアジン骨格、テトラヒドロチアジン骨格、ジヒドロチアジアジン骨格、テトラヒドロチアジアジン骨格、ジヒドロチアゼピン骨格、テトラヒドロチアゼピン骨格、パーヒドロチアゼピン骨格、ジヒドロチアジアゼピン骨格、テトラヒドロチアジアゼピン骨格、パーヒドロチアジアゼピン骨格、モルホリン骨格、チオモルホリン骨格、インドール骨格、イソインドール骨格、インドリジン骨格、インダゾール骨格、キノリン骨格、イソキノリン骨格、キノリジン骨格、プリン骨格、フタラジン骨格、プテリジン骨格、ナフチリジン骨格、キノキサリン骨格、キナゾリン骨格、シンノリン骨格、ピロロピリジン骨格、ベンゾオキサゾール骨格、ベンゾチアゾール骨格、ベンゾイミダゾール骨格、インドリン骨格、イソインドリン骨格、ジヒドロインダゾール骨格、パーヒドロインダゾール骨格、ジヒドロキノリン骨格、テトラヒドロキノリン骨格、パーヒドロキノリン骨格、ジヒドロイソキノリン骨格、テトラヒドロイソキノリン骨格、パーヒドロイソキノリン骨格、ジヒドロフタラジン骨格、テトラヒドロフタラジン骨格、パーヒドロフタラジン骨格、ジヒドロナフチリジン骨格、テトラヒドロナフチリジン骨格、パーヒドロナフチリジン骨格、ジヒドロキノキサリン骨格、テトラヒドロキノキサリン骨格、パーヒドロキノキサリン骨格、ジヒドロキナゾリン骨格、テトラヒドロキナゾリン骨格、パーヒドロキナゾリン骨格、テトラヒドロピロロピリジン骨格、ジヒドロシンノリン骨格、テトラヒドロシンノリン骨格、パーヒドロシンノリン骨格、ジヒドロベンゾオキサジン骨格、ジヒドロベンゾチアジン骨格、ピラジノモルホリン骨格、ジヒドロベンゾオキサゾール骨格、パーヒドロベンゾオキサゾール骨格、ジヒドロベンゾチアゾール骨格、パーヒドロベンゾチアゾール骨格、ジヒドロベンゾイミダゾール骨格、パーヒドロベンゾイミダゾール骨格を例示できる。
次に、本発明の双性イオン化合物の製造方法について説明する。
本発明の双性イオン化合物は、第四級アンモニウムカチオン前駆体と、アニオン前駆体と、シロキサン骨格化合物若しくはポリリン酸骨格化合物又はシロキサン骨格前駆体若しくはポリリン酸骨格前駆体とを反応させることで製造できる。所望の本発明の双性イオン化合物に対して、レトロ合成法を用いて、原料となる化合物及び合成ルートを決定すればよい。
合成ルートとしては、アニオン前駆体や、シロキサン骨格化合物若しくはポリリン酸骨格化合物又はシロキサン骨格前駆体若しくはポリリン酸骨格前駆体に対して、第四級アンモニウムカチオン前駆体が求核攻撃して共有結合を形成する合成ルートを選択するのが合理的である。
第四級アンモニウムカチオン前駆体として、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物、及び第三級アミン化合物、並びに、ジアミン化合物などのポリアミン化合物を挙げることができる。第四級アンモニウムカチオン前駆体は、鎖状でもよいし、環状でもよく、また、飽和でもよいし、不飽和でもよい。
アニオン前駆体として、Anion−L−LG(LGは脱離基を意味する。Anion及びLについては一般式1〜3で説明したとおりである。)で表される化合物を例示できる。アニオン前駆体の脱離基としては、ハロゲンやメタンスルホナート、トリフルオロメタンスルホナートなどの一般に脱離基として認識されているものを用いればよい。また、アニオンがスルホン酸アニオンの場合には、アニオン前駆体として、ヒドロキシスルホン酸の環状エステルであるスルトンを採用するのが好ましい。スルトンはアミン化合物と反応して開環し、スルホン酸アニオンを形成できる。
シロキサン骨格化合物若しくはポリリン酸骨格化合物は、各骨格を有し、かつ、置換基として、求核攻撃可能な基又は求核攻撃を受け易い基を有する化合物である。求核攻撃可能な基としては、アミノ基、水酸基、−SH基を例示できる。求核攻撃を受け易い基としては、前段落で説明した脱離基、エステル基、−COX(Xはハロゲン)、−(CO)O、イソシアネート及びイソチオシアネートを例示できる。
シロキサン骨格前駆体は、Si−O−Si結合を有していないケイ素化合物であり、例えば、水と反応して分解しつつ、他のシロキサン骨格前駆体と縮合してSi−O−Si結合を形成し得る化合物である。シロキサン骨格前駆体として、Si(OR)、RSi(OR)、RSi(OR)を例示できる。なお、Rは、それぞれ独立に、水素又は置換基を有していてもよい炭化水素を意味する。また、シロキサン骨格前駆体として、置換基として求核攻撃可能な基又は求核反応を受け易い基を有するシラン化合物を例示できる。このようなシラン化合物として、各種のシランカップリング剤を用いてもよい。
ポリリン酸骨格前駆体は、−[P(=O)(OH)−O−]n−との骨格を有していないリン化合物であり、例えば、水と反応して分解しつつ、他のポリリン酸骨格前駆体と縮合して−[P(=O)(OH)−O−]n−との骨格を形成し得る化合物である。ポリリン酸骨格前駆体としては、五酸化二リンを例示できる。
シロキサン骨格前駆体又はポリリン酸骨格前駆体を用いる合成ルートにおいては、本発明の双性イオン化合物を合成する最終工程で、含水溶媒を用いてシロキサン骨格前駆体に由来するSi−OR結合やポリリン酸骨格前駆体に由来するP−O結合を加水分解しつつ縮合して、Si−O−Si結合や−[P(=O)(OH)−O−]n−との構造を形成させるのが好ましい。含水溶媒として、水と組み合わせる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノブチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ―ブチロラクトンを例示できる。また、最終工程は、製造温度100℃以上又は減圧条件下などの、反応系から水が除去される条件にて実施するのが好ましい。
製造方法の観点から、本発明の双性イオン化合物の一態様として、上記一般式1−1〜3−2で表されるモノマー化合物を重縮合したオリゴマー又はポリマーが例示される。
一般式1−1:(OR)3−xSi−(L)−Cation−(L)−Anion
一般式1−2:(HO)O−(L)−Cation−(L)−Anion
一般式2−1:(OR)3−xSi−(L)−Anion−(L)−Cation
一般式2−2:(HO)O−(L)−Anion−(L)−Cation
一般式3−1:Anion−(L)−(OR)2−xSi−(L)−Cation
一般式3−2:Anion−(L)−(HO)−(L)−Cation
(Rは、それぞれ独立に、水素又は置換基を有していてもよい炭化水素を意味する。xは0、1、2又は3である。Cationは第四級アンモニウムカチオンを意味する。Anionはアニオンを意味する。Lはそれぞれ独立にリンカーを意味し、リンカーは置換基を有していてもよい有機鎖である。nはそれぞれ独立に0又は1である。リンカーはCationと一緒に環を形成してもよい。)
本発明のリチウムイオン伝導性材料は、本発明の双性イオン化合物を含有する。本発明のリチウムイオン伝導性材料は、本発明の双性イオン化合物のみで構成されていてもよいが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、不純物や添加物が含まれていてもよい。本発明のリチウムイオン伝導性材料は、50質量%以上で本発明の双性イオン化合物を含むものが好ましく、70質量%以上で本発明の双性イオン化合物を含むものがより好ましく、90質量%以上で本発明の双性イオン化合物を含むものがさらに好ましい。
本発明のリチウムイオン伝導性材料は、その特性を生かして、種々の用途に使用できる。例えば、リチウムイオン二次電池などの蓄電装置において、正極、負極若しくはセパレータを被覆する保護層、又は、セパレータ自体若しくは固体電解質としての用途が想定される。また、リチウムイオン二次電池における正極活物質を含む正極活物質層又は負極活物質を含む負極活物質層に、本発明のリチウムイオン伝導性材料を配合してもよい。活物質層に本発明のリチウムイオン伝導性材料が配合されることで、活物質の表面の少なくとも一部に本発明のリチウムイオン伝導性材料が配置されるため、活物質と電解液との直接接触を低減することができる。
以下、本発明のリチウムイオン伝導性材料を具備する蓄電装置、本発明のリチウムイオン伝導性材料で被覆されている電極(以下、本発明の電極ということがある。)、本発明のリチウムイオン伝導性材料で被覆されている正極についての説明をする。
蓄電装置としては、一次電池、二次電池、キャパシタを例示できる。以下、本発明のリチウムイオン伝導性材料を具備する蓄電装置を本発明の蓄電装置と、本発明のリチウムイオン伝導性材料を具備する二次電池を本発明の二次電池と、本発明のリチウムイオン伝導性材料を具備するリチウムイオン二次電池を本発明のリチウムイオン二次電池ということがある。
以下、蓄電装置の代表例であるリチウムイオン二次電池についての説明を通じて、本発明の電極及び本発明の電極を具備する本発明の蓄電装置の説明をする。
本発明の電極は、正極でもよいし、負極でもよい。本発明の電極の具体的な態様は、集電体と、集電体の表面に形成された活物質層と、活物質層の表面に形成された本発明のリチウムイオン伝導性材料を含有する層(以下、単に「リチウムイオン伝導性材料層」という。)とを具備する構成である。
集電体は、リチウムイオン二次電池などの二次電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子伝導体をいう。集電体の材料は、使用する活物質に適した電圧に耐え得る金属であれば特に制限はない。集電体の材料としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。集電体は公知の保護層で被覆されていても良い。集電体の表面を公知の方法で処理したものを集電体として用いても良い。
正極の電位をリチウム基準で4V以上とする場合には、正極用集電体としてアルミニウムを採用するのが好ましい。
具体的には、正極用集電体として、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるものを用いるのが好ましい。ここでアルミニウムは、純アルミニウムを指し、純度99.0%以上のアルミニウムを純アルミニウムと称する。純アルミニウムに種々の元素を添加して合金としたものをアルミニウム合金と称する。アルミニウム合金としては、Al−Cu系、Al−Mn系、Al−Fe系、Al−Si系、Al−Mg系、Al−Mg−Si系、Al−Zn−Mg系が挙げられる。
また、アルミニウム又はアルミニウム合金として、具体的には、例えばJIS A1085、A1N30等のA1000系合金(純アルミニウム系)、JIS A3003、A3004等のA3000系合金(Al−Mn系)、JIS A8079、A8021等のA8000系合金(Al−Fe系)が挙げられる。
集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。集電体が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
活物質層は、リチウムイオンなどの電荷担体を吸蔵及び放出し得る活物質、並びに必要に応じて結着剤及び導電助剤を含む。活物質層には、活物質が活物質層全体の質量に対して、60〜99質量%で含まれるのが好ましく、70〜95質量%で含まれるのがより好ましい。
正極活物質としては、層状岩塩構造の一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Al、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)で表されるリチウム複合金属酸化物、LiMnOを挙げることができる。また、正極活物質として、LiMn等のスピネル構造の金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物と層状化合物の混合物で構成される固溶体、LiMPO、LiMVO又はLiMSiO(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることができる。さらに、正極活物質として、LiFePOFなどのLiMPOF(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBOなどのLiMBO(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物を挙げることができる。正極活物質として用いられるいずれの金属酸化物も上記の組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも使用可能である。また、正極活物質として、電荷担体(例えば充放電に寄与するリチウムイオン)を含まないものを用いても良い。例えば、硫黄単体、硫黄と炭素を複合化した化合物、TiSなどの金属硫化物、V、MnOなどの酸化物、ポリアニリン及びアントラキノン並びにこれら芳香族を化学構造に含む化合物、共役二酢酸系有機物などの共役系材料、その他公知の材料を用いることもできる。さらに、ニトロキシド、ニトロニルニトロキシド、ガルビノキシル、フェノキシルなどの安定なラジカルを有する化合物を正極活物質として採用してもよい。リチウム等の電荷担体を含まない正極活物質材料を用いる場合には、正極及び/又は負極に、公知の方法により、予め電荷担体を添加しておく必要がある。電荷担体は、イオンの状態で添加しても良いし、金属等の非イオンの状態で添加しても良い。例えば、電荷担体がリチウムである場合には、リチウム箔を正極及び/又は負極に貼り付けるなどして一体化しても良い。
高容量及び耐久性などに優れる点から、正極活物質として、層状岩塩構造の一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Al、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3) で表されるリチウム複合金属酸化物を採用することが好ましい。
上記一般式において、b、c、dの値は、上記条件を満足するものであれば特に制限はないが、0<b<1、0<c<1、0<d<1であるものが良く、また、b、c、dの少なくともいずれか一つが10/100<b<90/100、10/100<c<90/100、5/100<d<70/100の範囲であることが好ましく、20/100<b<80/100、12/100<c<70/100、10/100<d<60/100の範囲であることがより好ましく、30/100<b<70/100、15/100<c<50/100、12/100<d<50/100の範囲であることがさらに好ましい。
a、e、fについては、上記一般式で規定する範囲内の数値であればよく、好ましくは0.5≦a≦1.5、0≦e<0.2、1.8≦f≦2.5、より好ましくは0.8≦a≦1.3、0≦e<0.1、1.9≦f≦2.1をそれぞれ例示することができる。
高容量及び耐久性などに優れる点から、正極活物質として、スピネル構造のLiMn2―y(Aは、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、Geから選ばれる少なくとも1の元素、及び、Niなどの遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素から選択される。0<x≦2.2、0≦y≦1)を例示できる。xの値の範囲としては、0.5≦x≦1.8、0.7≦x≦1.5、0.9≦x≦1.2を例示でき、yの値の範囲としては、0≦y≦0.8、0≦y≦0.6を例示できる。具体的なスピネル構造の化合物として、LiMn、LiMn1.5Ni0.5を例示できる。
他の具体的な正極活物質として、LiFePO、LiFeSiO、LiCoPO、LiCoPO、LiMnPO、LiMnSiO、LiCoPOFを例示できる。他の具体的な正極活物質として、LiMnO−LiCoOを例示できる。
負極活物質としては、電荷担体を吸蔵及び放出し得る材料が使用可能である。したがって、リチウムイオンなどの電荷担体を吸蔵及び放出可能である単体、合金又は化合物であれば特に限定はない。たとえば、負極活物質としてLiや、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫などの14族元素、アルミニウム、インジウムなどの13族元素、亜鉛、カドミウムなどの12族元素、アンチモン、ビスマスなどの15族元素、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、銀、金などの11族元素をそれぞれ単体で採用すればよい。合金又は化合物の具体例としては、Ag−Sn合金、Cu−Sn合金、Co−Sn合金等の錫系材料、各種黒鉛などの炭素系材料、ケイ素単体と二酸化ケイ素に不均化するSiO(0.3≦x≦1.6)などのケイ素系材料、ケイ素単体若しくはケイ素系材料と炭素系材料を組み合わせた複合体が挙げられる。また、負極活物質して、Nb、TiO、LiTi12、WO、MoO、Fe等の酸化物、又は、Li3−xN(M=Co、Ni、Cu)で表される窒化物を採用しても良い。負極活物質として、これらのものの一種以上を使用することができる。
高容量化の可能性の点から、好ましい負極活物質として、黒鉛、Si含有材料、Sn含有材料を挙げることができる。
Si含有材料の具体例として、Si単体や、Si相とケイ素酸化物相との2相に不均化されたSiO(0.3≦x≦1.6)を例示できる。SiOにおけるSi相は、リチウムイオンを吸蔵及び放出でき、二次電池の充放電に伴って体積変化する。ケイ素酸化物相はSi相に比べて充放電に伴う体積変化が少ない。つまり、負極活物質としてのSiOは、Si相により高容量を実現するとともに、ケイ素酸化物相を有することにより負極活物質全体の体積変化を抑制する。なお、xが下限値未満であると、Siの比率が過大になるため、充放電時の体積変化が大きくなりすぎて二次電池のサイクル特性が低下する。一方、xが上限値を超えると、Si比率が過小になってエネルギー密度が低下する。xの範囲は0.5≦x≦1.5であるのがより好ましく、0.7≦x≦1.2であるのがさらに好ましい。
なお、上記したSiOにおいては、リチウムイオン二次電池の充放電時にリチウムとSi相のケイ素とによる合金化反応が生じると考えられている。そして、この合金化反応がリチウムイオン二次電池の充放電に寄与すると考えられている。後述するSn含有材料についても、同様に、スズとリチウムとの合金化反応によって充放電できると考えられている。
Sn含有材料の具体例として、Sn単体、Cu−SnやCo−Snなどのスズ合金、アモルファススズ酸化物、スズケイ素酸化物を例示できる。アモルファススズ酸化物としてはSnB0.40.63.1を例示でき、スズケイ素酸化物としてはSnSiOを例示できる。
Si含有材料、及び、Sn含有材料は、炭素材料と複合化して負極活物質とすることが好ましい。複合化に因り、特にケイ素及び/又はスズの構造が安定し、負極の耐久性が向上する。上記複合化は、既知の方法で行えば良い。複合化に用いられる炭素材料としては、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等を採用すればよい。黒鉛は、天然黒鉛でもよく、人造黒鉛でもよい。
Si含有材料の具体例として、国際公開第2014/080608号などに開示されるシリコン材料(以下、単に「シリコン材料」という。)を挙げることができる。
シリコン材料は、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するものである。シリコン材料は、例えば、CaSiと酸とを反応させてポリシランを主成分とする層状シリコン化合物を合成する工程、さらに、当該層状シリコン化合物を300℃以上で加熱して水素を離脱させる工程を経て製造されるものである。
シリコン材料の製造方法を、酸として塩化水素を用いた場合の理想的な反応式で示すと以下のとおりとなる。
3CaSi+6HCl → Si+3CaCl
Si → 6Si+3H
ただし、ポリシランであるSiを合成する上段の反応では、副生物や不純物除去の観点から、通常、反応溶媒として水が用いられる。そして、Siは水と反応し得るため、上段の反応を含む層状シリコン化合物を合成する工程において、層状シリコン化合物がSiのみを含むものとして製造されることはほとんどなく、層状シリコン化合物はSi(OH)(Xは酸のアニオン由来の元素若しくは基、s+t+u=6、0<s<6、0<t<6、0<u<6)で表されるものとして製造される。なお、上記の化学式においては、残存し得るCaなどの不可避不純物については、考慮していない。そして、当該層状シリコン化合物を加熱して得られるシリコン材料も、酸素や酸のアニオン由来の元素を含む。
既述のとおり、シリコン材料は、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有する。リチウムイオン等の電荷担体が効率的に吸蔵及び放出されるためには、板状シリコン体は厚さが10nm〜100nmの範囲内のものが好ましく、20nm〜50nmの範囲内のものがより好ましい。板状シリコン体の長手方向の長さは、0.1μm〜50μmの範囲内のものが好ましい。また、板状シリコン体は、(長手方向の長さ)/(厚さ)が2〜1000の範囲内であるのが好ましい。板状シリコン体の積層構造は走査型電子顕微鏡などによる観察で確認できる。また、この積層構造は、原料のCaSiにおけるSi層の名残りであると考えられる。
シリコン材料には、アモルファスシリコン及び/又はシリコン結晶子が含まれるのが好ましい。特に、上記板状シリコン体において、アモルファスシリコンをマトリックスとし、シリコン結晶子が当該マトリックス中に点在している状態が好ましい。シリコン結晶子のサイズは、0.5nm〜300nmの範囲内が好ましく、1nm〜100nmの範囲内がより好ましく、1nm〜50nmの範囲内がさらに好ましく、1nm〜10nmの範囲内が特に好ましい。なお、シリコン結晶子のサイズは、シリコン材料に対してX線回折測定を行い、得られたX線回折チャートのSi(111)面の回折ピークの半値幅を用いたシェラーの式から算出される。
シリコン材料に含まれる板状シリコン体、アモルファスシリコン及びシリコン結晶子の存在量や大きさは、主に加熱温度や加熱時間に左右される。加熱温度は、350℃〜950℃の範囲内が好ましく、400℃〜900℃の範囲内がより好ましい。
シリコン材料は炭素で被覆されていてもよい。炭素で被覆されたシリコン材料は導電性に優れる。
シリコン材料の平均粒子径は、2〜7μmの範囲内が好ましく、2.5〜6.5μmの範囲内がより好ましい。平均粒子径が小さすぎるシリコン材料を用いると、凝集性や濡れ性の観点から、負極製造が困難になる場合がある。具体的には、負極製造時に調製するスラリー中において、平均粒子径が小さすぎるシリコン材料が凝集する場合がある。他方、平均粒子径が大きすぎるシリコン材料を用いた負極を具備するリチウムイオン二次電池は、好適な充放電ができない場合がある。平均粒子径が大きすぎるシリコン材料においては、リチウムイオンが当該シリコン材料の内部まで十分に拡散し得ないことが原因と推測される。なお、本明細書における平均粒子径とは、一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置で試料を測定した場合におけるD50を意味する。
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴムなどの公知のものを採用すればよい。
また、国際公開第2016/063882号に開示される、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸などのカルボキシル基含有ポリマーをジアミンなどのポリアミンで架橋した架橋ポリマーを、結着剤として用いてもよい。
架橋ポリマーに用いられるジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の含飽和炭素環ジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ベンジジン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
活物質層中の結着剤の配合割合は、質量比で、活物質:結着剤=1:0.005〜1:0.3であるのが好ましい。結着剤が少なすぎると電極の成形性が低下し、また、結着剤が多すぎると電極のエネルギー密度が低くなるためである。
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、電極の導電性が不足する場合に任意に加えればよく、電極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤としては化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber)、および各種金属粒子などが例示される。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどが例示される。これらの導電助剤を単独又は二種以上組み合わせて活物質層に添加することができる。活物質層中の導電助剤の配合割合は、質量比で、活物質:導電助剤=1:0.01〜1:0.5であるのが好ましい。導電助剤が少なすぎると効率のよい導電パスを形成できず、また、導電助剤が多すぎると活物質層の成形性が悪くなるとともに電極のエネルギー密度が低くなるためである。
集電体の表面に活物質層を形成させるには、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、集電体の表面に活物質を塗布すればよい。具体的には、活物質、結着剤、溶剤、並びに必要に応じて導電助剤を混合してスラリーにしてから、当該スラリーを集電体の表面に塗布後、乾燥する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮しても良い。
活物質層の表面に形成されたリチウムイオン伝導性材料層について説明する。リチウムイオン伝導性材料層は活物質層の表面に形成されることで、電解液と活物質との直接接触を抑制することができるため、正極活物質、負極活物質又は電解液の劣化を防止できる。リチウムイオン伝導性材料層が正極活物質層の表面に形成された正極の場合には、主に電解液の酸化分解を抑制することができ、また、リチウムイオン伝導性材料層が負極活物質層の表面に形成された負極の場合には、主に電解液の還元分解を抑制することができる。特に、正極活物質層がリチウムイオン伝導性材料層で被覆された状態の本発明の正極は、4.3V以上、4.5V以上又は4.7V以上の高電位条件下での使用も可能である。
リチウムイオン伝導性材料層の厚みは特に制限が無いが、0.01〜20μmが好ましく、0.05〜15μmがより好ましく、0.1〜10μmがさらに好ましく、0.5〜5μmが特に好ましい。
活物質層の表面にリチウムイオン伝導性材料層を設けるには、例えば、本発明の双性イオン化合物を合成する最終工程の反応液を、適宜適切な濃度に調製して、活物質層の表面に塗布する塗布工程を実施した後、乾燥工程を実施すれば良い。塗布工程では、ロールコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いればよい。乾燥工程は、常圧条件で行っても良いし、真空乾燥機を用いた減圧条件下で行っても良い。乾燥温度はリチウムイオン伝導性材料が分解しない範囲内で適宜設定すればよく、反応溶媒の沸点以上の温度が好ましい。乾燥時間は塗布量及び乾燥温度に応じ適宜設定すればよい。乾燥工程に因り、水が除去されることで、本発明の双性イオン化合物が最終的に合成されてもよい。
本発明の二次電池は本発明の電極を具備する。本発明の二次電池において、正極及び負極の両者が本発明の電極であってもよいし、電極のいずれか一方が本発明の電極であって、他方がリチウムイオン伝導性材料層を具備しない一般的な電極であってもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池における電極以外の具体的な構成として、セパレータ及び電解液を挙げることができる。
セパレータは、正極と負極とを隔離し、両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータとしては、公知のものを採用すればよく、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子、セラミックスなどの電気絶縁性材料を1種若しくは複数用いた多孔体、不織布、織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としてもよい。
電解液は、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質とを含んでいる。
非水溶媒としては、環状エステル類、鎖状エステル類、エーテル類等が使用できる。環状エステル類としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ガンマブチロラクトン、ビニレンカーボネート、2−メチル−ガンマブチロラクトン、アセチル−ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトンを例示できる。鎖状エステル類としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル等を例示できる。エーテル類としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンを例示できる。非水溶媒としては、上記具体的な溶媒の化学構造のうち一部又は全部の水素がフッ素に置換した化合物を採用しても良い。
電解質としては、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO等のリチウム塩を例示できる。
電解液としては、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの非水溶媒に、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSOなどのリチウム塩を0.5mol/Lから1.7mol/L程度の濃度で溶解させた溶液を例示できる。
本発明のリチウムイオン二次電池の具体的な製造方法について述べる。
例えば、正極と負極とでセパレータを挟持して電極体とする。電極体は、正極、セパレータ及び負極を重ねた積層型、又は、正極、セパレータ及び負極の積層体を捲いた捲回型のいずれの型にしても良い。正極の集電体および負極の集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までを、集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に電解液を加えてリチウムイオン二次電池とするとよい。
本発明のリチウムイオン二次電池の形状は特に限定されるものでなく、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、車両に搭載してもよい。車両は、その動力源の全部あるいは一部にリチウムイオン二次電池による電気エネルギーを使用している車両であればよく、例えば、電気車両、ハイブリッド車両などであるとよい。車両にリチウムイオン二次電池を搭載する場合には、リチウムイオン二次電池を複数直列に接続して組電池とするとよい。リチウムイオン二次電池を搭載する機器としては、車両以外にも、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。さらに、本発明のリチウムイオン二次電池は、風力発電、太陽光発電、水力発電その他電力系統の蓄電装置及び電力平滑化装置、船舶等の動力及び/又は補機類の電力供給源、航空機、宇宙船等の動力及び/又は補機類の電力供給源、電気を動力源に用いない車両の補助用電源、移動式の家庭用ロボットの電源、システムバックアップ用電源、無停電電源装置の電源、電動車両用充電ステーションなどにおいて充電に必要な電力を一時蓄える蓄電装置に用いてもよい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、実施例及び比較例などを示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
0.681g(10mmol)のイミダゾールをジクロロメタン5mLに溶解させて、イミダゾール溶液を製造した。室温及び撹拌条件下、1.362g(10mmol)の2,4−ブタンスルトンをジクロロメタン5mLに溶解させた溶液に、上記イミダゾール溶液を滴下し、得られた反応液を12時間撹拌して反応液Aを製造した。反応液Aからジクロロメタンを留去して、固体の中間体Aを得た。中間体Aの赤外吸収スペクトルを図1に示す。なお、中間体Aは潮解性であった。
イミダゾールと2,4−ブタンスルトンが反応して中間体Aが得られる反応式を以下に示す。
Figure 0006926463
10mLの95%エタノールに0.204g(1mmol)の中間体Aを溶解させて、さらに、0.208g(1mmol)のテトラエトキシシランを加え、室温で6時間撹拌して、反応液1を得た。
反応液1をアルミニウム箔の表面に膜状に塗布し、次いで、120℃で2時間加熱して水を含む溶媒を除去することで、膜状の実施例1のリチウムイオン伝導性材料を製造した。実施例1のリチウムイオン伝導性材料の赤外吸収スペクトルを図2に示す。図2の赤外吸収スペクトルからは、930cm−1付近にSi−N結合に由来すると考えられるピークが観察された。
中間体Aとテトラエトキシシランが反応し、さらに水が反応した上で、エタノールと水が留去されて、実施例1のリチウムイオン伝導性材料が得られる反応において、想定される反応式の一つを以下に示す。以下の反応式中、RはH、C又はSiであり、nは2以上の整数である。
Figure 0006926463
<正極及びリチウムイオン二次電池の製造>
反応液1を用いて、実施例1のリチウムイオン伝導性材料で被覆された実施例1の正極、及び、実施例1のリチウムイオン伝導性材料を具備する実施例1のリチウムイオン二次電池を以下のとおり製造した。
正極活物質としてスピネル構造のLiMn1.5Ni0.5を1.8質量部、導電助剤としてアセチレンブラックを0.1質量部、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンを8質量%で含むN−メチル−2−ピロリドン溶液を1.25質量部、及び適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリーを製造した。正極用集電体として厚み15μmのアルミニウム箔を準備した。アルミニウム箔の表面に上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布されたアルミニウム箔を乾燥することで、N−メチル−2−ピロリドンを除去した。その後、当該アルミニウム箔をプレスし接合物を得た。得られた接合物を乾燥機で加熱乾燥して、正極活物質層が形成されたアルミニウム箔からなる正極前駆体を製造した。正極前駆体の厚みは35μmであった。
正極前駆体における正極活物質層の表面に反応液1を厚み50μmで膜状に塗布し、次いで、120℃で2時間加熱して水を含む溶媒を除去することで、実施例1のリチウムイオン伝導性材料で被覆された実施例1の正極を製造した。
実施例1の正極を径15mmに裁断し、評価極とした。厚さ500μmの金属リチウム箔を径16mmに裁断し対極とした。セパレータとしてガラスフィルター(ヘキストセラニーズ社)及び単層ポリプロピレンであるcelgard2400(ポリポア株式会社)を準備した。また、エチレンカーボネート50体積部及びジエチルカーボネート50体積部を混合した溶媒にLiPF6を1mol/Lで溶解した電解液を準備した。対極、ガラスフィルター、celgard2400、評価極の順に、2種のセパレータを対極と評価極で挟持し電極体とした。この電極体をコイン型電池ケースCR2032(宝泉株式会社)に収容し、さらに電解液を注入した後に電池ケースを密閉し、コイン型電池を製造した。これを実施例1のリチウムイオン二次電池とした。
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、中間体Aを製造した。10mLの95%エタノールに0.408g(2mmol)の中間体Aを溶解させて、さらに、0.208g(1mmol)のテトラエトキシシランを加え、室温で6時間撹拌して、反応液2を得た。
反応液1に替えて、反応液2を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2のリチウムイオン伝導性材料で被覆された実施例2の正極、及び、実施例2のリチウムイオン伝導性材料を具備する実施例2のリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例3)
実施例1と同様の方法で、中間体Aを製造した。10mLの95%エタノールに0.408g(2mmol)の中間体Aを溶解させて、0℃に冷却した。この溶液に、0.284g(1mmol)の五酸化二リンを加え、室温で6時間撹拌して、反応液3を得た。
反応液1に替えて、反応液3を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3のリチウムイオン伝導性材料で被覆された実施例3の正極、及び、実施例3のリチウムイオン伝導性材料を具備する実施例3のリチウムイオン二次電池を製造した。
中間体Aと五酸化二リンが反応し、水が留去されて、実施例3のリチウムイオン伝導性材料が得られる反応において、想定される反応式の一つを以下に示す。以下の反応式中、nは2以上の整数である。
Figure 0006926463
(実施例4)
実施例1と同様の方法で、中間体Aを製造した。10mLの95%エタノールに0.816g(4mmol)の中間体Aを溶解させて、さらに、0.284g(1mmol)の五酸化二リンを加え、室温で6時間撹拌して、反応液4を得た。
反応液1に替えて、反応液4を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4のリチウムイオン伝導性材料で被覆された実施例4の正極、及び、実施例4のリチウムイオン伝導性材料を具備する実施例4のリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例5)
0.681g(10mmol)のイミダゾールをジクロロメタン5mLに溶解させて、イミダゾール溶液を製造した。撹拌条件下、2.363g(10mmol)の3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランをジクロロメタン5mLに溶解させた溶液に、上記イミダゾール溶液を室温下で滴下し、得られた反応液を6時間撹拌して反応液5−1を製造した。
1.362g(10mmol)の2,4−ブタンスルトンをジクロロメタン5mLに溶解させた2,4−ブタンスルトン溶液を製造した。撹拌条件下、反応液5−1に2,4−ブタンスルトン溶液を室温下で滴下して、得られた反応液を12時間撹拌して反応液5−2を製造した。反応液5−2からジクロロメタンを留去して、中間体5を得た。
3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランと、イミダゾールと、2,4−ブタンスルトンが反応して中間体5が得られる反応式を以下に示す。
Figure 0006926463
95%エタノールに中間体5を溶解して、中間体5溶液とした。反応液1に替えて、中間体5溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例5のリチウムイオン伝導性材料で被覆された実施例5の正極、及び、実施例5のリチウムイオン伝導性材料を具備する実施例5のリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例6)
0.681g(10mmol)のイミダゾールをジクロロメタン5mLに溶解させて、イミダゾール溶液を製造した。撹拌条件下、2.053g(10mmol)の3−(トリメトキシシリル)プロピルイソシアナートをジクロロメタン5mLに溶解させた溶液に、上記イミダゾール溶液を室温下で滴下し、得られた反応液を12時間撹拌して反応液6−1を製造した。
1.362g(10mmol)の2,4−ブタンスルトンをジクロロメタン5mLに溶解させた2,4−ブタンスルトン溶液を製造した。撹拌条件下、反応液6−1に2,4−ブタンスルトン溶液を室温下で滴下して、得られた反応液を12時間撹拌して反応液6−2を製造した。反応液6−2からジクロロメタンを留去して、中間体6を得た。
3−(トリメトキシシリル)プロピルイソシアナートと、イミダゾールと、2,4−ブタンスルトンが反応して中間体6が得られる反応式を以下に示す。
Figure 0006926463
95%エタノールに中間体6を溶解して、中間体6溶液とした。反応液1に替えて、中間体6溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例6のリチウムイオン伝導性材料で被覆された実施例6の正極、及び、実施例6のリチウムイオン伝導性材料を具備する実施例6のリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例7)
0.88g(10mmol)のN,N−ジメチルエチレンジアミンをジクロロメタン5mLに溶解させて、N,N−ジメチルエチレンジアミン溶液を製造した。撹拌条件下、2.053g(10mmol)の3−(トリメトキシシリル)プロピルイソシアナートをジクロロメタン5mLに溶解させた溶液に、上記N,N−ジメチルエチレンジアミン溶液を室温下で滴下し、得られた反応液を12時間撹拌して反応液7−1を製造した。
1.362g(10mmol)の2,4−ブタンスルトンをジクロロメタン5mLに溶解させた2,4−ブタンスルトン溶液を製造した。撹拌条件下、反応液7−1に2,4−ブタンスルトン溶液を室温下で滴下して、得られた反応液を12時間撹拌して反応液7−2を製造した。反応液7−2からジクロロメタンを留去して、中間体7を得た。
3−(トリメトキシシリル)プロピルイソシアナートと、N,N−ジメチルエチレンジアミンと、2,4−ブタンスルトンが反応して中間体7が得られる反応式を以下に示す。
Figure 0006926463
95%エタノールに中間体7を溶解して、中間体7溶液とした。反応液1に替えて、中間体7溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例7のリチウムイオン伝導性材料で被覆された実施例7の正極、及び、実施例7のリチウムイオン伝導性材料を具備する実施例7のリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例1)
実施例1に記載の正極前駆体をそのまま比較例1の正極とし、これを評価極として用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1のリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例2)
10mLの95%エタノールに0.408g(2mmol)の中間体Aを溶解させた中間体A溶液を製造した。反応液1に替えて、中間体A溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例2の正極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例3)
10mLの95%エタノールに0.208g(1mmol)のテトラエトキシシランを溶解させたテトラエトキシシラン溶液を製造した。反応液1に替えて、テトラエトキシシラン溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例3の正極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例4)
10mLの95%エタノールに0.284g(1mmol)の五酸化二リンを溶解させた溶液を製造した。反応液1に替えて、当該溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例4の正極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
(評価例1)
各リチウムイオン二次電池につき、0.05Cレートの一定電流で4.9Vまで充電を行い、その後、0.05Cレートの一定電流で3.5Vまで放電を行った(以下、初期充放電という。)。以下の式に従い、初期効率を算出した。
初期効率(%)=100×(放電容量)/(充電容量)
次に、初期充放電後の各リチウムイオン二次電池につき、0.05Cレートの一定電流で4.9Vまで充電を行い、その後、0.5Cレートの一定電流で3.5Vまで放電を行った。以下の式に従い、レート特性を算出した。
レート特性(%)=100×(0.5Cレートでの放電容量)/(0.05Cレートでの放電容量)
また、初期充放電後の各リチウムイオン二次電池につき、0.05Cレートの一定電流で4.9Vまで充電を行い、その後、0.05Cレートの一定電流で3.5Vまで放電を行った。その後、0.3Cレートの一定電流で4.9Vまで充電を行い、その後、0.3Cレートの一定電流で3.5Vまで放電を行うとの充放電サイクルを20回繰り返した。以下の式に従い、容量維持率を算出した。
容量維持率(%)=100×(20サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)
以上の試験結果を表1に示す。
Figure 0006926463
表1における略号の意味は以下のとおりである。
TEOS:テトラエトキシシラン
表1の結果から、実施例のリチウムイオン伝導性材料を具備する実施例のリチウムイオン二次電池が、いずれも好適に充放電したことが裏付けられた。この結果から、実施例のリチウムイオン伝導性材料は、好適にリチウムイオンを伝導したことが裏付けられたといえる。また、実施例のリチウムイオン二次電池は、比較例のリチウムイオン二次電池と比較して、同程度又はそれ以上の電池特性を示したといえる。

Claims (6)

  1. 下記一般式1〜3のいずれかの構造を有する双極性イオン化合物を含有するリチウムイオン伝導性材料で被覆されている電極。
    一般式1:S keleton −(L) −C ation −(L) −A nion
    一般式2:S keleton −(L) −A nion −(L) −C ation
    一般式3:A nion −(L) −S keleton −(L) −C ation
    (前記式中、S keleton はシロキサン骨格又はポリリン酸骨格を意味する。C ation は第四級アンモニウムカチオンを意味する。A nion はアニオンを意味する。Lはそれぞれ独立にリンカーを意味し、リンカーは置換基を有していてもよい有機鎖である。上記一般式1〜3中のnはそれぞれ独立に0又は1である。リンカーはS keleton 及び/又はC ation と一緒に環を形成してもよい。
    前記リンカーの有機鎖は、炭素数及びヘテロ元素数の合計が2〜18であり、炭化水素鎖−O−炭化水素鎖、炭化水素鎖−O−C=O−炭化水素鎖、炭化水素鎖−O−C=O−O−炭化水素鎖、炭化水素鎖−NH−炭化水素鎖、炭化水素鎖−NH−C=O−炭化水素鎖、炭化水素鎖−NH−C=O−NH−炭化水素鎖、炭化水素鎖−S−炭化水素鎖のいずれかである。
    前記シロキサン骨格はSi−O−Si結合を有し、前記ポリリン酸骨格は−[P(=O)(OH)−O−] −の構造を有する。前記ポリリン酸骨格中のnは2以上の整数である。)
  2. 前記リンカーの有機鎖は、直鎖状、分岐状若しくは環状のいずれか、又はこれらの状態が組み合わされたものから独立して選択される請求項1に記載の電極。
  3. 前記リンカーの有機鎖が直鎖状若しくは分岐状であるか、又は隣接する前記(L) 及び前記C ation が一緒に環を形成しているものであるか、若しくはこれらの状態が組み合わされたものうちから独立して選択され、
    隣接する前記(L) 及び前記C ation と一緒に環を形成している場合は、その形成する環が、ピロール骨格、イミダゾール骨格、トリアゾール骨格、テトラゾール骨格、ピラゾール骨格、ピリジン骨格、ピラジン骨格、ピリミジン骨格、ピリダジン骨格、アゼピン骨格、ジアゼピン骨格、オキサゾール骨格、イソオキサゾール骨格、チアゾール骨格、イソチアゾール骨格、フラザン骨格、オキサジアゾール骨格、オキサジン骨格、オキサジアジン骨格、オキサゼピン骨格、オキサジアゼピン骨格、チアジアゾール骨格、チアジン骨格、チアジアジン骨格、チアゼピン骨格、チアジアゼピン骨格、アジリジン骨格、アゼチジン骨格、ピロリン骨格、ピロリジン骨格、イミダゾリン骨格、イミダゾリジン骨格、トリアゾリン骨格、トリアゾリジン骨格、テトラゾリン骨格、テトラゾリジン骨格、ピラゾリン骨格、ピラゾリジン骨格、ジヒドロピリジン骨格、テトラヒドロピリジン骨格、ピペリジン骨格、ジヒドロピラジン骨格、テトラヒドロピラジン骨格、ピペラジン骨格、ジヒドロピリミジン骨格、テトラヒドロピリミジン骨格、パーヒドロピリミジン骨格、ジヒドロピリダジン骨格、テトラヒドロピリダジン骨格、パーヒドロピリダジン骨格、ジヒドロアゼピン骨格、テトラヒドロアゼピン骨格、パーヒドロアゼピン骨格、ジヒドロジアゼピン骨格、テトラヒドロジアゼピン骨格、パーヒドロジアゼピン骨格、ジヒドロオキサゾール骨格、テトラヒドロオキサゾール骨格、ジヒドロイソオキサゾール骨格、テトラヒドロイソオキサゾール骨格、ジヒドロチアゾール骨格、テトラヒドロチアゾール骨格、ジヒドロイソチアゾール骨格、テトラヒドロイソチアゾール骨格、ジヒドロフラザン骨格、テトラヒドロフラザン骨格、ジヒドロオキサジアゾール骨格、テトラヒドロオキサジアゾール骨格、ジヒドロオキサジン骨格、テトラヒドロオキサジン骨格、ジヒドロオキサジアジン骨格、テトラヒドロオキサジアジン骨格、ジヒドロオキサゼピン骨格、テトラヒドロオキサゼピン骨格、パーヒドロオキサゼピン骨格、ジヒドロオキサジアゼピン骨格、テトラヒドロオキサジアゼピン骨格、パーヒドロオキサジアゼピン骨格、ジヒドロチアジアゾール骨格、テトラヒドロチアジアゾール骨格、ジヒドロチアジン骨格、テトラヒドロチアジン骨格、ジヒドロチアジアジン骨格、テトラヒドロチアジアジン骨格、ジヒドロチアゼピン骨格、テトラヒドロチアゼピン骨格、パーヒドロチアゼピン骨格、ジヒドロチアジアゼピン骨格、テトラヒドロチアジアゼピン骨格、パーヒドロチアジアゼピン骨格、モルホリン骨格、チオモルホリン骨格、インドール骨格、イソインドール骨格、インドリジン骨格、インダゾール骨格、キノリン骨格、イソキノリン骨格、キノリジン骨格、プリン骨格、フタラジン骨格、プテリジン骨格、ナフチリジン骨格、キノキサリン骨格、キナゾリン骨格、シンノリン骨格、ピロロピリジン骨格、ベンゾオキサゾール骨格、ベンゾチアゾール骨格、ベンゾイミダゾール骨格、インドリン骨格、イソインドリン骨格、ジヒドロインダゾール骨格、パーヒドロインダゾール骨格、ジヒドロキノリン骨格、テトラヒドロキノリン骨格、パーヒドロキノリン骨格、ジヒドロイソキノリン骨格、テトラヒドロイソキノリン骨格、パーヒドロイソキノリン骨格、ジヒドロフタラジン骨格、テトラヒドロフタラジン骨格、パーヒドロフタラジン骨格、ジヒドロナフチリジン骨格、テトラヒドロナフチリジン骨格、パーヒドロナフチリジン骨格、ジヒドロキノキサリン骨格、テトラヒドロキノキサリン骨格、パーヒドロキノキサリン骨格、ジヒドロキナゾリン骨格、テトラヒドロキナゾリン骨格、パーヒドロキナゾリン骨格、テトラヒドロピロロピリジン骨格、ジヒドロシンノリン骨格、テトラヒドロシンノリン骨格、パーヒドロシンノリン骨格、ジヒドロベンゾオキサジン骨格、ジヒドロベンゾチアジン骨格、ピラジノモルホリン骨格、ジヒドロベンゾオキサゾール骨格、パーヒドロベンゾオキサゾール骨格、ジヒドロベンゾチアゾール骨格、パーヒドロベンゾチアゾール骨格、ジヒドロベンゾイミダゾール骨格、及びパーヒドロベンゾイミダゾール骨格の何れかの骨格をもつ請求項1に記載の電極。
  4. 前記(L) 及び前記C ation が一緒に環を形成している場合、前記双極性イオン化合物は、
    Figure 0006926463
    の部分構造を有する請求項3に記載の電極。
  5. 前記アニオンがスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ホスホン酸アニオン又はリン酸アニオンである請求項1〜の何れか1項に記載の電極
  6. 前記リンカーの有機鎖の炭素数及びヘテロ元素数の合計が4〜12である請求項1〜5の何れか1項に記載の電極。
JP2016243719A 2016-12-15 2016-12-15 電極 Active JP6926463B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016243719A JP6926463B2 (ja) 2016-12-15 2016-12-15 電極

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016243719A JP6926463B2 (ja) 2016-12-15 2016-12-15 電極

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018095621A JP2018095621A (ja) 2018-06-21
JP6926463B2 true JP6926463B2 (ja) 2021-08-25

Family

ID=62634545

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016243719A Active JP6926463B2 (ja) 2016-12-15 2016-12-15 電極

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6926463B2 (ja)

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07101965A (ja) * 1993-10-04 1995-04-18 Nippon Oil & Fats Co Ltd アルコキシシラン化合物
JP4245336B2 (ja) * 2002-11-25 2009-03-25 株式会社資生堂 ホスホリルコリン基を有するポリシロキサン及びその製造方法
DE102005051587A1 (de) * 2005-10-27 2007-05-03 Consortium für elektrochemische Industrie GmbH Zwitterionische Strukturelemente aufweisende Partikel
EP2944677B1 (en) * 2009-12-17 2017-08-30 3M Innovative Properties Company Sulfonate-functional coatings and methods
JP5829972B2 (ja) * 2012-05-10 2015-12-09 信越化学工業株式会社 シリコーン変性双性イオン化合物とその製造方法
CN102723528B (zh) * 2012-06-06 2016-01-20 广州中科立新材料科技有限公司 两性离子液体电解质材料及其制备与在锂电池电解液中的应用
JP2015059092A (ja) * 2013-09-18 2015-03-30 信越化学工業株式会社 シリコーン変性双性イオン化合物とその製造方法
CN104610875A (zh) * 2015-01-22 2015-05-13 泉州三欣新材料科技有限公司 具有超亲水及水下超疏油涂层及其制备方法和用途

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018095621A (ja) 2018-06-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2015016187A1 (ja) 非水二次電池用電解液および非水二次電池
JP7107195B2 (ja) 電解液及び蓄電装置
JP6357974B2 (ja) 二次電池負極用結着剤、二次電池用負極及びその製造方法、並びに非水電解質二次電池
WO2015016186A1 (ja) 非水二次電池用電解液および非水二次電池
WO2016143293A1 (ja) 電解液
WO2016027583A1 (ja) 非水二次電池用電解液および非水二次電池、これらに用いられる添加剤
WO2015016189A1 (ja) 非水二次電池用電解液および非水二次電池
US20180287192A1 (en) Composite material, electrode, method of producing the material and the electrode and electrochemical cell
KR20200033198A (ko) 리튬 전지
WO2017081854A1 (ja) 負極活物質
JP6926873B2 (ja) Al及びO含有シリコン材料
JP7155898B2 (ja) 電解液及び二次電池
JP2018195509A (ja) ポリマー層で被覆されている二次電池用電極
JP7074006B2 (ja) 複合粒子
JP6926463B2 (ja) 電極
JP6841156B2 (ja) 蓄電装置およびその製造方法ならびにイオン伝導性材料の製造方法
JP2020027737A (ja) リチウムイオン二次電池
JP2020030937A (ja) 電解液
JP2019061753A (ja) リチウムイオン二次電池
JP7243406B2 (ja) 電解液及びリチウムイオン二次電池
CN107835789A (zh) 含有CaSi2 的组合物及硅材料的制造方法
JP6984349B2 (ja) 架橋ポリマー
JP2020053314A (ja) 複合粒子の製造方法
JP2020043000A (ja) 電解液及びリチウムイオン二次電池
JP2020043047A (ja) 電解液及びリチウムイオン二次電池

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190909

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200710

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200818

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20201016

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210406

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210706

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210719

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6926463

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151