JP6925728B2 - クロロフィル類の製造方法 - Google Patents
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上記カテキン類を除去した上記茶葉に対し、上記クロロフィル類を水溶化するためのアルカリ化処理と、上記クロロフィル類の中心金属を銅、鉄又は亜鉛に置換するための置換処理と、を行うことにより上記クロロフィル類の水溶液を生成する。
上記水溶液を乾燥させる。
これにより、茶葉に含まれるカテキン類を十分除去でき、良好な発色性を有するクロロフィル類を抽出できる。
これにより、茶葉中のカテキン類をより十分に除去することができ、より発色性の良好なクロロフィル類を抽出できる。
これにより、茶葉に含まれるカテキン類をさらに十分に除去でき、純度が高く、良好な発色性を有するクロロフィル類を得ることができる。
これにより、茶葉に含まれるクロロフィル類を効率よく水溶化でき、収率が高く、良好な発色性を有するクロロフィル類を得ることができる。
これにより、茶葉に含まれるカテキン類をさらに十分に除去でき、茶葉に含まれるクロロフィル類を効率よく水溶化できる。この結果、純度及び収率が高く、良好な発色性を有するクロロフィル類を得ることができる。
これにより、より効率よく発色性の良好なクロロフィル類を抽出することができる。
これにより、茶葉中の不純物を除去することができ、より発色性の良好なクロロフィル類を抽出できる。
上記第2の濾過処理は、第1の濾過処理の後に、上記第1の濾過処理で用いられる第1の濾過膜より目の細かい第2の濾過膜を用いて行ってもよい。
これにより、茶葉中の不純物をより十分に除去することができ、さらに発色性の良好なクロロフィル類を抽出できる。
これにより、茶殻を有効利用でき、省資源化を図りつつ、発色性の良好なクロロフィル類を抽出することができる。
以下、本発明の第1の実施形態を説明する。
本発明の一実施形態に係るクロロフィル類の製造方法では、茶葉から、発色性の良好なクロロフィル類を抽出することができる。
さらに、本実施形態に係る茶葉は、茶系飲料を抽出した後の茶殻であってもよい。茶殻には、茶葉と同様にクロロフィル類やカテキン類が含まれている。茶系飲料の製造時に大量に発生する茶殻を廃棄せず有効利用して、残存するクロロフィル類を抽出することで、省資源化を実現できる。
茶カテキンとしては、例えば、カテキン、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、ガロカテキン(GC)や、ガレート型のエピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキンガレート(EGCg)、ガロカテキンガレート(GCg)、カテキンガレート(Cg)、重合カテキン、その他のカテキン類が挙げられる。
図1は、本発明の一実施形態に係るクロロフィル類の製造方法を示すフローチャートである。以下、同図に沿ってクロロフィル類の製造方法の一例を説明する。
本発明の一実施形態の製造方法では、熱水抽出によりカテキン類を除去する工程(S11)を含む。また、クロロフィル類を水溶化するために、クロロフィル類をアルカリ化する工程を含む(S12)。さらに、クロロフィル類の中心金属を銅、鉄又は亜鉛に置換する工程を含む(S13)。加えて、クロロフィル類を含有する水溶液を乾燥させる工程を含む(S14)。
ステップS11では、茶葉と水とを含む混合液を加熱し、熱水抽出を行う。これにより、水溶性のカテキン類が熱水中に抽出され、茶葉からカテキン類を除去することができる。カテキン類は酸化されやすく、酸化により褐色に変色するため、カテキン類を除去することで、良好な発色性を有するクロロフィル類を含む着色料が得られる。
茶葉を分離する工程では、茶葉(固形分)とカテキン類を含む抽出液とが分離できれば、具体的な方法は限定されず、フィルターや金属メッシュ(金網)等を用いてもよい。これにより、カテキン類を含む抽出液を除去することができ、カテキン類が除去された茶葉(固形分)のみを得ることができる。
本ステップの分離は、好ましくは加温下、例えば70℃以上で行われる。これにより、カテキン類の抽出量を高めることができ、茶葉残渣とカテキン類を含む抽出液とを効率よく分離することができる。
本ステップの分離では、例えば50μm以上の茶葉残渣と、抽出液とを分離することができる。茶葉残渣の大きさは、最も長い部分を基準にした大きさとすることができ、例えば粒子状ならば粒径、繊維状ならば繊維長とすることができる。また、本ステップの分離における茶葉残渣の大きさは、例えば50μm以上10000μm以下であり、好ましくは100μm以上2000μm以下であり、より好ましくは200μm以上500μm以下であってもよい。
本ステップにおける、熱水抽出は、例えば50℃以上100℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下で行われる。これにより、茶葉に含まれる不溶性のクロロフィル類が変性することなく、カテキン類を効率よく除去することができる。
混合液における水の重量は、茶葉の重量の2倍以上30倍以下とすることができる。これにより、茶葉中のカテキン類を熱水中に十分に抽出することができる。
本ステップでは、例えば、混合液をパイプ状の加温ユニットに通液することで、連続的に熱水抽出を行うことができる。抽出時には、必要に応じて攪拌してもよい。
また、熱水抽出は、複数回行うことが好ましく、2〜3回行うことがより好ましい。複数回の熱水抽出工程では、例えば、混合液を繰り返し加温ユニットに通液してもよく、その方法は特に限定されない。これにより、カテキン類の抽出効率を高めることができ、茶葉からカテキン類を十分に除去することができる。
ステップS12では、クロロフィル類をアルカリ化する。アルカリ化することで水溶化したクロロフィル類が得られる。アルカリ化処理では、水溶化したクロロフィル類が得られれば、その方法は特に限定されず、例えば、カテキン類が除去された茶葉を水酸化ナトリウム水溶液(90℃)に4時間浸してもよい。
アルカリ化処理により、茶葉に含まれる不溶性のクロロフィル類が鹸化(加水分解)することで、脂溶性のフィトールが脱離し、水溶性のクロロフィル類(クロロフィリン等)を含む水溶液が生成される。クロロフィリンは、アルカリ性側で比較的安定性を有し、鮮やかな緑色を呈するため、得られるクロロフィル類の水溶液の発色性を良好なものとする。
また、後述するクロロフィル類の中心金属の置換処理後に、アルカリ化処理をしてもよい。
用いられるアルカリ性水溶液の濃度として、例えば、0.01〜5mol/Lであって、0.01〜1mol/Lであることが好ましい。
アルカリ性水溶液のpHは、例えば、pH7〜14であって、好ましくはpH9〜14である。
アルカリ化処理時の温度は、例えば、25〜100℃であり、好ましくは70〜100℃である。
アルカリ化処理する時間は、クロロフィル類が十分に水溶化されれば、特に限定されず、例えば、数分〜数時間程度であってもよい。
これにより、クロロフィル類の変色を抑制でき、良好な発色性を有するクロロフィル類を含む水溶液を生成することができる。
ステップS13では、クロロフィル類の中心金属(マグネシウム)を銅、鉄又は亜鉛の金属イオンに置換する中心金属置換処理を行う。中心金属置換処理では、クロロフィル類の中心金属を銅、鉄又は亜鉛の金属イオンに置換できれば、その方法は特に限定されない。例えば、クロロフィル類と硫酸銅・5水和物を反応させることで銅と置換することができる。
中心金属置換処理がされるクロロフィル類は、アルカリ化処理後の水溶化したクロロフィル類(クロロフィリン等)であってもよく、カテキン類を除去した茶葉に含まれる不溶性のクロロフィルであってもよい。これにより、不安定なクロロフィルに対して、より安定化した、鮮やかな青〜緑色を呈するクロロフィル類、例えば、銅クロロフィル、鉄クロロフィル、亜鉛クロロフィル、銅クロロフィリンNa、鉄クロロフィリンNa、又は亜鉛クロロフィリンNa等を得ることができる。
しかし、アルカリ化処理(S12)後に、中心金属置換処理(S13)を行う方がより好ましい。先に水溶化したクロロフィル類を含む水溶液を生成し、不溶性の不純物を除去した後で、中心金属置換反応をさせることで、クロロフィル類と銅、鉄、又は亜鉛などの金属イオンとの置換反応が制御しやすくなる。不純物除去前に、金属イオン(金属塩)を添加した場合、不純物中に金属イオンが取り込まれる可能性があり、反応が制御しにくくなる。また、茶葉等の不純物を食品として応用する場合、銅、鉄や亜鉛などの金属イオンが不純物中に含まれることは望ましくない。
金属塩濃度は、例えば、熱水抽出前の茶葉全量に対し、0.1〜25wt%であり、好ましくは2.5〜10wt%であってもよい。
中心金属置換反応時の温度は、例えば、70℃〜100℃であってもよい。
中心金属置換処理をする時間は、例えば、0.5時間〜8時間であり、好ましくは1〜3時間であってもよい。
これらの条件により、クロロフィル類の変色を抑制しつつ、クロロフィル類の中心金属置換処理をすることができ、発色性の良好なクロロフィル類を得ることができる。
ステップS14では、中心金属が置換された水溶性のクロロフィル類(銅クロロフィリンNa等)を含む水溶液を乾燥させる。
本ステップの乾燥は、特に限定されないが、凍結乾燥、噴霧乾燥(スプレードライ)等の方法により行うことができる。クロロフィル類を含む水溶液を乾燥させることで、クロロフィル類を含む粉末を生成することができる。
さらに、必要に応じて、上記粉末を精製することもできる。
以上のように、本実施形態によれば、熱水抽出により、発色性不良の原因となるカテキン類を十分に除去することができ、発色性の良好なクロロフィル類を抽出できる。
また、カテキン類を除去した茶葉を、アルカリ化処理及び中心金属置換処理を行うことで、不安定なクロロフィルをより安定なクロロフィル類にして、抽出することができる。
即ち、本実施形態に係るクロロフィル類の製造方法によれば、茶葉中のカテキン類を除去しつつ、安定化した発色性の良好なクロロフィル類を得ることができる。
以下、本実施形態のより詳細な具体例について、説明する。
図2は、本実施形態の具体例1に係るクロロフィル類の製造方法を示すフローチャートである。なお、図2のステップS21,S22,S27,S28は、それぞれ図1のステップS11〜S14に対応するので、説明を省略する。
具体例1では、茶葉に含まれるカテキン類を複数回熱水抽出することにより、茶葉からカテキン類を除去する(S21)。次に、水溶化したクロロフィル類を得るために、茶葉に含まれるクロロフィル類をアルカリ化する(S22)。得られたクロロフィル類を含む水溶液を濾過する(第1の濾過処理)(S23)。その濾液を限外濾過する(第2の濾過処理)(S24)。その限外濾過液を濃縮する(S25)。次に、濃縮された液のpH調整(pH8〜10)をする(S26)。次に、クロロフィル類の中心金属を銅、鉄又は亜鉛に置換する(S27)。次に、中心金属が置換されたクロロフィル類を含む水溶液を乾燥させる(S28)。
ステップS23では、クロロフィル類を含む水溶液と、茶葉(固形残渣)とを分離するために濾過をする。肉眼で明確に確認できる程度の茶葉(固形残渣)を分離できれば、濾過の方法、濾過膜の形状等は限定されない。使用する濾過膜(第1の濾過膜)は、例えば、フィルターや金属メッシュ(金網)を用いてもよい。濾過膜の孔径は、1μm以上1000μm以下であり、より好ましくは、1μm以上300μm以下であってもよい。これにより、茶葉や茎などの固形残渣を十分に除去できる。
さらに、より細かい茶葉(固形残渣)を除去するための徐濁工程を含んでいてもよい。徐濁方法は、濾過用フィルターを用いた濾過や、遠心分離、デカンテーション等の方法により行ってもよい。
第1の濾過処理をすることで、ステップS24の限外濾過において、限外濾過膜の目詰まりを防止でき、より効率よくクロロフィル類を精製することができる。また、徐濁工程を含むことで、後述する限外濾過において、中空糸膜中を流れる粒子が中空糸内部を閉塞することを防止することができる。
ステップS24では、茶葉残渣を除去したクロロフィル類を含む水溶液を、さらに限外濾過する。このとき、用いられる限外濾過膜(第2の濾過膜)の分画分子量は、例えば、10000以下であり、好ましくは1000〜10000であり、より好ましくは1000〜3000であってもよい。これにより、加水分解により低分子化したクロロフィル類(クロロフィリン等)を精製することができる。具体的には、上記範囲の限外濾過膜を用いることで、リグニン等の高分子物質からなる不純物を除去することができる。リグニンは茶色を呈するため、これを除去することで発色性のよいクロロフィル類を得ることができる。
ステップS25では、限外濾過液を濃縮する。濃縮方法は、溶媒が除去できれば、特に限定されず、従来の方法を採用することができる。例えば、真空蒸発法、膜濃縮法等が挙げられる。また、濃縮する工程は、凍結乾燥法やスプレードライ法等による乾燥、粉末化させる工程(ステップS28)の前に行ってもよい。
ステップS26では、濃縮されたクロロフィル類を含む水溶液のpHを調整する。水溶液のpHは、アルカリ性であることが好ましく、pH8〜10(pH9程度の弱塩基性)であることがさらに好ましい。クロロフィル類は酸性下で不溶性を示すが、ナトリウム塩を形成することで、クロロフィル類を水に溶解させることができる。また、pH調整することで、次のステップS27にて効率よく中心金属置換反応を行うことができ、より発色性の良いクロロフィル類を得ることができる。
pH調整剤は特に限定されるものでなく、例えば、塩酸、硫酸、クエン酸を用いて行うことができる。pH調整剤は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
図3は、本実施形態の具体例2に係るクロロフィル類の製造方法を示すフローチャートである。なお、図3のステップS31,S32,S33,S38は、それぞれ図1のステップS11,S13,S12,S14に対応するので、一部説明を省略する。
具体例2では、茶葉からカテキン類を熱水抽出することにより、カテキン類を除去する(S31)。クロロフィル類の中心金属を銅、鉄又は亜鉛に置換する(S32)。中心金属が置換されたクロロフィル類をアルカリ化する(S33)。アルカリ化処理により、水溶化したクロロフィル類を濾過する(S34)。次に、濾液を中和する(S35)。中和後、水相のタールを分離する(S36)。タールを分離後、クロロフィル類をアルカリ性下で再溶解させる(S37)。再溶解したクロロフィル類を含む水溶液を凍結乾燥する(S38)。
ステップS32では、茶葉に含まれる不溶性のクロロフィル類の中心金属を、銅、鉄又は亜鉛に置換する。これにより、銅クロロフィル、鉄クロロフィル又は亜鉛クロロフィル等の中心金属が置換されたクロロフィル類が得られる。中心金属の置換方法は前述のとおりである。
ステップS33では、中心金属が置換されたクロロフィル類をアルカリ化する。これにより、クロロフィリンのアルカリ塩である銅クロロフィリンNa、鉄クロロフィリンNa、又は亜鉛クロロフィリンNa等のクロロフィル類を含む水溶液が生成される。アルカリ化処理の方法は前述のとおりである。
ステップS34では、クロロフィル類を含む水溶液と、茶葉(固形残渣)を分離するために、図2のステップS23と同様の手法で濾過される。
ステップS35では、濾液を中和し、弱酸性とする。濾液の中和方法は、クロロフィル類の発色性に影響を与えないものであれば、従来の方法を採用することができる。例えば、塩酸を添加する。これにより、濾過液のpHが、弱酸性(例えば、pH4)となり、クロロフィル類が析出する。
ステップS36では、タールを分離する。分離する方法は、析出したクロロフィル類と水相のタールを分離できれば、その方法は限定されない。これにより、不純物であるタールを除去でき、発色性の良好なクロロフィル類を抽出できる。
ステップS37では、析出したクロロフィル類を再溶解させる。再溶解させる方法は、特に限定されず、例えば、炭酸Na水溶液を添加する。アルカリ性(例えばpH9程度の弱アルカリ性)にすることで、析出したクロロフィル類を再溶解させることができる。これにより、発色性の良好なクロロフィル類を含む水溶液を生成することができる。
変形例として、熱水抽出、アルカリ化処理、中心金属置換処理、及び濾過を経た後、生成したクロロフィル類を含む水溶液を弱酸性にし、クロロフィル類を析出させてから、回収してもよい。回収方法は、析出したクロロフィル類を分離できれば、特に限定されない。
以下、本発明の第2の実施形態を説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態に係るクロロフィル類の製造方法を示すフローチャートである。
本発明の第2の実施形態に係るクロロフィル類の製造方法では、上記第1の実施形態と異なり、ステップS11のカテキン類を除去する工程が、茶葉を熱水で抽出する工程(ステップS101)と、さらに茶葉をアルコール水溶液で抽出する工程(ステップS102)と、を含む。
以下、同図に沿って、クロロフィル類の製造方法の一例を説明する。尚、第2の実施形態において、上記第1の実施形態と同様の処理を行うステップについては、詳細な説明を省略する。
ステップS101では、上記第1の実施形態のステップS11と同様に、茶葉を熱水で抽出することにより、茶葉に含まれるカテキン類を除去する。
ステップS102では、ステップS101において熱水で抽出した茶葉に対し、さらにアルコール水溶液で抽出する。これにより、茶葉に残存するカテキン類を除去する。
抽出に用いられるアルコール水溶液におけるアルコール濃度は、30〜50%であることが好ましく、例えば40%とすることができる。
アルコール濃度が30%以上であることにより、カテキン類を十分に除去でき、純度の高いクロロフィル類を抽出できる。アルコール濃度が50%以下であることにより、アルコール水溶液の使用量を低減できるため工業上有利となる。
抽出時間として、例えば、1分以上300分以下であることが好ましく、10分以上240分以下であることがさらに好ましい。
これにより、茶葉に含まれる不溶性のクロロフィル類が変性することなく、カテキン類を効率よく除去することができる。
また、熱水抽出の後に、アルコール水溶液抽出を行うことにより、熱水抽出の回数を減らすことができる。これにより、クロロフィル類の熱による変性を防ぐことができる。
ステップS103では、上記第1の実施形態のステップS12と同様に、茶葉に対して、水溶液中でアルカリ化処理が行われる。
ステップS104,S105では、上記第1の実施形態のステップS13,14と同様の処理が行われる。すなわち、ステップS104では、クロロフィル類の中心金属が銅、鉄又は亜鉛に置換される。ステップS105では、クロロフィル類を含む水溶液が乾燥される。これにより、安定化したクロロフィル類を含む粉末が得られる。
以下、本発明の第3の実施形態を説明する。
図5は、本発明の第3の実施形態に係るクロロフィル類の製造方法を示すフローチャートである。
本発明の第3の実施形態に係るクロロフィル類の製造方法では、上記第1の実施形態のステップS12の水溶液中でアルカリ化処理を行う工程において、アルコール水溶液が用いられる(ステップS202参照)。
以下、同図に沿って、クロロフィル類の製造方法の一例を説明する。尚、第3の実施形態において、上記第1の実施形態と同様の処理を行うステップについては、詳細な説明を省略する。
ステップS201では、ステップS11と同様に、茶葉を熱水で抽出することにより、茶葉に含まれるカテキン類を除去する。
ステップS202では、ステップS201でカテキン類を除去した茶葉に対し、アルコール水溶液中でアルカリ化処理を行う。アルコール水溶液中でクロロフィル類をアルカリ化することで、クロロフィル類を効率よく水溶化できる。
アルカリ化処理で用いられるアルカリ性溶液は、上記第1の実施形態のステップS12と同様である。
アルカリ化処理で用いられるアルコール水溶液におけるアルカリ濃度は、例えば、0.01〜5mol/Lであって、0.01〜1mol/Lであることが好ましい。
アルカリ化処理で用いられるアルコール水溶液のpHは、例えば、pH7〜14であって、pH9〜14であることが好ましい。
アルカリ化処理する時間は、ステップS12と同様である。
アルカリ化処理に用いられるアルコール水溶液の重量は、茶葉の重量の2倍以上100倍以下とすることができる。これにより、茶葉中のクロロフィル類を効率よく水溶化することができる。
ステップS203,S204では、上記第1の実施形態のステップS13,14と同様の処理が行われる。すなわち、ステップS204では、クロロフィル類の中心金属が銅、鉄又は亜鉛に置換される。ステップ205では、クロロフィル類を含む水溶液が乾燥される。これにより、上記第1の実施形態と同様に、安定化したクロロフィル類を含む粉末が得られる。
以下、本発明の第4の実施形態を説明する。
図6は、本発明の第4の実施形態に係るクロロフィル類の製造方法を示すフローチャートである。
本発明の第4の実施形態に係るクロロフィル類の製造方法は、第2の実施形態に第3の実施形態のステップS202と同様の工程を追加したものである。
以下、同図に沿って、クロロフィル類の製造方法の一例を説明する。尚、第4の実施形態において、上記第1〜3の実施形態と同様の処理を行うステップについては、詳細な説明を省略する。
ステップS301では、ステップS11と同様に、茶葉を熱水で抽出することにより、茶葉に含まれるカテキン類を除去する。
ステップS302では、上記第2の実施形態のステップ102と同様に、ステップS301において熱水で抽出した茶葉に対し、さらにアルコール水溶液で抽出することにより、茶葉に残存するカテキン類を除去する。
ステップS303では、上記第3の実施形態のステップS202と同様に、ステップS302でカテキン類を除去した茶葉に対し、アルコール水溶液中でアルカリ化処理を行う。
アルカリ化処理に用いられるアルコール水溶液におけるアルコール濃度は、ステップS302の抽出で用いられるアルコール水溶液のアルコール濃度より、高いことが好ましい。ステップS302,S303において用いられるアルコール水溶液において、アルコール濃度を段階的に高くすることで、純度及び収率がより高く、より発色性に優れたクロロフィル類が得られる。
ステップS304,S305では、上記第1の実施形態のステップS13,14と同様の処理が行われる。すなわち、ステップS304では、クロロフィル類の中心金属が銅、鉄又は亜鉛に置換される。ステップ305では、クロロフィル類を含む水溶液が乾燥される。これにより、上記第1の実施形態と同様に、安定化したクロロフィル類を含む粉末が得られる。
本実施形態に係る製造方法では、クロロフィル類が変色しない工程で、カテキン類を十分に除去し、クロロフィル類を抽出することができる。カテキン類を除去することで、吸収極大波長における比吸光度(E1%1cm)が400以上の発色性の良好なクロロフィル類を抽出することができた。
はこれら実施例の範囲に限定されるものではない。
まず、本実施形態に係る実施例及び比較例を用いて、クロロフィル類の発色性について評価した。
実施例1〜3では、熱水抽出、アルカリ化処理、中心金属置換処理、第1の濾過処理、及び限外濾過を経てクロロフィル類を抽出した。比較例では、熱水抽出を行わず、クロロフィル類を抽出した。
実施例1〜3及び比較例の中心金属置換処理では、硫酸銅・5水和物を使用した。
発色性については、目視により確認した。発色性について、以下の4段階で判断した。
◎:鮮やかな色を呈し、非常に良好な発色性を有する。
○:良好な発色性を有する。
△:僅かに灰色がかっているが、発色性を有する。
×:褐色を呈し、発色性を有さない。
発色性の評価結果は、「△」以上であれば実用上問題なく、「○」であれば好ましく、「◎」であればより好ましい。
実施例1〜3では、いずれも発色性の良好なクロロフィル類を得ることができた。
熱水抽出工程を1回行った実施例1では、カテキン類を必要量除去でき、発色性を有するクロロフィル類が得られた。
熱水抽出工程を複数回行った実施例2では、カテキン類を十分に除去でき、良好な発色性を有するクロロフィル類が得られた。
熱水抽出工程を複数回行い、実施例2より小さい分画分子量の限外濾過膜を用いた実施例3では、カテキン類及びその他の不純物を十分に除去することができ、非常に良好な発色性を有するクロロフィル類が得られた。
比較例1では、カテキン類を十分に除去することができず、発色性が良好でない緑褐色のクロロフィル類を得た。
続いて、本実施形態に係る熱水抽出工程、アルコール水溶液抽出工程及びアルコール水溶液中でのアルカリ化処理工程等が、発色性や収率、純度にどのような影響を及ぼすかを確認するため、以下の評価を行った。なお、上記の実施例1〜3及び比較例1についても、改めて評価を行った。
実施例1〜3、比較例1では、上記表1と同様の工程を経て、クロロフィル類を抽出した。
実施例4では、熱水抽出(複数回)、アルコール水溶液中でのアルカリ化処理、硫酸銅・5水和物を用いた中心金属置換処理、第1の濾過処理、及び限外濾過を経てクロロフィル類を抽出した。
実施例5では、熱水抽出(1回)、アルコール水溶液抽出、水溶液中でのアルカリ化処理、硫酸銅・5水和物を用いた中心金属置換処理、第1の濾過処理、及び限外濾過を経てクロロフィル類を抽出した。
実施例6,7では、熱水抽出(1回)、アルコール水溶液抽出、アルコール水溶液中でのアルカリ化処理、硫酸銅・5水和物を用いた中心金属置換処理、第1の濾過処理、及び限外濾過を経てクロロフィル類を抽出した。
実施例4〜7の中心金属置換処理では、実施例1〜3と同様に、硫酸銅・5水和物を使用した。
実施例5〜7では、アルコール水溶液抽出において、40wt%のエタノール水溶液(EtOHaq)を使用した。
実施例4,6では、アルカリ化処理において、60wt%のエタノール水溶液(EtOHaq)を使用した。また、実施例7では、アルカリ化処理において、90wt%のエタノール水溶液(EtOHaq)を使用した。
発色性について、上記と同様に目視により確認した。また、上記と同様の評価基準で、評価した。
これに対して、比較例1では、発色性が低いクロロフィル類が得られた。
この結果から、熱水抽出を行うことで、カテキン類が十分に除去され、発色性の良好なクロロフィル類が得られることが改めて確認された。
この結果から、熱水抽出の回数を増やすことで、カテキン類が十分に除去され、発色性がよくなることが確認された。
この結果から、熱水抽出の回数が1回であっても、エタノール水溶液抽出を行うことで、カテキン類が十分に除去され、発色性がよりよくなることが確認された。
クロロフィル類の収率は、茶葉重量における、得られたクロロフィル類の含有量の割合として算出された値である。
クロロフィル類の含有量は、664nm(クロロフィルの吸収波長)の吸光度を測定することで、算出された値である。
クロロフィル類の収率について、以下の4段階で判断した。
◎:0.5%以上
〇:0.1%以上0.5%未満
△:0.05%以上0.1%未満
×:0.05%未満
収率の評価結果は、「△」以上であれば実用上問題なく、「○」であれば好ましく、「◎」であればより好ましい。
これに対して、比較例1では、収率が低いクロロフィル類が得られた。
この結果から、熱水抽出を行うことで、カテキン類が十分に除去され、収率の良好なクロロフィル類が得られることが確認された。
同様に、アルカリ化処理工程として、エタノール水溶液中でアルカリ化処理を行った実施例6と、エタノールを含まない水溶液中でアルカリ化処理を行った実施例5とを比較すると、実施例6では、収率が非常に良好であるのに対して、実施例5では、収率が良好にとどまった。
この結果、エタノール水溶液中でアルカリ化処理をすることで、クロロフィル類が効率よく水溶化され、収率が高くなることが確認された。
クロロフィル類の純度は、得られた含有固形分量中におけるクロロフィル類の含有量の割合として算出された値である。
含有固形分量は、限外濾過液を120℃で蒸発乾固した後に得られた固形分の質量である。
クロロフィル類の含有量は、上記通り算出された値である。
得られたクロロフィル類の純度については、以下の4段階で判断した。
◎:15%以上
〇:12%以上15%未満
△:8%以上12%未満
×:8%未満
純度の評価結果は、「△」以上であれば実用上問題なく、「○」であれば好ましく、「◎」であればより好ましい。
これに対して、比較例1では、純度が低いクロロフィル類が得られた。
この結果から、熱水抽出を行うことで、カテキン類が十分に除去され、純度が十分に高いクロロフィル類が得られることが確認された。
この結果から、分画分子量が1000〜10000の範囲の限外濾過膜を用いることで、より純度の高いクロロフィル類が得られることが確認された。
さらに、カテキン類除去工程として、熱水抽出(1回)及びエタノール水溶液抽出を行った実施例6と、熱水抽出(複数回)を行い、エタノール水溶液抽出を行わなかった実施例4とを比較すると、実施例6では、純度が非常に良好であるのに対して、実施例4では、良好にとどまった。
この結果、エタノール水溶液抽出を行うことで、カテキン類をさらに十分に除去することができ、純度が高くなることが確認された。
また、熱水抽出を複数回行うことよりも、熱水抽出(1回)とエタノール水溶液抽出の両方を行う方が、熱によるクロロフィル類の変性を抑制でき、純度の高いクロロフィル類が得られることがわかった。
総合評価では、各評価項目について、◎を3点、〇を2点、△を1点、×を0点として、点数をつけ、合計点に対して、以下の4段階で判断した。
◎:合計点が9点であり、非常に良好である。
〇:合計点が6〜8点であり、良好である。
△:合計点が3〜5点であり、やや良好である。
×:合計点が0〜2点であり、不良である。
総合評価の結果は、「△」以上であれば実用上及び工業上の観点から問題なく、「○」であれば好ましく、「◎」であればより好ましい。
また、カテキン類除去工程として1回の熱水抽出のみを行った実施例1は「やや良好」な総合評価であるが、複数回の熱水抽出を行った実施例2〜4は「良好」な総合評価であり、複数回の熱水抽出が効果的であることが確認された。
さらに、カテキン類除去工程として、実施例5〜7のように、1回の熱水抽出に加えてエタノール水溶液抽出を行うことで、総合評価を高めることができることが確認された。
Claims (10)
- 茶葉からクロロフィル類を抽出するクロロフィル類の製造方法であって、
前記茶葉を少なくとも熱水で抽出することにより、前記茶葉中のカテキン類を除去し、
前記カテキン類を除去した前記茶葉に対し、前記クロロフィル類を水溶化するためのアルカリ化処理と、前記クロロフィル類の中心金属を銅、鉄又は亜鉛に置換するための置換処理と、を行うことにより前記クロロフィル類の水溶液を生成し、
前記水溶液を乾燥させる
クロロフィル類の製造方法。 - 請求項1に記載のクロロフィル類の製造方法であって、
前記熱水抽出を複数回行う
クロロフィル類の製造方法。 - 請求項1又は2に記載のクロロフィル類の製造方法であって、
前記熱水で抽出した前記茶葉に対し、さらにアルコール水溶液で抽出することにより、前記茶葉に残存するカテキン類を除去する
クロロフィル類の製造方法。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載のクロロフィル類の製造方法であって、
前記カテキン類を除去した前記茶葉に対し、アルコール水溶液中でアルカリ化処理を行う
クロロフィル類の製造方法。 - 請求項1又は2に記載のクロロフィル類の製造方法であって、
前記熱水で抽出した前記茶葉に対し、さらに第1の濃度のアルコール水溶液で抽出することにより、前記茶葉に残存するカテキン類を除去し、
前記カテキン類を除去した前記茶葉に対し、前記第1の濃度より高い第2の濃度のアルコール水溶液中でアルカリ化処理を行う
クロロフィル類の製造方法。 - 請求項1から5のいずれか1項に記載のクロロフィル類の製造方法であって、
前記アルカリ化処理の後に、前記置換処理を行う
クロロフィル類の製造方法。 - 請求項1から6のいずれか1項に記載のクロロフィル類の製造方法であって、
前記水溶液を生成するために、前記アルカリ化処理の後に濾過処理を行う
クロロフィル類の製造方法。 - 請求項7に記載のクロロフィル類の製造方法であって、
前記濾過処理は、第1の濾過処理と第2の濾過処理とを含み、
前記第2の濾過処理は、第1の濾過処理の後に、前記第1の濾過処理で用いられる第1の濾過膜より目の細かい第2の濾過膜を用いて行う
クロロフィル類の製造方法。 - 請求項8に記載のクロロフィル類の製造方法であって、
前記第2の濾過処理は、分画分子量が1000〜10000の範囲の限外濾過処理である
クロロフィル類の製造方法。 - 請求項1から9のいずれか1項に記載のクロロフィル類の製造方法であって、
前記茶葉が茶殻である
クロロフィル類の製造方法。
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